説明

フルオレン骨格を有するポリアリレート樹脂

【課題】高耐熱性と高屈折率とを両立できるハロゲンフリーのポリアリレートを提供する。
【解決手段】ジオール成分とジカルボン酸成分とを重合成分とするポリエステル樹脂において、前記ジオール成分を、9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有する化合物(例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなど)で構成するとともに、前記ジカルボン酸成分を芳香族ジカルボン酸成分(例えば、ベンゼンジカルボン酸成分、ナフタレンジカルボン酸成分、およびビフェニルジカルボン酸成分から選択された少なくとも1種)で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のフルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有する新規なポリアリレートに関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物は、高耐熱性などの特性を有することが知られており、このようなビスフェノール化合物を用いたポリアリレートも開発されている。
【0003】
例えば、特開2000−79768号公報(特許文献1)には、熱転写記録用シートの耐熱保護潤滑層に、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどをビスフェノール化合物とするポリアリレートを含有させることが開示されている。しかし、この文献で得られるポリアリレートのガラス転移温度(Tg)は、最高でも288℃であり、耐熱性の点で十分ではない。また、この文献のポリアリレートは、比較的高屈折率ではあるが、さらなる向上された屈折率を有する光学的特性に優れたポリアリレートの開発が望まれる。
【0004】
また、フルオレン骨格にハロゲン原子を含むビスフェノール化合物を用いて、さらに高耐熱性のポリアリレートを得る試みもなされている。特開2002−145998号公報(特許文献2)には、ビスフェノール化合物として、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレンなどを用いたポリアリレートが開示されている。また、特開2006−89541号公報(特許文献3)には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレンなどのハロゲン含有ビスフェノール由来の骨格と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびテレフタル酸から選択された少なくとも2種のジカルボン酸由来の骨格とを有するポリアリレートが開示されている。
【0005】
これらの文献では、ガラス転移温度が300℃を超える高耐熱性のポリアリレートが得られる。しかし、このようなポリアリレートは、ハロゲンを含んでおり、着色し易く、環境上問題となる場合もある。
【0006】
なお、特開2007−99741号公報(特許文献4)には、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどのフルオレン骨格を有するビスナフトール化合物が開示されている。そして、この文献には、このようなビスナフトール化合物を樹脂原料として使用できると記載されているものの、その詳細については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−79768号公報(特許請求の範囲、段落[0022]、実施例)
【特許文献2】特開2002−145998号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2006−89541号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2007−99741号公報(特許請求の範囲、段落[0064])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、縮合多環式アリールフルオレン骨格(特に、ナフチルフルオレン骨格)を有する新規なポリアリレートを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ハロゲン原子を有していなくても、高耐熱性と高屈折率とを両立できるハロゲンフリーのポリアリレートを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、高耐熱性および高屈折率であるにもかかわらず、溶剤に対する溶解性に優れるポリアリレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ジオール成分として、縮合多環式アレーン(特にナフタレン)骨格を有する特定のフルオレンジオール化合物[9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有する化合物]を用い、さらに、このようなフルオレンジオール化合物と、芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせることにより新規なポリアリレートが得られること、また、このようなポリアリレートは、ポリマー鎖又はポリマー骨格中に実質的にハロゲンを有していなくても、高耐熱性と高屈折率とを有し、しかも、このような特性を有するにもかかわらず、意外にも、汎用の溶剤(例えば、テトラヒドロフランなど)に溶解可能であり、実用性においても優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明のポリアリレートは、9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有する化合物(a)(例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類)を含むジオール成分(A)と、芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリアリレートである。前記化合物(a)は、特に、ハロゲンを有しない化合物であってもよい。
【0013】
本発明のポリアリレートは、ハロゲン(又はハロゲン原子)を有していなくても、高耐熱性、高屈折率などの特性を有しており、例えば、ポリマー骨格中にハロゲン(又はハロゲン原子)を有さず、温度25℃、波長589nmにおける屈折率が1.68以上であり、ガラス転移温度が300℃以上であるポリマー(ポリアリレート)であってもよい。
【0014】
また、本発明のポリアリレートは、ハンドリング性の観点から、比較的低分子量(例えば、数平均分子量が30000以下)であってもよい。
【0015】
代表的な本発明のポリアリレートには、前記化合物(a)が、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンであり、前記芳香族ジカルボン酸成分が、ベンゼンジカルボン酸成分、ナフタレンジカルボン酸成分、およびビフェニルジカルボン酸成分から選択された少なくとも1種を含み、ポリマー骨格中にハロゲンを有さず、温度25℃、波長589nmにおける屈折率が1.7以上であり、ガラス転移温度が310℃以上であり、数平均分子量が25000以下であるポリアリレートなどが含まれる。
