説明

フリップチップ搭載用高密度多層プリント配線板

【課題】 孔径25〜300μmのレーザーで孔あけしたブラインドビア孔及び貫通孔を有する高密度の多層プリント配線板を得る。
【解決手段】 少なくとも3層以上の銅箔層を有するフリップチップ搭載用多層プリント配線板において、少なくともフリップチップ搭載部のパッドが各内外層の回路と、少なくとも1孔以上がレーザーで孔あけされた、孔径25〜300μmのブラインドビア孔及びスルーホールの導体で接続され、該内層回路は周囲に広がり、該周囲に広がる回路はブラインドビア孔及び表裏貫通したスルーホール導体を介して、裏面でハンダボールパッドに接続している形態である高密度多層プリント配線板。
【効果】 放熱性に優れ、高密度のスルーホールを有するプリント配線板を得ることができた。加えて、熱硬化性樹脂として多官能性シアン酸エステル樹脂組成物を用いることにより、耐熱性、プレッシャークッカー後の電気絶縁性、耐マイグレーション性等に優れたプリント配線板を作成できた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも3層の銅箔層を有し各層を、すべて孔径25〜300μmのブラインドビア孔及びスルーホールの導体で接続する多層プリント配線板に関する。得られたプリント配線板は、高密度の小型プリント配線板として、フリップチップを搭載し、小型、軽量の新規な半導体プラスチックパッケージ用等に主に使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージ等に用いられる高密度のプリント配線板は、スルーホール用の貫通孔をドリルであけていた。近年、ますます貫通孔の径は小径となり、孔径が180μm以下となってきており、このような小径の孔をあける場合、ドリルではドリル径が細いため、孔あけ時にドリルが曲がる、折れる、加工速度が遅い等の欠点があり、生産性、信頼性等に問題のあるものであった。また、上下の銅箔にあらかじめネガフィルムを使用して所定の方法で同じ大きさの孔をあけておき、炭酸ガスレーザーで上下を貫通するスルーホールを形成しようとすると、内層銅箔の位置ズレ、上下の孔の位置のズレを生じ、接続不良、及び表裏のランドが形成できない等の欠点があった。
【0003】更には、内層として銅箔がある場合、表層の銅箔をエッチング除去して低エネルギーで孔あけを行なっても、内層銅箔の孔あけができずに、貫通孔が形成できなかった。メカニカルドリルでも孔径180μm以下の貫通孔を形成できるが、ドリルが曲がる、孔あけ時のガラス繊維の割れによる銅メッキしみ込みなどが見られ、孔壁間の信頼性は今一歩であった。また、孔径180μm以下の貫通孔を有する高密度のプリント配線板は、フォトビア方式等で形成可能であるが、本発明で得られるような、各層の導通をすべてブラインドビア孔及びスルーホールの導体で行うプリント配線板は作成できなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を解決した、孔径300μm以下、特に180μm以下の、少なくとも1孔以上をレーザーで孔あけしたブラインドビア孔及び貫通孔で、フリップチップ搭載部のパッドとハンダボールパッドとを接続したフリップチップ搭載用高密度多層プリント配線板に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、まず、好適にはガラス布基材の両面銅張積層板を用い、これに、少なくともフリップチップを搭載するバンプとなる箇所或いはその側にブラインドビア孔をあけ、必要によりデスミア処理等を施し、孔に銅メッキを行い、この下面に回路を形成し、必要により銅の表面を処理し、この回路形成面に、好適にはガラス布基材のプリプレグと銅箔を配置し、積層成形した後、貫通孔をあけ、表裏層の銅箔の一部を残存厚さが好適には3〜7μmになるまで、加えて孔周辺に発生した銅箔バリを薬液にてエッチング除去し、銅メッキをした後、この下(裏)面に回路形成、銅表面処理、プリプレグ及び銅箔配置、積層成形を繰り返して、得られる多層銅張板を用いる。下面に形成された回路は周囲に広がる構造とし、多層板の表裏を導通する貫通孔と接続できるようにする。最後に内外層銅箔を接続するように表裏を貫通する孔を形成し、表裏の銅箔の一部を薬液にてエッチング除去し、スルーホールメッキ、表裏の回路形成、必要によりメッキレジストで被覆し、貴金属メッキ、例えばニッケルメッキ、金メッキを行い、プリント配線板とする。
【0006】孔径25〜180μmのブラインドビア孔及び貫通孔は、レーザーで形成する。孔径25〜80μm未満は、エキシマレーザー、YAGレーザーを使用する。孔径80〜180μmのブラインドビア孔及び貫通孔は、銅箔表面に酸化金属処理を施すか、又は薬液処理を施すか、或いは融点900℃以上で、且つ結合エネルギーが300kJ/mol 以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種或いは2種以上を3〜97 容積%を含む塗料を塗膜として配置するか、或いはこれを熱可塑性フィルム上に塗布してシート状としたものを、好適には、総厚み30〜200μmの厚みで銅箔表面上に配置し、炭酸ガスレーザーの出力を、好ましくは20〜60mJ/パルスから選ばれるエネルギーで直接照射して形成する。孔あけ後、銅箔の表面は機械的研磨でバリをとることもできるが、完全にバリを取るためには、好適には銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの金属箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、孔部に張り出した銅箔バリもエッチング除去することが好ましい。