説明

フルオレン誘導体

本発明は、フルオレン骨格にカルボニル基を介してグアニジノ基等の官能基が結合した構造、に特徴を有する新規フルオレン誘導体又はその塩に関する。 本発明化合物はセロトニン受容体のサブタイプの中でも特に5−HT2B受容体及び5−HT受容体に親和性が高く、5−HT2B受容体または5−HT受容体の拮抗活性を一方のみ有する従来化合物と比較して優れた薬理作用を示すという利点を有することから、効果に優れ安全性の高い片頭痛の予防薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、医薬、特に片頭痛の予防薬として有用なフルオレン誘導体に関する。
【背景技術】
片頭痛は周期的に起こる拍動性の頭痛であり、頭の片側又は両側に強い痛みが発生し数時間から3日間程度持続する疾患である。この片頭痛は次のような発症機序で病態が進行することが示唆されている。まず、5−HT(セロトニン)等の神経伝達物質の作用により硬膜血管がいったん収縮した後、再び拡張が起こり、この際CGRP等の血管作動性ペプチドや血漿蛋白を放出して炎症が進行し、頭痛への発症と繋がる。
片頭痛を標的とした医薬は、予防薬と治療薬に二分される。前者は発症前に予防的に連投することで、発作頻度を減らすことが目的であり、後者は発作発現後に服用し痛みを抑えることが目的である。特に予防薬としては、ロメリジン、フルナリジン等のCa拮抗剤、ピゾチフェン、メチセルジド等のセロトニン拮抗剤、プロプラノロール等のβ遮断薬等が一部の国で臨床に用いられているが、いずれも多くの副作用が報告されており、十分な臨床効果が得られていない。
上記の予防薬の中のセロトニン拮抗剤であるピゾチフェンに関しては、有効性が他剤と比較して高いものの、有効投与量で疲労感、眠気、めまい、体重増加などの副作用が見られることが問題となっている(J.Neurol.(1991)238,S45−S52)。当該化合物は、5−HT受容体サブタイプいずれに対しても親和性を有し、かつα、M及びD等の様々な受容体に対しても親和性が高いことが知られている。
5−HTはモノアミン神経伝達物質であり、5−HT受容体を介して様々な生理的作用を発現する。5−HT受容体は5−HTから5−HTの7つのファミリーに分類され、特に5−HT受容体は5−HT2A、5−HT2B及び5−HT2Cの三種類のサブタイプが知られている(Pharmacol.Rev.(1994)46,157−203)。片頭痛の発症についてはこの5−HTが深く関わっていることが示唆されている(Headache(1994)34,408−417)。さらに、5−HT受容体拮抗作用を有する薬剤が片頭痛の予防に有効である事が報告されている(Prog.Drug.Res.(1998)51,219−244)。
近年5−HT受容体サブタイプの薬理学的研究が進められてきた。例えば、5−HT2B受容体アンタゴニストはモルモットmCPP誘発硬膜血管外蛋白漏出を抑制すること(Cephalalgia(2003)23,117−123)が、また、血管平滑筋上に局在する5−HT2B受容体はNO遊離を引き起こし、NOは三叉神経からのCGRPやサブスタンスP等の神経ペプチドの遊離を促進すること(J.Biol.Chem.(2000)275,9324−9331、Circ.Res.(1992)70,1313−1319)が報告されている。更に、5−HT2B受容体に選択的な結合親和性を有する化合物(RS−127445)を用いた動物モデルの試験で、片頭痛の予防作用を示唆する結果が得られている(D.W.Bonhaus著,Clustar Headache and Related Conditions,第9巻(英国)Oxford University Press(1999),278−286)。
また、5−HT受容体は三叉神経に存在し(Neurosci.Lett.(2001)302,9−12)、脳血管平滑筋において5−HTによる血管拡張に関与している(Eur.J.Pharmacol.(2002)439,1−11)、或いは硬膜血管外蛋白漏出促進作用に関与している(Regiona.l Anesth.(1996)21,219−225)との報告がある。
別の報告では、5−HT1D、5−HT2Bおよび5−HT受容体は硬膜血管に存在することが記載されている(FEBS Lett.(1995)370,215−221)。
このように、5−HT受容体サブタイプと片頭痛発症との薬理学的関係が研究されているが、片頭痛予防に有効な標的としてのサブタイプを明確に特定するには至っていない。
一方、これまでに5−HT2B受容体に選択的な結合親和性を有する5−HT2B受容体拮抗化合物(以下、5−HT2B選択的拮抗化合物と略記する)が知られており、例えば、RS−127445(British Journal of Pharmacology(1999)127,1075−1082)、LY−266097(J.Serotonin Res.(1996)3,131)、SB−200646(J.Med.Chem.(1993)36,1104)、SB−204741(J.Med.Chem.(1995)38,855)、SB−206553(J.Med.Chem.(1996)39,2773)、SB−221284(9th RSC−SCI Medicinal Chemistry Symposium(1997)P1(Poster),7 Sep)、EGIS−7625(Cardiovascular Drugs and Therapy(2003)17,427−434、4−(チオ若しくはセレノキサンテン−9−イリデン)ピペリジン又はアクリジン誘導体(US2003166672)、2−オキサゾールアミン誘導体(WO2003068226)、2−チアゾールアミン誘導体(WO2003068227)等が挙げられる。
また、5−HT受容体に選択的な結合親和性を有する5−HT受容体拮抗化合物(以下、5−HT選択的拮抗化合物と略記する)が知られており、例えば、DR−4004(J.Med.Chem.(1999)42,533)、SB−269970(J.Med.Chem.(2000)43,342−345)、SB−691673(Bioorg.Med.Chem.(2003)13,1055−1058)、アミノトリアゾール誘導体(Bioorg.Med.Chem.(2004)14,4245−4248)、アミノテトラリン誘導体(J.Med.Chem.(2004)47,3927−3930)、アミノクロマン誘導体(J.Med.Chem.(2004)47,3927−3930)、11−フェニルアポモルフィン誘導体(J.Med.Chem.(2001)44,1337−1340)等が挙げられる。
上記の5−HT2B選択的拮抗化合物及び5−HT選択的拮抗化合物には、フルオレン構造を有するものはない。
なお、5−HT2B受容体選択的拮抗化合物が肺高血圧症に有効であることを記載した文献がある(Nature Medicine(2002)8,1129−1135)。また、5−HT受容体選択的拮抗化合物が、抗鬱及び抗不安作用を有すること(アメリカ化学会(American Chemical Society)第228回国内ミーティング抄録誌、パートXIII、2004年、22−26頁)、及び睡眠障害に有効であること(アメリカ神経科学会(Society of Neuroscience)抄録誌、1998年、24巻、パート1、抄録番号466.9)が、各々学会で報告されている。
下記一般式で表されるアシルグアニジン誘導体がAMPA拮抗作用を有し、片頭痛を含む各種中枢性疾患の治療に有効であることを示唆した報告がある(特許文献1)。しかしながら、当該誘導体はRとして環基を有する上、当該出願にはRとしてフルオレン構造を有する具体的な化合物の開示は無い。

(式中、Rはシクロアルキル、アリール又は1〜3環系のヘテロアリール等、R及びRは独立して、−H、アルキル又はアルケニル等、Xは結合、アルケン又はアルケニレン等、及びRがシクロアルキル、アリール又はアルキルアリール等。詳細は当該公報参照。)
また、下記一般式で表される三環系化合物がNO合成酵素阻害活性を有することが報告されている(特許文献2)。当該化合物は、Aとして下記式に示す特定の環基を有する。

(式中、Φは結合又はフェニレン基、Bは−CH−NO、アルキル基、アリール基又はNR1314(R13及びR14は独立して水素原子、アルキル基、シアノ基等)、Xは結合、−O−、−S−又はCO−等、Yは結合、−(CH)m−等、Wは存在しないか、結合、S原子又はNR15、R〜Rは水素又はハロゲン等。詳細は当該公報参照。)
前記のとおり、片頭痛の予防効果に優れ、既存の片頭痛予防薬にみられる副作用を低減させた片頭痛予防薬が切望されている。
[特許文献1]国際公開第99/20599号パンフレット
[特許文献2]国際公開第00/17191号パンフレット
前記のとおり、片頭痛の予防効果に優れ、既存の片頭痛予防薬にみられる副作用を低減させた片頭痛予防薬が切望されている。
【発明の開示】
本発明者等は、片頭痛予防効果を有するセロトニン拮抗剤につき鋭意検討した結果、下記一般式(I)に示すように、フルオレン骨格にカルボニル基等を介してグアニジノ基等の官能基が結合した構造、に特徴を有する新規なフルオレン誘導体が、優れた片頭痛抑制作用を有することを知見して本発明を完成させた。本発明化合物は、セロトニン受容体のサブタイプの中でも得に5−HT2B受容体及び5−HT受容体に親和性が高く、5−HT2B受容体または5−HT受容体の拮抗活性を一方のみ有する従来化合物と比較して顕著な効果を有する。また、本発明化合物は、5−HT2B及び5−HT受容体以外の受容体拮抗作用が弱いことから、これらに起因する副作用が少ない。
即ち、本発明は以下の化合物に関する。
〔1〕下記一般式(I)で示されるフルオレン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。

(式中の記号は以下の意味を示す。
及びR:同一又は互いに異なって、−R、低級アルケニル、低級アルキニル、ハロゲン、−OH、−O−R、−O−CO−R、−NH、−NR−R、−CN、−NO、−CHO、−CONH、−CO−NR−R、−COH、−CO−R、−CO−R、−NR−CO−R、−NR−CO−R、−O−CO−NR−R、−SH、−S(O)−R、−S(O)−NH、−S(O)−NR−R、−NR−S(O)−R、−R00−O−CO−R、−R00−NR−R、−R00−CN、−R00−CONH、−R00−CO−NR−R、−R00−COH、−R00−CO−R、−R00−CO−R、−R00−NR−CO−R、−R00−NR−CO−R、−R00−O−CO−NR−R、シクロアルキル又は含窒素飽和ヘテロ環。ここに当該含窒素飽和ヘテロ環は、低級アルキル、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、及びオキソ(=O)からなる群より選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;
