説明

フルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法、フルオレノン系ビスアゾ顔料、およびそれを用いた電子写真感光体、並びにそれを用いた画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】性能低下成分及び残留溶剤が極めて少ないフルオレノン系ビスアゾ顔料、及びその効率的、かつ環境への負荷が小さい製造方法を提供する。
【解決手段】液体溶媒中でフルオレノン系ビスアゾ顔料粒子を形成し、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を濾取したウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品を、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有するフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体用の電荷発生材料として用いられるフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法、及び該方法により得られたフルオレノン系ビスアゾ顔料、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが(特許文献1及び2参照)、一般には、光導電性物質を利用した電子写真感光体の感光層に種々の手段を用いて電気的な潜像を形成する静電潜像形成工程、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程、該トナー像を紙などの記録材に転写する転写工程、該記録材に転写されたトナー像を加熱、圧力、熱圧あるいは溶剤蒸気などにより記録材に定着する定着工程、感光体層に残存したトナーを除去するクリーニング工程、などから成り立っている。
【0003】
一般にこれらの電子写真法に用いられる電子写真感光体の光導電性物質、すなわち電荷発生材料である有機顔料には、繰り返し安定した画像を得るために一般的に色材として用いられる有機顔料よりも、不純物のないかなりの高純度なものが要求される。有機顔料はふつう溶剤に難溶であるため、通常の精製方法、すなわち再結晶、再沈殿などによる精製方法を用いることは難しい。そのため、クルードな有機顔料を溶剤に分散させ、加熱撹拌洗浄、濾過工程を何度も繰り返すといった精製方法が用いられている。しかし、この精製工程には多くの精製回数、時間がかかる上に、多量の有害な溶剤を使用するといったように、効率と環境の両面に非常に悪い方法であった。また濾過後得られるウエットケーキの乾燥工程でも、有害な有機溶剤を残存させないため、更なる洗浄工程や、数日間の加熱乾燥といったものが必要となってくる。
【0004】
特に本件のフルオレノン系ビスアゾ顔料は非特許文献1からわかるように非常に高感度な電荷発生材料であるため、一般的な電荷発生材料よりも微量の不純物が存在すると大きな性能低下をひきおこす。更には一次粒子径が0.04〜0.12μmと非常に細かいため、濾過工程には工業的に数日間というかなりの工程時間がかかってしまうという弊害がある。また、特許文献3に開示されているように、不純物である性能低下成分としてはカップリング反応の際の副生成物モノアゾ体や、残存した洗浄溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が知られている。
【0005】
このような有機顔料製造工程、特に精製工程の不具合に対して、洗浄媒体として超臨界流体を用いることが知られている。電子写真感光体用顔料を抽出処理し、精製することが特許文献4に開示されている。また、セミクルードの有機顔料を超臨界流体により結晶転移及び/又は結晶成長させる顔料化が特許文献5に、任意に粉砕した純粋な有機顔料を液体又は超臨界の二酸化炭素とを反応させる後処理方法が特許文献6に開示されている。さらには特許文献7、特許文献8にはフタロシアニン顔料やアゾ顔料などを、超臨界流体もしくは亜臨界流体中に溶解させ、次いで結晶を析出させる製造法が開示されている。
【0006】
しかしながら従来の超臨界流体処理条件では充分な特性のフルオレノン系ビスアゾ顔料を得ることが難しいことが判明した。これは、顔料結晶を充分に溶解させてしまう条件では顔料分子の分解反応がおこり、緩和な条件では顔料粒子の表面の性能低下成分だけしか除去できないといった不具合があるためであり、適当な超臨界流体条件が必要とされると考えられる。
【特許文献1】米国特許第2297691号明細書
【特許文献2】特公昭42−23910号公報
【特許文献3】特許第3141302号
【特許文献4】特開平7−181694号公報
【特許文献5】特開2001−172519号公報
【特許文献6】特表2003−524686号公報
【特許文献7】特開2002−356627号公報
【特許文献8】特開2002−138216号公報
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys. Vol.39 (2000) pp.6594
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、性能低下成分及び残留溶剤がきわめて少ないフルオレノン系ビスアゾ顔料及びその効率的、かつ環境への負荷が小さい製造方法、並びに、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を用い、帯電性能、感度特性などの性能に優れた電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、液体溶媒中で製造されるフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造工程において、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を濾取したウエットケーキもしくは乾燥を施したクルード品を超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかを用いて処理することで、モノアゾ体などの性能低下成分を除去すると同時に脱溶媒による乾燥を行い、製造工程の短縮ができるという知見を得たものである。
【0009】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
