説明

フルオロポリマー乳濁液コーティング

本発明は、ワンパスで厚いコーティングを形成することができ、乾燥および焼付け後のそのコーティングに亀裂がないフルオロポリマーを含む水/油乳濁液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の形態のフルオロポリマーコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーの水性分散液は、基材へのスプレー塗布、続いて乾燥かつ焼付けして、基材上にノンスティックコーティングを形成するために使用されることが当技術分野でよく知られている。このような分散液は、通常は、スプレー操作を容易にするような100センチポアズ(cps)などの低粘度を有する。残念なことに、得られるコーティングには、厚さに限界がある。この限界は、乾燥コーティング厚さが、12μmに接近する場合、乾燥および焼付け時に亀裂が生じることであり、亀裂のないコーティングを所望の厚さ、例えば少なくとも30μmに形成して、増大された耐磨耗性を提供するためには、分散液のより薄いコートを複数塗布し、塗布間に乾燥および焼付けを行う必要がある。より厚いワンパスコーティングを得る目的で、フルオロポリマーコーティングの焼付け中に分解かつ揮発する増粘剤を水性分散液に添加して、分散液の粘度を増大させてきた。増粘剤の不利な1点は、焼付け中に揮発するように設計されているにもかかわらず、多数の国で、増粘剤は、ノンスティックコーティングで食品と接触することが認可されていないことである。しかし、コーティング厚さが増大するにつれて、揮発は抑制され、分解された増粘剤が焼付けされたコーティング中に残留する。増粘剤の別の不利な点は、焼付けられた組成物中に存在せず、それによって、得られる焼付けされたコーティングの特性に寄与しないことである。米国特許公報(特許文献1)は、ポリエーテルであるこのような増粘剤、ならびにフルオロポリマー微粒子、ポリエーテル界面活性剤、および液体担体とのそのブレンディングを、攪拌して、均一な分散液を形成することによって使用することを開示している。実施例によれば、組成物は、250〜280cps(ブルックフィールド粘度計、スピンドル#2(SP2)、60rpmで操作)の粘度を有し、スプレーすることによって下塗付き基材に塗布される。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,277,487B1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,518,349B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許公報(特許文献1)のポリエーテルなど一過性の増粘剤添加物を使用することなく、ワンパスコーティングによって形成することができ、食品との接触が広範囲に及ぶ政府によって認可される厚いフルオロポリマーコーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フルオロポリマー粒子を含む水/油乳濁液を提供することによってこの必要を満たす。この水/油乳濁液組成物は、本当の乳濁液である。すなわち、乳濁液は、別の液体に分散している不混和液体の細滴を含む。本発明の乳濁液では、油は、水中に細滴として分散している。文献では、「乳濁液」という用語は、液体媒体中に分散している固体粒子を記述するように誤って使用される。本発明の乳濁液は、液体媒体に分散して、乳濁液を形成するフルオロポリマー粒子を含むが、水相中油滴の分散液は、組成物の粘度に著しい影響を及ぼし、組成物に、例えば、ブルックフィールド粘度計、スピンドル#3(SP3)を使用して、20rpmで操作して測定して、少なくとも約2500cpsの好ましい粘度を有するマヨネーズの粘度特性を付与する。この高粘度によって、フルオロポリマー粒子が、貯蔵および取扱い中乳濁液中に分散され続ける。この粘度は、米国特許公報(特許文献1)で粘度を測定するために使用するスピンドル#2(SP2)の使用には高すぎる。本発明の乳濁液の粘度が、水で希釈されることによって、1130cps(SP3、20rpm)に低下した場合には、スピンドル#2を使用して測定することができ、60rpmで620cpsの粘度の示度を与える。言い換えれば、本発明の好ましい乳濁液は、この特許に開示された組成物の粘度の少なくとも約4倍の粘度を有する。
【0006】