エッチング除去により銅箔が薄くなるため、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショートやパターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板を作成することができる。この表裏銅箔のエッチングによる薄銅化の時に、孔内部に露出した内層銅箔表面に付着する樹脂層を、好適には少なくとも気相処理してから、エッチング除去する。孔内部は、銅メッキで50容積%以上充填して、積層成形時による際の樹脂充填を容易にする。加工速度はドリルであける場合に比べて格段に速く、生産性も良好で、経済性にも優れたものが得られた。また、表裏、内層銅箔を接続するフリップチップ周囲の貫通孔は200μm〜300μmを使用するのが好ましい。この孔はメカニカルドリルであけるのが好適である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、少なくとも3層以上の銅箔層を有するフリップチップ搭載用高密度プリント配線板に関する。フリップチップのバンプ接続用パッドは、各層と、少なくとも1孔以上はレーザーで孔あけされた、孔径25〜180μmのブラインドビア孔及びスルーホールの導体で接続されており、各内層から周囲に広がる回路は、最後に表裏貫通するスルーホールの導体で裏面のハンダボールパッド用回路に接続する形態となっている。
【0008】ブラインドビア孔、貫通孔は、孔径25〜80μm未満は、好ましくはエキシマレーザー、YAGレーザーで孔あけする。孔径80〜180μmの孔は、銅箔表面を酸化金属処理又は薬液処理を施すか、或いは補助材料を配置し、好適には20〜60mJ/パルスから選ばれた炭酸ガスレーザーエネルギーを直接照射して孔を形成する。180μmを超える孔はメカニカルドリルで孔あけを行う。
【0009】まず、ガラス布基材両面銅張板にブラインドビア孔をあけ、デスミア処理後、これに銅メッキを付着させると同時に、好適にはブラインドビア孔内に50容積%以上銅を充填し、下部の内層となる側に回路を形成し、必要により、銅箔表面を酸化金属処理した後、ガラス布基材プリプレグと銅箔を配置し、積層成形後、表裏の銅箔を12μm以下とし、貫通孔を形成し、表層の銅箔を薬液で、好ましくは3〜7μmとなるまで溶解すると同時に、孔周辺に発生する銅箔バリをも溶解除去する。さらに銅メッキを施し、下面(裏)に回路形成、銅箔表面処理、積層成形を繰り返し、最後に内層銅箔を接続するようにして表裏を貫通する孔をあけた後、銅表層を厚さ方向に一部及びバリをエッチング除去し、銅メッキを施し、表裏に回路を形成して、必要によりメッキレジストを施し、ニッケルメッキ、金メッキを行なって多層プリント配線板とする。
【0010】孔あけにおいては、孔あけ速度等の点からも孔径80〜180μmの孔あけには炭酸ガスレーザーを用いるのが好ましい。炭酸ガスレーザーによる孔あけにおいて、レーザーを照射する面に、酸化金属処理又は薬液処理を施すか、融点900℃で、且つ結合エネルギー300kJ/mol 以上の酸化金属粉、カーボン、又は金属粉と水溶性樹脂とを混合した塗料を塗布して塗膜とするか、熱可塑性フィルムの片面に、総厚み30〜200μmとなるように付着させて得られる孔あけ用補助シートを配置し、好適には銅箔面に接着させて、その上から炭酸ガスレーザーを直接銅箔表面に照射し、銅箔を加工除去することによる、ブラインドビア孔及びスルーホール用貫通孔を形成する。。
【0011】本発明の炭酸ガスレーザー孔あけ用補助シートは、そのままでも使用可能であるが、孔あけ時に銅張板の上に置いて、できるだけ密着させることが、孔の形状を良好にするために好ましい。一般には、シートを銅張板の上にテープ等で貼り付ける等の方法で固定、密着して使用するが、より完全に密着するためには、得られたシートを、銅張板の表面に、樹脂付着した面を向け、加熱、加圧下にラミネートをかけるか、或いは樹脂表層面3μm以下を水分で事前に湿らした後、室温にて加圧下にラミネートすることにより、銅箔表面との密着性が良好となり、孔形状の良好なものが得られる。
【0012】樹脂組成物として、水溶性でない、有機溶剤に溶解可能な樹脂組成物も使用可能である。しかしながら、炭酸ガスレーザー照射で、孔周辺に樹脂が付着することがあり、この樹脂の除去が、水ではなく有機溶剤を必要とするため、加工上煩雑であり、又、後工程の汚染等の問題点も生じるため、好ましくない。
【0013】本発明で使用する両面銅張板は、公知の有機、無機基材補強の2層の銅の層が両面に存在する両面銅張板、またフィルム基材のもの等が使用可能であるが、強度の点から、ガラス布基材の銅張積層板が好適に使用される。基材としては、一般に公知の、有機、無機の織布、不織布が使用できる。具体的には、無機の繊維としては、E、S、D、Mガラス等の繊維等が挙げらる。又、有機繊維としては、全芳香族ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリベンザゾールの繊維等を用いた布が挙げられる。これらは、混抄でも良い。
