説明

フルオロエラストマー層をシリコーンゴム層に接合する方法、その方法に使用される積層体、およびそれより製造された物品

本発明は、フルオロエラストマー層をシリコーンゴム層に接合する方法であって、(i)(a)脱フッ化水素によって反応部位を形成することができるフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)前記反応部位との反応によって前記フルオロポリマーを架橋させることができる硬化剤と、(d)過酸化物とを含む硬化性フルオロポリマー組成物の層を提供するステップと;(ii)前記硬化性フルオロポリマー組成物の前記層を、シリコーン樹脂と過酸化物とを含む硬化性シリコーン層と接触させるステップと;(a)前記フルオロポリマーの脱フッ化水素および前記フルオロポリマー層の架橋と、(b)前記シリコーン樹脂の架橋とを引き起こすのに十分な条件において互いに接触させながら前記層を硬化させるステップとを含み、前記硬化が、前記フルオロポリマーの前記反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基を有する有機化合物、または前記求核性基の前駆体と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを有する有機化合物からなる群より選択される接着促進剤の存在下で実施され、前記接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中および/または前記硬化性シリコーン層中に存在する方法を提供する。上記方法に使用するための積層体、および上記方法を使用して得ることができる物品もさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロエラストマー層をシリコーンゴム層に接合する方法に関する。特に、本発明は、フルオロエラストマー層を製造するための組成物中、および/またはシリコーンゴム層を製造するための組成物中での特定の接着促進剤の使用に関する。本発明は、上記方法に使用するための積層体、および上記方法を使用して製造された物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、すなわちフッ素化主鎖を有するポリマーの有益な性質は、当技術分野においてよく知られており、たとえば、高い耐熱性、溶媒、燃料、および腐食性化学物質に対する高い抵抗性などの高い耐薬品性、ならびに難燃性が挙げられる。これらの有益な性質のため、フルオロポリマーは、特に、高温および/または化学物質に材料が曝露される場合に広い用途が見いだされている。フルオロエラストマーは、フルオロポリマーの硬化または加硫によって得ることができる。一般に、フルオロエラストマーを製造するためのフルオロポリマーは、通常は非晶質ポリマーである。
【0003】
燃料に対する抵抗性が優れており、さらにフルオロポリマーによって良好な遮蔽性が得られるため、フルオロエラストマーは、たとえば自動車または他の自動車両中の燃料タンク、給油ライン、および燃料供給ラインなどの燃料管理システム中に使用される。さらに、フルオロエラストマーは、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース中にも使用することができる。圧縮空気が高温のため、エチレンアクリル系エラストマーやシリコーンエラストマーなどの非フッ素エラストマーはこのようなホースに使用することができない。
【0004】
フルオロポリマーは一般に非フッ素ポリマーよりも高価であり、そのため、物品全体のコストを削減するためにフルオロポリマーを他の材料と併用する材料が開発されている。たとえば、ターボエンジン中に使用される前述のホースにおいては、ホースの外層がシリコーンエラストマーなどの非フッ素エラストマーである多層ホースの内層としてフルオロエラストマーの比較的薄い層を使用することが提案されている。このような多層ホースにおいては、フルオロポリマー層がホースの他の層と堅固かつ確実に接合することが必要である。残念ながら、フルオロエラストマー層の他の基材への接合は困難であることが多く、特にシリコーンエラストマーへの接合は困難であることが分かっている。ある場合では特定のフルオロエラストマー組成物が良好な接合性を示しうるが、別の場合には十分な接合性を得ることができないような種々のシリコーン組成物が存在するため、このことがさらに複雑化している。
【0005】
フルオロポリマー層を含む多層物品が使用されるさらに別の用途は、普通紙コピー機の定着部材中における用途である。このような定着部材は、典型的には、伝導性粒子も含むことができるフルオロエラストマー表面層に接合される熱伝導性シリコーンエラストマーを有する。このような定着部材は、たとえば(特許文献1)に開示されている。この米国特許には、接着剤層を中間に使用してシリコーンエラストマーがフルオロエラストマーに接合される多層定着部材が記載されている。このような定着部材の製造は残念ながら扱いが困難となる。同様の系が、(特許文献2)、(特許文献3)、および(特許文献4)に記載されている。
【0006】
フルオロエラストマーは、種々の硬化機構によって得ることができる。たとえば、ある方法においては、フルオロポリマー層の硬化は、いわゆる過酸化物硬化反応によって行うことができ、この場合、フルオロポリマーが、臭素またはヨウ素などの1種類以上のハロゲンを硬化部位として含み、これらの硬化部位が有機過酸化物と反応し、それによってフルオロポリマーの間に三次元網目構造が形成され、それによってフルオロエラストマーが得られる。フルオロポリマーを硬化させてフルオロエラストマーを得る別の方法は、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーの使用を伴う。フルオロポリマーの脱フッ化水素は、脱フッ化水素剤を使用して行うことができ、それによって形成された反応部位が好適な硬化剤とさらに反応することで、フルオロポリマーを加硫させることができる。後者の方法は、この方法に使用されるフルオロポリマーが前者の方法に使用されるフルオロポリマーよりも一般に安価であるため、一般に費用対効果がより大きい。脱フッ化水素の硬化機構に基づくフルオロエラストマーはシリコーンゴムとの接合がより困難となることも分かっている。
【0007】
フルオロエラストマーのシリコーンエラストマーへの接合の問題を解決するため、フルオロエラストマー層とシリコーンエラストマー層との間の結合層が提案されているが、これはコストが増大し、製造がより複雑になる。
【0008】
(特許文献5)には、(a)脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)ポリヒドロキシ化合物などの硬化剤と、(d)トリアリルイソシアヌレートなどの助剤と、(e)過酸化物とを含む組成物を接触させることによって、フルオロエラストマー層のシリコーンゴムへの改善された接合を得ることができると開示されている。シリコーンゴム層に対する良好な接合強度が開示されている。
【0009】
(特許文献6)には、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤の、フッ化ビニリデンコポリマーを主成分とするフルオロエラストマーへの添加が開示されている。金属、セラミックス、コンクリート、および天然または合成樹脂などの種々の基材に対する改善された接合が教示されている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,217,837号明細書
【特許文献2】米国特許第6,020,038号明細書
【特許文献3】米国特許第6,096,429号明細書
【特許文献4】米国特許第6,224,978号明細書
【特許文献5】国際公開第00/13891号パンフレット
【特許文献6】特開平7−034060号公報
【特許文献7】米国特許第4,335,238号明細書
【特許文献8】米国特許第4,233,421号明細書
【特許文献9】米国特許第4,912,171号明細書
