フリースライディングドリル
【課題】効率良く斜面に孔を掘削することができるスライディングドリルを提供する。
【解決手段】フリースライディングドリル1は、複数のレール2を連結して斜面3に沿って水平方向に、平行に配置されたH型鋼からなる一対の横行レール4と、この一対の横行レール4に沿って走行可能な第一の走行手段5と、第一の走行手段5に接続され、一対の走行手段5間の間隔を調整するための調整手段6と、作業用の足場となる作業用架台7と、作業用架台7上に設置され、斜面3に孔を掘削するための削孔手段10とを備える。
【解決手段】フリースライディングドリル1は、複数のレール2を連結して斜面3に沿って水平方向に、平行に配置されたH型鋼からなる一対の横行レール4と、この一対の横行レール4に沿って走行可能な第一の走行手段5と、第一の走行手段5に接続され、一対の走行手段5間の間隔を調整するための調整手段6と、作業用の足場となる作業用架台7と、作業用架台7上に設置され、斜面3に孔を掘削するための削孔手段10とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面等の斜面に沿って移動可能で、その法面にロックボルトやアンカー等を埋設するための孔を掘削するスライディングドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
法面に孔を掘削するスライディングドリルとして、例えば、特許文献1には、斜面の水平方向に対して直交する傾斜方向に配置される一対のレールと、この一対のレールの下端部を斜面下の道路に固定するアンカーと、この一対のレールに沿って昇降可能な作業床と、作業床を水平にする水平調整機構と、作業床を一対のレールに沿って昇降させるウインチとを備えたスライディングドリルが開示されている。このスライディングドリルで斜面全体に複数の孔を掘削する場合は、まず、作業床を傾斜方向に移動させて所定の数だけ孔を掘削し、次に、スライディングドリルをすべて分解してトラック等に積載し、その後、斜面の水平方向に運搬して、再び、そこでスライディングドリルを組立てて、孔を掘削するという作業を繰り返す。
【特許文献1】特開平8−199580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のスライディングドリルを用いる場合には、傾斜方向の掘削が終了して水平方向に移動する際に、スライディングドリルの分解、運搬及び再組立ての作業が必要になるので、作業効率が悪いという問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、効率良く斜面に孔を掘削することができるスライディングドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明のフリースライディングドリルは、斜面上に、水平方向に配置され、複数のレールを連結してなる互いに平行な一対の横行レールと、斜面に孔を掘削するための削孔手段が設置された作業用架台と、前記作業用架台に取り付けられ、前記一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段と、前記一対の第一の走行手段の間隔を調整するための調整手段とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0005】
本発明によるフリースライディングドリルによれば、法面等の斜面上に、水平方向に配置されている一対の横行レールと、削孔手段が設置された作業用架台と、作業用架台に取り付けられ、一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段とを備えているので、削孔手段を横行レールに沿って水平方向に移動させるとともに、進行方向に向かって手前側から順番に孔を掘削することができる。
【0006】
また、複数のレールを連結して横行レールを構築しているので、進行方向に向かって孔を掘削しつつ、掘削が終了して作業用架台が通過した手前側のレールを取り外して傾斜方向に移動させるというレールの段取り換えを行うことができるので、作業効率が向上する。また、斜面に凹凸があっても、横行レールを構築する各レールの長さを凹凸の形状に応じて調整して、各レールを斜面に接地した状態で設置することができる。
【0007】
さらに、斜面上に障害物が存在しており、これを回避するために一対の横行レールのうち一方の横行レールが直線的に配置されていない場合でも、調整手段を備えているので、一対の横行レール間の間隔に応じて適宜、一対の走行手段間の間隔を自在に調整しつつ、作業用架台を水平方向に移動させることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記作業用架台は、水平方向に対して直交する傾斜方向に平行に配置された一対のフレームと、前記一対のフレームに沿って移動するための一対の第二の走行手段を有する台車部とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、作業用架台は、傾斜方向に沿って配置された一対のフレームと、この一対のフレームに沿って移動可能な台車部とを備えているので、台車部は、斜面の傾斜方向に移動することができる。すなわち、作業用架台が横行レールに沿って水平方向に移動し、かつ、台車部がフレームに沿って傾斜方向に移動するので、台車部は、レールの段取り換えを行うことなく、斜面上を水平方向及び傾斜方向に自在に移動することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記作業用架台は、当該作業用架台を水平方向に移動させるための第一のウインチと、前記台車部を傾斜方向に移動させるための第二のウインチとを更に備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、作業用架台は、第一及び第二のウインチを更に備えるので作業用架台を重くすることができる。したがって、孔の掘削時に作用する掘削反力に対して作業用架台を斜面に押し付ける荷重を確保することができる。
【0010】
第4の発明は、第2の発明において、前記一対のフレームは、そのフレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、一対のフレームは、各フレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えているので、斜面上に障害物が存在するときは、フレームの一部を回動させて障害物への衝突を回避しつつ、斜面上を移動することができる。
【0011】
