フラボノイド含有組成物の製造方法及び使用
本発明は、微粒子、かつ、可溶性の新規形態のフラボノイド、及びそれらの合成に関する。本発明はまた、そのようなフラボノイドを含む新規製剤を包含する。さらに本発明は、該フラボノイド製剤の新規製造方法も含む。本発明は、該フラボノイド製剤の多様な応用にもまた関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月22日に出願の米国仮特許出願第61/253,857号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、微粒子化した、かつ、可溶性の新規フラボノイド、及びそれらの合成に関する。本発明はまた、そのようなフラボノイドの新規製剤及び該フラボノイド製剤の新規製造方法を含む。本発明は、該フラボノイド製剤の多様な応用にもまた関する。
【発明の概要】
【0002】
フラボノイド
抗癌作用をもつと考えられている植物由来薬剤の成分にはフラボノイド及び食物繊維がある(Patel, D, et al., Apigenin and cancer chemoprevention: Progress, potential, and promise, Intl. J. Oncology 2007 Jan; 30(1): 233-45.)。化学的予防は、天然に存在する又は合成した薬剤を用いた癌の予防に焦点を当てている、腫瘍学の一面である。
【0003】
フラボノイドが遊離ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、スーパーオキシドアニオン、紫外線吸収剤、及び脂質ペルオキシラジカルとして作用することが分かってきた。フラボノイド化合物がコラーゲン構造の強化に有効であることもまた知られている。さらに、フラボノイドが抗変異原性、抗炎症性、及び抗ウイルス作用を呈すことも分かってきた。
【0004】
全てのフラボノイドは共通した基本化学構造である、3つの環状分子をもつ。この群に含まれる個々のフラボノイドは、置換基(ヒドロキシ基、メトキシ基、又は糖類)の数及び位置により、互いに異なっている。
フラボノイドは以下の一般式(式I)の構造をもつ。
【0005】
【化1】
【0006】
フラボノイドにはおよそ5,000種類の天然に存在する化合物が含まれる。その他多数の置換が起きる場合もあり、それにより多種のフラボノイドが存在する。
皮膚癌
皮膚癌の発症は、公衆衛生を脅かす世界的に大きな問題である。紫外線(UV)、例えば、太陽紫外線B(UVB)及び太陽紫外線(UVA)の照射が皮膚癌の主要因である。高SPF成分を含む紫外線防止剤の出現及び使用にも関わらず、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、及び黒色腫の発現率は上昇し続けている。皮膚癌はその大部分が全体的に予防可能な癌であるが、生存率を改善するためには、早期での検出及び治療が必須である。現行の紫外線防止剤は、DNA損傷作用をもつUV照射から人々を守るには不十分である。紫外線防止剤の使用は時に、日光に過剰に当たっても問題はないという誤った知識を人々に抱かせる場合もある。
【0007】
研究から、フラボン類が抗酸化、抗変異原性、抗発癌性、抗炎症性、抗増殖性、及び抗進行特性をもつことが示されてきた(Patel, D, et al., Apigenin and cancer chemoprevention: Progress, potential, and promise, Intl. J. Oncology 2007 Jan; 30(1): 233-45.)。加えて、Birtと共同研究者らは、in vivoマウスモデルを用い、UVBを照射する前にアピゲニンを局所投与することで、皮膚癌の発生率が有意に、最大90%まで低減されることを示した(Birt et al., Anti-mutagenesis and anti-promotion by apigenin, robinetin and indole-3-carbinol, Carcinogenesis, June 1986; 7: 959 - 963)。その他の研究者らも、アピゲニンがマウス結腸癌の発症率を低減させる能力をもつことを示している(Wang et al, Cell cycle arrest at G2/M and growth inhibition by apigenin in human cell colon carcinoma cell lines, Molecular Carcinogenesis, 28: 102-110 (2000))。
【0008】
研究者らは、アピゲニンが細胞周期のG1及びG2/M期の可逆的な停止を誘導することを見出した。さらに、アピゲニンが有糸分裂キナーゼp34cdc2の直接的な及び間接的な阻害を含む多数の機序を介して細胞周期の阻害に介在すること、並びに細胞周期阻害剤であるp21WAF1をp53依存的に誘導することを発見した(Lepley DM, et al., The chemopreventative flavonoid apigenin induces G2/M arrest in keratinocytes, Carcinogenesis, 17, 2367-75 (1996))。
【0009】
G1/S及び/又はG2/M細胞周期チェックポイントの制御が失われると、悪性転換及び癌の進行が引き起こされる。細胞周期の開始及び進行の多くは、細胞増殖を促進する癌原遺伝子、及び細胞成長を遅くする又は停止させる機能をもつ腫瘍陽性遺伝子によって制御されている。癌原遺伝子及び/又は腫瘍抑制遺伝子のいずれかに突然変異が生じると、細胞がG1又はG2/M期にとどまる期間が短縮されることにより、G1/Sチェックポイントが損なわれ易くなる。
【0010】
その他の皮膚障害
Kang、Ecklund、Liu及びDatta(Arthritis Research & Therapy 2009, Vol. 11)は、アピゲニンのような食品中の植物由来COX−2及びNF−κB阻害剤の生物学的利用能を高めることが、狼瘡の炎症及びその他のTh17−介在性疾患様乾癬の抑制に有用である可能性があることを報告した。非変異原性であり、食用のフラボノイドであるアピゲニンは、自己反応性Th1及びTh17細胞の拡大に必要とされる自己抗原提示を阻害することにより、狼瘡を抑制する。
【0011】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、アピゲニンを含む、水の不溶性のフラボノイド用の溶媒として、in vivoでの研究に広く用いられてきた。しかしながら、その毒性により、ジメチルスルホキシドはヒトを対象として考えた場合の局所製剤用の溶媒としては好ましくない。皮膚癌に対する局所治療にアピゲニンを用いたほとんど全ての研究では、アピゲニンが水(<0.005(mg/ml))及びその他の水性溶媒に対して非常に低い溶解度を示すことから、溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)が用いられてきた(Li et al, Evaluation of Apigenin and [G-3H], Apigenin and analytical method development, J. of Pharmaceutical Sciences. Vol. 86, No. 6, June 1997)。
【0012】
さらに、多くのフラボノイドは一般的に、水、並びに医薬品、化粧品及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に不溶性である。このため、フラボノイドを局所用組成物の成分として直接使用することは避けられている。従って、局所用、医薬品、腹膜用、栄養補助食品及び医療食品に使用可能な成分を用いることにより、フラボンを含むこれらフラボノイドの生物学的利用能を高める方法が必要とされている。
【0013】
その他の疾患
フラボノイドは典型的なフェノール化合物であるため、フラボノイドは強力な酸化防止剤及び金属キレート剤として作用する。また長い間、フラボノイドが抗炎症、抗アレルギー、肝臓保護、抗血栓、抗ウイルス、及び抗腫瘍原性活性をもつことが認識されてきた。
【0014】
フラボン及びカテキンは、体を活性酸素種(ROS)から保護する、非常に強力なフラボノイドである。体細胞及び組織は常に、通常の酸素代謝の間に生産される遊離ラジカル及びROSによって引き起こされる損傷、又は外因性の損傷によって誘導される損傷に脅かされている。多くの動物モデルにおいて、フラボノイドが抗炎症性活性をもつことが報告されている。アピゲニン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、フィセチンなどのフラボン/フラボノールが、リポキシゲナーゼ(LO)及びシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害活性を持つことが報告されている。Jachak SM. Natural products: Potential source of COX inhibitors. CRIPS 2001; 2(1):12-15。
【0015】
微粒子化の方法
米国特許出願第2010/0047297号で、Petersenは局所化粧品製剤に使用するための、アピゲニンなどの化合物のナノ結晶を開示している。
【0016】
米国特許第5,145,684号でLiversidgeらは、剪断、衝撃、キャビテーション及び摩擦力を生じる機械的な手段により、薬剤をナノ結晶形態にする方法を開示している。
【0017】
米国特許第5,510,118号でBoschらは同様に、剪断、衝撃、キャビテーション及び摩擦力を生じる機械的な手段により、薬剤をナノ結晶形態にする方法を開示している。
【0018】
米国特許第5,510,118号でMullerらは、ナノ粒子懸濁液を生成するための高圧乳化法を開示している。
米国特許第4,826,689号では、水性沈殿液を温度や注入速度の条件を制御しながら、有機液体に溶解した個体の溶液中に注入することによる、個体の非晶質粒子の調製方法が記載されている。これにより粒子サイズを制御することができる。
【0019】
個体材料の水性懸濁液は、機械的な破砕、例えば粉砕によって調製することができる。米国特許第5,145,684号では、水性媒体中に溶解した難溶性化合物懸濁液の湿式粉砕について記載されている。
【0020】
沈殿によって直接得られた結晶分散液は、溶液の振動に影響されやすいことが当該分野で知られている。例えば、機械的な混合、振動、マイクロ波処理及び超音波処理(例えば国際公開第01/92293号を参照のこと)などの、振動を与える様々な方法が当該分野で知られている。振動は、超音波振動を含む多数の技術によって行われる。得られた結晶は通常、1−6ミクロンの質量中央径を有する。
【0021】
米国特許第5,314,506号には、基質を含む溶液の噴流を、基質に対する貧溶媒を含む第二の噴流に衝突させることによる晶析プロセスが記載されている。衝突噴流によって生じる迅速な混合の結果、従来のゆっくりとした晶析プロセスによって形成されるものと比較して、結晶が小さくなる。開示された最も小さい結晶は約3ミクロンであり、大部分は3−20ミクロンの範囲である。
【0022】
欧州特許第275607号には、液状の結晶懸濁液に超音波エネルギーをかける方法が記載されている。ここでは、超音波を予め調製しておいた結晶を粉砕するために使用している。通常、得られた結晶の体積平均径は10−40ミクロンであった。
【0023】
国際公開第03/059319号には、水と混ざらない有機溶媒に溶解した薬剤溶液を、水中油型乳濁液の鋳型に加え、その後、水と混ざらない有機溶媒を蒸発させることによる、小粒子の形成が記載されている。その後、例えば噴霧乾燥によって水を除去し、粉末を得る。
【0024】
米国特許6,197,349号には、結晶化合物を融解させ、この化合物を例えばリン脂質のような安定化剤と混合させ、高圧乳化機を用いて温度を上昇させながらこの混合物を水に分散させ、そして温度を下げることにより、非晶質粒子を形成するプロセスが記載されている。
【0025】
PCT/US2006/020905号でDoseffは、アピゲニン又はその誘導体を用いた炎症の治療方法を開示している。
米国特許出願第2008/0227829号でHammerstoneは、アピゲニンを含む神経性化合物で対象を治療する方法を開示している。
【0026】
米国特許出願第2007/0154540号でParkらは、変形性関節症の治療での軟骨再生剤としてのアピゲニンの使用について開示している。
米国特許出願第2007/0189680号でBing−Huaらは、その他治療薬との組合わせにおける、化学的予防及び化学療法のためのアピゲニンの使用について開示している。
【0027】
米国特許出願第2006/0067905号でLintneraらは、脱毛症の治療のための、血管拡張薬としてのアピゲニンの使用について開示している。
ヒアルロン酸(HA)
ヒアルロン酸は、結合、上皮、及び神経組織に広く分布している、アニオン性の非硫酸化型グリコサミノグリカンである。グリコサミノグリカンの中でも、HAは非硫酸化型であること、ゴルジ体ではなく原形質膜で形成されるため、非常に大きくなる場合があり、その分子量はしばしば数100万にまで達することから特異である。細胞外マトリックスの主要な構成要素の一つであるヒアルロン酸は、細胞増殖及び細胞移動に有意に貢献する。
【0028】
HAなどの多糖類は比較的複雑な炭水化物である。多糖は、グリコシド結合によって連結した多数の単糖によって形成される重合体である。グリコシド結合はその結果、大きく、しばしば枝分かれした、高分子となる。多糖の使用は化粧品及び医学的応用で有用である。例えば、HAは皮膚への応用で、構造安定化充填剤として用いられている。
【0029】
米国特許出願第2005/0271692号でGervasio−Nugentらは、フラボノイド及びヒアルロン酸を含む局所用化粧品組成物を開示している。
米国特許出願第2006/021625号でMorariuは、局所用製剤、及び老化した皮膚の概観を改善するための使用方法を開示している。好ましい構成成分として、アピゲニンなどのフラボノイド及びヒアルロン酸を挙げている。
【0030】
界面活性剤
ポリソルベート(商業的にはTweenとして知られている)は、非イオン性界面活性剤であり、ポリエトキシル化ソルビタンと脂肪酸由来の乳化剤である。それらは精油を水ベースの製品中で安定化させるために、しばしば食品及び化粧品中に用いられている。ポリソルベートは粘性のある、淡黄色の水溶性脂質である。ポリソルベートはまた、乳化させる基質の表面張力を低下させることで、乳化を助ける。ポリソルベートは、ある成分を、通常は溶解しない溶媒に溶解させる能力により認められてきた。ポリソルベートは、水中油型のものを反対に油中水型に分散させる機能をもつ。
【0031】
ポリソルベートは、多価アルコールであるソルビトールをエチレンオキシドと反応させることにより生産される。その後、ポリオキシエチレンソルビタンを、ステアリン酸、ラウリン酸及びオレイン酸のような植物性脂肪及び油から得られた脂肪酸と反応させる。脂肪酸を含む単純な(非PEG化)ソルビタンのエステルである界面活性剤は一般に、スパンと呼ばれている。
【0032】
米国特許第7,329,797号でGuptaは、抗炎症薬としてのアピゲニンを含むフラボノイド、及び乳化剤としてのポリソルベート界面活性剤の使用を含む、抗老化粧品の送達システムを開示している。
【0033】
米国特許出願第2006/0229262号でHiguchiらは、アピゲニンなどのフラボノイドを活性成分として、及びポリソルベートを乳化剤として含む、薬剤耐性細菌による感染の処置を含む、感染の治療用の医薬組成物を開示している。
【0034】
調査研究から、アピゲニンが喘息の発病過程の改善に重要な機能を果たしている証拠がもたらされた。近年の疫学的研究から、フラボノイドの取り込みが高い集団では喘息の頻度が有意に低いことが観察されたことが報告された。
【0035】
前述の点を考慮すると、皮膚の損傷又は日光に曝露された結果生じた皮膚癌の予防及び/又は治療用の局所製剤にフラボンであるアピゲニン及びルテオリンのようなフラボノイドを組み入れること、並びに様々な皮膚症状の治療に有用な皮膚治療用組成物を提供することが強く望まれている。
【0036】
本発明は、微粒子水和物としたフラボノイド及び担体を含む組成物に関する。通常、フラボノイドの水に対する溶解度は1mg/ml未満、又は0.1mg/ml未満である。微粒子フラボノイドの平均サイズは200−500ナノメートルであり、好ましくは、平均サイズが250ナノメートルの粒子である。好ましい態様では、この組成物は医薬組成物であり、かつ、前記担体は薬学上許容可能な担体である。組成物は、ヒアルロン酸、及び、一般的には微粒子の凝集を予防又は減少させる化合物を含む担体、分散剤又は浸透促進剤を含むことができる。一態様では、組成物はコロイド、ナノ分散液又は乳濁液の形態である。組成物は栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品であってもよい。
【0037】
本発明の別の態様は、フラボノイド及び、界面活性剤などの熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を含む組成物に関する。ここで前記組成物は、フラボノイドとその化合物を、前記フラボノイドが前記化合物に溶解する温度で混合する工程によって形成される。通常組成物は、エタノール、イソプロピル及びベンジルアルコールからなる群より選択されるアルコール、エトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドをさらに含む。好ましい態様では、組成物は医薬組成物であり、かつ、前記担体は薬学上許容可能な担体である。組成物が、ヒアルロン酸及び/又は浸透促進剤を含んでいてもよい。一態様では、組成物は乳濁液又はマイクロエマルションの形態である。組成物は、栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品であってよい。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明の組成物及び接着剤を有する第一の面と、第一の面にある組成物と接着剤が浸透しない材料を有する第二の面の、2つの面をもつ基体を含む、フラボノイドの経皮投与用パッチに関する。
【0039】
本発明の別の態様は、フラボノイドをアルカリ金属水酸化物と混合してアルカリ金属フラボノイド塩の水溶液を形成する工程、このアルカリ金属フラボノイド塩の水溶液に酸性化剤を加えてpHレベルを7未満になるまで酸性化してフラボノイド水和物の沈殿を形成する工程、を含むフラボノイド水和物の生産方法に関し、ここで酸性化工程は通常、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件下で行われる。酸性化工程の後に、pHを7未満に調整する工程、及び沈殿をろ過する工程を行ってもよい。その後、沈殿を洗浄し、乾燥することもできる。
【0040】
本発明の別の態様は、フラボノイドを非毒性有機溶媒に溶解して混合物を形成する工程、及びこの混合物に水を添加してフラボノイド水和物の沈殿を形成する工程を含む、フラボノイド水和物の生産方法に関する。ここで水を添加する工程は、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件下で行われる。通常溶解する工程は、有機溶媒の沸点より約20℃低い温度又はそれより低い温度で行う。有機溶媒は、ジメチルイソソルビド、エトキシジグリコール、及びジメチルスルホキシドからなる群より選択することができる。
【0041】
本発明の別の態様は、フラボノイドを水に溶解させたアルカリ金属水酸化物と混合してアルカリ金属フラボノイド塩の溶液を形成する工程、アルカリ金属フラボノイド塩溶液を皮膚科学的に許容可能な担体に添加する工程、及びこの製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpH(例えば4−8)に調整する工程を含む、フラボノイド水和物の局所製剤の形成方法に関する。ここでpHを調整する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維を生産する条件下で行う。
【0042】
本発明の別の態様は、フラボノイドをアルコール中に溶解できるようにする工程、アルコール可溶化フラボノイドを皮膚科学的に許容可能な担体に添加する工程、製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpH(例えば4−8)に調整する工程、を含む、フラボノイド水和物の局所製剤を調製する方法に関し、ここでpHを調整する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維を生産する条件で行う。
【0043】
フラボノイドの局所製剤を調製する方法は、フラボノイドを担体の乳濁液に添加して混合物を形成する工程、混合物が水と同様の粘性になるまで(又は分散可能な粘度になるまで)加熱する(例えば約120°F−170°F)工程、混合物中で微粒子を分散させる工程を含む。通常乳濁液は水中油型若しくは油中水滴型乳濁液であり、かつ、乳濁液は安定化剤、分散剤、若しくは界面活性剤、又は微粒子の凝集を阻害する別の安定化剤を含む。一態様では、分散させる工程は、超音波処理又は高圧乳化により行われる。
【0044】
本発明の別の態様は、フラボノイド粒子と、界面活性剤のような熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成する工程、混合物をフラボノイド粒子が可溶化する温度まで加熱する工程、及びこの溶液を冷却する工程を含む、可溶化フラボノイド組成物の調製方法に関する。好ましい態様では、熱安定性フラボノイド可溶化化合物は、非イオン性界面活性剤である。通常、混合物を加熱しながら撹拌し、最大10重量%のフラボノイド化合物を添加する。好ましい態様では、界面活性剤はポリソルベートである。加熱又は冷却工程の後に、溶液を皮膚科用、経口、注入可能、皮膚パッチ又はエアロゾル担体に添加する工程を行う。通常、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドからなる群より選択される短鎖アルコールを溶液に添加して、粘性の低い溶液を形成する。
【0045】
本発明はまた、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイド、及び角質層及び表皮へのフラボノイドの送達の可能にする担体を含む、治療上有効量の日焼け防止製剤を、皮膚へ適用する工程を含む、日光曝露の効果を低減する及び/又は予防する方法に関する。別の態様において製剤は加えて、日光曝露による紫外線に対してさらに保護を与える鉱物酸化物を含む。
【0046】
別の態様において本発明は、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイド、及び角質層及び表皮へのフラボノイドの送達を可能にする担体を含む、治療上有効量の製剤を、日光により損傷を受けた皮膚に適用する工程を含む、日光曝露の効果を治療する方法に関する。
【0047】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、予防量又は治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、哺乳類での癌の「可能性」を低減する又は癌を治療する方法に関する。
【0048】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、哺乳類の炎症を治療する方法に関する。
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、座瘡、脱毛症、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、及び酒さ、接触性皮膚炎のような、哺乳類の皮膚疾患又は障害を治療する方法に関する。
【0049】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、乾癬、狼瘡、関節炎のような、哺乳類の自己免疫疾患を治療する方法に関する。
【0050】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎/湿疹のような、アレルギー性疾患を治療する方法に関する。
【0051】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量又は予防量の本発明のフラボノイド製剤を投与する工程を含む、哺乳類でのTNFα関連疾患を治療する又はTNFα関連疾患の可能性を低減させる方法に関する。
【0052】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量又は予防量の本発明のフラボノイド製剤を投与する工程を含む、哺乳類でのIL−1β関連疾患を治療する又はIL−1β関連疾患の可能性を低減させる方法に関する。
【0053】
本発明の別の態様は、ビタミンが融解するまで加熱する工程、融解したビタミンにフラボンを溶解してビタミンとフラボンの液体混合物を形成する工程、及びビタミンとフラボンの液体混合物を冷却して、均質な固体混合物を形成する工程を含む、ビタミンとフラボンの均質な固体混合物を形成する方法である。ここでビタミンは、ビタミンB3、ビタミンB5、及び前述したビタミンを少なくとも1つ含む組み合わせからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、未処理のアピゲニン粉末を10,000倍の倍率で観察した場合の結晶形の詳細を示す、典型的な走査型顕微鏡(SEM)像である。
【図2】図2は、未処理アピゲニン粉末の典型的な「体積頻度」粒度分布プロットを示す。
【図3】図3は、未処理アピゲニン粉末の典型的な「微細粒子の積算」の粒度分布プロットを示す。
【図4】図4は、アピゲニン水和物試料の典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。典型的なアピゲニン水和物の形態は、図1に示した未処理試料の形態とは非常に異なる。
【図5】図5は、3回別個に生産した「水相ローション」バッチから得た、粒子サイズ分布プロットを示す。ほとんど全てのアピゲニン粒子がサブミクロンサイズである。
【図6】図6は、3回別個に生産した「水相ローション」バッチから得た、粒子サイズ分布プロットを示す。ほとんど全てのアピゲニン粒子がサブミクロンサイズである。
【図7】図7は、水相ローション中のフラボノイド濃度が1.25%のアピゲニン、ルテオリン、ルチン及びケルセチンの「積算粒度分布」のプロットを示す。
【図8】図8は、水中の1.25%未処理ケルセチン粉末と、実施例2の方法で調整した水相ローション中の1.25%「アピゲニン水和物」の粒子サイズ分布の比較を示す。
【図9】図9は、対照試料とした未処理ポリソルベート80と、熱処理したポリソルベート80試料の化学組成にはほとんど違いがないことを示す質量分析の結果を示す。
【図10】図10は、濃度1.5%のアピゲニンを含む局所製剤を複数回投与した、ヒト組織の表皮、真皮及び皮下組織に沈着したアピゲニンを示す図である。
【図11】図11は、濃度1.5%のアピゲニンを含む局所製剤を複数回投与した、マウス組織の表皮、真皮及び皮下組織に沈着したアピゲニンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、新しい形態のフラボノイド、製剤、保健食品、及び医薬組成物、並びにその製造方法及びその使用に関する。
I−本発明の化合物
いくつかの一般的に存在する植物フラボノイドの化学構造を表Iに示す。
【0056】
【表1】
【0057】
フラボノイドには、フラボン(例えば、アピゲニン、ルテオリン)、フラボノール(例えば、ケルセチン、ミリセチン)、フラボノン(例えば、ナリンゲニン、ヘスペリジン)、フラボノール(又はカテキン)(例えば、エピカテキン、ガロカテキン)、アントシアニジン(例えば、シアニジン、ペラルゴニジン)、及びイソフラボン(例えば、ゲニステイン、ダイゼイン)が含まれる。
【0058】
アピゲニンは、フラボンの構造をもつクラスの化合物であり、化学的には4’,5,7,−トリヒドロキシフラボンとして知られている。アピゲニンは以下の構造式(式II)をもつ。
【0059】
【化2】
【0060】
ルテオリンもまた、フラボンの構造をもつクラスの化合物であり、化学的には3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンとして知られている。ルテオリンは、以下の構造式(式III)をもつ。
【0061】
【化3】
【0062】
アピゲニン及びルテオリンは両方とも、実質的には、水、並びに医薬品、化粧品、及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に対して不溶性である(すなわち、溶解度が1mg/ml未満である)。
【0063】
用語「フラボノイド水和物」は、本明細書で使用する場合、アルカリ金属(例えばNa+又はK+)の形のフラボノイドに酸を添加するか、非毒性の有機溶媒(例えばDMSOではない)に溶解したフラボノイドに水を添加して形成されるフラボノイドの沈殿に関する。好ましくは、この沈殿を、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件で形成する。
【0064】
同様に、用語「フラボン水和物」(例えば「アピゲニン水和物」)は本明細書で使用する場合、塩の形のフラボン(例えばアピゲニン塩)に酸を添加するか、非毒性の有機溶媒(例えばDMSO以外の)に溶解したフラボンに水を添加して形成したフラボン(例えばアピゲニン)の沈殿に関する。好ましくは沈殿を、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件で形成する。
【0065】
本発明の教示は、水に対する溶解度が1mg/ml未満、特に0.1mg/ml未満の難溶性のフラボノイドに適用することができる。
一態様においてフラボノイド水和物は、単離されたもの、すなわち実質的に精製した形態、すなわち95%を超える純度、好ましくは98%を超える純度、最も好ましくは99%を超える純度である。
【0066】
II−フラボノイド水和物微粒子の製造方法
本明細書においては、アピゲニン及び/又はルテオリンのような比較的水に溶けにくいフラボノイドのフラボノイド水和物を生産する方法を開示する。例えば、このフラボン水和物には、アピゲニン水和物、ルテオリン水和物、若しくはその組み合わせ、又は前述したフラボン水和物の内の1つと別のフラボン又はビオフラボンが含まれる可能性がある。これらフラボノイド水和物の沈殿がもつフラボノイドの生物学的利用能は高く、そのため、様々な許容可能な医薬品及び化粧品用担体、例えば水性アルコール溶媒、にフラボノイドを添加することが可能になる。
【0067】
一態様では、フラボノイドをアルカリ金属の成分(例えば、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属塩)と混合してアルカリ金属フラボノイド塩を形成する工程;アルカリ金属フラボノイド塩のpHレベルを、薬剤を使用して7.5以下に調整して(例えば酸性化して)ゲル様のフラボノイドの沈殿を生成する工程;フラボノイド水和物をろ過することによって回収する工程;そしてフラボノイド水和物を洗浄して(例えば、蒸留水などの水を用いて)アルカリ塩及び過剰の酸性化剤を除去する工程;及び、任意に、フラボノイド水和物を乾燥させる工程により、フラボノイド水和物又はフラボンを形成する。
【0068】
微小なサブミクロンサイズの粒子を形成させるためには、酸性化過程を制御することが必要となる。これには、酸性化剤をアルカリフラボノイド塩溶液に迅速に添加し、微粒子が均一に分散するまで混合することが含まれる。酸性化剤のアルカリ塩溶液への混合は、好ましくは1−10℃の温度で、混合時間と沈降時間の比が最小限になるように(好ましくは1−5の比で、最も好ましくは1−2の比で)行う。核形成速度の上昇及び結晶成長速度の制限に、これらの比が寄与する。通常、フラボノイド水和物の微粒子の平均サイズは50−1000であり、好ましくは200−500ナノメートル、例えば平均して250nmである。
【0069】
フラボンの例としては、例えばアピゲニン、ルテオリン、又はその組み合わせが挙げられる。従って、この方法により、アピゲニン水和物、ルテオリン水和物、又はその組み合わせを含むフラボン水和物を調製することができる。
【0070】
アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、並びに前述した水酸化物を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0071】
アルカリ金属塩の例としては、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム)、及び炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム)、並びに前述した塩を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0072】
フラボノイド水和物及びフラボン水和物はそれらの抗癌、抗酸化、抗炎症性、UVからの皮膚の保護、及びその他の望ましい活性により、局所、経口、及び注入製剤への添加剤として非常に有益である。
【0073】
ろ過
予想外にも、溶液からのフラボノイド水和物の沈殿を分離するためのろ過工程が、溶液のpHが<7、好ましくは<6に酸性化されている場合には、界面活性剤/分散剤を添加することなく比較的容易に行えることを発見した。これらの条件では、2ミクロンのフィルター上にほとんどすべてのナノ粒子(又はナノ繊維)が捕捉され、ろ液には相対的にわずかな量のナノ繊維しか出てこない。沈殿過程を、界面活性剤/分散剤存在下で、ややアルカリ性のpHで行った場合、溶液からフラボノイド水和物を分離することが難しくなることが分かった。
【0074】
これまで、ナノ粒子を精製するためにはナノ粒子のろ過が行われてきた。しかしながら、ろ過除去速度が<0.05ml/分×cm2に限られていたため、分散液を約1/5までしか濃縮できなかった。ろ過時間を長くすると、オストワルド熟成及び凝固により粒子が大きくなる。ゲル様フラボノイド水和物の沈殿の濃縮ファクターが1/15の分散液を用いることで、1ml/分×cm2を超えるろ過速度を達成した。
【0075】
ナノ粒子から分散媒体を完全に除去するためには通常、遠心分離、凍結乾燥(フリーズドライ)及び/又は気流噴霧乾燥過程が必要となる。本発明のいくつかの用途/製剤には、フラボン水和物/フラボノイド沈殿を直接、化粧品及び栄養補助食品製剤に添加し、残りの水分含量を完全に除去するさらなる工程は行わない。
【0076】
本発明は、完全に水を除去する必要のない用途について、その後さらに蒸発又は水を除去するための他の過程を行うことなく、分散媒体を除去するために有効な手段についても検討する。本発明以前は、溶液からナノ粒子を回収すること、及び固体の状態でナノ結晶をさらに処理することは、解決の難しい課題であった。本発明は、粒子を回収するため、及びその後の処理のために溶媒を除去するための、新規かつ迅速な技術を提供する。そのため、噴霧乾燥、凍結乾燥及び限外ろ過などの、溶媒及び分散媒体を除去するために一般的な技術を必要としない。
【0077】
機械的な工程を介したナノ粒子の製造
高圧乳化法
高圧乳化(HPH)は、水に難溶性の粒子を含む懸濁液において、粒径がサブミクロンサイズの粒子を調製する機械的な工程である。ナノ分散液を形成する原理は、高圧ホモジナイザー中の高圧によって生成されるキャビテーションに基づいている。粒子の特性、処理圧、及び処理を何回行ったかなどの複数の因子に基づいて、粒子サイズを小さくすることができる。
【0078】
本発明の一態様では、(1)20ミクロン未満のフラボノイド粒子を安定化剤の溶液に分散させて分散液とし、そして(2)次に、所望される大きさのナノ粒子を含むナノ分散液が調製されるまで、この懸濁液を、高圧ホモジナイザーを用いて複数回処理する。ホモジナイザーにかけている間に粒子は、キャビテーション力、強い剪断力、及び粒子間の衝突によって破砕される。ホモジナイザーのギャップ部分では、室温で静圧が液体の蒸気圧よりも低下すると同時に、流体の動圧が上昇する。その後、液体が沸騰し始め、室温で気泡が形成され、そして分散液がギャップから排出される際に気泡が破裂し、正常な空気圧に達する。この破裂力は、微粒子をナノ粒子に破砕するのに十分なものである。下記実施例18を参照のこと。
【0079】
超音波処理
超音波処理による分散及び脱凝集は、超音波キャビテーションの結果として生じる。液体に超音波をかけると、液体中に伝播する音波によって高圧と低圧が交互に起きるサイクルが生じる。これにより、個々の粒子間の引力に機械的なストレスが加わる。液体中に生じる超音波キャビテーションは、最大1000km/時間(およそ600mph)までの高速液体噴流を引き起こす。そのような噴流は粒子間にある液体を高圧で圧迫し、それらを互いに分離させる。より小さい粒子が液体噴流によって加速され、高速で衝突する。このことにより、分散させるためだけでなく、ミクロンサイズ及びサブミクロンサイズの粒子を粉砕するために、超音波が有効な手段となっている。下記実施例17を参照のこと。
【0080】
そのような単純な超音波による処理は、フラボノイドの栄養補助食品及び医薬品両方への応用に有効である。
ナノ粒子を製造するその他の方法としては、米国特許第4,826,689号及び同第5,314,506号に記載されている微小沈殿法;国際公開第01/92293号、同第96/32095号、同第00/44468号、同第00/38811号に記載されている溶媒/貧溶媒法;及び国際公開第98/32095号、同第99/59709号に記載されている溶融乳化法が挙げられる。
【0081】
III−フラボノイド製剤の調製方法
A.微粒子フラボノイド製剤の調製方法
本発明の一態様では、アピゲニンのようなフラボノイドを、水相に可溶な塩の形態で担体に充填し、その後製剤を撹拌しながらpHを下げる。系のpHが下がると、フラボノイド(例えば.アピゲニン)がうまく分散した微粒子として沈降し始める。pHを皮膚科学的に許容可能なレベル、すなわち皮膚に毒性を示さず、かつ、刺激のないレベルに調整する。撹拌を続けることでフラボノイドが大きな結晶を形成することを防ぐこと、及び結晶が凝集することを防ぐことができる。最終的なシステムは、可溶性フラボノイド、及び製剤中に分散したフラボノイド(例えばアピゲニン)微粒子の両方を含む。
【0082】
分散された微粒子の形態は皮膚の層を透過することができ、かつ、溶解したフラボノイド、例えばアピゲニン、を補充するための貯蔵所として利用することができる。これによりフラボノイドが消費されても、フラボノイドの持続した生物学的利用率を維持することができる。
【0083】
本発明の別の態様は、アルコールのような非毒性有機溶媒(DMSO以外)にフラボノイドを溶解する工程;この生成物を担体、例えば皮膚科学的に許容可能な担体、に添加して、フラボノイド含有製剤を形成する工程;任意に、製剤のpHを4−8に調製する工程;及びフラボノイドが分散するまで(例えば、形成工程による凝集の可能性を防ぐように均一な分散液になるまで)組成物を混合する工程を含む、組成物の調製方法である。
【0084】
製剤は、以下:
1)フラボノイド製剤を水性溶媒(エトキシジグリコール及び/又はジメチルイソソルビドなど)に溶解し、局所媒体の成分として添加することができる;
2)アルカリ金属フラボノイド塩を媒体の成分として添加し、その後皮膚科学的に許容可能なpH、通常は中性に近いpH、に酸性化することができる。これにより、可溶化フラボノイドを分散された微粒子フラボノイドと共に得る;
のような、様々な方法により調製することができる。
【0085】
別の態様は方法1と2の組み合わせである。
製剤の成分を決められた順序で若しくは順不同で、順次加えることにより組み合わせることができ、その後混合して混合物を形成する。例えば、水相を形成させるためには通常、水溶性の成分を組み合わせ、そして油相を形成させるためには通常、水に混合することができない成分を組み合わせる。その後、二相を乳化して、混ぜ合わせることができる。あるいは、組成物をワンポット系での反応のように、混合によって調製することができる。
【0086】
組成物の製造方法は、フラボノイドを溶媒に溶解して溶液を形成する工程、及びこの溶液を媒体に添加して製剤を形成する工程を含むこともできる。溶媒の媒体への添加は、例えば、溶解したフラボノイド水和物が媒体中で均一に分散するように、激しく撹拌しながら行うこともできる。
【0087】
溶媒又は溶媒混合物に溶解したフラボノイドを加えることで、特定の製剤中でアピゲニンなどのフラボノイドの溶解限度を超えると、微粒子の分散液が形成される。担体中の分散剤、界面活性剤、及び/又はポリマー増粘剤は、微粒子の凝集を低下させることができる。
