説明

フルオロポリマー分散体および膜の調製方法

反応済スルホニルハライド基と未反応スルホニルハライド基との均質混合物を含有するフルオロポリマー有機−液体分散体を調製するための方法が記載されている。分散体は、架橋膜の調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応済スルホニルハライド基と未反応スルホニルハライド基との均質混合物を含有するフルオロポリマー有機−液体分散体を調製するプロセスに関する。分散体は、架橋膜の調製に有用である。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池は、一般に、電解質により分離された陽極および陰極を含み、ここで、プロトン交換膜(本明細書において以降「PEM」)がポリマー電解質として用いられる。金属触媒と電解質との混合物が、陽極および陰極を形成するために一般に用いられる。電気化学電池の周知の用途は、燃料電池用である(燃料および酸化剤を電気エネルギーに転換するセル)。燃料電池は、典型的には、膜電極接合体(MEA)のスタックまたは集合として形成され、これらは、各々、PEM、陽極および陰極、ならびに他の任意選択の構成要素を含む。このようなセルにおいては、水素またはメタノールなどの反応体または還元液が陽極に供給されると共に、酸素または空気などの酸化剤が陰極に供給される。還元液は、陽極の表面で電気化学的に反応して、水素イオンおよび電子を生成する。電子は、外部の負荷回路に導かれると共に陰極に戻り、一方で水素イオンが電解質を通して陰極に輸送され、ここで、この水素イオンが酸化剤および電子と反応して水が生成されると共に熱エネルギーが放出される。
【0003】
PEMの長期の安定性が、燃料電池にとって非常に重要である。例えば、定置用の燃料電池用途についての耐用年数目標は40,000作動時間であるが、一方で、自動車用途では、少なくとも10,000時間の耐用年数を必要とする。しかしながら、当該技術分野にわたって使用されている典型的な膜は、MEAバイアビリティおよび性能を損ないながら、経時的に劣化することとなる。例えば、燃料電池サイクルの最中の水和または脱水に伴う寸法変化の結果として誘起される応力は、クリープおよび最終的には膜破壊を生じさせる可能性がある。この問題に対する1つの解決法は、膜の本体内に架橋を形成することである。しかしながら、フルオロポリマー電解質などのいくつかのポリマー電解質を均質に架橋することは、架橋性溶液または分散体を、フルオロポリマー電解質と共に用いられることが可能である限られた溶剤または有機液体媒体中に調製することが困難であることにより、制限されている。
【0004】
溶剤または分散体キャスティングは、一般的、かつ、有利な燃料電池膜の製造方法である。商業的使用において広く知られている周知のフルオロポリマー電解質分散体は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE)のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から入手可能であるナフィオン(Nafion)(登録商標)パーフルオロアイオノマーである。膜の形成に用いられる溶液および分散体はまた、燃料電池MEAの電極の形成に用いられる触媒インク配合物の形成に頻繁に用いられる。膜のキャスティングに好適であるフルオロポリマー電解質分散体が、顕著な濃度でフッ化スルホニル(SO2F)を伴わないスルホン酸(SO3H)およびスルホネート(SO3-)形態での水性有機および有機−液体フルオロポリマー電解質分散体組成物を教示する、米国特許第4,433,082号明細書および米国特許第4,731,263号明細書に開示されている。
【0005】
米国特許第3,282,875号明細書は、前駆体フルオロポリマー電解質のSO2F基が、二官能性または多官能性架橋剤との反応によるフルオロポリマーの架橋または「加硫」に用いられ得ることを開示するが、これを均質に行うための方法については開示していない。米国特許第6,733,914号明細書は、アンモニア水溶液との反応により、ナフィオン(Nafion)(登録商標)様ポリマー膜のSO2F基の相当の画分を、SO3-およびスルホンアミド(SO2NH2)基に、不均質に転換する方法を開示する。膜は、その後、おそらくは、SO2NH2基のいくつかが、残存しているSO2F基と反応してスルホンイミド(−SO2NHSO2−)架橋を形成する高温での加熱アニーリングステップにより架橋される。アンモニア水溶液との前反応の不均質な性質が、フィルム全体にわたる均質な架橋密度を提供しなかった。
【0006】
高度にフッ素化されたまたはナフィオン(Nafion)(登録商標)様フルオロポリマー電解質材料のSO2F前駆体形態は、一般的な有機液体中に易溶解性または易分散性ではないが、一定の条件下ではフッ素化溶剤中に可溶性であり得る。しかしながら、フッ素化溶剤に関連する経費および環境問題が、これらの分散体キャスティング媒体用の大規模溶剤としての使用を不可能とする可能性がある。しかも、SO2F基と反応し得る多くの考えうる架橋剤はフッ素化溶剤中に難溶解性であるが、一般的な有機液体中に可溶性であり得る。それ故、相当量であるが100%未満の残留SO2F基濃度を含有するフルオロポリマー電解質分散体を、一般的な非フッ素化液体または溶剤で調製するための単純、かつ容易なプロセスの発展が望まれている。分散体は、燃料電池および同様のテクノロジーにおける用途のために、容易に膜にキャストされ、均質に架橋されることが可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリマー溶剤とSO2X側基を含有するポリマーとを含む溶液を提供するステップであって、ポリマーが、フッ素化主鎖および−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO2X(式中、Xはハロゲンであり、RfおよびR’fは、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0〜2であり、b=0〜1であり、およびc=0〜6である)により記載される側基を含むステップ;溶液と、求核性化合物Yおよび極性液体とを組み合わせて反応混合物を形成するステップ;および蒸留により実質的にすべてのポリマー溶剤を反応混合物から除去して分散体を形成するステップであって、約5%〜約95%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約95%〜約5%のSO2X側基が未反応で残留するステップを含むポリマー分散体を製造する方法に関する。
【0008】
本発明はまた、直上に記載のステップにより分散体を提供するステップ;および、この分散体から膜を調製するステップを含む膜を調製する方法に関する。
【0009】
一実施形態において、本方法は、第2のステップの反応混合物または第3のステップの分散体と架橋性化合物とを混合して側基間に架橋を形成するステップをさらに含む。この架橋は、1つ以上のスルホンイミド部分を含むことが可能である。
【0010】
本発明はまた、上記の方法に形成された分散体、およびこの分散体から調製された膜に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において数値の範囲に言及されている場合、他に明記されていない限りにおいて、この範囲は、その端点、ならびにこの範囲内のすべての整数および分数を含むことが意図されている。本発明の範囲が、範囲の定義の際に列挙された特定の値に限定されることは意図されていない。しかも、本明細書に規定のすべての範囲は、具体的に記載された特定の範囲のみだけではなく、列挙された最低値および最大値を含む、その中の値のいかなる組み合わせをも包含することが意図されている。
【0012】
燃料電池は、水素ガスなどの燃料および空気などの酸化剤の化学的エネルギーを電気エネルギーに転換する電気化学的デバイスである。燃料電池は、典型的には、膜電極接合体(MEA)のスタックまたは集合として形成され、その各々は、電解質、陽極(負に荷電された電極)および陰極(正に荷電された電極)、ならびに他の任意選択の構成要素を含む。高分子プロトン交換膜(PEM)が、度々、電解質として用いられる。燃料電池はまた、典型的には、電極の各々と電気的に接触していると共に電極への反応体の拡散を許容する、ガス拡散層、ガス拡散基材またはガス拡散バッキングとして公知である多孔性導電性シート材料を含む。電解触媒がPEM上にコートされている場合、MEAは、触媒被覆膜(CCM)を含むといわれる。電解触媒がガス拡散層上にコートされている他の事例において、MEAは、ガス拡散電極(GDE)を含むといわれる。燃料電池の機能性構成要素は、通常は、以下のとおり層状に配置される:導電性プレート/ガス拡散バッキング/陽極/膜/陰極/ガス拡散バッキング/導電性プレート。
【0013】
本明細書に記載の分散体および方法により形成される膜は、特にアイオノマー酸形態に転換される場合、PEMを利用する燃料電池と併せて用いられることが可能である。例としては、水素燃料電池、改質水素燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池または他の有機/空気系(例えばエタノール、プロパノール、ジメチル−またはジエチルエーテル、ギ酸、酢酸などのカルボン酸系等の有機燃料を利用するもの)が挙げられる。この膜はまた、電気化学電池用のMEAにおいて有利に利用される。本明細書に記載の膜および方法についての他の用途としては、バッテリーおよび他のタイプの電気化学電池における使用、ならびに、水を電気分解して水素および酸素を形成するための電池における使用が挙げられる。
