説明

フルオレン、アントラセン、キサンテン、ジベンゾスベロン、及びアクリジンの誘導体、並びに、それらの使用

抗癌剤及び抗腫瘍剤として作用し、とりわけ、Wnt/β−カテニンシグナル経路の活性を変調して癌細胞のような細胞中に存在するβ−カテニンのレベルを低下させるのに有用であり、又は癌細胞などの細胞系における遺伝子発現レベルを変調する薬剤として機能するフルオレン、アントラセン、キサンテン、ジベンゾスベロン、及びアクリジンのジスルホンアミド誘導体、並びに、それらの塩を含む同様なヘテロ環構造を有する薬剤が開示され、併せて、こうした薬剤を調製する方法、及びこうした薬剤を活性成分として含む薬学的組成物、及び治療薬としてこれらを使用する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願No.60/926592(2007年5月10日出願)、及びNo.60/999153(2007年10月15日出願)の優先権を主張し、その開示事項は、本願に全体として参照して取り入れられる。
【0002】
本発明は、癌の治療に有用な新規な化合物及びその使用方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
Wnt/β−カテニンのシグナル経路は、癌における重要なシグナル経路の1つと認識されており、多くの腫瘍系、とりわけ結腸腫瘍における治療的介入ための妥当な標的と認識されている。
【0004】
多細胞生物の細胞は、場合により、かなりの距離から互いを認識して信号を送る能力を有する。こうした信号伝達は、信号伝達分子の生成によって行われ、その信号伝達分子は、1つの細胞によって生成した後、別な細胞の特定の受容体に結合する。こうしたシグナル経路は、癌などの種々の疾病プロセスに関与している。Wnt信号伝達は、受容体結合を経た後に細胞内β−カテニンを増加させ、標準経路と称される。Wntタンパク質は、細胞と細胞の相互作用を規制して癌発病に関与する、高度に保存的で秘密的な一群の信号伝達分子を形成する。Wntタンパク質は、細胞表面上のFrizzled族とLRP族の受容体に結合する。いくつかの細胞質リレー成分を介して、信号はβ−カテニンに変換され、それが細胞核に入ってTCFと複合体を形成し、Wnt標的遺伝子の転写を活性化させる。
【0005】
この経路において、Wntポリペプチドは、情報発信細胞の表面上に存在するか、又はその細胞から解放されて、最終的に、別の細胞の特定の細胞表面受容体に接触する。こうした標的細胞上の受容体には、Frizzled/LRP受容体(LRP=LDL受容体関連のタンパク質)が挙げられ、信号をβ−カテニンのような細胞内タンパク質に伝達し、その定常状態レベルは、通常、連続的分解によって比較的低く維持される(通常、プロテオソームによって仲介)。これは、タンパク質GSK−3/APC/Axinを含む複合体によって制御される(GSK−3=グリコーゲン合成酵素キナーゼ、APC=大腸腺腫性ポリポーシス)。標的細胞の表面におけるWnt結合の結果、β−カテニンの分解を阻害し、するとβ−カテニンは蓄積し、細胞核の中に入り、転写制御因子と結合し、遺伝子を攻撃する。
【0006】
Wntシグナル経路の構成的活性化を促進する変異が癌をもたらし得ることが見出されている(非特許文献1参照)。例えば、Axin2の変異は、個体を結腸癌にかかり易くする(非特許文献2参照)。別のこうした例において、家族性大腸腺腫症(FAP)、結腸と直腸における多数のポリープを特徴とする遺伝病は、APCの切り詰めによって生じることが多く(別のWntシグナル経路タンパク質)、Wnt経路の異常活性化を促進する(非特許文献3参照)。また、APCとβ−カテニンにおける変異は、結腸癌とその他の種類の腫瘍においても検出されている(非特許文献4参照)。さらに、機能低下を生じさせる変異が肝細胞癌において特定されている(非特許文献5参照)。このように、Wnt信号伝達とβ−カテニン制御を切り離すのに役立つ変異又はその他の細胞的事象は、癌の生成に重要であると思われる。
【0007】
こうした癌発生事象は、高レベルのβ−カテニンと関係しているため(即ち、β−カテニンのレベルがWntと独立した状態)、この関連を回復する又はさもなければβ−カテニンを低下させるのに役立つ小有機化合物及びその他の薬剤は、癌プロセスを和らげるのに有用であることが実証され、抗癌薬としての用途を見出すものと考えられる。本発明は、腫瘍細胞におけるβ−カテニンのレベルを低下させるフルオレン、アントラセン、キサンテン、ジベンゾスベロン、及びアクリジンのジスルホンアミド誘導体の形態の薬剤を提供する。
【0008】
芳香族アミンで置換されたスルホンアミド基を有する構造的に関連するフルオレンとアントラセンの誘導体は、受容体を含有するP2X3とP2X2/3の阻害剤として当該技術で公知であり(例えば、特許文献1参照)、膀胱過敏症、尿失禁又は疼痛のような疾病の治療や防止に有用であることが見出されている。ここで、本願においては、新規な構造的に関連する化合物が、Wnt/β−カテニン経路の修飾因子として調製可能であり、使用可能であることが示される。β−カテニンは、Wntシグナル経路の制御因子であることが知られている(非特許文献6参照)。
【非特許文献1】Logan and Nusse, ″The Wnt Signaling Pathway in Development and Disease,″in Ann. Rev. Cell Dev. Biol., 20:781-810 (2004)
【非特許文献2】Lammi et al., Am. J. Hum. Genet., 74:1043-50 (2004)
【非特許文献3】Kinzler et al., Science, 253:661-665 (1991)
【非特許文献4】Giles et al., Biochim. Biophys. Acta, 1653:1-24 (2003)
【非特許文献5】Satoh et al., Nat. Genet., 24:245-50 (2000)
【非特許文献6】Willert and Nusse, Current Opinion in Genetics and Development, 8:95-102 (1998)
【特許文献1】US 2004/0019042
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、Wntシグナル経路に干渉して癌細胞中のβ−カテニンのレベルを低下させる癌の治療に有用な新規な化合物、及びその合成方法を提供する。特定の態様において、これらの化合物には、癌細胞中のβ−カテニンのレベルを低下させるフルオレン、アントラセン、キサンテン、ジベンゾスベロン、及びアクリジンのジスルホンアミド誘導体が挙げられる。
【0010】
本発明の化合物は式Iの構造を有する。
【0011】

