説明

フルオロポリマーの製造方法

少なくとも一種のフルオロオレフィンを含むフルオロポリマーの製造方法であって、式(1):
[化1]


(式中、R1、R2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルキル基またはアルケニル基、R3は、水素原子、アルキル基またはアルケニル基であって、R1〜R3の合計炭素数が2〜25であり、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤の存在下で、重合を行なうことからなるフルオロポリマーの製造方法に関する。これにより、少量の界面活性剤の存在下で、生産効率よく、重合を行なうことができ、かつ、界面活性剤により耐水性などの諸物性を低下させることなく、フルオロポリマーを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の界面活性剤の存在下で、生産効率よく、重合を行なうことができるフルオロポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、その卓越した耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性を示すことから、過酷な条件下で使用されるシール材などの原料として、自動車工業、半導体工業、化学工業等の広い産業分野において使用されている。
【0003】
これらのフルオロポリマーの製造は、フルオロオレフィンを乳化重合または懸濁重合することにより行なわれている。通常、乳化重合法では界面活性剤が使用されるが、界面活性剤の使用量が多くなるほど、乳化重合の初期に生成する重合体粒子の数が増え、その重合速度は早くなり、フルオロポリマーの生産効率が向上する。しかし、界面活性剤を多量に使用した場合、界面活性剤が得られたフルオロポリマーの耐水性などの諸物性を低下させる傾向がある。そのため、従来から、少量の界面活性剤の存在下で、効率よく重合ができ、かつ、フルオロポリマーの諸物性に悪影響を与えることのないフルオロポリマーの製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
このような、状況下、フルオロポリマーの乳化重合で一般的に使用されている、高価な、パーフルオロオクタン酸アンモニウムの代替を目的として、直鎖の脂肪族スルホン酸塩系の界面活性剤を使用して、フルオロポリマーの製造が行なわれている(たとえば、米国特許第6512063号明細書参照)。しかし、この方法では発生粒子数が少ないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少量の界面活性剤の存在下で、生産効率よく、重合を行なうことができるフルオロポリマーの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、少なくとも一種のフルオロオレフィンを含むフルオロポリマーの製造方法であって、式(1):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1、R2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルキル基またはアルケニル基、R3は、水素原子、アルキル基またはアルケニル基であって、R1〜R3の合計炭素数が2〜25であり、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤の存在下で、重合を行なうことからなるフルオロポリマーの製造方法に関する。
【0009】
界面活性剤が、式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1およびR2は、合計炭素数2〜25のアルキル基またはアルケニル基であって、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤であることが好ましい。
【0012】
前記合計炭素数が10〜20であることが好ましい。
【0013】
重合が、シード粒子の製造重合であることが好ましい。
【0014】
フルオロオレフィンが1,1−ジフルオロエチレンであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1〜8、比較例1〜13の界面活性剤の濃度と水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、少なくとも一種のフルオロオレフィンを含むフルオロポリマーの製造方法であって、式(1):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R1、R2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルキル基またはアルケニル基、R3は、水素原子、アルキル基またはアルケニル基であって、R1〜R3の合計炭素数が2〜25であり、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤の存在下で、重合を行なうことからなるフルオロポリマーの製造方法に関する。
【0019】
フルオロオレフィンとしては、特に限定されないが、本発明において、フルオロポリマーとしては、二種以上のフルオロオレフィンモノマーの共重合体、またはフルオロオレフィンモノマーと非フルオロオレフィンモノマーの共重合体などが採用できる。
【0020】
フルオロオレフィンモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、
【0021】
【化4】

【0022】
などのパーフルオロオレフィンモノマー;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,1−ジフルオロエチレン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどの非パーフルオロオレフィンモノマーがあげられる。PAVEとしてはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などがあげられる。
【0023】
また、官能基含有フルオロオレフィンモノマーも使用できる。官能基含有フルオロオレフィンとしては、たとえば式(3):
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、Y1は、−OH、−COOH、−SO2F、−SO3M(Mは水素原子、NH4基またはアルカリ金属)、カルボン酸塩、カルボキシエステル基、エポキシ基またはシアノ基、X1およびX2は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Rfは炭素数0〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数0〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)
があげられ、具体例としては、たとえば