:同一若しくは互いに異なって、−OH、−O−C1−4アルキル、−NH、−NR−C1−4アルキル及びハロゲンからなる群より選択される1以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル;
:同一若しくは互いに異なって、低級アルキル又はH;
00:同一若しくは互いに異なって、低級アルキレン;
p:0、1又は2;
n:0、1又は2;
m:0又は1;
及びR:同一又は互いに異なって、−H、−R、ハロゲン、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、−NR−CO−R、−O−R00−OH、−O−R00−O−R、シクロアルキル、含酸素飽和ヘテロ環、或いはR及びRが一体となって、オキソ(=O)、=N−OH、=N−OR及びテトラヒドロピラニリデンからなる群より選択される基を形成してもよく、或いはR及びRが一体となって、−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択されるl〜2個の2価基で中断されていてもよい低級アルキレンを形成し、結合するC原子とともに3〜8員環を形成してもよい;
Z:−NH−;
:−H又はR;及び
及びR:同一又は互いに異なって、−H、−R、−CO−R、−CO−R、或いはR及びRが一体となって2価基を形成し、R及びRが結合している−N−C−Z−基とともに5員ヘテロ環を形成してもよく、このときZは更に、−O−又はS−であってもよく、当該5員環は低級アルキル、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、及びオキソ(=O)からなる1〜2個の置換基で置換されていてもよい。以下同様。)
前記〔1〕に示される化合物のうち好ましい態様は以下に示す〔2〕〜〔6〕記載の誘導体及びそれらの塩である:
〔2〕前記式(I)中、Rが−H又はRであり、かつ、R及びRが−H又はRである前記〔1〕記載の誘導体。
〔3〕より好ましくは、前記式(I)中、R、R及びRがいずれも−Hである前記〔2〕記載の誘導体。
〔4a〕より好ましくは、R及びRが同一若しくは互いに異なって、−H、−R、−OH、−O−R、−O−R00−OH又は−O−R00−O−Rであるか、R及びRが一体となりオキソ基である、前記〔3〕記載の誘導体。
〔4b〕または、R及びRが一体となって、「−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択される1〜2個の2価基で中断されていてもよい低級アルキレン」を形成し、それらが結合するC原子とともに3〜8員環を形成する、前記〔3〕記載の誘導体。
〔5〕より好ましくは、nが1であり、かつ、Rが−OH、−O−C1−4アルキル、−NR−C1−4アルキル及びハロゲンからなる群より選択される基で置換された低級アルキル、又はハロゲン、−OH、−O−R、−NH、−CN、−CHO、−NOである化合物、或いはnが0である前記〔1〕乃至〔4b〕記載の誘導体。
〔6〕より好ましくは、mが0である前記[3]記載の化合物、又はmが1であり、かつRが−R若しくはハロゲンである前記〔1〕乃至〔5〕記載の誘導体。
〔7〕特に好ましくは以下に示す群から選択される前記〔1〕記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩:N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、9−クロロ−N−(ジアミノメチレン)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−(ヒドロキシイミノ)−5−(ヒドロキシメチル)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、8−クロロ−N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)スピロ[1,3−ジチオラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)スピロ[シクロプロパン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−メトキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−エチル−9−メトキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)−5’−フルオロスピロ[1,3−ジチオラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、及び、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−メトキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド。
また、本発明は、前記一般式(I)で示されるフルオレン誘導体またはその製薬学的に許容される塩と、製薬的に許容される担体とからなる医薬組成物に関する。好ましくは、5−HT2B受容体及び5−HT受容体二重拮抗剤である前記医薬組成物であり、より好ましくは片頭痛の予防剤である前記医薬組成物である。
また、別の態様としては、片頭痛の予防剤製造のための〔1〕〜〔7〕記載の一般式(I)で示されるフルオレン誘導体またはその製薬学的に許容される塩の使用であり、〔1〕〜〔7〕記載の一般式(I)で示されるフルオレン誘導体またはその製薬学的に許容される塩の有効量を、哺乳動物に投与することからなる片頭痛の予防法である。
【図面の簡単な説明】
図1は、試験方法(4)のモルモット片頭痛モデルにおいて、RS−127445投与時の蛋白漏出量を測定した結果を示すグラフである。統計的検定はダネット法により行い、は有意水準5%、**は1%を示す。
図2は、試験方法(4)のモルモット片頭痛モデルにおいて、SB−269970投与時の蛋白漏出量を測定した結果を示すグラフである。統計的検定はダネット法により行い、**は有意水準1%を示す。
図3は、試験方法(4)のモルモット片頭痛モデルにおいて、RS−127445及びSB−269970同時投与時の蛋白漏出量を測定した結果を示すグラフである。統計的検定はT検定により行い、は有意水準5%を示す。
図4は、試験方法(4)のモルモット片頭痛モデルにおいて、実施例3の化合物投与時の蛋白漏出量を測定した結果を示すグラフである。統計的検定はT検定により行い、は有意水準5%を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中の一般式の定義において「低級」なる用語は、特に断らない限り、炭素数が1〜6(以後、C1−6と略す)の直鎖又は分枝状の炭素鎖を意味する。従って「低級アルキル」としては、炭素数C1−6のアルキルであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチルが好ましい。
「低級アルケニル」としては、C2−6のアルケニル基であり、好ましくはビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル及び3−ブテニル基である。「低級アルキニル」としては、C2−6のアルキニル基であり、好ましくは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル及び1−メチル−2−プロピニル基である。
「低級アルキレン」としては、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等の直鎖状のアルキレン、及びメチルメチレン等の分枝状のアルキレンである。メチレン、エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
「ハロゲン」とは、F、Cl、Br又はIを示す。
「シクロアルキル」としては、架橋を有していてもよいC3−10のシクロアルキル基であり、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基である。
「含窒素飽和ヘテロ環」としては、1つのN原子を含み、更にN、S及びOからなるヘテロ原子を1つ含んでいてもよい5〜8員飽和若しくは一部不飽和の単環ヘテロ環であり、好ましくは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びテトラヒドロピリジル基である。
「含酸素飽和ヘテロ環」としては、1つのO原子を含み、更にN原子を1つ含んでいてもよい5〜8員飽和若しくは一部不飽和の単環ヘテロ環であり、好ましくは、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル及びモルホリニル基である。
「置換されていてもよい」とは、「無置換」或いは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。
例えば、「ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル」とは、前記の低級アルキルに加え、1個以上のハロゲンで置換された低級アルキルであり、好ましくは、1〜5個のFを有するC1−2のアルキルであり、より好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルである。
「−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択される1〜2個の2価基で中断されていてもよい低級アルキレン」とは、低級アルキレン、或いは低級アルキレンの途中又は末端に−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択される基が1個又は2個が挿入された基を表す。例えば、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−S(O)−(CH−、−(CH−N(CH)−(CH−、−O−(CH−O−、−S−(CH−S−、−CH−S−CH−、又はCHCONHCH−等の基が挙げられ、好ましくは−(CH−、−S−(CH−S−、−(CH−O−(CH−、又は−(CH−O−である。
本明細書中、「片頭痛予防薬」とは、片頭痛患者と診断され定期的に片頭痛を発症する患者に対し処方される薬剤及び医薬組成物であり、発症頻度若しくは痛みの程度を減少させる為に発症前に投与されるものをいう。
「拮抗剤」とは作動薬に対し拮抗的に作用してその作用を減弱させる薬剤をいう。
「結合親和性」とは受容体の一部に結合することができる能力を意味し、この評価は、後記(試験方法)に記載のようにin vitroの受容体結合試験によって算出されるKi値、場合により同じ条件下で行われた受容体結合試験におけるIC50値を比較することにより行う。なお、受容体の結合試験において、一定の濃度で十分な阻害作用を示さずIC50値を算出できない場合には、その化合物のIC50値を当該濃度以上とみなすことがある。