第5の発明は、第2の発明において、前記台車部は、前記一対のフレームに沿って移動可能な走行架台と、前記走行架台内を前記水平方向及び前記傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、前記削孔用架台の前記走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、台車部は、フレームに沿って走行可能な走行架台と、走行架台内を水平方向及び傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、削孔用架台の走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えているので、削孔用架台に設置されている削孔手段を走行架台で掘削対象箇所へおおまかに移動させた後に、位置決め装置で微少距離だけ移動させることができる。
【0012】
第6の発明は、第1の発明において、前記削孔手段は、斜面を削孔するための削孔機と、前記削孔機の削孔方向をガイドするためのマスト部と、前記マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、削孔手段は、削孔機と、削孔方向をガイドするためのマスト部と、マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えるので、斜面に孔を所望の角度で精度良く掘削することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフリースライディングドリルによれば、効率良く斜面に孔を掘削することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るフリースライディングドリルの好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、盛土の斜面に孔を掘削する場合について説明するが、盛土の斜面に限定されるものではなく、河川や道路等の斜面全般に適用可能である。
【0015】
図1〜図3は、それぞれ本発明の実施形態に係るフリースライディングドリル1を斜面3に設置した状態を示す斜視図、側断面図、平面図である。
図1〜図3に示すように、フリースライディングドリル1は、斜面3上に、水平方向に配置され、互いに平行な一対の横行レール4と、斜面3に孔を掘削するための削孔手段10が設置された作業用架台7と、この作業用架台7に取り付けられ、一対の横行レール4に沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段5と、一対の第一の走行手段5間の間隔を調整するための調整手段6とを備える。
横行レール4は、複数のH型鋼からなるレール2を連結して構成され、両端部はアンカー11で斜面3に固定されている。また、斜面3に凹凸があっても、各レール2の長さを凹凸の形状に応じて調整することで、各レール2を斜面3に接地した状態で設置することができる。
【0016】
図4は、本実施形態における第一の走行手段5及び調整手段6の周辺部を拡大した側面図である。
図4に示すように、第一の走行手段5は、横行レール4上を走行するためのレール走行用車輪5aと、横行レール4の上側フランジに接し、作業用架台7の浮きを防止するための浮き止め車輪5b(詳細を図5に示す)と、両車輪5a、5bの位置関係を固定するとともに、両車輪5a、5bを作業用架台7のフレーム7c(後述する)に接続するためのブラケット5cとから構成されている。
【0017】
調整手段6は、一対の第一の走行手段5のうち斜面方向上側にのみ配置されていて、一端が、第一の走行手段5のブラケット5cに、他端が作業用架台7のフレーム7c(後述する)に接続されている。この調整手段6は、伸縮可能なダンパーであり、フレーム7cに平行に設置されている。斜面3上に障害物が存在して、これを回避するために一方の横行レール4が直線的に配置されていない場合でも、作業用架台7が横行レール4上を移動する際は、一対の横行レール4間の間隔に追随して調整手段6が伸縮することにより、一対の第一の走行手段5間の間隔がその一対の横行レール4間の間隔と同じになるように調整されるので、作業用架台7は、横行レール4上を移動することができる。
【0018】
なお、本実施形態においては、調整手段6としてダンパーを用いたが、これに限定されるものではなく、ジャッキ等を用いてもよい。
【0019】
また、本実施形態においては、調整手段6を一対の第一の走行手段5のうち斜面方向上側に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、斜面方向下側に配置したり、斜面方向上側及び斜面方向下側の両側共に配置してもよい。
【0020】
さらに、本実施形態においては、作業用架台7が横行レール4上を移動する際に、一対の横行レール4間の間隔に追随して調整手段6が伸縮する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、作業用架台7が横行レール4上を移動する際に、一対の横行レール4間の間隔と一対の第一の走行手段5間の間隔とが同じになるように手動で調整手段6を伸縮させてもよい。
【0021】
また、図1〜図3に示すように、作業用架台7は、第一のウインチ7aを備えている。このウインチ7aのワイヤーロープ7bの先端は、アンカー11に取り付けられた滑車7fを介して作業用架台7に接続されているので、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取ることにより、上述したように、作業用架台7は横行レール4上を水平方向に走行する。
【0022】
また、作業用架台7は、水平方向に対して直交する傾斜方向に沿って平行に配置された一対のフレーム7cと、この一対のフレーム7c間の間隔を一定に保つため、フレーム7c間に挟持される所定の長さの支保手段7dと、一対のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動可能な台車部8とを更に備えている。本実施形態においては、各フレーム7c及び支保手段7dとしてI型鋼を用い、一対のフレーム7cと支保手段7dとで長方形の枠を構築した。
【0023】
図6は、本実施形態における台車部8周辺を拡大した平面図である。
図6に示すように、台車部8は、フレーム7cに沿って走行するための第二の走行手段8aを有する走行架台8bと、走行架台8b内を水平方向及び傾斜方向に移動可能で、削孔手段10を設置するための削孔用架台8cと、この台車部8をフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させるための第二のウインチ8dとを備えている。
【0024】
第二の走行手段8aは、フレーム7cの下側フランジ上を走行するためのフレーム走行用車輪8f(詳細を図7に示す)と、フレーム7cの上側フランジに接し、走行架台8bの浮きを防止するための浮き止め車輪5bと、フレーム7cのウェブに接し、台車部8の水平方向のぶれを抑制するための横受け車輪8h(詳細を図8に示す)とから構成されており、走行架台8bは、フレーム7cから脱線せず、かつ、フレーム7cに衝突しないように傾斜方向に走行可能である。
【0025】
