説明

フラワーペースト

【課題】風味良好で、食感が滑らかで、口どけも良い酸性フラワーペーストを提供することを課題とした。
【解決手段】澱粉性原料に酸性可溶大豆たん白を配合することで、これら目的を達成するフラワーペーストを得ることができる。酸性可溶大豆たん白の添加量は、澱粉性原料の50重量%が好ましく、フラワーペーストのpHは3.5〜5.9が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、澱粉性食品素材若しくは澱粉性食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉、米粉、または澱粉をボディーの主原料にした混捏生地(ドウ)を、焙焼などの加熱を行って得る焼き菓子や、同じく混捏生地を発酵させ、焼成を行って得るパン、同じく混捏生地を蒸しあげて得られるうどん、中華麺などの麺類の食品は、世界中でポピュラーな澱粉性食品の例である。このような澱粉性食品の食感を改良する方法の一つに、蛋白素材を添加することが公知であるが、従来より用いられている蛋白素材では、生地中での分散性が悪く、十分な効果が得られない、といった問題点が指摘されており、使用するたん白素材の平均粒子径を気流粉砕や凍結粉砕により格別小さくすることが提案されている(特許文献1)。そこにおいて澱粉性食品の品質改良の目標は、菓子またはパンの食味を損なうことなく、蒸しもの類は、ふっくらとした食感で、舌触り及び口溶けが良く、焼き菓子類は、サクサクとしてしっかりした食感であるが、中はソフトで口溶けが良く、ケーキ類は、パサパサせずにふわっとした食感でしっとりしており、パン類などにおいては、表面はサクサクとして歯切れが良く、ソフトで口溶けの良い食感で、ボリューム感などの外観にも優れており、保管中にも老化しにくい菓子またはパンを提供することであった。
【0003】
また澱粉性食品素材を食品表面の衣材(バッター)とする、フライ食品の製造において、フライ直後の食感のサクサクした或いはクリスピーな食感を可及的長く維持させようとする課題、或いは冷凍・冷蔵後電子レンジで調理した場合でも、製造直後のものと同様のサクサクした或いはクリスピーな食感を味わうことができることを課題として、やはりたん白素材を添加することが行われている(例えば特許文献2)。
【0004】
さらに、春巻きの皮や餃子の皮も、フライ若しくは焼成後に長時間放置された場合に皮のパリパリ感を失わず歯ざわりのよい食感を維持する課題があり、やはり大豆たん白の使用が検討されている(特許文献3)。
【0005】
一方、麺類に大豆たん白を使用すると、コシが強くなる一方で、しなやかさに欠け食感が悪化する傾向にあった。
【0006】
その他大豆たん白を澱粉性食品の品質改良に使用する試みは多数あるが、かかる提案の多さは、大豆たん白の使用が一定の改善効果があることと示すと同時に、なお改善の余地があることを示す。
【0007】
大豆たん白を澱粉性食品特に小麦粉を用いたベーカリー製品にしばしば遭遇する難点の一つは、製品塊容積の損失、外観の悪さが顕著化し、大豆たん白の中でも精製度が高まるに連れて製品塊容積の損失、外観の悪さが増大する傾向にあり、かといって低精製度の大豆たん白を使用すると大豆臭味を呈しやすい難点があり、このため、大豆たん白を油性物質と予め非加水系で混合してから小麦粉生地の成分とする方法が提案されている(特許文献4)。また大豆たん白を小麦粉生地と混合するのに大豆たん白の使用量が増すにつれ、生地の粘性が増し、小麦粉ドウを形成するのに作業性が低下する難点もあった。
【0008】
他方、大豆たん白は、一般にその等電点をpH4.5付近にもち、この付近の酸性領域において不溶性であり、不溶性であると十分に機能しない問題があったところ、酸性領域において溶解性を改善する方法が提案され、酸性領域で用いることが試みられている(特許文献5及び特許文献6)が、そのような大豆たん白の用途は酸性食品を主眼とするものであって、非酸性食品を意図したものはなく、また改善対象も全体として澱粉性食品とはいいがたいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002‐171897号
【特許文献2】特開2002‐58437号
【特許文献3】特開2002‐65192号
【特許文献4】特開昭59‐118034号
【特許文献5】特公昭53‐19669号
【特許文献6】WO 02/067690 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、酸性食品ではない前記の澱粉性食品の製造において、pH4.5以下の酸性で可溶の大豆たん白を使用すると、その他の大豆たん白に比べて意外にも食感改良効果(水分活性により多少異なるが、AW約0.5以上の高水分乃至中間水分の焼成食品にあっては、ふっくらとした食感で、舌触り及び口溶けが良く、他方水分活性が低い焼き菓子類やトーストしたパンにあっては、サクサクとした軽い食感、うどんや中華麺にあっては適度な弾力を有するしなやかな食感)が増大し、従い少量使用ですむので、多量使用の場合の難点(製品塊容積の損失、外観の悪さ)や使い辛さ(作業性の低下)もよく軽減されることを見出し、この発明を完成するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明は、
(1)澱粉性原料に酸性可溶大豆たん白を加配して得たフラワーペースト。
(2)澱粉性原料が、澱粉性穀粉、それから得られる澱粉若しくは加工澱粉、またはそれらの混合物を主材とするものである(1)に記載のフラワーペースト。
(3)酸性可溶大豆たん白が澱粉性原料に対して50重量%以下である、(1)記載のフラワーペースト。
(4)フラワーペーストのpHが3.5〜5.9である(1)記載のフラワーペースト
である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によって、少量の大豆たん白の使用で、澱粉性食品の食感改良、澱粉性食品の製造過程特に混合から成形にいたる過程においての作業性改善の効果が生じる。そして従来大豆たん白を多量に使用する場合の難点(製品塊容積の損失、外観の悪さ)や使い辛さ(作業性の低下)もよく軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明において用いる澱粉性原料は、公知のものでよく、小麦、米、コーン、馬鈴薯、タピオカ、米、キャッサバ、甘藷等の澱粉性穀粉、それらから得られる、小麦澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、キャッサバ澱粉、甘藷澱粉等の穀物澱粉類、並びにそれら穀物澱粉の酢酸エステル化、燐酸架橋、ヒドロキシプロピルエーテル化、オクテニルコハク酸エステル化、α化等の化学的あるいは物理的処理が施された加工澱粉、さらにはデキストリンを始めとして、難消化性デキストリン、分枝デキストリン等のデキストリン類が例示でき、それらの混合物も使用できる。