本発明化合物の5−HT2B及び5−HT受容体への結合親和性が他の受容体と比較して「選択的」であるとは、当該受容体への結合親和性が「他の受容体」への結合親和性と比較して高い事を意味する。本発明において「選択的」とは、当該受容体への結合親和性を示すKi値若しくはIC50値が、「他の受容体」に対する値と比較して10分の1以下である場合を指し、より好ましくはこの値が50分の1以下、更に好ましくは100分の1以下、より更に好ましくは500分の1以下、特に好ましくは1000分の1以下である。
ここに、「他の受容体」としては、既存の非選択的セロトニン受容体拮抗剤において報告される他の受容体であって、殊に好ましくない作用に関与する受容体である。従って、本発明化合物として好ましくはα、M及びD受容体に対して選択的な化合物であり、より好ましくはα、M、D、5−HT1A、5−HT1B、5−HT2A、5−HT2c、5−HT、5−HT及び5−HT受容体に対して選択的な化合物である。
本発明化合物(I)の製薬学的に許容される塩としては、具体的には塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩等が挙げられる。また、置換基の種類によっては、塩基との塩を形成する場合もあり、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属を含む無機塩基、あるいはメチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
本発明化合物(I)には、幾何異性体や互変異性体が存在する場合がある。例えば、式(I)中、Rが−Hである化合物においては以下の互変異性体が存在する。

本発明はこのような互変異性体の一方、あるいは混合物を包含する。
また、本発明化合物は不斉炭素原子に基づく異性体が存在する場合がある。本発明はこれら光学異性体の混合物や単離されたものを包含する。本明細書において、化合物の命名の後に(光学活性体A)又は(光学活性体B)の付記をしたものは、各々一方の光学異性体を表す。ここで、光学活性体Aであるものは、後記実施例表中に記載した高速液体クロマトグラフィーによる分析条件(実施例56a、56b、59a、59b、60a及び60b参照)において、保持時間が相対的に短い(溶出が早い)異性体を意味し、光学活性体Bであるものは保持時間が相対的に長い(溶出が遅い)異性体を意味する。
また、本発明化合物(I)は、置換基の種類によっては、N−オキシドを形成する場合もあり、これらのN−オキシド体も包含する。更に、各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
なお、本発明化合物(I)には、生体内において代謝されて化合物(I)又はその塩に変換される化合物、いわゆるプロドラッグもすべて包含される。このプロドラッグを形成する基としては、Prog.Med.5:2157−2161(1985)に記載されている基や廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻 分子設計163−198に記載されている基が挙げられる。
(製造法)
本発明化合物及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格或いは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T.W.Greene)及びウッツ(P.G.M.Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年、John Wiley & Sons)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、或いは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、本発明化合物のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、或いは得られた本発明化合物を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下本発明化合物の代表的な製造法を説明する。
(第一製法)

(式中、Lは−OH若しくは−O−低級アルキル、又はハロゲン、−O−メタンスルホニル若しくは−O−p−トルエンスルホニル等の脱離基を示す。)
本発明化合物(I)は、カルボン酸又はその反応性誘導体である(1)で示される化合物とアミン誘導体(2)とを、アミド化反応に付すことにより製造できる。
原料化合物(1)において、LがOHである遊離カルボン酸を用いる場合には、化合物(1)とアミン誘導体(2)とを縮合剤の存在下で脱水縮合させる方法が用いられる。この場合、縮合剤としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(WSC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(HBTU)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、オキシ塩化リン等、場合によっては、更に添加剤(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等)を用いることが好ましい。
反応は化合物(1)とアミン誘導体(2)とを等量若しくは一方を過剰量用いて、また、縮合剤をカルボン酸に対して等量若しくは過剰量用いて行われる。ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン若しくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン若しくはジメトキシエタン(DME)等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、アセトニトリル又は水等の反応に不活性な溶媒中、或いはそれらの混合液中で、冷却下〜加熱下、好ましくは、−20℃〜60℃で行うことができる。
原料化合物(1)において、Lが脱離基である化合物、すなわち、カルボン酸の反応性誘導体を用いる場合には、化合物(1)とアミン誘導体(2)とを等量或いは一方を過剰量用いて、前記の遊離カルボン酸を用いる場合と同様の条件で反応を行えばよい。ここで用いられるカルボン酸の反応性誘導体としては、酸ハロゲン化物(酸クロリド又は酸ブロミド等)、酸無水物(クロロ炭酸フェニル、p−トルエンスルホン酸、又はイソ吉草酸等との混合酸無水物或いは対称酸無水物)、活性エステル(ニトロ基もしくはフッ素原子等の電子吸引基で置換していてもよいフェノール、HOBt、HONSu等を用いて調製できるエステル)、低級アルキルエステル等が挙げられ、いずれもカルボン酸より当業者に自明な反応を用いて製造することができる。反応性誘導体の種類によっては、塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン若しくは4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム等の無機塩基等)の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。ピリジンは溶媒を兼ねることもできる。尚、反応性誘導体として低級アルキルエステルを用いる場合には、反応を室温下〜加熱還流下で行うことが好ましい。
(第二製法)

本発明化合物(I)中、−CR−が−CH(OH)−で表される化合物(Ib)は、当該部位がカルボニル基である本発明化合物(Ia)を還元反応に付すことにより製造することができる。
反応は、化合物(Ia)を等量若しくは過剰量の還元剤で処理することにより行われる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム若しくはジイソブチルアルミウムヒドリド等のヒドリド還元剤、又はRichard C.Larock著、「Comprehensive Organic Transformations」(1989年、VCH Publishers,Inc.)記載の還元剤が用いられる。反応は、芳香族炭化水素類、エーテル類、DMF、DMSO、アルコール類(メタノール、エタノール等)又は水、或いはこれらの混合物を溶媒として、冷却下〜加熱下、好ましくは−20℃〜室温で行う。
本発明化合物(I)が種々の側鎖や置換基を有する場合、これらの化合物は本発明化合物又はその製造中間体を原料として、当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。かかる例としては、第一及び第二製法により得られる化合物の置換基を更に変換する反応が挙げられ、例えば、以下に示す反応が適用できる。
式(I)中、R及びRが一緒になって=N−ORを表す化合物は、当該部位がオキソ基である本発明化合物(Ia)とNH−ORとを脱水縮合させることにより製造できる。
式(I)中、R若しくはRの一つがハロゲンである化合物は、当該部位が−CH(OH)−である本発明化合物(Ib)をハロゲン化反応に付すことにより製造できる。
式(I)中、Rが−NHである化合物は、当該部位が−NOである本発明化合物を還元反応に付すことにより製造できる。
(原料化合物の製造)
上記製造法における原料化合物(1)は、公知の方法を利用して製造する事ができる。

(式中、Q及びUはいずれか一方が−Br、−Cl、−I又はO−SO−CFであり、他方が−B(OH)又はB(O−低級アルキル)を示す。R10は低級アルキル又はベンジル等の保護基を示す。)
式(1)中、R及びRが一緒になってオキソ基であり、Lが水酸基である化合物(1a)は上記の反応経路により製造する事ができる。
本経路中、特にカップリング反応はSynth.Commun.,11,513−519(1981)、Synlett,6,829−831(2000)、又はChem.Lett.,1405−1408(1989)記載の方法により実施することができる。環化反応は、分子内フリーデル・クラフツ反応の常法を用いればよく、例えばJ.Am.Chem.Soc.,63,1948(1941)に記載の方法が挙げられる。酸化反応は、酸化銀、ニクロム酸ピリジニウム若しくは亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を用い、DMF、メタノール若しくは水等の溶媒中又はそれらの混合液中で、室温〜加熱下で行うことができる。

(式中、R11及びR12は置換されていてもよい低級アルキル、又はR11及びR12が一体となって−O−或いは−NR−で中断されていてもよい低級アルキレンを表す。)
式(1)中、R及びRの少なくとも一方がアルキル基である化合物(1b)は、J.Am.Chem.Soc.,63,1948(1941)記載の方法を参考にして得られるフルオレン(14)の芳香環をブロモ化し、これをシアノ基とした後、カルボキシル基へ変換することにより製造することができる。ここで、ブロモ化反応はH.Becher著「Orgnikum」p189,1973、シアノ化反応はJ.Org.Chem.,26,2522(1961)に記載の方法に従って用いて行えばよい。

