説明

フルオロポリマーエマルション

次の重量パーセンテージで共重合するモノマー:
(a)フルオロアルキルモノマー又はモノマーの混合物、約20%〜約95%、
(b)
(i)炭素数約6〜約18の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は
(ii)1種類以上のイオン性水和性モノマー、
の少なくとも1つ、約5%〜約80%、および
(c)非フッ素化重合性ナノ粒子、約0.05%〜約2%、
を含むフルオロポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テキスタイルに撥油性および撥水性を付与するのに有用な、非フッ素化粒子を含有するフッ素化コポリマーエマルションを含む組成物に関し、コポリマーは、フッ素化アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートおよび/又は水和性(water solvatable)モノマー、および重合性ナノ粒子を含むモノマーの重合から誘導される。
【背景技術】
【0002】
様々な組成物が、基材に表面効果を付与する処理剤として有用であることが知られている。表面効果としては、水分、汚れおよび染みをはじく性質(repellency)などが挙げられ、これらは、繊維、布帛、テキスタイル、カーペット、紙、皮革、および他のこのような基材などの繊維基材に特に有用である。このような処理剤の多くはフッ素化ポリマー又はコポリマーである。
【0003】
繊維基材処理剤として有用なフッ素化ポリマー組成物は、一般に、ペンダントのパーフルオロアルキル基を含有し、このペンダント基は、一般に、様々な結合基によってフッ素を含有しない重合性基に結合する。得られるモノマーを、その後、一般に、基材に追加の好ましい特性を付与する他のモノマーと共重合させる。改善された架橋、ラテックス安定性および直接性を付与するために、様々な特殊なモノマーを組み込んでもよい。各成分は、その望ましい特性の他に、幾つかの望ましくない可能性がある特性を付与し得るため、所望の用途に特定の組み合わせが使用される。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0095933号明細書は、撥水撥油成分、耐汚染(stain resist)成分、染み除去(stain release)成分、および粒子を組み合わせることによって形成された、テキスタイル処理用組成物を開示している。市販の様々なフッ素化ポリマーが撥水撥油成分として使用され、粒子は無機酸化物又は塩基性金属塩である。フッ素化ポリマーと粒子は溶液に別々に添加され、このようにして、ポリマーと粒子の混合物となり、これを被処理基材に塗布する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素化ポリマーの費用のため、表面効果を付与するために基材を処理する際に、それをより低濃度で使用することが求められる。しかし、炭素数6以下の比較的短鎖のパーフルオロアルキル基を含有するポリマーを使用することによってフッ素濃度を低下させることは、商業的に成功しなかった。従って、性能のレベルを維持すると共に、高価なフッ素化成分の使用量がより少ない、撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性および染み除去性、並びに他の効果を含む表面効果を付与する基材処理用組成物が必要とされている。本発明は、このような組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の重量パーセンテージで共重合するモノマー:
(a)式(I)、
f1−L−X−C(O)−C(R)=CH2 (I)
(式中、
f1は、1〜約50個の酸素原子によって任意に中断された、炭素数約2〜約100の1価の部分的に又は完全にフッ素化された直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、炭素原子対酸素原子の比が少なくとも約2:1であり、酸素原子が互いに結合していないアルキル基であり、
Lは、結合であるか、又は、−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、および−N(R1)C(O)−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)からなる群から選択される1〜約4個のヘテロ基で任意に中断されており且つCH2Clで任意に置換されている炭素数1〜約20の直鎖若しくは分岐鎖の2価の結合基であり、
Xは、−O−、−NR1−、又は−S−であり、
Rは、水素、Cl、F又はCH3である)
のフルオロアルキルモノマー又はモノマーの混合物、約20%〜約95%、
(b)
(i)炭素数約6〜約18の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は
(ii)1種類以上のイオン性水和性モノマー、
の少なくとも1つ、約5%〜約80%、および
(c)非フッ素化重合性ナノ粒子、約0.05%〜約2%、
を含むフルオロポリマー組成物を含み、
前記組成物は、前記組成物と接触した基材に撥油性および撥水性を付与する。
【0007】
本発明は、更に、基材の表面に前述のフルオロポリマーを塗布する工程を含む、撥油性および撥水性を付与するための繊維基材の処理方法を含む。
【0008】
本発明は、更に、上記に開示したエマルションポリマーが表面に塗布された繊維基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、商標は全て大文字で示される。
【0010】
「(メタ)アクリレート」の用語は、特に他の記載がない限り、メタクリル酸とアクリル酸のエステルを包含する。例えば、ヘキシル(メタ)アクリレートは、ヘキシルアクリレートとヘキシルメタクリレートの両方を包含する。
【0011】
本明細書に引用されている特許は全て、参照により本明細書に援用される。
【0012】
本明細書では、「フッ素化アクリレート」、「フッ素化チオアクリレート」、および「フッ素化アクリルアミド」の用語は、後述の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Ie)の化合物を指し、式中、Rは、特に他に定義されない限り、H、Cl、F、およびCH3からなる群から選択される。
【0013】
本発明は、基材に表面効果を付与する組成物を提供し、組成物中、フッ素化ポリマーは、ポリマーの生成に使用した重合反応中に組み込まれた粒子を有する。従って、粒子は、ポリマー化学構造の一部である。粒子は、表面に反応性官能基を有し、フッ素化されておらず、溶液ベースの又はエマルションベースのフッ素化ポリマーを合成する際、重合中に反応する。得られる組成物は、粒子を含有しない従来の市販の処理剤と比較して、又は処理剤が塗布前に処理浴中で粒子と物理的に混合される組成物と比較して、高い表面効果性能および耐久性を処理された基材に付与する。0.1重量%の少量の粒子をポリマー構造に組み込むと、性能の向上に有効であることが分かった。好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の粒子成分がポリマーに組み込まれる。本発明は、性能を低下させることなく、従来の処理剤の使用量をより少なくすること、又は炭素数8未満の短いパーフルオロアルキル鎖を含有する(従って、フッ素含有量がより少ない)処理剤を使用することを可能にする。
【0014】
本発明の組成物は、次の重量パーセンテージで共重合するモノマー:
(a)式(I)、
f1−L−X−C(O)−C(R)=CH2 (I)
(式中、
f1は、メチレン、エチレン、又は1〜約50個の酸素原子によって任意に中断された、炭素数約2〜約100の1価の部分的に又は完全にフッ素化された直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、炭素原子対酸素原子の比が少なくとも約2:1であり、酸素原子が互いに結合していないアルキル基であり、
Lは、結合であるか、又は、−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、および−N(R1)C(O)−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)からなる群から選択される1〜約4個のヘテロ基で任意に中断されており且つCH2Clで任意に置換されている炭素数1〜約20の直鎖若しくは分岐鎖の2価の結合基であり、
Xは、−O−、−NR1−、又は−S−であり、
Rは、水素、Cl、F又はCH3である)
のフルオロアルキルモノマー又はモノマーの混合物、約20%〜約95%、
(b)
(iii)炭素数約6〜約18の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は
(iv)1種類以上のイオン性水和性モノマー、
の少なくとも1つ、約5%〜約80%、および
(c)非フッ素化重合性ナノ粒子、約0.05%〜約2%、
を含むフルオロポリマー組成物を含み、
前記組成物は、前記組成物と接触した基材に撥油性および撥水性を付与する。
【0015】
本発明の組成物は、(a)フルオロアルキルモノマー、(b)アルキル(メタ)アクリレートモノマー又はイオン性水和性モノマー、および(c)重合性ナノ粒子を共重合させることによって調製される。
【0016】
コポリマー組成物は、成分(a)として、式(I)
f1−L−X−C(O)−C(R)=CH2 (I)
(式中、様々な基、Rf1、L、XおよびRは、上記に定義した通りである)
のフルオロアルキルモノマーを必要とする。
【0017】
好ましいRf1基としては、F(CF2n、F(CF2n(CH2CF2p、F(CF2n(CH2x[(CF2CF2p(CH2CH2qm、F(CF2nO(CF2n、F(CF2nOCFHCF2、又はF(CF2n[OCF2CF(CF3)]p[OCF2CF2q(式中、nは1〜約6であり;xは1〜約6であり;p、qおよびmはそれぞれ独立して1〜約3である)が挙げられる。
【0018】
好ましくは、Lは、結合、又は結合基−(L1p−であり、式中、pは1〜4の整数であり、L1は、(Ct2t)−(式中、tは1〜10の整数である)、フェニレン、C1〜C4アルキル置換フェニレン、エチレンオキシド、R5、および、(A)p−R5[式中、Aは炭素数1〜6の2価のアルキルであり、pは上記に定義した通りであり、R5は、−S(CH2u−、
【0019】
【化1】