【0088】
一般的に、懸濁及び分散形態のアピゲニンなどのフラボノイド微粒子の、媒体中で溶解している形態に対する割合は、製剤のpHレベルをやや塩基性のpH(およそ8のpH(例えば、pH7−9))からやや酸性のpH(およそ4のpH(例えば、pH3.5−5))に低下させることにより、上昇する。
【0089】
フラボノイドをアルコールに溶解して、濃縮されたアルコール可溶化溶液を形成する工程と、濃縮アルコール可溶化溶液を媒体に添加し、その後pHを5−8に調整する工程により、製剤を調製することができる。アルコール可溶化溶液を添加する時に、フラボノイドが十分に均一に分散するように、媒体を混合することが望ましい。任意に、この方法は、添加剤を可溶化溶液及び/又は媒体に添加する工程をさらに含むことができる。
【0090】
乳化担体の粘性を低減させるためのその場所での方法
これまで行われてきた方法では、機械的(湿式粉砕、高圧乳化(HPH))、沈殿などを含む様々な処理方法で、最初にサブミクロンサイズの微粒子を形成する工程が必要であった。さらに、粒子を局所製剤に加える前に液体媒体をサブミクロンサイズの粒子から分離するために、時間がかかり、かつ、高額な、ろ過及び蒸発技術(気流噴霧乾燥、凍結乾燥など)が必要となっていた。
【0091】
本発明の別の態様は、未処理アピゲニン粉末又は別の比較的溶けにくいフラボノイドを、水中油型、又は油中水型乳濁液に直接添加し、そして超音波処理及び/又はHPH技術を用いて処理し、微粒子を分散させる。この方法では、液体混合物の粘性を水の粘性と同等のレベルまで下げるために、乳濁液の超音波処理及び/又はHPH処理を、高い温度で行うことが必要とされる。液体混合物を約120°F−170°Fの温度で超音波処理した場合に、微細なサブミクロンサイズの粒子が形成される。さらに、分散剤、界面活性剤及びその他の安定化剤などの乳濁液の安定化添加剤は、粒子がその後凝集する可能性を阻害することに役立つ。この、その場での処理方法を用いることにより、局所製剤を含む製剤中で粒子をサブミクロンサイズにするための、時間がかかり、かつ、高額な処理工程を省略することができる。実施例20を参照のこと。
【0092】
B.可溶化フラボノイド製剤の調製方法
本発明は、
a)フラボノイド化合物と熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成する工程;
b)フラボノイド化合物の粒子が溶解し、そして得られた混合物が透明な液体を形成する温度まで、混合物を撹拌しながら加熱する工程;及び
c)可溶化フラボノイド溶液を冷却する工程;
を含む、ポリソルベートを含む非イオン性界面活性剤化合物のような、熱に安定で非毒性フラボノイド可溶化化合物を用いて、比較的水に溶けにくいフラボノイドの溶解濃度を実質的に上昇させる方法に関する。
【0093】
その他の実施形態では、工程b)又はc)の後に、可溶化フラボノイド混合物を皮膚科用、経口用、注入用、皮膚パッチ、又はエアロゾル担体に混合する工程を行う。
別の態様では、粘性の低い可溶化フラボノイド溶液を形成させるために、可溶化フラボノイド溶液にエチルアルコールのようなアルコールを添加する工程を行う。可溶化フラボノイド混合物の粘性レベルを低下させるための、その他の好ましい溶媒としては、イソプロピル及びベンジルアルコールなどの短鎖アルコール、及びエトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドが挙げられる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「熱に安定なフラボノイド可溶化化合物」とは、少なくとも200℃までの熱に安定で、フラボノイドを混合する場合の熱処理(加熱)でフラボノイドが溶解し、そして周囲温度まで冷却してもフラボノイドが溶解し続ける化合物である。フラボノイド可溶化化合物は、好ましくは、周囲温度でも長期間フラボノイドが溶解し続けることのできる化合物である。
【0095】
ポリソルベート以外では、本開示の高温法を用いることで、フラボノイドの溶解濃度レベルを上昇させることができるその他の熱に安定な(すなわち200℃以上の熱に安定な)可溶化化合物としては:超分岐又はデンドリマーポリエチレンオキシド重合体(ソルビタンポリエチレンオキシドデンドリマーを含む)、超分岐ポリエチレングリコール、超分岐ポリプロピレングリコール、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0096】
アピゲニン/ポリソルベート80製剤を以下の様に製造することができる。
・アピゲニン粉末と粘性のある液体ポリソルベート80を、約5−10重量%のアピゲニンに対してポリソルベート80を95−90重量%の割合で混合する。混合物の混和を促進するために、少量(5−10重量%)の蒸留水及び任意にアセトン及び/又はエチルアルコールを任意に加える。
・この混合物をよく撹拌して、濃厚なペースト様混和物を形成する。
・次にこの混合物を比較的高い温度(約100−150℃)まで、撹拌しながら徐々に加熱する。加熱と同時に、水及びポリソルベート80中に存在する揮発性成分が蒸発する。
・揮発性成分が除去され、加熱温度が約200−300℃を超えると、固体アピゲニンの全量がポリソルベート80混合物中に溶解して、茶褐色の透明な液体が生じる。
・周囲温度まで冷却すると、粘度の高い茶色の液体が得られる。アピゲニン含量が高いほど、得られる液体の色が濃くなる。
・粘性のあるアピゲニンポリソルベート80液体中のアピゲニン濃度が4.05%の場合、アピゲニン含量は40.5mg/ml又は40,500ppmである。
【0097】
予想外にも、アピゲニン及びその他の比較的水に溶けにくいフラボノイドの溶解度レベルを上昇させるためには、温度レベルを高くする必要があった。
アルコール溶液に溶解したアピゲニン/ポリソルベート80を使用することにより、アピゲニン及びその他の比較的不溶性なフラボノイドを所望の標的部位に送達することができる。本発明は、その他のフラボノイドの濃度レベルを上げるために、界面活性剤のような適正な極性をもつ熱に安定な化合物を、その他のフラボノイドと組み合わせる方法を含む。実施例14及び15は、その他のフラボノイド及びポリソルベートを含む製剤を示す。
【0098】
実施例21では、本発明の製剤は、十分な濃度のアピゲニンを皮膚の表皮及び真皮層に送達した。
III−本発明のフラボノイド製剤
本発明は、多様な応用において使用可能なフラボノイドを処方するための、複数の方法を含む。本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、組成物又は製剤に含まれる成分が医薬品等級である組成物を意味する。
【0099】
表IIに、本フラボノイド製剤を送達する手段を提供する、様々な投与経路及び剤形を挙げる。
【0100】
【表2】
【0101】
製剤は便宜上、単位投与剤形として提示することができ、また当該医薬分野において既知の方法で調製することができる。製剤を、即時型、又は拡散増強化合物の徐放性若しくは制御放出型としてもよい。持続放出システム(徐放型、制御放出型などとしても知られる)の利点は、投与頻度を低下させることができること、及び同じ薬剤のその他の製剤と比較して、薬剤の全身濃度をより長期間一定に保つことができることである。本発明の組成物の適切な用量はその化合物の代謝、及び治療する状態の重篤度により異なる。
【0102】
A.微粒子フラボノイド製剤
アピゲニン及びルテオリンを含む多くのフラボノイドは一般的に、水、及び医薬品、化粧品及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に不溶性である。フラボノイド水和物を形成することで、生物学的利用能を高める、高度に分散した微粒子のコロイド分散液を形成する方法が示される。
【0103】
局所投与
本明細書では、フラボノイドの微細な微粒子を局所製剤中に分散させる方法を含む、局所用製剤にフラボノイドを処方する方法を開示する。
【0104】
本明細書では、ヒトの皮膚及び動物の皮膚の両方を含む皮膚を保護するため及び治療するための局所製剤を提供する。そのような製剤は、十分な量のフラボノイド(例えば、アピゲニン及び/又はルテオリン)微粒子を、使用目的に十分な量(例えば、皮膚の内部に送達され、皮膚癌を予防し及び/又は治療するための生物活性剤として機能するのに十分な量)で含む。所望されるアピゲニン及び/又はルテオリンの具体的な量は、使用するその他の成分の濃度及び型、使用者の皮膚の状態、並びに使用者の皮膚損傷の重篤度及び程度により異なる。
【0105】
製剤を、スプレー、ローション、石鹸、クリーム、ペースト、軟膏、乳濁液(例えば、油中水型乳濁液、水中油型乳濁液、マイクロエマルション、ナノ粒子の乳濁液)、コロイド、懸濁液(例えば、ナノ粒子の懸濁液)、粉末、ゲル、泡、無水組成物など、並びに前述した形態を少なくとも1つ含む組み合わせ、の剤形の局所用組成物とすることができる。製剤を、例えば、フラボノイド水和物(及び局所製剤のその他の活性成分)と皮膚の表面とが接触することを可能にする、任意の形態にすることができる。媒体及び担体、並びに添加剤と名付けた以下のセクションを参照のこと。本明細書で使用する場合、用語「w/o/w乳濁液」とは、水(W)滴粒子を含む油(O)滴粒子が水(W)中に分散している二重乳濁液で、水中油中水型乳濁液とも呼ばれる乳濁液を意味する。本明細書で使用する場合、用語「o/w乳濁液」とは、油(O)滴粒子が水(W)中に分散している、水中油型乳濁液とも呼ばれる乳濁液を意味する。
【0106】
経皮投与
本発明は、比較的不溶性のフラボノイドのナノ粒子を含有している局所製剤を含む、経皮的な薬剤送達法を含む。アピゲニンのナノ粒子を含む水中油型の局所用乳濁液を用いた生体外での皮膚透過試験から、表皮及び真皮層に思いの外高い濃度のアピゲニンが沈着したことが示された。フラボノイド微粒子を用いた一般的な経皮的製剤については以下のセクションBで考察する。実施例21をもまた参照のこと。
【0107】
経口投与
経口投与用にフラボノイドを調製する場合、それらを通常、薬学上許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、医薬製剤又は単位投与剤形を形成する。経口投与用には、フラボノイドを粉末、顆粒製剤、溶液、懸濁液、乳濁液として提示すること、又は、チューインガムから活性成分を摂取するための天然の若しくは合成重合体中に又は樹脂中にフラボノイドを加えることができる。
【0108】
経口投与するフラボノイドを、持続放出用に処方すること、例えばフラボノイドの被覆加工、若しくはマイクロカプセル化することができ、又はさもなければ持続送達用の装置内に加えることもできる。そのような製剤に含まれる活性成分は全体で、製剤の0.01−10重量%である。
【0109】
フラボノイドを含む医薬製剤は、当該分野において既知の方法により、周知の、かつ、容易に入手可能な材料を用いて調製することができる。例えば、フラボノイドは一般的な賦形剤、希釈剤、又は担体を用いて処方することができ、そして、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、エアロゾルなどの剤形に成形することができる。これら剤形の全てを、即時放出型、持続放出型又は腸溶性とすることができる。これらを、経口又は舌下又は口腔送達用のいずれかにすることができる。そのような製剤に好適な賦形剤、希釈剤、及び担体の例としては、充填剤、並びにデンプン、セルロース、糖、マンニトール及びケイ素誘導体のような増量剤が挙げられる。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンのような結合剤を加えることもできる。グリセロールのような湿潤剤、炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウムのような崩壊剤を含んでいてもよい。パラフィンのような分解を抑制するための薬剤を加えることもできる。第四級アンモニウム化合物のような再吸収促進剤を加えることもできる。セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような界面活性剤を加えることもできる。カオリン及びベントナイトのような吸着性の担体を加えることもできる。タルク、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに固形のポリエチレングリコールのような滑沢剤を加えることもできる
本発明の組成物に、セルロース及び/又はセルロース誘導体のような増粘剤を加えることもできる。増粘剤の例としてはこの他に、キサンタンゴム、グァーガム若しくはアラビアゴムなどのゴム、あるいはポリエチレングリコール、ベントンなどが挙げられる。
【0110】
例えば、フラボノイドを含む錠剤又はカプレットに、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムのような緩衝剤を加えることができる。カプレット及び錠剤に、セルロース、予めゼラチン化したデンプン、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、コーンスターチ、ミネラルオイル、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの不活性成分を加えることもできる。フラボノイドを含む硬又は軟ゼラチンカプセルに、ゼラチン、微結晶セルロース、グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、及び二酸化チタンなどの不活性成分、並びに、ポリエチレングリコール(PEG)及び植物油のような液体媒体を加えることもできる。さらに、フラボノイドを含む腸溶性カプレット又は錠剤は通常、セルロースアセテート誘導体で被覆し、胃では崩壊せず、より中性からアルカリ性の十二指腸の環境で溶解するように設計する。
【0111】
フラボノイドを、簡単に経口投与できるようにエリキシール又は溶液として処方することもできる。フラボノイドを含む医薬製剤はまた、水性溶液若しくは水を含まない溶液又は分散液の形、あるいは乳濁液又は懸濁液の形をとることもできる。
【0112】
非経口投与
一般的なフラボノイド微粒子の非経口製剤については、以下のセクションBで考察する。
【0113】
吸入投与
フラボノイドを気道に投与することもできる。吸入又は吹送投与用には、本明細書で開示したフラボノイド組成物を乾燥粉末、例えば、治療薬と、乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物、の形態にすることができる。粉末組成物を例えば、カプセル若しくはカートリッジとして、又は例えば、吸入装置や吹送装置の補助により、そこから粉末を投与することができるゼラチン若しくはブリスターパックを用いて、又は定量式吸入器(MDI)若しくは乾燥粉末吸入器(DPI)を用いた単位投与剤形として提示することができる。
【0114】
エアロゾル又はスポイトを用いて投与する場合には、フラボノイドを水溶液として投与することができる。従って、その他のエアロゾル医薬製剤には例えば、約0.01−10%までの本開示のフラボノイド成分を含む生理学的に許容可能な生理食塩水を含むことができる。液体製剤には、メチルパラベン及びプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムのような保存剤、リン酸及びクエン酸緩衝液のような緩衝液、マンニトール、塩化ナトリウムなどの張性調整剤、及びアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、並びにD&C yellow#10、FD&C yellow#6などの色素を加えることもできる。本発明の実施に当たっては、液体に溶けない又は懸濁することができない、微粉化した固体フラボノイド粒子の形態での乾燥エアロゾルもまた有用である。フラボノイドを、微粉化した粒子を含む散布剤として処方することもできる。
【0115】
吸入により、上気道(鼻)又は下気道に投与するためには、噴霧器若しくは加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達するためのその他の簡単な手段を用いてフラボノイドを簡便に送達する。加圧パックには、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好適な気体などの好適な噴射剤を加えることができる。加圧エアロゾルの場合には、一定量を計測するための弁を設けることで単位用量を決定することができる。製品を、噴霧器を使用することによって送達することもできる。
【0116】
鼻腔内投与用には、点鼻薬、プラスチック製の噴霧器を用いた液体スプレー、又は定量式吸入器を用いて治療薬を投与することもできる。噴霧器の典型的な例としてはMistometer(Wintrop)及びMedihaler(Riker)がある。
【0117】
座剤
さらに、フラボノイドは、直腸用及び膣用座剤などの投与形態にも適している。医療用の座剤は、ココアバター及び植物油から製造された基材などの疎水性基剤;ゼラチングリセリン、及びポリエチレングリコールなどの親水性基材を含む場合がある。
【0118】
B.可溶化フラボノイド製剤
本明細書では、熱に安定なフラボノイド可溶化化合物中で、比較的水に溶けにくいフラボノイドの濃度レベルを高めるために(例えば、周囲温度で約10重量%まで)、溶解濃度を実質的に上昇させる方法を開示する。この可溶化フラボノイドを、許容可能な、局所用、皮下用、経口用、腹膜用、エアロゾル用製剤、及び栄養補助食品に添加することができる。
【0119】
本開示の高温法を用いることで、フラボノイドの溶解濃度レベルを上昇させることができるポリソルベート以外の熱に安定な(すなわち200℃以上の熱に安定な)可溶化化合物としては:超分岐又はデンドリマーポリエチレンオキシド重合体(ソルビタンポリエチレンオキシドデンドリマーを含む)、超分岐ポリエチレングリコール、超分岐ポリプロピレングリコール、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0120】
界面活性剤
ソルビタンの脂肪酸エステル(一般にはスパンと呼ばれる)とそれらのエトキシ誘導体(一般的にはポリソルベートと呼ばれる)は、おそらく最も一般的に使用されている非イオン性界面活性剤であろう。混合ミセルを形成させるために、これらを単独で又は組み合わせて(例えばポリソルベート80とスパン80)使用することができる。ソルビタンエステルは水に不溶性であるが、大部分の有機溶媒には可溶性である(親水性・親油性バランス(HLB)値が低い界面活性剤である)。エトキシ化した生成物は通常水に溶け、かつ、比較的高いHLB値をもつ。これらの非イオン性界面活性剤を単独で又は好適な組み合わせで使用して、所望のHLB値をもつ混合ミセルを形成させてもよい。ソルビタンエステル及びそれらのエトキシ誘導体の主要な利点は、これらが食品添加剤として認可されていることである。それらをまた、化粧品及び医薬調整物に加えることもできる。
【0121】
水への溶解度が1mg/ml未満のフラボノイドの、水に対する溶解濃度レベルを高めるために有用であり、かつ、本発明の高温法に用いるのに有用な非イオン性界面活性剤には、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0122】
最も一般的な非イオン性界面活性剤はエチレンオキシドを基にしたものであり、エトキシ界面活性剤と呼ばれている。これらを複数のクラスに分類することができる。アルコールエトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、脂肪酸エトキシラート、モノアルカオールアミドエトキシラート、ソルビタンエステル及びそれらのエトキシ誘導体、エトキシラート、脂肪族アミンエトキシラート、並びにエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(時に高分子界面活性剤と呼ばれる)。非イオン性界面活性剤の別の重要な類型には、グリコールエステル、グリセロール(及びポリグリセロール)エステル、グルコシド(及びポリグルコシド)及びショ糖エステルのようなヒドロキシを複数もつ生成物がある。アミンオキシド及びスルフィニル界面活性剤は、非イオン性であり、頭部(head group)が小さい(M. J. Schick (ed.): Nonionic Surfactants: Physical Chemistry, Marcel Dekker, New York, 1987)。
【0123】
ポリソルベート
ポリソルベートは、いくつかの医薬品及び食品の調製に用いられている型の乳化剤である。それらはしばしば化粧品に使用されて、水を基にした製品中に精油を可溶化している。ポリソルベートは脂肪酸を用いてエステル化したPEG化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)由来の、油性の液体である。脂肪酸と直鎖ソルビタン(PEG化されていない)のエステルである界面活性剤は、一般的にスパンという名称で知られている。
・ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)
・ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)
・ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)
・ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)
ポリオキシエチレンの後に続く20という数は、その分子中にあるオキシエチレン−(CH2CH2O)−基の総数を指す。ポリソルベートの後ろの数は、その分子のポリオキシエチレンソルビタン部と結合している脂肪酸の型に関するものである。モノラウラートを20、モノパルミタートを60、モノオレアートを80で示しているこの同じ数を、それらのスパン等価物の後にも記している(スパン20、スパン40、スパン60及びスパン80)。
【0124】
本発明は、比較的水に溶けにくいフラボノイドのポリソルベートに対する溶解濃度を上昇させるための方法を含む。これまでに記載してきたように、多くのフラボノイド及び特にアピゲニンは水性の溶液に比較的溶けにくく、そのため、それらの局所剤、医薬品及び栄養補助食品への生物学的利用能は厳しく制限されている。
【0125】
本発明は、界面活性剤、詳細にはポリソルベート80、60、40及び20を用いて、ポリフェノールの水層への溶解度レベルを上昇させる方法を含む。この例では、ポリソルベート20、40及び60は様々な飽和脂肪酸を含む、同様の一連のポリソルベートを示す。脂肪酸の鎖中の炭素の数は、12(ポリソルベート20)から18(ポリソルベート60)に増加する。ポリソルベート80は18個の炭素の鎖長の不飽和脂肪酸(オレエート)を表す。これらの例は全てを含んでいるものではなく、当業者は、これらの型の任意の脂肪酸を含む非イオン性界面活性剤、及び脂肪酸のポリオキシエチレンアルキルエーテルのような、別の型の、その他の界面活性剤である非イオン性界面活性剤の有用性を認識することができる。ドクサートナトリウム若しくはラウリル硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、又はセトリミド若しくは塩化ベンゼトニウムのようなカチオン性界面活性剤もまた、単独で若しくは非イオン性界面活性剤との組み合わせのいずれかで使用することができる。いくつかの比較的水に溶けにくいポリフェノールについては、水相への溶解度が2桁を超えて高まる増強剤が得られている。
【0126】
高濃度のフラボノイドを含む新規製剤は、経口用、吸入用、局所用、腹膜用、座剤及び栄養補助食品への用途に使用することができる。この媒体は特に、自己免疫疾患及び癌への腹膜注入に有用である。溶解濃度が低い有益なフラボノイドを経口送達する手段としては、アピゲニンPS−80の飲料(特にアルコール性の飲料)への添加が有効である。
【0127】
好ましい態様において製剤は、粘性の低い可溶化フラボノイド溶液を形成させるために、エチルアルコールのようなアルコールを含む。可溶化フラボノイド混合物の粘性レベルを減少させるためのその他の好ましい溶媒には、イソプロピル及びベンジルアルコールのような短鎖アルコール、及びエトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドが挙げられる。
【0128】
局所投与
可溶化フラボノイドの局所投与は通常、ローション、クリーム、ゲル、又は軟膏の形態で行われる。
【0129】
フラボノイドの経皮的送達
フラボノイドの非イオン性界面活性剤に対する溶解度レベルを上昇させるための記載の方法により、フラボノイドの浸透を介して、送達速度を制御しながら体循環中へフラボノイドを経皮的送達(TFD)することが可能になる。本製剤は、本質的に低い皮膚への浸透性に関する問題を検討することにより、薬剤の非侵襲的投与を提供する。皮膚は薬剤の浸透に対する優れた障壁である。浸透促進剤を添加して角質層の障壁特性を変化させることにより、薬剤の吸収が促進される。局所、経口、及び腹膜での使用では、ポリソルベート80のような、いくつかの非イオン性界面活性剤は薬理学的に不活性、非毒性、非刺激性、非アレルギー性、無臭、大部分の薬剤及び賦形剤と混合可能であり、かつ、高い溶解特性をもつと考えられている。
【0130】
浸透促進剤
アルコール及び多価アルコール(エタノール、プロピレングリコール)、界面活性剤(ツイン、スパン)、脂肪酸(オレイン酸)、アミン及びアミド(アゾン、N−メチルピロリドン)、テルペン(リモネン)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド)、エステル(ミリスチン酸イソプロピル)を含む様々な型の浸透促進剤が、過去20年間の間に開発されてきた(French E, Potton C, Walters K. Pharmaceutical skin penetration enhancement. In: Walters K, Hadgraft J, editors. New York: Marcel Dekker; 1993. p. 113-44)。
【0131】
マイクロエマルション
皮膚への浸透性を高めることを目的とした、別の製剤方法としては、マイクロエマルションを調製することが挙げられる。マイクロエマルションは、水、油、及び界面活性剤を含み、熱に安定な透明な液体となる。マイクロエマルションの特性としては、光透過性、熱力学的安定性、並びに、疎水性及び親水性成分両方への溶解性が挙げられる。マイクロエマルションは、透明で、安定な、等張性の、油、水及び界面活性剤を含む液体混合物であり、しばしば、補助界面活性剤と組み合わせられる。水相は、塩及び/又はその他の成分を含んでもよく、かつ、「油」は実際には、様々な炭化水素及びオレフィンとの複雑な混合物であってもよい。通常の乳濁液とは異なり、マイクロエマルションは成分を単に混合することで形成され、通常の乳濁液の形成で一般的に用いられる、強剪断力の条件を必要としない。2つの基本となるマイクロエマルションの型には正のマイクロエマルション(水中油型、o/w)及び逆マイクロエマルション(油中水型、w/o)がある。
【0132】
マイクロエマルションによる浸透性の増強は、媒体から皮膚への大きな濃度勾配を生じる、薬剤濃度の上昇によると考えられる。高濃度のフラボノイドを含む非イオン性界面活性剤の溶媒(本明細書に記載した)は、経皮、経口及び腹膜に使用するマイクロエマルションの調製に非常に適している。
【0133】
一態様では、マイクロエマルションは、ポリソルベート80に溶解されたアピゲニン、水、及び補助界面活性剤としてのエチルアルコール、並びにミリスチン酸イソプロプル(IPM)の油相を含有する。この態様は、皮膚への浸透性による局所使用、並びに経口、注入及び経鼻スプレーへの適用を含む。
【0134】
本発明で開示した製剤は、フラボノイドの増強された経皮的薬剤送達の方法論を可能とする。特に注目すべきは、本開示の、非イオン性界面活性剤の混合物に溶解した、アピゲニンなどの比較的水に溶けにくいフラボノイドの製剤である。ヒト及びマウスの皮膚を用いた生体外での皮膚浸透試験では、本開示の非イオン性界面活性剤混合物を使用することで、予想以上に多量のアピゲニンが表皮及び真皮層に沈着したことが分かった。実施例21を参照のこと。
【0135】
経皮パッチ
比較的不溶性のフラボノイドの経皮的薬剤送達には、非イオン性界面活性剤中に溶解したフラボノイドを、比較的揮発性のエチルアルコールのようなアルコールで希釈した薬剤を含む、経皮パッチの使用が有用である。皮膚に使用した場合、無孔性のパッチ外側の層が障壁となって、比較的揮発性のアルコールの揮発を抑制し、これにより、フラボノイドの浸透及び送達を増加させることができる。アルコール(すなわちエチルアルコール、グリコール、エトキシジグリコールなど)、エステル(ジメチルイソソルビドなど)のような、化粧品及び食品用に用いられるその他の溶媒希釈剤は、比較的粘性の高い非イオン性界面活性剤の粘性を低下させ、それにより、皮膚表面に使用した場合に又は経皮パッチに添加した場合に、薬剤が皮膚に浸透する速度と深度が上昇する。特に、皮膚パッチや経皮パッチに有用なものは、フラボノイドのマイクロエマルション製剤を使用することである。この製剤は、水中油型及び油中水型マイクロエマルションを含む。
【0136】
経皮パッチは2つの送達系、リザーバー型及びマトリックス型に分類することができる。送達を制御するためにリザーバー型で膜を使用する以外は、両型の組成は同様である。使用される膜の例としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。マトリックス型製剤では、薬剤を接着剤中に分散/可溶化することができる。一般的に用いられる2つの型の接着剤には、アクリル酸及びシリコーンを用いた材料が挙げられる。アクリル酸系の感圧接着剤の例としてはDURO−TAK(登録商標)シリーズ(Henkel、米国)が挙げられるが、これには限定されない。シリコーン系感圧接着剤の例としてはBio−PSA(登録商標)シリーズ(Dow Corning、米国)が挙げられるが、これには限定されない。いくつかの特定のアクリル酸系及びシリコーン系感圧接着剤についての追加情報を表IIIにまとめた。
【0137】
【表3】
【0138】
当業者には既知の溶媒及び浸透促進剤を組成物中に加えることもできる。使用可能な溶媒/増強剤としては、脂肪酸(オレイン酸)、エステル(ミリスチン酸イソプロピル)、アルコール(エチル及びイソプロピル)及びグリコール(プロピレングリコール、へキシレングリコール)を挙げることができるがこれらには限定されない。その他の成分としては、酸化防止剤(例えばBHT及びBHA)又はキレート剤(例えばクエン酸)を添加することができる。
【0139】
経口投与
本発明の製剤を経口投与することもできる。経口投与用には、ここで開示したフラボノイド組成物を、丸薬、カプセル、懸濁液又は溶液の形態とすることができる。経口投与用には、本開示のフラボノイド組成物を、カプセル、乳濁液、マイクロエマルション、及び水性懸濁液、溶液、分散液、マイクロカプセル、丸薬、粉末及び顆粒を含むがこれらには限定されない、任意の経口的に許容可能な剤形とすることができる。可溶化フラボノイドの一般的な経口製剤については上記セクションAで考察する。
【0140】
非経口投与
本発明の製剤を非経口的に投与することもできる。非経口投与用には、ここで開示したフラボノイド組成物を、生理食塩水のような注入用の溶液又は懸濁液に溶解した形態にすることができる。用語「非経口」は本明細書で使用する場合、静脈内、皮下、筋内、滑液嚢内、胸骨内、病巣内及び頭蓋内注入、又は点滴技術を含む。一般的な製剤としては、乳濁液及びマイクロエマルションが挙げられる。乳濁液を含む注入製剤はしばしば、注入用に、精製水、有機共溶媒、界面活性剤、懸濁剤、保存剤、酸化防止剤及びpH調整剤の混合物を含む。各カテゴリーの成分の例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0141】
共溶媒
プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、植物油、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマワリ油、ナンキンマメ油、ヒマシ油、オリーブ油、モノ−、ジ−、トリ−グリセリド、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタノール、ポリオキシ水酸化ヒマシ油、リン脂質のような中鎖、長鎖脂肪酸のエステル、及びその組み合わせ。
【0142】
界面活性剤
一般的には、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、リン脂質、及びポリソルベートが合成非イオン性界面活性剤として用いられる。
【0143】
懸濁剤
ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びデキストラン。
【0144】
保存剤
エデト酸二ナトリウム、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、メチルパラベン及びプロピルパラベン。
【0145】
酸化防止剤
アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、チオ硫酸ナトリウム。
【0146】
pH調整剤
水酸化ナトリウム、トロメタミン、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、リン酸、酢酸並びにリン酸。
【0147】
吸入投与
本発明の製剤を吸入手段により投与することもできる。吸入投与用には、本明細書で開示したフラボノイド組成物を、フラボノイド成分の微細な液滴を気体に溶解した懸濁液として口腔又は鼻腔に送達するエアロゾルの形態にすることができる。気化器及び吸入装置はフラボノイド成分の送達を促進する。一般的な可溶化フラボノイドの吸入製剤については上記セクションAで考察する。
【0148】
吸入投与
フラボノイドを気道に投与することもできる。
IV−媒体及び担体
フラボノイドに加えて、製剤は、「薬学上許容可能な」又は化粧用又は「皮膚科学的に許容可能な」担体/媒体のような媒体を含む。「薬学上許容可能な担体」は、活性薬剤の薬理学的活性に実質的に悪影響を示さず、その受容者にとって有害でなく、又は受容者を不適切に傷つけることなく、有効量の活性成分を送達するために十分な量を投与した場合に非毒性であり、かつ、担体(希釈剤、賦形剤、及び/又は塩など)は、製剤のその他の成分との適合性をもつ。同様に、「皮膚科学的に許容可能な担体」も同様な性質をもつ。
【0149】
皮膚科学的に許容可能な担体は通常、フラボノイドと化学的に及び物理的に適合する成分であり、十分な保存可能期間をもつ安定な成分であり、そして、活性成分が皮膚(例えば、表皮及び/又は真皮)へ浸透するのを助ける成分である。皮膚科用担体は任意に、使用を簡単にするための成分、及び外観が優れたものにする特性(色、香、感触)をもつ成分を含む。
【0150】
局所製剤の使用目的により、薬剤送達プロファイルに関する製剤の目的は異なる。紫外線防止、抗真菌及び角質溶解製剤用には、薬剤送達及び薬剤の角質層(皮膚の外層)での保持の強化が望まれる。逆に言えば、皮膚の生理機能を修正することを目的とした局所製剤には、皮膚下層での薬剤沈着及び皮膚下層(実際には表皮及び真皮)への浸透が必要とされる。
【0151】
媒体は例えば、希釈剤、分散剤、及び/又は製剤中に含まれるその他の材料(例えば、組成物を皮膚に使用した場合にそれらの拡散を促進するための材料)の担体として作用し得る。媒体のいくつかの例としては、有機成分(アルコール、油など)、水性の溶媒(例えば治療での使用に好適な濃度で、例えば活性フラボン成分が溶解又は分散可能な溶媒)などが挙げられる。
【0152】
より詳細には、媒体としては、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシジグリコールなど)、油(ブドウ種子油、ホホバ油、ココナツ油、ゴマ油、鉱油など)、グリセロール、脂肪酸エステル、ジメチルイソソルビド、並びに前述の担体を少なくとも1つ含む組み合わせ、が挙げられる。それらを、活性成分のコロイド微粒子を所望の濃度で溶解又は分散させるために選択することができる、つまり、許容可能な担体とは、活性成分(フラボノイド及び/又はフラボノイド水和物など)が溶解している、及び/又は微粒子として分散及び懸濁している担体である。
【0153】
媒体の量は、製剤の総重量に基づいて、製剤の99.99重量%以下、具体的には80重量%−99.99重量%にすることができ、かつ、媒体を上で考察した最終製剤として様々な形態のうちのいずれにすることもできる。
【0154】
水及び油に加えて、媒体成分としては、液体の皮膚軟化薬、固体の皮膚軟化薬、溶媒、湿潤剤、増粘剤、粉末、並びに前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。溶媒の例としては、乾燥防止及び/又は乾燥緩和剤としてのエチルアルコール、イソプロパノール、エトキシジグリコール、及びジメチルイソソルビド、及びアセトン、及び/又は皮膚を保護するためのステアリルアルコール、セチルアルコール、アセチル化ラノリンアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラノリン、カカオバター、シアバター、油(例えば、オリーブ油、ヒマワリ種子油、アボカド油、鉱油)、ワセリン、及びミリスチン酸(例えば、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル)、並びに前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0155】
本発明の一態様では、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイドを、フラボノイドが十二指腸で放出されるように腸溶性に処方する。別の態様では、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイドを、シクロデキストリンと共に処方する(例えばアルファ、ベータ又はガンマシクロデキストリン)。
【0156】
V−添加剤
ヒアルロン酸(HA)
真皮構造でHAは、顕著な物理的適応性及び卓越した生物学的適合性を備えた、空隙を充填する、構造を安定化する、そして細胞を保護する分子として機能する。加えて高レベルの粘弾性をもつHA構造は、皮膚での水分量を高レベルに保つのに役立つ。皮膚の水分含量と真皮組織中のHAレベルとの間には強い相関関係がある。皮膚が老化するにつれてHAの物理学的及び生物学的特性が大きく変化すること、特に代謝特性、含量が変化し、皮膚の機械的特性が悪化することが確認されている。皮膚の細胞内構造中に存在するHAの機能を維持することが、健康な皮膚の物理的な概観の保持に寄与すると考えられている。
【0157】
別の側面では、HAのような多糖類分子が、酵素及び酸化(遊離ラジカル)機構によって分解されることが確認されてきた。従って、HAなどの多糖類の分解を予防するのに有用な局所製剤の開発が望まれている。この目的を達成するためにフラボンなどのフラボノイドは、十分に立証されているそれらの抗ヒアルロニダーゼ及び抗酸化特性がこの要求を満たすため有用であり、それにより、その分解に寄与する機構に対抗するHAに望まれる機能の維持に役立つ。
【0158】
さらに、フラボノイド粒子製剤にHAを添加すると、ナノ粒子のゼータ電位が高まることから、HAの添加は粒子の凝集を阻害するのに有用である。加えて、HAは局所製剤の粘性を高めるため、ナノ粒子の層化防止に役立つ。
【0159】
局所的にHAは水分貯蔵特性をもつため膨張剤及び滑沢剤として有用であり、HAを化粧品へ添加すると、目で見て明らかな皮膚状態の改善がもたらされる。使用中、HAは薄くて透明で、粘弾性のある表層を形成し、若々しく健康な皮膚特性、すなわち柔軟性、弾性及び色調、の保持に役立つ。皮膚の水分量を上昇させると、角質層の緊密な構造が膨張し、開放される場合があり、このことにより、本明細書に記載した局所製剤のフラボノイド成分の浸透が増加する。
【0160】
製剤は、特定の添加剤が活性成分に悪影響を及ぼさない限り、添加剤をさらに含む場合がある。製剤の様々な実施形態で使用可能な添加剤のいくつかの例としては、以下のものが挙げられる。
酸化防止剤(例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及び没食子酸プロピル)、
界面活性剤(例えば、相間の界面張力を低下させることのできるもの、及び/又は製剤の安定性を向上できるもの、及び/又は乳化剤として作用し得るもの。ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリン酸、ジメチコーン、シリコーン(シロキサン)界面活性剤、ポリソルベート、ラウレスナトリウムなど)、
