フランジ付き軸部材
【課題】 管素材をフランジ部材22に形成した穴に嵌挿し、端部を穴から突出させ、その状態で管素材を電磁成形により拡径して、両者を接合し、フランジ付き軸部材を製造する場合において、フランジ部材22に歪みが生じるのを防止する。
【解決手段】 フランジ部材22は、いずれもアルミニウム合金押出材からなる2つの板状部材24,25を、押出方向が互いに垂直に交差するように重ね合わせたものであり、前記穴は両板状部材24,25を板厚方向に貫通している。板状部材24の両端部24b,24cと板状部材25の両端部25b,25cの前面が、それぞれ相手方部材への取付面となる。軸部材23は、前記穴の内側において拡径して前記穴の内周面に密着固定され、穴の前方側に突出した部分が拡開して拡開部28が形成され、前記穴の後方側が膨出して張出部29が形成され、拡開部と張出部の間にフランジ部材が挟まれる。
【解決手段】 フランジ部材22は、いずれもアルミニウム合金押出材からなる2つの板状部材24,25を、押出方向が互いに垂直に交差するように重ね合わせたものであり、前記穴は両板状部材24,25を板厚方向に貫通している。板状部材24の両端部24b,24cと板状部材25の両端部25b,25cの前面が、それぞれ相手方部材への取付面となる。軸部材23は、前記穴の内側において拡径して前記穴の内周面に密着固定され、穴の前方側に突出した部分が拡開して拡開部28が形成され、前記穴の後方側が膨出して張出部29が形成され、拡開部と張出部の間にフランジ部材が挟まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部に貫通する穴が形成されたフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなるフランジ付き軸部材に関する。
【背景技術】
【0002】
管状の軸部材の端部に相手方部材への取付用フランジが形成されたフランジ付き軸部材、例えばバンパーステイ(縦圧壊型)は、軸部材の端部に板状のフランジ部材を溶接接合して製造される。しかし、バンパーステイの溶接部近傍は最も応力が集中する箇所であり、最も高い強度(継ぎ手強度)が必要とされるが、アルミニウム合金の場合、溶接による熱影響により溶接部近傍が軟化し、必然的に継ぎ手強度が低下するという問題がある。この継ぎ手強度の低下を補うため、軸部材及びフランジ部材の肉厚を大きくしたり、熱処理型アルミニウム合金であれば、熱処理(人工時効処理)を行って硬度及び強度を回復させることが考えられるが、前者の場合、アルミニウム合金を使用した軽量化の効果が半減し、後者の場合、溶接後の熱処理による強度の回復には限界があり、また、溶接後に熱処理工程を付加することによるコストアップが避けられない。
【0003】
一方、下記特許文献1には、管状の軸部材の周囲を金型で包囲し、金型の端面から前記軸部材の先端部を突出させ、該先端部を電磁成形により瞬間的に拡開して前記金型の端面に打ち付け、軸部材の端部に前記金型の端面に沿った形状のフランジを一体成形することが開示されている。この手段によれば、溶接の熱影響による軟化がなく、むしろ加工硬化により継ぎ手強度が向上するという利点がある。しかし、特に軸部材の径に比べて大径のフランジを形成しようとすれば、アルミニウム合金の種類によってはフランジに割れが入ったり、ボルト締結等に利用されるフランジ周縁部が拡径に伴って薄肉化するという問題が起こり得る。
なお、電磁成形とは、電気エネルギーの投入により、電磁成形用コイルがきわめて短時間の強力な磁場を形成し、この磁場内におかれたワーク(被加工物)が磁場の反発力(フレミングの左手の法則に従ったLorentz力)によって強い拡張力や収縮力を受けて、高速で塑性変形することを利用し、ワークを所定形状に成形する技術であり、下記特許文献2〜5及び非特許文献1等にも記載されているように、それ自体公知技術である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−42066号公報
【特許文献2】特開昭58−4601号公報
【特許文献3】特開平6−312226号公報
【特許文献4】特開平9−166111号公報
【特許文献5】特開2002−86228号公報
【非特許文献1】機械技術研究所報告第150号「電磁力を利用する塑性加工の研究」(1990年3月、機械技術研究所発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献4,5には、軸部材を他部材に形成した穴に貫通させ、軸部材を電磁成形により拡径して、他部材と接合する技術が開示されている。この技術を応用すれば、軸部材の先端にフランジ部材が接合したフランジ付き軸部材を製造することが可能である。
例えば、図10,11に示すように、中央に円形の貫通穴2を形成した板状のフランジ部材1を、図示しない手段により位置決めし、この貫通穴2に仮想線で示す円形断面の素材管3を貫通させ、かつ素材管3の端部(突出部3a)を前方に突出させ、この状態で図示しない手段により位置決めする。続いて、素材管3の内部に電磁成形用コイル4を装入して、電磁成形を行う。これにより、フランジ部材1の面内では素材管3は拡径して貫通穴2の内周面に密着し、フランジ部材1の前方側では突出部3aが放射方向に拡開し、フランジ部材1の後方側では素材管3は磁場の反発力による拡張力の大きさに応じて膨出し、素材管3は端部に拡開部6とその後方側に張出部7を有する軸部材5となり、フランジ部材1と軸部材5が接合されたフランジ付き軸部材8(図12参照)が成形される。なお、フランジ付き軸部材8の製造にあたり、この例では、電磁成形により素材管3を全長にわたって拡径するのではなく、フランジ1の近傍のみを拡径している。従って、図12に示すように、軸部材5にはフランジ1の前方側に拡開部6と、フランジ1の後方側に張出部7が形成されているが、軸部材5の張出部7より後方側の部分は管素材のままの径を保っている。
【0006】
このフランジ付き軸部材8において、軸部材5が貫通穴2の内周面に密着し、かつフランジ部材1は拡開部6と内側の張出部7の間に強固に挟まれている。このフランジ付き軸部材8において、フランジ部材1の外側部11の前面が相手方部材(例えばバンパーリインフォース)の被取付面に当接する取付面となる。
なお、以上説明した例では、素材管3の周囲に金型を配置せず、張出部7の成形は自由拡管するにまかせたが、必要に応じて、図10に仮想線で示すように、素材管3の周囲を金型9で取り囲み、フランジ部材1と素材管の位置決めを行うと同時に、張出部7の形状を規制することもできる。
【0007】
図10に示す方法によれば、任意の大きさの取付面を有するフランジ部材1と素材管3を使用して、フランジ付き軸部材8を電磁成形により成形でき、一方、電磁成形された拡開部6の外径は、フランジ部材1と軸部材5との接合を確保するに必要な最小限の大きさで済むため、前記特許文献1の方法において生じ得るフランジ(拡開部)の割れや肉厚の減少といった問題は抑えられる。また、素材管3としてアルミニウム合金押出材を用い、さらにフランジ部材1として、図11に示すように、アルミニウム合金押出材を用いることができる(この例では、押出方向に垂直な面で切断し、中央に穴開けしたものを用いている)ため、低コストで実施できる。
