説明

フルオロキノロン類を含有する医薬

本発明は、フルオロキノロン類および抗酸化剤の硫黄化合物を含む液体形態の医薬製剤に関する。この製剤は、非経腸投与に特に適し、とりわけ、良好な適合性を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロキノロン類および抗酸化剤の硫黄化合物を含む液体形態の医薬製剤に関する。製剤は、非経腸投与に特に適し、それらが良好に耐容されるという事実により、とりわけ卓越している。
【背景技術】
【0002】
溶液の化学的安定性は、例えば、抗酸化剤の使用により高められ得る。それにより、構成成分の酸化的分解を防止できる。これは、また、このことが特に該当する注射用溶液において通例である。ここで慣習的に使用される抗酸化剤は、とりわけ、亜硫酸塩である。DE−A−19500784、EP−A−0187315またはEP−A−1121933は、亜硫酸塩を含有する注射用溶液を記載している。EP−A−0804267に記載の通り、点眼薬も、溶液として存在するとき、亜硫酸塩と共に提供される。DE−A−2364470は、製剤の脱色を防止することを企図する亜硫酸塩の使用を記載している。注射用溶液の局所的耐容性を改善するためのそのような亜硫酸塩の使用は、まだ記載されていない。良好に耐容されない溶液は、実際には、例えば点滴の形態で、静脈投与されなければならない。しかしながら、特に動物を処置するとき、この方法の実施には問題が多い。例えば、WO98/33482に記載の通り、生成物をリポソームとして製剤化することによる、耐容性を高めるための多数の試みがなされた。シクロデキストリンも、製剤の溶解性または耐容性を改善するための一つの可能性であり、頻繁に研究されている;EP−A−0209768参照。製剤の耐容性を全く改善できないならば、GB−A−1143330に記載の通り、それを投与するときに局所麻酔を使用するか;または、代わりに油性製剤を使用することが必要であり得る;EP−A−1121933。
【0003】
動物への非経腸投与用の溶液は、それらが動物の種に応じて異なる方法および手段で投与されなければならない限り、特別である。例えば、欧州では、注射用溶液をブタに皮下投与し、イヌまたはネコに筋肉内投与することは、常套の実務である。耐容性の要件の高まりは、動物種の結果としてのみならず、投与経路の差異の結果として対応されなければならない(EP−A−1121933)。例えば、それらがウシにより耐容されるという事実は、例えば、必ずしもそれらが例えばネコまたはイヌにより耐容されるという結論を導かせない(WO01/81358)。従って、幅広い適用性を確保するために、注射用溶液の局所的耐容性を、敏感な動物種においてさえ使用できるように改善することには意義がある。
【0004】
従って、フルオロキノロン類を含有する殆どの注射用溶液がイヌまたはネコに利用可能ではないことも驚くべきことではなく、その理由は、とりわけ、それらが良好に耐容されないからである。
【0005】
溶液ができるだけ良好に耐容されることを確実にするために、それらのpHをできるだけ中性(約7.4)に維持することが推奨されるが、しかしながら、それはフルオロキノロン類の溶解性とは対照的である。また、ベタイン形態のフルオロキノロン類の粒子形成は、このpH範囲で頻繁に観察され得、このことは、溶液が、耐容されるものの、短い貯蔵有効期間(shelf life)を有し、粒子形成が起こる理由である。これは、例えば、代わりに凍結乾燥品を選択することにより回避できる。しかしながら、凍結乾燥品は、実際の取扱いが困難であり、再構成溶液の貯蔵有効期間は再構成後にせいぜい4週間しかないことが多く、あるいは、粒子形成の可能性の結果として、直接廃棄されなければならない。従って、即時使用型溶液が注射用溶液として有利である。
【0006】
さらに、投与後に、WO99/29322にも記載されている通り、適量のフルオロキノロンが血清に入ることが必要である。これもまた、注射用のフルオロキノロン製剤の場合当然のことではなく、また、同様に問題の動物種次第であり得る。
【0007】
十分な濃度のフルオロキノロンを含み、医薬条件下での保存の際に安定であり、粒子形成がなく、特にイヌにより良好に耐容され、そして、有利な血清動態を有する、フルオロキノロン類を含有する即時使用型注射可能製剤が見出された。
【発明の開示】
【0008】
従って、本発明は:
(a)フルオロキノロン、
(b)抗酸化性硫黄化合物
(c)必要に応じて、さらなる医薬補助剤および/または添加剤
を含有する液体形態の医薬製剤に関する。
【0009】
フルオロキノロン類は、とりわけ、以下の文献:US4670444(Bayer AG)、US4472405(Riker Labs)、US4730000(Abbott)、US4861779(Pfizer)、US4382892(Daiichi)、US4704459(Toyama)で開示されている通りの化合物であり、以下のものが特定の例として挙げられる:ベノフロキサシン(benofloxacin)、ビンフロキサシン(binfloxacin)、シノキサシン、シプロフロキサシン、ダノフロキサシン(danofloxacin)、ジフロキサシン(difloxacin)、エノキサシン、エンロフロキサシン(enrofloxacin)、フレロキサシン、イバフロキサシン(ibafloxacin)、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、マルボフロキサシン(marbofloxacin)、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オルビフロキサシン(orbifloxacin)、ペフロキサシン、ピペミド酸、テマフロキサシン、トスフロキサシン、サラフロキサシン(sarafloxacin)、スパルフロキサシン。
【0010】
好ましいフルオロキノロン類の群は、式(I)または(II):
【化1】

