説明

フルオロ置換2−アリール−3,5−ジシアノ−4−インダゾリル−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジンおよびその使用

本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害活性を有する新規フルオロ置換2−アリール−3,5−ジシアノ−4−(1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体、その製造方法、ならびにc−Met媒介疾患またはc−Met媒介症状、特に癌および他の増殖性障害の処置のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインチロシンキナーゼ阻害活性を有する新規なフルオロ置換2−アリール−3,5−ジシアノ−4−(1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体、その製造方法、およびc−Met媒介疾患またはc−Met媒介症状、特に癌および他の増殖性障害の処置のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、最も一般的な広範囲に及ぶ疾患の1つである。2002年には世界中の440万人を超える人々が乳癌、大腸癌、卵巣癌、肺癌または前立腺癌と診断され、250万人を超える人々がこれらの破壊的な疾患で死亡した(非特許文献1)。米国だけでも、2005年には、新しいケースが125万件を超え、500,000人を超える人々が死亡すると予想されていた。これらの新しいケースの大半は、大腸癌(約100,000件)、肺癌(約170,000件)、乳癌(約210,000件)および前立腺癌(約230,000件)であると予想された。癌の発生率および罹患率はどちらも今後10年間で約15%増加すると予想され、1.4%の平均増加率となる(非特許文献2;非特許文献3)。
【0003】
癌が生じ得る方法はたくさんあり、それがそれらの治療を困難にする理由の1つである。1つの方法は、正常な細胞性タンパク質の非生理的活性化を引き起こす遺伝子の変異によってこの正常な細胞性タンパク質から生じる腫瘍性タンパク質による細胞の形質転換である。数多くの腫瘍性タンパク質を誘導する1つのファミリーのタンパク質は、チロシンキナーゼ(例えば、srcキナーゼ)であり、特に、受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。過去20年間に、哺乳動物の細胞増殖の調節における受容体チロシンキナーゼ(RTK)媒介シグナル伝達の重要性が、多くの研究方法によって示されてきた。最近、抗腫瘍剤としてチロシンキナーゼの選択的小分子阻害剤を用いた臨床結果が得られた。
【0004】
c−Met受容体もまた受容体チロシンキナーゼである。1980年代初めに、その発癌能が同定され、その頃、N末端で二量体形成ドメインと縮合したMet遺伝子のキナーゼドメインを含有する化学的に誘導されたヒトの骨肉腫細胞株から変異Metが単離された[非特許文献4]。
【0005】
細胞性Metタンパク質は、一本鎖190kd前駆体として合成されたヘテロ二量体膜貫通型タンパク質である[非特許文献5]。この前駆体は、アミノ酸残基307の後で細胞内切断されて、ジスルフィド架橋により連結された50kdのα鎖と145kdのβ鎖を形成する。α鎖が完全に細胞外にあるのに対して、β鎖は細胞膜の内外にまたがっている。β鎖は、α鎖と一緒にリガンド結合を媒介するN末端semaドメインを含む。β鎖の外部ドメインの残部は、システインリッチドメインおよび4個の免疫グロブリンドメインを含み、膜貫通領域および細胞内ドメインが続いている。細胞内ドメインは、膜近傍ドメイン、キナーゼドメイン、および下流シグナル伝達を媒介するC末端ドメインを含んでいる。リガンドが結合すると、受容体の二量体化が誘発され、膜近傍領域(Y1003)、キナーゼの活性化ループ(Y1234およびY1235)およびカルボキシ末端ドメイン(Y1349およびY1356)におけるチロシン自己リン酸化工程のカスケードによってキナーゼドメインが活性化される。リン酸化Y1349およびY1356は、下流c−Metシグナル伝達に必要なアダプタータンパク質を結合するための複数基質ドッキング部位を含む[非特許文献6]。c−Metシグナル伝達に対して最も重要な基質の1つは、独特の長期にわたる細胞内シグナルを生じる異常なホスホチロシン結合部位(mbs(met結合部位)と称される)を介してY1349またはY1356のいずれかと結合する足場アダプタータンパク質Gab1である。もう1つの重要な基質は、アダプタータンパク質Grb2である。細胞状況に応じて、これらのアダプターは、ERK/MAPK、PI3K/Akt、Ras、JNK、STAT、NFκBおよびβ−カテニンを介してシグナル伝達するもののような種々の細胞内シグナル伝達経路の活性化を媒介する。
【0006】
c−Metは、散乱因子としても知られている肝細胞増殖因子(HGF)およびその唯一の既知の生物学的に活性なリガンドであるそのスプライスバリアントによって独自に活性化される[非特許文献7]。HGFは、プラスミノーゲンファミリーのプロテイナーゼとの類似性を明らかにする特徴的な構造を有する。それは、アミノ末端ドメイン、続いて4個のクリングルドメイン、および酵素的に活性ではないセリンプロテアーゼホモロジードメインを含む。c−Metと同様に、HGFは、不活性な一本鎖前駆体(pro−HGF)として合成され、セリンプロテアーゼ(例えば、プラスミノーゲン活性化因子および凝固因子)によって細胞外で切断され、ジスルフィド結合した活性なα鎖およびβ鎖ヘテロ二量体に変換される。HGFは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに高い親和性で結合し、それは、HGFを主に細胞外マトリックスと結合させ続け、その拡散を制限する。結晶構造分析は、HGFが二量体を形成し、c−Metと結合すると受容体の二量体化を誘導することを示す。
【0007】
HGFは、間葉系細胞により発現され、特に上皮細胞で広く発現されるc−MetへのHGFの結合は、上皮、内皮、神経および造血細胞を含む様々な組織で多面的な作用をもたらす。その作用は、一般的に、以下の現象の1つまたは全てを含む:i)有糸分裂誘発の刺激;HGFは、肝細胞に対する分裂促進活性により同定された;ii)浸潤および遊走の刺激;独立した実験アプローチにおいて、HGFは、細胞運動(「散乱」)の誘導に基づき、散乱因子として同定された;および、iii)形態形成(管形成)の刺激。HGFは、コラーゲンマトリックス中でイヌの腎臓細胞から分岐した細管の形成を誘導する。さらに、遺伝子改変マウスおよび細胞培養実験からの証拠は、c−Metが生存受容体として作用し、細胞をアポトーシスから保護することを示す[非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14]。HGFによるこれらの生物学的過程の協調的な実行は、「浸潤性増殖」と呼ばれる特異的な遺伝子的プログラムをもたらす。
【0008】
正常な状態では、c−MetおよびHGFは、マウスの胚発生に、特に胎盤および肝臓の発生に、そして、四肢の体節からの筋芽細胞の方向性のある遊走に必須である。c−MetまたはHGF遺伝子の遺伝子的破壊は、同一の表現型をもたらし、このことは、それらの独特の相互作用を示す。成体におけるc−Met/HGFの生理的役割はあまり理解されていないが、実験的証拠は、それらが創傷治癒、組織再生、造血および組織の恒常性維持に関与することを示唆する。
【0009】
腫瘍性タンパク質TPR−METの同定は、c−Metが腫瘍形成において役割を果たし得ることの最初のヒントとなった。さらなる実質的な証拠は、数々の異なる実験アプローチに由来する。ヒトおよびマウス細胞株におけるc−MetまたはHGFの過剰発現は、ヌードマウスで発現されると、腫瘍形成能および転移性形質を誘導する。遺伝子導入によるc−MetまたはHGFの過剰発現は、マウスで腫瘍形成を誘導する。
【0010】
