説明

フルオロエラストマーの製造方法

少なくとも1つのフルオロ界面活性剤が分散剤として用いられるフルオロエラストマーの製造のための乳化重合法であって、前記フルオロ界面活性剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、n=1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法が開示される。任意選択的に、第2の分散剤が重合に用いられてもよく、前記第2の分散剤は、カルボン酸、その塩、スルホン酸およびその塩、リン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの分散剤が用いられるフルオロエラストマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、n=1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基(分岐または非分岐)である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化および溶液重合法によるフルオロエラストマーの製造は、当該技術分野で周知であり;例えば米国特許第4,214,060号明細書、同第4,281,092号明細書、同第6,512,063号明細書および同第6,774,164 B2号明細書を参照されたい。一般に、フルオロエラストマーは、水溶性重合開始剤および比較的大量の分散剤(すなわち界面活性剤)が用いられる乳化重合法で製造される。
【0003】
Benning(米国特許第2,559,749号明細書および同第2,597,702号明細書)は、不飽和有機化合物の水性重合における乳化剤として用いられてもよいフッ素化脂肪族ホスフェートを開示している。これらのホスフェートエステルはテトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)ホモポリマーの重合に特に有用であると言われている。
【0004】
Urban(米国特許出願公開第2006/0229398 A1号明細書)は、1)リン酸ビス(トリデカフルオロオクチル)エステルアンモニウム塩などのフルオロアルキルリン酸エステル塩、および2)ドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン性アルキルスルホネート界面活性剤の両方を用いる水性システムにおけるフルオロモノマーと(メタ)アクリレートとの重合を開示している。
【0005】
Morganら(米国特許第6,395,848 B1号明細書)は、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせを利用する水性分散法を開示している。少なくとも1つの界面活性剤は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)カルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩であり、少なくとも1つの界面活性剤は、フルオロアルキルカルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩、またはフルオロアルコキシアリールスルホン酸もしくはその塩である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、生じたフルオロエラストマーがエマルジョンから容易に単離されるフルオロエラストマーの製造のための乳化重合法を提供する。本方法は、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択される第1モノマーを、開始剤および分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つの異なるモノマーと重合させてフルオロエラストマーの水性分散系を得る工程であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである工程を含む。
【0007】
本発明の別の態様は、式CF3CF2CF2OCF(CF3)(CH2nOPO(OM)2(式中、nは1または2であり、Mは一価のカチオンである)を有する分散剤である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、20℃未満のガラス転移温度を有するフルオロエラストマーを製造するための乳化重合法を指向する。フルオロエラストマーは、部分フッ素化されていてもまたは過フッ素化されていてもよい。
【0009】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーポリマーは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択される第1モノマーと少なくとも1つの異なるモノマーとの共重合単位を含む。
【0010】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーは好ましくは、フルオロエラストマーの総重量を基準にして、25〜70重量パーセントの、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であってもよい第1モノマーの共重合単位を含有する。フルオロエラストマー中の残りの単位は、フルオロモノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記第1モノマーとは異なる、1つ以上の追加の共重合モノマーからなる。フルオロモノマーには、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテルが含まれる。
【0011】
本発明によってフルオロエラストマーを製造するために用いられてもよいフッ素含有オレフィンには、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびフッ化ビニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0012】
本発明によってフルオロエラストマーを製造するために用いられてもよいフッ素含有ビニルエーテルには、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれるが、それらに限定されない。モノマーとしての使用に好適なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)には、式
CF2=CFO(Rf'O)n(Rf''O)mf (I)
(式中、Rf'およびRf''は、2〜6個の炭素原子の異なる線状もしくは分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
のものが含まれる。
【0013】
好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、式
CF2=CFO(CF2CFXO)nf (II)
(式中、XはFまたはCF3であり、nは0〜5であり、そしてRfは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
の組成物を含む。
【0014】
最も好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、nが0または1であり、そしてRfが1〜3個の炭素原子を含有するそれらのエーテルが含まれる。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)が挙げられる。他の有用なモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf (III)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、そしてZ=FまたはCF3である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーは、式中RfがC37であり、m=0、そしてn=1であるものである。
【0015】
追加のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2CF{CF3}O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (IV)
(式中、mおよびnは独立して=0〜10、p=0〜3、そしてx=1〜5である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーには、式中n=0〜1、m=0〜1、そしてx=1である化合物が含まれる。
【0016】
有用なパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例には、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (V)
(式中、n=1〜5、m=1〜3、そして式中、好ましくは、n=1である)
が挙げられる。
【0017】