また、図1〜図3に示すように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eの先端は、支保手段7dに取り付けられた滑車8iを介して走行架台8bに接続されているので、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取ることにより、上述したように、走行架台8bはフレーム7cに沿って傾斜方向に走行可能である。
【0026】
また、台車部8は、削孔用架台8cの走行架台8bに対する位置を調整するための位置決め装置9とを更に備えている。
位置決め装置9は、図6中の削孔用架台8cの左右両側にそれぞれ設置される第一及び第二の位置決め用ねじ9a、9bと、図6中の削孔用架台8cの上下両側にそれぞれ設置される第三及び第四の位置決め用ねじ9c、9dとから構成される。削孔用架台8cを水平方向の図6中右側に移動させる場合は、第一の位置決め用ねじ9aを締め込むとともに、第二の位置決め用ねじ9bを緩めることにより移動させる。また、削孔用架台8cを傾斜方向の図6中下側に移動させる場合は、第三の位置決め用ねじ9cを締め込むとともに、第四の位置決め用ねじ9dを緩めることにより移動させる。
【0027】
また、図1、図2及び図4に示すように、フレーム7cの上端部7gは、ピン7hにより水平方向を軸として回動可能となっており、連結材7jを介して上端部7gを回動させる回動用シリンダ7iとが設けられている。
【0028】
斜面3上に障害物が存在するときは、回動用シリンダ7iを伸縮させてフレーム7cの上端部7gをピン7hを中心として上方へ回動させて障害物への衝突を回避する。
なお、本実施形態においては、ピン7hと回動用シリンダ7iとにより上端部7gを回動させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、障害物との衝突を回避する機能を有するものであれば他の機構を用いてもよい。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、削孔手段10は、斜面3に孔を掘削するための削孔機10aと、削孔機10aの削孔方向をガイドするためのマスト部10bと、マスト部10bを所望の角度に傾斜するための傾斜装置10cとを備えている。
【0030】
これらの削孔機10a、マスト部10b及び傾斜装置10cは、すべて削孔用架台8c上に設置されている。
傾斜装置10cは、一端が削孔用架台8cに接続され、他端がマスト部10bに接続された傾斜用シリンダであり、この傾斜用シリンダを伸縮することにより、マスト部10bの傾斜角度を調整する。
マスト部10bは、各現場に応じて適宜設計等により決定された所望の角度に調整することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、傾斜装置10cとして、シリンダを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他のものを用いてもよい。
【0032】
次に、フリースライディングドリル1の移動方法について説明する。
斜面3には、設計等により決定された位置に、孔を掘削するためのガイドとなる筒状のガイド管12が設置されている。
【0033】
図9〜図12は、フリースライディングドリル1の移動方法を示す図である。
まず、図9に示すように、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を横行レール4に沿って水平方向に移動させて、ガイド管12の上方で作業用架台7を停止させる。
なお、斜面3上に電柱13等が設置されており、作業用架台7が水平方向に移動する際に衝突する可能性がある場合は、図10に示すように、フレーム7cの上端部7gを上方へ回動させて衝突を回避しつつ、移動させる。
そして、電柱13を通過した後は、フレーム7cの上端部7gを斜面3に平行なもとの状態に戻す。
【0034】
次に、図11に示すように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、ガイド管12の上方で台車部8を停止させる。
【0035】
次に、図12に示すように、マスト部10bを所定の傾斜角度に設定する。そして、削孔機10aを降下させて削孔機10aの掘削用ロッドをガイド管12の近くまで移動させる。
【0036】
削孔機10aを降下させてロッドをそのままガイド管12内に挿通可能な場合は、削孔機10aを連続して降下させてロッドをガイド管12内に挿通させるとともに、孔の掘削を開始する。
【0037】
なお、削孔機10aの位置がガイド管12の位置からずれていて、ロッドをガイド管12に挿通できない場合は、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dで削孔機10aの設置されている削孔用架台8cの位置を微調整して、削孔機10aのロッドをガイド管12に挿通可能な位置に移動させる。移動後、上述したように、削孔機10aを降下させてロッドをガイド管12内に挿通させるとともに、孔の掘削を開始する。
孔を所定の深さまで掘削したら、削孔機10aのロッドを地上に引き上げる。
【0038】
次に、再び、上記と同様に、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に台車部8を停止させる。そして、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削する。
【0039】
上述したように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に台車部8を停止させ、それから、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削するという一連の作業を繰り返し、傾斜方向に所定の数だけ孔を掘削する。
【0040】
傾斜方向の掘削が終了したら、次に、上記と同様に、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を横行レール4に沿って水平方向に移動させて、水平方向に隣接する次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に作業用架台7を停止させる。そして、再び、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方で停止し、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削する。
【0041】
上述したように、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を水平方向に移動させて、次に、傾斜方向に台車部8を移動させつつ、所定の数だけ孔を掘削するという一連の作業を繰り返し、斜面3全体の掘削予定箇所を掘削する。
【0042】
