フランジ付きプーリ
【課題】ベルトを掛巻するプーリ外周部を変形させることなく、かつ溶着による不良を生じさせることなく、後付けする部品を強固に止着することのできるフランジ付きプーリの提供。
【解決手段】プーリ外周部2とボス部3とフランジ5とを備える。プーリ外周部2及び/又はフランジ5を、ボス部3と別体に形成する。別体に形成した部品を後付けで止着する。後付けする部品は、プーリ外周部2の変形を生じることがないようボス部3に止着する。ボス部3は変形しにくいので、後付けする部品が外れないよう強固に止着される。プーリ外周部2及び/又はフランジ5を後付けするので、金型7からプーリ本体6を取り出す際のフランジ5の引っ掛かりを避けることができる。
【解決手段】プーリ外周部2とボス部3とフランジ5とを備える。プーリ外周部2及び/又はフランジ5を、ボス部3と別体に形成する。別体に形成した部品を後付けで止着する。後付けする部品は、プーリ外周部2の変形を生じることがないようボス部3に止着する。ボス部3は変形しにくいので、後付けする部品が外れないよう強固に止着される。プーリ外周部2及び/又はフランジ5を後付けするので、金型7からプーリ本体6を取り出す際のフランジ5の引っ掛かりを避けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを掛巻するプーリ外周部と、ベルトの移動を規制するフランジとを備えたフランジ付きプーリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯付プーリには、外周部に掛巻したベルトの移動を規制して、歯付プーリからベルトが外れるのを防止するためのフランジが設けられている。
【0003】
歯付プーリを例えば樹脂成形する場合、金型を用いてプーリ本体と両側のフランジとを一体に成形すると、成形した歯付プーリを取り出す際、歯付プーリを金型から一方向に抜き出そうとしても、フランジが金型に引っ掛かって抜き出すことができない。このようなフランジの引っ掛かりを避けて、歯付プーリを金型から容易に取り外すことができるよう、一方のフランジを別体に形成して、プーリ本体に後付けすることが多い。
【0004】
フランジを後付けする手段としては、例えば超音波溶着を例示することができるが、この超音波溶着を採用した場合、溶着不良によるフランジの外れ、溶着未完了の製品や余分なフランジを重ねて溶着した製品の混入、溶着バリの噴出、超音波溶着する際の振動による製品に圧入されたベアリングからのグリス噴出などの不具合を生じるおそれがあり、さらに、フランジ径に対応する溶着ホーンを個別に用意する必要がある。
【0005】
また、フランジを後付けする別の手段として、例えば特許文献1は、一方のフランジ101をリング状に形成してプーリ本体(歯車部分)102の外周側に圧入するようにした歯付プーリ(歯車)を開示している(図22参照)。
【0006】
ただ、特許文献1の歯付プーリは、フランジ101をプーリ本体102の外周側に圧入するため、圧入する際に、プーリ本体102の外周部が変形しやすく、プーリ歯とベルト歯の噛み合い不良を生じるおそれがある。しかも、フランジ101の抜け出しに抵抗する抜け止めがない分、フランジ101の位置ずれを生じやすく、その位置ずれを阻止するよう強く圧入すると、プーリ本体102の外周部の変形がより大きくなるおそれがある。
【0007】
これに対して、特許文献2は、一方のフランジ103に案内孔104と係合体105とを設け、案内孔104をプーリ本体106のボス部107に挿入すると共に、係合体105をプーリ本体106と一体に形成したフランジ108に係合するようにした歯付ベルト用プーリを開示している(図23参照)。この歯付ベルト用プーリは、プーリ本体106の外周部を変形させることがないので、プーリ歯とベルト歯の噛み合い不良を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−301208号公報(段落番号0012、図1(c))
【特許文献2】実開平6−73522号公報(段落番号0013〜0015、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献2の歯付ベルト用プーリは、後付けするフランジに係合体を設けて、プーリ本体を挟んで反対側のフランジに係合させるため、その係合体をプーリの中心軸方向長さとほぼ同じ長さに設定する必要がある。このような係合体は、その剛性が小さくなりやすく、特に、プーリの中心軸方向長さが長い場合には、係合体の長さが長くて変形しやすい分、反対側のフランジとの係合が外れやすく、後付けしたフランジが予期せず外れるおそれがある。
【0010】
本発明は、ベルトを掛巻するプーリ外周部を変形させることなく、後付けする部品を強固に止着することができ、溶着不良など、プーリの外周部とフランジとを別形成することによる不良の発生を極力抑えたフランジ付きプーリの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るフランジ付きプーリは、外周面にベルトを掛巻するプーリ外周部と、プーリ軸に固定されるボス部と、プーリ外周部に掛巻したベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジとを備えたものであり、プーリ外周部及び/又はフランジを、ボス部と別体に形成すると共に、ボス部に止着したものである。
【0012】
上記構成によれば、ボス部と別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジをボス部に止着するので、プーリ外周部にリング状のフランジを圧入した構造のようなプーリ外周部の変形を生じることがない。しかも、比較的に径方向の剛性が大きく、かつ内側に挿通されたプーリ軸によって内側から保護されることになるボス部に、後付けする部品を直接止着するので、その部品をボス部から外れないよう強固に止着することができる。
【0013】
また、プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に後付けするので、プーリ外周部とフランジとを別体に形成することができ、金型を用いてフランジ付きプーリを成形する場合、成形したプーリを取り出す際の金型へのフランジの引っ掛かりを避けて、金型からの取り外しを容易にすることができる。
【0014】
ここで、プーリ外周部及びフランジは、その両方をボス部に後付けで止着するようにしてもよく、いずれかをボス部と一体に形成して、残りをボス部に後付けで止着するようにしてもよい。さらに、プーリの両側にフランジを設ける場合には、その両方をボス部に後付けで止着するようにしてもよく、一方のフランジをボス部と一体に形成して、残りのフランジをボス部に後付けで止着するようにしてもよい。
