フラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに太陽電池
【課題】本発明は、高導電性を有するフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに光−電流変換効率の高い太陽電池を提供することを課題とする。
【解決手段】基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラー30とを備え、フラーレンピラー30の少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラー20であることを特徴とするフラーレンピラー電極1及びその製造方法、並びにフラーレンピラー電極1を備えた太陽電池。
【解決手段】基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラー30とを備え、フラーレンピラー30の少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラー20であることを特徴とするフラーレンピラー電極1及びその製造方法、並びにフラーレンピラー電極1を備えた太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、地球上の資源の使用量が少なく、環境に対する負荷が少ないエネルギー機器として注目を浴びている。
太陽電池においては、無機材料を用いたものだけでなく、有機材料を用いたもの(有機太陽電池)も研究開発が活発に行われており、光−電流変換効率を向上させる手法について様々な検討が行われている。光−電流変換効率とは、照射された太陽光のエネルギーのうち、電力に変換された割合を意味する。
有機太陽電池は、一対の電極と、該一対の電極間に配置される導電性層とから概略構成される。そのなかで、導電性層に、導電性ポリマーとフラーレンとが用いられた有機太陽電池がある。フラーレンとしては、電子移動度が約0.1cm2V−1s−1であり、優れた電子受容体であるC60フラーレンが用いられている。
【0003】
非特許文献1には、PPV(poly(p−phenylenevinylene))とC60フラーレンとを用いた有機太陽電池に関するものが開示されている。
この有機太陽電池は、Al電極/C60フラーレン薄膜/PPV/ITOガラス基板、という層構成のヘテロ接合型太陽電池であり、約9%の量子効率を達成したと報告されている。
【0004】
非特許文献2には、フラーレンが導電性層に分散された直列型有機太陽電池に関するものが開示されている。
この直列型有機太陽電池は、ITO/(PEDOT:PSS)/(PCPDTBT:PCBM)/TiOx/(PEDOT:PSS)/(P3HT:PC70BM)/TiOx/Al、という層構成のヘテロ接合型構造の太陽電池であり、光−電流変換効率は6%と報告されている。該直列型有機太陽電池においては、フラーレンとしてC60誘導体とC70誘導体の両方が用いられ、太陽光の広い波長範囲の利用が試みられている。
前記の該直列型有機太陽電池を構成する材料の略称は以下の通りである。
「ITO」は、indium tin oxideである。
「PEDOT」は、poly(3,4−ethylenedioxylenethiophene)である。
「PSS」は、polystylene sulfonic acidである。
「PCPDTBT」は、poly[2,6−(4,4−bis−(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene)−alt−4,7−(2,1,3−benzothiadiazole)]である。
「PCBM」は、[6,6]−phenyl−C61 butyric acid methyl esterである。
「P3HT」は、poly(3−hexylthiophene)である。
「PC70BM」は、[6,6]−phenyl−C71 butyric acid methyl esterである。
【0005】
非特許文献3には、短い長さのC60フラーレンナノウィスカーを用いた有機太陽電池について初めて報告されている。
この有機太陽電池においては、C60フラーレンナノウィスカー(C60ナノロッド)がP3OT(poly3−octylthiophene)層に分散されている。C60フラーレンナノウィスカーは、P3OT層内でランダムな方向に配向している。
【0006】
一方、本発明者らは、AAO(Anodic Aluminum Oxide)膜にC60フラーレンマイクロチューブ(フラーレンピラー)が垂直配向したフラーレンピラー付き基板を初めて開発した(特許文献1、非特許文献4参照)。
このフラーレンピラー付き基板は、該フラーレンピラーが半導体針状結晶であることから、電極を付けることにより太陽電池素子などに利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−51708号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.J.M.Halls,K.Pichler,R.H.Friend,S.C.Moratti and A.B.Holmes,“Exciton diffusion and dissociation in a poly(p−phenylenevinylene)/C60 heterojunction photovoltaic cell”,Appl.Phys.Lett.,68(1996)3120.
【非特許文献2】J.Y.Kim et al.,“Efficient Tandem Polymer Solar Cells Fabricated by All−Solution Processing”,Science 317(2007)222.
【非特許文献3】Prakash R.Somani,Savita P.Somani and Masayoshi Umeno,“Toward organic thick film solar cells:Three dimensional bulk heterojunction organic thick film solar cell using fullerene single crystal nanorods”,Appl.Phys.Lett.91,173503(2007).
【非特許文献4】Seung I.Cha,Kun’ichi Miyazawa and Je−Deok Kim,“Vertically Well−Aligned C60 Micro−tube Crystal Array Prepared Using Solution−Based One Step Process”,Chem.Mater.20(2008)1667−1669.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後、地球温暖化防止等を背景に太陽電池の需要の増大が見込まれるなか、特に有機太陽電池は、製法が簡便で生産コストを低くでき、着色性や柔軟性などを付与できる等の特長を有することから、次世代太陽電池の一つとして期待されている。
従来、有機太陽電池は、無機材料を用いたものに比べて光−電流変換効率が低い。これに対して、導電性層の導電性をさらに高め、光−電流変換効率をよりいっそう向上させることが必要である。
しかしながら、非特許文献3のフラーレンとしてC60フラーレンナノウィスカーを用いる技術では、太陽電池としての光−電流変換効率は良くない。また、特許文献1と非特許文献4のフラーレンピラー付き基板を用いる技術でも、光−電流変換効率の高い太陽電池を得るのは難しい。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、高導電性を有するフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに光−電流変換効率の高い太陽電池を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記のフラーレンピラー付き基板を、電子の集まりやすい集電電極として積極的に利用できれば光−電流変換効率の高い太陽電池を製造できること、を着想した。しかしながら、前記フラーレンピラーは、内部が半導体的な導電性を有するものの、表面は絶縁体化しているため、このままではフラーレンピラー付き基板を電極として用いることは困難であった。
本発明者らは検討により、フラーレンピラー表面に内部の導電性部分を露出させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
(1)基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備え、前記フラーレンピラーの少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーであることを特徴とするフラーレンピラー電極。
【0012】
(2)前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出していることを特徴とする、(1)記載のフラーレンピラー電極。
(3)前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として2つ以上露出していることを特徴とする、(2)記載のフラーレンピラー電極。
(4)前記基板は厚さ方向に孔部を有し、前記導電性フラーレンピラーの基端部が、該孔部の開口部の縁の一部と接するように配置されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極。
(5)前記孔部に金属又は合金材料が注入されていることを特徴とする、(4)記載のフラーレンピラー電極。
(6)前記基板は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、及び直線的な貫通孔が形成された多孔質体からなる群より選択される1種以上の材料からなることを特徴とする、(4)又は(5)記載のフラーレンピラー電極。
【0013】
(7)複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)とを有することを特徴とするフラーレンピラー電極の製造方法。
【0014】
(8)前記工程(ii)において、前記フラーレンピラーの少なくとも1つにイオンビームを照射して前記導電性部分を露出させる操作を行うことを特徴とする、(7)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(9)前記工程(ii)において、前記イオンビームの照射後に前記基板上に残存する前記導電性フラーレンピラーの体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラーの体積以上となるように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、(8)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(10)前記工程(ii)において、前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出するように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、(8)又は(9)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(11)前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有することを特徴とする、(7)〜(10)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【0015】
(12)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極を備えたことを特徴とする太陽電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高導電性を有するフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに光−電流変換効率の高い太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のフラーレンピラー電極の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】フラーレンピラーの一実施形態を示し、図2(a)は先端部側の平面図、図2(b)はX1方向から見た側面図、図2(c)はY1方向から見た側面図である。
【図3】導電性フラーレンピラーの一実施形態を示し、図3(a)は先端部側の平面図、図3(b)はX2方向から見た側面図、図3(c)はY2方向から見た側面図である。
【図4】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図4(a)は先端部側の平面図、図4(b)はX3方向から見た側面図、図4(c)はY3方向から見た側面図である。
【図5】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図5(a)は先端部側の平面図、図5(b)はX4方向から見た側面図、図5(c)はY4方向から見た側面図である。
【図6】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図6(a)は先端部側の平面図、図6(b)はX5方向から見た側面図、図6(c)はY5方向から見た側面図である。
【図7】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図7(a)は先端部側の平面図、図7(b)はX6方向から見た側面図、図7(c)はY6方向から見た側面図である。
【図8】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図8(a)は先端部側の平面図、図8(b)はX7方向から見た側面図、図8(c)はY7方向から見た側面図である。
【図9】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図9(a)は先端部側の平面図、図9(b)はX8方向から見た側面図、図9(c)はY8方向から見た側面図である。
【図10】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図10(a)は先端部側の平面図、図10(b)はX9方向から見た側面図、図10(c)はY9方向から見た側面図である。