【0014】本発明で使用される両面銅張積層板、プリプレグに使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、 多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。出力の高い炭酸ガスレーザー照射による加工でのスルーホール形状の点からは、ガラス転移温度が150℃以上の熱硬化性樹脂組成物が好ましく、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0015】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0016】これらのほかに特公昭41-1928、同43-18468、同44-4791、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149号公報等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いられ得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400〜6,000のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0017】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0018】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57-005406 に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0019】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelasticなゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、スチレン-イソプレンゴム、ポリエチレン-プロピレン共重合体、4-フッ化エチレン-6-フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の無機、有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。特に、レーザー加工のため、樹脂組成物に無機充填剤を添加し、さらに黒色の染料或いは顔料を加えるのが好ましい。
【0020】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。本発明で使用する補助材料の中の、融点900℃以上で、且つ、結合エネルギー300kJ/mol以上の金属化合物としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、酸化物としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、等が挙げられる。非酸化物としては、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物等、一般に公知のものが挙げられる。その他、カーボンも使用できる。更に、その酸化金属粉の混合物である各種ガラス類が挙げられる。又、カーボン粉が挙げられ、更に銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛等の単体、或いはそれらの合金の金属粉が使用される。これらは一種或いは二種以上が組み合わせて使用される。平均粒子径は、特に限定しないが、1μm以下が好ましい。
【0021】炭酸ガスレーザーの照射で分子が解離するか、溶融して飛散するために、金属が孔壁等に付着して、半導体チップ、孔壁密着性等に悪影響を及ぼさないようなものが好ましい。Na,K,Clイオン等は、特に半導体の信頼性に悪影響を及ぼすため、これらの成分を含むものは好適でない。配合量は、3〜97 容積%、好適には5〜95 容積%が使用され、好適には水溶性樹脂に配合され、均一に分散される。
【0022】補助材料の水溶性樹脂としては、特に制限はしないが、混練して銅箔表面に塗布、乾燥した場合、或いはシート状とした場合、剥離欠落しないものを選択する。例えばポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、澱粉等、一般に公知のものが使用される。金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉と樹脂からなる組成物を作成する方法は、特に限定しないが、ニーダー等で無溶剤にて高温で練り、熱可塑性フィルム上にシート状に押し出して付着する方法、水に水溶性樹脂を溶解させ、これに上記粉体を加え、均一に攪拌混合して、これを用い、塗料として熱可塑性フィルム上に塗布、乾燥して膜を形成する方法等、一般に公知の方法が使用できる。厚みは、特に限定はしないが、一般には総厚み30〜200μmで使用する。それ以外に銅箔表面に酸化金属処理又は薬液処理を施してから同様に孔あけすることが可能であるが、孔形状、表面銅箔汚染防止等の点からも上記補助材料を使用するのが好ましい。裏面は、貫通孔を形成した時に、炭酸ガスレーザーのテーブルの損傷を避けるために、金属板の上に水溶性樹脂を付着させたバックアップシートを、好適には樹脂面を銅箔と接着させて使用するのが好ましい。
