説明

フルオロプラスチック層を含む多層製品

【課題】フッ素化されていないポリマー層に結合したフルオロプラスチック層を特色とする多層製品を提供する。
【解決手段】フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンから誘導される共重合単位を含み、フッ化ビニリデンの量が少なくとも0.1重量%であるが20重量%未満であり、少なくとも200℃の融点を有するフルオロプラスチック層を含む第1のポリマー層14とフッ素化されていないポリマーを含む第2のポリマー層12を結合した多層製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの層がフルオロプラスチックである多層製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ポリマー(「フルオロポリマー」としても知られる)は商業的に有用な種類の材料である。フルオロポリマーとしては、例えば架橋フルオロエラストマー、および半結晶質またはガラス状フルオロプラスチックが挙げられる。フルオロプラスチックは概して熱安定性が高く、特に高温で有用である。それらは非常に低い温度で極度の強靭性と可撓性も示す。これらのフルオロプラスチックの多くは、多種多様な溶剤中でほぼ完全に不溶性であり、概して耐薬品性である。いくつかは極度に低い誘電損失および高い絶縁耐力を有し、ユニークな非粘着性および低摩擦係数を有しても良い。例えばF.W.Billmeyer著「Textbook of Polymer Science」第3版、398〜403ページ、John Wiley & Sons、New York(1984)を参照されたい。
【0003】
フルオロエラストマー、特にフッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンなどのその他のエチレン性不飽和ハロゲン化モノマーとの共重合体は、シール、ガスケット、およびライニングなどの高温用途で特定の有用性を有する。例えばR.A.Brullo著「Fluoroelastomer Rubber for Automotive Applications」Automotive Elastomer & Design、1985年6月号、「Fluoroelastomer Seal Up Automotive Future」Materials Engineering、1988年10月号、およびW.M.Grootaertら「Fluorocarbon Elastomers」Kirk−Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、990〜1005ページ(第4版、John Wiley & Sons、1993)を参照されたい。
【0004】
自動車産業では、揮発性燃料基準に関する懸念の高まりが、改善された遮断性を有する燃料システム構成要素の必要性を引き起こした。これは、燃料充填ライン、燃料供給ライン、燃料タンク、およびその他の自動車燃料系要素などの自動車要素を通過する燃料蒸気の透過を減らすのを助ける。このような自動車要素中では、フルオロポリマー層を含有する多層チュービングおよびその他の製品が使用されて、耐薬品性の透過障壁を提供する。例えばテトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(TFE−VDF−HFP)フルオロプラスチック層が1面でエラストマー(例えばフルオロエラストマーや、ニトリルゴムまたはエピクロロヒドリンゴムなどのフッ素化されていないエラストマーなど)からできた比較的薄い内層に結合し、もう1つの面で比較的厚い外側カバーストック層に結合する多層製品が、この目的のために使用されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、フルオロプラスチックが少なくとも200℃の融点を有し、少なくともTFEとVDFとの共重合した単位を含有し、VDFの量が少なくとも0.1重量%であるが20重量%未満である場合に、フッ素化されていないポリマー層に結合したフルオロプラスチック層を特色とする多層製品が、良好な燃料透過抵抗性などの有用な特性を示すという発見に関する。好ましくはフッ化ビニリデン単位の量は少なくとも3重量%であり、より好ましくは3〜15重量%の間であり、さらにより好ましくは10〜15重量%の間である。少なくともTFEとVDFの単位を含み、VDF単位の量が0.1〜15重量%の間であり、より好ましくは3〜15重量%の間であり、さらにより好ましくは10〜15重量%の間であるフルオロプラスチックも有用である。このようなフルオロプラスチックは、任意に200℃を越える融点を有しても良い。2層間の接着力は、ASTM D 1876(T型剥離試験)による測定で好ましくは少なくとも5N/cmであり、より好ましくは少なくとも15N/cmである。
【0006】