【0012】
ここで、n=0〜2であり、n=1の場合、Xは、CH、O、NR、CO、及びC=NORから選択され、n=2の場合、X=CHであり、
Y=O、S、NOR、又はNRであり、
ここで、Rは、H、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)R、−NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、多環芳香族、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、又はヘテロアルキルであり、
U及びVは、それぞれ独立して、C=O及びO=S=Oから選択され、ここで、UがC=Oの場合、VはC=Oではなく、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択され、R、R、及びR、Rの各々は、独立して、結合してヘテロシクロアルキルを形成することができ、
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、COOR、CONR、NR、NRCOR、NRSO、及びNRCONRから選択され、
ここで、R、R、及びRは、独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルであり、
XがOの場合、YはOであり、U及びVは、双方ともO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、H及び低級アルキルから選択され、R及びRは、それぞれ独立して、低級アルコキシ(低級アルキル)、ジ(低級)アルキルアミノ(低級)アルキル、ハロベンジル、モルホリノ(低級)アルキルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−フェニルピペラジノ、エチルアミノ、又は置換グリシンから選択され、
ここで、Xが(CHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてR、R、R、及びRは、いずれもメチルではなく、
ここで、n=0の場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、C10アルキル、C16アルキル、C17アルキル、フェニル、ベンジル、ナフタレニル、ピペリジノ、ピリジニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、又はピペラジノであり、
ここで、XがCOの場合、YはOであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、ヒドロキシ−C〜C−アルキル、SH、RO、COOH、SO、NH、及びフェニルから選択され、NR及びNRは、独立して、非置換ピペリジノ、N−メチルピペラジノ、又はN−メチルホモピペラジノから選択され、
ここで、Xが、C=O又はC=NOHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、R又はRの一方及びR又はRの一方はフェニルであり、そしてR又はRの他方及びR又はRの他方は、H又はアルキルではなく、
並びに、これらの全ての薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグを含む。
【0013】
特定の態様において、本発明の化合物は、表2〜表13のものを含み、これらの化合物は、単独で又は任意の組み合わせで本発明を構成する。
【0014】
また、本発明は、表1〜表13の化合物などの本発明のあらゆる化合物の治療上の組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、本発明の化合物の有効量を哺乳類に投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍転移を回復させる方法に関する。特に意図するものは表1〜表13の化合物の使用である。
【0016】
−定義−
以下の各用語は、別に特段の明記がなければ下記の意味を有する。
【0017】
「アシル」又は「カルボニル」は、カルボン酸からヒドロキシを除去して得られる基である(即ち、R−C(=O)−)。好ましいアシル基には、例えば、アセチル、ホルミル、及びプロピオニルが挙げられる。
【0018】
用語「炭素鎖」は、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、又はヘテロアルキニル基を包含し、線状、環状、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。炭素鎖がリンカーの一部であって、該リンカーが、コア骨格の一部として1又は複数の環を含む場合、鎖長を計算する目的において、「鎖」は、所与の環の両方ではない下部又は上部を構成する炭素原子のみを含み、環の上部又は下部の長さが等しくない場合、鎖長を定めるのに短い長さを使用するべきである。鎖が骨格の一部としてヘテロ原子を含む場合、その原子は、炭素鎖の長さの一部として計算しない。
【0019】
「アルキル」は、1〜15の炭素原子、好ましくは、1〜10の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖を意味する。単独又は組み合わせで使用する場合、1〜約30の炭素、より好ましくは、1〜12の炭素を有する場合により置換された直鎖又は場合により置換された分岐鎖の飽和炭化水素基を指称する。アルキル基の限定されない例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチルなどが挙げられる。
【0020】
用語「アルケニル」は、単独又は組み合わせにおいて、1又は複数の炭素炭素二重結合を有し、かつ2〜約30の炭素原子、より好ましくは、2〜約18の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖又は場合により置換された分岐鎖の炭化水素基を指称する。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、1,3−ブタジエニルなどが挙げられる。
【0021】
用語「アルキニル」は、単独又は組み合わせにおいて、1又は複数の炭素炭素三重結合を有し、かつ2〜約30の炭素原子、より好ましくは、2〜約12の炭素原子、2〜約6の炭素原子、及び2〜約4の炭素原子を有する場合により置換された直鎖又は場合により置換された分岐鎖の炭化水素基を指称する。アルケニル基の例には、エチニル、2−プロピニル、2−ブチニル、1,3−ブタジニルなどが挙げられる。
【0022】
「アルケン」は、少なくとも1つ(好ましくは1つのみ)の炭素炭素二重結合を有し、かつ2〜15の炭素原子、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜5の炭素原子を有する炭化水素鎖である。
【0023】
「アルキン」は、少なくとも1つ(好ましくは1つのみ)の炭素炭素三重結合を有し、かつ2〜15の炭素原子、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜5の炭素原子を有する炭化水素鎖である。
【0024】
アルキル鎖、アルケン鎖、及びアルキン鎖(「炭化水素鎖」と総称)は、直線状又は分岐状であってもよく、非置換又は置換であってもよい。好ましい分岐したアルキル鎖、アルケン鎖、及びアルキン鎖は、1つ又は2つの分岐を有し、好ましくは、1つの分岐を有する。好ましい鎖はアルキルである。アルキル、アルケン、及びアルキンの炭化水素鎖は、それぞれ非置換でよく、又は1〜4の置換基で置換されてもよく、置換される場合、好ましい鎖は、モノ、ジ、又はトリ置換される。アルキル、アルケン、及びアルキンの炭化水素鎖は、それぞれ、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ヘテロアリールオキシ、アシルオキシ(例えば、アセトキシ)、カルボキシ、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、スピロ環、アミノ、アミド、アシルアミノ、ケト、チオケト、シアノ、又はこれらの任意の組み合わせによって置換されてもよい。好ましい炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ビニル、アリル、ブテニル、及びエキソメチレニルが挙げられる。
【0025】
「低級アルキル」は、比較的短いアルキルであり、例えば、1〜約6の炭素原子を含むものである。
【0026】
また、本願において称する「低級」のアルキル、アルケン、又はアルキン部分(例えば「低級アルキル」)は、アルキルの場合、1〜10、好ましくは1〜8の炭素原子、アルケン及びアルキンの場合、2〜10、好ましくは2〜8の炭素原子からなる鎖である。
【0027】
「アルコキシ」は、炭化水素鎖の置換基を有する酸素ラジカルを意味し、その炭化水素鎖はアルキル又はアルケニルである(即ち、−O−アルキル又は−O−アルケニル)。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、アリルオキシなどが挙げられる。
【0028】
「アリール」は、芳香族系の炭化水素環である。アリール環は、単環系又は結合二環系である。単環のアリール環は、環の中に6つの炭素原子を含む。単環のアリール環は、フェニル環とも称される。二環系のアリール環は、その環の中に、8〜17の炭素原子、好ましくは、9〜12の炭素原子を有する。二環系のアリール環には、1つの環がアリールで、他方の環がアリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクロアルキルである環系が挙げられる。好ましい二環系のアリール環は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。アリール環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。アリール環は、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、カルバミル、ハロアルキル、メチレンジオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましいアリール環には、ナフチル、トリル、キシリル、及びフェニルが挙げられる。最も好ましいアリール環基はフェニルである。
【0029】
「アリールオキシ」は、アリール置換基(即ち、−O−アリール)を有する酸素ラジカルである。好ましいアリールオキシ基には、(例えば)フェノキシ、ナフチルオキシ、メトキシフェノキシ、及びメチレンジオキシフェノキシが挙げられる。
【0030】
「シクロアルキル」は、芳香族ではない飽和又は不飽和の炭化水素環を指称する。シクロアルキル環は、単環であり、あるいは、縮合、スピロ、又は架橋の二環系又は多環系である。単環のシクロアルキル環は、環中に約3〜約12の炭素原子、好ましくは3〜7の炭素原子、最も好ましくは5又は6の炭素原子を含む。二環系のシクロアルキル環は、環中に7〜17の炭素原子、好ましくは、7〜12の炭素原子を含む。好ましい二環系のシクロアルキル環は、5、6、又は7員環に結合した4、5、6、又は7員環を含む。シクロアルキル環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。シクロアルキルは、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、ケト、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましいシクロアルキル環には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、及びシクロノニル環が挙げられる。
【0031】
また、用語「シクロアルキル」は、単環式、二環式、三環式、及びより高次の多環式アルキル基を含む環式アルキル基を包含し、各環状部分は、3〜約12の炭素原子を有し、3〜12員環と考えられる。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0032】
用語「シクロアルキニル」は、単環式、二環式、三環式、及びより高次の多環式アルキニル基を含む環式アルキニル基を指称し、各環状部分は、3〜約8の炭素原子を有する。「低級アルキニル」は、2〜約6の炭素を有するアルキニルを指称する。
【0033】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。好ましいハロは、フルオロ、クロロ、及びブロモであり、より好ましい典型は、クロロとフルオロであり、特には、フルオロである。
【0034】
「ハロアルキル」は、1又は複数のハロ置換基で置換された直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素である。好ましくは、C〜C12のハロアルキルであり、より好ましくは、C〜Cのハロアルキルであり、さらにより好ましくは、C〜Cのハロアルキルである。好ましいハロ置換基は、フルオロ又はクロロである。
【0035】
「ヘテロ原子」は、窒素、硫黄、又は酸素原子である。1を超えるヘテロ原子を含む基は、異なるヘテロ原子を含んでもよい。
【0036】
用語「ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、及びヘテロアルキニル」は、上述のように、場合により置換されたアルキル、アルケニル、及びアルキニル構造を含み、炭素以外から選択された原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、リン、又はこれらの組み合わせから選択された1又は複数の骨格鎖原子を有する。
【0037】
「ヘテロアルキル」は、炭素と少なくとも1つのヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和鎖であり、2つのヘテロ原子が隣接することはない。ヘテロアルキル鎖は、その鎖の中に2〜15の原子(炭素とヘテロ原子)を含み、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜5である。例えば、アルコキシ(即ち、−O−アルキル又は−O−ヘテロアルキル)基が、ヘテロアルキルに含まれる。ヘテロアルキル鎖は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。好ましい分岐ヘテロアルキル鎖は、1又は2の分岐を有し、好ましくは、1つである。好ましいヘテロアルキル鎖は飽和している。不飽和ヘテロアルキル鎖は、1つ又は複数の炭素炭素二重結合及び/又は1又は複数の炭素炭素三重結合を有する。好ましい不飽和ヘテロアルキル鎖は、1つもしくは2つの二重結合又は1つの三重結合を有し、より好ましくは、1つの二重結合を有する。ヘテロアルキル鎖は、非置換、又は1〜4の置換基で置換されてもよい。好ましい置換ヘテロアルキル鎖は、モノ、ジ、又はトリ置換である。ヘテロアルキル鎖は、低級アルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシルオキシ、カルボキシ、単環式アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、スピロ環、アミノ、アシルアミノ、アミド、ケト、チオケト、シアノ、又はこれらの任意の組み合わせで置換されてもよい。例えば、「−エチルピリジン」のようにアルキル誘導体として基を記載する場合、ダッシュ「−」は、置換基の結合箇所を示す。即ち、「−エチルピリジン」は、基のエチル部分を介したエチルピリジンの結合を意味するのに対し、「エチルピリジン−」は、ピリジン環を介した結合を意味する。
【0038】
「ヘテロアリール」は、環中に炭素原子と1〜約6のヘテロ原子を含む芳香族環である。ヘテロアリール環は、単環系又は縮合二環系である。単環系のヘテロアリール環は、環中に約5員〜約9員の原子(炭素とヘテロ原子)、好ましくは、5員又は6員の原子を含む。二環系のヘテロアリール環は、環中に8〜17員の原子、好ましくは、8〜12員の原子を含む。二環系のヘテロアリール環は、1つの環がヘテロアリールで、他方の環がアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、又はヘテロシクロアルキルである環系を含む。好ましい二環系のヘテロアリール環系は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。ヘテロアリール環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。ヘテロアリールは、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの任意の組み合わせによって置換されてもよい。好ましいヘテロアリール環には、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0039】
【化1】