本発明の乳濁液(組成物)は、乳濁液の高粘度のため、従来型のスプレー装置を使用してスプレーすることができない。スプレーする前に、1500cps以下などより低い粘度に希釈されなければならず、この希釈は、スプレー塗布の直前に、追加の水中で単に撹拌するだけで行われる。希釈した場合でさえ、スプレーできる乳濁液は、本明細書の下記で塗布粘度と呼ばれる、少なくとも約500cps、より好ましくは少なくとも約800cps、最高約1500cps(SP3、20rpm)など比較的高い粘度を有し、したがってワンパスで亀裂のない厚いフルオロポリマーコーティングを提供することができる。コーティング厚さ要件が高くなるとき、特に垂直面を被覆すべき場合、希釈されたする乳濁液の粘度がより高いことが好ましい。
【0007】
本発明の乳濁液は、組成物から形成されたコーティングの焼付け中に分解かつ揮発する傾向のあるポリマー増粘剤を含まないことが好ましく、それによって、食品との接触の問題がない。本発明の乳濁液に使用するフルオロポリマーは、食品との接触用途での使用が広範囲にわたって認可されている。
【0008】
本発明は、フルオロポリマー粒子含有水性媒体で基材をスプレー塗装し、続いて乾燥および焼付けして、前記基材に剥離コーティングを形成する方法であって、前記スプレーをワンパスで実施して、前記剥離コーティングのために亀裂のない少なくとも30μmの厚さを得る工程を含み、前記水性媒体が水/油乳濁液であることを特徴とする方法と定義することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の乳濁液に使用することができるフルオロポリマーの例には、高温で目立つようなフローがなく、それによってこのようなポリマーを溶融加工できないほど高い溶融粘度を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末が含まれる。PTFEは、ホモポリマー、または別のモノマーの少量、例えば0.5mol%未満をテトラフルオロエチレン(TFE)と共重合させて、溶融加工性を樹脂に付与することなく特性を改善させた改質ホモポリマーとすることができる。追加のフルオロポリマーには、ポリクロロトリフルオロエチレン、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)など3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィンとのコポリマーなどテトラフルオロエチレン(TFE)もしくはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のコポリマー、および/またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ただし、線状または分枝状アルキル基は1〜5個の炭素原子を含む)など溶融流動可能であるものが含まれる。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3、または4個の炭素原子を含むものであり、コポリマーは、製造業者によってMFAと呼ばれることもあるTFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーなどいくつかのPAVEモノマーを使用して作製することができる。通常は、上記に記載する改質ホモポリマーを形成するために使用されるパーフルオロオレフィンまたはPAVEモノマーである。より多い量のコモノマーをコポリマーに組み込んで、例えばASTM D−1238に従って、樹脂の標準である温度で測定して、約1〜100g/10分のメルトフローインデックスを有するコポリマーを提供することによって、溶融加工できるコポリマーを作製する。上記のフルオロポリマーはパーハロゲン化され、CTFE含有ポリマー以外は、パーフルオロポリマーとなる。追加の溶融加工できるフルオロポリマーは、エチレンとTFEまたはCTFEとのコポリマー、およびコポリマーを含めてポリフッ化ビニリデンのポリマーである。これらのコポリマーはすべて、少なくとも35wt%のフッ素を含有する。好ましいフルオロポリマー粒子は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、またはポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0010】