【0015】
また、プーリの外周部の中心軸方向で中央部にセンターフランジを有する場合、センターフランジをプーリの外周部と一体に形成しておき、端部のフランジをボス部に後付けで止着するようにすればよい。この場合、端部のフランジをボス部に後付けするので、パーティングラインをセンターフランジの位置に設定することにより、成形したプーリを金型から容易に取り出すことができる。
【0016】
プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に止着するための手段として、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジをボス部に圧入して止着する構成を例示することができる。この構成によれば、後付けする部品をボス部に圧入するだけでよいので、特別な工具を用いることなく、容易に止着することができる。
【0017】
また、ボス部に、別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジを係止する係止爪を形成するようにしてもよい。この構成によれば、ボス部に係止爪を形成するので、プーリ外周部及び/又はフランジを例えば強い力で圧入しなくとも、これらの後付けした部品がボス部から外れるのを防止することができる。
【0018】
また、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジに、ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めを形成するようにしてもよい。この構成によれば、プーリ外周部及び/又はフランジに回り止めを形成するので、これらを例えば強い力で圧入しなくとも、後付けする部品のボス部に対する周方向の移動を阻止することができる。
【0019】
また、ボス部に係止爪を形成する場合に、回り止めを形成するための構成として、ボス部の周囲かつ係止爪よりも基端側に、フランジと略平行な側板を形成し、この側板に、ボス部を成型する際に係止爪を形成する爪形成駒が基端側から係止爪側に貫通する爪形成駒貫通穴を形成し、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジに、爪形成駒貫通穴に係合してボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めを形成するようにしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ボス部の周囲かつ係止爪よりも基端側に側板を形成するので、この側板に回り止めを係合して、プーリ外周部及び/又はフランジのボス部に対する周方向の移動を阻止することができる。さらに、側板に爪形成駒貫通穴を形成するので、ボス部を成型する際、基端側から係止爪側に爪形成駒を貫通させて係止爪を形成することができ、係止爪付近のアンダーカットをなくすと共に、爪形成駒貫通穴を回り止めが係合する係合部としても兼用することができる。
【0021】
本発明のより具体的な構成として、フランジをプーリ外周部の両側に設け、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジを一体に形成すると共に、他側のフランジをボス部に止着した構成を例示できる。この構成によれば、プーリ外周部の両側に設けるフランジのうち、他側のフランジをボス部に止着するので、金型にフランジが引っ掛かるのを回避しつつ、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジを一体に形成して、これを金型から一側に抜き出すことができる。
【0022】
また、プーリ外周部とボス部との間に中間筒を設け、この中間筒とその径方向で内外に放射状に形成した補強材とを介してプーリ外周部及びボス部を一体化するようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、中間筒と放射状の補強材とを介して、プーリ外周部とボス部とを一体化するので、両者を一体化しつつ、ボス部の変形がプーリ外周部にまで伝わるのを抑えることができ、フランジを後付けすることによってプーリ外周部が変形するのをより確実に防止することができる。しかも、中間筒を介在させることによって、放射状の補強材の長さを短くすると共に、中間筒の内外で補強材の位置を周方向に適宜ずらすことができるので、成形収縮によって生じるへこみや窪みを抑えて、いわゆるヒケによるプーリ外周部の変形を防止することができる。
【0024】
プーリ外周部にプーリ歯を有する歯付プーリは、両側にフランジを設けた構造にすることが多く、しかも、プーリ外周部が変形することによって噛み合い不良を生じやすいので、上記の構成を採用するのが特に好適である。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によると、フランジ付きプーリのプーリ外周部及び/又はフランジを後付けするので、金型から取り出す際のフランジの引っ掛かりを避けて、金型からのプーリの取り外しを容易にすることができる。
【0026】
さらに、プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に後付けで止着するので、ベルトを掛巻するプーリ外周部にリング状のフランジを圧入する場合のようなプーリ外周部の変形を生じることがなく、例えば歯付プーリの噛み合い不良を防止することができる。また、プーリ外周部及び/又はフランジを、変形しにくいボス部に直接止着するので、超音波溶着を用いることなく、後付けする部品を外れないよう強固に止着することができ、超音波溶着に起因して生じるおそれのある種々の不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るフランジ付きプーリの正面図で、左半分はプーリ本体に後付けフランジを止着した状態を示し、左半分はプーリ本体に後付けフランジを止着する前の状態を示す
【図2】フランジ付きプーリの背面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】フランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図5】一部を切り欠いて断面を示すフランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図6】一部を切り欠いて図5とは別の断面を示すフランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図7】フランジ付きプーリの背面側から見た斜視図