皮膚調整剤(例えばシリコーン油など)、
保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムなど)、
湿潤剤又は皮膚軟化薬又は皮膚保湿剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、鉱油、ミリスチン酸イソプロピルなど)
緩衝液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び酢酸緩衝液など)、pH調整剤(トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)、塩酸及びリン酸など
ゲル化剤(ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシルチルセルロース(hydroxyrthyl cellulose)、ポリアクリル酸重合体、及びポロキサマーなど)
ビタミン(例えば、A、B、C、D、E、K、など)、
ミネラル、植物抽出物(例えば、アロエ・ベラ、マンサク、ニワトコ、キュウリ、カミツレ、など)、
抗炎症剤、
皮膚軟化剤、
皮膚保湿剤、
皮膚保護剤、
シリコーン、
鎮痛剤、
皮膚浸透促進剤(プロピレングリコール、トランスキトール、ミリスチン酸イソプロピル)、
着色料(黄色5号など)、
香料(又は香水)、
ロウ(例えば、蜜ロウ、パラフィンワックスなど)、
噴射剤(例えば、圧縮空気、炭化水素(プロパン、ブタン、イソブテンなど)、
紫外線防止成分(例えば、無機及び/又は有機紫外線防止剤、酸化チタン、酸化亜鉛、アボベンゾン、オキシベンゾン、ホモサラート、オクトクリレン、オクチノキサートなど)、又は
前述したものを少なくとも2つ含む組み合わせ。
【0161】
製剤の総重量に基づいて製剤は、紫外線防止成分を0.01重量%−20重量%、具体的には0.1重量%−約10重量%、より具体的には0.5重量%−5重量%含む場合がある。皮膚製品用のそれら媒体は脂溶性であり、すなわち皮膚層へ十分に浸透し、フラボン水和物を皮膚の脂質に富む相に送達することができる。
【0162】
フラボノイドを油/水(「o/w」)及び/又は水/油/水(「w/o/w」)乳濁液として、製剤に負荷することができる。乳濁液は、分散剤、乳化剤、界面活性剤、などを含む場合がある。
【0163】
フラボン水和物が使用者の皮膚に優先的に吸収され、酸化亜鉛及び酸化チタンを含む相は吸収されないが、皮膚表面の外側に紫外線から皮膚を保護する層を形成するように、分散及び/又は可溶化フラボン及び/又はフラボン水和物をコロイド形態の混合物として含む製剤を、酸化チタン及び酸化亜鉛と共に媒体に添加することができる。
【0164】
フラボン及び/又はフラボン水和物用の媒体は比較的単純な溶媒又は分散剤(油及び有機アルコールなど)を含むが、通常担体は、局所使用により貢献する組成物、特に、薬剤を局所に定位させ、かつ、発汗への耐性をもたらす膜又は層を皮膚上に形成し、及び/又は皮膚(例えば、皮膚の表皮下層)への活性成分の送達及び皮膚脂質層への活性成分の浸透を助ける組成物を含むことが好ましいということが知られている。そのような組成物の多くは、ローション、クリーム、スプレー及びゲルの形態をとる。一般的な組成物としては、水及び/又はアルコールを含むローション、皮膚軟化剤(炭化水素油、炭化水素系ワックス、シリコーン油、植物性脂肪及び/又は油、動物性脂肪及び/又は油、海産脂肪及び/又は油、グリセリド誘導体、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール(例えば、多価アルコール、アルコールエステル)、ラノリン(誘導体を含む)、エステル(例えば、多価エステル、ロウエステル)、ステロール、リン脂質など、並びに前述のものを少なくとも1つ含む組み合わせ)が挙げられ、通常は乳化剤(非イオン性、カチオン性又はアニオン性)もまた含まれる。これら同じ一般的な成分を、成分の比率を変えること及び/又はゴム若しくはその他形態の親水性コロイドのような増粘剤を添加することにより、ローションではなくクリームとして、又はゲルとして処方することもできる。
【0165】
一態様において製剤は、溶解及び分散(例えば、微粒子)形態両方のフラボノイドを含む。溶解形態のフラボノイドは皮膚層に浸透して生理活性を示すが、分散させた水和物は、フラボノイドの持続性送達を維持するために、溶解水和物が消費された場合に溶解フラボノイドの濃度レベルを維持させるための貯蔵庫として役立つことができる。
【0166】
製剤の総重量に基づいて、約2.0重量%のアピゲニン及び/又はアピゲニン水和物及び約0.5重量%のアスコルビン酸、約0.5重量%の酢酸トコトリエノール及び約0.25重量%のグリコール酸を含み、その他が媒体成分である、レシチン系水中油型クリームを用いて製剤を調製することができる。
【0167】
別の実施例では、製剤の総重量に基づいて、3.0重量%のレシチン、約0.5重量%のアスコルビン酸、約0.5重量%の酢酸トコトリエノール、約0.25重量%のグリコール酸、並びに全体で約8重量%の酸化亜鉛及び酸化チタンを含み、その他が媒体成分である、レシチン系水中油型クリームを用いて製剤を調製することができる。
【0168】
組成物は任意に、
(i)界面活性剤、ビタミン、ミネラル、植物抽出物、抗炎症剤、植物抽出物濃縮物、皮膚軟化剤、皮膚保湿剤、皮膚保護剤、湿潤剤、シリコーン、皮膚鎮静成分、皮膚浸透促進剤、着色料、香料(香水)、保存剤、pH調整剤、及び前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択される添加剤;及び/又は
(ii)酸化チタン、酸化亜鉛、又は前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ;をさらに含む場合がある。
【0169】
通常、フラボノイド組成物はその組成物の総重量に基づいて、0.01重量%以上のフラボノイド、具体的には1重量%以上、例えば、0.1重量%−10重量%、具体的には0.5重量%−8重量%、より具体的には2重量%−5重量%、を含む可能性がある。製剤はその製剤の総重量に基づいて、0.01重量%以上のフラボノイド(例えば、0.01重量%−20重量%のフラボノイド、具体的には0.05重量%−15重量%のフラボノイド、より具体的には0.1重量%−10重量%のフラボノイド、さらにより具体的には0.5重量%−4重量%のフラボノイド、及び一層さらに具体的には1重量%−2重量%のフラボノイド)を含む可能性がある。
【0170】
本明細書で開示した範囲は、包括的、かつ、合体可能なものである(例えば、「25重量%まで、又はより具体的には0.5重量%−5重量%」の範囲は、「5重量%−25重量%」などの端点と中間値全てを含む)。「組み合わせ」は、混和物、混合物、複合物、反応生成物などを含む。さらに、用語「第一の」、「第二の」などは、本明細書ではいずれの順序、量、又は重要性を示すものではなく、むしろ、ある要素を別の要素から区別するために用いられ、そして本明細書で用語「1つ」及び「1種」は量を限定するものではなく、むしろ、言及した事項が少なくとも1つ存在することを示すものである。接尾辞「(類)」は本明細書で使用する場合、その用語の単数及び複数の両方を含むことを目的とした修飾語であり、これによりその用語が1つ以上含まれることになる(例えば、膜(類)は1つ以上の膜を含む)。本明細書を通じて、「一態様」、「別の態様」、「ある態様」などは、本明細書で記載される少なくとも1つの態様に含まれる態様に関連して記載されるある特定の要素(例えば、特色、構造、及び/又は特徴)を意味し、そしてそれらは、任意にその他の実施形態に含まれる場合がある。加えて当然のことながら、記載された要素を、様々な実施形態中の任意の好適な方法により、組み合わせてもよい。本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリル酸塩」は、アクリル酸及びメタクリル酸系の両方を包含する。
【0171】
【表4−1】
【0172】
【表4−2】
【0173】
栄養補助食品/食品/食品添加剤
本開示発明の微粒子及び可溶化フラボノイド組成物を、単離した栄養素、食品添加剤、遺伝的に改変された「デザイナー」食品、ハーブ製品、並びにシリアル、スープ、及び飲料のような加工品のような、多くの栄養補助食品製品に用いることができる。本明細書で使用する場合栄養補助食品は、疾患の治療及び予防のために、健康に有意な効果をもたらす、任意の非毒性食品抽出物サプリメントである。
【0174】
医療食品
医療食品は、医師の監視下で消費又は体内に投与するように処方される。それらは、認可されている特定の成分に基づいたある特定の栄養所要量の医学的評価が確立されている疾患又は症状に対する、食事の管理を特に目的としている。医療食品を経口で、又は経管で摂取することができる。医療食品は常に、特定の病気をもつと診断された人々に対する特定の栄養所要量を満たすように設計される。本開示発明の微粒子及び可溶化フラボノイド組成物を医療食品中に用いることができる。
【0175】
化粧品
本発明の製剤を例えば、ファンデーション、紫外線防止用製品、日光を必要としない日焼け用製品、クリーム(例えば、保湿クリーム、日焼け用クリーム、皮膚に有益なクリーム、夜用クリーム、皮膚科用クリームなど)、美容液、皮膚に有益なローション、皮膚軟化剤、ゲル、軟膏、口紅、洗顔料、化粧水、マスク、頭髪用製品、爪用製品、並びにその他の化粧品又は用途、を含む化粧品及び皮膚科用製品のような、多くの製品中に使用することができる。
【0176】
VI−ビタミンフラボンの形成方法
本明細書では、ビタミンフラボンの形成方法をさらに開示する。例えば、「ビタミンフラボン」の形成方法は、ビタミンが融解するまで加熱する工程;フラボンを融解したビタミンに溶解して、ビタミンフラボン液体混合物を形成する工程;及びビタミンフラボン液体混合物を冷却して均一な固体混合物を形成する工程;を含む場合がある。さまざまな実施形態では、
(i)フラボンを、アピゲニン、アピゲニン水和物、ルテオリン、ルテオリン水和物、及び前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択することができ;及び/又は
(ii)ビタミンを、ビタミンB3、ビタミンB5、及び前述したビタミンを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択することができ;及び/又は
(iii)そのビタミンフラボンの総重量に基づいて、フラボンを0.1重量%以上、具体的には25重量%以上、より具体的には25重量%以上、及びさらにより具体的には50重量%以上、含む可能性がある。
【0177】
一態様においてビタミンフラボンの形成方法は、ビタミンが融解するまで加熱する工程;フラボンを融解したビタミンに溶解して、ビタミンフラボンを形成する工程;及びビタミンフラボンを冷却する工程;を含む場合がある。
【0178】
トコトリエノールは、ビタミンEファミリーのメンバーである。体にとって必須の栄養素であるビタミンEは、4種類のトコフェロール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)及び4種類のトコトリエノール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)から作られる。
【0179】
組成物中にトコトリエノールを用いている多くの実施形態では、トコトリエノールを天然資源から単離し、そしてトコトリエノールを豊富に含むビタミンE調整剤として製剤に添加している。しかしながら、合成調整物並びに天然のビタミンE及び合成ビタミンEの混合物もまた使用してもよい。有用なトコトリエノールは、例えば、コムギ胚芽油、ふすま、若しくはヤシ油から高速液体クロマトグラフィー用いて単離した、又はオオムギ、ビールの醸造かす、若しくはカラスムギからアルコール抽出及び/又は分子蒸留によって単離した、天然の産物である。本明細書で使用する場合、用語「トコトリエノール」は、これら天然の産物から得られたトコトリエノールを豊富に含む画分、並びに純粋な化合物を含む。いくつかの実施形態で用いたトコトリエノールは、本質的にはトコフェロールを含まない。
【0180】
トコトリエノール及び/又はトコトリエノールを豊富に含むビタミンE調整物とフラボン及び/又はフラボン水和物を媒体中に加えると、フラボン水和物(例えば、アピゲニン及びアピゲニン誘導体)が製剤中のその他成分の効果を増加させるため、特に有効である。トコトリエノールが不飽和側鎖をもつことが、それらが飽和脂肪層をもつ組織をより効率的に浸透することを可能にし、このことが、それらを化粧品にとって潜在的により有用なものとしていると考えられている。さらに、トコトリエノールのフェノール及びヒドロキシ要素がフラボンを可溶化することに寄与している。2つ以上の活性成分を組み合わせは皮膚の脂質に富む層で容易に溶解され、そして紫外線の照射により遊離ラジカルのスカベンジャーが生成される。
【0181】
アピゲニン及びアスコルビン酸(ビタミンC)及び/又はアスコルビン酸誘導体と、トコトリエノール及び/又はアルファ−ヒドロキシ酸との組み合わせは、それらの単独での使用と比較して、又はリポ酸の使用、及び/又はアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体の使用と比較してさえも、予想以上に有効である。
【0182】
本明細書では、上述した方法由来の組成物及び保健食品もまた開示する。
VII−本発明の化合物及び製剤の使用
フラボノイドは、それらが遊離ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、スーパーオキシドアニオン、UV吸収剤、血管拡張剤、抗ヒアルロニダーゼ(ヒアルロニダーゼを阻害することにより、ヒアルロン酸の分解を阻害する)、及び脂質ペルオキシラジカルであることから、複数の治療に使用できる。フラボノイド化合物はまた、コラーゲン構造の強化に有効であることも知られている。さらに、フラボノイドは、抗変異原性、抗血管新生性、抗腫瘍原性、抗炎症性、及び抗ウイルス作用をもつ。抗炎症性作用には、TNF−アルファ、IL−ベータ、COX−2、タンパク質キナーゼであるPKC、iNOS、並びにヘルパーT細胞であるTh1及びTh17の阻害が含まれる。フラボノイド、具体的にはアピゲニンは、p53の刺激因子である。研究者らは、アピゲニンが細胞周期のG1及びG2/M期に、可逆性の細胞周期停止を誘導することを見出した。
【0183】
フラボノイドは単独でも又はその他の予防上及び/又は治療上有効な薬剤と併用しても、ヒトを含む哺乳動物での癌、自己免疫疾患、糖尿病、潰瘍、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、及び肝臓疾患のような最も一般的な疾患の治療又は予防に有効である。この化合物はまた、抗血栓性活性を持つ。
【0184】
本発明は、多様な応用を可能にするための、フラボノイドの複数の処方方法を含む。本発明の化合物、組成物及び製剤は、以下で考察する障害及び疾患の予防及び治療に有用である。本明細書で使用する場合、「治療上有効量」とは、所望の効果を得るために必要な用量である。例えば尋常性乾癬の場合、治療上有効量とは、斑又はプラークの、大きさ又は重篤度を減少させる量である。「予防量」とは、障害又は疾患が生じる「可能性
」を予防する又は低減する用量である。
【0185】
皮膚疾患
本開示は、アピゲニンのようなフラボノイドを、医薬品として意味のある濃度で、皮膚科学的に許容可能なpHの範囲で含む局所製剤の製造方法を提供する。フラボノイドを溶解形態若しくは分散形態(例えば、微粒子)、又はその両方の組み合わせとすることができる。十分なフラボノイドを哺乳動物(ヒトなど)の組織に(例えば、哺乳類の角質組織に)送達できるように、局所用製剤をローション、クリーム、スプレー、皮膚パッチ、経皮パッチなどの形態にすることができる。
【0186】
局所用量
一般的に局所用量は、1−10mg/cm2の範囲、好ましくは1−5mg/cm2、より好ましくは1−3mg/cm2である。用量は、症状及び投与経路により、多様になる。FDAの紫外線防止剤局所試験で用いられている用量は、曝露される皮膚1cm2当たり、2mgである。2009年09月25日に検索した「Re: Tentative Final Monograph for OTC Sunscreen」、Food and Drug Administration (U.S.). 1998-09-11では、身長5フィート4インチ(163cm)、体重150ポンド(68kg)、胴囲32インチ(82cm)の成人が鼠径部を覆う水着を着ている場合、水着で覆われていない体表面に均一に塗布するための「平均的な」量は、29g(およそ1オンス)であると仮定している。これを顔面のみに限って検討すると、平均的な成人の顔への使用量は小さじ約1/4−1/3となる。より大きなヒトに使用する量は、これらの量に従って算出する。
【0187】
通常罹患した皮膚に使用する局所投与量に関しては、皮膚科医は推奨指針として、「指先大(fingertip unit)」と言う語を用いる。指先大1回分はおよそ500mgであり、罹患した面積を覆うのに必要な、推奨できる回数が指示される。例えば、頭皮の乾癬を十分に覆うためには、指先大3回分が必要とされるが、脚部及び足全体には指先大8回分が必要となる。この方法は、より正確な局所投与量を患者指示する手段を提供する。
【0188】
太陽光照射による皮膚損傷の予防及び治療
可溶性のフラボノイド、例えばアピゲニン及び/又はルテオリンは、損傷(光老化)を予防するため又は損傷を受けた皮膚マトリックスを修復するために、皮膚に迅速に浸透、吸収される。下記実施例21に示したように、本発明の製剤は、フラボノイドの効率的な皮膚への浸透を可能にする。
【0189】
ローション及びクリーム媒体中でのアピゲニン及び/又はルテオリンの溶解度が低いため、そのような所望される量のフラボノイドを含む組成物の形成は困難である。一態様において製剤は、十分な量の可溶化フラボノイド水和物をほぼ中性のpHで含むため、皮膚組織の損傷を最小限又は除去するために生体の皮膚マトリックス中に浸透し、また、紫外線及び/又は透過光への曝露によって引き起こされる損傷から生体の皮膚を保護する。局所製剤を患者に、好ましくは患者の皮膚への局所に使用することにより、経口的に(例えば、保健食品として)などにより、投与することができる。紫外線による損傷を予防するために、例えば遊離ラジカル、活性酸素種、及び/又はその他の酸化種を阻害するために有効な量の製剤を投与することができる。
【0190】
その抗皮膚癌活性については、アピゲニンは非常に低い濃度、約50μM未満でさえも十分に作用する。アピゲニンは、前立腺癌、乳癌、肺癌、白血病、甲状腺癌及び肝臓癌を含む様々な癌の主要な特徴である細胞増殖及び血管形成の経過中に、アポトーシス及びネクローシス機構に影響を及ぼすことにより、抗増殖性及び細胞毒性効果を示し、その結果、癌細胞の増殖を阻害する。
【0191】
作用機序
フラボノイド、例えばアピゲニンの主要な作用機序は、p53の安定性を上昇させる能力であると考えられており、フラボノイドがG1及びG2/M期の両方で細胞周期の停止を誘導する効果、及び抗炎症性、抗酸化性、非毒性、及び非変異原性特性をもつことが確認されている。これら細胞周期の停止は皮膚の洗浄又は皮膚からの拡散によってアピゲニンを除去した後には、完全に元に戻すことができる。
【0192】
アピゲニンがG1及びG2/M期の両方で細胞周期の停止を誘導するという事実を考慮すると、アピゲニンの化学予防活性の本質は、DNA損傷及び腫瘍促進剤存在下で生じる細胞周期チェックポイントの内因的な及び人工的な停止を十分に確保することによる、癌の発生及び進行の阻害であると考えられる。日光に曝露する前に、皮膚をアピゲニン及びルテオリンを用いて治療することにより、DNA損傷に反応して通常おこるG1及びG2/M期の細胞の停止期間を延長できる可能性がある。これらのフラボンは、DNA損傷に反応して正常な細胞中で生じるG1期の期間を延長し、あるいは、相当なDNA損傷の存在下でさえも細胞周期の進行が継続される場合には、これらのフラボンは活性化した腫瘍遺伝子を含む細胞のG1期を妨害する。細胞が、DNAに生じた全ての突然変異を十分に修復するためにはG1及びG2/M期での経過時間が重要であるため、腫瘍化過程が遅延又は防止される。
【0193】
日光損傷の効果は生涯にわたって蓄積されるため、ヒト及び動物の全ての癌で最もよく変異を受ける遺伝子である腫瘍抑制タンパク質p53は、患者がアピゲニン及び/又はルテオリンを局所に使用する時点で、既にいくつかの角化細胞中では不活性化されている可能性がある。これらフラボンの作用は、G1期の停止ではp53依存性であり、G2/M期の停止ではp53非依存性であるため、角化細胞でp53遺伝子が既に不活性化されている場合でもアピゲニンは、これら前癌状態細胞の小さい病巣でのG2/M期停止を強め、さらなる変異、転座、及び/又は有糸分裂の際の染色体消失を防止する。加えて、アピゲニン及び/又はルテオリンは、UV−B/A日光照射に反応して生成される遊離ラジカルを捕捉することにより、その保護効果を示すと考えられる。
【0194】
アピゲニンを用いた治療は、UVBによって開始されるアポトーシス反応を高めることができると考えられている。理論に拘束されないが、アピゲニンの化学予防作用は、皮膚癌でのアポトーシス過程における主要因子であるp53の安定性を有意に上昇させることによって、紫外線誘導性アポトーシスを高めるその能力によって説明できると考えられている。そのため、皮膚癌の予防に効果的になるように、アピゲニンを薬学的に意味のある濃度で生体の表皮又は全皮膚層に送達する必要がある(Li B.; Birt D.F.; Pharmaceutical Research, Volume 13, Number 11, November 1996, pp. 1710-1715(6))。
【0195】
本明細書で開示したように、フラボノイド、特にアピゲニン及び/又はルテオリンを含む局所用の組成物は、太陽光(UVA及び/又はUVB)に曝露したことによって生じる皮膚の損傷の予防及び/又は治療に有用である。アピゲニン及び/又はルテオリン組成物はまた、日焼け予防及び治療用の局所組成物に含まれるその他の成分の効果を強化する。
【0196】
使用中、製品は所望の結果を達成するために、単独で又は複合的に投与することができる。いくつかの実施形態では、製剤の一部分として紫外線防止成分を加えることができ、及び/又は紫外線照射を防止又は反射することによって、さらに紫外線の全スペクトルから皮膚を保護する紫外線防止成分を含む膜を形成するように、紫外線防止成分を二次的に使用することができる。
【0197】
アピゲニン及びルテオリンが細胞周期に際して細胞内で機能することから、どちらも日光中の紫外線エネルギーを吸収する細胞の外側で単に障壁として機能するその他の紫外線防止剤と併用することができる。従って、可逆性の細胞周期制御剤であるアピゲニン及び/又はルテオリンの局所使用は、有用、かつ、新規の皮膚癌予防法を示し、そして現在市販されている紫外線防止ローションと連続して、又は組み合わせて使用することができる。
【0198】
これらのフラボン水和物は、それらの抗酸化性、抗炎症性、UVからの皮膚保護及びその他の望ましい特性から、局所製剤に加える添加剤として非常に有益である。従って、アピゲニン及びルテオリンの局所使用は、有用、かつ、新規の皮膚癌の予防又は治療方法を提示し、現在市販されている紫外線防止ローションの前に又はそれらと併用して使用することができる。
【0199】
理論に拘束されないが、この製剤を、例えば、紫外(UV)光又は日光への曝露によって引き起こされる皮膚癌の治療又は予防に用いることができると考えられている。
本明細書では、フラボンを含む組成物、又は皮膚癌及び、子宮頸及び乳癌を含む局所癌の予防及び/又は治療のための局所使用を開示するが、これらには限定されない。組成物は、皮膚層に浸透して、薬学的に有効な量の、例えば皮膚及びその他の局所癌を予防及び治療するためにp53の安定性を高める量の、アピゲニンを含む。
【0200】
酸化防止剤であるアピゲニン及びルテオリンのUVBに対する光防護効果は、それらを適切な媒体中に加えて個別に使用した場合に効果的であると考えられている。フラボン及び/又はフラボン水和物はその他の成分と共に、日焼け及び慢性的な紫外線による損傷から体を保護するために、体自身の防衛機構を効果的に支持する、自然な方法を提供する。天然の酸化防止特性及び抗癌性をもつアピゲニン及び/又はルテオリンを、無機顔料と組み合わせることにより、紫外線による損傷及び皮膚癌のリスクを減少させるための相乗的な、光防護効果が得られる。紫外線防止効果及び皮膚の鎮静効果を高めるために、ビタミンEのような酸化防止剤及び皮膚保湿剤を含むその他の天然の成分を加えて、相乗効果をもつ製剤を製造することができる。
【0201】
本明細書では、フラボノイドと、哺乳動物の角質組織にフラボノイド成分を送達することを可能にする皮膚科学的に許容可能な担体とを含む局所製剤を使用する工程を含む、日光の曝露効果を低下させる及び/又は予防する方法をもまた開示する。局所用化粧組成物は、任意に、2回目、3回目、又はそれ以上適用することができる。
【0202】
癌
癌の化学予防薬に理想的な3つの性質には:1)癌の頻度低下と関連があることが知られている食品中に含まれる天然の化合物であること;2)作用機序が明かであること;及び3)その効果が可逆的であること、が挙げられる。アピゲニン及びルテオリンのようなフラボノイドは3つ全ての基準を満たしていると考えられる。
【0203】
本発明の化合物及び製剤を、癌予防並びに癌治療に用いることができる。製剤は、皮膚癌(光線角化症、黒色腫、基底細胞癌を含む)、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、白血病、甲状腺癌、肝臓癌、及び神経芽細胞腫を含む脳腫瘍の治療又は予防に有用である。
【0204】
その他の皮膚障害の治療方法
本発明の化合物及び製剤は乾癬の治療に有用である。実施例19では、局所製剤が、治療価値をもつ十分な濃度でヒトの皮膚に浸透することが分かった。
【0205】
本発明の製剤及び組成物の局所使用により、治療又は予防できるその他の皮膚科の障害及び関連する疾患/症状には、座瘡、脱毛症、アトピー性皮膚炎/湿疹、皮膚エリテマトーデス、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、及び酒さ、接触性皮膚疾患、乾癬を含む自己免疫疾患、並びに関節炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アピゲニン/フラボノイドの局所投与により優れた生物学的利用能が可能になる。従ってこれらの局所製剤は、費用が安く、かつ、使用量が少なくて済む、ステロイド及び細胞毒性薬の代替品となる。
【0206】
その他の障害の治療方法
本発明の組成物及び製剤は、狼瘡、関節炎、アレルギー、及び喘息のような自己免疫疾患の治療にも使用可能である。アピゲニンなどの食品用の植物由来COX−2及びNF−κB阻害剤の生物学的利用能は、狼瘡、並びに関節リウマチ、クローン病、及び乾癬のようなその他のTh17介在性疾患の抑制、並びにCOX−2を過剰発現している炎症性腫瘍(例えば結腸癌、乳癌)の予防に有効である。アピゲニンは、自己反応性Th1及びTh17細胞の増殖に必要な自己抗原の提示を阻害することにより、狼瘡を抑制する。本発明の製剤は、自己免疫指標/疾患を治療するための、アピゲニン/フラボノイドの新規送達手段を提供する。
【0207】
化合物及び製剤は、神経学的及び神経変性障害の治療にもまた有用である。いくつかの調査研究では、アルツハイマー病を含む様々な神経変性障害におけるアピゲニン及びルテオリンの抗炎症性効果及び神経保護/疾患修飾特性を支持する結果が得られた。
【0208】
別の態様では、本発明の化合物及び組成物はアレルギー性疾患並びに細菌感染症に有用である。
本発明のフラボノイド水和物を用いて治療、予防、又は改善することができるTNFα関連疾患の例には、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、脊椎関節症、炎症性腸疾患、慢性心不全、糖尿病、全身性エリテマトーデス、強皮症、サルコイドーシス、多発筋炎/皮膚筋炎、乾癬、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、パーキンソン病、AIDS認知症複合、アルツハイマー病、抑うつ状態、腐敗症、壊疽性膿皮症、敗血症、敗血症性ショック、ベーチェット症候群、移植片対宿主疾患、ブドウ膜炎、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息、急性膵炎、歯周病、悪液質、癌、中枢神経系損傷、ウイルス性呼吸器疾患、及び肥満が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
本発明のフラボノイド水和物を用いて治療、予防、又は改善することができるIL−1β関連疾患の例には、関節リウマチ、敗血症、歯周病、慢性心不全、多発筋炎/皮膚筋炎、急性膵炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、変形性関節症、細菌感染、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ブドウ膜炎、中枢神経系損傷、ウイルス性呼吸器疾患、喘息、抑うつ状態、及び強皮症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
フラボノイドがIL−4及びIL−13の合成を阻害することから、量及び質に依存するが、フラボノイドの取り込みがアレルギー症状を回復させる、又はアレルギー性疾患の発症を予防することが期待できる(Int Arch Allergy Immunol. 2004 Jun; 134(2): 135-40)。
【0211】
アピゲニンはヒト歯根膜(hPDL)細胞では抗炎症性活性をもち、かつ、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)の作用を含む新規の機序を介して作用する。従って、アピゲニンは宿主の調節剤として、喫煙及び歯垢に関連する歯周病の予防及び治療に有用である(Gil-Saeng Jeong et al,; Anti-inflammatory effects of apigenin on nicotine- and lipopolysaccharide-stimulated human periodontal ligament cells via heme oxygenase-1., International Immunopharmacology, Vol.: 9, Nov. 2009)。
【0212】
別の態様では、本発明の化合物及び製剤は、育毛の促進に有用な可能性がある。調査研究では、アピゲニンがTGF−ベータ1遺伝子の下方制御を介して育毛を刺激することが分かった。
【0213】
当然のことながら、上述した実施形態には多様な変更及び修飾を施すことが可能である。そのため、前述の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明を説明することを目的とするものであり、かつ、全ての均等物を含む以下の請求項によって本発明は定義される。
【実施例】
【0214】
実施例1−未処理アピゲニン粉末
純度が98%より高いことが(HPLCを用いて決定した)添付の「分析証明書」に明示されているアピゲニン粉末を、Actives International(Allendale、N.J.)から得た。この高度に精製されたアピゲニン(商用名Viapure Citrus(登録商標))は、グレープフルーツ(cirtus grandis)の果皮から得られたビオフラボノイドを修飾することにより得られるものである。淡黄色の外観をしたアピゲニン粉末の全てが80番のふるい(米国で標準的なサイズのふるい)を通過し、このことはアピゲニンの大きさが最大でも約200マイクロメートル(μm)であることを示している。したがって、アピゲニンの粒子サイズを約200分の1に小さくすると、粒子サイズは1000ナノメートルになる。
【0215】
実施例2−アピゲニンの溶解度
アピゲニンの溶解試験から、アピゲニンが水にはほとんど溶けないこと、アセトン及びエタノールの両方には僅かに溶解すること(2mg/ml未満)、及びプロピレングリコールにも僅かに溶解すること(<1mg/ml)、並びにエトキシジグリコールに対する溶解度は10mg/mlを上回ることが分かった。ジメチルスルホキシド(DMSO)に対するアピゲニンの溶解レベルが100mg/mlを上回ることが文献によって報告されているが、DMSOは皮膚への強力な浸透剤であると認識されているため、局所使用に好適な成分とは見なされない。
【0216】
実施例3−アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解度
アピゲニンはNaOHの希薄溶液に溶解可能である。表VIに示すように、アピゲニンを溶かす最も有効な溶媒は水酸化ナトリウム溶液であることを実験的に確認した。
【0217】
【表5】
【0218】
同様に、1Mの水酸化カリウム(KOH)溶液及び水酸化リチウム(LiOH)溶液にも、同程度の量の淡黄色のアピゲニン粉末が溶解し、1MのNaOH溶液も同様であった。
【0219】
アピゲニン水和物及び/又はルテオリンを形成するためにまず、アピゲニン及び/又はルテオリン粉末をアルカリ金属水酸化物の溶液に溶解した。アルカリに溶けたアピゲニンのナトリウム塩(pHが8よりも高い水溶液中に含まれる)をクエン酸又は塩酸(HCl)のような酸性化剤を用いて酸性化すると、雲様又は雪様のコロイド状(ゲル様)の沈殿が形成を始め、アピゲニン水和物が形成された。溶液のpHを約5まで下げることによって反応を完了させた。ゲル様の沈殿をろ過し、蒸留水で完全に洗浄して溶解した塩を除去した。沈殿物を圧縮し、気流に曝露することにより、得られたアピゲニン水和物をさらに乾燥させた。アピゲニン水和物の生成についての記載と同様の方法により、ルテオリン水和物を形成した。
【0220】
実施例4−アルコールに対する溶解度
アピゲニン水和物及びルテオリンは、様々なアルコール溶媒に対して僅かに溶解性を示した。これらの発見は、水和されていない状態のアピゲニン及びルテオリンがこれらのアルコール溶媒に本質的に溶けないこととは明確に異なるものであった。僅かな溶解濃度レベルを示すアルコールには、エトキシジグリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びグリセリンが含まれる。溶媒であるジメチルイソソルビドにもまた、アピゲニン及びルテオリン両方の水和物は僅かな溶解濃度レベルを示した。試験した全てのアルコール溶媒で、ルテオリン水和物の飽和溶解濃度レベルがアピゲニン水和物の飽和溶解濃度レベルを上回った。アピゲニンが3つのヒドロキシル基をもつのに対してルテオリンが4つのヒドロキシル基をもつことが、これらの比較溶解度の差に関わることが明らかである。
【0221】
実施例5−ビタミンに対する溶解度
ビタミンB5及びB3がアピゲニン及び/又はルテオリンを可溶化するかどうかを決定するために、固体のビタミンB5及びB3を融解した。驚くことに、ビタミンはアピゲニン及び/又はルテオリンを可溶化した。いくつかのローション製品に融解した液体混合物(ビタミンB3/アピゲニン及び/又はビタミンB5/アピゲニン)を添加すると(例えば、激しく撹拌しながら)、添加した混合物は(担体である)ローション/クリーム中に均一に分散したように見えた。
【0222】
驚くことに、およそ1モルのビタミンB5前駆体(Lotioncrafters、Olga、WAから市販されているD、Lパテノール)と0.75モルのアピゲニン水和物とを反応させることで茶色い粘性のある液体混合物が得られ、これらは部分的に水に可溶性であった。
【0223】
【化4】
【0224】
アピゲニン水和物及びアピゲニンは融解したD、Lパンテノール(およそ65oC)に容易に融解した。これら混合物の粘性を下げるためにエトキシジグリコール又はプロピレングリコール(PG)のようなアルコールに溶解したところ、これらの混合物は、少量のアルコールに容易に溶解した。得られたこれらの溶液を、いくつかの使用可能な皮膚保湿剤及び/又は紫外線防止用ローションに添加した。溶解は比較的容易で、かつ、ローションのpHの僅かな上昇を伴った。融解したD、Lパンテノールにアピゲニンを溶解したものを加えたローションの色は、混合物の総重量当たりのアピゲニン濃度が約1.5重量%の場合、淡黄色であった。D、Lパンテノールにアピゲニン及びアピゲニン水和物を溶解した溶液については、比較的容易に操作を行うことができたことを強調する。同時に、D、Lパンテノールの5重量%水溶液のpHは9.0よりわずかに低く、明かにアルカリ性であることを確認した。
【0225】
得られたアピゲニン/D、Lパンテノール混合物はまた、ジメチルイソソルビド、グリセリン、イソプロピルアルコール、及びアセトンにも可溶性であった。アピゲニン/D、Lパンテノール混合物はブドウ種子油及びホホバ油には不溶性であった。また、アピゲニン/ビタミンB5混合物(ApigB5)の5重量%水溶液のpHは8.0を僅かに超えるものであった。アピゲニン/D、Lパンテノール混合物をpH約6.5までクエン酸の結晶を用いて酸性化した場合、コロイド状で、かつ、高度に分散した、アピゲニン水和物の綿様の沈殿(およそ油の様な粘度の)が現れた。アピゲニン/D、Lパンテノールはアルカリ性の均一な混合物であり、酸性化した場合には容易にアピゲニン水和物に変換されると考えられる。
【0226】
加えて、アピゲニン及び/又はアピゲニン水和物は融解したナイアシンアミド(ビタミンB3)に容易に溶解した。およそ1モルのアピゲニンと2モルのナイアシンアミドを含むこれらの融解混合物を室温まで冷却すると、淡黄色/茶色の固体が形成された。これらの固体は、エトキシジグリコール、プロピレングリコール及びイソプロピルアルコールのようなアルコールに溶解可能であった。固体混合物のナイアシンアミド画分は水に溶けたが、アピゲニン水和物は白色のゲル様(綿のような)の形態に高度に分散することが観察された。この溶液のpHはおよそ6.0で酸性であった。NaOHの希薄溶液を用いて溶液のpHを7.5より高くした場合に、アピゲニン水和物はほとんど完全に溶解した。
【0227】
【化5】
【0228】
融解したナイアシンアミドにアピゲニン水和物を溶解するには、無水アピゲニンを溶解するよりも、やや制御した状態で、かつ、融解温度を少し下げて操作を行った。
【0229】
融解したビタミンB3中に溶解したアピゲニン及びアピゲニン水和物の融解混合物を約40℃−50℃で、約40℃に温めた皮膚保湿剤や紫外線防止用ローション中にしっかりと混合してアピゲニン及びアピゲニン水和物を均一に分散させ、その後固形化した。さらに、アピゲニンの可溶性画分を増加させるために、アピゲニンとビタミンB3の均一な融解溶液を、pHが6.5−8.0になるように添加してもよい。
【0230】
ヒトの皮膚のpHは4−5.6に変化する。皮脂から分泌される汗及び脂肪酸は皮膚表面のpHに影響を及ぼす。皮膚を酸性化することが、病原体及びその他生物の成長の制限又は予防に役立つことが示唆されている。
【0231】
実施例6−グリセリンに対するアピゲニンの溶解度
アピゲニンがナトリウム塩又はカリウム塩のとして、約50mg/mlに達する濃度レベルでグリセリンに溶解することをさらに発見した。アピゲニンはアルカリ性のグリセリン溶液を用いることで可溶化することができるが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの微結晶はグリセリンには溶解せず、溶解したアピゲニンを加えると微粒子が懸濁され、溶液が濃黄色になることが観察された。さらに、アピゲニンのナトリウム塩及びカリウム塩はずっと低い濃度でしかプロピレングリコール中に溶解できず、様々なその他のアルコールに対する飽和濃度も低かった。
【0232】
実施例7−アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解度、及びそれに続く局所担体への混合
アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解レベルが高いことから、ナトリウム及び/又はその他のアルカリ金属イオン含量を最小限に抑えながら、アピゲニンを薬学上許容可能な局所担体中に溶解することができると考えられる。アルカリ性のアピゲニン製剤を酸性化すると、相当量のアピゲニンは微粒子として分散又は懸濁状態に残るが、ごく少量の画分が製剤の成分中に溶解した。
【0233】
一実施例では、濃度が300mg/mlのアピゲニンを含む2モル(M)の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液3.3ミリリットル(ml)を第一の局所担体100グラムに添加すると(表IIIの試料番号1)、最終混合物の総重量を基にしておよそ1重量%のアピゲニンが溶解した局所製剤が得られる。その後塩酸を用いてNaOHを中和することで、僅か0.3重量%の塩化ナトリウムを含む、又は塩化ナトリウム含量が約0.15重量%となる可能性がある、NaOHが0.75Mの製剤が得られる。