本発明で使用されるようなこれらのフルオロポリマーは、1μm未満から約100μmまでの平均粒度を有する粒子の形である。フルオロポリマーの多くは、水分散重合によって作製され、重合されたフルオロポリマー粒子は、通常は直径が0.05〜0.5μmの範囲である。本明細書に開示された粒度は、平均粒度である。フルオロポリマーのこれらの水性分散液を使用して、本発明の乳濁液の水およびフルオロポリマー成分を提供することができる。フルオロポリマー成分は、直径が20〜100μm、好ましくは20〜50μmなどの大粒度で存在することもできる。このような大粒度は、分散液からの凝固によって、または米国特許公報(特許文献2)(フェリックス(Felix)ら)に記載のようなスプレー乾燥と、所望のサイズの粒子を得るためのオプションの粉砕工程によって作製することができる。本発明の乳濁液は、サブミクロンサイズのフルオロポリマーしか含むことができず、この場合、フルオロポリマーは、一般に乳濁液の10〜90wt%、好ましくは20〜60wt%を構成する。本明細書における乳濁液のwt%の基準は、湿潤組成物の全重量を指す。あるいは、本発明の乳濁液は、大きいフルオロポリマー粒子しか含むことができず、この場合、フルオロポリマーは、一般に乳濁液の10〜70wt%を構成する。好ましくは、乳濁液は、2つの粒度群、例えば20〜40wt%のサブミクロンサイズの粒子(1μm未満、または0.05〜0.5μm)と、30〜45wt%の大サイズの粒子(20〜100μm、または20〜50μm)とのフルオロポリマー粒子を含む。
【0011】
乳濁液の油成分は、室温(15〜25℃)で水と不混和な脂肪族または芳香族の炭化水素である。炭化水素油の例には、トリメチルベンゼン、キシレン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明の乳濁液は、好ましくはフルオロポリマー粒子をすでに含む水相に油を高せん断の条件下にブレンドして、水相に油を細滴の形で分配させることによって作製する。好ましくは、せん断ブレンドする前に、油用の乳化剤も組成物に添加して、水相における油滴の分散を助け、乳濁液の安定性を維持する。乳化剤の例には、ドデカノール、オクタノール、デカノール、およびテトラデカノールを含めて、少なくとも8個の炭素原子を含むなどの長鎖水溶性炭化水素アルコールが含まれる。アルコールの有機部分は、油と相互作用し、アルコールの−OH基は、親水性で、アルコールが水相と相互作用することが可能になって、高せん断ブレンディング操作中乳化するのに役立つ。本発明の乳濁液中の油量は、乳濁液の粘度を少なくとも約2000cpsに増大させるのに有効である。この増粘を行う油の最少量は、使用する特定の油に依存する。一般には、乳濁液の重量に対して少なくとも約0.8wt%によって、この増粘が行われる。所望の程度の増粘は、本明細書の下記で説明するように使用する塗布方法に依存する。一般には、油量は、乳濁液の重量に対して約5wt%を超える必要がない。通常は、約0.8〜約1.5wt%以下の油が、約2000〜約3000cps(SP3、20rpm)の乳濁液粘度を実現するのに必要である。この粘度は、スプレー可能性を得るための希釈前の好ましい粘度範囲である。乳化剤の量は、高せん断ブレンディング中に乳化を生じさせるのに十分な程度である。一般には、乳化剤と油の量が、重量比で約0.2〜約0.5:1である。好ましくは、乳化剤の量は、乳濁液の重量に対して約0.4〜約2.5wt%である。
【0013】
高せん断ブレンディングとは、速度およびミキサー構成が、渦(ボルテックス、ワールプール)を生成するようなブレンディング方法を作り出すことに寄与することを意味している。本発明の乳濁液を形成する好ましい方法では、油および乳化剤を除いて、フルオロポリマー粒子、水、他のすべての溶媒、顔料、および添加剤を含む分散液を、ミキサー中、約50rpmの速度でブレンドする。次いで、混合装置の速度を約50rpmからより高速の約80〜約100rpmに調整して、渦を形成する。炭化水素油および乳化剤の最初の部分を渦に添加する。次いで、ミキサー速度を約100から約120rpmに上げ、油および乳化剤の残部を添加する。より好ましい実施形態では、フルオロポリマー分散液を添加する前に、油および乳化剤を一緒に混合する。乳濁液を生み出すために高せん断ブレンディングを行うための混合(せん断)ブレードのrpmは、混合ブレードの設計に依存する。
【0014】
水中フルオロポリマー粒子の分散液は、フルオロポリマー粒子がサブミクロンであろうとまたはより大きいものであろうと、一般に炭化水素油を添加する前に形成する。サブミクロンのフルオロポリマー粒子の場合は、粒子は、粒子が形成されるとき水重合媒体中に分散している。重合反応に干渉しない界面活性剤は、この重合したままの水媒体中フルオロポリマー粒子の分散液を提供するために存在する。このような界面活性剤の例は、パーフルオロオクタン酸アンモニウムなど長鎖パーフルオロ脂肪族化合物の水溶性塩である。分散させたフルオロポリマー粒子が高せん断ブレンディング中に凝固しないように、追加の界面活性剤を、ブレンディング操作の前に水性分散液に添加する。この界面活性剤によって、分散液が安定化される。分散処理で一般的に使用される非イオン性界面活性剤は、ダウケミカル(Dow Chemical)によって供給されるトリトン(Triton)(登録商標)X−100である。この界面活性剤は、オクチルフェノールエトキシレートの形である。本発明に使用するための別の適切な界面活性剤は、ダウケミカルコーポレーション(Dow Chemical Corporation)から入手可能なタージトール(TERGITOL)(登録商標)TMN−6、またはタージトール(TERGITOL)(登録商標)TMN−10、またはその混合物である。これらは、エチレンオキシド含有量だけが異なるアルコールエトキシレートである。この界面活性剤を作製するために使用するアルコールは、分枝状第二級アルコールである2,6,8−トリメチル−4−ナナノールである。