【図8】一部を切り欠いて断面を示すフランジ付きプーリの背面側から見た斜視図
【図9】プーリ本体の正面側から見た斜視図
【図10】一部を切り欠いて断面を示すプーリ本体の正面側から見た斜視図
【図11】プーリ本体の背面側から見た斜視図
【図12】一部を切り欠いて断面を示すプーリ本体の背面側から見た斜視図
【図13】後付けフランジの正面側から見た斜視図
【図14】一部を切り欠いて断面を示す後付けフランジの正面側から見た斜視図
【図15】後付けフランジの背面側から見た斜視図
【図16】一部を切り欠いて断面を示す後付けフランジの背面側から見た斜視図
【図17】プーリ本体を成形する金型の概略断面図で、上半分はボス部の係止爪を形成する部位を示し、下半分は一般部位を示す
【図18】後付けフランジを成形する金型の概略断面図で、上半分は回り止めを形成する部位を示し、下半分は一般部位を示す
【図19】プーリ本体の中間筒及び補強材の配置図
【図20】中間筒を省略したプーリ本体の補強材の配置図
【図21】センターフランジを有するフランジ付きプーリの縦断面図
【図22】従来のフランジ付きプーリの断面図
【図23】従来の別のフランジ付きプーリの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るフランジ付きプーリを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図16に示すように、フランジ付きプーリ1は、例えば合成樹脂からなり、外周面にベルトを掛巻されるプーリ外周部2と、プーリ軸(図示せず)に固定されるボス部3と、プーリ外周部2の両側に設けられてベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジ4、5とを備えた歯付プーリとされる。
【0030】
このフランジ付きプーリ1は、両フランジ4、5のうちの背面側(一側)の背面側フランジ4とプーリ外周部2及びボス部3とが一体に形成されてプーリ本体6を構成すると共に、金型7からのプーリ本体6の取り出しを容易にするよう、正面側(他側)のフランジ5が、プーリ本体6とは別体に形成された後付けフランジ5とされて、プーリ本体6のボス部3に後付けで止着されている。
【0031】
図1〜図12に示すように、プーリ外周部2は、外周面にプーリ歯8が形成された筒状とされ、その背面側の端部から半径方向で外向きに突出するよう背面側フランジ4が形成されている。
【0032】
ボス部3は、プーリ外周部2よりも小径の筒状とされて、プーリ外周部2の内側に同心状に配され、このボス部3の内側を挿通するプーリ軸に固定される。プーリ外周部2とボス部3との間には、プーリ外周部2及びボス部3と同心状の中間筒9が設けられ、中間筒9とその径方向で内外に放射状に形成された補強材10とを介して、プーリ外周部2とボス部3とが一体化されている。
【0033】
このボス部3は、正面側に後付けフランジ5を止着可能なよう、プーリ外周部2よりも正面側に突出して形成され、その正面側の端部に、外周面から突出する複数の係止爪11が周方向に間隔をあけて形成されている。係止爪11は、その正面側がテーパー状に形成されると共に、背面側が後付けフランジ5と平行に形成され、その背面側に後付けフランジ5を係止して、ボス部3に後付けフランジ5を止着するようになっている。
【0034】
ボス部3の正面側の端部付近で、その周囲かつ係止爪11よりも基端側(背面側)には、背面側フランジ4及び後付けフランジ5と略平行な側板12が形成され、この側板12が、プーリ外周部2、ボス部3及び中間筒9の正面側の端部付近と一体化されている。
【0035】
側板12には、複数の爪形成駒貫通穴13が係止爪11と周方向の位置を合わせて形成されている。爪形成駒貫通穴13は、プーリ本体6を成型する際に、ボス部3の外周面を形成すると共に係止爪11の背面側の形状を形成する爪形成駒14が側板12を基端側(背面側)から係止爪11側(正面側)に貫通することによって形成される。
【0036】
図1〜図8、図13〜図16に示すように、後付けフランジ5は、プーリ外周部2よりも大径で背面側フランジ4と同径又は異径の円板状とされ、その中央部に、ボス部3の正面側の端部に嵌合するボス部嵌合穴15が形成されている。ボス部嵌合穴15の内周縁には段差部16が形成され、この段差部16に係止爪11を係止するよう、プーリ本体6の正面側からボス部3にボス部嵌合穴15を圧入することにより、ボス部3に後付けフランジ5が止着される。
【0037】
この後付けフランジ5には、爪形成駒貫通穴13に嵌る大きさの回り止め17が背面側に突出して形成され、ボス部3に後付けフランジ5を止着した状態で、回り止め17が爪形成駒貫通穴13と係合して、ボス部3に対する後付けフランジ5の周方向の移動を阻止するようになっている。
【0038】
次に、フランジ付きプーリを製造する手順を説明する。まず、図17に示すように、プーリ外周部2の外周面及びそのプーリ歯8を形成する歯駒18と、プーリ外周部2の正面側の形状を形成する固定側駒19と、側板12及びボス部3の正面側の形状を形成すると共に係止爪11の正面側の形状を形成する固定側爪形成駒20と、内径ピン受け21とを組み立てて金型7の固定側部分を構成する。
【0039】
さらに、プーリ外周部2の背面側の形状を形成する可動側駒22と、ボス部3の外周面及び係止爪11の背面側の形状を形成する前述の爪形成駒14と、ボス部3の内周面を形成する内径ピン23とを組み立てて金型7の可動側部分を構成し、金型7の全体を構成する。
【0040】
爪形成駒14は、その一般部の先端面が側板12の背面側の形状を形成し、また、係止爪11を形成する部位の先端部が一般部よりも正面側に突出して固定側爪形成駒20と接触して、係止爪11の背面側の形状を形成すると共に、側板12に爪形成駒貫通穴13を形成する。
【0041】
固定側駒19に設けられたゲート24から金型7の内部空間に樹脂を注入してプーリ本体6を形成し、その後、金型7の固定側部分から可動側部分を外し、可動側駒22に設けられたエジェクタピン25によって、プーリ本体6を金型7の可動側部分から背面側に抜き出すようにして取り出す。
【0042】
また、図18に示すように、金型26の固定側駒27と内径ピン受け28とを組み立てて固定側部分を構成し、可動側駒29と内径ピン30とを組み立てて可動側部分を構成して、金型26の全体を構成する。
【0043】
固定側駒27に設けられたゲート31から金型26の内部空間に樹脂を注入して後付けフランジ5を形成し、その後、金型26の可動側部分を外し、可動側駒29に設けられたエジェクタピン32によって、後付けフランジ5を金型26から取り出す。