TFEおよびVDFモノマーと共重合できるその他のモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、オレフィンモノマー、および完全フッ素化(過フッ素化)(perfluorinated)されたアルキルまたはアルコキシビニルエーテルモノマー(例えば0.1〜5重量%範囲の量で)が挙げられる。有用な1種のフルオロプラスチックとしては、0.1〜15重量%(好ましくは10〜15重量%)のVDF、60〜85重量%のTFE、および10〜30重量%のHFPから誘導される共重合した単位が挙げられる。加工を容易にするために、フルオロプラスチックは多様式の分子量分布を有しても良い。
【0007】
フッ素化されていないポリマー層は、エラストマーまたは熱可塑性ポリマーであっても良い。また熱可塑性エラストマーを使用しても良い。多層製品は、第1のポリマー層が第2と第3のポリマー層との間に置かれるように第1のポリマー層に結合した、第3のポリマー層をさらに含んでも良い。第3のポリマー層のための適切な材料としては、エラストマーが挙げられる。エラストマーはフッ素化されていても、フッ素化されていなくても良い。
【0008】
多層製品のいずれかのまたは全ての層は、導電性であっても良い。しかし好ましくは導電性であるのは最も内側の層であり、ここで「最も内側」とは例えば燃料またはその他の液体と接触するように設計された層を指す。したがって例えば2層構造では、典型的に導電性であるのはフルオロプラスチック層であり、上述の第2と第3のポリマー層の間にフルオロプラスチック層が置かれた3層構造では、典型的に導電性であるのは第3のポリマー層である。
【0009】
製品の個々の層は、互いに直接結合しても良い。代案としては、それらはポリアミンなどの結合層の手段によって共に結合しても良い。この目的のために特に有用なポリアミンは、1,000を越える分子量を有するポリアリルアミンである。
【0010】
多層製品は、シート、フィルム、容器、ホース、チューブをはじめとする多種多様な形状で提供されても良い。製品は、耐薬品性および/または遮断性が必要な場合に特に有用である。製品の特定用途例としては、硬質および軟質再帰反射シート、粘着テープなどの接着剤製品、塗装代用フィルム、抵抗軽減フィルム、燃料系路および給油口ホース、作動油ホース、排気取り扱いホース、燃料タンクなどにおけるそれらの使用が挙げられる。製品は薬品取り扱いおよび加工用途において、そしてワイヤおよびケーブルコーティングまたはジャケットとしても有用である。
【0011】
発明の1つ以上の実施態様の詳細を添付の図面および以下の説明で述べる。発明のその他の特色、目的、および利点は、説明および図面から、そして請求項から明らかになるであろう。
様々な図面中の同様の参照記号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従った多層製品の断面図である。
【図2】本発明に従った多層製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
有用な多層ラミネートは、少なくとも、フッ素化されていないポリマー層に1面が結合したフルオロプラスチック層を含む。ラミネートは、その他の層も含んでも良い。例えばラミネートは、フッ素化されていないポリマー層が結合する面の反対側の面に、フルオロプラスチック層に結合したポリマー層を含んでも良い。このポリマー層は、フルオロポリマーまたはフッ素化されていないポリマーであっても良い。
【0014】
フルオロプラスチックは、少なくともTFEおよびVDFから誘導される共重合した単位を含み、VDFの量は少なくとも0.1重量%であるが20重量%未満であり、少なくとも200℃の融点を有する。VDFの量は好ましくは3〜15重量%、より好ましくは10〜15重量%の範囲である。フルオロポリマーは、1つ以上の追加的なモノマーから誘導される共重合した単位をさらに含んでも良い。これらのモノマーは、HFP、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2−クロロペンタフルオロプロペン、過フッ素化されたビニルエーテル(例えばCFOCFCFCFOCF=CFなどのペルフルオロアルコキシビニルエーテルと、CFOCF=CFおよびCFCFCFOCF=CFなどのペルフルオロアルキルビニルエーテル)などのフッ素含有モノマー、およびペルフルオロジアリルエーテルやペルフルオロ−1,3−ブタジエンなどのフッ素含有ジオレフィンであっても良い。それらはまた、オレフィンモノマー(例えばエチレン、プロピレンなど)などのフッ素を含有しないモノマーであっても良い。特に有用なフルオロプラスチックは、200℃を越える融点および10〜15重量%の間のVDFを有するTFE−HFP−VDFターポリマーである。VDF含有フルオロプラスチックは、例えばその内容を本願明細書に引用したSulzbachらのU.S.4,338,237で概説されたエマルジョン重合法を使用して調製しても良い。
【0015】