【0014】
また、澱粉性原料が小麦粉のようにグルテンを含有する場合、とりわけ澱粉性原料中30重量%以上の小麦粉が含まれる場合や、これと同程度のグルテンを小麦粉以外の澱粉性原料例えば米粉と併用する場合は、グルテンの粘性と相俟って通常の大豆たん白を多量使用する場合のような難点すなわち、製品塊容積の損失、外観の悪さ、粘性増加による使い辛さ(作業性の低下)などを、よく軽減させることができる。
【0015】
本発明において使用する酸性可溶大豆たん白は、pH4.0での溶解率が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上のものが適しており、その部分加水分解物であってもよい。
【0016】
*溶解率(%)はたん白の溶媒に対する可溶化の尺度であり、たん白粉末をたん白質分が5.0重量%になるように水に分散させ十分撹拌した溶液を、必要に応じてpHを調整した後、10,000G×5分間遠心分離した上清たん白の全たん白に対する割合をケルダール法、ローリー法等のたん白質定量法により測定する。
【0017】
酸性可溶大豆たん白の製造法は種々あるが、大豆たん白質を含む溶液(豆乳、脱脂豆乳、分離大豆たん白の水溶液など)を、該たん白質の等電点のpHより酸性域で、100℃を越える温度で加熱処理する方法が好ましい。加熱品はその後乾燥することにより、自体でpH4.5よりも酸性であり、かつ、酸性で高い溶解率を持つ、酸性可溶大豆たん白粉末を得ることができる。
【0018】
酸性可溶大豆たん白は、中でもWO02/67690号公報に公開されている製造法により得られたものが、pH4.5以下での溶解性が高くでき最も好ましい。その製造方法は、大豆たん白質を含む溶液において、(A)該溶液中の原料たん白質由来のポリアニオン物質を除去するか不活性化する処理、例えば大豆中のフィチン酸をフィターゼ等で分解除去する処理、又は(B)該溶液中にポリカチオン物質を添加する処理、例えばキトサンを添加する処理を行い、かかる(A)又は(B)いずれか若しくは両方の処理を行った後に、該たん白質の等電点のpHより酸性域で100℃を越える温度で該たん白質溶液を加熱処理することであり、通常その後乾燥する。
【0019】
本発明における酸性可溶大豆たん白は、部分分解物であってもよく、また、これ以外の窒素化合物である、酸性で難溶解性のたん白やたん白加水分解物、ペプチド、アミノ酸等を澱粉性食品素材若しくは澱粉性食品中に含むことを妨げない。
【0020】
酸性可溶大豆たん白は澱粉性原料に対して0.05から50重量%の広い範囲にわたって使用することができるが、同3重量%以下や2.5重量%以下の少量の範囲においても従来の大豆たん白をこれより多量に用いた場合に比べて十分優れた効果を発揮できる。上限の数値は目的により変化し、パンやケーキ等の膨化された製品では5重量%以下が好ましい。或いはフラワーペースト等澱粉性原料の使用量が系中に10重量%以下と少ない製品では、澱粉性原料当りの酸性可溶大豆たん白が50重量%以下の添加が好ましい。
【0021】
この発明は、酸性可溶大豆たん白を用いるからといって、澱粉性食品素材若しくは澱粉性食品が酸性である必要は全くなく、むしろ含水状態のpHで4.5〜9である澱粉性食品素材若しくは澱粉性食品に好適に用いることができ、最も通常にはpH5〜7.5の範囲にある。但し、鹹水を使用する中華麺では、pH7.5〜9が好適である。
【0022】
すなわち澱粉性食品は、ビスケット・クッキー類、ケーキ類、パン類、シューパフ、衣付けしたフライ食品、またはスナック食品、うどん、中華麺などの麺類であることができ、これらの分類に必ずしも判然と属するとは限らないその他の焼菓子、ベーカリー製品、例えばドーナツ、ホットケーキ、アメリカンドッグ、蒸し物例えば蒸パン、餡饅頭中の他、たこ焼き、お好み焼きなども包含する。またこれら澱粉性食品の素材である、澱粉性食品素材が、粉状、ドウ状、ペースト状、バッター状、または後三者の含気物であることができ、プレミックス、ミックス粉、打ち粉、バッター粉、春巻きの皮、餃子の皮、フラワーペーストなどの混合態様若しくは用途を付した名称の素材を包含する。
【0023】
澱粉性食品素材乃至澱粉性食品には、当該目的素材ないし目的食品の原料として公知の素材、添加物、及び水性原料を、公知の範囲で用いることができ、公知の方法で加工して得ることができる。例えば、油脂は動植物性油脂やその分別、硬化、もしくはエステル交換油、バター、マーガリンやショートニング、水中油型のクリーム類を例示でき、乳化剤は、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステル)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルなどが例示されるし、目的に応じた乳化剤を加配したいわゆる乳化油脂も販売されている。
【0024】
増粘剤や安定剤、或いは食物繊維等として、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、タマリンド種子ガム、プルラン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、グアーガム分解物、水溶性大豆多糖類、サイリウムシードガム、アラビアガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天等が例示できる。膨張剤やかんすいとして炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、それらを含むベーキングパウダーを用いることができる。水性原料の水は、水そのものの他、牛乳、酒類、卵などに由来してもよい。
【0025】
澱粉性原料に酸性可溶大豆たん白を添加する方法は、直接澱粉性原料と混合することに限定されず、酸性可溶大豆たん白が系中に分散できる方法であれば特に問題はない。例えば、澱粉性原料以外の粉体、油中水型乳化物、油脂等に予め分散したものや、水中油型乳化物に予め溶解したものを澱粉性原料に加えても良い。
【0026】