【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
などがあげられる。
【0029】
そのほか、非パーフルオロオレフィンモノマーとしてヨウ素含有モノマー、たとえば特公平5−63482号公報や特開昭62−12734号公報に記載されているパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのパーフルオロビニルエーテルのヨウ素化物も共重合できる。
【0030】
非フルオロオレフィンモノマーとしては、たとえばエチレン(ET)、プロピレン、ブテン、ペンテンなどの炭素数2〜10のα−オレフィンモノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのアルキル基が炭素数1〜20であるアルキルビニルエーテルなどがあげられる。なかでも、1,1−ジフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンからなる共重合体、または1,1−ジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンからなる共重合体であることが、フルオロポリマーを製造する目的において好ましい。
【0031】
また、このとき得られるフルオロポリマーの組成は、前記1,1−ジフルオロエチレン:ヘキサフルオロプロピレンがモル比で100:0〜50:50であることが好ましく、より好ましくは90:10〜60:40であり、かつテトラフルオロエチレンが0〜40モル%を含むことが好ましく、0〜30モル%がより好ましい。
【0032】
本発明では、前記式(1)で示される界面活性剤の存在下で重合を行なう。
【0033】
1、R2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルキル基またはアルケニル基であり、R3は、水素原子、アルキル基またはアルケニル基である。アルキル基またはアルケニル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0034】
1〜R3の合計炭素数は、2〜25であり、5〜20であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。R1〜R3の合計炭素数が25を超えると、水に溶け難く、水相中の濃度が上げられなくなる傾向がある。また、このような界面活性剤の具体的としては、例えば、クラリアントジャパン(株)のHostapurSAS93などをあげることができる。
【0035】
前記R1〜R3の組合せの中でも、乳化力の高さの点から、R3が水素原子であり、R1およびR2が、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、合計炭素数2〜25のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、R3が水素原子であり、R1およびR2が、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、合計炭素数5〜20のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、R3が水素原子であり、R1およびR2が、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、合計炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。
【0036】
アルキル基またはアルケニル基の具体例としては、フッ素を含まない、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクテニル基などがあげられる。
【0037】
-は、−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であるが、−SO3-であることが、分散体を凝析し得られたポリマー中に界面活性剤が残留しても、乾燥時、あるいは加熱時に分解しがたい点でより好ましい。
【0038】
1価のカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンがあげられるが、経済的観点から、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンが好ましい。
【0039】
式(1)で示される界面活性剤の使用量は、水の全量に対し、100〜9000ppmが好ましく、500〜5000ppmがより好ましい。前記界面活性剤の使用量が、100ppm未満であると、界面活性剤としての効果が少なく、発生粒子数が少なくなり、9000ppmを超えると、界面活性剤に起因する分散体の凝集が発生する傾向にある。
【0040】
また、前記界面活性剤は、他の界面活性剤と併用してもよい。
【0041】
併用できる、界面活性剤としては、例えば、F(CF27COOM、F(CF28COOM、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、CF3CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、H(CF2CF22CH2OCF(CF3)COOM、H(CF26COOM、H(CF27COOM,H(CF28COOM、C613CH2CH2SO3M、F(CF2CF22CH2CH2SO3M、F(CF2CF23CH2CH2SO3M、F(CF2CF24CH2CH2SO3M、F(CF2CF22CH2CH2SO4M、F(CF2CF23CH2CH2SO4M、F(CF2CF24CH2CH2SO4M(Mは一価のカチオン)などの含フッ素界面活性剤、CH3(CH210SO3M、CH3(CH211SO3M、CH3(CH212SO3M、CH3(CH213SO3M、CH3(CH214SO3M、CH3(CH210SO4M、CH3(CH211SO4M、CH3(CH212SO4M、CH3(CH213SO4M、CH3(CH214SO4M、CH3(CH210COOM、CH3(CH211COOM、CH3(CH212COOM、CH3(CH213COOM、CH3(CH214COOM(Mは一価のカチオン)などの炭化水素界面活性剤があげられる。
【0042】
また、併用できる界面活性剤として、分子中にラジカル重合性不飽和結合と親水
基とを有する化合物からなる、反応性界面活性剤をあげることができる。反応性
界面活性剤は、重合時に反応系に存在させた場合、重合体のポリマー鎖の一部分
を構成することができる。
反応性界面活性剤としては、例えば、特開平8−67795に記載されている化
合物を用いることができる。
【0043】
本発明の重合法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法でよいが、得られた重合体中の界面活性剤が同量であっても、粒子数を多くできる点で、シード重合の初期すなわちシード粒子の製造重合が好適に適用することができる。また、シード重合の方法も特に限定されず、公知の方法でよい。
【0044】
