説明

フリーアクセスフロアのパネル設置構造

【課題】被覆パネルの小型化や軽量化を図ったり、部品数を減らして組立の手間やコストを低減したりすることができると共に、フリーアクセスフロア上において有効に利用することができる領域が狭くなることを防止することができるフリーアクセスフロアのパネル設置構造を提供する。
【解決手段】基礎床面41上方に免震装置44を介して設けられた免震側パネル48と、基礎床面41上方に免震装置44を介さずに設けられ免震側パネル48との間に開口空間51を挟んで配置された非免震側パネル52と、免震側パネル48と非免震側パネル52の間に掛け渡されて開口空間51を覆う被覆パネル42を有するフリーアクセスフロアのパネル設置構造40であって、被覆パネル42の片持ち支持が可能な支持手段54,56を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎床面の上方に免震装置を介して水平移動可能に設けられたフロアパネルと、基礎床面の上方に水平移動不能に設けられたフロアパネルとの間に開口する空間を覆うようにパネルが設けられた、フリーアクセスフロアのパネル設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の建築構造物の免震構造としては、部屋の中央部及びその周囲の領域の基礎床面上には免震装置を設けた免震構造にして、それ以外の部屋の壁側の領域には基礎床面上に免震装置が設けられていない非免震構造にすることが行なわれてきた。
【0003】
このような建築構造物の、免震構造と非免震構造を備えた部屋には、免震構造と非免震構造それぞれに対応して互いに別々の支持脚とフロアパネルからなるフリーアクセスフロアが設けられていた。
【0004】
即ちフリーアクセスフロアには、基礎床面上に免震装置を設けた免震構造の上に設けられたフロアパネル(免震側パネル)と、基礎床面上に免震装置が設けられていない非免震構造の上に設けられたフロアパネル(非免震側パネル)が用いられ、これらの間に開口する空間を覆うために、それらの間に緩衝部パネル(被覆パネル)が設けられるようになっていた。
【0005】
従来のフリーアクセスフロアのパネル設置構造としては、特許文献1の図1及び図2に示すように、建築構造物内の部屋において、基礎床面14から上方に離れた高さ位置に、免震部パネル11とボーダー部パネル12それぞれの上面が同一の平面上に連続するように構成し、免震部パネル11とボーダー部パネル12の間に開口する空間の上を覆うスライドパネル13が配置されるようになっていた(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1の図1に示すように、免震部パネル11は、建築構造物内の部屋の中央部側において、基礎床面14上に設けられた免震装置15の上に立設された免震部パネル支持手段16により支持されるようになっていた。そして、免震部パネル11は、互いに隣合うように整列して、縦横両方向に複数配置されるようになっていた。
【0007】
一方、ボーダー部パネル12は、特許文献1の図1に示すように、建築構造物内の部屋の壁面18近傍において、基礎床面14上に立設されたボーダー部パネル支持手段17により支持されるようになっていた。そしてボーダー部パネル12は、互いに隣合うように整列して、壁面18に沿って複数配置されるようになっていた。
【0008】
このためボーダー部パネル12の方は、地震等による建築構造物の振動や変位が伝わるのを防止する免震装置が備えられていないため、免震装置15により上記振動や変位が直接伝わるのを防止されるようになっている免震部パネル11の方とは異なる動きをするようになっていた。
【0009】
このため、免震部パネル11とボーダー部パネル12は、地震等による建築構造物の振動や変位により互いに衝突することがないように、それらは水平方向に所定の間隔をおいて互いに離れて配置されており、それらの間に開口する空間が形成されるようになっていた。このため、その開口する空間の上を覆うスライドパネル13が設けられていた。
【0010】
特許文献1の図1及び図2に示すように、従来のスライドパネル13は、その長さ方向の基端部(図中右端部)が、水平面上に複数配置された免震部パネル11のうち、それらの最外周部に配置された免震部パネル11を支持する免震部パネル支持手段16に支持されていた。
【0011】
そして従来のスライドパネル13は、その長さ方向の先端部(図中左端部)が、免震部パネル11とボーダー部パネル12の間の開口空間の、ボーダー部パネル12側に、基礎床面14上に立設されたスライドパネル支持手段19,20により支持された下床板21と、下床板21上に固定された楔ブロック22のそれぞれに支持されていた。
【0012】
特許文献1の図7(a)に示すように、地震等による建築構造物の振動や変位により、ボーダー部パネル12に対して免震部パネル11が相対的に離隔した場合に、従来のスライドパネル13は、その長さ方向の先端部が下床板21の端部から外れて脱落することがないように、下床板21の長さを長くしてその上を摺動するようになっていた。
【0013】
また、特許文献1の図7(c)に示すように、地震等による建築構造物の振動や変位により、ボーダー部パネル12に対して免震部パネル11が相対的に近接した場合に、従来のスライドパネル13は、その長さ方向の先端部がボーダー部パネル12の上に乗り上げて持ち上がるようになっていた。
【0014】
このような従来のスライドパネル13は、ボーダー部パネル12と免震部パネル11の上に配置されるような他の従来の緩衝板(特許文献2参照)とは異なり、ボーダー部パネル12及び免震部パネル11の上面と同一の平面上にその上面を配置することができるので、前記他の従来の緩衝板のようにボーダー部パネル12に対して段差が生じないようになっていた。
【0015】
また、従来のスライドパネル13は高さや補強リブを有しているので、その上に重量物を一時的に置いたり持ち運びしたりすることができるようになっていた。
【0016】
また、従来のスライドパネル13は、その長さ方向の寸法が平常時の免震部パネル11とボーダー部パネル12の間に開口する空間の長さ寸法より大きい場合には、その長さ方向の基端部側を切断することにより、その長さ方向の寸法を小さくして調整することができるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−114621号公報