(1)液体溶媒中で下記一般式(I)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料粒子を形成し、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を濾取したウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品を、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とするフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはジアルキルアミノ基を表し、同一でも異なっていてもよい。m、nは水素原子以外の時にそれぞれ1〜3の整数を表し、m、nが複数の場合R1、R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
(2)前記処理工程が、フルオレノン系ビスアゾ顔料のウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品に含まれる水および/もしくは有機溶媒および性能低下成分を除去し、前記フルオレノン系ビスアゾ顔料の洗浄と乾燥が同時に行われることを特徴とする前記(1)に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料製造方法。
(3)超臨界流体及び亜臨界流体の少なくともいずれかが、前記フルオレノン系ビスアゾ顔料の性能低下成分を溶解することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
(4)超臨界流体及び亜臨界流体の少なくともいずれかが、二酸化炭素であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【0011】
(5)前記混合流体におけるエントレイナーの濃度を、0.1〜10重量%とすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
(6)前記エントレイナーとして有機溶剤を使用することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料製造方法。
(7)有機溶剤が炭素数1〜4のアルコール類から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする前記(6)に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
(8)有機溶剤が非プロトン系極性溶剤から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする前記(6)記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
(9)前記処理工程を複数回連続で繰り返すことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【0012】
(10)前記(1)〜(9)のいずれかの方法により製造されたことを特徴とするフルオレノン系ビスアゾ顔料。
(11)導電性支持体上に前記(10)記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の少なくとも1種を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真感光体。
【0013】
(12)前記(11)記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行うことを特徴とする画像形成方法。
(13)前記(11)項に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行い、かつ画像露光の際にはデジタル方式によって感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とする画像形成方法。
【0014】
(14)少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び前記(11)に記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置。
(15)少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び前記(11)に記載の電子写真感光体を具備し、且つデジタル方式の画像露光手段によって感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とする画像形成装置。
(16)帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び転写手段の少なくとも1つと、前記(11)に記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させることによって溶液媒体中で製造されたフルオレノン系ビスアゾ顔料のウエットケーキもしくはクルード乾燥品を処理し、性能低下成分及び残留溶媒がきわめて少ないフルオレノン系ビスアゾ顔料、及びその効率的、かつ環境への負荷が小さい製造方法、並びに、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を用いた、帯電性能、感度特性、画像解像などの性能に優れた電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<フルオレノン系ビスアゾ顔料の製造>
フルオレノン系ビスアゾ顔料は、有機溶媒中、下記一般式(II)で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物と下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物とを同時にもしくは2段階に順次反応させることによって得ることができる。析出したフルオレノン系ビスアゾ顔料を濾過することによりウエットケーキが、また、これを乾燥することによりクルード乾燥品が得られる。なお、このウエットケーキを水洗し、濾過した含水物もウエットケーキと本件では定義される。
【0017】
【化2】

(式中、Xはアニオン官能基を表す。)
【0018】
【化3】

(式中、R1、R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはジアルキルアミノ基を表し、m、nは水素原子以外の時にそれぞれ1〜3の整数を表し、m、nが複数の場合R1、R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
