説明

フルオラステロマー化合物とそれを含んでなるポリマー

一般式RF−A−[CH2cCR23−Zで示されるフルオラステロマー化合物が請求の範囲に記載されている。式中、RFは炭素原子数1〜20のペルフルオロアルキルラジカルであり、Aは一般式(I)又は(II)で示される置換基である。R1はCF3、OR4、Cl、Br又はIであり、R2とR3はH、アルキル又はアリールであり、R4はペルフルオロメチル、ペルフルオロプロピル又はペルフルオロプロピルオキシプロピルであり、XとYはH、Cl又はFであり、Zは−OH、−OCOCH=CH2又は−OCOCCH3=CH2であり、aは0〜10、bは1〜30、またcは1〜30である。これらの化合物はさらなるモノマーと共重合する。こうして得られるコポリマーは繊維質基材の撥水、撥油及び防汚加工に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フッ素化合物はしばしば界面活性剤や湿潤剤として使用され、また基材の表面処理にも広く使用される。繊維質基材たとえば絨毯、繊維製品、皮革、不織布、紙などや硬質基材たとえば木材、金属又はコンクリートなどの撥水撥油防汚加工に使用されることも多い。こうした処理を施した基材では親水性及び疎水性液体が吸収されにくくなるし、また付着した汚れが落ちやすくもなる。
【背景技術】
【0002】
フッ素化合物の合成では、フッ素化モノマーたとえばテトラフルオロエテンなどによるテロゲンのテロマー化によって得られるヨウ化ペルフルオロアルキルが重要な出発物質となる。
【0003】
表面改質剤として使用するには、まずヨウ化ペルフルオロアルキルをエテンによりヨウ化ペルフルオロアルキルエチルへと変換するのが普通である。次にヨウ化ペルフルオロアルキルエチルを適当な試薬により対応するペルフルオロアルキルエチルアルコールへと変換できる。次いでこのペルフルオロアルキルエチルアルコールから、一般式I
FCH2CH2OCOCR=CH2 (I)
で示される対応する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを合成できる。
【0004】
一般式Iを満たすフルオラス(fluorous)アクリル酸及びメタクリル酸エステルを種々のアクリル酸及びメタクリル酸誘導体からそれぞれ合成する方法は周知であり、実証もされている。
【0005】
これらのフルオラスアクリル酸エステルから合成されるコポリマーは撥油性、撥水性及び防汚性の付与といった表面の改質に、たとえば繊維製品の加工や皮革及び紙のコーティングなどに、特に有用である。
【0006】
一般式II
FSO2NR’(CH2nOCOCR=CH2 (II)
で示されるフルオラスモノマーもまた同様の用途が知られている。
【0007】
その合成に使用されるフッ素化アルキルスルホン酸フッ化物は電解フッ素化法により得られる。
【0008】
両タイプのモノマー(IとII)について、フッ素化炭素原子数8〜10のより長い理想的には直鎖状のペルフルオロアルキル鎖を用いた表面コーティングは、表面エネルギーが特に低くなると判明している。
【0009】
前記モノマーを含む、フッ素化炭素原子数8の直鎖ペルフルオロアルキル鎖をもつフルオラス化合物は、分解してペルフルオロオクタンカルボン酸とペルフルオロオクタンスルホン酸をそれぞれ生成可能である。これらの分解生成物はそれ以上分解しないと考えられており、従って難分解性である。これらの化合物はまた生体蓄積性も疑われている。
【0010】
そのため近年、環境適合性のペルフルオロアルキル化合物の合成が種々提案されてきた。
【0011】
国際公開WO02/16306号パンフレットは一般式III
F(RF’)CHOCOCR=CH2 (III)
で示され、炭素原子数5以下の直鎖又は分岐鎖ペルフルオロアルキル基RFと炭素原子数3〜5の分岐鎖ペルフルオロアルキル鎖RF’とをもつ分岐鎖フルオラス(メタ)アクリル酸エステルを開示している。これらの化合物は特に、低分子量、低毒性の分解生成物をもたらす。
【0012】
鎖長の短いペルフルオロアルキルスルホン酸誘導体のほうが生体外に排出されやすいと判明している。国際公開WO03/062521号パンフレットは、ペルフルオロオクタンスルホン酸誘導体の代わりに、一般式II
FSO2NR’(CH2nOCOCR=CH2 (II)
に従い、フッ素化炭素原子数4の部分分岐鎖ペルフルオロアルキルラジカルRFをもつペルフルオロブタンスルホン酸誘導体(式中n=1、2;R’=H、アルキル;及びR=H、CH3である)をベースにした繊維製品加工剤を開示している。
【0013】
欧州特許第1632542号明細書では、炭素原子数4のフッ素化アルキルラジカルをもち、一般式I
FCH2CH2OCOCR=CH2 (I)
に従う化合物が開示されている。その分解生成物は比較的容易に生体外に排出されそうである。
【0014】
国際公開WO02/34848号パンフレットは、ペルフルオロアルキルラジカルとしてトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基をもつポリオキセタンの使用を開示している。この種の化合物も環境適合性の含ペルフルオロアルキル基化合物であり、フッ素界面活性剤として又はコーティングに使用される。
【0015】
国際公開WO2004/060964号パンフレットは、生体外への排出が特に容易である分子量750g/モル超のフッ素化ポリエーテルを開示している。国際公開WO03/100158号パンフレットはそうしたアルコール及びアクリル酸エステルの、繊維製品加工への使用を開示している。
【0016】
しかし、ペルフルオロアルキル化合物に対する前述の提案による環境適合性代替物は、撥油及び撥水加工剤のベースとして使用しても、あまり有効でないことが明らかとなった。これは達成される撥水性及び撥油性の数値やコーティングの耐久性に表われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、含ポリフルオロアルキル基化合物及びその誘導体に代わる生体蓄積効果のない代替化合物を提供することが目的である。その性能特性には撥油及び撥水コーティングとして使用した場合の高い有効性も含まれる。加えて、代替化合物は工業規模でも取扱い可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願開示のポリフルオロアルキル化合物は、驚くべきことに、高性能、高耐久性の撥油及び撥水コーティングとなり、また環境適合性をも備えることが、今日では判明している。
【0019】
本発明は従って、分子量750g/モル超の、アルコール−、メタクリル酸エステル−及び/又はアクリル酸エステル−官能化フルオラステロマー化合物を提供する。
【0020】
本発明はさらに、部分分岐鎖、部分直鎖のポリフルオロアルキル基からなるため直鎖ポリフルオロアルキル基からなる分子量同等物よりも融点が低いフルオラス化合物を提供する。
【0021】
