説明

フルオロコンブレタスタチンおよびその誘導体

本発明は、全合成によって得られる式(I)の新規なコンブレタスタチン誘導体に関する。


(I)
各化合物のために開発された戦略は、i) オレフィン結合上のハロゲン (即ちフッ素原子)の水素への変換; ii)アミノ-芳香環を有する天然物における芳香環の置換である。該化合物はチューブリン部位を認識し、それに結合し:哺乳類における細胞増殖によって引き起こされるかまたは悪化する疾病状態の治療に、抗癌および/または抗血管新生活性として有用である- かかる化合物を含む医薬組成物にも関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
正常の細胞増殖制御下にない細胞増殖によって特徴づけられる腫瘍性疾患はヒトおよびその他の哺乳類における主要な死因である。癌化学療法によりかかる疾患を治療するための新規かつより有効な薬剤が提供されてきており、微小管合成を妨害する薬剤が腫瘍細胞の増殖の阻害に有効であることが示されている。
【0002】
微小管は、細胞構造、代謝および分裂の制御に重要な役割を果たしている。真核細胞の微小管システムは動的な会合および脱会合マトリックスを含み、そこでは正常および腫瘍細胞のいずれにおいてもチューブリンヘテロダイマーが重合して微小管を形成する。腫瘍細胞内では、チューブリンは重合して紡錘体を形成する微小管となる。次いで微小管は紡錘体の使用が完了すると脱重合する。腫瘍細胞における微小管の重合または脱重合を妨害し、それによってこれら細胞の増殖を阻害する薬剤は、現在用いられているもっとも有効な癌化学療法薬を構成する。
【0003】
アフリカの低木のヤナギである、Combretum caffrum (Combretaceae)から単離されたコンブレタスタチン A-4 (CA-4) (Pettit、G.R.、et al.; Experientia、1989、45、209)は、コルヒチン結合部位と共有されているか、またはそれと近接している部位においてチューブリンに強力に結合し、抗癌剤としてすばらしい能力を示す(Lin、C.N.、et al; Biochemistry、1989、28、6984)。チューブリンへのその結合はその微小管への重合を妨げ、抗有糸分裂作用をもたらす。CA-4はナノモル濃度程度の低濃度でも細胞増殖を阻害し、その他のチューブリン結合剤、例えば、コルヒチンおよびポドフィロトキシンと共通の多くの構造的特徴を共有する。
【0004】
CA-4よりも水溶性が良好なリン酸塩[CA-4P] (Pettit、G.R.、et al.; Anticancer Drug Des.、1995、10、299)はフェーズII臨床試験に入った。
【0005】
腫瘍脈管構造に損傷を与え、それによって腫瘍から栄養分を効率的に奪うコンブレタスタチンの能力により、コンブレタスタチンはそのように非常に有力な分子なのである。
【0006】
最近、多くの研究により、 CA-4Pなどの多数の抗血管新生薬が、よく特徴付けされた虚血によって引き起こされる増殖性網膜症のマウスモデルにおいて、網膜の新血管新生を阻害することが出来ることが示された。
【0007】
これらの研究により、CA-4Pまたは新規誘導体は、その他の抗血管新生薬と同様に、虚血によって引き起こされる増殖性網膜症などの非腫瘍性疾患の治療に有用であることが示唆される(Griggs、J.、et al.、Am. J. Pathol.、2002、160(3)、1097-103)。
【0008】
コンブレタスタチン、コルヒチンおよび類似の薬剤の2つの芳香環の間の位置関係が、チューブリンに結合する能力を決定する重要な構造特徴である(McGown、A.T.、et al.、a) Bioorg. Med. Chem. Lett.、1988、8(9)、1051-6; b) Bioorg. Med. Chem. Lett.、2001、11(1)、51-4)。
【0009】
80年代から研究者らは生理活性分子へのフッ素の選択的導入が活性に影響を発揮することを見いだした。それゆえドラッグデザインにおける重要な試みが報告されており、水素の生物学的等価性の置換としてフッ素を導入した多数の化合物が報告された(Giannini、G.Giannini、Current Medicinal Chemistry、2002、9、687-712)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
このたび、シス-スチルベンモチーフを修飾することなく、オレフィン結合において強度に電子吸引性のフッ素原子を導入することにより生理活性が上昇し、あるいは同じ活性の場合は、薬力学活性に影響を与えることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
フルオロおよびブロモフルオロスチルベンを合成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は式(I)の化合物;
【化1】

(I)
[式中:
R1、R2およびR3は同一であっても異なっていてもよく、H、OMe、NO2、NHR';
Z = H またはハロゲン
XおよびYは互いに異なり、ハロゲンまたは H;
R = OH、OPO3Na2、OCH2OPO3Na2、OR'、NO2、NHR';
R' = H、アルキル (C1-C6)、(COCHR''NH)n-H;
R'' = H、アミノ酸側鎖、Ph;
n は1〜3の整数]、
その医薬上許容される塩、ラセミ体および単一エナンチオマーである。
【0013】
本発明の別の目的は上記式(I)の化合物の調製方法である。
【0014】
本発明の別の目的は微小管重合についての生物学的アッセイにおける被験化合物としての式(I)の化合物の使用である。
【0015】
式(I)の化合物は少なくともCA-4の抗チューブリン活性に匹敵する抗チューブリン活性を有する(J. Med. Chem、2002、45:1697-1711)。
【0016】
本発明の別の目的は、医薬、特に細胞増殖によって生じるかそれによって悪化する疾病状態の治療用医薬の調製のための式(I)の化合物の使用である。
【0017】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの医薬上許容される担体および/または賦形剤と混合して活性成分として少なくとも式(I)の化合物を含む医薬組成物である。
【0018】
本発明のこれらおよびその他の目的は実施例と図面により詳細に説明する。図面において:
図 1:ジフルオロコンブレタスタチンの合成;
図 2:ジフルオロニトロ-およびジフルオロアミノ- コンブレタスタチンの合成;
図 3:モノフルオロコンブレタスタチンの合成;
図 4:ジフルオロコンブレタスタチンリン酸二ナトリウムの合成;
図 5:モノ-ジフルオロコンブレタスタチンリン酸二ナトリウムオキシメチルの合成;
図 6:モノ-ジフルオロアミノコンブレタスタチンアミノ酸アミド誘導体の合成
図 7:ブロモフルオロコンブレタスタチンの合成。
【0019】
当業者であれば、図1-7において本発明の好ましい化合物の合成スキームが提供されることを理解するであろうが、当業者はこれらスキームが式(I)の意味に応じて適当な出発物質を単に選択するだけで本発明の全範囲に適用可能であり、一般に周知の事項によって反応条件および反応物質を明らかに改変することが出来ることを理解するべきである。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明によると、ハロゲンとは、フルオロ、クロロおよびブロモを意味する。
【0021】