実際には上記一般式(I)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒に、前記一般式(III)もしくは(IV)で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を溶解しておき、これに前記一般式(II)で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物を添加し、酢酸ナトリウム水溶液や有機アミンのような塩基性物質を添加することによりカップリング反応を終了させる。この時の反応温度としては約−20℃から約40℃が好ましい。又は第1段階のカップリング反応に用いる前記一般式(III)又は(IV)で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物のいずれかを溶解しておき、これに一般式(II)で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物を添加し、必要によって酢酸ナトリウム水溶液や有機アミンのような塩基性物質を添加することにより、第1段階のカップリング反応は終了する。この時の反応温度としては約−20℃から約40℃が好ましい。第2段階のカップリング反応は、上記で得られた反応混合物に、更に第1段階のカップリング反応で用いたものとは異なる前記一般式(III)又は(IV)の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を更に添加し、第1段階のカップリング反応と同様に必要によって、酢酸ナトリウム水溶液や有機アミンのような塩基性物質を添加することにより完了させる。
【0020】
前記一般式における置換基の具体例としては、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などを、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基などを挙げることができる。また、前記一般式(II)におけるXはアニオン官能基を表わすが、例えばテトラフルオロボレート、パークロレート、ヨーデイド、クロライド、ブロマイド、サルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、パーヨーデイド、p−トルエンスルホネート等が好ましい。
【0021】
<超臨界流体処理工程>
前記超臨界流体処理工程は、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかを用いてフルオレノン系ビスアゾ顔料を処理する工程である。超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させることにより処理を行う。
前記フルオレノン系ビスアゾ顔料としては、前述したフルオレノン系ビスアゾ顔料形成工程により得たものが好ましい。
【0022】
−超臨界流体及び亜臨界流体−
超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましく、また、前記亜臨界流体としては、前記臨界点近傍の温度・圧力領域において高圧液体として存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、これらの流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、クロロトリフロロメタン、ジメチルエーテルなどが好適に挙げられる。これらの中でも、臨界温度が約31.3℃と低く、取り扱いに優れる点で、二酸化炭素が特に好ましい。
【0023】
前記超臨界流体として挙げられる各種材料は、前記亜臨界流体としても好適に使用することができる。前記超臨界流体及び前記亜臨界流体は、1種単独で単体として使用してもよいし、2種以上を併用して混合物として使用してもよい。
前記超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては、フルオレノン系ビスアゾ顔料の性能低下成分の除去ができ、分子構造の結合が壊れなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記臨界温度としては、−273〜300℃が好ましく、0〜200℃が特に好ましい。また、このとき、前記臨界圧力としては、7.4MPa〜60MPaが好ましい。
【0024】
前記超臨界流体及び前記亜臨界流体に加え、他の流体(エントレイナー)を併用することもできる。該他の流体としては、有機溶媒を添加することもできる。該有機溶媒の添加により、後述する性能低下成分の除去、抽出がより容易に行われるとともに、乾燥も同時に行うことができる。エントレイナーとしては、特に制限はないが、目的に応じて適宜選択することができる。とくに、使用するウエットケーキが水系の場合には、水親和性の有機溶媒が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、もしくは非プロトン系極性溶剤であるDMF、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)などが好適に挙げられる。
また、ウエットケーキが有機溶媒系の場合、溶解度が高い、DMF、DMSO、クロロホルムなどの洗浄・除去助剤が特に好ましい。
又、前記超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーとの混合流体におけるエントレイナーの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エントレイナーの濃度を、0.1〜10重量%とするのが好ましく、0.5〜5重量%とするのが更に好ましい。
【0025】
又、前記混合流体の温度及び圧力は、用いる超臨界流体、亜臨界流体及びエントレイナーの種類によって異なるが、用いる流体の臨界温度から160℃までの温度、用いる流体の臨界圧力か60MPaまでの圧力とするのが好ましく、例えば、超臨界流体として二酸化炭素、エントレイナーとしてメタノールを用いる場合における温度は、40〜160℃とするのが好ましく、60〜120℃とするのが特に好ましく、圧力は、7.4〜60MPaとするのが好ましく、20〜40MPaとするのが特に好ましい。又、処理時間は、通常1分〜24時間程度、好ましくは10分〜6時間程度とする。
【0026】
また、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体を用いる場合、乾燥させることにより、使用したエントレイナー例えば有機溶媒等(メタノール、DMF等)を除去することができるが、使用したエントレイナーを完全に除去(乾燥)するために、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させた後に、エントレイナーを含まない超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる工程を入れることもできる。
【0027】