【0023】銅箔面に加熱、加圧下にラミネートする場合、補助材料、バックアップシートともに塗布樹脂層を銅箔面に向け、ロールにて、温度は一般に40〜150℃、好ましくは60〜120℃で、線圧は一般に0.5〜20kg、好ましくは1〜10kgの圧力でラミネートし、樹脂層を溶融させて銅箔面と密着させる。温度の選択は使用する水溶性樹脂の融点で異なり、又、線圧、ラミネート速度によっても異なるが、一般には、水溶性樹脂の融点より5〜20℃高い温度でラミネートする。又、室温で密着させる場合、塗布樹脂層表面3μm以下を、ラミネート前に水分で湿らせて、水溶性樹脂を少し溶解させ、同様の圧力でラミネートする。水分で湿らせる方法は特に限定しないが、例えばロールで水分を塗膜樹脂面に連続的に塗布するようにし、その後、連続して銅張積層板の表面にラミネートする方法、水分をスプレー式に連続して塗膜表面に吹き付け、その後、連続して銅張積層板の表面にラミネートする方法等が使用し得る。
【0024】基材補強銅張板は、まず上記補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させてBステージとし、プリプレグを作成する。次に、このプリプレグを所定枚数重ね、両面に銅箔を配置して、加熱、加圧下に積層成形し、銅張板とする。銅箔の厚みは、好適には、両面銅張積層板においては、3〜18μm、多層板の内層銅箔としては5〜35μmである。両面処理箔も使用できる。
【0025】多層板は、好適にはガラス布基材補強した両面銅張積層板に、レーザーでブラインドビア孔あけし、必要によりデスミア処理後に銅メッキを施して、好適には孔内部銅メッキを50容積%以上充填させ、この内層となる下(裏)面に回路を形成し、必要により銅箔表面処理後、その上に、好適にはBステージのガラス基材補強プリプレグを配置し、その外側に銅箔を置き、加熱、加圧、好ましくは真空下に積層成形してから好適には炭酸ガスレーザーで貫通孔あけし、薬液にて表層銅箔を溶解して3〜7μmまで薄くし、同時に孔周辺に発生した銅箔バリをも除去してから、銅メッキを行い、銅張多層板とする。これを繰り返し、最後に貫通孔あけ、銅メッキ等をして所定の層を有する多層板を作成する。
【0026】孔径80〜180μmのブラインドビア孔及び貫通孔を形成する場合、両面銅張積層板の表面の銅箔上に酸化金属処理又は薬液処理を施すか、融点900℃以上で、且つ結合エネルギー300kJ/molの金属化合物粉3〜97容積%、好ましくは5〜95容積%含む樹脂組成物を塗膜として配置するか、熱可塑性フィルム上に総厚み30〜200μmとなるように付着させ、これを何も処理していない銅箔面に、テープ等で固定して密着させるか、加熱、加圧下にラミネートして貼り付けて密着させるか、或いは水溶性樹脂組成物表層に水分を含ませ、室温で加圧下にラミネートして水溶性樹脂表層を溶解させて貼り付けて密着させる等の方法で配置し、この上から、目的とする径まで絞った、好ましくは20〜60mJ/パルスから選ばれた高出力のエネルギーの炭酸ガスレーザー光を直接照射することにより、銅箔を加工して孔あけを行う。
【0027】炭酸ガスレーザーを、出力20〜60mJ/パルス 照射して孔を形成した場合、孔周辺はバリが発生する。これは、両面銅張積層板では、特に問題でなく、ブラインドビア孔の底に残存する樹脂層をデスミア処理、プラズマ処理等で除去し、そのまま銅メッキを行なって孔内部の50容積%以上を銅メッキする。この内層となる下面の銅箔に回路を形成し、必要により銅箔表面処理を施し、この上に、好ましくはガラス布基材プリプレグを配置し、その外側に銅箔を置き、積層成形して多層板とする。その後表裏の銅箔の厚さを好ましくは12μm以下にエッチングしてから、表層に補助材料を配置し、炭酸ガスレーザーで貫通孔あけし、薬液で表層銅箔を3〜7μmにするとともに、孔周辺に発生した銅箔バリをも溶解除去し、銅メッキを行う。これを繰り返して目的の層を有する多層板を作成する。内層の銅箔は、フリップチップ搭載部下部から周囲に回路を伸ばし、ランドを形成しておく。このランドの中心に貫通孔をあけて各層を接続させるとともに、裏面のハンダボールパッドに接続する回路部にも接続する形態とする。こうすることにより、フリップチップから発生した熱は上面に放熱するとともに、フリップチップの放熱用バンプを通し、周囲に広がる内層回路を通って下面のハンダボールを通ってマザーボードプリント配線板に拡散するようにして放熱を行うことができる。
【0028】また、非常に高密度の回路を形成するためには、表層層の銅箔を薄くする必要があり、好適には、炭酸ガスレーザー照射後、銅箔の両表面を平面的に機械的、或いは薬液でエッチングし、もとの金属箔の一部の厚さを除去することにより、同時にバリも除去し、且つ、得られた銅箔は細密パターン形成に適しており、高密度のプリント配線板に適した孔周囲の銅箔が残存したスルーホールメッキ用貫通孔を形成する。この場合、機械研磨よりはエッチングの方が、孔部のバリ除去、研磨による寸法変化等の点から好適である。
【0029】本発明の孔部に発生した銅のバリをエッチング除去する方法としては、特に限定しないが、例えば、特開平02-22887、同02-22896、同02-25089、同02-25090、同02-59337、同02-60189、同02-166789、同03-25995、同03-60183、同03-94491、同04-199592、同04-263488号公報で開示された、薬品で金属表面を溶解除去する方法(SUEP法と呼ぶ)による。エッチング速度は、一般には0.02〜1.0μm/秒 で行う。
【0030】炭酸ガスレーザーは、赤外線波長域にある9.3〜10.6μmの波長が一般に使用される。出力は好ましくは、20〜60mJ/パルスにて銅箔に孔をあける。エキシマレーザーは波長 248〜308μm、YAGレーザーは波長 351〜355μmが一般に使用される。波長はこれに限定されるものではない。80〜180μmの孔をあける場合には、加工速度は炭酸ガスレーザーが格段に速く、経済的である。