本発明によると、R''は好ましくは天然アミノ酸、特に、Ala、Asn、Asp、Cys、Gly、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Tyr、Try、Valの側鎖である。
【0022】
特に好ましい化合物は式(I)の化合物であって:
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシ、そしてRがヒドロキシである化合物;
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシ、Rがアミノまたは置換アミノである化合物;
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシではなく、Rがヒドロキシである化合物;
Zが水素またはハロゲンである化合物;
RがOPO3Na2またはOCH2OPO3Na2である化合物;
R'が(COCHR''NH)n-Hである化合物;
である。
【0023】
特に好ましい化合物は以下の化合物である:
X = Y = F; R = OPO3Na2:ジフルオロコンブレタスタチン;
X = Y = F; R = NH2: ジフルオロアミノコンブレタスタチン;
X = H; Y = F; R = OPO3Na2:モノフルオロコンブレタスタチン;
X = F; Y = H; R = OPO3Na2:モノフルオロコンブレタスタチン;
X = H; Y = F; R = NH2:モノフルオロアミノコンブレタスタチン;
X = F; Y = H; R = NH2:モノフルオロアミノコンブレタスタチン;
X= Br; Y=F; R= OPO3Na2:ブロモフルオロコンブレタスタチン。
【0024】
本発明の化合物の調製方法を添付の図に記載の合成スキームを参照することによって詳細に説明する。
【0025】
本発明の化合物は常套の合成方法によって調製できるが、しかし、本発明のいくつかの好ましい態様において、出発化合物は式(I)の化合物であって、XおよびYの両方が水素の化合物である。
【0026】
XおよびYが両方Fである式(I)の化合物の調製方法は以下の工程を含む:
a) 1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-(保護OH)-フェニル)エテンと、3-R1-4-R2-5-R3-フェニルボロン酸との反応、および
b) 3-(保護OH) 基の回復(restoring)。
【0027】
工程a)について、1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-(保護OH)-フェニル)エテンは当該技術分野で利用可能な合成法により得ることが出来る。例えば、OH 基が好適に保護されたイソバニリンは、1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-(保護OH)-フェニル)エテンへと変換される。
【0028】
イソバニリンは市販されており、3,4,5-トリ置換-フェニル-ボロン酸も市販されているし、常套方法によって得ることもできる。またその他の多くのモノ-、ジ-、およびトリ置換 -フェニル-ボロン酸は市販されている。しかし、出発物質は常套方法により得ることもできる。
【0029】
工程 a)の反応は好適な反応媒体(例えば、有機溶媒、または水と有機溶媒の混合物)中で、塩基水溶液(例えば、炭酸アルカリ)の存在下で行う。触媒の使用が推奨され、好ましい例はPd(Ph3P)4である。反応温度は出発物質、用いる溶媒および触媒に応じて選択する。好ましくは、反応温度は反応媒体の還流温度である。
【0030】
ヒドロキシ基からの保護部分の除去は完全に常套的であり当業者に通常行われている。好ましい保護基は市販の有機シリルオキシ誘導体から見いだせ、例えば tert-ブチル-ジメチル-シリルオキシフェニルである。かかる基の除去は常套方法にて行われる。
【0031】
XおよびYの一方がFであって他方が水素である式(I)の化合物の調製方法は、以下の工程を含む:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物のブロモフッ素化、および
b)塩基促進 HBr 除去。
【0032】
この方法はGiannini、G.、Gazz. Chim. It.、1997、127、545; Thakker D.R.、et al.、J. Org. Chem.、1989、54、3091に開示されている。
【0033】
XおよびYの一方がFである式(I)の化合物は以下の工程を含む方法によっても調製できる:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の対応するブロモヒドリンへの変換、および、
b)塩基促進 HBr 除去。
【0034】
この方法は Giannini、G.、Gazz. Chim. It.、1997、127、545; Thakker D.R.、et al.、J. Org. Chem.、1989、54、3091に開示されている。
【0035】
あるいは、XおよびYの一方がFである式(I)の化合物は以下の工程を含む方法によっても調製することが出来る:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の、対応するエポキシドへの変換;
b)対応するブロモヒドリンを得るためのエポキシドの開環、および
c)塩基促進 HBr 除去、あるいは
d) 対応するフルオロヒドリンを得るためのエポキシドの開環、および
e)適切なヒドロキシル誘導体の除去。
【0036】
この方法は Giannini、G.、Gazz. Chim. It.、1997、127、545; Thakker D.R.、et al.、J. Org. Chem.、1989、54、3091に開示されている。
【0037】
XまたはYの一方がFであり、他方がBrである式(I)の化合物は以下の工程を含む方法によって調製される:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の、対応するブロモヒドリンへの変換、および、
b)塩基促進 HBr 除去。
【0038】
この方法は Giannini、G.、Gazz. Chim. It.、1997、127、545; Thakker D.R.、et al.、J. Org. Chem.、1989、54、3091に開示されている。
【0039】
好ましい態様において、出発化合物はコンブレタスタチン A (式 I、R1、R2、R3 = OMe、XおよびY = H、R = OH)である。
【0040】
あるいは、XまたはYの一方がFであるモノフルオロコンブレタスタチン誘導体は全合成により調製できる。
【0041】
Xが BrでYがFである式(I)の化合物の調製方法はスキーム 7に開示されている。
【0042】
医薬上許容される塩は文献に報告されている常套方法によって得られ、さらに説明する必要はない。
【0043】
先に開示のように、本発明の化合物は医薬として有用であり、そのチューブリン部位に対する活性により、細胞増殖によって生じるかそれによって悪化する疾病状態の治療用医薬の調製に利用できる。
【0044】
該疾病状態の例は腫瘍であり、なかでも、固体および血液腫瘍の両方が治療され得、例えば、肉腫、癌腫、癌様体、骨腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ性白血病、急性前骨髄球性白血病、骨髄性白血病、単球性白血病、巨核芽球性白血病およびホジキン病が挙げられる。
【0045】
