フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法
【解決手段】一般式(1)
(Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【効果】本発明によれば、上記エーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物とを用いることにより、処理された無機材料に撥水・撥油性や滑落性を付与することができる。また、本発明のアルコキシシラン化合物は、分岐状の構造により揮発性が高まることで精製が容易である。
(Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【効果】本発明によれば、上記エーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物とを用いることにより、処理された無機材料に撥水・撥油性や滑落性を付与することができる。また、本発明のアルコキシシラン化合物は、分岐状の構造により揮発性が高まることで精製が容易である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、塗料添加剤、高分子変性剤等に有用なエーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルキルアルコキシシラン化合物やフルオロアルキルアルコキシシラン化合物といった有機ケイ素化合物は、表面処理剤、繊維処理剤、塗料添加剤等に有用であることが知られている。特に、フルオロアルキルアルコキシシラン化合物は表面の撥水・撥油性や滑落性(液滴の滑り性)を制御する目的で無機材料(例えば、ガラス、金属、酸化物)の表面を処理する場合、上記アルコキシシラン化合物を用いることで、無機材料の表面水酸基と共有結合することで強固に結合することができ、改質された表面特性の耐候性や持続性が改良されることが知られている(非特許文献1:「シリコーンハンドブック」、日刊工業新聞社、伊藤邦雄著、p.79,9行目〜p.80,5行目)。
【0003】
フルオロアルキルアルコキシシラン化合物を表面処理に用いた場合、撥水・撥油性といった静的接触角の改善には非常に有効であるが、液滴が転落を始める角度(転落角)やそのときの前進接触角(θA)と後退接触角(θR)から求められるヒステリシス(θA−θR)が大きく、即ち動的接触角が不十分であった。動的な挙動は、滑落性(液滴の除去性能)の指針として特に重要であり、改善が求められている。
【0004】
潤滑性を高めるために、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が開発されているが(特許文献1:特開昭63−250389号公報)、撥水・撥油性と滑落性とのバランスが十分ではなかった。
【0005】
短いフルオロアルキル鎖を用いて高い撥水・撥油性を発揮するために2つのフルオロアルキル鎖を有する含フッ素アクリル酸エステル化合物が開発されているが(特許文献2:特開2008−297400号公報)、重合性は有するものの、無機物への反応性がなく、ガラス、シリコンウェハー、フィラー等の無機材料には撥水・撥油性や滑落性を付与できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−250389号公報
【特許文献2】特開2008−297400号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「シリコーンハンドブック」、日刊工業新聞社、伊藤邦雄著、p.79,9行目〜p.80,5行目
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、エーテル結合と2つのフルオロアルキル鎖を有し、かつ、アルコキシシリル基を有することで、より高い撥水・撥油性や滑落性を処理された無機材料にも付与でき、かつ、分岐構造により揮発性を高めることで精製を容易にできる2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成し、短いフルオロアルキル鎖を用いて、無機材料に対してより高い撥水・撥油性や滑落性を付与することが可能なシラン化合物を得るべく、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物は、エーテル結合と短いフルオロアルキル鎖を2つ有することで、高い撥水・撥油性や滑落性を無機材料に付与でき、かつ、分岐構造により揮発性を高めることで精製を容易にできることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化3】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=1、b=0、n=1、m=1、p=0の場合)
請求項3:
下記一般式(3)
【化4】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=1、b=1、m=1、n=0、p=1の場合)
請求項4:
下記一般式(4)
【化5】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=0、b=0、m=0、n=0、p=0の場合)
請求項5:
下記一般式(5)
【化6】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと下記一般式(6)
【化7】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
請求項6:
下記一般式(7)
【化8】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化9】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記エーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物とを用いることにより、処理された無機材料に撥水・撥油性や滑落性を付与することができる。また、本発明のアルコキシシラン化合物は、分岐状の構造により揮発性が高まることで精製が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図9】実施例5で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図10】実施例5で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図11】実施例6で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図12】実施例6で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図13】実施例7で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図14】実施例7で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化10】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0014】
上記一般式(1)中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基で各々同一又は異なっていてもよい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘキサデカフルオロオクチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル基、5,5,5,4,4,3,3,2,2−ノナフルオロペンチル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3,2,2−トリデカフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3,2,2−ヘキサデカフルオロノニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル基、8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−ヘキサデカフルオロデシル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5,4,4−ペンタフルオロペンチル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4−ノナフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロノニル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6,5,5−ペンタフルオロヘキシル基、8,8,8,7,7,6,6,5,5−ノナフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5−トリデカフルオロデシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、7,7,7,6,6−ペンタフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6−ノナフルオロノニル基、7,7,7−トリフルオロヘプチル基、8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7−ノナフルオロデシル基、9,9,9−トリフルオロノニル基、10,10,10,9,9−ペンタフルオロデシル基等の直鎖状フルオロアルキル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基等の分岐状フルオロアルキル基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等が挙げられ、好ましくは水素原子、メチル基である。