【0016】
本発明には、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを反応させ、前記ポリアリレートを製造する方法も含まれる。この方法では、前記ジカルボン酸成分(B)としてジカルボン酸ハライドを用い、塩基(例えば、ピリジンなどの第3級アミン)の存在下で溶液重合させてもよい。塩基の使用量は、例えば、前記ジオール成分(A)のヒドロキシル基1モルに対して1〜10モル当量程度であってもよい。
【0017】
本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成された成形体(例えば、光学フィルム)なども含まれる。このような成形体は、延伸フィルムであってもよい。
【0018】
なお、本明細書において、「ジカルボン酸成分」とは、特に断りのない限り、ジカルボン酸のみならず、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物など)を含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、特定のフルオレンジオール化合物を用いることにより、縮合多環式アリールフルオレン骨格(特に、ナフチルフルオレン骨格)を有する新規なポリアリレートを得ることができる。このような新規なポリアリレートは、高耐熱性と高屈折率とを両立でき、特に、このような特性はポリマー鎖又はポリマー骨格中にハロゲンを有していなくても、すなわち、ハロゲンフリーのポリアリレートにおいても実現できる。さらに、本発明のポリアリレートは、高耐熱性および高屈折率であるにもかかわらず、溶剤に対する溶解性(溶剤溶解性)に優れており、実用性に優れている。このような本発明のポリアリレートは、高耐熱性で光学的特性にも優れているため(例えば、高屈折率、低複屈折などであるため)、フィルム(特に、光学フィルム)などの成形体を形成するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[ポリアリレート]
本発明のポリアリレート(芳香族ポリエステル樹脂)は、特定のジオール成分と特定のジカルボン酸成分とを重合成分とする樹脂[又は特定のジオール成分由来の骨格(又は残基)と特定のジカルボン酸成分由来の骨格(又は残基)とを有する樹脂]である。
【0021】
(ジオール成分)
ジオール成分(ジオール成分(A)ということがある)は、9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有する化合物(化合物(a)、フルオレン骨格を有するジオールなどということがある)を少なくとも含んでいる。このような化合物(a)は、9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有している限り、フルオレンや、フルオレンの9位に置換した縮合多環式アリール基に、置換基(後述の置換基など)を有していてもよい。
【0022】
このような化合物(a)は、代表的には、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、環Zは縮合多環式アレーン環を示し、Rは置換基を示し、Rは置換基を示し、mは0〜4の整数、nは0以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表される縮合多環式アレーン(又は縮合多環式芳香族炭化水素)環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式アレーン環、好ましくはC10−16縮合二環式アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0025】
基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、アルキル基などのハロゲン原子でない基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、mが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数mは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0026】
なお、前記式(1)において、ヒドロキシ基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。特に、ヒドロキシ基は、縮合多環式アレーン環Zにおいて、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0027】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基、好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0028】
好ましい基Rとしては、ハロゲン原子でない基、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
【0029】
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0030】
代表的な化合物(a)(又は前記式(1)で表される化合物)には、ハロゲンを有しない化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類(又は9−フルオレニリデン−ジナフトール類)などが含まれる。
【0031】
これらの化合物(a)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
なお、ジオール成分は、化合物(a)のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、芳香族ジオール成分(化合物(a)でない芳香族ジオール成分)を含んでいてもよい。芳香族ジオール成分としては、例えば、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、ビフェノール類(ビフェノールなど)、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど]、化合物(a)でないフルオレン骨格を有するジオール[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど)などの前記式(1)において環Zがベンゼン環である化合物など]などが挙げられる。芳香族ジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0033】
芳香族ジオール成分を併用する場合、化合物(a)と芳香族ジオール成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜50/50、好ましくは99.5/0.5〜60/40、さらに好ましくは99/1〜70/30(例えば、97/3〜80/20)程度であってもよい。
【0034】