超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体ではなく、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかを用いる場合は、前もって前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させて処理を行うことによっても、水および/もしくは有機溶媒および性能低下成分を効果的に除去できる。これはエントレイナーとして用いる流体、例えば有機溶媒が超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体よりも性能低下成分に対し溶解度が高い場合、まずエントレイナーに接触させてから処理をおこなうことによって、その除去効果が大きくなるという利点がある。また、エントレイナーとして用いる有機溶媒自体の乾燥除去が難しい場合、エントレイナーと接触させた後、超臨界流体又は亜臨界流体単独を流通させることにより、この有機溶媒の除去が短時間で効率よくできるという利点も有している。エントレイナーとして用いることができる流体と接触させる方法としては、温度としては40〜160℃とするのが好ましく、60〜120℃とするのが特に好ましく、圧力は超臨界状態である必要はなく、大気圧〜60MPaとするのが好ましく、大気圧〜40MPaとするのが特に好ましい。又、処理時間は、通常1分〜24時間程度、好ましくは10分〜3時間程度とし、耐圧セルにエントレイナーを流通させた方が除去効果は大きくなる。また超臨界流体又は亜臨界流体の温度及び圧力は前記混合流体で記したものと同じ条件が好ましい。
【0028】
処理としては、ウエットケーキもしくはクルード乾燥品中のフルオレノン系ビスアゾ顔料の性能低下成分、および溶媒の除去であるのが好ましい。
前記性能低下成分としては、該性能低下成分がフルオレノン系ビスアゾ顔料表面に限らず、その内部にも含まれる。超臨界流体および亜臨界流体を用いることにより、その内部にも浸透し、除去することが可能となる。
この処理によりフルオレノン系アゾビス顔料の溶解による排出減量はごく微量であり、収率良く顔料を得ることができる。
【0029】
前記処理は、除去する性能低下成分およびウエェットケーキ中の溶媒が複数存在する場合に、一度に行ってもよいし、それぞれの性能低下成分や溶媒ごとに、複数回にわたって行ってもよい。例えば、溶媒除去に有効な前記の超臨界流体を用いた処理を行った後に、性能低下成分除去に有効な前記超臨界流体を用いて処理を行ってもよく、その逆の工程をふんでもよい。
【0030】
処理に用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図8に示す処理を施すための耐圧容器(抽出槽)4と、超臨界流体を供給する加圧ポンプ(高圧送液ポンプ)1と、抽出した性能低下成分や溶媒を含むガスを抽出物と溶媒とに分離する減圧バルブとを有する分離槽8と、を備えた装置が好適に挙げられる。該装置を用いた処理方法としては、まず、前記耐圧容器にフルオレノン系ビスアゾ顔料を仕込み、該耐圧容器内に、加圧ポンプにより前記超臨界流体を供給し、超臨界流体を接触させて、残留溶媒や性能低下成分を抽出し、該性能低下成分を含む超臨界流体を排出する。そして、前記超臨界流体を、常温及び常圧下に戻すと、該超臨界流体が気体となるため、溶媒の除去が不要となる。また、このとき、前記分離槽において、前記減圧バルブにより減圧し、前記性能低下成分と、前記超臨界流体とを分離し、該超臨界流体を再利用してもよい。
【0031】
感光体構成
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
本発明の電子写真感光体は、前記フルオレノン系ビスアゾ顔料を有することを特徴とするものである。フルオレノン系ビスアゾ顔料は電荷発生物質として用いられる。
本発明の電子写真感光体の層構成について説明する。尚、図1〜図5は、電子写真感光体の断面図である。
【0032】
図1に示す態様においては、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33が設けられている。
図2に示す態様においては、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが、感光層として積層された構成をとっている。
図3に示す態様においては、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33が設けられ、更に感光層表面に保護層39が設けられている。
図4に示す態様においては、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35、次に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが感光層として積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に保護層39が設けられている。
図5に示す態様においては、導電性支持体31上に、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37、次に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35が感光層として積層された構成をとっており、更に電荷発生層上に保護層39が設けられている。
【0033】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。
【0034】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)などの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0035】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0036】
次に感光層について説明する。本発明の感光層は、本発明のフルオレノン系ビスアゾ顔料を有効成分として含有する。該感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37が積層されて感光層を構成する場合から述べる。
【0037】
(電荷発生層)
電荷発生層35は、少なくとも本発明のフルオレノン系ビスアゾ顔料を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。また他の電荷発生物質と併用してもよい。併用する電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
【0038】
電荷発生層35に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0039】