【0008】
一方、図10に示す方法の場合、素材管3が電磁成形により瞬間的に拡径してフランジ部材1の穴2の内周面に密着するとき、穴2の内周面に放射方向に強く押し広げようとする力が作用し、その際にフランジ部材1に歪みが生じやすい。フランジ部材1は、段差のある両端の外側部11と内側部12及び両者を接続する傾斜した中間部13からなり、外側部11及び内側部12がともに平面からなるアルミニウム合金押出材を、押出方向に対して垂直な面内で所定長さに切断し、内側部12の中央に穴2を開けたものであるが、内側部12の押出方向に垂直な方向の縁部(切断端面側)の剛性が比較的高くなく、図12に仮想線で例示するように、主として前記切断端面側に歪みが生じ、その結果、取付面となる外側部11,11の前面が同一平面上から外れてしまう。また、このフランジ付き軸部材8を相手方部材に取り付けた場合に、該相手方部材の側から荷重が掛かると内側部12に同様の歪みが生じやすい。
【0009】
電磁成形時の歪みの発生を防止するには、フランジ部材1の内側部12の前面及び背面を位置決め用の金型で強く挟圧し、その状態で電磁成形を行うことも考えられるが、拡開部6の成形及び張出部7の自由な膨出を妨げない形で、そのような金型を配置するのは難しく、また、仮に何らかの形で配置できたとしても、歪みの発生を十分防止できるとは限らない。さらに、電磁成形時の歪みが防止できたとしても、相手側部材の側から荷重が掛かったときの歪みの生じやすさを軽減できるわけではない。
【0010】
本発明は、素材管を板状のフランジ部材に形成した穴に嵌挿して端部を穴から突出させ、その状態で素材管を電磁成形により拡径し、フランジ部材と素材管(成形後の素材管を軸部材という)を接合させて製造したフランジ付き軸部材について、特にアルミニウム合金押出材を所定長さに切断して得たフランジ部材を使用した場合に生じる前記問題点に鑑みてなされたもので、電磁成形時に主としてフランジ部材の切断端面側に発生する歪みを軽減又は防止することを主たる目的とする。また、このフランジ付き軸部材を相手方部材に取り付けたとき、相手方部材から掛かる荷重によるフランジ部材の歪みを軽減又は防止することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフランジ付き軸部材は、中央部に貫通する穴が形成され、その外周側に相手方部材の被取付面に当接する取付面を有するフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、かつ電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなり、前記フランジ部材は各々アルミニウム合金押出材からなる2個の板状部材が組み合わされたもので、前記2個の板状部材は押出方向が互いに交差して重ね合わされ、かつ重ね合わされた箇所に前記穴が形成され、前記軸部材はアルミニウム合金からなり、前記穴から前方側に突出した部分が放射方向外向きに拡開して拡開部を形成し、前記穴の後方側が放射方向外側に膨出して張出部が形成され、前記拡開部と張出部の間に前記フランジ部材が挟まれている。
なお、本発明において、フランジ部材の穴の位置からみて拡開部の側を前方、反対側を後方とし、前方を向いた面を前面、後方を向いた面を背面とする。
【0012】
前記フランジ付き軸部材において、フランジ部材を構成する前方側の板状部材の背面と後方側の板状部材の前面は面接触している。板状部材として、両端の外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されたものを用いることができる。より具体的には、この板状部材は段差のある両端の外側部と内側部及び両者を接続する中間部からなる。2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、この形態の板状部材を用いることが望ましい。2つの板状部材は重ね合わされ、重ね合わされた箇所に2枚の板状部材を貫通する穴が形成される。
前記フランジ部材を構成する板状部材は、それぞれアルミニウム合金押出材を押出方向に対して垂直に又は傾斜して所定幅に切断したものであり、望ましくはアルミニウム合金押出材を両方の切断端面が平行になるように所定長さに切断したものであり、2個の板状部材は押出方向が互いに交差するように重ね合わされる。このとき、2個の板状部材は、それぞれの押出方向が直角になるように交差していても、直角からずれて交差していてもよいが、一方の板状部材の押出方向と他方の板状部材の切断端面が平行になるように交差させることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、任意の大きさのフランジ部材を使用して、フランジ部材と軸部材が接合されたフランジ付き軸部材を電磁成形により成形でき、かつ、前記特許文献1の方法において生じ得るフランジの割れや肉厚の減少といった問題が生じない。また、フランジ部材と軸部材をともにアルミニウム合金押出材で形成することにより、低コストで軽量なフランジ付き軸部材を得ることができる。
そして、フランジ部材が、押出方向が互いに交差して重ね合わされた2個の板状部材により構成され、これによりフランジ部材の剛性(特に切断端面側の剛性)が強化されるため、電磁成形時にフランジ部材に発生する歪みが軽減又は防止できる。これにより、フランジ部材の取付面が相手方部材の被取付面の形状からずれなくなる。同時に、このフランジ付き軸部材を相手方部材に取り付けた場合に、荷重によるフランジ部材の歪みが軽減又は防止できる。なお、板状部材の板厚を特に重ね合わせる箇所において比較的薄肉とすることもできるので、その場合、2枚の板状部材を重ね合わせるにもかかわらず、フランジ部材の全体の重量がそれほど増大しないため、アルミニウム合金を用いたことによる軽量化の効果は損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図9を参照して、本発明に係る接合構造体について具体的に説明する。
図1〜図3に示すフランジ付き軸部材21は、板状のフランジ部材22と、該フランジ部材22が端部に接合された管状の軸部材23からなる。フランジ部材22は、図4に示すように、2つの板状部材24,25を重ね合わせ、その中心部に板厚方向に貫通する円形の穴26を形成したものである。各板状部材24,25は、図11に示すフランジ部材1と同様に、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さに切断したものである。
【0015】
