説明

フランジ組立体およびフランジ組立体の製造方法

【課題】製造が容易である簡易な構造によって耐抜去力および耐回転トルクを大幅に向上させることができるフランジ組立体、および、このようなフランジ組立体の製造方法を提供する。
【解決手段】フランジ組立体11は、筒部14と第一鍔部15とを有する第一フランジ部材12と、柱部21と第二鍔部22とを有する第二フランジ部材13とを備える。ここで、第二フランジ部材13は、中心軸線に向かって斜めに延びるくさび状凹部24を有し、第一フランジ部材12は、くさび状凹部24内に入り込むように設けられたくさび状凸部17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ組立体およびフランジ組立体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心軸線に沿って延在する中空状のスリーブの開口端に、回転軸が設けられたフランジ部材を嵌合して取り付ける技術が、例えば電子写真装置に用いられる現像ロールの製造において必要とされる。このような技術として、特開2008−241028号公報や、特開2009−181039号公報が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−241028号公報
【特許文献2】特開2009−181039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2においては、円筒状のスリーブの一方側開口端に、金属製の第一フランジ部材と、駆動軸が設けられた金属製の第二フランジ部材とからなるフランジ組立体を圧入することによって、現像ロールに用いられる中空ロール部材を形成している。フランジ組立体を構成する第一フランジ部材の中心には、所定の径を有する貫通孔が設けられている。また、第二フランジ部材の一方側端部には、上記貫通孔より大きな径を有する加圧フランジ部と、上記貫通孔より小さな径を有する柱部と、上記貫通孔より小さく、且つ柱部よりやや大きな径を有する先端フランジ部とが、第二フランジ部材本体と同軸となるように連設されている。
【0005】
第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結し、上記フランジ組立体を製造する場合には、まず、連結時に第一フランジ部材が外径方向に変形することを防止するために、第一フランジ部材を連結用の型に入れる。そして、第一フランジ部材の貫通孔に、第二フランジ部材の先端フランジ部および柱部を挿入し、加圧フランジ部下面を第一フランジ部材上面に当接させる。そして、プレス機を用いて、第二フランジ部材を第一フランジ部材に押し当てていく。そうすると、加圧フランジ部によって第一フランジ部材の上端部の一部が塑性流動し、先端フランジ部と加圧フランジ部との間に形成された凹み部に入り込むこととなる。このようにして第一フランジ部材と第二フランジ部材とが一体的に連結され、フランジ組立体が形成される。これにより、製造コストを抑えつつ、構造が強固なフランジ組立体を形成することができるとしている。
【0006】
ここで、特許文献1および特許文献2に記載のフランジ組立体においては、その構成部材である第一フランジ部材および第二フランジ部材を、双方ともに金属材料によって構成する必要がある。すなわち、上記したように、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結させるためには、加圧フランジ部から第一フランジ部材上端部に対して大きな押圧力を負荷し、第一フランジ部材の一部を、第二フランジ部材に形成された凹み部に入り込ませるほどに大幅に塑性流動させる必要がある。したがって、例えば第一フランジ部材を樹脂材料により構成した場合は、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結することが不可能となる。なぜならば、樹脂は、金属ほどの延性を有していないため、上記のような大幅な塑性変形に耐えることができずに破断してしまうからである。このように、特許文献1および特許文献2に記載のフランジ組立体によれば、例えば製品の軽量化といった観点から、構成部材に樹脂を適用する方が望ましい場合においても、樹脂を適用することが不可能である。
【0007】
さらに、特許文献1および特許文献2においては、上記のように、金属製の第一フランジ部材を塑性流動させる必要があるため、第一フランジ部材と第二フランジ部材との連結に際し、非常に大きな力を加える必要がある。また、連結時に第一フランジ部材が外径方向に変形することを防止するために、第一フランジ部材の外周面を抑える型が必要となる。したがって、製造装置として、大型プレス機や、各部材を支持するための型が必要となるため、製造設備の大型化に繋がる。これにより、製造コストが増大することとなる。
【0008】
