説明

フラーレン誘導体、それを含有する電荷移動材料、それを含有するn型半導体材料、およびそれを含有するn型半導体薄膜

【課題】有機溶媒への溶解性が改善され、かつp型半導体への高い接合性を有する有機n型半導体材料の提供。
【解決手段】C60フラーレンにおいて縮合環のうち、R1として、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、またはペルフルオロポリエーテル基を有し、R2として、アルキル基を有するフェニル基を2位に持つ特定のピロリジン環を有するフラーレン誘導体。該C60フラーレン誘導体は、電荷移動材料、n型半導体材料、n型半導体薄膜等に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体、およびそれを含有するn型半導体材料、およびそれを含有するn型半導体薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、これには、無機材料と同様に、正孔をキャリアとして伝導するp型半導体と、電子をキャリアとして伝導するn型半導体がある。有機半導体材料を用いることによって、半導体の軽量化、および大面積化が可能であること、ならびにこれに可撓性を持たせることが可能であるなどの優れた利点から、有機半導体材料は、太陽電池、および有機薄膜トランジスタ(TFT)等への応用が期待されている。有機半導体材料のうち、n型半導体性を示す材料としては、各種のフラーレン誘導体が知られているが、前述のように半導体の大面積化を可能とし、かつ製造コストを実用レベルにまで下げるためには、有機溶媒への溶解性を高めて、塗布法による半導体の調製を可能にすることが必要である。
かかる背景から、有機溶媒への溶解性を高める目的で、フラーレンに種々の置換基を導入する試みがなされ、[6,6]−フェニル C61−酪酸メチル エステル([6,6]-phenyl C61-butyric acid methyl ester (PCBM))による電界効果トランジスタ(FET)の作製が報告されている(非特許文献1)。さらに高機能を目指した化合物デザインがなされて、長鎖のアルキル基の導入によりC60フラーレン(本明細書中、C60と称する場合がある。)を高度に配列させ、PCBMを凌ぐ電子移動度が達成されている(特許文献1、非特許文献2)。さらには、C60の配列をより強固にするために、アルキル基の替わりに長鎖のペルフルオロアルキル基を導入すると、さらに高い電子移動度が達成できることが報告されている。また、この化合物は高い電子移動度(伝導度)を有するだけでなく、作製したデバイスの大気中での安定性も向上させていることも報告されている(特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−60169号公報
【特許文献2】特開2007−251086号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Christoph Waldaufら、Advance Materials、2003年、15巻、2084頁
【非特許文献2】近松ら、Applied Physics letters、2005年、87巻、203504頁
【非特許文献3】近松ら、Chemistry of Materials、2008年、20巻、7365頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フルオロアルキル基は撥油性を付与するため、当該フラーレン誘導体は、実用上において以下の課題を有している。1)化合物の有機溶媒への溶解度が非常に悪く、またデバイス作製時に用いられるp型材料や電極等の他の成分との接合性も低いため、塗布型デバイスを作製し難い。2)フッ素基由来の相分離現象の発生により、作製した塗布型デバイスが温度変化や長時間の使用において安定した機能を発現できない。
従って、本発明は、フラーレン誘導体の高度な配列による高い電子移動度を維持しつつ、有機溶媒への溶解性が改善され、かつp型半導体への高い接合性を有する有機n型半導体材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、フルオロアルキル基に加えて、長鎖アルキル基を導入したフラーレン誘導体によって、上記課題を解決できることを見出し、更なる検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]
一般式(I)
【化1】

[式中、
1は、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、またはペルフルオロポリエーテル基を表し、
2は、アルキル基を表し、
nは、0〜2の整数を表し、
3は、水素、またはアルキル基を表し、
4は、水素、またはアルキル基を表し、
かつ
3およびR4の少なくとも一方は、炭素数4〜14のアルキル基である。]
で表されるフラーレン誘導体;
[2]
1が、炭素数4〜12のペルフルオロアルキル基である前記[1]に記載のフラーレン誘導体;
[3]
nが、0である前記[1]または前記[2]に記載のフラーレン誘導体;
[4]
3およびR4が、同一または異なって、炭素数4〜14のアルキル基である前記[1]〜前記[3]のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体;
[5]
前記[1]〜前記[4]のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有する電荷移動材料;
[6]
前記[1]〜前記[4]のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体材料;
[7]
前記[1]〜前記[4]のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体薄膜;
[8]
前記[7]に記載のn型半導体薄膜を含有する半導体素子;
[9]
前記[7]に記載のn型半導体薄膜を含有する
電界効果型トランジスタ;および
[10]
前記[7]に記載のn型半導体薄膜を含有する
有機薄膜太陽電池
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフラーレン誘導体は、有機溶媒に対する高い溶解性、高い自己組織化性を有する。
本発明の電荷移動材料またはn型半導体材料は、塗布法による半導体薄膜形成を可能にする。
本発明のn型半導体薄膜は、塗布法によって形成することができるので、低コスト、および大面積での作製が可能であり、かつp型半導体との接合性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のフラーレン誘導体を含有するn型半導体薄膜を有する電界効果型トランジスタの概略図(実施例7)である。
【図2】図2は、本発明のフラーレン誘導体を用いて作製した太陽電池の写真(実施例8)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語>
本明細書中、「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、またはアルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基を意味する。
本明細書中、「ペルフルオロアルコキシ基」とは、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、またはアルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基を意味する。
本明細書中、「ペルフルオロポリエーテル基」とは、複数のペルフルオロアルキレンオキシド鎖を有し、末端にペルフルオロアルキル基を有する1価の基を意味する。
本明細書中、「ペルフルオロアルキレンオキシド鎖」は、−O−ペルフルオロアルキレン鎖、またはペルフルオロアルキレン−O−鎖を意味する。
【0011】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は、前記一般式(I)で表される化合物である。
以下に、一般式(I)中の記号を説明する。なお、本明細書中、特に記載の無い限り、同じ記号は、同意義を表す。
【0012】
当業者に明らかなように、式(I)中の

