説明

フルオレン誘導体の製造方法

【課題】フルオレン誘導体の簡便かつ高収率な新規合成方法の提供。
【解決手段】アルミニウム化合物と、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物とを反応させる、例えば下記スキームのような方法によりフルオレン骨格を有する化合物を製造する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン誘導体(以下、「フルオレン骨格を有する化合物」、「フルオレン化合物」ともいう。)は有機半導体等としての有用性が高く、多くの化合物の合成が検討されている。フルオレン誘導体の実際の使用にあたり、材料の安定性を確保するためには、該フルオレン誘導体は高Tgであることが求められる。また、発光材料として使用するためには、発光波長を可視光とする目的から、高分子量の誘導体(ポリフルオレン誘導体)が必要である。このような要件を満たすフルオレン誘導体として、フルオレン骨格の9位にアルキル基又はアリール基が導入されているものが多く知られている。
【0003】
特に、電子デバイス用材料として用いる際の機能の面から、9位にアリール基が導入されたものが有望視されており、従来の合成方法では、9位のアリール基は、フェニル基又は2,2−ビフェニル基のものがほとんどを占める。
【0004】
例えば、非特許文献1では、以下のような合成ルートにより9位にアリール基が導入されたフルオレン誘導体を得ている。
【0005】
【化1】

【0006】
また、非特許文献2では、以下のような合成ルートにより9位にアリール基が導入されたフルオレン誘導体を得ている。
【0007】
【化2】

【0008】
さらに、非特許文献3では、以下のような合成ルートにより9位にアリール基が導入されたフルオレン誘導体を得ている。
【0009】
【化3】

【0010】
しかしながら、非特許文献1〜3に開示されている方法により得られるフルオレン誘導体の合成原料となる、フルオレン化合物(モノマー単位)の実用的な合成方法は知られていない。
【0011】
さらに、フルオレン誘導体の実際の使用にあたって重要な点として、純度が挙げられる。フルオレン誘導体の純度を高くするためには、モノマー単位であるフルオレン化合物の分子内の置換位置選択性を確立することが非常に重要である。具体的には、フルオレン母核と9位のアリール基の望む位置に置換基を導入できることが望ましい。
【0012】
これまでに、9−フェニルフルオレン骨格を構築後にフルオレンのフェニル基だけに選択的に臭素を導入する方法が報告されている。しかしながら、実用上十分な純度で目的物を入手するためには、以下に示すように、それぞれのフェニル基に選択的に臭素などのハロゲン元素を導入した後、炭素鎖長の延長を行う必要がある。非特許文献4に開示されている、フルオレンの4,4’位に臭素を導入する方法は下記の通りである。
【0013】
【化4】

【0014】
上記の通り、非特許文献4では、フルオレンに臭素を導入後、酸化によるフルオレノン合成、続いてフェニルマグネシウム試薬によるアリール化とFriedel-Crafts反応によるアリール化反応を行っている。しかし、この方法では、2工程目に9位に導入できるアリール基は、溶媒として用いる芳香族化合物由来のものしか導入できず、該芳香族化合物は反応溶媒として加えることから過剰量が必要となる。
【0015】
一方、特許文献1には、以下のようにアリール基2つを過剰量用いずに導入できる方法が開示されているが、この方法は工程数が多く、最終生成物の収率は満足できるものでは無い。
【0016】
【化5】

【0017】
また、非特許文献5には、フルオレノンの9位のアリール基への臭素導入方法が開示されており、下式の通り、酸存在下に過剰量のアニリンを用いたフルオレノンのアリール化後、アミノ基のジアゾ化−ザンドマイヤー反応による臭素化反応による方法が採用されている。しかしながら、この方法は、重金属である銅を等量用いる必要がある等、課題が多い。
【0018】
【化6】

【0019】
さらに、特許文献2には、下記の方法により9位に臭素置換アリール基を有するフルオレン化合物を得ることが記載されているが、この方法によれば、大量のポリリン酸中で加熱により環化反応を行う必要があり、良い合成方法とは言い難い。
【0020】
【化7】

【特許文献1】特開2007−119785号公報
【特許文献2】特開2006−069999号公報
【非特許文献1】K-T. Wong らJ.Am.Chem.Soc. 2002年、124巻、11576頁
【非特許文献2】O.NuykenらMacromol.Chem.Phys.2000年, 201巻, 2257頁
【非特許文献3】M.S.WongらOrganic Letters,2006年, 8巻, 1499頁
【非特許文献4】Organic Letters 2001年、3巻、2285頁
【非特許文献5】Macromol.Chem.Phys.2000年, 201巻, 2257頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、新規な方法によりフルオレン誘導体を合成することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム化合物と、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物とを反応させるにより、フルオレン骨格を有する化合物を簡便かつ高収率で製造することができることを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の発明を提供する。
項1. 芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物と、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物とを反応させて、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
項2. 前記芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物が下記一般式(1):
【0023】
【化8】

【0024】
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物であり、前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物が、下記一般式(2):
−CF−R (2)
[式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、R及びRの少なくとも一方は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物であり、前記フルオレン骨格を有する化合物が下記一般式(3):
【0025】
【化9】

【0026】
[式中、R、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物である項1に記載の製造方法。
項3. 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4):
【0027】
【化10】

【0028】
[式中、R4a及びR5aは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物、又は下記一般式(5):
【0029】
【化11】

【0030】
[式中、R4a、R5a、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物
である項2に記載の製造方法。
項4. 前記一般式(2)において、R又はRのいずれか一方がハロゲン原子であり、他方が置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基である項2に記載の製造方法。
項5. 有機アルミニウム化合物と、下記一般式(6):
【0031】
【化12】

【0032】
[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物
とを反応させて、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
項6. 前記有機アルミニウム化合物が、下記一般式(7):
Al(R (7)
[式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、3つのRのうち2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物であり、前記フルオレン骨格を有する化合物が、下記一般式(8):
【0033】
【化13】