攪拌手段としては、たとえばアンカー翼、タービン翼、傾斜翼なども使用できるが、モノマーの拡散とポリマーの分散安定性が良好な点からフルゾーンやマックスブレンドと呼ばれる大型翼による攪拌が好ましい。攪拌装置としては横型攪拌装置でも縦型攪拌装置でもよい。
【0045】
重合温度は特に制限はなく、重合開始剤の種類にしたがって最適な温度が採用される。ただ、高くなりすぎると気相部分でのモノマー密度が容易に低下してしまったり、ポリマーの分岐反応が生じ、目的とする共重合体が得られないことがある。好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃とする。
【0046】
モノマーの供給は連続的であっても逐次供給してもよい。
【0047】
重合開始剤としては、油溶性の過酸化物も使用できるが、これらの代表的な油溶性開始剤であるジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)やジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)などのパーオキシカーボネート類は爆発などの危険性があるうえ、高価であり、しかも重合反応中に重合槽の壁面になどにスケールの付着を生じやすいという問題がある。フルオロポリマーの圧縮永久歪みをよりいっそう低下させるためには、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。水溶性ラジカル重合開始剤としては、たとえば過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが好ましくあげられ、特に過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましい。
【0048】
重合開始剤の添加量は特に限定されないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば数ppm対水濃度)以上を、重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0049】
本発明の製造方法において、さらに分子量調整剤などを添加してもよい。分子量調整剤は、初期に一括して添加してもよいし、連続的または分割して添加してもよい。
【0050】
分子量調整剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサン、モノヨードメタン、1−ヨードメタン、1−ヨードプロパン、ヨウ化イソプロピル、ジヨードメタン、1,2−ジヨードメタン、1,3−ジヨードプロパンなどがあげられる。
【0051】
そのほか緩衝剤などを適宜添加してもよいが、その量は本発明の効果を損なわない範囲で用いることが好ましい。
【実施例】
【0052】
つぎに本発明について、実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
<分析装置>
ムーニー粘度(1+10、100℃)は、MOON MV2000E(アルファーテクノロージズ社(ALPHA TECNOLOGIES社)製)を用いて、乳化分散体の粒子径は、マイクロトラックUPA(日機装(株)製)を用いて、フルオロポリマーの分子量は、GPC(東ソー(株)製)を用いて測定した。
【0054】
実施例1
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてHostapurSAS93(クラリアントジャパン(株)製、第二級アルカンスルフォネートNa塩((CH3(CH2m)(CH3(CH2n)CHSO3Na、m+n=14〜17))を0.005g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1時間行なった。
【0055】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ95.2nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ1.63%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2×1013であった。
【0056】
実施例2
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、HostapurSAS93(クラリアントジャパン(株)製、第二級アルカンスルフォネートNa塩((CH3(CH2m)(CH3(CH2n)CHSO3Na、m+n=14〜17))を0.015g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1.67時間行なった。
【0057】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ60.8nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.71%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると3.4×1013であった。
【0058】
実施例3
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、HostapurSAS93(クラリアントジャパン(株)製、第二級アルカンスルフォネートNa塩((CH3(CH2m)(CH3(CH2n)CHSO3Na、m+n=14〜17))を0.05g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1時間行なった。
【0059】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.15%であった。
【0060】
実施例4
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、HostapurSAS93(クラリアントジャパン(株)製、第二級アルカンスルフォネートNa塩((CH3(CH2m)(CH3(CH2n)CHSO3Na、m+n=14〜17))を0.15g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1.67時間行なった。
【0061】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.19%であった。
【0062】
実施例5
実施例3で得られた乳化分散体の粒子径はUPAにて測定できなかったため、乳化分散体5gを45gのイオン交換水にて希釈し、界面活性剤濃度を実施例1と同様の100ppmとし、過硫酸アンモニウム0.05gを加えて、種重合として実施例1と同様の重合操作を1時間行なったところ、新たに得られた乳化分散体の濃度は1.28%であり、粒子径は31.3nmであった、このことから粒子数は4.5×1014と計算された。希釈前の乳化分散体の粒子数は4.5×1015と計算された。
【0063】
実施例6
