説明

フラボノイドとω−置換C6〜C22脂肪酸とのエステル

本発明は、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とエステル結合によって結合した、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カルコン、オーロン及びヒドロキシクマリンのようなフラボノイドのエステルに関する。これらのフラボノイド誘導体は、特に紫外線による損傷に対して、優れた皮膚保護特性を示す。これらは、非常に良好な化学安定性を示し、化粧品及び医薬品に容易に配合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とエステル結合によって結合した、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カルコン、オーロン及びヒドロキシクマリンのようなフラボノイドのエステルに関する。更に本発明は、これらのフラボノイド誘導体を含む化粧品、医薬品及び栄養物、並びにこれらのフラボノイド誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドは、植物中に天然に存在するポリフェノール類である。フラボノイドは、ベンゾ-γ-ピロン誘導体であり、環上の種々の置換基の存在及び環 C の酸化度に従って、幾つかのグループ(フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カルコン、オーロン、ヒドロキシクマリン)に分類され得る(図 1)。これらのフラボノイドはまた、グリコシド体又はアグリコン体で存在し得、ヒドロキシル基のメチル化又はアシル化のような別の変性によって、これらの分子及び特性の多様性が増す。
【化1】

【0003】
長年にわたって、フラボノイドは、その生物学的活性について知られている。その主な特性は、酸化防止活性及び酵素阻害活性である。フラボノイドは、化粧品及び医薬品において、抗紅斑、抗しみ、敏感肌、排液、スリミング、しわ取り、細胞外マトリックスの刺激、身体強壮、肌の弾力性、老化防止、心臓血管疾患、静脈強化、炎症、アレルギー、抗ウィルス性、抗菌特性、安定治療剤又は保護治療剤のような様々な特性に関連した用途のため、既に使用されている。
【0004】
紫外線領域における吸収スペクトルと組み合わさった抗ラジカル活性のため、フラボノイドが光酸化による肌の損傷を防ぐことに関心が持たれている。紫外線は、肌への環境ストレスの 1 つの態様である。肌を攻撃する主な紫外線は、真皮及び真皮上層に達する 290〜320 nm(UVB)、並びに最も透過性が強くて真皮に作用する 320〜400 nm の紫外線(UVA)である。核又はミトコンドリア DNA の損傷、脂質及びタンパク質の損傷の原因である反応性酸素種の生成は、UVA 及び/又は UVB によって誘発され、例えば炎症、日焼け、肌の弾力性損失のような即時かつ一過性の生物学的反応、及び光線加齢又は光線発癌のような遅発性かつ慢性の生物学的反応を伴う。しかしながら、Saija ら(International Journal of Pharmaceutics, 175, 85, 1998 年)は、フラボノイドは製剤中では効果がないことを証明している。
【0005】
更に、化粧品、医薬品及び栄養物でのフラボノイドの利用は、フラボノイドの低い溶解性及び安定性によって制限されている。水相及び親油相両方におけるフラボノイド(グリコシル化体及びアグリコン体)の溶解性は低い。従って、フラボノイドを、化粧品、医薬品又は栄養物に配合するのは非常に困難である。第二の欠点は、フラボノイドの生物学的利用能が乏しいことである。フラボノイドは、その構造中の多くのヒドロキシル基の存在によって不安定である。フラボノイドは、光、酸素又は酸化剤及び高温によって分解される。
【0006】
フラボノイドの紫外線保護特性を向上させるために、フラボノイド(特にチリロシド)のアシル化又はアルキル化による、紫外線フィルター特性により知られている芳香族化合物(例えばジベンゾイルメタン誘導体又はベンゾイル誘導体)との結合が、WO 02/069926 に記載されている。フラボノイドと紫外線フィルター分子との結合により、紫外線フィルターの安定性が増す。EP 1205475 では、アグリコンフラボノイドを同じ紫外線フィルターで変性した。該化合物は、両分子の特性、即ち、フラボノイドの酸化防止活性及び酵素阻害活性と、フィルターの紫外線吸収特性を有する。
【0007】
US 4255336 では、有機カルボン酸、炭酸、スルホン酸によるシアニダン-3-オールの誘導体が、肝臓壊死及び脂肪過酸化の予防に関するそれらの活性について記載されている。該化合物は、コラゲナーゼによるコラーゲンの分解を阻害することによって組織を保護し得る。
【0008】
カプセル化又は酸化防止剤の添加といった、フラボノイドの不安定性の問題を解決するための種々の方法が提案されてきた。フラボノイドの安定性及び親油性を増すための他の記載されている方法は、化学法又は酵素法による脂肪酸でのフラボノイドのアシル化である。FR 2706478 では、フラバノールエステル、プロシアノリドオリゴマー及び脂肪酸を含む治療薬及び化粧品を記載している。フェノール基のアシル化は、酸化防止活性の減少なしに、色について製剤の安定性を増す。FR 2778663 では、フラボノイドの脂肪エステルが化学法によって合成された。得られたフラボノイドエステルは、製剤及びエマルション中で安定され、その抗ラジカル活性は維持された。酵素阻害活性もまた、フラボノイドの脂肪酸でのアシル化によって増加された。これは、細胞膜を通しての高い浸達度の結果である。
【0009】
US 5844061 では、フラボノールとプロシアノリドオリゴマーを、脂肪酸又はアリール酸でのエステル化によりヒドロキシル基を保護することによって、脂溶性にかつ安定にした。これらのエステルの抗ラジカル特性及び酸化防止特性は、治療、美容及び栄養分野で活用され得る。