【0034】
[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物である項5に記載の製造方法。
項7. 下記一般式(9):
【0035】
【化14】

【0036】
[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物、及び下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合して、下記一般式(1):
【0037】
【化15】

【0038】
[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じである。]
で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物を調製する方法。
項8. フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(9):
【0039】
【化16】

【0040】
[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物と、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(2):
−CF−R (2)
[式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、R及びRの少なくとも一方は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(3):
【0041】
【化17】

【0042】
[式中、R、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物を製造する方法。
項9. フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(12):
−X (12)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン含有化合物と下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(6):
【0043】
【化18】

【0044】
[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(8):
【0045】
【化19】

【0046】
[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表されるフルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
項10. フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(9a):
【0047】
【化20】

【0048】
[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
10及びR11は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物と、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(6):
【0049】
【化21】

【0050】
[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(8a):
【0051】
【化22】

【0052】
[式中、R、R、R10、R11、m及びnは前記に同じ。]
で表されるフルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、従来合成過程が煩雑であったり、収率の低かったフルオレン骨格を有する化合物を、簡便かつ高収率で製造することができる。特に、本発明においては、アルミニウムのフッ素選択性が高いため、原料フッ素化合物又はアルミニウム試薬の有機基上の望みの位置に予め反応性の置換基を導入しておくことができる。該反応性置換基を導入したフルオレン骨格を有する化合物を、さらに重合等することにより、有機半導体としての有用性が高いポリフルオレン誘導体を簡便かつ高収率で合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
I. 第1の実施態様
本発明の第1の実施態様は、芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物(以下、「2,2−ビフェニルアルミニウム化合物」ということがある)と、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物(以下、「フッ素化合物」ということがある)とを反応させて、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法である。以下、詳細に説明する。
【0055】
I−I. 2,2−ビフェニルアルミニウム化合物
本発明の第1の実施態様において、2,2−ビフェニルアルミニウム化合物は、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化23】

【0057】
一般式(1)において、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。
【0058】
一般式(1)のRで示される「置換されていてもよいアルキル基」のアルキル基としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜8アルキル基である。該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0059】
で示される「置換されていてもよいアリール基」のアリール基としては、例えば、1〜4環性のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、フルオレニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が例示される。
【0060】
該アリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該アリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0061】
で示される「置換されていてもよいヘテロアリール基」のヘテロアリール基としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有するアリール基が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基等が例示される。
【0062】
該ヘテロアリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該ヘテロアリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0063】
で示される「置換されていてもよいアラルキル基」のアラルキル基としては、例えば、2−フェニルエチル、ベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル等のC7〜C20アラルキル基などが挙げられる。該アラルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0064】
で示される「置換されていてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、1−ブテニル、イソブテニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルケニル基、好ましくはC2〜C12アルケニル基が挙げられる。該アルケニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルケニル基として、例えば、α又はβ-スチリル、2,2-ジフェニルビニル基等が挙げられる。
【0065】
で示される「置換されていてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−オクチニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルキニル基、好ましくはC2〜C12アルキニル基が挙げられる。該アルキニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルキニル基として、例えば、2−フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0066】
また、一般式(1)において、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示す。
【0067】
本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物をさらに重合等の反応に供する場合、これらのR及びRの中でも、ハロゲン原子、ボロン酸エステル基、保護されたアミノ基、保護されたカルボキシル基、保護された水酸基、保護されたシリル基、アジド基等が特に好ましい。さらに、これらの中でも、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0068】
一般式(1)において、R及びRで示される芳香環上の置換基の個数を示すm及びnは、同一又は異なって、通常、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1である。例えば、本発明の第1の実施態様で得られるフルオレン化合物が、R及びRで示される芳香環上の置換基をそれぞれ1つずつ有し、かつ、これらの置換基が反応性又は重合性を有する場合、本発明の第1の実施態様により得られるフルオレン化合物を重合等してポリフルオレン誘導体を簡便に製造することができる。
【0069】
また、R及びRで示される芳香環上の置換基が反応性又は重合性でない場合も、これらの置換基を重合性の置換基に変換(例えば、脱保護反応)した後、反応又は重合することにより、ポリフルオレン誘導体を得ることもできる。
【0070】
2,2−ビフェニルアルミニウム化合物の調製
本発明の第1の実施態様で使用する前記一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物は、下記一般式(9):
【0071】
【化24】