実施例4で得られた乳化分散体の粒子径はUPAにて測定できなかったため、乳化分散体1gを29gのイオン交換水にて希釈し、界面活性剤濃度を実施例1と同様の100ppmとし、過硫酸アンモニウム0.05gを加えて、種重合として実施例1と同様の重合操作を1時間行なったところ、新たに得られた乳化分散体の濃度は1.3%であり、粒子径は33nmであった、このことから粒子数は3.9×1014と計算された。希釈前の乳化分散体の粒子数は1.2×1016と計算された。
【0064】
実施例7
1.8Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を1010g、HostapurSAS93(クラリアントジャパン(株)製、第二級アルカンスルフォネートNa塩((CH3(CH2m)(CH3(CH2n)CHSO3Na、m+n=14〜17))を1.02g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込み、電磁式攪拌機で系を攪拌しながらオートクレーブ内温を80℃に昇温し、圧力が一定になるまで放置した。ついで、過硫酸アンモニウム1.01gをイオン交換水5.00gに溶かした水溶液を窒素ガスにて圧入して重合反応を開始した。その後、重合反応とともに圧力が低下した。重合反応は3.5時間行なった。
【0065】
重合反応終了後、残存モノマーを大気に放出し、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.24%であった。
【0066】
実施例8
1.8Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を942g、また、実施例7で得られた乳化分散体内に残存している過硫酸アンモニウムを分解させるため、大気下で乳化分散体を80℃の温度で12時間、加熱処理を行なった乳化分散体を52.08g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)438gと1,1−ジフルオロエチレン(VdF)132gからなる混合ガスを220g仕込み、電磁式攪拌機で系を攪拌しながらオートクレーブ内温を80℃に昇温し、圧力が一定になるまで放置した。ついで、マロン酸ジエチル3.78gと過硫酸アンモニウム0.15gを水4.94gに溶かした水溶液を窒素にて圧入して重合反応を開始した。重合反応が進行するとともに圧力が低下するので、圧力低下をヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガスをプランジャーポンプにて加えることによって補った。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガス266gを重合槽に仕込み、重合終了とした。
【0067】
重合反応終了後、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ123.5nmであった、また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ26.55%であった。ML(1+10)、100℃は82.6であった。GPCによる、ポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量21.4万、数平均分子量9.21万であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2×1014であった。また、実施例7の乳化分散体の粒子数は3.8×1015と計算された。また、得られた乳化分散体のムーニー粘度は、82.6であった。また19F−NMR分析の結果、得られた重合体のモノマー単位組成は、VdF/HFP=78.2/21.8モル%であった。
【0068】
比較例1
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてAPFO(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)を0.0028g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が60mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が40mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は0.5時間行なった。
【0069】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ70.8nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.72%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.2×1013であった。
【0070】
比較例2
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてAPFO(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)を0.0216g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が60mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が40mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は0.5時間行なった。
【0071】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ71.1nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.7%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.1×1013であった。
【0072】
比較例3
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてAPFO(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)を0.215g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が60mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が40mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は0.5時間行なった。
【0073】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ67.4nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.82%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.9×1013であった。
【0074】
比較例4
