説明

フルオロプロパンからなる発泡剤およびプラスチック発泡体の製造方法

【構成】1. 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤。2. 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを発泡剤として用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法。
【効果】オゾン層を破壊する危険性がなく、不燃性であり、発泡体原料との相溶性に優れた発泡剤を使用することにより、断熱性能、機械的強度、寸法安定性などに優れたプラスチック発泡体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチック発泡体、特にイソシアネートを基材とする発泡体、好ましくはポリウレタン発泡体の製造のための発泡剤およびこの発泡剤を用いたプラスチック発泡体の製造方法に関する。
【0002】なお、本明細書において、“%”および“部”とあるのは、それぞれ“重量%”および“重量部”を意味する。
【0003】
【従来技術】ポリウレタンフォームなどのプラスチック発泡体の製造に使用される発泡剤としては、従来、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)が主に使用されてきた。
【0004】しかしながら、近年、大気中に放出された場合に、ある種のフロンが成層圏のオゾン層を破壊し、その結果、人類を含む地球上の生態系に重大な悪影響を及ぼすことが指摘されている。従って、オゾン層破壊の危険性の高いフロンについては、国際的な取決めにより、使用および生産が制限されるに至っている。上記のCFC−11は、この制限の対象となっており、この点からも、オゾン層破壊問題を生ずる危険性のない或いはその危険性の低い新たな発泡剤の開発が必要となっている。
【0005】オゾン層に対する影響が小さいフロンとして、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)が提案されているが、これらは分子中に塩素原子を含むので、依然としてオゾン層を破壊する危険性がある。
【0006】最近、塩素原子を含まずオゾン層を破壊する危険性のないフッ素化炭化水素を用いる発泡剤として(1)特開平2−29440号は、CF3 CH2 CH2 CF3 を、(2)特開平2−235982号は、炭素数3〜5のHFCとしてCF3 CH(CH3 )CF3 、CF3 CH2 CF3 およびCH3 CF2 CH2 CHF2 を、(3)特開平2−265933号は、炭素数3のHFCを、また(4)特開平3−746号は、C4 9 HおよびH(CF2 4 Hをそれぞれ提案している。
【0007】これらの発泡剤は、確かにオゾン層を破壊する危険性はないが、可燃性で火災の危険があること、ポリオールに対する溶解性が乏しく、使用できるポリオールが限定されること、或いは得られる発泡体の断熱性能、機械的強度などが十分でないことなどの欠点を有しており、未だ改良の余地がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、オゾン層を破壊する危険性がなく、不燃性であり、発泡体原料との相溶性に優れ、しかも得られる発泡体に優れた断熱性、機械的強度などを付与し得るプラスチック発泡体製造用発泡剤、および該発泡剤を用いたプラスチック発泡体の製造方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来技術における上記の如き問題点に鑑みて研究を重ねた結果、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを発泡剤として用いることにより、上記目的を達成し得るを見出した。
【0010】即ち、本発明は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤を提供するものである。
【0011】また、本発明は、発泡剤として1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CF3 CH2 CHF2 ;以下、単にHFC−245faと記載する。)を用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法を提供するものである。
【0012】本発明で用いられるHFC−245faは、公知の化合物であり、その製造方法も文献に記載されている(例えば、Izv.Akad.Nauk.SSSRSer.Khim.,1960,1412を参照)。
【0013】HFC−245faの主な物性を第1表に示す。
【0014】
第 1 表 分子量 134 沸点 12℃ オゾン破壊係数 0 本発明の発泡剤は、単独で使用しても良く、或いは他の発泡剤または水と併用しても良い。併用し得る他の発泡剤としては、例えば、CFC−11、CFC−12およびその他の低沸点ハロゲン化炭化水素;n−ペンタン,イソペンタンなどの低沸点炭化水素;不活性ガスなどが挙げられる。
【0015】これらの併用物質は、本発明の発泡剤と共沸組成物を形成することがより好ましい。例えば、HFC−245faとn−ペンタンまたはイソペンタンとは、前者:後者=95〜80%:5〜20%の組成範囲で共沸を形成する。
【0016】本発明発泡剤には、必要に応じ、安定化剤を配合することが出来る。この様な安定化剤としては、下記の様なものが例示される。
【0017】*少なくとも1個の二重結合を有するアルケニル基含有化合物:1,4−ヘキサジエン、アレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、β−ミルセン、イソプロペニルトルエン、ブタジエン、アロオシメン、
【0018】
【化1】


