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フラーレンを内外壁表面に有する超分子ナノチューブを用いた電界効果トランジスタ
説明

フラーレンを内外壁表面に有する超分子ナノチューブを用いた電界効果トランジスタ

【課題】
本発明は、簡便かつ安定した材質で製造することができ、さらに電気特性に優れた有機半導体を使用してなる電界効果トランジスタ、及びそれを形成してなる半導体チップを提供する。
【解決手段】
本発明は、有機半導体層が、フラーレンが結合した分子が自己組織化して内壁表面及び外壁表面の両面に結合したフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体を含む電荷輸送材料からなることを特徴とする電界効果トランジスタ、及びそれを形成してなる半導体チップに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便かつ安定した材質で製造することができ、さらに電気特性に優れた有機半導体を使用していることを特徴とする電界効果トランジスタに関する。より詳細には、本発明は、有機半導体層が、フラーレンが結合した分子が自己組織化して内壁表面及び外壁表面の両面に結合したフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体を含む電荷輸送材料からなることを特徴とする電界効果トランジスタ、及びそれを形成してなる半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機トランジスタに関する研究、開発が盛んに行われている。有機化合物を電子デバイスとして用いる利点としては、素子の軽量化やフレキシブル化、またプロセスを簡便化出来る点などが挙げられる。また、それぞれの素子を微細化する方法として、現在では微細加工技術により小さく削ってゆくプロセスが主流であるが、分子の自己組織化を利用することにより、ナノメートルスケールの素子作製が可能となってきた。
【0003】
電子回路を構成、作動するための電子部品としてトランジスタは必要不可欠であり、現在主流となっているのはシリコンをベースとしたトランジスタであり、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを用いて作製されるが、これらを成膜するプロセスは350℃程度またはそれ以上の非常に高い温度で行われるので、使用可能な基板材料の種類が限られ、軽量な樹脂基板は耐熱温度が低いので、使用できないという問題がある。一方、低コスト化やプラスチックフィルム上への電子回路の作製や素子の駆動を目的として、有機分子や高分子を用いたトランジスタ作製に対する期待が高まっている。有機トランジスタを作製するためには、出来る限り結晶性のよい有機薄膜を作製する必要があり、薄膜の結晶性はトランジスタ特性、すなわちキャリアの移動度に密接に関係する。現在、有機トランジスタにおけるチャンネル層の作製法には、真空蒸着法と溶液プロセス(塗布法)の2種類が主流となっている。真空蒸着法のようなドライプロセスは、生産性が低下しかつコストが高くなるので、工業的な観点からは好ましいものではく、有機半導体材料を用いる利点を活かすには、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの簡便でかつコストの低い溶液プロセスを用いることが望ましい。しかしながら、トランジスタ特性は基板表面における分子の集合形態に大きく依存するため、キャリア移動に都合良い分子配列を以下に実現するかが重要な鍵になる。従来、溶液プロセスを用いた場合には、基板上での有機分子の自発的な結晶化あるいは、薄膜作製後に例えば、アニール処理を施すこと等による結晶性の向上というプロセスが必要であった。例えば、森らは有機半導体材料としてアルキル基で置換したヘキサベンゾコロネン薄膜を開示しているが、薄膜作製には真空蒸着法が必要であり、かつ、アニール処理を施すことも必要であり実用的ではなかった(特許文献1及び非特許文献1参照)。また、南方らは有機半導体材料として無置換のヘキサベンゾコロネン薄膜を提案しているが、この材料は溶解性に乏しいため、製膜法が真空蒸着法に限られ、実用的ではなかった(特許文献2参照)。更にムレン(Mullen)らは、アルキル基で置換したヘキサベンゾコロネン誘導体を用いて溶液プロセスで作製した薄膜を提案しているが、薄膜を形成させる基板表面をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で処理するために300℃の高温プロセスを要したり(非特許文献2参照)、ゾーンキャスティング法という特殊な装置を用いる配向方法を必要としたり(非特許文献3参照)、強力な磁場を必要としたり(非特許文献4参照)して生産性も悪く、実用的な方法ではなかった。
【0004】
有機半導体薄膜の材料としては、例えば、フラーレン、ナノカーボン、デンドリマー、フタロシアニン、ペンタセンなどの分子性有機物質が知られており、カーボンナノチューブ膜トランジスタ上に蒸着によりフラーレンC60膜を形成する方法も提案されている(特許文献3参照)。
これに対して本発明者らは、予め一次元のキャリア移動経路が明確に形成されている分子集合体をチャンネル層として用いる手法を検討し、分子が自己組織化的に集合して形成する超分子構造体に着目した。超分子構造体は、分子が溶液中で自発的に集合することにより特定のナノ構造体を形成するが、分子の種類により、ドット、ワイヤー、チューブ、コイルなど様々な構造様式をとる。いずれにしても、構造体中において分子は規則的に配列することから、これらの構造体はナノメートルスケールの結晶と考えることが可能であり、このような超分子構造体を用いることにより、基板表面での結晶化というプロセスなしに薄膜素子を作製することが出来ると期待される。
また、本発明者らは、ナノ構造体構築の基本要素としてヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に着目し、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入することにより、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献5、特許文献4、及び特許文献5参照)。このHBCナノチューブは、π−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に配列しており、化学ドーピングにより容易に電荷キャリア(ホール)を形成し導電性を示す(抵抗率10Ωcm)。本発明者等は、様々な置換基を有するHBC誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献6、特許文献6)。
しかしながら、本発明のように、π−スタックしたHBCよりなる壁にフラーレンを共有結合により連結して壁の内外表面を覆った超分子ナノチューブよりなるトランジスタは知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2006―100592号公報
