説明

フラワーペースト類

【課題】パン類や菓子類のトッピング、フィリングとして有用な、高油分含量であっても、スプレッド性、伸展性に優れ、且つ、耐熱性も良好である、フラワーペースト、カスタード等のフラワーペースト類、及び、その製造方法を提供すること。
【解決手段】デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペーストや、カスタード等のフラワーペースト類。デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却することを特徴とするフラワーペースト類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高油分含量であっても、スプレッド性や伸展性に優れ、且つ、耐熱性も良好であるフラワーペースト類に関する。
【背景技術】
【0002】
フラワーペーストや、カスタード等のデンプンの糊化によるボディーを有するフラワーペースト類は、パン類や菓子類のトッピング、フィリングとして広く利用されてきた。
【0003】
このフラワーペースト類は、一般的に、小麦粉や穀物デンプン等のデンプン類、ミルク、砂糖、卵、水等を混合した後、加熱して糊化させることによって得られるもので、一般に粘弾性に富んだ物性と食感を示す。
【0004】
しかし、最近では、ペースト状のフラワーペースト類をベーカリー生地に塗布するスプレッド用途や、シート状のフラワーペースト類をベーカリー生地と同時に伸展させるロールイン用途などが多く行なわれるようになり、従来の粘弾性に富んだ物性ではなく、スプレッド性や伸展性に富んだ物性が求められることが多くなってきている。
【0005】
この場合、一般的には油脂を添加することで、スプレッド性や伸展性を付与するが、この方法はデンプンゲル形成を油脂で阻害し滑らかな物性とするものであるため、油脂を多く含有するフラワーペースト類は耐熱性が悪化してしまう問題があった。
【0006】
そのため、例えば上述のように、ベーカリー生地にフラワーペースト類を塗布したり、シート状のフラワーペースト類をロールインした複合生地を、焼成及び/又はフライすると、フラワーペースト類が流失したり染み込んでしまったり、あるいは油脂が分離してしまい商品価値がなくなってしまう。
【0007】
また、油脂を多く含有するフラワーペースト類は、冷蔵保存時にデンプン類の老化等により乳化が破壊されて、油脂分離や水分分離をおこすなど乳化安定性が問題となっていた。
【0008】
耐熱性を付与するためには一般的に、小麦粉やデンプン含量を増やしたり、各種の増粘多糖類を配合することがおこなわれるが、これらの方法では、得られるフラワーペースト類が更に粘弾性に富んだ物性と食感になったり、口溶けの悪い食感になってしまう。
【0009】
そのため、スプレッド性、伸展性に優れながら、且つ、耐熱性も良好であるフラワーペースト類を得るための改良が各種おこなわれている。
【0010】
例えば、ホエイプロテイン濃縮物(以下WPCということもある)を配合する方法(例えば特許文献1参照)や、卵白を配合する方法(例えば特許文献2参照)がおこなわれたが、WPCを使用する方法では、特に油脂含有量の多いフラワーペースト類に使用すると、製造時や、冷凍解凍時や加熱時に油脂が分離してしまうなど、乳化安定性が低下してしまう問題があった。また卵白を使用する方法では、卵白特有の粘弾性を生じてしまう問題に加え、卵白特有のにおいの問題から多量に添加することができず、これらの方法では、良好な作業性(スプレッド性や伸展性)と耐熱保型性を有するフラワーペースト類を得ることができなかった。
【0011】
一方、WPCと同じホエイを起源とするものであって、タンパク質含有量がWPCに比べて極めて高いホエイプロテイン単離物(以下WPIということもある)を各種の食品に使用する試みがおこなわれている。
【0012】
ここで、WPIとは、WPCとは明確に区別されるものであって、タンパク質含有量が極めて高い、未変性のホエイタンパク質である。WPCが、ホエイをUF処理(限外濾過)で、一部の乳糖、灰分、水分を除去したものであり、固形分に含まれるタンパク質含量が25〜80質量%であるのに対し、WPIは、ホエイをイオン交換処理とUF処理でそのほとんどの乳糖、灰分、水分を除去したものであり、そのタンパク質含有量は90質量%以上である。このため、WPIは良好な風味と高い溶解性を有している。また、特定条件下では高い乳化力、あるいはきわめて強固なゲルを生成するため、たとえば乳化成分としての使用(たとえば特許文献3参照)や、乳タンパクゲル化食品への利用(例えば特許文献4参照)などが提案されている。
【0013】
しかし、WPIはその主体がタンパク質であるため乳化力は一般的な乳化剤、たとえばレシチンやモノグリセリド等に比べると弱く、油脂分の多い食品では乳化が不十分な問題があり、またゲル化力も一般的なゲル化剤、例えばゼラチンや寒天等に比べると弱く、強いゲル化食品を得ようとするとWPIを多く使用することが必要であり、その場合、油脂分の多い食品をゲル化すると、製造時のせん断力や圧力により油分分離がおきるなど乳化安定性が悪く、また、塩類の存否やpHによって大きく異なるため、各種の風味成分のゲル化食品を一般的に製造することはできなかった。そのため、WPIの高価格であることもあって、WPIの利用は不活発なものであった。
【0014】
また、ゲル化力を高める方法として、乳清ミネラルとWPIを併用する方法(例えば特許文献5参照)が提案されているが、この方法でも、水中油型の乳化食品、特に油脂含有量の多い乳化食品をゲル化させると、ゲル化食品の製造時や、冷凍解凍時や加熱時に油脂が分離してしまうなど、乳化安定性がさらに低下してしまう問題があった。
【0015】
【特許文献1】特開昭63−167735号公報
【特許文献2】特開平10−191891号公報
【特許文献3】特開平02−042943号公報
【特許文献4】特開平06―141791号公報
【特許文献5】特開平01―277449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、高油分含量であっても、スプレッド性、伸展性に優れ、且つ、耐熱性も良好であるフラワーペースト類を提供することにある。また、本発明は、該特徴を有するフラワーペースト類の製造方法を提供することにある。さらに本発明は該フラワーペースト類を用いた、油分分離がなく食感も良好である該フラワーペースト類を用いたベーカリー食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、上述のとおり、乳化成分としては少量の油脂しか乳化することができず、ゲル化剤としては高油脂含量の食品の安定的なゲル化はできなかったWPIを、逆転の発想で、フラワーペースト類、特に高油脂含量のフラワーペースト類に使用することで、上記問題の解決が可能であることを知見した。