【0040】
結合ヘテロアリール基は、2〜4の結合環を含むことができ、結合環はヘテロ芳香族環であり、結合環系内のその他の個々の環は、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式、又はヘテロ脂環式であることができる。また、用語「ヘテロアリール」は、モノヘテロアリール又は5〜約12の骨格環原子を有する結合ヘテロアリール、及び5〜約10の骨格環原子を含むものが挙げられる。用語「低級ヘテロアリール」は、5〜約10の骨格環原子を有するヘテロアリールを指称し、例えば、ピリジル、チエニル、ピリミジル、ピラジニル、ピロリル、又はフラニルである。
【0041】
「ヘテロアリールオキシ」は、ヘテロアリール置換基を有する酸素ラジカルである(即ち、−O−ヘテロアリール)。好ましいヘテロアリールオキシ基には例えば、ピリジルオキシ、フラニルオキシ、(チオフェン)オキシ、(オキサゾール)オキシ、(チアゾール)オキシ、(イソキサゾール)オキシ、ピリミジニルオキシ、ピラジニルオキシ、及びベンゾチアゾリルオキシが挙げられる。
【0042】
「ヘテロシクロアルキル」は、環中に炭素原子と1〜4(好ましくは、1〜3)のへテロ原子を有する飽和又は不飽和環である。ヘテロシクロアルキル環は、芳香族ではない。ヘテロシクロアルキル環は、単環系であるか、又は縮合、架橋、もしくはスピロ二環系である。単環系のヘテロシクロアルキル環は、環中に3〜約9員の原子(炭素とヘテロ原子の双方)、好ましくは、5〜7員の原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、環中に7〜17員の原子、好ましくは、7〜12員の原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、約7〜約17の環原子、好ましくは、7〜12の環原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、縮合、スピロ、又は架橋した環系であってもよい。好ましい二環系のヘテロシクロアルキル環は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。ヘテロシクロアルキル環は、非置換であってもよく(即ち、環原子の置換基として水素を含む)、あるいは、メチル、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、ケト、チオケト、アミノ、アシルアミノ、アシル、アミド、アルキル(メチル以外)、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アルコキシ、アリールオキシ、又はこれらの組み合わせから選択された1〜4の置換基で置換されてもよい(炭素もしくはヘテロ原子で又はそれら双方で)。ヘテロシクロアルキル上の好ましい置換基には、メチル、エトキシ、ハロ、及びハロアルキルが挙げられる。ヘテロシクロアルキル環は、該ヘテロシクロアルキル環の化学的に可能な原子によって、より大きい構造の置換基として結合することができる。好ましいヘテロシクロアルキル環には、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0043】
【化2】