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0040】
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0041】
また、電荷発生層35には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層35に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0042】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0043】
電荷発生層35を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0044】
(電荷輸送層)
電荷輸送層37は電荷輸送機能を有する層で、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを乾燥することにより形成させる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0045】
電荷輸送物質の量は結着樹脂に対し、20〜300重量%、好ましくは40〜150重量%が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層35と同様な塗工法が可能である。
【0046】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂に対して0〜1重量%程度が適当である。電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
【0047】
次に、感光層33が単層構成の場合について述べる。上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂に対する電荷発生物質の量は5〜40重量%が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量%である。
【0048】
感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜35μm程度が適当である。
【0049】
保護層は、感光層保護の目的で設けられる。保護層としては、フィラーを含有したもの、架橋型バインダーを用いたもの、真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−Siなど、従来公知の保護層を用いることができる。
【0050】
次に、中間層について説明する。
本発明の感光体においては、電荷輸送層37と保護層39の間及び感光層33と保護層39の間に、保護層への電荷輸送層成分混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。このため、中間層としては保護層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。
これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0051】
次に、下引き層についてについて説明する。
本発明の感光体においては、導電性支持体31と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0052】
各層への酸化防止剤の添加について説明する。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、保護層、感光層、電荷輸送層、電荷発生層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
【0053】
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などがある。
【0054】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどがある。
【0055】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどがある。
【0056】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどがある。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどがある。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0057】
画像形成方法,画像形成装置
次に図面に基づき、本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0058】
図6は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に特に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
【0059】
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0060】
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0061】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0062】
次に、転写体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0063】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
図7にプロセスカートリッジの一例を示す。画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体16を内蔵し、他に帯電手段17、現像手段20、転写手段(図示せず)、クリーニング手段18、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
比較例1