また、ジオール成分は、本発明の効果を害しない範囲であれば、非芳香族ジオール成分を含んでいてもよい。このような非芳香族ジオール成分としては、脂肪族ジオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)など]、脂環族ジオール[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)など]、芳香脂肪族ジオール[例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]などが挙げられる。これらの非芳香族ジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0035】
非芳香族ジオール成分を用いる場合、化合物(a)と、非芳香族ジオール成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜70/30、好ましくは99.8/0.2〜80/20、さらに好ましくは99.5/0.5〜90/10(例えば、99/1〜95/5)程度であってもよい。
【0036】
ジオール成分において、化合物(a)の割合は、ジオール成分全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%程度)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜100モル%程度)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%程度)であってもよい。
【0037】
なお、必要に応じて、ジオール成分に加えて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分[アルカンポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなど)など]を少量[例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.01〜8モル%、好ましくは0.05〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%程度)]使用してもよい。
【0038】
ジオール成分(およびポリオール成分)は、通常、ハロゲンを有しない又はポリアリレートにハロゲンを導入しない化合物であってもよい。
【0039】
なお、反応に使用するジオール成分は、重合方法に応じて、ジオールの他、エステル(ジオールの酢酸エステルなど)などであってもよい。
【0040】
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分(ジカルボン酸成分(B)ということがある)は、少なくとも芳香族ジカルボン酸成分を含んでいる。
【0041】
芳香族ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体などが含まれる。
【0042】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、アレーンジカルボン酸[例えば、ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;メチルテレフタル酸、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルベンゼンジカルボン酸など)、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などのC6−14アレーン−ジカルボン酸、好ましくはC6−12アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくはC6−10アレーン−ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリールC6−10アレーンジカルボン酸]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジフェニルC1−4アルカン−ジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸{例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−10アリール)フルオレン]、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレン)、9,9−ジアルキル−ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシ−9,9−ジメチルフルオレンなどの9,9−ジC1−10アルキル−ジカルボキシフルオレン)など}などが挙げられる。
【0043】
また、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステル、モノ酸ハライド又はジハライドであってもよい。なお、芳香族ジカルボン酸成分は、ポリアリレートの製造方法などに応じて選択できるが、溶液重合法、界面重合法などでは、芳香族ジカルボン酸の酸ハライドを使用してもよい。
【0044】
芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0045】
代表的なジカルボン酸成分には、ベンゼンジカルボン酸成分(テレフタル酸成分、イソフタル酸成分など)、ナフタレンジカルボン酸成分、ビフェニルジカルボン酸成分などが含まれる。
【0046】
また、芳香族ジカルボン酸成分は、特に、多環式芳香族ジカルボン酸成分を含んでいてもよい。芳香族ジカルボン酸成分を多環式芳香族ジカルボン酸成分で構成すると、前記化合物(a)との組合せにより、ポリアリレートの屈折率などを大きくでき、ポリアリレートの光学的特性をより一層向上できる。
【0047】
多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、多環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)が挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸としては、前記芳香族ジカルボン酸のうち、縮合多環式芳香族ジカルボン酸(例えば、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジカルボキシフルオレン(フルオレンジカルボン酸)、9,9−ジアルキル−ジカルボキシフルオレンなどの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸)、アリールアレーンジカルボン酸(例えば、ビフェニルジカルボン酸など)、ジアリールアルカンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)、ジアリールケトンジカルボン酸(ジフェニルケトンジカルボン酸など)、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレンなどが挙げられる。
【0048】
これらの多環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0049】