【0018】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%(組成物基準;この組成物は、フラワーペースト類を言う。以下、同じ)を含有するフラワーペースト類を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.5〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%(組成物基準)を含んでいるフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却することを特徴とするフラワーペースト類の製造法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記フラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を、焼成及び/又はフライしてなることを特徴とするベーカリー食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐熱性が良好で、スプレッド性や伸展性も良好であるフラワーペースト類を提供することができる。また、該フラワーペースト類をベーカリー生地に包餡、サンド、トッピング、積層等の方法により複合して複合生地として使用する場合には、生地との密着性が良好で作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のフラワーペースト類について詳述する。
【0023】
本発明のフラワーペースト類は、デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%(組成物基準)を含む。
【0024】
ここで、本発明でいうフラワーペースト類とは、デンプン類の糊化によるボディーを有するものであり、例えば、フラワーペースト、カスタード等が挙げられる。
【0025】
本発明のフラワーペースト類に用いられる上記デンプン類としては、一般的な小麦粉、コーンスターチの他、各種デンプンから得られる化工デンプンを用いることができる。
【0026】
上記デンプン類の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、2〜10質量%、好ましくは2.5〜8質量%である。該デンプン類の含有量が2質量%未満では、液状となって十分にペースト化されず、また、10質量%超では、硬く口溶けの悪いものとなる。
【0027】
本発明のフラワーペースト類に用いられる上記ホエイプロテイン単離物(WPI)とは、上述のとおりホエイプロテイン濃縮物(WPC)とは明確に区別されるものであって、WPCよりもはるかに高いタンパク質含量、且つ、はるかに低い灰分含量を有する乳タンパク質である。本発明では、そのタンパク質含有量が90質量%以上のホエイプロテイン単離物を使用することが好ましく、より好ましくは90〜98質量%であるホエイプロテイン単離物を使用する。
【0028】
上記ホエイプロテイン単離物の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、0.05〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%、より好ましくは2〜4質量%である。ホエイプロテイン単離物の含有量が0.05質量%未満では、十分な耐熱性が得られず、また、5質量%超では、油脂分離を起こしやすく、また、作業性(伸展性やスプレッド性)も悪く、また、その食感も餅様の好ましくない食感となってしまう。
【0029】
本発明のフラワーペースト類に用いられる上記油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0030】
上記油脂の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、8〜50質量%、好ましくは25〜50質量%、さらに好ましくは32〜50質量%、もっとも好ましくは36〜50質量%である。該油脂の含有量が8質量%未満では、十分な作業性(スプレッド性や伸展性)の向上効果が得られないことに加え、食感も硬く、老化しやすいものとなる。また、50質量%超では、乳化安定性が悪化し、べとつきやすく、油分が分離しやすくなることに加え、フラワーペースト類の口溶けがワキシーになる等の問題が生じる。
【0031】
なお、本発明のフラワーペースト類に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0032】
また、本発明のフラワーペースト類は、上記油脂のうちの好ましくは50〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%が、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂であることが好ましい。
【0033】
ここで、上記ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂について述べる。
【0034】
先ず、上記エステル交換油脂の製造に使用する油脂配合物について述べる。
【0035】
上記油脂配合物は、ヨウ素価が52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する。該パーム分別軟部油の含有量が70質量%未満であると、良好な乳化安定性が得られず、又、良好なスプレッド性や伸展性も得られない。
【0036】
上記パーム分別軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52〜70のパームオレインを使用することが、特に乳化安定性に優れたフラワーペースト類が得られることから好ましく、ヨウ素価60〜70のパームスーパーオレインを使用することがさらに好ましい。
【0037】
上記油脂配合物に必要に応じ配合する上記パーム分別軟部油以外の油脂は、求めるフラワーペースト類の硬さに応じ、適宜選択することができ、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0038】
上記エステル交換の反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル交換反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル交換反応であることがより好ましい。
【0039】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、ペニシリウム(Penicillium) 属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂あるいはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0040】
また、本発明のフラワーペースト類は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。
【0041】