【0044】
プーリ本体6の正面側からボス部3にボス部嵌合穴15を圧入して、ボス部嵌合穴15の内周縁の段差部16に係止爪11を係止することにより、ボス部3に後付けフランジ5を止着して、フランジ付きプーリ1を得る。
【0045】
上記構成によれば、後付けフランジ5をプーリ本体6とは別体に形成して、ボス部3に後付けで止着するので、プーリ本体6を金型7から一方向に抜き出して取り出す際のフランジの引っ掛かりをなくすことができる。しかも、後付けフランジ5をボス部3に止着するので、後付けフランジ5をプーリ本体6に後付けすることによるプーリ外周部2の変形を防止することができ、プーリ外周部2に掛巻する歯付ベルトとの噛み合い不良を防止することができる。さらに、後付けフランジ5を変形しにくいボス部3に止着するので、後付けフランジ5を外れないよう強固に止着することができ、しかも、後付けフランジ5を溶着する必要がない分、溶着に起因する不良を防止することができる。
【0046】
また、爪形成駒14が、側板12を貫通するようにして係止爪11の背面側の形状を形成するので、側板12を設けてプーリ外周部2及びボス部3を補強かつ一体化しつつ、係止爪11と側板12とを設けることによるアンダーカットをなくすことができ、プーリ本体6を金型7から一方向に抜き出して取り出すことができる。しかも、爪形成駒14が貫通することによって側板12に爪形成駒貫通穴13が形成されるので、この爪形成駒貫通穴13に回り止め17を係合して、後付けフランジ5を周方向に固定することができる。
【0047】
また、図19に示すように、中間筒9の内外で周方向に位置をずらして補強材10を放射状に設けるので、プーリ外周部2とボス部3とを一体化してプーリ本体6を構成しつつ、ボス部3の変形がプーリ外周部2に伝わるのを抑え、しかも、ヒケによるプーリ外周部2の変形を防止することができる。なお、図20に示すように、中間筒9を省略して補強材10のみでプーリ外周部2とボス部3とを一体化した場合、成形後の補強材10の収縮による変形が数か所に集中して、ヒケによるプーリ外周部2の変形が大きくなりやすい。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、一方のフランジ5をボス部3と別体に形成して後付けするだけでなく、両フランジ4、5を後付けにしてもよく、一方のフランジ5をボス部3と一体に形成してプーリ外周部2を後付けにしてもよく、プーリ外周部2、両フランジ4、5及びボス部3をばらばらに形成してプーリ外周部2及び両フランジ4、5をボス部3に後付けしてもよい。
【0049】
さらに、図21に示すフランジ付きプーリ33のように、プーリ外周部34にセンターフランジ35を形成し、両端の後付けフランジ36、37を後付けすることにより、センターフランジ35を有するフランジ付きプーリ33を構成するようにしてもよい。この場合、パーティングラインをセンターフランジ35の位置に設定することにより、プーリ本体38を金型からプーリ中心軸方向に容易に抜き出すことができる。
【0050】
また、ボス部3に係止爪11を形成することなく、圧入やカシメなどの手段を用いて、ボス部3にプーリ外周部2やフランジ4、5を止着するようにしてもよく、さらに、そのプーリ外周部2やフランジ4、5に回り止めを設けるようにしてもよい。また、後付けする部品を止着した状態で、プーリ外周部2、ボス部3及びフランジ4、5が一体化されていればよく、必ずしも側板12や中間筒9を設ける必要はない。また、金型から一方向に抜き出し可能な形状のフランジ付きプーリであれば、歯付プーリに限らず、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 フランジ付きプーリ
2 プーリ外周部
3 ボス部
4 背面側フランジ
5 後付けフランジ
6 プーリ本体
7、26 金型
8 プーリ歯
9 中間筒
10 補強材
11 係止爪
12 側板
13 爪形成駒貫通穴
14 爪形成駒
15 ボス部嵌合穴
16 段差部
17 回り止め
33 フランジ付きプーリ
34 プーリ外周部
35 センターフランジ
36、37 後付けフランジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを掛巻するプーリ外周部と、ベルトの移動を規制するフランジとを備えたフランジ付きプーリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯付プーリには、外周部に掛巻したベルトの移動を規制して、歯付プーリからベルトが外れるのを防止するためのフランジが設けられている。
【0003】
歯付プーリを例えば樹脂成形する場合、金型を用いてプーリ本体と両側のフランジとを一体に成形すると、成形した歯付プーリを取り出す際、歯付プーリを金型から一方向に抜き出そうとしても、フランジが金型に引っ掛かって抜き出すことができない。このようなフランジの引っ掛かりを避けて、歯付プーリを金型から容易に取り外すことができるよう、一方のフランジを別体に形成して、プーリ本体に後付けすることが多い。
【0004】
フランジを後付けする手段としては、例えば超音波溶着を例示することができるが、この超音波溶着を採用した場合、溶着不良によるフランジの外れ、溶着未完了の製品や余分なフランジを重ねて溶着した製品の混入、溶着バリの噴出、超音波溶着する際の振動による製品に圧入されたベアリングからのグリス噴出などの不具合を生じるおそれがあり、さらに、フランジ径に対応する溶着ホーンを個別に用意する必要がある。
【0005】
また、フランジを後付けする別の手段として、例えば特許文献1は、一方のフランジ101をリング状に形成してプーリ本体(歯車部分)102の外周側に圧入するようにした歯付プーリ(歯車)を開示している(図22参照)。
【0006】
ただ、特許文献1の歯付プーリは、フランジ101をプーリ本体102の外周側に圧入するため、圧入する際に、プーリ本体102の外周部が変形しやすく、プーリ歯とベルト歯の噛み合い不良を生じるおそれがある。しかも、フランジ101の抜け出しに抵抗する抜け止めがない分、フランジ101の位置ずれを生じやすく、その位置ずれを阻止するよう強く圧入すると、プーリ本体102の外周部の変形がより大きくなるおそれがある。
【0007】
これに対して、特許文献2は、一方のフランジ103に案内孔104と係合体105とを設け、案内孔104をプーリ本体106のボス部107に挿入すると共に、係合体105をプーリ本体106と一体に形成したフランジ108に係合するようにした歯付ベルト用プーリを開示している(図23参照)。この歯付ベルト用プーリは、プーリ本体106の外周部を変形させることがないので、プーリ歯とベルト歯の噛み合い不良を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−301208号公報(段落番号0012、図1(c))