(式中、R13及びR14は低級アルキル、R15は低級アルキル又は二つのR15が一体となって低級アルキレンを、Mはリチウムイオン又はマグネシウムイオン等の有機金属試薬の対陽イオンを、Eは−O−又はS−を、Lはハロゲン、−O−メタンスルホニル又はO−p−トルエンスルホニル等の脱離基を、Halはハロゲンを示す。)
原料化合物(1)中、R及びRの少なくとも一方に各種の置換基を有する化合物は、9−ケト体(1c)よりアルキル化、エーテル化、ケタール化、アミノ化、還元或いはハロゲン化の各反応を用いて、又はこれらを組み合わせて容易に製造することが可能である。
特に、アルキル化はグリニヤール試薬、有機リチウム試薬又は有機セリウム試薬等の有機金属試薬を用いて行うことができる。化合物(1d)より(1e)を製造するエーテル化においては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウム−tert−ブトキシド若しくは酸化銀等の塩基の存在下、アルキル化剤としてR14−Lを用いて行われる。又は本アルキル化は、R14−OHを用いて酸性条件下で実施する場合があり、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒、硝酸鉄、又は過塩素酸鉄等のルイス酸を用いて、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン又はキシレン等の溶媒中、室温〜加熱下で行われる。
上記反応経路において、原料化合物(1c)の代わりにカルボキシル体(1a)を用いても、アルキル化、アミノ化及び還元の各反応を行うことができる。また、(1c)〜(1k)の各化合物については、−COOR10基の脱保護により対応するカルボキシル体へと導くことができる。
このようにして製造された化合物(I)は、遊離のまま、又は常法による造塩処理を施し、その塩として単離・精製される。単離・精製は抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等の通常の化学操作を適用して行われる。
各種の異性体は異性体間の物理化学的な性質の差を利用して常法により単離できる。例えば光学異性体は、ラセミ化合物を光学活性な有機酸(酒石酸等)とのジアステレオマー塩に導いた後に分別再結晶する方法、或いはキラル充填材を用いたカラムクロマトグラフィー等の手法により、各々分離精製することができる。また、光学活性化合物は適切な光学活性化合物を原料として用いることにより製造することもできる。尚、ジアステレオマーの混合物についても、分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明化合物は優れた片頭痛予防効果を有しており、また、5−HT2B及び5−HT両受容体を同時かつ選択的に阻害することから、既存薬に報告される5−HT2B及び5−HT受容体以外の受容体拮抗に起因する副作用が低減された安全性の高い効果の優れた片頭痛予防薬として有用である。
また、5−HT2B及び5−HT受容体の各選択的阻害剤が有効性を示す肺高血圧症、鬱、不安及び睡眠障害についても、本発明化合物の治療又は予防効果が期待できる。
本発明化合物(I)の有用性は以下の試験により確認した。
(1)5−HT2B受容体結合実験
(i)膜標品調製
ヒト5−HT2B受容体発現細胞は文献(FEBS Letters(1994)342,85−90)に従って作製した。遺伝子導入細胞にHEK293−ENBA細胞を用いた。
培養したヒト5−HT2B受容体発現HEK293−EBNA細胞をPBS(−)で洗浄した。PBS(−)存在下スクレーパーで細胞を剥がし、遠心処理(1,000rpm,10min,4℃)により細胞を回収した。5mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液存在下Polytron(PTA 10−TS)でホモジナイズし、遠心処理(40,000xg,10min,4℃)した。50mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液存在下ホモジナイザーで懸濁させた。遠心処理(40,000xg,10min,4℃)を行い、50mM Tris−HCl(pH7.4)中に懸濁し、−80℃で保存した。
(ii)受容体結合実験
50mM Tris−HCl,4mM CaCl(pH7.4)緩衝液、ヒト5−HT2B受容体発現HEK293−EBNA細胞膜標品、ラジオリガンド[H]Mesulergine(3.1TBq/mmol;)を含む総量500μlを25℃で1時間インキュベーションした。化合物は100%DMSOに溶解し、各濃度に希釈した。非特異的結合は、1μM ritanserin存在下での結合量とし、全結合量から、非特異的結合量を差し引いたものを特異的結合量とした。50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)4mLを加えて、GF/Bグラスフィルターで減圧濾過し、フィルターを同じ緩衝液で洗浄(4mLx3)した。グラスフィルターを5mLの液体シンチレータ(Aquasol−2)に浸し、液体シンチレーションカウンターで放射能量を測定した。受容体結合を50%阻害する化合物濃度、IC50値は、SAS(ver.6.11)を用いて非線形回帰分析により求め、受容体に対する親和性を表すKi値は、Cheng & Prussoffの式;Ki=IC50/(1+[L]/[Kd])([L]:リガンド濃度、[Kd]:解離定数)を用いて算出した。
後記実施例3の化合物は1.8nMのKi値を示した。また、実施例4、7、8、34、38、56、56a、56b、59、60、60a、60b、63、71、72、77、78a、78b、85及び87の化合物は0.1〜350nMのKi値を示した。
(2)5−HT受容体結合実験
(i)膜標品調製
ヒト5−HT受容体発現細胞は文献(J.Biol.Chem.(1993)268,31,23422−23426,Br.J.Phaemacol.(1997)122,126−132)に従って作製した。遺伝子導入細胞にCHO細胞を用いた。
培養したヒト5−HT受容体発現CHO細胞をPBS(−)で洗浄した。PBS(−)存在下スクレーパーで細胞を剥がし、遠心処理(1,000rpm,10min,4℃)により細胞を回収した。5mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液存在下Polytron(PTA 10−TS)でホモジナイズし、遠心処理(40,000xg,10min,4℃)した。50mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液存在下ホモジナイザーで懸濁させた。遠心処理(40,000xg,10min,4℃)を行い、50mM Tris−HCl(pH7.4)中に懸濁し、−80℃で保存した。
(ii)受容体結合実験
50mM Tris−HCl,4mM CaCl(pH7.4)緩衝液、ヒト5−HT受容体発現CHO細胞膜標品、ラジオリガンド[H]5−HT(3.40TBq/mmol)を含む総量500μlを25℃で1時間インキュベーションした。化合物は100%DMSOに溶解し、各濃度に希釈した。非特異的結合は、10μM metergoline存在下での結合量とし、全結合量から、非特異的結合量を差し引いたものを特異的結合量とした。50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)4mLを加えて、GF/Bグラスフィルターで減圧濾過し、フィルターを同じ緩衝液で洗浄(4mLx3)した。グラスフィルターを5mLの液体シンチレータ(Aquasol−2)に浸し、液体シンチレーションカウンターで放射能量を測定した。受容体結合を50%阻害する化合物濃度、IC50値は、SAS(ver.6.11)を用いて非線形回帰分析により求め、受容体に対する親和性を表すKi値は、Cheng & Prussoffの式;Ki=IC50/(1+[L]/[Kd])([L]:リガンド濃度、[Kd]:解離定数)を用いて算出した。
後記実施例3の化合物は17.6nMのKi値を示した。また、実施例4、7、8、34、38、56、56a、56b、59、60、60a、60b、63、71、72、77、78a、78b、85及び87の化合物は0.4〜310nMのKi値を示した。
(3)他の受容体に対する親和性
実施例3の化合物の5−HT1A、5−HT1B、5−HT2A、5−HT2C、5−HT、5−HT、5−HT、α、M及びD受容体への親和性を、公知の手法(Journal of Neurochemistry(1986)47,529−540;Molecular Pharmacology(1982)21,301−314;European Journal of Pharmacology(1985)106,539−546;Journal of Pharmacology Experimental Therapy(1992)263,1127−1132;British Jouurnal of Pharmacology(1993)109,618−624;Molecular Pharmacology(1993)43,320−327;Molecular Pharmacology(1989)35,324−330;Cellular Molecular Neurobiology(1988)8,181−191;European Journal of Pharmacology(1988)173,177−182)を用いて確認した。その結果、本化合物のIC50値は5−HT1A、5−HT1B、5−HT2A、5−HT2c、5−HT、5−HT、5−HT、α、M及びDの各受容体について全て1μM以上であった。また、後記実施例56、59、60、71、72、77及び85の化合物についてα、M及びDの各受容体への親和性を上記の手法を用いて確認した結果、これらの化合物のα、M及びD受容体に対する5−HT2B及び5−HT受容体選択性は100倍以上であった。
以上の結果より、本発明実施例化合物は5−HT2B及び5−HT受容体の両方に選択的な結合親和性を有することが示された。
なお、下記試験方法(4)に記載したRS−127445(2−Amino−4−(4−fluoronaphth−1−yl)−6−isopropylpyrimidine;製造法はWO97/44326参照)及びSB−269970((R)−3−(2−(2−(4−Methylpiperidin−1−yl)ethyl)pyrrolidine−1−sulfonyl)phenol;製造法はWO97/48681参照)の各受容体への親和性は公知であり、RS−127445に関しては、例えばBritish Journal of Pharmacology(1999)127,1075−1082より、当該化合物の5−HT2B受容体へのpKiは9.5であり、5−HT1A、5−HT1B、5−HT2A、5−HT2c、5−HT、5−HT、5−HT、α、M及びD受容体等に対して1000倍以上5−HT2B受容体選択的であることが報告されている。また、SB−269970に関しては、例えばJ.Med.Chem.(2000)43,342−345により、当該化合物の5−HT2B受容体へのpKiは8.9であり、5−HT1A、5−HT1B、5−HT2A、5−HT2B、5−HT2c、5−HT、5−HT、α、及びD受容体等に対して250倍以上5−HT受容体選択的であることが報告されている。
