説明

フルオレン骨格を有するポリマー

【課題】耐熱性などの特性が改善された新規なポリマー(特に熱可塑性ポリマー)およびこのポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(例えば、単官能性(メタ)アクリル酸エステル)に、重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基など)を有するフルオレン化合物(例えば、2以上の重合性不飽和結合を有する9,9−ビスアリールフルオレン類)を共重合させる。このような方法では、少量の(例えば、重合成分全体の10モル%未満の割合で)フルオレン化合物を共重合させるだけでも、ベースとなる重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーの単独重合体に比べて、耐熱性などの特性を十分に改善又は向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性などの特性が改良又は改善された新規なポリマー、このポリマーの製造方法および前記ポリマーを得るための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
連鎖重合により得られるポリマーは、重合性不飽和モノマーを重合(ラジカル重合、イオン重合など)させることにより得られる。このようなポリマーは、重合成分となるモノマーの種類に応じて、種々の優れた特性を有しており、各種樹脂材料として用いられている。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器及び自動車などの各部品などさまざまな分野で使用されている。近年、PMMA樹脂は、光学レンズ、プリズム、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの光学材料にも幅広く使用されるようになっている。
【0003】
そして、このようなポリマーに要求される性能(例えば、耐熱性、光学特性など)は、樹脂材料の高機能化とともにより高度になってきている。例えば、前記のような透明性を有するPMMA樹脂は、デザイン性や省電力化に伴い、薄型軽量化(例えば、ランプレンズユニット用途など)が要求される傾向にあり、そのため、このような用途においては、レンズと光源の間隔を小さくするために、優れた耐熱性が要求されるようになっている。しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性を有するものの、耐熱性が十分ではないという問題があった。
【0004】
このような状況下、ポリマーを変性し、耐熱性を向上させる試みもなされている。例えば、特開2009−256406号公報(特許文献1)では、メタクリル酸などの単官能性不飽和単量体を共重合成分として用いたPMMA樹脂において、単官能性不飽和単量体由来の骨格を利用して分子内環化反応を生じさせ、ポリマー中に6員環構造を有する酸無水物単位を導入することにより、PMMA樹脂の耐熱性を向上させる方法が開示されている。
【0005】
しかし、この文献の方法では、実際には多量の単官能性不飽和単量体を必要とし、PMMA樹脂本来の特性を損なう虞がある。また、このような方法では、環化反応を生じさせる反応条件の選択が難しく、所望のポリマーを得ることが困難である。
【0006】
なお、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、高屈折率、高耐熱性などの優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現し、成形可能とする方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物(例えば、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンなど)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造にフルオレン骨格を導入する方法や、樹脂にフルオレン骨格を有する化合物を添加する方法などが知られている。
【0007】
例えば、特開平7−198901号公報(特許文献2)には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、10mol%以上の9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシ化合物と、炭素原子数が2から4の脂肪族グリコールとからなる実質的に線状のポリエステル重合体であって、屈折率が1.60以上であるプラスチックレンズ用ポリエステル樹脂が開示されている。
【0008】
また、特開2005−162785号公報(特許文献3)には、前記のようなフルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂などの芳香環含有樹脂)とで構成された樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−256406号公報(特許請求の範囲、段落[0016]、実施例)
【特許文献2】特開平7−198901号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−162785号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、耐熱性などの特性が改善された新規なポリマー(特に熱可塑性ポリマー)、このポリマーの製造方法および前記ポリマーを得るための組成物(重合性組成物)を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ポリマーが有する優れた特性を損なうことなく、耐熱性などの特性を改善できる新規なポリマー、このポリマーの製造方法および前記ポリマーを得るための組成物(重合性組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のように、フルオレン骨格を有する化合物は、縮合重合系ポリマーのモノマー原料や、樹脂の添加剤として用いられているのが現状であり、現実的に、付加重合(連鎖重合)系ポリマー(特に熱可塑性ポリマー)のモノマー成分として使用された例は報告されていない。
【0013】
このような状況の中、本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、付加重合系モノマー(特に単官能性モノマー)と、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物との重合を試みたところ、付加重合が進行してフルオレン化合物由来のフルオレン骨格が導入された新規なポリマーが得られること、しかも、このようなポリマーは、意外にも、ごく少量のフルオレン化合物の使用であっても、耐熱性などの特性が十分に改善されていることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のポリマー(共重合体、コポリマー)は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(又は重合性不飽和結合を有する非フルオレン化合物)と、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合成分とするポリマーである。このようなポリマーにおいて、フルオレン化合物の割合は、通常、重合成分全体の(非フルオレン系モノマーおよびフルオレン化合物の総量に対して)少量(例えば、10モル%未満)であってもよい。また、非フルオレン系モノマーは、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを含んでいてもよい。特に、非フルオレン系モノマーは、単官能性モノマー(例えば、メタクリル酸アルキルエステルなどの単官能性(メタ)アクリル酸エステル)を含んでいてもよい。このような単官能性モノマーと、フルオレン化合物(特に少量のフルオレン化合物)とを組み合わせることで、耐熱性などが改善された熱可塑性のポリマーを効率よく得ることができる。