の部分はC60を表す。
【0013】
1で表される「ペルフルオロアルキル基」の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは4〜12である。
当該「ペルフルオロアルキル基」は、直鎖状でも分枝鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0014】
1で表される「ペルフルオロアルコキシ基」の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは4〜12である。
当該「ペルフルオロアルコキシ基」は、直鎖状でも分枝鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0015】
1で表される「ペルフルオロポリエーテル基」として好ましくは、例えば、末端にペルフルオロアルキル基を有し、−C36O−、C24O−、および−CF2O−から選択される1種以上の繰り返し単位を有する、炭素数2〜50のペルフルオロポリエーテル基が挙げられる。当該繰り返し単位としては、−C24O−が好ましい。前記繰り返し単位の繰り返し数は、好ましくは、2〜20である。
【0016】
当該「ペルフルオロポリエーテル基」として具体的には、例えば、
(i)F−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−CF(CF3)−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(ii)CF3O−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−(CF2O)m2−CF2−[式中、m1は0〜16の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(iii)CF3−O−((CF22−O)m1−(CF2−O)m2−CF2−[式中、m1は1〜20の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(iv)F−((CF23−O)m1−(CF22−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(v)H−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−CF(CF3)−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(vi)H−CF2O−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−(CF2O)m2−CF2−[式中、m1は0〜16の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(vii)H−CF2−O−((CF22−O)m1−(CF2−O)m2−CF2−[式中、m1は1〜20の整数、m2は0〜20の整数である。]、および
(viii)H−((CF22−O)m1−(CF22−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
等が挙げられる。
更に、当該「ペルフルオロポリエーテル基」として具体的には、例えば、
(ix)F−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(x)CF3O−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−(CF2O)m2−[式中、m1は0〜16の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(xi)CF3−O−((CF22−O)m1−(CF2−O)m2−[式中、m1は1〜20の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(xii)F−((CF23−O)m1−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(xiii)H−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
(xiv)H−CF2O−(CF(−CF3)−CF2−O)m1−(CF2O)m2−[式中、m1は0〜16の整数、m2は0〜20の整数である。]、
(xv)H−CF2−O−((CF22−O)m1−(CF2−O)m2−[式中、m1は1〜20の整数、m2は0〜20の整数である。]、および
(xvi)H−((CF22−O)m1−[式中、m1は1〜16の整数である。]、
等が挙げられる。
【0017】
1は、好ましくは、例えば、炭素数4〜12のペルフルオロアルキル基である。
なかでも、好ましくは、炭素数4〜8、更に好ましくは炭素数4〜6、特に好ましくは炭素数4のペルフルオロアルキル基である。
また、なかでも、好ましくは、炭素鎖長(すなわち、主鎖の炭素数)4〜8、更に好ましくは炭素鎖長4〜6、特に好ましくは炭素鎖長4のペルフルオロアルキル基である。
【0018】
一般式(I)におけるフェニル基上のR1の結合位置は、好ましくは、p位、またはm位、より好ましくはp位である。
当該p位、およびm位を、以下の構造式に示す。
【化2】

【0019】
2で表される「アルキル基」の炭素数は、好ましくは1〜6である。
当該「アルキル基」は、直鎖状でも分枝鎖状でもよい。
nが2のとき、R2は、各出現において、同一であってもよく、または異なっていてもよい。
nは、好ましくは、0である。すなわち、一般式(I)におけるフェニル基は、好ましくは、R1以外に置換基を有さない。
【0020】
3で表される「アルキル基」の炭素数は、好ましくは1〜20である。
当該「アルキル基」は、直鎖状でも分枝鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0021】
4で表される「アルキル基」の炭素数は、好ましくは1〜20である。
当該「アルキル基」は、直鎖状でも分枝鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0022】
3およびR4の少なくとも一方は、炭素数4〜14(好ましくは炭素数8〜14、より
好ましくは炭素数12〜14)のアルキル基である。
好ましくは、R3およびR4の両方が、同一または異なって、炭素数4〜14のアルキル基である。
【0023】
本発明のフラーレン誘導体として特に好ましくは、例えば、
1は、炭素数4〜12(より好ましくは炭素数4〜8、更に好ましくは炭素数4〜6)のペルフルオロアルキル基であり
nは、0であり、
3は、炭素数1〜20のアルキル基であり、
4は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基であり、
かつ
3およびR4の少なくとも一方は、炭素数4〜14(好ましくは炭素数8〜14、より好ましくは炭素数12〜14)のアルキル基である
化合物である。
【0024】
本発明のフラーレン誘導体として、また、特に好ましくは、例えば、
1は、炭素数4〜8(好ましくは炭素数4〜6、より好ましくは炭素数4)の直鎖状ペルフルオロアルキル基であり、
nは、0であり、
3は、炭素数8〜14(好ましくは炭素数12〜14)の直鎖状アルキル基であり、
4は、水素原子である
化合物である。
【0025】
<フラーレン誘導体の製造方法>
本発明のフラーレン誘導体は、例えば、下記に記載する方法、またはそれに準じる方法によって製造することができる。
下記の反応スキームにおける記号は、特に記載の無い限り、前記と同意義を表す。
なお、本明細書中、特に断りの無い限り、「室温」とは、約10℃〜約35℃を示す。
【0026】
<製造方法I>
本発明のフラーレン誘導体が式(Ia)で表される化合物である場合、当該化合物は、例えば、下記の製造方法またはこれに準じる方法によって合成することができる。
【化3】