前方側の板状部材24は、図2,4に示すように、内側部24aと、両端の外側部24b,24c、及びこれらをつなぐ中間部24d,24eからなり、全体として均一な厚さである。外側部24b,24cと内側部24aは互いに平行で、両者には段差があり、外側部24b,24cが内側部24aより前方側に位置している。後方側の板状部材25は、図3,4に示すように、同じく内側部25aと、両端の外側部25b,25c、及びこれらをつなぐ中間部25d,25eからなり、全体として均一な厚さである。外側部25b,25cと内側部25aは互いに平行で、両者には段差があり、外側部25b,25cが内側部25aより前方側に位置している。ただし、板状部材24の外側部24b,24cと内側部24aの段差の大きさは、板状部材25の外側部25b,25cと内側部25aの段差より小さく設定されている。
【0016】
フランジ部材22は、図4に示すように、板状部材25の上に板状部材24を、押出方向が互いに直角に交差するようにそれぞれの内側部24a,25aにおいて重ね合わせたものである。板状部材24はその押出方向長さL24が板状部材25の内側部25aの幅(前面側の幅)W25と一致し、板状部材25はその押出方向長さL25が板状部材24の内側部24aの幅(背面側の幅)W24と一致するように切断されている。
また、このフランジ部材22において、図4に示すように板状部材24,25を重ね合わせたとき、双方の外側部24b,24c,25b,25cの前面が同一平面上に位置するように設定されている。当該前面が相手方部材(フランジ付き軸部材21がバンパーステイであれば、相手方部材はバンパーリインフォース)の被取付面(平面)に当接する取付面となっている。
【0017】
軸部材23は円形断面のアルミニウム合金押出材からなり、素材管は押出方向に垂直な面内で所定長さに切断されている。
なお、フランジ部材22(板状部材24,25)の材質としては、強度が高く導電率が低いものが望ましく、JIS5000系や、JIS6000,7000系のT5調質材が好適である。また、軸部材23の材質は、成形しやすく導電率が高いものが望ましく、例えば6063等のJIS6000系が好適である。軸部材23としては、アルミニウム合金押出材が好適であるが、例えばアルミニウム合金板を曲げ加工したものを用いることもできる。
【0018】
フランジ付き軸部材21の製造にあたっては、図2,3に示すように、板状部材24,25を重ね合わせてフランジ部材22を構成し、次いでフランジ部材22の穴26に素材管27を嵌挿し、その前端部を穴26から前方側に突出させた状態とし、図示しない手段によりフランジ部材22及び素材管27を位置決めする。続いて、図10において説明したと同じ要領で、素材管27の内部に図示しない電磁成形用コイルを装入して、電磁成形を行う。これにより、図1〜図3に示すように、穴26の内側では、素材管27は拡径して穴26の内周面に密着し、穴26から前方側に突出していた突出部27aが放射方向外向きに拡開して拡開部28を形成し、さらに、穴26の後方側では、素材管27は磁場の反発力による拡張力の大きさに応じて半径方向外側に膨出し張出部29が形成される。
【0019】
このフランジ付き軸部材21では、穴26の内周面に拡径した軸部材23(成形後のものを軸部材23という)が固く密着し、フランジ部材22が穴26の周囲において前後から(板状部材24の前面側と板状部材25の背面側から)拡開部28と張出部29により挟まれ、これらによりフランジ部材22と軸部材23が強固に接合される。
同時に、フランジ部材22が2つの板状部材24,25を交差して重ね合わせたもので、板状部材24の切断端面24f,24fが板状部材25の上に位置していることから、板状部材24の切断端面24f,24f側の低い剛性を板状部材25の剛性が補完する形になり、前記切断端面24f,24f側の剛性が上がる。また、板状部材25は切断端面25f、25f側の剛性が低いが、その低い剛性は板状部材24の剛性により同様に補完される。これにより、電磁成形時の歪みが軽減又は防止され、かつこのフランジ付き軸部材21を相手方部材へ取り付けた場合に、相手方部材の側から掛かる荷重によるフランジ部材21の歪みが軽減又は防止される。
【0020】
特に上記フランジ部材22では、板状部材24はその切断端面24f,24fが、板状部材25の内側部25aの剛性の高い端部(中間部25d,25eとのコーナー)に位置し、かつ板状部材25の押出方向に対し平行であり、一方、板状部材25はその切断端面25f,25fが、板状部材24の内側部24aの剛性の高い端部(中間部24d,24eとのコーナー)に位置し、かつ板状部材24の押出方向に対し平行である。そのため、板状部材24,25の剛性の相互補完作用が大きく、かつ板状部材24においては前記端面24f,24fに沿って、板状部材25においては前記端面25f,25fに沿ってほぼ均一な剛性アップが図られ、特に歪み防止効果が大きい。
また、上記フランジ部材22では、板状部材24を板状部材25に対して位置決めする場合に、板状部材24の両方の切断端面24f,24fを、板状部材25の中間部25d,25eの傾斜した面の下端(コーナー)に一致させればよく、これにより板状部材24の板状部材25に対する位置決めが容易となる。なお、フランジ部材22では、位置決めに便利なため、板状部材24の押出方向長さL24を板状部材25の内側部25aの幅(前面側の幅)W25と一致させたが、このような板状部材24,25において、L24<W25としてもよい。また、L25>W24、L25<W24とすることもできる。
【0021】
図5,6に示すフランジ部材32は、2つの板状部材34,35を重ね合わせ、その中心に板厚方向に貫通する円形の穴36を形成したものである。板状部材34は、図5に示すように、板状部材24と同じ断面形状のアルミニウム合金押出材を、押出方向に垂直な面に対して傾斜した面内で所定長さに切断したものであり(押出方向に垂直な面内で切断する場合を仮想線にて示す)、板状部材35は、同様に、板状部材25と同じ断面形状のアルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面に対して傾斜した面内で所定長さに切断したものである。
【0022】
フランジ部材32は、図6に示すように、板状部材35の上に板状部材34を、押出方向が互いに交差するようにそれぞれの内側部において重ね合わせたものであるが、フランジ部材22と異なり、2つの板状部材34,35の交差角度は直角ではない。ただし、フランジ部材22と同様に、板状部材34の両切断端面は板状部材35の押出方向に対し平行とされ、板状部材35の両切断端面は板状部材34の押出方向に対し平行とされている。また、詳しく図示していないが、板状部材34の切断端面が板状部材35の内側部の剛性の高い端部(中間部とのコーナー)に位置し、板状部材35の切断端面が板状部材34の内側部の剛性の高い端部(中間部とのコーナー)に位置する点も、フランジ部材22と同様である。
このフランジ部材32を使用して製造したフランジ付き軸部材(図示せず)は、フランジ付き軸部材21と同様の作用効果を奏する。
【0023】