【0010】
WO 00/44757 は、薬剤用途のヘスペレチンの生物学的利用能を増すために、酸の有機塩又は無機塩により、或いは脂肪酸、置換脂肪酸又は芳香族酸によりアシル化された親水性及び親油性のヘスペレチンを開示している。
【0011】
フラボノイドの生物学的利用能は、水溶解度の増加によって向上され得る。親水性のケルセチン、アピゲニン、ゲニステインは、フラボノイドとリン酸化糖(イノシトールリン酸塩)を、直接又は短い炭素鎖(コハク酸エステル)で結合することによって得られた。同方法では、極性基と結合させることによって、細胞障害活性及び増殖抑制活性を減少することなく、ケルセチンの水溶解度を増加させる(WO 96/21440)。
【0012】
WO 99/63995 では、イソフラボンの生物学的利用能を、その水溶解度を向上することによって増加させた。これは、極性基を結合することによって実現された。イソフラボンは、アグリコン部のアルコール官能基において、極性基であるカルボン酸基又はリン酸基を利用して、直接的に酸と結合するか、又は間接的に短い短鎖により結合してエステル化された。コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル及びリン酸エステルが、生物学的適合性を有する良好な可溶化剤として記載された。エステル化イソフラボンは、種々の酵素によるエステル結合の加水分解によって、生物学的媒体中で、遊離イソフラボンに転化され得る。エステル化イソフラボンは、栄養補助食品及び医薬品に、紫外線による肌への損傷に対する、フィトエストロゲン、抗血管形成剤、抗酸化剤、抗癌剤として使用され得る。
【0013】
フラボノイドのマイクロカプセルもまた、フラボノイドと二酸との界面での架橋結合により得られた(FR 2715582)。マイクロカプセルは、フラボノイド水溶液と二酸の有機溶液とを、勢いよく撹拌しながら高 pH で混合することによって調製された。この安定化ポリフェノールは、その活性を維持している。
【0014】
DE 10019235 では、脂肪酸又は芳香脂肪族酸によりアシル化されたグリコシル化フラボノイド及びイソフラボンが、化粧品及び医薬品用途に特許請求されている。
【0015】
炭化水素鎖の両末端にカルボキシル基を有するジカルボン酸は、殺菌特性及び酵素阻害活性を有する興味深い種類の脂肪酸誘導体である。更に、これらの酸の大多数は、リポソーム膜を迅速に通過することができる。アゼライン酸は、毛髪を漂白するための、鱗屑を誘発するプロテアーゼ及びチロシナーゼの活性を阻害するための、美容剤及び治療剤として、ニキビ抑制剤、老化防止剤として、そして皮膚美白剤として既に使用されており、ある種の皮膚疾患に対して幾分有効である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、フラボノイドとω-置換 C6〜C22 脂肪酸の特性を、向上した生物学的特性、化学安定性及び物理化学安定性と組み合わせた新規な分子を提供することである。本発明の分子は、肌、粘膜及び頭皮を紫外線による損傷から保護し、その結果、肌の老化を防ぐ。
本発明のもう 1 つの目的は、向上した物理化学的特性及び高い生物学的利用能を有するこれらのフラボノイド誘導体を含む製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルに関する。
また、本発明は、本発明のフラボノイドエステル、及び本発明のフラボノイドエステルがリポソーム又はマイクロカプセル中に組込まれている配合物を含む、栄養物、化粧品又は医薬品に関する。
更に、本発明は、皮膚の老化を招くミトコンドリア又は核 DNA の損傷のような紫外線に起因する損傷から肌及び頭皮を保護するための、酸化ストレス、環境ストレス又は汚染物質に対する保護のための、又は抗炎症薬としての、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルの使用に関する。
【0018】
意外にも、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルが、紫外線に起因する損傷から皮膚細胞を保護する特性を有することが見出された。実施例で示されるように、本発明のフラボノイドエステルは、UVA 及び UVB から皮膚細胞を、フラボノイド単独より効果的に保護することが見出された。更に、本発明のエステルは、UVA 照射後のヒトの皮膚細胞の GSH 代謝を刺激する、即ち、細胞防御を刺激する特性を示した。UVB 照射後に放出される PGE2 の阻害によって示されるように、本発明のエステルはまた、抗炎症特性及び無痛化特性を有する。
【0019】
従って、本発明のフラボノイドエステルは、肌及び頭皮を保護するため、及び/又は紫外線及び太陽光による損傷、紅斑、日焼け、ミトコンドリア又は核 DNA の損傷に対抗するため、光線加齢を防ぐ又は対抗するために使用され得、肌のしわ、弾力性損失及び肌密度低下のような老化のサインに対する向上を提供する。
【0020】
本発明のフラボノイドエステルはまた、肌、頭皮及び/又は毛幹を保護して酸化又はストレスによる損傷に対抗するため、肌、頭皮及び/又は毛幹を汚染物質、化学薬品のような環境ストレスから保護するために使用され得る。
【0021】
本発明のフラボノイドエステルは、局所炎症又は微小炎症が起こっている肌の外観を向上するために使用され得る。また、本発明のフラボノイドエステルは、敏感な又は炎症を起こした肌又は頭皮を治療するために、緩和剤及び痒み止めとして使用され得る。
【0022】
本発明のフラボノイドエステルは、純粋なフラボノイドの活性をなお示すので、本発明では、排液治療、スリミング治療、しわ取り治療のための抗ラジカル剤、抗酸化剤、抗しみ剤として、身体強壮組成物におけるエラスチン及び他の細胞外マトリックス要素の合成の刺激物として、それらを使用することも可能である。本発明のフラボノイドエステルはまた、心臓血管疾患、静脈強化効果、炎症疾患、アレルギー、抗ウィルス性、抗菌特性、安定治療剤又は保護治療剤に関する用途のための組成物においても使用され得る。
