説明

フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂

【課題】高屈折率、高耐熱性、低複屈折性などの特性をバランス良く有する新規なポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物を含むジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂において、前記単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合を、ジカルボン酸成分全体に対して30モル%以上にするとともに、単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合を、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格)を有する新規なポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂で形成された成形体(例えば、光学フィルム、光学レンズなどの光学用成形体)に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、高屈折率、高耐熱性などの優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現し、成形可能とする方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。このようなフルオレン骨格を有する樹脂の中でも、種々のポリエステル樹脂が開発されつつある。
【0003】
例えば、特開平7−198901号公報(特許文献1)には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、10mol%以上の9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシ化合物と、炭素原子数が2から4の脂肪族グリコールからなる実質的に線状のポリエステル重合体であって、屈折率が1.60以上であるプラスチックレンズ用ポリエステル樹脂が開示されている。しかし、この文献では、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いることで、比較的高い屈折率を実現できるものの、複屈折性を有するポリエステル重合体が得られる。
【0004】
また、特許第3331121号公報(特許文献2)には、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸など)と、9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシ化合物からなるポリエステル重合体が開示されている。この文献には、ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを組み合わせてもよいことが記載されている。
【0005】
しかし、この文献では、脂環族ジカルボン酸を用いることで、低複屈折のポリエステル重合体が得られるものの、ポリエステル重合体の屈折率や耐熱性を低下させやすい。
【0006】
一方、特開2010−285505号公報(特許文献3)には、芳香族ジカルボン酸成分および特定の脂肪族ジカルボン酸成分(マロン酸成分など)を含むジカルボン酸成分と、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有するジオールを含むジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂が開示されている。そして、この文献には、芳香族ジカルボン酸成分に脂肪族ジカルボン酸成分を組み合わせることにより、高屈折率を維持しつつ、優れた低複屈折性を付与できること、多環式脂肪族ジカルボン酸成分に、単環式芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸成分など)と脂肪族ジカルボン酸成分とを組み合わせることにより、高屈折率と低複屈折性とを両立でき、しかも、十分に高分子量化されたポリエステル樹脂が得られることが記載されている。
【0007】
しかし、この文献のポリエステル樹脂では、高屈折率と低複屈折とをある程度実現できるものの、高いレベルで、高屈折率と低複屈折率とを両立させることができない。また、マロン酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分は、溶融重合などにおいては、重合中に反応系外に留出する場合があり、仕込みを反映した形で樹脂骨格に導入できず、そのため安定的に上記のような特性のポリエステル樹脂を得にくくなる場合がある。
【0008】
なお、特開2008−69224号公報(特許文献4)には、フルオレン骨格を有するジオール成分(A1)[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]で少なくとも構成されたジオール成分(A)と、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)[例えば、9,9−ビス(カルボキシ−C1−4アルキル)フルオレン、2,7−ジカルボキシフルオレンなど]で少なくとも構成されたジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂が開示されている。なお、この文献には、耐熱性や屈折率が向上したポリエステルが得られると記載されているものの、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分と複屈折との関係について何ら記載されておらず、また、他のジカルボン酸成分や他のジオール成分を併用してもよいことについても記載されているが、実施例において何ら使用例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−198901号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3331121号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2010−285505号公報(特許請求の範囲、段落[0018]〜[0019]、実施例)
【特許文献4】特開2008−69224号公報(特許請求の範囲、段落[0042]、[0058])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、高屈折率と低複屈折性とを高いレベルで両立できるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂で形成された成形体(光学フィルム、光学レンズなど)を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、高屈折率と低複屈折性とを両立できるとともに、高耐熱性を有するポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂で形成された成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特許文献4に記載のフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジオール成分とを用いたポリエステル樹脂について、各種物性について測定したところ、比較的高屈折率であるものの、複屈折の値は比較的大きいことがわかった。
【0013】
このような状況下、本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物をジオール成分として含むフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、ジカルボン酸成分として、特定の割合で単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分とを組み合わせると、芳香族ジカルボン酸成分の併用によりさらに複屈折の値を上昇させるとの予想に反して、意外にも、高屈折率と低複屈折という両立しがたい特性を高いレベルで両立(例えば、波長589nmにおける屈折率を1.62以上、固有複屈折の値を25×10−4以下に)できること、さらには、このような特性のみならず高耐熱性(例えば、ガラス転移温度125℃以上)を有するポリエステル樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のポリエステル樹脂は、単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物を含むジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂であって、前記ジカルボン酸成分が、単環式芳香族ジカルボン酸成分をジカルボン酸成分全体に対して30モル%以上の割合で含み、かつ単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合が、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10のポリエステル樹脂である。
【0015】
前記単環式芳香族ジカルボン酸成分は、特に、テレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分を含んでいてもよい。また、前記単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分全体に対して35〜80モル%(例えば、35〜75モル%)であってもよい。
【0016】
前記フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分は、特に、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。また、前記フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分の割合は、例えば、ジカルボン酸成分全体に対して55モル%以下であってもよい。
【0017】
前記ジオール成分は、さらに、脂肪族ジオール成分(例えば、エチレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)を含んでいてもよい。このような場合、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物と、脂肪族ジオール成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1程度であってもよい。
【0018】
代表的な本発明のポリエステル樹脂には、以下のポリエステル樹脂が含まれる。
【0019】
単環式芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分(特に、少なくともテレフタル酸成分)を含み、単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合が、ジカルボン酸成分全体に対して40〜65モル%(例えば、45〜65モル%)であり、
フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分が、9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレン類およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種を含み、
単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合が、前者/後者(モル比)=40/60〜65/35(例えば、45/55〜65/35)であり、
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンから選択された少なくとも1種を含み、
ジオール成分が、さらに、C2−6アルカンジオール成分で構成された脂肪族ジオール成分を含み、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物と、脂肪族ジオール成分との割合が、前者/後者(モル比)=70/30〜95/5であるポリエステル樹脂。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂は、高耐熱性および優れた光学特性を有しており、例えば、本発明のポリエステル樹脂において、20℃、波長589nmにおける屈折率は1.62以上(例えば、1.63以上)、ガラス転移温度は125℃以上(例えば、130℃以上)、固有複屈折の値は25×10−4以下(例えば、20×10−4以下)であってもよい。
【0021】
本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成された成形体[例えば、光学フィルム又は光学レンズなどの光学用成形体(又は光学用部材)]なども含まれる。このような成形体(例えば、光学フィルム)は、延伸フィルムであってもよい。
【0022】
なお、本明細書において、「ジカルボン酸成分」とは、特に断りのない限り、ジカルボン酸のみならず、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物など)を含む意味に用いる。また、本明細書において、「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物」とは、「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格」を有する限り、アリール基やフルオレン骨格(詳細にはフルオレンの2〜7位)に置換基を有する化合物を含む意味に用いる。さらに、本明細書において、「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン」とは、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレンおよび9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレンを含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、特定の割合で単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と特定のジオール成分とを組み合わせることで、高屈折率と低複屈折性とを高いレベルで両立できるポリエステル樹脂を得ることができる。特に、本発明では、このような高屈折率と低複屈折性とを両立できるとともに、高耐熱性を有するポリエステル樹脂が得られる。
【0024】
このような本発明のポリエステル樹脂は、上記のように、高耐熱性、高屈折率、低複屈折という特性を有し、光学フィルム、光学レンズなどの光学用成形体などに好適に利用可能である。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を用いても、上記光学用途などにおいて重要な特性の1つである吸湿性(又は吸水性)を損なうことがなく、単環式芳香族ジカルボン酸成分との組み合わせによっては、さらに耐吸湿性(又は耐吸水性)を向上又は改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ポリエステル樹脂>
本発明のポリエステル樹脂は、特定のジカルボン酸成分と特定のジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂である。
【0026】
[ジカルボン酸成分]
ジカルボン酸成分は、単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含む。
【0027】
(単環式芳香族ジカルボン酸成分)
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、単環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体が挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルテレフタル酸)、フタル酸などのC6−10アレーンジカルボン酸などが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。単環式芳香族ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、単環式芳香族ジカルボン酸、単環式芳香族ジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い(以下、同じ)。単環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0028】
これらのうち、特に、バランスよく高屈折率および低複屈折(さらには高耐熱性)をポリエステル樹脂に付与するという観点からは、テレフタル酸成分(テレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体)が好ましい。本発明では、通常、複屈折を上昇させると考えられているテレフタル酸成分を用いても、所定の割合でフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分と組み合わせることで、ポリエステル樹脂を効率よく低複屈折化できる。
【0029】
また、非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分[例えば、イソフタル酸成分(イソフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体)、アルキルイソフタル酸成分、フタル酸成分など、特にイソフタル酸成分]を好適に使用してもよい。非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸とを組み合わせることで、相乗的に複屈折を効率よく低減できる。また、後述のフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との組み合わせにおいて、ポリエステル樹脂の吸湿性を抑えることができるという効果もある。
【0030】
しかし、非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分は耐熱性を付与するという点では、テレフタル酸成分に劣る場合があり、高屈折率、低複屈折、高耐熱性を高いレベルで両立させるためには、テレフタル酸成分と非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせてもよい。このような組み合わせと後述のフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との組み合わせにより、意外にも相乗的な効果が発現するためか、これらの特性をバランス良く有するポリエステル樹脂を得ることができる。
【0031】
テレフタル酸成分と非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分(特にイソフタル酸成分)とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99の範囲から選択でき、例えば、97/3〜3/97(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは93/7〜7/93(例えば、90/10〜10/90)、さらに好ましくは88/12〜12/88(例えば、85/15〜15/85)、特に83/17〜17/83(例えば、80/20〜20/80)程度であってもよく、通常75/25〜25/75(例えば、70/30〜30/70、好ましくは65/35〜35/65、さらに好ましくは60/40〜40/60)程度であってもよい。
【0032】
単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分全体に対して、30モル%以上(例えば、30〜90モル%)であればよく、例えば、35モル%以上(例えば、35〜80モル%)、好ましくは40モル%以上(例えば、40〜80モル%)、さらに好ましくは45モル%以上(例えば、45〜75モル%)、特に50モル%以上(例えば、50〜70モル%)であってもよく、通常40〜70モル%(例えば、40〜65モル%、好ましくは45〜65モル%)であってもよい。
【0033】
(フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分)
フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分としては、フルオレン骨格を有するジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体(前記例示の誘導体など)が含まれる。
【0034】
フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物[例えば、フルオレンジカルボン酸(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど)]であってもよいが、通常、フルオレンの9位に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に使用できる。このような化合物は、単環式芳香族ジカルボン酸成分との組み合わせにおいて、複屈折の低減効果が高いようである。
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、Xは二価の炭化水素基、Rはカルボキシル基でない置換基、kは0〜4の整数を示す。)