【特許文献2】実開平6−73522号公報(段落番号0013〜0015、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献2の歯付ベルト用プーリは、後付けするフランジに係合体を設けて、プーリ本体を挟んで反対側のフランジに係合させるため、その係合体をプーリの中心軸方向長さとほぼ同じ長さに設定する必要がある。このような係合体は、その剛性が小さくなりやすく、特に、プーリの中心軸方向長さが長い場合には、係合体の長さが長くて変形しやすい分、反対側のフランジとの係合が外れやすく、後付けしたフランジが予期せず外れるおそれがある。
【0010】
本発明は、ベルトを掛巻するプーリ外周部を変形させることなく、後付けする部品を強固に止着することができ、溶着不良など、プーリの外周部とフランジとを別形成することによる不良の発生を極力抑えたフランジ付きプーリの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るフランジ付きプーリは、外周面にベルトを掛巻するプーリ外周部と、プーリ軸に固定されるボス部と、プーリ外周部に掛巻したベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジとを備えたものであり、プーリ外周部及び/又はフランジを、ボス部と別体に形成すると共に、ボス部に止着したものである。
【0012】
上記構成によれば、ボス部と別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジをボス部に止着するので、プーリ外周部にリング状のフランジを圧入した構造のようなプーリ外周部の変形を生じることがない。しかも、比較的に径方向の剛性が大きく、かつ内側に挿通されたプーリ軸によって内側から保護されることになるボス部に、後付けする部品を直接止着するので、その部品をボス部から外れないよう強固に止着することができる。
【0013】
また、プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に後付けするので、プーリ外周部とフランジとを別体に形成することができ、金型を用いてフランジ付きプーリを成形する場合、成形したプーリを取り出す際の金型へのフランジの引っ掛かりを避けて、金型からの取り外しを容易にすることができる。
【0014】
ここで、プーリ外周部及びフランジは、その両方をボス部に後付けで止着するようにしてもよく、いずれかをボス部と一体に形成して、残りをボス部に後付けで止着するようにしてもよい。さらに、プーリの両側にフランジを設ける場合には、その両方をボス部に後付けで止着するようにしてもよく、一方のフランジをボス部と一体に形成して、残りのフランジをボス部に後付けで止着するようにしてもよい。
【0015】
また、プーリの外周部の中心軸方向で中央部にセンターフランジを有する場合、センターフランジをプーリの外周部と一体に形成しておき、端部のフランジをボス部に後付けで止着するようにすればよい。この場合、端部のフランジをボス部に後付けするので、パーティングラインをセンターフランジの位置に設定することにより、成形したプーリを金型から容易に取り出すことができる。
【0016】
プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に止着するための手段として、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジをボス部に圧入して止着する構成を例示することができる。この構成によれば、後付けする部品をボス部に圧入するだけでよいので、特別な工具を用いることなく、容易に止着することができる。
【0017】
また、ボス部に、別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジを係止する係止爪を形成するようにしてもよい。この構成によれば、ボス部に係止爪を形成するので、プーリ外周部及び/又はフランジを例えば強い力で圧入しなくとも、これらの後付けした部品がボス部から外れるのを防止することができる。
【0018】
また、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジに、ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めを形成するようにしてもよい。この構成によれば、プーリ外周部及び/又はフランジに回り止めを形成するので、これらを例えば強い力で圧入しなくとも、後付けする部品のボス部に対する周方向の移動を阻止することができる。
【0019】
また、ボス部に係止爪を形成する場合に、回り止めを形成するための構成として、ボス部の周囲かつ係止爪よりも基端側に、フランジと略平行な側板を形成し、この側板に、ボス部を成型する際に係止爪を形成する爪形成駒が基端側から係止爪側に貫通する爪形成駒貫通穴を形成し、ボス部とは別体に形成したプーリ外周部及び/又はフランジに、爪形成駒貫通穴に係合してボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めを形成するようにしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ボス部の周囲かつ係止爪よりも基端側に側板を形成するので、この側板に回り止めを係合して、プーリ外周部及び/又はフランジのボス部に対する周方向の移動を阻止することができる。さらに、側板に爪形成駒貫通穴を形成するので、ボス部を成型する際、基端側から係止爪側に爪形成駒を貫通させて係止爪を形成することができ、係止爪付近のアンダーカットをなくすと共に、爪形成駒貫通穴を回り止めが係合する係合部としても兼用することができる。
【0021】
本発明のより具体的な構成として、フランジをプーリ外周部の両側に設け、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジを一体に形成すると共に、他側のフランジをボス部に止着した構成を例示できる。この構成によれば、プーリ外周部の両側に設けるフランジのうち、他側のフランジをボス部に止着するので、金型にフランジが引っ掛かるのを回避しつつ、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジを一体に形成して、これを金型から一側に抜き出すことができる。
