説明

フラーレン共重合体及びその製造方法

【課題】 薄膜形成能、賦形可能であり、従来法に対し短時間でフラーレン含有成形体を得ることができる新規なフラーレン共重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記の構造式(1)で示されるフラーレン共重合体およびその製造方法。
(R1)j[Cn]((M)m)k (1)
(ここで、R1は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、Mは重合性単量体残基、jは1〜11の正の数、mは10以上の正の数、kは1〜11の正の数を示す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フラーレンは非線型光学効果を示す化合物であり、種々の電子デバイスへの応用が考えられており、本発明は、薄膜形成能、賦形可能な重合体として、特に次世代大容量光通信システムに不可欠の光スイッチ材料としての利用が期待される新規なフラーレン共重合体及びその製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
フラーレン誘導体及びフラーレン共重合体としては、感光性を有するフラーレン−オルガノシラン共重合体(例えば、特許文献1参照。)、アニオン化した部位を持つフラーレン誘導体、水酸基含有フラーレン或いはエポキシ基含有フラーレン重合体(例えば、特許文献2参照。)、ジカルボキシル化フラーレンのビスシクロプロポネイトアダクトモノマーを芳香族ジアミンと溶液中で110℃の温度下3時間、重縮合させて得られるフラーレン−ポリアミド共重合体(例えば、特許文献3参照。)、(メタ)アクリロイル基を構造内に有するフラーレン誘導体、重合体及び硬化物(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。また、水酸基含有フラーレン、ポリアルキレンオキシドグリコール、及びジイソシアネート化合物を重合して得られるフラーレン−ポリウレタン共重合体(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。さらに、フラーレン−オルガノシロキサン共重合体(例えば、特許文献6参照。)、フラーレンにアルコキシ基、水酸基、酸無水物基を導入し、ポリアミック酸を合成した後、得られるフラーレン−ポリイミド共重合体(例えば、特許文献7参照。)、オルガノアニリノフラーレン−ジメチルシロキサントリブロック共重合体(例えば、非特許文献1参照。)、バックミンスターフラーレンC60含有シロキサンハイブリッド(例えば、非特許文献2参照。)、ゾルゲル法によるC60−シリカハイブリッド材(例えば、非特許文献3参照。)等が開示されている。
【0003】
また、フラーレン分子単独で任意の形の成形体を得ることが難しいため、無機、或いは有機ポリマーと複合させて所望の形状のフラーレン含有高分子を得る方法としてゾルゲル法によるフラーレン−シロキサンハイブリッド材料が提案(例えば、非特許文献1,2,3,4参照。)されているが、短時間で成形体を得るのが難しく経済性に問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−62105号公報
【特許文献2】特開2003−238692号公報
【特許文献3】特開平10−45905号公報
【特許文献4】特開平8−283199号公報
【特許文献5】特開平8−183830号公報
【特許文献6】特開平9−157398号公報
【特許文献7】特開平9−301943号公報
【非特許文献1】ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス誌、A40巻、No.12、1263頁、2003年
【非特許文献2】ACSシンポジウムシリーズ、572巻、「無機及び有機金属ポリマーII」、9章、92頁、1994年
【非特許文献3】ジャーナルオブゾル−ゲルサイエンスアンドテクノロジー誌、22巻、219頁、2001年
【非特許文献4】第26回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム 講演予稿集、64頁、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラーレンを機能材料として利用するには、フラーレン分子単独で任意の形の成形体とするのが難しいため、望ましい形へ成形する方法が必要となる。一方、フラーレンは凝集力が強く、化学修飾していないフラーレンを樹脂へ分散させるのは困難である。このような観点からフラーレンの化学修飾が検討されてきたが、前述したように、いずれも煩雑な反応が必要であり、経済的にフラーレンを含有する成形体を得る方法が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決し、薄膜形成能、賦形可能であり、従来法に対し短時間でフラーレン含有成形体を得ることができる新規なフラーレン共重合体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる問題点を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するフラーレン共重合体が、薄膜形成能、賦形可能であり、短時間でフラーレンを含有する成形体とすることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は下記の構造式(1)で示されることを特徴とするフラーレン共重合体。
【0009】
(R1)j[Cn]((M)m)k (1)