【0015】
前記フルオレン化合物は、1個の重合性不飽和結合を有する単官能性化合物であってもよいが、特に、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(2個以上の重合性不飽和結合を有する9,9−ビスアリールフルオレン類を含む)を含んでいてもよい。
【0016】
本発明のポリマーにおいて、前記フルオレン化合物の割合は、重合成分全体の2モル%以下(例えば、0.04〜1.2モル%程度)であってもよい。
【0017】
代表的な本発明のポリマーには、非フルオレン系モノマーが単官能性(メタ)アクリル酸エステルを含み、フルオレン化合物が2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する9,9−ビスアリールフルオレン類を含み、フルオレン化合物の割合が重合成分全体の0.05〜1モル%であるポリマーが含まれる。
【0018】
本発明のポリマーは、通常、熱可塑性であってもよい。また、本発明のポリマーにおいて、前記フルオレン化合物の割合は、15重量%以下程度であってもよい。
【0019】
本発明には、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合させて、前記ポリマーを製造する方法も含まれる。
【0020】
また、本発明には、前記ポリマーを製造するための重合性組成物であって、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを含む組成物も含まれる。このような組成物において、フルオレン化合物の割合は、通常、重合成分全体の(非フルオレン系モノマーおよびフルオレン化合物の総量に対して)少量(例えば、10モル%未満)であってもよい。
【0021】
本発明では、少量の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物を、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーに共重合性モノマーとして用いることで、前記非フルオレン系モノマーのポリマーの耐熱性を向上できる。そのため、本発明のフルオレン化合物は、非フルオレン系モノマーのポリマーの耐熱性向上剤として使用できる。すなわち、本発明の耐熱性向上剤は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーを重合成分とするポリマーの耐熱性を向上させる(又は改善する)ための耐熱性向上剤であって、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物で構成されている。なお、耐熱性向上剤は、通常、重合成分全体(非フルオレン系モノマーおよびフルオレン化合物の総量)に対して10モル%未満(例えば、2モル%以下)の割合で用いてもよい。
【0022】
なお、本明細書において、「非フルオレン系モノマー」又は「非フルオレン化合物」とは「フルオレン骨格を有しないモノマー」又は「フルオレン骨格を有しない化合物」を意味し、「フルオレン化合物」とはフルオレン骨格を有する化合物を意味する。また、本明細書において、「フルオレン類」などの「類」とは、置換基を有していてもよいことを意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の新規なポリマーは、フルオレン骨格が導入され、ベースとなる重合性不飽和結合を有するフルオレン系モノマーのポリマー(べースポリマー)に比べて、耐熱性などの特性が改善されている。しかも、このようなポリマーは、特許文献1の環化反応のような複雑な反応を要することがなく、重合成分の一部としてフルオレン骨格を有する化合物を使用するだけで容易に得ることができる。特に、本発明では、フルオレン骨格を有する化合物を重合成分としてごく少量使用するだけでも、耐熱性などの特性を十分に向上又は改善できる。そのため、本発明では、ポリマーが有する優れた特性を損なうことなく、耐熱性などの特性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[ポリマー]
本発明の新規なポリマーは、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(非フルオレン系重合性不飽和化合物、フルオレン骨格を有しない重合性不飽和モノマー)と、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(又はフルオレン骨格を有する重合性不飽和化合物)とを重合成分とするポリマー(特に、熱可塑性ポリマー)である。
【0025】
(重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー)
重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(単に、非フルオレン系モノマー、重合性不飽和結合を有するモノマーなどということがある)において、重合性不飽和結合(重合性不飽和基)としては、通常、炭素−炭素不飽和結合(炭素−炭素不飽和基)が挙げられる。このような重合性不飽和結合は、炭素−炭素不飽和結合を有していればよく、具体的なモノマーとしては、アルケニレン基(例えば、ビニル基など)、(メタ)アクリロイル基などを有するモノマーが挙げられる。重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて重合性不飽和基を有していてもよい。
【0026】
非フルオレン系モノマーにおいて、重合性不飽和結合の数は、1個以上(例えば、1〜8個、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個、特に1〜2個程度)であればよいが、通常、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーは、1つの重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(非フルオレン系単官能性モノマー)を少なくとも含んでいる場合が多い。例えば、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーは、単官能性モノマーのみで構成してもよく、単官能性モノマーを主成分として2以上の重合性不飽和結合を有する化合物(多官能性モノマー)を含んでいてもよい。後者の場合、非フルオレン系モノマー全体に対して、単官能性モノマーの割合は、60モル%以上(例えば、70〜99.9モル%)、好ましくは80モル%以上(例えば、85〜99.7モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜99.5モル%)であってもよい。