一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
【0042】
ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、油脂の全構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。本発明においては、上記ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂以外の油脂として、天然油脂、並びに天然油脂に分別、完全水素添加及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選択される1種又は2種以上を組合せて用いることにより、実質的にトランス酸を含まないフラワーペースト類を簡単に得ることができる。
【0043】
また、本発明のフラワーペースト類に用いられる上記糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元デンプン糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0044】
上記糖類の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、8〜30質量%、好ましくは10〜27質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。該糖類の含有量が8質量%未満では、油分分離をおこしやすく、また作業性(スプレッド性や伸展性)の向上効果が得られないことに加え、食感も硬く、老化しやすいものとなる。また、30質量%超では、スプレッド性や伸展性の向上効果が得られないことに加え、べたつきやすい等の問題が生じる。
【0045】
また、本発明のフラワーペースト類は、増粘安定剤を含有することが好ましい。増粘安定剤を含有させることにより、フラワーペースト類の製造時やベーカリー生地への複合作業時等における乳化破壊を防止することによる物性改良効果や、保水性を向上させることによる離水防止効果や食感向上効果を得ることが可能となる。
【0046】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0047】
本発明のフラワーペースト類では、離水防止効果が高いことから、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及びゼラチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0048】
上記増粘安定剤の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
【0049】
また、本発明のフラワーペースト類は、合成乳化剤を特に添加せずとも、良好なスプレッド性や伸展性を有し、また、乳化安定性も良好であることから、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
【0050】
上記の合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
【0051】
本発明のフラワーペースト類には、上記合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。該乳化剤としては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜タンパク質が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
その他、本発明のフラワーペースト類には、通常フラワーペースト類の原料として使用し得る成分を使用することが可能であり、例えば、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエイパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦タンパク質や大豆タンパク質等の植物タンパク質、ホエイタンパク濃縮物・トータルミルクプロテイン等の乳タンパク質や動物タンパク質、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0053】
尚、これらの成分のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、本発明のフラワーペースト類中の水分含有量が30〜85質量%となるように使用することが好ましい。
【0054】
次に、本発明のフラワーペースト類の好ましい製造方法について述べる。
【0055】
本発明のフラワーペースト類は、デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱してデンプン類を糊化させたのち、冷却することによって得ることができる。
【0056】
具体的には、先ず、デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、加熱溶解、乳化混合して予備乳化組成物を作成する。その際、水相と油相との比率(前者:後者、質量基準)は、90:10〜55:45とすることが好ましい。なお、増粘安定剤を添加する場合は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
【0057】
次いで、得られた予備乳化組成物を、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0〜80MPaの範囲で均質化した後、加熱しデンプン類を糊化させる。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60〜130℃が好ましく、加熱時間は0.5〜30分が好ましい。また、加熱後には必要により再度均質化してもよい。
【0058】
次いで、均質化した後、加熱した予備乳化組成物を冷却する。冷却は急速冷却、徐冷却等のいずれでもよく、冷却の前、又は後にエージングを行ってもよい。更に、得られた本発明のフラワーペースト類は、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
【0059】
更に、本発明のフラワーペースト類は、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状、ダイス状等としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mm、ダイス状:縦5〜50mm、横5〜50mm、厚さ5〜50mmである。
【0060】
このようにして得られた本発明のフラワーペースト類は、フィリング、トッピング、練り込み用、折り込み(ロールイン)用として、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ等の菓子類、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール、イーストドーナツ等のパン類等に広く用いることができる。