最も興味深いことに、c−Metのミスセンス変異または受容体を活性化する変異が、孤発性および遺伝性乳頭状腎癌(HPRC)、ならびに、肺、胃、肝臓、頭頸部、卵巣および脳の癌などの他の癌のタイプにおいて同定された。重要なことに、HPRCファミリーにおける特異的c−Met変異は疾患によって分離しており、c−Met活性化とヒトの癌の因果関係を形成している[非特許文献15;非特許文献16]。最強の形質転換活性を有する活性化変異は、活性化ループ(D1228N/HおよびY1230H/D/C)および隣接するP+1ループ(M1250T)に位置する。それより弱いさらなる変異が、触媒ループ近傍およびキナーゼドメインのAローブ内に見出された。さらに、c−Metの膜近傍ドメインのいくつかの変異が肺の腫瘍で観察され、それは、キナーゼを直接活性化しないが、ユビキチン化および後続の分解に対する耐性を与えることによりタンパク質を安定化する[非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19]。興味深いことに、c−Metの体細胞変異は、様々な癌における攻撃性の増加および広範な転移と関連する。生殖系および体細胞変異の頻度は低いが(5%未満)、パラ分泌または自己分泌メカニズムによる変異なしでのc−Metシグナル伝達の調節解除を導く他の主要なメカニズムが観察された。骨肉腫または横紋筋肉腫などの生理的にHGFを産生する間葉系細胞に由来する腫瘍において、そして、外胚葉由来の神経膠芽腫および乳癌において、パラ分泌の活性化が観察された。
【0011】
しかしながら、最も頻繁な症例は、大腸、膵臓、胃、乳房、前立腺、卵巣および肝臓の癌腫で観察されるように、c−Metが過剰発現される癌腫である。過剰発現は、例えば、胃および肺の腫瘍細胞株で観察されるように、遺伝子の増幅により生じ得る。ごく最近、c−Metの過剰発現が、EGF受容体阻害への耐性を獲得した肺腫瘍細胞株で検出された[非特許文献20]。c−Metを過剰発現するいくつかの上皮腫瘍は、HGFも共発現し、その結果、自己分泌のc−Met/HGF刺激ループをもたらし、それにより間質性細胞に由来するHGFの必要性を回避する。
【0012】
一般に、ヒトの癌におけるc−Metの異常な活性化は、特定のメカニズムに関係なく、典型的には予後不良と関連することが見出された[非特許文献21]。
【0013】
まとめると、c−Metを重要な癌の標的として実証する多数のインビトロおよびインビボの研究が行われ、総合的なリストを非特許文献22で見ることができる[非特許文献23]。ヒトの腫瘍における異常なMetシグナル伝達を弱めるためのいくつかの戦略が続き、それには、とりわけ、HGFアンタゴニストおよび小分子阻害物質が含まれる。ARQ−197(Arqule)、フォレチニブ(XL−880、Exelixis/GSK)およびPH−2341066(Pfizer)などの数々の小分子阻害物質が現在臨床開発中である;それらは、最近論評された[非特許文献24]。
【0014】
特許文献1では、アリールまたはヘテロアリール基を4位に有するハロアルキル置換3−シアノ−1,4−ジヒドロピリジン誘導体は、ステロイド受容体およびカルシウムチャネルの活性の両方のモジュレーターとして記載され、したがって、心血管疾患の処置に特に有用である。4−フェニル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体を使用するアルツハイマー病の処置方法は、特許文献2で特許請求された。
【0015】
c−Metキナーゼ阻害活性を有する様々に置換された3−シアノ−4−ヘテロアリール−1,4−ジヒドロピリジン類が、最近、特許文献3で開示された。しかしながら、このc−Met阻害剤の新規構造クラスのさらなる研究中に、候補化合物は、ラットの血液クリアランス測定から最初に予測されたものよりも有意に低いと判明した不満足な経口バイオアベイラビリティーにより頻繁に損なわれることが明らかになった。経口バイオアベイラビリティーは化合物がどのくらい良好に吸収されるかにも依存するので、これらの化合物の薬物動態および物理化学的プロフィールを前提に、低い溶解性および/または不適切な胃腸管の透過性がこのような吸収の限定を導き得るという仮説が立てられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2006/066011号
【特許文献2】国際公開第2006/074419号
【特許文献3】国際公開第2008/071451号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Globocan 2002 Report, http://www-dep.iarc.fr/globocan/downloads.htm
【非特許文献2】American Cancer Society, Cancer Facts and Figures 2005
【非特許文献3】http://www.cancer.org/docroot/STT/content/STT_1x_Cancer_Facts_Figures_2007.asp
【非特許文献4】C.S. Cooper et al., Nature 311: 29-33 (1984)
【非特許文献5】G.A. Rodrigues et al., Mol. Cell Biol. 11: 2962-70 (1991)
【非特許文献6】C. Ponzetto et al., Cell 77: 261-71 (1994)
【非特許文献7】L. Naldini et al., Oncogene 6: 501-4 (1991)
【非特許文献8】N. Tomita et al., Circulation 107: 1411-1417 (2003)
【非特許文献9】S. Ding et al., Blood 101: 4816-4822 (2003)
【非特許文献10】Q. Zeng et al., J. Biol. Chem. 277: 25203-25208 (2002)
【非特許文献11】N. Horiguchi et al., Oncogene 21: 1791-1799 (2002)
【非特許文献12】A. Bardelli et al., Embo J. 15: 6205-6212 (1996)
【非特許文献13】P. Longati et al., Cell Death Differ. 3: 23-28 (1996)
【非特許文献14】E.M. Rosen, Symp. Soc. Exp. Biol. 47: 227-234 (1993)
【非特許文献15】L. Schmidt et al., Nat. Genet. 16: 68-73 (1997)
【非特許文献16】B. Zbar et al., Adv. Cancer Res. 75: 163-201 (1998)
【非特許文献17】M. Kong-Beltran et al., Cancer Res. 66: 283-9 (2006)
【非特許文献18】T.E. Taher et al., J. Immunol. 169: 3793-800 (2002)
【非特許文献19】P. Peschard et al., Mol. Cell 8: 995-1004 (2001)
【非特許文献20】J.A. Engelmann et al., Science 316: 1039-1043 (2007)
【非特許文献21】J.G. Christensen et al., Cancer Lett. 225: 1-26 (2005)
【非特許文献22】http://www.vai.org/met
【非特許文献23】C. Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4: 915-25 (2003)
【非特許文献24】J.J. Cui, Expert Opin. Ther. Patents 17: 1035-45 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明によって解決されるべき技術的課題は、溶解性および/または透過性の増加を示し、続いてこれらの化合物の経口投与後に吸収される割合の増加を導く、強力なc−Metキナーゼ阻害活性を有する代替的化合物を同定することにあると思われる。
【0019】
驚くべきことに、この度、6位のメチル基がジフルオロ置換またはトリフルオロ置換を有する2−アリール−3,5−ジシアノ−4−(1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体が、十分に確立された腸細胞のアッセイで確認されるとおり、有意に改善されたインビトロの透過特性を示すことが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かくして、一の態様では、本発明は、一般式(I):
【化1】

