説明

フルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーの製造方法

【課題】耐熱性などに優れたフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】特定のフルオレン骨格を有する下式(1)の化合物と、ハロゲン原子を有する下式(2)のシラン化合物とを反応させ、フルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有するフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂や樹脂原料において、熱的特性(耐熱性など)、光学的特性(高屈折率など)などの重要な特性を付与又は改善するため、樹脂の重合成分を選択したり、樹脂を改質可能な化合物を添加するなどの方法がとられている。例えば、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現する方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。例えば、このようなフルオレン骨格を有する樹脂を用いた例として、特開2002−284864号公報(特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂で構成された成形材料が開示されている。また、特開2004−339499号公報(特許文献2)には、ビスフェノールフルオレン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンなどのフルオレン骨格を有する化合物を重合成分とする樹脂(ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール系樹脂、アニリン系樹脂など)と、添加剤とを含有する組成物が開示されている。
【0003】
一方、分子骨格中に、ケイ素骨格を有する樹脂は、高撥水性、高屈折率などを有することが知られており、このようなケイ素骨格とフルオレン骨格とを有するポリマーも知られている。例えば、Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry, Vol30 1401−1406(1992)(非特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格とジフェニルシラン骨格とを有するケイ素含有ポリマーが開示されており、このケイ素含有ポリマーが高いガラス転移温度(172℃)や優れた溶媒溶解性を示したことも記載されている。そして、この文献には、前記ケイ素含有ポリマーの合成プロセスとして、窒素下で、ジアニリノジフェニルシランおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを加熱し、均一な溶融混合物(160〜180℃)を得、1〜2Torrの減圧下で、この溶融混合物の重合を攪拌しながら200〜320℃の範囲の温度において行ったことが記載されている。
【0004】
しかし、この文献の方法では、ケイ素骨格に対応する化合物として、ジフェニルジアニリノシランのような特殊なモノマーを使用する必要があり実用的でない。また、高温かつ減圧下で反応させる必要があるため効率的ではない。
【特許文献1】特開2002−284864号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−339499号公報(特許請求の範囲、段落番号[0032])
【非特許文献1】Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry, Vol30 1401−1406(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、実用性が高いフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、穏和な条件でフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを得るためのモノマーとして、フルオレン骨格を有する特定のジオール(又はジチオール又はジアミン)と、特定のジハロシラン類とを組み合わせることにより、実用的かつ効率よくフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを製造できること、さらには、前記組み合わせにより、高温を要する溶融重合によらなくても、穏和な条件下(例えば、溶媒中、比較的低い温度)で前記ケイ素含有ポリマーが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明のフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーの製造方法では、下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物(ハロシラン、詳細にはジハロシラン)とを反応させる。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Eは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基、RおよびRは同一又は異なって置換基、Rはアルキレン基を示す。kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数である。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、XおよびXは同一又は異なってハロゲン原子を示す。RおよびRは同一又は異なって炭化水素基を示し、RおよびRは結合していてもよい。)
前記式(1)で表される化合物は、例えば、前記式(1)において、環Zがベンゼン環又はナフタレン環であり、Rがアルキル基又はアリール基であり、mが0〜2であり、RがC2−4アルキレン基であり、nが0〜10である化合物であってもよい。
【0013】
また、前記式(2)で表される化合物は、例えば、前記式(2)において、RおよびRがアルキル基又はアリール基である化合物であってもよい。また、前記式(2)で表される化合物は、前記式(2)において、RおよびRが結合し、下記式(A)で表される基を形成した化合物であってもよい。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、RおよびRは置換基、pおよびqは同一又は異なって0〜4の整数、Zは直接結合又はメチレン基を示す。)
前記製造方法は、代表的には、下記(i)〜(iii)のいずれかを充足してもよい。
【0016】
(i)前記式(1)において、環Zがベンゼン環、RがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基、Eが酸素原子、mが0〜2、RがC2−4アルキレン基、nが0〜4であり、かつ前記式(2)において、RおよびRがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基(特に、C6−10アリール基)である
(ii)前記式(1)において、環Zがナフタレン環、基RがC2−4アルキレン基、Eが酸素原子、nが0〜4であり、かつ前記式(2)において、RおよびRがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基(特に、C6−10アリール基)である
(iii)前記式(1)において、環Zがベンゼン環又はナフタレン環、RがC2−4アルキレン基、Eが酸素原子、nが0〜4であり、かつ前記式(2)において、RおよびRが結合してビフェニル−2,2’−ジイル基又はジフェニルメタン−2,2’−ジイル基を形成している。
【0017】
本発明の製造方法において、前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物とは、塩基触媒の存在下で反応させてもよい。
【0018】