本発明の別の態様によると、該医薬は、異常な血管新生によって起こる疾病状態、例えば、腫瘍転移; 関節疾患; 糖尿病性網膜症; 乾癬; 慢性炎症性疾患または動脈硬化症の治療に用いられる。
【0046】
本発明のさらなる態様において、該医薬は、非腫瘍性疾患、例えば、虚血によって誘導される増殖性網膜症の治療にも用いられる。
【0047】
医薬組成物は、有意な治療効果を発揮する量の少なくとも1つの式(I)の化合物を活性成分として含む。本発明に含まれる組成物は完全に常套であって、例えば、Remington's Pharmaceutical Science Handbook、Mack Pub. N.Y. latest editionに説明されている製薬業界での常套方法によって得られる。選択された投与経路に応じて、組成物は経口、非経口または静脈内投与に好適な固体または液体形態である。本発明による組成物は活性成分とともに、少なくとも1つの医薬上許容される媒体または賦形剤を含む。それらは特に有用な製剤の補助剤、例えば、可溶化剤、分散剤、懸濁剤および乳化剤であり得る。
【0048】
本発明を実施例によりさらに説明する。
一般的注釈: 1H-および13C-NMR スペクトルは示したようにCDCl3 溶液中それぞれ200または300 MHzで記録した。化学シフト値はppm、結合定数はHzで示す。旋光度データはPerkin-Elmerモデル241 旋光計によって得た。薄層クロマトグラフィー (TLC)はMerckプレコートシリカゲル F-254 プレートを用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは Macherey-Nagel シリカゲル 60、230-400メッシュを用いて行った。溶媒は標準的手順にしたがって乾燥させ、無水条件を必要とする反応は窒素下で行った。最終生成物を含む溶液はNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下でロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。
【0049】
実験部分で用いる同じ略語: TBDMSiCl (tert-ブチルジメチルクロロシラン); Hex (ヘキサン); DAST (ジエチルアミノトリフッ化硫黄); DIPEA (ジイソプロピルエチルアミン); PyBroP (ブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム- ヘキサフルオロ-ホスファート); TAEA (トリス(2-アミノエチル)アミン)。
【実施例】
【0050】
実施例 1
ジフルオロコンブレタスタチンの合成(スキーム 1)
tert-ブチル-ジメチル-シリルイソバニリン (1)の合成
50 mLのCH2Cl2中の6.09 g (40 mmol)のイソバニリンの溶液に、6.64 gのTBDMSiCl (44 mmol、1.1 当量)と2.95 g (44 mmol、1.1 当量)のイミダゾールを添加した。溶液を室温で3時間撹拌し、0.5 M HClで洗浄した。 粗生成物をヘキサン/酢酸エチル 9:1を用いたシリカゲルカラムで精製し、9 g (33 mmol、83%)の無色油を得た。Rf = 0.27 (Hex./酢酸エチル 95:5)
MS (IS):[MH]+ = 267.2、[M+Na]+ = 289.2 (主なピーク)
1H NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 0.2 (s、6H、2xCH3)、1.0 (s、9H、tBu)、3.9 (s、3H、OCH3)、6.9-6.95 (d、1H、CH)、7.4 (s、1H、CH)、7.45-7.5 (d、1H、CH)、9.8 (s、1H、CHO)
13C NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): -4.4; 18.6; 25.9; 55.6; 111.9; 120.0; 126.5; 130.0; 146.0; 157.1; 191.0
【0051】
2,2-ジブロモ-2-フルオロ-1-(4-メトキシ-3-tert-ブチル-ジメチル-シリルオキシフェニル) エタノール (2)の合成
80 mLのEt2O/THF (1:1)中の2.66 g (10 mmol)のTBDMS-イソバニリンと2.98 g (11 mmol、1.1 当量)のCFBr3の混合物をT = -130℃とした ; ヘキサン中の4.4 mL (11mmol、1.1 当量)の2.5 M BuLi 溶液を10分間かけて混合物に添加した。T = -70℃で2時間後、反応を完了させるためには1.3 mLのBuLi 溶液と0.3 mLのCFBr3を添加する必要があった。
【0052】
反応を60 mLのNH4Cl 飽和溶液でクエンチし、20 mLのジエチルエーテルで希釈した。水相を2x20 mLのジエチルエーテルで逆抽出し(back-extracted)、有機画分を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチル 95:5を用いるシリカゲルカラムで精製し、3.1 g (6.8 mmol、68 %)のロウ状固体を得た。 Rf = 0.5 (Hex./AcOEt 85:15)
MS (IS): [M+Na]+ = 479.1; 481.1; 483.1 (1:2:1)
[M-1]- = 457.2
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 0.2 (s、6H、2xCH3)、1.0 (s、9H、tBu)、3.8 (s、3H、OCH3)、5.0 (d、1H、CH3JHF = 10Hz)、6.8-6.9 (d、1H、CHar)、7.0-7.1 (t、2H、2xCH)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 4.4; 18.6; 25.9; 55.6; 82.7; 83.0; 101.3; 105.6; 111.5; 121.3; 122.2; 127.5; 144.9; 152.2
【0053】
1,1-ジブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-tert-ブチル-ジメチル-シリルオキシフェニル)エタン (3)の合成
10 mL CH2Cl2中の(ジエチルアミノ)トリフッ化硫黄 1.5 mL (11.2 mmol; 1.8 当量)を-78℃の14 mL CH2Cl2中の2.84 g (6.2 mmol)のアルコール DA 59溶液に添加した。反応混合物を2時間かけて0℃まで昇温させ、25 mLのNaHCO3 飽和溶液でクエンチし、20 mLのジエチルエーテルで希釈した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチル 98:2を用いる分取TLCで精製して1.8 g (4 mmol; 64.5%) の黄色油を得た。 Rf = 0.43 (Hex./AcOEt 97:3)
MS (IS): [M+Na]+ = 483.1; 485.1; 487.1 (1:2:1)
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 0.2 (s、6H、2xCH3)、1.0 (s、9H、tBu)、3.8 (s、3H、OCH3)、5.6 (dd、1H、CH3JHF = 10Hz、2JHF = 44Hz)、6.8-6.9 (d、1H、CHar)、7.0-7.1 (t、2H、2xCH).