【特許文献10】米国特許第5,086,123号明細書
【特許文献11】米国特許第5,262,490号明細書
【特許文献12】米国特許第5,929,169号明細書
【特許文献13】米国特許第5,591,804号明細書
【特許文献14】米国特許第3,876,654号明細書
【特許文献15】EPA 0 661 304 A1号明細書
【特許文献16】EPA 0 784 064 A1号明細書
【特許文献17】EPA 0 769 521 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在では、フルオロエラストマー、特にその硬化が脱フッ化水素に基づくフルオロエラストマーの、シリコーンゴムに対する改善された接合のさらに別の方法が見いだされることが望まれている。その解決法が、費用対効果があり、簡便であり、信頼性があることが好ましい。実現される接合強度が、燃料管理システムおよびターボチャージホースなどの自動車用途において使用できるために十分な接合強度となることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様においては、本発明は、フルオロエラストマー層をシリコーンゴム層に接合する方法であって、
(i)(a)脱フッ化水素によって反応部位を形成することができるフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)前記反応部位との反応によって前記フルオロポリマーを架橋させることができる硬化剤と、(d)過酸化物とを含む硬化性フルオロポリマー組成物の層を提供するステップと;
(ii)前記硬化性フルオロポリマー組成物の前記層を、シリコーン樹脂と過酸化物とを含む硬化性シリコーン層と接触させるステップと;
(a)前記フルオロポリマーの脱フッ化水素および前記フルオロポリマー層の架橋と、(b)前記シリコーン樹脂の架橋とを引き起こすのに十分な条件において互いに接触させながら前記層を硬化させるステップとを含み、前記硬化が、前記フルオロポリマーの前記反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基を有する有機化合物、または前記求核性基の前駆体と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを有する有機化合物からなる群より選択される接着促進剤の存在下で実施され、前記接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中および/または前記硬化性シリコーン層中に存在する方法を提供する。
【0013】
別の態様においては、本発明は、前述の方法と関連して使用することができる積層体を提供する。この積層体は、(i)(a)脱フッ化水素によって反応部位を形成することができるフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)前記反応部位との反応によって前記フルオロポリマーを架橋させることができる硬化剤と、(d)過酸化物とを含む硬化性フルオロポリマー組成物の層と、(ii)硬化性フルオロポリマー組成物の前記層と直接接触する、シリコーン樹脂と過酸化物とを含む硬化性シリコーン層と、(iii)硬化性フルオロポリマー組成物の前記層中および/または前記硬化性シリコーン層中に含まれる接着促進剤とを含み、前記接着促進剤は、前記フルオロポリマーの前記反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基を有する有機化合物、または前記求核性基の前駆体と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを有する有機化合物からなる群より選択される。
【0014】
本発明のさらに別の態様においては、前述の方法によって得ることができる物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
接着促進剤
本発明によると、フルオロエラストマー層を形成するための硬化性フルオロポリマー組成物中および/または硬化性シリコーン層のための組成物中に接着促進剤が含まれる。この接着促進剤は、フルオロポリマーの脱フッ化水素によって生成されるフルオロポリマー反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを含有する有機化合物である。求核性基の代わりに、この有機化合物はその前駆体を含んでもよい。したがって、接着促進剤は、1つ以上の求核性基および/またはその前駆体、たとえば加水分解性基を有するシロキシ基、および1つ以上のエチレン系不飽和基を有する有機化合物であってよいし、または接着促進剤は、1つ以上の求核性基、および少なくとも1つの加水分解性基を有する1つ以上のシロキシ基を有する有機化合物であってもよい。接着促進剤の混合物も使用することができる。
【0016】
加えるべき接着促進剤の量は、一般に、接着促進剤、および促進剤が加えられる組成物の他の成分の性質に依存する。好適な量は通常の実験によって容易に決定することができる。硬化性フルオロポリマー組成物に加えられる場合の接着促進剤の典型的な量は、0.75〜15重量%の間であり、好ましくは2〜6重量%の間である。硬化性シリコーン層に加えられる場合、接着促進剤は、一般に0.1〜2重量%の量、好ましくは0.25〜0.75重量%の間の量で使用される。
【0017】
一実施態様によると、接着促進剤は、シロキサン化合物、すなわち1つ以上のシロキシ基を有する化合物である。接着促進剤として使用すると好適なシロキサン化合物は、フルオロポリマーの脱フッ化水素によって形成される反応部位と反応することができる求核性基(またはその前駆体)を含む。特に好適な求核性基としては、ヒドロキシ基およびアミノ基が挙げられる。求核性基の好適な前駆体は、使用される硬化条件下で求核性基を生成することができる基であってよく、たとえば加水分解性基を有するシロキシ基は、ヒドロキシ基の前駆体として使用することができる。求核性基またはその前駆体以外に、シロキサン化合物は、1つ以上のエチレン系不飽和基も有する、またはこれとは別に1つ以上の加水分解性基を有する1つ以上のシロキシ基を有する。したがって、一実施態様においては、シロキサン化合物は、それぞれ少なくとも1つの加水分解性基を有する2つ以上のシロキシ基を含むことができる。このようなシロキサン化合物においては、シロキシ基の1つは、フルオロポリマーと反応する求核性基の前駆体として機能することができ、他方のシロキシ基は硬化中に、硬化性シリコーン層中のシリコーン樹脂と反応することができる。シロキシ基の好適な加水分解性基としては、アルコキシ基、アセチル基、およびアリールオキシ基が挙げられる。特に好ましい加水分解性基はメトキシ基、エトキシ基、およびプロポキシ基などのC1〜C4アルコキシ基である。
【0018】
シロキサン化合物は、単純な低分子量有機化合物であってもよいし、または、たとえば直鎖状、分枝状、または環状であってよいポリシロキサンなどのポリマー化合物であってもよい。
【0019】
本発明における接着促進剤として使用される単純な低分子量シロキサン化合物の例としては、以下の一般式:
(Z)i−Q−[Si(R1x3-xj (I)
で表すことができる化合物が挙げられ、上式中、Zは、OHまたはNHRを表し、Rは、水素、または1〜4個のC原子を有することが好ましいアルキル基などの炭化水素基を表し、Qは、1つ以上のヘテロ原子、あるいはエステル基、アミド基、またはカルボニル基などの官能基、あるいはハロゲンを含むことができる脂肪族または芳香族炭化水素基などの有機多価結合基を表している。結合基Qの例としては、アルキレン基およびアリーレン基が挙げられる。iおよびjは、1、2、または3の整数であり、好ましくはそれぞれが1である。指数xは、0、1、または2の整数であり、Yは、前述したような加水分解性基を表しており、R1は、アルキル基またはアリール基などの炭化水素基である。
【0020】
前出の式(I)による化合物の例としては:
2N−(CH23−Si(OC253
2N−(CH23−Si(OCH33
HO−(CH24−Si(OCH32(C25
2N−(CH24−Si(OC253
2N−(CH22−NH−CH2−CH(CH3)−CH2−Si(OCH33
2N−(CH22−NH−(CH22−Si(CH3)(OCH32
2N−(CH22−NH−(CH23−Si(OCH33
2N−(CH26−NH−(CH23−Si(OCH33
2N−m−C64−O−(CH23−Si(OCH33
2N−m−C64−Si(OCH33
2N−p−C64−Si(OCH33
が挙げられる。
【0021】
接着促進剤として使用するための単純な低分子量シロキサン化合物のさらに別の例としては、次式:
E−Q1−Si(R2s13-s (II)
による化合物があげられ、上式中、Eは、エチレン系不飽和基であり、Q1は、有機二価結合基または化学結合でありR2は、アルキル基またはアリール基などの炭化水素基を表し、Y1は加水分解性基を表し、sは0、1、または2である。Q1は一般に、直鎖状または分枝状または環状の炭化水素基を含み、この炭化水素基は、芳香族または脂肪族であってよく、1つ以上のヘテロ原子、あるいはエステル基、アミド基、またはカルボニル基などの官能基、あるいはハロゲンを含むことができる。
【0022】
式(II)による接着促進剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0023】
シロキサン化合物はオリゴマーまたはポリマーのシロキサンであってもよい。たとえば、本発明に使用するためのポリシロキサンとしては、式:
【化3】


(III)
に対応するポリシロキサンが挙げられ、上式中、R312はそれぞれ独立に、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、NHRを表し、Rは、1〜4個の炭素原子を有することが好ましいアルキル基などの直鎖状、分枝状、環状の飽和および不飽和炭化水素基などの炭化水素基を表し;但し、R312の少なくとも1つが、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、およびNHRから選択される基であり、R312の少なくとも1つが、エチレン系不飽和基を含有する炭化水素基である。好ましくは、R3、R4、R5およびR12の少なくとも1つが、ビニル基などのエチレン系不飽和基を含有する炭化水素基である。vおよびwはそれぞれ独立に0〜20の値を有する。
【0024】
上の式(III)による特に好ましいポリシロキサンとしては、vが0〜20の値を有し、wが0であり、R3、R11、およびR8がそれぞれ独立にビニル基またはアリル基を表し、R6、R7、R9、R10、およびR12がそれぞれ独立に加水分解性基、特にアルコキシ基を表すポリシロキサンが挙げられる。
【0025】
最良の結果を得るためには、式(III)による接着促進剤は、好ましくは硬化性フルオロポリマー組成物に加えられ、一方、式(I)および(II)による接着促進剤は、好ましくは硬化性シリコーン樹脂層組成物に加えられる。
【0026】
市販されている式(III)による化合物の例としては、レーマン・アンド・ボス(Lehmann & Voss)より入手可能なビニルシラン6490 DL70およびビニルシラン6498 DL 70が挙げられる。
【0027】
さらに、接着促進剤は、1つ以上のアミノ基またはヒドロキシ基と、1つ以上のエチレン系不飽和基とを有する有機化合物であってもよい。このような化合物としては、式:
(E)n−Q3−Gm (IV)
に対応する化合物が挙げられ、上式中、Eはエチレン系不飽和基を表し、nは1〜5の整数であり、典型的には1、2、または3であり、Q3は、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシ基、アミド基、またはエステルなどの官能基で置換されていてもよく、酸素または窒素などの1つ以上のヘテロ原子で中断されていてもよい直鎖状、分枝状、または環状の飽和または不飽和炭化水素基を含む有機多価結合基であり、Gは、ヒドロキシ基、NH2、またはNHRを表し、Rはアルキル基などの炭化水素基を表し、およびmは1〜5の整数であり、典型的には1、2、または3である。基Q3の特定の例としては、フェニル基およびナフチル基などの芳香族基、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン基などの飽和炭化水素、アルキレン基およびアリーレン基の組み合わせが挙げられる。式(IV)による化合物の特定の例としては、次の化合物:2,2’−ジアリルビスフェノールA、7−オクテン−1,2,−ジオール、p−ビニルアニリン、ジアリルアミン、3−アミノプロピルビニルエーテルが挙げられる。式(IV)による接着促進剤は、硬化性シリコーン樹脂層に加えた場合に最良の結果が得られる。
【0028】
上述の接着促進剤は、液体または油状の形態で存在しうる。接着促進剤が液体または油状物質である場合、フルオロポリマーまたはシリコーン樹脂組成物と混合する前に、その化合物を担体上に吸着させることが一般に好ましい。好適な担体は、接着促進剤を吸着することができる一般に固体の担体である。典型的には、好適な担体は、カーボンブラックまたは無機粒子を含み、たとえばシリケート、硫酸バリウム、クレー、カーボネート、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化鉄、および酸化チタンなどの酸化物を含む。さらに、使用することができる担体としては、ポリマー粉末、たとえばポリテトラフルオロエチレン粉末などの有機担体粒子が挙げられる。接着促進剤を担体上に充填するために、接着促進剤が上に吸着されるように、担体を接着促進剤と混合する。担体が接着促進剤で十分に飽和していること、すなわち化合物がこれ以上吸着されなくなるまで化合物が担体に加えられていることが工業的に最も好都合である。担体上に吸着した、たとえばカーボンブラックまたは無機粒子上に吸着した接着促進剤は、続いてフルオロポリマー組成物中またはシリコーン樹脂組成物中に容易に混入することができる。
【0029】
フルオロポリマー
フルオロエラストマー層を形成するための組成物は、脱フッ化水素が可能な少なくとも1種類のフルオロポリマーを含む。一般に、フルオロポリマーは非晶質または実質的に非晶質でもあり、すなわち有意な融点を示さない。一般に、フルオロポリマーは、塩基に曝露されると容易に脱フッ化水素し、典型的には、一般に炭素が結合したフッ素原子の間に炭素が結合した水素原子のポリマー主鎖中に微細構造を有し、これが反応部位を形成する。炭素が結合した水素の脱フッ化水素における反応性は、その炭素原子が、炭素が結合した−CF3基(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)または2−ヒドロペンタフルオロプロピレンによって供給される)または他の電子吸引基を有する炭素原子と隣接する、またはこれと結合する場合に、さらに増加する。好ましくは、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーは、フッ化ビニリデン(「VF2」または「VDF」)から誘導されるか、重合した場合に重合フッ化ビニリデンと類似のモノマー配列を形成する他のモノマーから誘導されるフルオロポリマーである。このような他のモノマーの例としては、フルオロポリマー中に組み込まれた場合に、重合VDFと類似(同一を含む)のポリマー微細構造を生成することができるエチレン系不飽和モノマーが挙げられる。このようなポリマーは、脱フッ化水素も起こりやすく、それによって、後により詳細に説明するように、硬化剤と反応することができる反応部位を形成して、フルオロポリマーの架橋を引き起こし、それによってフルオロエラストマーが形成される。脱フッ化水素が可能なフルオロポリマー中の部位の形成に好適なモノマーとしては、VDF、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、およびトリフルオロエチレンが挙げられる。