上述した構成からなるフリースライディングドリル1は、複数のレール2を連結して横行レール4を構築しているので、斜面3が凹凸の形状でも各レール2の長さを凹凸の形状に応じて調整することで各レール2を斜面3に接地した状態で設置することができる。したがって、作業用架台7を安全に走行させることができる。
【0043】
さらに、斜面3上に障害物が存在しており、これを回避するために一対の横行レール4のうち一方の横行レール4が直線的に配置されていない場合でも、調整手段6を備えているので、一対の横行レール4間の間隔に応じて適宜、一対の第一の走行手段5間の間隔を自在に調整しつつ、作業用架台7を水平方向に移動させることができる。
【0044】
また、作業用架台7は水平方向に移動し、かつ、台車部8は作業用架台7内を傾斜方向に移動できるので、レール2等の段取り換えを行うことなく、台車部8に設置されている削孔機10aは斜面3上を水平方向及び傾斜方向に自在に移動することができる。したがって、傾斜方向又は水平方向のいずれか一方向にしか移動できなかった従来のスライディングドリルと比べて効率良く斜面3に孔を掘削することができる。
【0045】
さらに、作業用架台7は、第一及び第二のウインチ7a、8dを更に備えるので作業用架台7を重くすることができる。したがって、孔の掘削時に作用する掘削反力に対して作業用架台7を斜面3に押し付ける荷重を確保することができる。
【0046】
そして、台車部8は、削孔機10aの設置された削孔用架台8cを水平方向及び傾斜方向に微少距離だけ移動させるための位置決め装置9とを備えるので、掘削予定箇所に削孔機10aを精度良く設置することができる。
【0047】
また、削孔手段10は、傾斜装置10cを備えるので、斜面3を所定の角度で精度良く掘削することができる。
【0048】
また、フリースライディングドリル1は、斜面3上に障害物が存在していても、フレーム7cの上端部7gを回動させて障害物への衝突を回避しつつ、斜面3上を移動することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、フリースライディングドリル1を掘削予定箇所に移動させる場合に、まず、作業用架台7を水平方向に移動させて、次に、台車部8を傾斜方向に移動させる順番で説明したが、これに限定されるものではなく、まず、台車部8を傾斜方向に移動させて、次に、作業用架台7を水平方向に移動させてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、削孔機10aの位置を調整する場合に、ます、第一及び第二の位置決め用ねじ9a、9bで削孔用架台8cを水平方向に移動させ、次に、第三及び第四の位置決め用ねじ9c、9dで削孔用架台8cを傾斜方向に移動させる順番について説明したが、これに限定されるものではなく、先に、削孔用架台8cを傾斜方向に移動させて、次に、水平方向に移動させてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態においては、水平方向への移動用の第一のウインチ7aを作業用架台7に搭載した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、横行レール4の移動方向終点付近に第一のウインチ7aを設置し、ワイヤーロープ7bの一端を作業用架台7に連結する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す平面図である。
【図4】本実施形態における第一の走行手段及び調整手段の周辺部を拡大した側面図である。
【図5】本実施形態における浮き止め車輪を示す図である。
【図6】本実施形態における台車部周辺を拡大した平面図である。
【図7】本実施形態におけるフレーム走行用車輪を示す側面図である。
【図8】本実施形態における横受け車輪を示す横断面図である。
【図9】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図10】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図11】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図12】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 フリースライディングドリル
2 レール
3 斜面
4 横行レール
5 第一の走行手段
5a レール走行用車輪
5b 浮き止め車輪
5c ブラケット
6 調整手段
7 作業用架台
7a 第一のウインチ
7b ワイヤーロープ
7c フレーム
7d 支保手段
7f 滑車
7g 上端部
7h ピン
7i 回動用シリンダ
7j 連結材
8 台車部
8a 第二の走行手段
8b 走行架台
8c 削孔用架台
8d 第二のウインチ
8e ワイヤーロープ
8f フレーム走行用車輪
8h 横受け車輪
8i 滑車
9 位置決め装置
9a 第一の位置決め用ねじ
9b 第二の位置決め用ねじ
9c 第三の位置決め用ねじ
9d 第四の位置決め用ねじ
10 削孔手段
10a 削孔機
10b マスト部
10c 傾斜装置
11 アンカー
12 ガイド管
13 電柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面等の斜面に沿って移動可能で、その法面にロックボルトやアンカー等を埋設するための孔を掘削するスライディングドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
法面に孔を掘削するスライディングドリルとして、例えば、特許文献1には、斜面の水平方向に対して直交する傾斜方向に配置される一対のレールと、この一対のレールの下端部を斜面下の道路に固定するアンカーと、この一対のレールに沿って昇降可能な作業床と、作業床を水平にする水平調整機構と、作業床を一対のレールに沿って昇降させるウインチとを備えたスライディングドリルが開示されている。このスライディングドリルで斜面全体に複数の孔を掘削する場合は、まず、作業床を傾斜方向に移動させて所定の数だけ孔を掘削し、次に、スライディングドリルをすべて分解してトラック等に積載し、その後、斜面の水平方向に運搬して、再び、そこでスライディングドリルを組立てて、孔を掘削するという作業を繰り返す。
【特許文献1】特開平8−199580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のスライディングドリルを用いる場合には、傾斜方向の掘削が終了して水平方向に移動する際に、スライディングドリルの分解、運搬及び再組立ての作業が必要になるので、作業効率が悪いという問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、効率良く斜面に孔を掘削することができるスライディングドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明のフリースライディングドリルは、斜面上に、水平方向に配置され、複数のレールを連結してなる互いに平行な一対の横行レールと、斜面に孔を掘削するための削孔手段が設置された作業用架台と、前記作業用架台に取り付けられ、前記一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段と、前記一対の第一の走行手段の間隔を調整するための調整手段とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0005】