【0234】
別の実施例では、濃度が200mg/mlのアピゲニンを含むNaOH溶液0.5mlを、第二の局所用ローション5mlに添加し(表VIIの試料番号2)、濃度がおよそ2重量%のアピゲニンの可溶化を試みた。NaOHの添加により得られたアルカリ性の製剤をその後、クエン酸の微結晶を用いてpHがやや酸性になるまで中和した。クエン酸の添加によって形成されるクエン酸ナトリウムはまた、化粧品の保存料としても有効である。
【0235】
別の実施例では、濃度が75mg/mlのアピゲニン水和物を含むエトキシジグリコール溶液4mlを、第三の局所用ローション96グラム(g)に添加し(表VIIの試料番号3)、好適な局所製剤中にアピゲニンを溶解させようと試みた。第三の局所用ローションのpHは5.5で、これはアピゲニンを含む溶液を添加することによっても変化しなかった。
【0236】
【表6−1】
【0237】
【表6−2】
【0238】
実施例8−未処理アピゲニン粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像
粒子の形態的な特徴を決定するために、未処理アピゲニン粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像を取得した。水に溶解した未処理試料を1−2滴、細孔径が0.4マイクロメートルの、ポリカーボネート製フィルターを用いてろ過し、「注射用蒸留水」(WFI)20滴で洗浄した。ろ液をクリーンベンチ中で少なくとも24時間乾燥させた。各フィルターから得られた試料の画像を走査型電子顕微鏡で取得した。図1は、10,000倍の倍率で観察した未処理アピゲニン粉末の結晶構造を表している、典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【0239】
実施例9−未処理アピゲニンの粒子径
ミー理論(フラウンホーファー理論を包含する)に基づく静的光散乱を用いた粒子径の測定技術を用いて、未処理アピゲニン試料の粒度分布を決定した。図2及び3は、未処理アピゲニン粉末の典型的な粒度分布の「体積分布」及び「微粒子の積算」プロットを示す。未処理試料は1ミクロン未満の粒子の有意な体積を有し、40ミクロン周辺に非常に大きい分布のピークを有する。これら大きいサイズの粒子は、狭い分布幅を有し、このことは粒子サイズが非常に均一であることを表している。いくつかの試料では、重要な画分の粒子径が100nmよりも小さいことが示された。
【0240】
実施例10−アピゲニン水和物の形態
アピゲニン水和物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を取得し、粒子の形態を決定した。実施例8で記載したものと同様の方法を用いた。
【0241】
図4は、アピゲニン水和物試料の典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図4に示した典型的なアピゲニン水和物試料の形態は、未処理試料の形態とは非常に異なる。FTIR及びラマン分光法で化学組成を決定したが、未処理アピゲニンとアピゲニン水和物の間にはどのような差も検出できなかった。このことは、フラボノイド水和物の形成によってなされる修飾が、フラボンの結晶形及び/又は晶癖を変化させ、フラボンの結晶多形を生じている可能性を示唆している。繊維は、測定縦横比が20を上回り、直径が30−500nmであった。
【0242】
実施例11−製造方法の改良
水相ローション(APL)の標準的な製造方法を以下に記載する。溶液温度、酸性化過程での溶液混合速度、酸性化剤添加速度、及びpHを含むHA沈殿条件で、別個の製剤を3つ製造した。
【0243】
一回分が60mlの水相ローション(APL)を3つ個別に調製する基本的なAPLの調製方法は以下の通りである。
・一回分が60mlの各製剤が1.25重量%アピゲニンになるように、未処理アピゲニンを計量する。
・未処理アピゲニンを、600mlのビーカーに入れた300mlの蒸留水に加え、固体/液体スラリーが形成されるように撹拌する。
・1MのNaOH溶液を一定量、上記スラリーに撹拌しながら添加する。アピゲニン粒子の全量が可溶化するまで、十分な量を添加する。これにより、可溶性のアピゲニンナトリウム塩が形成される。
・可溶化アピゲニン溶液に氷片を加えて温度を約5℃下げる。
・クエン酸の希薄溶液を調製し、これを直ちに激しく撹拌しながら、アルカリ性の可溶化アピゲニン溶液に加え、pHレベルを約4−6にする。この酸性化過程でのpHが約6よりも低い場合には、粘性の低い、ゲル様の沈殿が形成される。
・次に、ゲル様の沈殿物(アピゲニン水和物)を円盤状の比較的多孔性(約2ミクロン)のろ紙を用いてろ過する。この沈殿過程は比較的容易に迅速に行うことができ、透明で粒子を含まないろ液が得られる。
・これとは別に、水相ローション(APL)の残りの水溶性成分を水に溶解し、試料30ml中に、2%のヒアルロン酸、2%のグリセロール、2%のビタミンB5及び5%のビタミンB3を含む試料を得る。
・上記の30ml溶液に、0.75グラムのアピゲニンを含むアピゲニン水和物を添加する。次にこの混合物を、蒸留水を用いて60mlのレベルまで希釈する。
・その後60mlの溶液を約120°Fのレベルまで加熱し、そしてQSonics S−4000超音波処理機を用いて、1分間、95%の振幅レベルで超音波処理する。10秒間超音波処理を行った後5秒間、この超音波処理過程を「一時停止」する。
・超音波処理を行って得られた混合物を、20ccの空気を含まない調剤用チューブに入れた。
【0244】
粒度分布試験
別個に3つ調製した製剤からの試料を20ccの空気を含まない調剤用チューブに入れ、以下のように分類した。
1.バッチ1:APL−19
2.バッチ2:APL−20
3.バッチ3:APL−21
4.バッチ1:APL−22
同じバッチ由来のAPL-19及びAPL-22の両方は、粒度分布(PSD)測定装置及び用いた解析方法への変動性/感受性を確認する目的で用いた。
【0245】
調製した試料をPSD解析にかけた。加えて、粒子の大部分がサブミクロンサイズの範囲にあったため、ナノ粒子のゼータ電位も同時に測定することができた。
3つの別個のバッチ由来の4つの試料(APL−19〜APL−22)の粒度分布の分析測定を、図5及び6にまとめた。APL−19及びAPL−22は同じバッチ由来である。図5及び6の両方に示したように、ほぼ全ての粒子がサブミクロンサイズである。同じバッチ由来の試料であるAPL−19とAPL−22は、ほとんど同一の波形をもつ。このように分布が同様であることから、この分析装置及び操作方法による測定結果が保障される。
【0246】
図5に示したPSDは、試料APL−20以外、粒子サイズが約100nm及び300−400nmの2峰性の分布を示している。約250nmを境に2峰性に分布している理由は推測する必要がある。試料APL−20は約225nmに1つのピークをもち、このことは、その他の試料が示した2峰性分布がその中間に集中して、単一のピークを生じたのではないかと考えられる。
【0247】
図6の「積算微粒子体積」の波形は粒度分布と同様に、4つの試料間での一致を示している。特に、全試料中の粒子の半分が230nm未満であることを示している。試料APL−20以外では、約20%の粒子が100nm未満である。試験した4つの試料のゼータ電位の結果を表VIIIにまとめた。ゼータ電位試験の約5日前に試料を調製した。全ての結果は、粒子が約40mvの不電荷をもつことを示している。一般的に、25mvを超える負又は陽の電荷をもつ粒子は互いに反発する傾向にあり、そのため、凝集する可能性が最小限となる。
【0248】
【表7】
【0249】
実施例12−本開示の方法を用いた、その他のフラボノイド製剤
実施例11に概略を示した方法により、フラボノイドの水相ローション(APL)をいくつか調製した。濃度1.25%のフラボノイド(アピゲニン、ルテオリン、ルチン及びケルセチン)を含む水相ローション(APL)の粒度分布の積算を図7に示す。APLはその他の成分として、1%のヒアルロン酸、1%のグリセロール、1%のビタミンB5、2.5%のビタミンB3、及び緩衝液を含む。平均粒子サイズは全て、400nm未満である。
【0250】
図8は、水に溶解した1.25%の未処理ケルセチン粉末と、実施例2に概略を示した方法で調製した水相ローションに溶解した1.25%アピゲニン水和物との粒度分布の比較を示している。有意に、未処理粉末と比較して、水相ローションに溶解したケルセチン水和物の平均粒子サイズ(約400nm)は1桁以上小さくなっている。
【0251】
APLに溶解したいくつかのフラボノイド水和物を水で30:1の割合で希釈した場合の定性的評価を表IXに示す。しばらく置いた後に沈殿物の沈降が見られない場合には、水相ローション中にサブミクロンサイズのフラボノイド粒子が含まれていることの証拠となる。
【0252】
【表8】
【0253】
実施例13−ポリソルベートに対する溶解度
アピゲニン及びポリソルベート80から得られる製品を「A/P80」とする。A/P80を以下のように形成した。
・未処理アピゲニン粉末及び粘性のある液体のポリソルベート80(PS80)を約5−10重量%のアピゲニンに対して95−90重量%ポリソルベート80の割合で、少量の蒸留水、及び任意にアセトン及び/又はエチルアルコールと共に、ビーカー中で混合した。
・次にこの混合物をよく撹拌し、粘性の高いペースト様混和物を形成した。
・その後混合物を、撹拌しながら、比較的高い温度まで徐々に加熱した(例えばガスの炎の上で)。水及びポリソルベート80に含まれる揮発性成分が蒸発したら、加熱を終了した。この加熱過程は、加熱によって生じる泡によって混合物がビーカーから吹きこぼれないように、注意深く行った。
・揮発性成分が除去され、温度が約200−300℃を超えると、ポリソルベート80中に固体のアピゲニンの全量が溶解した、透明な濃茶色の液体が得られた。
・周囲温度まで冷却すると、粘性のある、透明な茶色の液体が得られた。アピゲニン含量が高いほど、茶色の色が濃くなる。
【0254】
既に出版されている溶解度の結果に従って算出した、水、エチルアルコール及びポリソルベート80に対するアピゲニンの溶解度を、以下の表Xに示す。
【0255】
【表9】
【0256】
A/P80中のアピゲニン濃度を、HPLC−MSにより測定した。粘性のあるA/P80液体中のアピゲニン濃度が4.05%であると算出されたことから、アピゲニン含量は40.5mg/ml又は40,500ppmと言える。
【0257】
以下の段落は、A/PS80に起因する、実験的な観察の結果を示す。
・標準的なアピゲニン水和物のローション(十分な濃度のナノ粒子を含む)にA/PS80を添加すると、飽和溶解濃度レベルが上昇した。溶解レベルの上昇は0.2ミクロンフィルターを通したろ液を用いた比色試験により、定性的に決定した。
・ピュレル(広く用いられている殺菌性の液体)にA/PS80を添加すると、ピュレルに含まれるエチルアルコール分が高いことから、アピゲニンの溶解レベルが上昇する。ポリソルベート80を用いた場合のアピゲニンの溶解レベルは、アピゲニン水和物及び未処理アピゲニンの両方で有意に上昇した。
・A/PS80をピュレルに添加し、その後、実施例11のアピゲニンローションに使用した実験は非常に効果的であった。ここでは、エチルアルコールの利点である浸透性及び溶解性(エチルアルコールは皮膚を乾燥させる傾向になるため、使用後すぐに蒸発させる)を利用するために、その後、皮膚の再保湿を助ける我々のアピゲニン製剤を使用する。
【0258】
LCMS(液体クロマトグラフィー−質量分析)を用いて決定した、選択した溶媒中のアピゲニン濃度(重量%)を表XIに示す。
【0259】
【表10】
【0260】
さらなる試験により、アピゲニンを含むPS80を約250℃−300℃に達するまで加熱した後にも、分解生成物は本質的に生じなかったことを確認した。
図9は、AP80溶液と比較した加熱処理前のPS80の統計分析を示す。対照試料と本発明の試料との間にほとんど差が見られなかったことは、界面活性剤が分解されなかったことを示している。図9では、検出された各構成成分を点で表している。PS80は重合体であり、それ自体が多くのオリゴマーを示している。このことは、多数の成分又は点がプロット上にあることを意味している。×は、統計的にAP80試料の特徴的な質量特性の指標である。非常に少ない質量特性が観察されたことは、PS80が有意に分解されていなかったことを意味している。観察された×の数が少ないことは、対照と本発明の試料との間の差が僅かであることを表している。
【0261】
実施例14−さらなるフラボノイドポリソルベート製剤
ポリソルベート80を用いた試験を、アピゲニン以外のいくつかのフラボノイド化合物についても行った。ポリソルベート80を用いた溶解度試験用に選択したフラボノイドの化学的及び物理的特性を表XIIに示す。
【0262】
【表11】
【0263】
ポリソルベート80を用いた、様々なフラボノイドの溶解度試験の結果の概要を表XIIIに示す。
【0264】
【表12−1】
【0265】
【表12−2】
【0266】
実施例15−高温処理法を介した、ポリソルベート80以外のポリソルベートに対する溶解度。
非イオン性界面活性剤は、それらがソルビタン、ショ糖、及びグリセリンのような多価アルコールの脂肪酸エステルであるため無害だと考えられており、そのため、化粧品及び食品に広範囲に用いられている。そのため、実施例13に開示した高温処理法を介して、飽和溶解濃度を上昇させるために好適な、界面活性剤を構成している非イオン性ポリソルベートのいくつかを評価することにした。
【0267】
脂肪酸を用いてエステル化したPEG化ソルビタン(ソルビトール誘導体)を含む、いくつかの非イオン性界面活性剤を表XIVに示す。試験した全ての界面活性剤は、200℃を超える温度でも安定を維持するという基準を満たした、油っぽい液体であった。同様にアピゲニンを含む試験した全てのフラボノイドは、融点が200℃を超えることを基準に選択した。
【0268】
温度レベルを200−300℃を超えて上昇させると、フラボノイドのスラリー混合物の粒子溶解度及び色(濃茶褐色)の両方が変化することが観察された。
非イオン性界面活性剤を、HLB(親水親油バランス)値に従って昇順に表XIVに挙げた。HLBは、界面活性剤の親水性(「水に溶けやすい」)及び疎水性(「水に溶けにくい」)群の関係についての経験的表現である。HLB値が高いほど、その界面活性剤はより水に溶けやすい。主要なものはローション(水中油型乳濁液)又はクリーム(油中水型乳濁液)である。最も一般的な型の乳濁液は水中油型(o/w)であり、これらはしばしばHLB値が高い、好ましくは12−16の界面活性剤を必要とするが、油中水型乳濁液(w/o)はHLB値が低い、好ましくは7−11の界面活性剤を必要とする。HLB値が10を超える界面活性剤は油溶性であるが、HLB値が10未満の界面活性剤は水溶性である。
【0269】
表XIVに示したように、スパン20は油中水型局所製剤に非常に適しており、ポリソルベート80は、アピゲニンを溶解するための水中油型局所製剤に最も適していると考えられる。
【0270】
【表13】
【0271】
実施例16−アルカリ性溶液に対するフラボノイドの溶解度、およびそれに続く局所担体への混合
アルカリ性の水溶液(NaOH又はKOH)に溶解したフラボノイドの溶解度が比較的高いため、フラボノイドのアルカリ性溶液を、やや酸性(すなわちpHが4.5−6.5)の様々な市販されている局所組成物に、可溶化フラボノイドが均一に分散するように激しく撹拌しながら添加したところ、いくつかの市販されている局所組成物中にフラボノイドがほぼ完全に溶解することが分かった。溶解させたアルカリ性のフラボノイドを局所組成物に添加すると、混合物は強アルカリ性となった。
【0272】
これらの混合物を、クエン酸又はHClのような酸性化剤で激しく撹拌しながら中和した後、NaOHを反応させて、クエン酸ナトリウム又は塩化ナトリウムのいずれかをそれぞれ形成した。いくつかの局所組成物を用いた場合には、フラボノイドは溶解状態を維持した。しかしながら、いくつかの局所組成物では、フラボノイドが溶解限度を上回った場合に、可溶性画分に加えて、局所組成物中に微粒子が生じた。
【0273】
本発明の実施形態に従って、濃度が約1.25重量%の可溶化フラボノイドを含む複数の調製物を調製した。表XVは、いくつかのフラボノイド調製物の概要を示している。1.0MのNaOHの5mlに溶解された各フラボノイド0.63グラムを含む濃溶液を45グラムのセタフィル(登録商標)皮膚保湿用ローションに添加した。その後、アルカリ性の製剤にクエン酸の結晶を添加することで、pHがやや酸性になるように中和した。クエン酸の添加により形成されたクエン酸ナトリウムは、化粧品中の保存料としてもまた有用である。
【0274】
セタフィル(登録商標)皮膚保湿用ローションを典型的な水中油型乳濁液として選択した。このローションは、様々な界面活性剤、分散剤、pH調製剤、保存剤、皮膚軟化剤、皮膚保湿剤、湿潤剤、抗炎症剤、シリコーン、鎮痛剤、重合体増粘剤、ビタミン、植物抽出物、及びそれらの組み合わせなどの成分を含む。表XVIは、表VIIで挙げた製剤に使用したセタフィル(登録商標)の成分表を示している。
【0275】
【表14】
【0276】
【表15】
【0277】
実施例17−超音波処理の実験方法
超音波処理試験にかけるため、表XVIIに挙げた6種類の試料約400ccを、Nalgeneの1リットルのHDPE広口瓶中で調製した。直径が1/2インチのプローブを備えたQSonics S−4000を用い、設定を100にして、この試料を10分間、高レベルで超音波処理した。超音波処理時間及び強度の設定を調整し、粒子サイズを最適に減少させることができる。
【0278】
超音波の電子発生器は、AC電源からの電力を、圧電変換器を駆動する20KHzの信号に変換する。この電気信号が変圧器内部の圧電性結晶の特性によって、機械的な振動へと変換される。この振動は、プローブの先端が縦方向に伸縮し、長さが変化することによって、増幅及び減少する。先端が伸縮する長さは、使用者が振幅制御ノブによって選択する振幅によって異なる。例えば、試験に用いた1/2インチのプローブをもつ装置で強度を50%に設定した場合、先端はおよそ60ミクロン伸縮する(1秒間に20000回)。100%に設定すると、先端の伸縮はおよそ120μmである。液体中では、先端の迅速な振動により、キャビテーション、顕微鏡レベルの気泡の形成、及び破壊が起こる。何千ものキャビテーションバブルが破壊されることにより、キャビテーション液中に大きなエネルギーが放出される。プローブ先端の直径により、効果的に処理できる試料の量が分かる。超音波処理装置は、混和、乳化、分散、均一化、及び脱凝集などを含む様々な用途に使用されてきた。
【0279】
超音波エネルギーから生じたキャビテーション力により、粒子の凝集は目に見えて破壊され、その結果、粒子懸濁液が形成されることが容易に認識された。この粒子懸濁液を長期間静置した場合にも、沈殿する傾向は非常に低かった。試料の量が約200ccの場合、比較的高レベル(100%に設定)の超音波エネルギーをかける20K/秒の振幅の超音波処理によって、温度が約30℃から40℃上昇した。この結果により、10分間の処理が進められた。
【0280】
経験から、処理に伴う温度上昇によって、微粒子が凝集する可能性がある(おそらくは媒体粘度の低下、及び粒子衝突の可能性が上昇する等のため)。様々な実効的な冷却手段(主に熱伝導コイルなど)を使用することにより、超音波処理にかける溶液の温度上昇を制限するための多数の選択肢が利用可能である。超音波エネルギーをかけたことによる温度上昇を制限するために、試料6を入れたビーカーを、氷浴中に沈めた。氷浴で周囲を覆うことによって、これら試料の温度上昇は、周囲温度の約20℃上までに制限された。
【0281】
乳化及び均一化に加えて、超音波処理のエネルギーにより、試料は脱気された。溶けている空気を除去することにより、製剤成分が酸化する可能性を最小限に抑えられるため、このことは望ましい結果であった。界面活性剤を含む製剤に伴う可能性のある発泡に関する問題は、超音波処理器のプローブの先端を約2インチの深さまで液体中に挿入すると問題ではなくなると指示されていたために解消した。様々な試料を用いたこの後の試験では発泡は生じなかった。
【0282】
超音波処理を行った試料を表XVIIIに示す。粒度分布のデータは、マルバーンのマスターサイザー粒度分布測定装置を用いて得た。
データから、超音波処理した全ての試料の粒度分布(PSD)が有意に減少したことが明らかである。表XIIIからは、75%及び90%レベルの「積算体積」が実質的に減少したことが明らかである。
【0283】
超音波処理は、ファンデルワールス結合による凝集を壊すのに効果的な、前処理及び後処理として非常に有効であり、その結果、粒度分布が改善する。
実施例18−HPHの実験方法
高圧乳化(HPH)試験にかけるために、表XIIIに挙げた試料を調製した。HPH試験は、BEEI社の装置であるDeBEE 2000を用いて行った。
【0284】
DeBEE技術は、それらのシステムをわずか1回通しただけで、小滴及び粒子をナノメートルのサイズまで破壊する、非常に強い力を生成する。DeBEE 2000増圧機は水力学的に駆動され、マイクロプロセッサーは一定の圧力及び流動性をDeBEE均一化セルに与えられるように制御されている。液体の粘度及びかけた圧力により、粒子サイズ及び粒度分布が決まる。
【0285】
約150cc量の試料を、約20−30cc/分の速度でDeBEEに通した。各測定の後、先に試験した試料の残りを除去するために蒸留水で装置を洗浄し、その後、次に試験する試料の準備のために蒸留水で洗浄した。各試験の後、排出された試料をマルバーンのマスターサイザー粒度分布測定装置にかけてPSDの結果を評価し、その後、次の試料をHPH装置にかけた。選択した試料については、温度制御及びHPHに複数回かけることがPSDに及ぼす影響を評価するために、「熱交換」(HX)での冷却を行い、そしてHPHに複数回かけた。微粒子化を達成するためにはHX冷却が必要であったが、複数回のHPHの実施は、PSDにはほとんど影響を及ぼさないことが明かである。通常、試験条件下では、圧力チャンバー内にある試料の温度が周囲温度から約40℃−50℃上昇することが観察されると予想される。
【0286】
表XIVに挙げた9種類の試料をDeBEE 2000装置にかけて処理した。まず、PSDに及ぼす圧力の影響、及びHPHの処理数がアピゲニンを含む試料に及ぼす影響を決定するために、チャンバー内の圧力を15Kpsi、30Kpsi及び45KpsiとしたBEEを用いて、試料3について4回のHPH試験を行った。試料3について3回、PSDデータを測定した後、残りの試験を45Kpsiレベルで行うことを決定した。表IIIに示したように、非常に強い条件のHPHにかけた全ての試料で、PSDの減少が顕著であった。HPHに1回かけた全ての試料の均一性により、サブミクロンサイズのPSDが90%の積算レベルで生じた。また、未処理アピゲニンのPSDも有意に減少した。
【0287】
HPHのエネルギー変換によって生じるキャビテーション及び剪断力が粒子の凝集を破壊することが明かであり、その証拠に、長時間静置した場合にも沈殿する傾向が有意に低い、粒子懸濁液が形成された。
【0288】
超音波処理し、二つのアスタリスクで示した試料(試料2及び5)も表XVに示す。
このデータは、超音波処理した及びHPHに書けた試料の粒度分布(PSD)が有意に減少していることを明確に示している。超音波処理及びHPH処理した試料両方の75%及び90%レベルでの「積算体積」が実質的に減少した。より粒子が大きい未処理粒子の凝集も破壊されていることも明かであり、その証拠に、PSDの積算の平均が約350ナノメートルである、顕著な二峰性のPSD分布が観察された。
【0289】
【表16】
【0290】
【表17】
【0291】
【表18】
【0292】
実施例19−アピゲニンを含む局所製剤を用いた乾癬患者の治療
レジサイド(Regicide)、メトトレキサート、及びいくつかの処方薬に反応しない5人の乾癬患者は、ヒアルロン酸を含むアピゲニン含有製剤を1日2回適用した結果として、乾癬状態の有意な改善を経験した。使用したローションは、溶解したアピゲニンナトリウム塩を酸性化することによって処方した。この水中油型乳濁液の製剤は、分散したアピゲニン水和物の微粒子を1.5%の濃度で含んでいた。予想外にも、アピゲニンローションを適用した全ての患者は、乾癬が関与する手、鼠径部、脚部、及び膝を含む皮膚の外観が徐々に改善することを経験した。これらの患者での最初の改善が見られるまでに必要とされる期間は1−2ヶ月と多様であった。
【0293】
実施例20−製剤をその場で製造する方法
表XIIに挙げた成分を含むセタフィル皮膚保湿用ローションを用いて、1.25重量%のアピゲニンを含む、1回分が100グラムの製剤を以下のように調製した。
・予め140°Fを少し超える温度に加熱しておいたセタフィル90グラムを、300ccのビーカー中に加える。
・次に、実施例1で記載した未処理アピゲニン粉末1.25グラムを液体セタフィルローションに添加する。液体混合物中には、ヒアルロン酸、ビタミンなどを含むその他の成分を任意に加えることができる。
・次に、高い温度レベル(135°F−150°F)の液体溶液約90ccをQSonics S−4000超音波処理器を用い、強度レベル90%で合計10分間超音波処理する。超音波処理の工程は、超音波処理を1分間行った後、30秒停止するという工程を繰り返す。
・その後、総重量が100グラムになるように、超音波処理した溶液に水を添加し、得られた溶液を約10秒間、90%の強度レベルで超音波処理し、そして調剤用のチューブ容器に入れる。
【0294】
実施例21−ヒト及びマウスの皮膚を用いたin vitroでの、製剤からのアピゲニンの経皮的吸収
in vitro経皮的吸収試験によって、生物学的利用能の可能性を評価することができる。この試験の目的は、選択された患者から外科的に切除したヒトの皮膚、及び新鮮なマウスの皮膚に本開示の製剤を局所使用した後の、アピゲニンのin vitroでの経皮的吸収の特徴を解析することである。この試験は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of in vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Skelly et al., 1987)で使用されている方法に従って実施した。1人の提供者由来のヒト組織及びマウス組織に5mg/cm2の製剤を投与した。
【0295】
本発明に記載した、基本型製剤からのアピゲニンの透過及び浸透を、in vitro経皮的吸収試験により評価した。
1人の提供者を選出し、その後採皮刀を用いて外科的に得たヒト腹部の皮膚に、臨床的に意義のある投与量である5mg/cm2を投与した。組織の厚さは、0.021−0.039インチ(0.533−0.991mm)の範囲であった。
【0296】
臨床的に意義のある投与量である5mg/cm2をマウス組織に投与した。組織の厚さは、0.011−0.025インチ(0.279−0.635mm)の範囲であった。
結果
図10は、ヒト組織に、1.5%のアピゲニンを含むいくつかの局所製剤を投与した場合の、表皮、真皮及び皮下組織(receptor fluid)でのアピゲニンのプロファイルを示している。同様に、図11は、ヒト組織に、1.5%のアピゲニンを含むいくつかの局所製剤を投与した場合の表皮、真皮及び皮下組織(receptor fluid)でのアピゲニンのプロファイルの概要を示している。
【0297】
基本型製剤による、表皮(ヒト組織の)でのアピゲニンの沈着効率は、投与したアピゲニンの15.5−45.7%の範囲であった。基本型製剤による、アピゲニンの表皮(マウス組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの15.0−88.3%の範囲であった。
【0298】
基本型製剤による、アピゲニンの真皮(ヒト組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの0.446−2%の範囲であった。基本型製剤による、アピゲニンの真皮(マウス組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの8.0−14.4%の範囲であった。
【0299】
製剤から送達されるアピゲニンの総重量は、製品中のアピゲニン濃度、並びに送達効率により異なる。皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間投与した後に算出した、ヒト組織(皮下組織レベル)に浸透したアピゲニンの量は4.04−9.88ng/cm2の範囲であった。
【0300】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、表皮(ヒト組織)に沈着したアピゲニンの量は、22,651−34,293ng/cm2の範囲であった。
【0301】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、表皮(マウス組織)に沈着したアピゲニンの量は、11,232−66,209ng/cm2の範囲であった。
【0302】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、真皮(ヒト組織)に沈着したアピゲニンの量は、334−1,499ng/cm2の範囲であった。
【0303】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、真皮(マウス組織)に沈着したアピゲニンの量は、6,002−10,814ng/cm2の範囲であった。
【0304】
本発明のPS80製剤は、十分な濃度のアピゲニンを表皮及び真皮層の両方に送達した。
上記で引用した全ての書類及び参考文献をここで、参照することによりその全体を本明細書に組み入れる。
【0305】
本発明を、例示的な態様を参照して記述してきたが、当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施してもよく、また、要素を均等物と置き換えてもよい。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、ある特定の状況又は材料に適応させるために、本発明の教示に様々な修飾を行ってもよい。従って本発明は、本発明を実施するための最適な形態として検討し、開示した特定の態様に限定されることを意図せず、本発明は添付の請求項の範囲内の全ての実施形態を含むものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月22日に出願の米国仮特許出願第61/253,857号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、微粒子化した、かつ、可溶性の新規フラボノイド、及びそれらの合成に関する。本発明はまた、そのようなフラボノイドの新規製剤及び該フラボノイド製剤の新規製造方法を含む。本発明は、該フラボノイド製剤の多様な応用にもまた関する。
【発明の概要】
【0002】
フラボノイド
抗癌作用をもつと考えられている植物由来薬剤の成分にはフラボノイド及び食物繊維がある(Patel, D, et al., Apigenin and cancer chemoprevention: Progress, potential, and promise, Intl. J. Oncology 2007 Jan; 30(1): 233-45.)。化学的予防は、天然に存在する又は合成した薬剤を用いた癌の予防に焦点を当てている、腫瘍学の一面である。
【0003】
フラボノイドが遊離ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、スーパーオキシドアニオン、紫外線吸収剤、及び脂質ペルオキシラジカルとして作用することが分かってきた。フラボノイド化合物がコラーゲン構造の強化に有効であることもまた知られている。さらに、フラボノイドが抗変異原性、抗炎症性、及び抗ウイルス作用を呈すことも分かってきた。
【0004】
全てのフラボノイドは共通した基本化学構造である、3つの環状分子をもつ。この群に含まれる個々のフラボノイドは、置換基(ヒドロキシ基、メトキシ基、又は糖類)の数及び位置により、互いに異なっている。
フラボノイドは以下の一般式(式I)の構造をもつ。
【0005】
【化1】
【0006】
フラボノイドにはおよそ5,000種類の天然に存在する化合物が含まれる。その他多数の置換が起きる場合もあり、それにより多種のフラボノイドが存在する。
皮膚癌
皮膚癌の発症は、公衆衛生を脅かす世界的に大きな問題である。紫外線(UV)、例えば、太陽紫外線B(UVB)及び太陽紫外線(UVA)の照射が皮膚癌の主要因である。高SPF成分を含む紫外線防止剤の出現及び使用にも関わらず、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、及び黒色腫の発現率は上昇し続けている。皮膚癌はその大部分が全体的に予防可能な癌であるが、生存率を改善するためには、早期での検出及び治療が必須である。現行の紫外線防止剤は、DNA損傷作用をもつUV照射から人々を守るには不十分である。紫外線防止剤の使用は時に、日光に過剰に当たっても問題はないという誤った知識を人々に抱かせる場合もある。
【0007】
研究から、フラボン類が抗酸化、抗変異原性、抗発癌性、抗炎症性、抗増殖性、及び抗進行特性をもつことが示されてきた(Patel, D, et al., Apigenin and cancer chemoprevention: Progress, potential, and promise, Intl. J. Oncology 2007 Jan; 30(1): 233-45.)。加えて、Birtと共同研究者らは、in vivoマウスモデルを用い、UVBを照射する前にアピゲニンを局所投与することで、皮膚癌の発生率が有意に、最大90%まで低減されることを示した(Birt et al., Anti-mutagenesis and anti-promotion by apigenin, robinetin and indole-3-carbinol, Carcinogenesis, June 1986; 7: 959 - 963)。その他の研究者らも、アピゲニンがマウス結腸癌の発症率を低減させる能力をもつことを示している(Wang et al, Cell cycle arrest at G2/M and growth inhibition by apigenin in human cell colon carcinoma cell lines, Molecular Carcinogenesis, 28: 102-110 (2000))。
【0008】
研究者らは、アピゲニンが細胞周期のG1及びG2/M期の可逆的な停止を誘導することを見出した。さらに、アピゲニンが有糸分裂キナーゼp34cdc2の直接的な及び間接的な阻害を含む多数の機序を介して細胞周期の阻害に介在すること、並びに細胞周期阻害剤であるp21WAF1をp53依存的に誘導することを発見した(Lepley DM, et al., The chemopreventative flavonoid apigenin induces G2/M arrest in keratinocytes, Carcinogenesis, 17, 2367-75 (1996))。
【0009】
G1/S及び/又はG2/M細胞周期チェックポイントの制御が失われると、悪性転換及び癌の進行が引き起こされる。細胞周期の開始及び進行の多くは、細胞増殖を促進する癌原遺伝子、及び細胞成長を遅くする又は停止させる機能をもつ腫瘍陽性遺伝子によって制御されている。癌原遺伝子及び/又は腫瘍抑制遺伝子のいずれかに突然変異が生じると、細胞がG1又はG2/M期にとどまる期間が短縮されることにより、G1/Sチェックポイントが損なわれ易くなる。
【0010】
その他の皮膚障害
Kang、Ecklund、Liu及びDatta(Arthritis Research & Therapy 2009, Vol. 11)は、アピゲニンのような食品中の植物由来COX−2及びNF−κB阻害剤の生物学的利用能を高めることが、狼瘡の炎症及びその他のTh17−介在性疾患様乾癬の抑制に有用である可能性があることを報告した。非変異原性であり、食用のフラボノイドであるアピゲニンは、自己反応性Th1及びTh17細胞の拡大に必要とされる自己抗原提示を阻害することにより、狼瘡を抑制する。
【0011】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、アピゲニンを含む、水の不溶性のフラボノイド用の溶媒として、in vivoでの研究に広く用いられてきた。しかしながら、その毒性により、ジメチルスルホキシドはヒトを対象として考えた場合の局所製剤用の溶媒としては好ましくない。皮膚癌に対する局所治療にアピゲニンを用いたほとんど全ての研究では、アピゲニンが水(<0.005(mg/ml))及びその他の水性溶媒に対して非常に低い溶解度を示すことから、溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)が用いられてきた(Li et al, Evaluation of Apigenin and [G-3H], Apigenin and analytical method development, J. of Pharmaceutical Sciences. Vol. 86, No. 6, June 1997)。
【0012】
さらに、多くのフラボノイドは一般的に、水、並びに医薬品、化粧品及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に不溶性である。このため、フラボノイドを局所用組成物の成分として直接使用することは避けられている。従って、局所用、医薬品、腹膜用、栄養補助食品及び医療食品に使用可能な成分を用いることにより、フラボンを含むこれらフラボノイドの生物学的利用能を高める方法が必要とされている。
【0013】
その他の疾患
フラボノイドは典型的なフェノール化合物であるため、フラボノイドは強力な酸化防止剤及び金属キレート剤として作用する。また長い間、フラボノイドが抗炎症、抗アレルギー、肝臓保護、抗血栓、抗ウイルス、及び抗腫瘍原性活性をもつことが認識されてきた。
【0014】
フラボン及びカテキンは、体を活性酸素種(ROS)から保護する、非常に強力なフラボノイドである。体細胞及び組織は常に、通常の酸素代謝の間に生産される遊離ラジカル及びROSによって引き起こされる損傷、又は外因性の損傷によって誘導される損傷に脅かされている。多くの動物モデルにおいて、フラボノイドが抗炎症性活性をもつことが報告されている。アピゲニン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、フィセチンなどのフラボン/フラボノールが、リポキシゲナーゼ(LO)及びシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害活性を持つことが報告されている。Jachak SM. Natural products: Potential source of COX inhibitors. CRIPS 2001; 2(1):12-15。
【0015】
微粒子化の方法
米国特許出願第2010/0047297号で、Petersenは局所化粧品製剤に使用するための、アピゲニンなどの化合物のナノ結晶を開示している。
【0016】
米国特許第5,145,684号でLiversidgeらは、剪断、衝撃、キャビテーション及び摩擦力を生じる機械的な手段により、薬剤をナノ結晶形態にする方法を開示している。
【0017】
米国特許第5,510,118号でBoschらは同様に、剪断、衝撃、キャビテーション及び摩擦力を生じる機械的な手段により、薬剤をナノ結晶形態にする方法を開示している。
【0018】
米国特許第5,510,118号でMullerらは、ナノ粒子懸濁液を生成するための高圧乳化法を開示している。
米国特許第4,826,689号では、水性沈殿液を温度や注入速度の条件を制御しながら、有機液体に溶解した個体の溶液中に注入することによる、個体の非晶質粒子の調製方法が記載されている。これにより粒子サイズを制御することができる。
【0019】
個体材料の水性懸濁液は、機械的な破砕、例えば粉砕によって調製することができる。米国特許第5,145,684号では、水性媒体中に溶解した難溶性化合物懸濁液の湿式粉砕について記載されている。
【0020】
沈殿によって直接得られた結晶分散液は、溶液の振動に影響されやすいことが当該分野で知られている。例えば、機械的な混合、振動、マイクロ波処理及び超音波処理(例えば国際公開第01/92293号を参照のこと)などの、振動を与える様々な方法が当該分野で知られている。振動は、超音波振動を含む多数の技術によって行われる。得られた結晶は通常、1−6ミクロンの質量中央径を有する。
【0021】