また、本発明の製造方法において、前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物とは、溶媒の存在下で反応させてもよい。本発明の方法では、前記式(2)で表される化合物を用いることにより、溶媒の存在下で穏和な条件下でフルオレン骨格含有ポリマーを製造できる。前記製造方法では、反応温度40〜100℃で反応させてもよい。本発明ではこのような比較的低温であっても、反応を効率よく行うことができる。代表的には、前記製造方法では、反応温度40〜100℃程度で、かつ前記式(1)で表される化合物および前記式(2)で表される化合物の総量100重量部に対して50〜500重量部程度の溶媒の存在下で、常圧下で還流させつつ反応させてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーの製造方法では、ケイ素原料として、入手が容易な慣用のジハロシラン類を用いることができるため、ジアニリノジフェニルシランのような特殊な原料を使用する必要がなく、実用性が高い。また、溶融重合によらなくても、溶媒中で反応を行うことができ、穏和な条件でフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[フルオレン骨格含有ポリマーの製造方法]
本発明の製造方法では、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物(ジハロシラン類)とを反応(重合、縮合、縮合反応)させることにより、フルオレン骨格含有ポリマー(フルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマー、ケイ素含有ポリマー、ポリマーなどということがある)を製造する。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Eは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基、RおよびRは同一又は異なって置換基、Rはアルキレン基を示す。kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数である。)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、XおよびXは同一又は異なってハロゲン原子を示す。RおよびRは同一又は異なって炭化水素基を示し、RおよびRは結合していてもよい。)
(式(1)で表される化合物)
前記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセンなど)が挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0025】
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。なお、環Zが、縮合多環式芳香族炭化水素環である場合、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0026】
また、基Rで表される置換基としては、特に限定されず、例えば、シアノ基、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などであってもよく、特に、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0又は1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0027】
環Zに置換する置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)などのエーテル基;アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0028】
好ましい置換基Rは、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などであり、特に、C1−4アルキル基(特にメチル基)、C6−10アリール基(特にフェニル基)が好ましい。置換基Rは、同一の環Zにおいて、単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい(すなわち、mが複数である場合、Rは同一又は異なっていてもよい)。また、異なる環Zに置換する置換基Rは互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0029】
置換基Rの置換数mは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、特に限定されず、例えば、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4程度であってもよい。特に、環Zが、ベンゼン環である場合には、置換数mは、例えば、0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1(特に1)である。また、環Zが、ナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環である場合、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。なお、置換数mは、2つの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、環Zに対する基−[(OR−E−H]の置換位置に応じて適宜選択できる。例えば、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位(例えば、3位、3,5−位など)の適当な位置に置換できる。
【0030】
なお、前記式(1)において、環Zがベンゼン環であるとき、特に、m≧1であり、Rの少なくとも1つは炭化水素基であってもよい。すなわち、フルオレンの9位に置換する芳香族炭化水素環が、フェニル基(又はベンゼン環)であるとき、フェニル基は1以上(又は1〜4、好ましくは1〜2)の置換基を有し、置換基のうち少なくとも1つが炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、前記例示の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基など)が挙げられ、特にアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)又はアリール基であってもよい。このような化合物を用いて得られるフルオレン骨格含有ポリマーは、フェニル基に炭化水素基を有する特定のフルオレン骨格とすることにより、フェニル基が無置換のフルオレン骨格[すなわち、9,9−ビス(フェニル)フルオレン骨格]であるフルオレン骨格含有ポリマーに比べて、耐熱性などの特性を向上できる。また、フルオレンの9位に置換する芳香族炭化水素環をナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環とすることにより、耐熱性の向上に加えて、さらに熱膨張性を低減させやすい。
【0031】