【0030】
フルオロポリマーの脱フッ化水素は、典型的には積層体の硬化中に起こり、すなわち反応部位、典型的にはフルオロポリマーの主鎖内部の二重結合がその場で形成される。脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーは一般に、VDFまたは重合する場合に類似の反応性を有する他のモノマーから誘導される少なくとも3重量%の共重合単位を含む。他のエチレン系不飽和モノマーを有するホモポリマーまたはコポリマーを使用することもできる。より好ましくは、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーは、(i)フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、2−ヒドロペンタフルオロプロピレン、それらの混合物の群より選択されるフッ素含有モノマーと、場合によりそれと共重合可能な1種類以上のモノマーとから形成される。典型的には、フルオロポリマーは、VDF、および1つ以上のフッ素含有モノマー、たとえばヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2−クロロペンタフルオロプロペン、フッ素化ビニルエーテル、たとえばCF3OCF=CF2またはCF3CF2CF2OCF=CF2などのパーフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される単位を含む。パーフルオロジアリルエーテルおよびパーフルオロ−1,3−ブタジエンなどのある種のフッ素含有ジ−オレフィンも有用である。さらに好適なコモノマーとしては、不飽和オレフィンコモノマー、たとえば、エチレン、プロピレン、またはブタジエンなどの非フッ素化モノマーが挙げられる。好ましくは、重合性混合物中の全モノマーの少なくとも50重量%がフッ素を含有する。特定の一実施態様においては、フルオロポリマーが、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンコポリマーを含む。
【0031】
脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーは、ヨウ素または臭素を含有する不飽和オレフィンモノマーから誘導される単位も含むことができる。これらのモノマーは、硬化部位モノマーと呼ばれることもあり、過酸化物硬化性ポリマーの調製に有用である。好適な硬化部位モノマーとしては、2〜4個の炭素原子の末端不飽和モノオレフィン、たとえば、ブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテンが挙げられる。
【0032】
フルオロポリマーは、モノマーのフリーラジカル重合などによる公知の従来手段によって調製することができる。このようなポリマーおよびコポリマーのコロイド水性分散液の調製が、たとえば、(特許文献7)(ムーア(Moore)ら)に記載されている。このようなフルオロポリマーの従来の調製方法としては、水性コロイド分散液中でのフッ素化オレフィンの共重合を挙げることができ、これは、たとえば、アンモニウムまたはアルカリ金属過硫酸塩、あるいはまたはアルカリ金属過マンガン酸塩などのフリーラジカルを生成する水溶性開始剤の存在下、およびパーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などの乳化剤の存在下で行われる。
【0033】
フルオロエラストマー層を形成するための組成物は、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーと混合して、脱フッ化水素ができない1種類以上のフルオロポリマーをさらに含むことができる。一般に、過半量(フルオロポリマーの全重量を基準にして、たとえば少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%)が、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーで構成されるべきである。好ましくは、脱フッ化水素ができないフルオロポリマーは、別の硬化機構、たとえば過酸化物硬化機構によって架橋可能となるべきである。したがって、脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーを、硬化部位モノマー、特に、前述のような臭素原子またはヨウ素原子を有する硬化部位モノマーから誘導される単位を含む1種類以上のフルオロポリマーと併用することができる。
【0034】
脱フッ化水素剤
脱フッ化水素が可能なフルオロポリマーは、脱フッ化水素剤を使用して脱フッ化水素することができる。典型的には、脱フッ化水素剤は、積層体の硬化に必要な条件下でフルオロポリマーを脱フッ化水素することができる。好都合には、脱フッ化水素剤によってフルオロポリマー主鎖中に二重結合が形成される。
【0035】
脱フッ化水素剤として有用な材料の例としては、1,8ジアザ[5.4.0]ビシクロウンデカ−7−エン(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)などの有機オニウムおよび塩基が挙げられる。本発明において有用な有機オニウム化合物の多くは当技術分野において開示され、公知となっている。たとえば、(特許文献8)(ウォルム(Worm))、(特許文献9)(グルータート(Grootaert)ら)、(特許文献10)(グントナー(Guenthner)ら)、および(特許文献11)(コルブ(Kolb)ら)、(特許文献12)を参照することができ、これらすべての記載内容を本明細書に援用する。代表例としては、以下に記載される個々の化合物およびそれらの混合物が挙げられる:
塩化トリフェニルベンジルホスホニウム
塩化トリブチルアリルホスホニウム
塩化トリブチルベンジルアンモニウム
臭化テトラブチルアンモニウム
塩化トリアリールスルホニウム
塩化8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウム
塩化ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム
塩化ベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウム。
他の有用な有機オニウム化合物の種類としては、1つ以上のペンダントフッ素化アルキル基を有する有機オニウム化合物が挙げられる。フッ素化オニウム化合物の例は、(特許文献13)に開示されている。好ましい脱フッ化水素剤としては、塩化トリブチル(2−メトキシ)−プロピルホスホニウム、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、塩化トリブチル(2−メトキシ)−ホスホニウムとビスフェノールAFとの複合体、およびDBUが挙げられる。希望するなら複数の脱フッ化水素剤の組み合わせを使用することもできる。
【0036】
脱フッ化水素剤は、一般に有効量で使用すべきである。有効量は、フルオロポリマーを硬化させ、フルオロポリマーをシリコーンポリマーに結合させるために必要な脱フッ化水素剤の量である。使用される脱フッ化水素剤の厳密な量は、使用されるフルオロポリマーおよび使用される他の添加剤の反応性に依存し、通常の実験を使用して容易に決定することができる。これらの要因の範囲内で、脱フッ化水素剤の有効量は、一般にフルオロポリマー100部当たり0.01〜20部である。好ましい添加量は、100部当たり0.1〜5部である。
【0037】
硬化剤