[式中、
Xは、水素、ハロゲン、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシ、NHを表し、
Yは、構造
【化2】

{式中、
は、ヒドロキシル−またはメトキシ−置換されていることもある直鎖または分枝鎖のC−C−アルキル、シクロプロピル、1個ないし3個のC原子を有するアシルを表し、
は、水素、メチル、フェニル、チエニルまたはピリジルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表す}
のラジカルを表し、そして、
は、1個ないし3個の炭素原子を有するアルキルラジカル、シクロプロピル、2−フルオロエチル、メトキシ、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたはメチルアミノを表し、
は、水素、または、メトキシ−もしくは2−メトキシエトキシ−置換されていることもある1個ないし6個の炭素原子を有するアルキル、および、シクロヘキシル、ベンジル、2−オキソプロピル、フェナシル、エトキシカルボニルメチル、ピバロイルオキシメチルを表し、
は、水素、メチルまたはエチルを表し、そして、
Aは、窒素、=CH−、=C(ハロゲン)−、=C(OCH)−、=C(CH)−または=C(CN)を表し、
Bは、酸素、メチル−またはフェニル−置換されていることもある=NHまたは=CHを表し、
Zは、=CH−または=N−を表す]
のもの、並びに、それらの医薬的に有用な塩および水和物である。
【0011】
好ましい式(I)の化合物は、式中、
Aが、=CH−または=C−CNを表し、
が、ハロゲン−置換されていることもあるC−C−アルキルまたはシクロプロピルを表し、
が、水素またはC1−4−アルキルを表し、
Yが、構造
【化3】

{式中、
は、ヒドロキシル−置換されていることもある直鎖または分枝鎖のC−C−アルキル、1個ないし4個のC原子を有するオキソアルキルを表し、
は、水素、メチルまたはフェニルを表し、
は、水素を表し、
は、水素またはメチルを表し、
は、水素を表す}
のラジカルを表すもの、並びに、それらの医薬的に有用な水和物および塩である。
【0012】
特に好ましい式(I)の化合物は、式中、
Aが、=CH−または=C−CNを表し、
が、シクロプロピルを表し、
が、水素、メチルまたはエチルを表し、
Yが、構造
【化4】

{式中、
は、メチル、ヒドロキシル−置換されていることもあるエチルを表し、
は、水素またはメチルを表し、
は、水素を表し、
は、水素またはメチルを表し、
は、水素を表す}
のラジカルを表すもの、並びに、それらの医薬的に有用な塩および水和物である。
【0013】
言及し得る式(II)のフルオロキノロンの好ましい例は、マルボフロキサシン:
【化5】

である。
【0014】
言及し得る特に好ましいフルオロキノロン類は、WO97/31001に記載の化合物、特に、式
【化6】

の8−シアノ−1−シクロプロピル−7−((1S,6S)−2,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−イル)−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸(プラドフロキサシン)である。
【0015】
エンロフロキサシンも特に好ましく用いられる:
1−シクロプロピル−7−(4−エチル−1−ピペラジニル)−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸
【化7】