前記式(1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、C2−10アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ヘキシレン基などのC2−6アルキレン基)などが例示でき、特に、C2−4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基などのC2−3アルキレン基)が好ましい。なお、Rは、同一の環Zにおいて、同一の又は異なるアルキレン基であってもよい(すなわち、nが複数である場合、Rは同一又は異なっていてもよい)。すなわち、nが2以上の場合、ポリアルコキシ(ポリオキシアルキレン)基[−(OR−]は、同一のオキシアルキレン基で構成されていてもよく、複数のオキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基とオキシプロピレン基など)で構成されていてもよい。通常、Rは同一の環Zにおいて、同一のアルキレン基であってもよい。また、Rは、異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0032】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)nは、0〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0〜12(例えば、1〜12)、好ましくは0〜8(例えば、1〜8)、さらに好ましくは0〜6(例えば、1〜6)、特に0〜4(例えば、1〜4)であってもよい。なお、置換数nは、異なる環Zにおいて、同一であっても、異なっていてもよい。また、2つの環Zにおいて、オキシアルキレン基の合計(n×2)は、0〜30程度の範囲から選択でき、例えば、0〜24(例えば、2〜20)、好ましくは0〜16(例えば、2〜14)、さらに好ましくは0〜12(例えば、2〜10)、特に0〜8(例えば、2〜8)であってもよい。なお、式(1)において、Eがイミノ基(−NH−)である場合、nは、通常、0である場合が多い。
【0033】
環Zに置換する基−[(OR−E−H]の置換位置は、特に限定されず、例えば、環Zがベンゼン環であるとき、フルオレン類の9位に置換するフェニル基の2〜6位のいずれであってもよい。特に、フェニル基の4位に基−[(OR−E−H]が置換していてもよい。
【0034】
好ましい前記式(1)で表される化合物には、例えば、(i)前記式(1)において、環Zがベンゼン環であり、Rがアルキル基(C1−4アルキル基など)又はアリール基(C6−10アリール基など)であり、mが0〜2(特に1〜2)であり、RがC2−4アルキレン基であり、nが0〜10(例えば、0〜4)である化合物、(ii)前記式(1)において、環Zがナフタレン環であり、基RがC2−4アルキレン基であり、nが0〜10(例えば、0〜4)である化合物などが含まれる。
【0035】
前記式(1)で表される化合物のうち、Eが酸素原子である代表的な化合物(フルオレン骨格を有するジオール)には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類などが含まれる。9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類(前記式(2)において、nが0、Eが酸素原子である化合物)としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(又は9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−キシリル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン(又は9,9−ビス(3−ヒドロキシ−2−キシリル)フルオレン)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン(又は9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−キシリル)フルオレン)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン(又は,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−キシリル)フルオレン)などの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アラルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリールC1−2アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類(環Zがベンゼン環である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(6−ヒドロキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−ヒドロキシナフチル)]フルオレンなど}などの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類(環Zがナフタレン環である化合物)などが挙げられる。
【0036】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類(前記式(1)において、nが1以上、Eが酸素原子である化合物)としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、nが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−又は3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−フェニル)フルオレンなど}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン(又は9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−トリル]フルオレン)、9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン(又は9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−キシリル]フルオレン)などの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−6アルキルフェニル)フルオレンなど}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−アリールフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC6−8アリールフェニル)フルオレンなど}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)においてnが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(6−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(1)においてnが1である化合物);およびこれらの化合物に対応し、前記式(1)においてnが2以上である9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)−フルオレン類{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−フルオレンなどの9,9−ビス[(ヒドロキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]−フルオレン(n=2の化合物)など}などが挙げられる。これらの化合物(ジオール)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0037】
好ましい前記式(1)で表される化合物には、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−6アルキルフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−6アルキルフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC6−8アリールフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0038】
特に、環Zがベンゼン環である場合には、前記のように、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの化合物が、得られるポリマーの耐熱性などの特性を向上させるなどの点で好ましい。
【0039】