図7,8に示すフランジ部材42は、2つの板状部材44,45を重ね合わせ、その中央に板厚方向に貫通する円形の穴46を形成したものである。板状部材44は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さ(L44)に切断したものであり、内側部44a、外側部44b,44c及び中間部44d,44eからなる断面構造は基本的に板状部材24と同様であり、板状部材45は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さ(L45)に切断したものであり、内側部45a、外側部45b,45c及び中間部45d,45eからなる断面構造は基本的に板状部材25と同様であるが、図7(a),(b)に示すように、板状部材44は内側部44aの背面側に幅W47の溝47が形成され、板状部材45は内側部45aの前面側に幅W48の溝48が形成されている。板状部材44の長さL44は溝48の幅W48とほぼ一致し、板状部材45の長さL45は前記溝47の幅W47とほぼ一致し、板状部材44,45を押出方向が互いに直角に交差するように重ね合わせたとき、両溝47,48がちょうど嵌り合うようになっている。
【0024】
フランジ部材42において、各板状部材44,45は溝47,48の箇所(つまり内側部44a,45aの重ね合わせる箇所)が他の箇所より薄肉であるが、重ね合わせたことにより当該箇所の肉厚は他の箇所と余り違わないようになっている。フランジ部材22,32では、板状部材を重ね合わせた箇所が各板状部材単独の場合に比べると2倍の肉厚になり、当該箇所において肉厚に応じた高い剛性が得られているが、フランジ部材にそれほどの高い剛性が必要とされない場合、フランジ部材42のように、必要な剛性が得られる限りにおいて、各板状部材の重ね合わせる箇所を薄肉にして軽量化を図ることができる。
また、フランジ部材42では、板状部材44,45の内側部44a,45aに溝47,48を形成したことにより、2つの板状部材44,45の位置決めが容易となっている。
【0025】
図9に示すフランジ部材52は、2つの板状部材54,55を重ね合わせ、その中央に板厚方向に貫通する円形の穴56を形成したものである。板状部材54は背面に溝57が形成されている点で前記板状部材44と類似するが、外側部及び中間部がなく、板状部材44の内側部44aに相当する部分のみからなる。板状部材55は前記板状部材45と同じであり、内側部55aの前面に溝58が形成され、板状部材54の長さL54は溝58の幅W58とほぼ一致し、板状部材55の長さL55は前記溝57の幅W57とほぼ一致し、両溝57,58がちょうど嵌り合うようになっている。
このフランジ部材52を使用して製造したフランジ付き軸部材(図示せず)は、前面が取付面となる箇所(外側部55b,55c)が2つしか存在しない点でフランジ部材42を使用して製造したフランジ付き軸部材(外側部が4つ)と異なるが、その他の作用効果については同様である。
【0026】
以上の例では、フランジ部材の貫通穴は平面視円形としたが、楕円、多角形等、円形とは異なる形状にすることも可能であり、素材管(軸部材)についても、円形だけでなく、楕円、多角形等、円形とは異なる断面形状にすることもできる。
また、以上の例では、軸部材の一方の端部にのみフランジ部材を接合したが、必要に応じて、両端にフランジ部材を接合することができる。
【0027】
本発明に係るフランジ付き軸部材は、バンパーステイに好適に適用することができる。その場合、必要に応じて、軸部材の両端にバンパーリインフォース用とサイドメンバ用の2つのフランジ部材を接合する。
また、本発明に係るフランジ付き軸部材は、他のフランジ付き軸部材、例えば車両のインストルメントパネル用リインフォース、クロスメンバー、タワーバー、インストルメントパネル用付属パイプ(一端がインストルメントパネル用リインフォースに取り付けられてインストルメントパネルやダクトなどを支持するパイプ)、ピラー、シートフレーム、インテークマニホールド、マフラー、プロペラシャフト、ステアリングコラム、二輪車(自転車を含む)用スイングアームのほか、航空機用のシートフレーム、いす用のフレーム、その他、各種用途の継ぎ手類等、相手方部材に取り付けられるフランジ付き軸部材一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るフランジ付き軸部材の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1に示すフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図5】本発明に係る他の形態の板状部材とその採取方法を説明する斜視図である。
【図6】その板状部材を用いたフランジ部材の平面図である。
【図7】本発明に係る他の形態のフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図8】図7(c)のC−C断面図(a)及びD−D断面図(b)である。
【図9】本発明に係る他の形態のフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図10】比較のために示すフランジ付き軸部材の断面図(穴の中心を通る断面)である。
【図11】図10に示すフランジ付き軸部材のフランジの斜視図である。
【図12】成形されたフランジ付き軸部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
21 フランジ付き軸部材
22、32,42,52 フランジ部材
23 軸部材
24,25,34,35,44,45,54,55 板状部材
26,36,46,56 穴
27 素材管
28 拡開部
29 張出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部に貫通する穴が形成されたフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなるフランジ付き軸部材に関する。
【背景技術】
【0002】
管状の軸部材の端部に相手方部材への取付用フランジが形成されたフランジ付き軸部材、例えばバンパーステイ(縦圧壊型)は、軸部材の端部に板状のフランジ部材を溶接接合して製造される。しかし、バンパーステイの溶接部近傍は最も応力が集中する箇所であり、最も高い強度(継ぎ手強度)が必要とされるが、アルミニウム合金の場合、溶接による熱影響により溶接部近傍が軟化し、必然的に継ぎ手強度が低下するという問題がある。この継ぎ手強度の低下を補うため、軸部材及びフランジ部材の肉厚を大きくしたり、熱処理型アルミニウム合金であれば、熱処理(人工時効処理)を行って硬度及び強度を回復させることが考えられるが、前者の場合、アルミニウム合金を使用した軽量化の効果が半減し、後者の場合、溶接後の熱処理による強度の回復には限界があり、また、溶接後に熱処理工程を付加することによるコストアップが避けられない。
【0003】
一方、下記特許文献1には、管状の軸部材の周囲を金型で包囲し、金型の端面から前記軸部材の先端部を突出させ、該先端部を電磁成形により瞬間的に拡開して前記金型の端面に打ち付け、軸部材の端部に前記金型の端面に沿った形状のフランジを一体成形することが開示されている。この手段によれば、溶接の熱影響による軟化がなく、むしろ加工硬化により継ぎ手強度が向上するという利点がある。しかし、特に軸部材の径に比べて大径のフランジを形成しようとすれば、アルミニウム合金の種類によってはフランジに割れが入ったり、ボルト締結等に利用されるフランジ周縁部が拡径に伴って薄肉化するという問題が起こり得る。