上記式(1)において、基Xで表される二価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC1−8アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC5−10シクロアルキレン基、好ましくはC5−8シクロアルキレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−シクロアルキレン基[又はシクロアルキレン−アルキレン基、例えば、メチレン−シクロへキシレン基、エチレン−シクロへキシレン基、エチレン−メチルシクロへキシレン基、エチリデン−シクロへキシレン基などのC1−6アルキレン−C5−10シクロアルキレン基(好ましくはC1−4アルキレン−C5−8シクロアルキレン基)などの脂環式炭化水素基、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基など)などの橋架環式炭化水素基など]など}、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC1−6アルキレン−C6−20アリーレン基(好ましくはC1−4アルキレン−C6−10アリーレン基、好ましくはC1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]など}が例示できる。なお、アルキレン−シクロアルキレン基およびアルキレン−アリーレン基とは、−R−R−(式中、Rは、式(1)においてカルボキシル基又はフルオレンの9位に結合したアルキレン基、Rはシクロアルキレン基又はアリーレン基を示す)で表される基を示す。なお、2つの基Xは、同一又は異なる基であってもよい。
【0037】
これらのうち、二価の脂肪族炭化水素基、特に、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基などのC1−4アルキレン基など)が好ましい。
【0038】
前記式(1)において、基Rとしては、カルボキシル基でない置換基であればよく、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
【0039】
代表的なフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分としては、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシブチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルブチル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシペンチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシシクロアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC5−8シクロアルキル)フルオレンなど]などの前記式(1)において、Xが二価の脂肪族炭化水素基である化合物、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0040】
これらのうち、好ましいフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分には、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレン]およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種(9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン成分)などが含まれる。
【0041】
なお、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分全体に対して、70モル%以下(例えば、10〜70モル%)の範囲から選択でき、例えば、65モル%以下(例えば、15〜65モル%)、好ましくは60モル%以下(例えば、20〜60モル%)、さらに好ましくは55モル%以下(例えば、25〜55モル%)、特に50モル%以下(例えば、30〜50モル%)であってもよく、通常30〜60モル%(例えば、35〜55モル%)であってもよい。
【0042】
単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合は、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10の範囲から選択でき、例えば、35/65〜85/15、好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは45/55〜75/25、特に50/50〜70/30(例えば、55/45〜65/35)であってもよく、通常40/60〜70/30(例えば、40/60〜65/35、好ましくは45/55〜65/35)程度であってもよい。
【0043】
特に、単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合は、前者/後者(モル比)=40/60〜70/30(例えば、42/58〜68/32)、好ましくは43/57〜67/33(例えば、44/56〜65/35)、さらに好ましくは45/55〜63/37(例えば、47/53〜62/38)、特に50/50〜60/40程度であってもよい。このような割合でジカルボン酸成分を選択すると、後述のジオール成分の種類などにもよるが、効率よく複屈折(又はリタデーション値)を0(又はほぼ0)にしやすい。
【0044】
なお、ジカルボン酸成分は、単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
【0045】
他のジカルボン酸成分(単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分のいずれの範疇にも属さないジカルボン酸成分)としては、例えば、非単環式芳香族ジカルボン酸成分{例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸など)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸]、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジフェニルC1−4アルカン−ジカルボン酸など)、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体などの非フルオレン系の多環式芳香族ジカルボン酸成分}、脂肪族ジカルボン酸成分[例えば、アルカンジカルボン酸成分(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体などのC2−12アルカンジカルボン酸成分など)など]、脂環族ジカルボン酸成分[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体など]などが挙げられる。これらの他のジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0046】
他のジカルボン酸成分を含む場合、他のジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分全体に対して、30モル%以下(例えば、0.1〜25モル%)、好ましくは20モル%以下(例えば、0.3〜15モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば、0.5〜5モル%)程度であってもよい。
【0047】
また、ジカルボン酸成分(非不飽和ジカルボン酸成分)は、本発明の効果を害しない範囲であれば、他の酸成分(カルボン酸成分)と組み合わせてもよい。このような酸成分としては、例えば、不飽和カルボン酸成分{例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸)、不飽和脂環族ジカルボン酸[シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)など]、これらのエステル形成性誘導体など}、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸など)などが挙げられる。これらの他の酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0048】
なお、他の酸成分を使用する場合、他の酸成分の割合は、ジカルボン酸成分および他の酸成分の総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)であってもよい。
【0049】
[ジオール成分]
ジオール成分は、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物(単に、フルオレン骨格を有するジオールなどということがある)を少なくとも含んでいる。
【0050】
(フルオレン骨格を有するジオール)
フルオレン骨格を有するジオールは、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有している限り、フルオレンや、フルオレンの9位に置換したアリール基に、置換基(後述の置換基など)を有していてもよい。
【0051】
このようなフルオレン骨格を有するジオールは、代表的には、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0052】
【化2】

【0053】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rはアルキレン基を示し、Rはカルボキシル基でない置換基を示し、mは1以上の整数、nは0以上の整数であり、Rおよびkは前記と同じ。)
上記式(2)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素など]が挙げられる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれ、特に、ベンゼン環であってもよい。なお、基Rおよびkは、好ましい態様を含め、前記式(1)における場合と同じである。
【0054】
また、前記式(2)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Zにおいて、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0055】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、1以上であればよく、例えば、1〜10(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
【0056】
また、前記式(2)において、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基[すなわち、−O−(RO)−H]の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、ヒドロキシル基含有基は、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位に置換していればよく、好ましくは4位に置換していてもよい。また、ヒドロキシル基含有基は、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0057】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0058】