【図11】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図11(a)は先端部側の平面図、図11(b)はX10方向から見た側面図、図11(c)はY10方向から見た側面図である。
【図12】本発明のフラーレンピラー電極の第2の実施形態を示す側面図である。
【図13】図13(a)は、図12の一部を拡大した断面図であり、図13(b)は、図12におけるフラーレンピラー電極1を右側面方向から見た縦断面図である。
【図14】図14(a)は、基板とフラーレンピラーとの界面付近を拡大した断面図であり、図14(b)は、図14(a)の一部を拡大した断面図である。
【図15】フラーレンピラーにイオンビームを照射して導電性部分を露出させる操作の一実施形態を示す図であり、図15(a)はイオンビーム照射前のフラーレンピラーの側面図、図15(b)はイオンビーム照射中の状態を示す模式図、図15(c)はイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の側面図である。
【図16】本発明の太陽電池の実施形態例を示す断面図である。
【図17】AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
【図18】AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラーの先端部方向の上方から見たSEMによる写真である。
【図19】孔部の開口部の縁に直立した導電性フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
【図20】図19におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
【図21】図19に示す場合よりも、導電性フラーレンピラーにおける導電性部分の露出面積が小さい場合のSEMによる写真である。
【図22】図21におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<フラーレンピラー電極>
本発明のフラーレンピラー電極は、基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備える。
図1は、本発明のフラーレンピラー電極の第1の実施形態を示す側面図である。
第1の実施形態であるフラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30とを備えている。
フラーレンピラー電極1では、6本の導電性フラーレンピラー20と、6本のフラーレンピラー30とが一面10aに直立している。
【0019】
(基板)
基板10の材料としては、多孔質体、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、ポーラスシリコン等が挙げられる。
なかでも、基板10は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、及びメンブレンフィルターから選択される1種以上の材料からなることが好ましい。これらの材料を選択することにより、基板10の一面10aに、垂直な方向に柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30を容易に形成できる。加えて、基板の膜孔に入り込むように、導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30を形成できるため、これらのフラーレンピラーを基板10に強固に固定できる。
基板10の厚さは、充分な強度を確保できる点から、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0020】
(フラーレンピラー)
フラーレンピラーは、垂直配向したフラーレンの針状結晶からなり、その表面は絶縁性であって内部は半導体的導電性を有しているものが挙げられる。
フラーレンピラーの高さは、0.1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましい。該高さが好ましい下限値以上であると、導電性部分の露出面積が大きくなって導電性がより得られやすくなり、上限値以下であれば倒壊しにくい。
フラーレンピラーの太さは、基端部の径として0.05〜200μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましい。フラーレンピラーは、細くなるほど導電性が高まる。
【0021】
図2は、フラーレンピラーの一実施形態を示し、図2(a)は先端部側の平面図、図2(b)はX1方向から見た側面図、図2(c)はY1方向から見た側面図である。
フラーレンピラー30は、略六角柱であり、先端部30a側に中空部30hが形成されている。先端部30aには、中空部30hが開口している。また、基端部30bは、基板10の一面10aに強固に固定される。フラーレンピラー30の表面、すなわち、側面30sと先端面30cと中空部30hの周面は絶縁性であり、フラーレンピラー30の内部は半導体的導電性を有している。
「フラーレンピラーの側面」とは、柱状のフラーレンピラーにおける先端部側の面(先端面)及び基端部側の面、並びに中空部の周面以外の面を意味する(柱状のフラーレンピラーを角柱又は円柱とみなした際の2つの底面以外の外周面とする)。
なお、図2中の符号60〜69は六角形の各頂点を示す。
【0022】
(導電性フラーレンピラー)
本発明のフラーレンピラー電極においては、フラーレンピラーの少なくとも1つが、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーである。すなわち、基板の一面に、1本以上の導電性フラーレンピラーが直立していればよく、基板の一面に直立しているフラーレンピラーの全てが導電性フラーレンピラーであってもよい。
【0023】
図3は、導電性フラーレンピラーの一実施形態を示し、図3(a)は先端部側の平面図、図3(b)はX2方向から見た側面図、図3(c)はY2方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー20は、図2に示すフラーレンピラー30の側面30sに、内部の導電性部分が露出したものである。
該導電性部分は、略六角柱の先端部20a周縁上の二点51、52と、基端部20b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面20mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー20は、内側の中空部の周面20hも露出している。面20m以外の側面20sと先端面20cと周面20hは絶縁性を有している。基端部20bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0024】
(作用効果)
導電性フラーレンピラー20は、その表面に導電性部分が露出していることから、導電性部分が露出せずに表面全体が絶縁性のフラーレンピラー30に比べて、電子が集まりやすい。このため、本実施形態のフラーレンピラー電極1は、集電電極として作用し得ることにより高導電性を有する。
また、本実施形態のフラーレンピラー電極1は、図3中の二点51、52と一点53とを結ぶことで形成する面20mとして導電性部分が露出していることで、該導電性部分の露出面積が広くなっている。これにより、フラーレンピラー電極1は、導電性が容易に高まり、電極性能がより向上する。
【0025】
本発明のフラーレンピラー電極は、図1〜3に示した実施形態に限定されず、以下のようなものであってもよい。
導電性フラーレンピラー及びフラーレンピラーの形状は、略六角柱に限定されず、略円柱、楕円柱、四角柱、五角柱、七角柱、八角柱、十角柱、十二角柱等であってもよい。
フラーレンピラーは、中空部を有するものであっても中空部を有しないものであってもよい。
導電性フラーレンピラーにおける導電性部分が露出している面の形状は、曲面であってもよい。また、該導電性部分が露出している面の数は、2つ以上であってもよい。露出している面の数を2つ以上とすることにより、導電性部分の露出面積を広くでき、導電性がより高まる。
【0026】
図4〜11は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示す図である。これら実施形態の導電性フラーレンピラーを適宜選択することにより、導電性部分の露出面積、フラーレンピラー形状を制御できる。
図4〜11に示すいずれの導電性フラーレンピラーも、図2に示すフラーレンピラー30と同一の実施形態である略六角柱のフラーレンピラーが加工されたものである。
【0027】
図4は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図4(a)は先端部側の平面図、図4(b)はX3方向から見た側面図、図4(c)はY3方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー21において、導電性部分は、略六角柱の先端部21a周縁上の二点51、52と、基端部21b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面21mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点67の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー21は、内側の中空部の周面21hも露出している。面21m以外の側面21sと先端面21cと周面21hは絶縁性を有している。基端部21bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0028】
図5は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図5(a)は先端部側の平面図、図5(b)はX4方向から見た側面図、図5(c)はY4方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー22において、導電性部分は、略六角柱の先端部22a周縁上の二点51、52と、基端部22b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面22mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点67と頂点68との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー22は、内側の中空部の周面22hも露出している。面22m以外の側面22sと先端面22cと周面22hは絶縁性を有している。基端部22bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0029】
図6は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図6(a)は先端部側の平面図、図6(b)はX5方向から見た側面図、図6(c)はY5方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー23において、導電性部分は、略六角柱の先端部23a周縁上の二点51、52と、基端部23b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面23mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点68の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー23は、内側の中空部の周面23hも露出している。面23m以外の側面23sと先端面23cと周面23hは絶縁性を有している。基端部23bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0030】
図7は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図7(a)は先端部側の平面図、図7(b)はX6方向から見た側面図、図7(c)はY6方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー24において、導電性部分は、略六角柱の先端部24a周縁上の二点51、52と、基端部24b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面24mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー24は、内側の中空部の周面24hも露出している。面24m以外の側面24sと先端面24cと周面24hは絶縁性を有している。基端部24bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0031】
図8は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図8(a)は先端部側の平面図、図8(b)はX7方向から見た側面図、図8(c)はY7方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー25において、導電性部分は、略六角柱の先端部25a周縁上の二点51、52と、基端部25b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面25mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62と頂点63との中間位置、点52は頂点63と頂点64との中間位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー25は、内側の中空部の周面25hも露出している。面25m以外の側面25sと先端面25cと周面25hは絶縁性を有している。基端部25bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0032】