【0022】
また、プーリ外周部とボス部との間に中間筒を設け、この中間筒とその径方向で内外に放射状に形成した補強材とを介してプーリ外周部及びボス部を一体化するようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、中間筒と放射状の補強材とを介して、プーリ外周部とボス部とを一体化するので、両者を一体化しつつ、ボス部の変形がプーリ外周部にまで伝わるのを抑えることができ、フランジを後付けすることによってプーリ外周部が変形するのをより確実に防止することができる。しかも、中間筒を介在させることによって、放射状の補強材の長さを短くすると共に、中間筒の内外で補強材の位置を周方向に適宜ずらすことができるので、成形収縮によって生じるへこみや窪みを抑えて、いわゆるヒケによるプーリ外周部の変形を防止することができる。
【0024】
プーリ外周部にプーリ歯を有する歯付プーリは、両側にフランジを設けた構造にすることが多く、しかも、プーリ外周部が変形することによって噛み合い不良を生じやすいので、上記の構成を採用するのが特に好適である。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によると、フランジ付きプーリのプーリ外周部及び/又はフランジを後付けするので、金型から取り出す際のフランジの引っ掛かりを避けて、金型からのプーリの取り外しを容易にすることができる。
【0026】
さらに、プーリ外周部及び/又はフランジをボス部に後付けで止着するので、ベルトを掛巻するプーリ外周部にリング状のフランジを圧入する場合のようなプーリ外周部の変形を生じることがなく、例えば歯付プーリの噛み合い不良を防止することができる。また、プーリ外周部及び/又はフランジを、変形しにくいボス部に直接止着するので、超音波溶着を用いることなく、後付けする部品を外れないよう強固に止着することができ、超音波溶着に起因して生じるおそれのある種々の不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るフランジ付きプーリの正面図で、左半分はプーリ本体に後付けフランジを止着した状態を示し、左半分はプーリ本体に後付けフランジを止着する前の状態を示す
【図2】フランジ付きプーリの背面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】フランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図5】一部を切り欠いて断面を示すフランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図6】一部を切り欠いて図5とは別の断面を示すフランジ付きプーリの正面側から見た斜視図
【図7】フランジ付きプーリの背面側から見た斜視図
【図8】一部を切り欠いて断面を示すフランジ付きプーリの背面側から見た斜視図
【図9】プーリ本体の正面側から見た斜視図
【図10】一部を切り欠いて断面を示すプーリ本体の正面側から見た斜視図
【図11】プーリ本体の背面側から見た斜視図
【図12】一部を切り欠いて断面を示すプーリ本体の背面側から見た斜視図
【図13】後付けフランジの正面側から見た斜視図
【図14】一部を切り欠いて断面を示す後付けフランジの正面側から見た斜視図
【図15】後付けフランジの背面側から見た斜視図
【図16】一部を切り欠いて断面を示す後付けフランジの背面側から見た斜視図
【図17】プーリ本体を成形する金型の概略断面図で、上半分はボス部の係止爪を形成する部位を示し、下半分は一般部位を示す
【図18】後付けフランジを成形する金型の概略断面図で、上半分は回り止めを形成する部位を示し、下半分は一般部位を示す
【図19】プーリ本体の中間筒及び補強材の配置図
【図20】中間筒を省略したプーリ本体の補強材の配置図
【図21】センターフランジを有するフランジ付きプーリの縦断面図
【図22】従来のフランジ付きプーリの断面図
【図23】従来の別のフランジ付きプーリの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るフランジ付きプーリを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図16に示すように、フランジ付きプーリ1は、例えば合成樹脂からなり、外周面にベルトを掛巻されるプーリ外周部2と、プーリ軸(図示せず)に固定されるボス部3と、プーリ外周部2の両側に設けられてベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジ4、5とを備えた歯付プーリとされる。
【0030】
このフランジ付きプーリ1は、両フランジ4、5のうちの背面側(一側)の背面側フランジ4とプーリ外周部2及びボス部3とが一体に形成されてプーリ本体6を構成すると共に、金型7からのプーリ本体6の取り出しを容易にするよう、正面側(他側)のフランジ5が、プーリ本体6とは別体に形成された後付けフランジ5とされて、プーリ本体6のボス部3に後付けで止着されている。
【0031】
図1〜図12に示すように、プーリ外周部2は、外周面にプーリ歯8が形成された筒状とされ、その背面側の端部から半径方向で外向きに突出するよう背面側フランジ4が形成されている。
【0032】
ボス部3は、プーリ外周部2よりも小径の筒状とされて、プーリ外周部2の内側に同心状に配され、このボス部3の内側を挿通するプーリ軸に固定される。プーリ外周部2とボス部3との間には、プーリ外周部2及びボス部3と同心状の中間筒9が設けられ、中間筒9とその径方向で内外に放射状に形成された補強材10とを介して、プーリ外周部2とボス部3とが一体化されている。
【0033】
このボス部3は、正面側に後付けフランジ5を止着可能なよう、プーリ外周部2よりも正面側に突出して形成され、その正面側の端部に、外周面から突出する複数の係止爪11が周方向に間隔をあけて形成されている。係止爪11は、その正面側がテーパー状に形成されると共に、背面側が後付けフランジ5と平行に形成され、その背面側に後付けフランジ5を係止して、ボス部3に後付けフランジ5を止着するようになっている。
【0034】
ボス部3の正面側の端部付近で、その周囲かつ係止爪11よりも基端側(背面側)には、背面側フランジ4及び後付けフランジ5と略平行な側板12が形成され、この側板12が、プーリ外周部2、ボス部3及び中間筒9の正面側の端部付近と一体化されている。
【0035】