【0014】
PEMは、典型的には、アイオノマーとしても公知であるイオン交換ポリマーから構成される。当該技術分野における実務に準拠すると、「アイオノマー」という用語は、末端イオン基を備える側基を有する高分子材料を指すために用いられる。末端イオン基は、燃料電池の組み立てまたは製造の中間体段階において遭遇し得る、酸またはその塩であり得る。電気化学電池の適切な作動は、アイオノマーが酸形態であることを必要とし得る。高度にフッ素化されたアイオノマーが、度々、PEMにおいて用いられる。本発明は、一定のこのような高度にフッ素化されたポリマーの製造に有用な方法に関する。
【0015】
本発明の一態様は、相当量のおよび均質に分散されたスルホニルハライド(SO2X)基を非フッ素化液体中に含有するポリマー分散体を製造する方法に関する。本方法は、
a)ポリマー溶剤とSO2X側基を含有するポリマーとを含む溶液であって、ポリマーが、−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO2Xにより記載される側基(式中、Xはハロゲンであり、RfおよびR’fは、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0〜2であり、b=0〜1であり、およびc=0〜6である)を含有するフッ素化主鎖を含む溶液を提供するステップ、
b)ステップa)の溶液と、求核性化合物Yおよび極性液体とを、いずれかの順番で組み合わせて反応混合物を形成するステップ;ならびに
c)蒸留により実質的にすべてのポリマー溶剤をステップb)の反応混合物から除去して分散体を形成するステップであって、約5%〜約95%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約95%〜約5%のSO2X側基が未反応で残留するステップ
を含む。
【0016】
ポリマーは、ホモポリマーまたはブロックまたはランダムコポリマーなどのいずれかの構造コポリマーであり得る。「フッ素化主鎖」とは、ポリマーの主鎖上のハロゲンおよび水素原子の総数の少なくとも80%がフッ素原子であることを意味する。ポリマーはまた過フッ素化されていてもよく、これは、主鎖上のハロゲンおよび水素原子の総数の100%がフッ素原子であることを意味する。好適なポリマーの一タイプは、第1のフッ素化ビニルモノマーと1つ以上のSO2X基を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーである。可能である第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。可能性のある第2のモノマーとしては、SO2X基を有する多様なフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。Xは、いずれかのハロゲンまたは2つ以上のハロゲンの組み合わせであることが可能であり、典型的にはFである。
【0017】
当該技術分野において公知である好適なホモポリマーおよびコポリマーとしては、国際公開第2000/0024709号パンフレットおよび米国特許第6,025,092号明細書に記載のものが挙げられる。市販されている好適なフルオロポリマーは、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE)製のナフィオン(Nafion)(登録商標)フルオロポリマーである。ナフィオン(Nafion)(登録商標)フルオロポリマーの一タイプは、米国特許第3,282,875号明細書に開示のとおり、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンフッ化スルホニル)(PSEPVE)とのコポリマーである。他の好適なフルオロポリマーは、米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されているTFEとパーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンフッ化スルホニル)(PSEVE)とのコポリマー、ならびに米国特許出願公開第2004/0121210号明細書に記載のTFEとCF2=CFO(CF24SO2Fとのコポリマーである。ポリマーは、パーフルオロカーボン主鎖と、式−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fの側基とを含み得る。このタイプのポリマーが、米国特許第3,282,875号明細書に開示されている。これらのコポリマーのすべては、米国特許第3,282,875号明細書に開示のとおり、加水分解により、典型的には適切な水性塩基への露出により、後にアイオノマー形態に転換されることが可能である。
【0018】
典型的には、ポリマーは先ず、典型的には1〜30%(重量%またはw/w)、好ましくは10〜20%(w/w)の濃度でポリマーのための溶剤中に溶解される。「ポリマー溶剤」とは、SO2X形態のポリマーを溶解および溶媒和させ、ポリマーと反応し、または分解することがない溶剤を意味する。典型的には、ポリマー溶剤はフッ素化されている。「フッ素化されている」とは、溶剤における水素およびハロゲン原子の総数の少なくとも10%がフッ素であることを意味する。好適なポリマー溶剤の例としては、これらに限定されないが、フルオロカーボン(炭素およびフッ素原子のみを含有する化合物)、フルオロカーボンエーテル(エーテル結合を追加的に含有するフルオロカーボン)、ヒドロフルオロカーボン(炭素、水素およびフッ素原子のみを含有する化合物)、ヒドロフルオロカーボンエーテル(エーテル結合を追加的に含有するヒドロフルオロカーボン)、クロロフルオロカーボン(炭素、塩素およびフッ素原子のみを含有する化合物)、クロロフルオロカーボンエーテル(エーテル結合を追加的に含有するクロロフルオロカーボン)、2H−パーフルオロ(5−メチル−3,6−ジオキサノナン)、およびフルオリナート(Fluorinert)(登録商標)電子液体(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)の3M)が挙げられる。好適な溶剤としてはまた、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.DuPont de Nemours)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE.))製のフルオロケミカル溶剤が挙げられる。1種以上の異なるポリマー溶剤の混合物もまた用いられ得る。
【0019】
SO2X形態ポリマーは攪拌で溶解され、効率的な溶解のために加熱を必要としてもよい。溶解温度は、ポリマー組成または当量(EW)により計測されるSO2X濃度に依存し得る。本出願の目的のために、EWは、1当量のNaOHを中和するために必要とされる、1モル当たりのグラム(g mol-1)の単位でのスルホン酸形態でのポリマーの重量として定義される。高EWポリマー(すなわち低SO2X濃度)は、より高い溶解温度を必要とし得る。大気圧での最大溶解温度が溶剤の沸点により制限される場合には、好適な圧力容器を用いて溶解温度を高めてもよい。ポリマーEWは、特定の用途のために所望のとおり異なっていてもよい。本明細書において、1500g mol-1以下のEWを有するポリマーが典型的には利用され、より典型的には約900g mol-1未満である。
【0020】
次いで、反応性混合物が、求核性化合物Yおよび極性液体と、ポリマー溶液とを混合することにより形成される。「求核性」および「求核剤」という用語は、反応性電子対を有する化学的部分に関するとして当該技術分野において認識されている。より具体的には、本明細書において、求核性化合物Yは、ポリマーSO2X基のハロゲンXを置換タイプ反応を介して置き換えて、硫黄と共有結合を形成することが可能である。好適な求核性化合物としては、これらに限定されないが、水、アルカリ金属水酸化物、アルコール、アミン、炭化水素およびフルオロカーボンスルホンアミドが挙げられ得る。添加されるこの求核性化合物Yの量は、一般に、化学量論的未満であり、未反応で残留することとなるSO2X基の%を決定することとなる。
【0021】
「極性液体」とは、プロセス条件で液体であるいずれかの化合物を意味し、単一の液体または2種以上の極性液体の混合物を指し、ここで、この液体は、約1.5デバイ単位以上、典型的には2〜5の磁気双極子モーメントを有する。より具体的には、好適な極性液体は、求核剤Y(YとポリマーSO2X基との反応形態)を溶媒和することが可能であるべきであるが、必ずしもバルクポリマーを溶媒和させる必要はない。好適な極性液体としては、これらに限定されないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセタミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、メタノール、エタノール、水、またはこれらの組み合わせが挙げられる。好適な極性液体は、好ましくは、ポリマーのための溶剤より高い沸点を有する。
【0022】
