説明

フラワーコーティング剤、プリザーブドフラワー、プリザーブドフラワーの製造方法、ドライフラワー、ドライフラワーの製造方法

【課題】プリザーブドフラワーがビニールの造花のようになって生花の風合いが失われ、コーティング作業を行うときのシンナー臭がきつく、多人数でプリザーブドフラワーのコーティング作業を行う場合には耐え難い作業環境となる。
【解決手段】ドライフラワーやプリザーブドフラワーにコーティングするコーティング剤であって、ウレタン樹脂と、ポリオキシエチンレンアルキルエーテルと、0.01重量%〜50重量%のタルクと、水とを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラワーコーティング剤、プリザーブドフラワー、プリザーブドフラワーの製造方法、ドライフラワー、ドライフラワーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切り取られた生花の状態を長期間にわたって維持させるために、切り取った生花に所定の処理を施したいわゆるプリザーブドフラワーと称されるものが知られている。
【0003】
しかしながら、プリザーブドフラワーも劣化を生じる。ここで、プリザーブドフラワーの劣化とは、経時的に、変色、退色、形状が変化(破損など)することである。特に、花弁や葉に劣化が生じやすい。また、劣化は、特に高温多湿環境下で顕著になる。
【0004】
そこで、プリザーブドフラワーの表面を保護するためにフラワーコーティング剤が塗布されることがある。
【0005】
従来のフラワーコーティング剤としては、例えば、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレンなどの芳香族アルキルと、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステルを含むものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−280938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のフラワーコーティング剤は、所謂水あめ状態になるためにコーティングされたプリザーブドフラワーの表面がビニールのような美観(ビニール感)になるとともに、感触も造花のようになり、プリザーブドフラワーの持つ生花らしさが損なわれる。また、芳香族アルキルを含むために、コーティング作業を行うときのシンナー臭がきつく、特に、フラワースクールなど一度に多人数でプリザーブドフラワーのコーティング作業を行う場合には耐え難い作業環境となるという課題がある。
【0008】
また、上述した従来のフラワーコーティング剤をドライフラワーにコーティングした場合には、造花のような風合いになるという課題もある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ドライフラワーやプリザーブドフラワーにより自然な生花の風合いを持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係るフラワーコーティング剤は、
ドライフラワー又はプリザーブドフラワーの表面をコーティングするためのフラワーコーティング剤であって、
少なくとも、タルク及び樹脂を含有する
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフラワーコーティング剤は、タルクを含有していることで、樹脂を含有してもビニール感が抑えられ、ドライフラワーをより生花の風合いに近づけることができ、あるいは、プリザーブドフラワーにより自然な生花の風合いを持たせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るフラワーコーティング剤は、ドライフラワー又はブリザードフラワーの表面にコーティングを施すときに使用するコーティング剤である。ドライフラワーやプリザードフラワーは、公知の方法で製造することができ、製造方法が限定されるものではない。例えば、プリザーブドフラワーは、例えば、多価アルコールとアルコール可溶性の染料を溶解した低級アルコールを混合して保存液を調製し、切り取られた生花中の水分を前述の保存液と置換した後、保存液中の低級アルコールを蒸発させることにより製造される。
【0013】
本実施形態のフラワーコーティング剤はタルクを含有している。タルクとは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末であって、白色及び灰色をした滑らかでしかも脂肪感に富んだ素材である(化学名:含水珪酸マグネシウム[Mg3Si4O10(OH)2]で、SiO2約60%、MgO約30%と結晶水4.8%を主成分とする。)。
【0014】
タルクを含有することで、コーティング剤に含有する樹脂によるビニール感が抑えられる。プリザーブドフラワーにコーティングしたときには、より生花の風合い(水分、厚み、色彩、光沢、鮮やかさなど)を出すことができる。また、ドライフラワーにコーティングしたときには、コーティング剤が吸収されることでより生花に近づいた風合いに変化させることができる。
【0015】
ここで、タルクの含有量は、0.01重量%〜50重量%の範囲内であることが好ましい。0.01重量%未満であると、コーティング剤に含まれる樹脂によって生じる表面のビニール感の抑制が十分でないことがある。50重量%を越えると、色の濃いプリザーブドフラワーにコーティングしたときに、タルクの色(白又は灰色)が強くなって、プリザーブドフラワーの色彩が劣化するおそれがある。
【0016】
より好ましいタルクの含有量は、0.05重量%〜30重量%の範囲である。この範囲内であれば、より広い種類(花の種類、色彩、厚み、水分状態など)のプリザーブドフラワーなどに適用することができる。
【0017】
本実施形態のフラワーコーティング剤は、樹脂及びタルク以外に水を含有することで水溶性コーティング剤とすることができる。
【0018】
樹脂としては、例えばウレタン樹脂を使用することができる。
【0019】
本発明に係るブリザードフラワーを製造するには、例えば、ブリザードフラワーの表面に本発明にかかるフラワーコーティング剤を刷毛などで塗布し、あるいは、ブリザードフラワーを本発明にかかるフラワーコーティング剤にディッピングし、あるいは、ブリザードフラワーの表面に本発明にかかるフラワーコーティング剤を噴霧するなどして、コーティング剤の膜を形成する。
【0020】
そして、コーティング剤が塗布されたブリザードフラワーを所要時間乾燥させることによって、本発明に係るブリザードフラワーを得ることができる。
【0021】
本発明に係るドライフラワーの製造について、上記プリザーブドフラワーのコーティングと同様にして行うことができる。
【0022】
以下、具体的な実施例について説明する。
次の配合割合で実施例1ないし10に係るフラワーコーティング剤を調合した。
【0023】
(実施例1)
次の組成で、フラワーコーティング剤を調合した。
ウレタン樹脂 :22重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :0.5重量%
タルク :0.01重量%
防腐剤 :0.09重量%
水 :残重量%
【0024】
(実施例2)
ウレタン樹脂 :25重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :2.5重量%
タルク :0.05重量%
防腐剤 :0.15重量%
水 :残重量%
【0025】
(実施例3)
ウレタン樹脂 :25重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :2.5重量%
タルク :0.1重量%
防腐剤 :0.15重量%
水 :残重量%
【0026】
(実施例4)
ウレタン樹脂 :28重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :5.0重量%
タルク :1.0重量%
防腐剤 :0.1重量%
水 :残重量%
【0027】
(実施例5)
ウレタン樹脂 :28重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :2.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0028】
(実施例6)
ウレタン樹脂 :28重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :7.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0029】
(実施例7)
ウレタン樹脂 :25重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :10.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0030】
(実施例8)
ウレタン樹脂 :30重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :20.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0031】
(実施例9)
ウレタン樹脂 :30重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :30.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0032】
(実施例10)
ウレタン樹脂 :20重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :50.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0033】
(実施例11)
ウレタン樹脂 :20重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
タルク :60.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0034】
次に、タルクを含まない比較例のフラワーコーティング剤を調合した。
【0035】
(比較例)
ウレタン樹脂 :33重量%
ポリオキシエチンレンアルキルエーテル :3.0重量%
防腐剤 :0.05重量%
水 :残重量%
【0036】
上記の実施例1ないし11及び比較例のコーティング剤を、白色のバラ(白バラ)のプリザーブドフラワーと赤色のバラ(赤バラ)のプリザーブドフラワーに、それぞれ刷毛でコーティングし、乾燥させた。
【0037】
そして、各プリザーブドフラワーの色彩、光沢、鮮やかさを視覚によって観察して評価した。ここでは、10人の観察者によって観察し、生花の風合いを持っているか否かを評価した。その結果を、表1に示している。なお、表1において、「◎」は9人以上がビニール感がなく生花の風合いを持っていると評価したことを、「○」は7人〜8人が同様に生花の風合いを持っていると評価したことを、「△」は4人〜6人が同様に生花の風合いを持っていると評価したことを、「×」は同様に生花の風合いを持っていると評価した人数が4人未満であることをそれぞれ示している。
【0038】
【表1】