【特許文献2】特開2004―158709号公報
【特許文献3】特開2005―150410号公報
【特許文献4】特許第4005571号公報
【特許文献5】特許第4018066号公報
【特許文献6】特開2007−238544号公報
【非特許文献1】T. Mori, H. Takeuchi, H. Fujikawa, J. Appl. Phys. 2005, 97, 066102
【非特許文献2】K. Mullen et. al. Advanced Materials 2003, 15, 495
【非特許文献3】K. Mullen et. al. Advanced Materials 2005, 17, 684
【非特許文献4】K. Mullen et. al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16233
【非特許文献5】J. P. Hill et al, Science 2004, 304, 1481-1483
【非特許文献6】Y. Yamamoto et al, Science 2006, 314, 1761-1764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡便かつ安定した材質で製造することができ、さらに電気特性に優れた有機半導体を使用してなる電界効果トランジスタ、及びそれを形成してなる半導体チップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、様々な置換基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子を精密設計し、その会合挙動と得られたHBCナノチューブの導電性に及ぼす親水性置換基の種類の影響を鋭意検討した結果、親水性置換基の先端部分に、2,4,5−トリニトロフルオレノン(TNF)を導入することにより光照射により導電性が大きく変化する、すなわち光伝導性を有するHBCナノチューブが得られることを見出し先に報告している(非特許文献6、及び特許文献6参照)。さらに検討を続けた結果、親水性置換基の先端部分に電子受容性の強いフラーレンを導入したヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体が自己組織化して、内壁表面及び外壁表面に高密度でフラーレン部分を有するナノチューブを形成することを見いだした。本発明のヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子は、電子ドナー部位であるHBCと電子アクセプター部位であるフラーレン分子を同一分子内に有しており、この分子を溶液中で自己集合化により容易に形成される自己集積体である超分子ナノチューブは、π−スタックを形成するHBC骨格と、ナノチューブ壁の内面及び外面の両面を覆うフラーレンにより構成される。ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料はまだ知られていない。
フラーレンが親水性置換基の先端部分に結合した両親媒性ヘキサベンゾコロネンの自己組織化により形成するチューブ状のナノ構造体を電荷輸送チャネルとして用いて、薄膜素子を作製し、フラーレンを導入した両親媒性ヘキサベンゾコロネンの自己組織化超分子ナノチューブトランジスタを試作した。
この超分子ナノチューブはπ−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に配列しており、化学ドーピングにより容易に電荷キャリア(ホール)を形成して導電性を示すとともに、HBCが集積してできたナノチューブの壁の内外面を密に覆っているフラーレン部分が、ドーパントとして作用し、電子キャリアとしても作用する。すなわち、電気の通り道となり得る一次元のチャネルが形成されている。さらに、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面および内表面に共有結合を介して強固に結合して壁の内外表面を密に覆っており、ホッピング伝導により電子の通り道となることも期待される。
その結果、上記の超分子ナノチューブを用いて、作製した薄膜素子が特別な結晶化処理を施さなくとも良好な両極性FET特性が発現することを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、有機半導体層が、フラーレンが結合した分子が自己組織化して内壁表面及び外壁表面の両面に結合したフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体を含む電荷輸送材料からなることを特徴とする電界効果トランジスタ、及び酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に当該電界効果トランジスタが形成されている半導体チップに関する。
【0009】
本発明を、より詳細に説明すれば以下のとおりとなる。
(1)有機半導体層が、フラーレンが結合した分子が自己組織化して内壁表面及び外壁表面の両面に結合したフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体を含む電荷輸送材料からなることを特徴とする電界効果トランジスタ。
(2)フラーレンが結合した分子が、π−スタッキング相互作用を有する分子である前記(1)に記載の電界効果トランジスタ。
(3)フラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン骨格に親水性の基を介してフラーレンが結合している分子である前記(1)又は(2)に記載の電界効果トランジスタ。
(4)結合が、共有結合である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(5)フラーレンが、金属を内包しているものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(6)フラーレンが、C60フラーレンである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(7)フラーレンが結合した分子が、次の一般式(1)
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して次の一般式(2)
−C−O−R−(O−R)n−OR (2)