【0031】ビア孔、貫通孔を炭酸ガスレーザーであける場合、最初から最後まで20〜60mJ/パルス から選ばれるエネルギーを照射するのが良い。もちろんこのエネルギー内で孔あけ時にエネルギーを変えることは可能である。表層の銅箔を除去する場合、より高いエネルギーを選ぶことにより、照射ショット数が少なくてすみ、効率が良い。中間の樹脂層を加工する場合、必ずしも高出力が必要ではなく、基材及び樹脂により適宜選択できる。例えば銅箔を加工するエネルギーは、出力20〜60mJ/パルスで行い、基材や樹脂を加工するエネルギーは出力5〜35mJ/パルスから選ぶことも可能である。もちろん、最後まで高出力で加工することもできる。孔内部に内層銅箔がある場合、ない場合で加工条件を変化させることが可能である。
【0032】炭酸ガスレーザーで加工された孔内部の内層銅箔には1μm程度の樹脂層が残存する。また、メカニカルドリルで孔あけした場合、スミアが残る可能性があり、この樹脂層を除去することにより、さらなる銅メッキと内外層の銅との接続信頼性が良くなる。樹脂層を除去するためには、デスミア処理等の一般に公知の処理が可能であるが、液が小径の孔内部に到達しない場合、内層の銅箔表面に残存する樹脂層の除去残が発生し、銅メッキとの接続不良になる場合がある。従って、より好適には、まず気相で孔内部を処理して樹脂の残存層を完全に除去し、次いで孔内部を、好ましくは超音波を併用して湿潤処理する。
【0033】気相処理としては一般に公知の処理が使用可能であるが、例えばプラズマ処理、低圧紫外線処理等が挙げられる。プラズマは、高周波電源により分子を部分的に励起し、電離させた低温プラズマを用いる。これは、イオンの衝撃を利用した高速の処理、ラジカル種による穏やかな処理が一般には使用され、処理ガスとして、反応性ガス、不活性ガスが使用される。反応性ガスとしては、主に酸素が使用され、化学的に表面処理をする。不活性ガスとしては、主にアルゴンガスを使用する。このアルゴンガス等を使用し、物理的な表面処理を行う。物理的な処理は、イオンの衝撃を利用して表面をクリーニングする。低圧紫外線は、波長が短い領域の紫外線であり、波長として、184.9nm、253.7nm がピークの短波長域の波長を照射し、樹脂層を分解除去する。その後、樹脂表面が疎水かされる場合が多いため、特に小径孔の場合、超音波を併用して湿潤処理を行い、その後銅メッキを行うことが好ましい。湿潤処理としては、特に限定しないが、例えば過マンガン酸カリ水溶液、ソフトエッチング用水溶液等によるものが挙げられる。
【0034】孔内部は、必ずしも銅メッキで50容積%以上充填しなくても電気的導通はとれる。銅メッキとしては、一般に公知の銅メッキを行うことが可能である。しかしながら、メッキ時間を長くして孔内部を充填すると作業性が悪く、孔充填に適したパルスメッキ用添加剤(日本リロナール<株>製)を用いた工法等が好適に使用される。多層化する場合、銅箔表面は、好適には表面処理を行う。具体的には、酸化金属処理としては、黒色酸化銅処理、MM処理(MacDermid社)等、薬液処理としてはCZ処理(メック社)等が挙げられる。
【0035】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
【0036】実施例12,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン900部、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン100部を150℃に熔融させ、撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ<株>製)400部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN-220F、住友化学工業<株>製)600部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛0.4部を加え、溶解混合し、これに無機充填剤(商品名:焼成タルク、日本タルク<株>製)500部、及び黒色顔料8部を加え、均一撹拌混合してワニスAを得た。このワニスを厚さ50μmのガラス織布に含浸し150℃で乾燥して、ゲル化時間(at170℃)120秒、ガラス布の含有量が35重量%のプリプレグ(プリプレグB)を作成した。また、ガラス含有量30重量%のプリプレグCを作成した。
【0037】厚さ35μmの電解銅箔を、上記プリプレグB 1枚の片面に配置し、その反対面に35μm銅箔キャリア付き3μm電解銅箔を配置し、200℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み60μmの両面銅張積層板Dを得た。その後35μmの銅キャリアシートを剥離した。