なお、電磁成形とは、電気エネルギーの投入により、電磁成形用コイルがきわめて短時間の強力な磁場を形成し、この磁場内におかれたワーク(被加工物)が磁場の反発力(フレミングの左手の法則に従ったLorentz力)によって強い拡張力や収縮力を受けて、高速で塑性変形することを利用し、ワークを所定形状に成形する技術であり、下記特許文献2〜5及び非特許文献1等にも記載されているように、それ自体公知技術である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−42066号公報
【特許文献2】特開昭58−4601号公報
【特許文献3】特開平6−312226号公報
【特許文献4】特開平9−166111号公報
【特許文献5】特開2002−86228号公報
【非特許文献1】機械技術研究所報告第150号「電磁力を利用する塑性加工の研究」(1990年3月、機械技術研究所発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献4,5には、軸部材を他部材に形成した穴に貫通させ、軸部材を電磁成形により拡径して、他部材と接合する技術が開示されている。この技術を応用すれば、軸部材の先端にフランジ部材が接合したフランジ付き軸部材を製造することが可能である。
例えば、図10,11に示すように、中央に円形の貫通穴2を形成した板状のフランジ部材1を、図示しない手段により位置決めし、この貫通穴2に仮想線で示す円形断面の素材管3を貫通させ、かつ素材管3の端部(突出部3a)を前方に突出させ、この状態で図示しない手段により位置決めする。続いて、素材管3の内部に電磁成形用コイル4を装入して、電磁成形を行う。これにより、フランジ部材1の面内では素材管3は拡径して貫通穴2の内周面に密着し、フランジ部材1の前方側では突出部3aが放射方向に拡開し、フランジ部材1の後方側では素材管3は磁場の反発力による拡張力の大きさに応じて膨出し、素材管3は端部に拡開部6とその後方側に張出部7を有する軸部材5となり、フランジ部材1と軸部材5が接合されたフランジ付き軸部材8(図12参照)が成形される。なお、フランジ付き軸部材8の製造にあたり、この例では、電磁成形により素材管3を全長にわたって拡径するのではなく、フランジ1の近傍のみを拡径している。従って、図12に示すように、軸部材5にはフランジ1の前方側に拡開部6と、フランジ1の後方側に張出部7が形成されているが、軸部材5の張出部7より後方側の部分は管素材のままの径を保っている。
【0006】
このフランジ付き軸部材8において、軸部材5が貫通穴2の内周面に密着し、かつフランジ部材1は拡開部6と内側の張出部7の間に強固に挟まれている。このフランジ付き軸部材8において、フランジ部材1の外側部11の前面が相手方部材(例えばバンパーリインフォース)の被取付面に当接する取付面となる。
なお、以上説明した例では、素材管3の周囲に金型を配置せず、張出部7の成形は自由拡管するにまかせたが、必要に応じて、図10に仮想線で示すように、素材管3の周囲を金型9で取り囲み、フランジ部材1と素材管の位置決めを行うと同時に、張出部7の形状を規制することもできる。
【0007】
図10に示す方法によれば、任意の大きさの取付面を有するフランジ部材1と素材管3を使用して、フランジ付き軸部材8を電磁成形により成形でき、一方、電磁成形された拡開部6の外径は、フランジ部材1と軸部材5との接合を確保するに必要な最小限の大きさで済むため、前記特許文献1の方法において生じ得るフランジ(拡開部)の割れや肉厚の減少といった問題は抑えられる。また、素材管3としてアルミニウム合金押出材を用い、さらにフランジ部材1として、図11に示すように、アルミニウム合金押出材を用いることができる(この例では、押出方向に垂直な面で切断し、中央に穴開けしたものを用いている)ため、低コストで実施できる。
【0008】
一方、図10に示す方法の場合、素材管3が電磁成形により瞬間的に拡径してフランジ部材1の穴2の内周面に密着するとき、穴2の内周面に放射方向に強く押し広げようとする力が作用し、その際にフランジ部材1に歪みが生じやすい。フランジ部材1は、段差のある両端の外側部11と内側部12及び両者を接続する傾斜した中間部13からなり、外側部11及び内側部12がともに平面からなるアルミニウム合金押出材を、押出方向に対して垂直な面内で所定長さに切断し、内側部12の中央に穴2を開けたものであるが、内側部12の押出方向に垂直な方向の縁部(切断端面側)の剛性が比較的高くなく、図12に仮想線で例示するように、主として前記切断端面側に歪みが生じ、その結果、取付面となる外側部11,11の前面が同一平面上から外れてしまう。また、このフランジ付き軸部材8を相手方部材に取り付けた場合に、該相手方部材の側から荷重が掛かると内側部12に同様の歪みが生じやすい。
【0009】
電磁成形時の歪みの発生を防止するには、フランジ部材1の内側部12の前面及び背面を位置決め用の金型で強く挟圧し、その状態で電磁成形を行うことも考えられるが、拡開部6の成形及び張出部7の自由な膨出を妨げない形で、そのような金型を配置するのは難しく、また、仮に何らかの形で配置できたとしても、歪みの発生を十分防止できるとは限らない。さらに、電磁成形時の歪みが防止できたとしても、相手側部材の側から荷重が掛かったときの歪みの生じやすさを軽減できるわけではない。
【0010】
本発明は、素材管を板状のフランジ部材に形成した穴に嵌挿して端部を穴から突出させ、その状態で素材管を電磁成形により拡径し、フランジ部材と素材管(成形後の素材管を軸部材という)を接合させて製造したフランジ付き軸部材について、特にアルミニウム合金押出材を所定長さに切断して得たフランジ部材を使用した場合に生じる前記問題点に鑑みてなされたもので、電磁成形時に主としてフランジ部材の切断端面側に発生する歪みを軽減又は防止することを主たる目的とする。また、このフランジ付き軸部材を相手方部材に取り付けたとき、相手方部材から掛かる荷重によるフランジ部材の歪みを軽減又は防止することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフランジ付き軸部材は、中央部に貫通する穴が形成され、その外周側に相手方部材の被取付面に当接する取付面を有するフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、かつ電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなり、前記フランジ部材は各々アルミニウム合金押出材からなる2個の板状部材が組み合わされたもので、前記2個の板状部材は押出方向が互いに交差して重ね合わされ、かつ重ね合わされた箇所に前記穴が形成され、前記軸部材はアルミニウム合金からなり、前記穴から前方側に突出した部分が放射方向外向きに拡開して拡開部を形成し、前記穴の後方側が放射方向外側に膨出して張出部が形成され、前記拡開部と張出部の間に前記フランジ部材が挟まれている。