(式中、−C−はフェニレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよいがR及びRの少なくともどちらか一方のRは金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(8)ナノサイズ構造体が、ナノチューブである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(9)電界効果トランジスタが、両極性電界効果トランジスタである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(10)電界効果トランジスタが、、ボトムゲート/トップコンタクト型の電界効果トランジスタである前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(11)有機半導体層が、表面処理剤により表面処理された絶縁層に形成されたものである前記(1)〜(10)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(12)表面処理剤が、ヘキサメチルジシラザンである前記(11)に記載の電界効果トランジスタ。
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の電界効果トランジスタが、酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に形成されているものである前記(1)〜(12)のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
(14)酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に前記(1)〜(13)のいずれかに記載の電界効果トランジスタが形成されている半導体チップ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機半導体層に使用されているナノサイズ構造体としてのナノチューブにおいては、フラーレンがナノチューブの構造体に共有結合で結合しているために、機械的に強いだけでなく、規則的で、かつ高密度で、ナノチューブの両方の壁に均一にドーピングできているものであり、本発明のナノサイズ構造体であるナノチューブは、自己集積体を形成するために製造方法が簡便であるだけでなく、高密度で電気的特性に優れ、また規則的にフラーレンが配置されるために、安定した性能を有する材料として供給することができる。また、電界効果トランジスタの有機半導体層とすることにより、優れた電界効果トランジスタ(FET)特性を示すものである。
本発明の有機半導体層に使用されている材料は、超分子ナノチューブを形成するに必要な親水性部分などを有し、かつπ−πスタッキング効果を有する部分を有し、さらに表面に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を有するものであり、自己集合により形成された直径約20nm程度の独立した超分子ナノチューブであって、両側に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を併せ持つ材料は本発明により初めて提供されたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電界効果トランジスタ(FET)は、有機半導体層として、分子の自己集積体により形成される超分子ナノチューブであって、当該ナノチューブ壁の内面及び外面の両面がフラーレンにより構成されている超分子ナノチューブを含む材料からなることを特徴とするものである。本発明の電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料として使用される超分子ナノチューブは、ドーパントとしてのフラーレンがナノチューブの外表面及び内表面に共有結合を介して強固に結合したものでありこのような材料は、本発明により初めて提供されたものである。
【0014】
本発明のフラーレンが結合した分子としては、π−スタッキング相互作用を有する分子が好ましく、このようなπ−スタッキング相互作用を有する分子としては、例えば、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体分子が挙げられる。さらに、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の好ましい例としては、一般式(1)で表される化合物が挙げられ、まずこれについて説明する。
上記の一般式(1)において、Rで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜30、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましい具体例としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシルル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられ、これらは直鎖状、分枝状又は環状の何れであってもよい。また、炭素数が10以下のアルキル基の場合は、例えばt−ブチル基のような嵩高い基が好ましい。
【0015】
上記の一般式(1)において、R及びRは、一般式(2)、
−C−O−R−(O−R)n−OR (2)
(式中、−C−はフェニレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよいがR及びRの少なくともどちらか一方のRは金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基である。一般式(2)におけるRで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
また、上記一般式(2)におけるRで表されるフラーレンを有する基としては、一般式(2)のポリエチレングリコール鎖の先端の水酸基に結合できる官能基を有するフラーレンにより当該水酸基と結合することができるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基を有するフラーレンが合成の容易さから好適である。フラーレンは一般にCmとして表されており、当該Cmにおけるmは、Cmが球殻状構造を形成し得る正の整数をとりうるが、30,60,70,76,78,80,82,84,86,88,90,92,94,96が好ましく、60が特に好ましい。フラーレンは、フラーレンにフッ素原子がいくつか付加したフッ化フラーレンのように置換基が置換又は付加したものであってもよいし、フラーレンかご構造内に金属原子がいくつか内包された金属内包フラーレンなどをも用いることができる。内包される金属種としては、例えば、Ca、La、Gdなどが挙げられる。
好ましいフラーレンを有する基としては、式(4)
【0016】
【化3】

【0017】
で表されるC60フラーレンの誘導体が挙げられる。このフラーレンには金属が内包されていてもよい。
一般式(2)におけるR及びRにおけるアルキレン基としては、例えば、炭素数が2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5の直鎖状又は分枝状の2価のアルキレン基が挙げられ、具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。また、これらのアルキレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