上記一般式(1)中、R2及びR3はメチル基又はエチル基で各々同一又は異なっていてもよい。
X、Yはエーテル結合又はエステル結合である。
m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数であり、好ましくはm、n及びpは各々0又は1、qは1〜3の整数、rは1又は2である。
【0016】
本発明の一般式(1)で示される化合物を具体的に例示すると、下記一般式(2)で示される化合物A、B、下記一般式(3)で示される化合物C〜E、下記一般式(4)で示される化合物F等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0017】
【化11】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0018】
【化12】
【0019】
【化13】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0020】
【化14】
【0021】
【化15】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0022】
【化16】
【0023】
但し、化合物A〜F中のRfα、Rfβ及びRγとしては、下記表1及び表2の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
上記一般式(1)で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(5)
【化17】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと、下記一般式(6)
【化18】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応する方法である。なお、反応は遷移金属触媒の存在下で行うのが好ましく、遷移金属触媒としては白金触媒が好ましい。
【0027】
上記一般式(5)及び式(6)中、Rf、Rf’、R1、R2、R3、X、Y、m、n、p、r、a及びbは上記一般式(1)における定義と同様である。q’は0〜4の整数、好ましくは1である。
【0028】
上記一般式(5)で示される化合物を具体的に例示すると、下記化合物a〜f等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0029】
【化19】
【0030】
但し、化合物a〜f中のRfα、Rfβとしては、上記表1の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
【0031】
上記反応で用いられる一般式(6)で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物としては、具体的には、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等が例示される。
【0032】
一般式(5)で示される化合物と、一般式(6)で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(5)で示される化合物1モルに対し、一般式(6)で表されるヒドリドアルコキシシラン化合物0.5〜2モル、特に0.7〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0033】
上記反応で用いられる白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等が例示される。
【0034】
白金触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から一般式(5)で示される化合物1モルに対し、0.000001〜0.01モル、特に0.00001〜0.001モルの範囲が好ましい。
【0035】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜120℃、特に20〜100℃が好ましく、反応時間は1〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。
【0036】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
なお、化合物a〜fは、例えば、下記式のように一般的に知られている方法で製造することが可能である。
【0038】
【化20】
【0039】
また、上記一般式(1)で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(7)
【化21】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化22】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させる方法である。
【0040】
上記一般式(7)及び式(8)中、Rf、Rf’、R1、R2、R3、X、Y、m、n、p、q、r、a及びbは上記一般式(1)と同様である。
【0041】
本発明の一般式(7)で示される化合物を具体的に例示すると、下記化合物I〜VI等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0042】
【化23】
【0043】
但し、化合物I〜VI中のRfα、Rfβとしては、上記表1の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
Rδ例としては、−SiCl3、−Si(CH3)Cl2、−Si(CH3)2Cl等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(8)で示される化合物の具体例としては、メタノール、エタノールである。
【0045】
上記一般式(7)で示される化合物と、一般式(8)で示される化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(7)で示される化合物のSi−Cl結合1モルに対し、0.5〜2.0モル、特に0.7〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0046】
また、上記アルコキシ化反応において、反応中に生成する塩化水素を捕捉するために、塩基性化合物を反応系中に存在させて反応を行ってもよい。塩基性化合物の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、アニリン、n−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン等のアミン化合物、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、ルチジン等の含窒素芳香族化合物、アンモニア、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド化合物等が例示される。
【0047】
上記塩基性化合物の添加量は、一般式(7)で示される化合物のSi−Cl結合1モルに対し0.5〜2.0モル、特に0.7〜1.2モルが好ましい。
【0048】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は通常量の範囲とすることができる。
【0049】
更に、上記反応条件は特に限定されないが、−20〜150℃、特に0〜100℃で1〜20時間、特に2〜10時間とすることができる。