本発明によるフリースライディングドリルによれば、法面等の斜面上に、水平方向に配置されている一対の横行レールと、削孔手段が設置された作業用架台と、作業用架台に取り付けられ、一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段とを備えているので、削孔手段を横行レールに沿って水平方向に移動させるとともに、進行方向に向かって手前側から順番に孔を掘削することができる。
【0006】
また、複数のレールを連結して横行レールを構築しているので、進行方向に向かって孔を掘削しつつ、掘削が終了して作業用架台が通過した手前側のレールを取り外して傾斜方向に移動させるというレールの段取り換えを行うことができるので、作業効率が向上する。また、斜面に凹凸があっても、横行レールを構築する各レールの長さを凹凸の形状に応じて調整して、各レールを斜面に接地した状態で設置することができる。
【0007】
さらに、斜面上に障害物が存在しており、これを回避するために一対の横行レールのうち一方の横行レールが直線的に配置されていない場合でも、調整手段を備えているので、一対の横行レール間の間隔に応じて適宜、一対の走行手段間の間隔を自在に調整しつつ、作業用架台を水平方向に移動させることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記作業用架台は、水平方向に対して直交する傾斜方向に平行に配置された一対のフレームと、前記一対のフレームに沿って移動するための一対の第二の走行手段を有する台車部とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、作業用架台は、傾斜方向に沿って配置された一対のフレームと、この一対のフレームに沿って移動可能な台車部とを備えているので、台車部は、斜面の傾斜方向に移動することができる。すなわち、作業用架台が横行レールに沿って水平方向に移動し、かつ、台車部がフレームに沿って傾斜方向に移動するので、台車部は、レールの段取り換えを行うことなく、斜面上を水平方向及び傾斜方向に自在に移動することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記作業用架台は、当該作業用架台を水平方向に移動させるための第一のウインチと、前記台車部を傾斜方向に移動させるための第二のウインチとを更に備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、作業用架台は、第一及び第二のウインチを更に備えるので作業用架台を重くすることができる。したがって、孔の掘削時に作用する掘削反力に対して作業用架台を斜面に押し付ける荷重を確保することができる。
【0010】
第4の発明は、第2の発明において、前記一対のフレームは、そのフレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、一対のフレームは、各フレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えているので、斜面上に障害物が存在するときは、フレームの一部を回動させて障害物への衝突を回避しつつ、斜面上を移動することができる。
【0011】
第5の発明は、第2の発明において、前記台車部は、前記一対のフレームに沿って移動可能な走行架台と、前記走行架台内を前記水平方向及び前記傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、前記削孔用架台の前記走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、台車部は、フレームに沿って走行可能な走行架台と、走行架台内を水平方向及び傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、削孔用架台の走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えているので、削孔用架台に設置されている削孔手段を走行架台で掘削対象箇所へおおまかに移動させた後に、位置決め装置で微少距離だけ移動させることができる。
【0012】
第6の発明は、第1の発明において、前記削孔手段は、斜面を削孔するための削孔機と、前記削孔機の削孔方向をガイドするためのマスト部と、前記マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えることを特徴とする。
本発明によるフリースライディングドリルによれば、削孔手段は、削孔機と、削孔方向をガイドするためのマスト部と、マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えるので、斜面に孔を所望の角度で精度良く掘削することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフリースライディングドリルによれば、効率良く斜面に孔を掘削することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るフリースライディングドリルの好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、盛土の斜面に孔を掘削する場合について説明するが、盛土の斜面に限定されるものではなく、河川や道路等の斜面全般に適用可能である。
【0015】
図1〜図3は、それぞれ本発明の実施形態に係るフリースライディングドリル1を斜面3に設置した状態を示す斜視図、側断面図、平面図である。
図1〜図3に示すように、フリースライディングドリル1は、斜面3上に、水平方向に配置され、互いに平行な一対の横行レール4と、斜面3に孔を掘削するための削孔手段10が設置された作業用架台7と、この作業用架台7に取り付けられ、一対の横行レール4に沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段5と、一対の第一の走行手段5間の間隔を調整するための調整手段6とを備える。
横行レール4は、複数のH型鋼からなるレール2を連結して構成され、両端部はアンカー11で斜面3に固定されている。また、斜面3に凹凸があっても、各レール2の長さを凹凸の形状に応じて調整することで、各レール2を斜面3に接地した状態で設置することができる。
【0016】
図4は、本実施形態における第一の走行手段5及び調整手段6の周辺部を拡大した側面図である。