[式中、
Arは、フェニルまたは5員もしくは6員ヘテロフェニルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、(C1−C4)−アルキル、(C1−C4)−アルコキシ、アミノおよびモノ−(C1−C4)−アルキルアミノからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換されていてもよく(ここで、この(C1−C4)−アルキル置換基および(C1−C4)−アルコキシ置換基は、さらに、3個までのフルオロ原子で置換されていてもよい)、
1は、水素またはフルオロであり、
2は、水素またはメチルであり、
3は、水素またはフルオロであり、
4は、水素または(C1−C4)−アルキルである]
で示されるフルオロ置換2−アリール−3,5−ジシアノ−4−(1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の化合物は、それらの塩、水和物および/または溶媒和物の形態であり得る。
【0022】
本発明の目的で、塩は、好ましくは、本発明の化合物の医薬上許容される塩である(例えば、S. M. Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19)。
【0023】
本発明の化合物またはそれらの塩の水和物は、該化合物または塩と水との化学量論組成物であり、例えば、半水和物、一水和物または二水和物などである。
【0024】
本発明の化合物またはそれらの塩の溶媒和物は、該化合物または塩と溶媒との化学量論組成物である。
【0025】
本発明の化合物は、不斉中心の性質によって、または、束縛回転によって、異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)の形態で存在し得る。不斉中心が(R)配置、(S)配置または(R,S)配置であるいずれかの異性体が存在し得る。
【0026】
本発明の化合物に2つ以上の不斉中心が存在する場合、しばしば、例示した構造のいくつかのジアステレオマーおよびエナンチオマーが起こり得ること、そして、純粋なジアステレオマーおよび純粋なエナンチオマーが好ましい実施態様であることが認識されるであろう。
【0027】
本発明の化合物の異性体は全て、分離されているか、純粋であるか、ある程度純粋であるか、または、ジアステレオマー混合物もしくはラセミ混合物であるかにかかわらず、本発明の範囲内に包含される。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該分野で知られている標準的技法により行われ得る。例えば、ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー処理または結晶化により個々の異性体に分離され得、ラセミ体は、キラル相でのクロマトグラフィー処理または分割により、各々のエナンチオマーに分離され得る。
【0028】
さらに、上記の化合物の可能な全ての互変異性体も、本発明に従って包含される。
【0029】
他に明記しない限り、以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって使用される置換基および残基に適用される:
【0030】
アルキルは、一般に、1〜4個に炭素原子を有する直鎖または分枝状の飽和炭化水素残基を表す。非限定的な例として、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。これらは、アルコキシ、アルキルアミノなどの残基にも適用される。
【0031】
アルコキシは、例示的に、かつ、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシおよびtert−ブトキシを表す。
【0032】
モノアルキルアミノは、一般に、その窒素原子に結合した1個のアルキル残基を有するアミノ残基を表す。非限定的な例として、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、iso−プロピルアミノ、n−ブチルアミノおよびtert−ブチルアミノが挙げられる。
【0033】
ヘテロフェニルは、一般に、3〜5個の炭素原子、ならびにN、OおよびSからなる群から独立に選択される2個までのヘテロ原子を含む合計5個または6個の環原子を有する単環式芳香族複素環の基を表し、この環系は、環炭素原子を介して結合される。非限定的な例として、フリル、ピロリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびピラジニルが挙げられる。ピリジルおよびピリミジニルのような6員ヘテロフェニル基、ならびにチエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリルおよびイソチアゾリルのような5員ヘテロフェニル基を優先する。
【0034】
好ましい実施態様では、本発明は、
Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリルまたはイソチアゾリルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシおよびエトキシからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換され得、
1が水素またはフルオロであり、
2が水素であり、
3が水素またはフルオロであり、
4が水素、メチルまたはエチルである、
式(I)で示される化合物に関する。
【0035】
特に好ましい実施態様では、本発明は、
Arが、フェニル、ピリジルまたはオキサゾリルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルおよびメトキシからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換され得、
1が水素またはフルオロであり、
2が水素であり、
3が水素またはフルオロであり、
4がメチルである、
式(I)で示される化合物に関する。
【0036】
もう1つの実施態様では、本発明は、一般式(I)で示される化合物の製造方法であって、式(II)
【化2】

[式中、R3およびR4は、上記の意味を有する」
で示されるインダゾリルアルデヒドを、
[A]酸、酸/塩基併用および/または脱水剤の存在下にて式(III)
【化3】

[式中、Arは、上記の意味を有する]
で示されるケトニトリルと反応させて、式(IV)
【化4】

[式中、Ar、R3およびR4は、上記の意味を有する]
で示される化合物を得、
次いで、後者を式(V)
【化5】

[式中、R1は、上記の意味を有する]
で示されるエナミノニトリルと縮合させて、式(I−A)
【化6】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、上記の意味を有する]
で示される化合物を得ること、
または
[B]任意に塩基および/または脱水剤の存在下にて、式(VI)
【化7】

