説明

フルオロポリマー繊維複合束

束群のそれぞれが外面を有しかつ複数の高強度繊維を含んでなる複数の束群と、その束群の少なくとも1つの外面の少なくとも一部の周りに配置される少なくとも1つの低摩擦係数繊維とを含むロープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー複合束、および、さらに詳細には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを包含する複合束で作られたロープおよび他の織物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願書において用いられる用語「繊維」は、図1の16および18で示されるような糸状物品を意味する。本明細書において用いられる繊維は、モノフィラメント繊維およびマルチフィラメント繊維を包含する。複数の繊維は組み合わされて図1に示されるような「束」14を形成することが可能である。様々な種類の繊維が組み合わされて束を形成する場合に、それは、本明細書において「複合束」と呼ばれる。複数の束は、組み合わされて図1に示されるような「束群」12を形成することが可能である。複数の束群は、組み合わされて図1に示されるような「ロープ」10を形成することが可能である(代替ロープ構造体も考えられるが、本明細書において記載されるように本発明に包含される)。
【0003】
本明細書において用いられる「繰返し応力用途」は、例えば、海洋、海、および沿海での掘削用途を包含する係留および重い物を持ち上げる用途用のロープ、およびプーリ、ドラム、または滑車に対して張力下で曲げられるロープにおけるように、繊維の磨耗および/または圧縮破損をもたらす張力、曲げ力、またはねじり力、またはそれらの組合せに、繊維がさらされるような用途を意味する。
【0004】
本明細書において用いられる「高強度繊維」は、15g/dを超えるテナシティを有する繊維を指す。
【0005】
本明細書において用いられる「磨耗速度」は、(さらに例1において定義されるように)試料の破断力の低下と磨耗試験サイクル数との商を意味する。
【0006】
本明細書において用いられる「磨耗試験後の破断強度比」は、付加されたフルオロポリマー繊維を包含する所定の試験物品に対する磨耗試験後の破断強度と、フルオロポリマー繊維の付加なしでの試験物品の同じ構造体に対する磨耗試験後の破断強度との商を意味する。
【0007】
本明細書において用いられる「低密度」は、約1g/cc未満の密度を意味する。
【0008】
「持続性」は、使用中、有効に所定の位置に留まる能力として定義される。
【0009】
本明細書において用いられる「D:d」は、ロープ径で除した滑車径を意味する。
【0010】
本明細書において用いられる「低摩擦係数繊維」は、スチール上の乾燥ポリプロピレン以下の摩擦係数を有する高分子材料を意味する。
【0011】
高強度繊維は多くの用途において用いられる。例えば、高分子ロープは、例えば、海洋、海、および沿海での掘削用途を包含する係留および重い物を持ち上げる用途において広く用いられる。それらは、使用中の高引張および曲げ応力、ならびに様々な種類の環境からの攻撃にさらされる。これらのロープは、種々の種類の繊維から多様なやり方で構築される。例えば、ロープは、編組ロープ、ワイヤーレイロープ、または平行ストランドロープであることが可能である。編組ロープは、それらを撚り合わせるのではなく、束群を編んでまとめるか、または組み込むことにより形成される。ワイヤーレイロープは、ワイヤーロープと類似のやり方で作製され、撚られた束の各層は、一般に、中心軸の周りで同じ方向に巻かれる(撚られる)。平行ストランドロープは、編組または押出ジャケットにより一緒に保持される束群の集まりである。
【0012】
係留および重い物を持ち上げる用途において用いられるロープの成分繊維として、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維などの高弾性率および高強度繊維が挙げられる。商品名DYNEEMA(登録商標)およびSPECTRA(登録商標)の繊維は、こうした繊維の例である。商品名VECTRAN(登録商標)で市販されている液晶芳香族ポリエステルなどの液晶ポリマー(LCP)繊維も、また、こうしたロープを構築するために用いられる。Kevlar(登録商標)繊維などのパラアラミド繊維も、同様に、またこうした用途における有用性を有する。
【0013】
これらのロープの耐用年数は、3つの機構の1つまたは複数によって損なわれる。繊維磨耗はそれら機構の1つである。この磨耗は、内部的な繊維対繊維の磨耗、または別の対象物に対する繊維の外部磨耗でありうる。磨耗は繊維を損傷し、それによって、ロープの寿命を縮める。LCP繊維は、特に、この損傷機構に敏感である。第2の機構は、磨耗の別の結果である。ロープがプーリ、またはドラムに対して張力下で曲げられる場合などで、ロープ繊維が使用中互いを磨り減らすと、熱が発生する。この内部熱は繊維を極めて弱くする。繊維は加速された伸び率を示すか、または荷重を受けて破断する(すなわち、クリープ破断する)ことが見られる。UHMWPE繊維はこの様式の損傷を受ける。別の機構は、ロープがプーリ、ドラム、または他の対象物上で引っ張られる場合のロープまたはロープの一部の圧縮の結果である。
【0014】
これらの問題に対応するための種々の解決策が開発されてきた。これらの試みは、一般的に、繊維材料変化または構造変化を含む。新しくより強い繊維の使用は、多くの場合、ロープ寿命を改善するための方法として試験される。1つの解決策は、新規構造における複数種類の繊維の利用を含む。すなわち、2以上の種類の繊維が組み合わされてロープを作り出す。様々な種類の繊維を、それら種類の繊維の欠点を補償するために特定のやり方で組み合わせることができる。2以上の繊維の組合せが提供することができる特性利点の例には、(100%UHMWPEロープと違って)クリープおよびクリープ破断に対する改善された抵抗性、および(100%LCPロープと違って)自己磨耗に対する改善された抵抗性が挙げられる。しかし、すべてのこうしたロープは、なお、一部の用途において不適切に機能し、上述の3つの機構の1つまたは複数のせいで損傷する。
【0015】
ロープ性能は、大体において、ロープ、繊維の束を構築するために用いられる最も基本的な基礎単位の設計により決定される。この束は、様々な種類の繊維を包含することが可能である。束寿命を改善することは、一般に、ロープの寿命を改善する。この束は、上述の特別丈夫なロープよりも要求の少ない用途において価値を有する。こうした用途には、巻上げ、バンドリング、および緊締などが挙げられる。こうした繰返し応力用途において、繊維材料を組み合わせるための試みがなされてきた。例えば、UHMWPE繊維およびLCP繊維などの高強度繊維は、混ぜ合わされてより良い耐摩耗性を有するより大きな径のロープを作り出してきたが、しかし、それらは、なお、望ましいほど効果的でない。
【0016】
エレベータ用ロープの耐摩耗性は、高弾性率合成繊維を利用するか、1以上の束にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を含浸させるか、または繊維をPTFE粉末により被覆することにより改善されてきた。一般的に、こうした被膜は比較的速く磨り減る。ロープまたは個々の束の外部に対してジャケットを提供することは、また、ロープ寿命を改善することが示されてきた。しかし、ジャケットは、ロープに対する質量、大きさ、および剛性を付加する。
【0017】
繊維ガラスおよびPTFEは、ガラス繊維の寿命を延ばすために混ぜ合わされてきた。これらの繊維は布帛に織られてきた。得られる物品は、ガラス繊維単独に較べて優れた伸縮寿命および耐摩耗性を有する。熱融解性フッ素含有樹脂は、繊維、特に綿様材料繊維と組み合わされてきた。得られる繊維は改善された布帛を作り出すために用いられてきた。PTFE繊維は、糸ようじ、および他の低荷重用途、しかし本明細書において記載される繰返し応力用途ではない用途において、他の繊維と組み合わせて用いられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
つまり、ロープまたはケーブルの寿命を改善するための公知の試みのどれもが、曲げおよび高張力の両方を含む用途における十分な耐久性を提供してきていない。理想の解決策は、特別頑丈なロープおよび束などのより小径の構造体の両方に役立つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、フルオロポリマー繊維が約40質量%以下の量で存在する、少なくとも1つの高強度繊維および少なくとも1つのフルオロポリマー繊維を含む、繰返し応力用途用の複合束を提供する。
【0020】
好ましい実施形態において、高強度繊維は液晶ポリマーまたは超高分子量ポリエチレン、またはそれらの組合せである。
【0021】
フルオロポリマー繊維の好ましい質量%は、約35質量%以下、約30質量%以下、約25質量%以下、約20質量%以下、約15質量%以下、約10質量%以下、および約5質量%以下である。
【0022】
好ましくは、複合束は、少なくとも1.8、なおさらに好ましくは少なくとも3.8、およびなおさらに好ましくは少なくとも4.0の、磨耗試験後の破断強度比を有する。好ましくは、フルオロポリマー繊維はePTFE繊維であって、そのePTFE繊維はモノフィラメントまたはマルチフィラメントであってよく、それらのいずれも低または高密度であってよい。
【0023】
代替実施形態において、フルオロポリマー繊維は、二硫化モリブデン、グラファイト、または潤滑剤(炭化水素、またはシリコーン系流体)などの充填剤を含む。
【0024】
代替実施形態において、高強度繊維は、パラアラミド、液晶ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、高テナシティ金属、高テナシティ鉱物、または炭素繊維である。
【0025】