PAVEの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、PAVE含有率は一般に、フルオロエラストマーの総重量を基準にして、25〜75重量パーセントの範囲である。パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が使用される場合、フルオロエラストマーは好ましくは、30〜65重量%共重合PMVE単位を含有する。
【0018】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーに有用な炭化水素オレフィンには、エチレンおよびプロピレンが含まれるが、それらに限定されない。炭化水素オレフィンの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、炭化水素オレフィン含有率は一般に4〜30重量パーセントである。
【0019】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーはまた、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含んでもよい。好適な硬化部位モノマーの例には、i)臭素含有オレフィン、ii)ヨウ素含有オレフィン、iii)臭素含有ビニルエーテル、iv)ヨウ素含有ビニルエーテル、v)ニトリル基を有するフッ素含有オレフィン、vi)ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル、vii)1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、viii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル、およびix)非共役ジエンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0020】
臭素化硬化部位モノマーは、他のハロゲン、好ましくはフッ素を含有してもよい。臭素化オレフィン硬化部位モノマーの例は、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF2Br、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB)、ならびに臭化ビニル,1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、臭化パーフルオロアリル、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン−1、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモパーフルオロブテン−1および臭化3,3−ジフルオロアリルなどの他のものである。本発明で有用な臭素化ビニルエーテル硬化部位モノマーには、2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルおよびCF2BrCF2O−CF=CF2などのクラスCF2Br−Rf−O−CF=CF2(Rfはパーフルオロアルキレン基である)のフッ素化化合物、ならびにCH3OCF=CFBrまたはCF3CH2OCF=CFBrなどのグラスROCF=CFBrまたはROCBr=CF2(式中、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)のフルオロビニルエーテルが含まれる。
【0021】
好適なヨウ化硬化部位モノマーには、式:CHR=CH−Z−CH2CHR−I(式中、Rは−Hまたは−CH3であり、Zは線状もしくは分岐の、任意選択的に1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18の(パー)フルオロアルキレン基、または米国特許第5,674,959号明細書に開示されているような(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)のヨウ化オレフィンが含まれる。有用なヨウ化硬化部位モノマーの他の例は、米国特許第5,717,036号明細書に開示されているように、式:I(CH2CF2CF2nOCF=CF2およびICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2など(式中、n=1〜3である)の不飽和エーテルである。加えて、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテン、およびヨードトリフルオロエチレンをはじめとする好適なヨウ化硬化部位モノマーが米国特許第4,694,045号明細書に開示されている。ヨウ化アリルおよび2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルもまた有用な硬化部位モノマーである。
【0022】
有用なニトリル含有硬化部位モノマーには、下に示される式
CF2=CF−O(CF2n−CN (VI)
(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である)
CF2=CF−O[CF2−CF(CF3)−O]n−CF2−CF(CF3)−CN (VII)
(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である)
CF2=CF−[OCF2CF(CF3)]x−O−(CF2n−CN (VIII)
(式中、x=1〜2、そしてn=1〜4である)、および
CF2=CF−O−(CF2n−O−CF(CF3)CN (IX)
(式中、n=2〜4である)
を有するものが含まれる。式(VIII)を有するものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基とトリフルオロビニルエーテル基とを有する過フッ素化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (X)
すなわちパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
【0023】
非共役ジエン硬化部位モノマーの例には、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,5−ヘキサジエン、ならびにカナダ国特許第2,067,891号明細書および欧州特許第0784064A1号明細書に開示されているものなどの他のものが挙げられるが、それらに限定されない。好適なトリエンは8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンである。
【0024】
上にリストされた硬化部位モノマーのうちで、フルオロエラストマーが過酸化物で硬化させられる状況のための、好ましい化合物には、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);ヨウ化アリル;ブロモトリフルオロエチレンおよび8−CNVEなどのニトリル含有硬化部位モノマーが含まれる。フルオロエラストマーがポリオールで硬化させられるとき、2−HPFPすなわちパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルが好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがテトラアミンで硬化させられるとき、ビス(アミノフェノール)またはビス(チオアミノフェノール)、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがアンモニアまたは硬化温度でアンモニアを放出する化合物(例えば尿素)で硬化させられるとき、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。
【0025】
硬化部位モノマーの単位は、本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在するとき、典型的には0.05〜10重量%(フルオロエラストマーの総重量を基準にして)、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%のレベルで存在する。
【0026】
本発明の方法によって製造されてもよい具体的なフルオロエラストマーには、i)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xii)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル);xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)および4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xvi)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル;ならびにxvii)テトラフルオロエチレンおよびプロピレンの共重合単位を含むものが含まれるが、それらに限定されない。
【0027】