(式中、
uは、約2〜約4の整数であり、
sは、1〜約50の整数であり、
2、R3、およびR4は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜約6のアルキル基である)
からなる群から選択される2価の基である]からなる群から選択される。より好ましくは、Lは、結合、−(Ct2t)−(R5r−(式中、tは1〜10の整数であり、rは0又は1である)、−(R5r−(式中、rは1である)、又は(OCH2CH2v(式中、vは2〜4である)である。
【0020】
好ましくは、モノマー(I)は、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Ie)からなる群から選択される。
(Ia) F(CF2n(CH2t(R5rX−C(O)−C(R)=CH2
(Ib) F(CF2n(CH2CF2p(CH2CH2q(R5rX−C(O)−C(R)=CH2
(Ic) F(CF2n(CH2x[(CF2CF2p(CH2CH2qm(R5rX−C(O)−C(R)=CH2
(Id) F(CF2nO(CF2nCH2(Ct2t)(R5rX−C(O)−C(R)=CH2
(Ie) F(CF2n−OCFHCF2(OCH2CH2vX−C(O)−C(R)=CH2
[式中、
Xは、−O−、−NR1−、又は−S−であり、
nは、1〜約6の整数であり、
tは、1〜約10の整数であり、
xは、1〜約6の整数であり、
p、qおよびmはそれぞれ独立して、1〜約3の整数であり、
rは、0又は1であり、
vは、1〜約4の整数であり、
5は、−S(CH2u−、
【0021】
【化2】

(式中、
uは、約2〜約4の整数であり、
sは、1〜約50の整数であり、
2、R3、およびR4は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜約6のアルキル基である)
からなる群から選択される2価の基である]
【0022】
本発明の組成物の形成に有用な式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Ie)のフッ素化アクリレートおよびフッ素化チオアクリレートは、対応するフッ素化アルコールおよびフッ素化チオールから、アクリル酸、メタクリル酸、2−クロロアクリル酸、又は2−フルオロアクリル酸でエステル化することによって調製される。更なる詳細は、米国特許第3,282,905号明細書および欧州特許出願公開第1632542A1号明細書に記載されている。あるいは、米国特許第3,890,376号明細書に開示されている手順に従って、対応する硝酸エステルから、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Ie)のアクリレートエステルおよびメタクリレートエステルを製造することができる。
【0023】
本発明の組成物を形成するのに有用な、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Ie)(式中、X=−N(R)−である)の(1種類以上の)フッ素化アクリルアミドは、例えば、トリエチルアミン(TEA)などの塩基の存在下で、対応するフッ素化アミンから、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、2−クロロアクリル酸クロライド、又は2−フルオロアクリル酸クロライドと一緒に縮合することによって調製される。典型的には、縮合には、トルエン若しくはキシレンなどの非ヒドロキシ炭化水素、又はジクロロメタンなどのハロカーボン溶媒が使用される。
【0024】
本発明に使用するのに適した式(1)のフッ素化アクリレートを生成するのに有用なフッ素化アルコールとしては、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId):
(IIIa) F(CF2n(CH2tOH
(IIIb) F(CF2n(CH2CF2p(CH2CH2qOH
(IIIc) F(CF2nO(CF2CF2p(CH2CH2qOH
(IIId) F(CF2nO(CF2nCH2(Ct2t)OH
(IIIe) F(CF2n−OCFHCF2(OCH2CH2vOH
(式中、
n、p、q、tおよびvは上記に開示した通りである)のものが挙げられる。
【0025】
式(IIIa)では、パーフルオロアルキル基は好ましくは直鎖であるが、分岐鎖パーフルオロアルキル基を含有する組成物も適している。本発明に有用な式(IIIa)のフッ素化アルコールは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE 19898 USA)から入手可能である。式(Ia)のアクリレートの生成に、フッ素化アルコールの混合物を使用することができる。例えば、式F(CF2hCH2CH2OH(式中、hは6〜14の範囲であり、主に6、8および10である)のパーフルオロアルキルエチルアルコール混合物、又は精製された画分を使用することができる。式(IIIa)のパーフルオロアルキルエタノール(式中、tは2であり、nは4又は6である)は、パーフルオロアルキルエタノールの市販のテロマー混合物を分留することによって得ることができる。市販されている式(IIIa)の具体的なフッ素化アルコールとしては、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサノール、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキサノール、および、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノールが挙げられる。
【0026】
式(IIIb)のフッ素化テロマーアルコール(式中、Rf3は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基である)は、スキーム1による合成で得ることができる。
【0027】
【化3】

【0028】
フッ化ビニリデン(VDF)と直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルアイオダイドとのテロメリゼーションは周知であり、構造式Rf3(CH2CF2qI(式中、pは1以上であり、Rf3はC1〜C6、好ましくはC4〜C6のパーフルオロアルキル基である)の化合物を生成する。例えば、Balagueら、「Synthesis of fluorinated telomers,Part 1,Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」、J.Flour.Chem.(1995),70(2),215−23を参照されたい。特定のテロマーアイオダイドは分留によって単離される。米国特許第3,979,469号明細書に記載の手順によってテロマーアイオダイドをエチレンで処理し、テロマーエチレンアイオダイド(VI)(式中、qは1〜3又はそれより大きい)を得ることができる。国際公開第95/11877号パンフレットに開示されている手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するテロマーアルコール(IIIb)を得ることができる。あるいは、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解することができる。
【0029】
フッ化ビニリデンとエチレンのテロメリゼーションによって誘導され、本発明に有用なフッ素化アクリレートを形成するのに有用な具体的なフッ素化テロマーアルコール(IIIa)および(IIIb)としては、表1Aに記載のものが挙げられる。表1Aおよび表1B、並びに本明細書の実施例の具体的なアルコールのリストに記載されているC37基、C49基、およびC613基は、特に他の記載がない限り、直鎖パーフルオロアルキル基を指す。
【0030】
【表1】

【0031】
式(IIIc)のフッ素化アルコール(式中、pは1であり、Rf3は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基である)は、スキーム2による合成で得ることができる。
【0032】
【化4】

【0033】
パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(XI)は、出発点としてパーフルオロアルキルビニルエーテルを使用し、米国特許第5,481,028号明細書の実施例8に記載の手順によって製造される。スキーム2の第2の反応では、パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(XI)を過剰のエチレンと高温高圧で反応させ、テロマーエチルアイオダイド(XII)を得る。エチレンの付加は熱的に行うことができるが、好適な触媒を使用することが好ましい。好ましくは、触媒は、ベンゾイルパーオキシド、イソブチロイルパーオキシド、プロピオニルパーオキシド、又はアセチルパーオキシドなどの過酸化物触媒である。より好ましくは、過酸化物触媒はベンゾイルパーオキシドである。反応温度は限定されないが、110℃〜130℃の範囲の温度が好ましい。反応時間は触媒および反応条件で変わり得るが、24時間(h)で十分であることが分かった。生成物は、最終生成物から未反応の出発物質を分離する任意の手段で精製され得るが、蒸留が好ましい。パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド1モル当たり約2.7molのエチレン、110℃の温度および自己圧(autogenous pressure)、24時間の反応時間を使用し、蒸留により生成物を精製して、理論の80%までの十分な収率が得られた。国際公開第95/11877号パンフレットに開示されている手順に従って、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイド(XII)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するアルコール(IIIc)を得ることができる。あるいは、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイドをN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解することができる。
【0034】
(IIIc)のより高級な同族体(式中、pは2又は3である)は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(XI)(式中、pは1である)のテロメリゼーションを行った後、特定のテロマーを蒸留により単離し、その後、エチレンとテロメリゼーションを行うことによって得ることができる。テロマーエチレンアイオダイドのより高級な同族体(qは2又は3である)は過剰なエチレンを用いて高圧で得ることができる。
【0035】
本発明に有用なフッ素化アクリレートを形成するのに有用な具体的なフッ素化アルコール(IIIc)としては、表1Bに記載されているものが挙げられる。
【0036】
【表2】