【特許文献2】実開平7−42835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来のスライドパネル13は、その長さ方向の両端部が免震部パネル支持手段16、下床板21及び楔ブロック22のそれぞれに支持されるようになっているために、以下のような問題があった。
【0019】
すなわち、上記従来のスライドパネル13においては、地震等による建築構造物の振動や変位によりボーダー部パネル12から免震部パネル11が相対的に離隔した場合に、スライドパネル13の長さ方向の先端部が下床板21の上を長く摺動することができるように、下床板21の長さ方向(スライドパネル13の長さ方向と同方向)の寸法を大きくしなければならなかった。
【0020】
下床板21の長さ方向の寸法が大きなものになると、その長さ方向の両端部それぞれを、基礎床面14上に立設する2つのスライドパネル支持手段19,20により支持する必要があるので、その2つのスライドパネル支持手段の設置作業に手間が掛かるという問題があった。
【0021】
また、下床板21又はそれを支持するスライドパネル支持手段20と、免震部パネル11又はそれを支持する免震装置15、免震部パネル支持手段16とが、地震等により互いに衝突することがないように、免震部パネル11とボーダー部パネル12の間の間隔の寸法を大きなものにする必要があるため、その分スライドパネル13及び下床板21の長さ方向の寸法も大きくなってしまうという問題があった。
【0022】
また、スライドパネル13の長さ方向の寸法が大きくなると、スライドパネル13の上面は機器や装置を載置する等の利用ができない領域となっているため、その分建築構造物の部屋内のフリーアクセスフロア上において有効に利用することができる領域が狭くなってしまうという問題もあった。
【0023】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、被覆パネルの小型化や軽量化を図ったり、部品数を減らして組立の手間やコストを低減したりすることができると共に、フリーアクセスフロア上において有効に利用することができる領域が狭くなることを防止することができるフリーアクセスフロアのパネル設置構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明によるフリーアクセスフロアのパネル設置構造は、
基礎床面の上方に免震装置を介して水平移動可能に設けられた免震側パネルと、
基礎床面の上方に免震装置を介さないで設けられ前記免震側パネルとの間に開口する空間を挟んで配置された非免震側パネルと、
前記免震側パネルと前記非免震側パネルの間に掛け渡されて前記開口する空間を覆う被覆パネルとを有するフリーアクセスフロアのパネル設置構造であって、
前記被覆パネルの片持ち支持が可能な支持手段を備えたことを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明によるフリーアクセスフロアのパネル設置構造は、
前記支持手段は、前記被覆パネルが回動可能な構造を備えたことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明によるフリーアクセスフロアのパネル設置構造は、
前記被覆パネルはその基端部に回動摺動部と係合部とを有し、
前記支持手段は、
前記被覆パネルの回動摺動部を回動可能に嵌合する嵌合凹部を有する第1部材と、
前記被覆パネルの係合部に係合することにより前記被覆パネルが水平状態からその先端部が前記基端部側を回動中心にして下方に回動するのを規制する係止部を有する第2部材を備えたことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明によるフリーアクセスフロアのパネル設置構造は、
前記基礎床面上に立設した支持脚に固定され、その上に前記被覆パネルの先端部を載置することができる受け板部材を設けたことを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明によるフリーアクセスフロアのパネル設置構造は、
前記被覆パネルは、互いの隣接部において連結される複数の押出形材により形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
このような本発明のフリーアクセスフロアのパネル設置構造によれば、
基礎床面の上方に免震装置を介して水平移動可能に設けられた免震側パネルと、
基礎床面の上方に免震装置を介さないで設けられ前記免震側パネルとの間に開口する空間を挟んで配置された非免震側パネルと、
前記免震側パネルと前記非免震側パネルの間に掛け渡されて前記開口する空間を覆う被覆パネルとを有するフリーアクセスフロアのパネル設置構造であって、
前記被覆パネルの片持ち支持が可能な支持手段を備えたことにより、
被覆パネルの小型化や軽量化を図ったり、部品数を減らして組立の手間やコストを低減したりすることができると共に、フリーアクセスフロア上において有効に利用することができる領域が狭くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40を示す側面図である。
【図2】図1に示すフリーアクセスフロアのパネル設置構造40において緩衝部パネル42近傍を示す拡大図である。
【図3】図1における緩衝部パネル42の、その中空押出形材74の1つを省略して示す側面断面図である。
【図4】図3における中空押出形材70の正面断面図である。
【図5】図3における中空押出形材72の正面断面図である。
【図6】図3における中空押出形材74の正面断面図である。
【図7】図3における中空押出形材76の正面断面図である。
【図8】図1における緩衝部パネル42の製造方法を説明するための図であって、中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに中空押出形材72の嵌め込み凸部72dを嵌合させると共に、中空押出形材70の係合部70fに中空押出形材72の係合部72fを係合させた状態を示す図である。
【図9】図2における支持部材54の正面断面図である。
【図10】図2における係止部材56の正面断面図である。
【図11】図2における緩衝部パネル42と支持部材54,係止部材56との組立て方法を説明するための分解断面図である。
【図12】図2における緩衝部パネル42と支持部材54,係止部材56とを組立てた状態を説明するための図である。
【図13】図12に示す緩衝部パネル42と支持部材54,係止部材56との組立てた状態からの動作を説明するための図である。