求核性化合物Yおよび極性液体は、ポリマー溶液にいずれかの順番で添加され得る。典型的には、求核剤Yおよび極性液体のいくつかまたはすべては、混合物として同時にポリマー溶液に添加される。追加の極性液体または異なる極性液体が、個別のステップで添加されてもよい。他の化合物は、Yおよび極性液体と一緒に、同時にまたはいずれかの順番で順次に添加されてもよい。例えば、Yが水である場合、特にこれらに限定されないが、LiH、NaH、およびNR456などの非求核性塩基を添加することが可能であり、式中、R4、R5およびR6は、任意に置換されていてもよいアルキルまたはアリール基である。極性液体および求核剤Yはまた同一の化合物であってもよい。一例において、水が極性液体および求核剤Yの両方として機能する場合、上述のとおりの非求核性塩基が存在することが必要であり得る。
【0023】
求核性化合物および極性液体は、好ましくは、ポリマー溶液に、速い乱流混合で、および溶解温度に近い温度で添加される。溶解温度が低い場合、ポリマー溶液の温度を、求核性化合物Yおよび極性液体を添加する前に、典型的には50℃超に昇温させることが可能である。ポリマー溶液の温度が溶剤、求核剤Y、または極性液体の沸点により制限されている場合には、ポリマー溶液の温度を高めるために好適な圧力容器を用いることが可能である。求核性化合物YがポリマーSO2X基のハロゲンXを置き換える反応は、典型的には、求核剤および極性液体を添加した後5分間〜2時間以内に完了する。
【0024】
次いで、反応混合物が蒸留されて、実質的にすべてのポリマー溶剤が混合物から除去される。蒸留は、大気圧で行われることが好ましいが、減圧下で行われてもよい。蒸留は、蒸留釜の温度が極性液体の沸点に近づくか、または極性液体が蒸留され始めたら完了したとみなされる。微量のポリマー溶剤が蒸留後に残留していてもよい。蒸留は、1回以上、任意により、粘度の調整のために必要に応じて追加の極性液体と共に繰り返してもよい。残留する反応混合物は、約5%〜約95%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に、約95%〜約5%のSO2X側基が未反応で残留している分散体の形態であろう。好ましくは、約25%〜約75%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応し、約75%〜約25%のSO2X側基が未反応で残留する。分散体はまた、ろ過されて不溶物が除去され得る。「分散体」とは、溶剤中のポリマーの微粒子の物理的に安定な、均質の混合物を意味し、すなわち、個別の相に分離しない混合物を意味する。
【0025】
本明細書に定義されるとおり、分散体は、極性液体が求核剤YのポリマーSO2X側基との反応形態についての良溶剤である(しかしながら、必ずしもバルクポリマーについての溶剤である必要はない)場合にもたらされる。SO2X基の正確な反応形態は、用いられる求核剤に依存することとなる。例えば、水が、トリエチルアミン(TEA)などの非求核性塩基の存在下に用いられる場合、反応形態は、トリエチルアンモニウムスルホン酸塩(SO3-TEAH+)であろう。典型的には、側基はSO3Mに転換され、ここで、Mは一価カチオンである。
【0026】
本発明の他の実施形態において、式HNR12の化合物は、残留SO2X側基の約1%〜約100%がSO2NR12側基(式中、R1およびR2は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基あるいはアリール基である)に転換されるよう、既述のステップ(b)および(c)の反応混合物に添加され得る。転換されるSO2X基の量は、反応混合物に添加される式HNR12の化合物の量により制御することが可能である。好適な置換基としては、これらに限定されないが、エーテル酸素、ハロゲン、およびアミン官能基が挙げられる。典型的には、R1およびR2は水素、アルキル、またはアリール炭化水素基である。
【0027】
本発明の他の態様は、上述のプロセスのいずれかによって形成されるポリマー分散体、およびこの分散体から調製される膜である。膜の調製が、本明細書に後述されている。
【0028】
他の実施形態において、1種以上の極性液体と、約5%〜約95%、好ましくは約25%〜約75%の式−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO2Qにより記載される側基、および約95%〜約5%、好ましくは約75%〜約25%の式−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO3Mにより記載される側基を含むフッ素化主鎖を有するポリマーとを含む新規なポリマー分散体が開示されており、式中、Qは、ハロゲンまたはNR12、またはこれらの混合物であり、R1およびR2は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基であり、RfおよびR’fは、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0〜2であり、b=0〜1であり、c=0〜6であり、ならびに、Mは、水素または1つ以上の一価カチオンである。極性液体は混合物であることが可能であり、少なくとも1種の極性液体を上述のとおり含んでいることが可能であり、ならびに、水を含んでいることも可能である。
【0029】
ポリマー分散体は、特にこれらに限定されないが、溶液または分散体フィルムキャスティング技術などの従来のいずれかの方法を用いて、膜に形成されることが可能である。膜厚は、特定の電気化学的用途について所望されるとおり変更することが可能である。典型的には、膜厚は、約350μm未満、より典型的には、約25μm〜約175μmの範囲内である。所望の場合には、膜は、異なるEWを有する2種のポリマーなどの2種のポリマーの積層体であることが可能である。このようなフィルムは、2枚の膜を積層することにより形成されることが可能である。あるいは、積層体構成要素の一方または両方を、溶液または分散体からキャストすることが可能である。膜が積層体である場合、追加のポリマーにおけるモノマーユニットの化学的同一性は、独立して、第1のポリマーの類似のモノマーユニットの同一性と同一であること、または異なっていることが可能である。当該技術分野における当業者は、分散体から調製される膜は、パッケージングにおいて、非電気化学的膜用途において、多層フィルムまたはシート構造における接着剤層または他の機能性層として、および電気化学分野外におけるポリマーフィルムおよびシートについての他の古典的な用途に実用性を有するであろうことを理解するであろう。本発明の目的のために、一般的に用いられる当該技術分野の用語である「膜」という用語は、同一の物品を称するが、より一般的に用いられる当該技術分野の用語である「フィルム」または「シート」という用語と同義語である。
【0030】
膜は、任意により、機械特性を向上させる目的、コストを低減する目的および/または他の理由のために多孔性支持体または補強材を含み得る。多孔性支持体は、特にこれらに限定されないが、不織布または、平織、斜子織、からみ織等などの種々の織を用いる織布などの広範な材料から形成され得る。多孔性支持体は、ガラス、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)などの炭化水素ポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの過ハロゲン化ポリマーから形成され得る。多孔性無機またはセラミック材料もまた用いられ得る。熱的分解および化学的分解に対する抵抗力のために、支持体は、好ましくはフルオロポリマー、最も好ましくは過フッ素化ポリマーから形成されている。例えば、多孔性支持体の過フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレンとCF2=CFCn2n+1(n=1〜5)または(CF2=CFO−(CF2CF(CF3)O)mn2n+1(m=0〜15、n=1〜15)とのコポリマーの微孔性フィルムであることが可能である。微孔性PTFEフィルムおよびシーティングは、支持体層としての使用に好適であると公知である。例えば、米国特許第3,664,915号明細書は、少なくとも40%の空隙を有する一軸延伸フィルムを開示する。米国特許第3,953,566号明細書、米国特許第3,962,153号明細書および米国特許第4,187,390号明細書は、少なくとも70%の空隙を有する多孔性PTFEフィルムを開示する。
【0031】
多孔性支持体または補強材は、コーティングが外面上にあると共に支持体の内部孔を通って分布されるよう、上述のポリマー分散体を支持体上にコーティングすることにより組み込まれ得る。あるいは、または浸漬に追加して、薄膜を多孔性支持体の一面または両面に積層することが可能である。極性液体分散体が、微孔性PTFEフィルムなどの比較的非極性の支持体上にコートされる場合には、界面活性剤が、分散体と支持体との間での濡れおよび密な接触を促進するために用いられ得る。分散体と接触させる前に支持体を界面活性剤で前処理してもよく、または分散体自体に添加してもよい。好ましい界面活性剤は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington DE)製のゾニル(Zonyl)(登録商標)などのアニオン性フッ素系界面活性剤である。より好ましいフッ素系界面活性剤は、ゾニル(Zonyl)(登録商標)1033Dのスルホン酸塩である。
【0032】