【0027】
なお、非フルオレン系モノマーは、鎖状モノマーであってもよく、環状骨格としてフルオレン骨格を有しない限り、環状(又は環状骨格を有する)モノマー(例えば、後述の(メタ)アクリル酸シクロアルキルなど)であってもよい。
【0028】
具体的な非フルオレン系モノマーとしては、単官能性モノマー(フルオレン骨格を有しない単官能性モノマー)、多官能性モノマー(フルオレン骨格を有しない多官能性モノマー)に大別できる。単官能性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、非(メタ)アクリル系モノマーに大別できる。
【0029】
(メタ)アクリル系モノマー(単官能性(メタ)アクリル系モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキル、好ましくは(メタ)アクリル酸C1−10アルキル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1−4アルキルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキル[例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキル;ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸多環式シクロアルキル]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシアルキルなど]、ハロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのハロC1−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシC1−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、アミノアルキル(メタ)アクリレート[例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのN−置換アミノアルキル(メタ)アクリレートなど]、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリレート);(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)などの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0030】
代表的な(メタ)アクリル系モノマーには、(メタ)アクリル酸エステル(単官能性(メタ)アクリル酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)が含まれる。特に、(メタ)アクリル系モノマーは、メタクリル酸エステル(特に、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸アルキルエステル)で少なくとも構成してもよい。(メタ)アクリル系モノマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステル(特に、メタクリル酸エステル)の割合は、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%(例えば、90〜100モル%)程度であってもよい。
【0031】
非(メタ)アクリル系モノマー(単官能性非(メタ)アクリル系モノマー)としては、例えば、オレフィン系モノマー[例えば、鎖状オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−C2−6オレフィン)、環状オレフィン(ノルボルネンなど)など]、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)、ビニルエステル系モノマー(例えば、酢酸ビニルなど)、ハロゲン含有モノマー(例えば、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル)、シアン化ビニル系モノマー(例えば、(メタ)アクリロニトリル)、ビニルエーテル系モノマー(例えば、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル)、不飽和カルボン酸系モノマー(例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など)、ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの非(メタ)アクリル系モノマーは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
代表的な単官能性モノマーには、(メタ)アクリル系モノマー(特に、(メタ)アクリル酸エステルなど)が含まれる。そのため、単官能性モノマーは、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーで構成してもよい。すなわち、単官能性モノマーは、(メタ)アクリル系モノマー単独で構成してもよく、(メタ)アクリル系モノマーと非(メタ)アクリル系モノマーとを組み合わせてもよい。後者の場合、単官能性モノマー全体に対する(メタ)アクリル系モノマーの割合は、例えば、50モル%以上(例えば、60〜99.9モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、75〜99.5モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば、85〜99モル%)であってもよい。
【0033】
多官能性モノマーとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどのトリオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどのテトラオールのジ(メタ)アクリレート]、橋架け環式(メタ)アクリレート(例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)など}、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート{例えば、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)の(メタ)アクリレート、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート}などの多官能性(メタ)アクリル系モノマー;ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートなどの多官能性非(メタ)アクリル系モノマーなどが含まれる。多官能性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
代表的な多官能性モノマーは、多官能性(メタ)アクリル系モノマー(多官能性(メタ)アクリレート)である。