【図14】図2における受け板部材60を示す長さ方向の断面図である。
【図15】地震等による建築構造物の振動や変位により免震部パネル48と固定部パネル52が相対的に近接した場合における、図2に示すフリーアクセスフロアのパネル設置構造40における緩衝部パネル42の動作を示す拡大図である。
【図16】地震等による建築構造物の振動や変位により免震部パネル48と固定部パネル52が相対的に離隔した場合における、図2に示すフリーアクセスフロアのパネル設置構造40における緩衝部パネル42近傍を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のフリーアクセスフロアのパネル設置構造を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1ないし図16は、本発明の一実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40について説明するために参照する図である。
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40は、建築構造物の部屋内において、コンクリートを用いた基礎床面41の上方に免震装置44を介して設けられた免震部パネル48(免震側パネル)と、基礎床面41の上方に免震装置44を介さずに設けられた固定部パネル52(非免震側パネル)との間に開口する空間51を覆うように緩衝部パネル42(被覆パネル)が設けられている。
【0033】
そして緩衝部パネル42は、図1に示すように、基礎床面41から上方に離れた高さ位置に、その上面が免震部パネル48と固定部パネル52の上面と同一の水平面上に連続するように、免震部パネル48と固定部パネル52のそれぞれと隣合うように並んで、複数配置されるようになっている。
【0034】
より具体的には図1に示すように、免震部パネル48は、建築構造物内の、壁45から離れた部屋の中央部側において、基礎床面41上に設けられた免震装置44の免震構造部材44a上に立設された複数の支持脚46により、その四隅部を下側から支持されている。
【0035】
そして、免震部パネル48は、その上面の平面形状が略正方形に形成されており、基礎床面41から上方に離れた高さ位置において、上から見て縦横二軸両方向に互いに隣合うように整列して、水平面状に複数配置されている。
【0036】
一方、固定部パネル52は、図1に示すように、建築構造物内の部屋の壁45近傍において、基礎床面41上に免震装置44を介さずに直接立設された支持脚50により、その四隅部を下側から支持されている。
【0037】
そして固定部パネル52は、その上面の平面形状が略正方形に形成されており、基礎床面41から上方に離れた高さ位置において、壁45に沿って互いに隣合うように複数配置されている。
【0038】
このため固定部パネル52の方は、免震装置44を介さずに支持されているため、免震装置44により地震等による建築構造物の振動や変位が直接伝わるのを防止されるようになっている免震部パネル48の方とは異なる動きをするようになっている。
【0039】
このため、免震部パネル48と固定部パネル52は、地震等による建築構造物の振動や変位により互いに衝突することがないように、それらは水平方向に所定の間隔をおいて互いに離れて配置されており、それらの間に開口空間51が形成されるようになっている。
【0040】
このような免震部パネル48,固定部パネル52間の所定の間隔は、予め地震等による建築構造物の揺れ等を予測解析した結果を用いて定められるものであり、たとえ同じ建築構造物であってもその階によってその間隔の寸法が異なる値に設定されている。
【0041】
そして、図2に示すように、緩衝部パネル42は図中その上下方向に、免震部パネル48と固定部パネル52のそれぞれと略同一の高さを有しており、免震部パネル48と固定部パネル52の間の開口空間51を覆うように、それらの間に配置されるようになっている。
【0042】
すなわち、緩衝部パネル42は、図2に示すように、その長さ方向(図中左右方向)の基端部(図中右端部)が、同一水平面状に複数配置された免震部パネル48のうち、それらの最外周部に配置された免震部パネル48を支持する支持脚46の上に固定された、支持部材54(第1部材)と係止部材56(第2部材)とから構成される支持手段により片持ち支持が可能な構造になっている。
【0043】
そして緩衝部パネル42は、その長さ方向の先端部(図中左端部)が、固定部パネル52を支持する支持脚50と隣り合って基礎床面41上に立設された、支持脚58により支持された受け板部材60の上に載置されるようになっている。
【0044】
図3に示すように、緩衝部パネル42は、その先端部(図中左端部)に、断面の外形が略逆台形状の中空押出形材70が配置されており、その基端部(図中右端部)には、断面の外形が略矩形で、略角筒状の中空押出形材76が配置されている。
【0045】
中空押出形材70,76の図3中横方向において互いに対向するそれぞれの側面板部71,73の間には、断面の外形が略矩形で、略角筒状の2つの中空押出形材72,74が配置されている。
【0046】
そして緩衝部パネル42は、中空押出形材70,72,74,76の互いに隣合う側面板部同士が、図4から図7に示すそれらの嵌め込み凹部70d,嵌め込み凸部72d,係合部70f,72f間の嵌合や係合を介して互いに連結されており、それらの上面70a,72a,74a,76aの上面にわたってフロアタイル78が貼り付けられている。
【0047】
すなわち、緩衝部パネル42は、図3に示す中空押出形材70,72,74,76それぞれの互いに隣合う側面板部の図中上部において、図4,5,6に示す中空押出形材70,72,74の嵌め込み凹部70dに、図5,6,7に示す中空押出形材72,74,76の嵌め込み凸部72dがそれぞれ嵌め込まれて嵌合するようになっている。
【0048】
また図3に示すように、上記互いに隣合う側面板部の図中下部において、図4,5,6に示す中空押出形材70,72,74の係合部70fと、図5,6,7に示す中空押出形材72,74,76の係合部72fのそれぞれが接触して係合するようになっている。
【0049】
また図3に示す中空押出形材70,72は、互いに係合した係合部70f,72f間を摩擦撹拌接合手段(Friction Stir Welding)により互いに接合されるようになっている。
【0050】
