説明

フルオロアルキルヒドロシリコーンを含有する硬化性組成物

少なくとも2つのヒドリド基を有するフルオロアルキルシリコーン、少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するポリエチレン系不飽和構成成分、ヒドロシリル化触媒、及びフリーラジカル反応開始剤を含む、フリーラジカル硬化性組成物について記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性フルオロアルキルシリコーン組成物、及びそれの保護コーティングを有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ディスプレイ類、織物類、金属類、石、木材、革等のような、一般に使用されるある種の材料は、日常の使用の間に、スクラッチ、磨耗、及び汚れの影響を受けやすい。場合によっては、これらの材料の表面に、保護、並びに、耐久性、性能及び外観の向上をもたらすために、保護フィルム又はコーティングを適用してもよい。
【0003】
種々の表面のための保護コーティング組成物として、アクリル樹脂の重合に基づく紫外線硬化系が使用されてきた。場合によっては、ポリマー網目構造にフッ素化基のような特定の構造を導入することによって、これらのコーティングの性能を改質又は向上させることが望ましいことがある。フッ素化基は、フッ素化アクリレート化合物のような少量(<1%、w/w)のフッ素化モノマーと、アクリル樹脂との共重合を通して、これらの組成物中に組み込むことができる。
【0004】
米国特許第6,132,861号(カン(Kang)ら、‘861);同第6,238,798B1号(カンら、‘798);同第6,245,833B1号(カンら、‘833);同第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)及びPCT国際公開特許出願番号(Published PCT Application No.)WO99/57185(ファン(Huang)ら)は、コロイド状無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体、及び特定のフルオロケミカル化合物のブレンドを含有するセラマー組成物について記載している。これらの組成物は、単一層コーティングにおいて耐汚れ性及び耐磨耗性を有するハードコートを提供すると記載されている。
【0005】
米国特許公開出願番号(U.S. Pub. Appln. No.)2006/0014915は、平均で1分子当たり少なくとも2つの不飽和有機基を有する非フッ素化ポリオルガノシロキサン液体、及び平均で1分子当たり少なくとも2つのケイ素と結合した水素原子を有する非フッ素化架橋剤;ヒドロシリル化触媒;並びにフルオロオルガノシリコーン、を含む組成物について記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フッ素化ポリマー類を用いる種々の保護コーティングが開発されてきたが、既存の系よりも良好な性能及び寿命を有する改善されたコーティング組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フリーラジカル硬化性の組成物を提供する:
すなわち、
a)少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するポリエチレン系不飽和構成成分と、
b)少なくとも2つのSi−H基を有するフルオロアルキルヒドロシリコーンと、
c)ヒドロシリル化触媒と、
d)フリーラジカル重合触媒と、を含む、フリーラジカル硬化性の組成物である。
【0008】
少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するポリエチレン系不飽和構成成分は、エチレン系不飽和基のモル当量がフルオロアルキルヒドロシリコーンのSi−Hのモル当量を上回るような十分な量で存在する。一般に、前記組成物は、100質量部のa)及びb)を基準として51質量部より多くのポリエチレン系不飽和構成成分であるa)を含む。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、a)及びb)の反応生成物(上記参照)を含むフリーラジカル硬化性の組成物を提供し、この系では、ヒドロシリル化触媒(c)によりヒドロシリル化が行われ、並びに前記組成物はその後又は同時に、フリーラジカル触媒(d)により硬化される。
【0010】
ポリエチレン系不飽和構成成分は、複数のエチレン系不飽和基を有する有機化合物を含んでもよく、又は複数のエチレン系不飽和基を有する表面官能化無機粒子を含んでもよい。フルオロアルキルヒドロシリコーンは、末端フルオロアルキル基、ペンダント(すなわち、鎖中)フルオロアルキル基、又はそれらの組み合わせを有していてよい。さらに、フルオロアルキルヒドロシリコーンは、末端Si−H基、ペンダント(すなわち、鎖中)Si−H基、又はそれらの組み合わせを有していてよい。任意で、前記硬化性組成物は、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい。
【0011】
本発明は、好適な硬質基材をコーティング組成物(上記参照)でコーティングし、ポリエチレン系不飽和構成成分のエチレン系不飽和基をヒドロシリル化触媒の存在下でヒドロシリル化し、その後残存する未反応エチレン系不飽和基をフリーラジカル触媒によって硬化させることにより調製される、コーティング物品を更に提供する。
【0012】
幾つかの実施形態では、ヒドロシリル化触媒及びフリーラジカル触媒は同じ触媒であってもよく、例えば光ヒドロシリル化触媒がヒドロシリル化、及びフリーラジカル硬化の両方を誘起してもよい。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、本発明の硬化されたコーティングを含む、コーティング物品を提供する。前記硬化性組成物は、種々の基材表面にハードコートを調製するために使用してもよく、容易に洗浄でき、耐久性であり、表面エネルギーが低い、耐溶媒性があり、水、汚れ、及びマーカーをはじく表面を提供する。
【0014】
定義
本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイル基/化合物の両方を包含する。少なくともいくつかの実施形態においては、アクリレート基が好ましい。本明細書で使用するとき、(メタ)アクリル基は、(メタ)アクリレートエステル類、(メタ)アクリルアミド類、及びN−アルキル(メタ)アクリルアミド類などの化合物の部類を包含する。
【0015】
「ポリエチレン系不飽和」とは、複数のビニル及び(メタ)アクリル基などの複数のエチレン系不飽和基を有する化合物又は構成成分を意味する。
【0016】
「ポリ(メタ)アクリロイル」とは、複数のアクリレート基などのような、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物又は構成成分を意味する。
【0017】
「ハードコート」又は「トップコート」とは、任意で無機添加剤類を含む、フリーラジカル硬化された組成物を意味する。
【0018】
「表面エネルギーの低い」とは、本明細書に記載される物品の表面層が、好ましくは、水との静的又は動的接触角が少なくとも70°を示すことを意味する。更に好ましくは、水との接触角が少なくとも80°、及び更により好ましくは少なくとも90°(例えば、少なくとも95°、少なくとも100°)である。表面エネルギーが低いということは、耐汚れ性、並びにその表面の洗浄し易さを示唆している。表面エネルギーが低いことを更に示唆するものとして、市販のマーカーからのインクが好ましくは丸くなる。更に、本明細書に記載される表面層及び物品は、「撥インク性」を示し、これは、市販のティッシュペーパーで拭くことによりインクを容易に除去できることを意味する。
【0019】
本明細書における端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包摂される全ての数が包含される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、そして5を包含する)。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈において別段の明確な指示がない限り、複数形もまた包含する。従って、例えば「化合物」(“a compound”)を含有する組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。さらに、用語「又は」は、一般に、文脈において別段の明確な指示がない限り、「及び/又は」の意味で用いられる。
【0021】