本発明はさらに、対応するフルオラスヨウ化アルキルからテロマー化反応により1又は複数のステップで合成されるアルコール−、メタクリル酸エステル−又はアクリル酸エステル−官能化フルオラステロマー化合物を提供する。
【0022】
本発明はさらに、メタクリル酸エステル−又はアクリル酸エステル−官能化テロマー化合物のコポリマーの生産を提供する。
【0023】
本発明はさらに、基材の表面エネルギーが引き下げられる用途分野への、本願開示化合物又はそのコポリマーの使用を提供する。
【0024】
本発明はさらに、繊維質基材たとえば絨毯、繊維製品、皮革、不織布、紙などや硬質基材たとえば木材、金属又はコンクリートなどの撥水撥油防汚加工に使用される組成物を製造するための、本願開示コポリマーの使用を提供する。
【0025】
本発明は一般式IV
F−A−[CH2cCR23−Z (IV)
(式中、
Fは炭素原子数1〜20のペルフルオロアルキルラジカルであり、
Aは次の一般式
【化1】

で示される基であり、
1はCF3、OR4、Cl、Br又はIであり、
2とR3はH、アルキル又はアリールであり、
4はペルフルオロメチル、ペルフルオロプロピル又はペルフルオロプロピルオキシプロピルであり、
XとYはH、Cl又はFであり、
Zは−OH、−OCOCH=CH2又は−OCOCCH3=CH2であり、
aは0〜10、bは1〜30、またcは1〜30である。)
で示されるフルオラステロマー化合物を提供する。
【0026】
好ましいのは一般式IVで示される分子量750g/モル超のフルオラス化合物である。特に好ましいのは、一般式IVで示される分子量1000g/モル超の化合物である。
【0027】
ポリフルオロアルキルラジカルRFは単一鎖長のポリフルオロアルキル基でも、種々の鎖長のポリフルオロアルキル基たとえばCF3基、C25基、C37基、C49基、C613基、C817基、C1021基、C1225基、C1429基及びC1631基の混合したものでもよい。ポリフルオロアルキルラジカルは分岐、非分岐いずれのタイプでもよい。
【0028】
本発明の化合物で好ましいのは、フッ素化炭素原子数1〜20の鎖長を有し少なくとも1つの末端CF3基を含む飽和ポリフルオロアルキルラジカルRFをもつ化合物である。
【0029】
特に好ましいのはフッ素化炭素原子数1〜3又は4〜16の全フッ素化炭素鎖RFである。
【0030】
1はポリフルオロアルキル鎖に結晶化阻害効果を及ぼす立体かさ(嵩)高基である。特に好ましいのはペルフルオロメチル基、ペルフルオロアルキルエーテル基、又は塩素、臭素もしくはヨウ素の各原子である。最も好ましいのはペルフルオロメチル基である。
【0031】
2とR3はそれぞれ水素、アリール基(フェニル)、又は炭素原子数1〜4のアルキル基とすることができる。R2とR3はそれぞれ水素又はメチルであるのが好ましい。
【0032】
より好ましくは、R4はペルフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基又はペルフルオロプロピルオキシプロピル基であり、最も好ましくはペルフルオロメチル基である。
【0033】
aは、好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜5である。
【0034】
bは、好ましくは1〜30であり、より好ましくはa+b>3である。
【0035】
cは、好ましくは1〜30であり、より好ましくはc=1である。
【0036】
XとYは独立にH、Cl又はFとすることができる。好ましくは、XとYはフッ素原子である。あるいは、Xがフッ素原子でYが塩素原子であり、又はXとYは水素原子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
一般式IVで示されるフルオラスアルコール(Z=OH)は一般に、対応するヨウ化ポリフルオロアルキルアルキルから多段階工程で得られる。
【0038】
その第1工程(テロマー化)では、ラジカル連鎖移動能を有するフルオラス化合物(テロゲン)を少なくとも1つのフッ素化モノマー(タキソゲン)と、ラジカル形成機構により20〜250℃で反応させて、一般式
F−A−I
で示されるテロマーを生成する。
【0039】
有用なテロゲンの例は、ラジカル的に切断される基を有するフルオラスアルキル化合物たとえばヨウ化フルオラスアルキル、臭化フルオラスアルキル、フルオラスアルキルチオール、フルオラスアルキルチオエーテル及びフルオラスアルキルアルコールなどである。好ましいのは単一鎖長のヨウ化ペルフルオロアルキル又は種々の鎖長のヨウ化ペルフルオロアルキルの混合物である。ペルフルオロアルキルラジカルは分岐、非分岐いずれのタイプでもよく、たとえばヨウ化ペルフルオロメチル、ヨウ化ペルフルオロエチル、ヨウ化n−ペルフルオロプロピル、ヨウ化イソペルフルオロプロピル、ヨウ化n−ペルフルオロブチル、ヨウ化イソペルフルオロブチル、ヨウ化tert−ペルフルオロブチル、及びヨウ化ペルフルオロヘキシル、ヨウ化ペルフルオロオクチル、ヨウ化ペルフルオロデシル、ヨウ化ペルフルオロドデシルの異性体などである。
【0040】
本発明のヨウ化ペルフルオロアルキルのうち好ましいのは、炭素原子数1〜20の鎖長を有し、少なくとも1つの末端CF3基を含むものである。
【0041】
特に好ましいのは、ヨウ化ペルフルオロメチル、ヨウ化ペルフルオロエチル、ヨウ化ペルフルオロプロピルもしくはヨウ化ペルフルオロイソプロピル、又はフッ素化炭素原子数6〜16又はフッ素化炭素原子数8〜16の鎖長を有し、かつ平均鎖長がフッ素化炭素原子数約7.5又はフッ素化炭素原子数約9の、種々のヨウ化ペルフルオロアルキルの工業用純度の混合物である。
【0042】
テロゲンへのタキソゲンの付加により高分子量の物質が形成される結果となる。こうして形成されるテロマーは末端ヨウ素基を有するペルフルオロアルキル鎖からなる。テロマーにタキソゲンが取り込まれる様式は次の3つの変形のうちどれが選択されるかに応じて異なる。
【0043】
第1の変形では、最初にフッ素化不飽和モノマーCF2=CFR1だけをテロマーに付加する。次に、この生成物にテロマー化条件下、一般式CF2=CXYで示されるモノマーを付加する。こうして得られるテロマーは一般式
【化2】

で表され、モノマーがブロック的に取り込まれることを示す。
【0044】
第2の変形では、最初にフッ素化不飽和モノマーCF2=CXYだけを付加する。次に、この生成物にテロマー化条件下、一般式CF2=CFR1で示されるモノマーを付加する。こうして得られるテロマー
【化3】

でもまたモノマーがブロック的に取り込まれるが、付加されるモノマーの順序は逆になる。
【0045】
第3の変形では、2種類のモノマーが混合物として同時に付加され、モノマーCF2=CFR1及びCF2=CXYがランダムに取り込まれる結果となる。
【0046】
一般式CF2=CFR1で示される化合物の例はクロロトリフルオロエテン、ブロモトリフルオロエテン、ヨードトリフルオロエテン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルオキシプロピルビニルエーテル、それに末端二重結合を有する分岐及び非分岐ペルフルオロオレフィンたとえばヘキサフルオロプロペン、1−ペルフルオロブテン、1−ペルフルオロヘキセン又はペルフルオロオクテンなどである。