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): -4.4; 18.6; 25.9; 55.7; 96; 82.5; 82.8; 95.8; 96.1; 98.3; 98.7; 111.5; 121.1; 121.2; 122.4; 122.5; 124.4; 144.9; 152.8
【0054】
1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-tert-ブチル-ジメチル-シリルオキシフェニル)エテン (4)の合成
工程 1.テトラメチルピペリジド溶液の調製
1.9 mL (11.7 mmol; 3 当量)の 2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを4 mLの無水 THFに溶解した;溶液を-80℃まで冷却し、3.9 mL (9.8 mmol; 2.5 当量)のヘキサン中2.5 M のBuLi溶液を添加した。混合物を0℃で2時間撹拌した。
【0055】
工程 2. 脱水素臭素化(Dehydrobromination)
5mLの無水 THF中の1.8 g (3.9 mmol)のDA 62の溶液をあらかじめ-100℃に冷却しておいたテトラメチルピペリジド溶液に添加した。 1時間後、反応を10 mL HCl 0.1 Nで洗浄し、水相を2x10 mL Et2Oで逆抽出した。有機抽出物を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、n-ヘキサン/酢酸エチル 97:3を用いて分取シリカプレートで精製し、857 mg (2.3 mmol; 59%) の生成物を得た。 Rf = 0.8、Hex./アセトン 8:2中
MS (IS): [M+Na]+ = 401.4; 403.4 (1:1)
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 0.2 (s、6H、2xCH3)、1.0 (s、9H、tBu)、3.8 (s、3H、OCH3)、6.8-6.9 (d、1H、CH)、7.1-7.15 (d、1H、CH)、7.2-7.3 (dd、1H、CH)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): -4;4; 18.6; 25.9; 55.7; 111.7; 120.5; 121.9; 122.0; 122.1; 124.3; 144.7; 151.9
【0056】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(4-メトキシ-3-tert-ブチル-ジメチル-シリルオキシフェニル)エテン (5)の合成
20 mL トルエン中の750 mg (1.98 mmol; 1当量)のDA 63、1.260 g (5.94 mmol; 3 当量)の3,4,5-トリメトキシフェニル-ボロン酸、4mLのNa2CO3 2M 水溶液および104 mg (0.09 mmol; 0.05 当量)のPd(Ph3P)4の混合物を一晩還流させた。溶液を室温まで冷却し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、粗混合物を短いシリカゲルカラムに通して触媒を除いた。粗生成物をヘキサン/アセトン 8:2を用いたシリカゲルプレートでのクロマトグラフィーによって精製し、740 mg (1.6 mmol; 81%) の油を得た。Rf = 0.36 、Hex./アセトン 8:2中
MS (IS): [M+NH4]+ = 484.1; [2M+NH4]+ = 950.1
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 0.5 (s、6H、2xCH3)、1.0 (s、9H、tBu)、3.65 (s、6H、2xOCH3)、3.8 (s、3H、OCH3)、3.9 (s、3H、OCH3)、6.5-6.7 (t、2H、2xCH)、6.75-7.0 (dq、3H、3xCH)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ):-4.6;1; 18.6; 25.8; 25.9; 55.7; 56.2; 56.3; 56.4; 61.0; 61.1; 103.4; 105.5; 111.9; 121.0; 122.5; 122.6; 123.8; 145.1; 153.3; 153.8
【0057】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5 トリメトキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エテン (ST2303)の合成
THF (9.4 mmol; 2 当量)中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1M 溶液を0℃で不活性雰囲気下で10 mLの無水 THF中の2.2 g (4.7 mmol)のスチルベン DA 64の溶液 (分子篩上で保存)に滴下した。反応混合物を室温まで昇温させ、4時間後、反応が完了した。混合物を氷に注ぎ、水相をEt2O (3x20 mL)で抽出した; 有機抽出物を回収し、無水 Na2SO4で乾燥させた。
【0058】
粗混合物をn-ヘキサン/アセトン 8:2 を用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.361 g (3.9 mmol; 83%)を得た。
M.p. = 135℃
MS (IS): [M+H]+ = 353.0
[M+NH4]+ = 370.0
[M+Na]+ = 375.0
[M-1]- = 351.0
1H NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 3.75 (s、6H、2xOCH3)、3.8 (s、3H、OCH3)、3.9 (s、3H、OCH3)、5.6 (broad、1H、OH)、6.6 (s、2H、2xCH)、6.75-6.8 (d、1H、CH)、6.85-6.9 (dd、1H、CH)、7.0 (dd、1H、CH)
13C NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 56.2; 61.1; 105.3; 105.4; 110.4; 114.5; 114.6; 121.1; 123.1; 123.6; 125.1; 125.6; 142.1; 145.6; 147.3; 147.5; 147.6; 153.1
19F NMR (282 MHz、 CDCl3、δ): -126.2 (d、JFF = 14.8Hz)、-130.3 (d、JFF = 14.8Hz)
【0059】
実施例 2
ジフルオロニトロ- およびジフルオロアミノコンブレタスタチン (スキーム 2)の合成
2,2-ジブロモ-2-フルオロ-1-(3-ニトロ-4-メトキシ-フェニル)エタノール (7)の合成
40 mLのEt2O/THF (1:1)中の978 mg (5.4 mmol)の3-ニトロ-4-メトキシ-ベンズアルデヒド(6)と1.6 g (5.9 mmol、1.1 当量) のCFBr3の混合物をT = -130℃とした; 3.7 mL (5.9 mmol、1.1 当量)のヘキサン中1.6 M BuLi 溶液を混合物に10分間かけて添加した。
【0060】
反応を25 mLのNH4Cl 飽和溶液でクエンチし、20 mLのジエチルエーテルで希釈した。水相を2x20 mLのジエチルエーテルで逆抽出し、有機画分を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチル 95:5を用いるシリカゲルカラムで精製し、1.146 g (3.1 mmol、57.4 %)の黄色油を得た。 Rf = 0.53 (Hex./AcOEt 6:4)
MS (IS): [M-1]- = 371.8
[M+AcO]- = 431.7
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 3.2 (bs、1H、OH)、4.0 (s、3H、OCH3)、5.1-5.2 (m、1H、CH)、7.05-7.15 (d、1H、CHar) 7.7-7.8 (d、1H、CHar)、8.05 (s、1H、CHar).