上述の分散体由来の膜は、ポリマー側基間で共有結合を形成するプロセスにより均質に架橋されることが可能である。1つの方法は、膜が形成される前の、架橋性化合物の分散体への添加を含む。これらは、本明細書において、SO2X側基と架橋を形成する可能性を有する化合物として定義される。架橋性化合物はまた、インサイチュで形成されることが可能である。後者は、ポリマーSO2X基のいくつかまたはすべてを、追加のまたは残留しているSO2X基と反応する可能性を有する官能基に転換することにより行われ得る。望ましい架橋性化合物は、一方の基がポリマー上に存在する1タイプの側基と反応することとなるように、2つ以上の潜在的な反応性基を有する少なくとも二官能性である。架橋性化合物上の他の潜在的な反応性基は、同一のまたは異なるタイプのポリマー側基と反応することとなる。生産された、架橋性化合物を含有する膜は、次いで、架橋のために好ましい条件に供される。
【0033】
好適な架橋性化合物は、2つ以上の側基への結合を促進することが可能であるいずれかの分子を含み、これらに限定されないが、アンモニア、ジアミン、カルボキシルアミド、およびスルホンアミドが挙げられる。ポリマー側基間の架橋は、典型的には、1つ以上のスルホンイミド(−SO2NHSO2−)架橋を含む。一実施形態においては、残留SO2X側基の1%〜100%がスルホンアミド(SO2NH2)側基に転換されるよう、ポリマー分散体にアンモニアが架橋性化合物として添加される。得られる分散体がSO2X基を含有する追加の分散体とブレンドされ、膜がキャスティングにより生産される。高温アニーリングステップが、架橋の最中には重要である可能性がある膜中での無水条件をさらに促進する。この膜が、次いで、SO2X側基とSO2NH2側基との間の架橋反応を促進する条件に供される。典型的には、これは、架橋促進剤として公知である、架橋反応を促進することが可能である化合物への露出により行われる。架橋促進剤の例としては、非求核性塩基が挙げられる。好ましい架橋促進剤は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのトリアルキルアミン塩基である。トリアルキルアミン塩基の沸点での温度またはこれに近い温度が架橋には望ましい。
【0034】
他の架橋実施形態において、2つ以上のスルホンイミド部分を含有するポリマー側基間の架橋は、別の架橋性化合物を分散体に添加することにより達成されることが可能である。化合物は、追加のスルホンイミド基および/または少なくとも2つのスルホンアミド基を含有し得る。1つの好適な化合物は式HNR7SO28SO2NHR9のものであり、式中、R7およびR9は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基であり、ならびにR8は、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換スルホンイミドポリマー、イオネンポリマーまたは置換または非置換ヘテロ原子官能基である。この化合物の添加は、−−SO2NR7SO28SO2NR9SO2−部分を含有する架橋を促進するであろう。このタイプの望ましい架橋は、−SO2NHSO2(CF24SO2NHSO2−である。
【0035】
SO2X基を未だ含有する架橋されたポリマー膜は、当該技術分野において公知である方法を用いる加水分解により、度々、イオン性またはアイオノマー形態として称されるスルホネート(SO3-)形態に転換されることが可能である。例えば、膜は、これを、25重量% NaOH中に約90℃の温度で約16時間浸漬し、続いて、約30〜約60分間/すすぎを用いて、90℃の脱イオン水中でフィルムを2回すすぐことにより、加水分解されて、スルホン酸ナトリウム形態に転換され得る。他の可能な方法は、アルカリ金属水酸化物の6〜20%水溶液および5〜40%のDMSOなどの極性有機溶剤を、50〜100℃で、少なくとも5分間の接触時間で利用し、その後、10分間すすぐ。加水分解の後、膜は、所望の場合には、膜を所望のカチオンの塩溶液を含有する浴中に接触させることにより他のイオン性形態に転換されることが可能であり、あるいは、硝酸などの酸と接触させると共にすすぐことにより酸形態に転換されることが可能である。燃料電池用途については、膜は、通常、スルホン酸形態である。
【0036】
膜電極接合体(MEA)およびこれからなる燃料電池は当該技術分野において周知であり、上述の膜のいずれかを含むことが可能である。1つの好適な実施形態が本明細書に記載されている。アイオノマーポリマー膜を、炭素粒子上に担持されていないまたは担持されている白金などの触媒を含む触媒層、ナフィオン(Nafion)(登録商標)フルオロポリマーなどのバインダ、およびガス拡散バッキングと組み合わせて用いてMEAが形成される。触媒層は周知の導電性で触媒的に活性な粒子または材料から形成され得、および、当該技術分野において周知である方法によって形成され得る。触媒層は、触媒粒子のためのバインダとして役立つポリマーのフィルムとして形成され得る。バインダポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマーまたはこのようなポリマーの混合物であることが可能である。バインダポリマーは、典型的にはアイオノマー性であり、膜中のものと同一のアイオノマーであることが可能である。燃料電池は、多孔性および導電性陽極および陰極ガス拡散バッキング、電気絶縁層をも提供するMEAの縁部をシールするためのガスケット、ガス分布用の流れ場を備えるグラファイト集電体ブロック、燃料電池を一緒に保持するためのタイロッドを有するアルミニウムエンドブロック、水素などの燃料のための陽極入口および出口、空気などの酸化剤のための陰極ガス入口および出口をさらに提供することにより、単一のMEAまたは、直列にスタックされた複数のMEAから構成される。
【実施例】
【0037】
実施例1〜8
ポリ(PSEPVE−コ−TFE)およびポリ(PSEVE−コ−TFE)部分加水分解および分散体形成
実施例1
647g mol-1(80.8mmol SO2F)の当量を有する、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンフッ化スルホニル)(PSEPVE)とのコポリマーである、52.3gのポリ(PSEPVE−コ−TFE)を細片に切断し、乾燥した1L容量の3首丸底(RB)フラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、窒素パッドを備えた還流凝縮器、および熱電対を備えていた。およそ185mLの2H−パーフルオロ(5−メチル−3,6−ジオキサノナン)(フレオン(Freon)(登録商標)E2)を添加し、ポリマーを攪拌し、穏やかな還流にまで加熱しながら、0.5時間かけて徐々に溶解させた。加熱を弱め、溶液を、50〜70℃に冷却した。その後の、シリンジ(約320RPMでの攪拌)による、60mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のゆっくりとした添加は、透光性の混合物をもたらした。4.90g(48.4mmol)トリエチルアミン(TEA)、1.74g水(96.7mmol)、および約20mLのDMFの溶液を、次いで、シリンジにより5分間かけて添加した。10分間の後、混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈した。追加の86mLのDMFをシリンジにより添加した。混合物を、継続的に攪拌(およそ320RPM)しながら約80〜90℃に加熱し、この温度で約1時間保持した。次いで、還流凝縮器を、短行程蒸留装置で置き換えた。エマルジョンを、蒸留釜の上部にわたってゆっくりと窒素スパージしながら大気圧で蒸留した。留出物を、およそ62℃から開始され、蒸留の最中におよそ79℃まで昇温したスチルヘッド温度で回収した。E2の大部分を蒸発させて、透明でほとんど無色の溶液を残留させた。残留水は、約230PPMと、カールフィッシャー(Karl Fisher)(KF)滴定により計測された。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥、続いて、真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、28.1%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2Fピークを約43.8PPM(1F、積分面積=32.9)で示し、主鎖CFピークを−139.9PPM(1F、積分面積=100.0)で示した。積分面積計算は、67.1%のSO2F基が加水分解されたことを示す。
【0038】
実施例2
648g mol-1(77.4mmol SO2F)の当量を有する、50.1gのポリ(PSEPVE−コ−TFE)コポリマーを細片に切断し、乾燥した500mL3首丸底(RB)フラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。およそ175mLのフレオン(Freon)(登録商標)E2を添加し、ポリマーを、攪拌および適度に加熱(50〜60℃)しながら、1〜2時間以内で徐々に溶解させた。320RPMで攪拌しながら、125mLのDMFをシリンジにより徐々に添加した。混合物は約80mL以下のDMFで均質であった。さらなるDMFの添加は、白色のエマルジョンをもたらした。次いで、4.73g(46.7mmol)のTEAをピペットにより添加し、続いて約1.85g(103mmol)の水を添加した。エマルジョンを穏やかな還流にまで加熱し、この温度で約1.5時間保持した。加熱を弱め、エマルジョンを還流温度未満に冷却した。機械的攪拌を磁気攪拌で置き換え、還流凝縮器を短行程蒸留装置で置き換えた。混合物を、減圧下(230mm Hg)で、約55℃から開始され、蒸留の最中に約79℃にまで昇温した温度で蒸留した。E2の大部分を蒸発させて、透明でほとんど無色の溶液を残留させた。追加の50mLのE2を添加し、既述の条件下で蒸発させ、続いて、追加の25mLのDMFを追加して粘度を低減させた。残留水は、KFにより約300PPMと計測された。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥し、その後真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、27.7%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2Fピークを約43.8PPM(1F、積分面積=35.7)で示し、主鎖CFピークを−139.9PPM(1F、積分面積=100.0)で示した。積分面積計算は、64.3%のSO2F基が加水分解されたことを示す。
