説明

フルオロポリエーテル系組成物

【課題】室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製する際の、両末端にエステル構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマーと無機充填剤との混合物を主成分とする、粘度を低下させ、吐出性及び混合作業性を向上させたフルオロポリエーテル系組成物を提供する。
【解決手段】(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にカルボン酸塩を少なくとも1個含有し、かつ主鎖中に炭素数4以上のパーフルオロアルキルもしくはアルキレン構造又は1価もしくは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量200〜30,000である化合物:0.1〜50質量部、
(c)無機充填剤:0.5〜300質量部
を含有してなるフルオロポリエーテル系組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能アミノ化合物と混合することにより、室温硬化性を発現して硬化し、フルオロポリエーテル系ゴム硬化物を与えるフルオロポリエーテル系組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、室温中で比較的短時間で硬化し、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性などに優れた硬化物を与えることから、加熱炉に入らないような大型部品や加熱不可部品、耐薬品性、耐溶剤性を必要とするシール材などへの応用が期待されている。
【0003】
本出願人は、先に特開2011−57809号公報(特許文献1)において、主鎖の両末端にエステル構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマーと多官能アミノ化合物とを混合・反応させることによって、ゴム状硬化物を得ることができることを提案している。実使用においては、ゴム強度の向上や硬さの調節などを目的として、各種無機充填剤を配合する。具体的には、両末端にエステル構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマーと無機充填剤との混合物を主成分とする成分(A)と、多官能アミノ化合物を主成分とする成分(B)とに分け、使用前にこれらを混合し、ゴム硬化物に仕上げる手法が取られる。
【0004】
成分(A)は、無機充填剤の配合量が多くなると粘度が上昇する。その際、混合容器への吐出が困難になったり、成分(B)との混合作業性が低下するなどの弊害が発生するという問題が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−57809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を調製する際の、両末端にエステル構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマーと無機充填剤との混合物を主成分とする、粘度を低下させ、吐出性及び混合作業性を向上させたフルオロポリエーテル系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、両末端にエステル構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマーと無機充填剤との混合物を主成分とする組成物に、パーフルオロアルキル構造又はパーフルオロアルキルエーテル構造を有するカルボン酸塩を配合することによって得られるフルオロポリエーテル系組成物が、無機充填剤の配合量が多くなっても組成物の粘度が上昇することなく、一定の低い粘度を保持し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記に示すフルオロポリエーテル系組成物を提供する。
〔1〕
(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にカルボン酸塩を少なくとも1個含有し、かつ主鎖中に炭素数4以上のパーフルオロアルキルもしくはアルキレン構造又は1価もしくは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量200〜30,000である化合物:0.1〜50質量部、
(c)無機充填剤:0.5〜300質量部
を含有してなることを特徴とするフルオロポリエーテル系組成物。
〔2〕
(a)成分が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする〔1〕記載のフルオロポリエーテル系組成物。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)
〔3〕
Rfが、下記式(i)〜(iii)から選ばれる2価のパーフルオロアルキルエーテル基であることを特徴とする〔2〕記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【化1】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化2】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【化3】

(式中、xは1〜200の整数、yは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
〔4〕
(b)成分のカルボン酸塩がカルボン酸金属塩である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル系組成物。
〔5〕
カルボン酸金属塩の金属が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれるものである〔4〕記載のフルオロポリエーテル系組成物。
〔6〕
(b)成分が下記式で示される化合物から選ばれるものである〔5〕記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【化4】

(式中、gは4〜6の整数、M、M’はNa又はKである。)
【化5】

(式中、fは1〜160の整数、sは1〜3の整数、Mは上記と同じである。)
【化6】

(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数、Mは上記と同じである。)
【化7】

【化8】

(式中、m’及びn’はそれぞれ0〜100,m’+n’=0〜160を満足する整数、h’、i’、j’及びk’はh’+i’+j’+k’=2〜200を満足する整数を示し、M、M’は上記と同じである。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のフルオロポリエーテル系組成物は、主に主剤ポリマーと充填剤からなるが、一分子中にパーフルオロ(オキシ)アルキル単位とカルボン酸塩を含有する化合物を配合することによって、組成物の粘度が低下し、混合時の作業性や、ノズルからの吐出性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明のフルオロポリエーテル系組成物は、(a)直鎖状フルオロポリエーテル化合物、(b)カルボン酸塩とパーフルオロアルキル構造又はパーフルオロアルキルエーテル構造を有する化合物(以下、含フッ素カルボン酸塩という。)、及び(c)無機充填剤を必須成分としてなる。
【0011】
(a)直鎖状フルオロポリエーテル化合物
(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量が3,000〜100,000の範囲のものであり、好ましくは分子鎖両末端にそれぞれエステル基を有する直鎖状のフルオロポリエーテル化合物である。
【0012】
かかる(a)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)
【0013】
ここで、2価のパーフルオロアルキルエーテル構造として、例えば下記一般式(i)、(ii)、(iii)で表される構造を挙げることができる。
【0014】
【化9】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【0015】
【化10】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0016】
【化11】