【0035】
(重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物)
重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(又はフルオレン骨格を有する重合性不飽和化合物)において、重合性不飽和結合(重合性不飽和基)としては、前記重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーの項で例示の重合性不飽和結合が挙げられる。代表的なフルオレン化合物は、(メタ)アクリロイル基(又は(メタ)アクリロイルオキシ基)を有するフルオレン化合物である。
【0036】
また、フルオレン化合物において、重合性不飽和結合の数もまた前記と同様であり、例えば、1個以上(例えば、1〜8個、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは2〜4個)であってもよい。好ましいフルオレン化合物には、2個以上(例えば、2〜6個、好ましくは2〜4個、特に2個)の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物が含まれる。このようなフルオレン化合物を用いると、ポリマーの一部に架橋構造(三次元構造)を導入でき、且つフルオレン骨格(特に、剛直なカルド構造を有するフルオレン骨格)を導入できることが相まって、ポリマーの耐熱性などの特性を効率よく改善させやすい。
【0037】
そのため、フルオレン化合物は、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(多官能性のフルオレン化合物)で少なくとも構成してもよい。すなわち、フルオレン化合物は、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物のみで構成してもよく、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物を主成分として1つの重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(単官能性フルオレン化合物)を含んでいてもよい。後者の場合、フルオレン化合物全体に対して、多官能性のフルオレン化合物の割合は、40モル%以上(例えば、50〜99.9モル%)、好ましくは60モル%以上(例えば、65〜99.7モル%)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、80〜99.5モル%)、特に85モル%以上(例えば、90〜99モル%)であってもよい。
【0038】
フルオレン化合物は、重合性不飽和結合とともに、フルオレン骨格を有している。すなわち、フルオレン化合物は、重合性不飽和結合(又は重合性不飽和結合を含む基)がフルオレン骨格に結合(又は置換)した化合物である。
【0039】
このようなフルオレン骨格としては、フルオレン(9位に置換基がないフルオレン骨格)、9−置換フルオレン(例えば、9−アルキルフルオレン、9−モノアリールフルオレン、9,9−ビスアリールフルオレンなどの9位に炭化水素基を有するフルオレンなど)などが挙げられる。代表的なフルオレン骨格は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格である。なお、フルオレン骨格は、フルオレンやフルオレンの9位に置換する置換基に、置換基を有していてもよい。
【0040】
フルオレン骨格に対する重合性不飽和結合(又は重合性不飽和結合を含む基)の置換位置(結合位置)は、特に限定されず、フルオレン骨格そのものであってもよく、フルオレンの9位に位置する置換基に結合していてもよい。
【0041】
代表的なフルオレン化合物には、2以上の重合性不飽和結合(特に(メタ)アクリロイル基)を有する9,9−ビスアリールフルオレン類、例えば、下記式(1)で表される化合物などが含まれる。
【0042】
【化1】

【0043】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式アレーン(又は縮合多環式芳香族炭化水素)環などが挙げられる。縮合多環式アレーン(又は縮合多環式芳香族炭化水素)環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式アレーン環、好ましくはC10−16縮合二環式アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、2つの環Zは、同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0044】
代表的な環Zは、ベンゼン環、ナフタレン環であり、特に高耐熱性、高屈折率などの観点からは、環Zはナフタレン環であってもよい。
【0045】
前記式(1)において、基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、アルキル基などのハロゲン原子でない基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0046】
前記式(1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0047】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、0〜15(例えば、0〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、0〜8)、好ましくは0〜6(例えば、1〜6)、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜4)であってもよい。特に、mは、1以上(例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1)であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zにおいて、同一であっても、異なっていてもよい。また、2つの環Zにおいて、オキシアルキレン基の合計(m×2)は、0〜30(例えば、2〜24)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜16(例えば、2〜14)、好ましくは0〜12(例えば、2〜10)、さらに好ましくは0〜8(例えば、0〜6)、特に0〜4(例えば、2〜4)であってもよい。
【0048】
前記式(1)において、基Rを含む基((メタ)アクリロイル基含有基などということがある)の置換数pは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、(メタ)アクリロイル基含有基は、環Zがベンゼン環であるとき、ベンゼン環の2〜6位の適当な位置(特に、少なくとも4位)に置換していてもよく、環Zが縮合多環式炭化水素環であるとき、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換していてもよい。
【0049】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基、好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0050】