【0061】
次に、本発明のベーカリー食品について述べる。
【0062】
本発明のベーカリー食品は、本発明のフラワーペースト類をベーカリー生地にフィリング、トッピング、練り込み、折り込み、包餡等の方法で複合させた複合生地を、必要に応じ圧延 、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成及び/又はフライして得られたものであり、特に折り込み、圧延時の作業性(伸展性と生地との密着性)が良好で、焼成時の油分分離がなく、フラワーペースト部分の食感も良好であるという特徴を有する。
【0063】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等の菓子生地やパン生地が挙げられる。
【0064】
上記の複合生地としては、例えば、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類を包餡した包餡生地、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類をトッピング又はサンドした積層生地、ベーカリー生地にシート状のフラワーペースト類をロールインした積層生地、製パン連続ラインにおいて、ブロック状のフラワーペースト類を、ファットポンプ等を使用して薄板状に押し出し、ベーカリー生地にロールインした積層生地、円柱状やダイス状のフラワーペースト類をベーカリー生地中に分散させた混合生地等が挙げられる。
【0065】
上記複合生地を焼成する場合、ホイロは、イーストを含まないベーカリー生地を使用する場合は必要なく、イーストを配合したベーカリー生地を使用する場合のみ必要である。体積が大きく、層剥れの少ないベーカリー食品を得るためには、ホイロは、好ましくは25〜40℃、相対湿度50〜80%で20〜90分、さらに好ましくは32〜38℃、相対湿度50〜80%で30〜60分行なう。
【0066】
上記複合生地の焼成は、通常のベーカリー食品と同様、160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると、火通りが悪くなりやすく、また良好な食感が得られにくい。また、250℃を超えると、フラワーペースト類の水分が飛びすぎて色艶が悪化しやすい上、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0067】
上記複合生地をフライする場合、ラックタイムは特に有効である。ラックタイムをとることにより、ベーカリー生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として、ベーカリー生地の水分を減少させること及びフライ操作時の吸油を減少させることができる点で、ラックタイムをとることが望ましく、時間にして10〜40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。
【0068】
上記複合生地のフライ操作は、通常のドーナツ等と同様、160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られにくい。250℃を超えると、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0069】
なお、上記焼成とフライとを併用する場合は、フライした後に焼成しても、焼成した後にフライしてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0071】
<エステル交換油脂の製造>
〔製造例1〕エステル交換油脂Aの製造
ヨウ素価55のパーム分別軟部油にナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、パーム分別軟部油のエステル交換油脂Aを得た。
【0072】
〔製造例2〕エステル交換油脂Bの製造
ヨウ素価65のパーム分別軟部油にナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、パーム分別軟部油のエステル交換油脂Bを得た。
【0073】
〔製造例3〕エステル交換油脂Cの製造
ヨウ素価55のパーム分別軟部油85質量部と、大豆液状油15質量部とを溶解、混合した油脂配合物10kgを、反応温度70℃にて、触媒としてリパーゼQLC(名糖産業(株)製)50gを用いて、15リットルの反応槽でエステル交換反応を行った。反応終了後(反応時間48hr)、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、パーム分別軟部油を85質量%含有する油脂配合物を用いたエステル交換油脂Cを得た。
【0074】
<フラワーペーストの製造>
〔実施例1〕
エステル交換油脂A10質量%に、レシチン0.5質量%及びキサンタンガム0.2質量%を添加し油相とした。水44.6質量%、馬鈴薯デンプン4質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)35質量%、小麦粉1質量%、WPI(タンパク質含有量92質量%)2.5質量%、乾燥全卵2質量%及び香料0.1質量%を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化後、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、合成乳化剤無添加で、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0075】
このフラワーペーストのデンプン類含量は5質量%、糖類含量は26.2質量%、油脂含有量は10質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0076】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験1(実施例8)に供した。
【0077】
〔実施例2〕
エステル交換油脂A37質量%及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%に、キサンタンガム0.01質量%及びペクチン0.3質量%を添加し油相とした。水16.45質量%、馬鈴薯デンプン4質量%、小麦粉3質量%、ゼラチン2質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)27質量%、WPI2.5質量%、乾燥全卵5質量%及び香料0.69質量%を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状であり、合成乳化剤無添加であるカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0078】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0079】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例9)に供した。