米国特許第5,314,506号には、基質を含む溶液の噴流を、基質に対する貧溶媒を含む第二の噴流に衝突させることによる晶析プロセスが記載されている。衝突噴流によって生じる迅速な混合の結果、従来のゆっくりとした晶析プロセスによって形成されるものと比較して、結晶が小さくなる。開示された最も小さい結晶は約3ミクロンであり、大部分は3−20ミクロンの範囲である。
【0022】
欧州特許第275607号には、液状の結晶懸濁液に超音波エネルギーをかける方法が記載されている。ここでは、超音波を予め調製しておいた結晶を粉砕するために使用している。通常、得られた結晶の体積平均径は10−40ミクロンであった。
【0023】
国際公開第03/059319号には、水と混ざらない有機溶媒に溶解した薬剤溶液を、水中油型乳濁液の鋳型に加え、その後、水と混ざらない有機溶媒を蒸発させることによる、小粒子の形成が記載されている。その後、例えば噴霧乾燥によって水を除去し、粉末を得る。
【0024】
米国特許6,197,349号には、結晶化合物を融解させ、この化合物を例えばリン脂質のような安定化剤と混合させ、高圧乳化機を用いて温度を上昇させながらこの混合物を水に分散させ、そして温度を下げることにより、非晶質粒子を形成するプロセスが記載されている。
【0025】
PCT/US2006/020905号でDoseffは、アピゲニン又はその誘導体を用いた炎症の治療方法を開示している。
米国特許出願第2008/0227829号でHammerstoneは、アピゲニンを含む神経性化合物で対象を治療する方法を開示している。
【0026】
米国特許出願第2007/0154540号でParkらは、変形性関節症の治療での軟骨再生剤としてのアピゲニンの使用について開示している。
米国特許出願第2007/0189680号でBing−Huaらは、その他治療薬との組合わせにおける、化学的予防及び化学療法のためのアピゲニンの使用について開示している。
【0027】
米国特許出願第2006/0067905号でLintneraらは、脱毛症の治療のための、血管拡張薬としてのアピゲニンの使用について開示している。
ヒアルロン酸(HA)
ヒアルロン酸は、結合、上皮、及び神経組織に広く分布している、アニオン性の非硫酸化型グリコサミノグリカンである。グリコサミノグリカンの中でも、HAは非硫酸化型であること、ゴルジ体ではなく原形質膜で形成されるため、非常に大きくなる場合があり、その分子量はしばしば数100万にまで達することから特異である。細胞外マトリックスの主要な構成要素の一つであるヒアルロン酸は、細胞増殖及び細胞移動に有意に貢献する。
【0028】
HAなどの多糖類は比較的複雑な炭水化物である。多糖は、グリコシド結合によって連結した多数の単糖によって形成される重合体である。グリコシド結合はその結果、大きく、しばしば枝分かれした、高分子となる。多糖の使用は化粧品及び医学的応用で有用である。例えば、HAは皮膚への応用で、構造安定化充填剤として用いられている。
【0029】
米国特許出願第2005/0271692号でGervasio−Nugentらは、フラボノイド及びヒアルロン酸を含む局所用化粧品組成物を開示している。
米国特許出願第2006/021625号でMorariuは、局所用製剤、及び老化した皮膚の概観を改善するための使用方法を開示している。好ましい構成成分として、アピゲニンなどのフラボノイド及びヒアルロン酸を挙げている。
【0030】
界面活性剤
ポリソルベート(商業的にはTweenとして知られている)は、非イオン性界面活性剤であり、ポリエトキシル化ソルビタンと脂肪酸由来の乳化剤である。それらは精油を水ベースの製品中で安定化させるために、しばしば食品及び化粧品中に用いられている。ポリソルベートは粘性のある、淡黄色の水溶性脂質である。ポリソルベートはまた、乳化させる基質の表面張力を低下させることで、乳化を助ける。ポリソルベートは、ある成分を、通常は溶解しない溶媒に溶解させる能力により認められてきた。ポリソルベートは、水中油型のものを反対に油中水型に分散させる機能をもつ。
【0031】
ポリソルベートは、多価アルコールであるソルビトールをエチレンオキシドと反応させることにより生産される。その後、ポリオキシエチレンソルビタンを、ステアリン酸、ラウリン酸及びオレイン酸のような植物性脂肪及び油から得られた脂肪酸と反応させる。脂肪酸を含む単純な(非PEG化)ソルビタンのエステルである界面活性剤は一般に、スパンと呼ばれている。
【0032】
米国特許第7,329,797号でGuptaは、抗炎症薬としてのアピゲニンを含むフラボノイド、及び乳化剤としてのポリソルベート界面活性剤の使用を含む、抗老化粧品の送達システムを開示している。
【0033】
米国特許出願第2006/0229262号でHiguchiらは、アピゲニンなどのフラボノイドを活性成分として、及びポリソルベートを乳化剤として含む、薬剤耐性細菌による感染の処置を含む、感染の治療用の医薬組成物を開示している。
【0034】
調査研究から、アピゲニンが喘息の発病過程の改善に重要な機能を果たしている証拠がもたらされた。近年の疫学的研究から、フラボノイドの取り込みが高い集団では喘息の頻度が有意に低いことが観察されたことが報告された。
【0035】
前述の点を考慮すると、皮膚の損傷又は日光に曝露された結果生じた皮膚癌の予防及び/又は治療用の局所製剤にフラボンであるアピゲニン及びルテオリンのようなフラボノイドを組み入れること、並びに様々な皮膚症状の治療に有用な皮膚治療用組成物を提供することが強く望まれている。
【0036】
本発明は、微粒子水和物としたフラボノイド及び担体を含む組成物に関する。通常、フラボノイドの水に対する溶解度は1mg/ml未満、又は0.1mg/ml未満である。微粒子フラボノイドの平均サイズは200−500ナノメートルであり、好ましくは、平均サイズが250ナノメートルの粒子である。好ましい態様では、この組成物は医薬組成物であり、かつ、前記担体は薬学上許容可能な担体である。組成物は、ヒアルロン酸、及び、一般的には微粒子の凝集を予防又は減少させる化合物を含む担体、分散剤又は浸透促進剤を含むことができる。一態様では、組成物はコロイド、ナノ分散液又は乳濁液の形態である。組成物は栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品であってもよい。
【0037】
本発明の別の態様は、フラボノイド及び、界面活性剤などの熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を含む組成物に関する。ここで前記組成物は、フラボノイドとその化合物を、前記フラボノイドが前記化合物に溶解する温度で混合する工程によって形成される。通常組成物は、エタノール、イソプロピル及びベンジルアルコールからなる群より選択されるアルコール、エトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドをさらに含む。好ましい態様では、組成物は医薬組成物であり、かつ、前記担体は薬学上許容可能な担体である。組成物が、ヒアルロン酸及び/又は浸透促進剤を含んでいてもよい。一態様では、組成物は乳濁液又はマイクロエマルションの形態である。組成物は、栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品であってよい。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明の組成物及び接着剤を有する第一の面と、第一の面にある組成物と接着剤が浸透しない材料を有する第二の面の、2つの面をもつ基体を含む、フラボノイドの経皮投与用パッチに関する。
【0039】
本発明の別の態様は、フラボノイドをアルカリ金属水酸化物と混合してアルカリ金属フラボノイド塩の水溶液を形成する工程、このアルカリ金属フラボノイド塩の水溶液に酸性化剤を加えてpHレベルを7未満になるまで酸性化してフラボノイド水和物の沈殿を形成する工程、を含むフラボノイド水和物の生産方法に関し、ここで酸性化工程は通常、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件下で行われる。酸性化工程の後に、pHを7未満に調整する工程、及び沈殿をろ過する工程を行ってもよい。その後、沈殿を洗浄し、乾燥することもできる。
【0040】
本発明の別の態様は、フラボノイドを非毒性有機溶媒に溶解して混合物を形成する工程、及びこの混合物に水を添加してフラボノイド水和物の沈殿を形成する工程を含む、フラボノイド水和物の生産方法に関する。ここで水を添加する工程は、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件下で行われる。通常溶解する工程は、有機溶媒の沸点より約20℃低い温度又はそれより低い温度で行う。有機溶媒は、ジメチルイソソルビド、エトキシジグリコール、及びジメチルスルホキシドからなる群より選択することができる。
【0041】
本発明の別の態様は、フラボノイドを水に溶解させたアルカリ金属水酸化物と混合してアルカリ金属フラボノイド塩の溶液を形成する工程、アルカリ金属フラボノイド塩溶液を皮膚科学的に許容可能な担体に添加する工程、及びこの製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpH(例えば4−8)に調整する工程を含む、フラボノイド水和物の局所製剤の形成方法に関する。ここでpHを調整する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維を生産する条件下で行う。
【0042】
本発明の別の態様は、フラボノイドをアルコール中に溶解できるようにする工程、アルコール可溶化フラボノイドを皮膚科学的に許容可能な担体に添加する工程、製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpH(例えば4−8)に調整する工程、を含む、フラボノイド水和物の局所製剤を調製する方法に関し、ここでpHを調整する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維を生産する条件で行う。
【0043】
フラボノイドの局所製剤を調製する方法は、フラボノイドを担体の乳濁液に添加して混合物を形成する工程、混合物が水と同様の粘性になるまで(又は分散可能な粘度になるまで)加熱する(例えば約120°F−170°F)工程、混合物中で微粒子を分散させる工程を含む。通常乳濁液は水中油型若しくは油中水滴型乳濁液であり、かつ、乳濁液は安定化剤、分散剤、若しくは界面活性剤、又は微粒子の凝集を阻害する別の安定化剤を含む。一態様では、分散させる工程は、超音波処理又は高圧乳化により行われる。
【0044】
本発明の別の態様は、フラボノイド粒子と、界面活性剤のような熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成する工程、混合物をフラボノイド粒子が可溶化する温度まで加熱する工程、及びこの溶液を冷却する工程を含む、可溶化フラボノイド組成物の調製方法に関する。好ましい態様では、熱安定性フラボノイド可溶化化合物は、非イオン性界面活性剤である。通常、混合物を加熱しながら撹拌し、最大10重量%のフラボノイド化合物を添加する。好ましい態様では、界面活性剤はポリソルベートである。加熱又は冷却工程の後に、溶液を皮膚科用、経口、注入可能、皮膚パッチ又はエアロゾル担体に添加する工程を行う。通常、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドからなる群より選択される短鎖アルコールを溶液に添加して、粘性の低い溶液を形成する。
【0045】
本発明はまた、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイド、及び角質層及び表皮へのフラボノイドの送達の可能にする担体を含む、治療上有効量の日焼け防止製剤を、皮膚へ適用する工程を含む、日光曝露の効果を低減する及び/又は予防する方法に関する。別の態様において製剤は加えて、日光曝露による紫外線に対してさらに保護を与える鉱物酸化物を含む。
【0046】
別の態様において本発明は、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイド、及び角質層及び表皮へのフラボノイドの送達を可能にする担体を含む、治療上有効量の製剤を、日光により損傷を受けた皮膚に適用する工程を含む、日光曝露の効果を治療する方法に関する。
【0047】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、予防量又は治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、哺乳類での癌の「可能性」を低減する又は癌を治療する方法に関する。
【0048】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、哺乳類の炎症を治療する方法に関する。
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、座瘡、脱毛症、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、及び酒さ、接触性皮膚炎のような、哺乳類の皮膚疾患又は障害を治療する方法に関する。
【0049】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、乾癬、狼瘡、関節炎のような、哺乳類の自己免疫疾患を治療する方法に関する。
【0050】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量の本発明の製剤を投与する工程を含む、アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎/湿疹のような、アレルギー性疾患を治療する方法に関する。
【0051】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量又は予防量の本発明のフラボノイド製剤を投与する工程を含む、哺乳類でのTNFα関連疾患を治療する又はTNFα関連疾患の可能性を低減させる方法に関する。
【0052】
別の態様において本発明は、そのような治療を必要とする哺乳類に、治療上有効量又は予防量の本発明のフラボノイド製剤を投与する工程を含む、哺乳類でのIL−1β関連疾患を治療する又はIL−1β関連疾患の可能性を低減させる方法に関する。
【0053】
本発明の別の態様は、ビタミンが融解するまで加熱する工程、融解したビタミンにフラボンを溶解してビタミンとフラボンの液体混合物を形成する工程、及びビタミンとフラボンの液体混合物を冷却して、均質な固体混合物を形成する工程を含む、ビタミンとフラボンの均質な固体混合物を形成する方法である。ここでビタミンは、ビタミンB3、ビタミンB5、及び前述したビタミンを少なくとも1つ含む組み合わせからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、未処理のアピゲニン粉末を10,000倍の倍率で観察した場合の結晶形の詳細を示す、典型的な走査型顕微鏡(SEM)像である。
【図2】図2は、未処理アピゲニン粉末の典型的な「体積頻度」粒度分布プロットを示す。
【図3】図3は、未処理アピゲニン粉末の典型的な「微細粒子の積算」の粒度分布プロットを示す。
【図4】図4は、アピゲニン水和物試料の典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。典型的なアピゲニン水和物の形態は、図1に示した未処理試料の形態とは非常に異なる。
【図5】図5は、3回別個に生産した「水相ローション」バッチから得た、粒子サイズ分布プロットを示す。ほとんど全てのアピゲニン粒子がサブミクロンサイズである。
【図6】図6は、3回別個に生産した「水相ローション」バッチから得た、粒子サイズ分布プロットを示す。ほとんど全てのアピゲニン粒子がサブミクロンサイズである。
【図7】図7は、水相ローション中のフラボノイド濃度が1.25%のアピゲニン、ルテオリン、ルチン及びケルセチンの「積算粒度分布」のプロットを示す。
【図8】図8は、水中の1.25%未処理ケルセチン粉末と、実施例2の方法で調整した水相ローション中の1.25%「アピゲニン水和物」の粒子サイズ分布の比較を示す。
【図9】図9は、対照試料とした未処理ポリソルベート80と、熱処理したポリソルベート80試料の化学組成にはほとんど違いがないことを示す質量分析の結果を示す。
【図10】図10は、濃度1.5%のアピゲニンを含む局所製剤を複数回投与した、ヒト組織の表皮、真皮及び皮下組織に沈着したアピゲニンを示す図である。
【図11】図11は、濃度1.5%のアピゲニンを含む局所製剤を複数回投与した、マウス組織の表皮、真皮及び皮下組織に沈着したアピゲニンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、新しい形態のフラボノイド、製剤、保健食品、及び医薬組成物、並びにその製造方法及びその使用に関する。
I−本発明の化合物
いくつかの一般的に存在する植物フラボノイドの化学構造を表Iに示す。
【0056】
【表1】
【0057】
フラボノイドには、フラボン(例えば、アピゲニン、ルテオリン)、フラボノール(例えば、ケルセチン、ミリセチン)、フラボノン(例えば、ナリンゲニン、ヘスペリジン)、フラボノール(又はカテキン)(例えば、エピカテキン、ガロカテキン)、アントシアニジン(例えば、シアニジン、ペラルゴニジン)、及びイソフラボン(例えば、ゲニステイン、ダイゼイン)が含まれる。
【0058】
アピゲニンは、フラボンの構造をもつクラスの化合物であり、化学的には4’,5,7,−トリヒドロキシフラボンとして知られている。アピゲニンは以下の構造式(式II)をもつ。
【0059】
【化2】
【0060】
ルテオリンもまた、フラボンの構造をもつクラスの化合物であり、化学的には3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボンとして知られている。ルテオリンは、以下の構造式(式III)をもつ。
【0061】
【化3】
【0062】
アピゲニン及びルテオリンは両方とも、実質的には、水、並びに医薬品、化粧品、及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に対して不溶性である(すなわち、溶解度が1mg/ml未満である)。
【0063】
用語「フラボノイド水和物」は、本明細書で使用する場合、アルカリ金属(例えばNa+又はK+)の形のフラボノイドに酸を添加するか、非毒性の有機溶媒(例えばDMSOではない)に溶解したフラボノイドに水を添加して形成されるフラボノイドの沈殿に関する。好ましくは、この沈殿を、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件で形成する。
【0064】
同様に、用語「フラボン水和物」(例えば「アピゲニン水和物」)は本明細書で使用する場合、塩の形のフラボン(例えばアピゲニン塩)に酸を添加するか、非毒性の有機溶媒(例えばDMSO以外の)に溶解したフラボンに水を添加して形成したフラボン(例えばアピゲニン)の沈殿に関する。好ましくは沈殿を、測定縦横比が20より大きく、平均サイズが50−1000ナノメートルの、より好ましくは200−500ナノメートルのナノ繊維を生産する条件で形成する。
【0065】
本発明の教示は、水に対する溶解度が1mg/ml未満、特に0.1mg/ml未満の難溶性のフラボノイドに適用することができる。
一態様においてフラボノイド水和物は、単離されたもの、すなわち実質的に精製した形態、すなわち95%を超える純度、好ましくは98%を超える純度、最も好ましくは99%を超える純度である。
【0066】
II−フラボノイド水和物微粒子の製造方法
本明細書においては、アピゲニン及び/又はルテオリンのような比較的水に溶けにくいフラボノイドのフラボノイド水和物を生産する方法を開示する。例えば、このフラボン水和物には、アピゲニン水和物、ルテオリン水和物、若しくはその組み合わせ、又は前述したフラボン水和物の内の1つと別のフラボン又はビオフラボンが含まれる可能性がある。これらフラボノイド水和物の沈殿がもつフラボノイドの生物学的利用能は高く、そのため、様々な許容可能な医薬品及び化粧品用担体、例えば水性アルコール溶媒、にフラボノイドを添加することが可能になる。
【0067】
一態様では、フラボノイドをアルカリ金属の成分(例えば、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属塩)と混合してアルカリ金属フラボノイド塩を形成する工程;アルカリ金属フラボノイド塩のpHレベルを、薬剤を使用して7.5以下に調整して(例えば酸性化して)ゲル様のフラボノイドの沈殿を生成する工程;フラボノイド水和物をろ過することによって回収する工程;そしてフラボノイド水和物を洗浄して(例えば、蒸留水などの水を用いて)アルカリ塩及び過剰の酸性化剤を除去する工程;及び、任意に、フラボノイド水和物を乾燥させる工程により、フラボノイド水和物又はフラボンを形成する。
【0068】
微小なサブミクロンサイズの粒子を形成させるためには、酸性化過程を制御することが必要となる。これには、酸性化剤をアルカリフラボノイド塩溶液に迅速に添加し、微粒子が均一に分散するまで混合することが含まれる。酸性化剤のアルカリ塩溶液への混合は、好ましくは1−10℃の温度で、混合時間と沈降時間の比が最小限になるように(好ましくは1−5の比で、最も好ましくは1−2の比で)行う。核形成速度の上昇及び結晶成長速度の制限に、これらの比が寄与する。通常、フラボノイド水和物の微粒子の平均サイズは50−1000であり、好ましくは200−500ナノメートル、例えば平均して250nmである。
【0069】
フラボンの例としては、例えばアピゲニン、ルテオリン、又はその組み合わせが挙げられる。従って、この方法により、アピゲニン水和物、ルテオリン水和物、又はその組み合わせを含むフラボン水和物を調製することができる。
【0070】
アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、並びに前述した水酸化物を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0071】
アルカリ金属塩の例としては、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム)、及び炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム)、並びに前述した塩を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0072】
フラボノイド水和物及びフラボン水和物はそれらの抗癌、抗酸化、抗炎症性、UVからの皮膚の保護、及びその他の望ましい活性により、局所、経口、及び注入製剤への添加剤として非常に有益である。
【0073】
ろ過
予想外にも、溶液からのフラボノイド水和物の沈殿を分離するためのろ過工程が、溶液のpHが<7、好ましくは<6に酸性化されている場合には、界面活性剤/分散剤を添加することなく比較的容易に行えることを発見した。これらの条件では、2ミクロンのフィルター上にほとんどすべてのナノ粒子(又はナノ繊維)が捕捉され、ろ液には相対的にわずかな量のナノ繊維しか出てこない。沈殿過程を、界面活性剤/分散剤存在下で、ややアルカリ性のpHで行った場合、溶液からフラボノイド水和物を分離することが難しくなることが分かった。
【0074】
これまで、ナノ粒子を精製するためにはナノ粒子のろ過が行われてきた。しかしながら、ろ過除去速度が<0.05ml/分×cm2に限られていたため、分散液を約1/5までしか濃縮できなかった。ろ過時間を長くすると、オストワルド熟成及び凝固により粒子が大きくなる。ゲル様フラボノイド水和物の沈殿の濃縮ファクターが1/15の分散液を用いることで、1ml/分×cm2を超えるろ過速度を達成した。
【0075】
ナノ粒子から分散媒体を完全に除去するためには通常、遠心分離、凍結乾燥(フリーズドライ)及び/又は気流噴霧乾燥過程が必要となる。本発明のいくつかの用途/製剤には、フラボン水和物/フラボノイド沈殿を直接、化粧品及び栄養補助食品製剤に添加し、残りの水分含量を完全に除去するさらなる工程は行わない。
【0076】
本発明は、完全に水を除去する必要のない用途について、その後さらに蒸発又は水を除去するための他の過程を行うことなく、分散媒体を除去するために有効な手段についても検討する。本発明以前は、溶液からナノ粒子を回収すること、及び固体の状態でナノ結晶をさらに処理することは、解決の難しい課題であった。本発明は、粒子を回収するため、及びその後の処理のために溶媒を除去するための、新規かつ迅速な技術を提供する。そのため、噴霧乾燥、凍結乾燥及び限外ろ過などの、溶媒及び分散媒体を除去するために一般的な技術を必要としない。
【0077】
機械的な工程を介したナノ粒子の製造
高圧乳化法
高圧乳化(HPH)は、水に難溶性の粒子を含む懸濁液において、粒径がサブミクロンサイズの粒子を調製する機械的な工程である。ナノ分散液を形成する原理は、高圧ホモジナイザー中の高圧によって生成されるキャビテーションに基づいている。粒子の特性、処理圧、及び処理を何回行ったかなどの複数の因子に基づいて、粒子サイズを小さくすることができる。
【0078】
本発明の一態様では、(1)20ミクロン未満のフラボノイド粒子を安定化剤の溶液に分散させて分散液とし、そして(2)次に、所望される大きさのナノ粒子を含むナノ分散液が調製されるまで、この懸濁液を、高圧ホモジナイザーを用いて複数回処理する。ホモジナイザーにかけている間に粒子は、キャビテーション力、強い剪断力、及び粒子間の衝突によって破砕される。ホモジナイザーのギャップ部分では、室温で静圧が液体の蒸気圧よりも低下すると同時に、流体の動圧が上昇する。その後、液体が沸騰し始め、室温で気泡が形成され、そして分散液がギャップから排出される際に気泡が破裂し、正常な空気圧に達する。この破裂力は、微粒子をナノ粒子に破砕するのに十分なものである。下記実施例18を参照のこと。
【0079】
超音波処理
超音波処理による分散及び脱凝集は、超音波キャビテーションの結果として生じる。液体に超音波をかけると、液体中に伝播する音波によって高圧と低圧が交互に起きるサイクルが生じる。これにより、個々の粒子間の引力に機械的なストレスが加わる。液体中に生じる超音波キャビテーションは、最大1000km/時間(およそ600mph)までの高速液体噴流を引き起こす。そのような噴流は粒子間にある液体を高圧で圧迫し、それらを互いに分離させる。より小さい粒子が液体噴流によって加速され、高速で衝突する。このことにより、分散させるためだけでなく、ミクロンサイズ及びサブミクロンサイズの粒子を粉砕するために、超音波が有効な手段となっている。下記実施例17を参照のこと。
【0080】
そのような単純な超音波による処理は、フラボノイドの栄養補助食品及び医薬品両方への応用に有効である。
ナノ粒子を製造するその他の方法としては、米国特許第4,826,689号及び同第5,314,506号に記載されている微小沈殿法;国際公開第01/92293号、同第96/32095号、同第00/44468号、同第00/38811号に記載されている溶媒/貧溶媒法;及び国際公開第98/32095号、同第99/59709号に記載されている溶融乳化法が挙げられる。
【0081】
III−フラボノイド製剤の調製方法
A.微粒子フラボノイド製剤の調製方法
本発明の一態様では、アピゲニンのようなフラボノイドを、水相に可溶な塩の形態で担体に充填し、その後製剤を撹拌しながらpHを下げる。系のpHが下がると、フラボノイド(例えば.アピゲニン)がうまく分散した微粒子として沈降し始める。pHを皮膚科学的に許容可能なレベル、すなわち皮膚に毒性を示さず、かつ、刺激のないレベルに調整する。撹拌を続けることでフラボノイドが大きな結晶を形成することを防ぐこと、及び結晶が凝集することを防ぐことができる。最終的なシステムは、可溶性フラボノイド、及び製剤中に分散したフラボノイド(例えばアピゲニン)微粒子の両方を含む。
【0082】
分散された微粒子の形態は皮膚の層を透過することができ、かつ、溶解したフラボノイド、例えばアピゲニン、を補充するための貯蔵所として利用することができる。これによりフラボノイドが消費されても、フラボノイドの持続した生物学的利用率を維持することができる。
【0083】
本発明の別の態様は、アルコールのような非毒性有機溶媒(DMSO以外)にフラボノイドを溶解する工程;この生成物を担体、例えば皮膚科学的に許容可能な担体、に添加して、フラボノイド含有製剤を形成する工程;任意に、製剤のpHを4−8に調製する工程;及びフラボノイドが分散するまで(例えば、形成工程による凝集の可能性を防ぐように均一な分散液になるまで)組成物を混合する工程を含む、組成物の調製方法である。
【0084】
製剤は、以下:
1)フラボノイド製剤を水性溶媒(エトキシジグリコール及び/又はジメチルイソソルビドなど)に溶解し、局所媒体の成分として添加することができる;
2)アルカリ金属フラボノイド塩を媒体の成分として添加し、その後皮膚科学的に許容可能なpH、通常は中性に近いpH、に酸性化することができる。これにより、可溶化フラボノイドを分散された微粒子フラボノイドと共に得る;
のような、様々な方法により調製することができる。
【0085】
別の態様は方法1と2の組み合わせである。
製剤の成分を決められた順序で若しくは順不同で、順次加えることにより組み合わせることができ、その後混合して混合物を形成する。例えば、水相を形成させるためには通常、水溶性の成分を組み合わせ、そして油相を形成させるためには通常、水に混合することができない成分を組み合わせる。その後、二相を乳化して、混ぜ合わせることができる。あるいは、組成物をワンポット系での反応のように、混合によって調製することができる。
【0086】
組成物の製造方法は、フラボノイドを溶媒に溶解して溶液を形成する工程、及びこの溶液を媒体に添加して製剤を形成する工程を含むこともできる。溶媒の媒体への添加は、例えば、溶解したフラボノイド水和物が媒体中で均一に分散するように、激しく撹拌しながら行うこともできる。
【0087】
溶媒又は溶媒混合物に溶解したフラボノイドを加えることで、特定の製剤中でアピゲニンなどのフラボノイドの溶解限度を超えると、微粒子の分散液が形成される。担体中の分散剤、界面活性剤、及び/又はポリマー増粘剤は、微粒子の凝集を低下させることができる。
【0088】
一般的に、懸濁及び分散形態のアピゲニンなどのフラボノイド微粒子の、媒体中で溶解している形態に対する割合は、製剤のpHレベルをやや塩基性のpH(およそ8のpH(例えば、pH7−9))からやや酸性のpH(およそ4のpH(例えば、pH3.5−5))に低下させることにより、上昇する。
【0089】
フラボノイドをアルコールに溶解して、濃縮されたアルコール可溶化溶液を形成する工程と、濃縮アルコール可溶化溶液を媒体に添加し、その後pHを5−8に調整する工程により、製剤を調製することができる。アルコール可溶化溶液を添加する時に、フラボノイドが十分に均一に分散するように、媒体を混合することが望ましい。任意に、この方法は、添加剤を可溶化溶液及び/又は媒体に添加する工程をさらに含むことができる。
【0090】
乳化担体の粘性を低減させるためのその場所での方法
これまで行われてきた方法では、機械的(湿式粉砕、高圧乳化(HPH))、沈殿などを含む様々な処理方法で、最初にサブミクロンサイズの微粒子を形成する工程が必要であった。さらに、粒子を局所製剤に加える前に液体媒体をサブミクロンサイズの粒子から分離するために、時間がかかり、かつ、高額な、ろ過及び蒸発技術(気流噴霧乾燥、凍結乾燥など)が必要となっていた。
【0091】
本発明の別の態様は、未処理アピゲニン粉末又は別の比較的溶けにくいフラボノイドを、水中油型、又は油中水型乳濁液に直接添加し、そして超音波処理及び/又はHPH技術を用いて処理し、微粒子を分散させる。この方法では、液体混合物の粘性を水の粘性と同等のレベルまで下げるために、乳濁液の超音波処理及び/又はHPH処理を、高い温度で行うことが必要とされる。液体混合物を約120°F−170°Fの温度で超音波処理した場合に、微細なサブミクロンサイズの粒子が形成される。さらに、分散剤、界面活性剤及びその他の安定化剤などの乳濁液の安定化添加剤は、粒子がその後凝集する可能性を阻害することに役立つ。この、その場での処理方法を用いることにより、局所製剤を含む製剤中で粒子をサブミクロンサイズにするための、時間がかかり、かつ、高額な処理工程を省略することができる。実施例20を参照のこと。
【0092】
B.可溶化フラボノイド製剤の調製方法
本発明は、
a)フラボノイド化合物と熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成する工程;
b)フラボノイド化合物の粒子が溶解し、そして得られた混合物が透明な液体を形成する温度まで、混合物を撹拌しながら加熱する工程;及び
c)可溶化フラボノイド溶液を冷却する工程;
を含む、ポリソルベートを含む非イオン性界面活性剤化合物のような、熱に安定で非毒性フラボノイド可溶化化合物を用いて、比較的水に溶けにくいフラボノイドの溶解濃度を実質的に上昇させる方法に関する。
【0093】
その他の実施形態では、工程b)又はc)の後に、可溶化フラボノイド混合物を皮膚科用、経口用、注入用、皮膚パッチ、又はエアロゾル担体に混合する工程を行う。
別の態様では、粘性の低い可溶化フラボノイド溶液を形成させるために、可溶化フラボノイド溶液にエチルアルコールのようなアルコールを添加する工程を行う。可溶化フラボノイド混合物の粘性レベルを低下させるための、その他の好ましい溶媒としては、イソプロピル及びベンジルアルコールなどの短鎖アルコール、及びエトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドが挙げられる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「熱に安定なフラボノイド可溶化化合物」とは、少なくとも200℃までの熱に安定で、フラボノイドを混合する場合の熱処理(加熱)でフラボノイドが溶解し、そして周囲温度まで冷却してもフラボノイドが溶解し続ける化合物である。フラボノイド可溶化化合物は、好ましくは、周囲温度でも長期間フラボノイドが溶解し続けることのできる化合物である。
【0095】
ポリソルベート以外では、本開示の高温法を用いることで、フラボノイドの溶解濃度レベルを上昇させることができるその他の熱に安定な(すなわち200℃以上の熱に安定な)可溶化化合物としては:超分岐又はデンドリマーポリエチレンオキシド重合体(ソルビタンポリエチレンオキシドデンドリマーを含む)、超分岐ポリエチレングリコール、超分岐ポリプロピレングリコール、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0096】
アピゲニン/ポリソルベート80製剤を以下の様に製造することができる。
・アピゲニン粉末と粘性のある液体ポリソルベート80を、約5−10重量%のアピゲニンに対してポリソルベート80を95−90重量%の割合で混合する。混合物の混和を促進するために、少量(5−10重量%)の蒸留水及び任意にアセトン及び/又はエチルアルコールを任意に加える。
・この混合物をよく撹拌して、濃厚なペースト様混和物を形成する。
・次にこの混合物を比較的高い温度(約100−150℃)まで、撹拌しながら徐々に加熱する。加熱と同時に、水及びポリソルベート80中に存在する揮発性成分が蒸発する。
・揮発性成分が除去され、加熱温度が約200−300℃を超えると、固体アピゲニンの全量がポリソルベート80混合物中に溶解して、茶褐色の透明な液体が生じる。
・周囲温度まで冷却すると、粘度の高い茶色の液体が得られる。アピゲニン含量が高いほど、得られる液体の色が濃くなる。
・粘性のあるアピゲニンポリソルベート80液体中のアピゲニン濃度が4.05%の場合、アピゲニン含量は40.5mg/ml又は40,500ppmである。
【0097】
予想外にも、アピゲニン及びその他の比較的水に溶けにくいフラボノイドの溶解度レベルを上昇させるためには、温度レベルを高くする必要があった。
アルコール溶液に溶解したアピゲニン/ポリソルベート80を使用することにより、アピゲニン及びその他の比較的不溶性なフラボノイドを所望の標的部位に送達することができる。本発明は、その他のフラボノイドの濃度レベルを上げるために、界面活性剤のような適正な極性をもつ熱に安定な化合物を、その他のフラボノイドと組み合わせる方法を含む。実施例14及び15は、その他のフラボノイド及びポリソルベートを含む製剤を示す。
【0098】
実施例21では、本発明の製剤は、十分な濃度のアピゲニンを皮膚の表皮及び真皮層に送達した。
III−本発明のフラボノイド製剤
本発明は、多様な応用において使用可能なフラボノイドを処方するための、複数の方法を含む。本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、組成物又は製剤に含まれる成分が医薬品等級である組成物を意味する。
【0099】
表IIに、本フラボノイド製剤を送達する手段を提供する、様々な投与経路及び剤形を挙げる。
【0100】
【表2】
【0101】
製剤は便宜上、単位投与剤形として提示することができ、また当該医薬分野において既知の方法で調製することができる。製剤を、即時型、又は拡散増強化合物の徐放性若しくは制御放出型としてもよい。持続放出システム(徐放型、制御放出型などとしても知られる)の利点は、投与頻度を低下させることができること、及び同じ薬剤のその他の製剤と比較して、薬剤の全身濃度をより長期間一定に保つことができることである。本発明の組成物の適切な用量はその化合物の代謝、及び治療する状態の重篤度により異なる。
【0102】
A.微粒子フラボノイド製剤
アピゲニン及びルテオリンを含む多くのフラボノイドは一般的に、水、及び医薬品、化粧品及び食品添加剤に好適なほとんど全ての溶媒に不溶性である。フラボノイド水和物を形成することで、生物学的利用能を高める、高度に分散した微粒子のコロイド分散液を形成する方法が示される。
【0103】
局所投与
本明細書では、フラボノイドの微細な微粒子を局所製剤中に分散させる方法を含む、局所用製剤にフラボノイドを処方する方法を開示する。
【0104】
本明細書では、ヒトの皮膚及び動物の皮膚の両方を含む皮膚を保護するため及び治療するための局所製剤を提供する。そのような製剤は、十分な量のフラボノイド(例えば、アピゲニン及び/又はルテオリン)微粒子を、使用目的に十分な量(例えば、皮膚の内部に送達され、皮膚癌を予防し及び/又は治療するための生物活性剤として機能するのに十分な量)で含む。所望されるアピゲニン及び/又はルテオリンの具体的な量は、使用するその他の成分の濃度及び型、使用者の皮膚の状態、並びに使用者の皮膚損傷の重篤度及び程度により異なる。
【0105】
製剤を、スプレー、ローション、石鹸、クリーム、ペースト、軟膏、乳濁液(例えば、油中水型乳濁液、水中油型乳濁液、マイクロエマルション、ナノ粒子の乳濁液)、コロイド、懸濁液(例えば、ナノ粒子の懸濁液)、粉末、ゲル、泡、無水組成物など、並びに前述した形態を少なくとも1つ含む組み合わせ、の剤形の局所用組成物とすることができる。製剤を、例えば、フラボノイド水和物(及び局所製剤のその他の活性成分)と皮膚の表面とが接触することを可能にする、任意の形態にすることができる。媒体及び担体、並びに添加剤と名付けた以下のセクションを参照のこと。本明細書で使用する場合、用語「w/o/w乳濁液」とは、水(W)滴粒子を含む油(O)滴粒子が水(W)中に分散している二重乳濁液で、水中油中水型乳濁液とも呼ばれる乳濁液を意味する。本明細書で使用する場合、用語「o/w乳濁液」とは、油(O)滴粒子が水(W)中に分散している、水中油型乳濁液とも呼ばれる乳濁液を意味する。
【0106】
経皮投与
本発明は、比較的不溶性のフラボノイドのナノ粒子を含有している局所製剤を含む、経皮的な薬剤送達法を含む。アピゲニンのナノ粒子を含む水中油型の局所用乳濁液を用いた生体外での皮膚透過試験から、表皮及び真皮層に思いの外高い濃度のアピゲニンが沈着したことが示された。フラボノイド微粒子を用いた一般的な経皮的製剤については以下のセクションBで考察する。実施例21をもまた参照のこと。
【0107】
経口投与
経口投与用にフラボノイドを調製する場合、それらを通常、薬学上許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、医薬製剤又は単位投与剤形を形成する。経口投与用には、フラボノイドを粉末、顆粒製剤、溶液、懸濁液、乳濁液として提示すること、又は、チューインガムから活性成分を摂取するための天然の若しくは合成重合体中に又は樹脂中にフラボノイドを加えることができる。
【0108】
経口投与するフラボノイドを、持続放出用に処方すること、例えばフラボノイドの被覆加工、若しくはマイクロカプセル化することができ、又はさもなければ持続送達用の装置内に加えることもできる。そのような製剤に含まれる活性成分は全体で、製剤の0.01−10重量%である。
【0109】