フルオロエラストマー層を得るためのフルオロポリマー組成物中に使用される硬化剤は、積層体を硬化させる条件下でフルオロポリマーの脱フッ化水素によって形成される反応部位と反応し、それによってフルオロポリマー鎖の間に架橋を形成することができる化合物である。一般に、この硬化剤は、フルオロポリマーの反応部位と反応することができる複数の求核性基を含む。典型的には、硬化剤はエチレン系不飽和基を含有しない。好適な硬化剤としては、当技術分野で公知のものが挙げられ、特に、ポリヒドロキシ化合物またはその誘導体、有機ポリアミンまたはその誘導体、およびフルオロ脂肪族ポリオール、および芳香族ポリヒドロキシ化合物のカーボネートが挙げられる。好ましい硬化剤の種類としては、ポリヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0038】
ポリヒドロキシ化合物は、遊離形態または非塩形態で使用することができるし、あるいは有機オニウムの陰イオン部分として使用することができる。有機オニウム化合物とポリヒドロキシ化合物との組み合わせが特に好ましく、脱フッ化水素剤として機能できること以外に、有機オニウムが硬化剤(架橋剤)としてポリヒドロキシ化合物を伴う架橋反応を促進することもできる。架橋剤は、フルオロエラストマーの架橋剤または共硬化剤として機能する当技術分野のあらゆるポリヒドロキシ化合物であってよく、たとえば(特許文献14)(パティソン(Pattison))、および(特許文献8)(ウォルム(Worm))に開示されるポリヒドロキシ化合物であってよい。代表的な芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、ジ−、トリ−、およびテトラヒドロキシベンゼン類、ナフタレン類、およびアントラセン類、ならびに次式:
【化4】


のビスフェノールのいずれか1つが挙げられ、上式中、Aは、1〜13個の炭素原子の二官能性の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基、あるいはチオ基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、またはスルホニル基であり、Aは場合によっては、少なくとも1つの塩素原子またはフッ素原子で置換されており、xは0または1であり、nは1または2であり、ポリヒドロキシ化合物のあらゆる芳香環は、場合によっては、塩素、フッ素、臭素の少なくとも1つの原子、あるいはカルボキシル基またはアシル基(たとえば、−−COR、式中のRは、H、あるいはC1〜C8アルキル基、アリール基、またはシクロアルキル基)、またはたとえば1〜8個の炭素原子を有するアルキル基で置換されている。上記のビスフェノールの式より、いずれの環においても−−OH基はあらゆる位置(1位以外)に結合できることが理解できるであろう。これらの化合物の2種類以上の混合物も使用される。最も有用であり一般的に使用される上式の芳香族ポリフェノールの1つが4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデニルビスフェノールであり、より一般的にはビスフェノールAFとして知られている。化合物4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSとも呼ばれる)および4,4’−イソプロピリデニルビスフェノール(ビスフェノールAとも呼ばれる)も実際に広く使用されている。
【0039】
硬化剤または架橋剤は、一般にフルオロポリマー100重量部当たり0.2〜10重量部の量で使用されている。
【0040】
過酸化物
フルオロポリマー組成物は、過酸化物、典型的には有機過酸化物をさらに含む。好適な有機過酸化物は、硬化温度においてフリーラジカルを発生する有機過酸化物である。50℃よりも高温で分解する過酸化ジアルキルまたはビス(過酸化ジアルキル)が特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素と結合した第3級炭素原子を有する過酸化ジ−tert−ブチルを使用することが好ましい。特に、この種類の最も有用な過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。その他の過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸tert−ブチル、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネートなどの化合物から選択することができる。一般に、フルオロポリマー100部当たり約0.1〜10部の過酸化物が使用される。
【0041】
任意選択の添加剤
硬化性フルオロポリマー組成物は、系をさらに最適化するため、または特定の所望の性質を得るために選択することができるさらに別の添加剤を含むことができる。硬化性フルオロポリマー組成物中に使用する特に有用な添加剤は助剤である。助剤は、公知のものであり、一般に過酸化物硬化性フルオロポリマー中に使用される。これらは複数のエチレン系不飽和基を含み、一般に、脱フッ化水素によって形成されるフルオロポリマーの反応部位と反応することができる求核性基は有さない。これらの助剤は、フルオロポリマー100部当たり0.1部と10部、好ましくはフルオロポリマー100部当たり2部と5部の間の量で加えることができる。有用な助剤の例としては、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、イソシアヌル酸トリ(メチルアリル)、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、イソシアヌル酸トリビニル、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリル−フタレート、およびシアヌル酸トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)が挙げられる。イソシアヌル酸トリアリルが特に有用である。他の有用な助剤としては、(特許文献15)、(特許文献16)および(特許文献17)に開示されるビス−オレフィンが挙げられる。本発明と関連して、特に良好な接合強度は、接着促進剤と上記の1種類以上の助剤との併用によって実現できることが分かった。
【0042】
硬化性フルオロポリマー組成物は一般に、1種類以上の酸受容体も含む。酸受容体は無機であってもよいし、または無機および有機のブレンドであってもよい。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、およびシュウ酸マグネシウムが挙げられる。好ましい酸受容体は酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムである。酸受容体は単独使用または併用が可能であり、好ましくはフルオロポリマー100重量部当たり約2〜25部の範囲の量で使用される。
【0043】
フルオロポリマー層を得るためのフルオロポリマー組成物は、フルオロポリマーの配合中に典型的に使用されるカーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤などのさらなる添加剤を含むことができ、意図する使用条件で十分な安定性を有するのであれば、本発明の組成物中に混入することができる。
【0044】
フルオロポリマー組成物は、従来のゴム加工装置中でフルオロポリマーと、記載のさらなる成分とを混合することによって調製することができる。このような装置としては、ゴム用ロール機、バンバリー(Banbury)ミキサーなどの密閉式混合機、および混合押出機が挙げられる。
【0045】
硬化性シリコーン層
硬化性シリコーン層のための組成物は、シリコーン含有ポリマーとも呼ばれるシリコーン樹脂と、シリコーン樹脂を硬化させるための過酸化物硬化剤と、場合によりシリコーン含有ポリマーの添加剤とを含む。シリコーン層に有用な過酸化物は、典型的には、シリコーンエラストマー中の硬化速度に基づいて選択される。シリコーン含有エラストマーは、一般に室温よりも高温であるが、フルオロポリマーの硬化に使用される温度よりも低温で硬化する。このようなより低い硬化温度のためには、通常、低い活性化エネルギー、すなわち、硬化剤の活性化に低い温度しか必要としない過酸化物などの硬化剤が必要となる。
【0046】