フッ素化されていないポリマーは、典型的に10モル%未満、好ましくは2モル%未満、そしてより好ましくは1モル%未満の炭素結合したフッ素元素を有する。特定のフッ素化されていないポリマーの選択は、多層製品の用途または耐薬品性および/または難燃性などの所望の特性に左右される。それは熱可塑性ポリマーまたはエラストマーであっても良い。有用な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリアクリレート、およびポリメタクリレートが挙げられる。
【0016】
フッ素化されていないポリマーとして有用なポリアミドは、概して市販される。例えばあらゆる周知のナイロンなどのポリアミドは、多くの供給元から入手できる。特に好ましいポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−11、およびナイロン−12である。特定のポリアミド材料の選択は、多層製品の特定用途の物理的要求に基づくべきであることに留意すべきである。例えばナイロン−6およびナイロン−6,6はナイロン−11およびナイロン−12よりもより良い耐熱特性を提供する一方、ナイロン−11およびナイロン−12はより良い耐薬品特性を提供する。さらにナイロン−6,12、ナイロン−6,9、ナイロン−4、ナイロン−4,2、ナイロン−4,6、ナイロン−7、およびナイロン−8などのその他のナイロン材料、ならびにナイロン−6,Tおよびナイロン−6,1などの環含有ポリアミドを使用しても良い。PEBAXTMポリアミド(ペンシルベニア州フィラデルフィアのAtochem North America)などのポリエーテル含有ポリアミドを使用しても良い。
【0017】
有用なポリウレタンポリマーとしては、脂肪族、脂環式、芳香族、および多環式ポリウレタンが挙げられる。これらのポリウレタンは典型的に、周知の反応機序に従って多官能性イソシアネートとポリオールとの反応によって製造される。ポリウレタンの製造で用いるのに有用なジイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。1つ以上の多官能性イソシアネートの組み合わせを使用しても良い。有用なポリオールとしては、ポリペンチレンアジペートグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−1,2−ブチレンオキシドグリコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。反応中でブタンジオールまたはヘキサンジオールなどの鎖延長剤を使用しても良い。有用な市販されるウレタンポリマーとしては、ニューハンプシャー州シーブルックのMorton InternationalからのPN−04または3429、およびオハイオ州クリーブランドのB.F.Goodrich Co.からのNH、およびX−4107が挙げられる。
【0018】
有用なポリオレフィンポリマーとしては、エチレン、プロピレンなどのホモポリマー、ならびにこれらのモノマーと例えばアクリル系モノマーや、酢酸ビニルおよび高級αオレフィンなどのその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体が挙げられる。このようなポリマーおよび共重合体は、このようなエチレン性不飽和モノマーの従来のフリーラジカル重合または触媒反応によって調製できる。ポリマーの結晶化度を変動することができる。ポリマーは例えば半結晶質高密度ポリエチレンであっても良く、またはエチレンとプロピレンとのエラストマー共重合体であっても良い。アクリル酸または無水マレイン酸などの官能性モノマーを重合または共重合することで、あるいは例えばグラフト、酸化またはイオノマー形成によって重合後にポリマーを変性することで、カルボキシル、酸無水物またはイミド官能基をポリマーに組み込んでも良い。例としては酸変性エチレンアクリレート共重合体、酸無水物変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、酸無水物変性ポリエチレンポリマー、および酸無水物変性ポリプロピレンポリマーが挙げられる。このようなポリマーおよび共重合体は、概して市販される。例えば酸無水物変性ポリエチレンポリマーは、BYNELTM同時押出し可能接着樹脂の商品名の下にデラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours & Co.から市販される。
【0019】
有用なポリアクリレートおよびポリメタクリレートとしては、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのポリマーが挙げられる。
【0020】
上で述べたような有用なフッ素化されていないポリマーの追加的な例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、およびポリ尿素が挙げられる。このようなポリマーの市販例としては、SELARTMポリエステル(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont deNemours & Co.)、LEXANTMポリカーボネート(マサチューセッツ州ピッツフィールドのGeneral Electric)、KADELTMポリケトン(イリノイ州シカゴのAmoco)、およびSPECTRIMTMポリ尿素(ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Co.)が挙げられる。