【0072】
[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、R、R、m及びnは前記一般式(1)のものと同じである。]
で表される2,2−置換ビフェニル化合物、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示し、Rは前記一般式(1)のものと同じである。]
で表される有機金属化合物、及び下記一般式(10):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合することにより調製することができる。
【0073】
一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物、一般式(10)で表される有機金属化合物、一般式(11)で表されるアルミニウム化合物の混合順序は特に限定されないが、一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物と一般式(10)で表される有機金属化合物とを混合して一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物中の置換基X及びXを金属Mに置換した後、これに一般式(11)で表されるアルミニウム化合物を加えることにより、一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物を調製するのがより好ましい。
【0074】
前記一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物において、X及びXで示されるハロゲン原子は、同一又は異なってF、Cl、Br、Iであり、好ましくはBr又はIである。
【0075】
また、上記一般式(10)で表される有機金属化合物のうち好適な具体例としては、Mがリチウムの場合、一般式(10a):
−Li (10a)
(式中、Rは前記一般式(1)のものと同じである。)
で表される化合物が挙げられる。特に、RがC1〜C12アルキル基、フェニル基、C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0076】
Mがホウ素の場合、一般式(10b):
(RB (10b)
(式中、Rは前記一般式(1)のものと同じである。)
で表される化合物が挙げられる。
【0077】
Mがマグネシウムの場合、一般式(10c):
−MgY (10c)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Rは前記一般式(1)のものと同じである。)
で表される化合物が挙げられる。Yで示されるハロゲン原子としては、Cl、Br又はIが挙げられ、好ましくはCl又はBrである。
【0078】
Mが亜鉛の場合、一般式(10d):
(RZn (10d)
(式中、Rは前記一般式(1)のものと同じである。)
で表される化合物が挙げられる。
【0079】
Mが銅の場合、一般式(10e):
(RCuLi、(RCuMgY、(RCuMgLiY、又はRCu・BF (10e)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Rは前記一般式(1)のものと同じである。)
で表される化合物が挙げられる。Yで示されるハロゲン原子としては、Cl、Br又はIが挙げられ、好ましくはCl又はBrである。
【0080】
上記の有機基を含む有機金属化合物のうち、好ましくは一般式(10a)〜(10d)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(10a)又は(10c)で表される化合物である。
【0081】
上記の有機基を含む有機金属化合物は、通常単離することは困難であるため、適切な溶液中で調製される。この調製方法は、いずれも公知の方法を採用することができる。
【0082】
一般式(11)で表されるアルミニウム化合物において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、C1〜C20アルキル基が挙げられる。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0083】
また、Rで示されるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが挙げられ、好ましくはCl又はBrである。
【0084】
一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物、一般式(10)で表される有機金属化合物及び一般式(11)で表されるアルミニウム化合物の混合割合は、一般式(11)で表されるアルミニウム化合物1モルに対し、一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物を通常1〜2モル程度、好ましくは1〜1.5モル程度の範囲、一般式(10)で表される有機金属化合物を通常3〜6モル程度、好ましくは3〜4.5モル程度の範囲として調製すればよい。
【0085】
また、この調製で用いられる溶媒としては非プロトン溶媒が用いられる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素等の塩素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、DME、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの中ではジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の低極性の溶媒が好ましく、さらにはジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素などの塩素系溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が最も好ましく用いられる。
【0086】
調製は、無水条件下、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0087】
調製温度は用いられるアルミニウムの活性、及び有機金属化合物の活性等に応じて適宜選択することができる。通常は、例えば−78℃から200℃程度、好ましくは−30℃から100℃程度の範囲であり、室温から用いる溶媒の沸点程度が用いられる。
【0088】
調製は、上記の反応温度で数分間から数日で終了する。調製の進行は種々の分析方法で評価でき、GLC、HPLC、TLC、NMR、IRなどの分析手段が有効である。
【0089】
I−II. フッ素化合物
本発明の第1の実施態様において、フッ素化合物とは、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物である。好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0090】
−CF−R (2)
一般式(2)において、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、R及びRの少なくとも一方は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基である。また、R及びRが置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0091】
及びRで示されるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが挙げられ、好ましくはF、Cl又はBrである。
【0092】
及びRで示される「置換されていてもよいアリール基」のアリール基としては、例えば、1〜4環性のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、フルオレニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が例示される。
【0093】
該アリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該アリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0094】
及びRで示される「置換されていてもよいヘテロアリール基」のヘテロアリール基としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有するアリール基が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基等が例示される。
【0095】
該ヘテロアリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該ヘテロアリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0096】
なお、上記一般式(2)で表される化合物は、市販されているか或いは公知の方法に準じて当業者が容易に製造することができる。
【0097】
一般式(2)で表されるフッ素化合物の中でも、好ましい具体例としては、下記一般式(4):
【0098】
【化25】

【0099】
で表される化合物、及び下記一般式(5):
【0100】
【化26】

【0101】
で表される化合物が挙げられる。
【0102】
一般式(4)及び(5)において、R4a及びR5aは同一又は異なって、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示す。
【0103】
本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物をさらに重合等の反応に供する場合、これらのR4a及びR5aの中でもハロゲン原子、ボロン酸エステル基、保護されたアミノ基、保護されたカルボキシル基、保護された水酸基、保護されたシリル基、アジド基等が特に好ましい。
【0104】
一般式(4)及び(5)において、R4a及びR5aで示される芳香環上の置換基の個数を示すm及びnは、同一又は異なって、通常、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1である。例えば、本発明の第1の実施態様で得られるフルオレン化合物が、R4a及びR5aで示される芳香環上の置換基をそれぞれ1つずつ有し、かつ、これらの置換基が反応性又は重合性を有する場合、本発明の第1の実施態様により得られるフルオレン化合物を重合等してポリフルオレン誘導体を簡便に製造することができる。
【0105】
また、R4a及びR5aで示される芳香環上の置換基が反応性又は重合性でない場合も、これらの置換基を重合性の置換基に変換(例えば、脱保護反応)した後、反応又は重合することにより、ポリフルオレン誘導体を得ることもできる。
【0106】
I−III. フルオレン骨格を有する化合物
本発明の第1の実施態様の製造方法により得られるフルオレン化合物は、好ましくは、前記の通り、下記一般式(3):
【0107】
【化27】

【0108】
で表される化合物である。
【0109】
一般式(3)においてR、R、R、R、m及びnは、前記一般式(1)及び一般式(2)のものと同じである。
【0110】
本発明の第1の実施態様によれば、芳香環上に置換基を有する前記2,2−ビフェニルアルミニウム化合物及び/又は前記フッ素化合物を原料として使用することにより、芳香環上の望みの位置に置換基が導入された一般式(3)で表されるフルオレン化合物が得られる。このような化合物は、モノマーとしての有用性が極めて高く、重合によりポリフルオレン誘導体に導くことができる。
【0111】
また、原料フッ素化合物として、前記一般式(4)で表される化合物、又は前記一般式(5)で表される化合物を使用した場合、得られるフルオレン化合物は、それぞれ下記一般式(3a)で表される化合物及び下記一般式(3b)で表される化合物である。
【0112】
【化28】