【0015】
このような界面活性剤の必要量は、高せん断にかけられたとき凝固する分散フルオロポリマー粒子の感度に依存する。したがって、傾向は、フルオロポリマーのアイデンティティー、その粒度、および存在するサブミクロンサイズのフルオロポリマー粒子の量に応じて異なる。本発明の乳濁液中に存在している大きいフルオロポリマー粒子の場合は、粒子は、上記に記載するサブミクロン粒子の分散液を安定化させるために使用するものなどの界面活性剤の存在下で撹拌することによって、水性媒体中に分散されている。
【0016】
油を添加する前の水性媒体中のフルオロポリマー粒子は、約300cpsまでの粘度を発現する。水相中油乳濁液を作製すると、粘度が少なくとも約2000cps、好ましくは少なくとも約2500cpsに増大する。いくつかの用途では、10,000cpsという高い粘度を有する乳濁液を実現することができ、希釈することなく塗布する浸漬コーティング組成物に有用である。高粘度では、サブミクロンであろうとまたはより大きいものであろうと、フルオロポリマー粒子の分散液は、安定である。フルオロポリマー粒子は、たとえ、水性分散液の粘度にあまり寄与しないとしても、重要なことには乳濁液の粘度に寄与する。したがって、組成物中に存在するフルオロポリマー粒子の濃度は、乳濁液相を作製する炭化水素油の量と共に、乳濁液に望ましい高粘度が得られるように選択される。調製した場合、本発明の乳濁液は、少なくとも約2000cpsの粘度を有する。高粘度によって、生成物は安定になり、沈降が防止される。本発明の乳濁液は、最高1年、またはそれ以上安定であり、約3〜6か月間安定に維持される従来技術のフルオロポリマー分散液より安定性が優れている。
【0017】
(コーティング塗布)
本発明の乳濁液を基材に塗布して、従来型の手段によって亀裂のない厚いコーティングを形成することができる。スプレーおよびローラー塗布は、被覆する基材に応じた最も都合のよい塗布方法である。浸漬およびコイルコーティングを含めて他の周知のコーティング方法は、適切である。ノンスティックコーティング乳濁液組成物を、単独のコートとして、または複数のコートとして塗布することができる。単独コートの乾燥膜厚DFTは、通常は少なくとも35μm、好ましくは少なくとも40μm、より好ましくは少なくとも約50μmである。一般には、亀裂のないワンパスコーティングの最大厚さは、約60μmである。本発明の乳濁液では、いくつかのコーティング層を塗布して、厚いコーティングが望ましいの化学処理工業でなどの塗布のために100μm超、好ましくは300μm超、さらには1mmという高い厚さに到達することが可能である。この乳濁液コーティング組成物の多層を使用して、増粘剤を含まない厚いコーティングを構築することによって、完全には気化しなかった増粘剤の部分分解の可能性がなくなる。
【0018】
本発明の乳濁液コーティング組成物を、金属およびセラミックなど焼付け温度に耐えることができるいくつもの基材に塗布することができ、その例には、アルミニウム、陽極処理アルミニウム、冷間圧延鋼、ステンレス鋼、エナメル、ガラス、およびパイロセラムが含まれる。
【0019】
乳濁液をスプレー塗装によって塗布することが望ましい場合、乳濁液を、スプレーする直前に所望の亀裂のないコーティング厚さに望ましい粘度に水で希釈する。通常は、このような塗布粘度は、約1500cps以下、通常は約800〜約1500cpsの範囲であり、通常は約500cps以上である。ワンパスコーティングの乾燥かつ焼付け後の亀裂のない厚さは、少なくとも35μm、より好ましくは少なくとも40μmであることが好ましい。
【0020】
(試験方法)
(粘度)
本明細書に開示する粘度は、別段の指定のない限り、ブルックフィールドシンクロレクトリック(Brookfield SyncroLectric)粘度計、モデルDV II+をスピンドル#3で使用して、25℃で2分間連続回転した後、20rpmで操作することによって決定する。装置によって、スピンドルを供試の材料に浸しながら、限定された一定速度で回転する時に生じるトルクで表して、粘度を測定する。
【0021】
(テーバー磨耗試験)