【0037】
アルコール(IIIa)(IIIb)および(IIIc)の対応するチオールは、テロマーエチレンアイオダイドから、J.Fluorine Chemistry,104,2 173−183(2000)に記載の手順に従って、様々な試薬で処理することによって得ることができる。一例は、次のスキームに示すように、テロマーエチレンアイオダイドをチオ酢酸ナトリウムと反応させた後、加水分解することである。
【0038】
【化5】

式(IIId)のフルオロアルコール中、パーフルオロアルキル基は、パーフルオロアルキルエーテルである。好ましいパーフルオロアルキルエーテルアルコールは、
F(CF2nO(CF(CF3)CF2O)wCF(CF3)CF2CH2(Ct2t)OH、
F(CF2nO(CF(CF3)CF2O)wCF(CF3)CH2(Ct2t)OH、
F(CF2nOCF[CF2O(C36O)w1CF2CF3]CH2(Ct2t)OH、
F(CF2nO(CF(CF3)CF2O)wCF2CF2CF2CH2(Ct2t)OH、
F(CF2n(CF2nCFO(C36O)w2CF(CF3)CF2CH2(Ct2t)OH、
F(C36O)w1CF(CF3)CF2CH2(Ct2t)OH、
F(C36O)w1CF(CF3)CH2CH2(Ct2t)OH、
F(C36O)yCF(CF2O)mCF2CH2(Ct2t)OH、
F(C36O)w3(C24O)w5(CF2O)w4CF2CH2(Ct2t)OH、
(式中、
tは、1〜約10の整数であり、
w、w1、w2、w3、w4、およびw5はそれぞれ独立して2〜約25の整数であり、
36Oは直鎖又は分岐鎖である)
からなる群から選択される。
【0039】
本発明に有用な、式(IIId)のパーフルオロポリエーテルアルキルアルコールの平均分子量は、約350〜約5000、好ましくは約1000〜約2000、より好ましくは約1500〜約2000である。参照により本明細書に援用される米国特許第6,653,511号明細書および米国特許出願公開第2006/0287559号明細書は、式(IIId)のアルコールの調製に有用な合成方法を開示している。本発明の組成物に有用なアクリレートを調製するための、他の低分子量パーフルオロアルキルエーテルアルコールは、B9〜B14である:
【0040】
【表3】

【0041】
本発明の組成物の製造に使用される式(IIIe)のフルオロアルコールは、次の反応から得ることができる。
F(CF2n−O−CF=CF2+H(OCH2CH2vOH→
F(CF2n−OCFHCF2(OCH2CH2vOH
(式中、
F(CF2nは、C1〜C6直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり、
vは、1〜約4、好ましくは1〜2、より好ましくは2である)
【0042】
式(IIIe)の好ましい化合物は、cが3又は4であり、gが2であり、vが1又は2のものである。
【0043】
式(IIIe)の化合物は、アルカリ金属化合物の存在下でパーフルオロアルキルビニルエーテルをジオールと反応させることによって調製される。好ましいエーテルとしては、式F(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは1〜6である)のものが挙げられる。好ましいジオールとしては、ジエチレングリコールが挙げられる。ジオールは、エーテル1モル当たり約1〜約15モル、好ましくはエーテル1モル当たり約1〜約5モルで使用される。適したアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、又はアルカリ金属アミドが挙げられる。Na、K若しくはCsなどのアルカリ金属、又はNaH若しくはKHなどのアルカリ金属水素化物が好ましい。反応は、ほぼ周囲温度から約120℃の温度で、好ましくは約40℃〜約120℃の温度で行われる。反応は、エーテル又はニトリルなどの任意の溶媒中で行うことができる。
【0044】
1つの好ましい実施形態は、式(I)が式(Ia)であり、更にF(CF2nがC4〜C6パーフルオロアルキル基であり、更にX=−O−である、上記に開示した本発明の組成物である。
【0045】
別の好ましい実施形態は、式(I)が式(Ib)であり、好ましくはF(CF2nがC4〜C6パーフルオロアルキル基であり、更に好ましくはpおよびqが1であり、更に好ましくはXが−O−である、上記に開示した本発明の組成物である。
【0046】
別の好ましい実施形態は、式(I)が式(Ic)であり、好ましくはF(CF2nがC4〜C6パーフルオロアルキル基であり、更に好ましくはpおよびqが1であり、更に好ましくはXが−O−である、上記に開示した本発明の組成物である。
【0047】
別の好ましい実施形態は、式(I)が式(Id)であり、更に添え字nが2〜6であり、好ましくはXが−O−である、上記に開示した本発明の組成物である。
【0048】
別の好ましい実施形態は、式(I)が式(Ie)であり、更にF(CF2nがC4〜C6パーフルオロアルキル基であり、好ましくはXが−O−である、上記に開示した本発明の組成物である。
【0049】
フルオロアルキルモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマー又は水和性モノマーと共重合される。成分(b)(i)は、本明細書では、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート(ここで、前記アルキルは、炭素数6〜18の直鎖、環状又は分岐鎖の炭化水素である)と定義される。成分(b)に有用な具体的なモノマーとしては、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、および他のものが挙げられる。好ましいモノマーは、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、又はこれらの混合物である。これらのうち、ステアリルアクリレートおよびステアリルメタクリレートが最も好ましい。このようなモノマーは市販されている。
【0050】
本発明のフルオロポリマー組成物の調製に有用な、成分(b)(ii)、イオン性水和性モノマーは、カルボン酸、ホスフェート、スルホネート、スルフィネート、又はこれらの金属塩;並びに、第一級、第二級、および第三級アミン塩基などの窒素塩基、および、ピリジン誘導体などの芳香族アミン塩基(ここで、窒素は約40%〜100%塩様になっている(salinized))などのイオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーである。「塩様になっている(salinized)」は、窒素がプロトン化されている、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基若しくはアリールアルキル基、例えば、ベンジルでアルキル化されている、又は、これらの組み合わせであることを意味する。
【0051】
成分(b)(ii)の(1種類以上の)好ましいイオン性水和性モノマーは、式(IIa)〜(IIh)からなる群から選択される:
1OC(O)−C(R)=CH2 (IIa)
(R12N−L11−O−C(O)−C(R)=CH2 (IIb)
1OC(O)−L11−O−C(O)−C(R)=CH2 (IIc)
(M1O)3-kP(O)[−L11−O−C(O)−C(R)=CH2k (IId)
1OS(O)2−L11−X−C(O)−C(R)=CH2 (IIe)
1OS(O)2−L11−C(R)=CH2 (IIf)
1OS(O)2−C(R)=CH2 (IIg)
1OS(O)−L11−C(R)=CH2 (IIh)
(式中、
Rは、水素、Cl、F又はCH3であり、
1は、H又はC1〜C6アルキルであり、
1は、水素又はカチオンであり、好ましいカチオンは、ナトリウム、カリウム、およびリチウムカチオンなどのアルカリ金属カチオン、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、およびモノエタノールアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンであり、
11は、結合であるか、又は、−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、−N(R1)C(O)−、および−OC(O)−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)からなる群から選択される1個又は2個のヘテロ基で任意に中断されており且つCH2Clで任意に置換されている炭素数2〜約20の有機結合基であり、
Xは、−O−、−NR1−、又は−S−であり、
kは、1又は2であり、
且つ、式(IIb)中の窒素は約40%〜100%塩様になっている)
【0052】
式(IIa)の水和性モノマーとしては、アクリル酸および(メタ)アクリル酸およびこれらのアルカリ金属塩が挙げられる。式(IIb)の水和性モノマーとしては、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレートおよび3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが挙げられる。式(IIc)の水和性モノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(2−methacryloyloxyethyl hexhydrophthalic acid)、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、および2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。式(IId)の水和性モノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチル酸ホスフェート、および2−メタクリロイルオキシプロピル酸ホスフェートが挙げられる。式(IIe)の水和性モノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルアクリレート、2−スルホプロピルアクリレート、4−スルホフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルアクリレート、および4−メタクリルアミドベンゼンスルホン酸が挙げられる。式(IIf)の水和性モノマーとしては、4−ビニルベンゼンスルホン酸および3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。式(IIg)の水和性モノマーとしては、ビニルスルホン酸が挙げられる。式(IIh)の水和性モノマーとしては、4−ビニルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0053】
共重合における第3の反応物は、少なくとも1種類の重合性ナノ粒子である。本発明の組成物に使用するのに適した重合性ナノ粒子は、粒子が共重合中にフルオロポリマーに共有結合する能力を有するように、エチレン性不飽和基が粒子表面に結合したどのような非フッ素化無機酸化物粒子であってもよい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリレート、マレエート、マレイミド、フマレート、スチレンおよび置換スチレン、ビニル基、アリル基およびジエン基を含む不飽和炭化水素が挙げられる。1つの好ましい実施形態では、重合性ナノ粒子は、(メタ)アクリレート基、スチレン基、ビニル基およびアリル基から選択されるエチレン性不飽和基を有する。重合性ナノ粒子の最も好ましい形態は、(メタ)アクリレート改質ナノ粒子である。一実施形態では、重合性ナノ粒子成分は、Si、Ti、Zn、Mn、Al、およびZrの無機酸化物を含む。好ましくは、無機酸化物の平均粒径は、約10〜約500nm、好ましくは約50〜約500nm、より好ましくは約80〜約400nm、より好ましくは約100〜約300nmである。一実施形態では、重合性ナノ粒子は、ヒュームド粒子である。別の実施形態では、重合性ナノ粒子成分は、アルコキシシラン、クロロシラン、金属アルコキシド、又は金属ハロゲン化物の加水分解によって製造されたコロイド粒子である。
【0054】
本発明の組成物の形成に有用な市販の重合性ナノ粒子としては、Degussa,Inc.、現Evonik Industies(Essen,Germany)製の商品名AEROXIDE(登録商標)R711の表面改質されたヒュームドシリカが挙げられる。
【0055】
本発明に有用な重合性ナノ粒子は、ナノ粒子の合成改質によって提供することができる。例えば、市販のヒュームド無機酸化物を、エチレン性不飽和基を含むシリル化剤で処理することができる。重合性ナノ粒子の合成に有用なシリル化剤の例としては、3−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリイソプロピルシラン、およびアリルクロロジメチルシランが挙げられる。これらのシリル化剤の多くは、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee WI)および/又はDow Chemical Co.(Midland MI)から市販されている。
【0056】
ヒュームド無機酸化物を処理するための他の適した薬剤としては、以下:
【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