(ここで、R1は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、Mは重合性単量体残基、jは1〜11の正の数、mは10以上の正の数、kは1〜11の正の数を示す。)。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のフラーレン共重合体は、上記構造式(1)で示される構造を有するものであり、ここで、R1は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、Mは重合性単量体残基、jは1〜11の正の数、mは10以上の正の数、kは1から11の正の数を示す。
【0012】
ここで、R1は、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに直接結合している炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキルとしては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、s−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。そして、jは1〜11の正の数であり、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに直接結合している該R1の数を示すものである。
【0013】
また、Mは本発明のフラーレン共重合体の共重合成分を構成する重合性単量体残基であり、該重合性単量体残基としては、重合反応により重合体を構成する重合性単量体の残基であればいかなるものでもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート類;メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類等から誘導される残基が挙げられ、その中でも特に成形加工性に優れるフラーレン共重合体となることから、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルビニルケトンがらなる群より選ばれる少なくとも1種以上の重合性単量体残基であることが好ましい。そして、mは該Mで示される重合性単量体残基よりなる共重合成分の重合度を表し、mは10以上の正の数であり、その中でも特に成形加工性、機械特性に優れるフラーレン共重合体となることから90〜5000であることが好ましい。kは1〜11の正の数であり、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに直接結合している共重合成分である該(M)mの数を示すものである。
【0014】
そして、Cnは炭素数60以上のフラーレンを示すものであり、nは60以上の正の数である。該Cnとしては、一般的にフラーレンと称される範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばC60フラーレン、C70フラーレン、C74フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C82フラーレン等を挙げることができ、その中でも特に光学的あるいは電気的性質に優れるフラーレン共重合体となることから、X@Cnとして示される不活性ガス、金属原子を内包するフラーレンであることが好ましく、該X@Cnとしては、例えばHe@C60,Ar@C60,Li@C60,Kr@C60,Xe@C60,Li@C70,Ca@C70,Yb@C70,Ca@C74,Yb@C74,Eu@C82,La@C82,Yb@C82,Ca@C82,Ce@C82,Gd@C82,Tm@C82,Dy@C82,Pr@C82,Tm@C82等が例示される。なお、フラーレン内部に不活性ガス、金属原子を2個以上内包することも可能である。これらフラーレン、不活性ガス、金属を内包するフラーレンは、例えば「ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス誌、A40巻、No.12、1263頁、2003年」に記載の方法により合成することができる。
【0015】
本発明のフラーレン共重合体としては、上記した構造式(1)で示されるものであれば如何なるものでもよく、その具体例としては(n−ブチル)C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)C60(ポリスチレン)、(エチル)C60(ポリスチレン)、(エチル)C60(ポリスチレン)、(エチル)C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリスチレン)、(エチル)He@C60(ポリスチレン)、(エチル)He@C60(ポリスチレン)、(エチル)He@C60(ポリスチレン)、(n−ブチル)C84(ポリスチレン)、(n−ブチル)C84(ポリスチレン)、(n−ブチル)C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)C84(ポリスチレン)、(エチル)C84(ポリスチレン)、(エチル)C84(ポリスチレン)、(エチル)C84(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリスチレン)、(エチル)He@C84(ポリスチレン)、(エチル)He@C84(ポリスチレン)、(エチル)He@C84(ポリスチレン)等のフラーレン−スチレン共重合体;(n−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C60(ポリブタジエン)、(エチル)C60(ポリブタジエン)、(エチル)C60(ポリブタジエン)、(エチル)C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C60(ポリブタジエン)、(エチル)He@C60(ポリブタジエン)、(エチル)He@C60(ポリブタジエン)、(エチル)He@C60(ポリブタジエン)、(