フラボノイドを含む医薬製剤は、当該分野において既知の方法により、周知の、かつ、容易に入手可能な材料を用いて調製することができる。例えば、フラボノイドは一般的な賦形剤、希釈剤、又は担体を用いて処方することができ、そして、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、エアロゾルなどの剤形に成形することができる。これら剤形の全てを、即時放出型、持続放出型又は腸溶性とすることができる。これらを、経口又は舌下又は口腔送達用のいずれかにすることができる。そのような製剤に好適な賦形剤、希釈剤、及び担体の例としては、充填剤、並びにデンプン、セルロース、糖、マンニトール及びケイ素誘導体のような増量剤が挙げられる。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンのような結合剤を加えることもできる。グリセロールのような湿潤剤、炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウムのような崩壊剤を含んでいてもよい。パラフィンのような分解を抑制するための薬剤を加えることもできる。第四級アンモニウム化合物のような再吸収促進剤を加えることもできる。セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような界面活性剤を加えることもできる。カオリン及びベントナイトのような吸着性の担体を加えることもできる。タルク、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに固形のポリエチレングリコールのような滑沢剤を加えることもできる
本発明の組成物に、セルロース及び/又はセルロース誘導体のような増粘剤を加えることもできる。増粘剤の例としてはこの他に、キサンタンゴム、グァーガム若しくはアラビアゴムなどのゴム、あるいはポリエチレングリコール、ベントンなどが挙げられる。
【0110】
例えば、フラボノイドを含む錠剤又はカプレットに、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムのような緩衝剤を加えることができる。カプレット及び錠剤に、セルロース、予めゼラチン化したデンプン、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、コーンスターチ、ミネラルオイル、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの不活性成分を加えることもできる。フラボノイドを含む硬又は軟ゼラチンカプセルに、ゼラチン、微結晶セルロース、グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、及び二酸化チタンなどの不活性成分、並びに、ポリエチレングリコール(PEG)及び植物油のような液体媒体を加えることもできる。さらに、フラボノイドを含む腸溶性カプレット又は錠剤は通常、セルロースアセテート誘導体で被覆し、胃では崩壊せず、より中性からアルカリ性の十二指腸の環境で溶解するように設計する。
【0111】
フラボノイドを、簡単に経口投与できるようにエリキシール又は溶液として処方することもできる。フラボノイドを含む医薬製剤はまた、水性溶液若しくは水を含まない溶液又は分散液の形、あるいは乳濁液又は懸濁液の形をとることもできる。
【0112】
非経口投与
一般的なフラボノイド微粒子の非経口製剤については、以下のセクションBで考察する。
【0113】
吸入投与
フラボノイドを気道に投与することもできる。吸入又は吹送投与用には、本明細書で開示したフラボノイド組成物を乾燥粉末、例えば、治療薬と、乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物、の形態にすることができる。粉末組成物を例えば、カプセル若しくはカートリッジとして、又は例えば、吸入装置や吹送装置の補助により、そこから粉末を投与することができるゼラチン若しくはブリスターパックを用いて、又は定量式吸入器(MDI)若しくは乾燥粉末吸入器(DPI)を用いた単位投与剤形として提示することができる。
【0114】
エアロゾル又はスポイトを用いて投与する場合には、フラボノイドを水溶液として投与することができる。従って、その他のエアロゾル医薬製剤には例えば、約0.01−10%までの本開示のフラボノイド成分を含む生理学的に許容可能な生理食塩水を含むことができる。液体製剤には、メチルパラベン及びプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムのような保存剤、リン酸及びクエン酸緩衝液のような緩衝液、マンニトール、塩化ナトリウムなどの張性調整剤、及びアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、並びにD&C yellow#10、FD&C yellow#6などの色素を加えることもできる。本発明の実施に当たっては、液体に溶けない又は懸濁することができない、微粉化した固体フラボノイド粒子の形態での乾燥エアロゾルもまた有用である。フラボノイドを、微粉化した粒子を含む散布剤として処方することもできる。
【0115】
吸入により、上気道(鼻)又は下気道に投与するためには、噴霧器若しくは加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達するためのその他の簡単な手段を用いてフラボノイドを簡便に送達する。加圧パックには、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好適な気体などの好適な噴射剤を加えることができる。加圧エアロゾルの場合には、一定量を計測するための弁を設けることで単位用量を決定することができる。製品を、噴霧器を使用することによって送達することもできる。
【0116】
鼻腔内投与用には、点鼻薬、プラスチック製の噴霧器を用いた液体スプレー、又は定量式吸入器を用いて治療薬を投与することもできる。噴霧器の典型的な例としてはMistometer(Wintrop)及びMedihaler(Riker)がある。
【0117】
座剤
さらに、フラボノイドは、直腸用及び膣用座剤などの投与形態にも適している。医療用の座剤は、ココアバター及び植物油から製造された基材などの疎水性基剤;ゼラチングリセリン、及びポリエチレングリコールなどの親水性基材を含む場合がある。
【0118】
B.可溶化フラボノイド製剤
本明細書では、熱に安定なフラボノイド可溶化化合物中で、比較的水に溶けにくいフラボノイドの濃度レベルを高めるために(例えば、周囲温度で約10重量%まで)、溶解濃度を実質的に上昇させる方法を開示する。この可溶化フラボノイドを、許容可能な、局所用、皮下用、経口用、腹膜用、エアロゾル用製剤、及び栄養補助食品に添加することができる。
【0119】
本開示の高温法を用いることで、フラボノイドの溶解濃度レベルを上昇させることができるポリソルベート以外の熱に安定な(すなわち200℃以上の熱に安定な)可溶化化合物としては:超分岐又はデンドリマーポリエチレンオキシド重合体(ソルビタンポリエチレンオキシドデンドリマーを含む)、超分岐ポリエチレングリコール、超分岐ポリプロピレングリコール、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0120】
界面活性剤
ソルビタンの脂肪酸エステル(一般にはスパンと呼ばれる)とそれらのエトキシ誘導体(一般的にはポリソルベートと呼ばれる)は、おそらく最も一般的に使用されている非イオン性界面活性剤であろう。混合ミセルを形成させるために、これらを単独で又は組み合わせて(例えばポリソルベート80とスパン80)使用することができる。ソルビタンエステルは水に不溶性であるが、大部分の有機溶媒には可溶性である(親水性・親油性バランス(HLB)値が低い界面活性剤である)。エトキシ化した生成物は通常水に溶け、かつ、比較的高いHLB値をもつ。これらの非イオン性界面活性剤を単独で又は好適な組み合わせで使用して、所望のHLB値をもつ混合ミセルを形成させてもよい。ソルビタンエステル及びそれらのエトキシ誘導体の主要な利点は、これらが食品添加剤として認可されていることである。それらをまた、化粧品及び医薬調整物に加えることもできる。
【0121】
水への溶解度が1mg/ml未満のフラボノイドの、水に対する溶解濃度レベルを高めるために有用であり、かつ、本発明の高温法に用いるのに有用な非イオン性界面活性剤には、エトキシ脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン界面活性剤、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、無水ソルビトールエステル及びそのエトキシ誘導体、グリコール脂肪酸エステル、及び脂肪族アミンエトキシラートが挙げられる。
【0122】
最も一般的な非イオン性界面活性剤はエチレンオキシドを基にしたものであり、エトキシ界面活性剤と呼ばれている。これらを複数のクラスに分類することができる。アルコールエトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、脂肪酸エトキシラート、モノアルカオールアミドエトキシラート、ソルビタンエステル及びそれらのエトキシ誘導体、エトキシラート、脂肪族アミンエトキシラート、並びにエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(時に高分子界面活性剤と呼ばれる)。非イオン性界面活性剤の別の重要な類型には、グリコールエステル、グリセロール(及びポリグリセロール)エステル、グルコシド(及びポリグルコシド)及びショ糖エステルのようなヒドロキシを複数もつ生成物がある。アミンオキシド及びスルフィニル界面活性剤は、非イオン性であり、頭部(head group)が小さい(M. J. Schick (ed.): Nonionic Surfactants: Physical Chemistry, Marcel Dekker, New York, 1987)。
【0123】
ポリソルベート
ポリソルベートは、いくつかの医薬品及び食品の調製に用いられている型の乳化剤である。それらはしばしば化粧品に使用されて、水を基にした製品中に精油を可溶化している。ポリソルベートは脂肪酸を用いてエステル化したPEG化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)由来の、油性の液体である。脂肪酸と直鎖ソルビタン(PEG化されていない)のエステルである界面活性剤は、一般的にスパンという名称で知られている。
・ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)
・ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)
・ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)
・ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)
ポリオキシエチレンの後に続く20という数は、その分子中にあるオキシエチレン−(CH2CH2O)−基の総数を指す。ポリソルベートの後ろの数は、その分子のポリオキシエチレンソルビタン部と結合している脂肪酸の型に関するものである。モノラウラートを20、モノパルミタートを60、モノオレアートを80で示しているこの同じ数を、それらのスパン等価物の後にも記している(スパン20、スパン40、スパン60及びスパン80)。
【0124】
本発明は、比較的水に溶けにくいフラボノイドのポリソルベートに対する溶解濃度を上昇させるための方法を含む。これまでに記載してきたように、多くのフラボノイド及び特にアピゲニンは水性の溶液に比較的溶けにくく、そのため、それらの局所剤、医薬品及び栄養補助食品への生物学的利用能は厳しく制限されている。
【0125】
本発明は、界面活性剤、詳細にはポリソルベート80、60、40及び20を用いて、ポリフェノールの水層への溶解度レベルを上昇させる方法を含む。この例では、ポリソルベート20、40及び60は様々な飽和脂肪酸を含む、同様の一連のポリソルベートを示す。脂肪酸の鎖中の炭素の数は、12(ポリソルベート20)から18(ポリソルベート60)に増加する。ポリソルベート80は18個の炭素の鎖長の不飽和脂肪酸(オレエート)を表す。これらの例は全てを含んでいるものではなく、当業者は、これらの型の任意の脂肪酸を含む非イオン性界面活性剤、及び脂肪酸のポリオキシエチレンアルキルエーテルのような、別の型の、その他の界面活性剤である非イオン性界面活性剤の有用性を認識することができる。ドクサートナトリウム若しくはラウリル硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、又はセトリミド若しくは塩化ベンゼトニウムのようなカチオン性界面活性剤もまた、単独で若しくは非イオン性界面活性剤との組み合わせのいずれかで使用することができる。いくつかの比較的水に溶けにくいポリフェノールについては、水相への溶解度が2桁を超えて高まる増強剤が得られている。
【0126】
高濃度のフラボノイドを含む新規製剤は、経口用、吸入用、局所用、腹膜用、座剤及び栄養補助食品への用途に使用することができる。この媒体は特に、自己免疫疾患及び癌への腹膜注入に有用である。溶解濃度が低い有益なフラボノイドを経口送達する手段としては、アピゲニンPS−80の飲料(特にアルコール性の飲料)への添加が有効である。
【0127】
好ましい態様において製剤は、粘性の低い可溶化フラボノイド溶液を形成させるために、エチルアルコールのようなアルコールを含む。可溶化フラボノイド混合物の粘性レベルを減少させるためのその他の好ましい溶媒には、イソプロピル及びベンジルアルコールのような短鎖アルコール、及びエトキシジグリコール及びジメチルイソソルビドが挙げられる。
【0128】
局所投与
可溶化フラボノイドの局所投与は通常、ローション、クリーム、ゲル、又は軟膏の形態で行われる。
【0129】
フラボノイドの経皮的送達
フラボノイドの非イオン性界面活性剤に対する溶解度レベルを上昇させるための記載の方法により、フラボノイドの浸透を介して、送達速度を制御しながら体循環中へフラボノイドを経皮的送達(TFD)することが可能になる。本製剤は、本質的に低い皮膚への浸透性に関する問題を検討することにより、薬剤の非侵襲的投与を提供する。皮膚は薬剤の浸透に対する優れた障壁である。浸透促進剤を添加して角質層の障壁特性を変化させることにより、薬剤の吸収が促進される。局所、経口、及び腹膜での使用では、ポリソルベート80のような、いくつかの非イオン性界面活性剤は薬理学的に不活性、非毒性、非刺激性、非アレルギー性、無臭、大部分の薬剤及び賦形剤と混合可能であり、かつ、高い溶解特性をもつと考えられている。
【0130】
浸透促進剤
アルコール及び多価アルコール(エタノール、プロピレングリコール)、界面活性剤(ツイン、スパン)、脂肪酸(オレイン酸)、アミン及びアミド(アゾン、N−メチルピロリドン)、テルペン(リモネン)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド)、エステル(ミリスチン酸イソプロピル)を含む様々な型の浸透促進剤が、過去20年間の間に開発されてきた(French E, Potton C, Walters K. Pharmaceutical skin penetration enhancement. In: Walters K, Hadgraft J, editors. New York: Marcel Dekker; 1993. p. 113-44)。
【0131】
マイクロエマルション
皮膚への浸透性を高めることを目的とした、別の製剤方法としては、マイクロエマルションを調製することが挙げられる。マイクロエマルションは、水、油、及び界面活性剤を含み、熱に安定な透明な液体となる。マイクロエマルションの特性としては、光透過性、熱力学的安定性、並びに、疎水性及び親水性成分両方への溶解性が挙げられる。マイクロエマルションは、透明で、安定な、等張性の、油、水及び界面活性剤を含む液体混合物であり、しばしば、補助界面活性剤と組み合わせられる。水相は、塩及び/又はその他の成分を含んでもよく、かつ、「油」は実際には、様々な炭化水素及びオレフィンとの複雑な混合物であってもよい。通常の乳濁液とは異なり、マイクロエマルションは成分を単に混合することで形成され、通常の乳濁液の形成で一般的に用いられる、強剪断力の条件を必要としない。2つの基本となるマイクロエマルションの型には正のマイクロエマルション(水中油型、o/w)及び逆マイクロエマルション(油中水型、w/o)がある。
【0132】
マイクロエマルションによる浸透性の増強は、媒体から皮膚への大きな濃度勾配を生じる、薬剤濃度の上昇によると考えられる。高濃度のフラボノイドを含む非イオン性界面活性剤の溶媒(本明細書に記載した)は、経皮、経口及び腹膜に使用するマイクロエマルションの調製に非常に適している。
【0133】
一態様では、マイクロエマルションは、ポリソルベート80に溶解されたアピゲニン、水、及び補助界面活性剤としてのエチルアルコール、並びにミリスチン酸イソプロプル(IPM)の油相を含有する。この態様は、皮膚への浸透性による局所使用、並びに経口、注入及び経鼻スプレーへの適用を含む。
【0134】
本発明で開示した製剤は、フラボノイドの増強された経皮的薬剤送達の方法論を可能とする。特に注目すべきは、本開示の、非イオン性界面活性剤の混合物に溶解した、アピゲニンなどの比較的水に溶けにくいフラボノイドの製剤である。ヒト及びマウスの皮膚を用いた生体外での皮膚浸透試験では、本開示の非イオン性界面活性剤混合物を使用することで、予想以上に多量のアピゲニンが表皮及び真皮層に沈着したことが分かった。実施例21を参照のこと。
【0135】
経皮パッチ
比較的不溶性のフラボノイドの経皮的薬剤送達には、非イオン性界面活性剤中に溶解したフラボノイドを、比較的揮発性のエチルアルコールのようなアルコールで希釈した薬剤を含む、経皮パッチの使用が有用である。皮膚に使用した場合、無孔性のパッチ外側の層が障壁となって、比較的揮発性のアルコールの揮発を抑制し、これにより、フラボノイドの浸透及び送達を増加させることができる。アルコール(すなわちエチルアルコール、グリコール、エトキシジグリコールなど)、エステル(ジメチルイソソルビドなど)のような、化粧品及び食品用に用いられるその他の溶媒希釈剤は、比較的粘性の高い非イオン性界面活性剤の粘性を低下させ、それにより、皮膚表面に使用した場合に又は経皮パッチに添加した場合に、薬剤が皮膚に浸透する速度と深度が上昇する。特に、皮膚パッチや経皮パッチに有用なものは、フラボノイドのマイクロエマルション製剤を使用することである。この製剤は、水中油型及び油中水型マイクロエマルションを含む。
【0136】
経皮パッチは2つの送達系、リザーバー型及びマトリックス型に分類することができる。送達を制御するためにリザーバー型で膜を使用する以外は、両型の組成は同様である。使用される膜の例としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。マトリックス型製剤では、薬剤を接着剤中に分散/可溶化することができる。一般的に用いられる2つの型の接着剤には、アクリル酸及びシリコーンを用いた材料が挙げられる。アクリル酸系の感圧接着剤の例としてはDURO−TAK(登録商標)シリーズ(Henkel、米国)が挙げられるが、これには限定されない。シリコーン系感圧接着剤の例としてはBio−PSA(登録商標)シリーズ(Dow Corning、米国)が挙げられるが、これには限定されない。いくつかの特定のアクリル酸系及びシリコーン系感圧接着剤についての追加情報を表IIIにまとめた。
【0137】
【表3】
【0138】
当業者には既知の溶媒及び浸透促進剤を組成物中に加えることもできる。使用可能な溶媒/増強剤としては、脂肪酸(オレイン酸)、エステル(ミリスチン酸イソプロピル)、アルコール(エチル及びイソプロピル)及びグリコール(プロピレングリコール、へキシレングリコール)を挙げることができるがこれらには限定されない。その他の成分としては、酸化防止剤(例えばBHT及びBHA)又はキレート剤(例えばクエン酸)を添加することができる。
【0139】
経口投与
本発明の製剤を経口投与することもできる。経口投与用には、ここで開示したフラボノイド組成物を、丸薬、カプセル、懸濁液又は溶液の形態とすることができる。経口投与用には、本開示のフラボノイド組成物を、カプセル、乳濁液、マイクロエマルション、及び水性懸濁液、溶液、分散液、マイクロカプセル、丸薬、粉末及び顆粒を含むがこれらには限定されない、任意の経口的に許容可能な剤形とすることができる。可溶化フラボノイドの一般的な経口製剤については上記セクションAで考察する。
【0140】
非経口投与
本発明の製剤を非経口的に投与することもできる。非経口投与用には、ここで開示したフラボノイド組成物を、生理食塩水のような注入用の溶液又は懸濁液に溶解した形態にすることができる。用語「非経口」は本明細書で使用する場合、静脈内、皮下、筋内、滑液嚢内、胸骨内、病巣内及び頭蓋内注入、又は点滴技術を含む。一般的な製剤としては、乳濁液及びマイクロエマルションが挙げられる。乳濁液を含む注入製剤はしばしば、注入用に、精製水、有機共溶媒、界面活性剤、懸濁剤、保存剤、酸化防止剤及びpH調整剤の混合物を含む。各カテゴリーの成分の例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0141】
共溶媒
プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、植物油、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマワリ油、ナンキンマメ油、ヒマシ油、オリーブ油、モノ−、ジ−、トリ−グリセリド、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタノール、ポリオキシ水酸化ヒマシ油、リン脂質のような中鎖、長鎖脂肪酸のエステル、及びその組み合わせ。
【0142】
界面活性剤
一般的には、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体、リン脂質、及びポリソルベートが合成非イオン性界面活性剤として用いられる。
【0143】
懸濁剤
ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びデキストラン。
【0144】
保存剤
エデト酸二ナトリウム、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、メチルパラベン及びプロピルパラベン。
【0145】
酸化防止剤
アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、チオ硫酸ナトリウム。
【0146】
pH調整剤
水酸化ナトリウム、トロメタミン、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、リン酸、酢酸並びにリン酸。
【0147】
吸入投与
本発明の製剤を吸入手段により投与することもできる。吸入投与用には、本明細書で開示したフラボノイド組成物を、フラボノイド成分の微細な液滴を気体に溶解した懸濁液として口腔又は鼻腔に送達するエアロゾルの形態にすることができる。気化器及び吸入装置はフラボノイド成分の送達を促進する。一般的な可溶化フラボノイドの吸入製剤については上記セクションAで考察する。
【0148】
吸入投与
フラボノイドを気道に投与することもできる。
IV−媒体及び担体
フラボノイドに加えて、製剤は、「薬学上許容可能な」又は化粧用又は「皮膚科学的に許容可能な」担体/媒体のような媒体を含む。「薬学上許容可能な担体」は、活性薬剤の薬理学的活性に実質的に悪影響を示さず、その受容者にとって有害でなく、又は受容者を不適切に傷つけることなく、有効量の活性成分を送達するために十分な量を投与した場合に非毒性であり、かつ、担体(希釈剤、賦形剤、及び/又は塩など)は、製剤のその他の成分との適合性をもつ。同様に、「皮膚科学的に許容可能な担体」も同様な性質をもつ。
【0149】
皮膚科学的に許容可能な担体は通常、フラボノイドと化学的に及び物理的に適合する成分であり、十分な保存可能期間をもつ安定な成分であり、そして、活性成分が皮膚(例えば、表皮及び/又は真皮)へ浸透するのを助ける成分である。皮膚科用担体は任意に、使用を簡単にするための成分、及び外観が優れたものにする特性(色、香、感触)をもつ成分を含む。
【0150】
局所製剤の使用目的により、薬剤送達プロファイルに関する製剤の目的は異なる。紫外線防止、抗真菌及び角質溶解製剤用には、薬剤送達及び薬剤の角質層(皮膚の外層)での保持の強化が望まれる。逆に言えば、皮膚の生理機能を修正することを目的とした局所製剤には、皮膚下層での薬剤沈着及び皮膚下層(実際には表皮及び真皮)への浸透が必要とされる。
【0151】
媒体は例えば、希釈剤、分散剤、及び/又は製剤中に含まれるその他の材料(例えば、組成物を皮膚に使用した場合にそれらの拡散を促進するための材料)の担体として作用し得る。媒体のいくつかの例としては、有機成分(アルコール、油など)、水性の溶媒(例えば治療での使用に好適な濃度で、例えば活性フラボン成分が溶解又は分散可能な溶媒)などが挙げられる。
【0152】
より詳細には、媒体としては、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシジグリコールなど)、油(ブドウ種子油、ホホバ油、ココナツ油、ゴマ油、鉱油など)、グリセロール、脂肪酸エステル、ジメチルイソソルビド、並びに前述の担体を少なくとも1つ含む組み合わせ、が挙げられる。それらを、活性成分のコロイド微粒子を所望の濃度で溶解又は分散させるために選択することができる、つまり、許容可能な担体とは、活性成分(フラボノイド及び/又はフラボノイド水和物など)が溶解している、及び/又は微粒子として分散及び懸濁している担体である。
【0153】
媒体の量は、製剤の総重量に基づいて、製剤の99.99重量%以下、具体的には80重量%−99.99重量%にすることができ、かつ、媒体を上で考察した最終製剤として様々な形態のうちのいずれにすることもできる。
【0154】
水及び油に加えて、媒体成分としては、液体の皮膚軟化薬、固体の皮膚軟化薬、溶媒、湿潤剤、増粘剤、粉末、並びに前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。溶媒の例としては、乾燥防止及び/又は乾燥緩和剤としてのエチルアルコール、イソプロパノール、エトキシジグリコール、及びジメチルイソソルビド、及びアセトン、及び/又は皮膚を保護するためのステアリルアルコール、セチルアルコール、アセチル化ラノリンアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラノリン、カカオバター、シアバター、油(例えば、オリーブ油、ヒマワリ種子油、アボカド油、鉱油)、ワセリン、及びミリスチン酸(例えば、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル)、並びに前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0155】
本発明の一態様では、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイドを、フラボノイドが十二指腸で放出されるように腸溶性に処方する。別の態様では、フラボノイド水和物又は可溶化フラボノイドを、シクロデキストリンと共に処方する(例えばアルファ、ベータ又はガンマシクロデキストリン)。
【0156】
V−添加剤
ヒアルロン酸(HA)
真皮構造でHAは、顕著な物理的適応性及び卓越した生物学的適合性を備えた、空隙を充填する、構造を安定化する、そして細胞を保護する分子として機能する。加えて高レベルの粘弾性をもつHA構造は、皮膚での水分量を高レベルに保つのに役立つ。皮膚の水分含量と真皮組織中のHAレベルとの間には強い相関関係がある。皮膚が老化するにつれてHAの物理学的及び生物学的特性が大きく変化すること、特に代謝特性、含量が変化し、皮膚の機械的特性が悪化することが確認されている。皮膚の細胞内構造中に存在するHAの機能を維持することが、健康な皮膚の物理的な概観の保持に寄与すると考えられている。
【0157】
別の側面では、HAのような多糖類分子が、酵素及び酸化(遊離ラジカル)機構によって分解されることが確認されてきた。従って、HAなどの多糖類の分解を予防するのに有用な局所製剤の開発が望まれている。この目的を達成するためにフラボンなどのフラボノイドは、十分に立証されているそれらの抗ヒアルロニダーゼ及び抗酸化特性がこの要求を満たすため有用であり、それにより、その分解に寄与する機構に対抗するHAに望まれる機能の維持に役立つ。
【0158】
さらに、フラボノイド粒子製剤にHAを添加すると、ナノ粒子のゼータ電位が高まることから、HAの添加は粒子の凝集を阻害するのに有用である。加えて、HAは局所製剤の粘性を高めるため、ナノ粒子の層化防止に役立つ。
【0159】
局所的にHAは水分貯蔵特性をもつため膨張剤及び滑沢剤として有用であり、HAを化粧品へ添加すると、目で見て明らかな皮膚状態の改善がもたらされる。使用中、HAは薄くて透明で、粘弾性のある表層を形成し、若々しく健康な皮膚特性、すなわち柔軟性、弾性及び色調、の保持に役立つ。皮膚の水分量を上昇させると、角質層の緊密な構造が膨張し、開放される場合があり、このことにより、本明細書に記載した局所製剤のフラボノイド成分の浸透が増加する。
【0160】
製剤は、特定の添加剤が活性成分に悪影響を及ぼさない限り、添加剤をさらに含む場合がある。製剤の様々な実施形態で使用可能な添加剤のいくつかの例としては、以下のものが挙げられる。
酸化防止剤(例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及び没食子酸プロピル)、
界面活性剤(例えば、相間の界面張力を低下させることのできるもの、及び/又は製剤の安定性を向上できるもの、及び/又は乳化剤として作用し得るもの。ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリン酸、ジメチコーン、シリコーン(シロキサン)界面活性剤、ポリソルベート、ラウレスナトリウムなど)、
皮膚調整剤(例えばシリコーン油など)、
保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムなど)、
湿潤剤又は皮膚軟化薬又は皮膚保湿剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、鉱油、ミリスチン酸イソプロピルなど)
緩衝液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び酢酸緩衝液など)、pH調整剤(トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)、塩酸及びリン酸など
ゲル化剤(ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシルチルセルロース(hydroxyrthyl cellulose)、ポリアクリル酸重合体、及びポロキサマーなど)
ビタミン(例えば、A、B、C、D、E、K、など)、
ミネラル、植物抽出物(例えば、アロエ・ベラ、マンサク、ニワトコ、キュウリ、カミツレ、など)、
抗炎症剤、
皮膚軟化剤、
皮膚保湿剤、
皮膚保護剤、
シリコーン、
鎮痛剤、
皮膚浸透促進剤(プロピレングリコール、トランスキトール、ミリスチン酸イソプロピル)、
着色料(黄色5号など)、
香料(又は香水)、
ロウ(例えば、蜜ロウ、パラフィンワックスなど)、
噴射剤(例えば、圧縮空気、炭化水素(プロパン、ブタン、イソブテンなど)、
紫外線防止成分(例えば、無機及び/又は有機紫外線防止剤、酸化チタン、酸化亜鉛、アボベンゾン、オキシベンゾン、ホモサラート、オクトクリレン、オクチノキサートなど)、又は
前述したものを少なくとも2つ含む組み合わせ。
【0161】
製剤の総重量に基づいて製剤は、紫外線防止成分を0.01重量%−20重量%、具体的には0.1重量%−約10重量%、より具体的には0.5重量%−5重量%含む場合がある。皮膚製品用のそれら媒体は脂溶性であり、すなわち皮膚層へ十分に浸透し、フラボン水和物を皮膚の脂質に富む相に送達することができる。
【0162】
フラボノイドを油/水(「o/w」)及び/又は水/油/水(「w/o/w」)乳濁液として、製剤に負荷することができる。乳濁液は、分散剤、乳化剤、界面活性剤、などを含む場合がある。
【0163】
フラボン水和物が使用者の皮膚に優先的に吸収され、酸化亜鉛及び酸化チタンを含む相は吸収されないが、皮膚表面の外側に紫外線から皮膚を保護する層を形成するように、分散及び/又は可溶化フラボン及び/又はフラボン水和物をコロイド形態の混合物として含む製剤を、酸化チタン及び酸化亜鉛と共に媒体に添加することができる。
【0164】
フラボン及び/又はフラボン水和物用の媒体は比較的単純な溶媒又は分散剤(油及び有機アルコールなど)を含むが、通常担体は、局所使用により貢献する組成物、特に、薬剤を局所に定位させ、かつ、発汗への耐性をもたらす膜又は層を皮膚上に形成し、及び/又は皮膚(例えば、皮膚の表皮下層)への活性成分の送達及び皮膚脂質層への活性成分の浸透を助ける組成物を含むことが好ましいということが知られている。そのような組成物の多くは、ローション、クリーム、スプレー及びゲルの形態をとる。一般的な組成物としては、水及び/又はアルコールを含むローション、皮膚軟化剤(炭化水素油、炭化水素系ワックス、シリコーン油、植物性脂肪及び/又は油、動物性脂肪及び/又は油、海産脂肪及び/又は油、グリセリド誘導体、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール(例えば、多価アルコール、アルコールエステル)、ラノリン(誘導体を含む)、エステル(例えば、多価エステル、ロウエステル)、ステロール、リン脂質など、並びに前述のものを少なくとも1つ含む組み合わせ)が挙げられ、通常は乳化剤(非イオン性、カチオン性又はアニオン性)もまた含まれる。これら同じ一般的な成分を、成分の比率を変えること及び/又はゴム若しくはその他形態の親水性コロイドのような増粘剤を添加することにより、ローションではなくクリームとして、又はゲルとして処方することもできる。
【0165】
一態様において製剤は、溶解及び分散(例えば、微粒子)形態両方のフラボノイドを含む。溶解形態のフラボノイドは皮膚層に浸透して生理活性を示すが、分散させた水和物は、フラボノイドの持続性送達を維持するために、溶解水和物が消費された場合に溶解フラボノイドの濃度レベルを維持させるための貯蔵庫として役立つことができる。
【0166】
製剤の総重量に基づいて、約2.0重量%のアピゲニン及び/又はアピゲニン水和物及び約0.5重量%のアスコルビン酸、約0.5重量%の酢酸トコトリエノール及び約0.25重量%のグリコール酸を含み、その他が媒体成分である、レシチン系水中油型クリームを用いて製剤を調製することができる。
【0167】
別の実施例では、製剤の総重量に基づいて、3.0重量%のレシチン、約0.5重量%のアスコルビン酸、約0.5重量%の酢酸トコトリエノール、約0.25重量%のグリコール酸、並びに全体で約8重量%の酸化亜鉛及び酸化チタンを含み、その他が媒体成分である、レシチン系水中油型クリームを用いて製剤を調製することができる。
【0168】
組成物は任意に、
(i)界面活性剤、ビタミン、ミネラル、植物抽出物、抗炎症剤、植物抽出物濃縮物、皮膚軟化剤、皮膚保湿剤、皮膚保護剤、湿潤剤、シリコーン、皮膚鎮静成分、皮膚浸透促進剤、着色料、香料(香水)、保存剤、pH調整剤、及び前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択される添加剤;及び/又は
(ii)酸化チタン、酸化亜鉛、又は前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ;をさらに含む場合がある。
【0169】
通常、フラボノイド組成物はその組成物の総重量に基づいて、0.01重量%以上のフラボノイド、具体的には1重量%以上、例えば、0.1重量%−10重量%、具体的には0.5重量%−8重量%、より具体的には2重量%−5重量%、を含む可能性がある。製剤はその製剤の総重量に基づいて、0.01重量%以上のフラボノイド(例えば、0.01重量%−20重量%のフラボノイド、具体的には0.05重量%−15重量%のフラボノイド、より具体的には0.1重量%−10重量%のフラボノイド、さらにより具体的には0.5重量%−4重量%のフラボノイド、及び一層さらに具体的には1重量%−2重量%のフラボノイド)を含む可能性がある。
【0170】
本明細書で開示した範囲は、包括的、かつ、合体可能なものである(例えば、「25重量%まで、又はより具体的には0.5重量%−5重量%」の範囲は、「5重量%−25重量%」などの端点と中間値全てを含む)。「組み合わせ」は、混和物、混合物、複合物、反応生成物などを含む。さらに、用語「第一の」、「第二の」などは、本明細書ではいずれの順序、量、又は重要性を示すものではなく、むしろ、ある要素を別の要素から区別するために用いられ、そして本明細書で用語「1つ」及び「1種」は量を限定するものではなく、むしろ、言及した事項が少なくとも1つ存在することを示すものである。接尾辞「(類)」は本明細書で使用する場合、その用語の単数及び複数の両方を含むことを目的とした修飾語であり、これによりその用語が1つ以上含まれることになる(例えば、膜(類)は1つ以上の膜を含む)。本明細書を通じて、「一態様」、「別の態様」、「ある態様」などは、本明細書で記載される少なくとも1つの態様に含まれる態様に関連して記載されるある特定の要素(例えば、特色、構造、及び/又は特徴)を意味し、そしてそれらは、任意にその他の実施形態に含まれる場合がある。加えて当然のことながら、記載された要素を、様々な実施形態中の任意の好適な方法により、組み合わせてもよい。本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリル酸塩」は、アクリル酸及びメタクリル酸系の両方を包含する。
【0171】
【表4−1】
【0172】
【表4−2】
【0173】
栄養補助食品/食品/食品添加剤
本開示発明の微粒子及び可溶化フラボノイド組成物を、単離した栄養素、食品添加剤、遺伝的に改変された「デザイナー」食品、ハーブ製品、並びにシリアル、スープ、及び飲料のような加工品のような、多くの栄養補助食品製品に用いることができる。本明細書で使用する場合栄養補助食品は、疾患の治療及び予防のために、健康に有意な効果をもたらす、任意の非毒性食品抽出物サプリメントである。
【0174】
医療食品
医療食品は、医師の監視下で消費又は体内に投与するように処方される。それらは、認可されている特定の成分に基づいたある特定の栄養所要量の医学的評価が確立されている疾患又は症状に対する、食事の管理を特に目的としている。医療食品を経口で、又は経管で摂取することができる。医療食品は常に、特定の病気をもつと診断された人々に対する特定の栄養所要量を満たすように設計される。本開示発明の微粒子及び可溶化フラボノイド組成物を医療食品中に用いることができる。
【0175】
化粧品
本発明の製剤を例えば、ファンデーション、紫外線防止用製品、日光を必要としない日焼け用製品、クリーム(例えば、保湿クリーム、日焼け用クリーム、皮膚に有益なクリーム、夜用クリーム、皮膚科用クリームなど)、美容液、皮膚に有益なローション、皮膚軟化剤、ゲル、軟膏、口紅、洗顔料、化粧水、マスク、頭髪用製品、爪用製品、並びにその他の化粧品又は用途、を含む化粧品及び皮膚科用製品のような、多くの製品中に使用することができる。
【0176】
VI−ビタミンフラボンの形成方法
本明細書では、ビタミンフラボンの形成方法をさらに開示する。例えば、「ビタミンフラボン」の形成方法は、ビタミンが融解するまで加熱する工程;フラボンを融解したビタミンに溶解して、ビタミンフラボン液体混合物を形成する工程;及びビタミンフラボン液体混合物を冷却して均一な固体混合物を形成する工程;を含む場合がある。さまざまな実施形態では、
(i)フラボンを、アピゲニン、アピゲニン水和物、ルテオリン、ルテオリン水和物、及び前述したものを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択することができ;及び/又は
(ii)ビタミンを、ビタミンB3、ビタミンB5、及び前述したビタミンを少なくとも1つ含む組み合わせ、からなる群より選択することができ;及び/又は
(iii)そのビタミンフラボンの総重量に基づいて、フラボンを0.1重量%以上、具体的には25重量%以上、より具体的には25重量%以上、及びさらにより具体的には50重量%以上、含む可能性がある。
【0177】
一態様においてビタミンフラボンの形成方法は、ビタミンが融解するまで加熱する工程;フラボンを融解したビタミンに溶解して、ビタミンフラボンを形成する工程;及びビタミンフラボンを冷却する工程;を含む場合がある。
