説明

フリーアクセスフロア

【課題】火災時に、スプリンクラーから放出された水を膨大なコストをかけることなく、床スラブと床パネルとの間に留めることができるフリーアクセスフロアを提供する。
【解決手段】床スラブ3の上方に床パネル2が配設された二重床構造のフリーアクセスフロア1において、床パネル2は、通水性材料により形成されているとともに、床パネル2の下面と床スラブ3との間に、保水性を有するセラミックス系建設廃材が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスなどの床を二重構造に施工するためのフリーアクセスフロアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フリーアクセスフロアは、床スラブの上方に床パネルを配設した二重床構造になっている。このフリーアクセスフロアは、床スラブと床パネルとの間に、大量のケーブル類を敷設するために用いられる。そのため、従来では、大型コンピュータを多数管理する電算室などに用いられていた。しかし、近年、一般のオフィスにおいてもOA化が進み、パソコンやプリンタなどが増え、さらにはインターネットの普及により、LANケーブルなど多くのケーブル類が使用されるようになった。これにより、一般のオフィスにおいてもフリーアクセスフロアが用いられるようになった。
【0003】
ところで、上記一般のオフィスの多くには、火災発生時に初期消火を行うスプリンクラーが設置されている。このスプリンクラーに用いられる水源のほとんどが、火災発生時の初期消火として使用される。ところが、初期消火の際に、火源に到達せず、その周囲に放出されたスプリンクラーの水は、隣室や下階に流出してしまうなど、火災室に留まるとは限らない。したがって、火源に到達しなかったスプリンクラーの水には、火災の抑制効果を期待することができない。
【0004】
そこで、火源以外に放出されたスプリンクラーの水を、火災室内に留めることができれば、万一スプリンクラーから放出される水により消火できなかったとしても、火災室内に留まったスプリンクラーから放出された水が、火災の拡大に応じて蒸発する際に、火災の熱の一部は蒸発潜熱として消費されるため、延焼拡大や火災室の温度上昇を抑制する効果が期待できる。
【0005】
ところが、上記フリーアクセスフロアを用いた床においては、火源以外に放出された上記スプリンクラーの水を、上記火災室内に留めることができない。そのため、上記スプリンクラーから放出された水が、上記火災室から隣室や下階に流出してしまい、水損の二次被害を招いてしまう。
【0006】
そこで、下記特許文献1において、フリーアクセスフロアの底上げしたパネル上にカーペット類を敷設し、このカーペット類を敷設した床面を所定のユニット単位に区画化して、当該床面の所定区画域の当該カーペット類を保水可能な吸水性のカーペットタイルにする方法、または上記床面の所定区画域の下方に放出された消火水などを貯留可能な貯留床を設ける方法などが提案されている。
【0007】
この上記従来の方法では、スプリンクラーから放出された水が、吸水性の上記カーペットタイルに吸収されて保水される、またはスプリンクラーから放出された水が、床面の所定区画域の下方に設けられた貯留床に貯留されることになる。これにより、保水された水または貯留された水が、火災の拡大に応じて蒸発し、この際に火災の熱の一部が蒸発潜熱として消費されることによって、延焼拡大や火災室の温度上昇を抑制する効果を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−155799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のフリーアクセスフロアにおいては、床面の所定区域のみを吸水性のカーペットタイルにする方法、または床面の所定区域の下方に貯留床を設ける方法の何れの方法においても、所定区域以外に放出されたスプリンクラーの水を保水または貯留することができない。このため、所定区域以外に放出されたスプリンクラーの水は、同様に火災室外に流出してしまい、別の部屋や下階に侵入してしまうため、水損による二次災害を引き起こすという問題がある。
【0010】
また、吸水性のカーペットタイルをフリーアクセスフロアの床板全面に敷設した場合、または貯留床をフリーアクセスフロアの床板全面の下方に設けた場合には、多大な施工費用が発生してしまうという問題もある。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、火災時に、スプリンクラーから放出された水を膨大なコストをかけることなく、床スラブと床パネルとの間に留めることができるフリーアクセスフロアを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、床スラブの上方に床パネルが配設された二重床構造のフリーアクセスフロアにおいて、上記床パネルは、通水性材料により形成されているとともに、上記床パネルの下面と上記床スラブとの間に、保水性を有するセラミックス系建設廃材が配設されていることを特徴とするものである。