(4)モルモット片頭痛モデルにおける予防効果
片頭痛発症において、5−HTにより硬膜血管から漏出する炎症性蛋白が関与することが示唆されている。本試験系は、被験化合物の存在下にこの漏出蛋白量を測定することにより、片頭痛の予防効果を評価したものであり、Rachel A.Spokes,Vicki C.Middlefell、European Journal of Pharmacology(1995)281,75−79記載の手法を一部改変して実施した。
ハートレー雄性モルモット(250−350g)にウレタン(1.5g/kg)を腹腔内投与(i.p.)し、麻酔した。伏在静脈に簡易カニュレーションを施し、蛍光蛋白(FITC−BSA)50mg/kgを静脈内投与(i.v.)し、5分後に生理食塩水あるいは5−HT 1μMを静脈内投与した。15分後に生理食塩水で環流を行い、血液を洗い流した。RS−127445、SB−269970及び実施例3の化合物は腹腔内に、その他の実施例化合物は経口にてそれぞれ蛍光蛋白投与30分前に投与した。頭蓋を取り外し、硬膜を取り出しエッペンチューブ中pH11の生理食塩水存在下で37℃で16時間インキュベーションした。遠心操作し、上清をプレートに分注した。蛍光プレートリーダー(励起波長485nm,吸収波長530nm)にて蛍光強度を測定した。硬膜重量を量り、硬膜蛋白mgあたりの蛍光強度を算定した。
各化合物の投与時及び非投与時において測定した蛍光強度の値を図1〜図4に示す。いずれも横軸は化合物の投与量を、縦軸は硬膜血管1mgあたりの蛍光強度を示す。コントロールとは5−HT非添加時の蛍光強度、すなわち基準値を示す。
図1に示すように、5−HT2B選択的拮抗化合物であるRS−127445は3mg/kgで漏出蛋白量の減少作用を示したものの、3mg/kgから10mg/kgに投与量を増加しても標準値まで下げる事は無かった。
また、図2に示すように、5−HT選択的拮抗化合物であるSB−269970も10mg/kgから作用を示したが、これを30mg/kgに投与量を増加しても漏出蛋白量を標準値まで下げる事は無かった。
一方、図3に示すように、RS−127445及びSB−269970の両化合物を同時に投与した場合、相乗的な効果が得られることが分った。すなわち、図1及び図2に示されるように、本モデルにおいて両化合物が最大の薬効を示す最低量は、RS−127445については3mg/kg、SB−269970については10mg/kgであることが示されたが、同じ投与量で両化合物を同時に投与した場合、漏出蛋白量は標準値までほぼ完全に抑制されることが明らかとなった。この結果は、5−HT2B受容体及び5−HT受容体の両機能を同時に阻害した場合に、一方の選択的受容体の阻害では成し得ない優れた効果が得られることを示している。
この効果は、選択的に5−HT2B受容体拮抗作用と5−HT受容体拮抗作用を併有する本発明化合物を用いても同様であった。すなわち、後記実施例3の化合物は、図4に示すように3mg/kgの腹腔内投与で漏出蛋白量をほぼ完全に抑制した。
また、後記実施例56、56a、59、60、60a、60b、71、72、77、78b、85及び87の化合物も、10mg/kg若しくは30mg/kgの経口投与において、蛋白漏出をほぼ完全に抑制した。
以上の結果より、本発明化合物は5−HT2B受容体拮抗作用及び5−HT受容体拮抗作用を併せ持つことにより、炎症性蛋白の漏出量を完全に抑制できることが示された。従って、本発明化合物は片頭痛の発症を効果的に抑制できる可能性があり、一方の選択的受容体拮抗剤と比較して優れた片頭痛予防効果を有するものであることがわかる。
一般式(I)で示された化合物の1種又は2種以上を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、静注,筋注等の注射剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等の外用剤、坐剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を包含し、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノール等を用いることができる。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を包含する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール,オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
本発明化合物が片頭痛の予防薬として投与される場合、通常、片頭痛の発症前に予防的に投与される。従って、発症頻度が高い間は持続的に服用することが好ましい。
本発明化合物の1日の投与量は、通常、経口投与の場合、体重当たり約0.001から50mg/kg、好ましくは0.01〜30mg/kg、更に好ましくは、0.05〜10mg/kgが、静脈投与される場合、1日の投与量は、体重当たり約0.0001から10mg/kg、好ましくは0.001〜1.0mg/kgがそれぞれ適当であり、これを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【実施例】
以下、本発明化合物を実施例によってさらに具体的に説明する。なお、本発明化合物の原料化合物には新規な化合物も含まれているため、これらの製造方法を参考例として記載する。
参考例1−a
4−ブロモイソフタル酸 ジエチルエステルと2−メチルフェニルボロン酸、炭酸ナトリウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムとを、トルエン−エタノール−水中で加熱下反応させることにより、ジエチル 2’−メチルビフェニル−2,4−ジカルボキシラートを得た。FAB−MS:313(M+H)
参考例1−b
ジエチル 2’−メチルビフェニル−2,4−ジカルボキシラートのエタノール溶液を、1M水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、2’−メチルビフェニル−2,4−ジカルボン酸を得た。FAB−MS:257(M+H)
参考例1−c
2’−メチルビフェニル−2,4−ジカルボン酸をポリリン酸中で、加熱することにより、5−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:239(M+H)
参考例2
3’−メチルビフェニル−2,4−ジカルボン酸を参考例1−cと同様に処理した後、得られた固体を濃硫酸存在下、エタノール中で加熱することによりエステル化を行った。反応を処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、エチル 6−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラート[FAB−MS:267(M+H)]、及びエチル 8−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラート[FAB−MS:267(M+H)]を、各々得た。
参考例3
エチル 4−ブロモ−2−クロロ安息香酸及び2−ホルミルフェニルボロン酸より、参考例1−aと同様にしてエチル 3−クロロ−2’−ホルミルビフェニル−4−カルボキシラートを製造した。FAB−MS:288(M)
エチル 3−クロロ−2’−ホルミルビフェニル−4−カルボキシラートと過塩素酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、2−メチル−2−ブテンとを、tert−ブタノール−アセトニトリル−水中で室温で反応させることにより、3’−クロロ−4’−(エトキシカルボニル)ビフェニル−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:305(M+H)
以後は参考例1−c及び参考例2と同様にしてエチル 1−クロロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラート[FAB−MS:287(M+H)]、及びエチル 3−クロロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラート[FAB−MS:287(M+H)]を、各々製造した。
参考例4−a
9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸とメチルリチウムとをTHF中で、−20℃〜0℃で反応させることにより、9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:239(M−H)
参考例4−b
9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボン酸と炭酸水素ナトリウム、ヨウ化メチルとをDMF中で、室温で反応させることにより、メチル 9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:255(M+H)
参考例4−c
メチル 9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートと硝酸鉄とをメタノール中で、加熱下反応させることにより、メチル 9−メトキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:269(M+H)
参考例5
メチル 9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートと水素化ナトリウム、メトキシメチルクロリドとをDMF中、室温で反応させることにより、メチル 9−メトキシメチル−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:298(M)
参考例6−a
THF中、3−クロロプロパン−1−オールにメチルマグネシウムブロミドを作用させ、マグネシウムオキシドとした後、金属マグネシウムを作用させグリニヤール試薬(ClMg(CHOMgBr)を調製した。これを参考例4−aと同様にして9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸と反応させた後、得られた9−ヒドロキシ−9−ヒドキシプロピル−9H−フルオレン−2−カルボン酸を、参考例4−bと同様にヨウ化メチルと反応させることにより、メチル 9−ヒドロキシ−9−ヒドキシプロピル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:297(M−H)