【0044】
用語「員環」は、あらゆる環式構造を包含することができ、下記に示すような、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式、ヘテロ環式、及び多環式結合環系が挙げられる。用語「員」は、環を構成する骨格原子の一員を示す意味である。即ち、例えば、ピリジン、ピラン、及びピリミジンは、6員環であり、ピロール、テトラヒドロフラン、及びチオフェンは、5員環である。
【0045】
用語「アリール」は、単独又は組み合わせにおいて、6〜約20の環原子の任意の置換された芳香族炭化水素基を指称し、単一芳香族環及び結合芳香族環が含まれる。結合芳香族環基は、2〜4の結合環を含み、結合環は芳香族環であり、結合環内のその他の個々の環は、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環族、又はヘテロ脂環族であることができる。さらに、用語「アリール」には、単一芳香族環、6〜約12の炭素原子を含む結合芳香族環、及び6〜約10の炭素原子を含むものが挙げられる。アリール基の例には、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、アントリル、クリセニル、及びベンゾピレニル環系が挙げられる。用語「低級アリール」は、6〜約10の骨格環炭素を有するアリールを指称し、例えば、フェニル及びナフチル環系が挙げられる。
【0046】
用語「ヘテロ環式」は、5〜約20の環原子を含む場合により置換された飽和又は不飽和の非芳香族環基を指称し、1又は複数の環原子が、例えば、酸素、窒素、硫黄、及びリンのようなヘテロ原子である。用語「ヘテロ環式」には、単一ヘテロ環式基及び結合ヘテロ環式基が含まれる。結合ヘテロ環式基は、2〜4の結合環を含むことができ、ここで、結合環がヘテロ環式であり、結合ヘテロ環式基内のその他の個々の環は、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式、又はヘテロ脂環式であることができる。また、用語「ヘテロ環式」には、単一ヘテロ環式、5〜約12の骨格環原子を有する結合脂環式基、及び5〜約10の骨格環原子を有するものが含まれる。ヘテロ環式の例には、限定されるものではないが、テトラヒドロフラニル、ベンゾジアゼピニル、テトラヒドロインダゾリル、ジヒドロキノリニルなどが挙げられる。用語「低級ヘテロ環式」は、5〜約10の骨格環原子を有するヘテロ環式系を指称し、例えば、ジヒドロピラニル、ピロリジニル、インドリル、ピペリジニル、ピペラジニルなどである。
【0047】
用語「アルキルアリール」は、単独又は組み合わせにおいて、上記のアルキル基によって1つのH原子が置き換わった上記のアリール基を指称し、例えば、トリル、キシリルなどである。
【0048】
用語「アリールアルキル」又は「アラルキル」は、単独又は組み合わせにおいて、上記のアリール基によって1つのH原子が置き換わった上記のアルキル基を指称し、例えば、ベンジル、2−フェニルエチルなどである。
【0049】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、上記のヘテロアリール基によって1つのH原子が置き換わった上記のアルキル基を指称し、その各々は、場合により置換されてもよいが、アリール基は、アルキル基が末端部分である比較的大きいコア構造に結合する。
【0050】
用語「アルキルヘテロアリール」は、上記のヘテロアリール基によって1つのH原子が置き換わった上記のアルキル基を指称し、その各々は、場合により置換されてもよいが、アルキル基は、ヘテロアリール基が末端部分である比較的大きいコア構造に結合する。
【0051】
用語「アリールオキシ」は、単独又は組み合わせにおいて、アリールエーテル基を指称し、用語「アリール」は上記に規定している。アリールオキシ基の例には、フェノキシ、ベンジルオキシなどが挙げられる。
【0052】
用語「アルキルチオ」は、単独又は組み合わせにおいて、アルキルチオ基「アルキル−S−」を指称し、用語「アルキル」は上記に規定している。
【0053】
用語「アリールチオ」は、単独又は組み合わせにおいて、アリールチオ基「アリール−S−」を指称し、用語「アリール」は上記に規定している。
【0054】
用語「ヘテロアリールチオ」は、基「ヘテロアリール−S−」を指称し、用語「ヘテロアリール」は上記に規定している。
【0055】
用語「アシル」は、基「−C(O)R」を指称し、ここで、Rには、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、又はヘテロアリールアルキルが挙げられ、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、又はヘテロアリールアルキルは、場合により置換されてもよい。
【0056】
用語「アシルオキシ」は、エステル基「−OC(O)R」を指称し、ここで、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、又はヘテロアリールアルキルであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、又はヘテロアリールアルキルは、場合により置換されてもよい。
【0057】
用語「カルボキシエステル」は、「−C(O)OR」を指称し、ここで、Rは、アルキル、アリール、又はアリールアルキルであり、アルキル、アリール、及びアリールアルキル基は、場合により置換されてもよい。
【0058】
用語「カルボキサミド」は、構造「−C(O)NRR’」を指称し、ここで、窒素は、カルボニル炭素に結合し、R及びR’は、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、及びヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、アルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、又はアリールアルキル基は、場合により置換されてもよい。
【0059】
用語「オキソ」は、二重結合の酸素を指称し、=Oと記される。
【0060】
用語「ハロゲン」には、F、Cl、Br、及びIが挙げられる。
【0061】
用語「ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、及びハロアルコキシ」には、1又は複数のフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、又はこれらの組み合わせによって置換された上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアルコキシの構造が含まれる。
【0062】
用語「ペルハロアルキル、ペルハロアルキルオキシ、及びペルハロアシル」は、全てのH原子が、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、又はこれらの組み合わせによって置換された上記のアルキル、アルコキシ、及びアシル基を指称する。
【0063】
用語「シクロアルキル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロアルキル、及びヘテロアルキル」には、場合により置換されたシクロアルキル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロアルキル、及びヘテロアルキル基が含まれる。
【0064】
用語「アルキルアミノ」は、基「−NHR」を指称し、Rは、アルキルから独立して選択される。
【0065】
用語「ジアルキルアミノ」は、基「−NRR’」を指称し、R及びR’はアルキルである。
【0066】
用語「硫化物」は、2つの原子に共有結合した硫黄原子を指称し、その硫黄の形式酸化状態は(II)である。用語「チオエーテル」は、用語「硫化物」と互換的に使用されてもよい。
【0067】
用語「スルホキシド」は、3つの原子に共有結合した硫黄原子を指称し、その少なくとも1つが酸素原子であり、その硫黄原子の形式酸化状態は(IV)である。
【0068】
用語「スルホン」は、4つの原子に共有結合した硫黄原子を指称し、その少なくとも2つが酸素原子であり、その硫黄原子の形式酸化状態は(VI)である。
【0069】
用語「場合による」又は「場合により」は、続いて記載する事象又は状況が必ずしも発生するのではなく、その記載が、その事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含むことを意味する。例えば、「場合によりアルキルでモノ−又はジ−置換されるアリール」とは、アルキルが必ずしも存在しなくてもよく、1つ又は2つのアルキルが存在してもよく、その記載は、アリールが1つ又は2つのアルキルで置換される場合と、アリールがアルキルによって置換されない場合を含む。
【0070】
「場合により置換される」基は、置換されても置換されなくてもよい。「場合により置換される」基の置換基には、限定されるものではないが、以下の基又はその表示サブセットから独立して選択される1又は複数の基が挙げられ、即ち、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アリール、ヘテロアリール、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、低級アルコキシ、低級アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、オキソ、オキサ、カルボニル(−C(O))、カルボキシエステル(−C(O)OR)、カルボキサミド(−C(O)NH)、カルボキシ、アシルオキシ、−H、ハロ、−CN、−NO、−NH、−SH、−OH、−C(O)CH、ペルハロアルキル、ペルハロアルコキシ、ペルハロアシル、グアニジン、ピリジニル、チオフェン、フラニル、インドール、インダゾール、エステル、アミド、ホスホネート、ホスホン酸、リン酸塩、ホスホラミド、スルホネート、スルホン、スルフェート、スルホンアミド、カルバメート、尿素、チオ尿素、チオアミド、及びチオアルキルである。場合により置換される基は、非置換(例えば、CHCH)、完全置換(CFCF)、単置換(CHCHF)、又は完全置換と完全置換の間の任意のレベルの置換(CHCF)であってもよい。
【0071】
本発明の一部の化合物は、1又は複数のキラル中心を含んでもよく、したがって、エナンチオマー形態とジアステレオマー形態で存在することができる。本発明の範囲は、本質的に全ての異性体、並びに、シス異性体とトランス異性体の混合物、ジアステレオマーの混合物、及びエナンチオマー(光学異性体)のラセミ混合物もまた包含する。さらに、種々の形態を分離するのに周知技術を用いることもでき、所与のエナンチオマー又はジアステレオマーの種類を特徴的に精製する又は富化してもよい。
【0072】
用語「薬学的組成物」は、本願に記載の1又は複数の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤のような別の化学成分との混合物を指称する。薬学的組成物の目的は、生命体に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0073】
本願における用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される材料、組成物、又は媒体を意味し、例えば、対象薬剤をある器官又は体の一部から別の器官又は体の一部まで搬送又は輸送するのに伴う液体又は固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は封入材である。各々の担体は、別の処方成分と適合し患者に有害でないという意味で、「許容」されなければならない。薬学的に許容される担体として有用であり得るいくつかの例として、(1)乳糖、ブドウ糖、及びサッカロースのような糖類、(2)コーンスターチやポテトスターチのようなスターチ類、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体、(4)トラガント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバターや座薬ワックスのような賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイル、及び大豆油のような油類、(10)プロピレングリコールのようなグリコール類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールのようなポリオール類、(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルのようなエステル類、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムのような緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェン除去水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)その他の薬学的組成物に使用される非毒性の適合性のある物質が挙げられる。薬学的に許容される担体は、生命体に有意な刺激を生じさせるべきでなく、投与される化合物の生物活性と特性を無効にするべきでない。
【0074】
用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために薬学的組成物に添加される不活性物質を指称する。賦形剤の例には、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類とデンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0075】
本願における用語「治療効果」には、限定されるものではないが、増殖性疾病、例えば、結腸癌に特徴的な癌の増殖を、全体的又は部分的に抑制することが含まれる。また、治療効果には、細胞増殖又は細胞集団サイズ以外の1又は複数の疾病症状の回復が挙げられ、(1)細胞数の減少、(2)細胞サイズの低下、(3)周囲器官への細胞浸潤(即ち、転移)の抑制(即ち、遅延、好ましくは停止)、(4)細胞増殖の抑制又は遅延、及び/又は(5)癌のような疾病に伴う1又は複数の症状の緩和が含まれる。こうした治療効果をもたらす本願に開示の化合物の任意の量又は用量は、その化合物の「治療的有効量」又は「治療的有効用量」であると見なされる。
【0076】
癌に関し、用語「有効量」は、転移又は原発腫瘍の進行、サイズ、又は増殖に対する所望の応答をもたらす又は症状もしくは兆候を回復させるのに十分な量を意味する。典型的な哺乳類治療レシピエントには、マウス、ラット、ネコ、イヌ、及びヒトを含む霊長類が挙げられる。特定の患者についての有効量は、治療される条件、患者の全体的健康、投与の方法、ルート、及び用量、並びに副作用の重度などの因子によって変化することがある。好ましくは、その効果は、少なくとも約10%、好ましくは、少なくとも20%、30%、50%、70%、さらには90%以上の定量的変化をもたらす。組み合わせる場合、有効量は、成分の組み合わせに対する比にあり、その効果は、個々の成分のみには限定されない。
【0077】
「溶媒和物」は、溶質(例えば、金属プロテアーゼ阻害剤)と溶媒(例えば、水)の組み合わせによって得られる複合体である(J.Honig等、The Van Nostrand Chemist’s Dictionary,650頁(1953)、参照)。
【0078】
用語「光学異性体」、「幾何異性体」(例えば、シス/トランス異性体)、「立体異性体」、及び「ジアステレオマー」は、通義を有する(例えば、ホーレー、縮合化学辞書、11版、参照)。本発明の化合物における特定の保護される形態とその他の誘導体の例示は、限定を意図するものではない。その他の有用な保護基、塩の形態、プロドラッグ等の応用は、当業者の能力の範囲内にある。
【0079】
「プロドラッグ」は、活性のある又は十分に活性のある薬理作用のある物質になる前に、代謝過程によって化学変換を受けなければならない薬剤形態である。プロドラッグは、その摂取、吸収、又はその他の投与された形態において、不活性又は低活性である。例えば、プロドラッグは、消化系でバクテリアによって生成物に分解され、その少なくとも1つが薬物として活性になると考えられる。あるいは、静脈注射などによって全身的投与された後、代謝されて1又は複数の活性分子になってもよい。
【0080】
本願における用語「IC50」は、応答を測定するアッセイにおける最大応答の50%抑制を達成する特定の試験化合物の量、濃度、又は投与量を指称する。本発明の方法のいくつかの態様において、本発明の化合物の「IC50」値は、増殖性疾病、例えば、乳癌細胞を示す細胞についてよりも、正常細胞についての方が高いことがある。この値は、使用されるアッセイに依存する。
【0081】
「標準的」は、正又は負の対照を意味する。本件における負の対照は、癌性細胞に対立するものとしての正常を言い、例えば、正常細胞と関連するWnt/β−カテニン経路活性を有するサンプルである。また、負の対照は、こうした経路を有しないサンプルを含んでもよい。これに対して、正の対照は、こうした経路を有し、好ましくは、増殖性疾病、例えば、乳癌に見られるような過剰発現に関連する量で有する。対照は、細胞又は組織のサンプルからのものでもよく、あるいは、精製リガンド(又はリガンド消失)を含んでもよく、固定化その他のものでもよい。いくつかの態様において、1又は複数の対照が、診断上の「試験紙」の形態であってもよい。
【0082】
「選択的標的化」は、ある種の細胞に対して別のものより高い程度で影響させることを意味し、例えば、癌細胞に対する非癌細胞の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明は、式Iの構造を有する化合物を提供する。
【0084】

【0085】
ここで、n=0〜2であり、n=1の場合、Xは、CH、O、NR、CO、及びC=NORから選択され、n=2の場合、X=CHであり、Y=O、S、NOR、又はNRであり、
ここで、Rは、H、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)R、−NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、多環芳香族、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、又はヘテロアルキルであり、
U及びVは、それぞれ独立して、C=O及びO=S=Oから選択され、ここで、UがC=Oの場合、VはC=Oではなく、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択され、NR及びNRの各々は、独立して、ヘテロシクロアルキルを形成することができ、
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、COOR、CONR、NR、NRCOR、NRSO、及びNRCONRから選択され、
ここで、R、R、及びRは、独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルであり、
XがOの場合、YはOであり、U及びVは、双方ともO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、H及び低級アルキルから選択され、R及びRは、それぞれ独立して、低級アルコキシ(低級アルキル)、ジ(低級)アルキルアミノ(低級)アルキル、ハロベンジル、モルホリノ(低級)アルキルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−フェニルピペラジノ、エチルアミノ、又は置換グリシンから選択され、
ここで、Xが(CHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてR、R、R、及びRは、いずれもメチルではなく、
ここで、n=0の場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、C10アルキル、C16アルキル、C17アルキル、フェニル、ベンジル、ナフタレニル、ピペリジノ、ピリジニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、又はピペラジノであり、
ここで、XがCOの場合、YはOであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、ヒドロキシ−C〜C−アルキル、SH、RO、COOH、SO、NH、及びフェニルから選択され、又は、非同一のNR及びNRの双方又は一方は、非置換ピペリジノ、N−メチルピペラジノ、又はN−メチルホモピペラジノであり、
ここで、Xが、C=O又はC=NOHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、R又はRの一方及びR又はRの一方はフェニルであり、そしてR又はRの他方及びR又はRの他方は、H又はアルキルではなく、
並びに、これらの全ての薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグを含む。
【0086】
別の態様において、本発明は、式IIの構造、
【0087】