なお、本発明において、フランジ部材の穴の位置からみて拡開部の側を前方、反対側を後方とし、前方を向いた面を前面、後方を向いた面を背面とする。
【0012】
前記フランジ付き軸部材において、フランジ部材を構成する前方側の板状部材の背面と後方側の板状部材の前面は面接触している。板状部材として、両端の外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されたものを用いることができる。より具体的には、この板状部材は段差のある両端の外側部と内側部及び両者を接続する中間部からなる。2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、この形態の板状部材を用いることが望ましい。2つの板状部材は重ね合わされ、重ね合わされた箇所に2枚の板状部材を貫通する穴が形成される。
前記フランジ部材を構成する板状部材は、それぞれアルミニウム合金押出材を押出方向に対して垂直に又は傾斜して所定幅に切断したものであり、望ましくはアルミニウム合金押出材を両方の切断端面が平行になるように所定長さに切断したものであり、2個の板状部材は押出方向が互いに交差するように重ね合わされる。このとき、2個の板状部材は、それぞれの押出方向が直角になるように交差していても、直角からずれて交差していてもよいが、一方の板状部材の押出方向と他方の板状部材の切断端面が平行になるように交差させることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、任意の大きさのフランジ部材を使用して、フランジ部材と軸部材が接合されたフランジ付き軸部材を電磁成形により成形でき、かつ、前記特許文献1の方法において生じ得るフランジの割れや肉厚の減少といった問題が生じない。また、フランジ部材と軸部材をともにアルミニウム合金押出材で形成することにより、低コストで軽量なフランジ付き軸部材を得ることができる。
そして、フランジ部材が、押出方向が互いに交差して重ね合わされた2個の板状部材により構成され、これによりフランジ部材の剛性(特に切断端面側の剛性)が強化されるため、電磁成形時にフランジ部材に発生する歪みが軽減又は防止できる。これにより、フランジ部材の取付面が相手方部材の被取付面の形状からずれなくなる。同時に、このフランジ付き軸部材を相手方部材に取り付けた場合に、荷重によるフランジ部材の歪みが軽減又は防止できる。なお、板状部材の板厚を特に重ね合わせる箇所において比較的薄肉とすることもできるので、その場合、2枚の板状部材を重ね合わせるにもかかわらず、フランジ部材の全体の重量がそれほど増大しないため、アルミニウム合金を用いたことによる軽量化の効果は損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図9を参照して、本発明に係る接合構造体について具体的に説明する。
図1〜図3に示すフランジ付き軸部材21は、板状のフランジ部材22と、該フランジ部材22が端部に接合された管状の軸部材23からなる。フランジ部材22は、図4に示すように、2つの板状部材24,25を重ね合わせ、その中心部に板厚方向に貫通する円形の穴26を形成したものである。各板状部材24,25は、図11に示すフランジ部材1と同様に、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さに切断したものである。
【0015】
前方側の板状部材24は、図2,4に示すように、内側部24aと、両端の外側部24b,24c、及びこれらをつなぐ中間部24d,24eからなり、全体として均一な厚さである。外側部24b,24cと内側部24aは互いに平行で、両者には段差があり、外側部24b,24cが内側部24aより前方側に位置している。後方側の板状部材25は、図3,4に示すように、同じく内側部25aと、両端の外側部25b,25c、及びこれらをつなぐ中間部25d,25eからなり、全体として均一な厚さである。外側部25b,25cと内側部25aは互いに平行で、両者には段差があり、外側部25b,25cが内側部25aより前方側に位置している。ただし、板状部材24の外側部24b,24cと内側部24aの段差の大きさは、板状部材25の外側部25b,25cと内側部25aの段差より小さく設定されている。
【0016】
フランジ部材22は、図4に示すように、板状部材25の上に板状部材24を、押出方向が互いに直角に交差するようにそれぞれの内側部24a,25aにおいて重ね合わせたものである。板状部材24はその押出方向長さL24が板状部材25の内側部25aの幅(前面側の幅)W25と一致し、板状部材25はその押出方向長さL25が板状部材24の内側部24aの幅(背面側の幅)W24と一致するように切断されている。
また、このフランジ部材22において、図4に示すように板状部材24,25を重ね合わせたとき、双方の外側部24b,24c,25b,25cの前面が同一平面上に位置するように設定されている。当該前面が相手方部材(フランジ付き軸部材21がバンパーステイであれば、相手方部材はバンパーリインフォース)の被取付面(平面)に当接する取付面となっている。
【0017】
軸部材23は円形断面のアルミニウム合金押出材からなり、素材管は押出方向に垂直な面内で所定長さに切断されている。
なお、フランジ部材22(板状部材24,25)の材質としては、強度が高く導電率が低いものが望ましく、JIS5000系や、JIS6000,7000系のT5調質材が好適である。また、軸部材23の材質は、成形しやすく導電率が高いものが望ましく、例えば6063等のJIS6000系が好適である。軸部材23としては、アルミニウム合金押出材が好適であるが、例えばアルミニウム合金板を曲げ加工したものを用いることもできる。
【0018】
フランジ付き軸部材21の製造にあたっては、図2,3に示すように、板状部材24,25を重ね合わせてフランジ部材22を構成し、次いでフランジ部材22の穴26に素材管27を嵌挿し、その前端部を穴26から前方側に突出させた状態とし、図示しない手段によりフランジ部材22及び素材管27を位置決めする。続いて、図10において説明したと同じ要領で、素材管27の内部に図示しない電磁成形用コイルを装入して、電磁成形を行う。これにより、図1〜図3に示すように、穴26の内側では、素材管27は拡径して穴26の内周面に密着し、穴26から前方側に突出していた突出部27aが放射方向外向きに拡開して拡開部28を形成し、さらに、穴26の後方側では、素材管27は磁場の反発力による拡張力の大きさに応じて半径方向外側に膨出し張出部29が形成される。
【0019】
このフランジ付き軸部材21では、穴26の内周面に拡径した軸部材23(成形後のものを軸部材23という)が固く密着し、フランジ部材22が穴26の周囲において前後から(板状部材24の前面側と板状部材25の背面側から)拡開部28と張出部29により挟まれ、これらによりフランジ部材22と軸部材23が強固に接合される。