好ましい多環式芳香族ジカルボン酸成分は、縮合多環式芳香族ジカルボン酸(例えば、縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸)成分であり、特にナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
【0050】
多環式芳香族ジカルボン酸成分の割合は、芳香族ジカルボン酸成分全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、15〜100モル%程度)、好ましくは20モル%以上(例えば、25〜100モル%程度)、さらに好ましくは30モル%以上(例えば、35〜100モル%程度)、特に40〜100モル%(例えば、45〜100モル%)程度であってもよく、通常40〜100モル%程度であってもよい。
【0051】
ジカルボン酸成分は、本発明の効果を害しない範囲であれば、非芳香族ジカルボン酸成分を含んでいてもよい。このような非芳香族ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸成分[例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)などの飽和脂肪族ジカルボン酸成分(例えば、C2−12アルカンジカルボン酸成分などのアルカンジカルボン酸成分)など]、脂環族ジカルボン酸[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)などの飽和脂環族ジカルボン酸成分など]などが含まれる。これらの非芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0052】
非芳香族ジカルボン酸成分を用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分と、非芳香族ジカルボン酸成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜70/30、好ましくは99.8/0.2〜80/20、さらに好ましくは99.5/0.5〜90/10(例えば、99/1〜95/5)程度であってもよい。
【0053】
ジカルボン酸成分において、芳香族ジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%程度)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜100モル%程度)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%程度)であってもよい。
【0054】
なお、必要に応じて、ジカルボン酸成分に加えて、他の酸成分(カルボン酸成分)と組み合わせてもよい。このような酸成分としては、例えば、不飽和カルボン酸成分{例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸)、不飽和脂環族ジカルボン酸[シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)など]、これらのエステル形成性誘導体など}、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸成分(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体など)などが挙げられる。これらの他の酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0055】
なお、他の酸成分を使用する場合、他の酸成分の使用量は少量[例えば、ジカルボン酸成分および他の酸成分の総量に対して10モル%以下(例えば、0.01〜8モル%、好ましくは0.05〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%程度)]であってもよい。
【0056】
なお、ジカルボン酸成分(および他の酸成分)は、通常、ハロゲンを有しない又はポリアリレートにハロゲンを導入しない化合物(すなわち、ジカルボン酸成分の酸ハライド基由来のハロゲンは含まれない)であってもよい。
【0057】
(樹脂特性および製造方法)
本発明のポリアリレートは、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを重合成分とする(又はジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とが重合した)樹脂であり、代表的には、下記式(2)で表されるユニット(繰り返し単位)を少なくとも有する樹脂である。
【0058】
【化2】

【0059】
(式中、Lは芳香族ジカルボン酸成分の残基(芳香族ジカルボン酸成分からカルボキシル基又はエステル形成性基(エステル基、酸ハライド基など)を除いた基)を示し、Z、R、R、m、nは前記と同じ。)
そして、このようなポリアリレートは、種々の特性(特に光学的特性)において優れている。例えば、本発明のポリアリレートは、9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有しているため、非常に高い屈折率および高い耐熱性を有している。
【0060】
本発明のポリアリレートの屈折率は、例えば、温度25℃、波長589nmにおいて、1.65以上(例えば、1.67〜1.85程度)、好ましくは1.68以上(例えば、1.69〜1.8程度)、さらに好ましくは1.7以上(例えば、1.71〜1.75程度)であってもよい。特に、ジカルボン酸成分の種類を選択すること(例えば、多環式芳香族ジカルボン酸成分などの芳香族ジカルボン酸成分で構成するなど)により、波長589nmにおける屈折率を1.72以上(例えば、1.72〜1.8、好ましくは1.73〜1.75程度)とすることもできる。
【0061】
また、本発明のポリアリレートのガラス転移温度(Tg)は、例えば、280℃以上(例えば、290〜450℃)、好ましくは300℃以上(例えば、305〜400℃)、さらに好ましくは310℃以上(例えば、310〜380℃)程度であってもよく、320℃以上(例えば、325〜400℃、好ましくは330〜380℃、さらに好ましくは335〜360℃程度)とすることもできる。
【0062】
なお、本発明のポリアリレートは、通常、ポリマー骨格(又はポリマー鎖中)にハロゲン(ハロゲン原子)を有しない(実質的に有しない)場合が多い。本発明のポリアリレートは、このようなハロゲンを含んでいなくても、前記のような高耐熱性および高屈折率を有している。
【0063】
本発明のポリアリレートの数平均分子量(Mn)は、例えば、5000〜200000程度の範囲から選択でき、例えば、6000〜100000、好ましくは7000〜80000、さらに好ましくは8000〜50000(例えば、9000〜40000)程度であってもよい。なお、本発明のポリアリレートは、理由は定かではないが、通常のポリマーの分子量範囲であっても高粘度化しやすい一方で、比較的低分子量であってもポリマーとして使用可能である。そのため、本発明では、特に、数平均分子量が30000以下(例えば、7000〜28000)、好ましくは25000以下(例えば、8000〜24000)、さらに好ましくは23000以下(例えば、9000〜22000)、特に20000以下(例えば、10000〜20000)程度のポリアリレートを好適に使用してもよい。このような分子量に調整することにより、ハンドリング性を損なうことなく、高耐熱性、高屈折率などの特性を有するポリアリレートとすることができる。なお、ポリマーの分子量は、重合条件(重合時間、重合温度、ジオール成分とジカルボン酸成分との仕込み比など)を選択することにより調整可能である。