図4に示すように、第一の走行手段5は、横行レール4上を走行するためのレール走行用車輪5aと、横行レール4の上側フランジに接し、作業用架台7の浮きを防止するための浮き止め車輪5b(詳細を図5に示す)と、両車輪5a、5bの位置関係を固定するとともに、両車輪5a、5bを作業用架台7のフレーム7c(後述する)に接続するためのブラケット5cとから構成されている。
【0017】
調整手段6は、一対の第一の走行手段5のうち斜面方向上側にのみ配置されていて、一端が、第一の走行手段5のブラケット5cに、他端が作業用架台7のフレーム7c(後述する)に接続されている。この調整手段6は、伸縮可能なダンパーであり、フレーム7cに平行に設置されている。斜面3上に障害物が存在して、これを回避するために一方の横行レール4が直線的に配置されていない場合でも、作業用架台7が横行レール4上を移動する際は、一対の横行レール4間の間隔に追随して調整手段6が伸縮することにより、一対の第一の走行手段5間の間隔がその一対の横行レール4間の間隔と同じになるように調整されるので、作業用架台7は、横行レール4上を移動することができる。
【0018】
なお、本実施形態においては、調整手段6としてダンパーを用いたが、これに限定されるものではなく、ジャッキ等を用いてもよい。
【0019】
また、本実施形態においては、調整手段6を一対の第一の走行手段5のうち斜面方向上側に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、斜面方向下側に配置したり、斜面方向上側及び斜面方向下側の両側共に配置してもよい。
【0020】
さらに、本実施形態においては、作業用架台7が横行レール4上を移動する際に、一対の横行レール4間の間隔に追随して調整手段6が伸縮する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、作業用架台7が横行レール4上を移動する際に、一対の横行レール4間の間隔と一対の第一の走行手段5間の間隔とが同じになるように手動で調整手段6を伸縮させてもよい。
【0021】
また、図1〜図3に示すように、作業用架台7は、第一のウインチ7aを備えている。このウインチ7aのワイヤーロープ7bの先端は、アンカー11に取り付けられた滑車7fを介して作業用架台7に接続されているので、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取ることにより、上述したように、作業用架台7は横行レール4上を水平方向に走行する。
【0022】
また、作業用架台7は、水平方向に対して直交する傾斜方向に沿って平行に配置された一対のフレーム7cと、この一対のフレーム7c間の間隔を一定に保つため、フレーム7c間に挟持される所定の長さの支保手段7dと、一対のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動可能な台車部8とを更に備えている。本実施形態においては、各フレーム7c及び支保手段7dとしてI型鋼を用い、一対のフレーム7cと支保手段7dとで長方形の枠を構築した。
【0023】
図6は、本実施形態における台車部8周辺を拡大した平面図である。
図6に示すように、台車部8は、フレーム7cに沿って走行するための第二の走行手段8aを有する走行架台8bと、走行架台8b内を水平方向及び傾斜方向に移動可能で、削孔手段10を設置するための削孔用架台8cと、この台車部8をフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させるための第二のウインチ8dとを備えている。
【0024】
第二の走行手段8aは、フレーム7cの下側フランジ上を走行するためのフレーム走行用車輪8f(詳細を図7に示す)と、フレーム7cの上側フランジに接し、走行架台8bの浮きを防止するための浮き止め車輪5bと、フレーム7cのウェブに接し、台車部8の水平方向のぶれを抑制するための横受け車輪8h(詳細を図8に示す)とから構成されており、走行架台8bは、フレーム7cから脱線せず、かつ、フレーム7cに衝突しないように傾斜方向に走行可能である。
【0025】
また、図1〜図3に示すように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eの先端は、支保手段7dに取り付けられた滑車8iを介して走行架台8bに接続されているので、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取ることにより、上述したように、走行架台8bはフレーム7cに沿って傾斜方向に走行可能である。
【0026】
また、台車部8は、削孔用架台8cの走行架台8bに対する位置を調整するための位置決め装置9とを更に備えている。
位置決め装置9は、図6中の削孔用架台8cの左右両側にそれぞれ設置される第一及び第二の位置決め用ねじ9a、9bと、図6中の削孔用架台8cの上下両側にそれぞれ設置される第三及び第四の位置決め用ねじ9c、9dとから構成される。削孔用架台8cを水平方向の図6中右側に移動させる場合は、第一の位置決め用ねじ9aを締め込むとともに、第二の位置決め用ねじ9bを緩めることにより移動させる。また、削孔用架台8cを傾斜方向の図6中下側に移動させる場合は、第三の位置決め用ねじ9cを締め込むとともに、第四の位置決め用ねじ9dを緩めることにより移動させる。
【0027】
また、図1、図2及び図4に示すように、フレーム7cの上端部7gは、ピン7hにより水平方向を軸として回動可能となっており、連結材7jを介して上端部7gを回動させる回動用シリンダ7iとが設けられている。
【0028】
斜面3上に障害物が存在するときは、回動用シリンダ7iを伸縮させてフレーム7cの上端部7gをピン7hを中心として上方へ回動させて障害物への衝突を回避する。
なお、本実施形態においては、ピン7hと回動用シリンダ7iとにより上端部7gを回動させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、障害物との衝突を回避する機能を有するものであれば他の機構を用いてもよい。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、削孔手段10は、斜面3に孔を掘削するための削孔機10aと、削孔機10aの削孔方向をガイドするためのマスト部10bと、マスト部10bを所望の角度に傾斜するための傾斜装置10cとを備えている。
【0030】
これらの削孔機10a、マスト部10b及び傾斜装置10cは、すべて削孔用架台8c上に設置されている。
傾斜装置10cは、一端が削孔用架台8cに接続され、他端がマスト部10bに接続された傾斜用シリンダであり、この傾斜用シリンダを伸縮することにより、マスト部10bの傾斜角度を調整する。
マスト部10bは、各現場に応じて適宜設計等により決定された所望の角度に調整することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、傾斜装置10cとして、シリンダを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他のものを用いてもよい。