別の態様において、本発明は、繊維束中にフルオロポリマーの少なくとも1つのフィラメントを包含させる工程を含む、繊維束の強度を実質的に保持しながら繰返し応力用途における繊維束の磨耗または摩擦に関連する損耗を減少させる方法を提供する。
【0026】
他の態様において、本発明は、本発明の複合束製のロープ、ベルト、ネット、吊縄、ケーブル、織布、不織布、または管状織物を提供する。
【0027】
なお別の態様において、本発明は、撚り合わせおよび編組両方のロープ中の束または束群の表面、またはそれらの近くで低摩擦繊維を好ましい位置に配置することによって著しく高まった疲労性能を有する、高強度繊維を含むロープを提供する。この態様において、本発明は、束群のそれぞれが外面を有しかつ複数の高強度繊維を含んでなる、複数の束群を含むロープを提供し、該ロープは束群の1つの外面の少なくとも一部の周りに配置される少なくとも1つの低摩擦係数繊維を有する。好ましくは、束群の外面の少なくとも一部の周りに、複数の低摩擦係数繊維が配置される。低摩擦係数繊維には、フルオロポリマー(好ましくは延伸PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、混合物、およびコポリマーが挙げられる。
【0028】
本発明は、また、ロープに用いるための、外面を有する束群であって、複数の高強度繊維、および束群の1つの外面の少なくとも一部の周りに配置される少なくとも1つの低摩擦係数繊維を有するものを提供する。
【0029】
最後に、本発明は、また、少なくとも1つの束群の周りに低摩擦係数繊維を配置する工程を含む、複数の束群を有するロープの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明者らは、高強度繊維束に付加される比較的小さな質量パーセントのフルオロポリマー繊維が、耐摩耗性および使用寿命の驚くべき劇的な増加を生みだすことを見出してきた。
【0031】
繰返し応力用途で用いるロープ、ケーブル、および他の引張部材を形成するために用いられる高強度繊維には、商品名DYNEEMA(登録商標)およびSPECTRA(登録商標)繊維などの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、商品名VECTRAN(登録商標)で市販されているものなどの液晶ポリマー(LCP)繊維、他のLCAP、PBO、高性能アラミド繊維、Kevlar(登録商標)繊維などのパラアラミド繊維、炭素繊維、ナイロン、およびスチールが挙げられる。一般的に海洋および他の重い物を持ち上げる用途でのロープ用に用いられる、UHMWPEおよびLCPなどの、こうした繊維の組合せも含まれる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によりあらゆる上記繊維と組み合わせて用いられるフルオロポリマー繊維には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(延伸PTFE(ePTFE)および改質PTFEを含む)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはパーフルオロアルコキシポリマー(PFA)が挙げられるがそれらに限定されない。フルオロポリマー繊維には、モノフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維、または両方が含まれる。高および低密度のフルオロポリマー繊維を、両方とも本発明において用いることが可能である。
【0033】
フルオロポリマー繊維は、一般的に、高強度繊維よりも小さい強度を有するが、組み合わせ束の全体強度は、(複数の)フルオロポリマー繊維の付加(または高強度繊維の(複数の)フルオロポリマー繊維による置き換え)によってそれほど損なわれない。好ましくは、フルオロポリマー繊維の包含後10%未満の強度低下が観察される。
【0034】
フルオロポリマー繊維は、好ましくは、約40質量%未満のフルオロポリマー繊維が複合束中に存在するような量で高強度繊維と組み合わされる。さらに好ましい範囲として、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、および約1%が挙げられる。
【0035】
驚くことに、これらの低付加量においてさえ、わずかの(約10%未満)強度低下を伴うのみで、本発明の複合束は、耐摩耗性、従って使用寿命の劇的な増加を示す。一部のケースにおいて、磨耗試験後の破断強度比は以下に提供される実施例により示されるように4.0を超えている(表3を参照すること)。具体的には、以下の例1〜4に実証されるように、所定の磨耗試験サイクル数後のPTFEおよび高強度繊維を含む繊維束の破断力は、高強度繊維単独のそれよりも劇的に高い。従って、PTFE繊維含有複合束についての磨耗速度は、PTFE繊維を欠く同じ構造体についての磨耗速度より低い。
【0036】
理論により限定される訳ではないが、複合束の改善された耐摩耗性をもたらすものは、フルオロポリマー繊維の潤滑性であると考えられる。この態様において、本発明は、ロープまたは繊維束に固形でツルツルした繊維を包含させることにより、そのロープまたは繊維束を滑らかにする方法を提供する。
【0037】
フルオロポリマー繊維は任意に充填剤を包含する。グラファイトなどの固形潤滑剤、ワックス、または炭化水素油またはシリコーン油様の流体潤滑剤でさえも、用いることが可能である。こうした充填剤は、フルオロポリマー繊維に対して、最終的にはロープ自体に対して付加的な好ましい特性を付与する。例えば、炭素で充填したPTFEは熱伝導度を改善し、繊維およびロープの耐熱性を改善するために有用である。これは、ロープ破損に対する寄与因子の1つであるロープ中の熱の蓄積を防止するか、または少なくともそれを遅らせる。グラファイトまたは他のツルツルした充填剤は、フルオロポリマー繊維を付加することにより実現される潤滑利点を高めるために用いることが可能である。
【0038】
あらゆる従来型の公知の方法は、フルオロポリマー繊維を高強度繊維と組み合わせるために用いることが可能である。特別な処理は全く必要とされない。繊維は混ぜるか、撚るか、編むか、または、特別の組合せ加工なしで単に一緒に共加工することが可能である。一般的に、繊維は、当業者に公知の従来型のロープ製造方法を用いて組み合わせられる。
【0039】
発明者らは、また、驚くことに、合成ロープへの低摩擦ポリマー繊維の付加が、耐用年数を大きく向上させるだけでなく、ロープ内の特定位置に配置された低摩擦ポリマー繊維、テープおよび/またはフィルムが、この耐用年数の増加の大きさに有意に影響を与えうることも見出してきた。
【0040】
ロープ内の特定位置に特別注意せずにロープ内にフルオロポリマー繊維を組合せても耐用年数は向上するが、本発明者らは、ロープ構造内の特定位置に配置されたフルオロポリマーが、なおさらに寿命を向上させるための能力を提供することを見出してきた。
【0041】
特に図4に関して、本発明のこの態様の代表的な実施形態が示される。ロープ40はそれぞれが繊維束により形成される複数の束群41を含む。各束群41は、低摩擦係数繊維42、好ましくは延伸PTFEにより包まれる。各束群41は図示実施形態において低摩擦係数繊維42により包まれるけれども、少なくとも1つの束群41がそのように包まれるという条件で、あらゆる数の束群41が本発明によってそのように包まれてもよい。あるいは、束それら自体を低摩擦係数繊維42により包むことが可能である。本発明のロープは、例えば、技術上公知の方法により図6に示されるものなどの柊板(Holly Board)を用いて作製することが可能である。
【0042】
理論により縛られようとは望まないが、耐用年数を向上させる上で、これらの低摩擦係数繊維を多くのやり方で利用することが可能に思われる。このことには、以下に限定されないが、重要なロープ成分の界面に低摩擦耐摩耗性表面を有効に提供することが含まれ、この低摩擦界面が重要である。一方で、低摩擦材料の形態は、この形態が臨界接触域における持続性を提供する限り重要でない。
【0043】
本明細書において包含される例は、フルオロポリマー繊維が低摩擦界面を構築するために用いることが可能であることを明示しているが、テープおよびフィルムなどのフルオロポリマーの他の形態も本発明の一部である。好ましい位置に配置できると共に、持続性能力のある低摩擦係数を有する他の高分子材料も、また、向上した疲労性能に対する効果的な手段として考えられる。適する低摩擦ポリマーとして、炭化水素ポリマー、ハロゲン含有ポリマー、フッ素含有ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、混合物、およびコポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。フッ化ポリマーが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンが最も好ましい。ポリマーを繊維の長手方向に配向させることにより一般的に得られる強度を有する、上記ポリマーのうち最強の繊維は、高応力条件下で有効な持続性を有することが可能であり、従って、最も向上した疲労性能を提供する。これらのより強い繊維材料の例は、ゲルスパンポリエチレンおよび延伸ポリテトラフルオロエチレンに見出すことができる。本明細書において用いられる低摩擦係数繊維は、もう1つの方法としてコアシェル構造に形成されるか、またはそれ自体複合材料である。しかし、それは織布を除く(すなわち、繊維は織構造の一部ではない)。
【0044】
再度、理論により縛られようとは望まないが、重要な領域に配置される低摩擦材料は、熱生成を減少させるか、遅らせるか、または排除し、磨耗損傷を減少させるか、遅らせるか、または排除し、および熱および磨耗および剪断応力に伴って起こりうる高強度繊維およびロープ要素の強度の損失を減少させるか、遅らせるか、または排除するように機能することができる。アラミド繊維におけるように、敏感であることが知られているような高強度繊維における圧縮および剪断に起因する損傷の減少、遅延、または排除も、また、本発明に想定される効果である。