ヒトの医薬で通常用いられる活性物質である、シプロフロキサシンの使用も実施可能である。
【0016】
光学活性のフルオロキノロン類は、それらのラセミ体の形態またはエナンチオマー形で存在できる。純粋なエナンチオマーのみならず、それらの混合物も本発明に従い用いることができる。
【0017】
適する塩は、医薬的に有用な酸付加塩および塩基の塩である。
医薬的に有用な塩は、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、エンボン酸(embonic acid)、グルタミン酸またはアスパラギン酸の塩を意味すると解される。さらに、本発明による化合物は、酸性または塩基性イオン交換剤に結合できる。言及し得る医薬的に有用な塩基の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウムまたはカルシウム塩;亜鉛塩、銀塩およびグアニジウム塩である。
【0018】
水和物は、フルオロキノロン類自体の水和物のみならず、それらの塩の水和物も意味すると解される。言及し得る例は、安定な三水和物を形成するプラドフロキサシンである(WO2005/097789参照)。
【0019】
固体であるフルオロキノロン類は、ある種の環境下で、様々な結晶変態を形成し得る。本発明の医薬に有利なのは、適する溶解特性を有する変態である。
【0020】
フルオロキノロンは、典型的には、体重約80kgまでの動物で、0.1ないし15%、好ましくは0.5ないし15%、特に好ましくは1ないし15%の量で用いられる。約80kgより多い体重の動物の場合、フルオロキノロンは、典型的には、1ないし30%、好ましくは3ないし25%、そして、特に好ましくは4ないし20%の量で用いる。百分率のデータは、各場合で、w/vとして与えられる。
【0021】
抗酸化剤の硫黄化合物の例は、亜硫酸塩(亜硫酸塩ナトリウム、亜硫酸塩カリウム)、重亜硫酸塩(例えばメタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アセトナトリウム、重亜硫酸アセトナトリウム)、チオ硫酸塩(例えば、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム)、および、有機硫黄化合物(例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、チオソルビトール、システイン塩酸塩、シスチン、システイン、アセチルシステイン、グルタチオン、システアミン、メチオニン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸)である。
【0022】
抗酸化剤の硫黄化合物は、通常、0.05ないし10%、好ましくは0.1ないし8%、特に好ましくは0.5ないし5%の濃度で用いられる。百分率のデータは、各場合で、w/vとして与えられる。
【0023】
液体製剤は、投与時の局所的耐容性を改善する物質をさらに含有できる。言及し得る例は:フリーラジカル捕捉剤、または、抗酸化剤、例えば、ビタミンE、水溶性ビタミンEエステルまたはビタミンC、ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエンである。錯体化剤、例えば、ナトリウム−EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、ポリビニルピロリドンまたはシクロデキストリン、特に、後述する、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、デクスパンテノール、脂肪酸の塩、例えば、カプリル酸ナトリウム、多価陽イオンの塩(例えばアルカリ土類金属Me2+またはMe3+)、ここで、特にその塩形態のマグネシウム、アミノ酸、ここで、特にアルギニンまたはリジン、ポロキサマー類、ポロキサミン(poloxamine)類、共溶媒、例えば、n−ブタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはジメチルアセトアミド、デキストラン類、酸、例えばグルコノラクトン酸(gluconolactonic acid)、乳酸、エンボン酸、クエン酸、酒石酸、ムチン酸またはヒアルロン酸、ホスファチジルコリン含有量70−100%のダイズまたはニワトリタンパク質由来のレシチン類、または、クレアチニン。
【0024】
耐容性を改善する物質は、通常、0.05ないし10%、好ましくは0.1ないし8%、特に好ましくは0.5ないし5%の濃度で存在する。百分率のデータは、各場合で、w/vとして与えられる。
【0025】
粒子形成を防止できる物質は、例えば、ポロキサマー類、レシチン類、ポリビニルピロリドン類、共溶媒、抗酸化剤、錯体化剤、または、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンゼトニウムもしくは塩化ベンザルコニウムである。
【0026】
安定性を改善し、例えば粒子形成を回避できる物質は、通常、0.001ないし10%、好ましくは0.005ないし6%、特に好ましくは0.001ないし3%の濃度で用いる。百分率のデータは、各場合で、w/vとして与えられる。
【0027】
液体製剤が含有し得る溶媒は、水または水混和性物質である。言及し得る例は、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール類、耐容されるアルコール類、例えばエタノール、ベンジルアルコールまたはn−ブタノール、乳酸エチル、酢酸エチル、トリアセチン、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、グリコフロール(glycofurol)、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、イソプロピリデングリセロールまたはグリセリンホルマールである。様々な溶媒の混合物も使用し得る。水をベースとする製剤(これは、当然さらなる溶媒および共溶媒も含有し得る)が好ましい。