特に指示がない限り、本明細書及び本特許請求の範囲で使用される成分量、性質の測定値、例えば表面エネルギー、接触角などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という語句によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、特に指示がない限り、この明細書及び添付した特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは、当業者により本発明の教示を利用して探求される所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、及び特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して通常の四捨五入を適用することによって解釈されなければならない。広範に渡る本発明の範囲を示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体的な実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差及び不確実性を本来含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
硬化性組成物の第1の構成成分は、2つ以上のエチレン系不飽和の重合可能基を有する、有機ポリエチレン系不飽和構成成分を含んでいてよい。ポリエチレン系不飽和構成成分は、次式:R(Z’)を有し、式中、Rは価数pの有機部分であり、pは少なくとも2であり、そしてZ’は前記フルオロアルキルシリコーンの前記エチレン系不飽和基と反応性があるエチレン系不飽和の重合可能基である。好ましくは、R部分は、非ウレタンヒドロカルビル基(炭素及び水素のみを含有する)であり、及び最も好ましくは、R部分は、直鎖、分枝状、環式、又は非環式脂肪族基である。
【0023】
エチレン系不飽和基Z’は、ビニル、アリル、及びブテニルのようなアルケニル基:エチニル、プロピニル、及びブチニル(butentyl)のようなアルキニル基、ビニルオキシアルキレン(例えば、CH=CHO−C2m−)、アリルオキシアルキレン(例えば、CH=CHCHO−C2m−)、そして(メタ)アクリロイル基を包含してもよく、式中、mは1〜12の整数である。好ましくは、フルオロアルキルシリコーンのZ’基は(メタ)アクリロイル基である。
【0024】
前記コーティング組成物において、例えば、ジ(メタ)アクリロイル含有化合物、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;トリ(メタ)アクリル含有化合物、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリアクリレート類(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート類(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート;より官能性の高い(メタ)アクリル含有化合物類、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;オリゴマー性(メタ)アクリル化合物類、例えば、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート類;前述のポリアクリルアミド類縁体類;及びこれらの組み合わせのような種々多様な(メタ)アクリロイル化合物を使用することができる。かかる化合物類は、例えば、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton));UCB・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation)(ジョージア州、スミュルナ(Smyrna));及びアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee))等の販売業者から広範囲に入手可能である。追加的な有用な(メタ)アクリレート材料としては、ヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレート類、例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載のものが挙げられる。
【0025】
好ましい市販の(メタ)アクリロイル化合物としては、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))から入手可能なもの、例えば商標名「SR306」で入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート、商標名「SR351」で入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商標名「SR444」で入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレート、商標名「SR399LV」で入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商標名「SR454」で入手可能なエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、及び商標名「SR494」で入手可能なエトキシ化(4)ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
幾つかの用途については、わずか5質量部の非フッ素化有機ポリエチレン系不飽和構成成分(100質量部の有機ポリエチレン系不飽和構成成分及びフルオロアルキルヒドロシリコーンに対して)で好適な耐久性がもたらされる場合があるが、典型的には、特にこれらの化合物が一般にフッ素化化合物よりも廉価であることから、濃度を最大にするのが好ましい。それ故に、本明細書に記載されるコーティング組成物は典型的に、50質量部よりも多くの非フッ素化有機ポリエチレン系不飽和構成成分を含む。幾つかの実施においては、非フッ素化有機ポリエチレン系不飽和構成成分の合計量がコーティング組成物の60質量部よりも多く、少なくとも70質量部、少なくとも80質量部、少なくとも90質量部、そして更には約99.5質量部を構成していてもよい。
【0027】
或いは、ポリエチレン系不飽和構成成分は、表面官能化無機粒子、好ましくは複数のポリエチレン系不飽和基を有するナノ粒子(100ナノメートル未満の平均粒子サイズを有する)を含んでいてもよい。これらの粒子及びナノ粒子は、(a)粒子が硬化性組成物中に分散するように、及び(b)粒子に結合されたエチレン系不飽和基が重合可能であるように官能化された、シリカ、酸化亜鉛、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、他のコロイド金属酸化物類、及びこれらの混合物の群から由来したコロイド状物質から調製され;これらの粒子は本質的に、シリカのような単一の酸化物を含むことができ、又は1つのタイプの酸化物のコア(又は材料のコア)と、その上に別のタイプの酸化物を付着させたものを含むことができる。粒子は、5nm〜約1000nm、好ましくは100nm未満、より好ましくは10nm〜50nmの平均粒子直径を有する。平均粒子サイズは、透過電子顕微鏡法を用いて所与の直径の粒子の数を数えることにより測定することができる。好適なコロイド状シリカの追加の例は、米国特許第5,126,394号に記載されており、その特許は本明細書に参考として組み込まれる。
【0028】
このような粒子は、米国特許第6,353,037号、及び同第6,462,100号(サンホルスト(Thunhorst)ら)、及び米国特許第6,329,058号(アーニー(Arney)ら)に記載され、それらは本明細書に参考として組み込まれる。他の有用な表面改質粒子は、米国特許出願(published application US)第2002/0128336号(バラン(Baran)ら)に記載されており、その特許は本明細書に参考として組み込まれる。
【0029】
好ましくは、粒子は、(メタ)アクリロイル官能化無機粒子であり、すなわち複数の(メタ)アクリロイル基で官能化されている。典型的には、シリカ粒子は、水性コロイド状シリカにシリルアクリレートを添加することによって官能化される。アクリレート官能化コロイド状シリカの例は、米国特許第4,491,508号及び同第4,455,205号(オルセン(Olsen)ら);米国特許第4,478,876号及び同第4,486,504号(チャン(Chung));及び米国特許第5,258,225号(カチャンベリス(Katsamberis))に記載されており、それらのすべてを参考として本明細書に組み込む。
【0030】
ポリエチレン系不飽和無機粒子は、有機ポリエチレン系不飽和構成成分で全て又は一部を置き換えてもよく、すなわち、硬化性組成物は、少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーン、ポリエチレン系不飽和官能化粒子構成成分、及びフリーラジカル反応開始剤を含んでもよい。一般に、エチレン系不飽和構成成分の合計量は、有機化合物でも、又は表面官能化無機粒子構成成分でも、或いはそれらの組み合わせでも、50質量部よりも多く、すなわち51〜99.5質量部である。
【0031】
組成物は、少なくとも2つのSi−H基及び少なくとも1つのフルオロアルキル基を、Si−H基のモル比が前記ポリエチレン系不飽和構成成分のエチレン系不飽和基のモル量よりも少なくなるような量で有するフルオロアルキルヒドロシリコーン(ヒドロシリコーン)を更に含む。Si−H基及びフルオロアルキル基は、末端、ペンダント、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0032】