【0023】
本発明のフラボノイドエステルは、非常に優れた化学安定性を示す。
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルは、親油性賦形剤へのより優れた溶解性を有するので、化粧品、皮膚用製剤、医薬品に、そして栄養補助食品として容易に配合され得る。
【0024】
WO 99/63995 で開示されている組成物と比較すると、イソフラボンの生物学的利用能は、脂肪溶解度の向上によって更に増した。これは、極性基だけではなく、挿入する C6〜C22 脂肪酸を結合することによって実現された。ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルは、製剤の油相に直接溶解され得るか、或いはリポソーム又はマイクロカプセル中に全て又は一部組込まれ得る。
【0025】
リポソーム又はマイクロカプセル中への組込みは、活性フラボノイドエステルの放出を制御できるという利点を有する。特に、開示した親油性フラボノイド誘導体は、制御された放出のための送達システムに容易に配合される。この送達システムは、特殊なフラボノイドエステルの溶解度特性によって、非常に優れた物理化学的安定性を有し、その結果、満足な生物学的利用能をもたらす。
【0026】
製剤中の開示したフラボノイドエステルの有効量は、最終組成物に基づいて、0.0001〜10 重量%、好ましくは 0.001〜5 重量%、最も好ましくは 0.01〜2 重量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
フラボノイド
用語「フラボノイド」は、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カルコン、オーロン及びヒドロキシクマリンからなる群から選ばれるポリフェノール種のアグリコン体又はグリコシル化体を表す。好ましくは、グリコシル化体が選択される。
好適には、フラボノイドは、ケンプフェロール、フロレチン、アピゲニン、ルテオリン、ケルセチン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、シアニジン、ゴシペチン、ゲニステイン、ダイゼイン、カテキン、エピカテキン、フィセチン、リキリチゲニン及びエスクレチンのアグリコン体又はグリコシル化体からなる群から選ばれる。より好ましくは、フラボノイドは、ルチンとしてのケルセチンのグリコシル化体、ヘスペリジンとしてのヘスペレチンのグリコシル化体、ナリンギンとしてのナリンゲニンのグリコシル化体、及びエスクリンとしてのエスクレチンのグリコシル化体からなる群から選ばれる。
【0028】
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸
用語「ω-置換 C6〜C22 脂肪酸」は、カルボン酸基以外に、鎖中のいずれかの炭素原子、好ましくは末端炭素原子に 1 個以上の極性基を有する、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝脂肪族 C6〜C22 カルボン酸を表す。好ましくは、脂肪酸は 8〜18 個の炭素原子を有する。
【0029】
この極性基は下記のものであってよい:
(a)カルボン酸 COOH、アミド CONR'2 又は CONR'3+S-[式中、R' は、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、或いはアリール、アラルキル又はアラルキレン基であり、S- は対イオンである。]、COHal[式中、Hal はハロゲン原子である。]、及び COSH からなる群から選ばれるカルボン酸誘導体。これらのω-置換 C6〜C22 脂肪酸の例は、オクタン二酸、アゼライン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸である。
(b)チオール又はアルキルチオアルキル基、例えば 11-メルカプトウンデカン酸、
(c)第一、第二、第三アミン又はクオタニウム塩の水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、アリール、アラルキル又はアラルキレン基、例えば 11-アミノウンデカン酸、
(d)ハロゲン原子、
(e)ニトロ基、
(f)有機又は無機のリン酸又は硫酸、
(g)ヒドロキシル基又はアルコキシアルキル基、例えば 16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸。
【0030】
最も好ましい誘導体は、カルボン酸の誘導体(グループ(a))であり、特にジカルボン酸である。
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸はまた、そのカルボキシル基の 1 個においてエステル結合によってフラボノイドと結合したジカルボン酸、即ち HOOC-X-C(=O)-O-フラボノイド[式中、X は飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C4〜C20 アルキル基である。]である。
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸はまた、ジオール、ジチオール、1,2-ジチアン、1,3-ジチアン又はエポキシドである 2 個の近接した極性基を有する、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝脂肪族鎖(C6〜C22)、例えばチオクト酸を表す。
【0031】
本発明のフラボノイドエステル
本発明のω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステルは、式(I)〜(X)に相当することを特徴とする。
【0032】
【化2】