【0178】
トコトリエノールは、ビタミンEファミリーのメンバーである。体にとって必須の栄養素であるビタミンEは、4種類のトコフェロール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)及び4種類のトコトリエノール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)から作られる。
【0179】
組成物中にトコトリエノールを用いている多くの実施形態では、トコトリエノールを天然資源から単離し、そしてトコトリエノールを豊富に含むビタミンE調整剤として製剤に添加している。しかしながら、合成調整物並びに天然のビタミンE及び合成ビタミンEの混合物もまた使用してもよい。有用なトコトリエノールは、例えば、コムギ胚芽油、ふすま、若しくはヤシ油から高速液体クロマトグラフィー用いて単離した、又はオオムギ、ビールの醸造かす、若しくはカラスムギからアルコール抽出及び/又は分子蒸留によって単離した、天然の産物である。本明細書で使用する場合、用語「トコトリエノール」は、これら天然の産物から得られたトコトリエノールを豊富に含む画分、並びに純粋な化合物を含む。いくつかの実施形態で用いたトコトリエノールは、本質的にはトコフェロールを含まない。
【0180】
トコトリエノール及び/又はトコトリエノールを豊富に含むビタミンE調整物とフラボン及び/又はフラボン水和物を媒体中に加えると、フラボン水和物(例えば、アピゲニン及びアピゲニン誘導体)が製剤中のその他成分の効果を増加させるため、特に有効である。トコトリエノールが不飽和側鎖をもつことが、それらが飽和脂肪層をもつ組織をより効率的に浸透することを可能にし、このことが、それらを化粧品にとって潜在的により有用なものとしていると考えられている。さらに、トコトリエノールのフェノール及びヒドロキシ要素がフラボンを可溶化することに寄与している。2つ以上の活性成分を組み合わせは皮膚の脂質に富む層で容易に溶解され、そして紫外線の照射により遊離ラジカルのスカベンジャーが生成される。
【0181】
アピゲニン及びアスコルビン酸(ビタミンC)及び/又はアスコルビン酸誘導体と、トコトリエノール及び/又はアルファ−ヒドロキシ酸との組み合わせは、それらの単独での使用と比較して、又はリポ酸の使用、及び/又はアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体の使用と比較してさえも、予想以上に有効である。
【0182】
本明細書では、上述した方法由来の組成物及び保健食品もまた開示する。
VII−本発明の化合物及び製剤の使用
フラボノイドは、それらが遊離ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、スーパーオキシドアニオン、UV吸収剤、血管拡張剤、抗ヒアルロニダーゼ(ヒアルロニダーゼを阻害することにより、ヒアルロン酸の分解を阻害する)、及び脂質ペルオキシラジカルであることから、複数の治療に使用できる。フラボノイド化合物はまた、コラーゲン構造の強化に有効であることも知られている。さらに、フラボノイドは、抗変異原性、抗血管新生性、抗腫瘍原性、抗炎症性、及び抗ウイルス作用をもつ。抗炎症性作用には、TNF−アルファ、IL−ベータ、COX−2、タンパク質キナーゼであるPKC、iNOS、並びにヘルパーT細胞であるTh1及びTh17の阻害が含まれる。フラボノイド、具体的にはアピゲニンは、p53の刺激因子である。研究者らは、アピゲニンが細胞周期のG1及びG2/M期に、可逆性の細胞周期停止を誘導することを見出した。
【0183】
フラボノイドは単独でも又はその他の予防上及び/又は治療上有効な薬剤と併用しても、ヒトを含む哺乳動物での癌、自己免疫疾患、糖尿病、潰瘍、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、及び肝臓疾患のような最も一般的な疾患の治療又は予防に有効である。この化合物はまた、抗血栓性活性を持つ。
【0184】
本発明は、多様な応用を可能にするための、フラボノイドの複数の処方方法を含む。本発明の化合物、組成物及び製剤は、以下で考察する障害及び疾患の予防及び治療に有用である。本明細書で使用する場合、「治療上有効量」とは、所望の効果を得るために必要な用量である。例えば尋常性乾癬の場合、治療上有効量とは、斑又はプラークの、大きさ又は重篤度を減少させる量である。「予防量」とは、障害又は疾患が生じる「可能性
」を予防する又は低減する用量である。
【0185】
皮膚疾患
本開示は、アピゲニンのようなフラボノイドを、医薬品として意味のある濃度で、皮膚科学的に許容可能なpHの範囲で含む局所製剤の製造方法を提供する。フラボノイドを溶解形態若しくは分散形態(例えば、微粒子)、又はその両方の組み合わせとすることができる。十分なフラボノイドを哺乳動物(ヒトなど)の組織に(例えば、哺乳類の角質組織に)送達できるように、局所用製剤をローション、クリーム、スプレー、皮膚パッチ、経皮パッチなどの形態にすることができる。
【0186】
局所用量
一般的に局所用量は、1−10mg/cm2の範囲、好ましくは1−5mg/cm2、より好ましくは1−3mg/cm2である。用量は、症状及び投与経路により、多様になる。FDAの紫外線防止剤局所試験で用いられている用量は、曝露される皮膚1cm2当たり、2mgである。2009年09月25日に検索した「Re: Tentative Final Monograph for OTC Sunscreen」、Food and Drug Administration (U.S.). 1998-09-11では、身長5フィート4インチ(163cm)、体重150ポンド(68kg)、胴囲32インチ(82cm)の成人が鼠径部を覆う水着を着ている場合、水着で覆われていない体表面に均一に塗布するための「平均的な」量は、29g(およそ1オンス)であると仮定している。これを顔面のみに限って検討すると、平均的な成人の顔への使用量は小さじ約1/4−1/3となる。より大きなヒトに使用する量は、これらの量に従って算出する。
【0187】
通常罹患した皮膚に使用する局所投与量に関しては、皮膚科医は推奨指針として、「指先大(fingertip unit)」と言う語を用いる。指先大1回分はおよそ500mgであり、罹患した面積を覆うのに必要な、推奨できる回数が指示される。例えば、頭皮の乾癬を十分に覆うためには、指先大3回分が必要とされるが、脚部及び足全体には指先大8回分が必要となる。この方法は、より正確な局所投与量を患者指示する手段を提供する。
【0188】
太陽光照射による皮膚損傷の予防及び治療
可溶性のフラボノイド、例えばアピゲニン及び/又はルテオリンは、損傷(光老化)を予防するため又は損傷を受けた皮膚マトリックスを修復するために、皮膚に迅速に浸透、吸収される。下記実施例21に示したように、本発明の製剤は、フラボノイドの効率的な皮膚への浸透を可能にする。
【0189】
ローション及びクリーム媒体中でのアピゲニン及び/又はルテオリンの溶解度が低いため、そのような所望される量のフラボノイドを含む組成物の形成は困難である。一態様において製剤は、十分な量の可溶化フラボノイド水和物をほぼ中性のpHで含むため、皮膚組織の損傷を最小限又は除去するために生体の皮膚マトリックス中に浸透し、また、紫外線及び/又は透過光への曝露によって引き起こされる損傷から生体の皮膚を保護する。局所製剤を患者に、好ましくは患者の皮膚への局所に使用することにより、経口的に(例えば、保健食品として)などにより、投与することができる。紫外線による損傷を予防するために、例えば遊離ラジカル、活性酸素種、及び/又はその他の酸化種を阻害するために有効な量の製剤を投与することができる。
【0190】
その抗皮膚癌活性については、アピゲニンは非常に低い濃度、約50μM未満でさえも十分に作用する。アピゲニンは、前立腺癌、乳癌、肺癌、白血病、甲状腺癌及び肝臓癌を含む様々な癌の主要な特徴である細胞増殖及び血管形成の経過中に、アポトーシス及びネクローシス機構に影響を及ぼすことにより、抗増殖性及び細胞毒性効果を示し、その結果、癌細胞の増殖を阻害する。
【0191】
作用機序
フラボノイド、例えばアピゲニンの主要な作用機序は、p53の安定性を上昇させる能力であると考えられており、フラボノイドがG1及びG2/M期の両方で細胞周期の停止を誘導する効果、及び抗炎症性、抗酸化性、非毒性、及び非変異原性特性をもつことが確認されている。これら細胞周期の停止は皮膚の洗浄又は皮膚からの拡散によってアピゲニンを除去した後には、完全に元に戻すことができる。
【0192】
アピゲニンがG1及びG2/M期の両方で細胞周期の停止を誘導するという事実を考慮すると、アピゲニンの化学予防活性の本質は、DNA損傷及び腫瘍促進剤存在下で生じる細胞周期チェックポイントの内因的な及び人工的な停止を十分に確保することによる、癌の発生及び進行の阻害であると考えられる。日光に曝露する前に、皮膚をアピゲニン及びルテオリンを用いて治療することにより、DNA損傷に反応して通常おこるG1及びG2/M期の細胞の停止期間を延長できる可能性がある。これらのフラボンは、DNA損傷に反応して正常な細胞中で生じるG1期の期間を延長し、あるいは、相当なDNA損傷の存在下でさえも細胞周期の進行が継続される場合には、これらのフラボンは活性化した腫瘍遺伝子を含む細胞のG1期を妨害する。細胞が、DNAに生じた全ての突然変異を十分に修復するためにはG1及びG2/M期での経過時間が重要であるため、腫瘍化過程が遅延又は防止される。
【0193】
日光損傷の効果は生涯にわたって蓄積されるため、ヒト及び動物の全ての癌で最もよく変異を受ける遺伝子である腫瘍抑制タンパク質p53は、患者がアピゲニン及び/又はルテオリンを局所に使用する時点で、既にいくつかの角化細胞中では不活性化されている可能性がある。これらフラボンの作用は、G1期の停止ではp53依存性であり、G2/M期の停止ではp53非依存性であるため、角化細胞でp53遺伝子が既に不活性化されている場合でもアピゲニンは、これら前癌状態細胞の小さい病巣でのG2/M期停止を強め、さらなる変異、転座、及び/又は有糸分裂の際の染色体消失を防止する。加えて、アピゲニン及び/又はルテオリンは、UV−B/A日光照射に反応して生成される遊離ラジカルを捕捉することにより、その保護効果を示すと考えられる。
【0194】
アピゲニンを用いた治療は、UVBによって開始されるアポトーシス反応を高めることができると考えられている。理論に拘束されないが、アピゲニンの化学予防作用は、皮膚癌でのアポトーシス過程における主要因子であるp53の安定性を有意に上昇させることによって、紫外線誘導性アポトーシスを高めるその能力によって説明できると考えられている。そのため、皮膚癌の予防に効果的になるように、アピゲニンを薬学的に意味のある濃度で生体の表皮又は全皮膚層に送達する必要がある(Li B.; Birt D.F.; Pharmaceutical Research, Volume 13, Number 11, November 1996, pp. 1710-1715(6))。
【0195】
本明細書で開示したように、フラボノイド、特にアピゲニン及び/又はルテオリンを含む局所用の組成物は、太陽光(UVA及び/又はUVB)に曝露したことによって生じる皮膚の損傷の予防及び/又は治療に有用である。アピゲニン及び/又はルテオリン組成物はまた、日焼け予防及び治療用の局所組成物に含まれるその他の成分の効果を強化する。
【0196】
使用中、製品は所望の結果を達成するために、単独で又は複合的に投与することができる。いくつかの実施形態では、製剤の一部分として紫外線防止成分を加えることができ、及び/又は紫外線照射を防止又は反射することによって、さらに紫外線の全スペクトルから皮膚を保護する紫外線防止成分を含む膜を形成するように、紫外線防止成分を二次的に使用することができる。
【0197】
アピゲニン及びルテオリンが細胞周期に際して細胞内で機能することから、どちらも日光中の紫外線エネルギーを吸収する細胞の外側で単に障壁として機能するその他の紫外線防止剤と併用することができる。従って、可逆性の細胞周期制御剤であるアピゲニン及び/又はルテオリンの局所使用は、有用、かつ、新規の皮膚癌予防法を示し、そして現在市販されている紫外線防止ローションと連続して、又は組み合わせて使用することができる。
【0198】
これらのフラボン水和物は、それらの抗酸化性、抗炎症性、UVからの皮膚保護及びその他の望ましい特性から、局所製剤に加える添加剤として非常に有益である。従って、アピゲニン及びルテオリンの局所使用は、有用、かつ、新規の皮膚癌の予防又は治療方法を提示し、現在市販されている紫外線防止ローションの前に又はそれらと併用して使用することができる。
【0199】
理論に拘束されないが、この製剤を、例えば、紫外(UV)光又は日光への曝露によって引き起こされる皮膚癌の治療又は予防に用いることができると考えられている。
本明細書では、フラボンを含む組成物、又は皮膚癌及び、子宮頸及び乳癌を含む局所癌の予防及び/又は治療のための局所使用を開示するが、これらには限定されない。組成物は、皮膚層に浸透して、薬学的に有効な量の、例えば皮膚及びその他の局所癌を予防及び治療するためにp53の安定性を高める量の、アピゲニンを含む。
【0200】
酸化防止剤であるアピゲニン及びルテオリンのUVBに対する光防護効果は、それらを適切な媒体中に加えて個別に使用した場合に効果的であると考えられている。フラボン及び/又はフラボン水和物はその他の成分と共に、日焼け及び慢性的な紫外線による損傷から体を保護するために、体自身の防衛機構を効果的に支持する、自然な方法を提供する。天然の酸化防止特性及び抗癌性をもつアピゲニン及び/又はルテオリンを、無機顔料と組み合わせることにより、紫外線による損傷及び皮膚癌のリスクを減少させるための相乗的な、光防護効果が得られる。紫外線防止効果及び皮膚の鎮静効果を高めるために、ビタミンEのような酸化防止剤及び皮膚保湿剤を含むその他の天然の成分を加えて、相乗効果をもつ製剤を製造することができる。
【0201】
本明細書では、フラボノイドと、哺乳動物の角質組織にフラボノイド成分を送達することを可能にする皮膚科学的に許容可能な担体とを含む局所製剤を使用する工程を含む、日光の曝露効果を低下させる及び/又は予防する方法をもまた開示する。局所用化粧組成物は、任意に、2回目、3回目、又はそれ以上適用することができる。
【0202】
癌
癌の化学予防薬に理想的な3つの性質には:1)癌の頻度低下と関連があることが知られている食品中に含まれる天然の化合物であること;2)作用機序が明かであること;及び3)その効果が可逆的であること、が挙げられる。アピゲニン及びルテオリンのようなフラボノイドは3つ全ての基準を満たしていると考えられる。
【0203】
本発明の化合物及び製剤を、癌予防並びに癌治療に用いることができる。製剤は、皮膚癌(光線角化症、黒色腫、基底細胞癌を含む)、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、白血病、甲状腺癌、肝臓癌、及び神経芽細胞腫を含む脳腫瘍の治療又は予防に有用である。
【0204】
その他の皮膚障害の治療方法
本発明の化合物及び製剤は乾癬の治療に有用である。実施例19では、局所製剤が、治療価値をもつ十分な濃度でヒトの皮膚に浸透することが分かった。
【0205】
本発明の製剤及び組成物の局所使用により、治療又は予防できるその他の皮膚科の障害及び関連する疾患/症状には、座瘡、脱毛症、アトピー性皮膚炎/湿疹、皮膚エリテマトーデス、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、及び酒さ、接触性皮膚疾患、乾癬を含む自己免疫疾患、並びに関節炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アピゲニン/フラボノイドの局所投与により優れた生物学的利用能が可能になる。従ってこれらの局所製剤は、費用が安く、かつ、使用量が少なくて済む、ステロイド及び細胞毒性薬の代替品となる。
【0206】
その他の障害の治療方法
本発明の組成物及び製剤は、狼瘡、関節炎、アレルギー、及び喘息のような自己免疫疾患の治療にも使用可能である。アピゲニンなどの食品用の植物由来COX−2及びNF−κB阻害剤の生物学的利用能は、狼瘡、並びに関節リウマチ、クローン病、及び乾癬のようなその他のTh17介在性疾患の抑制、並びにCOX−2を過剰発現している炎症性腫瘍(例えば結腸癌、乳癌)の予防に有効である。アピゲニンは、自己反応性Th1及びTh17細胞の増殖に必要な自己抗原の提示を阻害することにより、狼瘡を抑制する。本発明の製剤は、自己免疫指標/疾患を治療するための、アピゲニン/フラボノイドの新規送達手段を提供する。
【0207】
化合物及び製剤は、神経学的及び神経変性障害の治療にもまた有用である。いくつかの調査研究では、アルツハイマー病を含む様々な神経変性障害におけるアピゲニン及びルテオリンの抗炎症性効果及び神経保護/疾患修飾特性を支持する結果が得られた。
【0208】
別の態様では、本発明の化合物及び組成物はアレルギー性疾患並びに細菌感染症に有用である。
本発明のフラボノイド水和物を用いて治療、予防、又は改善することができるTNFα関連疾患の例には、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、脊椎関節症、炎症性腸疾患、慢性心不全、糖尿病、全身性エリテマトーデス、強皮症、サルコイドーシス、多発筋炎/皮膚筋炎、乾癬、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、パーキンソン病、AIDS認知症複合、アルツハイマー病、抑うつ状態、腐敗症、壊疽性膿皮症、敗血症、敗血症性ショック、ベーチェット症候群、移植片対宿主疾患、ブドウ膜炎、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息、急性膵炎、歯周病、悪液質、癌、中枢神経系損傷、ウイルス性呼吸器疾患、及び肥満が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
本発明のフラボノイド水和物を用いて治療、予防、又は改善することができるIL−1β関連疾患の例には、関節リウマチ、敗血症、歯周病、慢性心不全、多発筋炎/皮膚筋炎、急性膵炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、変形性関節症、細菌感染、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ブドウ膜炎、中枢神経系損傷、ウイルス性呼吸器疾患、喘息、抑うつ状態、及び強皮症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
フラボノイドがIL−4及びIL−13の合成を阻害することから、量及び質に依存するが、フラボノイドの取り込みがアレルギー症状を回復させる、又はアレルギー性疾患の発症を予防することが期待できる(Int Arch Allergy Immunol. 2004 Jun; 134(2): 135-40)。
【0211】
アピゲニンはヒト歯根膜(hPDL)細胞では抗炎症性活性をもち、かつ、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)の作用を含む新規の機序を介して作用する。従って、アピゲニンは宿主の調節剤として、喫煙及び歯垢に関連する歯周病の予防及び治療に有用である(Gil-Saeng Jeong et al,; Anti-inflammatory effects of apigenin on nicotine- and lipopolysaccharide-stimulated human periodontal ligament cells via heme oxygenase-1., International Immunopharmacology, Vol.: 9, Nov. 2009)。
【0212】
別の態様では、本発明の化合物及び製剤は、育毛の促進に有用な可能性がある。調査研究では、アピゲニンがTGF−ベータ1遺伝子の下方制御を介して育毛を刺激することが分かった。
【0213】
当然のことながら、上述した実施形態には多様な変更及び修飾を施すことが可能である。そのため、前述の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明を説明することを目的とするものであり、かつ、全ての均等物を含む以下の請求項によって本発明は定義される。
【実施例】
【0214】
実施例1−未処理アピゲニン粉末
純度が98%より高いことが(HPLCを用いて決定した)添付の「分析証明書」に明示されているアピゲニン粉末を、Actives International(Allendale、N.J.)から得た。この高度に精製されたアピゲニン(商用名Viapure Citrus(登録商標))は、グレープフルーツ(cirtus grandis)の果皮から得られたビオフラボノイドを修飾することにより得られるものである。淡黄色の外観をしたアピゲニン粉末の全てが80番のふるい(米国で標準的なサイズのふるい)を通過し、このことはアピゲニンの大きさが最大でも約200マイクロメートル(μm)であることを示している。したがって、アピゲニンの粒子サイズを約200分の1に小さくすると、粒子サイズは1000ナノメートルになる。
【0215】
実施例2−アピゲニンの溶解度
アピゲニンの溶解試験から、アピゲニンが水にはほとんど溶けないこと、アセトン及びエタノールの両方には僅かに溶解すること(2mg/ml未満)、及びプロピレングリコールにも僅かに溶解すること(<1mg/ml)、並びにエトキシジグリコールに対する溶解度は10mg/mlを上回ることが分かった。ジメチルスルホキシド(DMSO)に対するアピゲニンの溶解レベルが100mg/mlを上回ることが文献によって報告されているが、DMSOは皮膚への強力な浸透剤であると認識されているため、局所使用に好適な成分とは見なされない。
【0216】
実施例3−アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解度
アピゲニンはNaOHの希薄溶液に溶解可能である。表VIに示すように、アピゲニンを溶かす最も有効な溶媒は水酸化ナトリウム溶液であることを実験的に確認した。
【0217】
【表5】
【0218】
同様に、1Mの水酸化カリウム(KOH)溶液及び水酸化リチウム(LiOH)溶液にも、同程度の量の淡黄色のアピゲニン粉末が溶解し、1MのNaOH溶液も同様であった。
【0219】
アピゲニン水和物及び/又はルテオリンを形成するためにまず、アピゲニン及び/又はルテオリン粉末をアルカリ金属水酸化物の溶液に溶解した。アルカリに溶けたアピゲニンのナトリウム塩(pHが8よりも高い水溶液中に含まれる)をクエン酸又は塩酸(HCl)のような酸性化剤を用いて酸性化すると、雲様又は雪様のコロイド状(ゲル様)の沈殿が形成を始め、アピゲニン水和物が形成された。溶液のpHを約5まで下げることによって反応を完了させた。ゲル様の沈殿をろ過し、蒸留水で完全に洗浄して溶解した塩を除去した。沈殿物を圧縮し、気流に曝露することにより、得られたアピゲニン水和物をさらに乾燥させた。アピゲニン水和物の生成についての記載と同様の方法により、ルテオリン水和物を形成した。
【0220】
実施例4−アルコールに対する溶解度
アピゲニン水和物及びルテオリンは、様々なアルコール溶媒に対して僅かに溶解性を示した。これらの発見は、水和されていない状態のアピゲニン及びルテオリンがこれらのアルコール溶媒に本質的に溶けないこととは明確に異なるものであった。僅かな溶解濃度レベルを示すアルコールには、エトキシジグリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びグリセリンが含まれる。溶媒であるジメチルイソソルビドにもまた、アピゲニン及びルテオリン両方の水和物は僅かな溶解濃度レベルを示した。試験した全てのアルコール溶媒で、ルテオリン水和物の飽和溶解濃度レベルがアピゲニン水和物の飽和溶解濃度レベルを上回った。アピゲニンが3つのヒドロキシル基をもつのに対してルテオリンが4つのヒドロキシル基をもつことが、これらの比較溶解度の差に関わることが明らかである。
【0221】
実施例5−ビタミンに対する溶解度
ビタミンB5及びB3がアピゲニン及び/又はルテオリンを可溶化するかどうかを決定するために、固体のビタミンB5及びB3を融解した。驚くことに、ビタミンはアピゲニン及び/又はルテオリンを可溶化した。いくつかのローション製品に融解した液体混合物(ビタミンB3/アピゲニン及び/又はビタミンB5/アピゲニン)を添加すると(例えば、激しく撹拌しながら)、添加した混合物は(担体である)ローション/クリーム中に均一に分散したように見えた。
【0222】
驚くことに、およそ1モルのビタミンB5前駆体(Lotioncrafters、Olga、WAから市販されているD、Lパテノール)と0.75モルのアピゲニン水和物とを反応させることで茶色い粘性のある液体混合物が得られ、これらは部分的に水に可溶性であった。
【0223】
【化4】
【0224】
アピゲニン水和物及びアピゲニンは融解したD、Lパンテノール(およそ65oC)に容易に融解した。これら混合物の粘性を下げるためにエトキシジグリコール又はプロピレングリコール(PG)のようなアルコールに溶解したところ、これらの混合物は、少量のアルコールに容易に溶解した。得られたこれらの溶液を、いくつかの使用可能な皮膚保湿剤及び/又は紫外線防止用ローションに添加した。溶解は比較的容易で、かつ、ローションのpHの僅かな上昇を伴った。融解したD、Lパンテノールにアピゲニンを溶解したものを加えたローションの色は、混合物の総重量当たりのアピゲニン濃度が約1.5重量%の場合、淡黄色であった。D、Lパンテノールにアピゲニン及びアピゲニン水和物を溶解した溶液については、比較的容易に操作を行うことができたことを強調する。同時に、D、Lパンテノールの5重量%水溶液のpHは9.0よりわずかに低く、明かにアルカリ性であることを確認した。
【0225】
得られたアピゲニン/D、Lパンテノール混合物はまた、ジメチルイソソルビド、グリセリン、イソプロピルアルコール、及びアセトンにも可溶性であった。アピゲニン/D、Lパンテノール混合物はブドウ種子油及びホホバ油には不溶性であった。また、アピゲニン/ビタミンB5混合物(ApigB5)の5重量%水溶液のpHは8.0を僅かに超えるものであった。アピゲニン/D、Lパンテノール混合物をpH約6.5までクエン酸の結晶を用いて酸性化した場合、コロイド状で、かつ、高度に分散した、アピゲニン水和物の綿様の沈殿(およそ油の様な粘度の)が現れた。アピゲニン/D、Lパンテノールはアルカリ性の均一な混合物であり、酸性化した場合には容易にアピゲニン水和物に変換されると考えられる。
【0226】
加えて、アピゲニン及び/又はアピゲニン水和物は融解したナイアシンアミド(ビタミンB3)に容易に溶解した。およそ1モルのアピゲニンと2モルのナイアシンアミドを含むこれらの融解混合物を室温まで冷却すると、淡黄色/茶色の固体が形成された。これらの固体は、エトキシジグリコール、プロピレングリコール及びイソプロピルアルコールのようなアルコールに溶解可能であった。固体混合物のナイアシンアミド画分は水に溶けたが、アピゲニン水和物は白色のゲル様(綿のような)の形態に高度に分散することが観察された。この溶液のpHはおよそ6.0で酸性であった。NaOHの希薄溶液を用いて溶液のpHを7.5より高くした場合に、アピゲニン水和物はほとんど完全に溶解した。
【0227】
【化5】
【0228】
融解したナイアシンアミドにアピゲニン水和物を溶解するには、無水アピゲニンを溶解するよりも、やや制御した状態で、かつ、融解温度を少し下げて操作を行った。
【0229】
融解したビタミンB3中に溶解したアピゲニン及びアピゲニン水和物の融解混合物を約40℃−50℃で、約40℃に温めた皮膚保湿剤や紫外線防止用ローション中にしっかりと混合してアピゲニン及びアピゲニン水和物を均一に分散させ、その後固形化した。さらに、アピゲニンの可溶性画分を増加させるために、アピゲニンとビタミンB3の均一な融解溶液を、pHが6.5−8.0になるように添加してもよい。
【0230】
ヒトの皮膚のpHは4−5.6に変化する。皮脂から分泌される汗及び脂肪酸は皮膚表面のpHに影響を及ぼす。皮膚を酸性化することが、病原体及びその他生物の成長の制限又は予防に役立つことが示唆されている。
【0231】
実施例6−グリセリンに対するアピゲニンの溶解度
アピゲニンがナトリウム塩又はカリウム塩のとして、約50mg/mlに達する濃度レベルでグリセリンに溶解することをさらに発見した。アピゲニンはアルカリ性のグリセリン溶液を用いることで可溶化することができるが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの微結晶はグリセリンには溶解せず、溶解したアピゲニンを加えると微粒子が懸濁され、溶液が濃黄色になることが観察された。さらに、アピゲニンのナトリウム塩及びカリウム塩はずっと低い濃度でしかプロピレングリコール中に溶解できず、様々なその他のアルコールに対する飽和濃度も低かった。
【0232】
実施例7−アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解度、及びそれに続く局所担体への混合
アルカリ性溶液に対するアピゲニンの溶解レベルが高いことから、ナトリウム及び/又はその他のアルカリ金属イオン含量を最小限に抑えながら、アピゲニンを薬学上許容可能な局所担体中に溶解することができると考えられる。アルカリ性のアピゲニン製剤を酸性化すると、相当量のアピゲニンは微粒子として分散又は懸濁状態に残るが、ごく少量の画分が製剤の成分中に溶解した。
【0233】
一実施例では、濃度が300mg/mlのアピゲニンを含む2モル(M)の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液3.3ミリリットル(ml)を第一の局所担体100グラムに添加すると(表IIIの試料番号1)、最終混合物の総重量を基にしておよそ1重量%のアピゲニンが溶解した局所製剤が得られる。その後塩酸を用いてNaOHを中和することで、僅か0.3重量%の塩化ナトリウムを含む、又は塩化ナトリウム含量が約0.15重量%となる可能性がある、NaOHが0.75Mの製剤が得られる。
【0234】
別の実施例では、濃度が200mg/mlのアピゲニンを含むNaOH溶液0.5mlを、第二の局所用ローション5mlに添加し(表VIIの試料番号2)、濃度がおよそ2重量%のアピゲニンの可溶化を試みた。NaOHの添加により得られたアルカリ性の製剤をその後、クエン酸の微結晶を用いてpHがやや酸性になるまで中和した。クエン酸の添加によって形成されるクエン酸ナトリウムはまた、化粧品の保存料としても有効である。
【0235】
別の実施例では、濃度が75mg/mlのアピゲニン水和物を含むエトキシジグリコール溶液4mlを、第三の局所用ローション96グラム(g)に添加し(表VIIの試料番号3)、好適な局所製剤中にアピゲニンを溶解させようと試みた。第三の局所用ローションのpHは5.5で、これはアピゲニンを含む溶液を添加することによっても変化しなかった。
【0236】
【表6−1】
【0237】
【表6−2】
【0238】
実施例8−未処理アピゲニン粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像
粒子の形態的な特徴を決定するために、未処理アピゲニン粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像を取得した。水に溶解した未処理試料を1−2滴、細孔径が0.4マイクロメートルの、ポリカーボネート製フィルターを用いてろ過し、「注射用蒸留水」(WFI)20滴で洗浄した。ろ液をクリーンベンチ中で少なくとも24時間乾燥させた。各フィルターから得られた試料の画像を走査型電子顕微鏡で取得した。図1は、10,000倍の倍率で観察した未処理アピゲニン粉末の結晶構造を表している、典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【0239】
実施例9−未処理アピゲニンの粒子径
ミー理論(フラウンホーファー理論を包含する)に基づく静的光散乱を用いた粒子径の測定技術を用いて、未処理アピゲニン試料の粒度分布を決定した。図2及び3は、未処理アピゲニン粉末の典型的な粒度分布の「体積分布」及び「微粒子の積算」プロットを示す。未処理試料は1ミクロン未満の粒子の有意な体積を有し、40ミクロン周辺に非常に大きい分布のピークを有する。これら大きいサイズの粒子は、狭い分布幅を有し、このことは粒子サイズが非常に均一であることを表している。いくつかの試料では、重要な画分の粒子径が100nmよりも小さいことが示された。
【0240】
実施例10−アピゲニン水和物の形態
アピゲニン水和物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を取得し、粒子の形態を決定した。実施例8で記載したものと同様の方法を用いた。
【0241】
図4は、アピゲニン水和物試料の典型的な走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図4に示した典型的なアピゲニン水和物試料の形態は、未処理試料の形態とは非常に異なる。FTIR及びラマン分光法で化学組成を決定したが、未処理アピゲニンとアピゲニン水和物の間にはどのような差も検出できなかった。このことは、フラボノイド水和物の形成によってなされる修飾が、フラボンの結晶形及び/又は晶癖を変化させ、フラボンの結晶多形を生じている可能性を示唆している。繊維は、測定縦横比が20を上回り、直径が30−500nmであった。
【0242】
実施例11−製造方法の改良
水相ローション(APL)の標準的な製造方法を以下に記載する。溶液温度、酸性化過程での溶液混合速度、酸性化剤添加速度、及びpHを含むHA沈殿条件で、別個の製剤を3つ製造した。
【0243】
一回分が60mlの水相ローション(APL)を3つ個別に調製する基本的なAPLの調製方法は以下の通りである。
・一回分が60mlの各製剤が1.25重量%アピゲニンになるように、未処理アピゲニンを計量する。
・未処理アピゲニンを、600mlのビーカーに入れた300mlの蒸留水に加え、固体/液体スラリーが形成されるように撹拌する。
・1MのNaOH溶液を一定量、上記スラリーに撹拌しながら添加する。アピゲニン粒子の全量が可溶化するまで、十分な量を添加する。これにより、可溶性のアピゲニンナトリウム塩が形成される。
・可溶化アピゲニン溶液に氷片を加えて温度を約5℃下げる。
・クエン酸の希薄溶液を調製し、これを直ちに激しく撹拌しながら、アルカリ性の可溶化アピゲニン溶液に加え、pHレベルを約4−6にする。この酸性化過程でのpHが約6よりも低い場合には、粘性の低い、ゲル様の沈殿が形成される。
・次に、ゲル様の沈殿物(アピゲニン水和物)を円盤状の比較的多孔性(約2ミクロン)のろ紙を用いてろ過する。この沈殿過程は比較的容易に迅速に行うことができ、透明で粒子を含まないろ液が得られる。
・これとは別に、水相ローション(APL)の残りの水溶性成分を水に溶解し、試料30ml中に、2%のヒアルロン酸、2%のグリセロール、2%のビタミンB5及び5%のビタミンB3を含む試料を得る。
・上記の30ml溶液に、0.75グラムのアピゲニンを含むアピゲニン水和物を添加する。次にこの混合物を、蒸留水を用いて60mlのレベルまで希釈する。
・その後60mlの溶液を約120°Fのレベルまで加熱し、そしてQSonics S−4000超音波処理機を用いて、1分間、95%の振幅レベルで超音波処理する。10秒間超音波処理を行った後5秒間、この超音波処理過程を「一時停止」する。
・超音波処理を行って得られた混合物を、20ccの空気を含まない調剤用チューブに入れた。
【0244】
粒度分布試験
別個に3つ調製した製剤からの試料を20ccの空気を含まない調剤用チューブに入れ、以下のように分類した。
1.バッチ1:APL−19
2.バッチ2:APL−20
3.バッチ3:APL−21
4.バッチ1:APL−22
同じバッチ由来のAPL-19及びAPL-22の両方は、粒度分布(PSD)測定装置及び用いた解析方法への変動性/感受性を確認する目的で用いた。
【0245】
調製した試料をPSD解析にかけた。加えて、粒子の大部分がサブミクロンサイズの範囲にあったため、ナノ粒子のゼータ電位も同時に測定することができた。
3つの別個のバッチ由来の4つの試料(APL−19〜APL−22)の粒度分布の分析測定を、図5及び6にまとめた。APL−19及びAPL−22は同じバッチ由来である。図5及び6の両方に示したように、ほぼ全ての粒子がサブミクロンサイズである。同じバッチ由来の試料であるAPL−19とAPL−22は、ほとんど同一の波形をもつ。このように分布が同様であることから、この分析装置及び操作方法による測定結果が保障される。
【0246】
図5に示したPSDは、試料APL−20以外、粒子サイズが約100nm及び300−400nmの2峰性の分布を示している。約250nmを境に2峰性に分布している理由は推測する必要がある。試料APL−20は約225nmに1つのピークをもち、このことは、その他の試料が示した2峰性分布がその中間に集中して、単一のピークを生じたのではないかと考えられる。
【0247】
図6の「積算微粒子体積」の波形は粒度分布と同様に、4つの試料間での一致を示している。特に、全試料中の粒子の半分が230nm未満であることを示している。試料APL−20以外では、約20%の粒子が100nm未満である。試験した4つの試料のゼータ電位の結果を表VIIIにまとめた。ゼータ電位試験の約5日前に試料を調製した。全ての結果は、粒子が約40mvの不電荷をもつことを示している。一般的に、25mvを超える負又は陽の電荷をもつ粒子は互いに反発する傾向にあり、そのため、凝集する可能性が最小限となる。
【0248】
【表7】
【0249】
実施例12−本開示の方法を用いた、その他のフラボノイド製剤
実施例11に概略を示した方法により、フラボノイドの水相ローション(APL)をいくつか調製した。濃度1.25%のフラボノイド(アピゲニン、ルテオリン、ルチン及びケルセチン)を含む水相ローション(APL)の粒度分布の積算を図7に示す。APLはその他の成分として、1%のヒアルロン酸、1%のグリセロール、1%のビタミンB5、2.5%のビタミンB3、及び緩衝液を含む。平均粒子サイズは全て、400nm未満である。
【0250】
図8は、水に溶解した1.25%の未処理ケルセチン粉末と、実施例2に概略を示した方法で調製した水相ローションに溶解した1.25%アピゲニン水和物との粒度分布の比較を示している。有意に、未処理粉末と比較して、水相ローションに溶解したケルセチン水和物の平均粒子サイズ(約400nm)は1桁以上小さくなっている。
【0251】
APLに溶解したいくつかのフラボノイド水和物を水で30:1の割合で希釈した場合の定性的評価を表IXに示す。しばらく置いた後に沈殿物の沈降が見られない場合には、水相ローション中にサブミクロンサイズのフラボノイド粒子が含まれていることの証拠となる。
【0252】
【表8】
【0253】
実施例13−ポリソルベートに対する溶解度
アピゲニン及びポリソルベート80から得られる製品を「A/P80」とする。A/P80を以下のように形成した。
・未処理アピゲニン粉末及び粘性のある液体のポリソルベート80(PS80)を約5−10重量%のアピゲニンに対して95−90重量%ポリソルベート80の割合で、少量の蒸留水、及び任意にアセトン及び/又はエチルアルコールと共に、ビーカー中で混合した。
・次にこの混合物をよく撹拌し、粘性の高いペースト様混和物を形成した。
・その後混合物を、撹拌しながら、比較的高い温度まで徐々に加熱した(例えばガスの炎の上で)。水及びポリソルベート80に含まれる揮発性成分が蒸発したら、加熱を終了した。この加熱過程は、加熱によって生じる泡によって混合物がビーカーから吹きこぼれないように、注意深く行った。
・揮発性成分が除去され、温度が約200−300℃を超えると、ポリソルベート80中に固体のアピゲニンの全量が溶解した、透明な濃茶色の液体が得られた。
・周囲温度まで冷却すると、粘性のある、透明な茶色の液体が得られた。アピゲニン含量が高いほど、茶色の色が濃くなる。
【0254】
既に出版されている溶解度の結果に従って算出した、水、エチルアルコール及びポリソルベート80に対するアピゲニンの溶解度を、以下の表Xに示す。
【0255】
【表9】
【0256】
A/P80中のアピゲニン濃度を、HPLC−MSにより測定した。粘性のあるA/P80液体中のアピゲニン濃度が4.05%であると算出されたことから、アピゲニン含量は40.5mg/ml又は40,500ppmと言える。
【0257】
以下の段落は、A/PS80に起因する、実験的な観察の結果を示す。
・標準的なアピゲニン水和物のローション(十分な濃度のナノ粒子を含む)にA/PS80を添加すると、飽和溶解濃度レベルが上昇した。溶解レベルの上昇は0.2ミクロンフィルターを通したろ液を用いた比色試験により、定性的に決定した。