また、前記一般式(2)におけるフェニレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基などの2価のフェニレン基であればよいが、好ましいフェニレン基としてはp−フェニレン基が挙げられる。また、これらのフェニレン基は物性に影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
前記一般式(2)におけるnは、1以上の正の整数であるが、好ましくは2以上の整数、より好ましくは2〜20、2〜10、又は2〜5が挙げられる。
【0018】
一般式(1)におけるR及びRの好ましい具体例としては、例えば、
−COCHCH(OCHCHOH、
−COCHCH(OCHCHOCH等が挙げられ、中でも、
−COCHCH(OCHCHOH、
−COCHCH(OCHCHOH、
−COCHCH(OCHCHOH、
−COCHCH(OCHCHOCH
−COCHCH(OCHCHOCH
−COCHCH(OCHCHOCH
−COCHCH(OCHCHOR[Rは、前記式(4)で表されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸の残基]等がより好ましい例として挙げられるが、勿論これに限定されるものではない。
一般式(1)におけるR及びRの少なくとも一方は、Rがフラーレンを有する基でなければならない。
上記一般式(1)で表される化合物の中で、最も好ましい化合物の例としては次の一般式(3)
【0019】
【化4】

【0020】
で表される化合物が挙げられる。
本発明の電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料として使用されるナノチューブの特長をより詳細に説明するために図1に本発明の代表的な化合物の分子構造と自己組織化により形成するナノチューブの模式的構造を示した。
図1の(a)は本発明の代表的な化合物の分子構造を示している。図1(b)の左側は当該化合物の分子構造を模式的に示したものである。中心部分の多角形状の部分(原図では青色)がコロネン骨格に相当する部分であり、HBCの記号で示されている。その上部に2本突き出しているのが一般式(1)におけるR及びR部分に相当するポリアルキレングリコール部分(原図では赤と白で示されている。)であり、TEGの記号で示されている。左側の上部に丸く球状に示されているのがフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)であり、C60の記号で示されている。多角形状の部分(原図では青色)の下側にぶら下がっているのが、一般式(1)におけるRのアルキル基部分(原図では白色で示されている。)であり、C12の記号で示されている。
本発明者らは、HBC骨格に親水性置換基と疎水性置換基を導入した分子が、直径約20ナノメートル、アスペクト比5000以上の超分子ナノチューブが溶液プロセスにより簡便かつ定量的に得られることを報告している(非特許文献2、特許文献6、及び特許文献7参照)が、これと同様にHBC骨格におけるπ−スタッキング相互作用によりHBC平面がらせん状に自己集積し、そして、疎水性のRの存在によりこれらが規則的に2分子で対を形成して、図1の(b)に中央部に示される自己集積体を形成する。そして、疎水性のR1の部分が内部の集積し、親水性のポリアルキレングリコール部分が外側になるために、その結果として親水性のR及び/又はRの先端部分に結合しているフラーレン部分(原図では黄色で示されている。)が、膜状の構造の外側の両方に形成されることになる。このらせん構造により全体としてナノチューブを形成する場合には、フラーレン部分はナノチューブの内壁と外壁の両方に規則的にかつ高密度で形成されることになる(図1の(b)の右側参照)。
【0021】
カーボンナノチューブにフラーレンをドーパントとして用いる場合、フラーレンをカーボンナノチューブの外壁や内壁などの表面に付着させていたが、本発明のナノチューブにおいては、フラーレンがナノチューブの構造体に共有結合で結合しているために、機械的に強いだけでなく、規則的で、かつ高密度で、ナノチューブの両方の壁に均一にドーピングできていることになる。
本発明のナノサイズ構造体であるナノチューブは、自己集積体を形成するために製造方法が簡便であるだけでなく、高密度で電気的特性に優れ、また規則的にフラーレンが配置されるために、安定した性能を有する材料とすることができ、電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料として極めて優れた特性を有するものである。
【0022】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、任意の公知の方法に準じて製造することができる。例えば、特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて、基R又はRにフラーレンを有する基を有する中間体を製造し、これを特許文献6又は特許文献7に記載の方法に準じて閉環することにより製造することができる。
また、フラーレンを有する基も公知の各種の方法により製造することができる。例えば、前記した式(4)で示されるメタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物8)は、Y-P. Sunらの方法(Y-P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)などにより製造することができる。
前記した式(3)で表される化合物も公知の方法に準じて製造することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造法の例として、例えば、前記した式(3)で表される化合物の具体的の製造方法の例を次の反応経路で示しておく。
【0023】
【化5】

【0024】
まず、ここで原料として使用されている2−〔4’−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリル〕−3−〔4’−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリル〕−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(化合物1)は山本らの方法(特開2007―238544号公報)により製造することができる。
化合物1をルイス酸の存在下に環化することにより、コロネン骨格を有する化合物2とする。得られた化合物2とフラーレンのカルボン酸誘導体(化合物3)とを、DCCなどの縮合剤の存在下にエステル化、目的の式(3)で表される化合物4を製造することができる。
【0025】