【0045】
摩擦の損傷効果が1つの束群の他に対する法線応力の大きさの関数であり、かつ要素間の接触面が増大するような法線応力に垂直方向で低摩擦材料が束群の形状の調整をもたらすことができるので、法線応力が低下して、摩擦の損傷効果はさらに調節される。
【0046】
これらの低摩擦材料に対する好ましい位置は、ロープに応力がかかるかまたは曲げられる場合に、互いに接触し、互いに対して動くかまたは滑るロープ内の要素間の界面である。
【0047】
これらの要素は、繊維が互いに対して動くことが可能である繊維レベルから出発し、束が互いに対して動くことが可能である束レベル、束群が互いに対して動くことが可能である束群レベル、および、ロープが交差した状態でそれ自体に対して、またはロープ系中で他のロープに対して動くことが可能であるロープ自体までの、ロープ構造内の階層的枠組み中で規定される。
【0048】
寿命を向上させるために必要とされるこの低摩擦繊維、テープおよび/またはフィルムの量が、ロープの体積または質量に対して最小限であるため、低摩擦ポリマーは、初期ロープ強度に事前に寄与するような高強度または高弾性率を有している必要はなく、過去においてロープ成分繊維の選択を極高強度繊維からの選択に限ってきた制約を有する必要はない。驚くことに、高強度繊維と考えられない繊維を、疲労性能を改善するために用いることが可能である。重要な位置に低摩擦ポリマーを配置して作り出される低摩擦滑り要素は、ロープの引張強度が、一部の高強度成分を低強度繊維および成分と置き換えた場合に予想される引張強度よりも一般的に高くなるように、荷重をより良く分担することができる。
【0049】
ロープ性能は、歴史的に、繊維、束、束群、またはロープレベルで適用される被膜の使用により調整されてきた。耐摩耗性のために配合された被膜が報告されている。多くのこれら被膜は、より少ない磨耗損傷で曲がることを容易にする潤滑剤として機能することにより、磨耗損傷を減少させると思われる。これらの被膜は、ロープ製造の前、間、または後に液体または粉末形態で適用される。こうした塗料は、特に曲げ用途において、ロープ性能および寿命の有意な向上のための可能性を有して、本発明と協同して機能すると予想される。本発明のロープは、深海のハードウエア配送システムにおいて特に有用である。
【実施例】
【0050】
以下に示される実施例において、耐摩耗性および使用寿命について種々の繊維束を用いて試験を行う。結果は、当業者により理解されるように、本発明の束から構築されるロープにおいて見られる効果を示す。
【0051】
詳細には、耐摩耗性を実証するために磨耗速度を用いる。(本発明のフルオロポリマー繊維の組合せありおよびなしの)繊維束が破損するまでサイクル試験する一部の例により使用寿命を実証する。結果を破損に至るまでのサイクル数として報告する。試験のさらなる詳細を以下に提供する。
【0052】
試験方法
単位長さ当りの質量および引張強度測定
それぞれ個々の繊維の単位長さ当りの質量を、デンバーインスツルメンツ(Denver Instruments.Inc.)モデルAA160化学天秤を用いて、繊維の9m長試料の重さを測定し、グラム表示の質量を1000倍し、それによってデニール単位で結果を表すことにより測定した。例6aおよび6bを除いて、すべての引張試験を、ゲージ長さ350mmおよびクロスヘッド速度330mm/分を用いる空気ファイバーグリップを備えた引張試験機(USTER(登録商標)TENSORAPID4、スイス、ウスターのツエルベガーウスター(Zellweger Uster))を用いて周辺温度で行った。歪速度は、その結果、94.3%/分であった。例6aおよび6bに対して、引張試験を、再度ゲージ長さ350mmおよびクロスヘッド速度330mm/分を用いる空気U字型ファイバーグリップを備えたINSTRON5567引張試験機(マサチューセッツ州、カントン)を用いて周辺温度で行い、その結果、歪速度は94.3%/分であった。繊維の破断強度を意味するピーク力を記録した。4試料を試験し、それらの平均破断強度を計算した。g/dで表される個々の繊維試料の平均テナシティを、グラムで表される平均破断強度を個々の繊維のデニール値で割ることにより計算した。複合束または束群を試験する場合において、これら試料の平均テナシティを、複合束または束群の平均破断強度(単位グラム)を複合束または束群の長さ当りの質量値(デニール単位で表される)で割ることにより計算した。複合束または束群のデニール値を、試料の質量を測定することによるか、または試料の個々の成分のデニール値を合計することにより測定することができる。
【0053】
密度測定
繊維密度を以下の技術を用いて測定した。繊維体積を一定長さの繊維の平均厚さおよび幅の値から計算し、密度を繊維体積および繊維質量から計算した。2メートル長の繊維をA&D FR−300はかり上に置き、質量をグラム(C)で書き留めた。次に、繊維試料の厚さを、AMES(米国、マサチューセッツ州ウォルサム)モデルLG3600厚さゲージを用いて、繊維に沿って3点で測定した。繊維の幅を、また、ニューヨーク州、ガーデンシティーのエーレンライヒ・フォート・オプティカル(Ehrenreich Photo Optical Ind.Inc.)から市販されているLP−6形状プロジェクター(Profile Projector)を用いて同じ繊維試料に沿って3点で測定した。次に、厚さおよび幅の平均値を計算し、繊維試料の体積(D)を決定した。繊維試料の密度を以下のように計算した:繊維試料密度(g/cc)=C/D。
【0054】
耐摩耗性測定
磨耗試験の出典は、ASTM規格試験法、Wet and Dry Yarn−on−Yarn Abrasion Resistance(Designation D6611−00)である。この試験法を、ロープの構築において、特に海環境での使用を意図したロープにおいて用いられる糸の試験に適用する。
【0055】
垂直枠24上に配置される3組のプーリ21、22、23を有する試験装置を図2に示す。プーリ21、22、23は22.5mm径であった。上部プーリ21、23の中心線を140mm離した。下部プーリ22の中心線は、上部プーリ21、23中心線を結ぶ水平線下254mmにあった。モーター25およびクランク26を図2に示すように位置付けた。ブッシング28を通してモーター駆動クランク26により駆動される延長ロッド27を、ロッド27が各サイクルの間前後に動く際に、試験試料30を距離50.8mm移動させるように用いた。サイクルは前進および後退ストロークを含んだ。デジタルカウンタ(示されていない)はサイクル数を記録した。クランク速度は65〜100サイクル/分の範囲内で調整可能であった。
【0056】
(中に種々の重さを追加できるプラスチック容器の形態にある)おもり31を、試験試料30の平均破断強度の1.5%に相当する規定された張力をかけるために、試料30の一端に結びつけた。張力がかからない間、図2に従って、第3プーリ23の上、第2プーリ22の下、次に第1プーリ21の上に試料30を通した。次に、図に示されるようにおもり31を吊るすことにより、試料30に張力をかけた。次に、モータークランク26に取り付けられた延長ロッド27に、試料30の他端を貼付した。ロッド27は、あらかじめストロークの最高点に位置させてあり、それによって、張力を提供するおもり31を試験前に最大高さに確実に位置させた。最大高さは、一般的に、第3プーリ23の中心線下6〜8cmであった。試験中の滑りを防ぐために、繊維試料30を、延長ロッド27およびおもり31にしっかりと確実に取り付けるように気を付けた。
【0057】
次に、なお張力下の間、第2の低いプーリ22から試験試料30を注意深く外した。約27mm径のシリンダ(示されていない)を、試料30により形成されるクレードル(cradle)の中に置き、次に、試料30に半巻きをもたらすために右に180°回転させた。シリンダをさらに180°右に回転させて完全な360°巻きを完成させた。望ましい巻き数を達成するまで180°増分の撚りを続けた。次に、試料30がなお張力下にある間に、シリンダを注意深く取り外し、試料30を第2プーリ22周りに戻した。一例として、繊維試料30に対する3完全巻き(3x360°)を図3に示す。巻いている間の撚り方向からの唯一のずれは、撚りマルチフィラメントである試料のケースにおいて起こるであろう。この場合に、この撚り方向の向きは、マルチフィラメント繊維の固有の撚りと同じ方向にあらねばならない。
【0058】
試験試料がフルオロポリマーの少なくとも1つの繊維を含む2以上の個々の繊維からなる試験において、以下の修正手順を続けた。試験試料をおもりに固定した後、(複数の)フルオロポリマー繊維を、撚ることなく他の繊維の隣に平行して置いた。特記のない限り、(複数の)フルオロポリマー繊維を、常に作業者の最も近くに置いた。繊維を巻くためのその後の手順は、その他の点で、上で概説したものと同じであった。
【0059】
一旦試験設定が完了すると、サイクルカウンタをゼロにセットし、クランク速度を望ましい速度に調整し、ギアモータを始動した。望ましいサイクル数を達成した後、ギアモータを停止し、磨耗した試験試料をおもりおよび延長ロッドから取り外した。各試験を4回行った。
【0060】
次に、磨耗した試験試料について破断強度に関する引張試験を行い、結果を平均した。繊維または複合束試料の平均破断強度値および単位長当りの全体質量値を用いて、平均テナシティを計算した。
【0061】
1つの例において、繊維または複合束が適用張力下で完全に破断されるまで、磨耗試験を続けた。サイクル数を試料破損までのサイクル数として記録した。この例においては、3試料を試験して破損までの平均サイクル数を計算した。
【0062】
デニール試験:
繊維デニールを、デンバーインスツルメンツのモデルAA160化学天秤を用いて、繊維の9m長試料の重さを測定し、グラム表示の質量を1000倍することにより決定した。