[式中、
2は、Cl(塩素)および−OR5(式中、R5は直鎖又は分岐鎖C1〜C4アルキルである)である]
が挙げられる。
【0059】
重合性ナノ粒子は、炭化水素などの不活性溶媒中、無水条件下でヒュームドナノ粒子を上記のシリル化剤で処理することによって調製することができる。シリル化剤の量を必要に応じて変えて、所望のレベル又は当量のエチレン性不飽和基を提供することができる。反応混合物を典型的には約40〜80℃に1〜12時間加熱して、反応を完了させる。反応混合物を遠心分離することによって重合性ナノ粒子を単離することができる。必要に応じて、粒子を典型的には更に溶媒で洗浄し、望ましくない不純物を除去する。
【0060】
本発明の組成物の重合性ナノ粒子の調製に有用なコロイド粒子としては、例えば、Vista Chemical Company(West Creek,NJ)から入手可能なCATAPALおよびDISPALアルミナなどのコロイドアルミナ;並びに、例えば、Nalco Chemical Company(Naperville,IL)から入手可能なNALCOシリカ、Nissan Chemicals(Houston,TX)製のSNOWTEX、および、Clariant Specialty Fine Chemicals(Muttenz,Switzerland)製のNano Gなどのコロイドシリカ懸濁液が挙げられる。
【0061】
本発明に有用な重合性ナノ粒子の調製に有用な、少なくとも部分的に疎水性基で表面改質された特殊無機酸化物は、合成によって製造することができる。本発明の一実施形態は、重合性ナノ粒子が、Si、Ti、Zn、Zr、Mn、Al、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択されるM原子の酸化物を含む表面改質された無機酸化物粒子であり、少なくとも1種類の粒子の表面が、式(IV)、
(L2d(L3cSi−(O)e−(R7f−(Z1a−[C(X1)]x−(Z2l−Q
(IV)
(式中、
2は、Mに共有結合している酸素であり;各L3はH、C1〜C2アルキル、およびOHからなる群から独立して選択され;dおよびcはそれぞれ独立して、dが1以上であり、cが0以上であり、d+cが3となるような整数であり;
e、f、a、xおよびlは、それぞれ独立して0又は1であり;
7は、直鎖又は分岐鎖のC1〜C12アルキルであり、
1は、−NH−であり、
1は、O又はSであり、
2は、NH、N−C(O)−OH、N−C(O)−、又はOCH2CH2N−C(O)−であるが、但し、Z2がN−C(O)−又はOCH2CH2N−C(O)−であるとき、Qは、N−C(O)−CH=CH−C(O)−で表される5員の複素環を形成し、
Qは、−O−C(O)−、−C(O)−O−、又は1つの2価の有機基によって任意に中断されたC2〜C12ヒドロカルビレンからなる群から選択される)
で表される少なくとも1つの基に共有結合している、組成物である。
【0062】
一実施形態では、本発明の組成物に有用な表面改質された無機酸化物粒子は、SiであるM原子を含む。
【0063】
別の実施形態では、コポリマー組成物は、更に、次の重量パーセンテージで共重合する(d)、(e)、(f)、又は(g)から選択される少なくとも1種類の追加のモノマーを含む:
(d)塩化ビニリデン、塩化ビニル、若しくは酢酸ビニル、又はこれらの混合物、約1%〜約35%、又は
(e)スチレン、メチル置換スチレン、クロロメチル置換スチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンジオールジ(メタ)アクリレート、N−メチロイル(メタ)アクリルアミド、C1〜C5アルキル(メタ)アクリレート、および式(XX):
8(OCH2CH2mO−C(O)−C(R)=CH2 (XX)
(式中、
mは、2〜約10であり、
8は、水素、C1〜C4アルキル、又はCH2=C(R)C(O)−O−であり、
各Rは、水素、Cl、F又はCH3である)
の化合物からなる群から選択される少なくとも1種類のモノマー、約0.5%〜約25%、又は
(f)式(XXIa)、(XXIb)又は(XXIc):
【0064】
【化8】