しかし本発明においては、好ましくは、シリコーンエラストマー中に使用するために選択される過酸化物硬化剤の活性化エネルギーが、フルオロポリマー成分に加えられる過酸化物の活性化エネルギー以上となるべきである。より好ましくは、選択される各過酸化物の活性化エネルギーが実質的に等しくなる。有用な過酸化物としては、フルオロポリマー層と関連して前述した過酸化物が挙げられ、特に、パーカドックス(Perkadox)(商標)、ルペルコ(Luperco)(商標)、およびトリゴノックス(Trigonox)(商標)などの商品名で市販される過酸化物が挙げられる。
【0047】
過酸化物硬化剤の有用な添加量は、硬化性シリコーン層組成物100部当たり0.1〜10部である。好ましい添加量は100部当たり0.5〜3部である。
【0048】
硬化性シリコーン層組成物は、たとえば、増量充填剤、加工助剤、酸化防止剤、および顔料などのさらなる任意選択の添加剤を含むことができ、ある性能特性を得るために一般に使用される。ヒュームドシリカは、強度特性を強化するために使用される一般的な充填剤である。使用される他の添加剤としては、沈降シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化第二鉄が挙げられる。このような添加剤は、シリコーン樹脂中にあらかじめ混合されたものが入手可能である。2本ロール機がこれらの反応性要素の一般的な添加方法であり、その理由は、このような装置は温度制御が可能であり、あるいはより重要なことは、混合過程中に発生する熱を除去できるからである。
【0049】
層を互いに接合し物品を製造する方法
フルオロポリマー層およびシリコーン層を硬化させ、これらの層を互いに接合させることは、シリコーン層上に供給したフルオロポリマー層を120℃〜200℃の温度まで1〜120分(好ましくは140℃〜180℃で3〜60分)加熱することによって行うことができる。この加熱は、同時に圧力を加えながらさらに実施することができる。物品、すなわち本発明によりシリコーンゴムに接合したフルオロポリマー層を有する多層物品は、あらゆる公知の多層物品製造方法によって製造することができる。たとえば、多層物品の層を、薄膜またはシートの形態で作製し、続いて熱、圧力、またはそれらの組み合わせを使用して互いに積層して、接合した多層物品を形成することができる。あるいは、各層を同時押出して多層物品を形成することもできる。たとえばクロスヘッドダイを使用して押出コーティングによって1つ以上の個々の層を形成することも可能である。層を互いに合わせる(たとえば押出成形または積層)ことによる方法の熱および圧力は、層の間で適切な接着性を得るために十分であってよい。しかし、得られた物品を、たとえば追加の熱、圧力、またはその両方でさらに処理して、層の間の接合強度を増加させることが望ましい場合もある。押出成形によって多層物品が製造される場合、追加の熱を供給する方法の1つは、押出工程終了時の多層物品の冷却を遅らせることである。あるいは、追加の熱エネルギーは、単に成分の加工に必要となるよりも高温で層を積層または押出成形することによって、多層物品に与えることができる。別の方法として、完成多層物品を長時間高温に維持することができる。たとえば、オーブンまたは加熱液体浴などの物品温度を上昇させる独立した装置中に完成物品を入れることができる。これらの方法の組み合わせを使用することもできる。
【0050】
フルオロポリマー層がシリコーンゴム層に接合されているいくつかの物品を本発明によって製造することができる。たとえば、一実施態様によると、物品は普通紙コピー機システムの定着部材を含むことができる。このような定着部材は、シリコーンエラストマーで覆われた金属コアを含むことができ、このシリコーンエラストマーはフルオロエラストマー定着表面層と接合している。接着促進剤を使用するため、このような定着システム中のフルオロエラストマーとシリコーン層との間に堅固な接合を得ることができ、したがって、中間接着剤層を必要とせずより便利かつ容易な方法で製造することができる。別の実施態様によると、一般に最内層としてのフルオロエラストマー層が非フッ素ゴム、特にシリコーンゴムと接合しているターボエンジン中などに使用されるホースを製造することができる。さらに、物品は燃料ホースなどの燃料管理システムの構成要素であってもよい。
【0051】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明がそれらに限定されることを意図するものではない。
【実施例】
【0052】
以下の実施例および比較例において、フルオロケミカルおよびシリコーンエラストマーの種々の複合体を作製し、フルオロポリマーとシリコーン層との間の接着性を評価した。他に明記しない限りすべてのパーセント値は重量を基準としている。
【0053】
略語
ゴム1:61.39%のフッ化ビニリデン(VDF)および38.61%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)のフルオロポリマーを含有し、約41のムーニー(Mooney)粘度を有するビスフェノール硬化性コポリマーフルオロエラストマーゴム。このゴムは、1.15phrのBF6、0.28phrのTPBPCl、および0.38phrのFOSAを含むビスフェノール硬化系をさらに含む。
ゴム2:22.3%のテトラフルロエチレン(TFE)、46.1%のVDF、および32.2%のHFPのフルオロポリマーを含有し、約30のムーニー(Mooney)粘度を有するビスフェノール硬化性ターポリマーフルオロエラストマーゴム。このゴムは、0.7phrのBF6、0.244phrのTBMPPCl、および0.422phrのFOSAを含むビスフェノール硬化系をさらに含む。さらに3phrのイソシアヌル酸トリアリル助剤を加えた。
ゴム3:61.39%のVDFおよび38.61%のHFPのフルオロポリマーを含有し、約25のムーニー(Mooney)粘度を有するビスフェノール硬化性コポリマーフルオロエラストマーゴム。このゴムは、1.12phrのBF6、0.26phrのTPBPCl、および0.34phrのFOSAを含むビスフェノール硬化系をさらに含む。
ゴム4:22.3%のTFE、46.1%のVDF、および32.2%のHFPのフルオロポリマーを含有し、約30のムーニー(Mooney)粘度を有するビスフェノール硬化性ターポリマーフルオロエラストマーゴム。このゴムは、1.46phrのBF6および0.47phrのTPBPClを含むビスフェノール硬化系をさらに含む。
ゴム5:23.12%のTFE、34.32%のVDF、および42.56%のHFPのフルオロポリマーを含有し、約37のムーニー(Mooney)粘度を有するビスフェノール硬化性ターポリマーフルオロエラストマーゴム。このゴムは、2.35phrのBF6、0.42phrのTBMPPCl、0.36phrのTPS、および0.58phrのFOSAを含むビスフェノール硬化系をさらに含む。
BF6:ビスフェノールAF
TPBPCl:塩化トリフェニルベンジルホスホニウム
TBMPPCl:塩化トリブチルメトキシプロピルホスホニウム
TPS:トリフェニルスルホニウム
FOSA:フッ素化オクチルN−メチルスルホンアミド
Ca(OH)2:水酸化カルシウム、レノフィット(Rhenofit)(商標)CF、ライン・ケミー(Rhein Chemie)。
カルナウバ蝋:フローラ(Flora)(商標)202、インターナショナル・ワックス・アンド・リファイニング・カンパニー(Int.Wax & Refining Co)
トリゴノックス(Trigonox)(商標)101−45:有機過酸化物、シリカ担体上で45%活性、アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)
TAIC 70%:トリアリル−イソシアヌレート、シリケート担体上70%、レーマン・アンド・ボス(Lehmann & Voss)
CaO:酸化カルシウム、レノフィット(Rhenofit)(商標)F、ライン・ケミー(Rhein Chemie)
MgO:酸化マグネシウム