【0039】
実施例3
648g mol-1(77.3mmol SO2F)の当量を有する、50.1gのポリ(PSEPVE−コ−TFE)コポリマーを細片に切断し、乾燥した500mL容量の3首丸底(RB)フラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。およそ175mLのフレオン(Freon)(登録商標)E2を添加し、ポリマーを、攪拌および適度に加熱(50〜70℃)しながら、約1時間以内で徐々に溶解させた。約50〜70℃の溶液に、約300RPMで攪拌しながら、約75mLのDMFをシリンジにより徐々に添加した。混合物は無色および透光性であった。次いで、4.67g(58.4mmol)の50%水性NaOHを、5〜10分間かけて徐々に添加した。数分間以内に、混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈し始めた。100mLのDMFを添加し、混合物を穏やかな還流にまで加熱し、この温度で約0.5時間保持した。次いで、加熱を停止し、生成物を還流温度未満に冷却した。機械的攪拌を磁気攪拌で置き換え、還流凝縮器を短行程蒸留装置で置き換えた。混合物を、減圧下(約150mm Hg)で、約55℃から開始され、蒸留の最中に約68℃まで昇温した温度で蒸留した。E2の大部分を蒸発させて、透光性のわずかに黄色の分散体を残留させた。水は0.26%とKFにより計測された。追加の100mLのE2を添加し、既述の条件下で蒸発させた。水を再度KFにより計測し、これは0.093%であった。アセトン−d6で希釈されたおよそ5%ポリマー溶液の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2Fピークを約43.3PPM(1F、積分面積=44.6)で示し、主鎖CFピークを約−140PPM(1F、積分面積=100)で示した。これは、55.4%のSO2F基が加水分解されたことに相当する。分散体を遠心分離して、よりさらに透明なわずかに黄色の分散体と、NaFであると考えられるおよそ4〜5mLの白色の沈殿物とを残留させた。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまで真空オーブン乾燥(約80℃、29.5インチHg)することにより計測し、および26.4%であると見出された。
【0040】
実施例4
718g mol-1の当量を有する、50.09g(69.8mmol SO2F)のポリ(PSEPVE−コ−TFE)コポリマーを細片に切断し、500mL容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。約175mLのE2を添加し、ポリマーを、穏やかな還流で攪拌しながら、約3時間で徐々に溶解させた。加熱を弱め、温度を約70〜90℃に低下させた。350RPMで攪拌しながら、1.41g(14.0mmol)のTEA、0.50gの水、および45gのDMFの溶液を、125mL均圧滴下漏斗を用いて徐々に添加した。溶液は、添加で透光性に変わった。追加の104gのDMFを漏斗を介して添加すると、混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈した。エマルジョンを、約70〜90℃で、追加で1時間攪拌した。加熱を停止し、生成物を還流温度未満に冷却した。コンデンサを窒素スパージにより置き換え、滴下漏斗を短行程蒸留装置で置き換えた。白色のエマルジョンを窒素スパージしながら大気圧で蒸留すると、E2が除去されるに伴って、徐々に、透明およびほぼ無色に変化した。残留水は、KFにより約260PPMと計測された。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥し、および、その後、真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、28.3%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2Fピークを約44PPM(1F、積分面積=11.1)で示し、2つの側基−OCF2−および−CF3共鳴に相当する、−70〜−90PPMにまたがる複雑なピーク(7F、積分面積=100)を示した。積分面積計算は、22.3%のSO2F基が加水分解されたことを示す。
【0041】
実施例5
約850g mol-1の当量を有する、50.0g(55.7mmol SO2F)のポリ(PSEPVE−コ−TFE)コポリマーペレットを、乾燥したパル(Parr)(登録商標)5100ガラス反応器に入れた。反応器を排気し、220mLのフレオン(Freon)(登録商標)E2をカニューレにより添加した。反応器をN2で充填して戻し、大気圧に通気させた。反応器を125℃に加熱し、ペレットを、700〜1000RPMで攪拌しながら数時間にわたって溶解させた。22.6mLの、DMF中の0.100g/mLTEA溶液(22.3mmolTEA、44.6mmol水)を、ウォーターズ(Waters)515(登録商標)HPLCポンプを用いて徐々に添加した(1mL/分)。最大の反応器の圧力は20PSIGであった。追加の120mLのDMFを反応器にポンプで注入(2mL分-1)したところ、反応混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈した。エマルジョンを<40℃に冷却し、次いで、機械的攪拌、短行程蒸留装置、およびN2スパージを備える1L容量の3首RBフラスコに移した。エマルジョンを大気圧で蒸留した。E2の大部分が除去されるに伴って、エマルジョンは、透光性、かつ、ほぼ透明に変化し、分散体が形成された。追加の90mLのDMFを、蒸留の最中に添加して粘度を低減させた。周囲温度に冷却した後、ほぼ透明の分散体を、ポリプロピレンフィルタ織布を通してろ過した。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥し、その後、真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、18.6%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2F共鳴を約43PPM(1F、積分面積=1.59)で示し、約−82PPMに中心を有し、側基CF3および2つの−OCF2−共鳴に相当する幅の広いピーク(7F、積分面積=20.00)を示した。積分面積計算は、SO2F基の44.4%が加水分解されたことを示す。当量(SO2F形態)は、−82PPM共鳴積分面積対合計積分面積(SO2Fを除く)の比から、855g mol-1と算出された。
【0042】
実施例6
495g mol-1のEWを有する、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンフッ化スルホニル)(PSEVE)とのコポリマーである、25.05g(50.6mmol SO2F)のポリ(PSEVE−コ−TFE)を細片に切断し、500mL容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。約88mLのフレオン(Freon)(登録商標)E2を添加し、ポリマーを、穏やかな還流で攪拌しながら、約1時間で徐々に溶解させた。加熱を弱め、溶液を70〜90℃に冷却した。急速に攪拌しながら(約320RPM)、0.770gTEA(7.61mmol)、0.274g水(15.2mmol)、および約28gのDMFから構成される加水分解溶液を、125mL均圧滴下漏斗を用いて約15分間にわたって徐々に添加した。混合物は均質であると共に透光性であった。追加の110gのDMFを徐々に添加したところ、白色のエマルジョンがもたらされた。加熱を強め、エマルジョンを穏やかに約0.5時間還流した。次いで、加熱を停止し、エマルジョンを還流温度未満に冷却した。コンデンサを窒素スパージで置き換え、滴下漏斗を短行程蒸留装置で置き換えた。エマルジョンを穏やかに窒素スパージしながら大気圧で蒸留したところ、E2が除去されるに伴って、徐々に、透明、かつ、ほぼ無色に変化した。周囲温度に冷却した後、分散体を、ポリプロピレンフィルタ織布を通してろ過した。残留水は、KFにより約520PPMと計測された。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥し、および、その後、真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、17.2%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2F共鳴を約44PPM(1F、積分面積=3.50)で示し、幅の広い側基−OCF2−共鳴を約−82PPM(2F、積分面積=10.00)で示した。積分面積計算は、30.0%のSO2F基が加水分解されたことを示す。