式中:
(h)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(i)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(j)R3 及び R4 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(k)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(l)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
フラボンの例は、アグリコン体としての、アピゲニン、ルテオロール、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、ジオスミン、オリエンチン、サポナリン、シャフトシドである。
単糖類は、好ましくは、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。オリゴ糖類は、好ましくは、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0033】
【化3】

式中:
(m)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(n)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(o)R3、R4 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(p)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(q)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
フラボノールの例は、アグリコン体としての、ケンプフェロール、ケルセチン、ラムネチン、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、ルチン、ケルシトリン、ヒペロシド、イソケルシトリンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0034】
【化4】

式中:
(r)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(s)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(t)R3、R4 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(u)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(v)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
フラバノンの例は、アグリコン体としての、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ヘスペレチン、ユーカリプチン、シルシマリチン、カヤフラバノン、ヒノキフラボン、アメントフラボン、ビロベトール、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、プルニン、ナリンギンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0035】
【化5】

式中:
(w)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(x)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(y)R3、R4 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(z)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(aa)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
フラバノノール(ジヒドロフラボノールとも称される)の例は、アグリコン体としての、フスチン、ガルバンゾール、タキシホリン、6-メトキシタキシホリン、ジヒドロケンプフェロール、ジヒドロロビネチン、並びにそれらのグリコシル化体である。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0036】
【化6】

式中:
(bb)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(cc)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(dd)R3 及び R4 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(ee)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(ff)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
イソフラボノイドの例は、アグリコン体としての、ダイゼイン、ゲニステイン、ビオカニン A、ホルモネチン、カヤニン、プルネチン、イリゲニン、ルテオン、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、ダイズイン、ゲニスチン、イリジン、プエラリンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0037】
【化7】

式中:
(gg)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(hh)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(ii)R3、R4 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(jj)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(kk)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
アントシアニンの例は、アグリコン体としての、シアニジン、6-ヒドロキシシアニジン、ペラルゴニジン、オカニン、マルビジン、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、シアニジン-3-o-ガラクトシド、シアニジン-3-o-ルチノシド、ペラルゴニジン、マルビンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0038】
【化8】

式中:
(ll)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(mm)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(nn)R3 及び R4 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(oo)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(pp)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n2+n4 は 5 を超えない。
カルコンの例は、アグリコン体としての、ダビジゲニン、フロレチン、イソリキリチゲニン、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、フロリジン、グリシフィリンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0039】
【化9】

式中:
(qq)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(rr)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(ss)R3 及び R4 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(tt)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(uu)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
オーロンの例は、アグリコン体としての、オーレウシジン、スルフレチン、ヒスピドール、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、6-グルコシド-ヒスピドールである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0040】
【化10】

式中:
(vv)(OR1)、(OR2)、(OR3)及び(OR4)基は、環上のいずれかに存在し、
(ww)R1 及び R2 は、互いに同じ又は異なって、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(xx)R3、R4 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(yy)n1 及び n3 は、互いに同じ又は異なり、0〜5 の数であり、和 n1+n3 は 5 を超えず、
(zz)n2 及び n4 は、互いに同じ又は異なり、0〜4 の数であり、和 n2+n4 は 4 を超えない。
フラバノール(フラバン-3-オール)の例は、アグリコン体としての、カテキン、エピカテキン、フィセチニドール、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、カテキン-7-o-キシロシド、シアニジン-3-o-ルチノシド、ペラルゴニジン、マルビンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0041】
【化11】