(式中、xは1〜200の整数、yは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0017】
この(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物中のエステル基における非置換又は置換の1価炭化水素基R,R’としては、炭素数1〜8、特に炭素数1〜3のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されたものなどが挙げられるが、特に炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0018】
上記(a)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜100,000であり、3,000〜50,000であることが望ましい。数平均分子量が3,000未満では機械的強度に劣り、数平均分子量が100,000を超えると作業性に劣る。
【0019】
ここで、本発明で言及する数平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量を指す(以下、同じ)。
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.1質量%のHCFC−225溶液)
【0020】
一般式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられ、これらの化合物は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
【化12】

(式中、m及びnはそれぞれ0〜600、m+n=20〜600を満足する整数、h、i、j及びkはh+i+j+k=20〜1,000を満足する整数を示す。)
【0022】
(b)含フッ素カルボン酸塩
(b)成分の含フッ素カルボン酸塩は、1分子中にカルボン酸塩を少なくとも1個、好ましくは1〜2個含有し、かつ主鎖中に炭素数4以上、好ましくは炭素数4〜500のパーフルオロアルキルもしくはアルキレン構造又は1価もしくは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量200〜30,000の化合物である。この化合物は、組成物内において、カルボン酸塩の部位が無機充填剤の表面に配向又は結合し、フッ素基成分が外側に向くことにより、充填剤の表面をフッ素基が覆うような作用が発現する。これによって、前記(a)成分のポリマーと充填剤との親和性が向上し、充填剤の分散性が良くなると共に、組成物の流動性も向上し、その結果、組成物の粘度が低下する。
【0023】
カルボン酸塩を形成する化合物としては、アンモニア、1級アミノ化合物、2級アミノ化合物、3級アミノ化合物などの有機化合物や、アルカリ系金属、両性金属類などの無機化合物が挙げられるが、製造の容易さ、塩の安定性を考慮すると、無機化合物との塩が良好であり、金属との塩(カルボン酸金属塩)であることが好ましく、該金属としては、その中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属が好ましく、特にナトリウム、カリウムが最も好ましい。
【0024】
フッ素基としては、(a)成分との親和性を考慮して、主鎖中に炭素数4以上、好ましくは炭素数4〜500のパーフルオロ基(即ち、パーフルオロアルキル構造又はパーフルオロアルキルエーテル構造)を含有する必要がある。上記炭素数が4未満では、パーフルオロ化合物としての特性が不足し、(a)成分との親和性に劣る。
【0025】
かかる(b)成分としては、下記一般式(2)、(3)で表される化合物を挙げることができる。
MOOC−Rf1−COOM’ (2)
Rf2−COOM (3)
(式中、Rf1は炭素数4以上のパーフルオロアルキレン構造又は2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、Rf2は炭素数4以上のパーフルオロアルキル構造又は1価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、M及びM’はNa又はKである。)
【0026】
ここで、炭素数4以上のパーフルオロアルキルもしくはアルキレン構造又は1価もしくは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造としては、下記一般式(i)〜(vii)に示す構造を挙げることができる。
【0027】
【化13】

(式中、gは4〜6の整数である。)
【0028】
【化14】

(式中、fは1〜160、好ましくは2〜100の整数、sは1〜3の整数である。)
【0029】
【化15】

(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0030】
【化16】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【0031】
【化17】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0032】
【化18】

(式中、xは1〜200の整数、yは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0033】
上記(b)成分の化合物は、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が200〜30,000であり、500〜20,000であることが望ましい。数平均分子量が200未満ではパーフルオロ化合物としての特性が不足し、(a)成分との親和性に劣り、また数平均分子量が30,000を超えると(b)成分自体が高粘度になり、作業性に支障が出るおそれがある。
【0034】
このような(b)成分の化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、下記例示において、M及びM’はNa又はKである。
【化19】