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 56.9; 81.5; 81.8; 98.9; 100.3; 104.6; 113.3; 126.3; 127.3; 134.3; 153.8.
【0061】
1,1-ジブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(3-ニトロ-4-メトキシ-フェニル) エタン (8)の合成
5 mL CH2Cl2中のDAST 730μL (5.58 mmol; 1.8 当量)を-78℃の7 mL CH2Cl2中の1.146 g (3.1 mmol)のアルコール (7)の溶液に添加した。反応混合物を0℃まで2時間かけて昇温させ、15 mLのNaHCO3 飽和溶液でクエンチし、20 mLのジエチルエーテルで希釈した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチル 7:3を用いるSiO2でのクロマトグラフィーによって精製し、960 mg (2.6 mmol; 84 %)の黄色油を得た。Rf = 0.493 (Hex./AcOEt 7:3)
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 4.0 (s、3H、OCH3)、5.55-5.80 (dd、1H、CH,)、7.1-7.2 (d、1H、CHar)、7.7-7.8 (d、1H、CHar)、8.1 (s、1H、CHar)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 29.9; 56.9; 94.4; 94.8; 97.0; 97.2; 97.4; 113.6; 124.1; 124.4; 126.2、134.0、139.4; 154.5.
【0062】
(E)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(3-ニトロ-4-メトキシ-フェニル)-エテン (9)の合成
工程 1.テトラメチル-ピペリジド溶液の調製
1.3 mL (7.8 mmol; 3 当量)の2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジンを3 mLの無水 THFに溶解した;溶液を-80℃に冷却し、次いで 3.9 mL(9.8 mmol; 2.5 当量)のヘキサン中2.5 M BuLi溶液を添加した。混合物を2時間0℃で撹拌した。
【0063】
工程 2. 脱水素臭素化(Dehydrobromination)
5mLの無水 THF中の960 mg (2.6 mmol)の (8)の溶液をあらかじめ-100℃に冷却しておいたテトラメチルピペリジド溶液に添加した。1時間後、反応を10 mL HCl 0.1 Nで洗浄し、水相を2x10 mL Et2Oで逆抽出した。有機抽出物を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、n-ヘキサン/酢酸エチル 8:2を用いてシリカゲルで精製して100 mg (0.34 mmol; 13%)の生成物を得た。 Rf = 0.36、Hex./アセトン 8:2中
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 4.0 (s、3H、OCH3)、7.1-7.2 (d、1H、CHar)、7.8-7.9 (d、1H、CHar)、8.2 (s、1H、CHar)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 57.0; 113.6; 113.8; 120.5; 120.9; 124.6; 125.1; 125.4; 126.2; 126.3; 128.8; 129.3; 133.3; 134.0; 141.1; 141.3; 144.4; 144.6; 154.0
【0064】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3-ニトロ-4-メトキシ-フェニル)エテン (10)の合成
4 mL トルエン中の90 mg (0.31 mmol; 1当量)の(9)、198 mg (0.93 mmol; 3 当量)の3,4,5-トリメトキシフェニル-ボロン酸、0.6 mLのNa2CO3 2M 水溶液および19 mg (0.0016 mmol; 0.05 当量)のPd(Ph3P)4の混合物を2.5時間還流した。溶液を室温まで冷却し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、粗混合物を短いシリカゲルカラムに通して触媒を除いた。粗生成物をヘキサン/アセトン 8:2を用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製して57 mg (0.15 mmol; 48 %) の黄色油を得た。 Rf = 0.17、 Hex./アセトン 8:2中
MS (IS): [M+H]+ = 382.4; [M+NH4]+ = 399.3.