図9は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図9(a)は先端部側の平面図、図9(b)はX8方向から見た側面図、図9(c)はY8方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー26において、導電性部分は、略六角柱の先端部26a周縁上の二点51、52と、基端部26b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面26mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62の位置、点52は頂点64の位置、点53は図2(c)における頂点66と頂点67との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー26は、内側の中空部の周面26hも露出している。面26m以外の側面26sと先端面26cと周面26hは絶縁性を有している。基端部26bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0033】
図10は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図10(a)は先端部側の平面図、図10(b)はX9方向から見た側面図、図10(c)はY9方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー27において、導電性部分は、略六角柱の先端部27a周縁上の二点51、52と、基端部27b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面27mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点66と頂点67との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー27は、内側の中空部の周面27hも露出している。面27m以外の側面27sと先端面27cと周面27hは絶縁性を有している。基端部27bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0034】
図11は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図11(a)は先端部側の平面図、図11(b)はX10方向から見た側面図、図11(c)はY10方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー28において、導電性部分は、2つの平坦な面28m1、28m2として露出している。
面28m1は、略六角柱の先端部28a周縁上の二点51、52と、基端部28b周縁上の一点53aとを結ぶことで形成する面である。
面28m2は、略六角柱の先端部28a周縁上の二点51、52と、基端部28b周縁上の一点53bとを結ぶことで形成する面である。
点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53aは図2(c)における頂点66の位置、点53bは図2(c)における頂点69の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー28は、内側の中空部の周面28hも露出している。面28m1と面28m2以外の側面28sと周面28hは絶縁性を有している。基端部28bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
図11に示す実施形態の導電性フラーレンピラー28は特に導電性部分の露出面積が広いため、フラーレンピラー電極の導電性がさらに高まる。
【0035】
本発明のフラーレンピラー電極は、図12に示す実施形態のものも好ましい。
図12は、本発明のフラーレンピラー電極の第2の実施形態を示す側面図である。
第2の実施形態であるフラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30とを備えている。図12に示すフラーレンピラー電極1では、6本の導電性フラーレンピラー20と、6本のフラーレンピラー30とが一面10aに直立している。基板10には、厚さ方向に孔部10hが形成されている。
【0036】
図13(a)は、図12の一部を拡大した断面図であり、図13(b)は、図12におけるフラーレンピラー電極1を右側面方向から見た縦断面図である。
基板10には、厚さ方向に、一面10aと他面10bとを連通する孔部10hが形成されている。基板10に孔部10hが形成されていることにより、孔部10hに導電性材料を注入して容易に一面10a側と他面10b側とを導通できる。
孔部10hは、一面10aと他面10bとを連通する直線的な貫通孔であることが好ましい。孔部10hの形状としては、四角柱状、円柱状、楕円柱状などが挙げられる。孔部10hの一面10a側の開口部12の形状は、平面視略四角形状、平面視円形状、平面視楕円形状などであればよい。
開口部12の開口径は、基端部20bの径(最も長い距離とする。)に対して50〜150%とすることが好ましい。該開口径が基端部20bの径に対して50%未満の場合には、導電性フラーレンピラー20との接触が充分でない場合が発生しやすい。150%超の場合には、導電性フラーレンピラー20が倒壊するおそれがある。
【0037】
第2の実施形態のフラーレンピラー電極1においては、孔部10hに金属又は合金材料が注入されて、金属部11が形成されている。この金属部11は、導電性フラーレンピラー20と、他面10b側に設けられる金属板とを導通する配線になり得る。
金属部11を形成する金属、合金材料としては、Pt、Al、Au又はこれらを混合したもの等が挙げられる。
図13(b)では、導電性フラーレンピラー20は、その基端部20bが、孔部10hの開口部12の縁12aの一部と接するように配置されている。このように導電性フラーレンピラー20を配置することにより、導電性フラーレンピラー20と他面10bとが金属部11を介して導通し得る。
【0038】
また、本発明のフラーレンピラー電極は、その全体が前記の金属又は合金材料によって被覆されたものでもよい。
【0039】
<フラーレンピラー電極の製造方法>
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法は、複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)とを有する。
【0040】
[工程(i)]
工程(i)では、複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する。
該フラーレンピラー付き基板は、前述した特許文献1、非特許文献4に記載されている方法に準じて作製することができる。その一例として、基板として用いる表裏貫通型多孔質体の表面に、フラーレン分子を含有した良溶媒を配置し、裏面に前記フラーレンに対する貧溶媒を配置し、この多孔質体の表裏を貫通する孔を通して前記貧溶媒を前記良溶媒側に注入することで、前記孔から良溶媒側に向かって複数の柱状のフラーレンピラーを析出させて成長させることにより作製できる。なお、フラーレンピラーの表面(側面、先端面、中空部の周面)は、大気中の酸素を吸着して絶縁体化している。
【0041】
図14(a)は、基板とフラーレンピラーとの界面付近を拡大した断面図であり、図14(b)は、図14(a)の一部を拡大した断面図である。
図14(a)では、1本のフラーレンピラー30が、一面10aに対して垂直な方向に直立している。フラーレンピラー30は、垂直配向した無数のフラーレン針状結晶30xの束から構成されている。
基板10は、表裏貫通型多孔質体からなり、無数の膜孔15を有している。基板10とフラーレンピラー30との界面付近で、膜孔15は、一面10aに対して略垂直方向に開口している。
図14(b)では、フラーレンピラー30を構成するフラーレンが基板10内部にも浸透し、該多孔質体の骨格の一部又は全部を被覆している。すなわち、フラーレン針状結晶30xは、基板10内部にまで連続して形成されている。一方、フラーレンピラー30は、前記界面付近で略垂直方向に開口した膜孔15に沿うように、連続的に析出して成長し、一面10aに直立している。なお、基板10内部に浸透したフラーレンは、基板10の他面側に達していてもよい。
【0042】
[工程(ii)]
工程(ii)では、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する。これにより、フラーレンピラー電極が得られる。
フラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる方法としては、イオンビームを照射する方法、フラーレンを溶解する溶媒(トルエン、ベンゼン等)でフラーレンピラーの表面層を溶解除去する方法等が挙げられる。なかでも、操作が簡便でかつ制御が容易であることから、イオンビームを照射する方法が好ましい。
【0043】
図15は、フラーレンピラーにイオンビームを照射して導電性部分を露出させる操作の一実施形態を示す図であり、図15(a)はイオンビーム照射前のフラーレンピラーの側面図、図15(b)はイオンビーム照射中の状態を示す模式図、図15(c)はイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の側面図である。
図15(a)に示すフラーレンピラー30は、図2に示すフラーレンピラー30と同一の実施形態のものである。
図15(b)では、フラーレンピラー30の先端部30a側から基端部30b側へイオンビームが照射されている。具体的には、先端部30a周縁上の任意の二点(図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、頂点64と頂点65との中間位置とそれぞれ同じ位置)と、基端部30b周縁上の任意の一点53a(図2(c)における頂点66の位置と同じ位置)とを通過するように、すなわち、先端部30a周縁上の任意の該二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53aとを結ぶことで形成する面として導電性部分が露出するように、イオンビームが矢印方向に照射されている。
イオンビームの種類としては、ガリウムイオンビーム、アルゴンイオンビーム、アルゴン中性原子ビーム等が挙げられる。
イオンビームの照射は、集束イオンビーム加工装置(FIB、日立NB5000)等を用いて行うことができる。
図15(c)では、前記のイオンビーム照射によって、図3に示す導電性フラーレンピラーと同一の実施形態の、側面に導電性部分が平坦な面20mとして露出した導電性フラーレンピラー20が形成されている。
【0044】
また、図15に示す操作においては、イオンビームの照射後に基板上に残存する導電性フラーレンピラー20の体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラー30dの体積以上となるように、前記イオンビームの照射が行われている。
このように、導電性フラーレンピラー20の体積を制御することにより、電極として利用する上で充分な大きさを確保できる。また、強度も高まる。
【0045】
(作用効果)
前述したように、フラーレンピラー30の表面は絶縁性であるが、本発明に係る製造方法によれば、表面に導電性部分が露出した導電性フラーレンピラー20を形成できる。これにより、フラーレンピラー付き基板を、高導電性を有するものにでき、電子の集まりやすい集電電極として利用可能なフラーレンピラー電極を製造することができる。
また、フラーレンピラー30の表面に導電性部分を露出させる際、先端部30a周縁上の任意の二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53aとを結ぶ面として導電性部分を露出させることにより、導電性部分の露出面積の広いフラーレンピラー電極を容易に製造できる。
【0046】
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法において、フラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる操作は、図15に示す操作に限定されず、以下のようなものであってもよい。
基板に対して垂直方向にイオンビームを照射する操作により、図4〜6に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
また、基板に対するイオンビームの照射角度、照射位置を変化させることにより、図7〜10に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
また、図15(b)において、さらに、先端部30a周縁上の任意の前記二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53bとを通過するように、すなわち、先端部30a周縁上の任意の該二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53bとを結ぶことで形成する面として導電性部分が露出するように、イオンビームを照射する操作により、図11に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
図3〜11に示す実施形態の導電性フラーレンピラーにおいて導電性部分が露出した面は、いずれも平坦な面として形成されているが、曲面となるように形成してもよい。加えて、導電性部分が露出した面を、導電性フラーレンピラーの側面に2つ以上形成してもよい。
【0047】
[工程(iii)]
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法は、工程(i)及び工程(ii)に加えて、前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有してもよい。
この工程(iii)の操作を行うことにより、図12に示す実施形態と同様のフラーレンピラー電極、すなわち、他面10b側に設けられる金属板と導電性フラーレンピラー20とを導通する配線の役割を果たす基板10を備えたフラーレンピラー電極1を製造できる。
基板10の厚さ方向に孔部10hを形成する方法としては、基板にイオンビームを照射する方法、水酸化ナトリウム溶液等の腐食性溶液を用いて基板の一部を溶解する方法等が挙げられる。なかでも、操作が簡便でかつ制御が容易であることから、イオンビームを照射する方法が好ましい。
なお、前記基板の厚さ方向に孔部を形成する操作は、工程(ii)におけるフラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる操作と同時に行うこともできる。
孔部10hに金属又は合金材料を注入する方法としては、金属部11を容易に形成できることから、蒸着法、スパッター法等が挙げられる。
孔部10hは、導電性フラーレンピラー20の基端部20bが、孔部10hの開口部12の縁12aの一部と接する位置に形成することが好ましい。これにより、導電性フラーレンピラー20と他面10bとが金属部11を介して導通し得る。