好ましい基Rとしては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
【0051】
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0052】
代表的なフルオレン化合物(又は前記式(1)で表される化合物)には、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類が含まれる。
【0053】
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[3,4−ジ((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがベンゼン環、mが0である化合物);9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−(メタ)アクリロイルオキシナフチル)]フルオレンなど]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシナフチル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがナフタレン環、mが0である化合物)などが挙げられる。
【0054】
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類に対応し、式(1)においてmが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなど]などの9,9−ビス{[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシ]フェニル}フルオレン)、9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス[ジ又はトリ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ又はトリ((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがベンゼン環、mが1以上である化合物);9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがナフタレン環、mが1以上である化合物)などが挙げられる。
【0055】
フルオレン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0056】
本発明のポリマーは、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合成分とするポリマーである。すなわち、本発明のポリマーは、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー由来のユニット(構成単位)と、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物由来のユニット(構成単位)とを有するポリマーである。
【0057】
このような重合成分において、フルオレン化合物の割合は、重合成分全体(非フルオレン系モノマーおよびフルオレン化合物の総量)の10モル%未満(例えば、0.001〜8モル%)、好ましくは5モル%以下(例えば、0.003〜3モル%)、さらに好ましくは3モル%以下(例えば、0.005〜2モル%)、特に1.5モル%以下(例えば、0.01〜1.2モル%)であってもよく、通常2モル%以下[例えば、0.01〜1.8モル%(例えば、0.03〜1.6モル%)、好ましくは1.5モル%以下(例えば、0.04〜1.2モル%)、さらに好ましくは1モル%以下(例えば、0.05〜1モル%)、特に0.9モル%以下(例えば、0.1〜0.9モル%)、特に好ましくは0.8モル%以下(例えば、0.2〜0.8モル%)]であってもよい。
【0058】
また、重合成分において、フルオレン化合物の割合は、使用するフルオレン化合物の重合性不飽和結合の数などにもよるが、例えば、重合成分全体の(非フルオレン系モノマーおよびフルオレン化合物の総量に対して)50重量%以下(例えば、0.005〜40重量%)、好ましくは30重量%以下(例えば、0.01〜30重量%)、さらに好ましくは20重量%以下(例えば、0.02〜18重量%)、特に15重量%以下(例えば、0.1〜12重量%)であってもよく、通常0.01〜10重量%[例えば、0.05〜10重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.3〜9重量%(例えば、0.5〜8重量%)、さらに好ましくは0.7〜7重量%(例えば、0.8〜6重量%)、特に1〜5重量%(例えば、1.2〜4.5重量%)程度]であってもよい。
【0059】
本発明では、上記のようにポリマーユニットに非常に少量のフルオレン化合物由来のユニットを導入するだけでも、ポリマーにおける耐熱性などの特性を改善できる。なお、フルオレン化合物を多量使用すると、非フルオレン系モノマーのポリマー特性を維持できない場合があり、また、フルオレン化合物が2個以上の重合性不飽和結合を有する場合などにおいては、かえって、耐熱性を低下させてしまう場合がある。
【0060】
なお、本発明のポリマーは、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とのコポリマー(共重合体)であるが、共重合体の形態は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってもよい。
【0061】
本発明のポリマーの重量平均分子量は、重合方法などに応じて適宜選択でき、例えば、3000〜1000000、好ましくは5000〜700000、さらに好ましくは7000〜500000(例えば、10000〜400000)、特に10000〜300000(例えば、12000〜200000)程度であってもよく、通常8000〜150000(例えば、10000〜100000、好ましくは12000〜80000、さらに好ましくは15000〜70000)程度であってもよい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、ポリスチレン換算などで測定できる。
【0062】
なお、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(例えば、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物)と組み合わせることで、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーの重合性が向上する場合がある。
【0063】
なお、本発明のポリマーは、硬化性(熱硬化性又は光硬化性)ポリマーであってもよいが、通常、熱可塑性ポリマーであってもよい。熱可塑性ポリマーは、非フルオレン系モノマーとして単官能性モノマーを単独で又は主成分として用いたり、フルオレン化合物として多官能性モノマーを用いる場合でも重合成分に占めるフルオレン化合物の割合を少なくすることにより効率よく得ることができる。
【0064】