【0080】
〔実施例3〕
実施例2におけるWPIの配合量を1質量%に変更し、水の配合量を17.95質量%に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0081】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0082】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例10)に供した。
【0083】
〔実施例4〕
実施例2におけるWPIの配合量を4質量%に変更し、水の配合量を14.95質量%に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0084】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0085】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例11)に供した。
【0086】
〔実施例5〕
実施例2におけるエステル交換油脂Aをエステル交換油脂Bに変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0087】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0088】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例12)に供した。
【0089】
〔実施例6〕
実施例2におけるエステル交換油脂Aをヨウ素価55のパーム分別軟部油に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0090】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0091】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例13)に供した。
【0092】
〔実施例7〕
実施例2におけるエステル交換油脂Aをエステル交換油脂Cに変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0093】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0094】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(実施例14)に供した。
【0095】
〔比較例1〕
実施例1におけるWPIをWPC(タンパク質含有量80質量%)に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるペースト状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0096】
このフラワーペーストのデンプン類含量は5質量%、糖類含量は26.2質量%、油脂含有量は10質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0097】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験1(比較例6)に供した。
【0098】
〔比較例2〕
実施例2におけるWPIをWPC(タンパク質含有量80質量%)に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0099】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0100】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(比較例7)に供した。
【0101】
〔比較例3〕
実施例2におけるエステル交換油脂Aをヨウ素価55のパーム分別軟部油に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0102】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0103】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(比較例8)に供した。
【0104】
〔比較例4〕
実施例2におけるWPIを脱脂粉乳(タンパク質含有量35質量%)に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0105】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0106】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(比較例9)に供した。
【0107】
〔比較例5〕
実施例2におけるWPIの含有量を10質量%に、水の配合量を10.95質量%に変更した以外は、実施例2と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
【0108】
このフラワーペーストのデンプン類含量は7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂含量は37.05質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
【0109】
得られたフラワーペーストは、後述の乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験2(比較例10)に供した。
【0110】
<乳化安定性試験>
上記実施例1〜7、及び、比較例1〜5で得られたフラワーペースト類を、−20℃で3週間冷凍保存した後、10℃の恒温器で一晩解凍し、乳化状態を以下の評価基準に従って、評価を行ない、その結果を表1に記した。
【0111】
・乳化安定性評価基準
◎:水分分離、油分分離とも全く見られなかった。
○:水分分離、油分分離とも見られなかったがやや艶がなかった。
△:若干の水分分離と、若干の油分分離が見られた。
×:若干の水分分離と、はっきりした油分分離が見られた。
××:はっきりした水分分離と、はっきりした油分分離が見られた。
【0112】
【表1】

【0113】
<ベーカリー試験1>
実施例1及び比較例1で得られたペースト状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、フラワーペーストを塗布した後、包餡した生地を焼成して、実施例8及び比較例6のクリームパンをそれぞれ得た。
【0114】
得られたクリームパンについて、以下の評価基準に従って、製造の際の包餡時作業性、フラワーペースト部分の耐熱性、及び、食感の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表2に記した。