【0113】
【化29】

【0114】
一般式(3a)及び(3b)においてR、R、R4a、R5a、m及びnは、前記一般式(1)、一般式(4)及び一般式(5)のものと同じである。
【0115】
I−IV. 製造方法
本発明の第1の実施態様の製造方法では、前記芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物と、前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物(「原料フッ素化合物」ということもある)とを適切な溶媒中で反応させて行う。
【0116】
本反応で用いられる反応溶媒としては非プロトン溶媒が用いられる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素等の塩素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、DME、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの中ではジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの低極性の溶媒が好ましく、さらにはジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素などの塩素系溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が最も好ましく用いられる。
【0117】
2,2−ビフェニルアルミニウム化合物の使用量は、原料フッ素化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル程度、好ましくは1〜10モル程度、さらに好ましくは2〜5モル程度の範囲である。
【0118】
反応における原料フッ素化合物の濃度は、通常0.01〜10モル/L程度、好ましくは0.1〜5モル/L程度である。
【0119】
原料フッ素化合物、2,2−ビフェニルアルミニウム化合物及び溶媒の混合順序は特に限定されない。好ましくは、溶媒と2,2−ビフェニルアルミニウム化合物の混合物に原料フッ素化合物を加える方法、溶媒と原料フッ素化合物の溶液に2,2−ビフェニルアルミニウム化合物を加える方法が挙げられる。
【0120】
反応は、無水条件下、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0121】
反応温度は用いられるルイス酸として機能するアルミニウムの活性等に応じて適宜選択することができる。通常は、例えば−78℃から200℃程度、好ましくは−30℃から100℃の範囲であり、室温から用いる溶媒の沸点程度が用いられる。
【0122】
本発明の反応は、上記の反応温度で数分間から数日で終了する。反応の進行は種々の分析方法で評価でき、GLC、HPLC、TLC、NMR、IRなどの分析手段が有効である。
【0123】
反応終了後は、通常の精製工程を経て、前記フルオレン化合物が得られる。該化合物の精製工程は公知の方法を採用でき、例えば、反応液に必要に応じて有機溶媒を加えて抽出し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法で精製できる。
【0124】
本発明の第1の実施態様においては、原料フッ素化合物に、前記一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物、一般式(10)で表される有機金属化合物及び一般式(11)で表されるアルミニウム化合物とを混合することによってもフルオレン化合物を得ることができる。
【0125】
この場合の各試薬の混合順序は特に限定されないが、好ましくは、前記一般式(9)で表される2,2−置換ビフェニル化合物と、前記一般式(10)で表される有機金属化合物とを混合する工程1、
工程1で得られた溶液と前記一般式(11)で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程2、及び
工程2で得られた溶液と前記一般式(2)で表されるフッ素化合物とを混合する工程3
を含む方法により、一連の工程(in situ)で目的とする前記一般式(3)で表されるフルオレン化合物を製造することができる。
【0126】
この場合、反応系中で前記一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物が一旦生成し、これが前記一般式(2)で表されるフッ素化合物と反応して前記一般式(3)で表されるフルオレン化合物が生成している場合と、一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物が明確には形成されずに、前記一般式(3)で表されるフルオレン化合物が生成している場合とが考えられるが、前記一般式(3)で表されるフルオレン化合物が得られれば、いずれの反応形式で反応が進行してもよい。
【0127】
また、本発明の第1の実施態様の製造方法において、一般式(2)で表されるフッ素化合物のR又はRのいずれか一方がハロゲン原子であり、他方が置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基である場合は、得られるフルオレン化合物の9位にR又はRで示される「置換されていてもよいアリール基」又は「置換されていてもよいヘテロアリール基」と、H原子とが結合した化合物が得られる。
【0128】
例えば、一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物を使用した場合、下記一般式(3c)で示される化合物が得られる。
【0129】
【化30】

【0130】
一般式(3c)において、R、R、R、R、m及びnは、前記一般式(1)及び(2)のものと同じである。また、R or Rとは、R又はRのいずれかがフルオレン骨格の9位に結合していることを示す。
【0131】
また、上記の場合、前記一般式(3c)で表されるフルオレン化合物に加えて、前記一般式(10)で表される有機金属化合物、前記一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物由来の基がフルオレン骨格の9位に結合した、下記一般式(3d)及び(3e)のようなフルオレン化合物が生成することがある。
【0132】
【化31】

【0133】
【化32】

【0134】
一般式(3d)及び(3e)において、R、R、R、R、R、m及びnは、前記一般式(1)及び(2)のものと同じである。また、R or Rとは、R又はRのいずれかがフルオレン骨格の9位に結合していることを示す。これらの化合物も、フルオレン骨格を有するので、有機半導体への応用が可能である。
【0135】
II.第2の実施態様
本発明の第2の実施態様は、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法であって、有機アルミニウム化合物と、下記一般式(6):
【0136】
【化33】

【0137】
[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物とを反応させることを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0138】
II−I. 有機アルミニウム化合物
本発明の第2の実施態様において、有機アルミニウム化合物は、好ましくは下記一般式(7):
Al(R (7)
で表される化合物である。
【0139】
一般式(7)において、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。また、3つのRのうち2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0140】
一般式(7)のRで示される「置換されていてもよいアルキル基」のアルキル基としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜8アルキル基である。該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0141】
で示される「置換されていてもよいアリール基」のアリール基としては、例えば、1〜4環性のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、フルオレニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が例示される。
【0142】
該アリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該アリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0143】
で示される「置換されていてもよいヘテロアリール基」のヘテロアリール基としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有するアリール基が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基等が例示される。
【0144】
該ヘテロアリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基等が例示される。該ヘテロアリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0145】
で示される「置換されていてもよいアラルキル基」のアラルキル基としては、例えば、2−フェニルエチル、ベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル等のC7〜C20アラルキル基などが挙げられる。該アラルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0146】
で示される「置換されていてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、1−ブテニル、イソブテニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルケニル基、好ましくはC2〜C12アルケニル基が挙げられる。該アルケニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルケニル基として、例えば、α又はβ-スチリル、2,2-ジフェニルビニル基等が挙げられる。
【0147】
で示される「置換されていてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−オクチニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルキニル基、好ましくはC2〜C12アルキニル基が挙げられる。該アルキニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルキニル基として、例えば、2−フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0148】
3つのRのうち2つのRが互いに結合して環を形成している場合、該結合は、単結合、アルキレン結合、ヘテロ原子(O、N、S等)を介した結合のいずれであってもよい。
【0149】
3つのRのうち2つのRが互いに結合して環を形成している場合の具体例としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
【0150】
【化34】