(式中、Xは脱離基を、C60はフラーレンC60を表す。)
【0027】
<工程A>
工程Aでは、化合物(1)を化合物(2)と反応させることによって、化合物(3)を得る。
式中、Xで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)が挙げられる。
化合物(1)は、化合物(2)1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは1〜2モルを用いる。
当該反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。当該溶媒としては、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、エーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、DMF、THF、DMSO、NMP等が挙げられる。なかでも、エタノール、ジクロロメタン、THF、ジオ
キサン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜60℃である。
反応時間は、通常1時間〜48時間、好ましくは1〜12時間である。
【0028】
<工程B>
工程Bでは、化合物(3)をエステル加水分解することによって、化合物(4)を得る。
当該反応は、酸またはアルカリの存在下、無溶媒または溶媒中で行われる。
加水分解が円滑に進むように、酸を使用する場合は過剰量を用い、アルカリを使用する場合は通常0.1〜10当量、好ましくは1〜2当量を用いる。
加水分解後、アンモニアでpHを調整して目的物を単離する。目的物を濾取後、水洗して中性にし、残った水分を減圧下で除去する。
酸またはアルカリとしては、濃塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。なかでも、濃塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましい。
溶媒としては、水、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、エーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、DMF、THF、DMSO、NMP等が挙げられる。なかでも、水、エタノール、ジクロロメタン、THF、ジオキサン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは室温〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間である。
【0029】
<工程C>
工程Cでは、化合物(4)を化合物(5)およびC60と反応させることによって、化合物(Ia)を得る。
化合物(5)は、journal of Fluorine Chemistry, 1991年、53巻、233頁に記載の方法などの公知の方法に準じて合成できる。
化合物(4)、化合物(5)およびC60の量比は任意だが、収率を高くする観点から、化合物(4)、および化合物(5)は、それぞれ、C60の1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2モルを用いる。
当該反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。
溶媒としては、二硫化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。なかでも、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、用いた溶媒の沸点程度である。具体的には、通常、室温〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは10〜24時間である。
【0030】
必要に応じて、得られた化合物(Ia)は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としては、ヘキサン−クロロホルム、ヘキサン−トルエン、ヘキサン−二硫化炭素等が好ましい。)で精製後に、HPLC(展開溶媒としては、クロロホルム、トルエン等が好ましい。)でさらに精製することができる。
【0031】
<製造方法II>
本発明のフラーレン誘導体が下記式(Ib)で表される化合物である場合、当該化合物は、例えば、下記の製造方法またはこれに準じる方法によって合成することができる。
【化4】