本発明のポリマーは、耐熱性や光学的特性など種々の特性において改善又は改良されている。例えば、本発明のポリマーのガラス転移温度は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーのみを重合させた場合(フルオレン化合物を含まない重合成分のポリマーのガラス転移温度)に比べて、0.5℃以上(例えば、0.8〜40℃)、好ましくは1℃以上(例えば、2〜30℃)、さらに好ましくは3℃以上(例えば、4〜20℃)、特に5℃以上(例えば、6〜15℃)、通常0.5〜20℃(例えば、0.8〜15℃、好ましくは1〜10℃、さらに好ましくは1.5〜8℃)程度高い。このようなガラス転移温度の向上効果は、驚くべきことに、前記のように非常に少量のフルオレン化合物の使用によっても確認できる。
【0065】
そのため、前記フルオレン化合物は、前記重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーを重合成分とするポリマーの耐熱性を向上させる(例えば、上記のように、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーのみを重合させた場合に比べて、ガラス転移温度を3℃以上上昇させる)ための耐熱性向上剤として作用する。すなわち、前記フルオレン化合物(又は耐熱性向上剤)は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと共重合させることにより、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーを重合成分とするポリマーの耐熱性を上昇させる。なお、アクリル系樹脂のような比較的ガラス転移温度が低いポリマーにおいては、前記のような数℃程度のガラス転移温度の上昇であっても、耐熱性向上剤として非常に有用である。
【0066】
[重合性組成物およびポリマーの製造方法]
本発明のポリマーは、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合(共重合)させる(重合に供する)ことにより製造できる。このような重合は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを含む組成物を用いて行うことができ、本発明には、このような前記ポリマーを得るための組成物(重合性組成物)も含む。
【0067】
重合性組成物において、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーの割合(仕込み割合)、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物の割合(仕込み割合)、およびこれらの相対的な割合(仕込み割合)は、前記ポリマーの項で記載の割合と同様の範囲から選択できる。
【0068】
重合は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーおよび重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物の重合性不飽和結合を利用できる付加重合(連鎖重合)であれば、特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合(アニオン重合など)、配位重合などのいずれであってもよいが、簡便に重合を行うためには、ラジカル重合を好適に利用できる。ラジカル重合は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳濁重合などのいずれであってもよい。
【0069】
本発明では、上記のように種々の重合(重合方法)を利用できるが、このような重合方法に応じて、重合性組成物は、適宜、重合開始剤、触媒(重合触媒)、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤(チオール類など)、溶媒などの成分を含んでいてもよい。
【0070】
重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としては、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。通常、一般的なラジカル重合では、熱重合開始剤を好適に使用できる。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなど)など]、過酸エステル類[過酢酸t−ブチル、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの過カルボン酸アルキルエステルなど]、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)など]、アゾアミド化合物{2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}など}、アゾアミジン化合物{2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩など}、アゾアルカン化合物[2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)など]、オキシム骨格を有するアゾ化合物[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)など]などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0071】
重合開始剤の割合は、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーおよび重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部(例えば、0.05〜5重量部)、好ましくは0.1〜4重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部程度であってもよい。
【0072】
溶媒(又は分散媒)としては、使用する原料の種類に応じて、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酪酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなど)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒が挙げられる。溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。また、重合方法によっては(乳化重合、懸濁重合など)、水の存在下で重合させることもできる。
【0073】
溶媒(又は分散媒)中の重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーおよび重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物の割合は、例えば、0.01〜90重量%(例えば、0.05〜70重量%)、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%程度であってもよい。
【0074】