【0043】
実施例7
50.06g(101mmol SO2F)のポリ(PSEVE−コ−TFE)コポリマー(EW=495g mol-1)を細片に切断し、1L容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。約175mLのE2を添加し、ポリマーを、穏やかな還流で攪拌しながら、約1時間で徐々に溶解させた。加熱を弱め、および溶液を70〜90℃に冷却した。急速に攪拌しながら(約320RPM)、2.04gTEA(20.2mmol)、0.727g水(40.4mmol)、および約36gのDMFから構成される加水分解溶液を、125mLの均圧滴下漏斗を用いて約15分にわたって徐々に添加した。混合物は均質であると共に透光性であった。追加の85gのDMFを徐々に添加したところ、混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈した。エマルジョンを穏やかな還流にまで加熱し、この温度で約0.5時間保持した。次いで、加熱を停止し、生成物を還流温度未満に冷却した。コンデンサを窒素スパージで置き換え、滴下漏斗を短行程蒸留装置で置き換えた。白色のエマルジョンを、窒素スパージしながら大気圧で蒸留したところ、E2が除去されるに伴って徐々に透明に変化し、わずかに黄色になった。残留水を、KFにより約170PPMで計測した。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまで、ホットプレートおよび真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、27.2%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2F共鳴を約44PPM(1F、積分面積=6.17)で示し、幅の広い側基−OCF2−共鳴を約−82PPM(2F、積分面積=17)で示した。積分面積計算は、27%のSO2F基が加水分解されたことを示す。
【0044】
実施例8
25.0g(42.2mmol SO2F)のポリ(PSEVE−コ−TFE)コポリマー(EW=593g mol-1)を細片に切断し、500mL容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコは、機械的攪拌、加熱マントル、および窒素パッドを備える還流凝縮器を備えていた。約175mLのフレオン(Freon)(登録商標)E2を添加し、ポリマーを、約1時間で、穏やかな還流で攪拌しながら徐々に溶解させた。加熱を弱め、および溶液を70〜90℃に冷却した。急速に攪拌しながら(約320RPM)、1.30g(12.8mmol、0.303当量)のTEA、0.46gのDI水、および約19gのDMFの溶液を、125mLの均圧滴下漏斗を用いて徐々に添加した。溶液は、添加の際に透光性に変化した。追加の95gのDMFを漏斗を通して添加したところ、混合物は、白色のエマルジョンの外観を呈した。混合物を、この温度で追加の0.5時間攪拌した。次いで、加熱を停止し、生成物を還流温度未満に冷却した。コンデンサを窒素スパージで置き換え、滴下漏斗を短行程蒸留装置で置き換えた。白色のエマルジョンを、窒素スパージしながら大気圧で蒸留した。分散体は、E2の大部分が除去されるに伴ってほぼ透明になった。室温に冷却した後、分散体を、ポリプロピレンフィルタ織布を通してろ過した。部分的な加水分解を基本的に同一の様式で繰り返し、2つの生成物を組み合わせた。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまでホットプレート乾燥し、および、その後、真空オーブン乾燥(約60℃、29.5インチHg)することにより計測し、18.0%であると見出された。分散体のサンプルを、アセトン−d6でおよそ5%(w/w)に希釈した。5%分散体の基準無しでの19F NMRは、残留しているSO2F共鳴を約44PPM(1F、積分面積=3.37)で示し、約−82PPMに中心を有する、幅の広い側基−OCF2−(2F、積分面積=10.0)共鳴を示した。積分面積計算は、32.6%のSO2F基が加水分解されたことを示していた。
【0045】
実施例9〜10
分散体SO2F基のスルホンアミド(SO2NH2)基への転換による架橋性剤形成
実施例9
実施例2からの91.8g(12.8mmol SO2F)の分散体を、機械的攪拌、窒素パッドを有するドライアイスコンデンサ、およびガス添加ポートを備える、乾燥した250mL容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコの内容物を氷水浴を用いて約5℃に冷却した。1.04g(61.1mmol)のアンモニアを、質量流量積分器を用いて、120〜130mg/分の割合で添加した。アンモニアを添加するに伴って混合物は濁ってきた。フラスコの内容物を、氷水浴温度で0.5時間攪拌した。浴を外し、フラスコの内容物を一晩攪拌しながら周囲温度に温めた。ドライアイスコンデンサおよびアンモニア添加ポートを取り外し、窒素パッドアダプター、短行程蒸留装置および加熱マントルで置き換えた。約6mLのTEAを添加すると共にRBフラスコを、攪拌および穏やかに窒素スパージしながら加熱して、アンモニウムカチオンのトリエチルアンモニウムカチオンへの転換を行った。濁った分散体は透明になり、約70℃でわずかに黄色になり始めた。受けフラスコ中にさらなるTEAがこれ以上回収されないと認められてから加熱を停止した。重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまで真空オーブン乾燥(約60〜90℃、29.5インチHg)することにより計測し、これは31.1%であると見出された。残留しているSO2F基の消失、およびSO2NH2基の存在を、19F NMR、および分散体製の薄膜キャストのFTIR分光により確認した。約3200cm-1を中心とするNH吸収、および約1470cm-1での残留SO2F吸収の消失を確認した。
【0046】
実施例10
実施例1からの75gの分散体(9.71mmol SO2F)を、機械的攪拌、窒素パッドを有するドライアイスコンデンサ、およびアンモニア添加ポートを備える乾燥した250mL容量の3首RBフラスコに入れた。フラスコの内容物を氷水浴を用いて約5℃に冷却した。0.65g(38.2mmol)のアンモニアを、質量流量積分器を用いて、120〜130mg/分の割合で添加した。アンモニアを添加するに伴って混合物は濁ってきた。フラスコの内容物を、氷水浴温度で0.5時間攪拌した。浴を外し、フラスコの内容物を2〜3時間かけて攪拌しながら周囲温度に温めた。ドライアイスコンデンサおよびアンモニア添加ポートを取り外し、窒素パッドアダプター、短行程蒸留装置および加熱マントルで置き換えた。6mLのTEAを添加すると共にRBフラスコを、攪拌および穏やかに窒素スパージしながら加熱して、アンモニウムカチオンのトリエチルアンモニウムカチオンへの転換を行い、ならびに、アンモニアおよび過剰なTEAを除去した。濁った分散体は透明になり、約70℃でわずかに黄色になり始めた。受けフラスコ中にさらなるTEAがこれ以上回収されないと認められてから加熱を停止した。一旦、周囲温度まで冷却したら、重量パーセント固形分を、一定の重量が達成されるまで真空オーブン乾燥(約60〜90℃、29.5インチHg)することにより計測し、これは、28.3%であると見出された。残留しているSO2F基の消失、およびSO2NH2基の存在を、19F NMR、および分散体製の薄膜キャストのFTIR分光により確認した。約3200cm-1を中心とするNH吸収、および約1470cm-1での残留SO2F吸収の消失を確認した。
【0047】
実施例11〜14
膜製造、架橋および加水分解酸交換
実施例11
実施例2における3重量部の分散体と実施例9の2重量部の高分子架橋剤とからなる混合物を調製した。この混合物からの膜を、0.025インチギャップを有するドローダウンナイフを用いて、2mil厚のメイラー(Mylar)(登録商標)(ガラスに留められた)上にキャストした。メイラー(Mylar)(登録商標)/ガラス上の膜を、レベルホットプレート上で穏やかに加熱(約50℃)してDMFを蒸発させた。その後、膜をガラスから剥がし、150℃で5分間、強制空気炉中にさらなる乾燥/アニーリングステップに供した。アニーリング後の膜厚は74±2μmであった。2つの、46mm直径の円形の小片をフィルムから切り出した。メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングを動かさずに、小片の1つを、15mLの無水有機塩基、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)中に、穏やかな還流下で3時間浸漬する架橋ステップに供した。両方の小片を、その後、小片の各々を、独立して、水/エタノール(4:1)中の40mLの23%(w/w)水酸化カリウム溶液を含有する125mL容量のエルレンマイヤーフラスコに入れる加水分解ステップに供した。加熱で、架橋ステップに供されなかった小片は、メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングフィルムを残して加水分解混合物中に容易に分散した。架橋に供された小片は、メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングフィルムから分離され、加水分解溶液の還流では、いくらか膨潤したがそれ以外は無処置のままであった。架橋フィルムを、濃硝酸中での2回の酸交換にさら供し、最後に、一般的なpHペーパーを用いて計測されるすすぎ水のpHが≧6となるまで、脱イオン水ですすいだ。水含浸フィルムの直径は50±1mmであり、一方、厚さは88±2μmであった。EWを滴定および真空オーブン乾燥により計測したところ、725g mol-1であった。