(R9O)3Si−B1−X−C(O)−C(R)=CH2 (XXIb)
(R9O)3Si−B2−C(R1)=CH2 (XXIc)
(式中、
各Rは、独立して水素、Cl、F又はCH3であり、
9は、直鎖又は分岐鎖C1〜C4アルキルであり、
1は、2価の直鎖又は分岐鎖C2〜C4アルキレンであり、
2は、共有結合、又は2価の直鎖若しくは分岐鎖C1〜C4アルキレンであり、
Xは、−O−、−NR1−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)、又は−S−である)
の少なくとも1つのモノマー、約0.5%〜約10%、又は
(g)(d)、(e)又は(f)のいずれかの組み合わせ、1%〜約35%。
【0065】
本発明は、更に、繊維基材の表面に前述の本発明のポリマーを塗布する工程を含む、撥油性および撥水性を付与するための繊維基材の処理方法を含む。本発明の水性エマルションは、撥水撥油性にされるテキスタイル又は基材に直接塗布される。本発明のエマルションは、単独で、又は、希薄な非フッ素化ポリマーと若しくは他のテキスタイル処理剤若しくは仕上剤と混合して塗布される。組成物は、製造施設で、小売業者のところで、又は、取り付けおよび使用の前に、又は消費者のところで塗布することができる。
【0066】
本発明の方法を実施するのに好適な繊維基材としては後述のものが挙げられる。本発明のエマルションポリマーは、一般に、噴霧、浸漬、パディング又は他の周知の方法により繊維基材に塗布される。本発明のエマルションは、一般に、完全に配合されたエマルションの重量に基づいて、約5g/L〜約100g/L、好ましくは約10g/L〜約50g/Lの濃度に水で希釈される。例えば、スクイズロールで余分な液体を除去した後、処置された布帛を乾燥させ、次いで、例えば、110℃〜190℃に、少なくとも30秒間、典型的には60〜180秒間、加熱することによって硬化させる。このように硬化させることによって、はじく性質と耐久性が向上する。これらの硬化条件は典型的なものであり、特有の設計特徴のため、市販の装置にはこれらの範囲外で運転されるものがある。
【0067】
本発明は、更に、前述の本発明のポリマーが表面に塗布された繊維基材を含む。好ましくは、処理基材は、約0.05重量%〜約0.5重量%のフッ素含有量を有する。
【0068】
好適な基材としては、繊維基材が挙げられる。繊維基材としては、織られた繊維および織られていない繊維、ヤーン、布帛、混紡布、テキスタイル、不織布、紙、皮革、ラグおよびカーペットが挙げられる。これらは、木綿、セルロース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、アラミド、およびアセテートを含む天然又は合成の繊維から製造される。「混紡布(fabric blends)」とは、2種類以上の繊維で製造された布帛を意味する。典型的には、これらの混紡は、少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維の組み合わせであるが、2種類以上の天然繊維の混紡又は2種類以上の合成繊維の混紡も含むことができる。カーペット基材は、染色されていても、顔料で着色されていても、印刷されていても、又は染色されていなくてもよい。カーペット基材の繊維およびヤーンは、染色されていても、顔料で着色されていても、印刷されていても、又は染色されていなくてもよい。カーペット基材は、精錬されていても又は精錬されていなくてもよい。はじく性質を付与するように本発明の化合物を塗布することが特に有利な基材としては、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリエステル、木綿、および、ポリエステルと木綿の混紡が挙げられる。不織布基材としては、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能なSONTARAなどのスパンレース不織布、およびスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SPS)不織布が挙げられる。
【0069】
本発明のエマルションは、基材表面が油や水をはじくようにするのに有用である。はじく性質は、複数回洗濯した後、耐久性がある。本発明のポリマーエマルションは、また、このようなはじく性質を付与するとともに、炭素数約2〜約7の短鎖パーフルオロアルキル基を含有するという利点もある。本発明のエマルションは、その安定性のため、様々な適用条件で使用できるという点で有利である。本発明の処理された基材は、衣類、防護服、カーペット、室内装飾材料、室内装備品および他の用途などの様々な用途および製品に有用である。特に、本発明は、これらの新規なエマルションベースの製剤がスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)ポリプロピレン布帛上でIPA/水をはじく性質の評価に的を絞る。前述の優れた表面特性は、表面の清浄さを維持するのに役立ち、従って、より長く使用することを可能にする。
【0070】
試験方法および材料
本明細書の実施例では、以下の試験方法および材料を使用した。
【0071】
試験方法1−撥水性
TEFLON Global Specifications and Quality Control Tests information packetに概説されたデュポン技術実験室的方法(DuPont Technical Laboratory Method)に従って、処理基材の撥水性を測定した。この試験は、水性液体による濡れに対する処理された基材の耐性を決定する。様々な表面張力を有する水−アルコール混合物の液滴を布帛につけて、表面の濡れの程度を視覚的に決定する。試験は、水性の染みに対する耐性の大まかな指標を提供する。撥水性評価が高いほど、完成した基材は、水をベースにする物質による染みに対する耐性が良好である。標準試験液の組成を次の表1に示す。試験液の境界線上の合格については、表1の数値から2分の1を引くことによって、0.5の増分の評価が決定される。
【0072】
【表4】

【0073】
試験方法2
静水圧は、脱イオン水が試験布帛に浸透するのに必要な圧力の尺度であり、方法INDA IST 80.4によって測定される。
【0074】
それは、静圧下での水の浸透に対する布帛の耐性を測定する。リザーバの底部を形成するように取り付けられた不織布サンプルに水圧を加え、布帛の下面に漏れが現れるまで、その水圧を一定の速度で増加させる。試料の3つの別々の領域で漏れの最初の兆候が現れた静水頭高さで水圧を測定し、結果を平均する。結果をサンプル上の水のcmで記録する。布帛サンプル上から直径114±1.3mmの円形の領域に、毎秒静水頭1.0±0.1cmの速度で27℃±3℃の温度の水を導入する。試験装置は、Richmond Machine Company(Philadelphia,PA 19134)から入手可能である。
【0075】
【表5】

【実施例】
【0076】
実施例1
まず、脱イオン水(200g)、AVITEX R(5.0g)、BRIJ 58(5.0g、脱イオン水中20重量%)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレート(22g)中で予め超音波処理したAEROXIDE R711ヒュームドシリカ粒子(0.1g)、ステアリルアクリレート(7.3g)およびアセトン(1.8g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(7.3g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(10.0g)に溶解したVAZO−56(0.50g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(13.7g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(4.6g)およびアセトン(0.9g)の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(10g)および脱イオン水(50g)を添加した。得られた混合物をミルクフィルタ(milk filter)を使用して重力ろ過し、固形分12.0%およびF3.5%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、パッド浴(浸漬)プロセスを使用して0.10%の添加量で、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)ポリプロピレン布帛(Kimberly Clark(Roswell,GA)から市販されている)に塗布した。次いで、布帛を風乾し、248°Fで3分間、硬化させた。試験方法1および2に従って、布帛の撥水性を試験した。結果を表3に記載する。
【0077】
比較例A
比較例Aは、アクリレート改質ナノ粒子が存在しないアクリルエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(200g)、AVITEX R(5.0g)、BRIJ 58(5.0g、脱イオン水中20重量%)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレート(22g)、ステアリルアクリレート(7.3g)およびアセトン(1.8g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(7.3g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(10.0g)に溶解したVAZO−56(0.50g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(13.7g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(4.6g)およびアセトン(0.9g)の超音波処理された混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(10g)および脱イオン水(50g)を添加した。得られた混合物をミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分12.7%およびF3.7%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例1におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表3に記載する。
【0078】
比較例B
比較例Bは、非重合アクリレート改質粒子を含有するアクリレートエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(200g)、AVITEX R(5.0g)、BRIJ 58(5.0g、脱イオン水中20重量%)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレート(22g)、ステアリルアクリレート(7.3g)およびアセトン(1.8g)を混合することによってエマルションを調製した。得られた混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(7.3g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(10.0g)に溶解したVAZO−56(0.50g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、2−エチルヘキシルメタクリレート(13.7g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(4.6g)およびアセトン(0.9g)の混合物を冷却した混合物に添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(10g)、脱イオン水(50g)およびAEROXIDE R711(0.1g)の存在下で超音波処理した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分12.7%およびF3.7%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例1におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表3に記載する。
【0079】
【表6】