【0047】
一般式CF2=CXYで示される化合物の例はたとえばテトラフルオロエテン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエテン、トリフルオロエテン、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエテン及び1−クロロ−2,2−ジフルオロエテンなどである。
【0048】
含ヨウ素化合物の場合には、テロマー化反応を開始させるラジカルを、ラジカル形成源によって生成させることができる。有用なラジカル形成源の例は熱又は光である。光源は一般に赤外から紫外領域に最大値を有する。熱によるラジカル形成は一般に100℃〜250℃の温度で起こる。
【0049】
有用なラジカル形成源のさらなる例は、ラジカル形成に要する反応温度を0℃〜150℃に引き下げる働きもある化学種のラジカル開始剤であり、たとえば有機又は無機過酸化物、アゾ化合物、有機又は無機金属化合物、金属、さらにはそれらの組み合わせなどである。特に好ましいのは過硫酸塩、フッ素化及び非フッ素化有機過酸化物、アゾ化合物、それに金属たとえばRu、Cu、Ni、Pd、Ptなどである。
【0050】
テロマー化は無溶媒で、溶液中で、懸濁液又は乳液中で行うことができる。特に好ましいのは無溶媒又は乳液中での反応である。乳液中での反応の場合には、まず界面活性剤を用いてテロゲンを水性乳液に変換する。この乳液は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤及びそれらの組み合わせにより、安定化させることができる。特に好ましいのはたとえばフルオロ界面活性剤である。反応は一般に、タキソゲンとラジカル開始剤を添加して高温で行う。追加の成分たとえば少量の亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はジチオン酸塩の水溶液を使用して反応収率を高めることもできる。
【0051】
多段階工程の第2工程では、こうして得られたヨウ化ポリフルオロアルキルをラジカル条件下、オレフィンと反応させて、一般式
F−A−CH2CR23
で示される対応する置換又は非置換ヨウ化ポリフルオロアルキルエチルを得る。
【0052】
オレフィンの挿入はラジカルプロセスを介して進行するが、これは前述のテロマー化反応と同じようにして行うことができる。
【0053】
この付加反応に好ましいオレフィンはエチレン性不飽和化合物たとえばエテン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、スチレン、1,1−ジフェニルエテンなどとすることができる。エテンが特に好ましい。
【0054】
多段階工程の第3工程では、置換又は非置換ポリフッ化エチルヨウ化物を一般式
F−A−CH2CR23OH
で示される対応するポリフルオロアルキルエチルアルコールへと変換する。
【0055】
この場合は、ヨウ化ポリフルオロアルキルエチルを、適当な共反応剤により、たとえばp−トルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、N−メチルピロリドン、酸アミド類、ペルオキシ酸類を用いて加水分解し、アルコールを生成させる。アルコールを生成するこの加水分解の特に好ましい実施形態では、ヨウ化ポリフルオロアルキルエチルをN−メチルピロリドン及び水と100℃〜200℃の温度で反応させる。
【0056】
本発明の別の態様では、第1工程のヨウ化ポリフルオロアルキルを使用して、一般式
F−A−[CH2cCR23OH
で示される対応する置換又は非置換ポリフルオロアルキルアルキルアルコールを合成する。
【0057】
実際には、ヨウ化ポリフルオロアルキルをγ−アルケノールに、好適な条件下、前述の要領で付加する。こうして得られる含ヨウ素ポリフルオロアルコールは次に、公知技術の水素化により、飽和ポリフルオロアルキルアルキルアルコールへと変換することができる。使用されるγ−アルケノールの例はγ−プロペノール、γ−ブテノール、γ−ペンテノール、γ−ヘキセノール、γ−ヘプテノール、γ−デセノール及びγ−ウンデセノールなどである。
【0058】
あるいは、第2工程のヨウ化ポリフルオロアルキルエチルを使用して、一般式
F−A−[CH22CR23OH
で示される対応する置換又は非置換ポリフルオロアルキルプロピルアルコールを合成する。
【0059】
この場合は、ヨウ化ポリフルオロアルキルエチルを脱ヨウ化水素により対応するポリフルオロアルキルオレフィンへと変換し、次にラジカル開始剤を用いて脂肪族アルコールたとえばメタノール、エタノール、ブタノール又はイソプロパノールなどと反応させて、対応する置換又は非置換ポリフルオロアルキルプロピルアルコールを生成させる。
【0060】
これらの様々な方法で得られるポリフルオロアルキルアルキルアルコールは(メタ)アクリル酸、そのエステル又は酸塩化物と反応させて、一般式
F−A−[CH2cCR23OCOCH=CH2、又は
F−A−[CH2cCR23OCOCCH3=CH2
で示される対応するフルオラス(メタ)アクリル酸エステルを生成させることができる。
【0061】
(メタ)アクリル酸塩化物との反応は、一般に生成する塩化水素と結合するトリエチルアミンなどのような塩基の存在下に行う。エステル交換反応には適当な触媒たとえばスズ系触媒を使用してもよい。
【0062】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは非フルオラス重合性ビニルモノマー、熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー及び含塩素重合性ビニルモノマーと共重合させることができる。
【0063】
本発明はまた、次のモノマーを含むコポリマーを提供する(数値はコポリマーの総質量に対する質量%):
a)20%〜97%好ましくは40%〜90%の一般式IV(式中、Zは−OCOCH=CH又は−OCOCCH3=CH)のモノマー
b)0%〜80%好ましくは10%〜50%の、1又は複数の非フルオラス重合性ビニルモノマー及び/又は
c)0.5%〜20%好ましくは1%〜10%の、1又は複数の熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー。
【0064】
本発明はさらに、次のモノマーを含むコポリマーを提供する(数値はコポリマーの総質量に対する質量%):
a)40%〜90%好ましくは45%〜85%の一般式IV(式中、Zは−OCOCH=CH又は−OCOCCH3=CH)のモノマー
b)0%〜50%好ましくは0.01%〜30%の、1又は複数の非フルオラス重合性ビニルモノマー及び/又は