【0063】
繊維引張試験およびテナシティ計算:
ゲージ長さ350mmおよびクロスヘッド速度330mm/分を用いる空気ファイバーグリップを備えた引張試験機(USTER(登録商標)TENSORAPID4、スイス、ウスターのツエルベガーウスター)を用いて周辺温度で、試験を行った。繊維の破断強度を意味するピーク力を記録した。4試料を試験し、それらの平均破断強度を計算した。g/dで表される個々の繊維試料の平均テナシティを、グラムで表される平均破断強度を個々の繊維のデニール値で割ることにより計算した。
【0064】
ロープ引張試験:
撚られた対照ロープ用の破断強度試験を、水圧引張試験機を用いて行った。3つの試料について、連続して2インチ/分クロスヘッド速度で20,000ポンドに5回、試料をあらかじめ処理した後、2.15インチ/分伸長速度を用いて破断試験を行った。試料ゲージ長は128インチ長であった。試料をスプライスにより継いだ。報告する破断強度は3つの試験片に対する平均値である。
【0065】
組紐試料の破断強度を、水圧引張試験機を用いて試験した。各ロープの3つの試料を、10秒間にわたり10回破断荷重の半分にサイクリングした後、10インチ/分伸長速度を用いて試験した。破断試験用の試料を、2インチピンと埋込尾部を有する13インチの二重縫いスプライスを用いて固定し、それらは平均して200インチ長であった。報告する破断強度は3つの試験片の平均値である。
【0066】
密度測定
繊維密度を以下の手法を用いて測定した。繊維体積を一定長さの繊維の平均厚さおよび幅の値から計算し、密度を繊維体積および繊維質量から計算した。2メートル長の繊維をA&D FR−300はかり上に置き、質量をグラム(C)で書き留めた。次に、繊維試料の厚さを、AMES(米国、マサチューセッツ州ウォルサム)モデルLG3600厚さゲージを用いて、繊維に沿って3点で測定した。繊維の幅を、また、ニューヨーク州、ガーデンシティーのエーレンライヒ・フォート・オプティカルから市販されているLP−6形状プロジェクターを用いて同じ繊維試料に沿って3点で測定した。次に、厚さおよび幅の平均値を計算し、繊維試料の体積(D)を決定した。繊維試料の密度を以下のように計算した:繊維試料密度(g/cc)=C/D。
【0067】
例1
単一ePTFE繊維を、単一液晶ポリマー(LCP)繊維(Vectran(登録商標)、ノースカロライナ州、シャーロットのセラニーズアセテート(Celanese Acetate LLC))と組み合わせ、前述の磨耗試験にかけた。この試験からの結果を、単一LCP繊維の試験からの結果と比較した。
【0068】
ePTFEモノフィラメント繊維を入手した(HT400d Rastex(登録商標)繊維、メリーランド州、エルクトンのW.L.ゴア・アンド・アソーシエーツ(W.L.Gore and Associates,Inc.))。この繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量425d、破断力2.29kg、テナシティ5.38g/d、および密度1.78g/cc。LCP繊維は1567dの単位長当り質量、34.55kgの破断力、および22.0g/dのテナシティを有した。
【0069】
2種類の繊維を、それらが相互に隣接するようにそれらを単に保持することにより組み合わせた。すなわち、撚りまたは他の巻き込み手段を全く適用しなかった。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、LCP79%、ePTFE21%であった。複合束の単位長当りの質量は、1992dであった。複合束の破断力は、33.87kgであった。複合束のテナシティは、17.0g/dであった。LCPへの単一ePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+27%、−2%、および−23%分変えた。ePTFEモノフィラメント繊維の付加に関連する破断力の減少が、繊維強度のばらつきのせいであったことに注意する。
【0070】
これらの繊維特性、ならびに例2〜8において用いられるすべての繊維の特性を表1に示す。
【0071】
単一LCP繊維について、前述の手順に従って耐摩耗性の試験を行った。5回の完全巻きを繊維に適用した。張力518g(これはLCP繊維の破断力の1.5%に相当した)下、100サイクル/分で試験を行った。
【0072】
単一LCP繊維およびePTFEモノフィラメント繊維の複合束について、また、同じやり方で耐摩耗性の試験を行った。5回の完全巻きを複合束に適用した。100サイクル/分、張力508g(これは繊維組合せの破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0073】
磨耗試験を1500サイクル走らせ、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびLCP繊維は、それぞれ、磨耗後26.38kgおよび13.21kgの破断力を示した。単一LCP繊維への単一PTFEモノフィラメント繊維の付加は、磨耗後破断力を100%分増大させた。従って、単一ePTFEモノフィラメント繊維の付加は、試験前に−2%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、100%分高い破断力をもたらした。
【0074】
破断力の減少を、磨耗試験の終わりでの破断強度と初期破断強度との商により計算した。磨耗速度を、試料の破断力の減少と磨耗試験サイクル数との商として計算した。LCP繊維単独、およびLCP繊維とePTFEモノフィラメント繊維の複合材料に対する磨耗速度は、それぞれ、14.2g/サイクルおよび5.0g/サイクルであった。
【0075】
この例に対する試験条件および試験結果、ならびに他の例のすべて(例2〜8)に対する試験条件および試験結果は、それぞれ表2および3に載せられる。
【0076】
例2A
単一ePTFEモノフィラメント繊維を、単一超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維(Dyneema(登録商標)繊維、オランダ、ヘレーンのDSM)と組み合わせた。前述のように磨耗試験を行った。複合束試験結果を、単一UHMWPE繊維の試験からの結果と比較した。
【0077】
例1において作製され記載されたePTFEモノフィラメント繊維を入手した。二種類の繊維を、それらが相互に隣接するようにそれらを簡単に保持することにより組み合わせた。すなわち、撚りまたは他の巻き込み手段を全く適用しなかった。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、UHMWPE79%、ePTFE21%であった。UHMWPEおよび複合束の単位長当りの質量は、それぞれ、1581dおよび2006dであった。UHMWPEおよび複合束の破断力は、それぞれ、50.80kgおよび51.67kgであった。UHMWPEおよび複合束のテナシティは、それぞれ、32.1g/dおよび25.7g/dであった。UHMWPE繊維へのePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+27%、+2%、および−20%分変えた。
【0078】
単一UHMWPE繊維について、前述の手順に従って耐摩耗性の試験を行った。3回の完全巻きを繊維に適用した。張力762g(これはUHMWPE繊維の破断力の1.5%に相当した)下、65サイクル/分で試験を行った。
【0079】
UHMWPE繊維およびePTFEモノフィラメント繊維の組合せについて、また同じやり方で耐摩耗性の試験を行った。3回の完全巻きを繊維の組合せに適用した。65サイクル/分、張力775g(これは繊維組合せの破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0080】
磨耗試験を500サイクル走らせ、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびUHMWPE繊維は、それぞれ、磨耗後42.29kgおよび10.90kgの破断力を示した。UHMWPE繊維へのePTFEモノフィラメント繊維の付加は、磨耗後破断力を288%分増大させた。従って、単一ePTFE繊維の付加は、試験前に2%分破断力を増大させ、磨耗試験が完了すると、288%分高い破断力をもたらした。UHMWPE繊維単独、およびUHMWPE繊維とePTFEモノフィラメント繊維の複合材料に対する磨耗速度は、それぞれ、79.8g/サイクルおよび18.8g/サイクルであった。
【0081】
例2B
ePTFE繊維とUHMWPE繊維の組合せを作り出し、この場合にePTFE繊維がマルチフィラメント繊維であることを除いて、例2aに記載されるように試験を行った。ピン歯車を用いて400dのePTFEモノフィラメント繊維を引っ張ってマルチフィラメントePTFE繊維を作り出した。マルチフィラメント繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量405d、破断力1.18kg、テナシティ2.90g/d、および密度0.72g/cc。
【0082】
例2aにおいて記載されるように、1つのマルチフィラメントePTFE繊維を1つのUHMWPE繊維と組み合わせた。UHMWPE繊維に対する特性および試験結果は例2aに示されている。複合束は、UHMWPE80質量%およびePTFE20質量%からなった。
【0083】
複合束の単位長当りの質量は1986dであった。複合束の破断力は50.35kgであった。複合束のテナシティは25.4g/dであった。UHMWPE繊維へのePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+26%、−1%、および−21%分変えた。
【0084】