【0048】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、上記本発明のフラーレンピラー電極を備えたものである。
図16は、本発明の太陽電池の実施形態例を示す断面図である。
本実施形態の太陽電池100は、第1の電極40と第2の電極60とからなる一対の電極間に、第1の電極40と隣接するフラーレンピラー電極1と、フラーレンピラー電極1と第2の電極60とそれぞれ隣接する導電性ポリマー膜50とから概略構成されている。第1の電極40と第2の電極60とは配線70で接続され、第2の電極60から第1の電極40へ電流が流れるようになっている。
【0049】
(フラーレンピラー電極)
本実施形態の太陽電池100において、フラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20とから構成されている。導電性フラーレンピラー20を構成するフラーレン針状結晶は、基板10内部にまで成長している。この基板10内部に成長したフラーレン針状結晶は、第1の電極40にまで達している。すなわち、導電性フラーレンピラー20と第1の電極40とは導通し得る状態になっている。
【0050】
(導電性ポリマー膜)
導電性ポリマー膜50を構成する材料には、光−電流変換効率が高まりやすいことから、可視光から赤外光領域の光に対して吸光度が高いものを用いることが好ましい。
このような材料としては、PPV(poly(p−phenylenevinylene))、PEDOT、PCPDTBT、P3HT、PEDOT:PSS、PCPDTBT:PCBM、P3HT:PC70BM等が好適なものとして挙げられる。
【0051】
(第1の電極)
第1の電極40には、第2の電極に用いられる材料に対して仕事関数の低い材料を用いることが好ましい。これにより、光−電流変換効率がより高まりやすくなる。
第1の電極40に用いられる材料としては、Ag、Mg、Al、Au、Cu、W、Pt等が好適なものとして挙げられる。これらの1種以上を用いることにより、基板10と良好な接合体を容易に形成できる。
【0052】
(第2の電極)
第2の電極60には、光の透過率の高い材料が用いられる。
第2の電極60に用いられる材料としては、ITO、IZO(indium zinc oxide)等が好適なものとして挙げられる。これらの材料は、可視光領域の光に対する透過率の高い材料なので、導電性ポリマー膜50内に光を取り込み易く、光−電流変換効率がより高まりやすい。
なお、第2の電極60は、Au等の薄膜を形成して金属電極薄膜からなる透明電極としてもよい。
【0053】
(太陽電池の製造方法)
本実施形態の太陽電池100は、たとえば以下のようにして製造される。
まず、基板10の他面10bに、蒸着法によってAl等の薄膜からなる第1の電極40を形成する。
次に、フラーレンピラー電極1の一面10a側に、導電性フラーレンピラー20の全体を被覆するように導電性ポリマー膜50を積層し、導電性ポリマー膜50上に第2の電極60となるITO膜等を積層する。
そして、第1の電極40と第2の電極60とを配線70で接続することにより太陽電池100が製造される。
【0054】
(作用効果)
本実施形態の太陽電池100においては、光が第2の電極60を透過して導電性ポリマー膜50内に入射することにより、導電性ポリマー膜50内で電子とホール(正孔)とが生成する。そして、電子は第1の電極40へ、ホールは第2の電極60へとそれぞれ移動し、第1の電極40と第2の電極60との間で電界を生じる。この光電効果により、第1の電極40と第2の電極60とを接続した配線70に電流を流すことができる。
本実施形態の太陽電池100は、電子の集電電極となるフラーレンピラー電極1を備えている。太陽電池100においては、基板10に垂直な方向に林立した導電性フラーレンピラー20を有することにより、導電性フラーレンピラー20と導電性ポリマー膜50との接触面積を飛躍的に大きくできる、導電性ポリマー膜50内での光の散乱が生じにくいため、光の拡散を長くできる、及び、導電性ポリマー膜50の膜厚を厚くできる。加えて、フラーレンピラー電極1は、導電性フラーレンピラー20の表面に導電性部分が露出していることにより高導電性を有している。
このように、本実施形態の太陽電池100によれば、光の捕集効率及び導電性に優れることから、光−電流変換効率を高くできる。
【0055】
たとえば下記の太陽電池(P)と太陽電池(Q)とを比較すると、波長400〜800nmの範囲の光を所定の強度で各太陽電池に10分間照射した後、光電流値を測定した場合、太陽電池(P)は、太陽電池(Q)よりも、光電流値が大きく、光−電流変換効率が高いという効果が得られること、が期待される。
太陽電池(P):本発明のフラーレンピラー電極を用い、非特許文献3に記載の方法と同様にして製造した有機ヘテロ接合型太陽電池。
太陽電池(Q):非特許文献3に記載の方法と同様にして作製したランダム配向のフラーレンナノウィスカーを用いた有機太陽電池。
かかる効果が得られる理由は、太陽電池(P)においてはフラーレンピラーを基板に対して垂直配向成長させて、フラーレンピラーによる導電性ポリマー膜中への光の拡散の妨害が生じない構造であるのに対し、太陽電池(Q)ではフラーレンナノウィスカーのランダムな配向により導電性ポリマー膜中への光の拡散が妨害される可能性があること;太陽電池(P)ではフラーレンピラーの表面に導電性部分が露出していることにより、電子が集まりやすいこと、加えて、太陽電池(P)では導電性ポリマーにおける電子・ホールの発生確率が高まっていること、が推測される。
【実施例】
【0056】
本発明のフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに太陽電池は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。以下に、本発明のフラーレンピラー電極についての具体例を示す。
【0057】
(実施例:フラーレンピラー電極の製造例)
[工程(i)]
まず、直径25mm、孔径20nm又は200nmの市販の陽極酸化多孔質アルミナ膜基板(Anodic Aluminum Oxide(AAO)膜基板;円板状)を用意した(商品名Anodisc25、膜孔径200nm又は20nm、Whatman Inc.)。
次に、AAO膜基板上にC60フラーレン飽和トルエン溶液を配置した。そして、このAAO膜基板の裏側から、C60フラーレン飽和トルエン溶液にイソプロピルアルコール(IPA)をゆっくりと注入してC60フラーレンを針状に析出させ、C60フラーレン分子からなるフラーレンピラーを林立成長させてフラーレンピラー付き基板を作製した。
【0058】
図17は、AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
図18は、AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラーの先端部方向の上方から見たSEMによる写真である。
図17、18では、AAO膜基板上に、六角柱状のフラーレンピラーが垂直な方向に林立している。各フラーレンピラーの先端部は開口し、先端部側には中空部が存在している。
【0059】
[工程(ii)]
次に、集束イオンビーム加工装置(FIB、日立NB5000)を用いて、AAO膜基板上に垂直配向成長させたフラーレンピラーに対してガリウムイオンビームを照射することによってその側面を削り、内部の半導体的導電性部分を露出させた。
その際、AAO膜基板に対してもガリウムイオンビームを照射し、AAO膜基板の厚さ方向に略四角柱状の孔部を、ガリウムイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した。
【0060】
図19は、孔部の開口部の縁に直立した導電性フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。この導電性フラーレンピラー20は、図10に示す実施形態の導電性フラーレンピラーと同様の形態のものである。
図19に示すように、導電性フラーレンピラー20内側の中空部は、AAO膜基板10近くの側では形成されておらず、先端部側で形成されていた。これは、フラーレンピラーはC60フラーレンが固体として析出しながら林立成長して形成されるため、先端部側ほど、溶液中のC60フラーレン濃度が低い状態で析出が起こり、内部まで充填されるほど充分にC60フラーレンが供給されなかったことに起因する、と考えられる。
【0061】
図20は、図19におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
図20において、導電性フラーレンピラー20は、垂直配向した無数のフラーレン針状結晶の束から構成されていることが分かる。また、該フラーレン針状結晶は、AAO膜基板10内部にまで連続して形成されていることも分かる。
【0062】
図21は、図19に示す場合よりも、導電性フラーレンピラーにおける導電性部分の露出面積が小さい場合のSEMによる写真である。この導電性フラーレンピラー20は、導電性部分が、おおよそ、図2(a)における頂点60と頂点61との略中点と、頂点60と頂点65との略中点と、図2(c)における頂点60と頂点66との略中点とを結ぶ面として露出している。
図22は、図21におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
図22において、AAO膜基板10には、その内部にまでC60フラーレンが浸透していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフラーレンピラー電極は、高導電性を有し、これを用いて光−電流変換効率の高い太陽電池を提供することができる。本発明のフラーレンピラー電極及びその製造方法は、太陽電池産業、電子デバイス、電子ディスプレイ産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0064】
1 フラーレンピラー電極、10 基板、10a 一面、10b 他面、11 金属部、12 開口部、15 膜孔、20 導電性フラーレンピラー、20a 先端部、20b 基端部、20c 先端面、30 フラーレンピラー、40 第1の電極、50 導電性ポリマー膜、60 第2の電極、70 配線、100 太陽電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、地球上の資源の使用量が少なく、環境に対する負荷が少ないエネルギー機器として注目を浴びている。
太陽電池においては、無機材料を用いたものだけでなく、有機材料を用いたもの(有機太陽電池)も研究開発が活発に行われており、光−電流変換効率を向上させる手法について様々な検討が行われている。光−電流変換効率とは、照射された太陽光のエネルギーのうち、電力に変換された割合を意味する。
有機太陽電池は、一対の電極と、該一対の電極間に配置される導電性層とから概略構成される。そのなかで、導電性層に、導電性ポリマーとフラーレンとが用いられた有機太陽電池がある。フラーレンとしては、電子移動度が約0.1cm2V−1s−1であり、優れた電子受容体であるC60フラーレンが用いられている。
【0003】
非特許文献1には、PPV(poly(p−phenylenevinylene))とC60フラーレンとを用いた有機太陽電池に関するものが開示されている。
この有機太陽電池は、Al電極/C60フラーレン薄膜/PPV/ITOガラス基板、という層構成のヘテロ接合型太陽電池であり、約9%の量子効率を達成したと報告されている。
【0004】
非特許文献2には、フラーレンが導電性層に分散された直列型有機太陽電池に関するものが開示されている。
この直列型有機太陽電池は、ITO/(PEDOT:PSS)/(PCPDTBT:PCBM)/TiOx/(PEDOT:PSS)/(P3HT:PC70BM)/TiOx/Al、という層構成のヘテロ接合型構造の太陽電池であり、光−電流変換効率は6%と報告されている。該直列型有機太陽電池においては、フラーレンとしてC60誘導体とC70誘導体の両方が用いられ、太陽光の広い波長範囲の利用が試みられている。
前記の該直列型有機太陽電池を構成する材料の略称は以下の通りである。
「ITO」は、indium tin oxideである。
「PEDOT」は、poly(3,4−ethylenedioxylenethiophene)である。
「PSS」は、polystylene sulfonic acidである。
「PCPDTBT」は、poly[2,6−(4,4−bis−(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene)−alt−4,7−(2,1,3−benzothiadiazole)]である。
「PCBM」は、[6,6]−phenyl−C61 butyric acid methyl esterである。
「P3HT」は、poly(3−hexylthiophene)である。
「PC70BM」は、[6,6]−phenyl−C71 butyric acid methyl esterである。
【0005】
非特許文献3には、短い長さのC60フラーレンナノウィスカーを用いた有機太陽電池について初めて報告されている。
この有機太陽電池においては、C60フラーレンナノウィスカー(C60ナノロッド)がP3OT(poly3−octylthiophene)層に分散されている。C60フラーレンナノウィスカーは、P3OT層内でランダムな方向に配向している。
【0006】
一方、本発明者らは、AAO(Anodic Aluminum Oxide)膜にC60フラーレンマイクロチューブ(フラーレンピラー)が垂直配向したフラーレンピラー付き基板を初めて開発した(特許文献1、非特許文献4参照)。
このフラーレンピラー付き基板は、該フラーレンピラーが半導体針状結晶であることから、電極を付けることにより太陽電池素子などに利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−51708号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.J.M.Halls,K.Pichler,R.H.Friend,S.C.Moratti and A.B.Holmes,“Exciton diffusion and dissociation in a poly(p−phenylenevinylene)/C60 heterojunction photovoltaic cell”,Appl.Phys.Lett.,68(1996)3120.