【0115】
(クリームパン用生地の配合)
強力粉90質量部、薄力粉10質量部、砂糖18質量部、食塩1.3質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵(正味)20質量部、イースト5質量部、イーストフード0.1質量部、練込用マーガリン18質量部、水35質量部
【0116】
(クリームパン用生地の製法)
練込用マーガリン以外の全原料をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で3分、中速で4分混捏した後、練込用マーガリンを加えて低速で3分、中速で4分、高速で3分混捏した。得られた生地はフロアタイムを30分とったのち、60gに分割した。ベンチタイムを20分とった後、麺棒を使用して延展し、ペースト状のフラワーペースト30gを中心部に塗布し、包餡し、複合生地とした。この複合生地を天板に並べ、温度35℃、相対湿度80%のホイロで60分発酵させた後、200℃に設定した固定窯で12分焼成した。
【0117】
・包餡時作業性(スプレッド性)評価基準
◎:べたつきも無く、適度な硬さであり、良好なスプレッド性を有していた。
○:良好である。
△:ややべたつきがあり、やや不良なスプレッド性であった。
×:べたつき、極めて不良なスプレッド性であった。
【0118】
・耐熱性評価基準
◎:乳化破壊も無く、生地へのしみこみもなく、極めて良好である。
○:良好である。
△:分離気味で、やや生地へのしみこみが見られる。
×:分離激しく、生地へのしみこみが激しい。
【0119】
・食感評価基準
◎:滑らかな食感で極めて良好な口溶けである。
○:良好な食感と口溶けである。
△:やや弾力のある食感であるか、又は、ややべとつきがあり、やや不良である。
×:弾力のある食感であるか、又は、べとつきが激しく、不良である。
【0120】
【表2】

【0121】
<ベーカリー試験2>
実施例2〜7及び比較例2〜5で得られたシート状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、実施例9〜14及び比較例7〜10のフラワーペースト折り込みデニッシュをそれぞれ製造した。
【0122】
得られたフラワーペースト折り込みデニッシュについて、以下の評価基準に従って、ロールイン時の作業性、耐熱性、及び、フラワーペースト部分の食感の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表3に記した。
【0123】
(デニッシュ用生地の配合)
強力粉50質量部、薄力粉50質量部、脱脂粉乳3質量部、食塩1.5質量部、全卵(正味)8質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、練込用マーガリン10質量部、冷水48質量部、チップ状マーガリン70質量部。
【0124】
(デニッシュ用生地の製法)
冷水以外の原料をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で各材料が均一になるまで3分混捏した後、撹拌しながら冷水を加え、低速で2分混合し、捏ね上げ温度を20℃とした。次いで、20分フロアタイムを取った後、−20℃の冷凍庫にて60分生地を冷却し、リバースシーターにて3つ折りを3回行ない、27層のデニッシュ生地を得た。
【0125】
(フラワーペースト折り込みデニッシュの製法)
上記デニッシュ用生地を厚さ6mmに圧延し、デニッシュ生地100質量部に対し、シート状のフラワーペースト50質量部を積置後、包み込み、リバースシーターで3つ折り2回のロールイン操作を行ない、243層(うちフラワーペースト層が9層)の積層生地である複合生地を得た。この複合生地を2℃で4時間冷却した後、厚さ10mmまで圧延し、幅30mm、長さ150mmにカットして中央に1本切り込みを入れ、端部を3回くぐらせた蒟蒻成型とし、これを天板に並べ、室温にて30分ラックタイムを取った後、上火200℃、下火180℃に設定した固定窯で14分焼成した。
【0126】
・ロールイン時作業性(伸展性と生地との密着性)評価基準
◎:適度な硬さであり、伸展性も良好であり、切れも見られない。
○+:やや硬いが、伸展性は良好である。
○−:やや軟らかいが、伸展性は良好である。
△+:硬すぎて伸展性が悪く、やや切れが見られる。
△−:べたつきがあり、やや生地の滑りが見られる。
×+:硬すぎて伸展性が極めて悪く、切れが多い。
×−:べたつきが激しく、生地からのはみ出し、生地の滑りが見られる。
【0127】
・耐熱性評価基準
◎:乳化破壊も無く、生地からの剥れも無く、極めて良好である。
○:良好である。
△:分離気味で、やや生地との間に空隙がある。
×:分離激しく、また、大きな空洞が生じている。
【0128】
・食感評価基準
◎:滑らかな食感で極めて良好な口溶けである。
○:良好な食感と口溶けである。
△:やや弾力のある食感であるか、又は、ややべとつきがあり、やや不良である。
×:弾力のある食感であるか、又は、べとつきが激しく、不良である。
【0129】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト類。
【請求項2】
上記油脂中の、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂の含有量が50〜100質量%であることを特徴とする請求項1記載のフラワーペースト類。
【請求項3】
トランス酸を含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載のフラワーペースト類。
【請求項4】
増粘安定剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフラワーペースト類。
【請求項5】
合成乳化剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフラワーペースト類。
【請求項6】
デンプン類2〜10質量%、ホエイプロテイン単離物0.05〜5質量%、油脂8〜50質量%、及び、糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却することを特徴とするフラワーペースト類の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のフラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を、焼成及び/又はフライしてなることを特徴とするベーカリー食品。

【公開番号】特開2008−253160(P2008−253160A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96140(P2007−96140)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】