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてAPFO(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)を2.15g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が60mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が40mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は0.5時間行なった。
【0075】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ3.57%であった。
【0076】
比較例5
比較例4で得られた乳化分散体の粒子径はUPAにて測定できなかったため、乳化分散体5gを45gのイオン交換水にて希釈し界面活性剤濃度で比較例3と同様の界面活性剤濃度とし、過硫酸アンモニウム0.05gを加えて、種重合として比較例3と同様の重合操作を0.5時間行なったところ、新たに得られた乳化分散体の濃度は8.32%であり、粒子径は33.9nmであった、このことから粒子数は2.5×1015と計算された。希釈前の乳化分散体の粒子数は2.5×1016と計算された。
【0077】
比較例6
1.8Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を1000g、APFO(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)を30g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを2MPaになるように仕込み、電磁式攪拌機で系を攪拌しながらオートクレーブ内温を80℃に昇温し、圧力が一定になるまで放置した。ついで、過硫酸アンモニウム0.6gをイオン交換水5.00gに溶かした水溶液を窒素ガスにて圧入して重合反応を開始した。その後、重合反応とともに圧力が低下した。重合反応は0.5時間行なった。
【0078】
重合反応終了後、残存モノマーを大気に放出し、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ18%であった。
【0079】
比較例7
1.8Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を968g、また、比較例6で得られた乳化分散体内に残存している過硫酸アンモニウムを分解させるため、大気下で乳化分散体を80℃の温度で12時間、加熱処理を行なった乳化分散体を22.2g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)438gと1,1−ジフルオロエチレン(VdF)132gからなる混合ガスを220g仕込み、電磁式攪拌機で系を攪拌しながらオートクレーブ内温を80℃に昇温し、圧力が一定になるまで放置した。ついで、マロン酸ジエチル3.78gと過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした水溶液を窒素にて圧入して重合反応を開始した。重合反応が進行するとともに圧力が低下するので、圧力低下をヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガスをプランジャーポンプにて加えることによって補った。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガス266gを重合槽に仕込み、重合終了とした。
【0080】
重合反応終了後、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ118nmであった、また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ27%であった。ML(1+10)、100℃は82.6であった。GPCによる、ポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量20.5万、数平均分子量9.8万であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2×1014であった。また、比較例6の乳化分散体の粒子数は1.1×1016と計算された。また19F−NMR分析の結果、得られた重合体のモノマー単位組成は、VdF/HFP=78.3/21.7モル%であった。
【0081】
比較例8
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてn−オクタンスルホン酸ナトリウムを0.005g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガスを2.4MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1時間行なった。
【0082】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ105.9nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ3.11%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.9×1013であった。
【0083】
比較例9
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてn−オクタンスルホン酸ナトリウムを0.05g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガスを2.4MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1時間行なった。
【0084】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ105.9nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ3.11%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.9×1013であった。
【0085】
比較例10
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを0.05g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1.8時間行なった。
【0086】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ70.5nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.89%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.7×1013であった。
【0087】
比較例11