【0038】一方、酸化金属粉として黒色酸化銅粉(平均粒子径:0.8μm)800部に、ポリビニルアルコール粉体を水に溶解したワニスに加え、均一に攪拌混合した。これを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム片面上に、厚さ30μmとなるように塗布し、110℃で30分間乾燥して、金属化合物粉含有量45 容積%の補助材料Eを作成した。更に厚さ50μmのアルミニウム箔上に上記ポリビニルアルコールワニスを塗布、乾燥して樹脂層厚み20μmのバックアップシートFを作成した。上記両面板の3μm銅箔側に補助材料Eを、樹脂面が銅箔側を向くように配置し、100℃でラミネートして両面に接着してから、孔径100μmのブラインドビア孔を20mm角内の中央6mm角内に44個直接炭酸ガスレーザーで、出力25mJ/パルス でまず1ショット、次に出力を10mJ/パルス にして1ショット、20mJ/パルス にて1ショット照射して、70ブロックにビア孔をあけ、デスミア処理後に銅メッキを行なって、ビア孔内部を90容積%充填すると同時に表層層に厚さ10μmに銅メッキを付着させた。その後、裏面にメッキレジストを付着させ、表面の厚さ35μmの電解銅箔を12μmまで溶解した。メッキレジスト剥離後、裏面に回路を形成し、黒色酸化銅処理を行い、その回路の上に上記プリプレグCを置き、その外側に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、同様に積層成形して3層板とした。
【0039】この3層板の裏面に、同様に補助材料Eを配置し、表面には上記バックアップシートFを同様にラミネートしてから、裏面から炭酸ガスレーザーのエネルギー25mJ/パルス にて3ショット照射して孔径100μmの貫通孔を52個あけた。この両面の銅箔層を、SUEP処理にて孔周辺の銅箔のバリを除去するとともに、表面の銅箔も4μmまで溶解した。その後、表層及び貫通孔に銅メッキを9μm付着させ、この裏面に同様に回路形成、黒色酸化銅処理を行い、プリプレグCを置き、12μm銅箔を配置し、同様に積層成形して4層板とした。この4層板の表裏に同時に補助材料、バックアップシートを付着させ、フリップチップ搭載部の周囲に、内層の銅箔と接続するようにして孔径150μmの貫通孔を炭酸ガスレーザーのエネルギー30mJ/パルスにて5ショット照射して100個あけた。これをプラスママシーンに入れて処理後、SUEP法にて表裏層銅箔を3μmまで溶解すると同時に表裏及び内層銅箔バリを溶解除去し、銅メッキを10μm施してから、表裏を既存の方法にて回路(ライン/スペース=50/50μm)を形成し、ハンダボール用ランド等を形成し、少なくともフリップチップ搭載用パッド部、ハンダボールパッド部を除いてメッキレジストで被覆し、ニッケル、金メッキを施し、プリント配線板を作成した。この上に大きさ6mm角のフリップチップを搭載した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0040】実施例2融点58℃の水溶性ポリエステル樹脂を水に溶解した樹脂水溶液の中に、金属化合物粉(SiO257重量%、MgO 43重量%、平均量子径:0.4μm)を加え、均一に攪拌混合した後、これを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、厚さ20μmとなるように塗布し、110℃で25分間乾燥し、金属化合物含有量70容積%のフィルム状補助材料Gとした。
【0041】一方、実施例1のプリプレグBを1枚使用し、裏面に厚さ7μm、表面に厚さ35μmの電解銅箔を置き、実施例1と同様に積層成形し、両面銅張積層板を得た(図1(1))。この裏面に上記孔あけ補助材料Gを配置して、100℃のロールにて、線圧2kgfでラミネートし、この上から、炭酸ガスレーザーの出力30mJ/パルスにて3ショット照射してブラインドビア孔60ホールをあけた。
【0042】補助材料Gを剥離し(図1(2))、7μm銅箔側にエッチングレジストを付着させ、35μm銅箔を7μmまで溶解除去し、エッチングレジスト剥離後にプラズマ装置の中に入れ、酸素気流中で10分、更にアルゴン気流中で5分処理を行い、その後過マンガン酸カリ水溶液にて超音波併用で湿潤処理を行なって、実施例1と同様にパルス銅メッキを行い、ビア孔内部90%を銅メッキで充填し、表面には10μmの銅メッキを付着させた(図1(3))。この下面(裏)に回路を形成し、黒色酸化銅処理を施し、その上に上記プリプレグCを1枚配置し、その外側に厚さ12μmの電解銅箔を置き(図1(4))、同様に積層成形した。この4層銅張板の片面に上記補助材料G、反対面に上記バックアップシートFを配置し、同様にラミネートして接着させてから40mJ/パルス にて4ショット照射し、貫通孔を40ホールあけた(図1(5))。この両側の銅箔をSUEPにて厚さ3μまで溶解するとともに、内外層の銅箔バリをも溶解除去し、同様にパルス銅メッキを施し、孔内部を87%充填し、表層には厚さ10μm付着させた。これを繰り返して5層の多層板を作成した。この表裏層の銅箔をSUEPにて厚さ3μmとした。このフリップチップを搭載する周囲に孔径200μの貫通孔を、フリップチップ搭載部にあけられた貫通孔と接続する各層の回路と接続するようにメカニカルドリルであけ、デスミア処理後、銅メッキを10μm付着させた。この孔内部に孔埋め樹脂(商品名;BT-S735、三菱ガス化学<株>製)で充填し、110℃で2時間、更に160℃で4時間熱硬化し、この表面を研磨し、デスミア処理後銅メッキを5μm付着させた(図1(7))。これを用い、実施例1と同様にプリント配線板とし、フリップチップを搭載し、裏面にはハンダボールを、貫通孔の上のパッドに接合し、プリント配線板を作成し、フリップチップを搭載した(図1(8))。評価結果を表1及び表2に示す。
【0043】比較例1実施例1の両面銅張板を用い、表面処理を行なわずに炭酸ガスレーザーで同様に孔あけを行なったが、孔はあかなかった。
【0044】比較例2実施例1の両面銅張板を用い、表裏面の銅箔を孔径100μmでエッチング除去し、炭酸ガスレーザーのエネルギー10mJ/パルス にて同様のショット数で孔あけを行なったが、ガラス繊維のケバが孔壁に見られ、且つ表裏の孔位置が最大15μmズレを生じ、その後の多層化が実施できなかった。