好ましい基Rとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであり、特に、アリール基であるのが好ましい。
【0059】
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0060】
具体的なフルオレン骨格を有するジオール(又は前記式(2)で表される化合物)には、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン骨格を有する化合物]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン骨格を有する化合物]などが含まれる。
【0061】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(2)において、mが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(2)において、mが2以上である化合物)などが含まれる。
【0062】
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0063】
これらのフルオレン骨格を有するジオールのうち、特に、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}が好ましい。
【0064】
フルオレン骨格を有するジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
なお、2種以上のフルオレン骨格を有するジオールの好ましい組合せには、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類と9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールアリール)フルオレン類との組み合わせなどが含まれる。これらのフルオレン骨格を有するジオールを組み合わせると、複屈折率を低減しつつ、さらなる高屈折率や高耐熱性をポリエステル樹脂に付与できる場合がある。
【0066】
このような組み合わせにおいて、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類と9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールアリール)フルオレン類との割合は、前者/後者(モル比)=1/99〜99/1(例えば、5/95〜95/5)の範囲から選択でき、例えば、10/90〜90/10(例えば、15/85〜85/15)、好ましくは20/80〜80/20(例えば、25/75〜75/25)、さらに好ましくは30/70〜70/30(例えば、35/65〜65/35)、特に40/60〜60/40(例えば、45/55〜55/45)程度であってもよい。
【0067】
なお、ジオール成分において、ジオール成分(A1)の割合は、ジオール成分全体に対して、40モル%以上の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に75モル%以上であってもよい。
【0068】
(脂肪族ジオール成分)
ジオール成分は、前記フルオレン骨格を有するジオール(ジオール成分(A1)ということがある)のみで構成してもよいが、通常、フルオレン骨格を有するジオールと、脂肪族ジオール成分とを含んでいてもよい。脂肪族ジオール成分と組み合わせることにより、重合を効率よく行いつつ、高屈折率、高耐熱性、低複屈折をバランスよく備えたポリエステル樹脂を得ることができる。
【0069】
このような脂肪族ジオール成分(ジオール成分(A2)ということがある)としては、例えば、鎖状脂肪族ジオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)など]、脂環族ジオール[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、イソソルバイドなど]などが挙げられる。これらの脂肪族ジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0070】
これらのうち、耐熱性や屈折率の点から、脂肪族ジオール成分として、特に、アルカンジオール(例えば、エチレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)などの低分子量の脂肪族ジオール成分(鎖状脂肪族ジオール成分)を好適に使用してもよい。
【0071】
ジオール成分(A1)と、ジオール成分(A2)(脂肪族ジオール成分)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1、好ましくは55/45〜98/2、さらに好ましくは60/40〜95/5(例えば、65/35〜93/7)程度であってもよく、通常70/30〜95/5(例えば、75/25〜92/8)程度であってもよい。
【0072】
なお、ジオール成分において、ジオール成分(A1)およびジオール成分(A2)の総量の割合は、ジオール成分全体に対して、50モル%以上の範囲から選択でき、例えば、60モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に90モル%以上であってもよい。
【0073】
なお、ジオール成分は、本発明の効果を害しない範囲であれば、他のジオール成分(ジオール成分(A1)および(A2)の範疇に属さないジオール成分)と組み合わせてもよい。このようなジオール成分としては、例えば、芳香族ジオール{ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、芳香脂肪族ジオール[例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]、ビフェノール、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど]など}などが挙げられる。他のジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0074】
他のジオール成分を含む場合、他のジオール成分の割合は、ジオール成分全体に対して、30モル%以下(例えば、0.1〜25モル%)、好ましくは20モル%以下(例えば、0.3〜15モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば、0.5〜5モル%)程度であってもよい。
【0075】
また、必要に応じて、ジオール成分に加えて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分[アルカンポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなど)など]を少量[例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%程度)]使用してもよい。
【0076】
[樹脂特性および製造方法]
本発明のポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合成分とする(又はジカルボン酸成分とジオール成分とが重合した)樹脂であり、種々の特性(特に、光学的特性、熱的特性)において優れている。例えば、本発明のポリエステル樹脂は、特定のジカルボン酸成分(由来の骨格)と特定のジオール成分(由来の骨格)とを組み合わせて有し、高い屈折率および高い耐熱性を有している。しかも、本発明のポリエステル樹脂は、光学的異方性が少なく、著しく低複屈折性である。
【0077】
本発明のポリエステル樹脂の屈折率は、例えば、20℃、波長589nmにおいて、1.62以上(例えば、1.62〜1.75程度)、好ましくは1.625以上(例えば、1.625〜1.7程度)、さらに好ましくは1.63以上(例えば、1.63〜1.67程度)、特に1.635以上(例えば、1.635〜1.65程度)であってもよい。
【0078】
また、本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、120℃以上(例えば、120〜200℃程度)、好ましくは125℃以上(例えば、125〜180℃程度)、さらに好ましくは130℃以上(例えば、130〜160℃程度)、特に135℃以上(例えば、135〜150℃程度)であってもよい。
【0079】
さらに、本発明のポリエステル樹脂の固有複屈折の値は、30×10−4以下程度の範囲から選択でき、例えば、25×10−4以下(例えば、0〜24×10−4程度)、好ましくは23×10−4以下(例えば、0〜21×10−4程度)、さらに好ましくは20×10−4以下(例えば、0〜18×10−4程度)、特に15×10−4以下(例えば、0〜12×10−4程度)であってもよく、10×10−4以下(例えば、0〜8×10−4)、特に5×10−4以下(例えば、3×10−4以下)にすることもできる。
【0080】
なお、固有複屈折は、測定値としては0未満(又は負)の値となる場合があるが、この場合、絶対値として表される。すなわち、このような負の値として測定される場合には、その絶対値が上記範囲となる。
【0081】
なお、本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000〜500000程度の範囲から選択でき、例えば、7000〜300000、好ましくは8000〜200000、さらに好ましくは10000〜150000程度であってもよく、通常12000〜100000(例えば、13000〜70000)程度であってもよい。
【0082】
なお、本発明のポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。好ましい方法は、溶融重合法である。
【0083】
また、反応において、ジオール成分における9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有するジオールや、ジカルボン酸成分における単環式芳香族ジカルボン酸成分やフルオレン骨格を有するジカルボン酸などの使用量(使用割合)は、前記と同様の範囲から選択できるが、必要に応じて各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、ジオール成分において、脂肪族ジオール成分をポリエステル樹脂における脂肪族ジオール成分由来の骨格の所望の割合よりも過剰に使用してもよい。また、反応は、重合方法に応じて、適宜溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
【0084】
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ポリエステル樹脂の製造に利用される種々の触媒、例えば、金属触媒などが使用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルトなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウムなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などが例示できる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