フルオロアルキルヒドロシリコーンは、次の式中のような、複数のペンダントフルオロアルキル基、Rを有する:
【0033】
【化1】

【0034】
は、脂肪族基及び芳香族基を包含する、一価のヒドロカルビル有機基であり、
はH又はRであり、
はフルオロアルキル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
fは1〜2000であり、且つd+e+fは少なくとも10、好ましくは少なくとも20であり、そして前記R基の少なくとも2つはHである。
【0035】
この式に関して、例示されたポリマー類はランダム又はブロックコポリマー類であってもよいことが理解されよう。整数d、e、及びfによって表されるシリコーン単位の数は、一般に、少なくとも10個であり、好ましくは少なくとも20個である。フルオロアルキルヒドロシリコーン類のいずれかは、任意のRSiO1/2単位、SiO4/2単位、RSiO3/2単位、及びRSiO2/2単位、又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0036】
フルオロアルキルシリコーン化合物類のフルオロアルキル基、Rは、式:C2n+1(CHO)2m−、又はC2n+1CHXCF(C2mO)2p−、又はC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であってもよく、式中、XはH又はFであり、nは1〜12の整数であり、mは1〜12の整数であり、dは0又は1であり、そしてpは2〜12の整数である。好ましくは、nは3〜6の整数である。フルオロアルキル基の大きさ、及びフルオロアルキル基の数は、硬化されたコーティングが少なくとも15質量%のフッ素を有するように選択される。
【0037】
フルオロアルキル基の代表的な例は、CFCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、(CFNCFCFCHCH−、CFCHOCHCH−、CFCFCHOCHCH−、CFCFHCFCHOCHCH−、CFCFHCFOCHCH−、及びCFCFCFCFCHCFCHCH−である。
【0038】
フッ素化ヒドロシリコーン化合物(少なくとも2つのSi−H基を有する)は既知であり、そして、H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe−H、H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe−H;H−SiEt−O−(SiEtH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiEt−H;H−SiEt−O−(SiEtH−O)n−(SiMeC−O)m−SiEt−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMe−O)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMe−〇)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe−H;H−SiMe−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe−H;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMe−O)o−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMe−O)o−SiMe;MeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeCCF−O)m−(SiMePh−O)o−SiMe;及びMeSi−O−(SiMeH−O)n−(SiMeC−O)m−(SiMePh−O)o−SiMeにより例示される。
【0039】
複数のヒドリド基を有する市販のヒドロシリコーン類としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)から商標名「SYL−OFF Q2−7560」で市販されているヒドリド−で終端されたフルオロシリコーンが挙げられる。
【0040】
特定のペルフルオロオクチル含有化合物類(C17−)が生物中に生体内蓄積する傾向がありうると報告されている;この傾向は、幾つかのフルオロケミカル組成物に関する潜在的な懸念として述べられてきた。例えば、米国特許第5,688,884号(ベーカー(Baker)ら)を参照のこと。結果として、より効果的に生体系から排除されつつ、所望の機能特性、例えば、撥水性及び撥油性、界面活性剤特性などを提供する際に有効なフッ素含有組成物が必要とされている。
【0041】
本組成物は追加の利点を提供する。第一に、より短鎖の(すなわち、C〜C)フルオロアルキル基を含有するコーティング組成物は、同じ質量基準において有効な低表面エネルギーコーティングとしてのそれらの有効性を維持しながらも、収率がより高いことに起因して質量当たりより低いコストで製造できる。例えば、ヘプタフルオロブチリルフロリド前駆体は、電気化学フッ素化プロセス(バンクス(R. E. Banks)編「有機フッ素化合物の調製、特性及び工業用途(Preparation, Properties, and Industrial Applications of Organofluorine Compounds)」、エリス・ホーウッド(Ellis Horwood Ltd.)(1982年)26頁)のペルフルオロオクタノイルフロリド前駆体(31%)に比べ、60%の収率で調製できる。さらに、短鎖カルボン酸類(推定中間分解生成物)は、より長鎖の同族体より毒性が低く及び生体内蓄積性が低い。
【0042】
で表される一価の有機基は、1〜20個の炭素原子、或いは1〜10個の炭素原子を有してよい。一価の有機基の例としては、一価の炭化水素基が挙げられるが、これに限定されない。一価の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基;シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、並びにフェニル、トリル、及びナフチル(napthyl)などの芳香族基(アリール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0043】
シリコーン類は前記技術分野で既知であり、そして幾つかの経路によって調製されてよい。1つの方法では、フルオロアルキルビニル化合物をジクロロアルキルシランでヒドロシリル化し、水で処理してオリゴマー類又は低分子量ポリマー又は環状トリマー若しくはテトラマーを形成し、そしてその後その環状(cylic)トリマー若しくはテトラマーを重合させて(任意で、ジアルキルシロキサンの環状トリマー若しくはテトラマーと共に)、選択された末端基を有するより高分子量のフルオロアルキルシリコーンを形成することができる。直鎖、分枝状、及び環状ヒドロシリコーン類、例えばオルガノハロシラン類の加水分解物及び縮合物を調製するための方法は、米国特許第5,310,843号;同第4,370,358号;及び同第4,707,531号に例示されているように、当技術分野で周知である。
【0044】
硬化性組成物は任意に、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい。このような官能性化合物は以下の一般式を有する:
【0045】
【化2】

【0046】
式中、Rは水素、C〜Cアルキル基、又はフェニル基、好ましくは水素又はメチル基であり;Rは、(メタ)アクリロイル基を官能基Yに結合し、そして好ましくは34個まで、好ましくは18個まで、より好ましくは10個までの炭素、及び任意で酸素及び窒素原子を含有する、二価結合基である。Rは好ましくは、−O−R−及び−NH−R−から選択され、ここで、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5−又は6員のシクロアルキレン基、若しくは各アルキレンが1〜6個の炭素原子を包含するアルキレン−オキシアルキレンであるか、又は6〜16個の炭素原子を有する二価の芳香族基であり;そしてYは硬化性組成物の基材への固着又は接着を改善するための官能基である。好ましくは、Yはヒドロキシル、アミノ(2級及び3級アミノを包含)、カルボキシル、イソシアネート(isocyanato)、アジリジニル、エポキシ、アシルハライド、アズラクトン、オキサゾリニル、アセトアセチル、加水分解性シラン類(例えば、トリアルコキシシラン類)及び環状酸無水物基から成る部類から選択される。このような化合物類は一般に、100質量部のモノ(メタ)アクリロイル化合物、ポリエチレン系不飽和構成成分、及びフルオロアルキルシリコーン構成成分を基準として、10質量部の量で使用される。
【0047】