加工は、澱粉性原料に酸性可溶大豆たん白を加配した、水性の生地を、醗酵もしくは醗酵せずして、焙焼、蒸し、マイクロ波加熱、フライなどの加熱を行い最終食品とされる。生地の状態または加熱の後に冷凍若しくは冷蔵の過程を経ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施例を示すが、本発明がこれらによってその技術範囲が限定されるものではない。また、特にことわりのない限り%は重量%を、部は重量部を指す。
【0028】
<製造例1>
大豆を圧扁し、n-ヘキサンを抽出溶媒として油を抽出分離除去して得られた低変性脱脂大豆(窒素可溶指数(NSI):91)5kgに35kgの水を加え、希水酸化ナトリウム溶液でpH7に調整し、室温で1時間攪拌しながら抽出後、4,000Gで遠心分離しオカラおよび不溶分を分離し、脱脂豆乳を得た。この脱脂豆乳をリン酸にてpH4.5に調整後、連続式遠心分離機(デカンター)を用い2,000Gで遠心分離し、不溶性画分(酸沈殿カード)および可溶性画分(ホエー)を得た。酸沈殿カードを固形分10重量%になるように加水し酸沈殿カードスラリーを得た。これをリン酸でpH3.5に調整した後、連続式直接加熱殺菌装置にて120℃15秒間加熱した。これを噴霧乾燥し酸性可溶大豆たん白粉末(以下Sと略す)を得た。このたん白の溶解率はpH4.0で61%であった。
【0029】
<製造例2>
製造例1と同様にして得られた酸沈殿カードスラリーをリン酸でpH4.0に調整後、40℃になるように加温した。この溶液に固形分あたり8unit相当のフィターゼ(NOVO社製)を加え、30分間酵素作用を行った。反応後、pH3.5に調整して連続式直接加熱殺菌装置にて120℃15秒間加熱した。これを噴霧乾燥し酸性可溶大豆たん白粉末(以下Tと略す)1.5kgを得た。このたん白の溶解率はpH4.0で95%であった。
【0030】
実施例1〜6 :スポンジケーキの製造
全卵150部、上白糖110部、乳化油脂(不二製油株式会社製)「パーミングH」20部、ソルビトール製剤(東和化成工業株式会社製)「フードル70」10部、水0〜5部を25℃の室温下でケンウッドミキサー(アイコー社製)、撹拌羽根ホイッパーで低速で30秒混合し、更に薄力粉(日本製粉社製)「バイオレット」95〜99.9部、ベーキングパウダー(愛国産業株式会社製)「ベーキングパウダー赤缶」1部、上記製造例2で得た酸性可溶大豆たん白粉末Tを0.1〜5部をホイッパーで低速で30秒混合しペースト状態の生地を得た。ペースト生地を撹拌羽根ホイッパーを用い高速で3分30秒混合し、生地比重を0.43とした実施例1〜6のホイップ生地を得た(変動部数は表1参照)。更に、これらのホイップ生地を6号寸のケーキデコ用の内容積1500ccの焼成型に入れ、170℃に調整した藤澤製作所製の電気オーブンPRINCEIIにて35分焼成しこれらの結果を表2まとめた。
【0031】
実施例7〜8
実施例1において、酸性可溶大豆たん白に代え、上記製造例1で得た酸性可溶大豆たん白粉末Sを1〜0.5部、他は表1の配合に従って、同様にしてペースト状態の生地を得、また同様に焼成した。
【0032】
比較例1〜3
実施例1〜6において、酸性可溶大豆たん白に代えて、市販調製豆乳粉末(不二製油株式会社製)「ソヤフィット2000を0〜10部(大豆たん白質含有量62.8%重量/ドライ製品換算、たん白の溶解率pH4.0で20%)」使用する他は、同様にしてペースト状態の生地を得、また同様に焼成した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表2中の断面積指数の測定は次の方法で行った。すなわち、ケーキナイフを用い焼成スポンジケーキの上面から底面に向かい左右均等に二分割し、左右どちらか一方を測定サンプルとして用いる。サンプルの断面をコピー機(富士ゼロックス社製)「DocuCenter Color a450型」にて等倍コピーし、コピーされた用紙の断面積が写っている部分を切り取り重量測定し、コピー用紙の面積/重量比率から写っている部分の面積cm2を計算した。比較例1の断面積を100と固定し比較例2〜3、実施例1〜8の面積を指数で表し、指数値の大きいものがボリューム良好であった。
【0036】
表2中の焼成品の内層状態の評価は次のように行った。断面積指数の測定に用いたサンプルの断面内層の状態を10名のパネラーが目視にて5点評価し平均点を用いた。ポーラスな内層であり且つ気泡状態が均質に揃い手造り的で良好な内層を5点とし、不明瞭な特長の弱い内層を3点、大小の気泡が混在し粗すぎザラザラした不良内層を1点とした。
【0037】
表2中の焼成品の食感の評価は次のように行った。断面積指数の測定に用いたサンプルの断面内層の状態を5名のパネラーが試食し10点評価し平均点を用いた。適度な弾力と歯切れの良さを有し、且つ咽ごしの良い良好な食感を5点とし、唾液を取られネタツき特長の弱い食感を3点とし、ザラザラした良くない食感を1点とした。
大豆たん白製品の一種である調整豆乳粉末を薄力粉に対し5.26%〜11.1%使用した比較例2〜3は大豆たん白製品を使用していない比較例1に対し内層及び食感が改良された結果であるが、スポンジケーキのボリュームが小さくなる欠点がみられ、又効果を発揮する為には多量の調整豆乳粉末が必要であった。
【0038】
実施例1〜8の酸性可溶大豆たん白使用スポンジケーキは手作り的な特徴のある内層と良好な食感を有し総合的に良好な品質結果であった。更に調整豆乳粉末に対し低レベルの使用量で効果を発揮しボリュームの低下もなく、従来の大豆たん白製品とは差別化された効果がみられた。特に酸性可溶大豆たん白粉末Tは、同粉末Sに比較し、より好ましい内層状態と食感を示した。
【0039】
実施例9〜11:バターケーキの製造
上白糖120部、ショートニング(不二製油株式会社製)「パンパスLB」5部、乳化油脂(不二製油株式会社製)「パーミングH」5部、食塩2部を25℃の室温下でケンウッドミキサー(アイコー社製)、撹拌羽根ビーターで低速で30秒混合し、更に薄力粉(日本製粉社製)「バイオレット」97〜100部、コーンスターチ5部、ベーキングパウダー(愛国産業株式会社製)「ベーキングパウダー赤缶」3部、酸性可溶大豆たん白粉末T 0.5〜3部をビーターを添加し低速で30秒混合後全卵(正味)85部、水60〜63部、サラダ油(不二製油株式会社製)「ナタネサラダ油」60部を順番に添加しビーター低速で2分間混合し均一なペースト状のバターケーキ生地を得、更に、これらのペースト状の生地を長方形のバターケーキ焼成型サイズ130mm×56mm×高さ15mmに150g入れ、160℃に調整した藤澤製作所製の電気オーブンPRINCEIIにて30分間焼成しこれらの結果を表4まとめた。
【0040】
比較例4
酸性可溶大豆たん白を使用しない他は、実施例9と同じ製法で生地を調製,焼成した。
【0041】
【表3】