【0085】
また、反応は、必要に応じて、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤など)などの添加剤の存在下で行ってもよい。
【0086】
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、減圧下(例えば、1×10〜1×10Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃程度であってもよい。本発明のポリエステル樹脂は、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含む特定のジカルボン酸成分を原料とするためか、比較的低粘度であり、溶融重合により製造しやすい。しかも、溶融重合では、副生する水などの除去のため減圧下で行われる場合あるが、このような減圧下においても、留出することがなく、仕込みを反映したポリエステル樹脂を効率よく得ることができる。
【0087】
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂は、前記のように、高耐熱性、優れた光学的特性(高屈折率、低複屈折性など)を有している。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物、以下、樹脂組成物を含めてポリエステル樹脂ということがある)で構成された成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなどの光学用成形体)も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0088】
このような成形体は、前記ポリエステル樹脂で構成されていればよく、前記ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物で構成してもよい。このような樹脂組成物は、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、耐熱性改良剤(硫黄化合物やポリシランなど)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0089】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0090】
特に、本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
【0091】
このようなフィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0092】
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリエステル樹脂を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0093】
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明のフィルムは、延伸フィルムであっても、低複屈折性を高いレベルで維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0094】
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、通常1.1〜2.5倍(好ましくは1.2〜2.3倍、さらに好ましくは1.5〜2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸)であっても偏延伸(例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2〜5倍延伸)であってもよい。
【0095】
延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0096】
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
なお、樹脂又はフィルムの特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
【0099】
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量を測定した。
【0100】
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、DSC 6220)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
【0101】
(屈折率)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度20℃で測定した。
【0102】
(固有複屈折)
大塚電子社製リタデーション測定装置RETS−100を用いて、600nmの単色光で複屈折を測定した。測定に用いた試験片は、樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15×50mmの短冊状に切り出すことにより得た。ガラス転移温度(Tg)+10℃の温度で測定用試験片を25mm/分で2倍、3倍又は4倍延伸し、延伸フィルムを得た。これらのフィルムの複屈折を、上記の装置を使用して測定し、延伸倍率から配向度を算出し、配向度と複屈折から固有複屈折を求めた。具体的には、フィルムを2倍、3倍及び4倍に延伸したときの複屈折を測定した。各延伸倍率(λ)に対応する配向度(F)を下式の換算式より求め、各配向度に対する複屈折の値をプロットした。
F=(3<cosθ>−1)/2
<cosθ>=(1+r)(r−tan−1r)/r
r=(λ−1)0.5
λ:延伸倍率,F:配向度
最小二乗法を用い近似直線を得て、外挿法により配向度(F)=1.0(すなわち、無限延伸倍率)のときの複屈折を求めた。ここで、フィルム内の分子は理想的に極限まで配向していると仮定し、本発明においては、このときの複屈折の値を「固有複屈折」とした。
【0103】
(吸水率)
ペレットを160〜240℃においてプレス成形することにより作成した厚み1mmのフィルムを30×30mmの正方形に切り出すことにより試験片を得た。得られた試験片を、80℃において8時間真空状態で乾燥させ、その後室温になるまで放冷した。放冷後、試験片の重量を測定した後、23℃の水中に浸漬した。24時間経過後、試験片表面の水を拭き取り、重量を測定した。浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。
【0104】
(光線透過率)
分光光度計「U−3010」(日立製)を用い、波長589nmで測定した。
【0105】
(実施例1)
反応器に、テレフタル酸ジメチル(以下、DMTという)0.60モル、9,9−ジ(t−ブトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9−ジ(カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジt−ブチルエステル、以下、FDPTという。特開2005−89422号公報の実施例1と同様にして合成したもの)0.40モル、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)0.85モル、エチレングリコール(以下、EGという)2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10−4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0106】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMT由来、40モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは41100、ガラス転移温度Tgは137℃、屈折率は1.637、固有複屈折は8×10−4であった。
【0107】
(実施例2)
反応器に、DMT0.60モル、FDPT0.40モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0108】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMT由来、40モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0109】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは37300、ガラス転移温度Tgは139℃、屈折率は1.638、固有複屈折は6×10−4であった。
【0110】
(実施例3)
反応器に、DMT0.60モル、9,9−ジ(メトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9−ジ(カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジメチルエステル、以下、FDPMという。特開2005−89422号公報の実施例1のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は実施例1と同様にして合成したもの)0.40モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0111】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMT由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0112】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは43900、ガラス転移温度Tgは137℃、屈折率は1.637、固有複屈折は8×10−4であった。
【0113】
さらに、得られたポリエステル樹脂を265℃で溶融押出法にて成形し、厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムにおいて屈折率などの変化はなく、光線透過率は90%であり、透明性に優れ、光学用途に適したフィルムであることを確認した。
【0114】
(実施例4)
反応器に、DMT0.60モル、FDPM0.40モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0115】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMT由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0116】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは41000、ガラス転移温度Tgは139℃、屈折率は1.638、固有複屈折は6×10−4であった。