また、上記した用途に用いられるフランジ組立体においては、連結された第一フランジ部材を第二フランジ部材から引き抜くために要する力である耐抜去力と、連結された第一フランジ部材を第二フランジ部材に対して相対回転させるために要するトルクである耐回転トルクとを向上させることも、現在大きな技術的課題となっている。
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、スリーブの端部に嵌められるフランジ組立体であって、構成部材に金属材料または樹脂材料のいずれも適用可能であり、且つ、製造が容易である簡易な構造によって耐抜去力および耐回転トルクを大幅に向上させることができるフランジ組立体、および、このようなフランジ組立体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフランジ組立体は、中心軸線に沿って長く延びるスリーブの端部に嵌められるフランジ組立体であって、筒部と、この筒部の端から拡径する第一鍔部とを有する第一フランジ部材と、第一フランジ部材の筒部内に嵌め入れられる柱部と、第一鍔部に面接触する第二鍔部とを有する第二フランジ部材とを備える。ここで、第二フランジ部材は、柱部の外面と第二鍔部とが交差する角部から中心軸線に向かって斜めに延びるくさび状凹部を有し、第一フランジ部材は、上記第二鍔部と面接触する第一鍔部の端面と筒部の内面とが交差する角部からくさび状凹部内に入り込んでいるくさび状凸部を有する。
【0011】
この構成によれば、第二フランジ部材の中心軸線に向かって切り込まれたくさび状凹部と、くさび状凹部の内部に入り込むように第一フランジ部材に設けられたくさび状凸部とが係合することによって、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを、互いに強固に連結することができる。これにより、第一フランジ部材を第二フランジ部材から軸方向に引き抜くためには、くさび状凹部の内部に入り込むくさび状凸部を変形または破損させるほどの力が必要となるため、耐抜去力を大幅に向上させることができる。また、くさび状凹部を形成する内壁面と、くさび状凸部とは、完全に面接触しているため、くさび状凹部とくさび状凸部との接触面積が、比較的に大きくなる。したがって、第一フランジ部材を第二フランジ部材に対して中心軸線を基準として相対回転させる際に生じる摩擦力が、大きくなる。すなわち、耐回転トルクを向上させることができる。また、第一フランジ部材および第二フランジ部材は、上記のように、くさび状凸部とくさび状凹部との係合により互いの連結を実現しているため、構造が極めて簡易である。したがって、フランジ組立体を容易に製造することが可能である。
【0012】
好ましくは、第一フランジ部材は、樹脂から構成され、第二フランジ部材は、金属から構成される。すなわち、本発明に係るフランジ組立体においては、第一フランジ部材と第二フランジ部材との連結を、上記のようなくさび状凹部、およびくさび状凹部内に入り込むくさび状凸部とによって実現したことから、第一フランジ部材を樹脂材料によって構成したとしても、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを効果的に連結することができる。すなわち、本発明によれば、フランジ組立体の構成部材として、金属および樹脂のいずれも適用可能である。したがって、フランジ組立体をより幅広い用途に適用することが可能となる。また、より小さな圧接力により第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結可能であるため、製造設備の大型化を避けることができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0013】
好ましくは、くさび状凹部およびくさび状凸部は、フランジ組立体の全周に亘って連なるように設けられている。この構成によれば、くさび状凹部とくさび状凸部との係合部分の面積がさらに増大するため、耐抜去力および耐回転トルクをさらに向上させることができる。
【0014】
好ましくは、柱部の外面には、ローレット加工が設けられている。この構成によれば、第一フランジ部材の筒部内面と、第二フランジ部材柱部に設けられたローレット加工とが噛み合って連結されるため、耐抜去力および耐回転トルクをさらに向上させることができる。
【0015】
本発明の他の局面において、中心軸線に沿って長く延びるスリーブの端部に嵌められるフランジ組立体の製造方法であって、中心穴を有する筒部と、この筒部の端から拡径する第一鍔部と、第一鍔部の端面上に形成され、中心穴を取り囲む円錐台部とを有する第一フランジ部材を準備する工程と、柱部と、この柱部の端から拡径する第二鍔部とを有する第二フランジ部材を準備する工程と、第二フランジ部材の柱部の外面と第二鍔部とが交差する角部から中心軸線に向かって斜めに延びるくさび状凹部を形成する工程と、第一フランジ部材の中心穴に第二フランジ部材の柱部を嵌め入れて、第一フランジ部材の円錐台部をくさび状凹部に当接させる工程と、第一フランジ部材を第二フランジ部材に向けて押圧し、円錐台部を変形させてくさび状凹部内を埋めることによって第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結する工程とを備える。