(式中、Xは脱離基を、C60はフラーレンC60を表す。)
式中、Xで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)が挙げられる。
【0032】
<<工程D〜F>>
化合物(9)は化合物(6)のN−メチル化によって得られる。
N−メチル化方法には種々の方法があり、本法に拘らず、直接にアルカリ存在下にハロゲン化アルキル化合物やスルホン酸のアルキルエステルによるアルキル化等も同様に用いることが出来る。しかしながら、本法のようにイミノ化を経由する方法が、収率の面で優れている。
<工程D>
工程Dでは、イミノ化反応剤を用いて、化合物(6)をイミノ化し、化合物(7)を得る。
イミノ化反応剤としては、種々のアルデヒドあるいはアルデヒド等価体の化合物が用いることができるが、特にアミノホルムアルデヒド ジアルキルアセタールが、目的とするN−アルキル化体を緩和な条件下に高収率で与える点で好ましい。
イミノ化反応剤は、化合物(6)1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは1〜5モルを用いる。
反応温度は、通常、室温〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜15時間である。
当該工程は、無溶媒または溶媒中で行われる。
溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、THF、ジオキサン、エタノール、トルエン、DMF、DMSO等が挙げられる。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
後処理の効率化の観点からは、無溶媒での反応が好ましい。
【0033】
<工程E>
工程Eでは、アルキル化剤を用いて、化合物(7)をアルキル化し、化合物(8)を得る。
アルキル化剤としては、種々のアルキル化剤を用いることができる。その例としては、ジメチル硫酸、メタンスルホン酸メチル、トリフルオロスルホン酸メチル等が挙げられる。なかでも、好ましくは、ジメチル硫酸、トリフルオロスルホン酸メチル等である。
アルキル化剤は、化合物(7)1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは1〜5モルを用いる。
反応温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは室温〜50℃である。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間である。
当該工程は、無溶媒または溶媒中で行われる。
溶媒としては、種々の非プロトン溶媒が用いることができるが、例えば、エーテル、THF、ジクロロメタン、トルエンが好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。後処理の効率化の観点からは、無溶媒での反応が好ましい。
【0034】
<工程F>
工程Fでは、化合物(8)を加水分解し、化合物(9)を得る。
加水分解は、好ましくは酸の存在下で行われる。用いる酸の量は、通常0.1〜100当量であり、反応が円滑に進行する点で、好ましくは1〜10当量である。塩酸、硫酸、硝酸、塩素酸、およびスルホン酸等の種々の酸を種々の濃度で用いることができるが、なかでも、反応効率やコスト面で、濃塩酸が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは室温〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間である。
【0035】
<工程G>
工程Gでは、化合物(9)を化合物(5)およびC60と反応させて、化合物(Ib)を得る。
化合物(9)、化合物(5)およびC60の量比は任意だが、収率を高くする観点から、通常、化合物(Ia)1モルに対して、化合物(4)、および化合物(5)を、それぞれ0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2モル用いる。
当該反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。
溶媒としては、二硫化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。なかでも、クロロホルム、トルエン、およびクロロベンゼン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよ
い。
反応温度は、用いた溶媒の沸点程度である。具体的には、通常、室温〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは10〜24時間である。
【0036】
必要に応じて、得られた化合物(Ib)は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としては、ヘキサン−クロロホルム、ヘキサン−トルエン、ヘキサン−二硫化炭素が好ましい。)で精製後に、HPLC(展開溶媒としては、クロロホルム、トルエンが好ましい。)でさらに精製することができる。
【0037】
<製造方法III>
本発明のフラーレン誘導体下記式(Ic)で表される化合物である場合、当該化合物は、例えば、下記の製造方法またはこれに準じる方法によって合成することができる。
【化5】

(式中、Xは脱離基を、C60はフラーレンC60を表す。)
式中、Xで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)が挙げられる。
【0038】
<工程H>
工程Hでは、高純度の化合物を容易に得るために、カルボキシル基をエステル化によって保護する。
エステル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール等の汎用アルコールが用いられる。なかでも、メタノール、またはエタノール等が好ましい。エステル化法としては、例えば、酸存在下の過熱脱水反
応、または縮合剤による方法が用いられる。製造コストの観点からは、トルエンスルホン酸または濃硫酸を触媒として、過剰のアルコール中またはトルエン中で加熱することが好ましい。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜15時間である。
反応温度は、例えば、酸存在下にトルエン中で過熱する場合は、100〜120℃である。また、縮合剤を用いる場合は、通常0℃〜100℃、好ましくは0℃〜室温である。
縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、塩化チオニル−トリエチルアミン等が挙げられる。
【0039】
<工程I>
工程Iでは、アルカリ存在下に、化合物(1)を化合物(11)と反応させることによって、化合物(12)を得る。
化合物(1)は、化合物(11)1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは1〜2モルを用いる。アルカリの使用量は化合物(11)1モルに対して0.1〜10モルであり、0.5〜2モルが好ましい。
当該反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。当該溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、エーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、DMF、THF、DMSO、NMP等が挙げられる。なかでも、エタノール、ジクロロメタン、THF、ジオキサン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜60℃である。
反応時間は、通常1時間〜48時間、好ましくは1〜12時間である。
【0040】
<工程J>
工程Jでは、化合物(12)をエステル加水分解することによって、化合物(13)を得る。
当該反応は、酸またはアルカリの存在下、無溶媒または溶媒中で行われる。
加水分解が円滑に進むように、酸を使用する場合は過剰量を用い、アルカリを使用する場合は通常0.1〜10当量、好ましくは1〜2当量を用いる。
加水分解後、アンモニアでpHを調整して目的物を単離する。目的物を濾取後は、水洗して中性にし、残った水分を減圧下で除去する。
酸またはアルカリとしては、濃塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。なかでも、濃塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましい。
溶媒としては、水、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、エーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、DMF、THF、DMSO、NMP等が挙げられる。なかでも、水、エタノール、ジクロロメタン、THF、ジオキサン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは室温〜100℃である。
反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは1〜10時間である。
【0041】
<工程K>
工程Kでは、化合物(13)を化合物(5)およびC60と反応させることによって、化合物(Ic)を得る。
化合物(5)、化合物(13)およびC60の量比は任意だが、収率を高くする観点から、化合物(5)、および化合物(13)は、それぞれ、C60の1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2モルを用いる。
当該反応は、無溶媒または溶媒中で行われる。
溶媒としては、二硫化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ク
ロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。なかでも、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、用いた溶媒の沸点程度である。具体的には、通常、室温〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは10〜24時間である。
【0042】
必要に応じて、得られた化合物(Ic)は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としては、ヘキサン−クロロホルム、ヘキサン−トルエン、ヘキサン−二硫化炭素等が好ましい。)で精製後に、HPLC(展開溶媒としては、クロロホルム、トルエン等が好ましい。)でさらに精製することができる。
【0043】
<電荷移動材料、n型半導体材料およびn型半導体薄膜>
本発明のフラーレン誘導体は、電荷移動材料またはn型半導体材料として使用することができる。
本発明のフラーレン誘導体を、有機溶媒に溶解し、スピンコート法、キャスト法、ディッピング法、インクジェット法、およびスクリーン印刷法等の公知の薄膜形成方法によって、例えばp型ドープ基板上に薄膜を形成することにより、本発明のフラーレン誘導体を含有するn型半導体薄膜が得られる。
当該有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、二硫化炭素、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼン等を用いることができる。当該溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該方法によれば、低コストで、大面積のn型半導体薄膜が得られる。また、本発明のフラーレン誘導体は、優れた自己組織性を有し、かつp型半導体(有機p型導電性材料:P3HT(ポリ-3−ヘキシルチオフェン)等)との親和性が高い。
【0044】
<適用>
本発明のフラーレン誘導体は、電荷移動材料またはn型半導体の材料として用いることができる。本発明のフラーレン誘導体から得られるn型半導体薄膜は、光、電子デバイス用途に応用できる。具体的には、有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電界効果型コンデンサ、有機薄膜太陽電池等の光電変換素子、EL素子等の発光素子として有効に機能する。
このような、本発明のフラーレン誘導体から得られるn型半導体薄膜を含有する、電界効果型コンデンサ(例、有機薄膜トランジスタ(TFT))、光電変換素子(例、有機薄膜太陽電池)、および発光素子(例、EL素子)等の半導体素子は、それらの属する技術分野で慣用の方法により、製造すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフラーレン誘導体、それを含有する電荷移動材料、それを含有するn型半導体材料、およびそれを含有するn型半導体薄膜は、有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電界効果型コンデンサ、有機薄膜太陽電池等の光電変換素子等の半導体素子に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例等により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
HPLC(GPC)による精製は、下記の装置およびカラムを用いて実施した。
装置:日本分光LC−9201S
カラム:JAIGEL Hシリーズ(2H−1Hを2本連結で使用)
NMRスペクトルは、プロトンNMRを示し、内部標準としてテトラメチルシランを用いて、装置:JNM−LA400(日本電子)によって測定した。δ値をppmで表す。
以下の実施例等で用いる略号は、下記の意義を示す。
s :シングレット
br :幅広
d :ダブレット
t :トリプレット
m :マルチプレット
J :カップリング定数
Hz :ヘルツ
【0047】
合成例1
<4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒドの合成>
【化6】