【0117】
(実施例5)
反応器に、DMT0.50モル、FDPM0.50モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0118】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMT由来、50モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0119】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは44600、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.637、固有複屈折は3×10−4であり、吸水率は0.323%であった。
【0120】
(実施例6)
反応器に、DMT0.50モル、FDPT0.50モル、BPEF0.40モル、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(以下、BOPPEFという。特開2001−206863号公報の実施例4と同様にして合成したもの)0.40モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0121】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMT由来、50モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の40モル%がBPEF由来、40モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0122】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは47500、ガラス転移温度Tgは137℃、屈折率は1.642、固有複屈折は3×10−4であった。
【0123】
(実施例7)
反応器に、DMT0.40モル、FDPM0.60モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0124】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の40モル%がDMT由来、60モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0125】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは44800、ガラス転移温度Tgは132℃、屈折率は1.637、固有複屈折は14×10−4であった。
【0126】
(実施例8)
反応器に、DMT0.70モル、FDPM0.30モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0127】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の70モル%がDMT由来、30モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0128】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは40100、ガラス転移温度Tgは139℃、屈折率は1.637、固有複屈折は18×10−4であり、吸水率は0.333%であった。
【0129】
(実施例9)
反応器に、DMT0.55モル、FDPM0.45モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0130】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の55モル%がDMT由来、45モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0131】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは38800、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.636、固有複屈折は2×10−4であった。
【0132】
(実施例10)
反応器に、DMI0.50モル、FDPM0.50モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0133】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMI由来、50モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0134】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42600、ガラス転移温度Tgは128℃、屈折率は1.636、固有複屈折は13×10−4であった。
【0135】
(実施例11)
反応器に、DMT0.40モル、DMI0.40モル、FDPM0.2モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0136】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の40モル%がDMT由来、40モル%がDMI由来、20モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0137】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは37100、ガラス転移温度Tgは136℃、屈折率は1.636、固有複屈折は25×10−4であった。
【0138】
(実施例12)
反応器に、DMT0.40モル、DMI0.40モル、FDPM0.2モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0139】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の40モル%がDMT由来、40モル%がDMI由来、20モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0140】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは34100、ガラス転移温度Tgは138℃、屈折率は1.637、固有複屈折は23×10−4であった。
【0141】
(実施例13)
反応器に、DMT0.35モル、DMI0.35モル、FDPM0.30モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0142】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の35モル%がDMT由来、35モル%がDMI由来、30モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0143】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは40000、ガラス転移温度Tgは134℃、屈折率は1.636、固有複屈折は14×10−4であった。
【0144】
(実施例14)
反応器に、DMT0.35モル、DMI0.35モル、FDPM0.30モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0145】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の35モル%がDMT由来、35モル%がDMI由来、30モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0146】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは35700、ガラス転移温度Tgは135℃、屈折率は1.637、固有複屈折は12×10−4であり、吸水率は0.295%であった。
【0147】
(実施例15)
反応器に、DMT0.30モル、DMI0.30モル、FDPM0.40モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0148】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の30モル%がDMT由来、30モル%がDMI由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0149】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは40500、ガラス転移温度Tgは133℃、屈折率は1.636、固有複屈折は1×10−4であった。
【0150】
(実施例16)
反応器に、DMT0.30モル、DMI0.30モル、FDPM0.40モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0151】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の30モル%がDMT由来、30モル%がDMI由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0152】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは36000、ガラス転移温度Tgは134℃、屈折率は1.637、固有複屈折は1×10−4であった。
【0153】
(実施例17)
反応器に、DMT0.25モル、DMI0.25モル、FDPM0.50モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0154】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の25モル%がDMT由来、25モル%がDMI由来、50モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0155】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは39800、ガラス転移温度Tgは130℃、屈折率は1.636、固有複屈折は8×10−4であり、吸水率は0.265%であった。
【0156】
(実施例18)
反応器に、DMT0.25モル、DMI0.25モル、FDPM0.50モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0157】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の25モル%がDMT由来、25モル%がDMI由来、50モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0158】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは37100、ガラス転移温度Tgは132℃、屈折率は1.637、固有複屈折は8×10−4であった。