[式中、R1は、上記の意味を有する]
で示されるケトニトリルと反応させて、式(VII)
【化8】

[式中、R1、R3およびR4は、上記の意味を有する]
で示される化合物を得、
次いで、後者を酸の存在下にて式(VIII)
【化9】

[式中、Arは、上記の意味を有する]
で示されるエナミノニトリルと縮合させて、式(I−A)
【化10】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、上記の意味を有する]
で示される化合物を得、
任意に、次いで、塩基の存在下にて式(IX)
CH3−X (IX)
[式中、Xは、ハロゲン、メシラート、トリフラート、トシラートまたはスルファートのような脱離基を表す]
で示される化合物を用いてジヒドロピリジンN−メチル化を行って、式(I−B)
【化11】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、上記の意味を有する]
で示される化合物を得ること、
ならびに、次いで、任意に、所望により、(i)好ましくはクロマトグラフィー法を使用して、化合物(I−A)および(I−B)をそれらの各々のエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、および/または(ii)化合物(I−A)および(I−B)をそれらの各々の水和物または溶媒和物へ、対応する溶媒で処理して変換してもよいこと
を特徴とする方法に関する。
【0037】
プロセス変形[A](II)+(III)→(IV)、(IV)+(V)→(I−A)および[B](II)+(VI)→(VII)、(VII)+(VIII)→(I−A)は、どちらも、上記のように分けられた2つに工程で、またはワンポット法を用いて、すなわち、中間化合物(IV)および(VII)の各々をあからさまに単離せずに、行われ得る。場合によっては、個々の反応物の反応性に依存して、1本のフラスコで化合物(II)、(III)および(V)[A]または化合物(II)、(VI)および(VIII)[B]の三成分縮合反応を行うこともまた、式(I−A)で示される化合物の製造に適していることがある[一般に,1,4−ジヒドロピリジン類の合成について、例えば、D. M. Stout, A.I. Meyers, Chem. Rev. 1982, 82, 223-243;H. Meier et al., Liebigs Ann. Chem. 1977, 1888;H. Meier et al., 同書, 1977, 1895;H. Meier et al., 同書, 1976, 1762;F. Bossert et al., Angew. Chem. 1981, 93, 755を参照]。
【0038】
工程段階(II)+(III)→(IV)、(IV)+(V)→(I−A)、(II)+(VI)→(VII)および(VII)+(VIII)→(I−A)は、一般に、大気圧下にて+20℃から溶媒の沸点までの範囲の温度で不活性溶媒中にて行われる。
【0039】
この目的に適する溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールもしくはn−ペンタノールのようなアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンもしくはシレンのような炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンもしくはクロロトルエンのようなハロ炭化水素類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンもしくは1,2−ジメトキシエタンのようなエーテル類、またはアセトニトリルもしくは酢酸のような他の溶媒である。これらの溶媒の混合物も同様に使用することができる。反応(II)+(III)→(IV)および(II)+(VI)→(VII)は、好ましくは、ジクロロメタン、トルエン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはn−ペンタノール中、大気圧下にてそれぞれの還流温度で行われ、また、反応(IV)+(V)→(I−A)および(VII)+(VIII)→(I−A)は、好ましくは、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、キシレン、酢酸またはそれらの混合物中、大気圧下にて還流温度で行われる。
【0040】
反応(II)+(III)→(IV)は、好都合には、酸、酸/塩基併用、および/またはモレキュラーシーブのような脱水剤の存在下で生じ得る。好適な酸触媒の例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸であり;好適な塩基は、特に、ピペリジンまたはピリジンである。変換(II)+(VI)→(VII)は、成分の反応性に応じて、さらなる補助試薬なしで行われ得るか、または、ピペリジンのような慣用のアミン塩基、および/またはモレキュラーシーブのような脱水剤によって促進させることができる。反応(IV)+(V)→(I−A)および(VII)+(VIII)→(I−A)は、通常、酸の存在下にて行われ得;好ましくは、酢酸が、酸触媒および溶媒または共溶媒のいずれにも使用される。
【0041】
メチル化反応(I−A)+(IX)→(I−B)のための不活性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンもしくは1,2−ジメトキシエタンのようなエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンもしくはシクロヘキサンのような炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンもしくはクロロトルエンのようなハロ炭化水素類、またはアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、N−メチルピロリジノン(NMP)もしくはピリジンのような他の溶媒である。これらの溶媒の混合物の使用もまた適している。好ましくは、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物が使用される。
【0042】
工程段階(I−A)+(IX)→(I−B)に適する塩基は、特に、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸セシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、水素化ナトリウムもしくは水素化カリウムのようなアルカリ金属の水素化物、ナトリウムtert−ブトキシドもしくはカリウムtert−ブトキシドのような立体障害性のアルカリアルコキシド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドもしくはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドもしくはリチウムジイソプロピルアミドのような立体障害性のアルカリアミド類、またはトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンもしくはピリジンのような有機アミン類である。好ましくは、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたは水素化ナトリウムが使用される。
【0043】
反応(I−A)+(IX)→(I−B)は、一般に、−20℃〜+100℃、好ましくは0℃〜+50℃の温度範囲で大気圧下にて行われる。
【0044】
式(II)、(III)、(V)、(VI)、(VIII)および(IX)で示される化合物は、商業的に入手可能なものであるか、文献公知のものであるか、または、文献に記載されている標準的な方法の適応によって入手可能な出発物質から調製され得る(さらなる参考のため、下記実験セクションを参照)。
【0045】
本発明の化合物の調製は、以下の合成スキームによって例示され得る。より詳しい手順は、実施例を記載する実験セクションで後述する。
【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
使用方法
本発明の化合物は、受容体チロシンキナーゼ類、特にc−Met受容体チロシンキナーゼの活性または発現の強力な阻害剤である。さらに、本発明の化合物は、腸上皮細胞における高い透過性を特徴とし、経口投与後のこれらの化合物の吸収を促進する。したがって、式(I)で示される化合物は、治療剤として有効であると期待される。
【0050】
したがって、別の実施態様において、本発明は、上記定義の式(I)で示される化合物の有効量を患者に投与することを含む、c−Metキナーゼ活性に関連するかまたはそれにより媒介される障害の処置を必要としている患者における該障害の処置方法を提供する。ある種の実施態様では、c−Metキナーゼ活性に関連する障害は、細胞増殖性障害、特に癌である。
【0051】
本明細書全体で述べられる用語「処置する」または「処置」は、慣用的に使用されており、例えば、疾患または障害、例えば癌腫の症状と戦うか、それを緩和、縮小、軽減、改善することを目的とする対象体の管理またはケアである。
【0052】
用語「対象体」または「患者」は、細胞増殖性障害に罹患し得るかまたは本発明の化合物の投与により利益を得ることができる生物、例えばヒトおよびヒト以外の動物を包含する。好ましいヒトとしては、本明細書に記載の細胞増殖性障害または関連状態に罹患しているかまたは罹患し易いヒトの患者が挙げられる。用語「ヒト以外の動物」としては、脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、乳牛、イヌ、ネコおよび齧歯類、例えばマウス、および、非哺乳動物、例えばニワトリ、両生類、爬虫類などが挙げられる。
【0053】
用語「c−Metに関連するかまたはそれにより媒介される障害」は、c−Met活性と関連または関係する疾患、例えば、c−Metの機能亢進、および、これらの疾患に伴う症状を含む。「c−Metに関連するかまたはそれにより媒介される障害」の例としては、異常に多量のc−Metまたはc−Metの変異によるc−Metの過剰刺激に起因する障害、または、異常に多量のc−Metまたはc−Metの変異による異常に多量のc−Met活性に起因する障害が含まれる。
【0054】
用語「c−Metの機能亢進」は、通常はc−Metを発現しない細胞におけるc−Met発現、または、通常は活性なc−Metを持たない細胞によるc−Met活性、または、望まれない細胞増殖を導くc−Met発現増加、または、c−Metの構成的活性化を導く変異を表す。
【0055】