【0048】
実施例12
実施例4の55.35gの部分的に加水分解されたポリ(PSEPVE−コ−TFE)分散体を、セプタムを備える、清浄で乾燥した250mL容量のRBフラスコに追加した。磁気攪拌および氷浴冷却しながら、4.57gの、DMF中の1.99%エチレンジアミン(EDA)溶液(1.52mmol)を5ccのガラスシリンジを用いて徐々に添加した。EDAを添加した後に氷浴を外し、および分散体を、周囲条件に温めながら1時間攪拌した。分散体を約10μmポリプロピレンフィルタ織布を用いてろ過すると共に、膜を、0.020インチギャップを有するキャスティングナイフを用いて、2mil厚のメイラー(Mylar)(登録商標)(ガラスに留められた)上にキャストした。メイラー(Mylar)(登録商標)/ガラス上の未乾燥塗膜を、レベルホットプレート上で穏やかに加熱(約50℃)してDMFを蒸発させた。その後、メイラー(Mylar)(登録商標)上の乾燥膜をガラスから剥がし、150℃で5分間、強制空気炉中にさらなる乾燥/アニーリングステップに供した。乾燥膜の厚さは約50μmであった。2つの46mm直径の円形の小片を膜から切り出した。メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングを動かさずに、小片の1つを、15mLのTMEDA中に浸漬し、3時間穏やかに還流する架橋ステップに供した。両方の小片を、その後、小片の各々を、独立して、水/エタノール(4:1)中の40mLの23%(w/w)水酸化カリウム溶液を含有する125mL容量のエルレンマイヤーフラスコに入れる加水分解ステップに供した。加熱で、架橋ステップに供されなかった小片は部分的に溶解し、いくらかの架橋がアニーリングの最中に生じたことを示唆していた。架橋に供された小片は、メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングから分離され、加水分解溶液の還流では、いくらか膨潤したがそれ以外は無処置のままであった。架橋膜を、濃硝酸中での2回の酸交換にさらに供し、最後に、一般的なpHペーパーを用いて計測されるすすぎ水のpHが≧6となるまで、脱イオン水ですすいだ。
【0049】
実施例13
5.51g(1.64mmol SO2F)の、実施例4の部分的に加水分解されたポリ(PSEPVE−コ−TFE)分散体および0.265g(0.736mmol)NH2SO2(CF24SO2NH2を、乾燥した20ccガラスバイアルに追加した。NH2SO2(CF24SO2NH2は、磁気攪拌で分散体に容易に溶解した。膜を、分散体を2mil厚のメイラー(Mylar)(登録商標)(ガラスに留められた)上に流延させることによりキャストした。メイラー(Mylar)(登録商標)/ガラス上の膜を、レベルホットプレート上で穏やかに加熱(約50℃)してDMFを蒸発させた。その後、メイラー(Mylar)(登録商標)上の乾燥膜をガラスから剥がし、150℃で5分間、強制空気炉中にさらなる乾燥/アニーリングステップに供した。乾燥膜は完全に透明であり、厚さは約100μmであった。アニールした膜の過剰なメイラー(Mylar)(登録商標)を整形し、適所のバッキングと一緒に、これを、LiHと共に還流しているTMEDAに数時間露出する架橋反応に供した。次いで、膜を、水/エタノール(4:1)中の23%(w/w)水酸化カリウム溶液を用いて、周囲温度で一晩加水分解した。加水分解の後、メイラー(Mylar)(登録商標)バッキングは容易に除去された。膜を、還流している35%硝酸中で2時間かけて酸交換した。次いで、膜を脱イオン水ですすぎ、再度、2M HClで酸交換し、最後に、脱イオン水ですすいだ。小さい膜の小片を滴定したところ、当量は770g/molであった。
【0050】
実施例14
50.0g(9.70mmol SO2F)の、実施例8の部分的に加水分解されたポリ(PSEVE−コ−TFE)分散体および1.16g(3.22mmol)NH2SO2(CF24SO2NH2を、乾燥した250mL容量のRBフラスコに追加した。NH2SO2(CF24SO2NH2は、磁気攪拌で分散体に容易に溶解した。次いで、均質混合物を、約10μmポリプロピレンフィルタ織布を通してろ過した。8インチ×10インチのキャスティング表面を、ガラス基材に水で貼り付けた2−milメイラー(Mylar)(登録商標)フィルムと接合させた。ガラス基材をアルミニウムプレート上に置き、これを、小型のホットプレートを用いて穏やかに加熱(約50℃)した。メイラー(Mylar)(登録商標)、ガラス基材、アルミニウム台およびホットプレート接合体を調整可能な支持台上におき、水平にした。一方で、0.001インチ厚微孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の10インチ直径の円形の小片を刺繍用フープ中に支持し、エタノール中のゾニル(Zonyl)(登録商標)1033Dの0.5%(w/v)トリエチルアンモニウム塩溶液を噴霧した。エタノールを乾燥窒素流で揮発させた。
【0051】
調整可能なブレードを有する7インチ幅のキャスティングナイフを、0.008インチギャップで設定した。キャスティングナイフを台の上に、表後端からおよそ0.75インチで、前を向けて配置した。およそ6mLの分散体混合物を、キャスティングナイフのブレードおよびサイドサポートによって画定された空間の中に注意深く(気泡の混入を防ぎながら)置いた。次いで、ナイフを台の前方に向けて引いた。調製したePTFE基材を台の中心に置き、基材に分散体を含浸させた。刺繍用フープを外し、乾燥窒素スパージ入口および出口を備えたカバーを台接合体全体上に被せた。1時間後、膜は十分に乾燥し、第2の分散体層を、基本的に第1の層と同じ様式で塗布した。カバーを接合体全体上に再度置き、乾燥窒素スパージを再開した。約1時間に、膜は効果的に乾燥していた。メイラー(Mylar)(登録商標)に未だ付いている膜を、キャスティング台から取り外し、150℃で2分間、強制空気炉中にアニールした。次いで、膜をメイラー(Mylar)(登録商標)バッキングから剥がし、6.5インチ直径のステンレス鋼刺繍用フープ中に支持した。
【0052】
支持されている膜を、還流凝縮器および乾燥窒素パッドを備える浅い8インチ直径の反応がま中に水平に置いた。LiHと共に、還流しているTMEDAの蒸気に露出させることにより膜を架橋した。膜の表面は、還流しているTMEDAからおよそ1インチであった。架橋ステップを1時間後に停止した。次いで、支持されている膜を、15%水性KOH中に、70〜90℃で30分間加水分解し、次いで、過剰なKOHを脱イオン水を用いてすすいだ。支持されているフィルムを、2M HNO3で30分間酸交換し、次いで、過剰な酸をDI水ですすいだ。第2の酸交換を、35% HNO3と共に還流で30分間行った。最後に、膜をDI水ですすぎ、2M HNO3で酸交換し、DI水ですすぎ、次いで、刺繍用フープから外す前に一晩空気乾燥させた。乾燥膜の厚さは35μmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリマー溶剤とSO2X側基を含有するポリマーとを含む溶液を提供するステップであって、ポリマーが、フッ素化主鎖および−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO2Xにより記載される側基(式中、Xはハロゲンであり、RfおよびR’fは、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0〜2であり、b=0〜1であり、およびc=0〜6である)を含むステップ、
b)ステップa)の溶液と、求核性化合物Yおよび極性液体とを組み合わせて反応混合物を形成するステップ、ならびに
c)蒸留により実質的にすべてのポリマー溶剤をステップb)の反応混合物から除去して分散体を形成するステップであって、約5%〜約95%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約95%〜約5%のSO2X側基が未反応で残留するステップ
を含むポリマー分散体を製造する方法。
【請求項2】
ステップb)において、極性液体および求核性化合物Yが、ステップa)の溶液と組み合わされる前に一緒に混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)において、約25%〜約75%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約75%〜約25%のSO2X側基が未反応で残留する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約1%〜約100%の残留SO2X側基がSO2NR12側基に転換されるように、式HNR12の化合物を、ステップc)で形成された分散体またはステップb)で形成された反応混合物に添加するステップ(式中、R1およびR2は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基あるいはアリール基である)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