また図3に示す中空押出形材72,74と、中空押出形材74,76も、中空押出形材70,72と同様に、互いに係合した段差部70f,72f間を摩擦撹拌接合手段により互いに接合されるようになっている。図3における黒い半円部分が、摩擦撹拌接合手段により接合された接合部Wである。
【0051】
ここで、摩擦撹拌接合手段とは、例えば、特許第2712838号,第2792233号公報に記載されているように、略円柱形状の部分と、その部分の先端部から同一軸線方向に突出するネジ棒状の突起部(以下、プローブと呼ぶ)とを有する工具のプローブを、その軸線回りに回転させながらその先端部を、接合部同士の接合部分に対応する面、又はその近傍部の面にほぼ垂直に押し付けるようになっている。
【0052】
そしてこのときの、回転するプローブと接合部材との間の摩擦熱で、接合部材を液状化手前まで軟化させると共に、この軟化した接合部材の肉厚内に前記プローブがその先端部から入り込んで、接合部材同士間において回転するプローブの撹拌作用により塑性流動を生じさせ、接合部材同士の接合部分の金属組織を練り混ぜることにより一体化させた後、温度降下により固化するような接合手段をいう。
【0053】
このような摩擦撹拌接合手段による接合により、緩衝部パネル42は、中空押出形材70,72,74,76の側面板部同士が一体的に連結されており、その上面全体の平面形状が略長方形になっている。
【0054】
図3に示すように、緩衝部パネル42の中空押出形材70,72,74,76は、その断面が図4ないし図7に示すような、アルミニウム製の中空状の押出形材により形成されており、その押出し方向(図中紙面垂直方向)に所定の長さを有している。
【0055】
それらの中空押出形材は、その押出し方向に垂直な断面の外形が略矩形状に形成されているので、それらの部材各々は略角筒状に形成されている。
【0056】
この中空押出形材70,72,74,76の押出し方向の長さ寸法は、押出し成形後に所定の長さに切断されて、それぞれが同じ長さに形成されるようになっている。また、中空押出形材70,72,74,76は、その内部の空間に、図4ないし図7に示す補強板部70j,72g,74c,76gがそれぞれ設けられている。
【0057】
図3,4に示すように、緩衝部パネル42の中空押出形材70は、図4中右上の隅部に、上面70aを有する肉厚部が側面板部71より図4中右方外側に突出するよう延長したその先端部が、中空押出形材70の底面70b側に向かって折れ曲がるように形成されることにより、その内側に凹むように嵌め込み凹部70dが形成されている。
【0058】
中空押出形材70は、その図4中右下隅部の、その底面70bに、その上面70a側に向かって2,3mm位凹んだ凹み面70cが形成されている。
【0059】
そして、中空押出形材70は、その図4中右下隅部に、その側面板部71より図中右方外側に突き出した突出部70eが形成されていると共に、その突出部70eの下側に係合部70fが形成されている。この係合部70fの下側には、係合部70fに対して直角の当接面70gが形成されている。
【0060】
図4に示すように、中空押出形材70は、その図中左側面部が、その底面70bからその図中左上隅部の上面70aに向かって図中左上隅部が鋭角になるように傾斜して形成されており、その外側に傾斜面70hが形成されている。
【0061】
また、中空押出形材70は、その図4中左上隅部に、その上面70aより図中上方に突き出した突出部70iが形成されている。
【0062】
図3,5に示す緩衝部パネル42の中空押出形材72は、その図5中右側の側面板部の外形形状が、図4に示す中空押出形材70の右側の側面板部71の外形形状と略同一形状に形成されている。
【0063】
すなわち、図5に示すように、中空押出形材72は、その図中右上隅部に嵌め込み凹部70dが形成されており、その図中右下隅部に凹み面70c、突出部70e、係合部70f及び当接面70gが形成されている。
【0064】
図3,5に示すように、中空押出形材72は、その図中左上隅部に、側面板部より図中左方外側に突出して、その先端部が図中上方に向かって折れ曲がることにより嵌め込み凸部72dが形成されている。そして、この中空押出形材72の嵌め込み凸部72dは、中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに嵌合するようになっている。
【0065】
また中空押出形材72は、その図5中左下隅部に、その側面板部より図中左方外側に突き出した突出部72eが形成されている。そして、この突出部72eの下面には、その底面72bからその上面72a側に向かって2,3mm位凹んだ凹み面72cが形成されている。
【0066】
中空押出形材72は、その突出部72eの上側に係合部72fが形成されるようになっている。この中空押出形材72の係合部72fは、その嵌め込み凸部72dが中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに嵌合して、上面70aと上面72aが同一平面になった際に、中空押出形材70の係合部70fに接触して係合するようになっている。
【0067】
そしてこのとき、中空押出形材72の突出部72eの先端が、中空押出形材70の係合部70fから直角の当接面70gに当接するようになっている。
【0068】
図3,6に示す緩衝部パネル42の中空押出形材74は、その幅方向(図中左右方向)の寸法が、図3,5に示す中空押出形材72の幅方向(図中左右方向)の寸法よりも長く形成されている点、及び補強板部74cの数が中空押出形材72の補強板部72gと異なる点を除くと、中空押出形材72と略同一の断面形状を有するようになっている。
【0069】
すなわち、中空押出形材74は、その図6中右側の側面板部の外形形状が、図5に示す中空押出形材72の右側の側面板部の外形形状と略同一形状に形成されており、その図6中左側の側面板部の外形形状が、図5に示す中空押出形材72の左側の側面板部の外形形状と略同一形状に形成されている。
【0070】
詳しくは、図6に示すように、中空押出形材74は、その図中右上隅部に嵌め込み凹部70dが形成されており、その図中右下隅部に凹み面70c、突出部70e、係合部70f及び当接面70gが形成されている。
【0071】
そして、中空押出形材74は、その図中左上隅部に嵌め込み凸部72dが形成されており、その図中左下隅部に凹み面72c、突出部72e及び係合部72fが形成されている。
【0072】
図3,7に示す緩衝部パネル42の中空押出形材76は、その図7中左側の側面板部73の外形形状が、図5に示す中空押出形材72の左側の側面板部の外形形状と略同一形状に形成されている。