【0159】
(実施例19)
反応器に、DMT0.50モル、FDPM0.50モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0160】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMT由来、50モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0161】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42500、ガラス転移温度Tgは140℃、屈折率は1.647、固有複屈折は2×10−4であった。
【0162】
(実施例20)
反応器に、DMT0.55モル、FDPM0.45モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0163】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の55モル%がDMT由来、45モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0164】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42000、ガラス転移温度Tgは140℃、屈折率は1.647、固有複屈折は3×10−4であった。
【0165】
(実施例21)
反応器に、DMT0.70モル、FDPM0.30モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0166】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の70モル%がDMT由来、30モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0167】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42200、ガラス転移温度Tgは144℃、屈折率は1.648、固有複屈折は19×10−4であった。
【0168】
(実施例22)
反応器に、DMT0.50モル、FDPT0.50モル、BPEF0.425モル、BOPPEF0.425モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0169】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMT由来、50モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の42.5モル%がBPEF由来、42.5モル%がBOPPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0170】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは43800、ガラス転移温度Tgは138℃、屈折率は1.643、固有複屈折は3×10−4であった。
【0171】
(参考例1)
反応器に、FDPM1.00モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0172】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0173】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは52800、ガラス転移温度Tgは125℃、屈折率は1.636、固有複屈折は44×10−4であった。
【0174】
(参考例2)
反応器に、FDPT1.00モル、BPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0175】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0176】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは54000、ガラス転移温度Tgは122℃、屈折率は1.634、固有複屈折は43×10−4であった。
【0177】
(参考例3)
反応器に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下、DMNという)0.50モル、FDPT0.50モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0178】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMN由来、50モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0179】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは39600、ガラス転移温度Tgは137℃、屈折率は1.645、固有複屈折は50×10−4であった。
【0180】
(参考例4)
反応器に、DMN0.75モル、FDPT0.25モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0181】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の75モル%がDMN由来、25モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0182】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは33900、ガラス転移温度Tgは151℃、屈折率は1.652、固有複屈折は57×10−4であった。
【0183】
(参考例5)
反応器に、イソフタル酸ジメチル(以下、DMIという)0.25モル、DMN0.50モル、FDPT0.25モル、BPEF0.85モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0184】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の25モル%がDMI由来、50モル%がDMN由来、25モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の85モル%がBPEF由来、15モル%がEG由来であった。
【0185】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは34800、ガラス転移温度Tgは144℃、屈折率は1.649、固有複屈折は49×10−4であった。
【0186】
(参考例6)
反応器に、DMT1.00モル、BPEF0.70モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0187】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がDMT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の70モル%がBPEF由来、30モル%がEG由来であった。
【0188】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42100、ガラス転移温度Tgは146℃、屈折率は1.632、固有複屈折は87×10−4であり、吸水率は0.34%であった。
【0189】
(参考例7)
反応器に、DMT0.50モル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(以下、CHDAという)0.50モル、BPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0190】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMT由来、50モル%がCHDA由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0191】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは45100、ガラス転移温度Tgは134℃、屈折率は1.620、固有複屈折は49×10−4であった。
【0192】
(参考例8)
反応器に、CHDA1.00モル、BPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0193】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がCHDA由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0194】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは50500、ガラス転移温度Tgは121℃、屈折率は1.607、固有複屈折は3×10−4であった。
【0195】
(参考例9)
反応器に、DMI0.50モル、DMN0.50モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0196】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMI由来、50モル%がDMN由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0197】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは35200、ガラス転移温度Tgは150℃、屈折率は1.650、固有複屈折は62×10−4であった。
【0198】
(参考例10)
反応器に、DMN0.50モル、FDPT0.50モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0199】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の50モル%がDMN由来、50モル%がFDPT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0200】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは42300、ガラス転移温度Tgは145℃、屈折率は1.656、固有複屈折は43×10−4であった。
【0201】
(参考例11)
反応器に、DMT1.00モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0202】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がDMT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0203】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは38400、ガラス転移温度Tgは152℃、屈折率は1.649、固有複屈折は64×10−4であった。