4−ヨードベンズアルデヒド(4-iodobenzaldehyde)(1g、4.31mmol)、ヨウ化ヘプタデカフルオロオクチル(heptadecafluorooctyl iodide)(2.82g、5.17mmol)、銅粉(904mg、14.23mmol)をジメチルスルホキシド15mL中、110℃で15時間攪拌した。
反応物をジクロロメタン中に入れ、セライトカラム中を通して無機物を除去した。得られた溶液を水洗して、濃縮後に、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン−酢酸エチル(20:1))で分離して4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(4-heptadecafluorooctylbenzaldehyde)を得た(580mg、26%)。
【0048】
合成例2
<2−(ドデシルアミノ)酢酸の合成>
(1)C1225NH+BrCH2COOC25→C1225NHCH2COOC25
ドデシルアミン(1.35g、7.3mmol)と炭酸カリウム(355mg、2.57mmol)の無水ジクロロメタン溶液(10mL)に、ブロモ酢酸エチル(0.45mL、4.06mmol)の無水ジクロロメタン溶液(5mL)を0℃で滴下した。反応液を室温で24時間攪拌した。無機塩をろ過して除去して、反応液を濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1))で分離してC1225NHCH2COOC25を得た(500mg、46%)。
(2)C1225NHCH2COOC25→C1225NHCH2COOH
1225NHCH2COOC25(2.9g)の含水エタノール(50mL)懸濁液に2規定水酸化ナトリウム(22mL)を滴下して、室温で攪拌した。TLC(展開溶媒:n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1))で原料が消失したことを確認後、反応液を5%塩酸で酸性にしてから、さらに28%アンモニア水でpHを9に調整した。ここで析出した2−(ドデシルアミノ)酢酸(C1225NHCH2COOH)を濾取し、水洗した後、減圧下で乾燥した。
【0049】
合成例3
<2−メチルアミノー1―デカン酸の合成>
(1)C817CH(NH2)COOH→C817CH(NHCH3)COOCH3
817CH(NH2)COOH(2g、11mmol)とN(CH32CH(OCH32(7.6g、64mmol)を100℃で24時間攪拌した。
(2)C817CH(NHCH3)COOCH3→C817CH(NHCH3)COOH
過剰のN(CH32CH(OCH32を減圧下で溜去し、残った反応物にトリフルオロメタンスルホン酸メチル(2.45g、15mmol)を加えて、室温で24時間攪拌し
た。反応物に36%塩酸を20mL加えて100℃で3時間攪拌した。反応物をエーテル30mLで洗浄し、残った水相に28%アンモニア水を加えて析出した(2−メチルアミノー1―デカン酸(C817CH(NHCH3)COOH)を濾取し、水洗後に、減圧下で乾燥した。
【0050】
合成例4
<2−ドデシルアミノ−1−ヘキサデカン酸の合成>
(1)C1429CHBrCOOH→C1429CHBrCOOC25
1429CHBrCOOH(5.6g、17mmol)とエタノール10mLを、p−トルエンスルホン酸(10mg)存在下にトルエン中で2日間過熱した。
(2)C1429CHBrCOOC25+C1225NH2→C1429CH(NHC1225)COOC25
上記反応液を減圧下で濃縮し、残った反応物に2当量のC1225NH2と1当量の炭酸カリウムを加え、ジクロロメタン中、室温で24時間攪拌した。減圧下で溶媒を溜去し、残った反応物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン−酢酸エチル(10:1))で分離してC1429CH(NHC1225)COOC25を得た。
(3)C1429CH(NHC1225)COOC25→C1429CH(NHC1225)COOH
1429CH(NHC1225)COOC25と2当量の水酸化ナトリウムの含水エタノール溶液を、室温で2日間攪拌した。反応液を5%塩酸で酸性にした後、28%アンモニア水でpHを9にし、析出した2−ドデシルアミノ−1−ヘキサデカン酸(C1429CH(NHC1225)COOH)を濾取し、水洗し、減圧下で乾燥した。
【0051】
合成例5
<4−トリデカフルオロヘキシルベンズアルデヒドの合成>
4−ヨードベンズアルデヒド(4-iodobenzaldehyde)(745mg、3.21mmol)、ヨウ化トリデカフルオロヘキシル(tridecafluorohexyl iodide)(1.72g、3.85mmol)、銅粉(673mg、10.6mmol)をジメチルスルホキシド15mL中、110℃で15時間攪拌した。
反応物をジクロロメタン中に入れ、セライトカラム中を通して無機物を除去した。得られた溶液を水洗して、濃縮後に、シリカゲルクロマト(展開溶媒:n−ヘキサン−ジクロロメタン(10:1))で分離して4−トリデカフルオロヘキシルベンズアルデヒド(4-
tridecafluorohexylbenzaldehyde)を得た(436mg、32%)。
【0052】
合成例6
<4−ノナフルオロヘキシルベンズアルデヒドの合成>
4−ヨードベンズアルデヒド(4-iodobenzaldehyde)(1g、4.31mmol)、ヨウ化ノナフルオロブチル(nonafluorobutyl iodide)(1.76g、5.16mmol)、銅粉(904mg、14.2mmol)、ジメチルスルホキシド15mLをステンレス反応管中、120℃で20時間攪拌した。
反応物をセライトカラムを通して、無機塩をろ過した。得られた反応溶液を、水とイソプロピルエーテルの混合液で抽出した。有機相を分離、脱水、濃縮後に、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン−ジクロロメタン(5:1))で分離して、4−ノナフルオロヘキシルベンズアルデヒド(4- nonafluorobutylbenzaldehyde)を得た(1.12g、80%)。
【0053】
実施例1
<化合物1の合成>
【化7】