【0064】
また、本発明のポリアリレートの分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1〜10、好ましくは1.2〜8、さらに好ましくは1.3〜5程度であってもよい。
【0065】
さらに、本発明のポリアリレートは、化合物(a)および芳香族ジカルボン酸成分由来の剛直な骨格を有しているにもかかわらず、比較的溶剤溶解性に優れている。例えば、本発明のポリアリレートは、エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなど)、炭化水素類(トルエンなどの芳香族炭化水素類)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、)、ケトン類(例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類)などの汎用の溶剤に溶解可能である。そのため、本発明のポリアリレートは、高耐熱性、高屈折率などの特性を有する樹脂でありながら、実用性においても優れている。
【0066】
本発明のポリアリレートは、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジオール成分とジカルボン酸成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。代表的な方法は、溶液重合法、界面重合法であり、好ましい方法は溶液重合法である。なお、溶液重合法、界面重合法では、ジカルボン酸成分として、ジカルボン酸ハライド(ジハライドなど)などを好適に使用することができる。
【0067】
反応において、ジオール成分(A)とジカルボン酸成分(B)との使用割合は、理論比又は量論比(すなわち、前者/後者(モル比)=1)であってもよく、重合方法に応じて、また、必要に応じて(例えば、分子量の調整などのため)、他方を過剰に使用してもよい。他方に過剰に使用する場合を含め、ジオール成分(A)とジカルボン酸成分(B)との割合(モル比)は、概ね、前者/後者(モル比)=2/1〜1/2、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2(例えば、1.1/1〜1/1.1)程度であってもよい。
【0068】
また、反応において、ジオール成分(A)における化合物(a)やジカルボン酸成分(B)における芳香族ジカルボン酸成分などの割合(仕込み割合)は、通常、前記ポリアリレートの項で記載した範囲と同様の範囲から選択できるが、必要に応じて、ポリアリレート中の割合よりも過剰量又は少ない割合であってもよい。なお、反応は、必要に応じて、分子量調整剤(例えば、モノオール成分、モノカルボン酸成分など)の存在下で行ってもよい。
【0069】
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、重合方法に応じて選択できる。溶融重合法では、金属触媒、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、バリウムなど)、遷移金属(亜鉛、カドミウム、鉛、コバルトなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などを使用できる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。溶液重合法において、触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜10×10−4モル程度であってもよい。
【0070】
また、溶液重合法や界面重合法では、塩基(塩基触媒、塩基性触媒)の存在化で反応させることができる。塩基としては、例えば、アミン類[例えば、脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1,2,2’,6,6’−ペンタメチルピペリジン、1−メチルピロリジン、4−メチルモルホリン、2,6−ジメチルピペラジンなどの脂肪族第三級アミン)、芳香族アミン(例えば、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミンなど)、複素環式アミン(例えば、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−ピロリジノピリジン、ルチジン、コリジン、イミダゾール、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンなど)など]、金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド)、第4アンモニウム水酸化物(水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなど)、有機金属化合物(ブチルリチウム、フェニルリチウム、フェニルマグネシウムブロミド、リチウムジイソプロピルアミドなど)、有機酸塩(例えば、酢酸ナトリウムなどの有機酸金属塩など)などの有機塩基;炭酸又は炭酸水素塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸又は炭酸水素塩)、水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物など)、水素化物(水素化ナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類水素化物)などの無機塩基などが挙げられる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0071】
これらの塩基のうち、溶液重合法などでは、アミン類{例えば、第3級アミン類[例えば、脂肪族第3級アミン、複素環式アミン(ピリジンなど)など]など}などを好適に使用できる。
【0072】
塩基の使用量は、例えば、ジオール成分(A)のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、例えば、1〜50モル当量(例えば、1〜30モル当量)、好ましくは1〜20モル当量(例えば、1〜10モル当量)、さらに好ましくは1.1〜8モル当量(例えば、1.2〜7モル当量)、特に1.5〜5モル当量(例えば、2〜4モル当量)程度であってもよい。
【0073】
反応は、重合方法に応じて(例えば、溶液重合法などにおいて)、適宜溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アニソールなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類など)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0074】