【0021】
またフッ素化されていないポリマーは、エラストマーであっても良い。有用なエラストマーの例としては、アクリロニトリルブタジエン(NBR)、ブタジエンゴム、塩素化およびクロロスルホン化ポリエチレン、クロロプレン、エチレン−プロピレンモノマー(EPM)ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴム、エピクロロヒドリン(ECO)ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリスルフィド、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニルとNBRとの混合物、スチレンブタジエン(SBR)ゴム、エチレン−アクリレート共重合体ゴム、およびエチレン−酢酸ビニルゴムが挙げられる。市販されるエラストマーとしては、NicolTM1052 NBR(ケンタッキー州ルイスビルのZeon Chemical)、HydrinrTMC2000エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム(ケンタッキー州ルイスビルのZeon Chemical)、HypalonTM48クロロスルホン化ポリエチレンゴム(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours & Co.)、NordelTMEPDM(コネチカット州ノーウォークのR.T.Vanderbilt Co.,Inc.)、VamacTMエチレン−アクリレートエラストマー(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours & Co.)、KrynacTMNBR(ペンシルベニア州ピッツバーグのBayer Corp.)、PerbunanTMNBR/PVC混合物(ペンシルベニア州ピッツバーグのBayer Corp.)、TherbanTM水素化NBR(ペンシルベニア州ピッツバーグのBayer Corp.)、ZetpolTMTM水素化NBR(ケンタッキー州ルイスビルのZeon Chemical)、SantopreneTM熱可塑性エラストマー(オハイオ州アクロンのAdvanced Elastomer Systems)、およびKeltanTMEPDM(ルイジアナ州アディスのDSMElastomers Americas)が挙げられる。
【0022】
多層製品中のいずれかのまたは全ての個々のポリマー層が、1つ以上の添加剤をさらに含んでも良い。有用な添加剤の例としては、顔料、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、導電性材料(例えばU.S.5,552,199で述べられたタイプ)、絶縁材料、安定剤、抗酸化剤、潤滑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、粘度調整剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
多層製品はチューブ、ホース、シートなどをはじめとするいくつかの形状と形態で提供されても良い。図1および2は、製品がチューブまたはホースの形態であり、例えば自動車燃料系中で燃料または蒸気ラインとして使用するのに適切なホースである、2つの実施態様を示す。図1について述べると、より薄い内層14に結合した比較的厚い外層12を含む2層製品10が示される。外層12(「カバーストック」としても知られる)は、上述のようにフッ素化されていないポリマー層であり、製品10に構造の完全性を提供するようにデザインされている。構造の完全性をさらに増強するために、例えば繊維、メッシュおよび/またはワイヤスクリーンなどの補強的補助を別個の層として、あるいは既存の層の一部として製品10に組み込んでも良い。内層14(「障壁」としても知られる)は上述のVDF含有フルオロプラスチックであり、化学薬品および/または熱障壁の役割を果たす。片方または双方の層が添加剤を含んで、それらを導電性にしても良い。
【0024】
図2に示す多層製品16は、障壁層14に結合した軟質ポリマー層18をさらに含むこと以外は、多層製品10に類似している。ポリマー層18のために適切な材料としては、フルオロエラストマーおよびフッ素化されていないエラストマー(例えばニトリルゴム、エピクロロヒドリンゴムなど)が挙げられる。ポリマー層18を含むことの利点は、ホースまたはチューブが硬質コネクタに接続される場合に所望されるシールなどの製品の封止性を改善することである。製品の層のいくつかまたは全部は、それらを導電性にする添加剤を含んでも良い。
【0025】