さらに、ヨウ素含有末端基、臭素含有末端基またはそれらの混合物は任意選択的に、フルオロエラストマーの製造中の連鎖移動剤または分子量調整剤の使用の結果としてフルオロエラストマーポリマー鎖端の1つまたは両方に存在する可能性がある。用いられるとき、連鎖移動剤の量は0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲のフルオロエラストマー中のヨウ素または臭素レベルをもたらすように計算される。
【0028】
連鎖移動剤の例には、ポリマー分子の一端または両端に結合ヨウ素原子の組み込みをもたらすヨウ素含有化合物が挙げられる。ヨウ化メチレン;1,4−ジヨードパーフルオロ−n−ブタン;および1,6−ジヨード−3,3,4,4,テトラフルオロヘキサンがかかる試剤を代表する。他のヨウ素化連鎖移動剤には、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン;1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン;1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン;1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)−パーフルオロシクロブタン;モノヨードパーフルオロエタン;モノヨードパーフルオロブタン;2−ヨード−1−ヒドロパーフルオロエタンなどが含まれる。欧州特許出願公開第0868447A1号明細書に開示されているシアノ−ヨウ素連鎖移動剤もまた含まれる。ジヨウ素化連鎖移動剤が特に好ましい。
【0029】
臭素化連鎖移動剤の例には、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン;1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン;1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンおよび米国特許第5,151,492号明細書に開示されているなどの他のものが挙げられる。
【0030】
本発明の方法での使用に好適な他の連鎖移動剤には、米国特許第3,707,529号明細書に開示されているものが含まれる。かかる試剤の例には、イソプロパノール、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、四塩化炭素、アセトンおよびドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0031】
硬化部位モノマーおよび連鎖移動剤は、ニートでまたは溶液として反応器に加えられてもよい。重合の開始近くに反応器中へ導入されることに加えて、連鎖移動剤量は、製造中のフルオロエラストマーの所望の組成、使用中の連鎖移動剤、および全反応時間に依存して、全重合反応期間の全体にわたって加えられてもよい。
【0032】
本発明の乳化重合に用いられる分散剤は、式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、n=1または2(好ましくは1)であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオン、好ましくはH、Na、K、Li、またはNH4であり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである。フルオロアルキルおよびフルオロアルコキシ基は分岐であっても非分岐であってもよい。好ましくは、フルオロアルキルおよびフルオロアルコキシ基は過フッ素化されている。各Mは同じものである必要はない。例えば、分散剤を含有する水溶液のpHに依存して、1つのMはHであってもよいが、他のMはNH4、Na、LiまたはKである。
【0033】
かかる分散剤の具体的な例には、CF3CF2CF2OCF(CF3)(CH2nOPO(OM)2、H−(CF26−CH2−O−P(O)(OM)2およびF−(CF25−CH2−O−P(O)(OM)2が挙げられるが、それらに限定されない。M=HまたはNH4が好ましい。CF3CF2CF2OCF(CF3)(CH2nOPO(OH)2およびCF3CF2CF2OCF(CF3)(CH2nOPO(OH)(ONH4)が特に好ましい。後者の2つの分散剤において、nは好ましくは1である。
【0034】
任意選択的に、(上記のフルオロアルキルリン酸エステルに加えて)第2の分散剤が本発明の重合法に用いられてもよい。本発明のこの態様においては、第2の分散剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)である。本発明に使用されるパーフルオロポリエーテルは、分子の主鎖において酸素原子が1〜3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基によって分離されている任意の鎖構造を有することができる。2つ以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在してもよい。代表的な構造は繰り返し単位
(−CFCF3−CF2−O−)n (XI)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (XII)
(−CF2CF2−O−)n−(CF2−O−)m (XIII)
(−CF2CFCF3−O−)n−(CF2−O−)m (XIV)
を有する。
【0035】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.57(1995),797ページにKasaiによって議論されている。そこに開示されているように、かかるPFPEは、一端にまたは両端にカルボン酸基もしくはその塩(「カルボキシル基」)を有することができる。かかる構造はまた、一端でのまたは両端でのスルホン酸基またはリン酸基でも可能である。「スルホン酸」基または「リン酸」基は、酸としてかもしくはそのイオン塩として存在してもよい。加えて、両端に酸官能性を持ったPFPEは、一端にカルボン酸基を、他端にスルホン酸基を有してもよい。PFPEスルホン酸は、140℃でジメチルホルムアミド中の相当するPFPEカルボン酸カリウムの溶液中にSO2をバブリングさせ、引き続き抽出およびイオン交換による酸形態への変換によって製造される。PFPE−リン酸は、PFPE−カルボン酸またはPFPE−酸フロオリドを先ず還元してアルコールにし、次にこのアルコールをPOCl3と反応させ、引き続き水中で加水分解するか、このアルコールをP25と反応させるかのどちらかによって製造される。構造XIを有するPFPEはDuPontから入手可能である。構造XIIを有するPFPEはダイキン工業株式会社から入手可能である。PFPE−XIIIおよびXIVは、Solvay Solexisから入手可能である。本発明に有用なPFPEは、これらの会社から入手可能な特定のPFPEに限定されない。モノカルボキシル、モノスルホン酸またはモノリン酸PFPEについては、分子の他端は通常過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してもよい。本発明に使用することができる一端にまたは両端にカルボキシル、スルホン酸基またはリン酸基を有するPFPEは、少なくとも2個のエーテル酸素、より好ましくは少なくとも4個のエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6個のエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはかかるフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。同様に、好ましくは、PFPEは合計少なくとも9個の炭素原子を有し、それによって上記の繰り返し単位構造におけるnおよびn+mの最小値は少なくとも3である。分子量は、PFPEが室温で普通液体であるように十分に低い。一端または両端にカルボキシル、スルホン酸基またはリン酸基を有する2つ以上のPFPEを使用することができるが、普通はたった1つのかかるPFPEが用いられる。
【0036】
本発明の方法に用いられる全分散剤の量(すなわちフルオロアルキルリン酸エステルの量、プラス(もしあれば)任意選択のPFPEの量)は、典型的な範囲内にある。従って、全分散剤の量は、重合に使用される水の総重量を基準にして、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは0.05〜7重量%であることができる。本発明の重合法に用いられてもよい分散剤の濃度は、各分散剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)より上または下であってもよい。c.m.c.は異なる分散剤について異なる。当業者が認めるように、所与のレベルの分散系安定性を達成するために必要とされる分散剤の量は、一定の粒度で製造されるべきポリマーの量と共に増加するであろう。安定性のために必要とされる分散剤の量はまた、製造される一定量のポリマーで粒径が減少すると共に、全表面積がこれらの条件下で増加するので増加する。これは、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの不存在下に実施される類似の方法より小さい分散系粒子を一般に生成する、本発明の方法について幾つかの場合に観察される。かかる場合には、全分散剤を増やさないと、得られた分散系は室温で不安定であり得て、ゲルを形成する。しかしながら、本発明の分散系は依然として室温で、それらの全分散剤レベルからおよびそれらの小さい分散粒度で予期されるよりも安定である。意外にも、室温で不安定である生成分散系は、反応器中の少量の凝塊で判断されるように、重合に用いられる高温では安定であるように思われる。「凝塊」は、重合中に水性分散系から分離し得る非水湿潤性ポリマーである。形成される凝塊の量は、分散系安定性の指標である。