【0151】
一般式(1a)において、Rは前記一般式(7)のものと同じである。
【0152】
また、一般式(1a)において、R10及びR11は同一又は異なって、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示す。
【0153】
本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物をさらに重合等の反応に供する場合、これらのR10及びR11の中でも、ハロゲン原子、ボロン酸エステル基、保護されたアミノ基、保護されたカルボキシル基、保護された水酸基、保護されたシリル基、アジド基等が特に好ましい。さらに、これらの中でも、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0154】
一般式(1a)において、R10及びR11で示される芳香環上の置換基の個数を示すm及びnは、同一又は異なって、通常、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1である。例えば、本発明の第2の実施態様で得られるフルオレン化合物が、R10及びR11で示される芳香環上の置換基をそれぞれ1つずつ有し、かつ、これらの置換基が反応性又は重合性を有する場合、本発明の第2の実施態様により得られるフルオレン化合物を重合等してポリフルオレン誘導体を簡便に製造することができる。
【0155】
また、R10及びR11で示される芳香環上の置換基が反応性又は重合性でない場合も、これらの置換基を重合性の置換基に変換(例えば、脱保護反応)した後、反応又は重合することにより、ポリフルオレン誘導体を得ることもできる。
【0156】
アルミニウム化合物の調製
一般式(7)及び一般式(1a)で表されるAl上に有機基を有するアルミニウム化合物は市販あるいは合成により容易に入手可能であり、Al上の有機基に置換基を有する多くの化合物も市販あるいは合成により入手できる。第2の実施態様におけるアルミニウム化合物の調製方法は、前記第1の実施態様の2,2−ビフェニルアルミニウム化合物の調製方法と同じである。
【0157】
第2の実施態様において、例えば有機半導体材料で有効な芳香族基やヘテロ芳香族基を有するものは、前記一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物と同様、適当な非極性溶媒中で、対応する芳香族化合物のハロゲン誘導体、ヘテロ芳香族化合物、該ヘテロ芳香族化合物のハロゲン誘導体を有機リチウム等の金属原子で一旦金属化した後に、ハロゲン化アルミニウム等を加えることにより容易に調製できる。具体例として、トリフリルアルミニウムの調製法を下記式に示す。
【0158】
【化35】

【0159】
また、一般式(1a)で表されるアルミニウム化合物についても、前記一般式(1)で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物と同様な方法により調製できる。
【0160】
一般式(1a)で表されるアルミニウム化合物は、例えば、下記一般式(9a):
【0161】
【化36】

【0162】
[式中、X、X、R10、R11、m及びnは一般式(9)及び一般式(1a)のものと同じである。]
で表される化合物、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、R、Mは前記に同じである。]
で表される有機金属化合物、及び下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは前記に同じである。]
で表されるアルミニウム化合物を混合することにより調製することができる。
【0163】
II−II. フッ素化合物
本発明の第2の実施態様において使用されるフッ素化合物は、下記一般式(6):
【0164】
【化37】

【0165】
で表される化合物である。
【0166】
一般式(6)において、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)、保護されていてもよいアミノ基(−NH、−NHCH、−NCHPh等)、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示す。
【0167】
本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物をさらに重合等の反応に供する場合、これらのR及びRの中でも、ハロゲン原子、ボロン酸エステル基、保護されたアミノ基、保護されたカルボキシル基、保護された水酸基、保護されたシリル基、アジド基等が特に好ましい。さらに、これらの中でも、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0168】
一般式(6)において、R及びRで示される芳香環上の置換基の個数を示すm及びnは、同一又は異なって、通常、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1である。例えば、本発明の第2の実施態様で得られるフルオレン化合物が、R及びRで示される芳香環上の置換基をそれぞれ1つずつ有し、かつ、これらの置換基が反応性又は重合性を有する場合、本発明の第2の実施態様により得られるフルオレン化合物を重合等してポリフルオレン誘導体を簡便に製造することができる。
【0169】
また、R及びRで示される芳香環上の置換基が反応性又は重合性でない場合も、これらの置換基を重合性の置換基に変換(例えば、脱保護反応)した後、反応又は重合することにより、ポリフルオレン誘導体を得ることもできる。
【0170】
II−III. フルオレン骨格を有する化合物
本発明の第2の実施態様の製造方法により得られるフルオレン骨格を有する化合物は、前記の通り、下記一般式(8)で示される化合物である。
【0171】
【化38】

【0172】
一般式(8)において、R、R、R、m及びnは同一又は異なって、前記一般式(6)及び一般式(7)のものと同じである。
【0173】
本発明の第2の実施態様によれば、芳香環上に置換基を有するアルミニウム化合物及び/又はフッ素化合物を原料として使用することにより、芳香環上の望みの位置に置換基が導入された一般式(8)で表される化合物が得られる。このような化合物は、モノマーとしての有用性が極めて高く、重合によりポリフルオレン誘導体に導くことができる。
【0174】
また、本発明の第2の実施態様において、例えば一般式(1a)で示されるアルミニウム化合物を使用した場合、下記一般式(8a)で示される化合物が得られる。
【0175】
【化39】