4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒド
(4-heptadecafluorooctylbenzaldehyde)(520mg、1mmol)、2−(ドデシルアミノ)酢酸(C1225NHCH2COOH)(972mg、4mmol)、およびC60(1.44g、2mmol)を、トルエン(300mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン−トルエン(500:1))。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
H-NMR (CDCl3)δ: 0.89 (3H, t, J=8.0Hz), 1.20-1.75 (18H, m), 1.80-2.06 (2H, m), 2.52-2.66 (1H, m), 3.10-3.26 (1H, m), 4.14 (1H, d, J=8.0Hz), 5.12 (1H, d, J=8.0Hz), 5.13 (1H, s), 7.64 (2H, D, J=8.0Hz), 7.98 (2H, bs).
【0054】
実施例2
<化合物2の合成>
【化8】

4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(520mg、1mmol)、2−メチルアミノ−1−デカン酸(2-methylamino-1-decanoic acid)(800mg、4mmol)、およびC60(1.44g、2mmol)を、トルエン(300mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン−トルエン(20:1))。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
H-NMR (CDCl3)δ: 0.87 (3H, t, J=8.0Hz), 1.18-1.67 (10H, m), 1.67-1.93 (2H, m), 2.50-2.64 (1H, m), 2.64-2.80 (1H, m), 2.86 (3H, s), 4.91 (1H, d-d, J=8.0, 2.4Hz),
5.58 (1H, s), 7.62 (2H, d, J=8.0Hz), 7.90 (2H, d, J=8.0Hz).
【0055】
実施例3
<化合物3の合成>
【化9】