【0016】
この構成によれば、第一フランジ部材の円錐台部を受け入れるくさび状凹部は、中心方向に向けて斜めに延びるように形成されている。すなわち、くさび状凹部は、第一フランジ部材を第二フランジ部材に向けて押圧させた際に、第一フランジ部材の円錐台部が当該くさび状凹部の内部へとより円滑に案内され易い形状を有している。したがって、より小さい圧接力によって第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結させることが可能である。これにより、製造設備の大型化を避けることができるため、製造コストを低減することができる。また、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結すると、上記円錐台部が、くさび状に変形し、上記くさび状凹部内に隙間なく入り込む。これにより、第一フランジ部材と第二フランジ部材とが、互いに強固に連結されることとなる。したがって、第一フランジ部材および第二フランジ部材の間の耐抜去力および耐回転トルクを大幅に向上させることができる。
【0017】
好ましくは、第一フランジ部材は、樹脂から構成され、第二フランジ部材は、金属から構成される。すなわち、本発明に係るフランジ組立体は、上記連結構造を備えることから、フランジ組立体が嵌着されるスリーブと、第二フランジ部材との間に位置する第一フランジ部材に、樹脂材料を適用することが可能となる。したがって、より幅広い用途に対応することが可能となる。また、極めて小さな圧接力により第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結可能であるため、製造設備の大型化を避けることができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第一フランジ部材と第二フランジ部材との連結を、くさび状凹部、およびくさび状凹部内に入り込むくさび状凸部とによって実現したことから、フランジ組立体の構成部材として、金属または樹脂のいずれも適用可能となる。また、第一フランジ部材を第二フランジ部材から軸方向に引き抜くために要する耐抜去力、および、第一フランジ部材を第二フランジ部材に対して相対回転させるために要する耐回転トルクを、大幅に向上させることができる。さらに、第一フランジ部材と第二フランジ部材との連結を極めて簡易な構造により実現していることから、フランジ組立体を容易に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ロール部材の外観図を示す。
【図2】図1に示すロール部材の断面図を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係るフランジ組立体を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。
【図4】図3に示す第一フランジ部材を示す図であって、図3に対応する図である。
【図5】図3に示す第二フランジ部材を示す図であって、図3に対応する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るフランジ組立体の製造方法のフローチャートを示す。
【図7】第一フランジ部材準備工程によって製造された第一フランジ部材を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。
【図8】第二フランジ部材準備工程によって製造された第二フランジ部材を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。
【図9】第一フランジ部材および第二フランジ部材の位置決め工程後の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る製造方法により製造されたフランジ組立体11の断面形状を外径方向から見た写真である。
【図11】図10中の領域XIを拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1および図2を用いて、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11を備えたロール部材101について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11を備えたロール部材101の外観図を示す。図2は、図1に示すロール部材101の断面図を示す。
【0021】