多層製品は、一般に多層製品を製造する技術分野で既知の方法に従って製造されても良い。例えばフルオロプラスチック層およびフッ素化されていないポリマー層を薄いフィルムまたはシートの形態で調製し、加熱下でおよび/または加圧下で一緒にラミネートして、結合多層製品を形成しても良い。代案としてはフルオロプラスチックおよびフッ素化されていないポリマーを追加的なポリマーと共に同時押出しして、多層製品を形成できる。例えばクロスヘッドダイを使用し、押出しコーティングによって個々の層を調製することも可能である。
【0026】
フッ素化されていないポリマーがエラストマーである場合の多層製品を調製するためのもう一つの有用な方法は、本出願と同時出願されてその内容全体を本願明細書に引用しした「Process for Preparing Multi−Layer Articles Having a Fluoroplastic Layer and an Elastomer Layer」と題された同時係属同一譲受人のU.S.application no. で述べられている。この工程に従って硬化性エラストマーが造形品の形態に押出され、次にクロスヘッドダイを使用して溶融フルオロプラスチックで押出しコーティングされて多層製品が形成され、その後フルオロプラスチック層が加熱される。押出しコーティングに先だって、クロスヘッドダイの上流端内に貼りついたポリテトラフルオロエチレンスリーブの手段によって、硬化性エラストマーが多くの加熱を受けるのが防止される。加熱するステップに続いて、例えばオートクレーブ内で加圧下において硬化性エラストマーを加熱して、それを硬化する。
【0027】
層をくっ付ける方法(例えば押出しまたはラミネート)の熱および圧力は、層の間に適切な接着力を提供するのに十分であるかもしれない。しかし得られる製品を例えば追加的な熱、圧力または両者によってさらに処理して、層間の結合強度を増強することが望ましいかもしれない。押出しによって多層製品を調製する際に追加的な熱を提供する一つの方法は、押出し工程の終わりで多層製品の冷却を遅らせることである。代案としては、構成要素を単に加工するのに要するよりも高い温度で層をラミネートまたは押出しして、多層製品に追加的熱エネルギーを加えても良い。さらにもう一つの代案としては、完成多層製品を長時間高温に保持しても良い。例えば製品温度を上昇させるために、オーブンまたは加熱液体浴などの別個の装置に完成品を入れても良い。またこれらの方法の組み合わせを使用しても良い。
【0028】
層間の結合強度を増大させるもう一つの方法は、多層製品の形成に先だって層の1つ以上の表面を処理することである。このような表面処理は、溶剤を使用した溶液処理から成っても良い。溶剤が例えば1,8−ジアザ[5.4.0]ビシクロウンデク−7−エン(DBU)などの塩基を含有する場合、フルオロポリマーを処理することで、ある程度の脱フッ化水素化が引き起こされる。このような脱フッ化水素化は、引き続いて適用される材料に対する接着力を強化するのに有益であると思われる。これは引き続いて適用される材料が、不飽和部位に反応性のあるいずれかの作用物質を含有する場合に、特にそうである。
【0029】
その他の表面処理の例としては、コロナ放電処理またはプラズマ処理などの荷電雰囲気処理が挙げられる。電子ビーム処理も有用である。
【0030】
また脂肪族ジ−またはポリアミンなどの作用物質を使用して、層間接着力を増強しても良い。アミンは、使用すると多層製品の層間接着剤結合強度の改善が得られるあらゆる分子量であることができる。特に有用なポリアミンは、ゲル透過クロマトグラフィーによる測定で、約1,000を越える分子量を有するポリアリルアミンである。有用な市販されるポリアミンの例は、Nitto Boseki Co.,Ltd.から入手できる約3,000の分子量を有するポリアリルアミンである。
【0031】
溶融混合などの従来の手段を使用して製品を形成するのに先だって、多層製品の1つ以上の層にアミンを組み込んでも良い。代案としてはスプレーコーティング、カーテンコーティング、浸し塗り、浸漬コーティングなどの従来のコーティング方法を使用して1つ以上の層表面にアミンを適用しても良い。
【0032】
ここで以下の実施例によって、発明をさらに説明する。
【実施例】
【0033】
以下の実施例で使用されるフルオロプラスチックは、使用したモノマーおよびモノマーの比率が表1に示した通りであったこと以外は、U.S.4,338,237の実施例1〜14で開示されたエマルジョン重合方法に従って調製し重合させた。各フルオロプラスチックは、U.S.5,506,281およびU.S.5,055,539で概説される方法を使用してラテックスの形態で製造し、引き続いてそれを凝固させた。得られる固形沈殿物を分離して水で何回も洗浄し、真空中120℃で乾燥させてフルオロプラスチックを得た。
【0034】
実施例1〜4および比較例C−1およびC−2
上述の手順に従って、5種のフルオロプラスチックポリマーを調製した。各ポリマーの組成を表1に示す。便宜上、種々のフルオロプラスチックを表1ではフルオロプラスチックA〜Dと表す。各フルオロプラスチックの融解温度は、Perkin Elmerから入手できるPyris 1装置を使用して、示差走査熱量測定によって測定した。表1に報告する値はDSC曲線のピークを表す。