【0013】
そして、請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、上記床パネルの下面と上記床スラブとの間には、非通水性材料の下面パネルが配設されているとともに、上記床パネルと当該下面パネルとの間に上記セラミックス系建設廃材が配設され、かつ上記床パネルと当該下面パネルとが一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜2に記載の発明によれば、通水性材料からなる床パネルの下面と床スラブとの間に、保水性を有するセラミックス系建設廃材を配設するため、火災の初期消火の際に、スプリンクラーから火源以外に放出された水を、上記床パネルを介して上記セラミックス系建設廃材に、簡便に保水させることができる。これにより、初期消火において消火できなかった場合に、上記セラミックス系建設廃材に保水された水が、火災の熱により蒸発する際に、火災の熱の一部は水の蒸発潜熱として消費されることになるので、火災の延焼拡大や火災室の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
また、上記床パネルの下面と上記床スラブとの間に配設する保水部材が、セラミックス系建設廃材であるため、コストを抑えて施工することができるとともに、再資源・再利用が難しい建設廃材を容易に再利用することができる。この結果、フリーアクセスフロアの特定箇所だけでなく、広範囲に亘って、上記セラミックス系建設廃材を施工することができるとともに、建設廃材のリサイクル率を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上記床パネルが、通水性材料の上記床パネルと非通水性材料の下面パネルとの間に、上記セラミックス系建設廃材を内包しているため、スプリンクラーから放出された水が、上記床パネルを介して上記セラミックス系建設廃材に保水された際に、上記セラミックス系建設廃材の保水量の許容範囲を超えた水が、下面パネル上に流れ出した場合でも、火災室内の床スラブへの流出、さらに火災室から隣室や下階への流出を防ぐことができる。これにより、水損による二次被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のフリーアクセスフロアの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明のフリーアクセスフロアの別の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明の一実施形態のフリーアクセスフロアは、床スラブ3上に間隔を置いて配置された複数の支柱7と、この支柱7の各々の上方に配設された格子状の枠部材6と、この枠部材6上に配置された床パネル2と、この床パネル2上に敷設されたカーペット8とにより構成され、かつ枠部材6と床スラブ3との間に、セラミックス系建設廃材5が配設されて概略構成されている。
【0019】
ここで、支柱7は、台座7aと、この台座7aの中心部に立設された柱部7bとが一体に形成されている。また、柱部7bの上部には、ボルト部7dが設けられているとともに、このボルト部7dに螺合した受け部7cが設けられている。
【0020】
また、格子状の枠部材6は、定格の方形平板状に形成されているとともに、表面と裏面とを貫通する複数の孔6bが穿設されて格子状に形成されている。また、格子状の枠部材6は、角隅部に連結部6aが形成されているとともに、各々の連結部6aに孔6cが穿設されている。
【0021】
そして、支柱7のボルト部7dが、複数枚の格子状の枠部材6の連結部6aの各々の孔6cに係合されているとともに、連結部6aの下面が支柱7の受け部7cに当接して、格子状の枠部材6が支承されている。
【0022】
さらに、格子状の枠部材6の上面には、この枠部材6と同一形状をなす床パネル2が配置されている。この床パネル2は、パンチングメタルが用いられており、通水性を有する。また、床パネル2が敷設された格子状の枠部材6の下面と床スラブ3との間に、セラミックス系建設廃材5が配設されている。このセラミックス系建設廃材5は、建設現場などで出る保水性を有するセラミックス系の廃材、例えば、断熱材として用いられているグラスウールなどであり、必要に応じて平板状に加工する。
【0023】