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11は、ロール部材101に備えられた軸方向に長尺に延在する中空のスリーブ102の開口端に嵌め込まれるフランジ状の部材である。このような構成のロール部材101は、例えば電子写真装置に用いられる現像ロールに適用することができる。
【0022】
フランジ組立体11は、スリーブ102の軸方向他方側端に設けられた開口部103に圧入により嵌め込まれている。すなわち、スリーブ102に対するフランジ組立体11の相対回転は、互いの接触面に生じる摩擦力によって規制されている。フランジ組立体11の軸方向他方側端部には、後述するシャフトが、軸方向他方側に向けて突出するように一体的に形成されている。このシャフトは、例えばロール部材101が電子写真装置の現像ロールとして用いられた場合に、電子写真装置本体側に係止される軸部材となる。すなわち、本実施形態に係るフランジ組立体11は、スリーブ102を、フランジ組立体11が係止される他部材に固定するように、スリーブ102と当該他部材とを機械的に連結する機能を有している。
【0023】
次に、図3〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11の構成について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。図4は、図3に示す第一フランジ部材12を示す図であって、図3に対応する図である。図5は、図3に示す第二フランジ部材13を示す図であって、図3に対応する図である。
【0024】
図3〜図5を参照して、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11は、円環状の第一フランジ部材12と、第一フランジ部材12に挿通固定された円形状の第二フランジ部材13とを備える。
【0025】
本実施形態に係る第一フランジ部材12は、第二フランジ部材13と連結された状態において、軸方向に沿って延びる円筒状の筒部14と、この筒部14の軸方向他方側端部から拡径する第一鍔部15と、第一鍔部15の軸方向他方側の端面16から第二フランジ部材13に向かってくさび状に突出するように設けられたくさび状凸部17とを有する。なお、本実施形態においては、第一フランジ部材12は、樹脂材料によって構成されている。
【0026】
くさび状凸部17は、第一鍔部15の端面16と、筒部14の内周面18とが交差する角部領域から、中心軸線Oに向かって斜めに延びる断面くさび状の環状凸部であって、中心軸線Oの周りに全周に亘って連なっている。より具体的には、くさび状凸部17は、筒部14の内周面18の軸方向他方側端18eから中心軸線Oに向かって斜めに延びる円環状の面19と、第一鍔部15の端面16の内径側端16eから中心軸線Oに向かって斜めに延び、面19と鋭角を形成するように交わる円環状の面20とから構成されている。
【0027】
第二フランジ部材13は、第一フランジ部材12の筒部14内に嵌め入れられる円柱状の柱部21と、柱部21の軸方向他方側端部から拡径する第二鍔部22と、第二鍔部22の軸方向他方側の端面25から中心軸線に沿って軸方向他方側へ突出するシャフト26と、第二鍔部22の軸方向一方側の端面23から第二鍔部22の内方へ向けて切り込まれたくさび状凹部24とを有する。なお、本実施形態においては、第二フランジ部材13は、金属材料によって構成されている。
【0028】
柱部21は、第一フランジ部材12の中心孔よりもやや大きい径を有する円柱状部材である。また、柱部21の外周面27の下方領域には、外周面27の全周に亘ってローレット加工部28が設けられている。図3に示すように、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とが連結された状態においては、柱部21が、第一フランジ部材12の筒部14内に圧入されている。
【0029】
シャフト26は、第二鍔部22の端面25から軸方向他方側へ突出する円柱部材であって、中心軸線Oと同心に設けられている。上記したように、このシャフト26は、例えば電子写真装置本体に組み込まれた際には、電子写真装置本体側に係止される部材となる。したがって、シャフト26は、電子写真装置本体と係合するための切り欠き部または凸部をさらに含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態に係るくさび状凹部24は、柱部21の外周面27と第二鍔部22の端面23とが交差する角部領域から中心軸線Oに向かって斜めに延びる断面V字状の環状凹部であって、中心軸線Oの周りに全周に亘って連なっている。より具体的には、くさび状凹部24は、柱部21に設けられたローレット加工部28の軸方向他方側端28eから中心軸線Oに向かって斜めに延びる円環状の面29と、第二鍔部22の端面23の内径側端23eから中心軸線Oに向かって斜めに延び、面29と鋭角を形成するように交わる円環状の面30とから構成されている。
【0031】