【0042】
焼成品の内層状態と食感を10名のパネラーにて5点法の評価を行ない表4に結果をまとめた。
【0043】
表4の結果の如く、酸性可溶大豆たん白を添加した実施例9〜11は比較例4との比較の如く大きな食感改良の効果がみられた。
【0044】
【表4】

【0045】
実施例12〜14:ドーナツの製造
薄力粉(日本製粉社製)「バイオレット」97〜99.5部、酸性可溶大豆たん白粉末T 0.5〜3部、上白糖33.8部、食塩1.5部、ベーキングパウダー(愛国産業株式会社製)「ベーキングパウダー赤缶」3部、脱脂粉乳3部を25℃の室温下でケンウッドミキサー(アイコー社製)、撹拌羽根ビーターで低速で30秒混合し、更に全卵(正味)15部、水52〜55部、植物性マーガリン(不二製油株式会社製)「パリオール500」60部を湯煎で溶解し順番に添加しビーター低速で2分間混合し均一なペースト状のドーナツ生地を得、実施例12〜14の表5にまとめた。ペースト状の生地をドーナツ生地絞り出し器(関東商事株式会社)「アルミドーナツメーカー」に入れ180℃に加熱したフライヤー(マッハ機器株式会社)「電気式フライヤー」の中に一個45g前後の重量で絞り入れ表裏合計4分間フライした。
【0046】
比較例5
酸性可溶大豆たん白を用いないほかは実施例14とほぼ同じ配合で表5のペースト状の生地を得、同条件でフライした。
【0047】
【表5】