【非特許文献2】J.Y.Kim et al.,“Efficient Tandem Polymer Solar Cells Fabricated by All−Solution Processing”,Science 317(2007)222.
【非特許文献3】Prakash R.Somani,Savita P.Somani and Masayoshi Umeno,“Toward organic thick film solar cells:Three dimensional bulk heterojunction organic thick film solar cell using fullerene single crystal nanorods”,Appl.Phys.Lett.91,173503(2007).
【非特許文献4】Seung I.Cha,Kun’ichi Miyazawa and Je−Deok Kim,“Vertically Well−Aligned C60 Micro−tube Crystal Array Prepared Using Solution−Based One Step Process”,Chem.Mater.20(2008)1667−1669.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後、地球温暖化防止等を背景に太陽電池の需要の増大が見込まれるなか、特に有機太陽電池は、製法が簡便で生産コストを低くでき、着色性や柔軟性などを付与できる等の特長を有することから、次世代太陽電池の一つとして期待されている。
従来、有機太陽電池は、無機材料を用いたものに比べて光−電流変換効率が低い。これに対して、導電性層の導電性をさらに高め、光−電流変換効率をよりいっそう向上させることが必要である。
しかしながら、非特許文献3のフラーレンとしてC60フラーレンナノウィスカーを用いる技術では、太陽電池としての光−電流変換効率は良くない。また、特許文献1と非特許文献4のフラーレンピラー付き基板を用いる技術でも、光−電流変換効率の高い太陽電池を得るのは難しい。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、高導電性を有するフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに光−電流変換効率の高い太陽電池を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記のフラーレンピラー付き基板を、電子の集まりやすい集電電極として積極的に利用できれば光−電流変換効率の高い太陽電池を製造できること、を着想した。しかしながら、前記フラーレンピラーは、内部が半導体的な導電性を有するものの、表面は絶縁体化しているため、このままではフラーレンピラー付き基板を電極として用いることは困難であった。
本発明者らは検討により、フラーレンピラー表面に内部の導電性部分を露出させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
(1)基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備え、前記フラーレンピラーの少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーであることを特徴とするフラーレンピラー電極。
【0012】
(2)前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出していることを特徴とする、(1)記載のフラーレンピラー電極。
(3)前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として2つ以上露出していることを特徴とする、(2)記載のフラーレンピラー電極。
(4)前記基板は厚さ方向に孔部を有し、前記導電性フラーレンピラーの基端部が、該孔部の開口部の縁の一部と接するように配置されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極。
(5)前記孔部に金属又は合金材料が注入されていることを特徴とする、(4)記載のフラーレンピラー電極。
(6)前記基板は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、及び直線的な貫通孔が形成された多孔質体からなる群より選択される1種以上の材料からなることを特徴とする、(4)又は(5)記載のフラーレンピラー電極。
【0013】
(7)複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)とを有することを特徴とするフラーレンピラー電極の製造方法。
【0014】
(8)前記工程(ii)において、前記フラーレンピラーの少なくとも1つにイオンビームを照射して前記導電性部分を露出させる操作を行うことを特徴とする、(7)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(9)前記工程(ii)において、前記イオンビームの照射後に前記基板上に残存する前記導電性フラーレンピラーの体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラーの体積以上となるように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、(8)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(10)前記工程(ii)において、前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出するように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、(8)又は(9)記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
(11)前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有することを特徴とする、(7)〜(10)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【0015】
(12)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極を備えたことを特徴とする太陽電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高導電性を有するフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに光−電流変換効率の高い太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のフラーレンピラー電極の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】フラーレンピラーの一実施形態を示し、図2(a)は先端部側の平面図、図2(b)はX1方向から見た側面図、図2(c)はY1方向から見た側面図である。
【図3】導電性フラーレンピラーの一実施形態を示し、図3(a)は先端部側の平面図、図3(b)はX2方向から見た側面図、図3(c)はY2方向から見た側面図である。
【図4】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図4(a)は先端部側の平面図、図4(b)はX3方向から見た側面図、図4(c)はY3方向から見た側面図である。
【図5】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図5(a)は先端部側の平面図、図5(b)はX4方向から見た側面図、図5(c)はY4方向から見た側面図である。
【図6】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図6(a)は先端部側の平面図、図6(b)はX5方向から見た側面図、図6(c)はY5方向から見た側面図である。
【図7】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図7(a)は先端部側の平面図、図7(b)はX6方向から見た側面図、図7(c)はY6方向から見た側面図である。
【図8】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図8(a)は先端部側の平面図、図8(b)はX7方向から見た側面図、図8(c)はY7方向から見た側面図である。
【図9】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図9(a)は先端部側の平面図、図9(b)はX8方向から見た側面図、図9(c)はY8方向から見た側面図である。
【図10】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図10(a)は先端部側の平面図、図10(b)はX9方向から見た側面図、図10(c)はY9方向から見た側面図である。
【図11】導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図11(a)は先端部側の平面図、図11(b)はX10方向から見た側面図、図11(c)はY10方向から見た側面図である。
【図12】本発明のフラーレンピラー電極の第2の実施形態を示す側面図である。
【図13】図13(a)は、図12の一部を拡大した断面図であり、図13(b)は、図12におけるフラーレンピラー電極1を右側面方向から見た縦断面図である。
【図14】図14(a)は、基板とフラーレンピラーとの界面付近を拡大した断面図であり、図14(b)は、図14(a)の一部を拡大した断面図である。
【図15】フラーレンピラーにイオンビームを照射して導電性部分を露出させる操作の一実施形態を示す図であり、図15(a)はイオンビーム照射前のフラーレンピラーの側面図、図15(b)はイオンビーム照射中の状態を示す模式図、図15(c)はイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の側面図である。
【図16】本発明の太陽電池の実施形態例を示す断面図である。
【図17】AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
【図18】AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラーの先端部方向の上方から見たSEMによる写真である。
【図19】孔部の開口部の縁に直立した導電性フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
【図20】図19におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
【図21】図19に示す場合よりも、導電性フラーレンピラーにおける導電性部分の露出面積が小さい場合のSEMによる写真である。
【図22】図21におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<フラーレンピラー電極>
本発明のフラーレンピラー電極は、基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備える。
図1は、本発明のフラーレンピラー電極の第1の実施形態を示す側面図である。
第1の実施形態であるフラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30とを備えている。
フラーレンピラー電極1では、6本の導電性フラーレンピラー20と、6本のフラーレンピラー30とが一面10aに直立している。
【0019】
(基板)
基板10の材料としては、多孔質体、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、ポーラスシリコン等が挙げられる。
なかでも、基板10は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、及びメンブレンフィルターから選択される1種以上の材料からなることが好ましい。これらの材料を選択することにより、基板10の一面10aに、垂直な方向に柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30を容易に形成できる。加えて、基板の膜孔に入り込むように、導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30を形成できるため、これらのフラーレンピラーを基板10に強固に固定できる。
基板10の厚さは、充分な強度を確保できる点から、1〜1000μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0020】
(フラーレンピラー)
フラーレンピラーは、垂直配向したフラーレンの針状結晶からなり、その表面は絶縁性であって内部は半導体的導電性を有しているものが挙げられる。
フラーレンピラーの高さは、0.1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましい。該高さが好ましい下限値以上であると、導電性部分の露出面積が大きくなって導電性がより得られやすくなり、上限値以下であれば倒壊しにくい。
フラーレンピラーの太さは、基端部の径として0.05〜200μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましい。フラーレンピラーは、細くなるほど導電性が高まる。
【0021】
図2は、フラーレンピラーの一実施形態を示し、図2(a)は先端部側の平面図、図2(b)はX1方向から見た側面図、図2(c)はY1方向から見た側面図である。