c)0.5%〜20%好ましくは1%〜10%の、1又は複数の熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー、及び
d)0.5%〜50%好ましくは2%〜30%の含塩素重合性ビニルモノマー。
【0065】
任意成分のコモノマー(b)はフルオラスではなく(フッ素を含まず)、そして多数の市販(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン誘導体で表すことができる。
【0066】
非フッ素化コモノマーの例は不飽和カルボン酸のヒドロカルビルエステル及びアミドである。これらにはたとえばアクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸の次のようなエステルとアミドが含まれる:ビニル、アリル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、3,3−ジメチルブチル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ラウリル、セチル、ステアリル、ベヘニル、シクロヘキシル、ボルニル、イソボルニル、フェニル、ベンジル、アダマンチル、トリル、(2,2−ジメチル−1−メチル)プロピル、シクロペンチル、2−エチルヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、2−エトキシエチル及びテトラヒドロピラニルとのエステル及びアミド。
【0067】
さらなる非フッ素化コモノマーは、アリルエステルとビニルエステルたとえば酢酸アリル、酢酸ビニル、ヘプタン酸アリル、ヘプタン酸ビニルなど;アルキルビニルエーテルとアルキルアリルエーテルたとえばセチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなど;α,β−不飽和ニトリルたとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリル酸α−シアノエチルなど;(メタ)アクリル酸アミノアルキルたとえば(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−t−ブチルアミノエチルなど;アンモニウム基をもつ(メタ)アクリル酸アルキルたとえば2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物など;スチレンとその誘導体たとえばビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレン、クロロメチルスチレンなど;オレフィン系炭化水素たとえばエテン、プロペン、イソブテン、ブタジエン、イソプレンなど;及びメトキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルである。
【0068】
特に好ましい任意成分のコモノマー(b)は前述のアクリル酸及びメタクリル酸の次のようなエステル又はアミドとすることができる:メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、ミリスチル、ラウリル、オクタデシル、メトキシポリ(エチレングリコール)及びメトキシポリ(プロピレングリコール)とのエステル及びアミド。
【0069】
コモノマー(c)は1又は複数の架橋性基を含んでなる。架橋性基は、基材と及び/又は追加されるさらなる多官能性化合物と反応しうる官能基である。そうした架橋性基は、カルボン酸基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基、N−アルキロールアミド基、イソシアナート基又は保護イソシアナート基とすることができる。1又は複数の架橋性基をもつコモノマーの例は不飽和カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸の無水物;ヒドロキシ基を含んでなるモノマーたとえば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、モノ(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸ポリテトラヒドロフラン、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどである。さらなる架橋性モノマーの例は(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−イソプロポキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソシアン酸α,α−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルなどである。他の例は、高温で、又は光照射下に、イソシアナートを開放するモノマー、たとえば末端イソシアナート基をフェノール、ケトキシム及びピラゾールで保護した(メタ)アクリル酸アルキルである。
【0070】
任意成分のコモノマー(d)は含塩素コモノマーであり、その例はハロゲン化オレフィン系炭化水素たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、3−クロロ−1−イソブテン、1−クロロブタジエン、1,1−ジクロロブタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどである。特に好ましい任意成分のコモノマー(d)は塩化ビニリデンと塩化ビニルである。
【0071】
本願開示のコポリマーは一般にラジカル重合法たとえば溶媒重合法、乳化重合法、マイクロ乳化又はミニ乳化重合法で合成する。特に好ましいのは乳化重合法の変形である。モノマーの乳化重合は水、界面活性剤及び任意の有機溶媒の存在下に行われる。これらの混合物は重合前に高圧ホモジナイザー又は類似の装置により予備乳化しておいてもよい。この重合は一般に、ラジカル開始剤の存在下に50℃〜150℃の温度で行われる。
【0072】
種々のアニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を単独で又は組み合わせて使用することができる。非イオン性界面活性剤の例は、ポリ(エチレングリコール)ラウリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)トリデシルエーテル、ポリ(エチレングリコール)セチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)セチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ステアリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)オレイルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ノニルフェノールエーテル、ポリ(エチレングリコール)オクチルフェノールエーテル、モノラウリン酸ポリ(エチレングリコール)、モノステアリン酸ポリ(エチレングリコール)、モノオレイン酸ポリ(エチレングリコール)、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリ(エチレングリコール)ソルビタン、モノパルミチン酸ポリ(エチレングリコール)ソルビタン、モノステアリン酸ポリ(エチレングリコール)ソルビタン、モノオレイン酸ポリ(エチレングリコール)ソルビタン、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン油、ペルフルオロアルキル−エチレンオキシド付加体などである。非イオン性界面活性剤の使用量はポリマー質量に対し0.1〜100質量%の範囲である。