【0080】
表3のデータから、ナノ粒子がポリマー構造に共重合した実施例1は、ナノ粒子を含有しない比較例Aと同等の撥水性、および比較例Aより高い静水圧、並びに、非重合粒子が存在する比較例Bより優れた撥水性および比較例Bより高い静水圧を提供することが分かる。
【0081】
実施例2
49(CH2CF22I(714g)およびd−(+)−リモネン(3.2g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(56g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。減圧蒸留により生成物を単離し、C49(CH2CF22CH2CH2Iを得た。C49(CH2CF22CH2CH2I(10g、0.02mol)およびN−メチルホルムアミド(8.9mL、0.15mol)の混合物を150℃に26時間加熱した。混合物を100℃に冷却した後、水を添加して粗エステルを分離した。エチルアルコール(3mL)およびp−トルエンスルホン酸(0.09g)を添加し、混合物を70℃で0.25時間攪拌した。ギ酸エチルおよびエチルアルコールを留去し、粗生成物を得た。粗生成物をエーテル中に溶解させ、10重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で順番に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。蒸留によりアルコール生成物、CF3(CF23(CH2CF22CH2CH2OH(6.5g、収率83%)[2mmHg(266パスカル)で沸点94〜95℃]が得られた。
【0082】
予め調製したアルコール(400g)およびシクロヘキサン(308.6g)を、攪拌子、Dean−Starkトラップおよび滴下漏斗を備えた丸底フラスコに加えた。フラスコを加熱しつつ、p−トルエンスルホン酸一水和物(9.2g)および4−メトキシフェノール(1.4g)をフラスコに別々に仕込んだ。温度が70℃に達したとき、メタクリル酸(130.4g)を滴下した。メタクリル酸を全部添加した後、フラスコを断熱し、フラスコの温度を85℃に上げた。CF3(CF23CH2CF2CH2CF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(PPVE−メタクリレート)の生成について、GCで反応を監視した。アルコールが全て反応した後、フラスコを室温に冷却した。次いで、混合物を分液漏斗に移した。フラスコをエチルエーテルで洗浄した後、エチルエーテル洗浄液を分液漏斗内の混合物に加えた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム(150mL、10%w/w溶液)で3回洗浄し、毎回、氷および水層を除去した。次いで、反応混合物を脱イオン水(150mL)で洗浄し、水層を除去した。反応混合物のアリコートを取り、GCで分析し、洗浄中に未反応のメタクリル酸が全て除去されたことを確認した。反応混合物を丸底フラスコに移し、硫酸マグネシウムを添加して反応混合物を乾燥させた。次いで、反応混合物をろ過し、ろ取した固体をエチルエーテルで洗浄した。反応混合物をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下、高真空のロータリーエバポレータで濃縮し、液体(10.1g)を得た。GCおよびNMRによる分析から、反応混合物が、CF3(CF23CH2CF2CH2CF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2であることが分かった。1H NMR(CDCl3,400MHz):6.12〜6.11(1H,m),5.60〜5.59(1H,m),4.38(2H,t,J=6.0Hz),2.94〜2.66(4H,m),2.38(2H,t−t,J1=16.5Hz,J2=6Hz),1.95〜1.94(3H,m);MS:461(M++1)。
【0083】
まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF23CH2CF2CH2CF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(8.4g)中で予め超音波処理したAEROXIDE R711ヒュームドシリカ粒子(0.05g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られた混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(0.13g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分16.8%およびF3.0%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、パッド浴(浸漬)プロセスを使用して0.10%の添加量で、Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手可能なスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)ポリプロピレン布帛に塗布した。次いで、布帛を風乾し、248°Fで3分間、硬化させた。試験方法1および2に従って、布帛の撥水性を試験した。結果を表4に記載する。
【0084】
比較例C
比較例Cは、アクリレート改質ナノ粒子が存在しないアクリルエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF23CH2CF2CH2CF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(8.4g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理した溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分13.0%およびF2.3%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例2におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表4に記載する。
【0085】
比較例D
比較例Dは、非重合アクリレート改質粒子を含有するアクリレートエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF23CH2CF2CH2CF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(8.4g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン3.7gを添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)、脱イオン水(25g)およびAEROXIDE R711(0.05g)の存在下で超音波処理した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分13.0%およびF2.3%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例2におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表4に記載する。
【0086】
【表7】

【0087】
表4のデータから、粒子がポリマー構造に共重合した実施例2は、粒子を含有しない比較例Cおよび非重合粒子が存在する比較例Dより優れた撥水性と高い静水圧を提供することが分かった。
【0088】
実施例3
ドライボックス中で、500mLのPyrex瓶にジエチレングリコール(175mL、99%、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から市販されている)および無水テトラヒドロフラン80mLを仕込んだ。水素の発生が完了するまで、磁気攪拌しつつ、水素化ナトリウム(3.90g)をゆっくり添加した。蓋をした瓶をドライボックスから取り出し、窒素が充填されたグローブバッグ内で溶液を400mLの金属製振盪機チューブに移した。振盪機チューブを内部温度−18℃に冷却し、振盪を開始し、パーフルオロプロピルビニルエーテル(41g)を金属シリンダから添加した。混合物を室温に加熱し、20時間振盪した。反応混合物を、別々の400mLの振盪機チューブ内の複製の反応実験と組み合わせた。組み合わせた反応混合物を水600mLに添加し、この混合物を分液漏斗でジエチルエーテル3×200mLで抽出した。エーテル抽出物をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下、ロータリーエバポレータで濃縮し、液体(119.0g)を得た。CD3OD中の1H NMRおよびガスクロマトグラフィー(GC)による分析は、共に、少量のジエチレングリコールを示した。この材料をジエチルエーテル150mL中に溶解させ、分液漏斗で水(3×150mL)で抽出した。エーテル層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下、高真空のロータリーエバポレータで濃縮し、パーフルオロプロピルビニルエーテルアルコール(PPVE)[CF3(CF22OCHFCF2−CH2CH2OH]の液体(99.1g)を得た。1H NMR(C66,TMSのppm低磁場)は、97モル%の所望のモノ−PPVE付加物:1.77(ブロード s,OH),3.08−3.12(m,OCH2CH2OCH2CH2OH),3.42(t,OCH2CH2OCH2CH2OH),3.61(t,OCH2CH2OCH2CH2OH),5.496(ダブレット オブ トリプレッツ,2JH−F=53Hz,3JH−F=3Hz,OCF2CHFOC37)、および3モル%のビスPPVE付加物:5.470(ダブレット オブ トリプレッツ,2JH−F=53Hz,3JH−F=3Hz,C37OCHFCF2OCH2CH2OCH2CH2OCF2CHFOC27)を示した。ビスPPVE付加物の他のピークは、モノPPVE付加物と重複した。
【0089】
パーフルオロプロピルビニルエーテルアルコールCF3(CF22OCHFCF2−CH2CH2OH(400g)およびシクロヘキサン(308.6g)を、攪拌子、Dean−Starkトラップおよび滴下漏斗を備えた丸底フラスコに添加した。フラスコを加熱しつつ、p−トルエンスルホン酸一水和物(9.2g)および4−メトキシフェノール(1.4g)をフラスコに別々に仕込んだ。温度が70℃に達したとき、メタクリル酸(130.4g)を滴下した。メタクリル酸を全部添加した後、フラスコを断熱し、フラスコの温度を85℃に上げた。パーフルオロプロピルビニルエーテルメタクリレートの生成について、GCで反応を監視した。パーフルオロプロピルビニルエーテルアルコールが全て反応した後、フラスコを室温に冷却した。次いで、混合物を分液漏斗に移した。フラスコをエチルエーテルで洗浄した後、エチルエーテル洗浄液を分液漏斗内の混合物に加えた。反応混合物を炭酸水素ナトリウム(150mL、10%w/w溶液)で3回洗浄し、毎回、氷と水層を除去した。次いで、反応混合物を脱イオン水(150mL)で洗浄し、水層を除去した。反応混合物のアリコートを取り、GCで分析し、洗浄中に未反応のメタクリル酸が全て除去されたことを確認した。反応混合物を丸底フラスコに移し、硫酸マグネシウムを添加して反応混合物を乾燥させた。次いで、反応混合物をろ過し、ろ取した固体をエチルエーテルで洗浄した。反応混合物をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下、高真空のロータリーエバポレータで濃縮し、液体(10.1g)を得た。GCによる分析から、反応混合物が、CF3(CF22OCHFCF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2であることが分かった。
【0090】
まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF22OCHFCF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(11.5g)中で予め超音波処理したAEROXIDE R711ヒュームドシリカ粒子(0.05g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られた混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分17.4%およびF3.7%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、パッド浴(浸漬)プロセスを使用して0.10%の添加量で、Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手可能なスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)ポリプロピレン布帛に塗布した。次いで、布帛を風乾し、248°Fで3分間、硬化させた。試験方法1および2に従って、布帛の撥水性を試験した。結果を表5に記載する。
【0091】
比較例E
比較例Eは、アクリレート改質ナノ粒子が存在しないアクリルエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF22OCHFCF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(11.6g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られた混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分16.0%およびF3.4%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例3におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表5に記載する。
【0092】
比較例F
比較例Fは、非重合アクリレート改質ナノ粒子を含有するアクリレートエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、CF3(CF22OCHFCF2CH2CH2O−C(O)−C(CH3)=CH2(11.6g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン3.7gを添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)、脱イオン水(25g)およびAEROXIDE R711(0.05g)の存在下で超音波処理した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分16.0%およびF3.4%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例3におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表5に記載する。
【0093】
【表8】