このようにして製造される一般式(1)で表される化合物は、以前に本発明者らが報告してきた側鎖に疎水性の基と親水性の基を有するヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体(HBC誘導体)(特許文献4及び5参照)と同様な挙動をとることがわかった。
即ち、トルエンなどの溶媒中で図1に模式的に示されるような自己集積体を形成し、らせん状リボン構造やチューブ構造が形成される。このようならせん状リボン構造やチューブの形成は、本発明の一般式(1)で表される化合物が有する両親媒性とπ−πスタッキング効果により、2層からなる幅〜20nmのリボン状集積体が形成され、次いで、このリボンは、らせん状にぐるぐる巻きになると考えられる。このときの巻きの強さは基R及びRの部分のポリエチレングリコール鎖の水和の程度によって調整されと考えられる。
【0026】
一般式(1)で表される化合物の例として、前記式(3)で表される化合物9について、溶媒中での自己組織化を試みたところ、黄色粉末の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体を得た(後述する実施例4参照)。
次に、一般式(1)で表される化合物により形成された超分子ナノチューブの電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料としての特性について検討した(後述する実施例7及び8参照)。
一般式(1)で表される化合物の自己組織化により形成されるナノサイズの構造体である超分子ナノチューブが、電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料として優れた特性を有することは、この超分子ナノチューブがπ−πスタック構造を有し、かつ両方の表面に規則的に高密度でフラーレンを有していることによるものと考えられる。
このように、本発明の材料は、超分子ナノチューブを形成するに必要な親水性部分などを有し、かつπ−πスタッキング効果を有する部分を有し、さらに表面に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を有するものであり、自己集合により形成された直径約20nm程度の独立した超分子ナノチューブであって、両側に規則的に高密度でフラーレンを有しているという特徴を併せ持つ材料は本発明により初めて提供されたのである。
したがって、本発明は、このような新規かつ優れた特性を有する材料を、電界効果トランジスタ(FET)の有機半導体層の材料として使用した新規な電界効果トランジスタ(FET)を提供するものである。また、本発明の電界効果トランジスタ(FET)は、シリコン基板、特に酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に形成させることができ、本発明は、このようにして形成された本発明の電界効果トランジスタが形成されている半導体チップを提供するものである。
【0027】
本発明の電界効果トランジスターは、公知の電界効果型トランジスタにおけるチャネル形成層として本発明の材料からなる有機半導体層を使用することを特徴とするものであり、本発明の電界効果トランジスターとしては、ボトムゲート/トップコンタクト型、ボトムゲート/ボトムコンタクト型、トップゲート/トップコンタクト型、トップゲート/ボトムコンタクト型などのいずれの型のものであってもよい。例えば、ガラス、ポリマーシート、SiO等の基板上にゲート電極となる金属層を形成させ、その上に絶縁体層を形成させ、更にその上に有機半導体層を形成させて、当該有機半導体層の上にソース電極及びドレイン電極を形成されたものが挙げられる。
本発明の電界効果トランジスタの例を、図12におけるボトムゲート/トップコンタクト型両極性電界効果トランジスタにより説明する。図12における上部の2つの突起状のものは左側がソース電極1であり、右側がドレイン電極2である。その下側の層が有機半導体層4であり、その下が表面処理層5であり、その下が絶縁層6であり、最も下の層がシリコン7などの導電性物質からなるゲート電極3である。
有機半導体層4は、前記してきた本発明の超分子ナノチューブを含む材料からなるものである。本発明の超分子ナノチューブを含む材料からなる有機半導体層4は、電子・ホールいずれも注入および輸送可能な同時両極性の電荷輸送特性を有するものであり、両極性電界効果トランジスタとして、出力特性においては、低ゲート電圧において超線形電流が観測され、ゲート電圧の増大に伴いそれがサプレスされると同時に、線形および飽和電流領域を含むFET特性が観測される。また、伝達特性においても、両極性FETに特徴的なV字型のカーブを示すものである。
また、本発明における有機半導体層は、真空蒸着法や、アニール処理や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理などの複雑な処理は特に必要ではなく、また、ゾーンキャスティング法という特殊な装置を用いる配向方法や、強力な磁場を必要も必要ではなく、塗布法のような簡便な方法で形成させることができる。したがって、スピンコート法やスピンキャスト法による塗布成膜法により有機半導体層を用いたp型及びn型の電界効果トランジスタやそれを用いた集積回路などを、容易に、かつ、低コストで製造することができる。これにより、例えば基板上にp型及びn型の半導体層を同時に成膜して、例えば相補型集積回路を容易に構成することが可能になる。
【0028】
ソース電極1及びドレイン電極2の材料としては、例えば、金、銅、アルミニウム、Ti/Au,Cr/Au等の金属材料が挙げられる。
絶縁層6の材料としては、例えばSiO、Si、Al、Taなどの無機絶縁材料やポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどの有機絶縁材料が挙げられる。基板7として抵抗率が、例えば0.001〜0.005Ωcmの高純度のシリコン基板を用いる場合には絶縁層として酸化ケイ素薄膜を用いるのが好ましい。
また、SiOなどをゲート絶縁層として使用する場合には、FETの性能向上のためにチャネル形成領域を表面処理剤で表面処理しておくことが好ましい。このような表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、ジメチルジメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。本発明における好ましい表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
【0029】
本発明の電界効果トランジスターの製造方法としては、公知の方法又はこれに準じた方法が挙げられる。例えば、ガラス又は一般的なポリマーシート等から選択された基板上にゲート電極となる金属層をスパッタリングで形成するか、あるいは金属ペーストや導電性高分子等をスピンコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥して形成する。なお、一般的に入手可能なITO膜付きガラスを用いてもよい。