【0032】
次に、フリースライディングドリル1の移動方法について説明する。
斜面3には、設計等により決定された位置に、孔を掘削するためのガイドとなる筒状のガイド管12が設置されている。
【0033】
図9〜図12は、フリースライディングドリル1の移動方法を示す図である。
まず、図9に示すように、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を横行レール4に沿って水平方向に移動させて、ガイド管12の上方で作業用架台7を停止させる。
なお、斜面3上に電柱13等が設置されており、作業用架台7が水平方向に移動する際に衝突する可能性がある場合は、図10に示すように、フレーム7cの上端部7gを上方へ回動させて衝突を回避しつつ、移動させる。
そして、電柱13を通過した後は、フレーム7cの上端部7gを斜面3に平行なもとの状態に戻す。
【0034】
次に、図11に示すように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、ガイド管12の上方で台車部8を停止させる。
【0035】
次に、図12に示すように、マスト部10bを所定の傾斜角度に設定する。そして、削孔機10aを降下させて削孔機10aの掘削用ロッドをガイド管12の近くまで移動させる。
【0036】
削孔機10aを降下させてロッドをそのままガイド管12内に挿通可能な場合は、削孔機10aを連続して降下させてロッドをガイド管12内に挿通させるとともに、孔の掘削を開始する。
【0037】
なお、削孔機10aの位置がガイド管12の位置からずれていて、ロッドをガイド管12に挿通できない場合は、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dで削孔機10aの設置されている削孔用架台8cの位置を微調整して、削孔機10aのロッドをガイド管12に挿通可能な位置に移動させる。移動後、上述したように、削孔機10aを降下させてロッドをガイド管12内に挿通させるとともに、孔の掘削を開始する。
孔を所定の深さまで掘削したら、削孔機10aのロッドを地上に引き上げる。
【0038】
次に、再び、上記と同様に、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に台車部8を停止させる。そして、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削する。
【0039】
上述したように、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を作業用架台7のフレーム7cに沿って傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に台車部8を停止させ、それから、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削するという一連の作業を繰り返し、傾斜方向に所定の数だけ孔を掘削する。
【0040】
傾斜方向の掘削が終了したら、次に、上記と同様に、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を横行レール4に沿って水平方向に移動させて、水平方向に隣接する次の掘削予定箇所のガイド管12の上方に作業用架台7を停止させる。そして、再び、第二のウインチ8dのワイヤーロープ8eを巻取って台車部8を傾斜方向に移動させて、次の掘削予定箇所のガイド管12の上方で停止し、第一〜第四の位置決め用ねじ9a〜9dにより削孔機10aの位置を微調整して、孔を掘削する。
【0041】
上述したように、第一のウインチ7aのワイヤーロープ7bを巻取って作業用架台7を水平方向に移動させて、次に、傾斜方向に台車部8を移動させつつ、所定の数だけ孔を掘削するという一連の作業を繰り返し、斜面3全体の掘削予定箇所を掘削する。
【0042】
上述した構成からなるフリースライディングドリル1は、複数のレール2を連結して横行レール4を構築しているので、斜面3が凹凸の形状でも各レール2の長さを凹凸の形状に応じて調整することで各レール2を斜面3に接地した状態で設置することができる。したがって、作業用架台7を安全に走行させることができる。
【0043】
さらに、斜面3上に障害物が存在しており、これを回避するために一対の横行レール4のうち一方の横行レール4が直線的に配置されていない場合でも、調整手段6を備えているので、一対の横行レール4間の間隔に応じて適宜、一対の第一の走行手段5間の間隔を自在に調整しつつ、作業用架台7を水平方向に移動させることができる。
【0044】
また、作業用架台7は水平方向に移動し、かつ、台車部8は作業用架台7内を傾斜方向に移動できるので、レール2等の段取り換えを行うことなく、台車部8に設置されている削孔機10aは斜面3上を水平方向及び傾斜方向に自在に移動することができる。したがって、傾斜方向又は水平方向のいずれか一方向にしか移動できなかった従来のスライディングドリルと比べて効率良く斜面3に孔を掘削することができる。
【0045】
さらに、作業用架台7は、第一及び第二のウインチ7a、8dを更に備えるので作業用架台7を重くすることができる。したがって、孔の掘削時に作用する掘削反力に対して作業用架台7を斜面3に押し付ける荷重を確保することができる。
【0046】
そして、台車部8は、削孔機10aの設置された削孔用架台8cを水平方向及び傾斜方向に微少距離だけ移動させるための位置決め装置9とを備えるので、掘削予定箇所に削孔機10aを精度良く設置することができる。
【0047】
また、削孔手段10は、傾斜装置10cを備えるので、斜面3を所定の角度で精度良く掘削することができる。
【0048】
また、フリースライディングドリル1は、斜面3上に障害物が存在していても、フレーム7cの上端部7gを回動させて障害物への衝突を回避しつつ、斜面3上を移動することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、フリースライディングドリル1を掘削予定箇所に移動させる場合に、まず、作業用架台7を水平方向に移動させて、次に、台車部8を傾斜方向に移動させる順番で説明したが、これに限定されるものではなく、まず、台車部8を傾斜方向に移動させて、次に、作業用架台7を水平方向に移動させてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、削孔機10aの位置を調整する場合に、ます、第一及び第二の位置決め用ねじ9a、9bで削孔用架台8cを水平方向に移動させ、次に、第三及び第四の位置決め用ねじ9c、9dで削孔用架台8cを傾斜方向に移動させる順番について説明したが、これに限定されるものではなく、先に、削孔用架台8cを傾斜方向に移動させて、次に、水平方向に移動させてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態においては、水平方向への移動用の第一のウインチ7aを作業用架台7に搭載した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、横行レール4の移動方向終点付近に第一のウインチ7aを設置し、ワイヤーロープ7bの一端を作業用架台7に連結する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフリースライディングドリルを斜面に設置した状態を示す平面図である。