【0073】
すなわち、図7に示すように、中空押出形材76は、その図中左上隅部に嵌め込み凸部72dが形成されており、その図中左下隅部に凹み面72c、突出部72e及び係合部72fが形成されている。
【0074】
また、中空押出形材76は、その図7中右上隅部に、その上面76aより図中上方外側に突き出した突出部76cが形成されている。
【0075】
図7に示すように、中空押出形材76は、その側面板部75より図中右方外側に突出した接続部76dが形成されている。この中空押出形材76の接続部76dは、その先端部(図中右端部)より図中下方に垂下した回動摺動部76eが形成されており、この回動摺動部76eの断面形状は円形となっている。そして、接続部76dの先端部には、図中上方に突出した係合部76fが形成されている。
【0076】
そして、図3に示す中空押出形材70,72,74,76は、押出し成形により上述したような断面形状で、それぞれが一体的に形成されるようになっている。
【0077】
なお、図3に示す緩衝部パネル42は、他の図における緩衝部パネル42と中空押出形材の数が異なり、その中空押出形材74が1つ省略されて足りないが、その省略された中空押出形材は中空押出形材74と全く同じ断面形状を有しているため、説明がいたずらに長くならないように便宜上省略したものである。
【0078】
図8は、図3に示す緩衝部パネル42の製造方法について説明するために参照する図である。
【0079】
ここで、緩衝部パネル42は、中空押出形材70,72,74,76の互いに隣合う側面板部同士が互いに連結されることにより構成されており、図3に示した、中空押出形材70と72、中空押出形材72と74、中空押出形材74と76のそれぞれの連結方法は同じであるので、以下に中空押出形材70と72の連結方法について代表して説明する。
【0080】
まず、図8に示すように、中空押出形材70,72を、それらの上面70a,72aが下側に位置し、それらの下面70b,72bが上側に位置するように上下逆さまに配置する。そして、中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに、中空押出形材72の嵌め込み凸部72dの先端部を嵌合させて、その先端部が、中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに完全に入り込むように嵌め込ませる。
【0081】
そのためには、中空押出形材72の突出部72eが中空押出形材70の当接面70gに近づくように、中空押出形材72を中空押出形材70に対して、嵌め込み凹部70dと嵌め込み凸部72dとの嵌め込み部を支点にして回動させる。
【0082】
このようにして、中空押出形材70の嵌め込み凹部70dに中空押出形材72の嵌め込み凸部72dが完全に嵌合すると、中空押出形材70の係合部70fと中空押出形材72の係合部72fとが、互いに接触して係合すると共に、中空押出形材72の突出部72eの先端が、中空押出形材70の当接面70gに突き当たって接触するようになっている。
【0083】
このとき、図8中下方における、中空押出形材70の上面70aと中空押出形材72の上面72aが同一平面上に連続すると共に、図中上方における、中空押出形材70の底面70bと中空押出形材72の底面72bも同一平面上に連続するようになっている。
【0084】
また、図8に示すように、中空押出形材70の凹み面70cと中空押出形材72の凹み面72cが同一平面上に隣合って配置されている。そして、係合部70fと72fが互いに接触して係合した部分に対応する凹み面70c,72cの互いの隣接部に、摩擦撹拌接合手段の工具80のプローブ80aをその軸線回りに回転させながら上方からほぼ垂直に押し付ける。
【0085】
このとき、回転するプローブ80aと中空押出形材70,72との間の摩擦熱で、中空押出形材70,72を液状化手前まで軟化させると共に、この軟化した中空押出形材70,72の肉厚内にプローブ80aがその先端部から入り込んで、中空押出形材70,72間において回転するプローブ80aの撹拌作用により塑性流動を生じさせ、中空押出形材70,72の接合部分の金属組織を練り混ぜることにより一体化させた後、温度降下により固化する。
【0086】
このような摩擦撹拌接合手段による接合により、中空押出形材70と72が一体的に接合されて、その後中空押出形材70と72を裏返して、図3に示すように、それぞれの上面70a,72aが上にくるような本来の状態に配置されるようになっている。
【0087】
そして、このような中空押出形材70と72の連結方法と同一の連結方法を用いて、中空押出形材72と74、中空押出形材74と76のそれぞれについても一体的に連結されることにより、上面全体の平面形状が略長方形である緩衝部パネル42を構成するようになっている。
【0088】
このように緩衝部パネル42は、複数の中空押出形材70,72,74,76により1つの緩衝部パネル42を構成するようになっているため、その製造時において、2つの中空押出形材70,76それぞれの幅方向において互いに対向する側面板部71,73間に配置される、押出形材の幅方向の寸法を適宜選択することにより、緩衝部パネル42の幅方向(図3中左右方向)の寸法を調整することができるようになっている。
【0089】
また、緩衝部パネル42は、中空押出形材70,72,74,76の上面70a,72a,74a,76a上には、図3に示すように、フロアタイル78が貼り付けられるようになっている。このフロアタイル78は、中空押出形材70,72,74,76の上面70a,72a,74a,76aの上に貼り付けられた際にその上面が、中空押出形材70の突出部70iの上面と、中空押出形材76の突出部76cの上面と略同一平面上になるように設定されている。
【0090】
次に、図2に示すように、緩衝部パネル42の基端部(図中右端部)を支持する支持手段である、支持部材54と係止部材56は、図9及び図10に示すように、アルミニウム製の押出形材により形成されており、その押出し方向(図中紙面垂直方向)に所定の長さを有している。
【0091】
図9に示す支持部材54には、図2に示す支持脚46上に固定される平板状の板部54aの中央部より上方に突き出した、内側が中空状の突出部54bが形成されている。そして、その突出部54bの図中上端部の左側に、図3に示す緩衝部パネル42の回動摺動部76eをその内部に緩く嵌合するような、図中下側に向って凹んだ嵌合凹部54cが形成されている。
【0092】