また、前記式(1)で表される化合物のうち、Eが硫黄原子である代表的な化合物(フルオレン骨格を有するジチオール)には、上記例示の前記Eが酸素原子である化合物に対応し、前記酸素原子を硫黄原子に代えた化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−メルカプト−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−メルカプト−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−メルカプトフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[6−(2−メルカプトナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−又は6−メルカプトナフチル)]フルオレンなど}、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−フェニル)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−6アルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジC6−8アリールフェニル)フルオレンなど}、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[6−(2−(2−メルカプトエトキシ)ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−又は6−(2−メルカプトエトキシ)ナフチル)]フルオレンなど}などが含まれる。これらの化合物(ジチオール)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0040】
さらに、前記式(1)で表される化合物のうち、Eがイミノ基である代表的な化合物(フルオレン骨格を有するジアミン)には、上記例示の前記Eが酸素原子である化合物に対応し、前記酸素原子をイミノ基に代えた化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(ビスアニリンフルオレン)などの9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−アミノフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−アミノ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−アミノフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アミノナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[6−(2−アミノナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−又は6−アミノナフチル)]フルオレンなど}などが含まれる。これらの化合物(ジアミン)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
また、また、前記式(1)で表される化合物のうち、Eが異なる化合物を組み合わせてもよい。例えば、Eが酸素原子である化合物(ジオール)とEが硫黄原子である化合物(ジチオール)とを組み合わせて使用してもよい。通常、ジオール、ジチオールおよびジアミンは、組み合わせることなく、個別に用いる場合が多い。
【0042】
なお、前記式(1)で表される化合物は、市販品を使用してもよく、合成品を用いてもよい。例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類は、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報、特開2000−26349号公報、特開2002−47227号公報、特開2003−221352号公報などを利用して製造できる。また、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類は、前記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類の代わりに、ヒドロキシナフタレン類(例えば、ナフトールなどのナフトール類)を使用することにより製造できる。また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類は、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類と、基ORに対応する化合物(アルキレンオキサイド、ハロアルカノールなど)とを反応させることにより得られる。さらに、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類および9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類は、特開2002−338540号公報に記載の方法を利用して製造できる。そして、9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類および9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類は、それぞれ、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類および9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類の場合と同様にして製造できる。さらに、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類及び9,9−ビス(アミノナフチル)フルオレン類は、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニルフルオレン)又は9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類又はヒドロキシナフタレン類に代えて、対応する芳香族アミン類(例えば、アニリン、メチルアニリン、アミノナフタレンなど)を用いることにより調製できる。
【0043】
(式(2)で表される化合物)
本発明では、フルオレン骨格含有ポリマーを得るための原料モノマーとして、前記式(2)で表される化合物(ジハロシラン類)を用いる。このような化合物を使用することにより、高温度での溶融重合を要することなく、効率よくフルオレン骨格含有ポリマーを得ることできる。また、前記式(2)で表される化合物は、前記非特許文献1に記載のジフェニルジアニリノシランのように特殊な原料とは異なり、比較的入手が容易(また、合成する場合でも製造が容易)であるため、製法そのものの実用性が高い。
【0044】
前記式(2)において、XおよびXで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。好ましいハロゲン原子は塩素原子である。XおよびXは異なっていてもよいが、通常同一であってもよい。
【0045】
また、前記式(2)で表される化合物において、基Rおよび基Rで表される炭化水素基としては、例えば、飽和炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル、トリル、エチルフェニル、キシリル、ナフチルなどのC6−20アリール基、好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−6アルキル基、好ましくはC6−15アリール−C1−4アルキル基)など]、不飽和炭化水素基[前記飽和炭化水素基に対応する不飽和炭化水素基、例えば、アルケニル基(例えば、ビニル、アリルなどのC2−10アルケニル基、好ましくはC2−6アルケニル基)など]が挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、前記基Rの項で例示の基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン原子、(置換)アミノ基など)が挙げられる。炭化水素基に置換する置換基の個数は、特に限定されず、例えば、0〜4、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1であってもよい。置換基の個数が2以上である場合、複数の置換基は同一又は異なっていてもよい。