(式中、gは4〜6の整数である。)
【0035】
【化20】

(式中、fは1〜160、好ましくは2〜100の整数、sは1〜3の整数である。)
【0036】
【化21】

(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0037】
【化22】

【0038】
【化23】

(式中、m’及びn’はそれぞれ0〜100,m’+n’=0〜160を満足する整数、h’、i’、j’及びk’はh’+i’+j’+k’=2〜200を満足する整数を示す。)
これらの化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(b)成分の添加量は、(a)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であり、好ましくは1〜10質量部の範囲である。0.1質量部より少ないと、粘度低下の効果が発現しにくい。50質量部より多いと、多官能アミノ化合物と反応させた後に得られる硬化物のゴム強度が低下するなどの影響が出る。
【0040】
(c)無機充填剤
(c)成分の無機充填剤は、硬化後のゴム強度の付与や、硬さの調整などの目的で配合される。このような無機充填剤としては、天然シリカ、湿式法又は乾式法で製造した合成シリカ、カオリン、マイカ、タルク、クレイ、モンモリロナイト、ゼオライト、天然ケイ酸塩、ガラス粉、グラスファイバー、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩、アルミニウム、ブロンズ等の金属粉、カーボンブラック等が挙げられる。
【0041】
無機質充填剤の粒径は限定されるものではないが、一次粒径で50μm以下が好ましく、10μm以下が更に好ましい。粒径が大きすぎると、(a)成分への均一分散性に劣ったり、質充填剤の沈降などの弊害が発生する可能性がある。また、無機充填剤の一次粒径は1nm以上であることが好ましい。なお、粒径は、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、画像イメージング法などの既知の方法により測定できる。
【0042】
無機充填剤の配合量は、その目的に応じて適量を配合すればよいが、(a)成分100質量部に対して0.5〜300質量部、好ましくは1〜100質量部の範囲である。無機充填剤の配合量が少なすぎると硬化後、十分な機械的強度や硬さが得られず、多すぎると硬化後、十分な伸び特性が得られない。
【0043】
その他の成分
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を公知の方法にて配合することができる。
具体的には、顔料としての酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック等や、着色剤、染料、酸化防止剤、また粘度調整剤として一部又はすべてがフッ素変性されたオイル状化合物等が挙げられる。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0044】
本発明の組成物は、上記各成分を均一に混合することにより調製することができる。
このようにして得られた本発明の組成物は、ブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した23℃における粘度が、1〜500Pa・s、特に5〜300Pa・s程度と粘度の低いものである。
【0045】
使用方法
本発明の組成物は、多官能アミノ化合物と公知の方法で均一に混合して、室温硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物として使用することが好ましい。混合後、室温(例えば5〜35℃)にて3日間以上放置することにより、硬化物を得ることができる。
【0046】
ここで、本発明の組成物と混合する多官能アミノ化合物は、上記(a)成分の架橋剤、鎖長延長剤として作用するものであり、1分子中にアミノ基、特には1級アミノ基を少なくとも3個以上含有するアミノ基含有シロキサンポリマーを用いることが好ましい。
【0047】
また、アミノ基含有シロキサンポリマーの上記(a)成分への分散性を向上させる意味で、必要に応じて1分子中に1個以上のフッ素変性基をアミノ基に導入してもよい。ここでのフッ素変性基とは、例えば、1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロアルキルエーテル基などがこれに該当し、分子構造は鎖状、分岐状のいずれでもよい。その代表例としては、下記一般式で示される基を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化24】

(式中、g1は1〜6、好ましくは4〜6の整数である。)
【0049】
【化25】

(式中、f1は2〜200、好ましくは2〜100の整数、s1は1〜3の整数である。)
【0050】
【化26】

(式中、d1及びe1はそれぞれ1〜50の整数である。)
【0051】
これらパーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキルエーテル基は、例えば下記の含フッ素末端エステル化合物とし、特開平7−18079号公報に従い、アミノ基含有シロキサンポリマーのアミノ基に脱アルコール反応などによって導入することができる。但し、末端エステル化合物としては以下に限定されるものではない。
【0052】
【化27】