UHMWPE繊維とePTFEマルチフィラメント繊維の組合せについて、例2aにおけるように、3回の完全巻きおよび65サイクル/分を用いて張力755g(これは繊維組合せの破壊力の1.5%に相当した)下で耐摩耗性の試験を行った。磨耗試験を再度500サイクル分走らせた。複合ePTFE−UHMWPE束に対する磨耗後の破断力は41.37kgであった。UHMWPE繊維へのePTFEマルチフィラメント繊維の付加は、磨耗後破断力を280%分増大させた。従って、単一ePTFE繊維の付加は、試験前に−1%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、280%分高い破断力をもたらした。複合束に対する磨耗速度は18.0g/サイクルであった。
【0085】
例3
ePTFEモノフィラメント繊維を、撚りパラアラミド繊維(Kevlar(登録商標)繊維、デラウェア州、ウイルミントンのデュポン(E.I.DuPont deNemours,Inc.))と組み合わせ、磨耗試験にかけた。この試験からの結果を、単一パラアラミド繊維の試験からの結果と比較した。
【0086】
ePTFEモノフィラメント繊維は、例1に記載されるものと同じであった。ePTFEモノフィラメント繊維に対する特性および試験結果は、例1に示されている。パラアラミド繊維は、2027dの単位長当り質量、40.36kgの破断力、および19.9g/dのテナシティを有した。
【0087】
例1において記載されるように2種類の繊維を組み合わせ、パラアラミド83質量%およびePTFEモノフィラメント17質量%からなる複合束を生成した。複合束の単位長当りの質量は2452dであった。複合束の破断力は40.41kgであった。複合束のテナシティは16.7g/dであった。パラアラミドへの単一ePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+21%、+0%、および−16%分変えた。
【0088】
単一パラアラミド繊維について、前述の手順に従って耐摩耗性の試験を行った。パラアラミド繊維の撚りのせいで、巻き方向が、パラアラミド繊維の固有の撚りと同じ方向であって、この場合は他の例の逆であったことに注意すべきである。3回の完全巻きを繊維に適用した。張力605g(これはパラアラミド繊維の破断力の1.5%に相当した)下、65サイクル/分で試験を行った。
【0089】
パラアラミド繊維とePTFEモノフィラメント繊維の組合せについて、また同じやり方で耐摩耗性の試験を行った。3回の完全巻きを繊維の組合せに適用した。65サイクル/分、張力606g(これは繊維組合せの破壊力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0090】
磨耗試験を400サイクル走らせ、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびパラアラミド繊維は、それぞれ、磨耗後17.40kgおよび9.29kgの破断力を示した。パラアラミド繊維へのePTFEモノフィラメント繊維の付加は、磨耗後破断力を87%分増大させた。従って、単一ePTFE繊維の付加は、試験前に0%分破断力を増大させ、磨耗試験が完了すると、87%分高い破断力をもたらした。パラアラミド繊維単独、およびパラアラミド繊維とePTFEモノフィラメント繊維の複合材料に対する磨耗速度は、それぞれ、77.7g/サイクルおよび57.5g/サイクルであった。
【0091】
例4
単一グラファイト充填ePTFE繊維を、単一超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維(Dyneema(登録商標)繊維)と組み合わせ、磨耗試験にかけた。この試験からの結果を、単一UHMWPE繊維の試験からの結果と比較した。
【0092】
グラファイト充填ePTFEモノフィラメント繊維を、マイナー(Minor)らに対する米国特許第5,262,234号明細書の教示に従って作製した。この繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量475d、破断力0.98kg、テナシティ2.07g/d、および密度0.94g/cc。UHMWPE繊維に対する特性および試験結果は例2aに示されている。
【0093】
例1におけるものと同じやり方で、二種類の繊維を組み合わせた。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、UHMWPE77%およびグラファイト充填ePTFE23%であった。UHMWPEおよび複合束の単位長当りの質量は、それぞれ、1581dおよび2056dであった。複合束の破断力は49.35kgであった。複合束のテナシティは24.0g/dであった。UHMWPE繊維へのグラファイト充填ePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+30%、−3%、および−25%分変えた。
【0094】
UHMWPE繊維とグラファイト充填ePTFEモノフィラメント繊維の組合せについて、耐摩耗性の試験を行った。3回の完全巻きを繊維の組合せに適用した。65サイクル/分、張力740g(これは繊維組合せ破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。UHMWPE繊維に対する磨耗試験結果は例2aに示されている。
【0095】
磨耗試験を500サイクル走らせ、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束は、磨耗後36.73kgの破断力を示した。UHMWPE繊維へのグラファイト充填モノフィラメントePTFEの付加は、磨耗後破断力を237%分増大させた。従って、ePTFEモノフィラメント繊維の付加は、試験前に−3%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、237%分高い破断力をもたらした。単一UHMWPE繊維単独、および単一UHMWPE繊維と単一グラファイト充填ePTFEモノフィラメント繊維の複合束に対する磨耗速度は、それぞれ、79.8g/サイクルおよび25.2g/サイクルであった。
【0096】
例5
3種類の繊維、UHMWPE、LCP、およびePTFEモノフィラメント繊維を組み合わせて複合束を形成した。これらの繊維は例1および2aにおいて報告されるものと同じ特性を有する。それぞれの種類の繊維のストランド数および質量%は以下のとおりであった:UHMWPEに対して1および40%、LCPに対して1および39%、およびePTFEモノフィラメントに対して2および21%。
【0097】
この複合束、ならびにUHMWPEおよびLCP繊維のそれぞれ1つのストランドを含む複合束に対する引張および磨耗試験を行った。2繊維型および3繊維型構造体に対する長さ当り質量、破断力、およびテナシティは、それぞれ、3148dおよび3998d、73.64kgおよび75.09kg、ならびに23.4g/dおよび18.8g/dであった。
【0098】
磨耗試験条件は、この試験が一定数のサイクルに達した時に終わるのではなく、試料が破損するとすぐに終わり、かつ各構造体に対して3回(4回ではない)試験を行うことを除いて、前述のものと同じであった。磨耗試験機の中で繊維を以下のやり方で並べて置いた:LCP繊維、PTFE繊維、UHMWPE繊維、PTFE繊維で、LCP繊維を作業者から最も遠くに置き、PTFE繊維を作業者に最も近く置いた。破損を複合束の全破壊として定義した。磨耗試験に対して、4回の完全巻きを複合束に適用した。試験を65サイクル/分で行った。適用張力は、UHMWPEとLCP繊維のみの複合材料に対して1105gであり、全てを含む3繊維型の複合材料に対しては1126gであった。両方の試験における張力は繊維組合せ破断力の1.5%に相当した。
【0099】
破損に至る平均サイクル数を3回の磨耗試験結果から計算した。UHMWPEとLCP繊維のみの複合束に対して1263サイクルで破損が起こると共に、全てを含む3繊維型の複合束に対して2761サイクルで破損が起こった。
【0100】
1つのUHMWPE繊維と1つのLCP繊維の組合せへのePTFEモノフィラメント繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+27%、+2%、および−20%分変えた。ePTFE繊維の付加は、破損へのサイクル数を+119%分増大させた。
【0101】
例6
例2aにおいて記載される方法および繊維を用いて、2つの追加複合束を構築した。これら2つの複合束を、ePTFEモノフィラメントおよびUHMWPE繊維成分の質量%が異なる2種類となるよう設計した。
【0102】
6a)
単一ePTFE繊維を、3つのUHMWPE繊維と組み合わせ、磨耗試験にかけた。ePTFE繊維およびUHMWPE繊維の質量%は、それぞれ、8%および92%であった。3つのUHMWPE繊維および複合束の単位長当りの質量は、それぞれ、4743dおよび5168dであった。3つのUHMWPE繊維および複合束の破断力は、それぞれ、124.44kgおよび120.63kgであった。3つのUHMWPE繊維および複合束のテナシティは、それぞれ、26.2g/dおよび23.3g/dであった。3つのUHMWPE繊維へのePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+9%、−3%、および−11%分変えた。
【0103】
磨耗試験に対して、2回の完全巻きを試験試料に適用した。65サイクル/分で、および3つのUHMWPE繊維単独、および3つのUHMWPE繊維と単一ePTFE繊維の複合束に対して、それぞれ、1867gおよび1810gの張力(これらの張力は試験試料の破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0104】