溶媒の使用量は、例えば、ジオール成分およびジカルボン酸成分の総量1重量部に対して、0.3〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部(例えば、2〜10重量部)程度であってもよい。
【0075】
反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、減圧又は加圧下でおこなってもよい。反応温度は、重合法に応じて選択でき、例えば、溶液重合法では、−20℃〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは20〜100℃(例えば、40〜90℃)程度で行ってもよい。また、反応時間は、原料の種類、反応温度や溶媒中の濃度などに応じて調整でき、例えば、30分〜48時間、1〜36時間(例えば、1.5〜24時間)、好ましくは2〜18時間(例えば、2.5〜10時間)程度であってもよい。
【0076】
また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、還流しながら行ってもよい。なお、反応は、通常、各成分を混合することにより行われるが、混合は、段階的に行ってもよい。
【0077】
なお、生成物(ポリアリレート)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0078】
[成形体]
本発明のポリアリレートは、前記のように、高耐熱性、優れた光学的特性(高屈折率、高透明性など)を有している。さらに、本発明のポリアリレートは、顔料やフィラー等の分散性にも優れている。そのため、本発明には、前記ポリアリレート(又はその樹脂組成物、以下、樹脂組成物を含めてポリアリレートということがある)で構成された成形体も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0079】
このような成形体は、前記ポリアリレートで構成されていればよく、前記ポリアリレートを含む樹脂組成物で構成してもよい。このような樹脂組成物は、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、耐熱性改良剤(硫黄化合物やポリシランなど)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0080】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0081】
特に、本発明のポリアリレートは、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリアリレートで形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
【0082】
このようなフィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0083】
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリアリレートを、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0084】
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0085】
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、通常1.1〜2.5倍(好ましくは1.2〜2.3倍、さらに好ましくは1.5〜2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸)であっても偏延伸(例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2〜5倍延伸)であってもよい。
【0086】
なお、延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0087】
延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0089】
なお、樹脂の特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
【0090】
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(ティー・エー・インスツルメンツ社製、DSC Tzero-Q2000)を用い、アルミパンに試料を入れ、150℃から400℃の範囲でTgを測定した。
【0091】
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(GL Science社製、GL−7450)を用い、試料をテトラヒドロフランに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量を測定した。
【0092】
(屈折率)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度25℃で測定した。
【0093】
(溶剤溶解性)
25重量%の割合で各種溶媒に混合して1時間攪拌したのち、目視にて以下の基準で溶解性を評価した。
【0094】
○:室温にて溶解する
×:室温で溶解しない。
【0095】
(実施例1)
攪拌機、冷却機、および温度計を備えた1Lのガラス容器に6,6−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール)(又は、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、特開2007−99741号公報の記載に基づいて合成した合成品)38.8g(約0.086モル)とテトラヒドロフラン(THF)200mL、ピリジン34.0g(約0.43モル、BNF1モルに対して5モル当量)を加え、均一溶液を得、さらに、容器をアルゴン(Ar)置換したのち、内温が1℃になるまで冷やした。そして、テレフタル酸ジクロライド17.5g(0.086モル)をTHF100mLで溶解した溶液を30分かけてゆっくり滴下し、滴下終了後80℃に昇温し、4時間還流し、反応を行った。反応後、室温に戻して一晩静置した後、1.5Lの蒸留水を張った3Lのビーカーに、反応液をゆっくりと攪拌しながら加えた後、さらに、1N−HCl水溶液を加え、pH3になっていることを確認した。
【0096】
そして、ビーカー内の混合液を濾過した濾過物を水洗したのち、THFに再溶解させ、さらに、2Lのメタノールに再沈殿させて再度濾過した。濾過物をろ過後80℃で23時間乾燥させ、目的生成物48.2gを収率96%で得た。生成物のTgは340℃、屈折率(nD25)は1.72、数平均分子量(Mn)は18,708であった。また、得られたポリマーの性状は、白色粉末であった。
【0097】
H−NMR(ppm):7.3〜7.8(m、18H)、7.8〜7.9(d、2H)、8.3〜8.4(s、4H)。
【0098】
(実施例2)