【0028】
水または水混和性物質に加えて、液体製剤は、乳液の形態で溶媒として油も含有し得る。これらの中で、言及し得る物質は、綿実油、ゴマ油、大豆油、鎖長C12−C18の中鎖トリグリセリド類、プロピレングリコールオクタノエート/デカノエートまたはパラフィンなどの植物、動物および合成油である。
【0029】
溶媒は、通常、各々99.8ないし72%または98.9ないし55%、好ましくは各々99.4ないし81%または96.9ないし67%、特に好ましくは、各々98.8ないし87%または94.5ないし77%の濃度で用いる。百分率のデータは、各場合で、w/vとして与えられる。
【0030】
液体製剤のpHは、通常、2−11、好ましくは3−8、特に好ましくは4−8である。
【0031】
医薬は、ここで、好ましくは製剤が水を含有する場合に、共溶媒も含有し得る。これらは、通常、1ないし10重量%、好ましくは3ないし8重量%の量で用いる。言及し得る共溶媒の例は、医薬的に耐容されるアルコール類、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、酢酸エチル、トリアセチン、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、グリコフロール、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、イソプロピリデングリセロール、グリセリンホルマール、グリセリンおよびポリエチレングリコール類である。共溶媒として適する物質は、特に、医薬的に許容し得るアルコール類、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、または、n−ブタノールである。上述の溶媒の混合物も、共溶媒として用い得る。
【0032】
液体製剤は、保存料、例えば、脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、エタノール、n−ブタノール、フェノール、クレゾール類、クロロブタノール、パラ−ヒドロキシ安息香酸エステル(特にメチルおよびプロピルエステル)、カルボン酸、例えばソルビン酸、安息香酸、乳酸またはプロピオン酸の塩または遊離酸、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムまたは塩化セチルピリジニウムを含有し得る。
【0033】
製剤のタイプおよび投与形態に応じて、本発明による医薬は、さらなる常套の医薬的に許容し得る添加剤および補助剤を含有し得る。言及し得る例は以下のものである:
・抗酸化剤、例えば、フェノール類(トコフェロール、および、ビタミンEおよびビタミン−E−TPGS(d−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート))、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸オクチルおよびドデシル)、有機酸(アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸)およびそれらの塩およびエステル、
・湿潤剤、例えば、脂肪酸の塩、脂肪アルキル硫酸塩、脂肪アルキルスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪アルキルポリエチレングリコールエーテル硫酸塩、脂肪アルキルポリエチレングリコールエーテル類、アルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル類、アルキルポリグリコシド類、脂肪酸N−メチルグルカミド類、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類およびポロキサマー類。
・等張化剤(iso-osmotics)、例えば、塩化ナトリウム、グルコースまたはグリセロール。
・医薬的に許容し得る着色剤、例えば、酸化鉄、カロテノイドなど。
【0034】
フルオロキノロン類に加えて、本発明による製剤は、さらなる医薬有効成分を含み得る。例えば、フルオロキノロン類は、また、例えば、鎮痛剤(pain killer)、特にNSAID(非ステロイド性抗炎症性物質)として知られているものと組み合わせて用い得る。そのようなNSAIDは、例えば:メロキシカム、フルニキシン、ケトプロフェン、カルプロフェン、メタミゾールまたは(アセチル)サリチル酸であり得る。
【0035】
本発明による医薬は、フルオロキノロンを抗酸化性硫黄化合物の後に溶媒に分散させることにより製造でき、耐容性を改善するための他の物質、および、必要に応じて、粒子形成を回避するための物質を同様に添加する。共溶媒およびさらなる構成成分、例えば保存料は、溶媒に予め添加しても、後で混合してもよい。
【0036】
あるいは、共溶媒、保存料、耐容性または粒子形成に影響を与える物質を、最初に溶媒に溶解してもよく、その後に、混合物にフルオロキノロンを補って完成させる。抗酸化性硫黄化合物は、また、フルオロキノロンと共に、またはその後で、分散させ得る。
【0037】
一般に、本発明による医薬製剤は、ヒトおよび動物における使用に適する。それらは、好ましくは、家畜、育種動物、動物園の動物、試験動物、実験動物および愛玩動物における動物の飼育および動物の管理に用いる。
【0038】