【0088】
ここで、R及びRは、H及びSONRから独立して選択され、R又はRの一方は水素であり、
又は、式IIIの構造を有する化合物を提供し、
【0089】

【0090】
ここで、R及びRは、H及びSONRから独立して選択され、R及びRの一方は水素であり、式II及び式IIIの各々において、その他の置換基は、式Iで規定するものと同じ意味を有する。
【0091】
本発明の特定の例において、式Iの化合物は、AがNR、又はAが(CRでm=1、又はAが(CRでm=2の構造であり、RとRは、本願明細書に規定するものである。
【0092】
本発明の特定の例において、式Iの化合物は、BがNR、又はBが(CRでm=1、又はBが(CRでm=2の構造であり、RとRは、本願明細書に規定するものである。
【0093】
本発明の別な特定の例において、式Iの化合物は、CがNR、又はCが(CRでm=1もしくはm=2の構造であり、RとRは、本願明細書に規定するものである。
【0094】
本発明の別な特定の例において、式Iの化合物は、DがNR、又はDが(CRでm=1もしくはm=2の構造であり、RとRは、本願明細書に規定するものである。
【0095】
本発明の付加的な特定の例において、式Iの化合物は、n=0であり、中心のX含有環が5員環となる構造である。
【0096】
本発明の別な特定の例において、式Iの化合物は、XがOでn=1又はXがOでn=2の構造である。
【0097】
本発明の特定の例において、式Iの化合物は、XがNRでn=1、又はXがCOでn=1、又はXがC=NORでn=1の構造であり、Rは、本願明細書に規定するものである。
【0098】
本発明の特定の例において、式Iの化合物は、XがCRでn=1、又はXがCRでn=2の構造であり、RとRは、本願明細書に規定するものである。
【0099】
本発明の特定の例において、式Iの化合物は、YがO、又はYがNR、又はYがNORの構造であり、Rは、本願明細書に規定するものである。
【0100】
式Iの1つの態様において、YがOの場合、XはC=Oではなく、XがC=Oの場合、YはOではない。異なる態様において、YがOでXがC=Oである。
【0101】
式Iの別の態様において、EがO又はNRの場合、YはNOHではないか又はnは1ではない。後者の異なる態様において、EがO又はNRの場合、nは1であってかつYはNOHである。
【0102】
式Iの化合物の特定の例において、UとVはそれぞれO=S=Oである。後者の付加的な例には、XがCH、n=1又は2、かつYがO又はSである化合物、又はXがCH、n=1又は2、かつYがNOR又はNRである化合物、又はXがO、かつYがO又はSである化合物、又はXがO、かつYがNOR又はNRである化合物、又はXがNR、かつYがO又はSである化合物、又はXがNR、かつYがNOR又はNRである化合物、又はXがCO、かつY=Oである化合物、又はXがCO、かつYがNOR又はNRである化合物、又はXがC=NOR、かつYがOである化合物、又はXがC=NOR、かつYがNORである化合物が挙げられる。
【0103】
式Iの全ての態様において、XがC=O又はC=NOHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、R又はRの一方及びR又はRの一方はフェニルであり、そしてR又はRの他方及びR又はRの他方は、H又はアルキルではない。それゆえ、限定されない例において、XがC=Oならば、YはNOHであり、U及びVはそれぞれO=S=Oであり、R及びRはそれぞれフェニルであり、そしてRはH又はアルキルではなく、RはH又はアルキルではない。
【0104】
式IIの1つの態様において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、及びアルキニルから選択される。別のこうした態様において、Rは水素であり、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、及びアルキニルから選択される。付加的なこうした態様において、NR及びNRは、それぞれ独立して、6員〜15員のヘテロ環であり、好ましくは、ヘテロシクロアルキルである。
【0105】
式IIの特定の態様において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、又はアルキニルから選択される。別のこうした態様において、Rは水素であり、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、又はアルキニルから選択される。付加的な例において、NR及びNRは、独立して、6員〜15員のヘテロ環であり、好ましくは、環に1つの窒素を含有するヘテロシクロアルキルである。
【0106】
別の態様において、本発明の化合物は、以下の環系の1つの誘導体、とりわけそのジスルホンアミド誘導体である。
【0107】

【0108】
こうした化合物は、適当に置換されてもよい。
【0109】
また、本発明は、薬学的に許容される担体中に治療的有効量で式Iの構造を有する表1〜13の化合物を含む組成物に関する。
【0110】

【0111】
ここで、XはCHでn=0〜2であり、又は、XはO、NR、CO、又はC=NORでn=1であり、
Y=O、S、NOR、又はNRであり、
ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)R、−NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、多環芳香族、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、又はヘテロアルキルであり、
U及びVは、それぞれ独立して、C=O及びO=S=Oから選択され、ここで、UがC=Oの場合、VはC=Oではなく、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択され、NR及びNRの各々は、独立して、ヘテロシクロアルキルを形成することができ、
及びRは、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、COOR、CONR、NR、NRCOR、NRSO、及びNRCONRから選択され、
ここで、R、R、及びRは、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルであり、
並びに、これらの全ての薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグを含む。
【0112】
また、該組成物の化合物は、NとOから選択された4以下のヘテロ原子と合計で12以下の原子を含む多環シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル架橋構造(表に示すような)を含むこともできる。
【0113】
また、本発明は、表1〜13のような本発明の任意の化合物の治療組成物を提供する。
【0114】
本発明の化合物は、薬学的に許容されるそれらの塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグの形態であることができる。本発明の化合物が立体異性体の場合、それは鏡像異性体又はジアステレオマーであることができる。該化合物が鏡像異性体である(又はキラル中心、例えば、キラル炭素原子を含む)場合、製薬目的で使用される化合物の形態は、鏡像異性体又はラセミ化合物であることができ、ここで、該鏡像異性体の1つが好ましいと考えられ、例えば、活性形態のもの又は別な鏡像異性体よりも活性の高いものである。本発明の該化合物が幾何異性体の場合(例えば、シス又はトランス形態で結合した置換基を有する炭素対を含む)、シス形態又はトランス形態の形態が製薬用途に好ましいと考えられ、ここで、シス形態とトランス形態の混合物は、所望の薬学的効果を有する範囲で、本発明の方法に使用することができる。
【0115】
「薬学的に許容される塩」は、酸性基(例えば、カルボン酸)で形成されるカチオン塩、又は塩基性基(例えば、アミノ)で形成されるアニオン塩である。数多くのこうした塩が当該技術分野で知られている(例えば、WO87/05297、Johnstonら、1987年9月11日公開、本願に参照して取り入れられる)。適切な酸塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸のような酸は、そのものは薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物を得る上で中間体として有用な塩、及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩の調製に使用してもよい。好ましいカチオン塩には、アリカリ金属塩(ナトリウム、カリウムなどの)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウムなどの)、及び有機塩が挙げられる。好ましいアニオン塩には、ハロゲン化物(塩化物など)、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0116】
1又は複数の酸性官能基を有する本発明の化合物は、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの場合における用語「薬学的に許容される塩」は、これらの場合における用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機及び有機の塩基付加塩を指称する。これらの塩は、同様に、化合物の最終的分離と精製の際に原位置で調製することができ、あるいは、その遊離酸形態の精製化合物を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩のような適切な塩基、又はアンモニア、又は薬学的に許容される有機第1級、第2級、又は第3級アミンと個々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩などが挙げられる。使用可能な塩基のいくつかの例示としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウム、N(C1−4アルキル)などが挙げられる。塩基付加塩の生成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。また、本発明は、本願に開示の化合物の塩基性窒素含有基の4級化を想定する。水溶性又は油溶性又は分散性生成物が、こうした4級化から得ることができる。
【0117】
こうした塩は、当業者がよく理解しているところであり、当業者は、当該技術において与えられる知識によって、いくらの数の塩でも調製することができる。さらに、当業者は、溶解性、安定性、生成容易性などの理由によってある塩を別な塩よりも優先することが認められる。こうした塩の決定と最適化は、当業者の実施の範囲内である。
【0118】
別の局面において、本発明は、本発明の任意の化合物の組成物に関するものであり、好ましくは、こうした化合物は、薬学的に許容される担体中に治療的有効量で存在する。こうした組成物は、一般に、こうした化合物の毒性でない量で含むと考えられる(即ち、治療上の使用にとって安全な量)。
【0119】
本発明の選択された例には、限定されるものではないが、表2〜13の任意又は全ての化合物が挙げられる。こうした化合物は、全て、とりわけそれらの使用と本発明の方法について特許請求の範囲に記載している。各々の示した構造において、配位子が、星印*をマークした原子を介して結合する。例えば、表1において、コア構造の硫黄原子は、表のR欄の星印を付した窒素原子で、表示のR基に結合する。
【0120】
【表1−1】