【0073】
本発明におけるカチオン性界面活性剤の例は、飽和及び不飽和脂肪酸アミンをベースにしたアンモニウム化合物たとえば酢酸オクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムなど;アミノ官能化ポリエトキシラート及びポリプロポキシラートならびにそれらのインターポリマーをベースにしたアンモニア化合物たとえばポリオキシエチレンラウリルモノメチルアンモニウムの塩化物など;アリールアミンをベースにしたアンモニウム化合物たとえば塩化ビフェニルトリメチルアンモニウム、イミダゾリン誘導体たとえば獣脂とイミダゾリンから生成されるアンモニウム塩など;シリコーン系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤などである。カチオン性界面活性剤の使用量はポリマー質量に対し0.1〜100質量%の範囲である。
【0074】
本発明におけるアニオン性界面活性剤の例は、脂肪アルコール硫酸エステル塩たとえばドデシル硫酸ナトリウムやポリ(エチレングリコール)ラウリルエーテル硫酸塩など;アルキルスルホン酸塩たとえばラウリルスルホン酸ナトリウムなど;アルキルベンゼンスルホン酸塩たとえばノニルフェノールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩たとえばヘキシルジエーテルスルホコハク酸ナトリウム;脂肪アルコールリン酸エステル塩たとえばラウリルリン酸ナトリウム、及び脂肪酸塩たとえばステアリン酸ナトリウム塩などである。アニオン性界面活性剤の使用量はポリマー質量に対し0.1〜100質量%の範囲である。
【0075】
ラジカル開始剤の例は有機又は無機過酸化物、アゾ化合物、有機及び無機金属化合物、金属、及びそれらの組み合わせなどである。特に好ましいのは、アゾ化合物たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル及びアゾビス(2−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩など;ヒドロ過酸化物たとえばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシドなど、過酸化ジアルキルたとえば過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミルなど、ペルオキシエステルたとえば過安息香酸t−ブチル、ペルオキシフタル酸ジ−t−ブチルなど、過酸化ジアシルたとえば過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなど;無機過酸化物たとえば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムなど、それに前記化合物と有機又は無機金属化合物及び金属との組み合わせである。
【0076】
この重合には連鎖移動剤たとえばアルキルチオールを使用してもよい。
【0077】
溶媒重合及び乳化重合に使用される有機溶媒の例は、ケトンたとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど;アルコールたとえばエタノール、イソプロパノール、ブタノールなど、ポリアルコールたとえば1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロールなど;ポリアルコールのエーテル及びエステルたとえばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルの酢酸エステルなど;エステルたとえば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アジピン酸ジブチル、コハク酸ジブチルなど;炭化水素及びハロゲン化炭化水素たとえばトルエン、キシレン、オクタン、ペルクロロエチレン、1,3−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンなどである。
【0078】
調製されるポリマー分散液の好ましい固形分は20〜40質量%である。
【0079】
一般式IVで示されるフルオラスモノマーを含んでなるフルオラスコポリマーは繊維質基材たとえば絨毯、繊維製品、皮革、不織布、紙などや硬質基材たとえば木材、金属又はコンクリートなどのコーティングに好適である。それらのフルオラスコポリマーはこれらの基材に撥水性、撥油性及び防汚性を付与する。
【0080】
こうして本発明はまた、有効量のフルオラス水性分散液による繊維質基材の表面処理方法を提供する。
【0081】
本発明により繊維製品や他のシート状構造物を加工処理するための調製量は、被処理基材に十分な撥水撥油防汚性が付与されるよう選択する。含浸量は加工対象試料の加工処理前後の質量を計って求めた。
【0082】
本発明によるフルオラス繊維加工剤は、組成物の繊維表面への固着や安定性を損なわないような量の他の添加剤たとえばワックス、シリコーン、ジルコニウム化合物又はステアリン酸塩などのような撥水剤、及び他の撥油剤、界面活性剤、殺虫剤、難燃剤、静電気防止剤、可塑剤、染料固着剤、防しわ剤などと併用してもよい。
【0083】
本発明によるフルオラス繊維加工剤は反応性添加剤たとえばメラミン樹脂、保護イソシアナート又はエポキシドなどの添加によって架橋させてもよい。
【0084】
フルオラスポリマー分散液でコーティングする繊維質基材はたとえば絨毯、繊維製品、皮革、不織布又は紙などでもよい。これらの基材は特に、天然繊維たとえば綿、麻、絹など;合成繊維たとえばポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)など;半合成繊維たとえばレーヨン又はアセテートなど;無機繊維たとえばガラス繊維又はセラミック繊維など;もしくは開示の繊維のあらゆる所望の組み合わせ、又はこれらの素材から構成される織布のあらゆる所望の組み合わせからなる。
【0085】