【0176】
一般式(8a)において、R、R、R10、R11、m及びnは同一又は異なって、前記一般式(1a)及び一般式(6)のものと同じである。
【0177】
II−IV. 製造方法
本発明の第2の実施態様の製造方法では、有機アルミニウム化合物と前記一般式(6)で表されるフッ素化合物とを適切な溶媒中で反応させて行う。
【0178】
本反応で用いられる反応溶媒は、前記第1の実施態様の製造方法で使用できるものと同じである。
【0179】
また、有機アルミニウム化合物の使用量は、原料フッ素化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル程度、好ましくは1〜10モル程度、さらに好ましくは2〜5モル程度の範囲である。
【0180】
反応における原料フッ素化合物の濃度は、通常0.01〜10モル/L程度、好ましくは0.1〜5モル/L程度である。
【0181】
原料フッ素化合物、有機アルミニウム化合物及び溶媒の混合順序は特に限定されない。好ましくは、溶媒と有機アルミニウム化合物の混合物に原料フッ素化合物を加える方法、溶媒と原料フッ素化合物の溶液に有機アルミニウム化合物を加える方法が挙げられる。
【0182】
反応は、無水条件下、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0183】
反応温度は用いられるルイス酸として機能するアルミニウムの活性等に応じて適宜選択することができる。通常は、例えば−78℃から200℃程度、好ましくは−30℃から100℃の範囲であり、室温から用いる溶媒の沸点程度が用いられる。
【0184】
本発明の反応は、上記の反応温度で数分間から数日で終了する。反応の進行は種々の分析方法で評価でき、GLC、HPLC、TLC、NMR、IRなどの分析手段が有効である。
【0185】
反応終了後は、通常の精製工程を経て、前記一般式(8)で表されるフルオレン化合物が得られる。該化合物の精製工程は公知の方法を採用でき、例えば、反応液に必要に応じて有機溶媒を加えて抽出し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法で精製できる。
【0186】
本発明の第2の実施態様においては、下記一般式(12):
−X (12)
で表されるハロゲン含有化合物と、前記第1の実施態様の一般式(10)で表される有機金属化合物、及びアルミニウム化合物とを混合することによっても一般式(8)で表されるフルオレン化合物を得ることができる。
【0187】
一般式(12)において、Rで示される基は、前記一般式(7)の「置換されていてもよいアルキル基」、「置換されていてもよいアリール基」、「置換されていてもよいヘテロアリール基」、「置換されていてもよいアラルキル基」、「置換されていてもよいアルケニル基」、又は「置換されていてもよいアルキニル基」と同じである。
【0188】
また、一般式(12)において、Xはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが挙げられ、好ましくはCl、Br又はIである。
【0189】
アルミニウム化合物は、前記第1の実施態様の一般式(11)で表される化合物を使用すればよい。
【0190】
この場合、各試薬の混合順序は特に限定されないが、好ましくは、前記一般式(12)で表されるハロゲン含有化合物と、前記一般式(10)で表される有機金属化合物とを混合する工程1、
工程1で得られた溶液と前記一般式(11)で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程2、及び
工程2で得られた溶液と前記一般式(6)で表されるフッ素化合物とを混合する工程3
を含む方法により、一連の工程(in situ)で目的とする前記一般式(8)で表されるフルオレン化合物を製造することができる。
【0191】
この場合、反応系中で前記有機アルミニウム化合物が一旦生成し、これが前記一般式(6)で示されるフッ素化合物と反応して前記一般式(8)で表されるフルオレン化合物が生成している場合と、前記有機アルミニウム化合物が明確には形成されずに、前記一般式(8)で表されるフルオレン化合物が生成している場合とが考えられるが、前記一般式(8)で表されるフルオレン化合物が得られればいずれの反応形式で反応が進行してもよい。
【0192】
また、一般式(12)で表されるハロゲン含有化合物の代わりに、前記一般式(9a)で表されるハロゲン含有化合物を使用しても、同様に一連の工程(in situ)で、目的とする前記一般式(8a):
【0193】
【化40】

【0194】
[式中、R、R、R10、R11、m及びnは前記に同じ。]
で表されるフルオレン化合物を製造することができる。
【0195】
III. 使用方法
前記の通り、本発明の製造方法により得られるフルオレン化合物は、原料フッ素化合物及び/又はアルミニウム化合物の有機基上の望みの位置に置換基を導入しておくことができる。よって、本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物が重合性の置換基(例えば、ハロゲン基、ボロン酸、ボロン酸エステル等)を有する場合、又は該化合物の置換基(保護基等)を重合性置換基に変換した場合、これらの化合物を重合することにより、有機半導体としての有用性が高いポリフルオレン誘導体を簡便かつ高収率に合成することができる。
【0196】
本発明の製造方法により得られたフルオレン化合物を重合してポリフルオレン誘導体を得る方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、WO00/53656に開示されるスズキ重合、Macromolecules, 31, 1099−1103(1988)に開示されるヤマモト重合等を用いることができる。スズキ重合は、ハロゲン基及びボロン誘導配位基のカップリングを伴う。ヤマモト重合は、ハロゲン基のカップリングを伴う。したがって、例えば、ヤマモト重合を想定する場合、フルオレン化合物に予め導入する重合性の置換基としては、ハロゲン基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボラン基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0197】
以上の通り、本願発明の製造方法によって得られるフルオレン化合物をこれらの方法により重合する場合、アルミニウム化合物の有機基上及び/又は原料フッ素化合物の芳香環上に、ハロゲン基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボラン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性の置換基を導入しておけばよい。
【0198】
本発明の製造方法により得られる一般式(3)、一般式(8)等で表されるフルオレン化合物を重合してポリフルオレン誘導体を得る場合、該フルオレン化合物を1種単独で重合してもよいし、2種以上を混合して重合してもよい。
【0199】
ポリフルオレン誘導体の平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、良好な機械的特性が得られる点で、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算重量平均分子量が、2000〜1000000であることが好ましく、特に良好な溶解性および加工特性が得られる点で、5000〜500000であることが好ましい。
【実施例】
【0200】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を明確にする。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0201】
実施例1(2,2−ビフェニルアルミニウムの調製と9,9−ジフルオロフルオレンの脱フッ素ビフェニル化反応によるスピロビフルオレンの合成)
2,2−ジヨードビフェニル(2mmol)とn-ブリルリチウム(6mmol)をヘキサン中で室温下に1時間攪拌して、2,2−ジリチオビフェニルを調製した。これに臭化アルミニウム(1.8mmol)を加えて、室温で30分間攪拌することで、2,2−ビフェニルアルミニウムのヘキサン溶液を調製した。この溶液に9,9−ジフルオロフルオレン(0.45mmol)を滴下して、室温で1時間攪拌した。反応液を1N塩酸で後処理し、生成物をGLCで分析したところ、スピロビフルオレンが27%収率で得られていた。
【0202】
【化41】