【0204】
(参考例12)
反応器に、DMN0.60モル、FDPM0.40モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0205】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMN由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0206】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは35200、ガラス転移温度Tgは146℃、屈折率は1.650、固有複屈折は45×10−4であった。
【0207】
(参考例13)
反応器に、DMN0.70モル、FDPM0.30モル、BPEF0.90モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0208】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の70モル%がDMN由来、30モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の90モル%がBPEF由来、10モル%がEG由来であった。
【0209】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは33600、ガラス転移温度Tgは152℃、屈折率は1.652、固有複屈折は73×10−4であった。
【0210】
(参考例14)
反応器に、DMN0.60モル、FDPM0.40モル、BOPPEF0.80モル、EG2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0211】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の60モル%がDMN由来、40モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0212】
また、得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは35200、ガラス転移温度Tgは149℃、屈折率は1.658、固有複屈折は52×10−4であった。
【0213】
以下に、結果をまとめた表を示す。
【0214】
【表1】

【0215】
【表2】

【0216】
表1の結果から明らかなように、実施例では、高耐熱性(例えば、Tg130℃以上)、高屈折率(例えば、1.63以上)、低複屈折をバランス良く有するポリエステル樹脂が得られた。これに対して、ジカルボン酸成分としてフルオレンジカルボン酸成分のみを用いた参考例1および2では、複屈折を十分に低減できず、ガラス転移温度も低かった。また、参考例3、4、10、12〜14では、ナフタレンジカルボン酸成分を併用したところ、ガラス転移温度および屈折率を向上できたが、複屈折を同等か又はより大きくする結果となった。さらに、参考例5および9では、複屈折の低減効果を期待して、特開2010−285505号公報のように、イソフタル酸成分を使用したが、複屈折を十分に低減できなかった。
【0217】
なお、参考例6〜8および参考例11では、テレフタル酸成分は屈折率の向上、脂環族ジカルボン酸であるシクロヘキサンジカルボン酸成分は複屈折の低減においてそれぞれ効果を確認できたが、これらを組み合わせても、高屈折率と低複屈折を備えたポリエステルを得ることができなかった。特に、参考例2と参考例6〜8との対比から、シクロヘキサンジカルボン酸成分は、単独では、フルオレンジカルボン酸成分に比べて複屈折低減効果に優れているにもかかわらず、テレフタル酸成分と組み合わせると、十分な複屈折低減効果が得られず、屈折率も十分に高く(例えば、1.63以上に)することができなかった。このことからも、実施例におけるフルオレンジカルボン酸成分とテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分(特にテレフタル酸成分)とを特定の割合で組み合わせた併用系の結果が特異であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の新規なポリエステル樹脂は、高屈折率、高耐熱性、低複屈折性、高透明性などの優れた光学的特性を有しており、また、耐熱性などの各種特性にも優れている。そのため、本発明のポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物)は、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明のポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物)は、塗料、帯電防止剤、インキ、接着剤、粘着剤、樹脂充填材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料)、電気・電子部品又は機器(光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなど)用樹脂、機械部品又は機器(自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材など)用の樹脂などに好適に利用できる。
【0219】
特に、本発明のポリエステル樹脂は、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような前記ポリエステル樹脂で形成(構成)された光学用成形体としては、例えば、光学フィルム、光学レンズなどが挙げられる。
【0220】
光学フィルムとしては、偏光フィルム(及びそれを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム)、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。とりわけ、本発明のフィルムは、機器のディスプレイに用いる光学フィルムとして有用である。このような本発明の光学フィルムを備えたディスプレイ用部材(又はディスプレイ)としては、具体的には、パーソナル・コンピュータのモニタ、テレビジョン、携帯電話、カー・ナビゲーションシステム、タッチパネルなどのFPD装置(例えば、LCD、PDPなど)などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単環式芳香族ジカルボン酸成分およびフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物を含むジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂であって、前記ジカルボン酸成分が、単環式芳香族ジカルボン酸成分をジカルボン酸成分全体に対して30モル%以上の割合で含み、かつ単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合が、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10であるポリエステル樹脂。
【請求項2】
単環式芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分を含み、単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合が、ジカルボン酸成分全体に対して35〜80モル%である請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分が、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種を含み、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分の割合が、ジカルボン酸成分全体に対して55モル%以下である請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
ジオール成分が、さらに、脂肪族ジオール成分を含み、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物と、脂肪族ジオール成分との割合が、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
単環式芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分を含み、単環式芳香族ジカルボン酸成分の割合が、ジカルボン酸成分全体に対して40〜65モル%であり、
フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分が、9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレン類およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種を含み、
単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分との割合が、前者/後者(モル比)=40/60〜65/35であり、
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンから選択された少なくとも1種を含み、
ジオール成分が、さらに、C2−6アルカンジオール成分で構成された脂肪族ジオール成分を含み、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物と、脂肪族ジオール成分との割合が、前者/後者(モル比)=70/30〜95/5である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
20℃、波長589nmにおける屈折率が1.62以上であり、ガラス転移温度が125℃以上であり、固有複屈折の値が25×10−4以下である請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
20℃、波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、ガラス転移温度が130℃以上であり、固有複屈折の値が20×10−4以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂で形成された成形体。
【請求項9】
光学フィルム又は光学レンズである請求項8記載の成形体。

【公開番号】特開2013−64117(P2013−64117A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185819(P2012−185819)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】