磨耗試験は、一般に膜表面を、知られている荷重で2個の磨耗輪の磨耗にかけるASTM D4060に従って実施する。減量およびDFT減少は、膜の耐磨耗性の尺度であり、指定されたサイクル数の後決定される。使用する装置は、テーバーインスツルメントカンパニー(Taber Instrument Company)製のテーバー磨耗(Taber Abrasion)モデル503である。別に記載される場合以外は、テーバー試験はすべて、CS17磨耗輪/荷重1kg/1000回転で行われる。250回転ごとに磨耗表面をリフレッシュするために輪を清浄にする。
【0022】
(スコッチ・ブライト(Scotch−Brite)(登録商標)耐磨耗性)
スコッチ・ブライト(Scotch−Brite)(登録商標)耐磨耗性試験は、料理道具BS 7069 1988に関するイギリス標準規格に基づいている。コーティング破過が、この試験の最終点である。破過パターンは、基準図に比べたものである。パターンは、基材のタイプに応じて異なる可能性があるので、コーティングを厳密に比較するには、異なる試料に対して同じ基材を使用することが推奨される。サイクルは、破過するまで行い、DFTの違いを克服するために1ミクロン当たりで報告されている。
【0023】
(臨界亀裂(臨界亀裂)試験手順(CCT))
実施例で使用するCCT試験手順は、膜が亀裂する前の、基材上に組成物を被覆することによって得ることができる最大膜厚を試験するための手順である。コーティング組成物を、清浄にされているがグリットブラスト仕上げしていない平滑なアルミニウムパネルに塗布する。下塗剤(10〜12マイクロメートルのDFT)を、パネルの表面に塗布する。下塗剤層を、105℃で5分間乾燥し、続いて380℃で20分間焼付けする。試験用のオーバーコートは、10マイクロメートルの厚さ(DFT)を有するコーティングを、水平に配置されたパネルの一端に、パネルの他端が60〜70マイクロメートルのコーティング厚さを有するまでコーティングの厚さをパネルに沿って5〜10マイクロメートルずつ増大させて塗布するように、楔状パターンで塗布する。増加分の増大は、ウェットオンウェットで再スプレーすることによって得られ、回数の増加によって、パネルの一端から他端まで所望の厚さが得られる。増加分をすべて塗布した後、被覆基材を105℃で5分間乾燥し、380℃で20分間焼付けし、場合によっては330〜340℃で焼付けを3時間延長する。完全に焼付けしたコーティング膜を、倍率10倍の顕微鏡で評価して、亀裂の領域を決定する。亀裂の領域は、DFTを決定するためのフィッシャーデュアルスコープ(Fisher Dualscope)MP4C測定装置で測定する。
【実施例】
【0024】
(フルオロポリマー)
FEP分散液1:3.2〜4.04%のHFPを含み、メルトASTM D−1238の方法によって372℃で測定されたフローインデックスが8.9〜13.3g/10分、固形分重量%が54.50〜56.50%、RDPSが150ナノメートル〜210ナノメートルである水中TFE/HFPフルオロポリマー樹脂分散液。生分散粒度(RDPS)を光子相関分光によって測定する。
【0025】
FEP分散液2:9.8〜12.4%のHFPを含み、ASTM D−1238の方法によって372℃で測定されたメルトフローインデックスが5.3〜13.3g/10分、固形分重量%が53.00〜56.00%、RDPSが150ナノメートル〜210ナノメートルである水中TFE/HFPフルオロポリマー樹脂分散液。生分散粒度(RDPS)を光子相関分光によって測定する。
【0026】
FEP粉末1:10.3〜13.2%のHFPを含み、粒度が約10ミクロン、ASTM D−1238の方法によって372℃で測定されたメルトフローインデックスが2.95〜13.3g/10分であるTFE/HFPフルオロポリマー粉末。粉末粒子の平均粒度は、乾燥粒子のレーザー光散乱によって(ハネウェルコーポレーション(Honeywell Corporation)の一部門であるリーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)から入手可能なマイクロトラック(Microtrac)101レーザー粒子計数管を使用して)測定した。
【0027】
FEP粉末2:10.3〜13.2%のHFPを含み、粒度が28.9〜45.7ミクロンの範囲、ASTM D−1238の方法によって372℃で測定されたメルトフローインデックスが2.95〜13.3g/10分、非充填かさ密度が55−87g/100ccであるTFE/HFPフルオロポリマー粉末。
【0028】
(ポリマー結合剤)
PAIは、NMP/ナプサ/アルコール比=40.5/21.5/2.0のナプサおよびブチルアルコール含有NMP系溶媒中、36wt%PAI樹脂溶液(PD−10629等級、フェルプス・ドッジ・マグネット・ワイヤー(Phelps−Dodge Magnet Wire Co.))である。