【0019】*エポキシ基含有化合物類;例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、、グリシド−(2−ニトロ−フェニルエーテル)、グリシド−(2−ニトロ−4−クロロ−フェニルエーテル)、グリシド−(4−ビニル−フェニルエーテル)、グリシド−(4−イソプロペニル−フェニルエーテル)、1,3−ブタジエニルグリシジルエーテル、3−メチル−1,3−ブタジエニルグリシジルエーテル、3−ビニル−1,3−ブタジエニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、アクリル酸グリシジルエステル、フランカルボン酸グリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル−p−イソプロペニルフェニルエーテル、グリシジル−p−ニトロフェニルエーテルなど。
【0020】*アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステル類;例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノエチルメタクリレートなど。
【0021】*ポリアルコキシル化メタクリレート類;例えば、ポリエチレングリコールモノエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノエチルメタクリレートなど。
【0022】*フェノール類;例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなど。
【0023】*環状アルキレンカーボネート類;例えば、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、スチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネートなど。
【0024】*ニトロ化合物類;例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼンなど。
【0025】*ベンゾフェノン類;例えば、t−ブチルクロロベンゾフェノン、イソアミルベンゾフェノンなど。
【0026】*ベンゾトリアゾール類;ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシメチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(3´,5´−ジ−t−ブチル−2´−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなど。
【0027】*フェニルサリチレート類;例えば、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなど。
【0028】これらの安定化剤は、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。これらの安定化剤の使用量は、安定化剤自体の種類、発泡成分の組成などにより変わり得るが、通常発泡成分重量の0.05〜5%程度が適当であり、0.2〜1.0%程度とすることがより好ましい。安定化剤の量があまりにも少ない場合には、ポリオールと発泡材との反応を効果的に防止することができない。一方、5%を上回る量を使用しても、実質的な安定化効果の改善は、期待できない。
【0029】本発明の発泡剤は、公知のプラスチック発泡体製造用の発泡剤と同様にして使用することができる。
【0030】本発明の発泡剤を用いて製造されるプラスチック発泡体としては、例えばイソシアネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノール/ホルムアルデヒド縮合物を原料とする発泡体などが挙げられる。本願発明による発泡材は、イソシアネートを原料とする発泡体の製造に適しており、特にポリウレタン発泡体およびポリイソシアヌレート発泡体の製造に好適である。
【0031】発泡原料としてのプラスチックに対する本発明発泡剤の使用量も、公知の発泡剤の場合と変わるところはない。この使用量は、発泡原料の種類、所望の発泡体の密度などにより適宜決定されるが、通常発泡原料と発泡剤の合計に対する発泡剤の割合として1〜40%程度、好ましくは2〜20%程度である。
【0032】本発明の発泡剤を使用して発泡体を製造する場合にも、公知の方法と同様にして行なえば良い。例えば、ポリウレタン発泡体を製造する場合には、常法に従って、ポリオールなどの活性水素含有基を2以上有する活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを触媒と発泡剤の存在下に反応させればよい。より具体的には、公知の1段階法、プレポリマー法、ブロック発泡法、二重ベルトコンベア法などによって、所望のプラスチック発泡体を製造することができる。
【0033】なお、本発明によるプラスチック発泡体の製造方法においては、公知の整泡剤、触媒などの添加剤を用いることもできる。整泡剤としては、シリコーン系整泡剤、含フッ素系整泡剤などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1〜2%程度用いられる。また触媒としては、トリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒、有機スズ化合物などの金属化合物系触媒などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1〜5%程度用いられる。
【0034】本発明の発泡剤には、その他、必要に応じて水、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0036】(1)本発明で使用するHFC−245faは、オゾン破壊係数が0であり、オゾン層を破壊する危険性はない。
【0037】(2)本発明の発泡剤は、不燃性且つ低毒性であるため、作業上安全である。
【0038】(3)本発明の発泡剤は、ポリオールとの相溶性が良好であるため、ウレタン発泡体を製造するのに極めて適している。
【0039】(4)本発明の発泡剤は、貯蔵安定性が良好である。
【0040】(5)本発明発泡剤を用いて得られるプラスチック発泡体は、独立気泡からなっているため、断熱性、寸法安定性、圧縮強度、外観、均一性などに優れている。
【0041】
【実施例】以下に実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明らかにする。
【0042】
【実施例1】
ポリオールとの相溶性試験本発明の発泡剤とポリオールとの混合物、即ちプレミックスとしての安定性を以下の方法により調べた。
【0043】容量50mlのスクリュー栓付ガラス瓶に、本発明発泡剤(HFC−245fa)とポリオールA、BまたはCとの合計30gを入れ、振とう機で10分間振とうした後、室温で5時間静置し、分離の有無を肉眼により確認した。
【0044】ポリオールA、BおよびCは、以下に示すものを用いた。
【0045】ポリオールA:エチレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価770のポリエーテルポリオールポリオールB:トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオールポリオールC:ショ糖にプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール結果を以下の第2表に示す。
【0046】
第 2 表 ポリオール HFC−245fa(%) 20 30 A ○ ○ B ○ ○ C ○ ○ 第2表の結果から、本発明の発泡剤は、実際に使用される混合割合でポリオールと良好な相溶性を示し、安定したプレミックスを形成することが確認された。
【0047】
【実施例2】
発泡体の製造(1)ポリオールBを用いた発泡体の製造ポリオールB 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン2gおよび本発明による発泡剤としてのHFC−245fa 13gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート148gとを混合して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得た。
【0048】発泡時および発泡体の物理的データを、以下の第3−A表に示す。
【0049】
第3−A表 物理的性質 HFC−245fa クリーム時間(秒) 7 ゲル時間(秒) 58 自由総密度(kg/m3 ) 24 圧縮強度(kg/cm2 ) 1.40 寸法安定性(−20℃、24時間(Δ%)) −0.20 熱伝導率(kcal/m・hr・℃) 0.0175(2)ポリオールCを用いた発泡体の製造ポリオールC 100g、シリコーン系整泡剤2g、水0.2g、触媒としてのジエチルエタノールアミン1.5g、ジブチル錫ジラウレート0.15gおよび本発明のHFC−245fa 13gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製トリレンジイソシアネート96gと混合、発泡し、硬質ポリウレタン発泡体を得た。
【0050】得られた発泡体の物理的データを、以下の第3−B表に示す。
【0051】
第3−B表 物理的性質 HFC−245fa 密度(kg/m3 ) 34 圧縮強度(kg/cm2
平行 3.10 垂直 1.15 寸法安定性(Δ%)
110℃、7日間 +1.4 70℃、95%RH、7日間 +7.0 −20℃、7日間 −0.3 なお、本発明発泡剤の評価は、JIS A 9514に規定された方法に準じて行なった。
【0052】第3−A表および第3−B表に示す結果から、本発明による発泡剤を用いることにより、断熱性、圧縮強度および寸法安定性に優れたプラスチック発泡体が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤。
【請求項2】 発泡剤として1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法。