用語「細胞増殖性障害」は、細胞の望ましくない増殖または制御されない増殖を伴う障害を含む。本発明の化合物は、細胞増殖および/または細胞分裂の防止、阻害、遮断、縮小、低減、制御等、および/または、アポトーシスの誘発に利用できる。この方法は、本発明の化合物またはその医薬的に許容し得る塩、異性体、多形、代謝物、水和物もしくは溶媒和物の、該障害の処置または予防に有効な量を、ヒトを含む哺乳動物を含む、それを必要としている対象に投与することを含む。
【0056】
本発明に関する細胞増殖性または過増殖性障害としては、例えば乾癬、ケロイドおよび皮膚を侵す他の過形成、骨格障害、血管新生性または血管増殖性障害、肺高血圧、線維性障害、メサンギウム細胞増殖性障害、結腸ポリープ、多嚢胞性腎疾患、良性前立腺肥大症(BPH)および固形腫瘍、例えば乳房、呼吸器、脳、生殖器官、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺および副甲状腺の癌、ならびにそれらの遠隔転移が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの障害としては、リンパ腫、肉腫および白血病も挙げられる。
【0057】
乳癌の例としては、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌および非浸潤性小葉癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
呼吸器の癌の例としては、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
脳の癌の例としては、脳幹および視床下部(hypophtalmic)のグリオーマ、小脳および大脳の星状細胞腫、膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、ならびに、神経外胚葉および松果体の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
雄性生殖器の腫瘍としては、前立腺癌および精巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。雌性生殖器の腫瘍としては、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌および外陰癌、ならびに、子宮肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
消化器の腫瘍としては、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵癌、直腸癌、小腸癌および唾液腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
泌尿器の腫瘍としては、膀胱癌、陰茎癌、腎癌、腎盂癌、尿管癌、尿道癌、ならびに、遺伝性および孤発性乳頭状腎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
眼癌としては、眼球内黒色腫および網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
肝臓癌の例としては、肝細胞癌(線維層板型変異体を含むかまたは含まない肝細胞癌腫)、胆管細胞癌(肝内胆管癌)および混合型肝細胞性胆管癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
皮膚癌としては、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌および非黒色腫皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
頭頸部の癌としては、喉頭癌、下咽頭癌、上咽頭癌、中咽頭癌、口唇癌および口腔癌、ならびに扁平上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
リンパ腫としては、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病および中枢神経系リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
肉腫としては、軟部組織肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
白血病としては、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病およびヘアリーセル白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の化合物および方法で処置され得る線維性増殖障害、すなわち、細胞外マトリックスの異常形成としては、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肝硬変、ならびに糸球体腎炎、糖尿病性ネフロパシー、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症症候群、移植拒絶および糸球体症などの腎疾患を含むメサンギウム細胞増殖性障害が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物の投与により処置され得るヒトまたは他の哺乳動物における他の症状としては、腫瘍増大、網膜症(糖尿病性網膜症、虚血性網膜静脈閉塞、未熟児網膜症および加齢性黄斑変性を含む)、関節リウマチ、乾癬、および、表皮下水疱形成を伴う水疱性障害(類天疱瘡、多形性紅斑および疱疹状皮膚炎を含む)が挙げられる。
【0072】
本発明の化合物はまた、気道および肺の疾患、消化管の疾患、ならびに膀胱および胆管の疾患の予防および処置に使用され得る。
【0073】
上記の障害は、ヒトでは十分に特徴付けられているが、哺乳動物を含む他の動物においても類似の病因で存在し、本発明の医薬組成物を投与することにより処置され得る。
【0074】
式(I)で示される化合物は、単一の薬剤として、または、1種以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与され得、ここで、その組合せは許容されない有害作用を引き起こさない。この併用療法には、式(I)で示される化合物および1種以上のさらなる治療剤を含む単一の医薬投与製剤の投与、ならびに、式(I)で示される化合物およびさらなる治療剤の各々の個別医薬投与製剤での投与が含まれる。例えば、式(I)で示される化合物および治療剤は、錠剤またはカプセル剤などの単一の経口投与組成物で一体となって患者に投与され得るか、または、各剤は個別の投与製剤で投与され得る。
【0075】
個別投与製剤を使用する場合、式(I)で示される化合物および1種以上のさらなる治療剤は、本質的に同じ時に(例えば、同時に)、または、少しずつ時間をずらして(例えば、連続的に)投与され得る。
【0076】
特に、本発明の化合物は、他の抗腫瘍剤、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物由来の抗腫瘍剤、ホルモン療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン誘導体、キナーゼ阻害剤、標的薬物、抗体、インターフェロンおよび/または生物応答修飾物、抗血管新生化合物、および他の抗腫瘍剤との固定または分離した組み合わせとして使用され得る。これに関して、本発明の化合物と組み合わせて使用し得る第2の物質の例の非限定的なリストを以下に示す:
【0077】
・アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イフォスファミド、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロミド、アルトレタミン、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、フォテムスチン、グルフォスファミド、マフォスファミド、ベンダムスチンおよびミトラクトールが挙げられるが、これらに限定されない;白金が配位したアルキル化化合物としては、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンおよびサトラプラチンが挙げられるが、これらに限定されない;
【0078】
・代謝拮抗物質としては、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、5−フルオロウラシル単独またはロイコボリンとの組み合わせ、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド、オクフォスファイト、ペメトレキセド(premetrexed)二ナトリウム、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない;
【0079】
・ホルモン療法剤としては、エキセメスタン、ルプロン(Lupron)、アナストロゾール、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、11−ベータヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1阻害剤、17−アルファヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ阻害剤、例えば酢酸アビラテロン、5−アルファレダクターゼ阻害剤、例えばフィナステリドおよびエプリステリド、抗エストロゲン類、例えばクエン酸タモキシフェンおよびフルベストラント、トレルスター(Trelstar)、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、抗アンドロゲン類、例えばビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、カソデックス(Casodex)、および抗プロゲステロン類ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない;
【0080】
・植物由来の抗腫瘍物質としては、例えば有糸分裂阻害剤から選択されるもの、例えばエポチロン類、例えばサゴピロン、イクサベピロンおよびエポチロンB、ビンブラスチン、ビンフルニン、ドセタキセルおよびパクリタキセルが挙げられる;
【0081】