4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(52mg、0.1mmol)、2−ドデシルアミノ−1−ヘキサデカン酸(2-dodecylamino-1- hexadecanoic acid)(180mg、0.4mmol)、およびC60(144mg、0.2mmol)を、トルエン(30mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン)。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
H-NMR (CDCl3)δ: 0.70-0.95 (6H, m), 1.00-2.05 (44H, m), 2.30-2.70 (2H, m), 2.70-3.20 (2H, m), 4.96 (1H, d, J=8.0Hz), 5.63 (1H, s), 7.60 (2H, d, J=8.0Hz), 7.88 (2H, d, J=8.0Hz).
【0056】
参考例1
<化合物4の合成>
【化10】

同様にして4−ヘプタデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(260mg、0.5mmol)、N−メチルグリシン(356mg、4mmol)、およびC60(720mg、1mmol)を、トルエン(150mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン−トルエン(5:1))。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
【0057】
実施例4
<化合物5の合成>
【化9】

4−トリデカフルオロヘキシルベンズアルデヒド(4-tridecafluorohexylbenzaldehyde)(106mg、0.25mmol)、2−(ドデシルアミノ)酢酸(C1225NHCH2COOH)(122mg、0.5mmol)、およびC60(175mg、0.25mmol)を、トルエン(100mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン−トルエン(100:1))。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
H-NMR (CDCl3)δ: 0.89 (3H, t, J=6.8Hz), 1.20-1.60 (17H, m), 1.60-1.75 (1H, m), 1.82-2.05 (2H, m), 2.50-2.62 (1H, m), 3.12-3.23 (1H, m), 4.15 (1H, d, J=9.6Hz), 5.12 (1H, d, J=9.6Hz), 5.13 (1H, s), 7.63 (2H, d, J=8.0Hz), 7.97 (2H, bs).
【0058】
実施例5
<化合物6の合成>
【化9】

4−ノナフルオロヘキシルベンズアルデヒド(4-nonafluorohexylbenzaldehyde)(81mg、0.25mmol)、2−(ドデシルアミノ)酢酸(C1225NHCH2COOH)(243mg、1mmol)、およびC60(360mg、0.5mmol)を、トルエン(150mL)中で24時間加熱還流した。冷却後、溶媒を溜去し、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した(展開溶媒:n−ヘキサン−トルエン(1000:1))。さらにHPLC(GPC:CHCl3)で精製した。
H-NMR (CDCl3)δ: 0.88 (3H, t, J=7.0Hz), 1.10-1.60 (17H, m), 1.60-1.75 (1H, m), 1.80-2.05 (2H, m), 2.55-2.65 (1H, m), 3.10-3.25 (1H, m), 4.15 (1H, d, J=10.2Hz), 5.12 (1H, d, J=10.2Hz), 5.13 (1H, s), 7.64 (2H, d, J=9.0Hz), 7.97 (2H, bs).
【0059】
実施例6
<溶解度の検討>
本発明のフラーレン誘導体の既存化合物に対する優位性を確認するために、デバイス作製時に塗布溶媒として用いられるクロロホルムに対する溶解度を測定した。溶解の判定は透明なガラスチューブにサンプルを10mg入れ、これに対して少量ずつクロロホルムを
添加して、サンプルの溶け残りが出なくなった時点までに加えた溶媒の合計量から算出した。当該溶解度は下記の通りである。
化合物1:4%
化合物2:3%
化合物3:5%
化合物4(比較例):1%
化合物5:3%
化合物6:4%
また化合物4はトルエンにはほとんど溶解しないのに対して、化合物3は1%溶解した。
以上のことから、ピロリジン環を有するフラーレン誘導体において、炭素鎖長が長い置換基を多数導入することで、他の成分との親和性が向上していることが示唆される。
【0060】
実施例7
<電界効果型トランジスタ(FET)作製による電子移動度測定>
厚さ300nmのSiO2絶縁膜を有するp−ドープSi(シリコン)基板をトルエン、アセトン、脱イオン水、イソプロピルアルコールで各15分ずつ超音波洗浄した。その後、基板を30分オゾン洗浄し、ヘキサメチルジシラザンのトルエン溶液に1時間浸した。その後、基板をトルエン、アセトンで各15分超音波洗浄した。
これに図1で示すように、電極として金を真空蒸着した。さらにこの上にフラーレン誘導体の1wt%のo−ジクロロベンゼン溶液を滴下し、ホットプレートで70℃に加熱することでキャスト膜(有機層)を作製した。得られた素子を150℃で30分間アニールした後、真空下でソース−ドレイン間電圧を80V印加し、ゲート電圧を−20V〜80Vの範囲で変化させ、FET性能(電子移動度、閾値電圧(Vth))を測定した。結果を表1に示す。なお、表1における化合物4の電子移動度は、文献値(前記非特許文献3)である。
【表1】