【0048】
フライ品の内層状態と食感を10名のパネラーにて5点法の評価を行ない表6に結果をまとめた。
【0049】
表6の結果の如く、酸性可溶大豆たん白を添加した実施例12〜14は比較例5との比較の如く大きな食感改良の効果がみられた。
【0050】
【表6】

【0051】
実施例15:シューパフの製造
シューパフ専用マーガリン(不二製油株式会社製)「シュートップD」130部、水120部をケンウッドミキサー(アイコー社製)の容器に計量し、これをガス火で加熱沸騰させる。沸騰したマーガリンと水の混合物の中に薄力粉(日本製粉社製)「バイオレット」79部、強力粉(日本製粉社製)「イーグル」20部、酸性可溶大豆たん白粉末T 1部を加え、羽根ビーター、中速で3分間混合し粉体中に含まれるたん白質、澱粉と沸騰したマーガリンと水の混合物を均一に混合し水和させる。全卵(正味)200部、炭酸水素アンモニウム(膨化剤)「株式会社八宝商会」1部、炭酸水素ナトリウム(膨化剤)「株式会社八宝商会」0.5部を予備混合し3等分する。粉体と沸騰したマーガリンと水の混合物に前記の卵と膨化剤の混合物の3分の1を加え羽根ビーター、中速で2分混合し、更に混合物の3分の1を加え中速で2分混合、最後に残りの混合物の3分の1を加え中速で2分混合しペースト状のシューパフ生地を得、表7にまとめた。 ペースト状のシューパフ生地を袋に入れ鉄板に一個20gで球状に絞り200℃に調整した藤澤製作所製の電気オーブンPRINCEIIにて16分間焼成した。
【0052】
比較例6
酸性可溶大豆たん白を用いない他は、実施例15と略同じ製法で生地を調製した。
【0053】
【表7】

【0054】
焼成品の内層状態と食感を10名のパネラーにて5点法の評価を行ない表8に結果をまとめた。
【0055】
表8の結果の如く、酸性可溶大豆たん白を添加した実施例15は比較例6との比較の如く大きな食感改良の効果がみられた。
【0056】
【表8】

【0057】
実施例16及び比較例7:クッキーの製造
下表の配合で定法によりクッキーを製造した。
【0058】
【表9】

【0059】
クッキーの試作には卓上縦型ミキサーを使用し、アタッチメントにはビーターを装着した。まず、上記配合を、比重0.85を目標に低速攪拌混合し、そこに全卵を4、5回に分けて添加した。更に、攪拌しながら、水に溶いた炭安を添加、次いで、洋酒を順次添加混合した。攪拌を止め、薄力粉を一度に加え最低速度で攪拌し、粉が全体にまぶされたら攪拌を停止し、手で均一になるようざっくりと混ぜ、この生地を密閉保存し、冷蔵庫で1晩寝かせた。翌日、生地(品温6〜7℃)をゲージ厚6mmでシーターにかけ、生地厚6.2mmに延ばし、直径45mmのセルクルで型抜き(約11.5g/枚)し、 釜上200℃、釜下160℃、で9分間焼成した。実施例は生地の調製などの作業性には全く問題はなく、焼成時の生地ダレも発生しなかった。
【0060】
比較例7のクッキーはほぐれが遅く、ぎしぎしと詰まるような噛み応えであるのに対し、実施例16のクッキーは、適度な歯応えがあり、かつほぐれがよい特徴を有した。
【0061】
実施例17〜19及び比較例8:コロッケの製造
2倍重量の温水に対して日本食研(株)製の「クックコロッケ」(コロッケの具材の素)を添加し、均一になるようによく混合し、冷却したコロッケの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個45gになるように成型した。この中種1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け急速凍結した後、175℃で5分間フライした。バッターは予め必要な粉体資材をプレミックスしたものを、5℃の冷水に分散させて調製した。そのバッターの配合を表10に示した。
【0062】
【表10】

【0063】
フライしたコロッケを室温にて7時間放置したものを官能にて評価した。評価の結果を表11に示す。食感評価は10人のパネラーに5点満点として優れている順に5から1の段階評価をしてもらい、平均点で示した。
【0064】
【表11】

【0065】
酸性可溶大豆たん白粉末Tを添加することで、衣のさくさく感とクリスピー感が付与されており、比較例に比べて良好であった。但し、添加量が多くなると、噛みだしの硬さが気になり、機能改善効果は弱まる傾向にあった。総合的には1%添加区が食感のバランスが良好であった。また、フライ後4時間及び7時間経過したものを評価した。酸性可溶大豆たん白を添加した実施例では、経時的な衣のへたりが少なく、比較例と比べて食感が良好であった。
【0066】
実施例20〜21及び比較例9:かき揚げの製造
【表12】