【0203】
MS m/z 316 (M+).
1H-NMR(CDCl3):δ 6.72 (d, J=7.6Hz, 4H), 7.06-7.11 (m, 4H), 7.30 - 7.37 (m, 4H), 7.83 (d, J=7.6Hz, 4H).
13C-NMR(CDCl3):δ 65.92, 119.95, 124,01, 127.67, 127.78, 141.73, 148.74。
【0204】
実施例2(2,2−ビフェニルアルミニウムとジフェニルジフルオロメタンの脱フッ素ビフェニル化反応)
実施例1と同様にして調製した2,2−ビフェニルアルミニウム(0.4mmol)のヘキサン溶液に、ジフェニルジフルオロメタン(0.2mmol)を滴下して、室温で30分間攪拌した。1N塩酸で後処理後、生成物のGLC分析から9,9-ジフェニルフルオレンが38%収率で得られていることが確認された。
【0205】
【化42】

【0206】
MS m/z 318 (M+), 241 (M-C6H5).
1H-NMR(CDCl3):δ 7.10-7.60 (m, 16H), 7.76 (d, J=7.6Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 65.48, 120.13, 126.20, 126.60, 127.44, 127.69, 128.13, 128.18, 140.14, 145.93, 151.14。
【0207】
実施例3(2,2−ビフェニルアルミニウムと4−メトキシベンゾトリフロリドの脱フッ素ビフェニル化反応)
実施例1と同様にして調製した2,2−ビフェニルアルミニウム(2mmol)のヘキサン溶液に、4−メトキシベンゾトリフロリド(0.5mmol)を滴下して、室温で30分間攪拌した。1N塩酸で後処理後、生成物のGLC分析から9−(4−メトキシフェニル)フルオレンが6%収率、9−(4−メトキシフェニル)−9−ブチルフルオレンが2%収率、9−(4−メトキシフェニル)−9−ビフェニルフルオレンが11%収率で得られていることが確認された。
【0208】
【化43】

【0209】
9−(4−メトキシフェニル)フルオレン:
MS m/z 272 (M+), 241 (M-OCH3), 165 (M-CH3OPh).
9−(4−メトキシフェニル)−9−ブチルフルオレン:
MS m/z 328 (M+), 271 (M-C4H9).
9−(4−メトキシフェニル)−9−(2−ビフェニル)フルオレン:
MS m/z 422 (M+), 271 (M-C8H9)。
【0210】
実施例4
窒素雰囲気下で、J.Org.Chem.1983年, 48巻,1449頁記載の方法に従い調製した4−ブロモフェニルリチウム(3mmol)のヘキサン溶液(3mL)に臭化アルミニウム (1mmol)を加え、室温で30分間攪拌してトリス(4−ブロモフェニル)アルミニウム試薬を調製した。この溶液に9,9−ジフルオロフルオレン(0.2mmol)のベンゼン溶液(6mL)を滴下し、室温で1時間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLCにより分析して、9,9−ビス(4−ブロモフェニル)フルオレンが15%で生成していることを確認した。
【0211】
【化44】

【0212】
MS m/z 478 (M+4), 474 (M+), 398, 396 (M+H-Br), 322, 320 (M+H-C6H4Br).
1H-NMR(CDCl3):δ 7.05 (d, J=8.5Hz, 4H), 7.25-7.40 (m, 10H), 7.76 (d, J=7.5Hz, 2H)。
【0213】
実施例5
窒素雰囲気下で二径フラスコ中に入れたn-BuLi(1Mヘキサン溶液)3mL(3mmol)中に、−78℃でヨードベンゼン(612mg, 3mmol)を滴下した。この溶液を、室温で1時間攪拌した。ここで得られたフェニルリチウム溶液を−78℃に冷却し、窒素気流下で臭化アルミニウム267mg(1mmol)を加えて攪拌した。さらにこの溶液に塩化メチレン3mLを加え−78℃で24時間攪拌した。ここで得られたトリフェニルアルミニウム溶液に、攪拌下に室温で、9,9−ジフルオロ−2,7−ジブロモフルオレン(0.2mmol)のベンゼン溶液(6mL)を加えた。この反応液をこの温度で1時間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLC分析から、9,9−ジフェニル−2,7−ジブロモフルオレンが12%収率で得られたことを確認した。
【0214】
【化45】

【0215】
MS m/z 476 (M+2), 474 (M+), 399 (M-C6H5).
1H-NMR(CDCl3):δ 7.14-7.17 (m, 4H), 7.25-7.28 (m, 6H), 7.49 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.50 (s, 2H), 7.60 (d, J=8.0Hz, 2H)。
【0216】
実施例6
実施例4と同様にして調製したトリス(4−ブロモフェニル)アルミニウム試薬のヘキサン溶液(3mL)に、9,9−ジフルオロ−2,7−ジブロモフルオレン(0.2mmol)のベンゼン溶液(6mL)を滴下し、室温で1時間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLCにより分析して、9,9−ビス(4−ブロモフェニル)−2,7−ジブロモフルオレンが10%で生成していることを確認した。
【0217】
【化46】