【0037】
カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEは、分散剤において多量に存在してもよいが、かかる化合物は高価である。全分散剤のうち、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有する任意選択のPFPEは好ましくは少量で、すなわち、重量で全分散剤の半分未満で存在する。カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの量は、全分散剤の重量を基準にして、より好ましくは25重量%以下、最も好ましくは15重量%以下である。存在するとき、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有する任意選択のPFPEの量は、全分散剤の重量を基準にして、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%である。使用されるカルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有するPFPEの量は、望まれる効果(すなわち、粒度)のレベルに依存するであろう。意外にも、単独での、例えば、フルオロアルキルリン酸エステル分散剤の不存在下でのカルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの使用は、フルオロアルキルリン酸エステル分散剤の単独での使用と比較して改善された結果をもたらさない。すなわち、分散剤の少なくとも1つがフルオロアルキルリン酸エステルであり、分散剤の少なくとも1つがパーフルオロポリエーテルカルボン酸、リン酸、もしくはスルホン酸またはそれらの塩である、少なくとも2つの分散剤の組み合わせの使用は、どちらかのタイプの分散剤単独の使用と比べて、相乗効果を本重合プロセスに与える。
【0038】
本明細書で用いるところでは、「分散剤の組み合わせ」は、「組み合わせ」の成分が重合の間ずっと反応器中に存在することを意味する。成分は、時間を変えるなど、別々に導入することができ、それらはそのように組み合わせられてもよいが、反応器中への導入前に物理的に組み合わせられる必要はない。バッチ式乳化重合において、分散剤のすべては、重合が始められる前に反応器に加えられてもよいか、または添加は、反応器プレチャージと、その後の添加、典型的には粒子核生成のほとんど起こった後との間に分割することができる。任意選択のPFPEの添加は好ましくはプレチャージによる。連続重合では、分散剤成分は好ましくは、典型的には重合の全体にわたって、混合物として添加される。
【0039】
本発明の乳化重合法は連続、セミバッチ式またはバッチ式プロセスであってもよい。いかなる方法においても、1つ以上のモノマーは任意選択的に、10ミクロン未満のモノマー液滴サイズを有するマイクロエマルジョンを生成するために分散剤で前もって乳化させられてよい。高剪断ミキサーが典型的にはマイクロエマルジョンを形成するために用いられる。
【0040】
本発明のセミバッチ式乳化重合プロセスでは、所望の組成のガス状モノマー混合物(初期モノマー装入物)が、水性媒体プレチャージを含有する反応器中へ導入される。反応器は典型的には、蒸気空間が残るように、水性媒体で完全には満たされない。水性媒体は、上に議論されたタイプの少なくとも1つの分散剤、すなわちフルオロアルキルリン酸エステルと、任意選択的に、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有するPFPEとを含む。任意選択的に、水性媒体は、重合反応のpHを調節するためのリン酸塩または酢酸塩緩衝剤などの、pH緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤の代わりに、NaOHなどの、塩基がpHを調節するために使用されてもよい。一般に、pHは、製造中のフルオロエラストマーのタイプに依存して、1〜7(好ましくは3〜7)に調節される。あるいはまた、またはさらに、pH緩衝剤または塩基が、単独でまたは重合開始剤、液体硬化部位モノマー、連鎖移動剤、もしくは分散剤などの他の原料と組み合わせてのどちらかで、重合反応の全体にわたって様々な時間に反応器に加えられてもよい。任意選択のPFPEタイプの分散剤のみが反応器プレ装入物中に存在する場合、リン酸エステルタイプのフルオロ界面活性剤分散剤は重合反応中に加えられる。同様に任意選択的に、初期水性媒体は、水溶性の無機過酸化物重合開始剤を含有してもよい。
【0041】
初期モノマー装入物は、ある量のTFE、PMVEまたはVF2のいずれかの第1モノマーおよびまた第1モノマーとは異なる、ある量の1つ以上の追加のモノマーを含有する。初期の装入物に含有されるモノマー混合物の量は、0.5〜10MPaの反応器圧力をもたらすように設定される。
【0042】
モノマー混合物は水性媒体中に分散され、そして、任意選択的に、連鎖移動剤がまた、反応混合物が典型的には機械撹拌によってかき混ぜられながら、この時点で加えられてもよい。初期ガス状モノマー装入物において、各モノマーの相対的な量は、反応速度論によって決定され、共重合モノマー単位の所望の比を有するフルオロエラストマーをもたらすように設定される(すなわち非常に遅く反応するモノマーは、製造されるフルオロエラストマーの組成物中に望まれるより他のモノマーに対して高い量で存在しなければならない)。
【0043】
セミバッチ式反応混合物の温度は25℃〜130℃、好ましくは50℃〜100℃の範囲に維持される。重合は、開始剤が熱分解するか、還元剤と反応するかのいずれかを経て、生じたラジカルが分散されたモノマーと反応するときに開始する。
【0044】
ガス状のモノマーと任意選択の硬化部位モノマーとの追加量(追加フィード)は、調節された温度で一定の反応器圧力を維持するために、重合の間中調節された速度で加えられる。追加フィード中に含有されるモノマーの相対的な比は、生じるフルオロエラストマー中の共重合モノマー単位の所望の比とおよそ同じものであるように設定される。従って、追加フィードは、モノマー混合物の総重量を基準にして、25〜70重量パーセントの、TFE、PMVEまたはVF2のどちらかの第1モノマーと、第1モノマーとは異なる合計75〜30重量パーセントの1つ以上の追加のモノマーとを含有する。連鎖移動剤はまた、任意選択的に、重合のこの段階中の任意の時点で反応器中へ導入されてもよい。追加の分散剤および重合開始剤もまた、この段階中に反応器にフィードされてもよい。形成されるポリマーの量は、追加モノマーフィードの累積量におよそ等しい。当業者は、初期装入物の組成が正確には、選択された最終フルオロエラストマー組成について必要とされるものではないので、または追加フィード中のモノマーの一部が、反応せずに、既に形成されたポリマー粒子中へ溶解する可能性があるので、追加フィード中のモノマーのモル比が、生じたフルオロエラストマー中の所望の(すなわち選択された)共重合モノマー単位組成のそれと必ずしも正確に同じものではないことを認めるであろう。2〜30時間の範囲の重合時間が典型的にはこのセミバッチ式重合プロセスで用いられる。
【0045】
本発明の連続乳化重合プロセスは、以下のやり方においてセミバッチ式プロセスとは異なる。反応器は、蒸気空間が全くないように水性媒体で完全に満たされる。ガス状モノマーと、水溶性モノマー、連鎖移動剤、緩衝剤、塩基、重合開始剤、分散剤等々の他の原料の溶液とは、一定の速度で別個の流れで反応器にフィードされる。フィード速度は、反応器中の平均ポリマー滞留時間が概して0.2〜4時間であるように調節される。短い滞留時間が反応性モノマーについて用いられるが、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルなどの低い反応性のモノマーはより多くの時間を必要とする。連続プロセス反応混合物の温度は、25℃〜130℃、好ましくは70℃〜120℃の範囲に維持される。
【0046】
本発明の方法において、重合温度は25℃〜130℃の範囲に維持される。温度が25℃より下である場合、重合の速度が商業規模で効率的な反応にとって余りにも遅く、一方温度が130℃より上である場合、重合を維持するために必要とされる反応器圧力が実用的であるには余りにも高い。
【0047】