【0094】
表5のデータから、ナノ粒子がポリマー構造に共重合した実施例3は、ナノ粒子を含有しない比較例Eおよび非重合粒子が存在する比較例Fより優れた撥水性と高い静水圧を提供することが分かった。
【0095】
実施例4
1ガロンの反応器にパーフルオロエチルエチルアイオダイド(PFEEI)(850g)を仕込んだ。低温真空排気した後、圧力が60psig(413.7×103Pa)に達するまで、エチレンとテトラフルオロエチレンを27:73の比で添加した。次いで、反応を70℃に加熱した。圧力が160psig(1103×103Pa)に達するまで、更にエチレンとテトラフルオロエチレンを27:73の比で添加した。過酸化ラウロイル溶液(パーフルオロエチルエチルアイオダイド150g中、過酸化ラウロイル4g)を1mL/分の速度で1時間添加した。気体供給率をエチレン:テトラフルオロエチレン1:1に調整し、圧力を160psig(1103×103Pa)に維持した。エチレン約67gを添加した後、エチレンとテトラフルオロエチレンの供給を停止した。反応を70℃で更に8時間加熱した。揮発性物質を真空蒸留により室温で除去した。主成分として1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−ヨードオクタンと1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ヨードドデカンを約2:1の比で含有するアイオダイド(773g)の混合物を得た。
【0096】
アイオダイド(46.5g)とN−メチルホルムアミド(NMF)(273mL)の混合物を150℃に19時間加熱した。反応混合物を水(4×500mL)で洗浄し、残留物を得た。この残留物、エタノール(200mL)、および濃塩酸(1mL)の混合物を24時間穏やかに還流した(浴温85℃)。反応混合物を水(300mL)中に注いだ。固体を水(2×75mL)で洗浄し、減圧下(2torr)で乾燥させ、主成分として1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロ−1−オクタノールと1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロ−1−ドデカノールを含有するアルコールの混合物26.5gを得た。
【0097】
500mLのフラスコに予め調製したアルコールの混合物(24.5g)、トリエチルアミン(9.8g)およびテトラヒドロフラン(100mL)を仕込んだ。テトラヒドロフラン(10mL)中の塩化アクリロイル(8.8g)を約10℃で滴下した。テトラヒドロフランを更に40mL添加し、得られた混合物を室温で15時間、30℃で2時間攪拌した。ろ過により固体を除去し、テトラヒドロフラン(50mL)で洗浄した。ろ液および洗浄液を合わせて濃縮し、残留物を得た。残留物をエーテル(600mL)と混合し、エーテル不溶性固体をろ過により除去した。次いで、エーテル溶液をNaHCO3で洗浄してほとんど中性にした後、水(3×50mL)、NaCl(飽和)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、減圧下で乾燥させ、主成分として1,1,2,2,5,5,6,6−オクタヒドロパーフルオロオクチルアクリレートおよび1,1,2,2,5,5,6,6,9,9,10,10−ドデカヒドロパーフルオロドデシルアクリレートを含有する固体生成物(19.8g)(本明細書では、エチレン−テトラフルオロエチレンアクリレートと称される)を得た。
【0098】
まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、AEROXIDE R711ヒュームドシリカ粒子(0.05g)と一緒に予め超音波処理されたエチレン−テトラフルオロエチレンアクリレート(8.8g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分13.5%およびF2.3%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、パッド浴(浸漬)プロセスを使用して0.10%の添加量で、Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手可能なスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)ポリプロピレン布帛に塗布した。次いで、布帛を風乾し、248°Fで3分間、硬化させた。試験方法1および2に従って、布帛の撥水性を試験した。結果を表6に記載する。
【0099】
比較例G
比較例Gは、アクリレート改質ナノ粒子が存在しないアクリルエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、エチレン−テトラフルオロエチレンアクリレート(8.8g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン(3.7g)を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)および脱イオン水(25g)を添加した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分13.5%およびF2.3%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例4におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表6に記載する。
【0100】
比較例H
比較例Hは、非重合アクリレート改質ナノ粒子を含有するアクリレートエマルションの形成を示す。まず、脱イオン水(100g)、AVITEX R(2.5g)、BRIJ 58(2.5g、脱イオン水中20重量%)、エチレン−テトラフルオロエチレンアクリレート(8.8g)、ステアリルアクリレート(3.7g)およびアセトン(0.9g)を混合することによってエマルションを調製した。得られる混合物を50℃に加熱し、超音波処理した後、表面下窒素注入管を備えたフラスコに仕込んだ。混合物が32℃未満の温度に達するまで、混合物に窒素を注入した。次いで、窒素ブランケット下で混合物に塩化ビニリデン3.7gを添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(5.0g)に溶解したVAZO−56(0.25g)の溶液を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した。次いで、冷却した反応混合物に、2−エチルヘキシルメタクリレート(6.9g)、ポリエチレングリコールメタクリレート(2.3g)およびアセトン(0.5g)の超音波処理された溶液の混合物を添加し、15分間攪拌した後、脱イオン水(2.5g)に溶解したVAZO−56(0.13g)の溶液を窒素ブランケット下で添加した。次いで、混合物を50℃に加熱し、8時間攪拌した後、へキシレングリコール(5g)、脱イオン水(25g)およびAEROXIDE R711(0.05g)の存在下で超音波処理した。得られた混合物を、ミルクフィルタを使用して重力ろ過し、固形分13.5%およびF2.3%のエマルションポリマーを得た。このエマルションポリマーを、実施例4におけるようにSMSポリプロピレン不織布に塗布し、試験方法1を使用して撥水性を試験した。結果を表6に記載する。
【0101】
【表9】

【0102】
表6のデータから、ナノ粒子がポリマー構造に共重合した実施例4は、ナノ粒子を含有しない比較例Gおよび非重合粒子が存在する比較例Hより優れた撥水性と高い静水圧を提供することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の重量パーセンテージで共重合するモノマー:
(a)式(I)、
f1−L−X−C(O)−C(R)=CH2 (I)
(式中、
f1は、1〜約50個の酸素原子によって任意に中断された、炭素数約2〜約100の1価の部分的に又は完全にフッ素化された直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、炭素原子対酸素原子の比が少なくとも約2:1であり、酸素原子が互いに結合していないアルキル基であり、
Lは、結合であるか、又は、−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、および−N(R1)C(O)−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)からなる群から選択される1〜約4個のヘテロ基で任意に中断されており且つCH2Clで任意に置換されている炭素数1〜約20の直鎖若しくは分岐鎖の2価の結合基であり、
Xは、−O−、−NR1−、又は−S−であり、
Rは、水素、Cl、F又はCH3である)
のフルオロアルキルモノマー又はモノマーの混合物、約20%〜約95%、
(b)
(i)炭素数約6〜約18の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は
(ii)1種類以上のイオン性水和性モノマー、
の少なくとも1つ、約5%〜約80%、および
(c)非フッ素化重合性ナノ粒子、約0.05%〜約2%、
を含むフルオロポリマー組成物。
【請求項2】
f1は、F(CF2n、F(CF2n(CH2CF2p、F(CF2n(CH2x[(CF2CF2p(CH2CH2qm、F(CF2nOF(CF2n、F(CF2nOCFHCF2、又はF(CF2n[OCF2CF(CF3)]p[OCF2CF2q(式中、nは1〜約6であり;xは1〜約6であり;p、qおよびmはそれぞれ独立して1〜約3であり、rは0または1である)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Lは、結合、−(Ct2t)−(式中、tは1〜10の整数である)、フェニレン、C1〜C4アルキル置換フェニレン、エチレンオキシド、R5、又は、(A)p−R5[式中、Aは炭素数1〜6の2価のアルキルであり、pは上記に定義した通りであり、R5は、−S(CH2u−、
【化1】