(式中、g1は1〜6、好ましくは4〜6の整数である。)
【0053】
【化28】

(式中、f1は2〜200、好ましくは2〜100の整数、s1は1〜3の整数である。)
【0054】
【化29】

(但し、d1及びe1はそれぞれ1〜50の整数である。)
【0055】
アミノ基含有シロキサンポリマーのアミノ基は、1級アミノ基(−NH2)が好ましく、またこのシロキサンポリマーにおける分子中のアミノ基の数、特に1級アミノ基の数は特に制限されないが、通常3〜100、好ましくは3〜50、特には4〜20程度が好ましい。
【0056】
このようなアミノ基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、直鎖状、環状、分岐状のいずれのシロキサン構造を有するものであってもよく、また分子中のケイ素原子数は、通常3〜200個、好ましくは4〜100個程度のものであればよい。このようなアミノ基含有シロキサンポリマーとしては、例えば下記のような化合物が挙げられる。
【0057】
【化30】

(式中、n1は3〜50、好ましくは3〜30の整数である。)
【0058】
【化31】

(式中、n1は3〜50、好ましくは3〜30の整数である。)
【0059】
【化32】

(式中、a1は3〜50、好ましくは3〜20の整数、b1は1〜50、好ましくは1〜10の整数、a1+b1=4〜100、c1は0〜100、好ましくは1〜30の整数である。)
【0060】
【化33】

(式中、a1は3〜50、好ましくは3〜20の整数、b1は1〜50、好ましくは1〜10の整数、a1+b1=4〜100、n1は1〜10、好ましくは1〜6の整数である。)
【0061】
【化34】

(式中、a1は3〜50、好ましくは3〜20の整数、b1は1〜50、好ましくは1〜10の整数、d1は1〜50、好ましくは1〜10の整数、a1+b1+d1=4〜100、c2は0〜10、好ましくは1〜5の整数、e1は11〜100、好ましくは20〜50の整数である。)
【0062】
このアミノ基含有シロキサンポリマーは1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0063】
本発明のフルオロポリエーテル系組成物と混合し得るアミノ基含有シロキサンポリマーの配合量としては、通常上記(a)成分及び(b)成分中に含まれる、例えばメチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基等のエステル基の合計量に対する本アミノ基含有シロキサンポリマーのアミノ基(特には1級アミノ基)の合計量の比が、好ましくは1.0〜5.0(モル比)、より好ましくは2.0〜4.0(モル比)を供給する量が好適である。かかるモル比が1.0よりも少ないと架橋度合いが不十分となり機械的強度に劣る場合があり、5.0よりも多いと鎖長延長が優先し硬化が不十分で、満足する硬化物物性が得られない場合がある。
【0064】
用途
本発明の組成物を使用して得られる硬化物は、種々の用途に利用することができる。即ち、フッ素含有率が高いため、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、また、透湿性も低く、低表面エネルギーを有するため、離型性、撥水性に優れており、よって、耐油性を要求される自動車用ゴム部品、具体的には自動車用ダイヤフラム類、バルブ類、あるいはシール材等;化学プラント用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット、タンク配管補修用シール材等のシール材など;インクジェットプリンタ用ゴム部品;半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、パッキン、ガスケット等のシール材など;低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ等;分析、理化学機器用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(パッキン等);医療機器用ゴム部品、具体的にはポンプ、バルブ、ジョイント等;また、テント膜材料;シーラント;成型部品;押し出し部品;被覆材;複写機ロール材料;電気用防湿コーティング材;センサー用ポッティング材;燃料電池用シール材;工作機器用シール材;積層ゴム布等に有用である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を示し本発明について具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、数平均分子量(又は数平均重合度)は、アサヒクリンAK−225(旭硝子(株)製、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225)を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によって測定したものである。
【0066】
[実施例1]
下記式(4)で表されるポリマーA(粘度7.8Pa・s、数平均分子量15,700)100質量部、充填剤に脂肪酸で表面処理されたコロイド質炭酸カルシウム(平均粒径;0.03〜0.06μm、品名カーレックス300:丸尾カルシウム(株)製、商品名)42質量部、下記式(5)で表されるカルボン酸ナトリウム塩を有する化合物B:5質量部をプラネタリーミキサーに投入後、1時間混練りを行った。次いで三本ロールにて分散促進してベースコンパウンドを製造し、23℃における粘度をブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した。
【0067】
【化35】

【0068】
[実施例2]
前記式(4)で表されるポリマーA(粘度7.8Pa・s、数平均分子量15,700)100質量部、充填剤に脂肪酸で表面処理されたコロイド質炭酸カルシウム(平均粒径;0.03〜0.06μm、品名カーレックス300:丸尾カルシウム(株)製、商品名)42質量部、下記式(6)で表されるカルボン酸ナトリウム塩を有する化合物C:3質量部をプラネタリーミキサーに投入後、1時間混練りを行った。次いで三本ロールにて分散促進してベースコンパウンドを製造し、23℃における粘度をブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した。
【化36】