【0050】
また、上記ヒドロシリル化反応組成物又はアルコキシ化反応組成物から一般式(1)で示される化合物を蒸留やカラム分離等の精製方法により単離することも可能であり、特に蒸留による単離が高純度化できるため好ましい。蒸留の条件は、特に制限はないが、沸点を下げるため減圧にて行う方が好ましい。
【0051】
本発明のアルコキシシラン化合物は、そのまま使用しても問題ないが、溶媒に希釈して用いた方が簡便で好ましい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示され、特に水、アルコール溶液が好ましい。用いる濃度としては、アルコキシシラン化合物が、0.001〜50質量%となるように希釈して用いるとよい。
【0052】
本発明のアルコキシシラン化合物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を併用することができる。
【0053】
本発明のアルコキシシラン化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機材料の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び水系塗料の添加剤等を挙げることができる。
【0054】
本発明のアルコキシシラン化合物を用いることで、無機材料の表面処理(表面改質)をすることが可能である。無機材料としては、金属板、ガラス板、金属繊維、ガラス繊維、粉末シリカ、粉末アルミナ、粉末タルク、粉末炭酸カルシウム等が挙げられる。また、該ガラスの材料としては、Eガラス、Cガラス、石英ガラス等の一般的に用いられる種類のガラスを用いることができる。石英ガラスはナノインプリント等モールド材にも使用が可能である。該ガラス繊維は、その製品形態に限定されない。ガラス繊維製品は多岐にわたるが、例えば、繊維径が3〜30μmのガラス糸(フィラメント)の繊維束、撚糸、織物を挙げることができる。
【0055】
無機材料を前記のアルコキシシラン化合物を用いて処理する方法としては、一般的に用いられる方法が採用できる。即ち、本発明のアルコキシシラン化合物をそのままもしくは希釈して用い、これに前記無機材料を浸漬させた後、無機材料を引き上げて乾燥する方法や、このアルコキシシラン化合物をそのままもしくは希釈したものを無機材料表面にスプレーした後、無機材料を乾燥する方法、不活性ガスにてアルコキシシラン化合物を同伴させ、該同伴ガスに無機材料を接触させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0057】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(9)
【化24】
で示されるオレフィン68g(0.10モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン9.8g(0.08モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点148〜149℃/0.2kPaの無色透明留分を52g得た。
【0058】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図1には1H−NMRスペクトルのチャート、図2にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 771,623,393,277,149,121
【0059】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(10)であることが確認された。
【化25】
【0060】
[実施例2]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(11)
【化26】
で示されるオレフィン87g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点125〜126℃/0.2kPaの無色透明留分を51g得た。
【0061】
得られた留分を、メタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図3には1H−NMRスペクトルのチャート、図4にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 671,523,437,393,163,121
【0062】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(12)であることが確認された。
【化27】
【0063】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(13)
【化28】
で示されるオレフィン52g(0.10モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン9.8g(0.08モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点140〜141℃/0.1kPaの無色透明留分を32g得た。
【0064】
得られた留分を、メタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図5には1H−NMRスペクトルのチャート、図6にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 615,467,303,163,121
【0065】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(14)であることが確認された。
【化29】
【0066】
[実施例4]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(15)
【化30】
で示されるオレフィン73g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点136〜138℃/0.4kPaの無色透明留分を49g得た。
【0067】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図7には1H−NMRスペクトルのチャート、図8にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 569,421,359,163,121
【0068】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(16)であることが確認された。
【化31】
【0069】
[実施例5]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(17)
【化32】
で示されるオレフィン57g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点126〜130℃/0.2kPaの無色透明留分を40g得た。
【0070】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図9には1H−NMRスペクトルのチャート、図10にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 469,321,259,163,121
【0071】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(18)であることが確認された。
【化33】
【0072】
[実施例6]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(19)
【化34】
で示されるオレフィン31g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリクロロシラン19g(0.14モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液中に下記式(20)
【化35】
が生成していることを確認した。室温まで冷却後、トリエチルアミン47g(0.46モル)、トルエン125mlを仕込み、メタノール15g(0.46モル)を20〜30℃で2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、水を加え、生じたトリエチルアミン塩酸塩を溶解後分液し、有機層を蒸留し、沸点111〜112℃/5.0kPaの無色透明留分を35g得た。
【0073】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図11には1H−NMRスペクトルのチャート、図12にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 331,299,257,163,121