【0121】
【表1−2】

【0122】
【表1−3】

【0123】
【表1−4】

【0124】
【表1−5】

【0125】
【表1−6】

【0126】
【表1−7】

【0127】
【表2−1】

【0128】
【表2−2】

【0129】
【表2−3】

【0130】
【表2−4】

【0131】
【表2−5】

【0132】
【表2−6】

【0133】
【表2−7】

【0134】
【表2−8】

【0135】
【表3−1】

【0136】
【表3−2】

【0137】
【表4−1】

【0138】
【表4−2】

【0139】
【表4−3】

【0140】
【表4−4】

【0141】
【表5−1】

【0142】
【表5−2】

【0143】
【表5−3】

【0144】
【表5−4】

【0145】
【表6】

【0146】
【表7−1】

【0147】
【表7−2】

【0148】
【表7−3】

【0149】
【表8−1】

【0150】
【表8−2】

【0151】
【表8−3】

【0152】
【表8−4】

【0153】
【表8−5】

【0154】
【表8−6】

【0155】
【表9】

【0156】
【表10】

【0157】
【表11】

【0158】
【表12】

【0159】
【表13】

【0160】
【表14】

【0161】
上述のように、本発明は、薬物、とりわけ腫瘍の治療に有用な薬物の活性成分として本発明の化合物を使用することに関する。このため、本発明の化合物は、薬学的に許容される媒体及び賦形剤との混合物として、活性成分として式I又はIIの化合物を含有する薬学的組成物中に存在し、薬学的に許容される媒体及び賦形剤には、そのものでは該組成物を受け入れる個体に有害な抗体の生成を引き起こさず、過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬品が含まれる。薬学的に許容される担体には、限定されるものではないが、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体が挙げられ、経鼻その他の気道送達又は眼系への送達用の噴霧を形成するのに有用な担体が含まれる。薬学的に許容される担体、希釈剤、及び他の賦形剤の詳細な説明が、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.現行版)に記載されている。こうした賦形剤の使用は、当業者によく知られており、本明細書においてはこれ以上の説明はしないものとする。
【0162】
また、上述のように、本発明は、哺乳類における特定の遺伝子セットの発現レベルの変化に伴う疾病を予防又は治療する方法に関係し、本発明の化合物の有効量を該哺乳類に投与することを含む。
【0163】
本発明による化合物は、そうした治療を必要とする哺乳類、とりわけヒトにおける腫瘍、とりわけ原発腫瘍のサイズと数を低減する効果を有する。原発腫瘍又は転移性細胞の数における統計的に有意な変化は、典型的に、少なくとも約10%、好ましくは20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上である。
【0164】
本発明によると、本明細書に記載の薬剤は、別な化学療法、放射線治療、免疫療法、外科治療などの本明細書に記載の病状の別な治療と組み合わせることができる。また、本発明の化合物は、鎮痛薬、利尿薬、抗利尿薬、抗ウイルス薬、抗生物質、栄養剤、貧血治療剤、血液凝固治療剤、骨治療剤、及び精神・心理治療剤のような別な薬剤を組み合わせて投与することができる。
【0165】
適切な治療投与量の決定は、例えば、治療をもたらす又は治療をもたらすと予測される当該分野で公知のパラメータ又は因子を用いて、医師によってなされる。一般に、投与量は、最適投与量より若干少ない量から開始し、その後、何らかのマイナスの副作用に対する所望又は最適な効果が得られるまで、少しずつ増加させる。
【0166】
治療上及び/又は予防上の効果を得るための投与される本発明による化合物の特定の用量は、当然、その場合を取り巻く特定の状況によって決定されるものと考えられ、例えば、投与される特定の化合物、投与ルート、治療条件、及び治療される個体などである。典型的な1日量(1回又は分割の用量で投与)は、体重1kgあたり約0.01mg/kgから約50〜100mg/kgの本発明の活性化合物の投与量レベルを含むと考えられる。好ましい1日量は、一般に、約0.05mg/kg〜約25mg/kgであり、理想的には、約0.1mg/kg〜約10mg/kgである。クリアランス速度、半減期、及び最大耐用量(MTD)は、本願明細書においては特に言及しないが、標準的手順を用いて当業者によって容易に決定することができる。
【0167】
治療上の有効量は、典型的に、少なくとも約10%、通常は、少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、又はより好ましくは、少なくとも50%にわたって症状を変調することができる。あるいは、転移の変調は、種々の細胞種の転移又は輸送がもたらされることを意味する。こうしたことは、例えば、影響を及ばされる細胞の数における統計的に有意な又は定量可能な変化が得られることに帰結すると考えられる。このことは、ある時間間隔又は標的領域の中に引き付けられる標的細胞の数の減少であってもよい。原発腫瘍の進行、サイズ、又は成長の速度もまたモニターすることができる。
【0168】
別な局面において、本発明は、異常な遺伝子発現によって生じる疾病の防止又は治療方法に関し、その疾病は、癌、心臓血管疾患、関節炎、骨粗鬆症、炎症、歯周病、及び皮膚疾患からなる群より選択され、こうした治療又は予防を必要とする哺乳動物に、本発明の化合物の治療上有効量を投与することを含む。
【0169】
好ましい態様において、本発明は、哺乳動物における癌又は腫瘍の転移を防止、治療、又は回復させる方法に関するものであり、本発明の化合物の治療上有効量をその哺乳動物に投与することを含み、好ましくは、その哺乳動物はヒトである。
【0170】
本発明の化合物は、細胞、とりわけ哺乳動物の細胞、例えば、癌細胞、好ましくは、大腸細胞、最も好ましくは、腺癌に見られる1又は複数の遺伝子の変調によって、普通に治療効果を発揮する。即ち、本発明の1又は複数の化合物は、遺伝子セットの変調を本発明の1又は複数の化合物によって定めることにより、こうした遺伝子セットを決定する又は境界を画定するために使用することができる。例えば、ある遺伝子セットが、他の正常細胞、とりわけ癌細胞と同じ組織又は器官の正常細胞に対して、癌細胞において上方制御されることが見出された場合、こうした遺伝子、又はこうした遺伝子を含む細胞を、本発明の1又は複数の化合物と接触させることにより、ある遺伝子セットが、変調されるそれらの共通の特性によって決定することができる(遺伝子の発現の変化に基づき、例えば、その発現によって転写されるRNAの速度もしくは量又は生成するポリペプチドの量の変化)。こうした変調の範囲は、当然、接触に使用されるその1又は複数の化合物の量に関係してもよい。こうした変調には、全ての測定される遺伝子(即ち、その組の遺伝子)の増加した発現、その組の全ての遺伝子の減少した発現、又はその組の一部の遺伝子の発現の増加とその他の減少した発現が挙げられる。このため、テスト化合物(遺伝子又はそれを含む細胞との接触に使用された化合物)により変調されなかった遺伝子は、その組の一員とは見なされない。
【0171】
このように、本発明は、遺伝子セットの各員の発現が、その遺伝子セットを本発明の化合物と接触させる結果として変調される遺伝子セットに関する。特定の態様において、その遺伝子セットの各員の発現は、その接触の結果として増加し、又はその接触の結果として減少する。別の好ましい態様において、遺伝子セットは、細胞中に存在する。こうした遺伝子セットは、通常、特定の疾病プロセスに関係し、例えば、本発明の化合物によって全ての遺伝子セットが変調され、こうした化合物が、抗悪性腫瘍薬のような特定の治療効果を有する。
【0172】
また、本発明は、本発明は、哺乳動物における癌又は腫瘍の転移を回復させる方法に関するものであり、本発明の化合物の治療上有効量をその哺乳動物に投与することを含む。特に想定しているものは表1の化合物の使用である。選択された態様において、癌は肉腫であり、又は癌は細胞癌である。本発明の方法によって想定される特定の癌には、限定されるものではないが、結腸癌、腺癌、直腸癌、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、大腸腺腫症、及び肝細胞癌の1又は複数が挙げられる。
【0173】
また、本発明は、スキーム1で表わされる一般的合成経路にしたがった、式Iの化合物の合成のための便利な方法を提供する。出発のスルホニルクロリド1は、対応する芳香族環系の直接のクロロスルホニル化によって又は適切なスルホン酸誘導体の塩素化によって得ることができる。化合物1は、6員又は7員の環状アミンと反応して2級スルホンアミド2を与える。化合物2は、さらに、場合により、水溶性、修飾されたタンパク質結合特性、血漿中安定性、毒性などの修飾された物理化学的及び薬理学的特性を有するプロドラッグとして有用な誘導体3に変化させることができる。
【実施例】
【0174】
本願において開示される化合物の殆どは、スキーム1で表わされる一般的合成経路にしたがって、対応するスルホニルクロリド誘導体から調製された。
【0175】
スキーム1