【0061】
以上のデータから、本発明の化合物は、アルキル基の導入により、溶解度が向上していながら、フルオロアルキル基による凝集効果により、比較的高い電子移動度を維持していることが確認された。
ソースメーター(Keithley社、型番2400)および疑似太陽光照射装置(三永電気製作所、XES−301S)を用いて、AM1.5条件(光強度100mW/cm2)下、室温で、I−V特性を測定し、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、光電変換効率(η)を求めた。同じPin(光強度)において、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた光電変換効率を示す。なお、光電変換効率は下記式によって導出した。
【0062】
実施例8
<太陽電池の作製>
化合物1、化合物2、化合物3、化合物4(比較例)、化合物5、化合物6を用い、下記のようにして、太陽電池を作製した。
1)基板前処理
ITO(酸化インジウムスズ)ガラス板にマスクを付け、濃塩酸に15分間を漬け、一部のITOをエッチングした。
エッチング後、塩酸からITOガラスを取り出し、水で充分洗浄してから大気雰囲気で乾燥させた。続いて、エッチングしたITOガラス板をトルエン、アセトン、水、およびIPA(イソプロピルアルコール)の順に超音波で各15分間洗浄した。次に、ITOガラス板をFilgen/UV253のUVオゾンクリーナー装置中に入れて、酸素ガス6分間、オゾンガス30分〜60分、および窒素ガス2分の順で処理した。
2)PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート)薄膜の作製
ABLE/ASS−301型のスピンコート法製膜装置を用い、PEDOT:PSS混合溶液を用いて、上記で前処理を施したITOガラス板上にPEDOT:PSS薄膜を作成した。スピンコート条件は、500rpm(5秒)および3000rpm(3分間)であった。ここで得たPEDOT:PSSの膜厚は約30nmであった。
3)アニーリング
135℃、大気雰囲気でホットプレートの上において、前記2)でPEDOT:PSS薄膜を製膜したITO板を10分間でアニーリングした。アニーリング後、室温まで冷やした。
4)有機半導体膜の作製
ABLE/ASS−301型のスピンコート法製膜装置(マニュアルスピンナー)を用い、事前に溶かしたP3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)とフラーレン誘導体(化合物1、化合物2、化合物3、化合物4(比較例)、化合物5、化合物6)のクロロホルム混合溶液をPEDOT:PSS薄膜の上に2000rpm、2分間スピンコートし、約120〜150nmの有機半導薄膜を得た。
5)金属電極の真空蒸着
ULVAC/VPC−260Fの小型高真空蒸着装置を用い、上記で作製した積層膜を形成したITOガラス基板を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、100nmのアルミニウムを蒸着した。図2に得られた素子の写真を示す(図中、(a)化合物1、(b)化合物2、(c)化合物4(比較例))。これから明らかなように、比較例(化合物4)では、P3HTとの相溶性が悪いため相分離が発生して、良好な素子が得られなかった。
6)擬似太陽光照射による電流測定
ソースメーター(Keithley社、型番2400)、電流電圧計測ソフトおよび疑似太陽光照射装置(三永電気製作所、XES−301S)を用い、電流の発生を確認した。
【0063】
【数1】

結果を表2に示す。
【表2】

【0064】
多フッ素化有機化合物は、パーフルオロアルキル固有の低い表面エネルギーにより、本質的に他の物質とは混合し難い性質を有する。太陽電池として高い機能を発現するためには、n型半導体材料とp型半導体材料とが所謂バルクヘテロジャンクション構造を形成する必要が有る。そこでは、それぞれの半導体成分が微小な粒塊を形成して相互に混ざり合い、大きな面積のp−n界面を形成している。さらには、それぞれの半導体成分と電極との良好な接触および電荷移動経路を形成する必要が有り、これが形成出来ないと、デバイス内に大きな電気抵抗が発生する。
長鎖の置換基として炭素鎖長8の直鎖状パーフルオロアルキル基のみを有する化合物4は、溶解度が低いだけでなく、p型半導体成分やキャリアー輸送成分との相溶性も低いので、相分離が生じてしまい、光−電荷分離効率が下がり、また内部抵抗も高くなり、電流がほとんど流れなかった。このためエネルギー変換効率が最も低い値となった。
また、これに長鎖のアルキル基を更に導入して溶解度を向上させた化合物1〜3でも、炭素鎖長8の直鎖状パーフルオロアルキル基を有するp型半導体成分などとの親和性が悪く、上記と同様に十分に高いエネルギー変換効率は得られなかった。
そこで、パーフルオロアルキルの炭素鎖長を短くした化合物を検討したが、炭素鎖長6(化合物5)では大きな改善は見られなかった。一方で、炭素鎖長を4(化合物6)にすることで、短絡電流値、曲線因子(FF)ともに向上して、エネルギー変換効率の大きな改善が得られた。
以上から、パーフルオロアルキル基の炭素鎖長が4以下のフラーレン誘導体が太陽電池用のn型半導体材料として特に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
1は、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、またはペルフルオロポリエーテル基を表し、
2は、アルキル基を表し、
nは、0〜2の整数を表し、
3は、水素、またはアルキル基を表し、
4は、水素、またはアルキル基を表し、
かつ
3およびR4の少なくとも一方は、炭素数4〜14のアルキル基である。]
で表されるフラーレン誘導体。
【請求項2】
1が、炭素数4〜12のペルフルオロアルキル基である請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
nが、0である請求項1または2に記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
3およびR4が、同一または異なって、炭素数4〜14のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有する電荷移動材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体材料。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載のn型半導体薄膜を含有する半導体素子。
【請求項9】
請求項7に記載のn型半導体薄膜を含有する電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
請求項7に記載のn型半導体薄膜を含有する有機薄膜太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−140480(P2011−140480A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184384(P2010−184384)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】