フラーレンピラー30は、略六角柱であり、先端部30a側に中空部30hが形成されている。先端部30aには、中空部30hが開口している。また、基端部30bは、基板10の一面10aに強固に固定される。フラーレンピラー30の表面、すなわち、側面30sと先端面30cと中空部30hの周面は絶縁性であり、フラーレンピラー30の内部は半導体的導電性を有している。
「フラーレンピラーの側面」とは、柱状のフラーレンピラーにおける先端部側の面(先端面)及び基端部側の面、並びに中空部の周面以外の面を意味する(柱状のフラーレンピラーを角柱又は円柱とみなした際の2つの底面以外の外周面とする)。
なお、図2中の符号60〜69は六角形の各頂点を示す。
【0022】
(導電性フラーレンピラー)
本発明のフラーレンピラー電極においては、フラーレンピラーの少なくとも1つが、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーである。すなわち、基板の一面に、1本以上の導電性フラーレンピラーが直立していればよく、基板の一面に直立しているフラーレンピラーの全てが導電性フラーレンピラーであってもよい。
【0023】
図3は、導電性フラーレンピラーの一実施形態を示し、図3(a)は先端部側の平面図、図3(b)はX2方向から見た側面図、図3(c)はY2方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー20は、図2に示すフラーレンピラー30の側面30sに、内部の導電性部分が露出したものである。
該導電性部分は、略六角柱の先端部20a周縁上の二点51、52と、基端部20b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面20mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー20は、内側の中空部の周面20hも露出している。面20m以外の側面20sと先端面20cと周面20hは絶縁性を有している。基端部20bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0024】
(作用効果)
導電性フラーレンピラー20は、その表面に導電性部分が露出していることから、導電性部分が露出せずに表面全体が絶縁性のフラーレンピラー30に比べて、電子が集まりやすい。このため、本実施形態のフラーレンピラー電極1は、集電電極として作用し得ることにより高導電性を有する。
また、本実施形態のフラーレンピラー電極1は、図3中の二点51、52と一点53とを結ぶことで形成する面20mとして導電性部分が露出していることで、該導電性部分の露出面積が広くなっている。これにより、フラーレンピラー電極1は、導電性が容易に高まり、電極性能がより向上する。
【0025】
本発明のフラーレンピラー電極は、図1〜3に示した実施形態に限定されず、以下のようなものであってもよい。
導電性フラーレンピラー及びフラーレンピラーの形状は、略六角柱に限定されず、略円柱、楕円柱、四角柱、五角柱、七角柱、八角柱、十角柱、十二角柱等であってもよい。
フラーレンピラーは、中空部を有するものであっても中空部を有しないものであってもよい。
導電性フラーレンピラーにおける導電性部分が露出している面の形状は、曲面であってもよい。また、該導電性部分が露出している面の数は、2つ以上であってもよい。露出している面の数を2つ以上とすることにより、導電性部分の露出面積を広くでき、導電性がより高まる。
【0026】
図4〜11は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示す図である。これら実施形態の導電性フラーレンピラーを適宜選択することにより、導電性部分の露出面積、フラーレンピラー形状を制御できる。
図4〜11に示すいずれの導電性フラーレンピラーも、図2に示すフラーレンピラー30と同一の実施形態である略六角柱のフラーレンピラーが加工されたものである。
【0027】
図4は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図4(a)は先端部側の平面図、図4(b)はX3方向から見た側面図、図4(c)はY3方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー21において、導電性部分は、略六角柱の先端部21a周縁上の二点51、52と、基端部21b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面21mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点67の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー21は、内側の中空部の周面21hも露出している。面21m以外の側面21sと先端面21cと周面21hは絶縁性を有している。基端部21bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0028】
図5は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図5(a)は先端部側の平面図、図5(b)はX4方向から見た側面図、図5(c)はY4方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー22において、導電性部分は、略六角柱の先端部22a周縁上の二点51、52と、基端部22b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面22mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点67と頂点68との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー22は、内側の中空部の周面22hも露出している。面22m以外の側面22sと先端面22cと周面22hは絶縁性を有している。基端部22bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0029】
図6は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図6(a)は先端部側の平面図、図6(b)はX5方向から見た側面図、図6(c)はY5方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー23において、導電性部分は、略六角柱の先端部23a周縁上の二点51、52と、基端部23b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面23mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点68の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー23は、内側の中空部の周面23hも露出している。面23m以外の側面23sと先端面23cと周面23hは絶縁性を有している。基端部23bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0030】
図7は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図7(a)は先端部側の平面図、図7(b)はX6方向から見た側面図、図7(c)はY6方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー24において、導電性部分は、略六角柱の先端部24a周縁上の二点51、52と、基端部24b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面24mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61の位置、点52は頂点65の位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー24は、内側の中空部の周面24hも露出している。面24m以外の側面24sと先端面24cと周面24hは絶縁性を有している。基端部24bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0031】
図8は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図8(a)は先端部側の平面図、図8(b)はX7方向から見た側面図、図8(c)はY7方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー25において、導電性部分は、略六角柱の先端部25a周縁上の二点51、52と、基端部25b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面25mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62と頂点63との中間位置、点52は頂点63と頂点64との中間位置、点53は図2(c)における頂点66の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー25は、内側の中空部の周面25hも露出している。面25m以外の側面25sと先端面25cと周面25hは絶縁性を有している。基端部25bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0032】
図9は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図9(a)は先端部側の平面図、図9(b)はX8方向から見た側面図、図9(c)はY8方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー26において、導電性部分は、略六角柱の先端部26a周縁上の二点51、52と、基端部26b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面26mとして露出している。点51は図2(a)における頂点62の位置、点52は頂点64の位置、点53は図2(c)における頂点66と頂点67との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー26は、内側の中空部の周面26hも露出している。面26m以外の側面26sと先端面26cと周面26hは絶縁性を有している。基端部26bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0033】
図10は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図10(a)は先端部側の平面図、図10(b)はX9方向から見た側面図、図10(c)はY9方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー27において、導電性部分は、略六角柱の先端部27a周縁上の二点51、52と、基端部27b周縁上の一点53とを結ぶことで形成する平坦な面27mとして露出している。点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53は図2(c)における頂点66と頂点67との中間位置と同じである。
導電性フラーレンピラー27は、内側の中空部の周面27hも露出している。面27m以外の側面27sと先端面27cと周面27hは絶縁性を有している。基端部27bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
【0034】
図11は、導電性フラーレンピラーの他の実施形態を示し、図11(a)は先端部側の平面図、図11(b)はX10方向から見た側面図、図11(c)はY10方向から見た側面図である。
導電性フラーレンピラー28において、導電性部分は、2つの平坦な面28m1、28m2として露出している。
面28m1は、略六角柱の先端部28a周縁上の二点51、52と、基端部28b周縁上の一点53aとを結ぶことで形成する面である。
面28m2は、略六角柱の先端部28a周縁上の二点51、52と、基端部28b周縁上の一点53bとを結ぶことで形成する面である。
点51は図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、点52は頂点64と頂点65との中間位置、点53aは図2(c)における頂点66の位置、点53bは図2(c)における頂点69の位置と同じである。
導電性フラーレンピラー28は、内側の中空部の周面28hも露出している。面28m1と面28m2以外の側面28sと周面28hは絶縁性を有している。基端部28bは、基板10の一面10aに強固に固定される。
図11に示す実施形態の導電性フラーレンピラー28は特に導電性部分の露出面積が広いため、フラーレンピラー電極の導電性がさらに高まる。
【0035】
本発明のフラーレンピラー電極は、図12に示す実施形態のものも好ましい。
図12は、本発明のフラーレンピラー電極の第2の実施形態を示す側面図である。
第2の実施形態であるフラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20及びフラーレンピラー30とを備えている。図12に示すフラーレンピラー電極1では、6本の導電性フラーレンピラー20と、6本のフラーレンピラー30とが一面10aに直立している。基板10には、厚さ方向に孔部10hが形成されている。
【0036】
図13(a)は、図12の一部を拡大した断面図であり、図13(b)は、図12におけるフラーレンピラー電極1を右側面方向から見た縦断面図である。