極性液体が、DMF、DMAC、NMP、DMSO、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、メタノール、エタノール、水またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
XがFである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー溶剤がフッ素化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー溶剤が、フルオロカーボン、フルオロカーボンエーテル、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンエーテル、クロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボンエーテル、2H−パーフルオロ(5−メチル−3,6−ジオキサノナン、またはこれらの組み合わせのいずれかから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー溶剤が、フルオリナート(Fluorinert)(登録商標)電子液体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
求核性化合物Yが水であり、この水は非求核性塩基と混和される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非求核性塩基が、LiH、NaHおよびNR456から選択され、式中、R4、R5およびR6は任意に置換されていてもよいアルキル基である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
求核性化合物Yが、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)において、SO2X側基がSO3Mと反応し、Mは一価カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)のポリマーが、式−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fまたは−OCF2CF2SO2F、またはこれらの組み合わせのいずれかの側基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)のポリマーが過フッ素化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法により形成される分散体。
【請求項17】
請求項4に記載の方法により形成される分散体。
【請求項18】
請求項16に記載の分散体から調製された膜。
【請求項19】
膜が、発泡、微孔性またはフィブリル補強材料が組み込まれた強化膜である、請求項18に記載の膜。
【請求項20】
請求項17に記載の分散体から調製される膜。
【請求項21】
膜が、発泡、微孔性またはフィブリル補強材料が組み込まれた強化膜である、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
a)ポリマー溶剤とSO2X側基を含有するポリマーとを含む溶液であって、ポリマーが、−(O−CF2CFRfa−(O−CF2b−(CFR’fcSO2Xにより記載される側基(式中、Xはハロゲンであり、RfおよびR’fは、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0〜2であり、b=0〜1であり、およびc=0〜6である)を含有するフッ素化主鎖を含む溶液を提供するステップ、
b)ステップa)の溶液と、求核性化合物Yおよび極性液体とを組み合わせて反応混合物を形成するステップ、
c)蒸留により実質的にすべてのポリマー溶剤をステップb)の反応混合物から除去して分散体を形成するステップであって、約5%〜約95%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約95%〜約5%のSO2X側基が未反応で残留するステップ;ならびに
d)ステップc)の分散体から膜を調製するステップ
を含む膜を調製する方法。
【請求項23】
ステップb)の反応混合物またはステップc)の分散体を、架橋性化合物と混合するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップc)において、約25%〜約75%のSO2X側基が求核性化合物Yと反応すると共に約75%〜約25%のSO2X側基が未反応で残留する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
架橋性化合物が式HNR12であり、ステップc)における残留SO2X側基の約1%〜約100%がSO2NR12側基(式中、R1およびR2は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基である)に転換される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
側基間に架橋が形成されるように、ステップd)の膜を架橋促進剤と接触させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
架橋が1つ以上のスルホンイミド部分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
スルホンイミド部分がNR78SO29SO2NR1011(式中、R7、R8、R10およびR11は、独立して、水素または任意に置換されていてもよいアルキル基であり、ならびにR9は、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換スルホンイミドポリマー、イオネンポリマーまたは置換または非置換ヘテロ原子官能基である)を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ステップd)が、補強材料を、ステップd)の膜が調製されるに伴ってステップc)の分散体に組み込むステップを含むと共に、側基間に架橋が形成されるように、ステップd)の膜を架橋促進剤と接触させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
極性液体が、DMF、DMAC、NMP、DMSO、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、メタノール、エタノール、水またはこれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
XがFである、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
ポリマー溶剤がフッ素化されている、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
ポリマー溶剤が、フルオロカーボン、フルオロカーボンエーテル、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンエーテル、クロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボンエーテル、2H−パーフルオロ(5−メチル−3,6−ジオキサノナン、またはこれらの組み合わせである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポリマー溶剤が、フルオリナート(Fluorinert)(登録商標)電子液体を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
求核性化合物Yが、LiH、NaH、およびNR456(式中、R4、R5およびR6が任意に置換されていてもよいアルキル基である)から選択される非求核性塩基と混和された水である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
求核性化合物Yが、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
ステップc)において、SO2X側基がSO3Mに転換され、Mは一価カチオンである、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
ステップa)のポリマーが、フッ素化または過フッ素化主鎖および式O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fまたは−OCF2CF2SO2Fの側基、またはこれらの組み合わせのいずれかを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
請求項22に記載の方法により調製される膜。
【請求項40】
請求項25に記載の方法により調製される膜。

【公表番号】特表2009−538967(P2009−538967A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513207(P2009−513207)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/012507
【国際公開番号】WO2007/142886
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】