参考例6−b
メチル 9−ヒドロキシ−9−ヒドキシプロピル−9H−フルオレン−2−カルボキシラートをp−トルエンスルホン酸存在下で、トルエン中加熱下反応させることにより、メチル 4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:281(M+H)
参考例7−a
メチル 8−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとN−ブロモスクシンイミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルとを四塩化炭素中で、加熱下反応させることにより、メチル 8−ブロモメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。EI−MS:330(M)、332(M+2)
参考例7−b
メチル 8−ブロモメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとジメチルアミン(2M、メタノール溶液)、炭酸カリウムとをTHF中、室温で反応させることにより、メチル 8−ジメチルアミノメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:296(M+H)
参考例8−a
メチル 8−ブロモメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートと酢酸カリウムとをDMF中、室温で反応させることにより、メチル 8−アセトキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:311(M+H)
参考例8−b
メチル 8−アセトキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートと炭酸カリウムとをメタノール−THF中、室温で反応させることにより、メチル8−ヒドロキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:269(M+H)
参考例8−c
メチル 8−ヒドロキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとヨウ化メチル、酸化銀とをアセトニトリル中、加熱下反応させることにより、メチル 8−メトキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:283(M+H)
参考例9
メチル 9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートと水素化ホウ素ナトリウムとをメタノール中、室温で反応させてカルボニル基を還元した後、得られた化合物と三フッ化ジエチルアミノ硫黄とを塩化メチレン中で、室温で反応させることにより、メチル 9−フルオロ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:243(M+H)
参考例10
プロピル 9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとエチレングリコール、p−トルエンスルホン酸とをベンゼン中で、加熱下反応させることにより、プロピル スピロ[1,3−ジオキソラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボキシラートを得た。FAB−MS:311(M+H)
参考例11
プロピル 9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとオルト蟻酸メチル、アセチルクロリドとをメタノール中で、室温で反応させることにより、プロピル9,9−ジメトキシ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:313(M+H)
参考例12
5−フルオロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸と1,2−エタンジチオール、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体とを酢酸中で、加熱下反応させることにより、5’−フルオロスピロ[1,3−ジチオラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボン酸を得た。ESI−MS:317(M−H)
参考例13−a
メチル 9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとヒドロキシルアミン塩酸塩とをピリジン中で、室温で反応させることにより、メチル(9EZ)−9−ヒドロキシイミノ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:254(M+H)
参考例13−b
メチル (9EZ)−9−ヒドロキシイミノ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートをジオキサン中、水素ガス雰囲気下、10%パラジウム炭素、無水酢酸で処理することにより、メチル 9−アセチルアミノ−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:282(M+H)
参考例14−a
2−ブロモビフェニルとn−ブチルリチウム(1.58M、ヘキサン溶液)とをTHF中で−78℃で反応させた後、シクロペンタノンのTHF溶液を加え、室温で反応させることにより、1−ビフェニル−2−イルシクロペンタノールを得た。EI−MS:238(M)
参考例14−b
1−ビフェニル−2−イルシクロペンタノールを蟻酸中で、加熱下反応させることにより、スピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]を得た。EI−MS:220(M)
参考例14−c
スピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]を用い、J.Am.Chem.Soc.,80,4327(1958)記載の方法で、ブロム化を行うことにより、2’−ブロモスピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]を得た。EI−MS:298(M)、300(M+2)
参考例14−d
2’−ブロモスピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]と青酸銅とをDMF中で、加熱下反応させることにより、スピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボニトリルを得た。ESI−MS:246(M+H)
参考例14−e
スピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボニトリルのエタノール溶液を8M水酸化カリウム水溶液と、加熱下反応させることにより、スピロ[シクロペンタン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボン酸を得た。ESI−MS:263(M+H)
参考例15
2−ブロモ−4’−メチルビフェニルとテトラヒドロ−4H−ピラン−4−オンを原料として参考例14−a同様に反応を行い、4−(4’−メチルビフェニル−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール[EI−MS:268(M)]を得た後、参考例14−bと同様にして2−メチル−2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン][ESI−MS:251(M+H)]を製造した。これと過マンガン酸カリウムとをピリジン−水中で、加熱下反応させ、得られた粗精製物を硫酸存在下、メタノール中で、加熱下反応させることにより、メチル 2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン]−2’−カルボキシラートを得た。ESI−MS:295(M+H)
参考例16−a
9H−フルオレン−9,9−ジイルジメタノールとメタンスルホニルクロリド、トリエチルアミンとを塩化メチレン中で、室温で反応させることにより、9H−フルオレン−9,9−ジイルジメチレン ジメタンスルホナートを得た。EI−MS:382(M)
参考例16−b
9H−フルオレン−9,9−ジイルジメチレン ジメタンスルホナートとヨウ化ナトリウムとをヘキサメチルリン酸トリアミド中で、加熱下反応させることにより、9,9−ビス(ヨードメチル)−9H−フルオレンを得た。これをエタノール中、加熱下、亜鉛で処理することにより、スピロ[シクロプロパン−1,9’−フルオレン]を得た(EI−MS:192(M))。以後は参考例14−c〜14−eと同様にしてスピロ[シクロプロパン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボン酸を製造した。ESI−MS:235(M−H)
参考例17−a
2−ブロモ−9H−フルオレン及び[(2−クロロエトキシ)メチル]ベンゼンとを、tert−ブトキシカリウム存在下、DMSO中で加熱下反応させることにより、9,9−ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]−2−ブロモ−9H−フルオレンを得た。FAB−MS:535(M+Na),537(M+2+Na)
参考例17−b
9,9−ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]−2−ブロモ−9H−フルオレンのブロモ基を、参考例14−dと同様のシアノ化し、引き続き参考例14−eと同様の加水分解反応によりカルボキシル基へと変換し、更にヨウ化エチルを用いて参考例4−bと同様のエステル化反応を行うことにより、エチル 9,9−ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:507(M+H)
参考例17−c
エチル 9,9−ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとパラジウム炭素とを水素ガス雰囲気下、メタノール中で、室温で反応させることにより、エチル 9,9−ビス(2−ヒドロキシエチル)−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た(FAB−MS:327(M+H))。得られた化合物とp−トルエンスルホニルクロリドとを、トリエチルアミン存在下、塩化メチレン中、室温で反応させた後、得られた化合物とメチルアミン(40%メタノール溶液)を、炭酸カリウム存在下、ジオキサン中で、加熱下反応させることにより、メチル 1’−メチルスピロ[フルオレン−9,4’−ピペリジン]−2−カルボキシラートを得た。APCI:308(M+H)