式中:
(aaa)(OR1)及び(OR2)基は、環上のいずれかに存在し、
(bbb)R1 は、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アシル基、単糖類又はオリゴ糖類を表し、
(ccc)R2 及び R5 は、互いに同じ又は異なり、ω-置換アシル基、或いは少なくとも 1 個以上のω-置換アシル基、好ましくは 1〜6 個のアシル基、より好ましくは 1〜3 個のアシル基を含む単糖類又はオリゴ糖類からなり、
(ddd)n1 及び n2 は、互いに同じ又は異なり、0〜3 の数であり、和 n1+n2 は 3 を超えない。
ヒドロキシクマリンの例は、アグリコン体としての、エスクレチン、ウンベリフェロン、スコポレチン、フラキセチン、並びにそれらのグリコシル化体、例えば、エスクリン、シコリイン、フラキシンである。
好ましくは、単糖類は、飽和又は不飽和のグルコース、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースであり得る。好ましくは、オリゴ糖類は、下記フラボノイド:チリロシド、オリエンチン、シャフトシド、サポナリン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンの糖成分、又は 1 つ以上の上記単糖類のポリマーであり得る。
【0042】
フラボノイドエステルの製造
本発明のフラボノイドエステルは、技術水準から既知のアシル化法によって合成され得る。アシル化は、近年出願された EP 02292960.9(Cognis France)に記載されているような酵素法を用いて行われ得る。フラボノイドエステルはまた、化学的アシル化法によっても得られる。化学的アシル化剤は、不活性雰囲気の下、無水の適当な溶媒中で用いられる、式 RCOOH の酸、これら酸のハロゲン誘導体 RCOHal、式 RCOOCR の無水物又は式 RCOOR'[式中、R' は C1〜C6 アルキル基である。]のエステルの中から選ばれ得る。適当な溶媒は、トルエン、ピリジン、クロロホルム、テトラヒドロフラン及びアセトンからなる群から選ばれ得る。
【実施例1】
【0043】
ルチンとオクタデカン二酸とのエステルの合成
この反応は、250 ml の回分反応器中で行った。ルチン(0.85 g、1.4 mmol)とオクタデカン二酸(0.97 g、3.1 mmol)を、250 ml の t-アミルアルコールに溶解した。媒体を減圧下(170 mbar)60 ℃で加熱した。発生した蒸気を凝縮し、分子篩(50 g)を充填したカラムを通して反応器に還流した。この処置により、21 時間後の反応器内の水分濃度は低かった(100 mM 未満)。その後、2.5 g の Candida antarctica のリパーゼ(Novozym 435)(7000 PLU/g の活性(ラウリン酸プロピル合成)を有するマクロポーラスアクリル樹脂上に固定されたリパーゼ)を添加した。
70 時間後、酵素をろ過によって回収した。次いで、溶媒の蒸発によって媒体を濃縮した。残渣物質を除去するため、2 種類の系での抽出を利用した。パルミチン酸を除去するためにアセトニトリル/ヘプタン(3/5 v/v)混合物を用い、一方、ルチンの分離は、水/ヘプタン(2/3 v/v)での抽出によって行った。
得られたエステルの 1H NMR は:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):0.76(d, 3H), 1.2(m, 24H), 1.44(m, 4H), 2.17(m, 4H), 3.1-3.5(ブロード、8H), 3.7(d, 1H), 4.45(s, 1H), 4.65(t, 1H), 5.44(d, 1H), 6.19(d, 1H), 6.36(d, 1H), 6.83(d, 1H), 7.5(m, 2H)ppm
であった。
【実施例2】
【0044】
ルチンとヘキサデカン二酸とのエステルの合成
ルチン(0.8 g、1.3 mmol)のヘキサデカン二酸(0.98 g、3.4 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
63 時間の反応後、実施例 1 に記載の液-液抽出による同じ精製処理によって、ヘキサデカン二酸ルチンを回収できた。
得られたエステルの 1H NMR は:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):δ0.75(d, 3H), 1.2(m, 22H), 1.45(m, 4H), 2.16(m, 4H), 3.1-3.7(ブロード、11H), 4.45(s, 1H), 4.64(t, 1H), 5.43(d, 1H), 6.18(d, 1H), 6.36(d, 1H), 6.84(d, 1H), 7.50(m, 2H), 12.6(s, 1H, OH)ppm
であった。
【実施例3】
【0045】
ルチンとアゼライン酸とのエステルの合成
ルチン(0.8 g、1.3 mmol)のアゼライン酸(0.58 g、3.1 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
55 時間の反応後、酵素を濾去した。次いで、溶媒の蒸発によって媒体を濃縮した。エステルを、2 種類の系での抽出によって回収した。アゼライン酸を除去するために水/ヘプタン(2/3 v/v)混合物を用い、酢酸エチルでの抽出によってエステルの回収を行った。
得られたエステルの 1H NMR は:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):δ0.75(d, 3H), 1.24(m, 12H), 1.48(m, 8H), 2.20(m, 8H), 3.15-3.50(ブロード、8H), 3.68(d, 1H), 4.46(s, 1H), 4.65(t, 1H), 5.43(d, 1H), 6.19(d, 1H), 6.37(d, 1H), 6.84(d, 1H), 7.50(m, 2H), 12.6(s, 1H, C5-OH)ppm
であった。
【実施例4】
【0046】
ルチンと 11-メルカプトウンデカン酸とのエステルの合成
ルチン(0.7 g、1.2 mmol)の 11-メルカプトウンデカン酸(0.7 g、3.1 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
64 時間の反応後、酵素を濾去した。次いで、溶媒を蒸発させ、生成物をメタノールに溶解した。エステルを、2 種類の系での抽出によって回収した。酸を除去するために水/ヘプタン(2/3 v/v)混合物を用い、ジクロロメタンでの抽出によってエステルの回収を行った。
得られたエステルの 1H NMR は:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):δ0.76(d, 3H), 1.04(d, 1H), 1.2(m, 24H), 1.5(m, 4H), 1.6(m, 2H), 2.15(m, 2H), 2.28(m, 1H), 2.50(m, 1H), 2.68(m, 2H), 3.1-3.9(ブロード), 4.45(s, 1H), 4.55(m, 1H), 4.65(t, 1H), 5.07(d, 1H), 5.12(d, 1H), 5.28(d, 1H), 5.44(d, 1H), 6.2(s, 1H), 6.37(s, 1H), 6.84(d, 1H), 7.46(m, 2H)