【0029】
PES樹脂は、BASFから購入されたウルトラサン(ULTRASON)E 2020Pポリエーテルスルホン顆粒である。
【0030】
以下の実施例では、アルミニウムシート基材を清浄にし、5〜6バールの圧力を使用して、60と80メッシュのグリット酸化アルミニウムの50/50混合物で、約3〜5ミクロンRaの粗さにグリットブラスト仕上げする。
【0031】
実施例で形成された下塗剤層は、以下の予備焼付け組成物を有する。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例で形成されたオーバーコート層は、以下の予備焼付け組成物を有する。
【0034】
【表2】

【0035】
(比較例A)
緑色の被覆基材を調製するために、緑色の下塗剤層1(10〜15マイクロメートルのDFT)を(上記に記載のような)グリットブラストアルミニウムパネルに塗布し、250℃で10分間乾燥する。次いで、緑のオーバーコート層2を塗布し(10〜12マイクロメートル)、105℃で5分間乾燥し、続いて380℃で20分間焼付けする。第2の緑色のオーバーコート層2(10〜12マイクロメートルのDFT)の層を塗布し、105℃で5分間乾燥し、続いて380℃で20分間焼付けする。次いで、透明なオーバーコート層1(10〜12マイクロメートル)をトップコートとして塗布し、105℃で5分間乾燥し、続いて380℃で20分間焼付けする。次いで、被覆基材の330〜340℃での焼付けを3時間延長する。コーティングの全乾燥膜厚(DFT)は、40〜50マイクロメートルである。コーティングは、1.4mmのノズルを有するデビルビス(DeVilbiss)スプレーガン、モデルJGAを使用して、3バールの圧力で塗布する。
【0036】
塗布する前に、オーバーコートの粘度は、上記に記載するようにスピンドル#2を使用して、20rpmで操作して決定する。オーバーコート1の粘度は、150cpsである。オーバーコート2の粘度は、200cpsである。
【0037】
被覆パネルを、上記に試験方法のセクションで記載するテーバー磨耗試験およびSBAR試験にかける。
【0038】
テーバー磨耗は、57.3mgであると決定される。SBAR結果は、1ミクロン当たり90回転である。
【0039】
オーバーコート1およびオーバーコート2をそれぞれ、試験方法のセクションに記載のような臨界亀裂試験にかける。この系で使用する両方のオーバーコート用のCCTは、10〜15マイクロメートルである。
【0040】
(比較例B)
青色の被覆基材を調製するために、使用する下塗剤が青色の下塗剤2であり、オーバーコート2の代わりに青色のオーバーコート3の2層を使用する点以外は、比較例Aに記載するのと同じ手順に従う。比較例Aと同じようにして、透明なオーバーコート層1をトップコートとして塗布する。
【0041】
塗布する前に、オーバーコートの粘度は、上記に記載するようにスピンドル2を使用して、20rpmで操作して決定する。オーバーコート3の粘度は、200cpsである。
【0042】
被覆パネルを、テーバー磨耗試験およびSBAR試験にかける。臨界亀裂厚さについて、オーバーコート3を分析する。
【0043】
テーバー磨耗、SBAR、およびCCTの結果は、比較例Aについて報告したものとほぼ同じである。
【0044】
(実施例1)
本発明の主題の乳濁液であるオーバーコート4を調製するために、ドデカノールおよび芳香族炭化水素を除いて表3に挙げるオーバーコート用の材料すべてを、混合槽(1390×1100mm)中で組み合わせる。槽内には、プロペラと槽直径の比が0.44であるようにMerversから供給されたA320プロペラが設けられている。渦を生じるように、混合装置の速度を80〜100rpmに調整する。別に、ドデカノールおよび芳香族炭化水素を共に混合し、次いで全量のおよそ半分を渦に徐々に添加する。ミキサー速度を100〜120rpmに上げ、ドデカノールと芳香族炭化水素の混合物の残量を添加する。粘度は、ドデカノールと芳香族炭化水素の混合物の添加開始後約5〜10分で400〜500cpsから2500cpsに上昇する。この高粘度で、生成物は最高1年間安定であり、沈降は防止される。塗布する場合、10〜12%の水で下げることによって、乳濁液を1100〜1200cps(SP3、20RPM)に下げる。
【0045】