【0035】
250℃に設定したWabash Hydraulic Press内にフルオロプラスチック組成物を3分間入れて、それぞれが約250μmの厚さを有するフルオロプラスチックフィルムを調製した。各フィルムを直径7.72cm(3インチ)を有するディスクに切断し、透過試験で使用した。表1に報告した透過係数は、以下の変更点または詳細によって、ASTM D 814−86(Reapproved 1991)で述べられた手順を使用して得られた。ASTM 814のガラス瓶はASTM 96で述べられるようにThwing Albert Vapometer Permeability Cupに置き換えられた。使用したガスケットはネオプレンではなく、DyneonFE−5840Qエラストマーからできており試験標本の上下双方に位置した。メッシュスクリーンの円盤をガスケット上で使用し、試験中に試験標本が変形するのを防止した。試験液は100mlのCE10燃料(10%エタノール、45%イソオクタン、45%トルエン)であった。試験温度は60℃であった。2週間にわたり毎日重量減少を測定して透過係数を計算した。日数に対して累積重量減少をプロットして得られた曲線の傾きを試験標本の面積で除して、その厚さを乗じた。
【0036】
比較のために、商品名「THV500」および「THV610X」の下にミネソタ州セントポールのDyneon LLCから市販される2種のフルオロプラスチックの透過係数も測定した。これらの値も表1に報告した。
【0037】
表1に示す結果は、フルオロプラスチックフィルムが少なくとも200℃の融解温度、および20重量%未満のVDF含量を有し、良好な透過抵抗性を示すことを実証した。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例5
クロスヘッドダイを使用して、内径約32mmを有する押出したニトリルゴムチューブにフルオロプラスチックA(表1)を塗布した。次にクロスヘッドダイ付きゴム押出し機を使用して、フルオロプラスチック被覆されたニトリルゴムチューブをニトリルゴムで覆い、その後メリヤス機を使用して、繊維強化層を構造物に適用した。クロスヘッドダイ付きゴム押出し機を使用して、最終カバーストック層を繊維強化層上に押出した。次に得られた多層ホースを冷却し、硬化サンプルに切断した。サンプルを鋼マンドレルに載せて、オートクレーブ内で蒸気を使用して160℃の温度および0.4MPaの圧力で40分間熱硬化した。硬化に続いてサンプルをオートクレーブから取り出して室温に冷却した。
【0040】
透過試験で使用するために、硬化したホースサンプルを長さ315mmのホースに切断した。透過測定のため、約7%のホースの膨張を見込んだ直径の金属プラグを使用して、ホースの両端に栓をした。次にプラグをねじ式のクランプで止めた。各サンプル試験ホースのプラグの1つを6.35mmねじ込みプラグに取り付けて、ホースにCE10燃料(10%エタノール、45%イソオクタン、45%トルエン)を満たし、次にねじをきつく締めて漏れ止めシールを形成した。ホースを燃料に60℃で6週間浸し、サンプルを燃料で順化させた。
【0041】
フレームイオン化検出器(FID)によって燃料系統内の小型構成要素からの炭化水素放出を測定するように設計された、マイクロSHED(揮発性測定のためのマイクロシールされたハウジング)を使用して、透過率を測定した。マイクロ−SHED試験手順および装置の詳細はAnders AronssonおよびMarika Mannikko著「Micro SHED」SAE Technical Paper No.980402(1998)で述べられている。SHED試験の実施前に、新鮮なCE10燃料で6〜18時間サンプルチューブをリフレッシュした。SHED試験中、充填されたプラグを通じてSHED装置外にサンプルを排気してあらゆる圧力の影響を最小化した。SHED試験の温度は60℃に設定した。結果を表2に示す。
【0042】
実施例6
フルオロプラスチックAの代わりにフルオロプラスチックB(表1)を使用したこと以外は、実施例5の手順に従った。結果を表2に示す。
【0043】
比較例C−3
フルオロプラスチックAの代わりにTHV−500を使用したこと以外は、実施例5の手順に従った。結果を表2に示す。結果は、少なくとも200℃の融解温度と20重量%未満のVDF含量を有するフルオロプラスチックを使用して調製された多層製品が、良好な透過抵抗性を示すことを実証した。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例7