n−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(n−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(n−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)C84(ポリブタジエン)、(エチル)C84(ポリブタジエン)、(エチル)C84(ポリブタジエン)、(エチル)C84(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(n−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(s−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(t−ブチル)He@C84(ポリブタジエン)、(エチル)He@C84(ポリブタジエン)、(エチル)He@C84(ポリブタジエン)、(エチル)He@C84(ポリブタジエン)等のフラーレン−ブタジエン共重合体;(n−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C60(ポリイソプレン)、(エチル)C60(ポリイソプレン)、(エチル)C60(ポリイソプレン)、(エチル)C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C60(ポリイソプレン)、(エチル)He@C60(ポリイソプレン)、(エチル)He@C60(ポリイソプレン)、(エチル)He@C60(ポリイソプレン)、(n−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(n−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(n−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)C84(ポリイソプレン)、(エチル)C84(ポリイソプレン)、(エチル)C84(ポリイソプレン)、(エチル)C84(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(n−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(s−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(t−ブチル)He@C84(ポリイソプレン)、(エチル)He@C84(ポリイソプレン)、(エチル)He@C84(ポリイソプレン)、(エチル)He@C84(ポリイソプレン)等のフラーレン−イソプレン共重合体;等をあげることができ、その中でも特に成形加工性に優れるフラーレン共重合体となることからフラーレン−スチレン共重合体であることが好ましい。
【0016】
本発明のフラーレン含有重合体の製造方法としては、構造式(1)で示されるフラーレン共重合体を得ることができる限りにおいて如何なる方法を用いてもよく、その製造方法としては、例えば下記の構造式(2)で示されるリチオ化フラーレンをアニオン系重合開始剤として用い、該リチオ化フラーレンの存在下、重合性単量体の重合反応を行う方法が挙げられる。
【0017】
(R2)d[Cn]d−・f(Li) (2)
(ここで、R2は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、dは1〜11の正の数、fは1〜11の正の数を示す。)。
【0018】
ここで、アニオン系重合開始剤として用いられるリチオ化フラーレンは、例えば「アンゲバンテ・ヘミー誌、31巻、No.6、766項、1992年」に記載の方法の通り、有機溶剤へ溶解させたフラーレンとアルキルリチウムを反応させるリチオ化反応により容易に得ることができる。そして、R2は、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに直接結合している炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキルとしては、例えばR1と同様のものを例示することができる。dは1〜11の正の数であり、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに直接結合している該R2の数を示すものである。また、fは1〜11の正の数であり、Cnで示される炭素数60以上のフラーレンに配位しているLiの数を示すものであり、該リチオ化フラーレンをアニオン系重合開始剤として用い重合性単量体の重合反応を行った場合、該fの数だけ重合体がフラーレンに結合するものである。
【0019】
そして、Cnは炭素数60以上のフラーレンを示すものであり、nは60以上の正の数である。該Cnとしては、一般的にフラーレンと称される範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、上記したものと同様のものを挙げることができる。
【0020】