【図4】本実施形態における第一の走行手段及び調整手段の周辺部を拡大した側面図である。
【図5】本実施形態における浮き止め車輪を示す図である。
【図6】本実施形態における台車部周辺を拡大した平面図である。
【図7】本実施形態におけるフレーム走行用車輪を示す側面図である。
【図8】本実施形態における横受け車輪を示す横断面図である。
【図9】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図10】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図11】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【図12】フリースライディングドリルの移動方法を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 フリースライディングドリル
2 レール
3 斜面
4 横行レール
5 第一の走行手段
5a レール走行用車輪
5b 浮き止め車輪
5c ブラケット
6 調整手段
7 作業用架台
7a 第一のウインチ
7b ワイヤーロープ
7c フレーム
7d 支保手段
7f 滑車
7g 上端部
7h ピン
7i 回動用シリンダ
7j 連結材
8 台車部
8a 第二の走行手段
8b 走行架台
8c 削孔用架台
8d 第二のウインチ
8e ワイヤーロープ
8f フレーム走行用車輪
8h 横受け車輪
8i 滑車
9 位置決め装置
9a 第一の位置決め用ねじ
9b 第二の位置決め用ねじ
9c 第三の位置決め用ねじ
9d 第四の位置決め用ねじ
10 削孔手段
10a 削孔機
10b マスト部
10c 傾斜装置
11 アンカー
12 ガイド管
13 電柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面上に、水平方向に配置され、複数のレールを連結してなる互いに平行な一対の横行レールと、
斜面に孔を掘削するための削孔手段が設置された作業用架台と、
前記作業用架台に取り付けられ、前記一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段と、
前記一対の第一の走行手段の間隔を調整するための調整手段とを備えることを特徴とするフリースライディングドリル。
【請求項2】
前記作業用架台は、
水平方向に対して直交する傾斜方向に平行に配置された一対のフレームと、
前記一対のフレームに沿って移動するための一対の第二の走行手段を有する台車部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のフリースライディングドリル。
【請求項3】
前記作業用架台は、
当該作業用架台を水平方向に移動させるための第一のウインチと、
前記台車部を傾斜方向に移動させるための第二のウインチとを更に備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項4】
前記一対のフレームは、そのフレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項5】
前記台車部は、
前記一対のフレームに沿って移動可能な走行架台と、
前記走行架台内を前記水平方向及び前記傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、
前記削孔用架台の前記走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項6】
前記削孔手段は、
斜面を削孔するための削孔機と、
前記削孔機の削孔方向をガイドするためのマスト部と、
前記マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載のフリースライディングドリル。
【請求項1】
斜面上に、水平方向に配置され、複数のレールを連結してなる互いに平行な一対の横行レールと、
斜面に孔を掘削するための削孔手段が設置された作業用架台と、
前記作業用架台に取り付けられ、前記一対の横行レールに沿ってそれぞれ走行可能な一対の第一の走行手段と、
前記一対の第一の走行手段の間隔を調整するための調整手段とを備えることを特徴とするフリースライディングドリル。
【請求項2】
前記作業用架台は、
水平方向に対して直交する傾斜方向に平行に配置された一対のフレームと、
前記一対のフレームに沿って移動するための一対の第二の走行手段を有する台車部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のフリースライディングドリル。
【請求項3】
前記作業用架台は、
当該作業用架台を水平方向に移動させるための第一のウインチと、
前記台車部を傾斜方向に移動させるための第二のウインチとを更に備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項4】
前記一対のフレームは、そのフレームの一部が回動可能となるヒンジ機構を備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項5】
前記台車部は、
前記一対のフレームに沿って移動可能な走行架台と、
前記走行架台内を前記水平方向及び前記傾斜方向に移動可能な削孔用架台と、
前記削孔用架台の前記走行架台に対する位置を調整するための位置決め装置とを備えることを特徴とする請求項2に記載のフリースライディングドリル。
【請求項6】
前記削孔手段は、
斜面を削孔するための削孔機と、
前記削孔機の削孔方向をガイドするためのマスト部と、
前記マスト部を所望の角度に傾斜するための傾斜装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載のフリースライディングドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−161950(P2009−161950A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341043(P2007−341043)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【Fターム(参考)】
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