【0074】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(21)であることが確認された。
【化36】
【0075】
[実施例7]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(22)
【化37】
で示されるオレフィン31g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、メチルジエトキシシラン18.8g(0.14モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点96〜98℃/2.0kPaの無色透明留分を22g得た。
【0076】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図13には1H−NMRスペクトルのチャート、図14にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 343,297,227,207,133
【0077】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(23)であることが確認された。
【化38】
【0078】
[実施例8〜13、比較例1〜3] ガラス表面処理剤としての使用
上記実施例にて合成した2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物又は下記比較例のフルオロアルキルアルコキシシラン化合物0.1モルを0.2質量%酢酸水13g、エタノール44gの混合液に添加し、2時間撹拌した溶液に、ガラス板を2時間浸漬し、溶液から引き上げた後、70℃で2時間乾燥した。このようにして表面処理したガラス板に水(1μl)又はテトラデカン(5μl)を垂らし、その接触角を測定した。転落角はガラスに水(13μl)を垂らし、ガラスを傾け水滴が動き始めた時の角度を測定した。また、そのときの前進接触角と後退接触角の差(ヒステリシス)を計算した。結果を表3に示す。
【0079】
また、比較例1〜3に使用したフルオロアルキルアルコキシシラン化合物は、以下の化合物である。
比較例1:8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−テトラデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
比較例2:6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン
比較例3:3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
【0080】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、塗料添加剤、高分子変性剤等に有用なエーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルキルアルコキシシラン化合物やフルオロアルキルアルコキシシラン化合物といった有機ケイ素化合物は、表面処理剤、繊維処理剤、塗料添加剤等に有用であることが知られている。特に、フルオロアルキルアルコキシシラン化合物は表面の撥水・撥油性や滑落性(液滴の滑り性)を制御する目的で無機材料(例えば、ガラス、金属、酸化物)の表面を処理する場合、上記アルコキシシラン化合物を用いることで、無機材料の表面水酸基と共有結合することで強固に結合することができ、改質された表面特性の耐候性や持続性が改良されることが知られている(非特許文献1:「シリコーンハンドブック」、日刊工業新聞社、伊藤邦雄著、p.79,9行目〜p.80,5行目)。
【0003】
フルオロアルキルアルコキシシラン化合物を表面処理に用いた場合、撥水・撥油性といった静的接触角の改善には非常に有効であるが、液滴が転落を始める角度(転落角)やそのときの前進接触角(θA)と後退接触角(θR)から求められるヒステリシス(θA−θR)が大きく、即ち動的接触角が不十分であった。動的な挙動は、滑落性(液滴の除去性能)の指針として特に重要であり、改善が求められている。
【0004】
潤滑性を高めるために、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が開発されているが(特許文献1:特開昭63−250389号公報)、撥水・撥油性と滑落性とのバランスが十分ではなかった。
【0005】
短いフルオロアルキル鎖を用いて高い撥水・撥油性を発揮するために2つのフルオロアルキル鎖を有する含フッ素アクリル酸エステル化合物が開発されているが(特許文献2:特開2008−297400号公報)、重合性は有するものの、無機物への反応性がなく、ガラス、シリコンウェハー、フィラー等の無機材料には撥水・撥油性や滑落性を付与できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−250389号公報
【特許文献2】特開2008−297400号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「シリコーンハンドブック」、日刊工業新聞社、伊藤邦雄著、p.79,9行目〜p.80,5行目
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、エーテル結合と2つのフルオロアルキル鎖を有し、かつ、アルコキシシリル基を有することで、より高い撥水・撥油性や滑落性を処理された無機材料にも付与でき、かつ、分岐構造により揮発性を高めることで精製を容易にできる2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成し、短いフルオロアルキル鎖を用いて、無機材料に対してより高い撥水・撥油性や滑落性を付与することが可能なシラン化合物を得るべく、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物は、エーテル結合と短いフルオロアルキル鎖を2つ有することで、高い撥水・撥油性や滑落性を無機材料に付与でき、かつ、分岐構造により揮発性を高めることで精製を容易にできることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化3】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=1、b=0、n=1、m=1、p=0の場合)
請求項3:
下記一般式(3)
【化4】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=1、b=1、m=1、n=0、p=1の場合)
請求項4:
下記一般式(4)
【化5】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
(式(1)において、a=0、b=0、m=0、n=0、p=0の場合)
請求項5:
下記一般式(5)
【化6】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと下記一般式(6)
【化7】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
請求項6:
下記一般式(7)
【化8】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化9】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記エーテル結合と2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物とを用いることにより、処理された無機材料に撥水・撥油性や滑落性を付与することができる。また、本発明のアルコキシシラン化合物は、分岐状の構造により揮発性が高まることで精製が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図9】実施例5で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図10】実施例5で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図11】実施例6で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図12】実施例6で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【図13】実施例7で得られたアルコキシシラン化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図14】実施例7で得られたアルコキシシラン化合物のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化10】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0014】