また、リチオ化フラーレンとしては、上記した構造式(2)で示されるものであれば如何なるものでもよく、その具体例としては(n−ブチル)C60・(Li)、(n−ブチル)C602−・2(Li)、(n−ブチル)C603−・3(Li)、(s−ブチル)C60・(Li)、(s−ブチル)C602−・2(Li)、(s−ブチル)C603−・3(Li)、(t−ブチル)C60・(Li)、(t−ブチル)C602−・2(Li)、(t−ブチル)C603−・3(Li)、(エチル)C60・(Li)、(エチル)C602−・2(Li)、(エチル)C603−・3(Li)、(n−ブチル)He@C60・(Li)、(n−ブチル)He@C602−・2(Li)、(n−ブチル)He@C603−・3(Li)、(s−ブチル)He@C60・(Li)、(s−ブチル)He@C602−・2(Li)、(s−ブチル)He@C603−・3(Li)、(t−ブチル)He@C60・(Li)、(t−ブチル)He@C602−・2(Li)、(t−ブチル)He@C603−・3(Li)、(エチル)He@C60・(Li)、(エチル)He@C602−・2(Li)、(エチル)He@C603−・3(Li)、(n−ブチル)C84・(Li)、(n−ブチル)C842−・2(Li)、(n−ブチル)C843−・3(Li)、(s−ブチル)C84・(Li)、(s−ブチル)C842−・2(Li)、(s−ブチル)C843−・3(Li)、(t−ブチル)C84・(Li)、(t−ブチル)C842−・2(Li)、(t−ブチル)C843−・3(Li)、(エチル)C84・(Li)、(エチル)C842−・2(Li)、(エチル)C843−・3(Li)、(n−ブチル)He@C84・(Li)、(n−ブチル)He@C842−・2(Li)、(n−ブチル)He@C843−・3(Li)、(s−ブチル)He@C84・(Li)、(s−ブチル)He@C842−・2(Li)、(s−ブチル)He@C843−・3(Li)、(t−ブチル)He@C84・(Li)、(t−ブチル)He@C842−・2(Li)、(t−ブチル)He@C843−・3(Li)、(エチル)He@C84・(Li)、(エチル)He@C842−・2(Li)、(エチル)He@C843−・3(Li)等が挙げられ、その中でもその安定性に優れ、重合反応の効率に優れることから、(n−ブチル)C60・(Li)、(n−ブチル)C602−・2(Li)、(n−ブチル)C603−・3(Li)、(s−ブチル)C60・(Li)、(s−ブチル)C602−・2(Li)、(s−ブチル)C603−・3(Li)、(t−ブチル)C60・(Li)、(t−ブチル)C602−・2(Li)、(t−ブチル)C603−・3(Li)、(n−ブチル)He@C60・(Li)、(n−ブチル)He@C602−・2(Li)、(n−ブチル)He@C603−・3(Li)、(s−ブチル)He@C60・(Li)、(s−ブチル)He@C602−・2(Li)、(s−ブチル)He@C603−・3(Li)、(t−ブチル)He@C60・(Li)、(t−ブチル)He@C602−・2(Li)、(t−ブチル)He@C603−・3(Li)、(n−ブチル)C84・(Li)、(n−ブチル)C842−・2(Li)、(n−ブチル)C843−・3(Li)、(s−ブチル)C84・(Li)、(s−ブチル)C842−・2(Li)、(s−ブチル)C843−・3(Li)、(t−ブチル)C84・(Li)、(t−ブチル)C842−・2(Li)、(t−ブチル)C843−・3(Li)、(n−ブチル)He@C84・(Li)、(n−ブチル)He@C842−・2(Li)、(n−ブチル)He@C843−・3(Li)、(s−ブチル)He@C84・(Li)、(s−ブチル)He@C842−・2(Li)、(s−ブチル)He@C843−・3(Li)、(t−ブチル)He@C84・(Li)、(t−ブチル)He@C842−・2(Li)、(t−ブチル)He@C843−・3(Li)であることが好ましい。
【0021】
リチオ化反応によりフラーレンとアルキルリチウムを反応し、リチオ化フラーレンを調製する際に用いられる溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ヘキサン等のアルキルリチウム、リチオ化フラーレンと反応しない溶剤であれば何ら問題なく用いることができる。また、反応温度は、特に制約を受けず、その中でも−60℃〜溶剤の沸点以下で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、好ましくは10分から4時間である。
【0022】
該リチオ化反応におけるフラーレンとアルキルリチウムの反応仕込比はモル比でフラーレン1モルに対してアルキルリチウムが1から10モルが好適に用いられる。
【0023】
また、重合性単量体としては、リチオ化フラーレンによる重合反応が可能であるものであれば如何なるものでもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート類;メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類等が挙げられ、その中でも特に成形加工性に優れるフラーレン共重合体となることから、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルビニルケトンがらなる群より選ばれる少なくとも1種以上の重合性単量体であることが好ましい。
【0024】
リチオ化フラーレンをアニオン系重合開始剤として用い、重合性単量体の重合反応を行う際の重合溶剤としては、フラーレンとアルキルリチウムとの反応に用いられる溶剤と同様のものを挙げることができ、また、重合反応温度としては、溶剤の沸点以下凝固点以上であれば何ら制限を受けることなく実施することができ、その中でも好ましくは−60℃から100℃、更に好ましくは−60℃から室温である。反応時間は10分から6時間が好ましい。
【0025】
アニオン系重合開始剤であるリチオ化フラーレンと重合性単量体との仕込比は任意であり、その中でも特に成形加工性に優れるフラーレン共重合体が得られることからリチオ化フラーレン1モルに対して重合性単量体が10モル以上、特に90〜5000モルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により任意の形状に賦形可能で、工業的に生産が容易なフラーレン含有重合体及びその製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、本発明の実施例及び比較例における反応は、特に断らない限り、窒素下で行った。
【0028】