アーミン(Armeen)(商標)18D:オクタデシルアミン、アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)
SRF N−774:半強化ファーネスカーボンブラック、デグサ(Degussa)
−TAPC:塩化トリブチルアリルホスホニウム
エアロジル(Aerosil)(商標)200V:ヒュームドシリカ、デグサ(Degussa)
MT N−990:カーボンブラック、ミディアムサーマルグレード、デグサ(Degussa)
エラストジル(Elastosil)(商標)760/70および401/70:押出グレードシリコーンエラストマー、ワッカー(Wacker)
HV4/611:VMQ、GE/バイエル(GE/Bayer)
シルクエスト(Silquest)(商標)A1100:トリエトキシアミノプロピルシラン、クロンプトン(Crompton)
ビニルシラン(Vinylsilane)6490 DL70:ビニル基およびメトキシ基を含有するオリゴシロキサン、レーマン・アンド・ボス(Lehmann & Voss)
ビニルシラン(Vinylsilane)6498 DL70:ビニル基およびメトキシ基を含有するオリゴシロキサン、レーマン・アンド・ボス(Lehmann & Voss)
シルクエスト(Silquest)(商標)A−174:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、クロンプトン(Crompton)
【0054】
2本ロール機で表1に示される化合物を混合することによって、フルオロケミカルエラストマー化合物を調製した。ゴム産業において慣習となっているように、化合物はフルオロエラストマー100重量部当たりの重量部(phr)で表している。

【0055】
【表1】

【0056】
フルオロケミカルエラストマーおよびシリコーンエラストマー(1phrのトリゴノックス(Trigonox)(商標)101−45が加えられている)のための組成物のシートの積層体を、177℃で30分間ホットプレス(アジラ(Agila)96/90)を使用して作製した。実際の積層の前に、2枚のシートの間の端部においてポリエステルフィルムの細いストリップを挿入して、接着試験装置の各ジョーに挿入するための2つのタブを形成した。室温で4時間冷却した後、積層したシートを約1〜2cmの幅に切断した。2つの層の間の接着性を、一般に「T型剥離」試験として知られるASTM D−1876に従い、インストロン(Instron)(商標)機械的試験機を使用して評価した。クロスヘッド速度は50mm/分であった。報告される結果は、少なくとも3つの試験片の平均値である。これらの積層体に対して後硬化は実施しなかった。
【0057】
実施例1〜5および比較例C−1〜C−4
実施例1〜5において、フルオロエラストマーと、式Iによる低分子量シロキサン化合物を含むシリコーンエラストマーとの間で積層体を作製した。したがって、実施例1〜3においては、フルオロエラストマー化合物1、2、および14をそれぞれ、0.95phrのシルクエスト(Silquest)(商標)A−1100を含むエラストジル(Elastosil)(商標)760/70に対して積層した。実施例4および5においては、フルオロケミカル化合物1および2を、0.25phrのシルクエスト(Silquest)(商標)A−1100を含むエラストジル(Elastosil)401/70に対して積層した。比較例C−1〜C−4は、フルオロケミカル化合物を、添加剤を添加していないシリコーン化合物に対して積層することで作製した。接着値の結果を表2に記録している。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果は、フルオロエラストマー化合物と、低分子量シロキサン化合物を接着促進剤として含有するシリコーン化合物との間の接着性が有意に増大したことを示している。非常に強力な積層体を作製することができた。
【0060】
実施例6〜10および比較例C−5およびC−6
フルオロケミカル化合物に加えられた式IIIのオリゴシロキサン接着促進剤の影響を評価するために実施例6〜10を行った。したがって、表3に示されるようにビニルシラン6490 DL70または6498 DL70を含むフルオロケミカル化合物と、シリコーン化合物HV4/611またはエラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。比較例C−5およびC−6においては、オリゴシロキサンを添加していないフルオロケミカル化合物をシリコーン化合物に対して積層した。これらの積層体の接着特性を表3に記録している。
【0061】
【表3】

【0062】
表3に示される結果は、フルオロケミカル化合物に加えられたオリゴシロキサンが、フルオロケミカルとシリコーン化合物との間の接着性に大きな影響を与えたことを明確に示している。強力な積層体を作製することができた。
【0063】
実施例11および12ならびに比較例C−7
式IVによる接着促進剤の影響を評価するために実施例11および12を行った。したがって、場合によりオリゴシロキサンを含むとフルオロケミカルターポリマー化合物と、1.5phrのp−ビニルアニリンを有するシリコーン化合物エラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。比較例C−7として、フルオロケミカル化合物と、接着促進剤を含有しないエラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。接着性の結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4の結果は、式IVによる接着促進剤をシリコーン化合物に加えるとフルオロケミカルとシリコーン化合物との間で顕著な接着力の増加を実現できることを示している。さらに式IIIによるオリゴシロキサンなどの接着促進剤をフルオロケミカル化合物に加えることによってさらに接着力を増加させることができた。
【0066】
実施例13〜26ならびに比較例C−8およびC−9
実施例13〜26において、式IVによる接着促進剤のさらなる例について評価した。フルオロケミカル化合物と、異なる接着促進剤を加えたエラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。積層体の組成を表5に示している。比較例C−8およびC−9として、フルオロケミカル化合物と、添加剤を含まないシリコーン化合物との間で積層体を作製した。2つの化合物の間の接着性を測定し、その結果を表5に示している。
【0067】
【表5】

【0068】
これらの結果は、フルオロケミカルエラストマーと、式IVによる接着促進剤を含むシリコーンエラストマーとの間で強力な積層体を作製できることを示している。
【0069】
実施例27および比較例C−10
式IIによる接着促進剤の影響を評価するために実施例27を行った。したがって、フルオロケミカルコポリマー化合物3と、1phrのシルクエスト(Silquest)(商標)A−174を有するシリコーン化合物エラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。比較例C−10として、フルオロケミカル化合物3と接着促進剤を含有しないエラストジル(Elastosil)(商標)760/70との間で積層体を作製した。接着性の結果を表6に示す。
【0070】
【表6】

【0071】
この場合も、シリコーン化合物中に式IIによる接着促進剤を混入した場合に接合強度の改善を示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロエラストマー層をシリコーンゴム層に接合する方法であって、
(i)(a)脱フッ化水素によって反応部位を形成することができるフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)前記反応部位との反応によって前記フルオロポリマーを架橋させることができる硬化剤と、(d)過酸化物とを含む硬化性フルオロポリマー組成物の層を提供するステップと;