Nitto Boseki Co.(日本、東京)から入手できる50gのPAA 10C(10%PAA水溶液、分子量10,000)を450gの2−プロパノール中に溶解してポリアリルアミン(PAA、CAS番号[30551−89−4])の1重量%溶液を製造した。スプレーコーターを使用して、以下の組成を有する硬化性フルオロエラストマーの押出しチューブに溶液を塗布した。100部のDyneon FE−5830Qフルオロエラストマー(ミネソタ州セントポールのDyneon LLC)、12部のN−990カーボンブラック(ジョージア州アルファレッタのCabot Corp.)、10部のVulcan XC−72導電性カーボンブラック(ジョージア州アルファレッタのCabot Corp.)、6部の水酸化カルシウムHP(イリノイ州シカゴのC.P.Hall)、9部の酸化マグネシウム(商品名ElastomagTM170の下にマサチューセッツ州ダンバーズのMorton Internationalから市販される)、4部の酸化カルシウムHP(イリノイ州シカゴのC.P.Hall)、および0.5部のカルナバワックス(ジョージア州バリントンのTaber Inc.)。フルオロエラストマーチュービングは、肉厚0.33mmで12mmの外径を有した。
【0046】
クロスヘッドダイを使用して、フルオロエラストマーのPAA被覆チューブ上に、フルオロプラスチックB(表1)を押出した。フルオロプラスチック被覆されたゴムチューブを冷却し、硬化サンプルに切断した。サンプルを鋼マンドレルに載せ、オートクレーブ内で蒸気を使用して155℃の温度と0.4MPaの圧力で60分間熱硬化した。硬化に続いてサンプルをオートクレーブから取り出して、室温に冷却した。
【0047】
接着力試験タブを提供するために、切り込みを入れてフルオロプラスチック外層の7mm幅ストリップをフルオロエラストマーコアから切り離し、硬化したサンプルの引きはがし粘着力を評価した。100mm/分のクロスヘッド速度に設定したInstron Corp.から入手できるInstron(登録商標)モデル1125試験機を試験装置として使用した。剥離角度が90度であったこと以外はASTM D 1876(T型剥離試験)に従って、フルオロプラスチックとフルオロエラストマー層の間の剥離強さを測定した。平均値を表3に報告する。
【0048】
またElectro−tech System Inc.から入手できる抵抗計モデル872Aを使用し、ASTM D257に従ってこのホースサンプルの表面抵抗性を測定したところ、9.6×10Ω/スクエアであった。
【0049】
実施例8
ポリアリルアミンがNitto Boseki Co.から入手できる25gのPAA−EtOH(20%のPAAエタノール溶液、分子量3,000)を475gの2−プロパノールに溶解して作られた1%溶液であったこと以外は、実施例7の手順に従った。試験結果を表3に示す。
【0050】
実施例9
PAAコーティングを除外したこと以外は、実施例7の手順に従った。結果を表3に示す。結果はPAAコーティングの使用が、層間接着を増強することを実証する。
【0051】
【表3】

【0052】
発明のいくつかの実施態様について述べた。しかし発明の精神と範囲を逸脱することなく種々の修正が可能であるものと理解される。したがってその他の実施態様は、以下の請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンから誘導される共重合した単位を含み、フッ化ビニリデン単位の量が少なくとも0.1重量%であるが20重量%未満である、少なくとも200℃の融点を有するフルオロプラスチックを含む第1のポリマー層と、
(B)フッ素化されていないポリマーを含み、前記第1のポリマー層に結合した第2のポリマー層と、
を含む多層製品。
【請求項2】
フッ化ビニリデン単位の量が少なくとも3重量%であるが20重量%未満である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項3】
フッ化ビニリデン単位の量が3〜15重量%の間である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項4】
フッ化ビニリデン単位の量が10〜15重量%の間である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項5】
前記フルオロプラスチックが、ヘキサフルオロプロピレンから誘導される共重合した単位をさらに含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項6】
前記フルオロプラスチックが、完全フッ素化されたアルコキシビニルエーテルモノマー、完全フッ素化されたアルキルビニルエーテルモノマー、およびそれらの組み合わせから成る群より選択されるビニルエーテルモノマーから誘導される共重合した単位をさらに含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項7】
前記ビニルエーテルモノマーから誘導される単位の量が0.1〜5重量%の間である、請求項6に記載の多層製品。
【請求項8】
前記フルオロプラスチックが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される共重合した単位から実質的に成り、フッ化ビニリデン単位の量が10〜15重量%の間である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項9】