600サイクルにわたり磨耗試験を行い、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束および3つのUHMWPE繊維は、それぞれ、磨耗後99.07kgおよび23.90kgの破断力を示した。従って、3つのUHMWPE繊維への単一ePTFE繊維の付加は、試験前に−3%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、314%分高い破断力をもたらした。単一ePTFEモノフィラメント繊維なしおよびありでの3つのUHMWPE繊維の複合材料に対する磨耗速度は、それぞれ、167.6g/サイクルおよび35.9g/サイクルであった。
【0105】
6b)
5つのePTFE繊維を、3つのUHMWPE繊維と組み合わせ、磨耗試験にかけた。ePTFE繊維およびUHMWPE繊維の質量%は、それぞれ31%および69%であった。3つのUHMWPE繊維および複合束の単位長当りの質量は、それぞれ、4743dおよび6868dであった。3つのUHMWPE繊維および複合束の破断力は、それぞれ、124.44kgおよび122.53kgであった。3つのUHMWPE繊維および複合束のテナシティは、それぞれ、26.2g/dおよび19.0g/dであった。3つのUHMWPE繊維への5つのePTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+45%、−2%、および−27%分変えた。
【0106】
磨耗試験に対して、2回の完全巻きを試験試料に適用した。65サイクル/分で、および3つのUHMWPE繊維単独、および3つのUHMWPE繊維と5つのePTFE繊維の複合材料に対して、それぞれ1867gおよび1838gの張力(これらの張力は試験試料の破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0107】
600サイクルにわたり磨耗試験を行い、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束は、磨耗後100.49kgの破断力を示した。従って、5つのePTFE繊維の付加は、試験前に−2%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、320%分高い破断力をもたらした。5つのePTFEモノフィラメント繊維なしおよびありでの3つのUHMWPE繊維の複合材料に対する磨耗速度は、それぞれ、167.6g/サイクルおよび36.7g/サイクルであった。
【0108】
例7
例2aにおいて記載される方法およびUHMWPE繊維を用いて、別の複合束を構築した。この例において、より低い密度のePTFEモノフィラメント繊維を用いた。この繊維を米国特許第6,539,951号明細書の教示に従って製造すると共に、この繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量973d、破断力2.22kg、テナシティ2.29g/d、および密度0.51g/cc。
【0109】
両方の種類の繊維の単一繊維を、例2において記載されるように組み合わせた。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、UHMWPE62%、ePTFE38%であった。複合束の単位長当りの質量は2554dであった。複合束の破断力は49.26kgであった。複合束のテナシティは19.3g/dであった。UHMWPE繊維への単一PTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+62%、−3%、および−40%分変えた。
【0110】
単一UHMWPE繊維の磨耗試験の試験方法および結果は、例2aに報告した。UHMWPE繊維と低密度ePTFEモノフィラメント繊維の複合材料についても、また、同じやり方で耐摩耗性試験を行った。3回の完全巻きを複合束に適用した。65サイクル/分、張力739g(これは繊維組合せ破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0111】
磨耗試験を500サイクル走らせ、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびUHMWPE繊維は、それぞれ、磨耗後44.26kgおよび10.9kgの破断力を示した。従って、単一ePTFE繊維の付加は、試験前に−3%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、306%分高い破断力をもたらした。UHMWPE繊維単独、およびUHMWPE繊維と低密度ePTFEモノフィラメント繊維の複合束に対する磨耗速度は、それぞれ、79.80g/サイクルおよび10.00g/サイクルであった。
【0112】
例8
例2において記載される方法およびUHMWPE繊維を用いて、別の複合束を構築した。この例において、マトリクス−スパンPTFEマルチフィラメント繊維(デラウェア州、ウイルミントンのデュポン)を用いた。この繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量407d、破断力0.64kg、テナシティ1.59g/d、および密度1.07g/cc。
【0113】
両方の種類の繊維の単一繊維を、例2において記載されるように組み合わせた。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、UHMWPE80%、PTFE20%であった。複合束の単位長当りの質量は1988dであった。複合束の破断力は49.51kgであった。複合束のテナシティは24.9g/dであった。UHMWPE繊維への単一PTFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+26%、−2%、および−22%分変えた。
【0114】
単一UHMWPE繊維の磨耗試験の試験方法および結果は、例2aに報告した。UHMWPE繊維とPTFEマルチフィラメント繊維の複合束についても、また同じやり方で耐摩耗性試験を行った。3回の完全巻きを複合束に適用した。65サイクル/分、張力743g(これは繊維組合せ破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0115】
磨耗試験を500サイクル行い、その点から後、試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびUHMWPE繊維は、それぞれ、磨耗後39.64kgおよび10.9kgの破断力を示した。従って、単一PTFE繊維の付加は、試験前に−2%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、264%分高い破断力をもたらした。UHMWPE繊維単独、およびUHMWPE繊維とPTFEマルチフィラメント繊維の複合束に対する磨耗速度は、それぞれ、79.80g/サイクルおよび19.74g/サイクルであった。
【0116】
例9
例2において記載される方法およびUHMWPE繊維を用いて、別の複合束を構築した。この例において、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン)マルチフィラメントフルオロポリマー繊維(デラウェア州、ウイルミントンのデュポンから市販されている)を用いた。この繊維は以下の特性を有した:単位長当り質量417d、破断力1.10kg、テナシティ2.64g/d、および密度1.64g/cc。
【0117】
両方の種類の繊維の単一繊維を、例2において記載されるように組み合わせた。組み合わせた時のこれら2つの繊維の質量%は、UHMWPE79%、ETFE21%であった。複合束の単位長当りの質量は1998dであった。複合束の破断力は50.44kgであった。複合束のテナシティは25.2g/dであった。UHMWPEへの単一ETFE繊維の付加は、単位長当り質量、破断力、およびテナシティを、それぞれ、+26%、−1%、および−21%分変えた。
【0118】
単一UHMWPE繊維の磨耗試験の試験方法および結果は、例2aに報告した。UHMWPE繊維とETFEマルチフィラメントフルオロポリマー繊維の複合束についても、また同じやり方で耐摩耗性試験を行った。3回の完全巻きを複合束に適用した。65サイクル/分、張力757g(これは繊維組合せの破断力の1.5%に相当した)下で試験を行った。
【0119】
磨耗試験を500サイクル走らせ、その点から後、磨耗した試験試料についてそれらの破断力を測定するために引張試験を行った。複合束およびUHMWPE繊維は、それぞれ、磨耗後27.87kgおよび10.9kgの破断力を示した。従って、単一ETFEマルチフィラメント繊維の付加は、試験前に−1%分破断力を変え、磨耗試験が完了すると、156%分高い破断力をもたらした。UHMWPE繊維単独、およびUHMWPE繊維とETFEマルチフィラメント繊維の複合束に対する磨耗速度は、それぞれ、79.80g/サイクルおよび45.14g/サイクルであった。
【0120】
要約すれば、上記例は本発明の一部の実施形態を実証するものであり、具体的には:
・ 例1〜3は、単一ePTFE繊維の、3種類の主な高強度繊維のそれぞれの単一繊維との組合せを実証する;
・ 例2は、また、モノフィラメントおよびマルチフィラメントePTFE繊維を比較する;
・ 例4は、グラファイト充填ePTFEモノフィラメント繊維を単一UHMWPE繊維と組み合わせる効果を実証する;
・ 例5は、ロープを作製する上で用いられる3繊維型構造体の性能を実証する;磨耗試験を破損まで行った。
・ 例6は、2繊維型構造体中のモノフィラメントePTFE繊維の量を変える効果を実証する(ePTFE繊維数を変え、それらを3つのUHMWPE繊維と組み合わせた)。
・ 例7は、より低い密度のモノフィラメントePTFE繊維を用いる効果を実証する(例2a〜bおよび例6a〜bと比較するため)。
・ 例8は、低テナシティ、非延伸PTFE繊維をUHMWPE繊維と共に用いる効果を実証する。
・ 例9は代替フルオロポリマーの使用を実証する。
これらの結果を以下の表に要約する。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