【0045】比較例3エポキシ樹脂(商品名:エピコート5045)2,000部、ジシアンジアミド70部、2ーエチルイミダゾール2部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、攪拌混合して均一分散してワニスHを得た。これを厚さ100μmのガラス織布に含浸、乾燥して、ゲル化時間140秒(at170℃),ガラス含有量55重量%のプリプレグIを作成した。また、厚さ50μmのガラ織布を使用し、ゲル化間180秒、ガラス含有量33重量%のプリプレグJを得た。このプリプレグIを2枚使用し、両面に12μmの電解銅箔を置き、190℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して両面銅張積層板Kを得た。この銅張積層板Kの両面に回路を形成し、銅箔表面を黒色酸化銅処理し、更にその外側に上記プリプレグJを配置し、その外側に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、同様に積層成形して4層板を作成した。この上下の銅箔を径100μmでエッチング除去し、炭酸ガスレーザーエネルギー10mJ/パルス にてブラインドビア孔をあけ、またその他はメカニカルドリルにて孔径200μmの貫通孔を、孔壁間150μmで孔あけし、デスミア処理後に、SUEP処理を行わずに銅メッキを10μm付着させた。これを用いて、プリント配線板を作成し、フリップチップを搭載した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0046】比較例4比較例3において、両面銅張積層板Kを用い、炭酸ガスレーザー孔あけにおいて、内層のスルーホールとなる箇所の内層の銅箔をあらかじめ孔径100μmとなるように銅箔をエッチング除去し、回路を形成しておき、また最後に表裏の同位置も径100μmで銅箔をエッチング除去しておき(図2(1)、エネルギー10mJ/パルス にて貫通孔あけを行なった(図2(2)。その後は比較例3と同様にして、SUEP処理を行わずに、デスミア処理を1回施し、銅メッキを10μm施し(図2(3)、表裏に回路を形成し、同様にプリント配線板を作成し、フリップチップを搭載した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0047】
【表1】


【0048】
【表2】


【0049】<測定方法>1)表裏、内層孔位置のズレワークサイズ250mm角内に、孔径150μmの孔を900孔/ブロック として70ブロック(孔計63,000孔)作成した。炭酸ガスレーザー及びメカニカルドリルで孔あけを行ない、1枚の銅張板に63,000孔をあけた場合の表裏と内層銅箔のズレの最大値を示した。
2)回路パターン切れ、及びショート実施例、比較例で、孔のあいていない板を同様に作成し、ライン/スペース=50/50μm の櫛形パターンを作成した後、拡大鏡でエッチング後の200パターンを目視にて観察し、パターン切れ、及びショートしているパターンの合計を分子に示した。
3)ガラス転移温度DMA法にて測定した。
4)スルーホール・ヒートサイクル試験孔径150μmのスルーホール孔に径250μmのランドを作成し、900孔を表裏交互につなぎ、1サイクルが、260℃・ハンダ・浸せき30秒→室温・5分 で、200サイクルまで実施し、抵抗値の変化率の最大値を示した。
5)ランド周辺銅箔切れ表裏の孔周辺に径250μmのランドを形成した時の、ランド部分の銅箔欠けを観察した。
6)プレッシヤークッカー処理後の絶縁抵抗値端子間(ライン/スペース=50/50μm)の櫛形パターンを作成し、この上に、それぞれ使用したプリプレグを配置し、積層成形したものを、121℃・203kPa にて所定時間処理した後、25℃・6%RH で2時間後処理を行い、500VDCを印加して端子間の絶縁抵抗値を測定した。
7)耐マイグレーション性上記6)の試験片を85℃・85%RH、50VDC印加して端子間の絶縁抵抗値を測定した。
8)放熱性パッケージを同一マザーボードプリント配線板にハンダボールで接着させ、1000時間連続使用してから、パッケージの温度を測定した。
【0050】
【発明の効果】本発明は、少なくとも3層の銅の層を有するフリップチップ搭載用プリント配線において、少なくともフリップチップ搭載部のパッドが、各内層の銅箔回路と、少なくとも1孔以上がレーザーで孔あけされた孔径25〜300μmのブラインドビア孔及びスルーホールの導体で全て接続されており、該内層回路は周囲に広がり、該周囲に広がる回路は表裏貫通するスルーホールの導体に接続し、スルーホールの導体は裏面の放熱用及び信号伝播用等のハンダボールパッドに接続するランドに接続している形態のプリント配線板を提供する。本発明によれば、スルーホールの導体と各層との接続信頼性に優れ、表層銅箔同士の接続信頼性に優れ、放熱性に優れ、かつ高密度のプリント配線板が提供される。