家畜および育種動物には、哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、スイギュウ、ロバ、ウサギ、シカ、トナカイ、毛皮を有する動物、例えば、ミンク、チンチラ、アライグマ、および、鳥類、例えば、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒル、ハトおよび家庭内および動物園で飼育するための鳥類の種が含まれる。
【0039】
試験および実験動物には、マウス、ラット、モルモット、ゴールデンハムスター、イヌおよびネコが含まれる。
愛玩動物には、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ウマ、爬虫類、適する鳥類の種、イヌおよびネコが含まれる。
魚類、ここで、全齢の淡水および海水に住む有用な魚類、養殖魚、水族館の魚類および観賞魚にも言及し得る。
本発明による製剤は、好ましくは、ウマ、ネコおよびイヌなどの愛玩動物で用いる。それらは、ネコおよびイヌでの使用に特に適する。
好ましい家畜の例は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびニワトリである。特に好ましい家畜は、ウシおよびブタである。
【0040】
投与は、予防的または治療的に実施できる。
本明細書に記載の製剤は、様々な経路で標的生物(ヒトまたは動物)に投与でき、例えば、それらは、非経腸的に、特に、注射(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、乳房内(intramammarially)、腹腔内)を利用して、皮膚に、経口で、直腸に、膣に、または、鼻腔に投与でき、非経腸投与−特に注射を利用する−が好ましい。
製剤は、好ましくは、溶液、懸濁液または乳液として投与される。
【0041】
本発明による医薬は、活性物質の良好な安定性および良好な溶解性により卓越している。さらに、それらは、動物において、特に非経腸投与の際に、良好な耐容性および適する血清動態を有する。
【実施例】
【0042】
実施例
以下の実施例の製剤は、記述される成分を注射用水に混合または溶解することにより製造する。溶液のpHは、酸または塩基の添加により調節できる。注射用の溶液は、濾過滅菌し、適する容器に移す。プラドフロキサシンを無水物(anhydrate)または三水和物として用いることができる;数値は、各場合で無水物について算出する。
(重量パーセントの百分率は、最終製剤の総体積に基づく、[w/v])。
【0043】
実施例1
3.0%プラドフロキサシン
0.1%ポロキサマーF68
0.2%二亜硫酸ナトリウム
3%n−ブタノール
1.6%水酸化ナトリウム(1N)
2.7%塩化ナトリウム
注射用水100%まで
プラドフロキサシン3.0g、ポロキサマー0.1g、二亜硫酸ナトリウム0.2g、n−ブタノール3g、塩化ナトリウム2.7gを、注射用水約80gに溶解し、pHを確認し、必要であれば、1N水酸化ナトリウム1.6gでpH7.4にする。その後、残りの注射用水を添加し、最終体積100mlとする。
【0044】
実施例2
3%プラドフロキサシン
0.1%ポロキサマーF68
0.5%二亜硫酸ナトリウム
3%n−ブタノール
2.4%塩化ナトリウム
4.6%1N水酸化ナトリウム
注射用水100%まで
プラドフロキサシン3g、ポロキサマー0.1g、二亜硫酸ナトリウム0.5g、n−ブタノール3g、塩化ナトリウム2.4gを注射用水約80gに溶解し、pHを確認し、水酸化ナトリウム4.6gでpH7.4にする。その後、残りの注射用水を添加し、最終体積100mlとする。
【0045】
実施例3
3%プラドフロキサシン
0.2%二亜硫酸ナトリウム
3%n−ブタノール
20%N−メチルピロリドン
注射用水100%まで
注射用水70gを、n−ブタノール3gおよびN−メチルピロリドン20gと混合する。二亜硫酸ナトリウム0.2%をこの混合物に溶解し、続いてプラドフロキサシン3gを溶解する。残りの注射用水3.8gを添加し、最終体積100mlとする。
【0046】
実施例4
1%エンロフロキサシン
0.5%二亜硫酸ナトリウム
1.4%ベンジルアルコール
1.4g1N KOH
3%塩化マグネシウム六水和物
注射用水100%まで
注射用水70gを、ベンジルアルコール1.4gおよび塩化マグネシウム六水和物3gと混合する。1N KOH1.4gを含む0.5%二亜硫酸ナトリウムを、この混合物に溶解し、続いてエンロフロキサシン1gを溶解する。残りの注射用水22.7gを添加し、最終体積とする。
【0047】
実施例5
5%プラドフロキサシン(三水和物)
0.1%ポロキサマーF68
3%n−ブタノール
0.5%二亜硫酸ナトリウム
9%1N塩酸
注射用水100%まで
注射用水80gを、二亜硫酸ナトリウム0.5g、n−ブタノール3gおよびポロキサマー0.1gと混合する。プラドフロキサシン(三水和物、純粋なプラドフロキサシンとして計算)5gをこの混合物に溶解する。必要であれば、約9gの酸でpH5に設定し、混合物を残りの注射用水で最終体積100mlとする。
【0048】
実施例6
2%プラドフロキサシン(三水和物)
0.1%ポロキサマーF68
3%n−ブタノール
0.5%二亜硫酸ナトリウム
2.6%塩化ナトリウム
9%1N水酸化ナトリウム
注射用水100%まで
注射用水80gを、二亜硫酸ナトリウム0.5g、n−ブタノール3g、塩化ナトリウム2.6gおよびポロキサマー0.1gと混合する。プラドフロキサシン(三水和物、純粋なプラドフロキサシンとして計算)2gをこの混合物に溶解する。必要であれば、約2.4gの水酸化ナトリウムでpH7.4に設定し、混合物を残りの注射用水で最終体積100mlとする。
【0049】
インビボの耐容性
臨床試験において、本明細書に記載の製剤は、他の製剤と比較して改善された局所的耐容性を立証された。活性物質に起因する注射部位の組織刺激および膨張の程度は、用いる製剤次第である。選択された実施例を、以下の表1に挙げる。
表1:
【表1】