図3に示すように、フランジ組立体11は、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とが、くさび状凸部17およびくさび状凹部24を介して互いに連結されることによって構成されている。この状態においては、第一フランジ部材12に設けられたくさび状凸部17が、第二フランジ部材13に設けられたくさび状凹部24の内部を埋めるように入り込んでいる。すなわち、くさび状凸部17を構成する面19,20と、くさび状凹部24を構成する面29,30とが、面接触している。また、上記のように、くさび状凸部17およびくさび状凹部24は、ともに中心軸線Oに向かって斜めに延びるように形成されているため、図3に示す連結状態において、くさび状凸部17の先端が、第二フランジ部材13の柱部21の外周面27から距離dだけ内径側に入り込むこととなる。
【0032】
このように、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とは、くさび状凸部17とくさび状凹部24とが係合することによって互いに強固に連結されている。したがって、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13から軸方向に引き抜くためには、くさび状凹部24の内部に入り込むくさび状凸部17を変形または破損させるほどの力が必要となるため、フランジ組立体11としての耐抜去力を大幅に向上させることができる。
【0033】
また、上記したように、くさび状凸部17を構成する面19,20と、くさび状凹部24を構成する面29,30とは、完全に面接触している。さらに、柱部21は筒部14内に圧入されているため、柱部21の外周面27と、筒部14の内周面18とは、ほぼ全域に亘って圧接している。したがって、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13に対して中心軸線を基準として相対回転させる際に生じる摩擦力が、大きくなる。すなわち、フランジ組立体11としての耐回転トルクを、向上させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、上記のように、柱部21の外周面27に、ローレット加工部28が設けられている。この構成により、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とを連結した状態においては、筒部14の内周面18と、ローレット加工部28とが、噛み合って連結されることとなる。したがって、耐抜去力および耐回転トルクをさらに向上させることができる。
【0035】
このように、本実施形態に係るフランジ組立体11は、上記構成を備えることによって、耐抜去力および耐回転トルクを双方とも効果的に向上させることができる。ここで、上記したように、例えばフランジ組立体11が図1および図2に示すロール部材101として電子写真装置に用いられた場合においては、フランジ組立体11は、スリーブ102を電子写真装置本体側に固定するように機械的に連結する機能を有している。したがって、本実施形態に係るフランジ組立体11は、優れた耐抜去力および耐回転トルクを有することから、電子写真装置の使用状態において、スリーブ102を電子写真装置本体側に安定して固定することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るフランジ組立体11においては、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13との連結を、上記のようなくさび状凹部24、およびくさび状凹部24内に入り込むくさび状凸部17とによって実現していることから、第一フランジ部材12を樹脂材料によって構成したとしても、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とを効果的に連結することができる。これについては、後述する。
【0037】
このように、本実施形態によれば、フランジ組立体11の構成部材として、金属および樹脂のいずれも適用可能である。したがって、フランジ組立体11をより幅広い用途に適用することが可能となる。
【0038】
また、フランジ組立体11をスリーブ102に固定した後に、スリーブ102上にコーティング材を塗布し、その後にコーティング材を熱硬化させるために、スリーブ102を加熱処理する場合がある。このような場合において、本実施形態に係るフランジ組立体11は、上記のような連結構造を有していることから、加熱処理による耐抜去力および耐回転トルクの低下を防止することもできる。これについて、以下に説明する。ここで、本実施形態に対する比較対象として、フランジ組立体に上記くさび状凸部17およびくさび状凹部24を設けずに、第一フランジ部材12の筒部14内に第二フランジ部材13の柱部21が圧入されているのみの構造によって、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とが連結されている場合について考える。