実施例で用いたブチルリチウム、トルエンは全て試薬として和光純薬から購入して用いた。また、C60フラーレンとしてメルク社から販売されている高純度(99%以上)のものを使用した。
【0029】
なお、用いた分析方法は下記の通りである。
【0030】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルの測定
得られたフラーレン含有重合体を核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、60℃重トルエン中にてH−NMRを測定した。
【0031】
参考例1 リチオ化フラーレンIの合成
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.72g(1ミリモル)を仕込んだ。攪拌下、室温で濃度2.0Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液0.5mlをゆっくり添加した。添加直後にリチオ化フラーレンI[(n−ブチル)C60・(Li)]の沈殿が生成し、さらに30分攪拌を継続した。
【0032】
参考例2 リチオ化フラーレンIIの合成
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.72g(1ミリモル)を仕込んだ。攪拌下、室温で濃度2.0Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液1.5mlをゆっくり添加した。添加直後にリチオ化フラーレンII[(n−ブチル)C603−・3(Li)]の沈殿が生成し、さらに30分攪拌を継続した。
【0033】
実施例1
参考例1で得られたリチオ化フラーレンIの溶液をドライアイスメタノール浴により−60℃にて、脱水したスチレン10.4g(100ミリモル)を注射器により添加した。添加後、徐々に温度を室温まで上げ、さらに室温で反応を1時間継続した。反応溶液は暗オレンジ色の発色を呈していた。この溶液にメタノール5mlを添加し反応を停止した。得られた溶液を5%塩酸を含むメタノール溶液に注いで、生成物を沈殿により単離し、濾過後、メタノールでよく洗浄後、40℃で一昼夜減圧乾燥して8.9gのフラーレン−スチレン共重合体を得た。得られた共重合体のH−NMR測定を行い、n−ブチル基に基づくピークとスチレンのフェニルに基づくピークより重合度(一般式(1)におけるm)を求めたところ、98であった。したがって、フラーレン−スチレン共重合体は「(n−ブチル)[C60](スチレン残基)98」の構造を有していた。
【0034】
得られたフラーレン−スチレン共重合体を240℃でプレス成形したところ、容易にフィルム状成形体が得られた。
【0035】
実施例2
参考例2で得られたリチオ化フラーレンIIの溶液をドライアイスメタノール浴により−60℃にて、脱水したスチレン31.2g(300ミリモル)を注射器により添加した。添加後、徐々に温度を室温まで上げ、さらに室温で反応を1時間継続した。反応溶液は暗オレンジ色の発色を呈していた。この溶液にメタノール8mlを添加し反応を停止した。得られた溶液を5%塩酸を含むメタノール溶液に注いで、生成物を沈殿により単離し、濾過後、メタノールでよく洗浄後、40℃で一昼夜減圧乾燥して26.0gのフラーレン−スチレン共重合体を得た。実施例1と同様にH−NMR測定を行ったところ、重合度(一般式(1)におけるm)は99であった。したがって、フラーレン−スチレン共重合体は「(n−ブチル)[C60]((スチレン残基)99)」の構造を有していた。
【0036】
得られたフラーレン−スチレン共重合体を240℃でプレス成形したところ、容易にフィルム状成形体が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式(1)で示されることを特徴とするフラーレン共重合体。
(R1)j[Cn]((M)m)k (1)
(ここで、R1は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、Mは重合性単量体残基、jは1〜11の正の数、mは10以上の正の数、kは1〜11の正の数を示す。)。
【請求項2】
構造式(1)中のCnが、X@Cn(ここで、Xは、不活性ガス、金属原子を示し、X@Cnは不活性ガス、金属原子を内包する炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数を示す。)であることを特徴とする請求項1に記載のフラーレン共重合体。
【請求項3】
Mが、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルビニルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の重合性単量体残基であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のフラーレン共重合体。
【請求項4】
下記の構造式(2)で示されるリチオ化フラーレンの存在下、重合性単量体の重合反応を行うことを特徴とする請求項1〜3に記載のフラーレン共重合体の製造方法。
(R2)d[Cn]d−・f(Li) (2)
(ここで、R2は炭素数1〜12のアルキル基、Cnは炭素数nからなるフラーレンでありかつnは60以上の正の数、dは1〜11の正の数、fは1〜11の正の数を示す。)。
【請求項5】
構造式(2)で示されるリチオ化フラーレンからなることを特徴とするアニオン系重合開始剤。

【公開番号】特開2006−56966(P2006−56966A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239202(P2004−239202)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】