同時に、フランジ部材22が2つの板状部材24,25を交差して重ね合わせたもので、板状部材24の切断端面24f,24fが板状部材25の上に位置していることから、板状部材24の切断端面24f,24f側の低い剛性を板状部材25の剛性が補完する形になり、前記切断端面24f,24f側の剛性が上がる。また、板状部材25は切断端面25f、25f側の剛性が低いが、その低い剛性は板状部材24の剛性により同様に補完される。これにより、電磁成形時の歪みが軽減又は防止され、かつこのフランジ付き軸部材21を相手方部材へ取り付けた場合に、相手方部材の側から掛かる荷重によるフランジ部材21の歪みが軽減又は防止される。
【0020】
特に上記フランジ部材22では、板状部材24はその切断端面24f,24fが、板状部材25の内側部25aの剛性の高い端部(中間部25d,25eとのコーナー)に位置し、かつ板状部材25の押出方向に対し平行であり、一方、板状部材25はその切断端面25f,25fが、板状部材24の内側部24aの剛性の高い端部(中間部24d,24eとのコーナー)に位置し、かつ板状部材24の押出方向に対し平行である。そのため、板状部材24,25の剛性の相互補完作用が大きく、かつ板状部材24においては前記端面24f,24fに沿って、板状部材25においては前記端面25f,25fに沿ってほぼ均一な剛性アップが図られ、特に歪み防止効果が大きい。
また、上記フランジ部材22では、板状部材24を板状部材25に対して位置決めする場合に、板状部材24の両方の切断端面24f,24fを、板状部材25の中間部25d,25eの傾斜した面の下端(コーナー)に一致させればよく、これにより板状部材24の板状部材25に対する位置決めが容易となる。なお、フランジ部材22では、位置決めに便利なため、板状部材24の押出方向長さL24を板状部材25の内側部25aの幅(前面側の幅)W25と一致させたが、このような板状部材24,25において、L24<W25としてもよい。また、L25>W24、L25<W24とすることもできる。
【0021】
図5,6に示すフランジ部材32は、2つの板状部材34,35を重ね合わせ、その中心に板厚方向に貫通する円形の穴36を形成したものである。板状部材34は、図5に示すように、板状部材24と同じ断面形状のアルミニウム合金押出材を、押出方向に垂直な面に対して傾斜した面内で所定長さに切断したものであり(押出方向に垂直な面内で切断する場合を仮想線にて示す)、板状部材35は、同様に、板状部材25と同じ断面形状のアルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面に対して傾斜した面内で所定長さに切断したものである。
【0022】
フランジ部材32は、図6に示すように、板状部材35の上に板状部材34を、押出方向が互いに交差するようにそれぞれの内側部において重ね合わせたものであるが、フランジ部材22と異なり、2つの板状部材34,35の交差角度は直角ではない。ただし、フランジ部材22と同様に、板状部材34の両切断端面は板状部材35の押出方向に対し平行とされ、板状部材35の両切断端面は板状部材34の押出方向に対し平行とされている。また、詳しく図示していないが、板状部材34の切断端面が板状部材35の内側部の剛性の高い端部(中間部とのコーナー)に位置し、板状部材35の切断端面が板状部材34の内側部の剛性の高い端部(中間部とのコーナー)に位置する点も、フランジ部材22と同様である。
このフランジ部材32を使用して製造したフランジ付き軸部材(図示せず)は、フランジ付き軸部材21と同様の作用効果を奏する。
【0023】
図7,8に示すフランジ部材42は、2つの板状部材44,45を重ね合わせ、その中央に板厚方向に貫通する円形の穴46を形成したものである。板状部材44は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さ(L44)に切断したものであり、内側部44a、外側部44b,44c及び中間部44d,44eからなる断面構造は基本的に板状部材24と同様であり、板状部材45は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さ(L45)に切断したものであり、内側部45a、外側部45b,45c及び中間部45d,45eからなる断面構造は基本的に板状部材25と同様であるが、図7(a),(b)に示すように、板状部材44は内側部44aの背面側に幅W47の溝47が形成され、板状部材45は内側部45aの前面側に幅W48の溝48が形成されている。板状部材44の長さL44は溝48の幅W48とほぼ一致し、板状部材45の長さL45は前記溝47の幅W47とほぼ一致し、板状部材44,45を押出方向が互いに直角に交差するように重ね合わせたとき、両溝47,48がちょうど嵌り合うようになっている。
【0024】
フランジ部材42において、各板状部材44,45は溝47,48の箇所(つまり内側部44a,45aの重ね合わせる箇所)が他の箇所より薄肉であるが、重ね合わせたことにより当該箇所の肉厚は他の箇所と余り違わないようになっている。フランジ部材22,32では、板状部材を重ね合わせた箇所が各板状部材単独の場合に比べると2倍の肉厚になり、当該箇所において肉厚に応じた高い剛性が得られているが、フランジ部材にそれほどの高い剛性が必要とされない場合、フランジ部材42のように、必要な剛性が得られる限りにおいて、各板状部材の重ね合わせる箇所を薄肉にして軽量化を図ることができる。
また、フランジ部材42では、板状部材44,45の内側部44a,45aに溝47,48を形成したことにより、2つの板状部材44,45の位置決めが容易となっている。
【0025】
図9に示すフランジ部材52は、2つの板状部材54,55を重ね合わせ、その中央に板厚方向に貫通する円形の穴56を形成したものである。板状部材54は背面に溝57が形成されている点で前記板状部材44と類似するが、外側部及び中間部がなく、板状部材44の内側部44aに相当する部分のみからなる。板状部材55は前記板状部材45と同じであり、内側部55aの前面に溝58が形成され、板状部材54の長さL54は溝58の幅W58とほぼ一致し、板状部材55の長さL55は前記溝57の幅W57とほぼ一致し、両溝57,58がちょうど嵌り合うようになっている。
このフランジ部材52を使用して製造したフランジ付き軸部材(図示せず)は、前面が取付面となる箇所(外側部55b,55c)が2つしか存在しない点でフランジ部材42を使用して製造したフランジ付き軸部材(外側部が4つ)と異なるが、その他の作用効果については同様である。
【0026】
以上の例では、フランジ部材の貫通穴は平面視円形としたが、楕円、多角形等、円形とは異なる形状にすることも可能であり、素材管(軸部材)についても、円形だけでなく、楕円、多角形等、円形とは異なる断面形状にすることもできる。
また、以上の例では、軸部材の一方の端部にのみフランジ部材を接合したが、必要に応じて、両端にフランジ部材を接合することができる。