(式中、
uは、約2〜約4の整数であり、
sは、1〜約50の整数であり、
2、R3、およびR4は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜約6のアルキル基である)
からなる群から選択される2価の基である]である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)が、F(CF2n(CH2t(R5rX−C(O)−C(R)=CH2、F(CF2n(CH2CF2p(CH2CH2q(R5rX−C(O)−C(R)=CH2、F(CF2n(CH2x[(CF2CF2p(CH2CH2qm(R5rX−C(O)−C(R)=CH2、F(CF2nO(CF2nCH2(Ct2t)(R5rX−C(O)−C(R)=CH2、およびF(CF2nOCFHCF2(OCH2CH2vX−C(O)−C(R)=CH2
[式中、
nは、1〜約6の整数であり、
tは、1〜約10の整数であり、
p、qおよびmはそれぞれ独立して、1〜約3の整数であり、
rは、0又は1であり、
vは、1〜約4の整数であり、
5は、−S(CH2u−、
【化2】

(式中、
uは、2〜約4の整数であり、
sは、1〜約50の整数であり、
2、R3、およびR4は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜約6のアルキル基である)
からなる群から選択される2価の基である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
nが4〜6であり、p、qおよびmがそれぞれ1であり、rが0である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種類以上のイオン性水和性モノマーが、M1OC(O)−C(R)=CH2、(R12N−L11−O−C(O)−C(R)=CH2、M1OC(O)−L11−O−C(O)−C(R)=CH2、(M1O)3-kP(O)[−L11−O−C(O)−C(R)=CH2k、M1OS(O)2−L11−X−C(O)−C(R)=CH2、M1OS(O)2−L11−C(R)=CH2、およびM1OS(O)2−C(R)=CH2、M1OS(O)−L11−C(R)=CH2
(式中、
Rは、水素、Cl、F又はCH3であり、
1は、H又はC1〜C6アルキルであり、
1は、水素又はカチオンであり、
kは、1又は2であり、
11は、結合であるか、又は−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、および−N(R1)C(O)−、および−OC(O)−からなる群から選択される1個又は2個のヘテロ基で任意に中断されており、且つCH2Clで任意に置換されている炭素数2〜約20の有機結合基である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
次の重量パーセンテージで共重合する少なくとも1種類の追加のモノマー:
(d)塩化ビニリデン、塩化ビニル、又は酢酸ビニル、又はこれらの混合物、約1%〜約35%、又は
(e)スチレン、メチル置換スチレン、クロロメチル置換スチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンジオールジ(メタ)アクリレート、N−メチロイル(メタ)アクリルアミド、C1〜C5アルキル(メタ)アクリレート、および式(XX):
8(OCH2CH2mO−C(O)−C(R)=CH2 (XX)
(式中、
mは、2〜約10であり、
8は、水素、C1〜C4アルキル、又はCH2=C(R)C(O)−O−であり、
各Rは、水素、Cl、F又はCH3である)
の化合物からなる群から選択される少なくとも1種類のモノマー、約0.5%〜約25%、又は
(f)式(XXIa)、(XXIb)又は(XXIc):
【化3】

(R9O)3Si−B1−X−C(O)−C(R)=CH2 (XXIb)
(R9O)3Si−B2−C(R1)=CH2 (XXIc)
(式中、
各Rは、独立して水素、Cl、F又はCH3であり、
9は、直鎖又は分岐鎖C1〜C4アルキルであり、
1は、2価の直鎖又は分岐鎖C2〜C4アルキレンであり、
2は、共有結合又は2価の直鎖若しくは分岐鎖C1〜C4アルキレンであり、
Xは、−O−、−NR1−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)、又は−S−である)
の少なくとも1種類のモノマー、約0.5%〜約10%、又は
(g)(d)、(e)又は(f)のいずれかの組み合わせ、1%〜約35%、
を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合性ナノ粒子が、Si、Ti、Zn、Zr、Mn、Al、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択されるM原子の酸化物を含む表面改質された無機酸化物粒子であり、少なくとも1種類の粒子の表面が、式(IV)、
(L2d(L3cSi−(O)e−(R7f−(Z1a−[C(X1)]x−(Z2l−Q
(IV)
(式中、
2は、Mに共有結合している酸素であり;各L3はH、C1〜C2アルキル、およびOHからなる群から独立して選択され;dおよびcはそれぞれ独立して、dが1以上であり、cが0以上であり、d+cが3となるような整数であり;
e、f、a、xおよびlは、それぞれ独立して0又は1であり;
7は、直鎖又は分岐鎖のC1〜C12アルキルであり、
1は、−NH−であり、
1は、O又はSであり、
2は、NH、N−C(O)−OH、N−C(O)−、又はOCH2CH2N−C(O)−であるが、但し、Z2がN−C(O)−又はOCH2CH2N−C(O)−であるとき、Qは、N−C(O)−CH=CH−C(O)−で表される5員の複素環を形成し、
Qは、−O−C(O)−、−C(O)−O−、又は1つの2価の有機基によって任意に中断されたC2〜C12ヒドロカルビレンからなる群から選択される)
で表される少なくとも1つの基に共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記重合性ナノ粒子が、前記粒子に結合しているエチレン性不飽和部分を有し、前記部分が(メタ)アクリレート、マレエート、マレイミド、フマレート、並びに、スチレンおよび置換スチレン、ビニル、アリルおよびジエンを含む不飽和炭化水素からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記重合性ナノ粒子が、Si、Ti、Zn、Mn、Al、又はZrの無機酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記重合性ナノ粒子が、Siの無機酸化物である、請求項1に記載のコポリマー組成物。
【請求項12】
前記重合性ナノ粒子が、アクリレート基を含有するSiの無機酸化物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記重合性ナノ粒子の平均粒径が、約10〜約500nmである、請求項1に記載のコポリマー組成物。
【請求項14】
次の重量パーセンテージで共重合するモノマー:
(a)式(I)、
f1−L−X−C(O)−C(R)=CH2 (I)
[式中、
f1は、1〜約50個の酸素原子によって任意に中断された、炭素数約2〜約100の1価の部分的に又は完全にフッ素化された直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、炭素原子対酸素原子の比が少なくとも約2:1であり、酸素原子が互いに結合していないアルキル基であり、
Lは、結合であるか、又は、−O−、−NR1−、−S−、−SO−、−SO2−、および−N(R1)C(O)−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)からなる群から選択される1〜約4個のヘテロ基で任意に中断されており且つCH2Clで任意に置換されている炭素数1〜約20の直鎖若しくは分岐鎖の2価の結合基であり、
Xは、−O−、−NR1−(式中、R1はH又はC1〜C6アルキルである)、又は−S−であり、
Rは、水素、Cl、F又はCH3である]
のフルオロアルキルモノマー又はモノマーの混合物、約20%〜約95%、
(b)
(i)炭素数約6〜約18の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は
(ii)1種類以上のイオン性水和性モノマー、
の少なくとも1つ、約5%〜約80%、および
(c)重合性非フッ素化ナノ粒子、約0.05%〜約2%、
を含むフルオロポリマー組成物を繊維基材の表面に塗布することを含む、繊維基材の処理方法であって、
前記組成物がそれと接触する基材に撥油性および撥水性を付与する、方法。
【請求項15】
前記フルオロポリマー組成物が、水中約5g/L〜約100g/Lの濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により処理された繊維基材。
【請求項17】
織られた又は織られていない繊維、ヤーン、布帛、混紡布、テキスタイル、不織布、紙、皮革、ラグ、およびカーペットである、請求項16に記載の基材。

【公表番号】特表2011−506640(P2011−506640A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537022(P2010−537022)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/085298
【国際公開番号】WO2009/076109
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】