であった。
【実施例5】
【0047】
ナリンギンのオクタデカン二酸によるアシル化
ナリンギン(0.59 g、1 mmol)のオクタデカン二酸(0.98 g、3.1 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
50 時間の反応後、実施例 1 に記載の抽出による同じ精製処理によって、エステルを回収できた。
【実施例6】
【0048】
エスクリンとオクタデカン二酸とのエステルの合成
エスクリン(0.42 g、1.2 mmol)のオクタデカン二酸(0.97 g、3.1 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
50 時間の反応後、実施例 1 に記載の抽出による同じ精製処理によって、エステルを回収できた。
構造を 1H NMR によって確認した:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):1.2(m, 24H), 1.5(m, 4H), 2.2(m, 4H), 3.15-3.55(ブロード、2H), 3.61(t, 1H), 4.11(dd, 1H), 4.34(dd, 1H), 4.84(d, 1H), 6.2(d, 1H), 6.8(s, 1H), 7.3(s, 1H), 7.83(d, 1H)ppm。
【実施例7】
【0049】
エスクリンとチオクト酸とのエステルの合成
エスクリン(0.87 g、2.5 mmol)のチオクト酸(1.23 g、6 mmol)によるアシル化を、実施例 1 に記載したように行った。
70 時間の反応後、酵素を濾去した。次いで、溶媒の蒸発によって媒体を濃縮した。エステルを 2 種類の系での抽出によって回収した。チオクト酸を除去するために水/ヘプタン/アセトニトリル(2/3/0.4 v/v/v)混合物を用い、ジクロロメタンでの抽出によってエステルの回収を行った。
構造を 1H NMR によって確認した:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):1.2-1.9(ブロード、8H), 2.1-2.4(ブロード、4H), 3.2(m, 2H), 3.5(m, 1H), 3.7(m, 1H), 4.12(dd, 1H), 4.35(d, 1H), 4.85(d, 1H), 5.23(d, 1H), 5.33(d, 1H), 6.26(d, 1H), 6.84(s, 1H), 7.33(s, 1H), 7.86(d, 1H)ppm。
【実施例8】
【0050】
UVA 光細胞保護作用、抗酸化作用
UVA 線は表皮を通って真皮まで侵入し、主に、光に敏感な生物学的要素を活性化して、スーパーオキシドアニオン、過酸化水素及び一重項酸素のような ROS の生成に触媒作用を及ぼし、並びに細胞膜を脂質過酸化することによって酸化ストレスを誘発するので、UVA 線に対する細胞保護作用は、ヒトの線維芽細胞を用いた試験によって評価されてきた。これらの酸化ストレス作用を、インビトロで、遊離 MDA(マロンジアルデヒド)及び細胞内 GSH(還元グルタチオン)の濃度を測定することによって評価した(Morliere P., Moisan A., Santus R., Huppe G., Maziere J. C., Dubertret L. : UV-A induced lipid peroxydation in cultured human fibroblasts. Biochim. Biophys. Acta(1991 年)1084, 3 : 第 261〜269 頁)。
【0051】
UVA 照射後に形成される過酸化脂質は、崩壊して、酵素の阻害を伴うタンパク質のような多くの生物学的分子と、突然変異誘発の危険を伴う核塩基との架橋を形成し得るマロンジアルデヒドになる。グルタチオン(GSH)は、酸化ストレス又はある種の汚染物質(例えば、水銀又は鉛)から細胞を保護するために細胞によって産生されるペプチドである。GSH 濃度の増加は、グルタチオン-S-トランスフェーゼ及び解毒酵素の活性を増強する。GSH を、Hissin の方法(Hissin P. J., Hilf R. A fluorometric method for determination of oxydised and reduced Glutathione in tissus. Analytical Biochemistry(1977 年)第 74 巻、第 214〜226 頁)に従って評価する。
【0052】
ヒトの線維芽細胞を細胞増殖培養液(DMEM + FCS)に接種し、37 ℃、5 % CO2 で 3 日間培養した。次いで、細胞増殖培養液を、試験を行う成分を含有する培養液に交換し、37 ℃、5 % CO2 で 2 日間培養した。平衡塩溶液を含む培養液の交換後、培養細胞に UVA 20 J/cm2 を照射した。細胞のタンパク質及び GSH を測定し、上清に放出された MDA を分光光度法で測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
UVA 照射は、MDA の放出及び細胞 GSH の低下を誘発した。ルチンのエステルを用いた線維芽細胞の培養後には、UVA の誘発による MDA 放出及び GSH 低下に対する細胞の強固な防護が得られたのに対し、ルチンは線維芽細胞を極めて不十分にしか防護しなかった。
【実施例9】
【0055】
UVB 光細胞保護作用、抗酸化作用
アラキドン酸カスケードは、皮膚炎の重要なメカニズムである。このカスケードは、種々の因子によって、特に UVB 照射によって誘発され得る。UVB は、ホスホリパーゼ A2(PLA2)の活性化によって炎症反応を誘発し、その結果、細胞膜からアラキドン酸を放出させる。その後、別の特異的酵素(いわゆるシクロオキシゲナーゼ)が、アラキドン酸をプロスタグランジン(PG)と称される活性成分に転換し、PG が細胞から分泌される。特定の皮膚受容器へのある種のプロスタグランジン(PGE2)の固着により、ヒトの肌は赤くなり腫れる。培養したヒト細胞における、細胞膜に対するこれらの UVB 作用は、上清培養液への細胞質酵素(乳酸脱水素酵素、即ち LDH)の放出と関連する。
【0056】
ヒトのケラチン生成細胞を細胞増殖培養液(DMEM + FCS)に接種し、37 ℃、5 % CO2 で 3 日間培養した。次いで、細胞増殖培養液を、試験を行う成分を含有する平衡塩溶液に交換し、培養した細胞に UVB 50 J/cm2(DUKE GL40E ランプ)を照射した。37 ℃、5 % CO2 で 1 日間培養した後、培養液中に放出された LDH 及び PGE2 を測定し、細胞の生存を確認するために蛍光プローブを用いて細胞 DNA を測定した。
【0057】
【表2】