ポリエチレン系不飽和構成成分と、複数のSi−H基を有するフルオロアルキルヒドロシリコーンとは、ヒドロシリル化により反応する。それ故に、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(光−ヒドロシリル化触媒類を包含)が硬化性組成物中に含まれる。有用なヒドロシリル化触媒としては、ケイ素が結合した水素基とケイ素が結合したエチレン系不飽和基とのヒドロシリル化反応を促進させるのに有効である熱触媒類(例えば、白金触媒類)が挙げられる。熱的ヒドロシリル化触媒に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,823,218号(スペア(Speier)ら);同第2,970,150号(ベイリー(Bailey));同第3,159,601号、及び同第3,159,662号(アシュビー(Ashby));同第3,220,972号(ラモロウクス(Lamoreaux));同第3,516,946号(モジック(Modic));同第3,814,730号(カルシュテット(Karstedt));同第4,029,629号(ジェラム(Jeram));同第4,533,575号及び同第4,504,645号(メランコン(Melancon));及び同第5,741,552号(タカヤマ(Takayama)ら)に見出され、これらの開示は本明細書に参考として組み込まれる。
【0048】
特定の実施形態では、組成物は、ポリエチレン系不飽和構成成分(少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有する)、及びヒドロシリコーン(少なくとも2つのSi−H基を有する)のヒドロシリル化反応生成物類を含む。
【0049】
光活性化ヒドロシリル化触媒類(すなわち、光ヒドロシリル化触媒類)もまた使用できる。ヒドロシリル化光触媒類の例及びそれらの使用方法(例えば、光硬化条件)は、例えば、米国特許第4,510,094号及び同第4,530,879号(ドラナーク(Drahnak));同第5,145,886号(オキシマン(Oxman)ら);米国特許第6,376,569号(ボールドマン(Boardman)ら)、及び米国特許第6,451,869号(ブッツ(Butts))に見出され、これらの開示は参考として本明細書に組み込まれる。ヒドロシリル化触媒類と光触媒類及び/又は硬化方法との組み合わせもまた使用できる。例えばPtCpMeのような光活性化ヒドロシリル化は、紫外線に曝されるまではヒドロシリル化反応を開始しない。結果として、その硬化性組成物は貯蔵安定性を有する。
【0050】
触媒は典型的に、ヒドロシリル化反応を促進させるのに有効である量で存在する。より典型的には、触媒は、ヒドロシリコーン100万部当たりわずか1部以下のような僅かの量を備えることで十分である。さらに、ビニル基を有するヒドロシリコーン1,000部当たり1〜10部、又はそれ以上のような十分に多い量の触媒を使用してもよい。
【0051】
フルオロアルキルヒドロシリコーン、及びポリエチレン系不飽和構成成分を従来の熱的ヒドロシリル化触媒と組み合わせてヒドロシリル化を行い、次にフリーラジカル触媒を添加してから硬化させてもよい。任意で、フルオロアルキルヒドロシリコーン及びポリエチレン系不飽和構成成分をヒドロシリル化光触媒と組み合わせてもよく、フリーラジカル重合及びヒドロシリル化を同時に行うことができる。ヒドロシリル化は、フルオロアルキルヒドロシリコーンのSi−H基とポリエチレン系不飽和構成成分のエチレン系不飽和基の間で起こる。しかしながら、使用される過剰量のポリエチレン系不飽和構成成分、及びエチレン系不飽和基のSi−H基に対するモル比に起因して、ポリエチレン系不飽和構成成分の遊離のエチレン系不飽和基が後続のフリーラジカル架橋のために残存する。
【0052】
硬化を促進するため、本発明による重合性組成物は少なくとも一種のフリーラジカル熱開始剤及び/又は光開始剤をさらに含む。典型的には、このような開始剤及び/又は光開始剤が存在する場合、それは、100質量部のポリエチレン系不飽和構成成分、ヒドロシリコーン、フルオロアルキルシリコーンを基準として、硬化性組成物の約5質量部未満、より典型的には約2質量部未満で含まれる。フリーラジカル硬化技術は当技術分野で周知であり、及び例えば熱による硬化法並びに電子ビーム又は紫外放射線等の放射線による硬化法が挙げられる。フリーラジカル熱重合及び光重合技術に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,654,233号(グラント(Grant)ら);米国特許第4,855,184号(クラン(Klun)ら);及び米国特許第6,224,949号(ライト(Wright)ら)に見出される。有用なフリーラジカル熱開始剤としては、例えばアゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及び、レドックス開始剤類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
有用なフリーラジカル熱開始剤としては、例えばアゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及び、レドックス開始剤類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
有用なフリーラジカル光開始剤には、例えばアクリレートポリマー類の紫外線硬化に有用であると知られているものが挙げられる。かかる開始剤としてはベンゾフェノン及びその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)(ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown))から商標名「イルガキュア(IRGACURE)651」で市販)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「ダロキュア(DAROCUR)1173」で市販)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「イルガキュア(IRGACURE)184」で市販)等のアセトフェノン及びその誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(これもまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「イルガキュア(IRGACURE)907」で市販);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「イルガキュア369」で市販);ベンゾフェノン及びその誘導体並びにアントラキノン及びその誘導体等の芳香族ケトン類;ジアゾニウム塩類、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類等のオニウム塩類;例えばこれもまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「CGI 784 DC」で市販されているもの等のチタン錯体類;ハロメチルニトロベンゼン類;並びにチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから商標名「イルガキュア1700」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア1850」、「イルガキュア819」「イルガキュア2005」、「イルガキュア2010」、「イルガキュア2020」及び「ダロキュア4265」で市販されているもの等のモノ−及びビス−アシルホスフィン類が挙げられる。2種以上の光開始剤の組み合せが使用されてもよい。さらにファースト・ケミカル・コーポレーション(First Chemical Corporation)(ミシシッピー州、パスカグーラ(Pascagoula))から市販されている2−イソプロピルチオキサントン等の増感剤を「イルガキュア(IRGACURE)369」等の光開始剤(類)と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
所望ならば、硬化性組成物は有機溶媒を更に含んでもよい。フリーラジカル架橋反応に使用される有機溶媒は、反応物質及び生成物に対し不活性であり、及びそうでなければ反応に悪影響を及ぼさない、あらゆる有機液体であることができる。好適な溶媒としては、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、トルエンなどの芳香族溶媒類、ヘプタン又はシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒類、塩素系溶媒類、エーテル類、及びアセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。他の溶媒系もまた使用してよい。溶媒の量は、一般に反応物質類及び溶媒の合計質量の約20〜90質量%であることができる。溶液重合に加えて、懸濁、エマルション、及びバルク重合技術のような他の周知の技術によって架橋を行うことができるということにも注目すべきである。
【0056】