上記一般式(1)中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基で各々同一又は異なっていてもよい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘキサデカフルオロオクチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル基、5,5,5,4,4,3,3,2,2−ノナフルオロペンチル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3,2,2−トリデカフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3,2,2−ヘキサデカフルオロノニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル基、8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−ヘキサデカフルオロデシル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5,4,4−ペンタフルオロペンチル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4−ノナフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロノニル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6,5,5−ペンタフルオロヘキシル基、8,8,8,7,7,6,6,5,5−ノナフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5−トリデカフルオロデシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、7,7,7,6,6−ペンタフルオロヘプチル基、9,9,9,8,8,7,7,6,6−ノナフルオロノニル基、7,7,7−トリフルオロヘプチル基、8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチル基、10,10,10,9,9,8,8,7,7−ノナフルオロデシル基、9,9,9−トリフルオロノニル基、10,10,10,9,9−ペンタフルオロデシル基等の直鎖状フルオロアルキル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基等の分岐状フルオロアルキル基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等が挙げられ、好ましくは水素原子、メチル基である。
上記一般式(1)中、R2及びR3はメチル基又はエチル基で各々同一又は異なっていてもよい。
X、Yはエーテル結合又はエステル結合である。
m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数であり、好ましくはm、n及びpは各々0又は1、qは1〜3の整数、rは1又は2である。
【0016】
本発明の一般式(1)で示される化合物を具体的に例示すると、下記一般式(2)で示される化合物A、B、下記一般式(3)で示される化合物C〜E、下記一般式(4)で示される化合物F等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0017】
【化11】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0018】
【化12】
【0019】
【化13】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0020】
【化14】
【0021】
【化15】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
【0022】
【化16】
【0023】
但し、化合物A〜F中のRfα、Rfβ及びRγとしては、下記表1及び表2の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
上記一般式(1)で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(5)
【化17】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと、下記一般式(6)
【化18】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応する方法である。なお、反応は遷移金属触媒の存在下で行うのが好ましく、遷移金属触媒としては白金触媒が好ましい。
【0027】
上記一般式(5)及び式(6)中、Rf、Rf’、R1、R2、R3、X、Y、m、n、p、r、a及びbは上記一般式(1)における定義と同様である。q’は0〜4の整数、好ましくは1である。
【0028】
上記一般式(5)で示される化合物を具体的に例示すると、下記化合物a〜f等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0029】
【化19】
【0030】
但し、化合物a〜f中のRfα、Rfβとしては、上記表1の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
【0031】
上記反応で用いられる一般式(6)で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物としては、具体的には、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等が例示される。
【0032】
一般式(5)で示される化合物と、一般式(6)で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(5)で示される化合物1モルに対し、一般式(6)で表されるヒドリドアルコキシシラン化合物0.5〜2モル、特に0.7〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0033】
上記反応で用いられる白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等が例示される。
【0034】
白金触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から一般式(5)で示される化合物1モルに対し、0.000001〜0.01モル、特に0.00001〜0.001モルの範囲が好ましい。
【0035】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜120℃、特に20〜100℃が好ましく、反応時間は1〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。
【0036】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
なお、化合物a〜fは、例えば、下記式のように一般的に知られている方法で製造することが可能である。
【0038】
【化20】
【0039】
また、上記一般式(1)で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(7)
【化21】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化22】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させる方法である。
【0040】
上記一般式(7)及び式(8)中、Rf、Rf’、R1、R2、R3、X、Y、m、n、p、q、r、a及びbは上記一般式(1)と同様である。
【0041】
本発明の一般式(7)で示される化合物を具体的に例示すると、下記化合物I〜VI等が例示されるが、本発明はこの例示により制限されるものではない。
【0042】
【化23】
【0043】
但し、化合物I〜VI中のRfα、Rfβとしては、上記表1の基が例示され、Rfα及びRfβは同一又は異なっていてもよい。
Rδ例としては、−SiCl3、−Si(CH3)Cl2、−Si(CH3)2Cl等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(8)で示される化合物の具体例としては、メタノール、エタノールである。