側板12には、複数の爪形成駒貫通穴13が係止爪11と周方向の位置を合わせて形成されている。爪形成駒貫通穴13は、プーリ本体6を成型する際に、ボス部3の外周面を形成すると共に係止爪11の背面側の形状を形成する爪形成駒14が側板12を基端側(背面側)から係止爪11側(正面側)に貫通することによって形成される。
【0036】
図1〜図8、図13〜図16に示すように、後付けフランジ5は、プーリ外周部2よりも大径で背面側フランジ4と同径又は異径の円板状とされ、その中央部に、ボス部3の正面側の端部に嵌合するボス部嵌合穴15が形成されている。ボス部嵌合穴15の内周縁には段差部16が形成され、この段差部16に係止爪11を係止するよう、プーリ本体6の正面側からボス部3にボス部嵌合穴15を圧入することにより、ボス部3に後付けフランジ5が止着される。
【0037】
この後付けフランジ5には、爪形成駒貫通穴13に嵌る大きさの回り止め17が背面側に突出して形成され、ボス部3に後付けフランジ5を止着した状態で、回り止め17が爪形成駒貫通穴13と係合して、ボス部3に対する後付けフランジ5の周方向の移動を阻止するようになっている。
【0038】
次に、フランジ付きプーリを製造する手順を説明する。まず、図17に示すように、プーリ外周部2の外周面及びそのプーリ歯8を形成する歯駒18と、プーリ外周部2の正面側の形状を形成する固定側駒19と、側板12及びボス部3の正面側の形状を形成すると共に係止爪11の正面側の形状を形成する固定側爪形成駒20と、内径ピン受け21とを組み立てて金型7の固定側部分を構成する。
【0039】
さらに、プーリ外周部2の背面側の形状を形成する可動側駒22と、ボス部3の外周面及び係止爪11の背面側の形状を形成する前述の爪形成駒14と、ボス部3の内周面を形成する内径ピン23とを組み立てて金型7の可動側部分を構成し、金型7の全体を構成する。
【0040】
爪形成駒14は、その一般部の先端面が側板12の背面側の形状を形成し、また、係止爪11を形成する部位の先端部が一般部よりも正面側に突出して固定側爪形成駒20と接触して、係止爪11の背面側の形状を形成すると共に、側板12に爪形成駒貫通穴13を形成する。
【0041】
固定側駒19に設けられたゲート24から金型7の内部空間に樹脂を注入してプーリ本体6を形成し、その後、金型7の固定側部分から可動側部分を外し、可動側駒22に設けられたエジェクタピン25によって、プーリ本体6を金型7の可動側部分から背面側に抜き出すようにして取り出す。
【0042】
また、図18に示すように、金型26の固定側駒27と内径ピン受け28とを組み立てて固定側部分を構成し、可動側駒29と内径ピン30とを組み立てて可動側部分を構成して、金型26の全体を構成する。
【0043】
固定側駒27に設けられたゲート31から金型26の内部空間に樹脂を注入して後付けフランジ5を形成し、その後、金型26の可動側部分を外し、可動側駒29に設けられたエジェクタピン32によって、後付けフランジ5を金型26から取り出す。
【0044】
プーリ本体6の正面側からボス部3にボス部嵌合穴15を圧入して、ボス部嵌合穴15の内周縁の段差部16に係止爪11を係止することにより、ボス部3に後付けフランジ5を止着して、フランジ付きプーリ1を得る。
【0045】
上記構成によれば、後付けフランジ5をプーリ本体6とは別体に形成して、ボス部3に後付けで止着するので、プーリ本体6を金型7から一方向に抜き出して取り出す際のフランジの引っ掛かりをなくすことができる。しかも、後付けフランジ5をボス部3に止着するので、後付けフランジ5をプーリ本体6に後付けすることによるプーリ外周部2の変形を防止することができ、プーリ外周部2に掛巻する歯付ベルトとの噛み合い不良を防止することができる。さらに、後付けフランジ5を変形しにくいボス部3に止着するので、後付けフランジ5を外れないよう強固に止着することができ、しかも、後付けフランジ5を溶着する必要がない分、溶着に起因する不良を防止することができる。
【0046】
また、爪形成駒14が、側板12を貫通するようにして係止爪11の背面側の形状を形成するので、側板12を設けてプーリ外周部2及びボス部3を補強かつ一体化しつつ、係止爪11と側板12とを設けることによるアンダーカットをなくすことができ、プーリ本体6を金型7から一方向に抜き出して取り出すことができる。しかも、爪形成駒14が貫通することによって側板12に爪形成駒貫通穴13が形成されるので、この爪形成駒貫通穴13に回り止め17を係合して、後付けフランジ5を周方向に固定することができる。
【0047】
また、図19に示すように、中間筒9の内外で周方向に位置をずらして補強材10を放射状に設けるので、プーリ外周部2とボス部3とを一体化してプーリ本体6を構成しつつ、ボス部3の変形がプーリ外周部2に伝わるのを抑え、しかも、ヒケによるプーリ外周部2の変形を防止することができる。なお、図20に示すように、中間筒9を省略して補強材10のみでプーリ外周部2とボス部3とを一体化した場合、成形後の補強材10の収縮による変形が数か所に集中して、ヒケによるプーリ外周部2の変形が大きくなりやすい。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、一方のフランジ5をボス部3と別体に形成して後付けするだけでなく、両フランジ4、5を後付けにしてもよく、一方のフランジ5をボス部3と一体に形成してプーリ外周部2を後付けにしてもよく、プーリ外周部2、両フランジ4、5及びボス部3をばらばらに形成してプーリ外周部2及び両フランジ4、5をボス部3に後付けしてもよい。
【0049】
さらに、図21に示すフランジ付きプーリ33のように、プーリ外周部34にセンターフランジ35を形成し、両端の後付けフランジ36、37を後付けすることにより、センターフランジ35を有するフランジ付きプーリ33を構成するようにしてもよい。この場合、パーティングラインをセンターフランジ35の位置に設定することにより、プーリ本体38を金型からプーリ中心軸方向に容易に抜き出すことができる。
【0050】
また、ボス部3に係止爪11を形成することなく、圧入やカシメなどの手段を用いて、ボス部3にプーリ外周部2やフランジ4、5を止着するようにしてもよく、さらに、そのプーリ外周部2やフランジ4、5に回り止めを設けるようにしてもよい。また、後付けする部品を止着した状態で、プーリ外周部2、ボス部3及びフランジ4、5が一体化されていればよく、必ずしも側板12や中間筒9を設ける必要はない。また、金型から一方向に抜き出し可能な形状のフランジ付きプーリであれば、歯付プーリに限らず、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 フランジ付きプーリ
2 プーリ外周部
3 ボス部
4 背面側フランジ
5 後付けフランジ
6 プーリ本体