【0067】
【表13】

【0068】
表12及び表13の配合に従い、野菜に打ち粉を添加し混合した後、衣液を添加し更に混合した。(1食ずつ手作業で実施した。)かき揚げ作成用のフライカップに生地を入れて、165℃で1分30秒フライし、急速冷凍した。調理する際には、170℃×1分15秒で再フライし、食感の評価を実施した。
【0069】
フライ後2時間経過したものを官能にて評価した。評価の結果を表14に示す。食感評価は10人のパネラーに5点満点として優れている順に5から1の段階評価をしてもらい、平均点で示した。
【0070】
【表14】

【0071】
酸性可溶大豆たん白を添加することで、衣のさくさく感とクリスピー感が付与されており、経時的な衣のへたりが少なく、比較例に比べて良好であった。但し、添加量が多くなると、噛みだしの硬さが気になるため、総合的には1%添加区が食感のバランスが良好であった。
【0072】
実施例22及び比較例10:パン製造
下表の配合で、定法によりパンを製造した。
【0073】
【表15】

【0074】
【表16】

【0075】
【表17】

【0076】
【表18】

【0077】
酸性可溶大豆たん白粉末Tを配合した実施例22の作業性は、未配合である比較例10に対し、ミキシング初期にはややかためだったが、捏ね上げ時ではコントロールとほぼ同じであり、作業性はほぼ同等であった。生地物性は、エキソテンソグラフによる測定の結果、抗張力、伸長度、形状係数ともに同等であり、ほぼ同じ生地物性であることが示された(表17)。また、焼成後の外観については容積が同等であり、内層の外観は色調・目の粗さや形等において大きな差がなかった。パン比容積についても比較例とほぼ同等であった(表18)。
【0078】
生地物性やパン容積は同等であるが、パンの食感については実施例22は比較例10と比べて優れていた。即ち、トーストをしない生の状態では、口の中でダンゴ状になりにくく、口溶けが良好であり、トーストをした場合は、軽くさくさくした食感に改質されており、好ましかった。
【0079】
実施例23:ノンフライ麺の製造
常温の水680部に攪拌しながら塩類(食塩30部、炭酸カリウム3部、炭酸ナトリウム3部)を添加し、10分間攪拌溶解を行った(加水調整液の作製)。小麦粉(日清製粉社製)「飛龍」1800部、タピオカ澱粉(日澱化学社製)「Z−100」200部、上記製造例2で得た酸性可溶大豆たん白粉末T 20部を十分に粉体混合し、200メッシュをパスさせた。コートミキサーに粉体混合物を入れ、低速にて攪拌しながら加水調整液を5回に分けて2分間で添加し、低速攪拌7分間、中速攪拌8分間行った。オカラ状になったドウ(pH8.5)を製麺機に移し、複合(厚さ2.7mmに調整)を行い麺帯にした。さらに圧延を繰り返し、最終的に厚さ0.7mmに調整した。適当な大きさに麺帯をカットし、スチーマーにて麺線を6分間蒸した。蒸しあがった麺線を熱風乾燥機にて85℃60分間乾燥し、乾燥後麺を常温に放置して冷却した。
【0080】
比較例11
実施例23に於て、酸性可溶大豆たん白粉末Tを添加しない以外は同様の方法にて調製した。
【0081】
比較例12
実施例23に於て、酸性可溶大豆たん白粉末T 20部の代わりに、分離大豆たん白(不二製油社製)「フジプロF(たん白の溶解率pH4.0で10%)」20部を使用した以外は、実施例23と同様の方法にて調製した。
【0082】
【表19】