表面改質されたエチレン系不飽和無機粒子に加えて種々の非官能性無機酸化物粒子を前記コーティングに使用することができる。その粒子は、典型的には、その形状が実質的に球状であり、及びそのサイズが比較的均一である。その粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有することも、或いは、実質的に単分散分布のものを2種以上ブレンドすることにより得られる多分散の分布を有することもできる。その無機酸化物粒子は、典型的には非凝集(実質的に分離性(discrete))であるが、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子が沈降したり、ハードコートのゲル化が起きたりする可能性があるからである。
【0057】
その無機酸化物粒子は、典型的にはコロイド状であって、約0.001マイクロメートル〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満、そして約0.03マイクロメートル未満などの平均粒子直径を有している。これらの範囲のサイズであると、バインダー樹脂の中に無機酸化物粒子を分散させるのが容易となり、そして所望の表面特性と光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡法を用いて、所与の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。
【0058】
無機酸化物粒子としては、コロイド状シリカ、コロイド状チタニア、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、コロイド状バナジア、コロイド状クロミア、コロイド状酸化鉄、コロイド状酸化アンチモン、コロイド状酸化スズ、及びそれらの混合物が挙げられる。無機酸化物粒子は、例えばシリカのような単一の酸化物から成るか、本質的に成ることもでき、或いは酸化物の組み合わせ、例えばシリカと酸化アルミニウムの組み合わせを含むこともできるし、或いは、1つのタイプの酸化物のコア(又は金属酸化物以外の材料のコア)上に他のタイプの酸化物を付着させたものを含むこともできる。シリカが、一般的な無機粒子である。
【0059】
無機酸化物粒子は、液状媒体の中に無機酸化物粒子のコロイド状分散物を含有するゾルの形態で供給されることも多い。ゾルは、例えば、開示内容が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第5,648,407号(ゲッツ(Goetz)ら);同第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)、及び同第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)に記載されているように、さまざまな技術を用い、及びヒドロゾル(この場合、水が液体媒質として機能する)、オルガノゾル(この場合、有機液体がそのように機能する)、及び混合ゾル(この場合、液体媒質は水と有機液体の両方を含有する)を包含するさまざまな形態で調製することができる。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することも可能である。ゾルには一般に、ゾルの全質量を基準にして、少なくとも2質量%、少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも25質量%、そして多くの場合少なくとも35質量%のコロイド状無機酸化物粒子を含有する。コロイド状無機酸化物粒子の量は典型的に、硬化性組成物の質量に対して、50質量%(乾燥質量)以下である。
【0060】
本明細書に記載の組成物は、必ずではないが、典型的には、親水性成分を含まないが、その理由はそれらを含むと耐汚れ性が低下するとともに、ある種の媒体に染みをつける傾向があるからである。親水性構成成分はさらに、水系のクリーニング剤に暴露すると分解を受けやすい。
【0061】
コーティング組成物は、結合剤類、界面活性剤類、帯電防止剤類(例えば導電性ポリマー類)、レベリング剤類、光増感剤類、紫外線(「UV」)吸収剤類、安定剤類、酸化防止剤類、潤滑剤類、顔料類、染料類、可塑剤類、及び懸濁剤類等のような任意の他の補助剤を含有することが可能であることが、当業者には認識される。表面層に添加してよい他の構成成分としては、その全体が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第6,730,388号に記載されているものが挙げられる。
【0062】
本発明は、硬化されたコーティング組成物を含む保護表面層を有する基材を含む物品を特徴とする。コーティングは物品に容易な洗浄性の特性、機械的耐久性、及びインク、靴墨、食品の汚れ等のような一般的な汚れに対する保護のための溶媒耐性を与える。
【0063】
本発明のコーティング物品には各種の基材を使用することができる。好適な基材材料としては、硬質基材類、例えばビニル、木材、セラミック、ガラス、メーソンリー、コンクリート、天然石、人工石、グラウト、金属シート類及びホイル類、木材、ペイント、プラスチック類、並びに、ポリエステル類、ポリアミド類(ナイロン)、ポリオレフィン類、ポリカーボネート類、及びポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂類のフィルム類等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ビスフェノールAポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、及び二軸配向ポリプロピレンのような高分子材料は、種々の光学装置において一般に使用されている。特定の実施形態では、組成物は光学ディスプレイの用途に使用されてもよい。
【0064】
典型的には、基材は部分的には意図された用途に望ましい光学特性及び機械特性に基づいて選択される。かかる機械特性としては典型的に、可撓性、寸法安定性、及び衝撃耐性が挙げられる。基材の厚さも典型的に、意図された用途次第である。大部分の用途に関しては、約0.5mm未満の基材の厚さが好ましく、そしてより好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自己支持性ポリマーフィルムが好ましい。押出及び押出フィルムの任意の一軸又は二軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を使用して、ポリマー材料をフィルムへと形成することができる。基材とハードコート層との間での接着を改善するために、例えば化学処置、コロナ処置、例えば空気若しくは窒素コロナ、プラズマ、火炎、又は化学放射線によって基材を処理することができる。所望であれば、層間接着を増大させるため、任意の連結層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。
【0065】
多層光学フィルム、ミクロ構造フィルム、例えば再帰反射シート材、輝度向上フィルム、(例えば反射型又は吸収型)偏光フィルム、拡散性フィルム、並びに、(例えば二軸)位相差フィルム、及び、例えば米国特許出願公開第2004/0184150号に記載されているような補償フィルムが挙げられるが、これらに限定されない、さまざまな光透過性光学フィルムが知られている。
【0066】
米国特許出願公開第2003/0217806号に記載されているように、多層光学フィルムは、異なる屈折率のミクロ層を配置することによって、少なくとも部分的に、望ましい透過特性及び/又は反射特性をもたらす。隣接し合うミクロ層の境界面で一部の光が反射されるように、これらのミクロ層の屈折率特性は異なっている。フィルム体に所望の反射特性又は透過特性を付与するために、複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けるように、ミクロ層は十分に薄い。紫外線、可視、又は近赤外線の波長の光を反射するように設計された光学フィルムに関しては、各ミクロ層は一般に、約1μm未満の光学的厚さ(すなわち物理的厚さと屈折率を掛けたもの)を有する。しかしながら、フィルムの外側表面における表皮層、又はミクロ層のパケットを分離するフィルム内に配置された保護境界層のようなより厚い層もまた包含されることができる。また積層体中で2枚以上のシートの多層光学フィルムを接合するために、多層光学フィルム体に1つ以上の厚い接着剤層を含めることもできる。
【0067】
好適な多層光学フィルム及び関連する構造のさらなる詳細は、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)、並びにPCT国際公開特許WO95/17303(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)、及びWO99/39224(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に見ることができる。ポリマー多層光学フィルム及びフィルム体には、それらの光学的特性、機械的特性、及び/又は、化学的特性に関して選択された追加の層及びコーティングを含めることができる。米国特許第6,368,699号(ギルバート(Gilbert)ら)を参照されたい。またポリマーフィルム及びフィルム体には、無機層、例えば金属又は金属酸化物コーティング又は層を含めることもできる。
【0068】