基板10には、厚さ方向に、一面10aと他面10bとを連通する孔部10hが形成されている。基板10に孔部10hが形成されていることにより、孔部10hに導電性材料を注入して容易に一面10a側と他面10b側とを導通できる。
孔部10hは、一面10aと他面10bとを連通する直線的な貫通孔であることが好ましい。孔部10hの形状としては、四角柱状、円柱状、楕円柱状などが挙げられる。孔部10hの一面10a側の開口部12の形状は、平面視略四角形状、平面視円形状、平面視楕円形状などであればよい。
開口部12の開口径は、基端部20bの径(最も長い距離とする。)に対して50〜150%とすることが好ましい。該開口径が基端部20bの径に対して50%未満の場合には、導電性フラーレンピラー20との接触が充分でない場合が発生しやすい。150%超の場合には、導電性フラーレンピラー20が倒壊するおそれがある。
【0037】
第2の実施形態のフラーレンピラー電極1においては、孔部10hに金属又は合金材料が注入されて、金属部11が形成されている。この金属部11は、導電性フラーレンピラー20と、他面10b側に設けられる金属板とを導通する配線になり得る。
金属部11を形成する金属、合金材料としては、Pt、Al、Au又はこれらを混合したもの等が挙げられる。
図13(b)では、導電性フラーレンピラー20は、その基端部20bが、孔部10hの開口部12の縁12aの一部と接するように配置されている。このように導電性フラーレンピラー20を配置することにより、導電性フラーレンピラー20と他面10bとが金属部11を介して導通し得る。
【0038】
また、本発明のフラーレンピラー電極は、その全体が前記の金属又は合金材料によって被覆されたものでもよい。
【0039】
<フラーレンピラー電極の製造方法>
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法は、複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)とを有する。
【0040】
[工程(i)]
工程(i)では、複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する。
該フラーレンピラー付き基板は、前述した特許文献1、非特許文献4に記載されている方法に準じて作製することができる。その一例として、基板として用いる表裏貫通型多孔質体の表面に、フラーレン分子を含有した良溶媒を配置し、裏面に前記フラーレンに対する貧溶媒を配置し、この多孔質体の表裏を貫通する孔を通して前記貧溶媒を前記良溶媒側に注入することで、前記孔から良溶媒側に向かって複数の柱状のフラーレンピラーを析出させて成長させることにより作製できる。なお、フラーレンピラーの表面(側面、先端面、中空部の周面)は、大気中の酸素を吸着して絶縁体化している。
【0041】
図14(a)は、基板とフラーレンピラーとの界面付近を拡大した断面図であり、図14(b)は、図14(a)の一部を拡大した断面図である。
図14(a)では、1本のフラーレンピラー30が、一面10aに対して垂直な方向に直立している。フラーレンピラー30は、垂直配向した無数のフラーレン針状結晶30xの束から構成されている。
基板10は、表裏貫通型多孔質体からなり、無数の膜孔15を有している。基板10とフラーレンピラー30との界面付近で、膜孔15は、一面10aに対して略垂直方向に開口している。
図14(b)では、フラーレンピラー30を構成するフラーレンが基板10内部にも浸透し、該多孔質体の骨格の一部又は全部を被覆している。すなわち、フラーレン針状結晶30xは、基板10内部にまで連続して形成されている。一方、フラーレンピラー30は、前記界面付近で略垂直方向に開口した膜孔15に沿うように、連続的に析出して成長し、一面10aに直立している。なお、基板10内部に浸透したフラーレンは、基板10の他面側に達していてもよい。
【0042】
[工程(ii)]
工程(ii)では、前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する。これにより、フラーレンピラー電極が得られる。
フラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる方法としては、イオンビームを照射する方法、フラーレンを溶解する溶媒(トルエン、ベンゼン等)でフラーレンピラーの表面層を溶解除去する方法等が挙げられる。なかでも、操作が簡便でかつ制御が容易であることから、イオンビームを照射する方法が好ましい。
【0043】
図15は、フラーレンピラーにイオンビームを照射して導電性部分を露出させる操作の一実施形態を示す図であり、図15(a)はイオンビーム照射前のフラーレンピラーの側面図、図15(b)はイオンビーム照射中の状態を示す模式図、図15(c)はイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の側面図である。
図15(a)に示すフラーレンピラー30は、図2に示すフラーレンピラー30と同一の実施形態のものである。
図15(b)では、フラーレンピラー30の先端部30a側から基端部30b側へイオンビームが照射されている。具体的には、先端部30a周縁上の任意の二点(図2(a)における頂点61と頂点62との中間位置、頂点64と頂点65との中間位置とそれぞれ同じ位置)と、基端部30b周縁上の任意の一点53a(図2(c)における頂点66の位置と同じ位置)とを通過するように、すなわち、先端部30a周縁上の任意の該二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53aとを結ぶことで形成する面として導電性部分が露出するように、イオンビームが矢印方向に照射されている。
イオンビームの種類としては、ガリウムイオンビーム、アルゴンイオンビーム、アルゴン中性原子ビーム等が挙げられる。
イオンビームの照射は、集束イオンビーム加工装置(FIB、日立NB5000)等を用いて行うことができる。
図15(c)では、前記のイオンビーム照射によって、図3に示す導電性フラーレンピラーと同一の実施形態の、側面に導電性部分が平坦な面20mとして露出した導電性フラーレンピラー20が形成されている。
【0044】
また、図15に示す操作においては、イオンビームの照射後に基板上に残存する導電性フラーレンピラー20の体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラー30dの体積以上となるように、前記イオンビームの照射が行われている。
このように、導電性フラーレンピラー20の体積を制御することにより、電極として利用する上で充分な大きさを確保できる。また、強度も高まる。
【0045】
(作用効果)
前述したように、フラーレンピラー30の表面は絶縁性であるが、本発明に係る製造方法によれば、表面に導電性部分が露出した導電性フラーレンピラー20を形成できる。これにより、フラーレンピラー付き基板を、高導電性を有するものにでき、電子の集まりやすい集電電極として利用可能なフラーレンピラー電極を製造することができる。
また、フラーレンピラー30の表面に導電性部分を露出させる際、先端部30a周縁上の任意の二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53aとを結ぶ面として導電性部分を露出させることにより、導電性部分の露出面積の広いフラーレンピラー電極を容易に製造できる。
【0046】
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法において、フラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる操作は、図15に示す操作に限定されず、以下のようなものであってもよい。
基板に対して垂直方向にイオンビームを照射する操作により、図4〜6に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
また、基板に対するイオンビームの照射角度、照射位置を変化させることにより、図7〜10に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
また、図15(b)において、さらに、先端部30a周縁上の任意の前記二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53bとを通過するように、すなわち、先端部30a周縁上の任意の該二点と、基端部30b周縁上の任意の一点53bとを結ぶことで形成する面として導電性部分が露出するように、イオンビームを照射する操作により、図11に示す実施形態の導電性フラーレンピラーを形成することができる。
図3〜11に示す実施形態の導電性フラーレンピラーにおいて導電性部分が露出した面は、いずれも平坦な面として形成されているが、曲面となるように形成してもよい。加えて、導電性部分が露出した面を、導電性フラーレンピラーの側面に2つ以上形成してもよい。
【0047】
[工程(iii)]
本発明のフラーレンピラー電極の製造方法は、工程(i)及び工程(ii)に加えて、前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有してもよい。
この工程(iii)の操作を行うことにより、図12に示す実施形態と同様のフラーレンピラー電極、すなわち、他面10b側に設けられる金属板と導電性フラーレンピラー20とを導通する配線の役割を果たす基板10を備えたフラーレンピラー電極1を製造できる。
基板10の厚さ方向に孔部10hを形成する方法としては、基板にイオンビームを照射する方法、水酸化ナトリウム溶液等の腐食性溶液を用いて基板の一部を溶解する方法等が挙げられる。なかでも、操作が簡便でかつ制御が容易であることから、イオンビームを照射する方法が好ましい。
なお、前記基板の厚さ方向に孔部を形成する操作は、工程(ii)におけるフラーレンピラーの表面に導電性部分を露出させる操作と同時に行うこともできる。
孔部10hに金属又は合金材料を注入する方法としては、金属部11を容易に形成できることから、蒸着法、スパッター法等が挙げられる。
孔部10hは、導電性フラーレンピラー20の基端部20bが、孔部10hの開口部12の縁12aの一部と接する位置に形成することが好ましい。これにより、導電性フラーレンピラー20と他面10bとが金属部11を介して導通し得る。
【0048】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、上記本発明のフラーレンピラー電極を備えたものである。
図16は、本発明の太陽電池の実施形態例を示す断面図である。
本実施形態の太陽電池100は、第1の電極40と第2の電極60とからなる一対の電極間に、第1の電極40と隣接するフラーレンピラー電極1と、フラーレンピラー電極1と第2の電極60とそれぞれ隣接する導電性ポリマー膜50とから概略構成されている。第1の電極40と第2の電極60とは配線70で接続され、第2の電極60から第1の電極40へ電流が流れるようになっている。
【0049】
(フラーレンピラー電極)
本実施形態の太陽電池100において、フラーレンピラー電極1は、基板10と、基板10の一面10aに垂直な方向に直立した複数の柱状の導電性フラーレンピラー20とから構成されている。導電性フラーレンピラー20を構成するフラーレン針状結晶は、基板10内部にまで成長している。この基板10内部に成長したフラーレン針状結晶は、第1の電極40にまで達している。すなわち、導電性フラーレンピラー20と第1の電極40とは導通し得る状態になっている。
【0050】
(導電性ポリマー膜)
導電性ポリマー膜50を構成する材料には、光−電流変換効率が高まりやすいことから、可視光から赤外光領域の光に対して吸光度が高いものを用いることが好ましい。
このような材料としては、PPV(poly(p−phenylenevinylene))、PEDOT、PCPDTBT、P3HT、PEDOT:PSS、PCPDTBT:PCBM、P3HT:PC70BM等が好適なものとして挙げられる。
【0051】
(第1の電極)
第1の電極40には、第2の電極に用いられる材料に対して仕事関数の低い材料を用いることが好ましい。これにより、光−電流変換効率がより高まりやすくなる。
第1の電極40に用いられる材料としては、Ag、Mg、Al、Au、Cu、W、Pt等が好適なものとして挙げられる。これらの1種以上を用いることにより、基板10と良好な接合体を容易に形成できる。
【0052】
(第2の電極)
第2の電極60には、光の透過率の高い材料が用いられる。
第2の電極60に用いられる材料としては、ITO、IZO(indium zinc oxide)等が好適なものとして挙げられる。これらの材料は、可視光領域の光に対する透過率の高い材料なので、導電性ポリマー膜50内に光を取り込み易く、光−電流変換効率がより高まりやすい。
なお、第2の電極60は、Au等の薄膜を形成して金属電極薄膜からなる透明電極としてもよい。
【0053】
(太陽電池の製造方法)
本実施形態の太陽電池100は、たとえば以下のようにして製造される。
まず、基板10の他面10bに、蒸着法によってAl等の薄膜からなる第1の電極40を形成する。
次に、フラーレンピラー電極1の一面10a側に、導電性フラーレンピラー20の全体を被覆するように導電性ポリマー膜50を積層し、導電性ポリマー膜50上に第2の電極60となるITO膜等を積層する。
そして、第1の電極40と第2の電極60とを配線70で接続することにより太陽電池100が製造される。
【0054】
(作用効果)
本実施形態の太陽電池100においては、光が第2の電極60を透過して導電性ポリマー膜50内に入射することにより、導電性ポリマー膜50内で電子とホール(正孔)とが生成する。そして、電子は第1の電極40へ、ホールは第2の電極60へとそれぞれ移動し、第1の電極40と第2の電極60との間で電界を生じる。この光電効果により、第1の電極40と第2の電極60とを接続した配線70に電流を流すことができる。