2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニル)カルバモイルナフタレン2.98g(10.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)400mlに撹拌溶解し、室温にて9−フルオレノン−2,7−ビスジアゾニウムビステトラフルオロボレート4.08g(10.0mmol)を加え、10分間撹拌の後、2−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェニル)カルバモイルナフタレン2.77g(10.0mmol)とDMF400mlの溶液を加えた。次いで酢酸ナトリウム三水和物5.44g(40.0mmol)を水30mlに溶解させたものを20分間かけ滴下し、2時間室温にて撹拌した。生成している顔料を濾別し、水800mlで2回洗浄、濾過をおこない、下記構造式で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料のウエットケーキを73.8g得た。またこのウエットケーキ7.38gを80℃で2日間減圧加熱乾燥をおこない、クルード乾燥品0.640gが得られた(比較ビスアゾNo.1)。これより、ウエットケーキの固形分濃度は8.67%であり、収率は79.3%と算出される。またクルード乾燥品をモノクロルベンゼン中で還流撹拌し、室温に冷却後、濾過をおこないフルオレノン系ビスアゾ顔料と性能低下成分であるモノアゾ体が溶解したロ液を得た。分光光度計で吸光度を測定してフルオレノン系ビスアゾ顔料中に含まれるモノアゾ体を標準物質とした検量線からモノアゾ成分量を求めたところ、3.96重量%であった。また熱分解ガスクロマトグラフ法にて残存DMF量を調べたところ1.32重量%であった。
【0066】
【化4】

【0067】
比較例2
反応物を濾過後、DMF800mlにて80℃加熱撹拌2時間、濾過の洗浄操作を3回繰り返しておこなった以外は比較例1と同様に操作して乾燥品のフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(比較ビスアゾNo.2)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
実施例1
<超臨界流体処理工程>
比較例1で得られたウエットケーキを、耐圧容器内に入れ、超臨界流体として二酸化炭素とエントレイナーとしてメタノール5重量%との混合流体を流量400ml/min(標準状態換算値)、65℃、300気圧、6時間の処理条件で流通させ、フルオレノン系ビスアゾ顔料から性能低下成分としてのモノアゾ体と水、残存DMFの除去をおこない、更に1時間二酸化炭素のみ流通させ、容器内を常圧に戻しフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.1)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
ウエットケーキを比較例1で得られた乾燥クルード品(比較ビスアゾNo.1)に代えた以外は実施例1と同様にしてフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.2)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
比較例1で得られたウエットケーキを、耐圧容器内に入れ、超臨界流体として二酸化炭素とエントレイナーとしてDMF2重量%との混合流体を流量400ml/min(標準状態換算値)、80℃、300気圧、4時間の処理条件で流通させ、フルオレノン系ビスアゾ顔料から性能低下成分としてのモノアゾ体と水、残存DMFの除去をおこない、更に1時間二酸化炭素のみ流通させ、容器内を常圧に戻しフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.3)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
ウエットケーキを比較例1で得られた乾燥クルード品(比較ビスアゾNo.1)に代えた以外は実施例3と同様に操作してフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.4)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
比較例1で得られた乾燥クルード品(比較ビスアゾNo.1)を、耐圧容器内に入れ、この中にDMFを注入し80℃、1気圧にて1時間フルオレノン系ビスアゾ顔料をDMFにて浸漬した。その後、超臨界流体として二酸化炭素を流量400ml/min(標準状態換算値)、80℃、300気圧、1時間の処理条件で容器内に流通させ、容器内を常圧に戻しフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.5)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
上記実施例5の処理工程を連続で3回繰り返してフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(ビスアゾNo.6)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
実施例1においてエントレイナーのメタノールを流通しなかった以外は同様に操作して、フルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(比較ビスアゾNo.3)。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例1で得られたクルード乾燥品((比較ビスアゾNo.1)を、耐圧容器内に入れ、超臨界流体としてアセトンを流量5ml/min、250℃、200気圧の条件で流通させ、溶解したフルオレノン系ビスアゾ顔料がフィルターから通り抜けて出てきたところで水と混合し結晶を析出させ背圧弁からフルオレノン系ビスアゾ顔料を得た(比較ビスアゾNo.4)を採取した。また比較例1と同じ操作でモノアゾ成分量と残存DMF量を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から実施例にて得られたフルオレノン系ビスアゾ顔料においては、すべて性能低下成分であるモノアゾ体の濃度が通常の精製法で得られたもの(比較ビスアゾNo.2)と同等、もしくはそれ以下であった。さらにウエットケーキからの処理でもDMFの残存量は著しく低く、通常の加熱減圧乾燥法より効果的であることがわかる。このことから本件の超臨界による手法は、効率的、かつ環境への負荷が小さい製造方法といえる。また公知のアゾ顔料の超臨界処理手法である比較例3、4と比較しても、洗浄効果、乾燥効果が高いことがわかる。
【0076】
(実施例7)
50mlのサンプル瓶に実施例1で得られたビスアゾNo.1を0.15g、5mmのPSZボール120g、ポリビニルブチラール樹脂(XYHL)の0.875%シクロヘキサノン溶液6.85gを入れ10日間サンプル瓶を回転させミリング処理をおこなった。更にシクロヘキサノン2.86g、2−ブタノン4.14gを加え1時間ミリング処理して電荷発生層用分散液を作製した。これをアルミ板上にドクターブレードで塗布し、80℃、15分間送風乾燥して、約0.5μmの電荷発生層を形成した。次に下記構造式で示される電荷輸送物質7部、ポリカーボネート樹脂(TS2050:帝人化成)10部、テトラヒドロフラン83部の電荷輸送層用塗工液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し120℃で15分間送風乾燥して約18μmの電荷輸送層を形成した(感光体No.1)。