このようにして形成されたゲート電極上に、絶縁体層を形成する物質を有機溶媒に溶解した溶液をスピンコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥して絶縁体層を形成する。その後、上記絶縁体層を形成する物質が溶解しない有機溶剤に有機半導体層を形成する物質を溶解した溶液を、絶縁体層上にスピンコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥する。なお、この際に絶縁体層−半導体層間の界面で半導体分子を配向させるために、絶縁体層表面に公知のラビング処理等、物理的処理を行ってもよい。最後に、半導体層上にソース及びドレイン電極をスパッタリングで形成するか、金属ペーストや導電性高分子等をスクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥することにより製造することもできる。
【0030】
また、まず高純度のシリコン基板の表面を洗浄した後、基板表面を酸化法,スパッタリング法または真空蒸着法などの方法によって、当該シリコン基板の表面に酸化ケイ素などの絶縁膜を形成する。次に、真空蒸着法,スパッタリング法などの方法によって、シリコン基板の裏面にゲート電極を形成する。次いで、必要により表面処理剤で単分子膜を形成した後、その上にに、フォトリソグラフィ法などにより、ソース電極及びドレイン電極をパターン形成し、その後、形成された絶縁膜,ソース電極及びドレイン電極の上に、有機半導体層を塗布成膜法により形成させる。
また、図12に示されるように絶縁層又は表面処理された絶縁層の上に、有機半導体層を塗布成膜法により有機形成させ、次いで、その上にスパッタリング法などによりソース電極及びドレイン電極を形成させてもよい。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例においては、試薬は特に断らない限り、市販品をそのまま使用した。ジクロロメタン(CHCl)およびブロモベンゼンはアルゴン雰囲気下にカルシウムハイドライド(CaH)で乾燥し、使用前に蒸留した。Hおよび13CNMRはJEOL model NM-Excalibur500スペクトロメーターを用いて298°Kで、それぞれ500MHzおよび125MHzで測定した。MALDI−TOF質量分析はApplied Biosystems BioSpectrometryTM Workstation model Voyager-DETM STRスペクトロメーターを用いて、ジスラノールをマトリックスとして測定した。電子スペクトルは温度制御機構付きJASCO model V-560 UV/VIS スペクトロメーターを用いて光路長1cmの石英セルで測定した。赤外吸収スペクトルはJASCO model FT/IR-660Plus フーリエ変換赤外スベクトロメーターを用いて25℃で測定した。X線回折パターンはRigaku model RINT-2500 回折計を用いてCuKαを線源として室温で測定した。走査型電子顕微鏡写真(SEM)はJEOL model JSM-6700F FE-SEMを用いて5KVで撮影した。透過型電子顕微鏡写真はPhilips model Tecnai F20電子顕微鏡を用い、Gatan slow scan CCD カメラで低線量状態下に測定した。
原料化合物である2−〔4’−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリル〕−3−〔4’−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−4−ビフェニリル〕−5,6−ジ(4−ドデシルフェニル)−1,4−ジフェニルベンゼン(化合物1)は山本らの方法(特開2007―238544号公報参照)により製造した。また、メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物3)は、Y-P. Sunらの方法(Y−P. Sun, G. E. Lawson, W. Huang, A. D. Wright, D. K. Moton Macromolecules 1999, 32, 8747-8752)により製造した。
【実施例1】
【0032】
化合物2の合成
化合物1(300mg,0.22mmol)を乾燥CHCl(100ml)に溶解し、溶液に乾燥アルゴンを10分間バブリングした後、MeNO(4ml)に溶解した塩化鉄(III)を徐々に加え、さらに25℃で1時間攪拌した。反応混合物を攪拌しながらメタノール(200ml)中に注ぎ込み、析出した固体を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/hot THF)で精製した。さらにTHFから再結晶して化合物2を黄色粘脹固体として得た(140mg,収率62%)。
H−NMR(500MHz,THF−d,55℃)δ:
8.47(s, 2H), 8.38(s, 2H), 8.23-8.07(br, 8H), 7.73(br, 4H),
7.37(br, 2H), 7.14(br, 4H), 4.30(br, 4H), 3.98(br, 4H),
3.79-3.61(m, 16H), 3.35(s, 3H), 2.88(br, 4H), 1.89(br, 4H),
1.58-1.28(br, 36H), 0.85(br, 6H);
MALDI−TOF−MS:m/z:
91100として、 計算値:[M]1320.74;
実測値: 1320.89.
【実施例2】
【0033】
化合物4の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で製造した化合物2(107mg,0.081mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(62mg,0.30mmol)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)(37mg,0.30mmol)を室温で乾燥CHCl−Bromobenzene混合溶媒(8ml)(V/V,3/1)に溶解し、メタノ[60]フラーレンカルボン酸(化合物3)(94mg,0.12mmol)を加えて生成した懸濁液を還流下に24時間反応させた。反応液を濾過して沈殿物を除去した後、濾液を塩酸(0.1N)、NaHCO飽和水溶液およびBrainで洗浄した。有機層を分離して、MgSOで乾燥した後、溶媒を減圧下に留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/CHOH,100/1,v/v)で精製し、更に、CHCl/THFから3回再沈殿で精製して化合物4を茶色固体として得た(100mg,収率59%)。
MALDI−TOF−MS:m/z:
153100として、 計算値:[M]2080.74;
実測値: 2080.88.
紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図2に示す。図2の横軸は波長(nm)を示し、縦軸はモル吸光係数(10−1cm−1)を示す。この結果、365nm、及び395nmにヘキサペリヘキサベンゾコロネン(HBC)に基づく吸収が観測された(図2)。
【実施例3】
【0034】
化合物4(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリー
化合物9のジクロロメタン溶液(0.1mM)に電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF,0.1M)を加え、作用・対極電極を白金、参照電極を標準カロメル電極として矩形波ボルタンメトリーを行い、図3に示す結果を得た。図3の横軸は電位vs.SCE(V)を示し、縦軸は電流(10−5A)を示す。+0.56,+0.84,+1.14VにHBCの酸化に起因するピークが観測され、−0.66,−1.0Vにフラーレン(C60)の還元に起因するピークが観測された。酸化還元電位と吸収スペクトルより各部位のエネルギー準位は
HBC: 最高占有準位(HOMO);−5.3eV,
最低非占有準位(LUMO);−2.5eV
60: 最高占有準位(HOMO);−6.0eV,
最低非占有準位(LUMO);−3.7eV
と見積もられる(真空準位に対する各エネルギー準位)。
【実施例4】
【0035】
化合物4(HBC−C60)の自己組織化
得られた化合物4(HBC−C60)1mgを5mlのトルエンに溶解させ、加熱還流した後、室温にて一夜静置すると、黄色懸濁液となった。吸引濾過により、黄色粉末を得た。この粉末のトルエン懸濁液の紫外可視吸収スペクトルの測定結果のチャートを図4に示す。図4の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は吸光度を示す。この結果、ナノチューブに特徴的なπ−スタックしたHBCに起因する吸収が425nm、及び458nmに観測された(図4参照)。
また、KBrペレット法で測定したこの粉末の赤外吸収スペクトルの結果を図5に示す。図5の横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度を示す。この結果、インターディジテーションしたドデシル鎖のパッキングによる吸収が2917,2848cm−1に観測された(図5参照)。
さらに、上記の黄色沈殿物の電子顕微鏡像を図6および図7に示す。図6及び図7から、化合物9(HBC−C60)の自己組織化により、均一な、直径22nm、壁厚3nmのナノチューブおよびナノコイルが生成していることが分かる。また、TEM像で、壁の内側と外側が黒く見えていることから、壁の内側と外側はフラーレンで覆われていることがわかる。
【実施例5】
【0036】
HBC−C60自己組織化物の粉末X線回折分析
実施例4のHBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)の粉末X線回折分析を行い、図8に示す結果を得た。図8の横軸は2θ(度)を示し、縦軸は回折強度を示す。この結果、π−スタックしたHBCに起因する回折ピークが25.7°(d=3.47オングストローム)に観測された。
【実施例6】
【0037】
化合物4(HBC−C60)の自己組織化物の加水分解
水酸化カリウムのメタノール溶液(0.4mol/L,20mL)に、HBC−C60自己組織化物(HBC−C60ナノチューブ)のトルエン懸濁液(0.2mg/mL,2mL)を加え、室温で緩やかに撹拌した。48時間後にこの溶液を25℃で遠心分離し、固形分を捕集した。この固形物を2mlのメタノールに再分散し遠心分離する洗浄操作を4回繰り返して得た固形物を2mlのメタノールに再分散すると黄色のほぼ透明な懸濁液となった。この固形物の質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を、図9に示す。図9の横軸はm/zを示し、縦軸は強度を示す。この結果、加水分解物にはフラーレンを失ったHBCのみのイオンピークが観測された。
図10に加水分解前後のTEM観察の結果を図面に写真で示す。図10の左側は加水分解前のものであり、右側は加水分解後のものである。加水分解生成物のTEM観察の結果、加水分解生成物は、ナノチューブ構造の維持していることが示され、その壁厚は図10に示したように、フラーレンを含まないナノチューブのものと同程度にまで減少していた。
また、加水分解後のナノチューブは水(MeOH)に完全に分散した。これらの観察結果および実施例10の観察結果から、化合物9の自己組織化で生成するHBC−C60ナノチューブのフラーレン部分は、図11の模式図に示すように、チューブの内外表面に位置していることがわかる。
【実施例7】
【0038】
素子の製造
酸化シリコン絶縁膜(200nm)で覆われたシリコン基板表面を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し、疎水性単分子膜を形成した。その上にHBC−C60ナノチューブ薄膜を作製した。チャネル長50ミクロン、チャネル幅1ミリメートルの金電極を試料上部に真空蒸着により作製し、トップコンタクト、ボトムゲート型素子を作製した(図12参照)。
【実施例8】
【0039】
図13(a)に、ソース−ドレイン電圧を0〜−90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜のFET特性(出力特性)を示す。図13(b)にソース−ドレイン電圧を0〜90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから90Vまで10Vおきに変化させたときの、HBCナノチューブ薄膜のFET(出力特性)を示す。図13(c)にゲート電圧を0〜−90Vまでスイープし、ソース−ドレイン電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜のFET特性(伝達特性)を示す。図13(d)にゲート電圧を0〜90Vまでスイープし、ソース−ドレイン電圧を30Vから90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜のFET特性(伝達特性)を示す。正および負のゲート電圧印加に対し、それぞれについてFET特性が観測された。つまりこのナノチューブは電子・ホールいずれも注入および輸送可能な同時両極性の電荷輸送特性を有するといえる。両極性トランジスタである証拠として、出力特性においては、低ゲート電圧において超線形電流が観測され、ゲート電圧の増大に伴いそれがサプレスされると同時に、線形および飽和電流領域を含むFET特性が観測されている。また、伝達特性においても、両極性FETに特徴的なV字型のカーブを示している。構造や各部位のエネルギー準位から考えて、ホールはπ−スタックしたHBC中を、電子はナノチューブ表面に形成したC60層中に誘起され、伝導していると考えられる。伝達特性曲線より求められる各移動度はホール3.4x10−7、電子1.5x10−5cm/Vsであった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、電気特性に優れた有機半導体を使用していることを特徴とする電界効果トランジスタを提供するものであり、簡便かつ安定した材質で製造することができることから、本発明の電界効果トランジスタは、半導体産業を始め各種の産業分野において産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の一般式(1)で表される化合物の代表例、及びその自己集積体からなるナノチューブ構造を模式的に示したものである。