以上の構成からなるフリーアクセスフロアをオフィスなどの部屋に用いるには、まず、図1に示すように、床スラブ3上に複数の支柱7を配置する。この際に、支柱7は、格子状の枠部材6に形成された連結部6aの位置に配置する。そして、支柱7の間にセラミックス系建設廃材5を配設する。この際に、格子状の枠部材6の下面と床スラブ3との間に、LANケーブルなどのケーブル類が敷設される場所を避けて、セラミックス系建設廃材5を配設する。
【0024】
次いで、格子状の枠部材6の連結部6aの孔6cに、支柱7のボルト部7dを係合させて、受け部7cに格子状の枠部材6の連結部6aを当接させる。この際に、格子状の枠部材6が水平に配設されなかった場合には、一旦格子状の枠部材6を取り外し、支柱7の受け部7cを回して、高さを調整する。
【0025】
そして、施工する床スラブの上方に複数枚の格子状の枠部材6を配設した後に、各々の格子状の枠部材6の上面に、パンチングメタルの床パネル2を配置し、さらに、床パネル2を配置した後に、床パネル2の上面に、一定の面積に裁断されたカーペット8を敷設する。これにより、二重床構造のフリーアクセスフロア1が施工される。
【0026】
次に、万一上記構成のフリーアクセスフロア1を施工した部屋において、火災が発生した場合について説明する。
まず、火災報知器などが火災発生を感知すると、この火災を感知した部屋に設置されている、複数のスプリンクラーが初期消火のために一斉に作動する。このスプリンクラーの作動により、火源がある火災室全体に水が放出される。
【0027】
その際に、上記火災室内の火源以外の場所に放出された水が、フリーアクセスフロア1のカーペット8に吸収される。そして、カーペット8の吸収可能な水の許容範囲を超えると、床パネル2であるパンチングメタルの孔、および格子状の枠部材6に穿設された孔6bを通じて、セラミックス系建設廃材5上に流れ出す。すると、流れ出した上記水がセラミックス系建設廃材5に吸収されて保水される。
【0028】
これにより、初期消火においてスプリンクラーから放出された水で、消火に使用されなかった分の水は、火災室から隣室や下階に流れ出すことなく、セラミックス系建設廃材5に吸収されて保水される。
【0029】
また、万一初期消火により火源の消火ができなかった場合には、セラミックス系建設廃材5に保水された水が、火災の熱によって蒸発し、この際、火災室の熱の一部は水の蒸発潜熱として消費され、火災の延焼拡大および火災室の温度上昇が抑制されることになる。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明のフリーアクセスフロア1の別の実施形態を示すもので、図1に示したものと同一構成部分については、同様に同一符号として、その説明を簡略化する。
このフリーアクセスフロア1としては、床スラブ3上に間隔を置いて配置された複数の支柱7と、この支柱7の各々の上方に配設されるとともに、セラミックス系建設廃材5を内包した床パネル2および下面パネル4と、この床パネル2上に敷設したカーペット8とにより概略構成されている。
【0031】
ここで、支柱7は、実施の形態1と同様に、台座7aと、この台座7aの中心部に立設された柱部7bとが一体に形成されている。また、柱部7bの上部には、ボルト部7dが設けられているとともに、このボルト部7dに螺合した受け部7cが設けられている。
【0032】
また、床パネル2は、定格の方形平板状に形成されているとともに、パンチングメタルが用いられており、通水性を有している。また、下面パネル4は、定格の方形箱状に形成されているとともに、非通水性を有する鋼板が用いられている。
【0033】
そして、床パネル2と下面パネル4は、床パネル2の下面に下面パネル4を配置して一体的に形成されているとともに、下面パネル4の底面には、面方向の一方向に延在した支持凹部4aが形成されている。この支持凹部4aは、少なくとも4箇所形成されているとともに、各々が間隔を置いて平行に延設されている。また、各々の支持凹部4aは、開口部に対向する面の長手方向に孔4bが穿設されている。この孔4bは、上記長手方向に間隔を置いて少なくとも2箇所穿設されている。
【0034】
さらに、床パネル2と下面パネル4との間の空間には、下面パネル4に形成された支持凹部4aを除く位置に、セラミックス系建設廃材5が内包されている。このセラミックス系建設廃材5は、実施の形態1と同様に、建設現場などで出る保水性を有するセラミックス系の廃材、例えば、断熱材として用いられているグラスウールなどを平板状に加工したものである。
【0035】
そして、支柱7のボルト部7dが、下面パネル4の支持凹部4aの孔4bに係合されているとともに、支持凹部4aの開口部に対向する面が支柱7の受け部7cに当接されている。
【0036】
以上の構成からなるフリーアクセスフロアをオフィスなどの部屋に用いるには、まず、図2に示すように、床スラブ3上に支柱7を配置する。この際に、支柱7は、床パネル2に形成された支持凹部4aの位置に配置する。そして、必要に応じてLANケーブルなどのケーブル類を支柱7の間に敷設する。