そして支持部材54は、その突出部54bの図9中上端部から図中上方に突き出した、その突出した長さ寸法が互いに異なる2つの突出部54d,54eが互いに間隔をおいて離れて形成され、このことにより突出部54d,54e間に凹部54fが形成されるようになっている。
【0093】
また支持部材54は、図9に示すように、その板部54aの図中左端部から図中上方に突出した突出部が形成されており、その突出部の先端部には平坦な支持面54gが形成されている。
【0094】
図10に示すように、係止部材56は、平板状の板部56aの図中右端部から図中下方に突き出した突出部56bが形成されており、その突出部56bの先端部は、図9に示す支持部材54の凹部54fに嵌合するようになっている。
【0095】
また、係止部材56は、その突出部56bの図中左側に段差面56cが形成されている。このため、図12に示すように、係止部材56の突出部56bの先端部が支持部材54の凹部54fに嵌合した際に、この係止部材56の段差面56cに支持部材54の突出部54eの先端部が突き当たって接触するようになっている。
【0096】
係止部材56は、図10に示すように、その板部56aの図中左端部から図中下方に突き出した突出部56dが形成されており、この突出部56dの図中左側には、板部56aから図中下方に突き出す量が、突出部56dから板部56aの左端側に向かうにつれて小さくなるような傾斜面56eが形成されている。
【0097】
また、係止部材56は、その突出部56dの図中右側面部に係止面56f(係止部)が形成されており、この係止面56fには、図12に示すように、緩衝部パネル42の係合部76fが係止するようになっている。
【0098】
そして、支持部材54,係止部材56は、押出し成形により上述するような断面形状で、それぞれ一体的に形成されるようになっている。
【0099】
次に、図11ないし図13は、緩衝部パネル42と、この緩衝部パネル42の基端部(図3中右端部)を支持する支持手段を構成する、支持部材54と係止部材56との組立て方法、及びそれらの動作を説明するための図である。
【0100】
まず、図11に示すように、支持部材54の嵌合凹部54cに、緩衝部パネル42の基端部の回動摺動部76eを上方から嵌め込むと、図12に示すように、緩衝部パネル42の回動摺動部76eが、支持部材54の嵌合凹部54cに相対回動することができる程度に緩く嵌め込まれる。
【0101】
このとき、図12に示すように、緩衝部パネル42の中空押出形材76の底面76bは、支持部材54の支持面54gに接触して、この支持面54gの上に支持されるようになっている。
【0102】
次に、図11に示すように、支持部材54の凹部54fに、係止部材56の突出部56bの先端部を上方から嵌め込むと、図12に示すように、係止部材56の突出部56bの先端部と支持部材54の凹部54fとが嵌合すると共に、係止部材56の段差面56cに支持部材54の突出部54eの先端部が突き当たって接触するようになっている。
【0103】
このとき、図12に示すように、緩衝部パネル42の中空押出形材76の係合部76fは、係止部材56の係止面56fに接触して、この係止面56fに係止されるようになっている。
【0104】
このように緩衝部パネル42は、その基端部の中空押出形材76の係合部76fが係止部材56の係止面56fに係止されることによって、図2中反時計回り方向への緩衝部パネル42の回動が規制されるようになっている。
【0105】
すなわち、図12に示すように、緩衝部パネル42は、その基端部の底面76bを支持部材54の支持面54gに支持されていると共に、その基端部の係合部76fを係止部材56の係止面56fに係止されているために、図2中反時計回り方向には回動することができないようになっている。このとき緩衝部パネル42は、片持ち支持状態となっている。
【0106】
一方、図13に示すように、緩衝部パネル42は、その基端部の回動摺動部76eの中心を回動中心として、図2中時計回り方向に回動することについては、何らその回動を規制する手段が設けられていないため可能である。
【0107】
このため、緩衝部パネル42に図2中時計回り方向のモーメントが加わった場合には、その基端部の回動摺動部76eの中心を回動中心として、図2中時計回り方向に回動することができるようになっている。
【0108】
そして緩衝部パネル42は、図13に示すように、その基端部の回動摺動部76eの中心を回動中心として図中時計回り方向に回動すると、その基端部の底面76bが支持部材54の支持面54gから離隔すると共に、その基端部の係合部76fが係止部材56の係止面56fから離隔して、その先端部(図3中左端部)が上方に跳ね上がることができるようになっている。
【0109】
また、係止部材56の突出部56dの図10中左側に傾斜面56eが形成されているため、係止部材56の図10中左端部が突出部56dと同じ高さを有している場合のように、図10中に仮想線で示す係止部材56の左下部に角部Cが出張っていないので、緩衝部パネル42が図13に示すように、回動動作中に係止部材56の角部Cに緩衝部パネル42が接触するのを防止できるようになっている。
【0110】
このため、緩衝部パネル42は、図13に示すように、その基端部の係合部76fが係止部材56の突出部56bに係止されるまでは、その基端部の回動摺動部76eの中心を回動中心として、同図中時計回り方向に回動することができるようになっている。
【0111】
一方、緩衝部パネル42の先端部(図3中左端部)は、図2に示すように、支持脚50,58それぞれの上面に掛け渡されて配置され、それらに固定された受け板部材60の上に載置されるようになっている。
【0112】
この受け板部材60は、図14に示すように、図中紙面垂直方向に所定の長さを有する金属製の平板形状の、その各部を折曲げ加工することにより、互いに間隔をおいて離れた水平部60a,60bと、それらの水平部60a,60b間に傾斜面60cを有するように折曲げられた傾斜部60dと、水平部60bの図中右端からへの字状に下方に折曲げられた傾斜部60eが形成されている。
【0113】
そして、図2に示すように、建築構造物に地震等による外力が加わっていない状態(平常状態)においては、緩衝部パネル42の先端部(図中左端部)の傾斜面70hが、受け板部材60の傾斜面60cに接触していると共に、緩衝部パネル42の先端部の底面70bが、受け板部材60の水平部60bの上面に接触して支持脚58により支持されるようになっている。
【0114】