・細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤としては、アクラルビシン、ドキソルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ジフロモテカン、イリノテカン、トポテカン、エドテカリン、エピムビシン、エトポシド、エキサテカン、ギマテカン、ルルトテカン、ミトキサントロン、ピラムビシン、ピキサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、タフルポシドおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない;
【0082】
・免疫学的作用物質としては、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ−1aおよびインターフェロンガンマ−n1、および、他の免疫促進剤、例えばL19−IL2および他のIL2誘導体、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、セラシス(TheraCys)、ウベニメクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブ、オゾガミシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、黒色腫ワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン、チマラシン、トシツモマブ、ビムリジン(Vimlizin)、エプラツズマブ、ミツモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブおよびプロベンジ(Provenge)が挙げられる;
【0083】
・生物応答修飾剤は、生物の防御機構または生物学的応答、例えば、組織細胞の生存、増殖または分化を改変して、該細胞が抗腫瘍活性を有するように導く物質である;そのような物質としては、例えばクレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニル、プロムン(ProMune)およびウベニメクスが挙げられる;
【0084】
・抗血管新生化合物としては、アシトレチン、アフリベルセプト、アンギオスタチン、アプリジン、アセンタール、アキシチニブ、ベバシズマブ、ブリバニブ・アラニナト、シレングチド、コンブレタスタチン、エンドスタチン、フェンレチニド、ハロフギノン、パゾパニブ、ラニビズマブ、レビマスタット、レセンチン、レゴラフェニブ(regorafenib)、レモバブ、レブリミド、ソラフェニブ、スクアラミン、スニチニブ、テラチニブ、サリドマイド、ウクライン、バタラニブおよびビタキシンが挙げられるが、これらに限定されない;
【0085】
・抗体としては、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ、イピリムマブ、ルミリキシマブ、カツマキソマブ、アタシセプト、オレゴボマブおよびアレムツズマブが挙げられるが、これらに限定されない;
【0086】
・VEGF阻害剤、例えば、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、レセンチン、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、ブリバニブ・アラニネート、バタラニブ、パゾパニブおよびラニビズマブ;
【0087】
・EGFR(HER1)阻害剤、例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクチビクス、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびザクチマ(Zactima);
【0088】
・HER2阻害剤、例えば、ラパチニブ、トラスツズマブ(tratuzumab)およびペルツズマブ;
【0089】
・mTOR阻害剤、例えば、テムシロリムス、シロリムス/ラパマイシンおよびエベロリムス;
【0090】
・cMet阻害剤;
【0091】
・PI3KおよびAKT阻害剤;
【0092】
・CDK阻害剤、例えばレスコビチンおよびフラボピリドール;
【0093】
・紡錘体形成チェックポイント阻害剤および標的有糸分裂阻害剤、例えば、PLK阻害剤、オーロラ阻害剤(例えば、ヘスペラジン(Hesperadin))、チェックポイントキナーゼ阻害剤およびKSP阻害剤;
【0094】
・HDAC阻害剤、例えば、パノビノスタット、ボリノスタット、MS275、ベリノスタットおよびLBH589;
【0095】
・HSP90およびHSP70阻害剤;
【0096】
・プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブおよびカーフィルゾミブ;
【0097】
・MEK阻害剤およびRaf阻害剤を含むセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ;
【0098】
・ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばチピファルニブ;
【0099】
・チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ダサチニブ、ニロチニブ(nilotibib)、レゴラフェニブ、ボスチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、セジラニブ、アキシチニブ、アフリベルセプト、テラチニブ、メシル酸イマチニブ、ブリバニブ・アラニネート、パゾパニブ、ラニビズマブ、バタラニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベクティビックス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、トラスツズマブ(tratuzumab)、ペルツズマブおよびc−Kit阻害剤;
【0100】
・ビタミンD受容体アゴニスト;
【0101】
・Bcl−2タンパク質阻害剤、例えば、オバトクラクス、オブリメルセンナトリウムおよびゴシポール;
【0102】
・表面抗原分類20受容体アンタゴニスト、例えばリツキシマブ;
【0103】
・リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばゲムシタビン;
【0104】
・腫瘍壊死アポトーシス誘導リガンド受容体1アゴニスト、例えばマパツムマブ;
【0105】
・5−ヒドロキシトリプタミン受容体拮抗物質、例えば、rEV598、キサリプロド、塩酸パロノセトロン、グラニセトロン、ZindolおよびAB−1001;
【0106】
・アルファ5−ベータ1インテグリン阻害剤を含むインテグリン阻害剤、例えば、E7820、JSM6425、ボロシキシマブおよびエンドスタチン;
【0107】
・アンドロゲン受容体拮抗物質、例えば、ナンドロロンデカノエート、フルオキシメステロン、アンドロイド(Android)、プロスト−エイド(Prost−aid)、アンドロムスチン、ビカルタミド、フルタミド、アポ−シプロテロン、アポ−フルタミド、酢酸クロルマジノン、アンドロクール(Androcur)、タビ(Tabi)、酢酸シプロテロンおよびニルタミド;
【0108】
・アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、レトロゾール、テストラクトン、エキセメスタン、アミノグルテチミドおよびホルメスタン;
【0109】
・マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;
【0110】
・他の抗癌剤、例えば、アリトレチノイン、アンプリゲン、アトラセンタン・ベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エキシスリンド、フォテムスチン、イバンドロン酸、ミルテフォシン、ミトキサントロン、I−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、タザロテン、ベルケード、硝酸ガリウム、カンフォスファミド、ダリナパルシンおよびトレチノイン。
【0111】
好ましい実施態様では、本発明の化合物は、化学療法(すなわち、細胞傷害剤)、抗ホルモン剤および/または標的化療法、例えば他のキナーゼ阻害剤(例えば、EGFR阻害剤)、mTOR阻害剤および血管新生阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0112】
本発明の化合物はまた、放射線療法および/または外科的処置と併せて癌の処置において用いられ得る。
【0113】
さらに、式(I)で示される化合物は、それ自体または組成物として、研究および診断で、または、分析の標準試料としてなど利用され得、これは当分野で周知である。
【0114】
医薬組成物および処置方法
別の態様では、本発明は、上記定義の式(I)で示される化合物を、医薬的に許容し得る担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0115】
さらに別の態様において、本発明は、医薬組成物の製造方法を提供する。その方法は、少なくとも1種の上記定義の式(I)で示される化合物を少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体と組み合わせ、得られる組合せを適する投与形にすることを含む工程を含む。
【0116】
式(I)で示される活性成分は、全身的および/または局所的に作用し得る。この目的で、それは、適する方法で、例えば経口で、非経口で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、経皮で、結膜に、耳に、または、インプラントもしくはステントとして、適用され得る。
【0117】
これらの投与経路のために、式(I)で示される活性成分を適する投与形で投与し得る。
【0118】
有用な経口適用形としては、活性成分を迅速に、および/または、改変された形態で放出する投与形、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば腸溶性被覆によるもの)、カプセル剤、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、液剤およびエアゾール剤が挙げられる。
【0119】
非経口投与は、吸収段階を回避して(静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内)、または、吸収を含めて(筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)実施され得る。有用な非経口投与形としては、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および滅菌散剤の形態の注射および点滴製剤が挙げられる。