(m+n≒90(数平均重合度))
【0069】
[実施例3]
前記式(4)で表されるポリマーA(粘度7.8Pa・s、数平均分子量15,700)100質量部、充填剤にヘキサメチルジシラザンで表面処理されたフュームドシリカ(比表面積180m2/g)10質量部、前記式(5)で表されるカルボン酸ナトリウム塩を有する化合物B:3質量部をプラネタリーミキサーに投入後、1時間混練りを行った。次いで三本ロールにて分散促進してベースコンパウンドを製造し、23℃における粘度をブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、含フッ素カルボン酸塩(化合物B)を配合せずに同様な手順でベースコンパウンドを製造し、23℃における粘度をブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した。
【0071】
[比較例2]
実施例3において、含フッ素カルボン酸塩(化合物B)を配合せずに同様な手順でベースコンパウンドを製造し、23℃における粘度をブルックフィールド型回転粘度計を使用し10rpmの速度にて測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1〜3は含フッ素カルボン酸塩を配合した場合であり、比較例1,2は含フッ素カルボン酸塩を配合しなかった場合である。上記表1の結果から、化合物B及び化合物Cのような含フッ素カルボン酸塩を配合すると、粘度低下の効果が大きいことがわかる。
【0074】
[参考例1]
下記式(7)で示されるフッ素変性アミノ基含有シロキサンポリマー(粘度1,000Pa・s、数平均分子量16,000)69.0質量部、及び炭酸カルシウム(品名ホワイトンSSB赤:白石カルシウム(株)製、商品名)12.0質量部をプラネタリーミキサーに投入後、15分間混練りを行い、次いで室温中で30分間減圧混合(−65〜−75cmHg)を行った。その後、得られたコンパウンドに、粘度調整剤として下記式(8)で示されるオイル状フッ素ポリマー40.0質量部を添加し、プラネタリーミキサーにて15分間混練を行い、次いで室温中で30分間減圧混合(−65〜−75cmHg)を行って架橋剤コンパウンドを製造した。
【0075】
【化37】

【0076】
実施例1で得られたベースコンパウンド147質量部と、上記架橋剤コンパウンド121質量部を混合し、減圧脱泡した後、厚さ2mmのシート状の型枠に流し込み、23℃の室温に放置した。放置から3日後に観察したところ、ゴム状に硬化していることを確認した。このゴム特性をJIS K6251及びJIS K6253に準じて測定したところ、硬さ(Type−A)=34、引張強さ=1.1MPa、切断時伸び=230%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に少なくとも2個のエステル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000である直鎖状フルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にカルボン酸塩を少なくとも1個含有し、かつ主鎖中に炭素数4以上のパーフルオロアルキルもしくはアルキレン構造又は1価もしくは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する数平均分子量200〜30,000である化合物:0.1〜50質量部、
(c)無機充填剤:0.5〜300質量部
を含有してなることを特徴とするフルオロポリエーテル系組成物。
【請求項2】
(a)成分が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のフルオロポリエーテル系組成物。
ROOC−Rf−COOR’ (1)
(式中、Rfは2価のパーフルオロアルキルエーテル構造であり、R及びR’は同一又は異種の炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)
【請求項3】
Rfが、下記式(i)〜(iii)から選ばれる2価のパーフルオロアルキルエーテル基であることを特徴とする請求項2記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【化1】

(式中、p及びqは1〜150の整数であって、かつpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化2】

(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【化3】

(式中、xは1〜200の整数、yは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【請求項4】
(b)成分のカルボン酸塩がカルボン酸金属塩である請求項1乃至3のいずれか1項記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【請求項5】
カルボン酸金属塩の金属が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれるものである請求項4記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【請求項6】
(b)成分が下記式で示される化合物から選ばれるものである請求項5記載のフルオロポリエーテル系組成物。
【化4】

(式中、gは4〜6の整数、M、M’はNa又はKである。)
【化5】

(式中、fは1〜160の整数、sは1〜3の整数、Mは上記と同じである。)
【化6】

(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数、Mは上記と同じである。)
【化7】

【化8】

(式中、m’及びn’はそれぞれ0〜100,m’+n’=0〜160を満足する整数、h’、i’、j’及びk’はh’+i’+j’+k’=2〜200を満足する整数を示し、M、M’は上記と同じである。)

【公開番号】特開2013−82766(P2013−82766A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221809(P2011−221809)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】