【0046】
なお、基Rおよび基Rは、それぞれ同一又は異なってもよい。
【0047】
また、前記式(2)において、基Rおよび基Rは結合していてもよい(すなわち、基Rおよび基Rが互いに結合してケイ素含有環を形成してもよい)。このような基Rおよび基Rが結合した基(二価基)としては、前記例示の炭化水素基などが互いに結合した基(詳細には、結合しケイ素に結合した二価基)であればよい。このような二価基としては、例えば、例えば、アルキレン基(例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などのC2−9アルキレン基、好ましくはC3−7アルキレン基)、下記式(A)で表される基などが含まれる。
【0048】
【化6】

【0049】
(式中、RおよびRは置換基、pおよびqは同一又は異なって0〜4の整数、Zは直接結合又はメチレン基を示す。)
上記式(A)において、基R及び基Rで表される置換基としては、前記例示の基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン原子、(置換)アミノ基など)などが挙げられる。また、置換基の個数pおよびqは、それぞれ、0〜4であればよく、好ましくは0〜1、さらに好ましくは0であってもよい。
【0050】
代表的な上記式(A)で表される基としては、ビフェニル類に対応する二価基(例えば、ビフェニル−2,2’−ジイル基など)、ジフェニルメタン類に対応する二価基(例えば、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基など)などが挙げられる。
【0051】
好ましい基Rおよび基Rとしては、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基など)、アリール基(フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基)などの飽和炭化水素基が含まれる。特に、得られるポリマーの耐熱性や共重合性の観点などから、基Rおよび基Rのうち、少なくとも一方がアリール基であるのが好ましい。代表的な基Rおよび基Rの組み合わせとしては、(1)基Rおよび基Rがいずれもアルキル基である組み合わせ、(2)基Rおよび基Rがいずれもアリール基である組み合わせ、(3)基Rがアリール基であり、基Rがアリール基以外の炭化水素基(例えば、アルキル基)である組み合わせなどが挙げられる。また、前記式(2)において、基Rおよび基Rが結合して形成された基(前記式(A)で表される基、例えば、ビフェニル−2,2’−ジイル基など)も好ましい。
【0052】
代表的な前記式(2)で表される化合物としては、ジハロジアルキルシラン(例えば、ジメチルジクロロシランなどのジC1−4アルキルジハロシラン)、アルキル−アリールジハロシラン(例えば、メチルフェニルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C6−10アリールジハロシラン)、アルキル−シクロアルキルジハロシラン(例えば、メチルシクロヘキシルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C5−10シクロアルキルジハロシラン)、ジアリールジハロシラン(例えば、ジフェニルジハロシラン、ジトリルジハロシラン、ジキシリルジハロシラン、フェニルトリルジハロシランなどのジC6−10アリールジハロシラン)、RおよびRが互いに結合した環状ジハロシランなどが挙げられる。
【0053】
環状ジハロシランとしては、式(2)において、RおよびRが結合して環を形成した化合物であれば特に限定されないが、例えば、シラシクロアルカン(例えば、シラシクロペンタン、シラシクロヘキサンなどの4乃至10員シラシクロアルカン、好ましくは5乃至8員シラシクロアルカンなど)や、下記式(2a)で表される化合物などが含まれる。
【0054】
【化7】

【0055】
(式中、R、R、p、q、Z、XおよびXは前記と同じ。)
上記式(2a)で表される化合物は、前記式(A)で表される二価基に対応する化合物(ジハロシラン)である。このような化合物としては、例えば、9,9−ジハロ−9−シラフルオレン類(例えば、9,9−ジクロロ−9−シラフルオレンなど)、5,5−ジハロ−5−シラ−5,10−ジヒドロアントラセン類(例えば、5,5−ジクロロ−5−シラ−5,10−ジヒドロアントラセンなど)などが挙げられる。
【0056】
これらのジハロシラン類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
なお、本発明の製造方法では、前記式(1)で表される化合物および前記式(2)で表される化合物を使用する限り、他の化合物(モノマー)を併用してもよい。例えば、前記式(1)で表される化合物と、他のジオール、他のジチオールや他のジアミンとを組み合わせてもよい。他のジオール(前記式(1)で表される化合物ではないジオール)としては、例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−又は1,2−又は1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、芳香脂肪族ジオール[1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]、ビフェノール、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど]などが挙げられる。これらの他のジオールは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
なお、これらの他のジオールの割合は、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.3モル以下(例えば、0〜0.25モル程度)、好ましくは0.2モル以下(例えば、0.01〜0.15モル程度)、さらに好ましくは0.1モル以下(例えば、0.02〜0.08モル程度)であってもよい。
【0059】
また、他のジチオールとしては、前記例示のジオールに対応する化合物[アルカンジチオール(ジチオエチレングリコールなどのC2−4アルカンジチオールなど)など]などが挙げられる。他のジチオールの割合もまた、前記式(2)で表される化合物に対する他のジオールの割合と同様である。また、他のジアミンの場合も同様である。
【0060】
反応(重合反応)において、前記式(1)で表される化合物[特に、Eが酸素原子である化合物(すなわち、ジオール)]と、前記式(2)で表される化合物との割合は、前者/後者(モル比)=1/0.7〜1/1.5、好ましくは1/0.8〜1/1.2、さらに好ましくは1/0.9〜1/1.1、特に1/0.95〜1/1.05程度であってもよい。
【0061】
なお、他のジオール又はジチオール(又はジアミン)を用いる場合、前記式(1)で表される化合物と他のジオール又はジチオール(又はジアミン)との総量を前者として、上記と同様の割合で反応させてもよい。
【0062】
また、反応において、重合性を損なわない範囲で、少量であれば、3官能以上の化合物、例えば、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール[グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオール、フルオレン骨格含有化合物(9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン)など]、トリハロシラン類[例えば、アルキルトリハロシラン(例えば、メチルトリクロロシランなどのトリハロC1−4アルキルシラン)、アリールトリハロシラン(例えば、フェニルトリクロロシランなどのトリハロC6−10アリールシラン)、架橋環式炭化水素基を有するトリハロシラン(トリクロロシリルノルボルネンなど)など]、テトラハロシラン類(テトラクロロシランなど)などを使用してもよい。これらの3官能以上の化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0063】