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 3.75 (s、6H、2xOCH3)、3.85 (s、3H、OCH3)、4.0 (s、3H、OCH3)、6.6 (s、2H、2xCHar)、6.95-7.05 (dq、1H、CHar)、7.4-7.5 (d、1H、CHar)、7.9 (s、1H、CHar)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 29.9; 56.4; 56.9; 61.2; 105.9; 113.6; 125.1; 133.3; 153.7
【0065】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)エテン (ST2578)の合成
AcOH (5 mL)中の40 mg (0.105 mmol)のニトロ-スチルベン (10)の溶液に亜鉛粉末75 mg (1.15 mmol; 11 当量)を添加した;混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を蒸発させて乾燥させた。
【0066】
粗生成物をCH2Cl2を用いたシリカゲルクロマトグラフィー、次いで分取HPLCで精製して32 mg (0.091 mmol; 87 %)の白色固体を得た。Rf = 0.31 CH2Cl2
【0067】
分取HPLCから得たトリフルオロ酢酸塩の小部分(4 mg)をイオン交換カラム IRA402*Cl-にかけ3 mgの対応する HCl塩を得た(ST2578)。
MS (IS): [M+H]+ = 352.3; [2M+H]+ = 703.1
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 3.7 (s、6H、2xOCH3)、3.85 (s、3H、OCH3)、4.0 (s、3H、OCH3)、6.6 (s、2H、2xCHar)、6.7-6.8 (t、1H、CHar)、6.85-6.90(d、1H、CHar)、6.95 (s、1H、CHar)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 29.9; 55.9; 56.3; 56.5; 61.1; 105.0; 105.4; 110.5; 116.6; 121.6; 122.8; 123.1; 125.5; 125.9; 133.0; 143.1; 143.9; 146.6; 149.5; 153.3; 153.7
【0068】
実施例 3
モノフルオロコンブレタスタチンの合成(スキーム 3)
天然CA-4から出発する両方の位置異性体のモノフルオロコンブレタスタチンの合成の常套のアプローチは以下の通りである:
A) CA-4のブロモフッ素化、次いで塩基促進 HBr 除去 (Giannini、G.、Gazz. Chim. It.、1997、127、545; Thakker D.R.、et al.、J. Org. Chem.、1989、54、3091)。
B) CA-4から得たブロモヒドリンの、DASTによるフッ素化、次いで塩基促進 HBr 除去。
C) CA-4からのエポキシドの合成、エポキシド開環により:
-ブロモヒドリンを得、B)のように続ける、または
-フルオロヒドリンを得、次いで適当なヒドロキシル誘導体の除去。
【0069】
あるいは、モノフルオロコンブレタスタチンはスキーム 3aにしたがって全合成により得ることが出来る。
【0070】
このアプローチの鍵となる中間体は3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドについて以下に例証しているようにして調製することが出来る。
【0071】
(E/Z)-1-フルオロ-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エテンの合成
1.63 g (6 mmol、1.2 当量)のCFBr3 を氷浴中に維持した30 mL CH2Cl2中の2.9 g (11 mmol、2.2 当量)のPh3P溶液に添加した。この温度で30分後、980 mgの3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドを混合物に添加し、反応を2時間かけて室温まで昇温させた。混合物を50 mL CH2Cl2で希釈し、塩水で洗浄した。 粗生成物をヘキサン/EtOAc 9:1を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、758 mg (2.6 mmol; 52%)の目的生成物の53:47 Z/E 混合物を無色油として得た。 Rf = 0.23、Hex/EtOAc 9:1中
MS (IS): [M+H]+ = 291.0/293.0
(Z)-異性体 (分取 HPLCによって得た)
1H-NMR (200 MHz、 CDCl3、δ): 3.88 (s、3H、OCH3)、3.89 (s、6H、2xOCH3)、6.66 (d、J=15.4 Hz、1H、CH)、6.75 (s、2H、2xCHar)
(E)-異性体 (分取 HPLCによって得た)
1H-NMR (200 MHz、 CDCl3、δ): 3.87 (s、9H、3xOCH3)、5.93 (d、J=32.2 Hz、1H、CH)、6.65 (s、2H、2xCHar)
【0072】
この中間体は適当なボロン酸を用いて古典的なスズキ様カップリングに供しうる(スキーム 3a参照)。
【0073】
実施例 4
ジフルオロコンブレタスタチンリン酸二ナトリウムプロドラッグの合成 (スキーム 4)
リン酸二ナトリウムプロドラッグ合成の典型的な手順は文献により周知であり(Pettit、G.R.、et al.、Anti-Cancer Drug Design 1998、13、183-191)、遊離フェノール性部分を有する本明細書に記載のすべての化合物に一般に適用可能であると考えられる。一例として、化合物 (6)のリン酸二ナトリウムプロドラッグの合成を報告する。
【0074】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エテン o-ジベンジル-ホスファート (11)の合成
-25℃に冷却した1 mL 乾燥 CH3CN中の30 mgの(6) (0.09 mmol)の溶液に44μL (0.45 mmol; 5 当量)のCCl4 を添加した。5分間混合した後、33μL (0.19 mmol; 2.1 当量)のジイソプロピル-エチルアミン、1 mg (0.009; 0.1 当量)のDMAPおよび 29μLの亜リン酸ジベンジルを溶液に添加し、反応混合物を1.5時間-10℃で撹拌した。
【0075】
5 mL KH2PO4 0.5 Mを注ぐことによって反応をクエンチした; 水相をAcOEt (3x10mL)で洗浄し、有機相を10 mL H2O、次いで10 mL NaCl 飽和溶液で逆抽出した。粗混合物をヘキサン/AcOEt 6:4を用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、55 mgの無色油 (0.088; 98%)を得た。Rf = 0.32、Hex./AcOEt 6:4中
MS (IS): [M+H]+ = 613.4; [M+NH4]+ = 630.2; [M+Na]+ = 635.0
1H-NMR (300 MHz、 CDCl3、δ): 3.70 (s、6H2xOCH3); 3.80 (s、3H、OCH3); 3.85 (s、3H、OCH3); 5.65 (s、2H、CH2); 5.70 (s、2H、CH2); 6.55 (s、2H2xCHar.); 6.80-6.85 (d、1H、CHar.); 7.10-7.15 (dd、1H、CHar.); 7.25 (s、1H、CHar.); 7.35-7.45 (m、10H、CHar.)
13C-NMR (75 MHz、 CDCl3、δ): 29.6; 29.9; 56.1; 56.3; 56.4; 61.1; 70.1; 70.3; 104.3; 105.4; 106.4; 109.1; 112.6; 115.1; 121.7; 125.0; 126.6; 128.1; 128.2; 128.8; 128.9; 129.2; 130.9; 132.3; 135.7; 145.5; 153.2; 153.4
【0076】
(Z)-1,2-ジフルオロ-1-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エテン o-リン酸二ナトリウム [ST2493]の合成
三口丸底フラスコ中でAr 雰囲気下の1.5 mL 乾燥 CH3CN中の50 mg (0.08 mmol)の(11)の溶液に、24 mg (0.16 mmol; 2 当量)のNaIを添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、1 mL CH3CN中の20μLの(CH3)3SiCl (0.16 mmol; 2当量) 溶液を滴下した。1.5時間後、1当量の NaIと1当量の (CH3) 3SiClを添加し、反応を完了させた。水 (塩を溶解するだけの量)を添加し、10% Na2S2O3 水溶液(1 mL)の添加により淡黄色が消えた。有機相を分離し、水相をAcOEt (4x4mL)で抽出した。合した有機抽出物を濃縮して黄色ロウ状固体を得た。
【0077】
固体を1.5 mL 乾燥 MeOH (分子篩上で保存)に溶解し、9 mg (0.16 mmol; 2 当量)のナトリウムメトキシドを添加し、溶液を室温で12時間撹拌した。メタノールを減圧下で除去し、固体を水-アセトンおよびメタノール-アセトンから再結晶させ、35 mg (0.073 mmol; 91%)の化合物 (ST2493)を白色固体として得た。
1H-NMR (200 MHz、D2O、δ): 3.60 (s、6H2xOCH3); 2.70 (s、3H、OCH3); 3.8 (s、3H、OCH3); 6.70 (bs、2H2xCHar.); 6.85 (bs、2H2xCHar.); 7.55 (s、1H、CHar.).