(ii)前記硬化性フルオロポリマー組成物の前記層を、シリコーン樹脂と過酸化物とを含む硬化性シリコーン層と接触させるステップと;
(a)前記フルオロポリマーの脱フッ化水素および前記フルオロポリマー層の架橋と、(b)前記シリコーン樹脂の架橋とを引き起こすのに十分な条件において互いに接触させながら前記層を硬化させるステップとを含み、前記硬化が、前記フルオロポリマーの前記反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基を有する有機化合物、または前記求核性基の前駆体と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを有する有機化合物からなる群より選択される接着促進剤の存在下で実施され、前記接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中および/または前記硬化性シリコーン層中に存在する方法。
【請求項2】
前記接着促進剤が、アミノ基またはヒドロキシ基と、エチレン系不飽和基とを含む有機化合物であり、前記接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着促進剤が、アミノ基またはヒドロキシ基と、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基とを含む有機化合物であり、前記接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着促進剤が、複数のエチレン系不飽和基および1つ以上の加水分解性基を有するシロキサンであり、前記接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シロキサンが、式:
【化1】


(上式中、R312はそれぞれ独立に、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、NHRを表し、Rは、炭化水素基を表し;但し、R312の少なくとも1つが、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、およびNHRから選択される基であり、R312の少なくとも1つが、エチレン系不飽和基を含有する炭化水素基であり、vおよびwはそれぞれ独立に0〜20の値を有する)
に対応するポリシロキサンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の接着促進剤が硬化性フルオロポリマー組成物の前記層中に含まれ、請求項4または5に記載の接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接着促進剤が、硬化性フルオロポリマー組成物の前記層中に0.75重量%〜15重量%の量、または前記硬化性シリコーン層中に0.1〜2重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化剤がポリヒドロキシ化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱フッ化水素剤が塩基または有機オニウム化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化性フルオロポリマーの前記層が、複数のエチレン系不飽和基を有するが求核性基およびその前駆体は含有しない助剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(i)(a)脱フッ化水素によって反応部位を形成することができるフルオロポリマーと、(b)脱フッ化水素剤と、(c)前記反応部位との反応によって前記フルオロポリマーを架橋させることができる硬化剤と、(d)過酸化物とを含む硬化性フルオロポリマー組成物の層と、(ii)硬化性フルオロポリマー組成物の前記層と直接接触する、シリコーン樹脂と過酸化物とを含む硬化性シリコーン層と、(iii)硬化性フルオロポリマー組成物の前記層中および/または前記硬化性シリコーン層中に含まれる接着促進剤とを含む積層体であって、前記接着促進剤が、前記フルオロポリマーの前記反応部位と反応することができる1つ以上の求核性基を有する有機化合物、または前記求核性基の前駆体と、エチレン系不飽和基、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の官能基とを有する有機化合物からなる群より選択される積層体。
【請求項12】
前記接着促進剤が、アミノ基またはヒドロキシ基と、エチレン系不飽和基とを含む有機化合物であり、前記接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記接着促進剤が、アミノ基またはヒドロキシ基と、少なくとも1つの加水分解性基を有するシロキシ基とを含む有機化合物であり、前記接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項11に記載の積層体。
【請求項14】
前記接着促進剤が、複数のエチレン系不飽和基を有するシロキサンであり、前記接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中に含まれる、請求項11に記載の積層体。
【請求項15】
前記シロキサンが、式:
【化2】


(上式中、R312はそれぞれ独立に、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、NHRを表し、Rは、炭化水素基を表し;但し、R312の少なくとも1つが、加水分解性基、ヒドロキシ基、NH2、およびNHRから選択される基であり、R312の少なくとも1つが、エチレン系不飽和基を含有する炭化水素基であり、vおよびwはそれぞれ独立に0〜20の値を有する)
に対応するポリシロキサンである、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
請求項12または13に記載の接着促進剤が硬化性フルオロポリマーの前記層中に含まれ、請求項14または15に記載の接着促進剤が前記硬化性シリコーン層中に含まれる、請求項11に記載の積層体。
【請求項17】
前記接着促進剤が、硬化性フルオロポリマー組成物の前記層中に0.75重量%〜15重量%の量、または前記硬化性シリコーン層中に0.1〜2重量%の量で存在する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項18】
前記硬化剤がポリヒドロキシ化合物である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項19】
前記脱フッ化水素剤が塩基または有機オニウム化合物である、請求項11〜18のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項20】
前記硬化性フルオロポリマーの前記層が、複数のエチレン系不飽和基を有するが求核性基およびその前駆体は含有しない助剤をさらに含む、請求項11〜19のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得ることができる物品。
【請求項22】
前記物品が、燃料管理システムの構成要素、またはターボエンジンのコンプレッサーをインタークーラーに接続するためのホースである、請求項21に記載の物品。

【公表番号】特表2007−525548(P2007−525548A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508601(P2006−508601)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/000881
【国際公開番号】WO2004/078470
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】