反応は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、酸、塩基などが挙げられ、特に塩基(塩基触媒)を好適に用いることができる。
【0064】
塩基(塩基性触媒)としては、無機塩基[例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)などの無機塩基]、有機塩基{例えば、脂肪族アミン[第1乃至3級脂肪族アミン、例えば、トリアルキルアミン(トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリブチルアミンなど)、トリシクロアルキルアミン(トリシクロヘキシルアミンなど)、メチルジシクロヘキシルアミンなどの脂肪族第3級アミン]、芳香族アミン(第1乃至3級芳香族アミン、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン)、複素環式アミン(第1乃至3級複素環式アミン、例えば、ピコリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1−メチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−センなどの複素環式第3級アミン、ピペリジンなどの複素環式第2級アミンなど)など]などのアミン類;カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など);第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラアルキルアンモニウム;塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムなどの塩化ベンジルトリアルキルアンモニウムなど);第4級ホスホニウム塩(塩化ベンジルトリフェニルホスホニウムなど);アルミニウム化合物(トリアルキルアルミニウムなど);ゲルマニウム化合物;スズ化合物(塩化スズ、スズカルボキシレート類など);チタン化合物(チタンアルコキシドなど)など}などが例示できる。
【0065】
触媒の使用量は、例えば、前記式(1)で表される化合物(又は前記式(2)で表される化合物)1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜3モル程度であってもよい。
【0066】
反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、通常、溶媒の存在下で行ってもよい。本発明では、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを組み合わせるため、溶媒中で反応させることができる。
【0067】
溶媒としては、炭化水素系溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテルなどの鎖状エーテル類;ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、イソブチルメチルケトンなどのジアルキルケトン)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ニトリル類(アセトニトリルなど)などが挙げられる。また、反応温度において液状であれば、前記触媒(塩基触媒)を溶媒として使用することもできる。
【0068】
溶媒の割合は、前記式(1)で表される化合物および前記式(2)で表される化合物の総量100重量部に対して、例えば、30〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜400重量部程度であってもよい。溶媒の割合を上記範囲に調整すると、生成するポリマー又はオリゴマーを溶解させつつポリマーの分子鎖を効率よく成長させることができ、反応効率を高めることができる。
【0069】
反応は、常温下で行ってもよく、加温下で行ってもよい。反応温度は、例えば、20〜150℃、好ましくは30〜120℃、さらに好ましくは40〜100℃程度であってもよい。本発明では、比較的低い反応温度であってもフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを得ることができる。
【0070】
また、反応は溶媒を還流させつつ行ってもよい。なお、反応は、通常、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下で行ってもよい。反応は、通常、常圧下で(例えば、常圧下で還流させつつ)行ってもよい。本発明の方法は、常圧下(さらには比較的低温)で行うことができ、実用性が高い。
【0071】
なお、反応終了後、生成物であるフルオレン骨格含有ポリマーは、慣用の分離方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0072】
[フルオレン骨格含有ポリマー]
本発明の製造方法により得られるフルオレン骨格含有ポリマーは、主鎖に、特定のフルオレン骨格とケイ素原子骨格とを組み合わせて有するポリマーであり、下記式(3)で表される構造単位を有している。
【0073】
【化8】

【0074】
(式中、Z、E、R、R、R、R、R、k、m、およびnは前記と同じ。)
なお、本発明の方法により得られるフルオレン骨格含有ポリマーは、同一又は異なる前記式(3)で表される構造単位を有していてもよい。例えば、前記ポリマーは、基R及び/又は基Rにおいて異なる構造単位(3)を組み合わせて有するポリマーであってもよい。このようなポリマーは、前記方法において、複数の式(1)で表される化合物及び/又は複数の式(2)で表される化合物を組み合わせて使用することにより得ることができる。また、前記ポリマーは、前記式(3)で表される構造単位のみを有してもよく、前記式(3)で表される構造単位と、他の構造単位とで構成されていてもよい。このような他の構造単位を有するポリマーは、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物に加えて、前記のように他のモノマー(例えば、前記式(2)で表される化合物ではないジオール又はジチオール、前記3官能以上の化合物など)を反応させることにより得ることができる。
【0075】
本発明の方法により得られるポリマーの数平均分子量は、例えば、3000〜500000程度の範囲から選択でき、例えば、5000〜300000、好ましくは6000〜200000、さらに好ましくは7000〜150000、特に10000〜100000(例えば、12000〜70000)程度であってもよく、通常8000〜80000(例えば、9000〜50000)程度であってもよい。本発明の方法では、穏和な条件であっても、比較的高分子量のポリマーを得ることができる。また、本発明のポリマーの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば、1〜4、好ましくは1.3〜3.5、さらに好ましくは1.5〜3程度であってもよく、通常1.2〜2.5(例えば、1.4〜2)程度であってもよい。
【0076】
前記ポリマーは、特定のフルオレン骨格とケイ素原子骨格を有するポリマーであり、熱的特性(耐熱性など)、光学的特性などの各種特性に優れている。例えば、前記ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、90℃以上(例えば、95〜370℃)の範囲から選択でき、120〜350℃、好ましくは130〜300℃、さらに好ましくは140〜270℃(例えば、150〜250℃)、特に155〜230℃(例えば、160〜220℃)程度であってもよい。なお、前記Tgは、前記式(1)においてnが0であるとき、比較的高い値となる場合が多い。
【0077】