コーティングは、コポリマーと任意選択の添加剤からなる希釈分散液中に基材を浸漬して行うのが普通である。あるいは希釈分散液を基材表面に吹き付けてもよい。次いで、含浸基材をローラーで絞って過剰な分散液を切り、オーブン乾燥させて、処理した基材の表面で架橋が確実に行われるような温度及び時間で架橋させる。この架橋プロセスは50〜約190℃の温度で行うのが普通である。一般に、温度は約120℃〜180℃特に約130℃〜170℃で、時間は20秒〜10分好ましくは5秒〜5分であるのが適している。
【0086】
基材に調製物を適用するさらなる方法はフォーム塗布であり、調製物をフォームとして基材に適用し、次いで乾燥、架橋させる方法である。フォーム塗布では、追加の発泡剤と予め混合した濃縮体として調製物を適用するのが一般的である。フォーム塗布用の濃縮調製物は一般に20質量%以下のフルオロポリマーを含有する。
【0087】
繊維製品の加工では、洗濯前後の撥水性、撥イソプロパノール性及び撥油性を、対応する特定の試験で調べることができる。
【0088】
撥水性はAATCC標準試験方法No.22によるスプレー試験で調べる。試験対象の繊維製品基材に蒸留水をスプレーし、その濡れパターンを試験方法に記載された評価基準の参照画像と目視比較して評点値を求めた。報告される評点値は水をスプレーした後の表面の外観に関連し、次のような意味を持つ(表1)。
【0089】
【表1】

【0090】
一連の水−イソプロパノール試験液を用いる第2の試験を使用して、基材の撥イソプロパノール(IPA)性を求めることができる。報告されるIPA評点値は、布地が10秒以内に濡れず液滴がなお球形又は半球形を保つ最高の評点値の試験液に関する。濡れた基材又は水100%液(イソプロパノール0%液)すなわち最低評点値の濡れ試験液しかはじかない基材は評点が0となり、イソプロパノール100%液(水0%液)をはじく基材は評点が10となる。その中間の評点値も同様に割り当てることができる。
【0091】
AATCC標準試験方法118による撥油性は、基材の油汚れを防ぐ性能を試験するものであり、評価スケールの評点値が高いほど、汚れ特に油性の液体をはじく性能が高いことを意味する。この試験では、表面張力が異なる一連の炭化水素からなる標準試験液の液滴を、慎重なピペット操作により試験試料の表面に連続して置いて、所定の接触時間後に濡れ状態を目視評価する。撥油性の評点値は表面の濡れを引き起こさない最高評点値の試験液に対応する。標準試験液の組成は次のとおりである(表2)。
【0092】
【表2】

【0093】
公知のFCポリマーは撥油性の評点値が現在6であるが、この値は通常5でも撥油性に優れるとみなされる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例で本発明の主題と長所を明らかにするが、実施例で示す材料や分量は限定的とみなしてはならない。
【0095】
合成例
例1
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bIの合成
Fluowet I812*(Clariant社)110g(0.18モル)、Fluorolink C (Solvay Solexis社)15g、アンモニア5g及び水90gの乳液を、60℃で激しく撹拌して調製し、初期投入原料として、過硫酸アンモニウム2.5gとともにオートクレーブに導入した。圧力試験に続いて窒素置換を繰り返し行った。80℃への加熱期に、ヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエテンを3:5の比率で撹拌乳液に加えて全圧力が17バールとなるようにした。ヘキサフルオロプロペン82.5g(0.55モル)とテトラフルオロエテン90g(0.90モル)の添加が終わるまで、圧力を17バールに保つ。降圧後、オートクレーブを室温まで冷やし、塩を加えてフッ素化合物相を分離し、洗浄する。低分子成分は留去する。ヨウ素含量が11.2%であることは平均分子量が約1400g/モルであることを示唆する。
【0096】
19F NMR(溶媒CDCl3/C66,基準物質CFCl3):−59.8(2F,−C2I),−71.8〜−77.0(いずれの場合も3F,−CF−C3),−81.9(3F,−CF2−C3),−110.0〜−126.9(いずれの場合も2F,−C2−),−184.6〜−185.5(いずれの場合も1F,−C(CF3)−).
【0097】
この19F NMRスペクトルから明らかなように、使用したヨウ化ペルフルオロアルキル1分子につき約2分子のヘキサフルオロプロペンが取り込まれた。
【0098】
*商品名Fluowet I812の化合物はヨウ化ペルフルオロアルキル混合物であって、分子の平均鎖長がフッ素化炭素原子数で約9であり、分子あたりフッ素化炭素原子数が6〜14である。
【0099】
Fluorolink Cはペルフルオロポリエーテルカルボン酸である。
【0100】
例2〜10
ヨウ化ポリフルオロアルキルの合成
例1を繰り返して、対応するヨウ化ポリフルオロアルキルを合成した(例2〜10)。合成結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
例11
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bCH2CH2Iの合成
H 101 B/W含ルテニウム触媒(Degussa社)5gと例1のヨウ化ポリフルオロアルキル173gを初期投入原料として窒素雰囲気下で導入した。50バールの窒素による圧力試験の後、オートクレーブを1ミリバールに減圧し、次いで−78℃に冷却した。次にエテン10gを−78℃で液化し加えた。この反応混合物を170℃で30時間振とうした。減圧とろ過で160gの粗生成物が残った。
【0103】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):2.7(2H,−C2CH2I),3.2(2H,−CH22I).
【0104】
例12〜20
ヨウ化ポリフルオロアルキルアルキルの合成
例11を繰り返して、対応するヨウ化ポリフルオロアルキルアルキル(例12〜20)を合成した。合成結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
例21
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bCH2CH2OHの合成(方法A)
例11のヨウ化ポリフルオロアルキルエチル65g(0.07モル)を初期投入原料として窒素雰囲気下、N−メチルピロリドン83g及び脱塩水25gと共に導入した。50バールの窒素による圧力試験の後、オートクレーブを160℃で24時間振とうした。減圧後、粗生成物を0.5Lの水と混合した。フルオラス相を塩化ナトリウム溶液で繰り返し洗浄し、乾燥させてポリフルオロアルキルエタノールを得た。
【0107】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):2.4(2H,−C2CH2OH),3.9(2H,−CH22OH).