【0058】
UVB 照射は、PGE2 の放出、及び培養液への LDH 活性体の放出によって説明される細胞膜損傷による炎症、並びにケラチン生成細胞数の減少(細胞 DNA の約 77 %の減少)を誘発した。ルチン又はルチンとω-置換脂肪酸とのエステルを伴ったケラチン生成細胞の培養、並びに UVB 照射後、生存細胞は増加し、放出 LDH 及び放出 PGE2 は減少した。しかし、ルチンのエステルは、ルチンの活性投与量の 1/3〜1/100 の低い投与量で有効である。これらの結果は、試験した生成物の抗炎症作用、並びに UVB 照射によって誘発された損傷から細胞を防護する能力を証明する。
【実施例10】
【0059】
ルチンとヘキサデカン二酸とのジエステル(ルチン-C16 二酸-ルチン)の合成
この反応は、250 ml の回分反応器中で行った。ルチン(10 g、16.4 mmol)とヘキサデカン二酸(4.2 g、14.8 mmol)を、250 ml の t-アミルアルコールに溶解した。媒体を減圧下(400 mbar)80 ℃で加熱した。一晩中、発生した蒸気を凝縮し、分子篩(50 g)を充填したカラムを通して反応器に還流した。この処置により、反応器内の水分濃度は低かった(100 mM 未満)。その後、7.5 g のリパーゼ Candida antarctica(Novozym 435)を添加した。
72 時間後、酵素をろ過によって回収した。次いで、溶媒の蒸発によって媒体を濃縮した。媒体は、ルチン(10.4 %)、ヘキサデカン二酸(6.4 %)、ヘキサデカン二酸ルチン(45.1 %)、ヘキサデカン二酸ジルチン(38.1 %)の混合物である。分取 HPLC による精製により、実施例 2 に記載のヘキサデカン二酸ルチン(ルチン-O-(C=O)-(CH2)14-COOH)、ヘキサデカン二酸ジルチン(ルチン-O-(C=O-(CH2)l4-(C=O)-O-ルチン)及びそれらの混合物に分離できた。
得られたヘキサデカン二酸ジルチンの 1H NMR は:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):δ0.75(d, 6H), 1.2(m, 22H), 1.43(m, 4H), 2.13(m, 4H), 3.1-3.7(ブロード、22H), 3.7(d, 1H), 4.45(s, 2H), 4.64(t, 2H), 5.43(s, 2H), 6.18(s, 2H), 6.35(s, 2H), 6.84(d, 2H), 7.50(m, 4H), 12.6(s, 2H, OH)ppm
であった。
【実施例11】
【0060】
親水性及び親油性の溶媒中での溶解性
室温で 1 時間撹拌した後、溶解性を HPLC 法によって測定した。
【表3】