本実施形態の太陽電池100は、電子の集電電極となるフラーレンピラー電極1を備えている。太陽電池100においては、基板10に垂直な方向に林立した導電性フラーレンピラー20を有することにより、導電性フラーレンピラー20と導電性ポリマー膜50との接触面積を飛躍的に大きくできる、導電性ポリマー膜50内での光の散乱が生じにくいため、光の拡散を長くできる、及び、導電性ポリマー膜50の膜厚を厚くできる。加えて、フラーレンピラー電極1は、導電性フラーレンピラー20の表面に導電性部分が露出していることにより高導電性を有している。
このように、本実施形態の太陽電池100によれば、光の捕集効率及び導電性に優れることから、光−電流変換効率を高くできる。
【0055】
たとえば下記の太陽電池(P)と太陽電池(Q)とを比較すると、波長400〜800nmの範囲の光を所定の強度で各太陽電池に10分間照射した後、光電流値を測定した場合、太陽電池(P)は、太陽電池(Q)よりも、光電流値が大きく、光−電流変換効率が高いという効果が得られること、が期待される。
太陽電池(P):本発明のフラーレンピラー電極を用い、非特許文献3に記載の方法と同様にして製造した有機ヘテロ接合型太陽電池。
太陽電池(Q):非特許文献3に記載の方法と同様にして作製したランダム配向のフラーレンナノウィスカーを用いた有機太陽電池。
かかる効果が得られる理由は、太陽電池(P)においてはフラーレンピラーを基板に対して垂直配向成長させて、フラーレンピラーによる導電性ポリマー膜中への光の拡散の妨害が生じない構造であるのに対し、太陽電池(Q)ではフラーレンナノウィスカーのランダムな配向により導電性ポリマー膜中への光の拡散が妨害される可能性があること;太陽電池(P)ではフラーレンピラーの表面に導電性部分が露出していることにより、電子が集まりやすいこと、加えて、太陽電池(P)では導電性ポリマーにおける電子・ホールの発生確率が高まっていること、が推測される。
【実施例】
【0056】
本発明のフラーレンピラー電極及びその製造方法、並びに太陽電池は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。以下に、本発明のフラーレンピラー電極についての具体例を示す。
【0057】
(実施例:フラーレンピラー電極の製造例)
[工程(i)]
まず、直径25mm、孔径20nm又は200nmの市販の陽極酸化多孔質アルミナ膜基板(Anodic Aluminum Oxide(AAO)膜基板;円板状)を用意した(商品名Anodisc25、膜孔径200nm又は20nm、Whatman Inc.)。
次に、AAO膜基板上にC60フラーレン飽和トルエン溶液を配置した。そして、このAAO膜基板の裏側から、C60フラーレン飽和トルエン溶液にイソプロピルアルコール(IPA)をゆっくりと注入してC60フラーレンを針状に析出させ、C60フラーレン分子からなるフラーレンピラーを林立成長させてフラーレンピラー付き基板を作製した。
【0058】
図17は、AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。
図18は、AAO膜基板上に垂直に配向したC60フラーレンピラーの先端部方向の上方から見たSEMによる写真である。
図17、18では、AAO膜基板上に、六角柱状のフラーレンピラーが垂直な方向に林立している。各フラーレンピラーの先端部は開口し、先端部側には中空部が存在している。
【0059】
[工程(ii)]
次に、集束イオンビーム加工装置(FIB、日立NB5000)を用いて、AAO膜基板上に垂直配向成長させたフラーレンピラーに対してガリウムイオンビームを照射することによってその側面を削り、内部の半導体的導電性部分を露出させた。
その際、AAO膜基板に対してもガリウムイオンビームを照射し、AAO膜基板の厚さ方向に略四角柱状の孔部を、ガリウムイオンビーム照射後のフラーレンピラー(導電性フラーレンピラー)の基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した。
【0060】
図19は、孔部の開口部の縁に直立した導電性フラーレンピラー側面の走査電子顕微鏡(SEM)による写真である。この導電性フラーレンピラー20は、図10に示す実施形態の導電性フラーレンピラーと同様の形態のものである。
図19に示すように、導電性フラーレンピラー20内側の中空部は、AAO膜基板10近くの側では形成されておらず、先端部側で形成されていた。これは、フラーレンピラーはC60フラーレンが固体として析出しながら林立成長して形成されるため、先端部側ほど、溶液中のC60フラーレン濃度が低い状態で析出が起こり、内部まで充填されるほど充分にC60フラーレンが供給されなかったことに起因する、と考えられる。
【0061】
図20は、図19におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
図20において、導電性フラーレンピラー20は、垂直配向した無数のフラーレン針状結晶の束から構成されていることが分かる。また、該フラーレン針状結晶は、AAO膜基板10内部にまで連続して形成されていることも分かる。
【0062】
図21は、図19に示す場合よりも、導電性フラーレンピラーにおける導電性部分の露出面積が小さい場合のSEMによる写真である。この導電性フラーレンピラー20は、導電性部分が、おおよそ、図2(a)における頂点60と頂点61との略中点と、頂点60と頂点65との略中点と、図2(c)における頂点60と頂点66との略中点とを結ぶ面として露出している。
図22は、図21におけるAAO膜基板と導電性フラーレンピラーとの界面付近のSEMによる写真である。
図22において、AAO膜基板10には、その内部にまでC60フラーレンが浸透していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフラーレンピラー電極は、高導電性を有し、これを用いて光−電流変換効率の高い太陽電池を提供することができる。本発明のフラーレンピラー電極及びその製造方法は、太陽電池産業、電子デバイス、電子ディスプレイ産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0064】
1 フラーレンピラー電極、10 基板、10a 一面、10b 他面、11 金属部、12 開口部、15 膜孔、20 導電性フラーレンピラー、20a 先端部、20b 基端部、20c 先端面、30 フラーレンピラー、40 第1の電極、50 導電性ポリマー膜、60 第2の電極、70 配線、100 太陽電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備え、
前記フラーレンピラーの少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーであることを特徴とするフラーレンピラー電極。
【請求項2】
前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出していることを特徴とする、請求項1記載のフラーレンピラー電極。
【請求項3】
前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として2つ以上露出していることを特徴とする、請求項2記載のフラーレンピラー電極。
【請求項4】
前記基板は厚さ方向に孔部を有し、前記導電性フラーレンピラーの基端部が、該孔部の開口部の縁の一部と接するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極。
【請求項5】
前記孔部に金属又は合金材料が注入されていることを特徴とする、請求項4記載のフラーレンピラー電極。
【請求項6】
前記基板は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、及び直線的な貫通孔が形成された多孔質体からなる群より選択される1種以上の材料からなることを特徴とする、請求項4又は請求項5記載のフラーレンピラー電極。
【請求項7】
複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、
前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)と
を有することを特徴とするフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項8】
前記工程(ii)において、前記フラーレンピラーの少なくとも1つにイオンビームを照射して前記導電性部分を露出させる操作を行うことを特徴とする、請求項7記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項9】
前記工程(ii)において、前記イオンビームの照射後に前記基板上に残存する前記導電性フラーレンピラーの体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラーの体積以上となるように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、請求項8記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項10】
前記工程(ii)において、前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出するように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、請求項8又は請求項9記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項11】
前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極を備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項1】
基板と、該基板の一面に垂直な方向に直立した複数の柱状のフラーレンピラーとを備え、
前記フラーレンピラーの少なくとも1つは、導電性部分が露出している導電性フラーレンピラーであることを特徴とするフラーレンピラー電極。
【請求項2】
前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出していることを特徴とする、請求項1記載のフラーレンピラー電極。
【請求項3】
前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として2つ以上露出していることを特徴とする、請求項2記載のフラーレンピラー電極。
【請求項4】
前記基板は厚さ方向に孔部を有し、前記導電性フラーレンピラーの基端部が、該孔部の開口部の縁の一部と接するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極。
【請求項5】
前記孔部に金属又は合金材料が注入されていることを特徴とする、請求項4記載のフラーレンピラー電極。
【請求項6】
前記基板は、陽極酸化多孔質アルミナ膜、メンブレンフィルター、及び直線的な貫通孔が形成された多孔質体からなる群より選択される1種以上の材料からなることを特徴とする、請求項4又は請求項5記載のフラーレンピラー電極。
【請求項7】
複数の柱状のフラーレンピラーが基板の一面に垂直な方向に直立したフラーレンピラー付き基板を作製する工程(i)と、
前記フラーレンピラーの少なくとも1つに導電性部分を露出させて導電性フラーレンピラーを形成する工程(ii)と
を有することを特徴とするフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項8】
前記工程(ii)において、前記フラーレンピラーの少なくとも1つにイオンビームを照射して前記導電性部分を露出させる操作を行うことを特徴とする、請求項7記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項9】
前記工程(ii)において、前記イオンビームの照射後に前記基板上に残存する前記導電性フラーレンピラーの体積が、該照射によって除去されるフラーレンピラーの体積以上となるように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、請求項8記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項10】
前記工程(ii)において、前記導電性部分が、前記導電性フラーレンピラーの先端部周縁上の任意の二点と、基端部周縁上の任意の一点とを結ぶ面として露出するように、前記イオンビームの照射を行うことを特徴とする、請求項8又は請求項9記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項11】
前記基板の厚さ方向に孔部を、前記導電性フラーレンピラーの基端部が該孔部の開口部の縁の一部と接するように形成した後、該孔部に金属又は合金材料を注入する工程(iii)を有することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレンピラー電極を備えたことを特徴とする太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−38331(P2013−38331A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175088(P2011−175088)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】
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