重合圧力は、0.5〜10MPa、好ましくは1〜6.2MPaの範囲に調節される。セミバッチ式プロセスでは、所望の重合圧力は初期には、初期装入物中のガス状モノマーの量を調節することによって達成され、反応が開始した後は、圧力は追加ガス状モノマーフィードをコントロールすることによって調節される。連続プロセスでは、圧力は、分散系排出ラインでの背圧調整器を用いて調節される。重合圧力は、それが1MPaより下である場合、重合反応系中のモノマー濃度が満足できる反応速度を得るには余りにも低いので、上記の範囲に設定される。加えて、分子量は十分には増加しない。圧力が10MPaより上である場合、必要とされる高圧装置のコストが非常に高い。
【0048】
形成されるフルオロエラストマーの量は、装入される追加フィードの量におよそ等しく、水性エマルジョンの100重量部当たり10〜35重量部のフルオロエラストマーの範囲に、好ましくは20〜30重量部のフルオロエラストマーの範囲にある。フルオロエラストマーの形成度は、それが10重量部未満である場合、生産性が望ましくもなく低く、一方それが35重量部より上である場合、固形分が満足できる撹拌にとって余りにも高くなるので、上記の範囲に設定される。
【0049】
本発明で重合を開始させるために使用されてもよい水溶性過酸化物には、例えば、過硫酸水素のアンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。レドックス型開始においては、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が過酸化物に加えて存在する。これらの水溶性過酸化物は、単独でまたは2つ以上のタイプの混合物として使用されてもよい。使用される量は、一般にポリマーの100重量部当たり0.01〜0.4重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で選択される。重合中にフルオロエラストマーポリマー鎖端の幾らかは、これらの過酸化物の分解によって発生した断片でキャップされる。
【0050】
任意選択的に、フルオロエラストマーゴムまたは小片は、分散系への凝固剤の添加によって本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー分散系から単離されてもよい。当該技術分野で公知の任意の凝固剤が使用されてもよい。好ましくは、分散系に含有される分散剤と水溶性塩を形成する凝固剤が選ばれる。さもなければ、沈澱する分散剤塩が単離されるフルオロエラストマー中に同伴されることになる可能性があり、その結果ビスフェノール型硬化剤でのフルオロエラストマーの硬化を妨害する。
【0051】
一般的な凝固剤には、アルミニウム塩(例えば硫酸カリウムアルミニウム)、カルシウム塩(例えば硝酸カルシウム)、マグネシウム塩(例えば硫酸マグネシウム)、または鉱酸(例えば硝酸)が含まれるが、それらに限定されない。かかる短鎖界面活性剤とのカルシウム、マグネシウム、または一価のカチオンの塩は水溶性であり、こうしてフルオロエラストマーから容易に除去可能である。
【0052】
凝固剤を用いる代わりに、本発明によって製造されるフルオロエラストマーは、機械凝固または凍結融解凝固されてもよい。
【0053】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーは、シール、ワイヤコーティング、チューブ材料およびラミネートを含む多くの工業用途で有用である。
【実施例】
【0054】
試験方法
ムーニー(Mooney)粘度、ML(1+10)は、1分の予熱時間および10分の回転子操作時間を用いて、121℃でL(大きい)タイプの回転子を使ってASTM D1646に従って測定した。
【0055】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明の乳化重合法での使用に好適なフルオロアルキルリン酸エステルは、次の手順によって製造した。
【0057】
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸エステル[H(CF26−CH2O−PO(OH)2]の製造:
第1段階において、ホスホロジクロリデートをフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコへ、1H,1H,7H−パーフルオロヘプタン−1−オール(150グラム、0.45モル)および塩化カルシウム(10.2グラム、0.092モル)を加えた。内容物を窒素下に撹拌しながら、オキシ塩化リン(207.3グラム、1.35モル)をフラスコに加えた。内容物の温度は周囲温度から約15℃に低下した。反応混合物を次に110℃に6時間加熱した。
【0058】
(ガスクロマトグラフィーによって確認されるように)反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した(bp.105℃)。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデート生成物を透明な無色の液体として与えた。Bp.95℃/0.3mmHg。収量=158〜170g。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ6.83(tt,J=51Hz,5.2Hz,1H),5.20(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−119.4(m,2F),−121.7(m,2F),−122.4(m,2F),−122.9(m,2F),−129.1(m,2F),−138.0(dm,J=51Hz,2F)。
【0059】
第2段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステルを生成した。丸底フラスコに、上で製造された1H,1H,7H−パーフルオロヘプタン−1−オール、ホスホロジクロリデート(158グラム、0.352モル)を装入した。温度を35℃〜45℃に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(12.78グラム、0.71モル)を滴加した。添加を完了した後、反応混合物を周囲温度で3時間撹拌した。生じた溶液を45℃〜50℃で高真空下に置き、白色固体生成物をもたらした。収率は定量的であった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ9.68(S,−OH’s),6.82(tt,J=51Hz,10.5Hz,1H),4.61(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−120.5(m,2F),−122.1(m,2F),−123.1(m,2F),−123.3(m,2F),−129.5(m,2F),−138.4(dm,J=51Hz,2F)。
【0060】
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキサリン酸エステル[F(CF25−CH2O−PO(OH)2]の製造:
第1段階において、ホスホロジクロリデートをフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、1H,1H−パーフルオロヘキサン−1−オール(50グラム、0.166モル)および塩化カルシウム(2.9グラム、0.026モル)を加えた。フラスコ内容物を窒素下に撹拌しながら、オキシ塩化リン(207グラム、1.35モル)をこのアルコールにゆっくり加えた。反応混合物を次に110℃に5時間加熱した。
【0061】
反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデート生成物を透明な無色の液体として与えた。Bp.88℃〜90℃/5mmHg。収量=53.3g。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ5.25(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.7(m,3F),−119.3(m,2F),−122.4(m,4F),−125.7(m,2F)。
【0062】
第2段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステルを生成した。丸底フラスコへ、1H,1H−パーフルオロヘキサン−1−オール、ホスホロジクロリデート(83.4グラム、0.20モル)を装入した。温度を35℃〜45℃に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(7.2グラム、0.40モル)を滴加した。添加を完了した後、反応混合物を周囲温度で2時間撹拌した。この溶液を次に60℃で高真空下に置いて乾燥させ、白色固体生成物をもたらした。収量は75.9グラムであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ4.60(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.2(m,3F),−121.5(m,2F),−123.9(m,2F),−124.0(m,2F),−127.3(m,2F)。
【0063】
2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル[CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2]の製造:
第1段階において、フルオロアルキルアルコールを2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルフルオリド(すなわちHFPOダイマー、DuPontから商業的に入手可能な)から製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、LiAlH4(13.5g、0.355モル)および500mlのエーテル溶媒を装入し、内容物を0℃に冷却した。(NaBH4をLiAlH4の代わりに用いてもよい)。HFPO−ダイマー(149.4g、0.45モル)をゆっくり加え、反応フラスコ内容物温度を外部冷却で10℃未満に制御した。添加が完了した後、反応混合物を5〜10℃で2〜3時間撹拌した。反応混合物を400mlの6N HCl/500mL氷水混合物へゆっくり移し、エーテル層を分離した。底部層を200mLのエーテルで(2回)抽出した。エーテル層を一緒にし、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次に蒸留してフルオロアルコール(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサン−1−オール)(HFPOダイマーアルコール)を透明な無色の液体として得た。Bp.112℃〜114℃。収量:127グラム(89%)。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ 4.30(m);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.5〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−134.6(dm,1F)。
【0064】
第2段階において、ホスホロジクロリデート(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−ヘキサノイルホスホロジクロリド酸(phosphorodichloridic acid))(HFPOダイマーホスホリルクロリド)をフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、オキシ塩化リン(255.1g、1.662モル)および塩化カルシウム(7.14g、0.064モル)を装入した。フラスコ内容物を窒素下に撹拌しながら、HFPOダイマーアルコール(127g、0.402モル)を数回の大部分で加えた。内容物の温度は数度低下した。反応混合物を105℃〜110℃で6時間加熱した。反応の進行をGCによって監視した。
【0065】
反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した(Bp.105℃)。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデートを透明な無色の液体として与えた。Bp.35℃〜38℃/2〜3mmHg(または59℃/4.2mmHg)。収量はおよそ105グラム(60%)であった。
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.5〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−135.1(dm,1F)。
【0066】
第3段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステル(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル)を生成した。丸底フラスコに、上で製造されたHFPOダイマーホスホリルクロリド(105グラム、0.242モル)を装入した。温度を30℃より下に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(9.8グラム、0.544モル)を滴加した。添加を完了した後、反応物を周囲温度で一晩にわたり撹拌した。2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル生成物を70℃の真空オーブン中で乾燥させ、透明な無色の粘稠な液体を得た。収率は定量的であった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ 4.80(m);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.6〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−134.7(dm,1F)。
【0067】
実施例1
テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、およびパーフルオロ−8(シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8CNVE)の共重合モノマーを含有するパーフルオロエラストマーを次の通り製造した:3つの水性流れをそれぞれ連続的に、81立法センチメートル毎時(cc/時)の速度で1リットルの機械撹拌される、水ジャケット付きの、ステンレススチールオートクレーブにフィードした。第1流れは、3リットルの脱気した脱イオン水中の35.4gの過硫酸アンモニウムの溶液からなった。第2流れは、4リットルの脱気した脱イオン水中の180gのF(CF25−CH2O−PO(OH)2界面活性剤とカルボキシレート末端基を有する(DuPontから入手可能な)54gのKrytox(登録商標)157 FSLパーフルオロポリエーテル(PFPE)界面活性剤とからなった。第3流れは、3リットルの脱気した脱イオン水中の11.8gの水酸化ナトリウムと29.3gの亜硫酸ナトリウムとからなった。ダイアフラム圧縮機を用いて、TFE(61.7グラム毎時(g/時))とPMVE(51.8g/時)との混合物を一定速度でフィードした。反応の全体にわたって温度を75℃に、圧力を4.1MPa(600psi)に維持した。ポリマーエマルジョンを、レットダウン弁を用いて連続的に取り出し、未反応モノマーをガス抜きした。ポリマーを60℃の温度で、先ずエマルジョンの1リットル当たり8リットルの脱イオン水の速度で脱イオン水でそれを希釈し、引き続きエマルジョンの1リットル当たり320ccの硫酸マグネシウム溶液(脱イオン水の1リットル当たり100gの硫酸マグネシウム七水和物)を添加することによってエマルジョンから単離した。生じたスラリーを濾過し、1リットルのエマルジョンから得られたポリマー固形分を、8リットルの脱イオン水に60℃で再分散させた。濾過後に、湿った小片を強制エアオーブン中70℃で48時間乾燥させた。ポリマー収量は、反応器運転の1時間当たり79gであった。ポリマー組成は、43.9重量%PMVE、1.89重量%8CNVEであり、残りがテトラフルオロエチレンであった。このポリマーは、30℃で60/40/3体積比のヘプタフルオロ−2,2,3−トリクロロブタン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)、およびエチレングリコールジメチルエーテルからなる100gの溶媒中0.1gポリマーの溶液で測定されて0.51の固有粘度を有した。
【0068】
実施例2
テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、およびパーフルオロ−8(シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8CNVE)の共重合モノマー単位を含有するパーフルオロエラストマーを次の通り製造した。3つの水性流れをそれぞれ、71cc/時の速度で1リットルの機械撹拌される、水ジャケット付きの、ステンレススチールオートクレーブに連続的にフィードした。第1流れは、1.5リットルの脱気した脱イオン(DI)水中の1.6gの過硫酸アンモニウムおよび41.3gのリン酸水素二ナトリウムからなった。第2流れは、1.5リットルの脱気した脱イオン水中の45gのH(CF26−CH2O−PO(OH)2界面活性剤と4.5gのKrytox(登録商標)157 FSL PFPE界面活性剤とからなった。この混合物は、界面活性剤が加えられているときに、撹拌しながら、および、30重量%の水酸化アンモニウムを使用して、pHを4.0超に連続的に調整しながら、ホスフェート界面活性剤を45℃〜50℃に加熱された約600mlのDI水に徐々に加えることによって調製した。生じた溶液は無色透明であった。このホスフェート界面活性剤のすべてが加えられたとき、最終pHを6.5〜7.0に調整した。Krytox(登録商標)157 FSL PFPE界面活性剤を次に加え、温度を45℃〜50℃に維持しながら約30分間撹拌し、無色透明の安定な溶液をもたらした。DI水を次に加えて1.5リットルのフィード溶液をメークアップした。第3流れは、1.5リットルの脱気した脱イオン水中の1.6gの過硫酸アンモニウムからなった。ダイアフラム圧縮機を用いて、TFE(47.8g/時)とPMVE(58.2g/時)との混合物を一定速度でフィードした。液体8CNVEを2.9g/時の速度でフィードした。反応の全体にわたって温度を85℃に、圧力を4.1MPa(600psi)に、およびpHを5.9に維持した。ポリマーエマルジョンを、レットダウン弁を用いて連続的に取り出し、未反応モノマーをガス抜きした。ポリマーを60℃の温度で、先ずエマルジョンの1リットル当たり8リットルの脱イオン水の比率でそれを脱イオン水で希釈し、引き続きエマルジョンの1リットル当たり320ccの硫酸マグネシウム溶液(脱イオン水の1リットル当たり100gの硫酸マグネシウム七水和物)を添加することによってエマルジョンから単離した。生じたスラリーを濾過し、1リットルのエマルジョンから得られたポリマー固形分を、8リットルの脱イオン水に60℃で再分散させた。濾過後に、湿った小片を強制エアオーブン中70℃で48時間乾燥させた。ポリマー収量は、反応器運転の1時間当たり106gであった。ポリマー組成は、48.4重量%PMVE、2.32重量%8CNVEであり、残りがテトラフルオロエチレンであった。このポリマーは、100gのFlutec(登録商標)PP−11(F2 Chemicals Ltd.(Preston,UK))中0.1gポリマーの溶液で測定されて0.85の固有粘度を有した。