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてn−デカン硫酸ナトリウムを0.05g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1.5時間行なった。
【0088】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ84.5nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ1.0%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると1.8×1013であった。
【0089】
比較例12
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてn−デカン硫酸ナトリウムを0.005g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が65mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が35mol%からなる混合ガスを1MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1.5時間行なった。
【0090】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ134.8nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ2.5%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると1.1×1013であった。
【0091】
比較例13
0.1Lの内容積のステンレス製オートクレーブにイオン交換水を50g、過硫酸アンモニウム(APS)を0.05g、界面活性剤としてn−ウンデカン酸ナトリウムを0.05g仕込み、充分に窒素および真空にて置換した後、真空状態でヘキサフルオロプロピレン(HFP)が22mol%と1,1−ジフルオロエチレン(VdF)が78mol%からなる混合ガスを2.4MPaになるように仕込んだ。このオートクレーブを、あらかじめ80℃に温調された水平動型の攪拌機をもつウオーターバスに沈め、重合反応を開始した。オートクレーブ内の圧力は3分後に一定となり、その後、重合反応とともに低下した。重合反応は1時間行なった。
【0092】
重合反応終了後、ウオーターバスからオートクレーブを取り出し、残存モノマーを大気に放出し、得られた乳化分散体の粒子径をUPAにて測定したところ60nmであった。また、乳化分散体の一部を蒸発乾固させることによって、乳化分散体の濃度を測定したところ0.5%であった。粒子径と乳化分散体の濃度より、水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)を計算すると2.5×1013であった。
【0093】
実施例1〜8、比較例1〜13の界面活性剤の濃度と水1gあたりの乳化分散体の個数(粒子数)との関係を図1に示す。図1の中抜きの丸は、シード重合を行なっていない実施例1〜4および7の乳化重合体の界面活性剤濃度と粒子数の関係をあらわし、中抜きの四角は、シード重合を行なった実施例5、6および8の乳化重合体の界面活性剤濃度と粒子数の関係をあらわす。また、図1の黒塗りの丸は、シード重合を行なっていない比較例1〜4、6および8〜13の乳化重合体の界面活性剤濃度と粒子数の関係をあらわし、黒塗りの四角は、シード重合を行なった比較例5、7の乳化重合体の界面活性剤濃度と粒子数の関係をあらわす。矢印Aは、実施例3、4および7で得られた乳化分散体を用いて、実施例5、6および8でシード重合した場合における、界面活性剤濃度と粒子数との関係の変化を示す。一方、矢印Bは、比較例4、6で得られた乳化分散体を用いて、比較例5、7でシード重合した場合における、界面活性剤濃度と粒子数との関係の変化をあらわす。
【0094】
図1からわかるように、式(1)で示される界面活性剤の存在下で重合を行なうことにより、少量の界面活性剤を添加するだけで、大幅に粒子数を増加させることができる。
【0095】
また、実施例1、5および6では、界面活性剤の濃度が100ppmであるが、シード重合をした実施例5、6では粒子数が1.0×1014以上であるのに対し、通常の重合をした実施例1では粒子数が2×1013であり、シード重合をすることにより界面活性剤濃度が同じであっても大幅に粒子数が増加していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、少量の界面活性剤の存在下で、生産効率よく、重合を行なうことができ、かつ、界面活性剤により耐水性などの諸物性を低下させることなく、フルオロポリマーを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のフルオロオレフィンを含むフルオロポリマーの製造方法であって、式(1):
【化1】

(式中、R1、R2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルキル基またはアルケニル基、R3は、水素原子、アルキル基またはアルケニル基であって、R1〜R3の合計炭素数が2〜25であり、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤の存在下で、重合を行なうことからなるフルオロポリマーの製造方法。
【請求項2】
界面活性剤が、式(2):
【化2】

(式中、R1およびR2は、合計炭素数2〜25のアルキル基またはアルケニル基であって、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、L-は−SO3-、−OSO3-、−PO3-、−OPO3-または−COO-であらわされる基であり、M+は1価のカチオンである)で示される界面活性剤であるフルオロポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記合計炭素数が10〜20である請求の範囲第1項または第2項記載のフルオロポリマーの製造方法。
【請求項4】
重合が、シード粒子の製造重合である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のフルオロポリマーの製造方法。
【請求項5】
フルオロオレフィンが1,1−ジフルオロエチレンである請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載のフルオロポリマーの製造方法。

【図1】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/063827
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516604(P2005−516604)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019219
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】