【0078】
実施例 5
モノジフルオロコンブレタスタチン-4-O-メチルオキシリン酸二ナトリウム [12]の合成
プロドラッグ 12をスキーム 5に記載の経路によって調製した。典型的なメチルオキシ-リン酸化反応方法でまずフェノール性残基を水素化ナトリウムで処理し、次いで記載された方法[Mantyla A. et al.Tetrahedron Lett. 2002、43、3793-4)によって調製した保護化クロロメチルホスファートを処理した。保護基をEtOAc/HCl 飽和溶液により除き、NaOH/H2O 溶液中で二ナトリウム塩を調製した。
【0079】
実施例 6
モノ-ジフルオロアミノコンブレタスタチンアミノ酸アミド誘導体[13]の合成
アミノスチルベン誘導体から出発して、アミノ酸とのカップリングをFmoc経路によって行い、次いでスキーム 6にしたがってα-アミノ保護基を切断した [G.R.Pettit et al.、J.Med.Chem 2002、46、525-31]。
【0080】
実施例 7
ブロモフルオロアミノコンブレタスタチン[14]の合成
スキーム 7の手順にしたがって、ブロモフルオロコンブレタスタチンの2つの異性体(EおよびZ)をフラッシュクロマトグラフィー分離後に単離した。
【0081】
細胞培養および細胞毒性アッセイ
ウシ微小血管内皮細胞 (BMEC)の初代培養物をFolkman (Folkman J.、Haudenschild C.C.、Zetter B.R. Long-term culture of capillary endthelial Cell. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A、1979 Oct; 76(10): 5217-21)によって記載されたようにウシ副腎から得た。BMECを20% 胎児ウシ血清 (FCS)、50 ユニット/ml ヘパリン (Sigma、St. Louis、MO)、50μg/ml ウシ脳抽出物、100 ユニット/ml ゲンタマイシンを追加したDMEMで維持した。 HUVEC (ヒト臍帯静脈内皮細胞)をBioWhittaker (Walkersville、MD)から得て、EGM-2 (BioWhittaker)で培養した。EA-hy 926 細胞株、HUVEC-腺癌不死化細胞ハイブリッドをthe Dipartimento di Scienze Biomediche e Oncologia Umana (Universita di Bari、Italy)から得、10% 血清および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシンを追加したDMEMで培養した。
【0082】
以下の細胞株をATCCから購入し、製造業者の指示に従って培養した: NCIH460 ヒト肺癌、MeWo ヒト黒色腫、MES-SA ヒト子宮肉腫およびHCT116 ヒト結腸直腸癌。Istituto Nazionale Tumori (Milan、Italy)から得たHT-29 ヒト 結腸癌細胞およびA2780 ヒト卵巣癌は10% 胎児ウシ血清 (GIBCO)および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシンを含有するRPMI 1640 (GIBCO)で培養した。
【0083】
増殖に対するST2303の効果を試験するために細胞を96-ウェル組織培養プレート(Corning)におよそ10%集密にて播き、少なくとも 24時間にて付着および回復させた。様々な濃度の化合物を各ウェルに添加した。プレートを24時間インキュベートし、洗浄した後、さらに48時間インキュベートした。生細胞の数をSkehan et al. (1990)に記載のようにスルホローダミン Bで染色することにより測定した。ALLFITコンピュータプログラムにより評価した種々の細胞株に対するST2303の抑制濃度 50 (IC50)±SDを表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
腫瘍増殖評価
インビトロ細胞培養からのNCI-H460 ヒト肺癌をCD-1 ヌードマウスの右側に皮下注射した(3x106 細胞/100μl/マウス)。腫瘍移植の4日後、マウスに以下のスケジュールにしたがって用量50 mg/kgでST2493による腹腔内からの処理を開始した: qdx5/w/3週。同じ用量のCA-4P (コンブレタスタチン A-4 P)を陽性対照として用いた。
【0086】
すべての動物を全処理期間にわたって体重を測定し、薬剤投与量を調節し、処理の過程での体重の減少率を記録した。
【0087】
同じ動物モデルを用いた以下の実験において、 ST2493 (ST2303のプロドラッグ)を、用量25および50 mg/kgでq2dx6 スケジュールにしたがって静脈内投与した。
【0088】
腫瘍増殖はノギスで各腫瘍の最短径(幅)および最長径(長さ)を週に2回測定することによって評価し、抗腫瘍活性は腫瘍増殖のパーセント阻害について評価した。腫瘍体積 (または腫瘍重量*)はノギス測定を用いて以下の式に従って計算した: 腫瘍体積即ちTV (mm3) = [長さ (mm) x幅(mm)2]/2。
【0089】
腫瘍体積阻害パーセント (% TVI)は次式に従って計算した: 100 [(処理群平均腫瘍体積/対照群平均腫瘍体積) x 100]。P 値0.05を統計的に有意とみなした。
【0090】
表2に報告する結果は、ST2493の腹腔内および静脈内投与がともに媒体と比較して有意なTVIをもたらすことを示す。腹腔内処理においてST2493と同量のCA-4Pを比較すると、2つの化合物間に有意差が示された (p=0.0095(11日目)およびp=0.0180(28日目)、Mann Whitney検定)。
【0091】
【表2】

*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001 vs 媒体(Mann Whitney検定)
【0092】
チューブリン重合阻害試験
チューブリン重合試験はCytoDINAMIX Screen(商標)によって行った。チューブリン重合液からの濁度をWallac.のVictor2によって測定した。HTS-チューブリンを1mM GTP (GPEM)と5%グリセロールを含むバッファー PEM [100mM PIPES (pH 6.9)、1mM EGTAおよび1mM MgCl2] に3mg/mlとなるよう希釈し、氷上で放置した。この溶液のアリコットを37℃で、タキソール (3μM)またはコルセミド (3μM)またはコンブレタスタチン (ST1986)または被験化合物の存在下で放置し、340 nmでの吸光度を測定した。IC50 値は「Prism GraphPad」ソフトウェアを用いて非線形回帰分析によって決定した。