【0176】
以下の各スキームと実施例は、例証を目的とするものであって、特許請求の範囲に規定する本発明の範囲を限定するものではない。
【0177】
スキーム2

【0178】
実施例1
2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)アントラセン−9,10−ジオン (1−27)
アントラキノン−2,7−ジスルホニルクロリド(1215mg、3ミリモル)を100mLのDCMに溶かした。この溶液を−50℃まで冷却した。この溶液に1mL(8ミリモル)のヘプタメチレンイミンを添加し、続いて1mLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。この反応混合物を室温で4時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物を1NのHClで処理し、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させた。粗物質をクロロホルム−ヘキサンから結晶化させて1.014g(91%)の黄色の化合物1−27を得た。
【0179】
−NMR(CDCl):8.70(2H、d、C1とC8)、8.47(2H、d、C4とC5)、8.22(2H、dd、C3とC6)、3.22(8H、m)、1.70(20H、m)
【0180】
実施例2
2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)アントラセン−9,10−ジオンジオキシム (2−22)
実施例1の生成物(1.0g、1.706ミリモル)、5mLのピリジン、及びヒドロキシルアミン塩酸塩(1.5g、21.5ミリモル)を95℃で36時間にわたって撹拌した。ピリジンを蒸発させ、数分間にわたって残留物を1NのHCl(50mL)とともに撹拌した。白色の生成物をろ過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させた。次いで、粗物質をDCM−ヘキサンから結晶化させて970mg(97%)の白色の化合物2−22を得た。
【0181】
−NMR(CDCl):9.05(1H、dd)、8.75(1H、dd)、8.35(1H、dd)、8.05(1H、dd)、7.90(2H、m)、3.20(8H、m)、1.70(20H、m)
【0182】
実施例3
2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)アントラセン−9,10−ジオンジオキシムジナトリウム塩 (2−22×2Na)
化合物2−22(620mg、1.0ミリモル)、35mLのDCM、及びエタノール中のナトリウムエトキシドの混合物を透明な溶液が生成するまで加熱しながら撹拌した。この溶液に100mLのエーテルを加え、この混合物を5分間にわたって超音波で処理した。黄色固体の生成物をろ過によって収集し、エーテルで洗浄し、乾燥させて、660mg(100%)の表題の化合物を得た。
【0183】
実施例4
9,10−ビス(N’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N−エチルカルバミドイルオキシイミノ)−2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)−9,10−ジヒドロ−アントラセンテトラヒドロクロリド (3−18)
化合物2−22(442mg、0.75ミリモル)、4mLの無水クロロホルム、及び400mgのEDACを60℃で1時間にわたって撹拌した。この反応混合物を濃縮し、HPLCによるクロマトグラフィーに供した。所望の生成物(MH=899)を含む統合画分を1NのHClを5mL添加することによって酸性にし、蒸発させて乾燥させた。生成物を蒸留水に溶かし、凍結乾燥させて530mg(68%)の表題の化合物を得た。
【0184】
スキーム3

【0185】
実施例5
9,10−ビス[(3−アミノプロピル)オキシイミノ]−2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)−9,10−ジヒドロ−アントラセン (3−24)
DMSO(2mL)中の化合物2−22×2Na(320mg、0.5ミリモル)の溶液にtert−ブチル−3−ブロモプロピルカルバメート(180mg、0.75ミリモル)を添加し、この混合物を室温で1時間にわたって撹拌した。この反応混合物に水を添加し、酢酸エチルを用いて沈殿生成物を抽出した。硫酸ナトリウムを用いて抽出物を乾燥させ、蒸発させ、残留物を4NのHCl/ジオキサン(5mL)とともに1時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をメタノールに溶かし、調製用HPLCで精製した。主生成物を含む画分を塩酸で酸性にし、蒸発させた。残留物を水に溶かし、凍結乾燥させ、二塩酸塩として表題の化合物を得た(170mg、2段階で収率44%)。MS703(MH)。
【0186】
実施例6
10−(3−アミノプロピル)オキシイミノ−9−ヒドロキシイミノ−2,7−ビス(アゾカン−1−イルスルホニル)−9,10−ジヒドロ−アントラセン (3−24)
実施例5の第2主生成物として表題の化合物を分離した。
収率:2段階後で20% MS646(MH
【0187】
スキーム4

【0188】
実施例7
10−メチル−9−オキソ−9,10−ジヒドロアクリジン−2,7−ジスルホニルジクロリド
10−メチルアクリジン−9(10H)−オン(4.2g、20ミリモル)とクロロスルホン酸(100mL、1.5モル)の混合物を環流したで5時間にわたって加熱した。次いで、反応混合物を濃縮し、室温まで冷却し、500gの氷の上に慎重に注いだ。黄色の沈殿生成物をろ過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させ、8.1gの表題の化合物を得た。この物質を精製せずに次工程に使用した。
【0189】
実施例8
2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−10−メチルアクリジン−9(10H)−オン (11−4)
THF(20mL)中の実施例7の10−メチル−9−オキソ−9,10−ジヒドロアクリジン−2,7−ジスルホニルジクロリド(810mg、2ミリモル)の溶液に3,5−ジメチルピペリジン(2mL、15ミリモル)を添加し、この反応混合物を室温で6時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物を1NのHCl(50mL)で処理し、10分間にわたって撹拌した。黄色の生成物をろ過によって収集し、水とメタノールで洗浄し、乾燥させた。クロロホルム−エタノールから粗物質を結晶化させ、900mg(80%)の黄色物質11−4を得た。MS560(MH
【0190】
実施例9
2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−10−メチルアクリジン−9(10H)−チオン
化合物11−4(560mg、1ミリモル)、無水トルエン(10mL)、及びローソン試薬(820mg、2ミリモル)の混合物を4時間にわたって環流した。蒸発によってトルエンを除去した。残留物にメタノール(20mL)を添加し、室温で数分間にわたって撹拌し、ろ過によって生成物を収集し、乾燥させ、500mgの表題の化合物を得た。MS576(MH
【0191】
実施例10
2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−9−ヒドロキシイミノ−10−メチル−(9H、10H)−アクリジン (12−4)
ピペリジン(5mL)中の2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−10−メチルアクリジン−9(10H)−チオン(290mg、0.5ミリモル)の溶液にヒドロキシルアミン塩酸塩(210mg、30ミリモル)を添加し、この混合物を100℃で8時間にわたって撹拌した。溶媒を除去し、残留物を水で処理し、過剰のヒドロキシルアミンを除去した。メタノール−水から粗物質を結晶化させ、245mg(85%)の表題の化合物を得た。MS575(MH
【0192】
実施例11
2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−9−(3−ジメチルアミノプロピル)イミノ−10−メチル−(9H、10H)−アクリジン (12−5)
2,7−ビス(3,5−ジメチルピペリジン−1−イルスルホニル)−10−メチルアクリジン−9(10H)−チオン(145mg、0.25ミリモル)、ピリジン(5mL)、及びジメチルアミノプロピルアミン(0.125mL、1ミリモル)の混合物を100℃で4時間にわたって撹拌した。溶媒を部分的に蒸発させ、メタノールの添加によって反応生成物を沈殿させた。ろ過によって沈殿物を収集し、メタノールで洗浄し、乾燥させ、137mg(85%)の表題の化合物を得た。MS644(MH
【0193】
スキーム5

【0194】
実施例12
,N−ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジスルホンアミド (1−36)
アントラキノン−2,7−ジスルホニルクロリド(10g、24.7ミリモル)を200mLのDCMに溶かした。この溶液を−50℃まで冷やした。この溶液に4−tert−ブチルシクロヘキサンアミン(8.43g、54ミリモル)と続いてトリエチルアミン(8.6mL、61.7ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で4時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をMeOHで処理し、ろ過し、乾燥させ、黄色粉末として15g(95%)の生成物(1−36)を得た。
【0195】
実施例13
,N−ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジスルホンアミド (13−1)、及び
,N−ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−N,N−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジスルホンアミド (1‐70)
【0196】
無水DMF(100mL)中のスルホンアミド(1−36、6.82g、10.61ミリモル)の氷冷溶液にアルゴン下でNaH(95.0%、697mg、27.58ミリモル)を添加した。この溶液を5分間にわたって撹拌した後、3−クロロ−N,N−ジメチルプロパン−1−アミン塩酸塩(2.18g、13.8ミリモル)を添加した。10分間後、この反応混合物を40℃の予熱オイルバスに移し、3日間にわたって撹拌した。LCMSは、未反応の出発物質とともにモノアルキル化生成物とビスアルキル化生成物の存在を示した(比:65/25)。冷却後、反応混合物に1NのNaOHを添加し、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムの上で乾燥させ、ろ液を減圧下で蒸発させた。粗混合物をシリカゲルカラムのクロマトグラフィーで精製した。ヘキサン中の40%EtOHでカラムを溶出したとき、未反応の出発物質を回収した。EtOAcのみを用いて溶出したとき、純粋なモノアルキル化生成物が得られ(13−1、LCMS、MS728.0(MH))、溶離液としてEtOAc中の5%トリエチルアミンを用いてビスアルキル化生成物を分離した(1−70、LCMS、MS813.2(MH))。収集した画分を減圧下で蒸発させて乾燥させ、13−1(3.02g、53%)と1−70(1.10g、17%)を得た。
【0197】
スキーム6

【0198】
実施例14
,N−ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−9,10−ビス(ヒドロキシイミノ)−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジスルホンアミド (6−1)
モノアルキル化スルホンアミド(13−1、2g、2.7ミリモル)、過剰のヒドロキシルアミン塩酸塩(2.7g、27.5ミリモル)、及びピリジン(50mL)を用い、95℃で36時間にわたる一般的手順にしたがい、ジオキシム(6−1)を調製した。冷却後、ろ過によって過剰のヒドロキシルアミンを除去し、ピリジンで洗浄し、ろ液を減圧下で蒸発させて乾燥させた。これに過剰の1NのHCl水溶液を添加し、オキシムを沈殿させ、ろ過して無色の沈殿物を収集し、乾燥させた。オキシム(6−1)を結晶化又はHPLCによってさらに精製し、無色のHCl塩として得た(1.42g、65%)。
【0199】
HNMR(400MHz、DMSO−d6)δ:13.04〜13.01(m、1H)、12.94〜12.89(m、1H)、10.48(brs、1H)、9.18〜9.07(m、1H)、8.87〜8.78(m、1H)、8.40〜7.78(m、4H)、3.75〜3.05(m、16H)、2.72(s、6H)、1.96〜0.76(m、28H)
【0200】
実施例15
,N−ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−N,N−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−9,10−ビス(ヒドロキシイミノ)−9,10−ジヒドロアントラセン−2,7−ジスルホンアミド (2−65)
【0201】
上記の一般的手順にしたがい、対応するアントラキノン誘導体(1−70、1g、1.23ミリモル)、過剰のヒドロキシルアミン塩酸塩(1.2g、12.3ミリモル)、及びピリジン(25mL)から、95℃で36時間にわたってHCl塩(0.710g、63%)としてジオキシム(2−65)を調製した。
【0202】
HNMR(400MHz、DMSO−d6)δ:13.09〜13.07(m、1H)、12.98〜12.95(m、1H)、9.14〜9.08(m、1H)、8.89〜8.82(m、1H)、8.35〜7.92(m、4H)、3.75〜3.04(m、16H)、2.72〜0.77(m、46H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物、