用語「光学ディスプレイ」又は「ディスプレイパネル」は、限定されないが、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロント及びリアプロジェクションディスプレイ、陰極線管(「CRT」)及び標識等のマルチキャラクターマルチラインディスプレイ、並びに発光ダイオード(「LED」)、信号ランプ及びスイッチ等のシングルキャラクター又はバイナリディスプレイを包含するいずれかの従来の光学ディスプレイを指し得る。こうしたディスプレイパネルの露出される表面は、「レンズ」と称されることもある。本発明は、インクペン、マーカー、及び他のマーキング装置、拭き取り布、紙用品等により触れられ又は接触されやすい画面を有するディスプレイに特に有用である。
【0069】
本発明の保護コーティングは、様々な携帯型及び非携帯型情報ディスプレイ物品において使用可能である。これらの物品としては、PDA、携帯電話(PDA/携帯電話の組み合せを包含)、LCDテレビ(ダイレクトライト及びエッジライト)、タッチスクリーン、リストウォッチ、カーナビゲーションシステム、グローバルポジショニング・システム、深度探知機、計算機、電子ブック、CD及びDVDプレイヤー、プロジェクションテレビ・スクリーン、コンピューターモニター、ノート型パソコンディスプレイ、機器計器、機器パネルカバー、標識、例えばグラフィックディスプレイ等が挙げられる。画面はあらゆる従来の大きさ及び形状を有することができ、そして平面又は非平面であることができるが、フラットパネルディスプレイが好ましい。コーティング組成物又はコーティングされたフィルムを、例えばカメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、鏡、再帰反射シート材、自動車窓ガラス、建築物窓ガラス、電車窓ガラス、ボート窓ガラス、航空機窓ガラス、車両ヘッドライト及びテールライト、ディスプレイケース、道路舗装マーカー(例えば隆起)及び舗装マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、ウォッチカバー、並びに光学及び光磁気録音ディスク等の様々な他の物品上で同様に使用することも可能である。
【0070】
幾つかの実施形態では、保護コーティングはディスプレイ表面上に配置される。他の実施形態では、保護コーティングは、基材上にコーティングされそして保護フィルムとして使用される。保護フィルムの保護コーティング及び基材は好ましくは、2%未満の初期ヘーズ(haze)、及び/又は少なくとも90%の初期透過率を示す。
【0071】
幾つかの実施形態では、本発明の硬化性組成物を用いて高屈折率コーティングが基材に提供されてもよい。高屈折率コーティングは多くの光学用途のために特に望ましい。本発明の硬化性組成物、及びポリエチレン系不飽和構成成分として表面改質ジルコニアナノ粒子を含む、少なくとも1.6の屈折率を有するコーティングが提供される。
【0072】
ジルコニアナノ粒子は典型的に、5〜150nm、又は5〜75nm、又は5〜25nm、又は5〜15nmの粒子サイズを示す。ポリエチレン系不飽和構成成分のすべて又は一部が表面改質ジルコニアナノ粒子であってもよい。本発明の材料に使用するためのジルコニアは、ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州、ネーパービル(Naperville))から製品名ナルコ(NALCO)OOSSOO8で、ブーラー(Buhler)(スイス、アズウェイル(Uzweil))から製品名WO又はWOSで市販されており、又は出願人の同時継続出願U.S.S.N.11/027426(2004年12月30日出願、本明細書に参考として組み込まれる)に記載されるとおりに調製されてもよい。
【0073】
基材はその基材とコーティング層間の接着性を改善するために、例えば、基材面に化学処理を介して反応基を導入することなどによって処理することができる。所望ならば、層間の接着性を増大させるために、基材及び/又はハードコート層に任意の連結層又はプライマーを塗布することができる。或いは、組成物は、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでいてもよく、この官能基は特定の基材への接着を改善するように選択される。例えば、トリアルコキシシラン基のようなシリル官能基はガラス基材への接着性を改善できる。
【0074】
コーティング組成物は、様々な従来のコーティング方法を用いて基材に塗布することができる。好適なコーティング法としては、例えば、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤコーティング法、フラッドコーティング法、パジング法、スプレー法、ロールコーティング法、ディッピング法、ブラシ法、泡塗布法などが挙げられる。コーティングは、典型的には強制通気炉を用いて乾燥させる。乾燥させたコーティングを、エネルギー源を用いて、少なくとも部分的に、そして典型的には完全に硬化させる。
【0075】
好ましいエネルギー源としては、約5〜60ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm)のUV「C」線量を提供する紫外線硬化装置が挙げられる。好ましくは、硬化は少ない酸素量、例えば約100ppm未満を含有する環境内で行われる。窒素ガスが好ましい環境である。
【0076】
好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも約10ナノメートル、そして好ましくは少なくとも約25ナノメートルの厚さを有する硬化層を提供するのに十分な量で適用される。典型的には、硬化層は約1.27mm(50ミル)未満、好ましくは約0.25mm(10ミル)未満、そしてより好ましくは約0.13mm(5ミル)未満の厚さを有する。
【0077】
コーティングされた物品は感圧性接着剤の層を更に含んでもよい。したがって、本発明は、1つの主表面上に硬化性組成物のコーティングを及び他の主表面上に接着層を有する基材を含む接着剤物品を提供する。好適な接着剤組成物としては、クラトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)(テキサス州、ウェストホロー(Westhollow))から商標名「クラトン(Kraton)G−1657」で市販されているもの、並びに他の(例えば類似の)熱可塑性ゴム類などの、(例えば水素添加された)ブロックコポリマー類が挙げられる。他の例示的な接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系及びエポキシ系接着剤が挙げられる。時間とともに、又は屋外曝露時に接着剤が黄色化して光学ディスプレイの表示品質を低下させないように、好ましい接着剤は十分な光学的品質及び光安定性を有するものである。トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング等の様々な既知のコーティング技術を使用して接着剤を適用することができる。代表的な接着剤は、米国特許出願公開第2003/0012936号に記載されている。このような接着剤のうちの幾つかは、3Mカンパニー(3M Company)(ミネソタ州、セントポール(St. Paul))から、商標名8141、8142、及び8161で市販されている。
【0078】
本発明のさらなる特徴及び利点は、次の実施例により、さらに説明されるが、これらにより制限されることを決して意図しない。本発明は、本明細書において記述される特定の実施例に限定されるとみなされるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲において明確に記載された本発明の全ての態様を包含するものと理解されるべきである。本明細書を検討すると、本発明が対象とする当業者には、様々な変更、等価の方法、並びに本発明を適用できる多数の構造が、容易に明らかとなるであろう。
【0079】
本発明の種々の修正態様及び変更態様は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者には自明なものとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例証的な実施形態によって不当に限定されるものではないこと、並びに、こうした実施形態は、下記の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する本発明の範囲を含んだ例証としてのみ、提示されることを理解すべきである。
【実施例】
【0080】
撥マーカー性の判定方法:
本試験のために、マーカーとして、シャーピー・パーマネント・マーカー(Sharpie Permanent Marker)、ビスアビス・パーマネント・オーバーヘッド・プロジェクト・ペン(Vis-a-vis Permanent Overhead Project Pen)又はキングサイズ・パーマネント・マーカー(King Size Permanent Marker)(全てサンフォード(Sanford)(米国)より市販)を使用した。最初に、選択したマーカーの先端を、幅広の平らなマーキング先端を与えるようにかみそりの刃で切断した。次に、マーカー、及びガイドとして直線定規のエッジを用いて、PET基材上に塗布されたサンプルコーティング上に、およそ1秒当たり15cmの速さで直線を引いた。コーティング上に引かれた直線の外観を次のスケールと比較し、そしてサンプルコーティングのマーカーに対する撥性の度合いを反映する数字を割り当てた。割り当てられた数字1は優れた撥性を示し、一方割り当てられた数字5は劣った撥性を示す。使用されたマーカーの種類によって、結果をシャーピー試験(Sharpie test)、ビスアビス試験(Vis-a-vis test)、又はキングマーカー試験(King marker test)として報告した。