【0108】
例22
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bCH2CH2CH2OHの合成(方法B)
ポリフルオロアルキルエテンを合成するために、例11のヨウ化ポリフルオロアルキルエチル310g(0.34モル)を水酸化カリウム17.4g/エタノール250mLの0℃冷却溶液中に徐々に滴下した。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。生成したヨウ化カリウムをろ去し、ポリフルオロアルキルエテンを繰り返し水洗いし、乾燥させた。
【0109】
アルコール生成反応では、メタノール800.0g(25.0モル)を初期投入原料として、撹拌機を備えたオートクレーブに導入し、窒素置換後、160℃に加熱した。次にポリフルオロアルキルエテン290.0gと過酸化ジ−tert−ブチル4.8gを供給容器に入れ、供給容器から定量ポンプにより熱メタノール中に連続して供給した。供給速度はポリフルオロアルキルエテンと過酸化物の混合物が3時間で添加されるように設定した。オートクレーブ内の圧力は21バールであった。定量添加の後、反応系をさらに2時間定常温度に保って補充反応を行わせた。できたポリフルオロアルキルプロパノール生成物を反応系から回収するために、過剰エタノールを留去し、ポリフルオロアルキルアルコールで構成される残渣を繰り返し水洗いした。
【0110】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):1.9(2H,−CF2CH22−),2.1(2H,−CF22CH2−),3.7(2H,−CH22OH).
【0111】
例23
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2b(CH211OHの合成(方法C)
還流冷却器を備えた三口フラスコに例1のヨウ化ポリフルオロアルキル65.0g(0.05モル)と10−ウンデセン−1−オール10.0gの溶液を入れて、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。次に、開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gを加えた。反応系をこの温度に1時間維持し、その時点で同量のAIBNを加えた。反応系を80℃でさらに7時間撹拌した。収率は85%であった。蒸留によるワークアップの後、得られた含ヨウ素アルコール20.0gを0℃に冷却し、三口フラスコ中で窒素置換した。次に、トリブチルスズ12.0g/テトラヒドロフラン70mLの溶液を徐々に滴下した。滴下が完了したらただちに、混合物を室温に温め、さらに3時間撹拌した。洗い出しにより生成物が得られた(収率65%)。
【0112】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):1.2〜1.8(18H,−CF2CH2(C29−),2.2(2H,−CF22CH2−),3.8(2H,−CH22OH).
【0113】
例24〜30
ポリフルオロアルキルアルキルアルコールの合成
例21、22及び23(方法A、B、C)を繰り返して対応するポリフルオロアルキルアルキルアルコール(例24〜30)を合成した。合成結果を表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
例31
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bCH2CH2OCOCH=CH2の合成(方法D)
三口フラスコに例21のアルコール93g(0.06モル)、アクリル酸25.0g、メタンスルホン酸0.3g及びp−メトキシフェノール0.4gを投入し、この初期投入原料を80℃に加熱した。反応水を反応系から24時間以内に、この反応温度及び200ミリバールの圧力にて分離した。有機相を温水で繰り返し洗浄し、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。
【0116】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):2.1(2H,−C2CH2OH),4.4(2H,−CH22O−),5.8〜6.5(3H,−C=C2).
【0117】
例32
817(CF2CF(CF3))a(CF2CF2bCH2CH2OCOC(CH3)=CH2の合成(方法E)
三口フラスコに例21のアルコール80g(0.06モル)、メタクリル酸25.0g、メタンスルホン酸0.3g及びp−メトキシフェノール0.4gを投入し、この初期投入原料を80℃に加熱した。反応水を反応系から24時間以内に、この反応温度及び200ミリバールの圧力にて分離した。有機相を温水で繰り返し洗浄し、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。
【0118】
1H NMR(溶媒CDCl3/C66):1.9(3H,−C3),2.5(2H,−C2CH2O−),4.4(2H,−CH22O−),5.6〜6.2(2H,−C(CH)3=C2).
【0119】
例33〜40
アクリル酸ポリフルオロアルキルの合成
例31及び32を繰り返してポリフルオロアルキルアルコールを(メタ)アクリル酸ポリフルオロアルキル(例33〜40)に変換した。その組成は表6のとおりである。
【0120】
【表6】

【0121】
例41
繊維製品加工用分散液の調製(配合表1)
分散液は、撹拌機、還流冷却器、不活性ガス供給管及び内部温度計を備えた四口フラスコ中で次の成分を激しく撹拌して調製した。
アクリル酸ポリフルオロアルキル(例31) 37.5g
アクリル酸ステアリル(SAC) 31.0g
メタクリル酸グリシジル(GMA) 5.0g
メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA) 4.5g
ジプロピレングリコール 30.0g
ドデカンチオール 0.4g
ラウリルアルコール/16エチレンオキシド付加体
(非イオン性界面活性剤A) 6.0g
N,N−ジメチルドデシルアンモニウム酢酸塩
(カチオン性界面活性剤A) 4.5g
水 200.0g
【0122】
定流量の窒素を通しながらこの乳液を60℃に加熱した。次に開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを加えた。重合時間は60℃で10時間であった。
【0123】
得られた分散液は固形分が約34%であった。繊維製品加工用として分散液を酸性化し、30g/Lに希釈した。Mathis AG(スイス)製のHVF 59301ラボ用パッドマングルを用いて分散液を繊維質基材に適用し、次にMathis AG(スイス)製のLTEラボ用乾燥機で160℃/30秒の乾燥・熱処理を行った。適用状態を比較するためにNEL GmbH(Neugersdorf)の市販繊維製品Sahara 530306をPES/Co 65/35基材として使用した。含浸量は開示の全実施例で約66%であった。洗濯/乾燥法は60℃での5回の洗濯サイクルを含んだ。対応する布切れにバラスト布を加えて1kgの洗濯物とした。洗濯サイクルあたりの洗剤所要量は「Coral intensive」 7gであった。布切れは洗濯サイクル間には乾燥を行わず、洗濯後に洗濯乾燥機で乾燥させた。
【0124】
例42
繊維製品加工用分散液の調製(配合表2)
分散液は、撹拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えたオートクレーブ中で不活性ガス雰囲気下で次の成分を激しく撹拌して調製した。
アクリル酸ポリフルオロアルキル(例31) 69.5g
アクリル酸ラウリル(LA) 19.0g
塩化ビニル(VC) 8.5g