ここで、n=0〜2であり、n=1の場合、Xは、CH、O、NR、CO、及びC=NORから選択され、n=2の場合、X=CHであり、
Yは、O、S、NOR、又はNRであり、
ここで、Rは、H、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)R、−NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、多環芳香族、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、又はヘテロアルキルであり、
U及びVは、それぞれ独立して、C=O及びO=S=Oから選択され、ここで、UがC=Oの場合、VはC=Oではなく、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択され、NR及びNRの各々は、独立して、結合してヘテロシクロアルキルを形成することができ、
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、COOR、CONR、NR、NRCOR、NRSO、及びNRCONRから選択され、
ここで、R、R、及びRは、独立して、H、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルであり、
XがOの場合、YはOであり、U及びVは、双方ともO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、ここで、R及びRは、それぞれ独立して、H及び低級アルキルから選択され、R及びRは、それぞれ独立して、低級アルコキシ(低級アルキル)、ジ(低級)アルキルアミノ(低級)アルキル、ハロベンジル、モルホリノ(低級)アルキルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−フェニルピペラジノ、エチルアミノ、又は置換グリシンであり、
ここで、Xが(CHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてR、R、R、及びRは、いずれもメチルではなく、
ここで、n=0の場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、C〜Cアルキル、C10アルキル、C16アルキル、C17アルキル、フェニル、ベンジル、ナフタレニル、ピペリジノ、ピリジニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリルから選択され、又は、NR及びNRは、独立して、ピペリジノ、モルホリノ、又はピペラジノであり、
ここで、XがCOの場合、YはOであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、そしてNR及びNRは同一ではなく、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、ヒドロキシ−C〜C−アルキル、SH、RO、COOH、SO、NH、及びフェニルから選択され、又は、非同一のNR及びNRの一方又は双方は、非置換ピペリジノ、N−メチルピペラジノ、又はN−メチルホモピペラジノであり、
ここで、Xが、C=O又はC=NOHの場合、YはO又はNOHであり、U及びVは、それぞれO=S=Oであり、R又はRの一方及びR又はRの一方はフェニルであり、そしてR又はRの他方及びR又はRの他方は、H又はアルキルではなく、
並びに、これらの全ての薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグを含む、化合物。
【請求項2】
U及びVがそれぞれO=S=Oである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがCHであり、n=1又は2であり、YがO又はSである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがCHであり、n=1又は2であり、YがNOR又はNRである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがOであり、YがO又はSである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがOであり、YがNOR又はNRである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがNRであり、YがO又はSである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがNRであり、YがNOR又はNRである請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがCOであり、Y=Oである請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式IIの構造を有し、

ここで、R及びRは、H及びSONRから独立して選択され、R又はRの一方は水素であり、他の置換基は請求項1に規定する意味を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、及びアルキニルから選択される請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が水素であり、R、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、及びアルキニルから選択される請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
NR及びNRが、それぞれ独立して、6員〜15員のヘテロシクロアルキルである請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがCOであり、YがNOR又はNRである請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがC=NORであり、YがOである請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
U及びVがそれぞれO=S=Oであり、XがC=NORであり、YがNORである請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式IIIの構造を有し、

ここで、R及びRは、H及びSONRから独立して選択され、R及びRの一方は水素であり、他の置換基は請求項1に規定する意味を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、又はアルキニルから選択される請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が水素であり、R、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、又はアルキニルから選択される請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
NR及びNRが、独立して、環中に1つの窒素を含む6員〜15員のヘテロシクロアルキルである請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
表2に示す構造を有する化合物。
【請求項22】
表3に示す構造を有する化合物。
【請求項23】
表4に示す構造を有する化合物。
【請求項24】
表5に示す構造を有する化合物。
【請求項25】
表6に示す構造を有する化合物。
【請求項26】
表9に示す構造を有する化合物。
【請求項27】
表10に示す構造を有する化合物。
【請求項28】
表11に示す構造を有する化合物。
【請求項29】
表12に示す構造を有する化合物。
【請求項30】
表13に示す構造を有する化合物。
【請求項31】

薬学的に許容される担体中に、式Iの化合物、又はその全ての薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、又はプロドラッグの治療的有効量を含む組成物であって、
ここで、Xは、CHであり、かつn=0〜2であり、又はO、NR、CO、もしくはC=NORであり、かつn=1であり、
Y=O、S、NOR、又はNRであり、
ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)R、−NR、ヘテロシクロアルキル、アリール、多環芳香族、ヘテロアリール、アリールアルキル、及びアルキルアリールから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、又はヘテロアルキルであり、
U及びVは、それぞれ独立して、C=O及びO=S=Oから選択され、ここで、UがC=Oの場合、VはC=Oではなく、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択され、R、R、R、Rの各々は、独立して結合して、ヘテロシクロアルキルを形成することができ、
及びRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、COOR、CONR、NR、NRCOR、NRSO、及びNRCONRから選択され、
ここで、R、R、及びRは、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルである、組成物。
【請求項32】
哺乳類に、請求項31に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項33】
該癌が肉腫である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該癌が細胞腫である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
該癌が、結腸癌、腺癌、直腸癌、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、腺腫様ポリープ、及び肝細胞癌からなる群より選択されたメンバーである請求項32に記載の方法。
【請求項36】
哺乳類に、表1〜13の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項37】
該癌が肉腫である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該癌が細胞腫である請求項36に記載の方法。
【請求項39】
該癌が、結腸癌、腺癌、直腸癌、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、腺腫様ポリープ、及び肝細胞癌からなる群より選択されたメンバーである請求項36に記載の方法。
【請求項40】
哺乳類に、表1の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項41】
哺乳類に、表2の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項42】
哺乳類に、表3の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項43】
哺乳類に、表4の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項44】
哺乳類に、表5の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項45】
哺乳類に、表6の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項46】
哺乳類に、表7の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項47】
哺乳類に、表8の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項48】
哺乳類に、表9の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項49】
哺乳類に、表10の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項50】
哺乳類に、表11の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項51】
哺乳類に、表12の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項52】
哺乳類に、表13の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳類における癌又は腫瘍の転移を予防する、治療する、又は回復させる方法。
【請求項53】
遺伝子セットの各メンバーの発現が、請求項31に記載の化合物による処理の結果として調節される、遺伝子セット。
【請求項54】
該接触の結果として、該遺伝子セットの各メンバーの発現が増加する又は減少する請求項53に記載遺伝子セット。
【請求項55】
該遺伝子セットのメンバーが、表14に特定される遺伝子から選択される請求項53に記載遺伝子セット。
【請求項56】
該遺伝子セットが細胞に存在する請求項53に記載遺伝子セット。
【請求項57】
請求項53に記載の遺伝子セットの発現を調節する薬剤を特定する方法であって、
(a)ある化合物を、請求項53に記載の遺伝子セットの各メンバーに対応する1又は複数のポリヌクレオチドを含むテスト系に、該遺伝子セットのメンバーが発現する条件下で接触させ、
(b)該接触の結果として、工程(a)におけるその1又は複数のポリヌクレオチドの各々の発現の変化を測定する、
ことを含み、工程(b)の該発現における変化は、該遺伝子セットのメンバーの変調を示し、それによって、該遺伝子セットの発現を変調する薬剤として該テスト化合物を特定する、薬剤を特定する方法。
【請求項58】
該発現における変化が、該1又は複数のポリヌクレオチドの発現の減少である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
該発現における変化が、該1又は複数のポリヌクレオチドの転写における変化である請求項57に記載の方法。
【請求項60】
該発現における変化が、該ポリヌクレオチドによってコード化されたポリペプチドの活性における変化を測定することによって求められる請求項57に記載の方法。
【請求項61】
該1又は複数のポリヌクレオチドが細胞中に存在する請求項57に記載の方法。
【請求項62】
該細胞が癌細胞である請求項61に記載の方法。
【請求項63】
該癌細胞が大腸癌細胞である請求項62に記載の方法。
【請求項64】
該大腸癌細胞が腺癌細胞である請求項63に記載の方法。
【請求項65】
該細胞が、該遺伝子セットを含むように設計された組換え型細胞である請求項61に記載の方法。
【請求項66】
複数の遺伝子サブセットを含む遺伝子セットであって、該複数の遺伝子サブセットの各々が、請求項57に記載の方法によって特定される遺伝子セット。
【請求項67】
請求項57に記載の方法を用いて活性を有すると特定される化合物。

【公表番号】特表2010−526813(P2010−526813A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507482(P2010−507482)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/006015
【国際公開番号】WO2008/140792
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(501128379)アバロン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】