【0081】
耐溶媒性の判定方法:
この試験では、メチルエチルケトン(MEK)又は他の有機溶媒の液滴(直径約1.25cm)を、PET基材上に塗布されたサンプルコーティング上に載せ、そして室温において乾燥させた。その後、サンプルコーティングを外観に関して目視観察し、そして劣った撥溶媒性を示すヘーズ(Haze)(H)、又は良好な撥溶媒性を示すクリア(Clear)(C)のいずれかとして判定した。さらに、上記の「マーカー試験のための方法」を用いて、撥MEK又は撥有機溶媒性試験が行われた液滴のスポット上でシャーピー試験を繰り返し、そして1〜5の範囲の撥マーカー性の数値を割り当てた。
【0082】
接触角の測定方法:
接触角測定は、サンプルコーティング上で、入手したままの試薬等級ヘキサデカン(アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))から入手)及び濾過システム(ミルポア・コーポレーション(Millipore Corporation)(マサチューセッツ州、ビレリカ(Billerica))から入手)で濾過された脱イオン水を用いて、ビデオ接触角測定計(ASTプロダクツ(AST Products)(マサチューセッツ州、ビレリカ(Billerica))から製品番号VCA−2500XEとして市販されているもの)において行われた。報告される値は、5回の測定の平均である。
【0083】
スチールウール試験:
硬化されたサンプルコーティングの磨耗耐性を判定するためにスチールウール試験を行った。硬化されたサンプルコーティングの摩耗耐性は、(ゴムガスケットにより)スタイラスに固定したスチールウールをフィルムの表面を横断して揺動できる機械装置を使用することにより、コーティング方向に対してクロスウェブ方向に試験した。スタイラスを、10cmの掃引幅で、3.5ワイプ/秒の速度で揺動させたが、ここで「ワイプ(wipe)」は、10cmを1回移動させることと定義する。スタイラスは、直径3.2cm(1.25インチ)の平坦面を有する円筒状の幾何学的形状であった。その装置にはプラットホームが備え付けられていて、その上におもりを載せて、フィルムの表面に対して直角のスタイラスにより加わる力を増やした。スチールウールは、ホーマックス・プロダクツ(Homax Products)(ワシントン州、ベリングハム(Bellingham))のディビジョン、ローデス−アメリカン(Rhodes-American)から商標名「#0000−スーパー・ファイン(Super-Fine)」で入手し、そして入手したままのものを使用した。それぞれの実施例について、単一のサンプルを、試験中スタイラスに500gの負荷をかけ、そして300回のワイプを使用して試験した。
【0084】
使用された材料:
Q2−7560、フッ素化ヒドロシロキサン、HMeSi−[O−SiHMe]y−[O−SiMeC]x−OSiMeH、ダウ・コーニング(Dow Corning)(ミシガン州、ミッドランド(Midland))より入手。
【0085】
MeFBSEA:CSONMeCHCHOC(O)CH=CH。3Mカンパニー(3M Company)(ミネソタ州、セントポール(St. Paul))より入手可能。
【0086】
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、商標名「SR351」で市販され、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))より入手。
【0087】
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン(divinyltetamethydisiloxane)錯体(CAS#68478−92−2)、ヒドロシリル化触媒として、ゲレスト社(Gelest Inc.)(ペンシルバニア州、モリスビレ(Morrisville))より入手。
【0088】
PtCpMe:(η−シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体は、ロビンソン(S. D. Robinson)及びシャー(B. L. Shaw)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ(J. Chem. Soc.)、1965年、1529の手順にしたがって、シクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液を、ベンゼン中に溶解された等モル量のヨウ化トリメチル白金に添加し、そして生成物錯体を濾過により単離することにより調製できる。
【0089】
SR444C:ペンタエリスリトールトリアクリレート、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))より市販。
【0090】
SR399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))より市販。
【0091】
906HC:本実施例において使用されるシリカ系セラマーハードコート(「HC−1」)は、米国特許第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)の第10欄、25〜39行、及び実施例1に記載されているとおりに作製した。
【0092】
高屈折率(RI)配合:ジルコニア系セラマーハードコート、本質的には同時係属米国特許出願第11/026702号の実施例37に記載されているもとの同じであるが、2−ブタノン:1−メトキシ−2−プロパノール比90:10中の固形分を7.5%とし、及び開始剤として2%のダロキュア(Daracure)1173(D−1173)を用いる(代理人整理番号60247US002(ウォーカー(Walker)ら、2004年12月30日出願)(本明細書に参考として組み込まれる)。D−1173は、UV光開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンであり、チバ・スペシャルティ・プロダクツ(ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown))より入手可能。
【0093】
MIBK:メチルイソブチルケトン、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))より入手。
【0094】
HCCl:トリクロロメタン、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))より入手。
【0095】
401:CFCFCFCFOCH、3Mカンパニー(3M Company)(ミネソタ州、セントポール(St. Paul))より入手可能。
【0096】
IPA−イソプロピルアルコール、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))より入手。
【0097】
DMF:ジメチルホルムアミド、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))より入手。
【0098】
PFBEA:n−CCHCHOC(O)CH=CHはダイキン(Daikin)(日本)より入手された。
【0099】
EtOAc:酢酸エチル、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))より入手。
【0100】
アセトン及びトルエンは、EMDケミカルズ社(EMD Chemicals Inc.)(ニュージャージー州、ギブスタウン(Gibbstown))より入手した。
【0101】
実施例1〜26及び比較例A、B、C、D、E、F、G、及びH:
実施例1〜26は、本発明による組成物を調製し、そして種々の基材(特に指示しない場合はPET基材)上にコーティングし、次にそのコーティングを紫外線硬化し、そして次に得られたコーティングの性質を測定することにより行った。実施例1〜26の組成物は、2つ以上のエチレン系不飽和フリーラジカル重合可能基を有するポリエチレン系不飽和化合物を含有する溶液(入手されたまま、又は1つの若しくは混合された溶媒で20%に希釈して使用)を水素化シリコーン又はフルオロアルキルヒドロシリコーンを含有する添加剤溶液と混合することによって調製した。2つ以上のエチレン系不飽和のフリーラジカル重合可能基を有するポリエチレン系不飽和化合物を含有する溶液は、本明細書では以後ハードコート剤溶液という。実施例1〜26で使用される添加剤溶液はQ2−7560の20%ヘキサン溶液であった。ハードコート剤溶液が(溶媒1:溶媒2)で表されるような1つ以上の溶媒を含有していた場合、溶媒の質量比は4:1であった。もし溶媒1及び溶媒2がIPA及びMEKであった場合には、IPAとMEKの質量比は1:1であり;溶媒1及び溶媒2がMEK及びダワノールであった場合には、MEKとダワノールとの質量比は10:1であった。特に記載しない限り、ハードコート剤溶液は約1%の光開始剤(特に指定しない限りD−1173)及び100ppmの白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を含有していた。実施例18a及び18bは、高RI配合が60%充填のジルコニアを含有していたこと以外は実施例16及び17と同じであった−米国特許出願第(U.S.S.N.)11/026702号、実施例42を参照されたいが、2%のD−1173を用いた。実施例19、20、23、24、25、及び26は、光開始剤として約1%のD−1173、及び0.3%のPtCpMeを含有していた。ハードコート剤溶液及び添加剤溶液の均一な混合物が得られたなら、回転(ワイヤ)ロッドを用いてそのコーティング組成物を基材上に広げることによって、得られた組成物をコーティングした。コーティング組成物の特性と組み合わされたロッドの「ゲージ」により、コーティングの厚さが決まった。コーティング組成物が入手されたままの(すなわち更に希釈されない)ハードコート剤TMPTA、SR−444Cを用いて調製された場合は、コーティングに#6ロッドが使用された。他の全ての場合には、コーティング組成物を基材上にコーティングするために、#10のロッドが使用された。次に基材及びコーティングをオーブン中約110℃で約5分間乾燥し、そしてその後、H−バルブ光源を用いて窒素ガス雰囲気下で1分当たり約600cmの移動速度で紫外線硬化した。比較例A、B、及びCに対して、コーティング組成物がいずれの添加剤溶液も含有しなかったこと以外は実施例1〜26のためのものと同様のコーティング剤を調製した。比較例D、E、及びFに対しては、添加剤溶液がMeFBSEAの溶液であったこと以外は実施例1〜26のためのものと同様のコーティング剤を調製した。比較例G及びHに対しては、添加剤溶液がPFBEAの溶液であったこと以外は実施例1〜26のためのものと同様のコーティング剤を調製した。下記の表1に実施例1〜26及び比較例A、B、C、D、E、F、G、及びHの組成物についてまとめた。
【0102】
【表1】

【0103】
硬化されたコーティングの幾つかの屈折率は、メトリカオン屈折率計(Metricaon refractomer)を使用し従来の技術を用いて測定した。結果を表Iaに表す。
【0104】
【表2】

【0105】
本発明によるコーティング組成物から得られたコーティングの撥マーカー性は、上述した撥マーカー性の決定方法を用いて決定した。下記の表IIに、比較例A〜Hの既知のコーティング組成物と比較した本発明のコーティング組成物についての種々の基材上における撥マーカー性試験の結果をまとめる。
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
本発明によるコーティング組成物から得られるコーティングに関する接触角データは、上述の接触角の測定方法を用いて測定されたた。下記の表3に、本発明による組成物から上述したように形成されたハードコーティングに関する接触角データをまとめる。
【0109】
【表5】

【0110】
本発明のコーティング組成物から得られたコーティングの撥溶媒性は、上述したような撥溶媒性の測定方法を用いて判定された。表IVに、本発明のコーティング組成物に関するPET基材上での撥溶媒性の結果をまとめる。
【0111】
【表6】

【0112】
本発明によるコーティング組成物から得られる幾つかのコーティングは、それらの耐久性を判定するために、上述したようなスチールウール試験に供された。コーティングの耐久性は、スチールウール試験後のそれらの目視による外観、撥マーカー性、及びHO接触角(全て上述したように測定)の点で判定された。下記の表Vに、スチールウール試験前後の幾つかのコーティングの目視によるコーティングの外観、及び撥マーカー性をまとめる。下記のVIに、スチールウール試験前後の幾つかのサンプルコーティングに関するHO接触角データをまとめる。
【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
*印の付いた実施例は、コーティングを形成するために#10ワイヤロッドの替わりに#16ワイヤロッドが用いられたこと以外は対応する実施例(印のついてないもの)と同じであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するポリエチレン系不飽和構成成分と、
b)少なくとも2つのSi−H基を有するフルオロアルキルヒドロシリコーンと、
c)ヒドロシリル化触媒と、
d)フリーラジカル重合触媒と、を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレン系不飽和構成成分は、次式:
(Z’)を有し、式中、Rは価数pの非ウレタン有機部分であって、pは少なくとも2であり、そしてZ’はエチレン系不飽和の重合可能基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Z’はアルケニル基、アルキニル基、ビニルオキシアルキレン、アリルオキシアルキレン、及び(メタ)アクリロイル基から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
は価数pの脂肪族部分である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレン系不飽和構成成分はアクリル化ポリオールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオロアルキルヒドロシリコーンは、次式:
【化1】

を有し、Rは、脂肪族基及び芳香族基を包含する一価のヒドロカルビル有機基であり、
はH又はRであり、
はフルオロアルキル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
fは1〜2000であり、且つd+e+fは少なくとも10であり、そして前記R基の少なくとも2つはHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
は、式:C2n+1(CH0)2m−、又はC2n+1CHXCF(C2mO)2p−、又はC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であり、式中、XはH又はFであり、nは1〜12の整数であり、mは1〜12の整数であり、dは0又は1であり、そしてpは2〜12の整数である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレン系不飽和構成成分は複数のエチレン系不飽和基を有する表面官能化無機ナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機ナノ粒子は複数の(メタ)アクリロイル表面官能基を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒドロシリル化触媒は光ヒドロシリル化触媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
a)少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するポリエチレン系不飽和構成成分と、
b)少なくとも2つのSi−H基を有するフルオロアルキルヒドロシリコーン、とのヒドロシリル化反応生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリエチレン系不飽和構成成分は表面改質ジルコニアナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
a)請求項1に記載の組成物で基材をコーティングする工程と、b)ヒドロシリル化触媒及びフリーラジカル触媒で前記コーティングを硬化する工程と、を含む、基材上にコーティングを形成する方法。
【請求項15】
前記コーティングは紫外線によって硬化される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材は、ビニル、木材、ガラス、石、金属類、セラミック類、メーソンリー、ペイント、プラスチック類、及び熱可塑性樹脂類から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の硬化組成物を含む、コーティングされた基材。
【請求項18】
前記基材は、ビニル、木材、ガラス、石、金属類、セラミック類、メーソンリー、ペイント、プラスチック類、及び熱可塑性樹脂類から選択される、請求項17に記載のコーティングされた基材。
【請求項19】
前記コーティングは少なくとも1.6の屈折率を有する、請求項17に記載のコーティングされた基材。

【公表番号】特表2009−533534(P2009−533534A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505542(P2009−505542)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/066030
【国際公開番号】WO2007/121102
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】