【0037】
次いで、各々の下面パネル4の支持凹部4aの孔4bに、支柱7のボルト部7dを挿入して、受け部7cに支持凹部4aの開口部に対向する面に当接させる。これにより、一体的に形成された床パネル2と下面パネル4とは、支柱7によって支承される。
【0038】
そして、施工する床スラブの上方に、一体に形成された床パネル2と下面パネル4とを複数配設した後に、床パネル2の上面に、一定の面積に裁断されたカーペット8を敷設する。これにより、二重床構造のフリーアクセスフロア1が施工される。
【0039】
次に、万一上記構成のフリーアクセスフロア1を施工した部屋において、火災が発生した場合について説明する。
まず、火災報知器などが火災発生を感知すると、この火災を感知した部屋に設置されている、複数のスプリンクラーが初期消火のために一斉に作動する。このスプリンクラーの作動により、火源である火災室全体に水が放出される。
【0040】
その際に、上記火災室内の火源以外の場所に放出された水が、フリーアクセスフロア1のカーペット8に吸収される。そして、カーペット8の吸収可能な水の許容範囲を超えた水が、床パネル2であるパンチングメタルの孔を通過して、この床パネル2と下面パネル4との間の空間に内包されているセラミックス系建設廃材5上に流れ出す。すると、流れ出した水が、セラミックス系建設廃材5に吸収されて保水される。
【0041】
これにより、初期消火においてスプリンクラーから放出された水で、消火に使用されなかった分の水が、火災室から隣室や下階に流れ出すことなく、セラミックス系建設廃材5に吸収されて保水される。この際に、セラミックス系建設廃材5の保水可能な許容範囲を超え水が、下面パネル4に流れ出してとしても、下面パネル4が非通水性の鋼板により方形箱状に形成されているため、床スラブ3に流れ出すことがない。
【0042】
また、万一初期消火により火源の消火ができなかった場合には、セラミックス系建設廃材5に保水された水が、火災の熱によって蒸発し、この際、火災の熱の一部が蒸発潜熱として消費されることにより、火災の延焼拡大および火災室の温度上昇が抑制されることになる。さらに、保水性セラミックスが配設されることにより、スプリンクラーから放出された水が、保水性セラミックスの上部から順次保水されていくため、セラミックスを配設しない場合に比べて、火災室表面に近いところに水を留めることが可能であり、早期に火災時の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
<実施例1>
次いで、保水性を有するセラミックスの保水性能について、発明者らが行った実験を基に、詳しく説明する。
まず、この実験に使用されるセラミックスの要件を以下に示す。
材料:耐火ブランケット
寸法:縦 150mm
横 150mm
厚さ 50mm
体積 1125cm
【0044】
そして、上記要件のセラミックスを充分に含水させた後に、水はけの良い場所で10分間放置して、セラミックスが保持する水重量を算出した。この算出した結果は、以下の通りである。
乾燥重量 139.6g
10min放置後重量 1137.0g
保持水分重量 997.5g
水比重 1g/cm
体積比 88.7%
平米あたり保水重量 44.3kg/m
【0045】
上記の実験の結果、保水性を有するセラミックスは、体積比で89%と高い保水性能を有していることが判明した。
【0046】
<実施例2>
次に、保水性建設廃材セラミックスによる火災低減の効果について、発明者らが行った実験を基に、詳しく説明する。
まず、この実験に使用されたスプリンクラーの設置要件を以下に示す。
対象防火対象物:階数10以下の事務室で、耐火建築物(室形状7m×7m)
ヘッドの型 標準型ヘッド
ヘッド防護半径 2.3m以下
ヘッド設置間隔 2.3m以下(防護半径以内)
同時解放個数 10個
ヘッド1個あたり水源水量 1.6m
平米あたり最大放水量 327L/m
【0047】
そして、火災低減効果の計算条件を以下に示す。
A.床面積 49m
B.可燃物量 560MJ/m (不燃仕上げの事務所)

C.保水材料厚さ 50mm
D.保水能力 887.0kg/m
E.水の蒸発潜熱 2.254MJ/kg
【0048】
上記火災低減効果の計算条件による結果は、以下の通りである。
F.可燃物総発熱量 27440MJ A×B
G.保持水の総蒸発潜熱量 4898.28MJ E×D×A×C÷1000
H.(総発熱量−蒸発潜熱)/総発熱量 82.1% (F−G)/F×100
なお、耐火告示式によると、火災室内の可燃物の発熱量をQ、火災室内の可燃物1秒間あたりの発熱量をqで表すとき、火災継続時間はQ/qで表される。
総発熱量のうち、蒸発潜熱に使われた分は、火災室の温度上昇に寄与しないので、総発熱量から蒸発潜熱量を差し引いて考えると、火災継続時間は、総発熱量から蒸発潜熱量として差し引いたものに比例するため、火災継続時間は、上記計算式から、82.1%に低減される評価となる。