前記フルオロプラスチックが、0.1〜15重量%のフッ化ビニリデン、60〜85重量%テトラフルオロエチレン、および10〜30重量%のヘキサフルオロプロピレンから誘導される共重合した単位を含む、請求項5に記載の多層製品。
【請求項10】
前記フッ素化されていないポリマーがエラストマーを含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項11】
前記エラストマーが熱可塑性エラストマーである、請求項10に記載の多層製品。
【請求項12】
前記エラストマーが、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−アクリレート共重合体ゴム、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項10に記載の多層製品。
【請求項13】
前記フッ素化されていないポリマーが熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項13に記載の多層製品。
【請求項15】
前記第1および第2のポリマー層の間の接着力が少なくとも5N/cmである、請求項1に記載の多層製品。
【請求項16】
前記第1および第2のポリマー層の間の接着力が少なくとも15N/cmである、請求項1に記載の多層製品。
【請求項17】
前記フルオロプラスチックが、多様式の分子量分布を有する、請求項1に記載の多層製品。
【請求項18】
前記第1および第2のポリマー層の間に置かれた結合層をさらに含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項19】
前記結合層がポリアミンを含む、請求項18に記載の多層製品。
【請求項20】
前記ポリアミンがポリアリルアミンを含む、請求項19に記載の多層製品。
【請求項21】
前記ポリアリルアミンが1,000を越える分子量を有する、請求項20に記載の多層製品。
【請求項22】
前記第1のポリマー層が前記第2および第3のポリマー層の間に置かれるように、第1のポリマー層に結合した前記第3のポリマー層をさらに含む、請求項1に記載の多層製品。
【請求項23】
前記第3のポリマー層が前記第1のポリマー層に直接結合した、請求項22に記載の多層製品。
【請求項24】
前記第1および第3のポリマー層の間に置かれた結合層をさらに含む、請求項22に記載の多層製品。
【請求項25】
前記第3のポリマー層がエラストマーを含む、請求項22に記載の多層製品。
【請求項26】
前記エラストマーがフルオロエラストマーを含む、請求項25に記載の多層製品。
【請求項27】
前記エラストマーがフッ素化されていないエラストマーを含む、請求項25に記載の多層製品。
【請求項28】
前記フッ素化されていないエラストマーが、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンジエンモノマーゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−アクリレート共重合体ゴム、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項27に記載の多層製品。
【請求項29】
前記第1のポリマー層が導電性である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項30】
前記第3のポリマー層が導電性である、請求項22に記載の多層製品。
【請求項31】
前記製品がシートの形態である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項32】
前記製品がホースの形態である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項33】
(A)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンから誘導される共重合した単位を含むフルオロプラスチックを含み、フッ化ビニリデン単位の量が0.1〜15重量%の間である、第1のポリマー層と、
(B)フッ素化されていないポリマーを含み、前記第1のポリマー層に結合した第2のポリマー層と、
を含む、多層製品。
【請求項34】
フッ化ビニリデン単位の量が3〜15重量%の間である、請求項33に記載の多層製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86571(P2012−86571A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264049(P2011−264049)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2002−521030(P2002−521030)の分割
【原出願日】平成12年12月14日(2000.12.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】