【表4】

【0125】
比較例1(トワロン(Twaron)対照、撚り合せロープ)
耐力コアを有する6X9ワイヤーロープ構造を用いてロープを作製した。ロープの断面を図5に示す。ロープの外径は0.75インチであった。このロープの破断力は約48300ポンドである。トワロンタイプ1000、3024デニール、および2000フィラメント(テイジントワロン(Teijin Twaron)、オランダ国、アルネム市6800TC、P.O.Box9600、 Westervoortsedijk 73)からロープを作製した。
【0126】
ロープを作製するために2つの基本的な束群を用いた。図5でタイプAと記す束群は、一緒に引かれた6つのトワロンの束からなった。図5でタイプBと記す束群は、一緒に引かれた9つのトワロンの束からなった。
【0127】
図5で51と記す「ロープコア束群」を、3つのタイプB束群から螺旋状に撚り合わせた。次に、図5で52と記すロープコア束群を、3つのロープコア束群を螺旋状に撚り合わせることにより作製した。
【0128】
図5で53と記す「外側束群」を、3つのタイプAストランドから螺旋状に撚り合わせた。次に、図5で54と記す外側束群を、6つのタイプB束群をコア周りに螺旋状に撚り合わせるか、または閉じることにより作製した。
【0129】
次に、図5で55と記すロープを、外側束群をロープコア束群周りに螺旋状に撚り合わせるか、または閉じることにより作製した。次に、作製したロープを、編組ポリエステルジャケットにより囲んだ。
【0130】
作製したロープ束群およびロープコア外側束群は普通撚りである。束および束コアはラング撚りである。
【0131】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験を行った:曲げ滑車試験、対照ロープの25%破断荷重(12000ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。
【0132】
2つのロープ試験片について、それぞれ2787および3200マシンサイクルの破損に至るまでのサイクルを続けた。二重曲げ領域と呼ばれるロープの部分は、1回のマシンサイクルの間に二度滑車を行き来した。
【0133】
比較例2(PTFEを均質に分散させたトワロン撚り合せロープ)
5.1g/denのテナシティおよび2g/ccの密度を有する市販の500デニールPTFE繊維(デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア&アソーシエーツ(Gore & Associates.Inc.))の付加により、比較例1におけるようにロープ2aを作製した。5.9g/denのテナシティおよび1.9g/ccの密度を有する250デニールPTFE繊維の付加により、比較例1におけるようにロープ2bを作製した。
【0134】
比較例2aにおいて、ロープを作製するために2つの基本的な束群を用いた。図1でタイプAと記す束群は、PTFEが均質に分布するように一緒に引かれた5トワロンヤーンおよび500デニールPTFE繊維からなった。図5でタイプBと記す束群は、PTFEが均質に分布するように一緒に引かれた8つのトワロン束および8つの500デニールPTFE繊維からなった。2つのロープ試験片について破損に至るまでサイクルを続けた。
【0135】
比較例2bにおいて、ロープを作製するために2つの基本束群を用いた。図5でタイプAと記す束群は、PTFEが均質に分布するように一緒に一束に引かれた5つのトワロンヤーンおよび16の250デニールPTFE繊維からなった。図5でタイプBと記す束群は、PTFEが均質に分布するように一緒に引かれた8つのトワロン束および16の250デニールPTFE繊維からなった。2つのロープ試験片について破損に至るまでサイクルを続けた。
【0136】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験した:曲げ滑車試験、対照ロープの25%破断荷重(12000ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。
【0137】
【表5】

【0138】
例10(PTFE外面を有するトワロン撚り合せロープ)
2つの例外を除いて比較例1におけるようにロープを作製した。1つのトワロン束を各基本束群AおよびBから省いた。ロープの最終組立ての前に、PTFE繊維をロープコア束群の外側および外側束群の周りに撚り合わせるかまたは閉じた。このようにするため、6つの500デニール(3a)または12の250デニール(3b)PTFE繊維を、1つの1500デニールKevlar39ヤーンと共にボビン上に巻いた。次に、PTFE繊維および担体Kevlar(デュポン、バージニア州23234、リッチモンド、ジェファーソン・デービス・ハイウエイ5401)を、1インチ撚りピッチで、それぞれ外側の束群またはコア束群の外側周りに螺旋状に撚り合わせた。PTFE繊維を外側およびコア両方の周りに同じ方向に撚り合わせた。
【0139】
500g/9000mのデニールおよび5.1g/denのテナシティ、および2g/ccの密度を有するPTFE繊維の付加により、ロープ10aを作製した。2つのロープ試験片を破損に至るまで試験した。
【0140】
250g/9000mのデニールおよび5.9g/denのテナシティ、および1.9g/ccの密度を有するPTFE繊維の付加により、ロープ10bを作製した。2つのロープ試験片を破損に至るまで試験した。
【0141】
250g/9000mのデニールおよび3.1g/denのテナシティ、および1.6g/ccの密度を有するPTFEの付加により、ロープ10cを作製した。2つのロープ試験片を破損に至るまで試験した。
【0142】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験した:曲げ滑車試験、対照ロープの25%破断荷重(12000ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。
【0143】
【表6】

【0144】
比較例3(ベクトラン(Vectran)対照組紐)
120の1500デニールベクトランT97束(クラリー・アメリカ(Kurary America Inc.)、ニューヨーク州10022、ニューヨーク、東101・52番街・26階)の12の同等の束群から、ロープ(紐)を作製した。ベクトラン束を、クリールから図6に示される237穴の柊板の中心からの最初の120穴に向けることにより、束群を作製した。6つの束群をSに撚り、6つの束群をZ方向に撚った。次に、これらの12の束群を、1.18ピック/インチで2/2標準組紐における12束群製紐機を用いて編んだ。100ポンドの基準張力下で測定した完成ロープの外径は、約0.75インチであった。完成対照ロープの平均破断強度は84,500ポンドであった。
【0145】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験を行った:曲げ滑車試験、対照ロープの18%破断荷重(15,210ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。2つのロープ試験片について、それぞれ1001および960サイクルの破損に至るまでのサイクルを続けた。二重曲げ領域と呼ばれるロープの部分は、1回のマシンサイクルの間に二度滑車を行き来した。
【0146】
比較例4(PTFEを均質に分布させた組紐)
表3に記載されるPTFE繊維の付加により、比較例3におけるようにロープを作製した。この例に対して、わずか102のベクトランヤーンを、54の500デニールまたは108の250デニールのPTFE繊維と共に用いた。PTFE繊維およびベクトラン束を、柊板中穴の所定の環の円周周りで交互に並べた。比較例4aにおいて、500デニールPTFE繊維を、ベクトランヤーン、ベクトランヤーン、PTFE繊維の順序で第3の穴毎に充填するように交互に並べた。2つのロープについて試験を行った。例4bおよび4cにおいて、250デニール繊維を、柊板中の1穴おきに充填するようにベクトランヤーンと交互に並べた。タイプ4bの1つのロープを試験し、4cの2つのロープを試験した。100ポンド基準張力下で測定した完成ロープの外径は、約0.75インチであった。
【0147】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験を行った:曲げ滑車試験、対照ロープの18%破断荷重(15,210ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。
【0148】
【表7】

【0149】
例11(PTFE外面を有する組紐)
表4に記載されるPTFE繊維の付加により、比較例4におけるようにロープを作製した。この例に対して、わずか102のベクトラン束を、54の500デニールまたは108の250デニールのPTFE繊維と共に用いた。柊板の93の内部穴をベクトランヤーンにより充填した。残りの9つのベクトラン束を、次の穴環中に均一に分散させた。この環および次の外側環中の空の穴には、すべてのPTFE繊維が用いられるまで、穴当り1つのPTFE繊維を通した。100ポンド基準張力下で測定した完成ロープの外径は、約0.75インチであった。
【0150】
次に、上述のように作製したロープについて以下の試験および条件を用いて試験を行った:曲げ滑車試験、対照ロープの18%破断荷重(15,210ポンド)、500サイクル/時間、ロープ速度1.1フィート/秒、ストローク長4フィート、およびD:d=20。
【0151】
【表8】

【0152】
上表から見ることができるように、ロープの束群の外面周りへの低摩擦係数繊維の付加は、非常にロープ寿命を増大させる。繊維の配置に起因する寿命の劇的な増加は、全く驚くべきことである。
【0153】