このため、緩衝部パネル42は、建築構造物に地震等による外力が加わっていない平常状態においては、受け板部材60を介して支持脚58に支持されると共に、自らが支え強度を有する構造となっているため、その上面に重量物を一時的に載置させたり、通過させたりすることができるようになっている。
【0115】
次に、図15及び図16に基づいて、地震等によって建築構造物に振動や変位が生じた場合のフリーアクセスフロアのパネル設置構造40の挙動について説明する。
【0116】
まず、図15に示すように、地震等による建築構造物の振動や変位により固定部パネル52に対して免震部パネル48が近接した場合には、緩衝部パネル42は、その先端部(図中左端部)の傾斜面70hにおいて、面同士が接触する受け板部材60の傾斜面60cによって、図中左上方向に押圧力が加えられる。
【0117】
この先端部に加えられた押圧力により、緩衝部パネル42は、その基端部(図15中右端部)の回動摺動部76eの中心を回動中心として、その先端部が図中時計回り方向に回動させられるので、緩衝部パネル42は、その先端部が受け板部材60の傾斜面60cの上を滑って、固定部パネル52の上に乗り上げて図15中上方に持ち上げられるようになっている。
【0118】
次に、図16に示すように、地震等による建築構造物の振動や変位により固定部パネル52に対して免震部パネル48が離隔した場合には、緩衝部パネル42は、その先端部の傾斜面70hが受け板部材60の傾斜面60cから離隔すると共に、その先端部の底面70bが受け板部材60の水平部60bの上面から離隔する。
【0119】
このとき緩衝部パネル42は、その先端部(図16中左端部)が受け板部材60及び支持脚58により支持されなくなり、その基端部(図16中右端部)のみが支持されるようになっている。
【0120】
すなわち、図16に示すように、緩衝部パネル42は、その基端部(図中右端部)の中空押出形材76の底面76bを支持部材54の支持面54gに支持されると共に、その基端部の係合部76fを係止部材56の突出部56dの係止面56fに係止されることにより支持されている。
【0121】
このため、緩衝部パネル42は、支持部材54と係止部材56によりその基端部のみが支持される片持ち支持構造になっており、その先端部(図中左端部)と基端部のそれぞれの高さ位置が同等の水平状態に保つことができる片持ち支持状態となっている。
【0122】
このような本実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40によれば、従来の特許文献1のスライドパネル13においては、地震等によりボーダー部パネル12と免震部パネル11が離隔した場合に、下床板21及びスライドパネル支持手段20にその先端部が支持されるようにしてその先端部が落下するのを防止しなければならないのに対して、本実施の形態に係る緩衝部パネル42はその基端部のみが支持される片持ち支持構造になっているため、緩衝部パネル42の先端部が落下することはないようになっている。
【0123】
このため、本実施の形態における受け板部材60の特に水平部60bの長さ方向(図14中左右方向)の寸法は、従来のスライドパネル13の下側の下床板21の長さ方向の寸法よりも小さくすることができる。
【0124】
また、受け板部材60の長さ方向の寸法が小さなもので済むと、従来のスライドパネル13のように2つの支持脚により支持する必要はなく、1つの支持脚により支持することができる。このため、受け板部材60を支持する支持脚の数を減らすことができると共に、その組立の手間やコストを低減することができる。
【0125】
さらに、受け板部材60の長さ方向の寸法が小さなもので済むと、免震部パネル48と固定部パネル52間に開口する空間の長さ寸法を小さくすることができ、併せて緩衝部パネル42の長さ方向の寸法も小さくすることができる。
【0126】
このため、緩衝部パネル42の上に機器や装置を載置する等の利用ができない領域を小さくできるので、建築構造物内の部屋のフリーアクセスフロア上において有効に利用できる領域が狭くなるのを防止することができる。
【0127】
以上に説明したように、本実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40によれば、緩衝部パネル42の小型化や軽量化を図ることができ、支持脚等の部品数を減らして組立の手間やコストを低減することができると共に、フリーアクセスフロア上において有効に利用することができる領域が狭くなるのを防止することができる。
【0128】
また、本実施の形態に係るフリーアクセスフロアのパネル設置構造40における緩衝部パネル42によれば、その製造時において、2つの中空押出形材70,76の側面板部71,73間に配置される、押出形材の幅方向の寸法を適宜選択することにより、緩衝部パネル42の幅方向(図3中左右方向)の寸法を調整することができるようになっている。
【0129】
また、本実施の形態における緩衝部パネル42によれば、中空押出形材70,72,74,76は、アルミニウム製の中空構造になっており、それらの互いに隣合う側面板部を接合する構造となっているため、その重量を軽いものにすることができる。
【0130】
このため、支持手段の支持部材54,係止部材56が緩衝部パネル42を支持する負担を低減して、それらが緩衝部パネル42を支持する動作を確実に達成させることができる。
【0131】
また、本実施の形態における緩衝部パネル42によれば、中空押出形材70,72,74,76は、それぞれ補強板部70j,72g,74c,76gを有しているので、それらが中空形材であってもそれらの強度を強いものにすることができる。
【0132】
また、中空押出形材70,72,74,76は、それぞれ凹み面70c,72cの互いの隣接部から摩擦撹拌接合手段により接合されるようになっているため、接合部やその近傍が凹み面70c,72cよりも多少出っ張った部分ができたりしても、凹み面70c,72cより外側の底面70b,72b,74b,76bより外側にまで、出っ張った部分ができることを防止することができる。
【0133】
このため、緩衝部パネル42は、中空押出形材70,72,74,76間の接合部W(図3参照)やその周辺部に研削や研磨等のような後処理加工が不必要となるようにすることができる。
【0134】
また、中空押出形材70,72,74,76それぞれの互いに隣合う側面板部の上部は、互いに接合ではなくて嵌め込まれるようになっているため、摩擦撹拌接合手段による接合箇所は互いに隣合う側面板部の下部だけで済み、上部はそのような接合が不要となるので、摩擦撹拌接合手段による接合箇所を減らすことができる。