【0093】
表3に示す値は3回の独立した測定の平均である。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図 1はジフルオロコンブレタスタチンの合成である。
【図2】図 2はジフルオロニトロ-およびジフルオロアミノ- コンブレタスタチンの合成である。
【図3】図 3はモノフルオロコンブレタスタチンの合成である。
【図4】図 4はジフルオロコンブレタスタチンリン酸二ナトリウムの合成である。
【図5】図 5はモノ-ジフルオロコンブレタスタチンリン酸二ナトリウムオキシメチルの合成である。
【図6】図 6はモノ-ジフルオロアミノコンブレタスタチンアミノ酸アミド誘導体の合成である。
【図7】図 7はブロモフルオロコンブレタスタチンの合成である。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その医薬上許容される塩、ラセミ体および単一エナンチオマー:
【化1】

(I)
[式中:
R1、R2およびR3は同じであっても異なっていてもよく、H、OMe、NO2、NHR'である;
XおよびYは互いに異なり、ハロゲンまたはHである;
Z = H またはハロゲン
R = OH、OPO3Na2、OCH2OPO3Na2、OR'、NO2、NHR';
R' = H、アルキル (C1-C6)、(COCHR''NH)n-H;
R'' = H、アミノ酸側鎖、Ph;
nは1〜3の整数である]。
【請求項2】
以下からなる群から選択される請求項 1の化合物:
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシ、およびRがヒドロキシである化合物;
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシ、Rがアミノまたは置換アミノである化合物;
XおよびYの少なくとも一方がハロゲン、R1-R3がメトキシではなく、Rがヒドロキシである化合物;
RがOPO3Na2である化合物、および、
R'が(COCHR''NH)n-Hである化合物。
【請求項3】
R''が天然アミノ酸の側鎖である請求項1または2の化合物。
【請求項4】
以下からなる群から選択される請求項1の化合物:
X = Y = F; R = OPO3Na2: ジフルオロコンブレタスタチン;
X = Y = F; R = NH2: ジフルオロアミノコンブレタスタチン;
X = H; Y = F; R = OPO3Na2: モノフルオロコンブレタスタチン;
X = F; Y = H; R = OPO3Na2: モノフルオロコンブレタスタチン;
X = H; Y = F; R = NH2: モノフルオロアミノコンブレタスタチン;
X = F; Y = H; R = NH2: モノフルオロアミノコンブレタスタチン;
X= Br; Y=F; R= OPO3Na2:ブロモフルオロコンブレタスタチン。
【請求項5】
以下の工程を含む、XおよびYの両方がFである請求項1の化合物の調製方法:
a) 1-ブロモ-1,2-ジフルオロ-2-(4-メトキシ-3-(保護OH)-フェニル)エテンと3-R1-4-R2-5-R3-フェニルボロン酸との反応、および、
b) 3-(保護OH) 基の回復。
【請求項6】
以下の工程を含む、XおよびYの一方がFで他方が水素である請求項1の化合物の調製方法:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物のブロモフッ素化、および、
b)塩基促進 HBr 除去。
【請求項7】
以下の工程を含む、XおよびYの一方がFである請求項1の化合物の調製方法:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の対応するブロモヒドリンへの変換、および、
b)塩基促進 HBr 除去。
【請求項8】
以下の工程を含む、XおよびYの一方がFである請求項1の化合物の調製方法:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の対応するエポキシドへの変換;
b) 対応するブロモヒドリンへのエポキシドの開環、および、
c)塩基促進 HBr 除去、
あるいは、
d) 対応するフルオロヒドリンへのエポキシドの開環、および、
e)適当なヒドロキシル誘導体の除去。
【請求項9】
以下の工程を含む、XまたはYの一方がFであり、他方がBrである請求項1の化合物の調製方法:
a) XおよびYがHである式(I)の化合物の対応するブロモヒドリンへの変換、および、
b)塩基促進 HBr 除去。
【請求項10】
チューブリン部位の認識およびチューブリン部位への結合のための請求項1-4のいずれかの化合物の使用。
【請求項11】
医薬としての請求項1-4のいずれかの化合物の使用。
【請求項12】
疾病状態の治療用医薬の調製のための請求項1-4のいずれかの化合物の使用。
【請求項13】
該疾病状態が腫瘍である請求項12の使用。
【請求項14】
該腫瘍が、肉腫、癌腫、癌様体、骨腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ性白血病、急性前骨髄球性白血病、骨髄性白血病、単球性白血病、巨核芽球性白血病および非ホジキン病、血管腫および多発性骨髄腫、未分化甲状腺癌からなる群から選択される請求項13の使用。
【請求項15】
抗転移薬としての請求項5の化合物の使用。
【請求項16】
該疾病状態が異常な血管新生によって引き起こされる請求項12の使用。
【請求項17】
異常な血管新生によって引き起こされる該疾病状態が、腫瘍転移; 関節疾患; 糖尿病性網膜症; 黄斑変性症、乾癬; 慢性炎症性疾患または動脈硬化症からなる群から選択される請求項16の使用。
【請求項18】
該疾病状態が非腫瘍性疾患である請求項12の使用。
【請求項19】
請求項1-4の少なくともいずれかの化合物を、少なくとも一つの医薬上許容される担体および/または賦形剤と混合して含む医薬組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530428(P2007−530428A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520108(P2006−520108)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000375
【国際公開番号】WO2005/007603
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】