【0120】
他の投与経路に適する形態としては、例えば、吸入医薬形態(粉末吸入器、噴霧器を含む)、点鼻薬、鼻液剤または鼻スプレー剤、舌、舌下または頬側に投与される錠剤またはカプセル剤、坐剤、耳および眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション剤、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム剤、ミルク、ペースト剤、散布剤、インプラントまたはステントが挙げられる。
【0121】
好ましい実施態様では、上記定義の式(I)で示される化合物を含む医薬組成物は、経口投与に適する形態で提供される。別の好ましい実施態様では、上記の式(I)で示される化合物を含む医薬組成物は、静脈内投与に適する形態で提供される。
【0122】
式(I)で示される活性成分は、自体公知の方法で、列挙した投与形に変換できる。これは、不活性で非毒性の医薬的に適する補助剤を使用して行われる。これらの補助剤としては、とりわけ、担体(例えば微結晶セルロース)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、分散剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然生体高分子(例えばアルブミン)、安定剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸)、着色剤(例えば無機色素、例えば酸化鉄)または風味および/または臭気の矯正剤が挙げられる。
【0123】
別の実施態様では、本発明は、上記定義の式(I)で示される化合物の有効量を患者に投与することを含む、細胞増殖性障害の処置を必要としている患者におけるその処置方法を提供する。ある実施態様では、細胞増殖性障害は癌である。
【0124】
さらに別の態様では、本発明は、細胞増殖性障害の処置用または予防用の医薬組成物を製造するための、上記定義の式(I)で示される化合物の使用を提供する。ある実施態様では、細胞増殖性障害は癌である。
【0125】
本発明の化合物を医薬としてヒトおよび動物に投与するとき、それらは、それ自体で、または、医薬的に許容し得る担体と組み合わせて、例えば0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の有効成分を含有する医薬組成物として、与えられ得る。
【0126】
選択された投与経路とは関係なく、適する水和形態で使用され得る本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に知られている慣用方法により、医薬的に許容し得る投与形に製剤化される。
【0127】
本発明の医薬組成物における有効成分の実際の投薬レベルおよび投与時間経過を変えて、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な、有効成分の量を得ることが可能である。例示的な用量範囲は、1日当たり0.01〜100mg/kgまたは1日当たり0.1〜150mg/kgである。
【0128】
ある実施態様では、本発明の化合物は、慣用の癌化学療法剤との併用療法で使用できる。白血病および他の腫瘍についての慣用の治療計画は、放射線、薬物または両者の組み合わせを含む。
【0129】
本発明の化合物の治療的に有効な抗増殖量または予防的に有効な抗増殖量の決定は、当業者としての医師または獣医師(「担当医」)により、既知技術の使用および類似環境下で得られる結果の観察により、容易に行われ得る。投薬量は、担当医の判断における患者の要求、処置されている症状の重症度および用いられている特定の化合物に応じて異なり得る。治療的に有効な抗増殖量または用量、および、予防的に有効な抗増殖量または用量の決定において、数々の要因が担当医により考慮され、この要因としては、関与する特定の細胞増殖性障害;特定の物質の薬物動態的特徴およびその投与様式および経路;所望の処置の時間経過;哺乳動物の種;その大きさ、年齢および全般的健康状態;関与する特定の疾患;関与の程度または疾患の重症度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与方式;投与される製剤のバイオアベイラビリティーの特徴;選択された投薬計画;同時処置の種類(すなわち、他の同時投与される治療剤と本発明の化合物との相互作用);および他の関連する状況が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0130】
処置は、化合物の最適用量より少ない、少量から開始され得る。その後、環境下で最適な効果に達するまで、投薬量を少量ずつ漸増させ得る。便宜上、所望により総一日量を分割し、1日の間に分けて投与し得る。本発明の化合物の治療的に有効な抗増殖量および予防的に有効な抗増殖量は、1日に体重1kgにつき約0.01mg(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日の範囲で変動すると予測され得る。
【0131】
本発明の場合、本発明の化合物の好ましい用量は、患者が耐容し得て深刻な副作用を起こさない最大量である。例示として、本発明の化合物は、体重1kgにつき約0.01mg〜約100mg、約0.01mg〜約10mg、または約0.1mg〜約10mgの用量で投与される。上記で列挙した値の間の範囲も本発明の一部であると企図する。
【0132】
他に明記しない限り、下記の試験および実施例における百分率は、重量に基づく;部は重量部である。液体/液体溶液について報告する溶媒比、希釈率および濃度は、各々体積に基づく。
【実施例】
【0133】
A.実施例
略語および頭字語:
Ac アセチル
aq. 水性(溶液)
br.s 幅広い一重線(NMR)
cat. 触媒の
conc. 濃
d 二重線(NMR)
DCI 直接化学イオン化法(MS)
dd 二重の二重線(NMR)
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMSO−d6 ジメチルスルホキシド−d6
ee エナンチオマー過剰率
EI 電子衝撃イオン化法(MS)
equiv. 当量
ESI エレクトロスプレーイオン化法(MS)
Et エチル
GC−MS ガスクロマトグラフィーと組み合わせた質量分析
h 時間
1H−NMR プロトン核磁気共鳴分光法
HOAc 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィーと組み合わせた質量分析
m 多重線(NMR)
Me メチル
min 分
MS 質量分析
m/z 質量電荷比
NMP N−メチルピロリジン−2−オン
of th. 理論値の(化学的収率)
q 四重線(NMR)
quin 五重線(NMR)
f TLC保持係数
RP 逆相(HPLC)
rt 室温
t 保持時間(HPLC)
s 一重線(NMR)
TBAF テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド
tBu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
t 三重線(NMR)
v/v 体積対体積比
w/v 重量対体積比
w/w 重量対重量比
【0134】
LC−MSおよびGC−MSの方法:
方法1(LC−MS):
装置:HPLC Waters Alliance 2795を備えたMicromass ZQ;カラム:Phenomenex Synergi 2.5μ MAX−RP 100A Mercury、20mm×4mm;溶離剤A:水1L+50%ギ酸0.5mL、溶離剤B:アセトニトリル1L+50%ギ酸0.5mL;勾配:0.0分90%A→0.1分90%A→3.0分5%A→4.0分5%A→4.01分90%A;流速:2mL/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0135】
方法2(LC−MS):
装置:HPLC Waters UPLC Acquityを備えたMicromass Quattro Premier;カラム:Thermo Hypersil GOLD 1.9μ、50mm×1mm;溶離剤A:水1L+50%ギ酸0.5mL、溶離剤B:アセトニトリル1L+50%ギ酸0.5mL;勾配:0.0分90%A→0.1分90%A→1.5分10%A→2.2分10%A;オーブン:50℃;流速:0.33mL/分;UV検出:210nm。
【0136】
方法3(LC−MS):
装置:HPLC Agilent 1100 Seriesを備えたMicromass Quattro Micro;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ、20m×4mm;溶離剤A:水1L+50%ギ酸0.5mL、溶離剤B:アセトニトリル1L+50%ギ酸0.5mL;勾配:0.0分100%A→3.0分10%A→4.0分10%A→4.01分100%A(流速2.5mL/分)→5.00分100%A;オーブン:50℃;流速:2mL/分;UV検出:210nm。
【0137】
方法4(LC−MS):
装置:Waters Acquity SQD UPLC System;カラム:Waters Acquity UPLC HSS T3 1.8μ、50mm×1mm;溶離剤A:水1L+99%ギ酸0.25mL、溶離剤B:アセトニトリル1L+0.25mL99%ギ酸;勾配:0.0分90%A→1.2分5%A→2.0分5%A;オーブン:50℃;流速:0.40mL/分;UV検出:210−400nm。
【0138】
方法5(GC−MS):
装置:Micromass GCT、GC 6890;カラム:Restek RTX−35、15m×200μm×0.33μm;ヘリウムの一定流速:0.88mL/分;オーブン:70℃;入口:250℃;勾配:70℃、30℃/分→310℃(3分間維持)。
【0139】
方法6(LC−MS):
装置:HPLC Agilent 1100 Seriesを備えたWaters ZQ;UV DAD;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ、20mm×4mm;溶離剤A:水1L+50%ギ酸0.5mL、溶離剤B:アセトニトリル1L+50%ギ酸0.5mL;勾配:0.0分100%A→3.0分10%A→4.0分10%A→4.1分100%A(流速2.5mL/分);オーブン:55℃;流速:2mL/分;UV検出:210nm。
【0140】
出発物質および中間体:
実施例1A
3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド
【化15】