【0069】
比較例1
(CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2O)2PO(OH)界面活性剤(すなわち、2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステルの製造からの副生物であるジエステル)の溶液を、この界面活性剤が加えられているときに、撹拌しながら、および、30重量%水酸化アンモニウムを使用して、絶えずpHを4.0超に調整しながら、20gのこの物質を45℃〜50℃に加熱された270mlの脱イオン(DI)水に徐々に加えることによって調製した。このホスフェート界面活性剤のすべてが加えられたとき、最終pHを6.5〜7.0に調整した。生じた溶液は均一であったが、濁っていた。合計2gのKrytox(登録商標)157 FSL PFPE界面活性剤を次に加え、温度を45℃〜50℃に維持しながら、混合物を約30分間撹拌した。この混合物は非常に濁っていた。この混合物を追加の400mlのDI水で希釈し、室温に放冷した。Krytox(登録商標)界面活性剤は分離し、ゼラチン状の塊を形成するように見えた。したがって、この混合物は、フルオロエラストマー重合反応に使用できないと考えられた。
【0070】
実施例3
水溶液を、27リットルの脱イオンした脱酸素水、34.0gの2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸(H(CF26−CH2O−PO(OH)2)、30.0gのリン酸二ナトリウム七水和物、および3gの水酸化アンモニウムで調製した。この溶液から、25リットルを40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。窒素でパージすることによって微量の酸素を除去した後、反応器を4.0重量%フッ化ビニリデン(VF2)、86.0重量%ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および10.0重量%テトラフルオロエチレン(TFE)の2101グラムの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に、1重量%過硫酸アンモニウムおよび5重量%リン酸二ナトリウム七水和物の50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始させた。反応器圧力が低下したとき、35.0重量%フッ化ビニリデン、37.0重量%ヘキサフルオロプロピレン、および28.0重量%テトラフルオロエチレンの混合物を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。45gのこの追加のモノマー混合物をフィードした後、37.29モル%1,4−ジヨードパーフルオロブタン、46.38モル%1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、11.98モル%1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、および3.76モル%1,10−ジヨードパーフルオロデカンの26.0gの混合物を反応器に装入した。追加の開始剤溶液を加えて重合速度を維持した。3700gのモノマー混合物を加えた後、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)を、3000gモノマー当たり14.5gのITFBのフィード比率で反応器に導入した。合計174mlの開始剤溶液、20.4gのITFBおよび18.0時間に相当する、合計8333gの追加のガス状モノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧に下げた。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.5重量%の固形分、3.24のpH、およびBI−9000 Particle Size Analyzer、Brookhaven Instruments Corporationによって測定されて、500nmの平均粒径を有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。このフルオロエラストマーは、0.41dl/g(0.1gポリマー/100gのメチルエチルケトンの溶液において30℃で測定されて)の固有粘度、55.9のムーニー(Mooney)粘度、121℃でのML(1+10)を有し、33.8重量%VF2、37.5重量%HFP、28.6重量%TFEおよび0.245重量%Iを含有した。
【0071】
実施例4
水溶液を、27リットルの脱イオンした脱酸素水、108.0gの2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸、30.0gのリン酸二ナトリウム七水和物、および21gの水酸化アンモニウムで調製した。この溶液から、25リットルを40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。窒素でパージすることによって微量の酸素を除去した後、反応器を4.0重量%フッ化ビニリデン(VF2)、86.0重量%ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および10.0重量%テトラフルオロエチレン(TFE)の2101グラムの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に、1重量%過硫酸アンモニウムおよび5重量%リン酸二ナトリウム七水和物の50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始させた。反応器圧力が低下したとき、35.0重量%フッ化ビニリデン、37.0重量%ヘキサフルオロプロピレン、および28.0重量%テトラフルオロエチレンの混合物を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。45gのこの追加のモノマー混合物をフィードした後、37.29モル%1,4−ジヨードパーフルオロブタン、46.38モル%1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、11.98モル%1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、および3.76モル%1,10−ジヨードパーフルオロデカンの26.0gの混合物を反応器に装入した。追加の開始剤溶液を加えて重合速度を維持した。3700gのモノマー混合物を加えた後、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)を、3000gモノマー当たり14.5gのITFBのフィード比率で反応器に導入した。合計149mlの開始剤溶液、20.4gのITFBおよび16.5時間に相当する、合計8333gの追加のガス状モノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧に下げた。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.5重量%の固形分、3.41のpH、およびBI−9000 Particle Size Analyzer、Brookhaven Instruments Corporationによって測定されて、363nmの平均粒径を有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。このフルオロエラストマーは、0.42dl/g(0.1gポリマー/100gのメチルエチルケトンの溶液において30℃で測定されて)の固有粘度、56.0のムーニー粘度、121℃でのML(1+10)を有し、34.0重量%VF2、36.4重量%HFP、29.4重量%TFEおよび0.230重量%Iを含有した。