参考例18−a
メチル 9H−フルオレン−2−カルボキシラート及びパラホルムアルデヒドとを、ナトリウムエトキシド存在下、DMSO中で室温で反応させることにより、メチル 9,9−ビス(ヒドロキシメチル)−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:284(M)
参考例18−b
メチル 9,9−ビス(ヒドロキシメチル)−9H−フルオレン−2−カルボキシラートとtert−ブチルジメチルシリルクロリドを、ピリジン中で室温で反応させることにより、メチル 9,9−ビス({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−9H−フルオレン−2−カルボキシラートを得た。FAB−MS:513(M+H)
参考例19
4−テトラヒドロ−2H−ピラニルマグネシウムクロリド(4−クロロテトラヒドロ−2H−ピランとマグネシウムから調製)と9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸から参考例4−aと同様にして製造した9−ヒドロキシ−9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−9H−フルオレン−2−カルボン酸[FAB−MS:309(M−H)]とトリエチルシランをトリフルオロ酢酸中で室温で反応させることにより、9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−9H−フルオレン−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:291(M−H)
参考例20
9−ヒドロキシ−9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−9H−フルオレン−2−カルボン酸と6M塩酸とをジオキサン中で加熱下反応させることにより、9−(テトラヒドロ−4H−ピラン−4−イリデン)−9H−フルオレン−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:294(M)
参考例21−a
2−フルオロ−6−ニトロフェニル トリフルオロメタンスルホナートと4−メチルフェニルホウ酸から参考例1−aと同様に反応を行い2−フルオロー4’−メチル−6−ニトロビフェニル[FAB−MS:232(M+H)]を得、このニトロ基を接触還元し(6−フルオロ−4’−メチルビフェニル−2−イル)アミン[EI−MS:201(M)]へと導き、さらにザンドマイヤー反応を行い、2−ブロモ−6−フルオロ−4’−メチルビフェニルを得た。EI−MS:266(M),268(M)
参考例21−b
2−ブロモ−6−フルオロ−4’−メチルビフェニルとテトラヒドロ−4H−ピラン−4−オンとをt−ブチルリチウム(1.48M、ペンタン溶液)を用いて参考例14−aと同様に反応を行ない、4−(6−フルオロ−4’−メチルビフェニル−2−イル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール[EI−MS:286(M)]を得、更に参考例14−bと同様に反応を行ない、5−フルオロ−2−メチル−2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン]を得た。FAB−MS:268(M)
参考例21−c
5−フルオロ−2−メチル−2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン]、N−ブロモスクシンイミド及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを四塩化炭素中で加熱下反応させ、得られた粗精製物をアセトン−水中で硝酸銀と反応させることにより、5−フルオロ−2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン]−2−カルボアルデヒド[FAB−MS:283(M+H)]を得た。更にこの化合物を、過塩素酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及び2−メチル−2−ブテンと、tert−ブタノール−アセトニトリル−水の混合溶媒中、室温で反応させることにより、5−フルオロ−2’,3’,5’,6’−テトラヒドロスピロ[フルオレン−9,4’−ピラン]−2−カルボン酸を得た。FAB−MS:299(M+H)
以上の参考例と同様にして参考例22〜111の化合物を製造した。それらの構造式と物理学的性状を後記のTable 1〜6に示す。
[実施例1]
5−フルオロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸400mgのDMF 20ml溶液に、CDI 402mgを加え、50℃にて1時間攪拌した。室温まで放冷後、グアニジン炭酸塩743mgを加え、室温で終夜攪拌した。溶媒を留去後、水を加え、析出した固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロマトレックス(登録商標)、メタノール/クロロホルム)で精製することにより、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド434mgを黄色固体として得た。
[実施例2]
9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボン酸3.35gのジメチルホルムアミド(DMF)60ml溶液に、1,1’−カルボニルジイミダゾール2.67gを加え、室温にて2.25時間攪拌した。この溶液をグアニジン 塩酸塩7.16gのDMF 20ml溶液に水素化ナトリウム3.00gを加え、室温にて1.5時間攪拌した溶液に氷冷下にて加え、室温にて1.5時間攪拌した。溶媒を留去後、水、酢酸エチルを加え、析出した固体をメタノールで洗浄することにより、N−(ジアミノメチレン)−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド3.00gを黄色固体として得た。
[実施例3]
N−(ジアミノメチレン)−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド400mgのメタノール溶液10mlに、水素化ホウ素ナトリウム110mgを加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を留去後、クロロホルム、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、析出した固体をエタノール30mlに溶解し、4M塩化水素−酢酸エチル溶液0.2mlを加え、室温で1.5時間攪拌した。生じた固体を濾取し、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド塩酸塩380mgを白色固体として得た。
[実施例4]
N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド480mgの塩化メチレン懸濁液20mlに、スルホニルクロリド1.0gを加え、室温で30分間攪拌した。溶媒を留去後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、メタノール/クロロホルム)で精製することにより、9−クロロ−N−(ジアミノメチレン)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド155mgを得た。
[実施例5]
実施例1と同様にして製造したtert−ブチル(2−{[(ジアミノメチレン)アミノ]カルボニル}−9H−フルオレン−9−イル)カルバマート170mgのメタノール溶液10mlに、4M 塩化水素−酢酸エチル溶液2mlを加え、60℃で20分間攪拌した。そのまま熱時濾過し、得られた固体を熱エタノールで洗浄することにより、9−アミノ−N−(ジアミノメチレン)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド2塩酸塩83mgを得た。
[実施例6]
N−(ジアミノメチレン)−9,9−ビス({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド490mgのメタノール溶液5mlに、4M 塩化水素−メタノール溶液1mlを加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去し、酢酸エチルで洗浄し、N−(ジアミノメチレン)−9,9−ビス(ヒドロキシメチル)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド塩酸塩250mgを得た。
[実施例7]
N−(ジアミノメチレン)−8−ヒドロキシメチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド55mgのピリジン溶液3mlに、ヒドロキシルアミン塩酸塩20mgを加え、室温で10時間攪拌した。溶媒を留去後、水−エタノールを加え、析出した固体をクロマトレックス(メタノール/クロロホルム)で精製することにより、(9EZ)−N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシイミノ−8−ヒドロキシメチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド14mgを白色固体として得た。
[実施例8]
N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド470mgのDMF溶液8mlに、(2R)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−メチルブタン酸420mg、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド400mg 4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン22mgを加え、室温で終夜攪拌した。溶媒を留去後、クロロホルム、飽和重曹水を加え不溶物を除去し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、メタノール/クロロホルム)で精製した。得られた化合物270mgをエタノール10mlに溶解し、4M 塩化水素−酢酸エチル溶液2mlを加え、40℃で終夜攪拌した。溶媒を留去後、2−プロパノールから再結晶を行うことにより、9−ヒドロキシ−N−[(2EZ,4S)−4−イソプロピル−5−オキソイミダゾリン−2−イリデン−9H−フルオレン−2−カルボキサミド塩酸塩30mgを得た。
[実施例9]