本発明の特定実施形態が本明細書において説明され記載されてきたが、一方で、本発明はこうした説明および記載に限定されるべきではない。変更および修正が、以下のクレームの範囲内で本発明の一部として組み込み、統合することが可能であることは、明白である筈である。特に、主として繰返し応力用途で用いるロープの代表的な実施形態において提示されているが、本発明の複合束は、また、他の形態、例えば、ベルト、ネット、吊縄、ケーブル、織布、不織布、および管状織物での適用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明により作製されるロープの代表的な実施形態の分解立体図である。
【図2】耐摩耗性試験構成装備の説明図である。
【図3】耐摩耗性試験において用いられる、それ自体上に撚られる繊維試料の説明図である。
【図4】本発明の代表的な実施形態により作製されるロープの透視図である。
【図5】本発明の代表的な実施形態により作製されるロープの概略断面図である。
【図6】本発明の代表的な実施形態によりロープを製造するために用いられる柊板(Holly Board)の正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの高強度繊維、および
(b)約40質量%以下の量で存在する少なくとも1つのフルオロポリマー繊維
を含む、繰返し応力用途用の複合束。
【請求項2】
前記フルオロポリマー繊維が約35質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項3】
前記フルオロポリマー繊維が約30質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項4】
前記フルオロポリマー繊維が約25質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項5】
前記フルオロポリマー繊維が約20質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項6】
前記フルオロポリマー繊維が約15質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項7】
前記フルオロポリマー繊維が約10質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項8】
前記フルオロポリマー繊維が約5質量%以下の量で存在する、請求項1に記載の複合束。
【請求項9】
前記フルオロポリマー繊維がモノフィラメントである、請求項1に記載の複合束。
【請求項10】
前記フルオロポリマー繊維が低密度である、請求項1に記載の複合束。
【請求項11】
前記フルオロポリマー繊維がマルチフィラメントである、請求項1に記載の複合束。
【請求項12】
前記フルオロポリマー繊維が充填剤を含む、請求項1に記載の複合束。
【請求項13】
前記充填剤が炭素を含む、請求項12に記載の複合束。
【請求項14】
前記充填剤が、二硫化モリブデン、グラファイト、炭化水素、およびシリコーン系流体からなる群から選択される、請求項12に記載の複合束。
【請求項15】
前記高強度繊維がパラアラミドである、請求項1に記載の複合束。
【請求項16】
前記高強度繊維が液晶ポリマー(LCP)である、請求項1に記載の複合束。
【請求項17】
前記高強度繊維がポリベンゾオキサゾール(PBO)である、請求項1に記載の複合束。
【請求項18】
前記高強度繊維が超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である、請求項1に記載の複合束。
【請求項19】
複数の高強度繊維が存在し、かつそれら高強度繊維がUHMWPEとLCPの組合せを含む、請求項1に記載の複合束。
【請求項20】
前記高強度繊維が高テナシティ金属である、請求項1に記載の複合束。
【請求項21】
前記高強度繊維が高テナシティ鉱物である、請求項1に記載の複合束。
【請求項22】
さらに、磨耗試験後の破断強度比が約1.8を超える、請求項1に記載の複合束。
【請求項23】
前記フルオロポリマー繊維がPTFEである、請求項1に記載の複合束。
【請求項24】
前記フルオロポリマー繊維がePTFEである、請求項1に記載の複合束。
【請求項25】
(a)液晶ポリマーおよび超高分子量ポリエチレンならびにそれらの組合せからなる群から選択される材料の少なくとも1つの繊維、
(b)約40質量%以下の量で存在する少なくとも1つのフルオロポリマー繊維
を含む、複合束。
【請求項26】
前記フルオロポリマー繊維がPTFEであり、約15%以下の量で存在する、請求項25に記載の複合束。
【請求項27】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含むロープ。
【請求項28】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含むベルト。
【請求項29】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含むネット。
【請求項30】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含む吊縄。
【請求項31】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含むケーブル。
【請求項32】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含む織布。
【請求項33】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含む不織布。
【請求項34】
請求項1に記載の少なくとも1つの複合束を含む管状織物。
【請求項35】
繊維束中にフルオロポリマーの少なくとも1つのフィラメントを包含させる工程を含む、繊維束の強度を実質的に保持しながら繰返し応力用途における繊維束の磨耗または摩擦に関連する損耗を減少させる方法。
【請求項36】
(a)束群のそれぞれが外面を有しかつ複数の高強度繊維を含んでなる、複数の束群、
(b)前記束群の少なくとも1つの前記外面の少なくとも一部の周りに配置される、少なくとも1つの低摩擦係数繊維
を含む、ロープ。
【請求項37】
複数の前記束群の前記外面の少なくとも一部の周りに配置される、複数の前記低摩擦係数繊維をさらに含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項38】
前記低摩擦係数繊維がフルオロポリマーを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項39】
前記低摩擦係数繊維が延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項40】
前記低摩擦係数繊維がポリエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項41】
前記低摩擦係数繊維がポリプロピレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項42】
前記低摩擦係数繊維がポリエチレンクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項43】
前記低摩擦係数繊維がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項44】
前記低摩擦係数繊維がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項45】
前記低摩擦係数繊維がポリフッ化ビニルを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項46】
前記低摩擦係数繊維がポリフッ化ビニリデンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項47】
前記低摩擦係数繊維がポリトリフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項48】
前記高強度繊維が超高分子量ポリエチレンを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項49】
前記高強度繊維が液晶ポリマーを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項50】
前記高強度繊維がパラアラミドを含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項51】
さらに耐摩耗性被膜を含む、請求項36に記載のロープ。
【請求項52】
深海ハードウエア配送システムにおいて用いられる、請求項36に記載のロープ。
【請求項53】
ロープに用いるための、外面を有する束群であって、複数の高強度繊維、および前記束群の前記外面の少なくとも一部の周りに配置される少なくとも1つの低摩擦係数繊維を含んでなる、束群。
【請求項54】
ロープに用いるための、外面を有する束であって、複数の高強度繊維、および前記束の前記外面の少なくとも一部の周りに配置される少なくとも1つの低摩擦係数繊維を含んでなる、束。
【請求項55】
前記束群の少なくとも1つの周りに低摩擦係数繊維を配置する工程を含む、複数の束群を有するロープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−530385(P2008−530385A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555162(P2007−555162)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/004178
【国際公開番号】WO2006/086338
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】