【0039】
このようなフランジ組立体においては、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とは、柱部21と筒部14との間に働く摩擦力によってのみ連結されることとなる。このようなフランジ組立体を加熱処理すると、樹脂からなる第一フランジ部材12と、金属からなる第二フランジ部材13との間の熱膨張係数の差によって、第一フランジ部材12の膨張の度合が、第二フランジ部材13を上回ることとなる。これにより、第一フランジ部材12の筒部14と、第二フランジ部材13柱部21との間に働く摩擦力が低下してしまう。すなわち、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13との間の耐抜去力および耐回転トルクが著しく低下してしまうこととなる。
【0040】
これに対して、本実施形態に係るフランジ組立体11は、加熱処理によって第一フランジ部材12が第二フランジ部材13よりも相対的に膨張したとしても、くさび状凸部17は、くさび状凹部24の内部に入り込んだままの状態を維持する。したがって、加熱処理後においても、くさび状凹部24の内部に入り込んだくさび状凸部17によって強固に係止されるため、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13との間の耐抜去力および耐回転トルクが低下することを防ぐことができる。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11の製造方法について、図6〜図9を用いて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11の製造方法のフローチャートを示す。図7は、第一フランジ部材準備工程によって製造された第一フランジ部材12を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。図8は、第二フランジ部材準備工程によって製造された第二フランジ部材13を外径方向から見た図であって、(a)は外観図を示し、(b)は断面図を示す。図9は、第一フランジ部材12および第二フランジ部材13の位置決め工程後の状態を示す断面図である。
【0042】
図6〜図9を参照して、本発明の一実施形態に係るフランジ組立体11の製造方法は、第一フランジ部材12を準備する工程(A)と、第二フランジ部材13を準備する工程(B)と、第二フランジ部材13にくさび状凹部24を形成する工程(C)と、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13に当接させる工程(D)と、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13に向けて押圧して連結する工程(E)とを備える。
【0043】
第一フランジ部材12を準備する工程(A)において、図7に示す第一フランジ部材12が形成される。この第一フランジ部材12は、円筒状の筒部14と、筒部14の軸方向他方側端部から拡径する第一鍔部15と、第一鍔部15の軸方向他方側の端面16から軸方向他方側へ突出する円錐台部17pとを有する。この工程(A)において、第一フランジ部材12が、例えば切削加工、プレス加工、または成型によって製造される。なお、工程(A)により形成される円錐台部17pは、製造容易の観点から、筒部14と共通の内周面18を有するように設けられ、且つ、先端に向けて先細りとなる円錐台形状に形成される。
【0044】
第二フランジ部材13を準備する工程(B)において、図8に示す第二フランジ部材13が形成される。この第二フランジ部材13は、円柱状の柱部21と、柱部21の軸方向他方側端から拡径する第二鍔部22と、第二鍔部22の軸方向他方側の端面25から軸方向他方側へ突出するシャフト26とを有する。この工程(B)において、第二フランジ部材13が、例えば切削加工、プレス加工、または成型等によって製造される。
【0045】
次に、くさび状凹部24を形成する工程(C)において、図8に示す第二フランジ部材13に対して、第二鍔部22の端面23から、第二鍔部22の内方へ向けてくさび状凹部24が形成される。より具体的には、くさび状凹部24は、柱部21の外周面27と第二鍔部22の端面23とが交差する角部から中心軸線に向かって斜めに切り込まれて形成される。本実施形態においては、くさび状凹部24は、中心軸線の周りに全周に亘って連なるように設けられる。このくさび状凹部24は、例えば旋盤加工等によって形成される。次いで、柱部21の外周面27の下方領域に、外周面27の全周に亘るように、ローレット加工部28が設けられる。その結果、図5に示す第二フランジ部材13が形成される。
【0046】