【0039】
その結果、タルクを含有しない比較例のコーティング剤を塗布した白バラ及び赤バラは、いずれも、全体として、ウレタン樹脂によるビニール感が強く、色彩、光沢、鮮やかさは、生花よりもビニールの造花に近いものであった。
【0040】
これに対し、実施例1ないし10のコーティング剤を塗布した白バラ及び赤バラは、いずれも、ビニール感がなく、或いは、ほとんどなく、色彩、光沢、鮮やかさは生花により近い状態であった。ただし、実施例1のコーティング剤を塗布した白バラ及び赤バラは、タルクによるビニール感の抑制が十分でないと評価されることがあった。また、実施例10のコーティング剤を塗布した赤バラは、タルクの白色が強くなり、赤色が淡くなった。また、実施例11のコーティング剤はゲル状になって塗布が難しくなった。
【0041】
この評価結果からは、タルクの含有量は特に0.05重量%から30重量%の範囲内とし、ウレタン樹脂の範囲は22重量%〜30重量%とすることが好ましいことが分かるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、バラ以外のプリザーブドフラワーにも試行したところ、特に、実施例2ないし9のコーティング剤は、水分量、色彩、厚みなどの違いにかかわらず、多くの種類のプリザーブドフラワーについて、安定して、色彩、光沢、鮮やかさが生花により近い状態のものが得られた。
【0043】
また、上記実施例1ないし11のコーティング剤をドライフラワーに塗布して同様に10人の観察者による評価を行ったところ、ドライフラワーが生花の風合いや質感に近づくという現象が確認された。これは、コーティング剤の特に水分がドライフラワーに吸収されることで、ドライフラワーが生花の風合いや質感に近づくものと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライフラワー又はプリザーブドフラワーの表面をコーティングするためのフラワーコーティング剤であって、
少なくとも、タルク及び樹脂を含有する
ことを特徴とするフラワーコーティング剤。
【請求項2】
樹脂と、
タルクと、
水と、を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフラワーコーティング剤。
【請求項3】
ウレタン樹脂と、
ポリオキシエチンレンアルキルエーテルと、
タルクと、
防腐剤と、
水と、を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフラワーコーティング剤。
【請求項4】
前記タルクの含有量が0.05重量%ないし30重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフラワーコーティング剤。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のフラワーコーティング剤で表面がコーティングされていることを特徴とするプリザーブドフラワー。
【請求項6】
プリザードフラワーの表面に請求項1ないし4のいずれかに記載のフラワーコーティング剤を塗布してコーティングすることを特徴とするプリザーブドフラワーの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかに記載のフラワーコーティング剤で表面がコーティングされていることを特徴とするドライフラワー。
【請求項8】
ドライフラワーの表面に請求項1ないし4のいずれかに記載のフラワーコーティング剤を塗布してコーティングすることを特徴とするドライフラワーの製造方法。