【0072】
実施例5
水溶液を、27リットルの脱イオンした脱酸素水、81.0gのCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2、14gの水酸化アンモニウム、および30.0gのリン酸二ナトリウム七水和物で調製した。この溶液から、25リットルを40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。微量の酸素を除去した後、反応器を4.0重量%フッ化ビニリデン(VF2)、86.0重量%ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および10.0重量%テトラフルオロエチレン(TFE)の2445グラムの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に、1重量%過硫酸アンモニウムおよび5重量%リン酸二ナトリウム七水和物の50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始させた。反応器圧力が低下したとき、35.0重量%フッ化ビニリデン、37.0重量%ヘキサフルオロプロピレン、および28.0重量%テトラフルオロエチレンの混合物(追加モノマーフィード)を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。45gのこの追加のモノマー混合物をフィードした後、37.29モル%1,4−ジヨードパーフルオロブタン、46.38モル%1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、11.98モル%1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、および3.76モル%1,10−ジヨードパーフルオロデカンの25.0gの混合物を反応器に装入した。追加の開始剤溶液を加えて重合速度を維持した。3700gの追加のモノマー混合物を加えた後、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)を、3000gモノマー当たり14.5gのITFBのフィード比率で反応器に導入した。合計263mlの開始剤溶液、20.4gのITFBおよび15時間の経過時間に相当する、合計8333gの追加のモノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧に下げた。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.1重量%の固形分、および3.47のpHを有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。このフルオロエラストマーは、0.46dl/gの固有粘度、64.7のムーニー粘度、121℃でのML(1+10)を有し、36.4重量%VF2、35.4重量%HFP、28.2重量%TFEおよび0.215重量%Iを含有した。
【0073】
実施例6
テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、およびパーフルオロ−8(シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8CNVE)の共重合モノマーを含有するパーフルオロエラストマーを次の通り製造した:3つの水性流れをそれぞれ、81立方センチメートル/時(cc/時)の速度で1リットルの機械撹拌される、水ジャケット付きの、ステンレススチールオートクレーブに連続的にフィードした。第1流れは、脱気した脱イオン水の1リットル当たり1.13gの過硫酸アンモニウムおよび29.67gのリン酸水素二ナトリウムからなった。第2流れは、脱気した脱イオン水の1リットル当たり89.66gのCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2からなった。第3流れは、脱気した脱イオン水の1リットル当たり1.13gの過硫酸アンモニウムからなった。ダイアフラム圧縮機を用いて、TFE(56.3g/時)とPMVE(68.6g/時)との混合物を一定速度でフィードした。反応の全体にわたって温度を85℃に、圧力を4.1MPa(600psi)に、およびpHを4.9に維持した。ポリマーエマルジョンを、レットダウン弁を用いて連続的に取り出し、未反応モノマーをガス抜きした。ポリマーを60℃の温度で、先ずエマルジョンの1リットル当たり8リットルの脱イオン水の比率でそれを脱イオン水で希釈し、引き続きエマルジョンの1リットル当たり320ccの硫酸マグネシウム溶液(脱イオン水の1リットル当たり100gの硫酸マグネシウム七水和物)を添加することによってエマルジョンから単離した。生じたスラリーを濾過し、1リットルのエマルジョンから得られたポリマー固形分を、8リットルの脱イオン水に60℃で再分散させた。濾過後に、湿った小片を強制エアオーブン中70℃で48時間乾燥させた。ポリマー収量は、反応器運転の1時間当たり124gであった。ポリマー組成は、48.8重量%PMVE、2.61重量%8CNVEであり、残りがテトラフルオロエチレンであった。このポリマーは、30℃で100gのFLUTECTMPP11パーフルオロカーボン流体(F2 Chemicals Ltd.(Preston,UK))中0.1gのポリマーの溶液で測定されて0.81の固有粘度を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択される第1モノマーを、開始剤および少なくとも1つの分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つの異なるモノマーと重合させてフルオロエラストマーの水性分散系を得る工程を含む、フルオロエラストマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法。
【請求項2】
前記分散剤が、式CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散剤が、CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2およびCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)(ONH4)からなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散剤が、式H−(CF26−CH2−O−P(O)(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分散剤が、式F−(CF25−CH2−O−P(O)(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの異なるモノマーが、フルオロモノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロエラストマーが、i)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xii)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル);xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)および4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xvi)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル;ならびにxvii)テトラフルオロエチレンおよびプロピレンからなる群から選択される共重合単位を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の分散剤の導入をさらに含む請求項1に記載の乳化重合法であって、前記第2の分散剤がカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである乳化重合法。
【請求項9】
式CF3CF2CF2OCF(CF3)(CH2nOPO(OM)2(式中、nは1または2であり、Mは一価のカチオンである)を有する分散剤。
【請求項10】
CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2およびCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)(ONH4)からなる群から選択される式を有する請求項9に記載の分散剤。

【公表番号】特表2011−510159(P2011−510159A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544387(P2010−544387)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/031472
【国際公開番号】WO2009/094344
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】