【0077】
【化5】

【0078】
次に、こうして得られた積層型電子写真感光体の特性を調べるため、この感光体に静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA8100型]を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位Vo(V)を測定した。ついで、白色光を感光体表面での照度が5.3luxになるように照射して、−800(V)の表面電位が1/2になるまでの露光量E1/2(lux・sec)および30秒間照射後の残留電位Vr(V)を測定した。結果は表2に示す。
【0079】
(実施例8)
実施例7において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.2に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.2)、評価した。
(実施例9)
実施例7において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.3に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.3)、評価した。
(実施例10)
実施例7において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.4に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.4)、評価した。
(実施例11)
実施例7において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.5に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.5)、評価した。
(実施例12)
実施例7において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.6に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.6)、評価した。
【0080】
(比較例5)
実施例7において、ビスアゾNo.1を比較ビスアゾNo.1に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(比較感光体No.1)、評価した。
(比較例6)
実施例7において、ビスアゾNo.1を比較ビスアゾNo.3に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(比較感光体No.2)、評価した。
(比較例7)
実施例7において、ビスアゾNo.1を比較ビスアゾNo.4に代えた他は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製(比較感光体No.3)、評価した。
【0081】
【表2】

表2からわかるように本発明の電子写真感光体は比較感光体に比べ感度(E1/2)が高く、残留電位(Vr)がまったくないものであることがわかる。
【0082】
(実施例13)
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した(感光体No.7)。
〔下引き層用塗工液の組成〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・・・6部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製)
・・・4部
・酸化チタン ・・・40部
・メチルエチルケトン ・・・50部
【0083】
〔電荷発生層用塗工液の組成〕
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) ・・・0.5部
・シクロヘキサノン ・・・200部
・メチルエチルケトン ・・・80部
・ビスアゾNo.1の顔料 ・・・2.4部
〔電荷輸送層用塗工液の組成〕
・ビスフェノールZポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成製)
・・・10部
・テトラヒドロフラン ・・・100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業製) ・・・0.2部
・下記構造式で表される電荷輸送物質 ・・・7部
【化6】

【0084】
以上のようにして作製した電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジに装着し、帯電方式をローラ帯電方式、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(LD)を用いたリコー製imagio MF2200改造機にて暗部電位−800(V)、明部電位−100(V)に設定した後、連続してトータル10万枚印刷相当の繰り返し試験をおこなった。その際、繰り返し試験後の画像について評価を行った。また、繰り返し試験後の暗部電位、明部電位も測定した。画像ボケ(ドット解像度低下)について、600dpi×600dpiの画素密度で画像濃度が5%のドット画像を連続10枚プリントアウトし、そのドット形状を実体顕微鏡で観察して、輪郭のシャープネスを以下の基準で5段階(5が優れ1が劣る)に分けて評価した。
(ドット画像評価基準)
5:輪郭が明瞭で、良好。
4:輪郭のぼやけが極めてごく僅かに観察されるが、良好。
3:輪郭のぼやけがごく僅かに観察されるが実質的に良好。
2:輪郭のぼやけが観察され、画像の種類によっては問題となる。
1:ドット画像の判別できない。
また、その結果を表3に示す。
【0085】
(実施例14)
実施例13において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.2に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.8)、評価した。
(実施例15)
実施例13において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.3に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.9)、評価した。
(実施例16)