【0027】
本発明に係るフランジ付き軸部材は、バンパーステイに好適に適用することができる。その場合、必要に応じて、軸部材の両端にバンパーリインフォース用とサイドメンバ用の2つのフランジ部材を接合する。
また、本発明に係るフランジ付き軸部材は、他のフランジ付き軸部材、例えば車両のインストルメントパネル用リインフォース、クロスメンバー、タワーバー、インストルメントパネル用付属パイプ(一端がインストルメントパネル用リインフォースに取り付けられてインストルメントパネルやダクトなどを支持するパイプ)、ピラー、シートフレーム、インテークマニホールド、マフラー、プロペラシャフト、ステアリングコラム、二輪車(自転車を含む)用スイングアームのほか、航空機用のシートフレーム、いす用のフレーム、その他、各種用途の継ぎ手類等、相手方部材に取り付けられるフランジ付き軸部材一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るフランジ付き軸部材の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1に示すフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図5】本発明に係る他の形態の板状部材とその採取方法を説明する斜視図である。
【図6】その板状部材を用いたフランジ部材の平面図である。
【図7】本発明に係る他の形態のフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図8】図7(c)のC−C断面図(a)及びD−D断面図(b)である。
【図9】本発明に係る他の形態のフランジ付き軸部材に用いる板状部材の端面図(a),(b)及びフランジ部材の斜視図(c)である。
【図10】比較のために示すフランジ付き軸部材の断面図(穴の中心を通る断面)である。
【図11】図10に示すフランジ付き軸部材のフランジの斜視図である。
【図12】成形されたフランジ付き軸部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
21 フランジ付き軸部材
22、32,42,52 フランジ部材
23 軸部材
24,25,34,35,44,45,54,55 板状部材
26,36,46,56 穴
27 素材管
28 拡開部
29 張出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に貫通する穴が形成され、その外周側に相手方部材の被取付面に当接する取付面を有するフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、かつ電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなり、前記フランジ部材は各々アルミニウム合金押出材からなる2個の板状部材が組み合わされたもので、前記2個の板状部材は押出方向が互いに交差して重ね合わされ、かつ重ね合わされた箇所に前記穴が形成され、前記軸部材はアルミニウム合金からなり、前記穴から前方側に突出した部分が放射方向外向きに拡開して拡開部を形成し、前記穴の後方側が放射方向外側に膨出して張出部が形成され、前記拡開部と張出部の間に前記フランジ部材が挟まれていることを特徴とするフランジ付き軸部材。
【請求項2】
前記2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、両端の外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項3】
前記2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、段差のある両端の外側部と内側部及び両者を接続する中間部からなり、前記外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項4】
前記板状部材は、いずれもアルミニウム合金押出材を両方の切断端面が平行になるように所定長さに切断したもので、一方の板状部材の押出方向と他方の板状部材の切断端面が平行になるように重ね合わされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項5】
前記フランジ付き軸部材が自動車のバンパーステイであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項1】
中央部に貫通する穴が形成され、その外周側に相手方部材の被取付面に当接する取付面を有するフランジ部材と、前記穴に嵌挿され、かつ電磁成形により拡径されて前記穴の内周面に密着し、前記フランジ部材に接合された管状の軸部材からなり、前記フランジ部材は各々アルミニウム合金押出材からなる2個の板状部材が組み合わされたもので、前記2個の板状部材は押出方向が互いに交差して重ね合わされ、かつ重ね合わされた箇所に前記穴が形成され、前記軸部材はアルミニウム合金からなり、前記穴から前方側に突出した部分が放射方向外向きに拡開して拡開部を形成し、前記穴の後方側が放射方向外側に膨出して張出部が形成され、前記拡開部と張出部の間に前記フランジ部材が挟まれていることを特徴とするフランジ付き軸部材。
【請求項2】
前記2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、両端の外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項3】
前記2個の板状部材のうち少なくとも1個の板状部材は、段差のある両端の外側部と内側部及び両者を接続する中間部からなり、前記外側部が内側部より前方側に位置し、前記外側部の前面が前記取付面となり、前記内側部に前記穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項4】
前記板状部材は、いずれもアルミニウム合金押出材を両方の切断端面が平行になるように所定長さに切断したもので、一方の板状部材の押出方向と他方の板状部材の切断端面が平行になるように重ね合わされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたフランジ付き軸部材。
【請求項5】
前記フランジ付き軸部材が自動車のバンパーステイであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたフランジ付き軸部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−7979(P2006−7979A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188338(P2004−188338)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
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