実施例1において、BNFを38.3gに代えて37.3g(約0.083モル)、テレフタル酸ジクロライド17.5gに代えてテレフタル酸ジクロライド8.4g(約0.041モル)およびイソフタル酸ジクロライド8.4g(約0.041モル)、ピリジンを34.0gに代えて32.8g(約0.41モル)使用したこと以外は、実施例1と同様にして、目的生成物45.9gを収率96%で得た。生成物のTgは319℃、屈折率(nD25)は1.71、数平均分子量(Mn)は13,823であった。また、得られたポリマーの性状は、白色粉末であった。
【0099】
H−NMR(ppm):7.3〜7.8(m、36H)、7.8〜7.9(d、4H)、8.3〜8.4(s、4H)、8.4〜8.5(d、2H)、9.0〜9.1(s、1H)。
【0100】
(実施例3)
実施例1において、BNFを38.3gに代えて37.3g(約0.083モル)、テレフタル酸ジクロライド17.5gをTHF100mLに溶解した溶液に代えて2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド21.0g(約0.083モル)をTHF200mLに溶解した溶液、ピリジンを34.0gに代えて32.8g(約0.41モル)使用し、還流時間を5時間、乾燥時間を26時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、目的生成物49.6gを収率95%で得た。生成物のTgは312℃、屈折率(n25)は1.74、数平均分子量(Mn)は10,239であった。また、得られたポリマーの性状は、白色粉末であった。
【0101】
H−NMR(ppm):7.3〜7.8(m、20H)、8.0〜8.2(d、2H)、8.3〜8.4(d、2H)、8.8〜8.9(s、2H)。
【0102】
(比較例1)
実施例1において、BNF38.3gに代えて9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン37.8g(0.1モル)、テレフタル酸ジクロライドを17.5gに代えて20.3g(0.1モル)、ピリジンを34.0gに代えて39.5g(0.5モル)使用したこと以外は、実施例1と同様にして、目的生成物48.3gを収率95%で得た。生成物のTgは289℃、屈折率(nD25)は1.64、数平均分子量(Mn)は16,267であった。
【0103】
結果を表1および表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の新規なポリアリレートは、高屈折率、高透明性などの優れた光学的特性を有しており、また、耐熱性などの各種特性にも優れている。そのため、本発明のポリアリレート(又はその樹脂組成物)は、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明のポリアリレート(又はその樹脂組成物)は、塗料、帯電防止剤、インキ、接着剤、粘着剤、樹脂充填材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料)、電気・電子部品又は機器(光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなど)用樹脂、機械部品又は機器(自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材など)用の樹脂などに好適に利用できる。
【0107】
特に、本発明のポリアリレートは、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような前記ポリアリレートで形成(構成)された光学用成形体としては、例えば、光学フィルムなどが挙げられる。
【0108】
光学フィルムとしては、偏光フィルム(及びそれを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム)、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。とりわけ、本発明のフィルムは、機器のディスプレイに用いる光学フィルムとして有用である。このような本発明の光学フィルムを備えたディスプレイ用部材(又はディスプレイ)としては、具体的には、パーソナル・コンピュータのモニタ、テレビジョン、携帯電話、カー・ナビゲーションシステム、タッチパネルなどのFPD装置(例えば、LCD、PDPなど)などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9,9−ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有する化合物(a)を含むジオール成分(A)と、芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリアリレート。
【請求項2】
化合物(a)が、ハロゲン原子を有しない化合物である請求項1記載のポリアリレート。
【請求項3】
化合物(a)が、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類である請求項1記載のポリアリレート。
【請求項4】
ポリマー骨格中にハロゲン原子を有さず、温度25℃、波長589nmにおける屈折率が1.68以上であり、ガラス転移温度が300℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリレート。
【請求項5】
数平均分子量が30000以下である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリレート。
【請求項6】
化合物(a)が、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンであり、芳香族ジカルボン酸成分が、ベンゼンジカルボン酸成分、ナフタレンジカルボン酸成分、およびビフェニルジカルボン酸成分から選択された少なくとも1種を含み、ポリマー骨格中にハロゲンを有さず、温度25℃、波長589nmにおける屈折率が1.7以上であり、ガラス転移温度が310℃以上であり、数平均分子量が25000以下である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアリレート。
【請求項7】
ジオール成分(A)とジカルボン酸成分(B)とを反応させ、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアリレートを製造する方法。
【請求項8】
ジカルボン酸成分(B)としてジカルボン酸ハライドを用い、塩基の存在下で溶液重合させる請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
塩基が第3級アミンであり、塩基の使用量が、ジオール成分(A)のヒドロキシル基1モルに対して1〜10モル当量である請求項8記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−131865(P2012−131865A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283523(P2010−283523)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】