【0045】
上記一般式(7)で示される化合物と、一般式(8)で示される化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(7)で示される化合物のSi−Cl結合1モルに対し、0.5〜2.0モル、特に0.7〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0046】
また、上記アルコキシ化反応において、反応中に生成する塩化水素を捕捉するために、塩基性化合物を反応系中に存在させて反応を行ってもよい。塩基性化合物の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、アニリン、n−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン等のアミン化合物、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピコリン、ルチジン等の含窒素芳香族化合物、アンモニア、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド化合物等が例示される。
【0047】
上記塩基性化合物の添加量は、一般式(7)で示される化合物のSi−Cl結合1モルに対し0.5〜2.0モル、特に0.7〜1.2モルが好ましい。
【0048】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は通常量の範囲とすることができる。
【0049】
更に、上記反応条件は特に限定されないが、−20〜150℃、特に0〜100℃で1〜20時間、特に2〜10時間とすることができる。
【0050】
また、上記ヒドロシリル化反応組成物又はアルコキシ化反応組成物から一般式(1)で示される化合物を蒸留やカラム分離等の精製方法により単離することも可能であり、特に蒸留による単離が高純度化できるため好ましい。蒸留の条件は、特に制限はないが、沸点を下げるため減圧にて行う方が好ましい。
【0051】
本発明のアルコキシシラン化合物は、そのまま使用しても問題ないが、溶媒に希釈して用いた方が簡便で好ましい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示され、特に水、アルコール溶液が好ましい。用いる濃度としては、アルコキシシラン化合物が、0.001〜50質量%となるように希釈して用いるとよい。
【0052】
本発明のアルコキシシラン化合物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を併用することができる。
【0053】
本発明のアルコキシシラン化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機材料の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び水系塗料の添加剤等を挙げることができる。
【0054】
本発明のアルコキシシラン化合物を用いることで、無機材料の表面処理(表面改質)をすることが可能である。無機材料としては、金属板、ガラス板、金属繊維、ガラス繊維、粉末シリカ、粉末アルミナ、粉末タルク、粉末炭酸カルシウム等が挙げられる。また、該ガラスの材料としては、Eガラス、Cガラス、石英ガラス等の一般的に用いられる種類のガラスを用いることができる。石英ガラスはナノインプリント等モールド材にも使用が可能である。該ガラス繊維は、その製品形態に限定されない。ガラス繊維製品は多岐にわたるが、例えば、繊維径が3〜30μmのガラス糸(フィラメント)の繊維束、撚糸、織物を挙げることができる。
【0055】
無機材料を前記のアルコキシシラン化合物を用いて処理する方法としては、一般的に用いられる方法が採用できる。即ち、本発明のアルコキシシラン化合物をそのままもしくは希釈して用い、これに前記無機材料を浸漬させた後、無機材料を引き上げて乾燥する方法や、このアルコキシシラン化合物をそのままもしくは希釈したものを無機材料表面にスプレーした後、無機材料を乾燥する方法、不活性ガスにてアルコキシシラン化合物を同伴させ、該同伴ガスに無機材料を接触させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0057】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(9)
【化24】
で示されるオレフィン68g(0.10モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン9.8g(0.08モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点148〜149℃/0.2kPaの無色透明留分を52g得た。
【0058】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図1には1H−NMRスペクトルのチャート、図2にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 771,623,393,277,149,121
【0059】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(10)であることが確認された。
【化25】
【0060】
[実施例2]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(11)
【化26】
で示されるオレフィン87g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点125〜126℃/0.2kPaの無色透明留分を51g得た。
【0061】
得られた留分を、メタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図3には1H−NMRスペクトルのチャート、図4にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 671,523,437,393,163,121
【0062】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(12)であることが確認された。
【化27】
【0063】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(13)
【化28】
で示されるオレフィン52g(0.10モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン9.8g(0.08モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点140〜141℃/0.1kPaの無色透明留分を32g得た。
【0064】
得られた留分を、メタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図5には1H−NMRスペクトルのチャート、図6にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 615,467,303,163,121
【0065】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(14)であることが確認された。
【化29】
【0066】
[実施例4]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(15)
【化30】
で示されるオレフィン73g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点136〜138℃/0.4kPaの無色透明留分を49g得た。
【0067】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図7には1H−NMRスペクトルのチャート、図8にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 569,421,359,163,121
【0068】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(16)であることが確認された。
【化31】
【0069】
[実施例5]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(17)
【化32】
で示されるオレフィン57g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン15g(0.12モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点126〜130℃/0.2kPaの無色透明留分を40g得た。