【0135】
また側面板部の上部の摩擦撹拌接合手段による接合は不要となるので、押出し成形により形成された精度の高い平面状態の上面が摩擦撹拌接合手段による接合によって損なわれることを防止することができ、精度の高い平面状態をそのまま緩衝部パネル42の上面として利用することができる。
【0136】
なお、前記実施の形態における緩衝部パネル42は、その上面の平面形状が全体として略長方形になっていたが、その上面の平面形状は長方形に限定されず、正方形や他の形状に形成されるようになっていてもよい。
【0137】
また、前記実施の形態における緩衝部パネル42は、2つの中空押出形材70,76の側面板部71,73間に、2つ又は3つの押出形材が配置されて連結されるようになっていたが、1つ又は4つ以上の押出形材が配置されて連結されるようになっていてもよい。
【0138】
また、2つの中空押出形材70,76の互いに対向する側面板部71,73間に、押出形材が1つも配置されずに、2つの中空押出形材70,76が互いに直接連結されるようになっていてもよい。
【0139】
また、前記実施の形態における中空押出形材70,72,74,76は、アルミニウム製の中空押出形材により形成されるようになっていたが、これに限定されず、中空でなく中実の断面形状等、他のどのような断面形状を有していてもよく、或は他の製法、又は他の材料を用いてもよい。
【0140】
また、前記実施の形態における中空押出形材70,72,74,76は、摩擦撹拌接合手段による接合により互いに連結されるようになっていたが、これに限定されず、貼り付けや溶接等の他の手段を用いて互いに連結されるようになっていてもよい。
【0141】
また、前記実施の形態における中空押出形材70,72,74,76相互間の連結方法は、全て同じ連結方法を用いる必要はなく、異なる連結方法を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
また、前記実施の形態における緩衝部パネル42は、複数の押出形材が連結されるようになっていたがこれに限定されず、単一の部材から形成されるようになっていてもよい。
【0143】
また、前記実施の形態における緩衝部パネル42は、その基端部が免震部パネル48を支持する支持脚46の上に固定された支持部材54,係止部材56により支持されるようになっていたが、それらの支持部材54,係止部材56は固定部パネル52を支持する支持脚50の上に固定されていてもよく、かつ上記基端部がそれらの支持部材54,係止部材56により支持されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0144】
40 フリーアクセスフロアのパネル設置構造
41 基礎床面
42 緩衝部パネル
44 免震装置
44a 免震構造部材
45 壁
46 支持脚
48 免震部パネル
50 支持脚
51 開口空間
52 固定部パネル
54 支持部材
54a 板部
54b 突出部
54c 嵌合凹部
54d,54e 突出部
54f 凹部
54g 支持面
56 係止部材
56a 板部
56b 突出部
56c 段差面
56d 突出部
56e 傾斜面
56f 係止面
58 支持脚
60 受け板部材
60a,60b 水平部
60c 傾斜面
60d,60e 傾斜部
70 中空押出形材
70a 上面
70b 底面
70c 凹み面
70d 嵌め込み凹部
70e 突出部
70f 係合部
70g 当接面
70h 傾斜面
70i 突出部
70j 補強板部
71 側面板部
72 中空押出形材
72a 上面
72b 底面
74c 凹み面
72d 嵌め込み凸部
72e 突出部
72f 係合部
72g 補強板部
73,75 側面板部
74 中空押出形材
74a 上面
74b 底面
74c 補強板部
76 中空押出形材
76a 上面
76b 底面
76c 突出部
76d 接続部
76e 回動摺動部
76f 係合部
76g 補強板部
78 フロアタイル
80 工具
80a 突起部
C 角部
W 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎床面の上方に免震装置を介して水平移動可能に設けられた免震側パネルと、
基礎床面の上方に免震装置を介さないで設けられ前記免震側パネルとの間に開口する空間を挟んで配置された非免震側パネルと、
前記免震側パネルと前記非免震側パネルの間に掛け渡されて前記開口する空間を覆う被覆パネルとを有するフリーアクセスフロアのパネル設置構造であって、
前記被覆パネルの片持ち支持が可能な支持手段を備えた
ことを特徴とするフリーアクセスフロアのパネル設置構造。
【請求項2】
前記支持手段は、前記被覆パネルが回動可能な構造を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフリーアクセスフロアのパネル設置構造。
【請求項3】
前記被覆パネルはその基端部に回動摺動部と係合部とを有し、
前記支持手段は、
前記被覆パネルの回動摺動部を回動可能に嵌合する嵌合凹部を有する第1部材と、
前記被覆パネルの係合部に係合することにより前記被覆パネルが水平状態からその先端部が前記基端部側を回動中心にして下方に回動するのを規制する係止部を有する第2部材を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のフリーアクセスフロアのパネル設置構造。
【請求項4】
前記基礎床面上に立設した支持脚に固定され、その上に前記被覆パネルの先端部を載置することができる受け板部材を設けた
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフリーアクセスフロアのパネル設置構造。
【請求項5】
前記被覆パネルは、互いの隣接部において連結される複数の押出形材により形成された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフリーアクセスフロアのパネル設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−149429(P2012−149429A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8270(P2011−8270)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】