また、前記ポリマーの熱分解温度Td(5重量%の重量が減少する温度)は、窒素中(又は窒素雰囲気下)において、400℃以上(例えば、410〜700℃)の範囲から選択でき、例えば、420〜650℃(例えば、430〜620℃)、好ましくは450〜600℃(例えば、480〜580℃)、さらに好ましくは500℃以上(例えば、520〜570℃程度)であってもよく、通常430℃以上(例えば、450〜650℃、好ましくは500〜620℃程度)であってもよい。特に、前記Tdは、前記式(1)においてnが0であるとき、著しく大きくでき、例えば、500℃以上である場合が多い。
【0078】
さらに、前記ポリマーの屈折率(nD)は、波長589nmにおいて、例えば、1.62以上(例えば、1.625〜1.9程度)、好ましくは1.63以上(例えば、1.635〜1.85程度)、さらに好ましくは1.64以上(例えば、1.645〜1.8程度)であり、通常1.64〜1.67(例えば、1.64〜1.66)程度であってもよい。
【0079】
さらにまた、前記ポリマーの複屈折率は、波長546nmにおいて、2nm以下(例えば、0〜1.5nm程度)の範囲から選択でき、例えば、1nm以下(例えば、0〜0.5nm程度)、好ましくは0.3nm以下(例えば、0〜0.2nm程度)、さらに好ましくは0.1nm以下(例えば、0.00〜0.08nm程度)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の方法は、入手しやすいジハロシラン類を使用できるため、フルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを得るための方法として実用的である。また、本発明の方法では、高温での反応や溶融重合を経なくても、穏和な条件下で、効率よくフルオレン骨格含有ポリマーを得ることができる。そして、本発明の方法により得られるフルオレン骨格含有ポリマーは、透明性、耐熱性などの各種特性に優れている。特に、高い耐熱性に加えて、高い屈折率、低複屈折などの優れた光学的特性も有している。また、添加剤分散性にも優れ、各種添加剤を含む成形材料としても好適である。そのため、前記フルオレン骨格含有ポリマーは、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、前記ポリマー(又はその樹脂組成物)又はその成形体(例えば、機能発現剤(色素など)を含有する樹脂組成物およびその成形体)は、塗料、帯電防止材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザー、感熱記録材料、ホログラム記録材料、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、有機感光体、カラーフィルタ、摺動部材、自動車部品材料、航空・宇宙材料、キャリア輸送剤、インキ、接着剤、粘着剤、建材、内装材、樹脂充填材、着色ガラス、発光体、センサーなどに好適に利用できる。
【0081】
特に、本発明の方法により得られるフルオレン骨格含有ポリマーは、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような前記フルオレン骨格含有ポリマーで構成された光学用成形体としては、光学フィルムなどが挙げられる。
【0082】
光学フィルムとしては、偏光フィルム(及びそれを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム)、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。とりわけ、本発明のフィルムは、機器のディスプレイに用いる光学フィルムとして有用である。このような本発明の光学フィルムを備えたディスプレイ用部材(又はディスプレイ)としては、具体的には、パーソナル・コンピュータのモニタ、テレビジョン、携帯電話、カー・ナビゲーション、タッチパネルなどのFPD装置(例えば、LCD、PDPなど)などが挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0084】
なお、実施例において得られたポリマーの物性および評価は以下の方法によって行った。
【0085】
(1)平均分子量測定
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)及びその分布(Mw/Mn)は、溶出液としてクロロホルムを用い、30℃(流速0.085mL/分)の条件で、2本の連続した線状ポリスチレンゲルカラム(Tosoh TSKgel G5000HXL、G4000HXL)を備えたJASCO Gulliverにより、ポリスチレン標準で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0086】
(2)ガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量計(島津製作所(株)製、「DSC−60」)を用い、50mL/分の窒素流下、10℃/分の昇温条件で測定した。
【0087】
(3)熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、島津製作所(株)製、「TGA−50」装置を用いて、窒素雰囲気下(流量50ml/分)中、加熱速度10℃/分で行い、熱分解温度を測定した。
【0088】
(4)光線透過率
「UV−3600」(島津製作所(株)製)を用い、厚み0.1mmのサンプルについて、400nmでの光線透過率を測定した。なお、サンプルは、得られたポリマーを2%の濃度でジオキサンに溶解した溶液をガラスシャーレに塗布し、ゆっくりと乾燥させ、乾固後に90℃で一晩乾燥して作成したものを用いた。
【0089】
(5)屈折率:多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(アタゴ(株)製)を用い、表3に示した各波長での屈折率を測定した。なお、サンプルは、得られたポリエステル樹脂を2重量%の濃度でジオキサンに溶解した溶液をガラスシャーレに塗布し、自然乾燥後、一晩100℃で減圧乾燥して作成したものを用いた。
【0090】
(6)H−NMR
H−NMRスペクトルは、内標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDClを用いて、JNM−LA400/WB(日本電子製)によって室温で測定した。
【0091】
(7)複屈折率
複屈折率は、偏光顕微鏡「OPTIPHOTO−POL」(Nikon(株)製)を用い、546nmの光源にて測定した。なお、サンプルは、得られたポリマーをフィルム化したものを用いた。また、実施例5では、さらにフィルムを2倍に一軸延伸した後の複屈折率(レターデーション値)も測定した。
【0092】
[実施例1]
アルゴン雰囲気下、マグネチックスターラーおよび乾燥管を備えた二口丸底フラスコ(50mL)中で、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン4.02g(10.6mmol)、ジクロロジフェニルシラン2.69g(10.6mmol)、ピリジン(和光純薬工業製)2.1mL(26mmol)を蒸留テトラクロロメタン10mLに溶解した混合物を、還流下(80℃)にて18時間加熱することにより反応させた。得られた反応混合物をテトラクロロメタン50mL、クロロホルム70mLに溶解し、メタノール900mLに投入して沈殿物を得た。さらにこの沈殿物を乾燥し、クロロホルム50mLに溶解してメタノール450mLに投入し、白色の沈殿物5.28g(収率79%)を得た。H−NMRにより得られた沈殿物を分析した結果、目的物である9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ジクロロジフェニルシラン共重合体であることを確認した。得られた沈殿物(共重合体)の重量平均分子量Mwは30000、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0093】