次に、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13に当接させる工程(D)において、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13の中心孔に嵌め入れ、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とが当接するように配置させる。具体的には、第二フランジ部材13の柱部21を、第一フランジ部材12の中心孔内に、円錐台部17pが設けられている側から圧入する。そして、第一フランジ部材12の円錐台部17pを第二フランジ部材13のくさび状凹部24に当接させる。そうすると、第一フランジ部材12および第二フランジ部材13は、図9に示す状態となる。
【0047】
次に、第一フランジ部材12および第二フランジ部材13の連結工程(E)において、図9に示す状態から、第一フランジ部材12を第二フランジ部材13に向けて押圧する。そうすると、円錐台部17pの先端部が、くさび状凹部24を構成する傾斜面30によって、くさび状凹部24の内部へと案内される。そして、円錐台部17pは、くさび状凹部24内を埋めるように変形していき、最終的に、くさび状凹部24内部が完全に埋められ、円錐台部17pが、図3に示すくさび状凸部17の形状に変形する。そして、第一フランジ部材12の端面16と、第二フランジ部材13の端面23とが、面接触する。こうして、第一フランジ部材12および第二フランジ部材13は、図3に示す状態となり、くさび状凸部17およびくさび状凹部24を介して互いに連結される。その結果、フランジ組立体11が形成される。
【0048】
このような方法によって製造されたフランジ組立体11の写真を、図10および図11に示す。図10は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造されたフランジ組立体11の断面を示す写真である。図11は、図10中の領域XIを拡大した写真である。図10および図11を参照して、本実施形態に係るフランジ組立体11の製造方法によれば、第一フランジ部材12に設けられたくさび状凸部17が、第二フランジ部材13に設けられたくさび状凹部24内を完全に埋めるように内部に入り込んでいることが分かる。
【0049】
本実施形態に係るフランジ組立体11の製造方法によれば、上記構成を備えることから、構成部材に樹脂を適用することが可能となり、且つ、従来と比較して製造コストを大幅に低減することができる。これについて、以下に説明する。
【0050】
本実施形態においては、工程(B)において、第一フランジ部材12の円錐台部17pが、先端に向けて先細りとなる円錐台形状となるように設けられ、且つ、工程(C)において、第二フランジ部材13のくさび状凹部24が、中心軸線に向けて斜めに延びるように形成されている。そして、工程(D)において、円錐台部17pを変形させ、くさび状凹部24の内部に入り込ませる。ここで、円錐台部17pおよびくさび状凹部24は、上記形状を有することから、円錐台部17pが、くさび状凹部24の傾斜面30に沿ってくさび状凹部24の内部へと案内され易い構造となっている。さらに、図9に示す円錐台部17pの形状から、図3に示すくさび状凸部17の形状へと変形する変形度合いは、比較的に小さなものとなる。したがって、第一フランジ部材12を樹脂から構成し、円錐台部17pを上記のように変形させたとしても、変形度合いを小さくすることができるため、円錐台部17pが破断することがない。すなわち、本実施形態によれば、第一フランジ部材12を樹脂材料によって構成したとしても、上記連結構造を有することによって、第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とを強固に連結することが可能である。
【0051】
このように、本実施形態によれば、フランジ組立体11の構成部材として、金属および樹脂のいずれも適用可能である。したがって、フランジ組立体11をより幅広い用途に適用することが可能となる。
【0052】
また、第一フランジ部材12に樹脂を適用することによって、上記工程(D)において、より小さな圧接力によって第一フランジ部材12と第二フランジ部材13とを連結することが可能となる。したがって、製造設備の大型化を避けることができるため、製造コストを低減することができる。
【0053】
また、上記したように、このように連結された第一フランジ部材12および第二フランジ部材13は、くさび状凹部24の内部に入り込んだくさび状凸部17によって強固に係止されるため、耐抜去力および耐回転トルクを向上させることができる。
【0054】
なお、上記の実施形態においては、本発明に係るフランジ組立体の一用途として、電子写真装置に用いられるロール部材に適用した場合について説明した。しかしながら、本発明に係るフランジ組立体は、中空のスリーブの開口端に嵌め込まれて用いられるフランジ状の部材全般に有利に適用可能である。
【0055】