SC=皮下、IM=筋肉内
【0050】
血清の薬物動態プロフィール
この製剤は、血清の薬物動態(PK)プロフィールに影響を与える。異なる製剤は、それらの血清濃度の時間曲線に関して顕著に異なる。急速な吸収、高いピーク濃度および長い排出期間を伴う曲線は、キノロン類に好ましい。下記の表2は、様々な製剤を挙げ、それらのPKプロフィールに対する影響を示す。
【0051】
表2.
【表2】

SC=皮下、IM=筋肉内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロキノロン
(b)抗酸化性硫黄化合物
(c)必要に応じて、さらなる医薬補助剤および/または添加剤
を含有する液体形態の医薬製剤。
【請求項2】
抗酸化性硫黄化合物として、亜硫酸塩、特に亜硫酸塩ナトリウム、亜硫酸塩カリウム;重亜硫酸塩、特にメタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アセトナトリウム、重亜硫酸アセトナトリウム;チオ硫酸塩、特にチオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム;または、有機硫黄化合物、特にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、チオソルビトール、システイン塩酸塩、シスチン、システイン、アセチルシステイン、グルタチオン、システアミン、メチオニン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸を含有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
二亜硫酸ナトリウムを含有する、請求項1または請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
フルオロキノロンとして、シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、プラドフロキサシンまたはマルボフロキサシンを含有する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
プラドフロキサシンを含有する、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
エンロフロキサシンを含有する、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項7】
マルボフロキサシンを含有する、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項8】
細菌性疾患の制御用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の医薬製剤の使用。
【請求項9】
細菌性疾患の制御用の注射に適する医薬を製造するための、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
良好に耐容される医薬を製造するための、請求項8または請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2009−529014(P2009−529014A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557621(P2008−557621)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001568
【国際公開番号】WO2007/101560
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508270727)バイエル・アニマル・ヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】BAYER ANIMAL HEALTH GMBH
【Fターム(参考)】