【図2】図2は、本発明の化合物4(HBC−C60)の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図3】図3は、本発明の化合物4(HBC−C60)の矩形波ボルタンメトリーの測定結果を示すチャートである。
【図4】図4は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の紫外可視吸収スペクトルのチャートである。
【図5】図5は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の赤外吸収スペクトルのチャートである。
【図6】図6は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体のSEM像(50000倍)を示す、図面に代わる写真である。
【図7】図7は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体のTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図8】図8は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の粉末X線回折のチャートである。
【図9】図9は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後における質量分析(MALDI−TOF−MS)を行った結果を示すチャートである。
【図10】図10は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるTEM像を示す、図面に代わる写真である。
【図11】図11は、本発明の化合物4(HBC−C60)の自己集積体の加水分解前後におけるナノチューブの構造を模式的に示したものである。
【図12】図12は、本発明の電界効果トランジスタのボトムゲート/トップコンタクト型の例である。
【図13】図13(a)は、ソース−ドレイン電圧を0〜−90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜の本発明のFET特性(出力特性)を示す。図13(b)は、ソース−ドレイン電圧を0〜90Vまでスイープし、ゲート電圧を0Vから90Vまで10Vおきに変化させたときの、HBCナノチューブ薄膜の本発明のFET(出力特性)を示す。図13(c)は、ゲート電圧を0〜−90Vまでスイープし、ソース−ドレイン電圧を0Vから−90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜の本発明のFET特性(伝達特性)を示す。図13(d)は、ゲート電圧を0〜90Vまでスイープし、ソース−ドレイン電圧を30Vから90Vまで10Vおきに変化させたときのHBCナノチューブ薄膜の本発明のFET特性(伝達特性)を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 ソース電極
2 ドレイン電極
3 ゲート電極
4 有機半導体層(HBCナノチューブ)
5 表面処理層(HMDS層)
6 絶縁層(酸化シリコン被膜)
7 基板(シリコン基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体層が、フラーレンが結合した分子が自己組織化して内壁表面及び外壁表面の両面に結合したフラーレンからなる層を有するナノサイズ構造体を含む電荷輸送材料からなることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
フラーレンが結合した分子が、π−スタッキング相互作用を有する分子である請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
フラーレンが結合した分子が、ヘキサペリヘキサベンゾコロネン骨格に親水性の基を介してフラーレンが結合している分子である請求項1又は2に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
結合が、共有結合である請求項1〜3のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
フラーレンが、金属を内包しているものである請求項1〜4のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項6】
フラーレンが、C60フラーレンである請求項1〜5のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
フラーレンが結合した分子が、次の一般式(1)
【化1】

[式中、Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して次の一般式(2)
−C−O−R−(O−R)n−OR (2)
(式中、−C−はフェニレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又は金属を内包していてもよいフラーレンを有する基を表し、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよいがR及びRの少なくともどちらか一方のRは金属を内包していてもよいフラーレンを有する基であり、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
で表される基を表す。]
で表されるヘキサペリヘキサベンゾコロネン誘導体である請求項1〜6のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項8】
ナノサイズ構造体が、ナノチューブである請求項1〜7のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項9】
電界効果トランジスタが、両極性電界効果トランジスタである請求項1〜8のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項10】
電界効果トランジスタが、、ボトムゲート/トップコンタクト型の電界効果トランジスタである請求項1〜9のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項11】
有機半導体層が、表面処理剤により表面処理された絶縁層に形成されたものである請求項1〜10のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項12】
表面処理剤が、ヘキサメチルジシラザンである請求項11に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の電界効果トランジスタが、酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に形成されているものである請求項1〜12のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項14】
酸化シリコン絶縁膜で覆われたシリコン基板上に請求項1〜13のいずれかに記載の電界効果トランジスタが形成されている半導体チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−212242(P2009−212242A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52613(P2008−52613)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日付け 社団法人応用物理学会発行の「2007年(平成19年)秋季第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊」
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】