フラボノイドエステル誘導体は、オクチル-ドデカノール、ブチレングリコール又は水のような親油性及び親水性の溶媒中で、ルチンより高い溶解性を有する。
【実施例12】
【0061】
抗ラジカル活性
ラジカル(FR)は、反応性化学種であり、不対自由電子を特徴とする。FR は、ミトコンドリアにおける呼吸鎖のような自然発生的な生物学的メカニズム、又は炎症のような自然の生物学的過程の間、不飽和脂質、ある種のアミノ酸、そして中でも酸素から出現し得る。紫外線又は化学汚染物質のような酸化ストレスはまた、生きている生物の細胞及び組織成分(脂質、タンパク質、糖及び核塩基)の全てに損傷を与える、ラジカルの増加を誘発する。実際、FR 毒性は、酸素濃度によって著しく増強され、老化、並びに癌及び糖尿病などのような深刻な病気の発生におけるキープロセスを構成する。
【0062】
抗ラジカル(抗-FR)活性は、スーパーオキシドアニオン掃去の能力を表すため、生化学的試験によって評価されてきた。スーパーオキシドアニオンは、炎症過程の間に放出されたアラキドン酸からのロイコトリエン合成に従って白血球によって示される、リポキシゲナーゼ活性体から主に発現する(Bouclier M & Hensby CN. Prostaglandines et leucotrienes en physiologie cutanee. Bulletin d'Esthetique Dermatologique et de Cosmetologie, 1986 年、第 17〜22 頁)。
リポキシゲナーゼを、特異的基質(不飽和脂肪酸)及びフラボノイドエステルと共に培養した。次いで、遊離されたスーパーオキシドアニオンの割合を、IC50 を算出するためルミノール発光試験を用いて測定した(2 回の分析結果の平均)。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましい態様において、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸が、1 個以上の極性基を有する飽和又は不飽和の直鎖又は分枝脂肪族 C6〜C22 カルボン酸である、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸とのフラボノイドエステル。
【請求項2】
フラボノイドが、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カルコン、オーロン及びヒドロキシクマリンからなる群から選ばれるポリフェノールのアグリコン体又はグリコシル化体であることを特徴とする、請求項1に記載のフラボノイドエステル。
【請求項3】
極性基が C6〜C22 カルボン酸の末端炭素原子上に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラボノイドエステル。
【請求項4】
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸の極性基が、カルボン酸 COOH、アミド CONR'2 又は CONR'3+S-[式中、R' は、水素原子、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C1〜C6 アルキル基、或いはアリール、アラルキル又はアラルキレン基であり、S- は対イオンである。]、COHal[式中、Hal はハロゲン原子である。]、及び COSH からなる群から選ばれるカルボン酸の誘導体である(好ましくは、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸はジカルボン酸であり、好ましくは、このジカルボン酸は、オクタン二酸、アゼライン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸からなる群から選ばれる。)ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラボノイドエステル。
【請求項5】
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸が、そのカルボキシル基の 1 個においてエステル結合によってフラボノイドと結合するジカルボン酸であり(HOOC-X-C(=O)-O-フラボノイド[式中、X は飽和又は不飽和の直鎖又は分枝 C4〜C20 アルキル基である。])、好ましくは、ω-置換 C6〜C22 脂肪酸が、11-メルカプトウンデカン酸又はチオクト酸であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラボノイドエステル。
【請求項6】
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸の極性基が、チオール又はアルキルチオアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラボノイドエステル。
【請求項7】
ω-置換 C6〜C22 脂肪酸が、ジオール、ジチオール、1,2-ジチアン、1,3-ジチアン又はエポキシドである 2 個の近接した極性基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフラボノイドエステル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のフラボノイドエステルを含む、栄養組成物又は化粧品或いは医薬品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のフラボノイドエステルを含むリポソーム又はマイクロカプセルを含有する栄養組成物又は化粧品或いは医薬品。
【請求項10】
0.0001〜10 重量%のフラボノイドエステルを含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の栄養組成物又は化粧品或いは医薬品。
【請求項11】
紫外線に起因する損傷から皮膚及び頭皮を保護するための美容剤、紫外線に起因するミトコンドリア又は核 DNA の損傷から皮膚及び頭皮を保護するための美容剤、抗炎症薬及び/又は無痛化剤及び緩和剤、皮膚及び頭皮の老化に対する美容剤としての、又は日焼け止め組成物中での、請求項1〜7のいずれかに記載のフラボノイドエステルの使用。
【請求項12】
ヒトの皮膚の代謝及び免疫防御を刺激するため、特に酸化ストレスに対する防御のための製剤の製造、環境ストレス及び汚染物質に対する製剤の製造、皮膚用の抗炎症性ケア製剤の製造、排液剤、静脈強化剤又はスリミング剤の製造のための、請求項1〜7のいずれかに記載のフラボノイドエステルの使用。
【請求項13】
フラボノイドエステルが、最終組成物に基づいて 0.0001〜10 重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項14】
フラボノイドエステルが、リポソーム又はマイクロカプセルとして配合されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の使用。

【公表番号】特表2007−516937(P2007−516937A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515885(P2006−515885)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006281
【国際公開番号】WO2005/000831
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】