重合反応は、重合方法に応じて、冷却下又は加熱下で行ってもよい。加熱する場合(例えば、熱重合させる場合など)、加熱温度としては、例えば、35〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは45〜100℃程度であってもよい。また、重合時間(反応時間)は、例えば、20分〜100時間、好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは2〜30時間(例えば、3〜20時間)程度であってもよい。
【0075】
反応は、空気中で行ってもよく、不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下又は流通下で行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下で行ってもよい。
【0076】
上記のようにして生成物として本発明のポリマーが得られる。生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、再沈殿、抽出、晶析(再結晶など)、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段(分離方法)や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
なお、重合に使用した9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンは、以下の合成例により合成したものを用いた。
【0079】
(合成例)
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPEF)600g、アクリル酸258g、p−トルエンスルホン酸30g、トルエン1500g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1gを仕込み、100℃〜115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、10%食塩水で洗浄を行った。洗浄後トルエンを除去し、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEFのジアクリレート体)を得た。
【0080】
(実施例1)
無水トルエン600mlに、メタクリル酸メチル(関東化学(株)製)30g(約0.3モル)、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.15g(約2.7×10−4モル、重合成分全体に対して0.1モル%)、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3g(重合成分100重量部に対して1重量部)を投入し、50℃で4時間反応させた。反応後、へキサンに投じて沈殿物を分離し、洗浄乾燥することにより、目的物(メタクリル酸メチル/9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン共重合体)を得た。
【0081】
このようにして得られた共重合体を、2軸押出機を用いて240℃で押し出し、ペレタイズを行った。得られたペレットの外観は、比較例1で得られたポリメタクリル酸メチルのペレットと同様に、無色透明であった。
【0082】
そして、得られたペレットから、成形温度290℃、金型温度80℃の条件で評価用成形体(14cm角板、厚さ4mm)を作製し、ガラス転移温度(Tg)を測定したところ、126℃であった。比較例1のTgが119℃であることから明らかなように、メタクリル酸メチルに、非常に少量の9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを共重合させるだけで、通常のポリマーにおける共重合割合からは想定できないほどのガラス転移温度の向上が確認できた。
【0083】
なお、ガラス転移温度は、エスアイアイ(SII)テクノロジー製、DSC6220を用い、速度10℃/分で測定した。
【0084】
(比較例1)
実施例1において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリマー(ポリメタクリル酸メチル)および評価用成形体を作製し、ガラス転移温度を測定したところ、119℃であった。
【0085】
(実施例2)
実施例1において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを1.5gに代えて0.3g(約5.5×10−4モル、重合成分全体に対して0.2モル%)使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマー、ペレットおよび評価用成形体を得た。実施例1と同様に、ペレットの外観は無色透明であり、高いTgのポリマーが得られた。
【0086】
(実施例3)
窒素気流下、シュレンク管に、メタクリル酸メチル(ナカライテスク社製)4.025g(40.2×10−3mol)、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液0.4ml(0.04×10−3mol、重合成分全体に対して0.1mol%、0.5重量%)、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)66.1mg(0.402×10−3mol、重合成分に対して約1モル%)及びトルエン(40.2g)を投入し、80℃で6時間反応させた。反応後、氷水にシュレンク管をつけて反応を停止させ、反応溶液をメタノールに滴下した。析出したポリマーをろ取し、メタノールで洗浄後、乾燥させることで白色粉末の目的物(メタクリル酸メチル/9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンとの共重合体)を得た。
【0087】
そして、得られた白色粉末のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、116℃であった。また、GPCにて測定した白色粉末の重量平均分子量は24000であった。比較例2のTgが114℃であることから明らかなように、実施例1のようなペレット化により熱履歴が作用している場合でなくても、ガラス転移温度の上昇が確認できた。
【0088】
なお、ガラス転移温度は、エスアイアイ(SII)テクノロジー製、DSC6220を用い、速度10℃/分、30〜150℃の範囲で測定した。GPCは東ソー製、HLC−8120GPCを用い、ポリスチレン換算で測定した。
【0089】
(比較例2)
実施例3において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンを使用しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を得た。得られたポリマーのガラス転移温度は114℃であり、GPCにて測定した白色粉末の重量平均分子量は22200であった。
【0090】
(実施例4)
実施例3において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液1.2ml(0.12×10−3mol、重合成分全体に対して0.3mol%、1.6重量%)に代えて使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリマーを得た。得られたポリマーのガラス転移温度は119℃であり、GPCにて測定した白色粉末の重量平均分子量は24300であった。