N−メトキシメチルアクリルアミド(N−MAM) 2.5g
メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA) 3.5g
ジプロピレングリコール 30.0g
ドデカンチオール 0.5g
ステアリル/11エチレンオキシド付加体
(非イオン性界面活性剤B) 7.0g
塩化ラウリルトリメチルアンモニウム
(カチオン性界面活性剤B) 4.0g
水 200.0g
【0125】
この乳液を60℃に加熱した後、開始剤2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩0.6gを加えた。重合時間は60℃で6時間であった。反応後、余った塩化ビニルを除去した。
【0126】
得られた分散液は固形分が約38%であった。繊維製品加工用として分散液を酸性化し、30g/Lに希釈した。繊維質基材への適用は例41の要領で行った。
【0127】
例43
繊維製品加工用分散液の調製(配合表3)
分散液は、撹拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えたオートクレーブ中で不活性ガス雰囲気下に次の成分を激しく撹拌して調製した。
アクリル酸ポリフルオロアルキル(例31) 60.5g
アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHAC) 12.5g
塩化ビニリデン(VDC) 15.0g
N−メトキシメチルアクリルアミド 3.5g
メタクリル酸ヒドロキシエチル 1.0g
ジプロピレングリコール 35.0g
ドデカンチオール 0.7g
ステアリル/11エチレンオキシド付加体
(非イオン性界面活性剤B) 6.0g
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 5.0g
水 200.0g
【0128】
この乳液を60℃に加熱した後、開始剤2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩0.5gを加えた。重合時間は60℃で6時間であった。反応後、余った塩化ビニリデンを除去した。
【0129】
得られた分散液は固形分が約36%であった。分散液を酸性化し、Cassurit HML (Clariant社)と20質量%の塩化マグネシウム水溶液を加え混合して、分散液濃度をいずれも30g/Lとなるようにした。繊維質基材への適用は例41の要領で行った。
【0130】
撥イソプロパノール性(IPA)、撥油性(oleo)及び撥水性(hydro)の試験結果は表7に示す。
【0131】
例44〜47
例41と同様の繊維製品加工用分散液の調製、適用及び試験
分散液の配合と撥イソプロパノール性(IPA)、撥油性(oleo)及び撥水性(hydro)の試験結果は表7に示す。
【0132】
例48〜51
例42と同様の繊維製品加工用分散液の調製、適用及び試験
分散液の配合と撥イソプロパノール性(IPA)、撥油性(oleo)及び撥水性(hydro)の試験結果は表7に示す。
【0133】
例52〜55
例43と同様の繊維製品加工用分散液の調製、適用及び試験
分散液の配合と撥イソプロパノール性(IPA)、撥油性(oleo)及び撥水性(hydro)の試験結果は表7に示す。
【0134】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IV:
F−A−[CH2cCR23−Z (IV)
(式中、
Fは炭素原子数1〜20のペルフルオロアルキルラジカルであり、
Aは次の一般式
【化1】

で示される基であり、
1はCF3、OR4、Cl、Br又はIであり、
2とR3はH、アルキル又はアリールであり、
4はペルフルオロメチル、ペルフルオロプロピル又はペルフルオロプロピルオキシプロピルであり、
XとYはH、Cl又は であり、
Zは−OH、−OCOCH=CH2又は−OCOCCH3=CH2であり、
aは0〜10、bは1〜30、cは1〜30である。)
で示されるフルオラステロマー化合物。
【請求項2】
1がClであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1がCF3であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
XとYがFであるか、又はXがFでありYがClであるか、又はXとYがHであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
aが0〜5であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
cが1であり、R2とR3がH又はCH3であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
cが2であり、R2とR3がH又はCH3であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Fがフッ素化炭素原子数1〜3のポリフルオロアルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Fがフッ素化炭素原子数4〜16のポリフルオロアルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
一般式1で示される化合物の分子量が750g/モル超であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
a+b>3であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
一般式IVで示されるモノマー、1又は複数の非フルオラス重合性ビニルモノマー、1又は複数の熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー、及び任意に含塩素重合性ビニルモノマーを含んでなるコポリマー。
【請求項13】
コポリマーの総質量を基準して
a)20〜97質量%好ましくは40〜90質量%の、一般式IV(式中Zは−OCOCH=CH又は−OCOCCH3=CH)のモノマー、
b)0〜80質量%好ましくは10〜50質量%の、1又は複数の非フルオラス重合性ビニルモノマー、及び/又は
c)0.5〜20質量%好ましくは1〜10質量%の、1又は複数の熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー
を含んでなるコポリマー。
【請求項14】
コポリマーの総質量を基準して
a)40〜90質量%好ましくは45〜85質量%の、一般式IV(式中Zは−OCOCH=CH又は−OCOCCH3=CH)のモノマー、
b)0〜50質量%好ましくは0.01〜30質量%の、1又は複数の非フルオラス重合性ビニルモノマー、及び/又は
c)0.5〜20質量%好ましくは1〜10質量%の、1又は複数の熱架橋性又はイソシアナート反応性モノマー、並びに
d)0.5〜50質量%好ましくは2〜30質量%の含塩素重合性ビニルモノマー
を含んでなるコポリマー。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1つに記載のコポリマーの、繊維質基材の撥水、撥油及び防汚加工への使用。

【公表番号】特表2009−522436(P2009−522436A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549807(P2008−549807)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070147
【国際公開番号】WO2007/080055
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】