7、26 金型
8 プーリ歯
9 中間筒
10 補強材
11 係止爪
12 側板
13 爪形成駒貫通穴
14 爪形成駒
15 ボス部嵌合穴
16 段差部
17 回り止め
33 フランジ付きプーリ
34 プーリ外周部
35 センターフランジ
36、37 後付けフランジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にベルトを掛巻されるプーリ外周部と、プーリ軸に固定されるボス部と、前記プーリ外周部に掛巻されたベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジとを備え、前記プーリ外周部及び/又はフランジは、前記ボス部と別体に形成されると共に、前記ボス部に止着されたことを特徴とするフランジ付きプーリ。
【請求項2】
前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジは、前記ボス部に圧入されて止着されたことを特徴とする請求項1に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項3】
前記ボス部に、別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジを係止する係止爪が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項4】
前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジに、前記ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めが形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項5】
前記ボス部の周囲かつ前記係止爪よりも基端側に、前記フランジと略平行な側板が形成され、該側板に、前記ボス部を成型する際に前記係止爪を形成する爪形成駒が基端側から係止爪側に貫通する爪形成駒貫通穴が形成され、前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジに、前記爪形成駒貫通穴に係合して前記ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めが形成されたことを特徴とする請求項3に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項6】
前記フランジがプーリ外周部の両側に設けられ、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジが一体に形成されると共に、他側のフランジがボス部に止着されたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【請求項7】
前記プーリ外周部とボス部との間に中間筒が設けられ、該中間筒とその径方向で内外に放射状に形成された補強材とを介して前記プーリ外周部及びボス部が一体化されたことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【請求項8】
前記プーリ外周部にプーリ歯を有する歯付プーリとされたことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【請求項1】
外周面にベルトを掛巻されるプーリ外周部と、プーリ軸に固定されるボス部と、前記プーリ外周部に掛巻されたベルトのプーリ中心軸方向の移動を規制するフランジとを備え、前記プーリ外周部及び/又はフランジは、前記ボス部と別体に形成されると共に、前記ボス部に止着されたことを特徴とするフランジ付きプーリ。
【請求項2】
前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジは、前記ボス部に圧入されて止着されたことを特徴とする請求項1に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項3】
前記ボス部に、別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジを係止する係止爪が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項4】
前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジに、前記ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めが形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項5】
前記ボス部の周囲かつ前記係止爪よりも基端側に、前記フランジと略平行な側板が形成され、該側板に、前記ボス部を成型する際に前記係止爪を形成する爪形成駒が基端側から係止爪側に貫通する爪形成駒貫通穴が形成され、前記ボス部とは別体に形成された前記プーリ外周部及び/又はフランジに、前記爪形成駒貫通穴に係合して前記ボス部に対する周方向の移動を阻止する回り止めが形成されたことを特徴とする請求項3に記載のフランジ付きプーリ。
【請求項6】
前記フランジがプーリ外周部の両側に設けられ、プーリ外周部、ボス部及び一側のフランジが一体に形成されると共に、他側のフランジがボス部に止着されたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【請求項7】
前記プーリ外周部とボス部との間に中間筒が設けられ、該中間筒とその径方向で内外に放射状に形成された補強材とを介して前記プーリ外周部及びボス部が一体化されたことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【請求項8】
前記プーリ外周部にプーリ歯を有する歯付プーリとされたことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれかに記載のフランジ付きプーリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−96500(P2013−96500A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239726(P2011−239726)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
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