また、上記の実施形態においては、第一フランジ部材を樹脂により構成した場合について述べたが、これに限らず、金属によって構成してもよい。この場合においても、上記形状を有するくさび状凸部およびくさび状凹部によって、耐抜去力および耐回転トルクの向上や、第一フランジ部材と第二フランジ部材との連結に要する圧接力の低減等の効果を得ることができる。
【0056】
また、上記の実施形態においては、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを、フランジ組立体の全周に亘って連なるように設けられたくさび状凸部およびくさび状凹部によって連結した場合について述べたが、これに限らず、第一フランジ部材および第二フランジ部材のいずれか一方の任意の箇所に突設された爪部と、これを受け入れるように他方側の部材に穿設された凹部との係合によって、第一フランジ部材と第二フランジ部材とを連結してもよい。また、この凹凸部は、製造容易の観点からは断面くさび状であることが好ましいが、これに限らず、互いに係合可能であれば如何なる凹凸形状を有していてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態においては、第一フランジ部材に、第二フランジ部材の柱部を受け入れる貫通孔が設けられていた場合について述べたが、これに限らず、柱部を受け入れ可能であれば非貫通の穴であってもよい。
【0058】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、耐抜去力および耐回転トルクに優れ、且つ、コストを低減することが可能なフランジ組立体を提供するものであることから、例えば電子写真装置に用いられる現像ロール等の製造に有利に利用される。
【符号の説明】
【0060】
11 フランジ組立体、12 第一フランジ部材、13 第二フランジ部材、14 筒部、15 第一鍔部、16,18,19,20,23,25,27,29,30 面、17 くさび状凸部、17p 円錐台部、16e,18e,23e,28e 端部、21 柱部、22 第二鍔部、24 くさび状凹部、26 シャフト、28 ローレット加工部、101 ロール部材、102 スリーブ、103 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って長く延びるスリーブの端部に嵌められるフランジ組立体であって、
筒部と、前記筒部の端から拡径する第一鍔部とを有する第一フランジ部材と、
前記第一フランジ部材の筒部内に嵌め入れられる柱部と、前記第一鍔部に面接触する第二鍔部とを有する第二フランジ部材と、を備え、
前記第二フランジ部材は、前記柱部の外面と前記第二鍔部とが交差する角部から中心軸線に向かって斜めに延びるくさび状凹部を有し、
前記第一フランジ部材は、前記第二鍔部と面接触する前記第一鍔部の端面と前記筒部の内面とが交差する角部から前記くさび状凹部内に入り込んでいるくさび状凸部を有する、フランジ組立体。
【請求項2】
前記第一フランジ部材は、樹脂から構成され、前記第二フランジ部材は、金属から構成される、請求項1に記載のフランジ組立体。
【請求項3】
前記くさび状凹部および前記くさび状凸部は、前記フランジ組立体の全周に亘って連なるように設けられている、請求項1または2に記載のフランジ組立体。
【請求項4】
前記柱部の外面には、ローレット加工が設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載のフランジ組立体。
【請求項5】
中心軸線に沿って長く延びるスリーブの端部に嵌められるフランジ組立体の製造方法であって、
中心穴を有する筒部と、前記筒部の端から拡径する第一鍔部と、前記第一鍔部の端面上に形成され、前記中心穴を取り囲む円錐台部とを有する第一フランジ部材を準備する工程と、
柱部と、前記柱部の端から拡径する第二鍔部とを有する第二フランジ部材を準備する工程と、
前記第二フランジ部材の柱部の外面と前記第二鍔部とが交差する角部から中心軸線に向かって斜めに延びるくさび状凹部を形成する工程と、
前記第一フランジ部材の中心穴に前記第二フランジ部材の柱部を嵌め入れて、前記第一フランジ部材の円錐台部を前記くさび状凹部に当接させる工程と、
前記第一フランジ部材を前記第二フランジ部材に向けて押圧し、前記円錐台部を変形させて前記くさび状凹部内を埋めることによって前記第一フランジ部材と前記第二フランジ部材とを連結する工程と、を備える、フランジ組立体の製造方法。
【請求項6】
前記第一フランジ部材は、樹脂から構成され、前記第二フランジ部材は、金属から構成される、請求項5に記載のフランジ組立体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−127479(P2012−127479A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281992(P2010−281992)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】