実施例13において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.4に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.10)、評価した。
(実施例17)
実施例13において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.5に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.11)、評価した。
(実施例18)
実施例13において、ビスアゾNo.1をビスアゾNo.6に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(感光体No.12)、評価した。
【0086】
(比較例8)
実施例13において、ビスアゾNo.1を比較ビスアゾNo.2に代えた他は実施例13と同様にして電子写真感光体を作製(比較感光体No.4)、評価した。
【0087】
【表3】

以上の評価結果から、本発明の電子写真感光体は10万枚印刷後においても画像品質は良好で画像ボケ(ドット解像度)評価結果も良好であることが確認された。一方、比較例8では10万枚印刷後では明部電位上昇が大きく、画像濃度低下やドット解像度の低下がおこる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す図面である。
【図2】本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図3】本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図4】本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図5】本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図6】本発明の電子写真プロセスの一例を説明するための概略図である。
【図7】プロセスカートリッジの一例を説明するための概略図である。
【図8】超臨界処理に用いられる装置の概略図である。
【符号の説明】
【0089】
1 高圧送液ポンプ
2 ストップバルブ
3 フィルター
4 抽出槽
5 スターラー
6 フィルター
7 背圧弁
8 分離槽
9 流量計
31 支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体溶媒中で下記一般式(I)で表されるフルオレノン系ビスアゾ顔料粒子を形成し、該フルオレノン系ビスアゾ顔料を濾取したウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品を、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかとエントレイナーの混合流体と接触させる、又は前記エントレイナーとして用いることができる流体に接触させた後、超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有することを特徴とするフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはジアルキルアミノ基を表し、同一でも異なっていてもよい。m、nは水素原子以外の時にそれぞれ1〜3の整数を表し、m、nが複数の場合R1、R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記処理工程が、フルオレノン系ビスアゾ顔料のウエットケーキもしくはこれを乾燥したクルード乾燥品に含まれる水および/もしくは有機溶媒および性能低下成分を除去し、前記フルオレノン系ビスアゾ顔料の洗浄と乾燥が同時に行われることを特徴とする請求項1に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料製造方法。
【請求項3】
超臨界流体及び亜臨界流体の少なくともいずれかが、前記フルオレノン系ビスアゾ顔料の性能低下成分を溶解することを特徴とする請求項1又は2に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項4】
超臨界流体及び亜臨界流体の少なくともいずれかが、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項5】
前記混合流体におけるエントレイナーの濃度を、0.1〜10重量%とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項6】
前記エントレイナーとして有機溶剤を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料製造方法。
【請求項7】
有機溶剤が炭素数1〜4のアルコール類から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項8】
有機溶剤が非プロトン系極性溶剤から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項9】
前記処理工程を複数回連続で繰り返すことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの方法により製造されたことを特徴とするフルオレノン系ビスアゾ顔料。
【請求項11】
導電性支持体上に請求項10記載のフルオレノン系ビスアゾ顔料の少なくとも1種を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項12】
請求項11記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項11記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行い、かつ画像露光の際にはデジタル方式によって感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び請求項11に記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び請求項11に記載の電子写真感光体を具備し、且つデジタル方式の画像露光手段によって感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び転写手段の少なくとも1つと、請求項11に記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−332350(P2007−332350A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71760(P2007−71760)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】