【0070】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図9には1H−NMRスペクトルのチャート、図10にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 469,321,259,163,121
【0071】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(18)であることが確認された。
【化33】
【0072】
[実施例6]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(19)
【化34】
で示されるオレフィン31g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリクロロシラン19g(0.14モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液中に下記式(20)
【化35】
が生成していることを確認した。室温まで冷却後、トリエチルアミン47g(0.46モル)、トルエン125mlを仕込み、メタノール15g(0.46モル)を20〜30℃で2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後、水を加え、生じたトリエチルアミン塩酸塩を溶解後分液し、有機層を蒸留し、沸点111〜112℃/5.0kPaの無色透明留分を35g得た。
【0073】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図11には1H−NMRスペクトルのチャート、図12にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 331,299,257,163,121
【0074】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(21)であることが確認された。
【化36】
【0075】
[実施例7]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、下記式(22)
【化37】
で示されるオレフィン31g(0.15モル)を仕込み、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(オレフィンに対して1.0×10-4モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、メチルジエトキシシラン18.8g(0.14モル)を70〜80℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点96〜98℃/2.0kPaの無色透明留分を22g得た。
【0076】
得られた留分を、イソブタンガスを反応ガスとする化学イオン化法にて質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルにて測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図13には1H−NMRスペクトルのチャート、図14にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 343,297,227,207,133
【0077】
以上の結果より、得られた化合物は下記式(23)であることが確認された。
【化38】
【0078】
[実施例8〜13、比較例1〜3] ガラス表面処理剤としての使用
上記実施例にて合成した2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物又は下記比較例のフルオロアルキルアルコキシシラン化合物0.1モルを0.2質量%酢酸水13g、エタノール44gの混合液に添加し、2時間撹拌した溶液に、ガラス板を2時間浸漬し、溶液から引き上げた後、70℃で2時間乾燥した。このようにして表面処理したガラス板に水(1μl)又はテトラデカン(5μl)を垂らし、その接触角を測定した。転落角はガラスに水(13μl)を垂らし、ガラスを傾け水滴が動き始めた時の角度を測定した。また、そのときの前進接触角と後退接触角の差(ヒステリシス)を計算した。結果を表3に示す。
【0079】
また、比較例1〜3に使用したフルオロアルキルアルコキシシラン化合物は、以下の化合物である。
比較例1:8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−テトラデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
比較例2:6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン
比較例3:3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
【0080】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項3】
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項4】
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項5】
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと下記一般式(6)
【化6】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(7)
【化7】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化8】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。Xはエーテル結合又はエステル結合である。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項3】
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項4】
下記一般式(4)
【化4】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される請求項1記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
【請求項5】
下記一般式(5)
【化5】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。a及びbは各々0又は1であり、mは0〜6の整数、nは0〜6の整数、pは0〜6の整数、q’は0〜4の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するオレフィンと下記一般式(6)
【化6】
(式中、R2及びR3はメチル基又はエチル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。rは0〜2の整数である。)
で示されるヒドリドアルコキシシラン化合物を反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(7)
【化7】
(式中、Rf及びRf’は炭素数1〜10のフルオロアルキル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。R1は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族1価炭化水素基である。R2はメチル基又はエチル基である。X及びYはエーテル結合又はエステル結合であり、各々同一又は異なっていてもよい。aは0又は1、bは0又は1、m、n及びpは各々0〜6の整数、qは1〜6の整数、rは0〜2の整数である。)
で示される2つのフルオロアルキル基を有するクロロシラン化合物を下記一般式(8)
【化8】
(式中、R3はメチル基又はエチル基である。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の2つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−219071(P2012−219071A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87866(P2011−87866)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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