本発明はさらに、孔径80〜180μmのブラインドビア孔及び貫通孔を、銅箔表面に酸化金属処理又は薬液処理を施すか、或いは孔あけ補助材料として、少なくとも、融点900℃以上で、且つ結合エネルギー300kJ/mol以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉を3〜97 容積%含む樹脂組成物よりなる塗膜を形成するか、熱可塑性フィルムの片面に総厚み30〜200μmとなるように樹脂皮膜を付着させたシートを配置し、好適には銅箔面と接着させ、この上から、好ましくは20〜60mJ/パルスから選ばれたエネルギーの炭酸ガスレーザーを直接照射してブラインドビア孔及び貫通孔あけを行ない、その後、孔内部の50容積%以上を銅メッキで充填し、この下面に回路を形成し、必要により銅箔回路表面を酸化金属処理又は薬液処理を施し、この回路側の面にガラス布基材プリプレグ及び銅箔を配置し、積層成形後にさらにブラインドビア孔をあけ、その後表層の銅箔の厚さ方向の一部の厚さを薬液でエッチングで溶解し、同時に孔周辺に発生した銅箔バリをも溶解除去し、ついで銅メッキを行う操作を繰り返して多層板をビルドダウン方式で作成する高密度多層プリント配線板を提供する。本発明によれば、熱硬化性樹脂として、多官能性シアン酸エステル樹脂組成物を用いることにより、得られたプリント配線板は、耐熱性に優れ、且つ耐マイグレーション性、プレッシャー後の電気絶縁性等の信頼性にも優れたフリップチップ用プリント配線板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の両面銅張板の炭酸ガスレーザーによるブラインドビア孔あけ(2)及びパルス銅メッキ(3)、3層板(5)作成、貫通孔あけ(5)、パルス銅メッキ(6)、5層板の炭酸ガスレーザーによる貫通孔あけ、外周部のメカニカルドリルによる貫通孔あけと穴埋め樹脂による穴埋め、パルス銅メッキ(7)、フリップチップを搭載した半導体プラスチックパッケージ(8)の各工程を示す工程図である。
【図2】比較例4の多層板の炭酸ガスレーザーによる孔あけ及び銅メッキの工程図である(SUEP無し)。
【符号の説明】
a ガラス布基材両面銅張積層板
1 厚さ35μmの電解銅箔
b2 厚さ7μmの電解銅箔
b3 SUEPで残存厚さ7μmまで溶解した後、厚さ10μmのメッキをした銅箔
c 炭酸ガスレーザーで孔あけされたビア孔部
d 発生した銅箔バリ
e プリプレグC
f 銅箔
g 3層板
h 炭酸ガスレーザーで孔あけされた貫通孔部
i 発生した銅箔バリ
1,j2,j3 パルス銅メッキした貫通孔部
k 孔埋めした樹脂
l 半導体チップ
m 半導体チップバンプ
n ハンダボールパッド
o ハンダボール
p パルス銅メッキしたビア孔部
q ズレを生じた内層銅箔
r 通常の方法で銅メッキした貫通孔
s 両面銅張積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも3層以上の銅箔層を有するフリップチップ搭載用多層プリント配線板において、少なくともフリップチップ搭載部のパッドが各内外層の回路と、少なくとも1孔以上がレーザーで孔あけされた、孔径25〜300μmのブラインドビア孔及びスルーホールの導体で接続され、該内層回路は周囲に広がり、該周囲に広がる回路はブラインドビア孔及び表裏貫通したスルーホール導体を介して、裏面でハンダボールパッドに接続している形態であることを特徴とする高密度多層プリント配線板。
【請求項2】 孔径80〜180μmのブラインドビア孔及び貫通孔を有するプリント配線板が、銅箔を除去できるに十分な炭酸ガスレーザーのエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、直接炭酸ガスレーザーを照射して、両面銅張板の銅箔を加工して、ブラインドビア孔及び貫通孔を形成するために、銅箔表面に酸化金属処理又は薬液処理を施すか、あるいは孔あけ用補助材料として、少なくとも、融点900℃以上で、且つ結合エネルギー300kJ/mol 以上の金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉の1種或いは2種以上の成分を3〜97 容積%含む樹脂組成物層を配置した後、炭酸ガスレーザーを直接照射して、銅箔を孔あけ加工してブラインドビア孔あけを行い、銅メッキして得られる両面銅張板を用い、この内層となる下面の銅箔に回路を形成した後、その回路側にプリプレグ及び銅箔を配置し、積層成形して得られる多層板の両面銅箔を12μm以下になるようにし、次に貫通孔を形成してから、少なくとも表裏面の銅箔を12μm以下となるように厚さ方向に一部薬液でエッチング除去してから、同じく銅メッキして回路を下に形成し、これを繰り返していき、最後に各層の銅箔と接続するように表裏を貫通する孔をあけ、薬液によって表裏層の銅箔を厚さ方向に一部溶解してから銅メッキして、表裏に回路を形成し、貴金属メッキを施して得られることを特徴とする請求項1記載の高密度多層プリント配線板。
【請求項3】 ブラインドビア孔及び貫通孔をあけた後の銅箔のエッチング除去が、薬液で表層の銅箔の一部を溶解して残存銅箔厚さ3〜7μmとすると同時に、孔部に張り出した銅箔バリをも溶解除去することを特徴とする請求項2記載の高密度プリント配線板。
【請求項4】 ブラインドビア孔及び貫通孔を銅メッキで50容積%以上充填することを特徴とする請求項1、2又は3記載の高密度プリント配線板。
【請求項5】 両面銅張積層板及びプリプレグがガラス布基材で補強されたものである請求項2、3又は4記載の高密度プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−111233(P2001−111233A)
【公開日】平成13年4月20日(2001.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−286261
【出願日】平成11年10月7日(1999.10.7)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】