【0091】
(実施例5)
実施例3において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液2.0ml(0.20×10−3mol、重合成分全体に対して0.5mol%、2.7重量%)に代えて使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリマーを得た。得られたポリマーのガラス転移温度は121℃であり、GPCにて測定した白色粉末の重量平均分子量は27400であった。
【0092】
(実施例6)
実施例3において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液4.0ml(0.40×10−3mol、重合成分全体に対して1.0mol%、5.5重量%)に代えて使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリマーを得た。得られたポリマーのガラス転移温度は116℃であり、GPCにて測定した白色粉末の重量平均分子量は34300であった。
【0093】
(実施例7)
実施例3において、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液0.2ml(0.02×10−3mol、重合成分全体に対して0.05mol%、0.3重量%)に代えて使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリマーを得たところ、実施例3と同様に比較例2に比べてポリマーのガラス転移温度の上昇が確認できた。
【0094】
(比較例3)
9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの0.1Mトルエン溶液40ml(4.0×10−3mol、重合成分全体に対して10mol%、55重量%)に代えて使用したこと以外は、実施例3と同様にして、ポリマーを得た。得られたポリマーはゲル化し、ガラス転移温度は測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の新規ポリマー(共重合体)は、ベースとなる重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマー(例えば、(メタ)アクリル系単量体など)を重合成分とするポリマーに比べて、耐熱性などの特性において改善又は改良されている。しかも、ごく少量のフルオレン化合物を用いることで、このような特性を改善できるため、ベースとなるポリマーの特性を損なうことがない。そのため、本発明のポリマーは、ベースとなる重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーのポリマーと同様の用途において、各種樹脂材料として使用できる。例えば、ベースとなるポリマーが(メタ)アクリル系単量体である場合、本発明の新規ポリマー(又はその成形体)は、インク材料、発光材料、有機半導体、ガス分離膜、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルム(フィルタ、保護フィルムなど)など]、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに好適に使用できる。特に、本発明のポリマー(又はその成形体)は、光学材料用途に好適に利用でき、このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム又はシート状、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合成分とするポリマーであって、フルオレン化合物の割合が、重合成分全体の10モル%未満であるポリマー。
【請求項2】
非フルオレン系モノマーが、(メタ)アクリル系モノマーを含む請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
非フルオレン系モノマーが、単官能性(メタ)アクリル酸エステルを含む請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
非フルオレン系モノマーが、メタクリル酸アルキルエステルを含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
フルオレン化合物が、2個以上の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物を含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
フルオレン化合物が、2個以上の重合性不飽和結合を有する9,9−ビスアリールフルオレン類を含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
フルオレン化合物の割合が重合成分全体の2モル%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
フルオレン化合物の割合が重合成分全体の0.05〜1.2モル%である請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー。
【請求項9】
非フルオレン系モノマーが単官能性(メタ)アクリル酸エステルを含み、フルオレン化合物が2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する9,9−ビスアリールフルオレン類を含み、フルオレン化合物の割合が重合成分全体の0.05〜1モル%である請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー。
【請求項10】
熱可塑性である請求項1〜9のいずれかに記載のポリマー。
【請求項11】
フルオレン化合物の割合が重合成分全体の15重量%以下である請求項1〜10のいずれかに記載のポリマー。
【請求項12】
重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを重合させて、請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーを製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーを製造するための重合性組成物であって、重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーと、重合成分全体の10モル%未満の重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物とを含む組成物。
【請求項14】
重合性不飽和結合を有する非フルオレン系モノマーを重合成分とするポリマーの耐熱性を向上させるための耐熱性向上剤であって、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物で構成された耐熱性向上剤。

【公開番号】特開2012−111942(P2012−111942A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241690(P2011−241690)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】