【0218】
MS m/z 636 (M+6), 630 (M+), 555 (M-Br), 479 (M-BrC6H4).
1H-NMR(CDCl3):δ7.06 (d, J=8.5Hz, 4H), 7.48 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.50 (s, 2H), 7.60 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.75 (d, J=8.5Hz, 4H)。
【0219】
実施例7(2,2−ビフェニルアルミニウムとジフェニルジフルオロメタンの脱フッ素ビフェニル化反応)
実施例1と同様にして調製した2,2−ビフェニルアルミニウム(0.4mmol)のヘキサン溶液に、9,9−ジフルオロ−2,7−ジブロモフルオレン(0.2mmol)を滴下して、室温で30分間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLC分析から、2,7−ジブロモスピロビフルオレンが68%収率で得られていることが判った。
【0220】
【化47】

【0221】
MS m/z 477 (M+5), 475 (M+3),
473 (M+1), 396 (M+3-Br), 394(M+1-Br), 334, 314 .
1H-NMR(CDCl3):δ6.72 (d, J=7.5Hz, 2H), 6.85 (s, 2H), 7.06 - 7.11 (m, 2H), 7.33 - 7.37 (m, 2H), 7.50 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.65 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.83 (d, J=7.5Hz, 2H)。
【0222】
実施例8
実施例1と同様にして調製した2,2−ビフェニルアルミニウム(0.4mmol)のヘキサン溶液に、ビス(4−ジブロモフェニル)ジフルオロメタン(0.2mmol)を滴下して、室温で1時間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLC分析から、9,9−ビス(4−ブロモフェニル)フルオレンが38%収率で得られていることを確認した。
【0223】
【化48】

【0224】
実施例9(トリフリルアルミニウムの調製と9,9-ビス(フリル)フルオレンの合成)
フラン(2.4mmol)のヘキサン溶液(3mL)に1.6M n-ブチルリチウム(2.4mmol)のヘキサン溶液を−78℃で滴下し、室温で1時間攪拌した。この溶液に臭化アルミニウム(0.8mmol)を加えて、さらに室温で30分間攪拌した。この溶液に9,9-ジフルオロフルオレン(0.2mmol)のヘキサン溶液(1mL)を加えて、室温で1時間攪拌した。
【0225】
【化49】

【0226】
後処理後、同様にGLCとGC−MSによる分析から、9,9-ビス(フリル)フルオレン(10%)と9-(フリル)フルオレン(15%)を確認した。
9,9-ビス(フリル)フルオレン:
MS m/z 298 (M+), 231 (M-C4H3O).
9-(フリル)フルオレン:
MS m/z 231 (M+), 230 (M-1)。
【0227】
実施例10(2,2−ビフェニルアルミニウムとジフェニルジフルオロメタンの脱フッ素ビフェニル化反応)
2,2−ビフェニルアルミニウム(0.4mmol)を以下の方法で調製した。トルエン−ヘキサン(1:1)溶液(5mL)中、2,2-ジヨードビフェニル(0.4mmol)とt-ブチルリチウム(1.2mmol)を室温で1時間攪拌し、この溶液に臭化アルミニウム(0.4mmol)を加えて、室温で30分間攪拌した。これにジフェニルジフルオロメタン(0.2mmol)のトルエン−ヘキサン(1:1)溶液(5mL)を1時間掛けてゆっくりと滴下し、室温で30分間攪拌した。後処理後、反応液のGC-MS及びGLC分析から9,9-ジフェニルフルオレンが73%収率で得られていることを確認した。この様に収率が向上した原因は、トルエンを加える事で基質の溶解度が挙がり、さらに薄い溶液で反応することで副反応が抑えられたためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物と、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物とを反応させて、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記芳香環上に置換基を有していてもよい2,2−ビフェニルアルミニウム化合物が下記一般式(1):
【化1】

[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物であり、前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に2個以上のフッ素原子を有する化合物が、下記一般式(2):
−CF−R (2)
[式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、R及びRの少なくとも一方は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物であり、前記フルオレン骨格を有する化合物が下記一般式(3):
【化2】

[式中、R、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4):
【化3】

[式中、R4a及びR5aは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物、又は下記一般式(5):
【化4】

[式中、R4a、R5a、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物
である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(2)において、R又はRのいずれか一方がハロゲン原子であり、他方が置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
有機アルミニウム化合物と、下記一般式(6):
【化5】

[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物
とを反応させて、フルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
【請求項6】
前記有機アルミニウム化合物が、下記一般式(7):
Al(R (7)
[式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、3つのRのうち2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物であり、前記フルオレン骨格を有する化合物が、下記一般式(8):
【化6】

[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(9):
【化7】

[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物、及び下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合して、下記一般式(1):
【化8】

[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じである。]
で表される2,2−ビフェニルアルミニウム化合物を調製する方法。
【請求項8】
フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(9):
【化9】

[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物と、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(2):
−CF−R (2)
[式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示し、R及びRの少なくとも一方は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(3):
【化10】

[式中、R、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表される化合物を製造する方法。
【請求項9】
フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(12):
−X (12)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン含有化合物と下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(6):
【化11】

[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(8):
【化12】

[式中、R、R、R、m及びnは前記に同じ。]
で表されるフルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。
【請求項10】
フルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
工程1:下記一般式(9a):
【化9】

[式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、
10及びR11は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物と、下記一般式(10):
−M (10)
[式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、
Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。]で表される有機金属化合物とを混合する工程、
工程2:工程1で得られた溶液と下記一般式(11):
Al(R (11)
[式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
で表されるアルミニウム化合物とを混合する工程、
工程3:工程2で得られた溶液と下記一般式(6):
【化11】

[式中、R及びRは同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基、保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基、カルボニル基、ニトリル基、アジド基、ボロン酸エステル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいシリル基を示し、
m及びnは同一又は異なって、0〜4の整数である。]
で表される化合物とを混合する工程
を含む下記一般式(8a):
【化12】

[式中、R、R、R10、R11、m及びnは前記に同じ。]
で表されるフルオレン骨格を有する化合物を製造する方法。

【公開番号】特開2010−138088(P2010−138088A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314566(P2008−314566)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】