【0049】
さらに、上記スプリンクラーの最大放水量に占める上記保水性建設廃材セラミックス含有量の割合を以下に示す。
I.セラミックスの保水体積 44.3L/m
J.スプリンクラーの最大放水量 327L/m
K.最大放水量に占める保水性
セラミックスの含水量の割合 13.6% I÷J×100
【0050】
上記実験の結果により、スプリンクラー水源水量の内、1〜2割程度の水量を保水性セラミックスに保水させることにより、火災継続時間を約8割に低減させるのに相当する効果があることを確認した。
【0051】
上述の実施の形態1によるフリーアクセスフロア1によれば、上記実施例1および実施例2の実験結果から、床スラブ3と、パンチングメタルからなる床パネル2が敷設された格子状の枠部材6との間に、保水性を有するセラミックス系建設廃材5を配設するため、火災の初期消火の際に、スプリンクラーから火源以外に放出された水を、床パネル2および枠部材6を介してセラミックス系建設廃材5に保水させることができる。これにより、初期消火において消火できなかった場合に、セラミックス系建設廃材5に保水された水が、火災の熱により蒸発し、この際、火災の熱の一部が蒸発潜熱として消費されることにより、火災の延焼拡大や火災室の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
また、火災の初期消火の際に、スプリンクラーから火源以外に放出された水の保水に、セラミックス系建設廃材5を用いるため、コストを抑えて施工することができるとともに、混入物の影響により、再利用が難しい建設廃材を容易に利用することができる。この結果、フリーアクセスフロア1の特定箇所だけでなく、広範囲に亘って、セラミックス系建設廃材5を施工することができるとともに、建設廃材のリサイクル率を向上させることができる。
【0053】
そして、上述の実施の形態2によるフリーアクセスフロア1によれば、パンチングメタルの床パネル2と鋼板の下面パネル4との間に、セラミックス系建設廃材5を内包しているため、スプリンクラーから放出された水が、床パネル2を介してセラミックス系建設廃材5に保水された際に、セラミックス系建設廃材5の保水量の許容範囲を超えた水が、箱状に形成された下面パネル4上に流れ出した場合でも、火災室内の床スラブへの流出、当該火災室から隣室や下階への流出を防ぐことができる。これにより、水損による二次被害を最小限に抑えることができる。
【0054】
なお、上記実施の形態において、床パネル2に用いられる通水性材料として、パンチングメタルを用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、スリットが形成されたパネルなど、通水性を有するパネルであれば対応可能である。
また、上記実施の形態2において、下面パネル4に用いられる非通水性材料として、鋼板を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、アルミ板や樹脂板など非通水性を有するものであれば対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
オフィスなどに使用されるフリーアクセスフロアに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 フリーアクセスフロア
2 床パネル
3 床スラブ
4 下面パネル
5 セラミックス系建設廃材
6 枠部材
7 支柱
8 カーペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブの上方に床パネルが配設された二重床構造のフリーアクセスフロアにおいて、
上記床パネルは、通水性材料により形成されているとともに、
上記床パネルの下面と上記床スラブとの間に、保水性を有するセラミックス系建設廃材が配設されていることを特徴とするフリーアクセスフロア。
【請求項2】
上記床パネルの下面と上記床スラブとの間には、非通水性材料の下面パネルが配設されているとともに、上記床パネルと当該下面パネルとの間に上記セラミックス系建設廃材が配設され、かつ上記床パネルと当該下面パネルとが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフリーアクセスフロア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215042(P2012−215042A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81856(P2011−81856)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】