得られた沈殿物(共重合体)のガラス転移温度は171℃であり、5%熱重量減少温度は528℃と非常に耐熱性に優れることがわかった。また得られた沈殿物(共重合体)をフィルム化した結果、光線透過率は75%であり、透明性に優れるとともに、屈折率が1.647と高屈折率、さらには複屈折率が0.0と低複屈折を示し、光学的特性に優れていることがわかった。
【0094】
以下に、得られた沈殿物(共重合体)のH−NMRスペクトルデータを示す。
【0095】
H−NMR(400MHz,CDCl,δ)ppm:7.8−7.6(m,6H)、7.5−7.0(m,12H)、6.9−6.8(m,2H)、6.7−6.5(m,4H)、2.05(s,6H)。
【0096】
[実施例2]
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン4.46g(11.8mmol)、ジクロロジメチルシラン(和光純薬工業製)1.52g(11.8mmol)、ピリジン2.5mL(31mmol)を用いると共に、反応温度を60℃とした他は、実施例1と同様にして沈殿物(共重合体)4.80g(収率80%)を得た。H−NMRにより得られた沈殿物を分析した結果、目的物である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ジクロロジメチルシラン共重合体であることを確認した。得られた沈殿物(共重合体)の重量平均分子量Mwは16000、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0097】
得られた沈殿物(共重合体)のガラス転移温度は152℃、5%熱重量減少温度は438℃、光線透過率は79%、屈折率は1.638、複屈折は0.0であった。
【0098】
以下に、得られた沈殿物(共重合体)のH−NMRスペクトルデータを示す。
【0099】
H−NMR(400MHz,CDCl,δ)ppm:7.72(s,2H)、7.31(s,4H)、7.17(s,2H)、6.92(s,2H)、6.78(s,2H)、6.63(s,2H)、2.00(s,6H)、0.31(s,6H)。
【0100】
[実施例3]
2.69gのジクロロジフェニルシランを2.97gの9,9−ジクロロシラフルオレンに変更した以外は実施例1と同様にして沈殿物(共重合体)4.3g(収率76%)を得た。得られた沈殿物(共重合体)において、Mwは14000、Mw/Mnは1.9、ガラス転移温度は184℃、5%熱重量減少温度は541℃、光線透過率は76%、屈折率は1.65、複屈折は0.0であった。
【0101】
[実施例4]
溶媒を蒸留テトラクロロメタンから蒸留トルエンに変更し、温度を80℃から100℃に変更し、反応時間を18時間から8時間に変更した以外は実施例2と同様に反応、再沈殿させた結果、白色の沈殿物4.93g(収率73%)を得た。H−NMRにより得られた沈殿物を分析した結果、目的物であるビスクレゾールフルオレン−ジクロロジフェニルシラン共重合体であることを確認した。得られた沈殿物(共重合体)の重量平均分子量Mwは21000、分子量分布Mw/Mnは1.6であった。得られた沈殿物(共重合体)のガラス転移温度は151℃、5%熱重量減少温度は437℃、光線透過率は79%、屈折率は1.638、複屈折は0.0であった。
【0102】
[実施例5]
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン4.46g(11.8mmol)を9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン5.17g(11.8mmol)に変更した以外は実施例2と同様に合成した結果、沈殿物が得られた。H−NMRにより得られた沈殿物を分析した結果、目的物の共重合体であることを確認した。得られた沈殿物(共重合体)の重量平均分子量Mwは75000、分子量分布Mw/Mnは2.3であった。
【0103】
以下に、得られた沈殿物(共重合体)のH−NMRスペクトルデータを示す。
【0104】
H−NMR(400MHz,CDCl,δ)ppm:7.68(d,2H)、7.62(m、10H)、7.4−7.2(d,4H)、7.19(t,2H)、7.03(d、4H)、6.65(d,4H)、4.04(t、4H)、3.96(t,4H)。
【0105】
得られた沈殿物(共重合体)のガラス転移温度は99.8℃であり、5%熱重量減少温度は443℃であった。また、得られた沈殿物(共重合体)をフィルム化した結果、屈折率が1.659と高屈折率であり、さらにはレターデーションが0.0/nm、2倍に延伸した後のレターデーションも0.0/nmと極めて低い複屈折を示し、光学的特性に優れていることがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物とを反応させてフルオレン骨格を有するケイ素含有ポリマーを製造する方法。
【化1】

(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Eは酸素原子、硫黄原子又はイミノ基、RおよびRは同一又は異なって置換基、Rはアルキレン基を示す。kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数である。)
【化2】

(式中、XおよびXは同一又は異なってハロゲン原子を示す。RおよびRは同一又は異なって炭化水素基を示し、RおよびRは結合していてもよい。)
【請求項2】
式(1)において、環Zがベンゼン環又はナフタレン環であり、Rがアルキル基又はアリール基であり、mが0〜2であり、RがC2−4アルキレン基であり、nが0〜10である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(2)において、RおよびRがアルキル基又はアリール基である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
式(2)において、RおよびRが結合し、下記式(A)で表される基を形成している請求項1記載の製造方法。
【化3】

(式中、RおよびRは置換基、pおよびqは同一又は異なって0〜4の整数、Zは直接結合又はメチレン基を示す。)
【請求項5】
下記(i)〜(iii)のいずれかを充足する請求項1記載の製造方法。
(i)式(1)において、環Zがベンゼン環、RがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基、Eが酸素原子、mが0〜2、RがC2−4アルキレン基、nが0〜4であり、かつ式(2)において、RおよびRがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基である
(ii)式(1)において、環Zがナフタレン環、基RがC2−4アルキレン基、Eが酸素原子、nが0〜4であり、かつ式(2)において、RおよびRがC1−4アルキル基又はC6−10アリール基である
(iii)式(1)において、環Zがベンゼン環又はナフタレン環、RがC2−4アルキレン基、Eが酸素原子、nが0〜4であり、かつ式(2)において、RおよびRが結合してビフェニル−2,2’−ジイル基又はジフェニルメタン−2,2’−ジイル基を形成している
【請求項6】
塩基触媒の存在下で反応させる請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
溶媒の存在下で反応させる請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
反応温度40〜100℃で反応させる請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物の総量100重量部に対して50〜500重量部の溶媒の存在下で、常圧下で還流させつつ反応させる請求項8記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−239956(P2008−239956A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6434(P2008−6434)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】