・ピュレル(広く用いられている殺菌性の液体)にA/PS80を添加すると、ピュレルに含まれるエチルアルコール分が高いことから、アピゲニンの溶解レベルが上昇する。ポリソルベート80を用いた場合のアピゲニンの溶解レベルは、アピゲニン水和物及び未処理アピゲニンの両方で有意に上昇した。
・A/PS80をピュレルに添加し、その後、実施例11のアピゲニンローションに使用した実験は非常に効果的であった。ここでは、エチルアルコールの利点である浸透性及び溶解性(エチルアルコールは皮膚を乾燥させる傾向になるため、使用後すぐに蒸発させる)を利用するために、その後、皮膚の再保湿を助ける我々のアピゲニン製剤を使用する。
【0258】
LCMS(液体クロマトグラフィー−質量分析)を用いて決定した、選択した溶媒中のアピゲニン濃度(重量%)を表XIに示す。
【0259】
【表10】
【0260】
さらなる試験により、アピゲニンを含むPS80を約250℃−300℃に達するまで加熱した後にも、分解生成物は本質的に生じなかったことを確認した。
図9は、AP80溶液と比較した加熱処理前のPS80の統計分析を示す。対照試料と本発明の試料との間にほとんど差が見られなかったことは、界面活性剤が分解されなかったことを示している。図9では、検出された各構成成分を点で表している。PS80は重合体であり、それ自体が多くのオリゴマーを示している。このことは、多数の成分又は点がプロット上にあることを意味している。×は、統計的にAP80試料の特徴的な質量特性の指標である。非常に少ない質量特性が観察されたことは、PS80が有意に分解されていなかったことを意味している。観察された×の数が少ないことは、対照と本発明の試料との間の差が僅かであることを表している。
【0261】
実施例14−さらなるフラボノイドポリソルベート製剤
ポリソルベート80を用いた試験を、アピゲニン以外のいくつかのフラボノイド化合物についても行った。ポリソルベート80を用いた溶解度試験用に選択したフラボノイドの化学的及び物理的特性を表XIIに示す。
【0262】
【表11】
【0263】
ポリソルベート80を用いた、様々なフラボノイドの溶解度試験の結果の概要を表XIIIに示す。
【0264】
【表12−1】
【0265】
【表12−2】
【0266】
実施例15−高温処理法を介した、ポリソルベート80以外のポリソルベートに対する溶解度。
非イオン性界面活性剤は、それらがソルビタン、ショ糖、及びグリセリンのような多価アルコールの脂肪酸エステルであるため無害だと考えられており、そのため、化粧品及び食品に広範囲に用いられている。そのため、実施例13に開示した高温処理法を介して、飽和溶解濃度を上昇させるために好適な、界面活性剤を構成している非イオン性ポリソルベートのいくつかを評価することにした。
【0267】
脂肪酸を用いてエステル化したPEG化ソルビタン(ソルビトール誘導体)を含む、いくつかの非イオン性界面活性剤を表XIVに示す。試験した全ての界面活性剤は、200℃を超える温度でも安定を維持するという基準を満たした、油っぽい液体であった。同様にアピゲニンを含む試験した全てのフラボノイドは、融点が200℃を超えることを基準に選択した。
【0268】
温度レベルを200−300℃を超えて上昇させると、フラボノイドのスラリー混合物の粒子溶解度及び色(濃茶褐色)の両方が変化することが観察された。
非イオン性界面活性剤を、HLB(親水親油バランス)値に従って昇順に表XIVに挙げた。HLBは、界面活性剤の親水性(「水に溶けやすい」)及び疎水性(「水に溶けにくい」)群の関係についての経験的表現である。HLB値が高いほど、その界面活性剤はより水に溶けやすい。主要なものはローション(水中油型乳濁液)又はクリーム(油中水型乳濁液)である。最も一般的な型の乳濁液は水中油型(o/w)であり、これらはしばしばHLB値が高い、好ましくは12−16の界面活性剤を必要とするが、油中水型乳濁液(w/o)はHLB値が低い、好ましくは7−11の界面活性剤を必要とする。HLB値が10を超える界面活性剤は油溶性であるが、HLB値が10未満の界面活性剤は水溶性である。
【0269】
表XIVに示したように、スパン20は油中水型局所製剤に非常に適しており、ポリソルベート80は、アピゲニンを溶解するための水中油型局所製剤に最も適していると考えられる。
【0270】
【表13】
【0271】
実施例16−アルカリ性溶液に対するフラボノイドの溶解度、およびそれに続く局所担体への混合
アルカリ性の水溶液(NaOH又はKOH)に溶解したフラボノイドの溶解度が比較的高いため、フラボノイドのアルカリ性溶液を、やや酸性(すなわちpHが4.5−6.5)の様々な市販されている局所組成物に、可溶化フラボノイドが均一に分散するように激しく撹拌しながら添加したところ、いくつかの市販されている局所組成物中にフラボノイドがほぼ完全に溶解することが分かった。溶解させたアルカリ性のフラボノイドを局所組成物に添加すると、混合物は強アルカリ性となった。
【0272】
これらの混合物を、クエン酸又はHClのような酸性化剤で激しく撹拌しながら中和した後、NaOHを反応させて、クエン酸ナトリウム又は塩化ナトリウムのいずれかをそれぞれ形成した。いくつかの局所組成物を用いた場合には、フラボノイドは溶解状態を維持した。しかしながら、いくつかの局所組成物では、フラボノイドが溶解限度を上回った場合に、可溶性画分に加えて、局所組成物中に微粒子が生じた。
【0273】
本発明の実施形態に従って、濃度が約1.25重量%の可溶化フラボノイドを含む複数の調製物を調製した。表XVは、いくつかのフラボノイド調製物の概要を示している。1.0MのNaOHの5mlに溶解された各フラボノイド0.63グラムを含む濃溶液を45グラムのセタフィル(登録商標)皮膚保湿用ローションに添加した。その後、アルカリ性の製剤にクエン酸の結晶を添加することで、pHがやや酸性になるように中和した。クエン酸の添加により形成されたクエン酸ナトリウムは、化粧品中の保存料としてもまた有用である。
【0274】
セタフィル(登録商標)皮膚保湿用ローションを典型的な水中油型乳濁液として選択した。このローションは、様々な界面活性剤、分散剤、pH調製剤、保存剤、皮膚軟化剤、皮膚保湿剤、湿潤剤、抗炎症剤、シリコーン、鎮痛剤、重合体増粘剤、ビタミン、植物抽出物、及びそれらの組み合わせなどの成分を含む。表XVIは、表VIIで挙げた製剤に使用したセタフィル(登録商標)の成分表を示している。
【0275】
【表14】
【0276】
【表15】
【0277】
実施例17−超音波処理の実験方法
超音波処理試験にかけるため、表XVIIに挙げた6種類の試料約400ccを、Nalgeneの1リットルのHDPE広口瓶中で調製した。直径が1/2インチのプローブを備えたQSonics S−4000を用い、設定を100にして、この試料を10分間、高レベルで超音波処理した。超音波処理時間及び強度の設定を調整し、粒子サイズを最適に減少させることができる。
【0278】
超音波の電子発生器は、AC電源からの電力を、圧電変換器を駆動する20KHzの信号に変換する。この電気信号が変圧器内部の圧電性結晶の特性によって、機械的な振動へと変換される。この振動は、プローブの先端が縦方向に伸縮し、長さが変化することによって、増幅及び減少する。先端が伸縮する長さは、使用者が振幅制御ノブによって選択する振幅によって異なる。例えば、試験に用いた1/2インチのプローブをもつ装置で強度を50%に設定した場合、先端はおよそ60ミクロン伸縮する(1秒間に20000回)。100%に設定すると、先端の伸縮はおよそ120μmである。液体中では、先端の迅速な振動により、キャビテーション、顕微鏡レベルの気泡の形成、及び破壊が起こる。何千ものキャビテーションバブルが破壊されることにより、キャビテーション液中に大きなエネルギーが放出される。プローブ先端の直径により、効果的に処理できる試料の量が分かる。超音波処理装置は、混和、乳化、分散、均一化、及び脱凝集などを含む様々な用途に使用されてきた。
【0279】
超音波エネルギーから生じたキャビテーション力により、粒子の凝集は目に見えて破壊され、その結果、粒子懸濁液が形成されることが容易に認識された。この粒子懸濁液を長期間静置した場合にも、沈殿する傾向は非常に低かった。試料の量が約200ccの場合、比較的高レベル(100%に設定)の超音波エネルギーをかける20K/秒の振幅の超音波処理によって、温度が約30℃から40℃上昇した。この結果により、10分間の処理が進められた。
【0280】
経験から、処理に伴う温度上昇によって、微粒子が凝集する可能性がある(おそらくは媒体粘度の低下、及び粒子衝突の可能性が上昇する等のため)。様々な実効的な冷却手段(主に熱伝導コイルなど)を使用することにより、超音波処理にかける溶液の温度上昇を制限するための多数の選択肢が利用可能である。超音波エネルギーをかけたことによる温度上昇を制限するために、試料6を入れたビーカーを、氷浴中に沈めた。氷浴で周囲を覆うことによって、これら試料の温度上昇は、周囲温度の約20℃上までに制限された。
【0281】
乳化及び均一化に加えて、超音波処理のエネルギーにより、試料は脱気された。溶けている空気を除去することにより、製剤成分が酸化する可能性を最小限に抑えられるため、このことは望ましい結果であった。界面活性剤を含む製剤に伴う可能性のある発泡に関する問題は、超音波処理器のプローブの先端を約2インチの深さまで液体中に挿入すると問題ではなくなると指示されていたために解消した。様々な試料を用いたこの後の試験では発泡は生じなかった。
【0282】
超音波処理を行った試料を表XVIIIに示す。粒度分布のデータは、マルバーンのマスターサイザー粒度分布測定装置を用いて得た。
データから、超音波処理した全ての試料の粒度分布(PSD)が有意に減少したことが明らかである。表XIIIからは、75%及び90%レベルの「積算体積」が実質的に減少したことが明らかである。
【0283】
超音波処理は、ファンデルワールス結合による凝集を壊すのに効果的な、前処理及び後処理として非常に有効であり、その結果、粒度分布が改善する。
実施例18−HPHの実験方法
高圧乳化(HPH)試験にかけるために、表XIIIに挙げた試料を調製した。HPH試験は、BEEI社の装置であるDeBEE 2000を用いて行った。
【0284】
DeBEE技術は、それらのシステムをわずか1回通しただけで、小滴及び粒子をナノメートルのサイズまで破壊する、非常に強い力を生成する。DeBEE 2000増圧機は水力学的に駆動され、マイクロプロセッサーは一定の圧力及び流動性をDeBEE均一化セルに与えられるように制御されている。液体の粘度及びかけた圧力により、粒子サイズ及び粒度分布が決まる。
【0285】
約150cc量の試料を、約20−30cc/分の速度でDeBEEに通した。各測定の後、先に試験した試料の残りを除去するために蒸留水で装置を洗浄し、その後、次に試験する試料の準備のために蒸留水で洗浄した。各試験の後、排出された試料をマルバーンのマスターサイザー粒度分布測定装置にかけてPSDの結果を評価し、その後、次の試料をHPH装置にかけた。選択した試料については、温度制御及びHPHに複数回かけることがPSDに及ぼす影響を評価するために、「熱交換」(HX)での冷却を行い、そしてHPHに複数回かけた。微粒子化を達成するためにはHX冷却が必要であったが、複数回のHPHの実施は、PSDにはほとんど影響を及ぼさないことが明かである。通常、試験条件下では、圧力チャンバー内にある試料の温度が周囲温度から約40℃−50℃上昇することが観察されると予想される。
【0286】
表XIVに挙げた9種類の試料をDeBEE 2000装置にかけて処理した。まず、PSDに及ぼす圧力の影響、及びHPHの処理数がアピゲニンを含む試料に及ぼす影響を決定するために、チャンバー内の圧力を15Kpsi、30Kpsi及び45KpsiとしたBEEを用いて、試料3について4回のHPH試験を行った。試料3について3回、PSDデータを測定した後、残りの試験を45Kpsiレベルで行うことを決定した。表IIIに示したように、非常に強い条件のHPHにかけた全ての試料で、PSDの減少が顕著であった。HPHに1回かけた全ての試料の均一性により、サブミクロンサイズのPSDが90%の積算レベルで生じた。また、未処理アピゲニンのPSDも有意に減少した。
【0287】
HPHのエネルギー変換によって生じるキャビテーション及び剪断力が粒子の凝集を破壊することが明かであり、その証拠に、長時間静置した場合にも沈殿する傾向が有意に低い、粒子懸濁液が形成された。
【0288】
超音波処理し、二つのアスタリスクで示した試料(試料2及び5)も表XVに示す。
このデータは、超音波処理した及びHPHに書けた試料の粒度分布(PSD)が有意に減少していることを明確に示している。超音波処理及びHPH処理した試料両方の75%及び90%レベルでの「積算体積」が実質的に減少した。より粒子が大きい未処理粒子の凝集も破壊されていることも明かであり、その証拠に、PSDの積算の平均が約350ナノメートルである、顕著な二峰性のPSD分布が観察された。
【0289】
【表16】
【0290】
【表17】
【0291】
【表18】
【0292】
実施例19−アピゲニンを含む局所製剤を用いた乾癬患者の治療
レジサイド(Regicide)、メトトレキサート、及びいくつかの処方薬に反応しない5人の乾癬患者は、ヒアルロン酸を含むアピゲニン含有製剤を1日2回適用した結果として、乾癬状態の有意な改善を経験した。使用したローションは、溶解したアピゲニンナトリウム塩を酸性化することによって処方した。この水中油型乳濁液の製剤は、分散したアピゲニン水和物の微粒子を1.5%の濃度で含んでいた。予想外にも、アピゲニンローションを適用した全ての患者は、乾癬が関与する手、鼠径部、脚部、及び膝を含む皮膚の外観が徐々に改善することを経験した。これらの患者での最初の改善が見られるまでに必要とされる期間は1−2ヶ月と多様であった。
【0293】
実施例20−製剤をその場で製造する方法
表XIIに挙げた成分を含むセタフィル皮膚保湿用ローションを用いて、1.25重量%のアピゲニンを含む、1回分が100グラムの製剤を以下のように調製した。
・予め140°Fを少し超える温度に加熱しておいたセタフィル90グラムを、300ccのビーカー中に加える。
・次に、実施例1で記載した未処理アピゲニン粉末1.25グラムを液体セタフィルローションに添加する。液体混合物中には、ヒアルロン酸、ビタミンなどを含むその他の成分を任意に加えることができる。
・次に、高い温度レベル(135°F−150°F)の液体溶液約90ccをQSonics S−4000超音波処理器を用い、強度レベル90%で合計10分間超音波処理する。超音波処理の工程は、超音波処理を1分間行った後、30秒停止するという工程を繰り返す。
・その後、総重量が100グラムになるように、超音波処理した溶液に水を添加し、得られた溶液を約10秒間、90%の強度レベルで超音波処理し、そして調剤用のチューブ容器に入れる。
【0294】
実施例21−ヒト及びマウスの皮膚を用いたin vitroでの、製剤からのアピゲニンの経皮的吸収
in vitro経皮的吸収試験によって、生物学的利用能の可能性を評価することができる。この試験の目的は、選択された患者から外科的に切除したヒトの皮膚、及び新鮮なマウスの皮膚に本開示の製剤を局所使用した後の、アピゲニンのin vitroでの経皮的吸収の特徴を解析することである。この試験は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of in vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Skelly et al., 1987)で使用されている方法に従って実施した。1人の提供者由来のヒト組織及びマウス組織に5mg/cm2の製剤を投与した。
【0295】
本発明に記載した、基本型製剤からのアピゲニンの透過及び浸透を、in vitro経皮的吸収試験により評価した。
1人の提供者を選出し、その後採皮刀を用いて外科的に得たヒト腹部の皮膚に、臨床的に意義のある投与量である5mg/cm2を投与した。組織の厚さは、0.021−0.039インチ(0.533−0.991mm)の範囲であった。
【0296】
臨床的に意義のある投与量である5mg/cm2をマウス組織に投与した。組織の厚さは、0.011−0.025インチ(0.279−0.635mm)の範囲であった。
結果
図10は、ヒト組織に、1.5%のアピゲニンを含むいくつかの局所製剤を投与した場合の、表皮、真皮及び皮下組織(receptor fluid)でのアピゲニンのプロファイルを示している。同様に、図11は、ヒト組織に、1.5%のアピゲニンを含むいくつかの局所製剤を投与した場合の表皮、真皮及び皮下組織(receptor fluid)でのアピゲニンのプロファイルの概要を示している。
【0297】
基本型製剤による、表皮(ヒト組織の)でのアピゲニンの沈着効率は、投与したアピゲニンの15.5−45.7%の範囲であった。基本型製剤による、アピゲニンの表皮(マウス組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの15.0−88.3%の範囲であった。
【0298】
基本型製剤による、アピゲニンの真皮(ヒト組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの0.446−2%の範囲であった。基本型製剤による、アピゲニンの真皮(マウス組織の)への沈着効率は、投与したアピゲニンの8.0−14.4%の範囲であった。
【0299】
製剤から送達されるアピゲニンの総重量は、製品中のアピゲニン濃度、並びに送達効率により異なる。皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間投与した後に算出した、ヒト組織(皮下組織レベル)に浸透したアピゲニンの量は4.04−9.88ng/cm2の範囲であった。
【0300】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、表皮(ヒト組織)に沈着したアピゲニンの量は、22,651−34,293ng/cm2の範囲であった。
【0301】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、表皮(マウス組織)に沈着したアピゲニンの量は、11,232−66,209ng/cm2の範囲であった。
【0302】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、真皮(ヒト組織)に沈着したアピゲニンの量は、334−1,499ng/cm2の範囲であった。
【0303】
皮膚1平方センチメートル当たり5mgの製剤を24時間(皮下組織レベル)投与した後に算出した、真皮(マウス組織)に沈着したアピゲニンの量は、6,002−10,814ng/cm2の範囲であった。
【0304】
本発明のPS80製剤は、十分な濃度のアピゲニンを表皮及び真皮層の両方に送達した。
上記で引用した全ての書類及び参考文献をここで、参照することによりその全体を本明細書に組み入れる。
【0305】
本発明を、例示的な態様を参照して記述してきたが、当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施してもよく、また、要素を均等物と置き換えてもよい。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、ある特定の状況又は材料に適応させるために、本発明の教示に様々な修飾を行ってもよい。従って本発明は、本発明を実施するための最適な形態として検討し、開示した特定の態様に限定されることを意図せず、本発明は添付の請求項の範囲内の全ての実施形態を含むものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子フラボノイド水和物、及び
担体
を含んでなる組成物。
【請求項2】
該フラボノイドの水に対する溶解度が1mg/ml未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該フラボノイドが、フラボン、フラボノール、フラボノン、フラボノール(又はカテキン)、アントシアニジン、及びイソフラボンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該フラボノイドがアピゲニン及びルテオリンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該微粒子フラボノイドの平均サイズが50−1000ナノメートルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該担体が、該微粒子フラボノイド水和物の凝集を予防する又は減少させる化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が、栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
フラボノイド、及び
熱に安定なフラボノイド可溶化化合物、
を含み、
前記フラボノイド及び前記熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を、該フラボノイドが該界面活性剤に溶解する温度で混合することによって形成される、
組成物。
【請求項10】
該フラボノイドがアピゲニンであり、かつ、該熱に安定なフラボノイド可溶化化合物が非イオン性界面活性剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
アルコールをさらに含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
該組成物が栄養補助食品、保健食品、食品添加剤又は医療食品の形態である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1又は9に記載の組成物及び接着剤を有する第一の面と、第一の面にある該組成物と該接着剤が浸透しない材料でできた第二の面を有する、2つの面をもつ基体を含んでなる、フラボノイドの経皮投与用パッチ。
【請求項14】
フラボンとアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリ金属フラボン塩の溶液を形成すること、
該アルカリ金属フラボノイド塩の溶液に酸性化剤を添加してpHレベルを7未満に酸性化し、フラボノイド水和物の沈殿を形成すること
を含むフラボノイド水和物の製造方法であって、
前記酸性化は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記製造方法。
【請求項15】
該酸性化工程の後に、該沈殿をろ過する工程を実施する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該ろ過工程が、該酸性化工程の生成物のpHを7未満に調整すること、及び2ミクロンより大きい膜を用いて材料をろ過することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フラボノイドを非毒性の有機溶媒に溶解して混合物を形成すること、
該混合物に水を添加してフラボノイド水和物の沈殿を形成することを含むフラボノイド水和物の製造方法であって、
前記水を添加する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記製造方法。
【請求項18】
該溶解する工程を、該有機溶媒の沸点よりも約20℃低い又はそれより低い温度で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該フラボン水和物が、アピゲニン水和物及びルテオリン水和物からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
フラボノイドと水に溶解したアルカリ金属水酸化物を混合してアルカリ金属フラボノイド塩溶液を形成すること、
該アルカリ金属フラボノイド塩溶液を皮膚科学的に許容可能な担体に添加すること、
該製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpHに調整することを含む、
フラボノイド水和物を含む局所製剤の製造方法であって、
前記pHの調整工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行う、前記製造方法。
【請求項21】
該製剤のpHを4−8に調整する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フラボノイドをアルコールに溶解すること、
アルコールに溶解した該フラボノイドを皮膚科学的に許容可能な担体に添加すること、
該製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpHに調整すること
を含むフラボノイド水和物を含む局所製剤の調製方法であって、
前記pHの調整工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記調製方法。
【請求項23】
該製剤のpHを4−8に調整する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
フラボノイドを乳濁液の担体に添加して混合物を形成すること、
水とほぼ同等な粘性になるまで該混合物を加熱すること、
キャビテーション力を用いて、該混合物中の微粒子の分散液を調製すること
を含む、フラボノイドを含む局所製剤の調製方法。
【請求項25】
該乳濁液が水中油型又は油中水型乳濁液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該分散液を調製する工程を、超音波処理又は高圧乳化を用いて行う、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
該混合物を約120°F−170°Fに加熱する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該乳濁液が微粒子の凝集を阻害する薬剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
フラボノイド粒子と熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成すること、
該フラボノイド粒子が溶解する温度まで該混合物を加熱して溶液を形成すること、
該溶液を冷却すること
を含む、可溶化フラボノイド組成物の調製方法。
【請求項30】
該熱に安定なフラボノイド可溶化化合物が非イオン性界面活性剤である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該非イオン性界面活性剤がポリソルベートであり、かつ、該フラボノイドがアピゲニンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該溶液に短鎖アルコールを添加し、粘性が低下された溶液を生成することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の紫外線防止剤を皮膚に適用することを含む、日光曝露の効果を低減及び/又は予防する方法。
【請求項34】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を太陽により損傷された皮膚に適用することを含む、日光曝露の効果を治療する方法。
【請求項35】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の癌を治療する方法。
【請求項36】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量の製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において癌発症の可能性を低減させる方法。
【請求項37】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の座瘡、脱毛症、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、並びに酒さ、接触性皮膚炎を治療する方法。
【請求項38】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項39】
該自己免疫疾患が、乾癬、狼瘡、関節炎から成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量のフラボノイド製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてTNFα関連疾患を治療する方法。
【請求項41】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量のフラボノイド製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてTNFα関連疾患発症の可能性を低減させる方法。
【請求項42】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量のフラボノイド製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてIL−1β関連疾患を治療する方法。
【請求項43】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量のフラボノイド製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてIL−1β関連疾患発症の可能性を低減させる方法。
【請求項1】
微粒子フラボノイド水和物、及び
担体
を含んでなる組成物。
【請求項2】
該フラボノイドの水に対する溶解度が1mg/ml未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該フラボノイドが、フラボン、フラボノール、フラボノン、フラボノール(又はカテキン)、アントシアニジン、及びイソフラボンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該フラボノイドがアピゲニン及びルテオリンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該微粒子フラボノイドの平均サイズが50−1000ナノメートルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該担体が、該微粒子フラボノイド水和物の凝集を予防する又は減少させる化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が、栄養補助食品、食品添加剤、保健食品、又は医療食品の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
フラボノイド、及び
熱に安定なフラボノイド可溶化化合物、
を含み、
前記フラボノイド及び前記熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を、該フラボノイドが該界面活性剤に溶解する温度で混合することによって形成される、
組成物。
【請求項10】
該フラボノイドがアピゲニンであり、かつ、該熱に安定なフラボノイド可溶化化合物が非イオン性界面活性剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
アルコールをさらに含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
該組成物が栄養補助食品、保健食品、食品添加剤又は医療食品の形態である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1又は9に記載の組成物及び接着剤を有する第一の面と、第一の面にある該組成物と該接着剤が浸透しない材料でできた第二の面を有する、2つの面をもつ基体を含んでなる、フラボノイドの経皮投与用パッチ。
【請求項14】
フラボンとアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリ金属フラボン塩の溶液を形成すること、
該アルカリ金属フラボノイド塩の溶液に酸性化剤を添加してpHレベルを7未満に酸性化し、フラボノイド水和物の沈殿を形成すること
を含むフラボノイド水和物の製造方法であって、
前記酸性化は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記製造方法。
【請求項15】
該酸性化工程の後に、該沈殿をろ過する工程を実施する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該ろ過工程が、該酸性化工程の生成物のpHを7未満に調整すること、及び2ミクロンより大きい膜を用いて材料をろ過することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フラボノイドを非毒性の有機溶媒に溶解して混合物を形成すること、
該混合物に水を添加してフラボノイド水和物の沈殿を形成することを含むフラボノイド水和物の製造方法であって、
前記水を添加する工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記製造方法。
【請求項18】
該溶解する工程を、該有機溶媒の沸点よりも約20℃低い又はそれより低い温度で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該フラボン水和物が、アピゲニン水和物及びルテオリン水和物からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
フラボノイドと水に溶解したアルカリ金属水酸化物を混合してアルカリ金属フラボノイド塩溶液を形成すること、
該アルカリ金属フラボノイド塩溶液を皮膚科学的に許容可能な担体に添加すること、
該製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpHに調整することを含む、
フラボノイド水和物を含む局所製剤の製造方法であって、
前記pHの調整工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行う、前記製造方法。
【請求項21】
該製剤のpHを4−8に調整する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フラボノイドをアルコールに溶解すること、
アルコールに溶解した該フラボノイドを皮膚科学的に許容可能な担体に添加すること、
該製剤のpHを皮膚科学的に許容可能なpHに調整すること
を含むフラボノイド水和物を含む局所製剤の調製方法であって、
前記pHの調整工程は、平均サイズが50−1000ナノメートルのフラボノイドナノ繊維が製造される条件で行われる、前記調製方法。
【請求項23】
該製剤のpHを4−8に調整する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
フラボノイドを乳濁液の担体に添加して混合物を形成すること、
水とほぼ同等な粘性になるまで該混合物を加熱すること、
キャビテーション力を用いて、該混合物中の微粒子の分散液を調製すること
を含む、フラボノイドを含む局所製剤の調製方法。
【請求項25】
該乳濁液が水中油型又は油中水型乳濁液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該分散液を調製する工程を、超音波処理又は高圧乳化を用いて行う、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
該混合物を約120°F−170°Fに加熱する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該乳濁液が微粒子の凝集を阻害する薬剤を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
フラボノイド粒子と熱に安定なフラボノイド可溶化化合物を混合して混合物を形成すること、
該フラボノイド粒子が溶解する温度まで該混合物を加熱して溶液を形成すること、
該溶液を冷却すること
を含む、可溶化フラボノイド組成物の調製方法。
【請求項30】
該熱に安定なフラボノイド可溶化化合物が非イオン性界面活性剤である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該非イオン性界面活性剤がポリソルベートであり、かつ、該フラボノイドがアピゲニンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該溶液に短鎖アルコールを添加し、粘性が低下された溶液を生成することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の紫外線防止剤を皮膚に適用することを含む、日光曝露の効果を低減及び/又は予防する方法。
【請求項34】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を太陽により損傷された皮膚に適用することを含む、日光曝露の効果を治療する方法。
【請求項35】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の癌を治療する方法。
【請求項36】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量の製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において癌発症の可能性を低減させる方法。
【請求項37】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の座瘡、脱毛症、皮膚感作及び刺激、乾皮症(乾燥症、魚鱗癬)、真菌感染症、並びに酒さ、接触性皮膚炎を治療する方法。
【請求項38】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量の製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項39】
該自己免疫疾患が、乾癬、狼瘡、関節炎から成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量のフラボノイド製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてTNFα関連疾患を治療する方法。
【請求項41】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量のフラボノイド製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてTNFα関連疾患発症の可能性を低減させる方法。
【請求項42】
請求項1又は9に記載の組成物を含む治療上有効量のフラボノイド製剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてIL−1β関連疾患を治療する方法。
【請求項43】
請求項1又は9に記載の組成物を含む予防量のフラボノイド製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてIL−1β関連疾患発症の可能性を低減させる方法。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図4】
【図10】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図4】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−508361(P2013−508361A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535193(P2012−535193)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/002821
【国際公開番号】WO2011/049629
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512104498)エイピーアイ・ジェネシス,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/002821
【国際公開番号】WO2011/049629
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512104498)エイピーアイ・ジェネシス,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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