【0083】
【表20】

【0084】
表20に示す通り、作業工程中の状態について、麺帯は比較例11に対し、比較例12が硬もろい触感であったが、実施例23では逆に比較例11に対し軟らかくしなやかな触感であり、明らかに分離大豆たん白が生地の粘性が増すのに対し、酸性可溶大豆たん白では生地の粘性が増加せず、逆に適度に低下した。
【0085】
麺の評価方法は、カップに麺を入れ沸騰水を注ぎ、湯戻り後の麺の食感を10名のパネラーによる官能試験により行った。湯戻り後の食感を見たところ、比較例11は粉っぽさがあり、くずれやすくねちゃつきがあり、比較例12は麺が硬く感じ、ぶちぶち切れやすかったのに対し、実施例23は粉っぽさ、ねちゃつきが少なく、噛み切るときに適度な弾力やしなやかさを感じ好ましかった。
【0086】
また、即席乾燥食品の場合には湯戻り・湯伸び・ほぐれといった特有の課題があり、これらの点を評価した。
「湯戻り」:湯戻り3分後、5分後、7分後の復元性を見たところ、比較例11、12は5分後でも硬く芯が残り、7分後に復元が完了したのに対し、実施例23は5分後にほぼ復元が完了し、湯戻りが早い傾向が見られた。
「湯伸び」:湯戻り10分以降の食感を見たところ、比較例11、12は軟らかくねちゃつきが増大し、明らかに湯伸びしていたのに対し、実施例23は軟らかくなるが適度な硬さを維持しており、湯伸びしにくい傾向が見られた。
「ほぐれ」:湯戻り3分後、5分後の麺のほぐれ性を見たところ、比較例11、12は麺がほぐれにくくまとまっていたのに対し、実施例23は絡まりが少なく明らかにほぐれやすい傾向を示した。
【0087】
以上の結果から、即席乾燥食品の課題である湯戻り・湯伸び・ほぐれといった課題についても効果が認められることがわかった。
【0088】
また、実施例23の酸性可溶大豆たん白粉末Tに代えて、上記製造例1で得た酸性可溶大豆たん白粉末Sを用いたいところ、実施例23と同じ傾向の麺質改良効果が得られたが、実施例23の方が食感のしなやかさにおいて優れていた。以上のように、酸性可溶大豆たん白を添加することでノンフライ麺の麺質改善効果が得られることがわかった。
【0089】
実施例24〜26:うどんの製造
常温の水40部に対し攪拌しながら食塩4部を添加し、10分間攪拌溶解を行った。(加水調整液の作製)。うどん用中力粉(日東製粉社製)100部に酸性可溶大豆たん白粉末T(0.5部、1.0部、1.5部)を十分に粉体混合し200メッシュをパスさせた。コートミキサーに粉体混合物を入れ、低速にて攪拌しながら加水調整液を5回に分けて2分間で添加し、攪拌を始めてから5分後に掻き落としを行い、さらに5分間(計10分間)攪拌を行った。そぼろ状になったドウを製麺機に移し、複合(厚さ5.0mm)を行い麺帯とした。その麺帯に対し圧延を3回繰り返し最終厚さ2.0mmの麺帯をとした。その麺帯を麺切り機にて幅3mmにカットし生うどんを得た。
【0090】
一晩冷蔵にて静置後、生めんに対し10倍量の沸騰水を準備し、生めんを入れ10分間加熱しうどんを得た。
【0091】
比較例13
酸可溶性大豆たん白粉末を添加しない以外は実施例24と同じ方法で調製した。
【0092】
【表21】

【0093】
【表22】

【0094】
評価方法は茹で上げ直後の「食感」と温かいスープに浸した状態での「茹で伸び」について10名のパネラーにより官能評価法にて行った。茹で上げ直後の「食感」についてみたところ、比較例13ではうどんの硬さも弱く、弾力、コシがあまりないのに対し実施例24〜26ではうどんへの硬さ、麺の弾力、コシが付与されており好ましい食感であることが確認された。酸可溶性大豆たん白の添加量では1.0部が最もうどんの硬さ付与、麺の弾力、コシにおいて好ましく、次いで1,5部添加、0,5部添加の順に好ましいものであった。
【0095】
「茹で伸び」において、80℃に調整したスープに茹で上げた直後のうどんを浸し、5分後、10分後の状態についてみたところ、5分後の状態では比較例はうどんが柔らかく、やや伸びた状態であったのに対し、実施例では茹で上げ直後の食感が保たれていた。10分後の状態では比較例は茹で伸びが進みうどんが柔らかくさらにコシの少ない状態であったのに対し、実施例ではやや茹で伸びが起こっているにも関わらず比較例にはない硬さ、弾力、コシがあることが確認された。
【0096】
以上のように酸化可溶性大豆たん白を添加することでうどんへの麺質改良効果が得られることがわかった。
【0097】
実施例27:フラワーペースト
上記製造例2で得た酸性可溶大豆たん白粉末Tを用いて、フラワーペーストを調製した。凍結卵黄「ゴールドヨーク」(キューピー社製)4.0部、ラクトグロブリン「サンラクトN5」(太陽化学社製)2.0部、脱脂粉乳4.0部、デキストリン10.0部、水44.5部、菜種油(不二製油社製)14.0部、グラニュー糖16.0部、酸性可溶大豆たん白粉末T 1.0部、コーンスターチ「MXPP」(日澱化学社製)4.5部を添加した。その後、60℃で10分間調合した。混合液のpHは5.9であった。さらに、100kg/cm2の圧力下に均質化した後、ニーダーで間接加熱処理する方法で100℃まで加熱し、澱粉をα化して糊状とした。ニーダーからの取り出し直後も、保形性のあるしっかりしたものであった。冷蔵庫内(5℃)で冷却後のフラワーペーストの風味は良好でかつ、食感は滑らかで口どけも良好であった。
【0098】
比較例14
実施例27に於て、酸性可溶性大豆たん白をを添加しない以外は同様の方法にて、フラワーペーストを調製した。ニーダーからの取り出し直後も、保形性のあるしっかりしたものであった。冷蔵庫内(5℃)で冷却後のフラワーペーストの風味は良好だが、食感は澱粉の糊感が強く、非常に重たい口溶けであり好ましくなかった。
【0099】
実施例28:酸性フラワーペースト
上記製造例2で得た酸性可溶大豆たん白粉末Tを用いて、酸性フラワーペーストを調製した。市販100%オレンジジュース20部、水35.5部、菜種油(不二製油社製)14部、グラニュー糖23部、酸性可溶大豆たん白粉末T 3部、コーンスターチ「MXPP」(日澱化学社製)4.5部を添加した。その後、60℃で10分間調合した。混合液のpHは3.8であった。さらに、100kg/cm2の圧力下に均質化した後、ニーダーで間接加熱処理する方法で85℃まで加熱し、澱粉をα化して糊状とした。ニーダーからの取り出し直後も、保形性のあるしっかりしたものであった。冷蔵庫内(5℃)で冷却後のフラワーペーストの食感もしっかりしており、口どけも良好であった。また、オレンジの風味がはっきりしており、自然な味に仕上がっていた。
【0100】
実施例29
酸性可溶大豆たん白粉末Tを2部、水分を36.5部とした以外は、実施例28に準じてフラワーペーストを得た。このものは実施例28のフラワーペーストに比べやや保形性が弱いものの、食感もしっかりとしていた。口どけは、実施例28同様、良好であった。風味に関しても、実施例28同様、自然な果汁の風味が感じられる物になっていた。
【0101】
比較例15
実施例28において、酸性可溶大豆たん白を全量、乳清たん白「サンラクトN5」(太陽化学社製)に代替した。混合液のpHを乳酸により3.8に調整した。それ以外は、実施例28に準じて行った。このようにして、得られたフラワーペーストは、実施例28で得られたもののような保形性はなく、傾けると流れだし、金型で絞りだした時にもだれてしまう液状であった。オレンジの風味も乳風味と混じって、ぼやけてしまい、すきっとしたオレンジ風味が感じにくくなっていた。また実施例28に比較して酸味が非常に強く感じられ、好ましくなかった。
【0102】
比較例15
比較例15において、コーンスターチの使用量を7.5部にし、グラニュー糖を20部とし、混合液のpHを乳酸により3.8に調整した。それ以外は、実施例28に準じて行った。得られたペーストは、比較例15よりは、保形性があったが、澱粉由来の保形性であり、喉通りが悪く、糊っぽさが感じられ実施例29に及ぶ食感ではなかった。
【0103】
実施例28〜29、比較例15〜16のフラワーペーストの配合および評価を表23に纏めた。
【0104】
【表23】