緑色の被覆基材を調製するために、緑色の下塗剤層1(10〜15マイクロメートルのDFT)を(上記に記載のような)グリットブラストアルミニウムパネルに塗布し、250℃で10分間乾燥する。次いで、オーバーコート層4を塗布し(30〜40マイクロメートル)、105℃で5分間乾燥し、続いて380℃で20分間焼付けする。次いで、被覆基材の330〜340℃での焼付けを3時間延長する。コーティングの全乾燥膜厚(DFT)は、オーバーコートを1層しか塗布しない場合40〜50マイクロメートルである。下塗剤コーティングは、1.4mmのノズルを有するデビルビス(DeVilbiss)スプレーガン、モデルJGAを使用して、3バールの圧力で塗布する。オーバーコート4は、1.8mmのノズルを有するクレムリン(Kremlin)低圧スプレーガン、モデルM21Gを使用して、1〜2バールの圧力で塗布する。
【0046】
被覆パネルを、テーバー磨耗試験およびSBAR試験にかける。上記に試験方法のセクションで記載するように、臨界亀裂厚さについて、オーバーコート4を分析する。
【0047】
テーバー磨耗は、13.5mgであると決定される。SBAR結果は、1ミクロン当たり115回転である。実際の亀裂は観察されていないので、この系のオーバーコート4用のCCTは、50マイクロメートル超である。
【0048】
緑色の下塗剤は、オーバーコート4を通して見えるコーティング全体に緑色を提供する。あるいは、顔料をオーバーコート4に添加することができ、同じ結果を得る。
【0049】
この系の耐磨耗性および臨界亀裂厚さは、比較例AおよびBに記載する従来技術の組成物よりはるかに改善されている。接着、光沢、および焼付け性能はすべて、ノンスティック被覆耐熱皿での使用に優れている。
【0050】
(実施例2)
青色の被覆基材を調製するために、使用する下塗剤が青色の下塗剤2である点以外は、実施例1に記載するのと同じ手順に従う。実施例1と同じようにして、厚いオーバーコート層4(40〜50マイクロメートルのDFT)をトップコートとして塗布する。
【0051】
テーバー磨耗、SBAR、およびCCTの結果は、実施例1について報告したものとほぼ同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー粒子を含むことを特徴とする水/油乳濁液。
【請求項2】
前記フルオロポリマー粒子が、1マイクロメートル未満の平均粒度を有する粒子、および20〜100マイクロメートルの平均粒度を有する粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の乳濁液。
【請求項3】
前記フルオロポリマー粒子が、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、またはポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の乳濁液。
【請求項4】
前記油が、芳香族炭化水素油であることを特徴とする請求項1に記載の乳濁液。
【請求項5】
乳化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の乳濁液。
【請求項6】
前記乳化剤が、少なくとも8個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素アルコールであることを特徴とする請求項5に記載の乳濁液。
【請求項7】
少なくとも2000センチポアズの粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の乳濁液。
【請求項8】
フルオロポリマー粒子含有水性媒体で基材をスプレー塗装し、続いて乾燥および焼付けして、前記基材上に剥離コーティングを形成する方法であって、前記スプレーをワンパスで実施して、前記剥離コーティングのために亀裂のない少なくとも30μmの厚さを得る工程を含み、前記水性媒体が水/油乳濁液であることを特徴とする方法。
【請求項9】
高せん断ブレンディング方法でフルオロポリマー粒子を含む水/油乳濁液を形成するための方法であって、前記フルオロポリマー粒子を含む分散液を、渦の形成を引き起こすのに十分な速度で混合する工程と、前記分散液に油および乳化剤を添加する工程と、前記混合の速度を上げて、少なくとも2000センチポアズの粘度を有する前記水/油乳濁液を形成する工程とを含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−522286(P2007−522286A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551439(P2006−551439)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/002465
【国際公開番号】WO2005/071022
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】