グアニジン 塩酸塩1.38gのDMF 8ml溶液にナトリウ厶メトキシドのメタノール溶液(28%)2.99mlを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にエチル 6−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキシラート350mgのDMF 4ml溶液を加え、100℃にて3時間攪拌した。室温まで放冷し、溶媒を留去後、メタノール、水、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、析出した固体をメタノール5mlで洗浄し、N−(ジアミノメチレン)−6−メチル−9−オキソ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド215mgを黄色固体として得た。
以上の実施例と同様にして実施例10〜110の化合物を製造した。それらの構造式と物理学的性状を後記のTable 7〜18に示す。また、後記Table 19及びTable 20の化合物は前記実施例や製造法に記載の方法とほぼ同様にして、或いはそれらの方法より当業者に自明な若干の変法を適用することにより、容易に製造することができる。
尚、後記表中の実施例56a及び56b、60a及び60b、78a及び78bの6化合物は、ラセミ体として製造した実施例56、60及び77の各化合物を光学活性カラムを用いて分割することにより製造した。以下に使用カラム及び移動相として用いた溶媒を示す。
実施例56a及び56b
使用カラム:CHIRALPAK AD−H、移動相:メタノール/ジエチルアミン。
実施例60a及び60b
使用カラム:CHIRALPAK OJ、移動相:エタノール/ジエチルアミン。
実施例78a及び78b
使用カラム:CHIRALPAK AD−H、移動相:ヘキサン/エタノール/トリエチルアミン。
表中の記号は以下の意味を有する。置換基の前の数字は置換位置を示す。
Me:メチル、Et:エチル、Bu:ノルマルブチル、REx:参考例番号、Ex:実施例番号、Cmp:化合物番号、RSyn及びSyn:製造法(数字は同様に製造した参考例番号及び実施例番号を示す。)、Str:構造式、Sal:塩(無記載:フリー体;HCl:塩酸塩;数字は酸成分のモル比を示し、例えば、2HClは二塩酸塩を意味する。)、Dat:物理化学的性状(FAB:FAB−MS、ESI:ESI−MS、EI:EI−MS、NMR:核磁気共鳴スペクトル(DMSO−d,TMS内部標準)の代表的なピークのδ値。
尚、表中の置換基に「」を付記した化合物は、当該置換基の結合した炭素の不斉に基づく光学異性体を分離した片方の活性体であることを示す。また、表中に示す以下の記号は高速液体クロマトグラフィーによる分析条件を示す。Proc.A:(カラム:CHIRALPAKAD−H[0.46cm I.D.x25cm]、移動相、メタノール/ジエチルアミン=100/0.1、流速:0.5ml/min、温度:20℃、波長:260nM)、Proc.B:(カラム:CHIRALPAK OJ[0.46cm I.D.x25cm]、移動相、エタノール/ジエチルアミン=100/0.1、流速:0.3ml/min、温度:40℃、波長:264nM)、Proc.C:(カラム:CHIRALPAK AD−H[0.46cm I.D.x25cm]、移動相、ヘキサン/エタノール/トリエチルアミン=50/50/0.05、流速:1.0ml/min、温度:25℃、波長:257nM)。




















【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるフルオレン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。

(式中の記号は以下の意味を示す。
及びR:同一又は互いに異なって、−R、低級アルケニル、低級アルキニル、ハロゲン、−OH、−O−R、−O−CO−R、−NH、−NR−R、−CN、−NO、−CHO、−CONH、−CO−NR−R、−COH、−CO−R、−CO−R、−NR−CO−R、−NR−CO−R、−O−CO−NR−R、−SH、−S(O)−R、−S(O)−NH、−S(O)−NR−R、−NR−S(O)−R、−R00−O−CO−R、−R00−NR−R、−R00−CN、−R00−CONH、−R00−CO−NR−R、−R00−COH、−R00−CO−R、−R00−CO−R、−R00−NR−CO−R、−R00−NR−CO−R、−R00−O−CO−NR−R、シクロアルキル又は含窒素飽和ヘテロ環。ここに当該含窒素飽和ヘテロ環は、低級アルキル、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、及びオキソ(=O)からなる群より選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;
:同一若しくは互いに異なって、−OH、−O−C1−4アルキル、−NH、−NR−C1−4アルキル及びハロゲンからなる群より選択される1以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル;
:同一若しくは互いに異なって、低級アルキル又はH;
00:同一若しくは互いに異なって、低級アルキレン;
p:0、1又は2;
n:0、1又は2;
m:0又は1;
及びR:同一又は互いに異なって、−H、−R、ハロゲン、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、−NR−CO−R、−O−R00−OH、−O−R00−O−R、シクロアルキル、含酸素飽和ヘテロ環、或いはR及びRが一体となって、オキソ(=O)、=N−OH、=N−OR及びテトラヒドロピラニリデンからなる群より選択される基を形成してもよく、或いはR及びRが一体となって、−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択される1〜2個の2価基で中断されていてもよい低級アルキレンを形成し、結合するC原子とともに3〜8員環を形成してもよい;
Z:−NH−;
:−H又はR;及び
及びR:同一又は互いに異なって、−H、−R、−CO−R、−CO−R、或いはR及びRが一体となって2価基を形成し、R及びRが結合している−N−C−Z−基とともに5員ヘテロ環を形成してもよく、このときZは更に、−O−又はS−であってもよく、当該5員環は低級アルキル、−OH、−O−R、−NH、−NR−R、及びオキソ(=O)からなる1〜2個の置換基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
が−H又はRであり、かつ、R及びRが−H又はRである、請求の範囲1記載のフルオレン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
、R及びRがいずれも−Hである、請求の範囲1記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
及びRが同一若しくは互いに異なって、−H、−R、−OH、−O−R、−O−R00−OH又は−O−R00−O−Rであるか、R及びRが一体となりオキソ基である、請求の範囲3記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
及びRが一体となって、「−O−、−S(O)−、−NR−及び−CONR−からなる群より選択される1〜2個の2価基で中断されていてもよい低級アルキレン」を形成し、それらが結合するC原子とともに3〜8員環を形成する、請求の範囲3記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、9−クロロ−N−(ジアミノメチレン)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−(ヒドロキシイミノ)−5−(ヒドロキシメチル)−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、8−クロロ−N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)スピロ[1,3−ジチオラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−4’,5’−ジヒドロ−3’H−スピロ[フルオレン−9,2’−フラン]−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)スピロ[シクロプロパン−1,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−メトキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−9−エチル−9−メトキシ−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体A)、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−ヒドロキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミド(光学活性体B)、N−(ジアミノメチレン)−5’−フルオロスピロ[1,3−ジチオラン−2,9’−フルオレン]−2’−カルボキサミド、及び、N−(ジアミノメチレン)−5−フルオロ−9−メトキシ−9−メチル−9H−フルオレン−2−カルボキサミドからなる群から選択される請求の範囲1記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
請求の範囲1記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩と、製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物。
【請求項8】
5−HT2B受容体及び5−HT受容体二重拮抗剤である請求の範囲7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
片頭痛予防剤である請求の範囲7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
5−HT2B受容体及び5−HT受容体二重拮抗剤、又は片頭痛予防剤の製造のための、請求の範囲1に記載の誘導体又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
請求の範囲1に記載のフルオレン誘導体又はその製薬学的に許容される塩の治療有効量を患者に投与することを含む、片頭痛の予防方法。

【国際公開番号】WO2005/080322
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519368(P2006−519368)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002950
【国際出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】