【0105】
実施例30
上記製造例2で得た酸性可溶大豆たん白を用いて、酸性フラワーペーストを調製した。パッションフルーツ濃縮混濁果汁(糖度50.5°、酸度13.90%、東京フードテクノ社製)10部、水45.5部、菜種油(不二製油社製)14部、グラニュー糖23部、酸性可溶大豆たん白粉末T3部、コーンスターチ「MXPP」(日澱化学社製)4.5部を添加した。その後、60℃で10分間調合した。混合液のpHは3.5であった。さらに、100kg/cm2の圧力下に均質化した後、ニーダーで間接加熱処理する方法で85℃まで加熱し、澱粉をα化して糊状とした。ニーダーからの取り出し直後でも、保形性のあるしっかりしたものであった。冷蔵庫内(5℃)で冷却後のフラワーペーストの食感もしっかりしており、口どけも良好であった。また、パッションフルーツの風味がはっきりしており、自然な味に仕上がっていた。
【0106】
実施例31:酸性可溶大豆たん白を配合した酸性クリームの製造
酸性可溶大豆たん白T2部、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製)「リョートーシュガーエステルS−570」0.2部を粉体混合し、水52.8部に添加溶解し水相を調製する。サラダ油45部を添加し、油相と水相を70℃15分間ホモミキサーで攪拌し予備乳化した後1MPaの均質化圧力で均質化し、超高温滅菌装置によって、144℃、4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った後、4MPaの均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、酸性クリーム(pH3.5)を得た。
【0107】
比較例1の配合100部に対し、上記酸性可溶大豆たん白を配合した酸性クリームを25部添加してスポンジケーキを製造した。得られたスポンジケーキは、実施例1〜8と同様の手作り的な特徴のある内層と良好な食感を有していた。このように酸性可溶大豆たん白を予め水中油型クリームに調製してから添加しても同様に得られることから、酸性可溶大豆たん白を配合し、スポンジケーキ練り込み用クリームとして使用することも可能である。
【0108】
実施例32:酸性可溶大豆たん白を配合したショートニングの製造
酸性可溶大豆たん白T16.7部を加熱溶解したショートニング(不二製油株式会社製)「パンパスLB」83.3部に添加し、攪拌しながら練り込み、酸性可溶大豆たん白を配合したショートニングを製造した。実施例22の酸性可溶大豆たん白1部とパンパスLB5部の代わりに上記酸性可溶大豆たん白を配合したショートニング6部を使用する以外は、実施例22と同じ方法でパンを製造した。
【0109】
その結果、作業性においても、生地物性においても、焼成後の外観、比容積においても、さらには、食感においてもほぼ実施例22と同等となり、予め酸性可溶大豆たん白をショートニングに練り込み、ショートニングとして使用することが可能であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉性原料に酸性可溶大豆たん白を加配して得たフラワーペースト。
【請求項2】
澱粉性原料が、澱粉性穀粉、それから得られる澱粉若しくは加工澱粉、またはそれらの混合物を主材とするものである請求項1に記載のフラワーペースト。
【請求項3】
酸性可溶大豆たん白が澱粉性原料に対して50重量%以下である、請求項1記載のフラワーペースト。
【請求項4】
フラワーペーストのpHが3.5〜5.9である請求項1記載のフラワーペースト。

【公開番号】特開2010−183922(P2010−183922A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128474(P2010−128474)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2006−529049(P2006−529049)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】