テトラヒドロフラン(600ml)をアルゴン雰囲気下にて−78℃に冷却した。この温度で、tert−ブチルリチウムのn−ペンタン(200ml)中1.7M溶液を滴下した。−78℃で15分後、5−ブロモ−3−メチル−1H−インダゾール22.4g(106.1mmol)のTHF(300ml)中溶液を、該溶液の温度が−70℃を超えないような速度で滴下した。混合物を30分間撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド(24.5ml)を滴下した。20分後、冷却浴を外し、1時間撹拌し続けた後、水(250ml)を注意深く添加した。この混合物を酢酸エチル(500ml)で数回抽出した。合わせた有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、粗3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド18.5gを得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
1H−NMR(DMSO−d6):δ=13.13(br.s,1H)、10.01(s,1H)、8.40(s,1H)、7.81(d,1H)、7.58(d,1H)、2.56(s,3H)ppm。
【0141】
実施例2A
(2E)−2−[(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)メチリデン]−3−オキソブタンニトリル
【化16】

3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例1A)5.0g(31.2mmol)、(1Z)−1−シアノプロパ−1−エン−2−オレイン酸ナトリウム3.61g(34.3mmol)、酢酸2.23ml(39mmol)およびピペリジン0.31ml(3.12mmol)の4Åモレキュラーシーブを含有する乾燥ジクロロメタン(250ml)中混合物を還流下にて12時間撹拌した。冷却後、沈殿物が形成され、これを濾過により回収し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液および水で洗浄した。固体をエタノールに溶解し、モレキュラーシーブを濾去した。濾液を減圧濃縮し、残留物を酢酸エチルおよび炭酸ナトリウム飽和水溶液で処理した。有機層を水で洗浄し、乾燥させ、減圧濃縮して、薄黄色の固体として標記化合物(3.5g、理論値の50%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
LC−MS(方法1):Rt=1.32分;MS(ESIpos):m/z=226(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=13.18(br.s,1H)、8.52(s,1H)、8.49(s,1H)、8.19(d,1H)、7.69(d,1H)、2.55(br.m,6H)ppm。
【0142】
実施例3A
6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド
【化17】

5−ブロモ−6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール[製造方法はWO2005/085227−A1の実施例104c)に記載;また、市販されている、CAS Reg.−No.864773−66−0]30g(131mmol)のTHF(525ml)中溶液を−45℃に冷却した。塩化メチルマグネシウムのTHF中溶液(3M;50.2ml、151mmol)を−45℃で滴下し、得られた溶液をこの温度で40分間撹拌した。投入ポンプ(dosing pump)使用して、2−ブチルリチウム溶液(シクロヘキサン中1.4M)253ml(354mmol)を、温度が−40℃を超えないようにして添加した。得られた混合物を−40℃で30分間撹拌し、次いで、温度を−40℃に維持しながらN,N−ジメチルホルムアミド30.2ml(393mmol)を滴下した。得られた混合物を−40℃で30分間撹拌し、次いで、室温まで加温し、5℃に冷却した(氷浴)2N塩酸2.8L中にゆっくりと注いだ。この混合物を酢酸エチルで数回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。残留物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/酢酸エチル(6:4 v/v)により精製して、薄黄色固体として標記化合物19.6g(理論値の78%)を得た。
MS(ESIpos):m/z=179(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=13.14(s,1H)、10.17(s,1H)、8.33(d,1H)、7.37(d,1H)、2.54(s,3H)ppm。
【0143】
実施例4A
(2E)−2−[(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)メチリデン]−3−オキソブタンニトリル
【化18】

実施例2Aに記載の方法に従って、2.74g(15.5mmol)6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例3A)および(1Z)−1−シアノプロパ−1−エン−2−オレイン酸ナトリウム2.6g(24.8mmol)を使用して標記化合物を製造して、粗生成物1.6g(理論値の42%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
LC−MS(方法4):Rt=0.83分;MS(ESIpos):m/z=244(M+H)+
【0144】
実施例5A
(2E)−3−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−2−[(4−フルオロフェニル)カルボニル]プロパ−2−エンニトリル
【化19】

実施例2Aに記載の方法に従って、6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例3A)500mg(2.81mmol)および3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル504mg(3.09mmol)を使用して標記化合物を製造して、粗生成物(純度81%)768mg(理論値の69%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
LC−MS(方法6):Rt=2.24分;MS(ESIpos):m/z=324(M+H)+
【0145】
実施例6A
(2E)−2−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−3−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)プロパ−2−エンニトリル
【化20】

実施例2Aに記載の方法に従って、6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例3A)500mg(2.81mmol)および3−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル566mg(3.09mmol)を使用して標記化合物を製造して、粗生成物(純度76%)830mg(理論値の66%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
LC−MS(方法6):Rt=2.39分;MS(ESIpos):m/z=340(M+H)+
【0146】
実施例7A
3−アミノ−3−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル]プロパ−2−エンニトリル
【化21】

ジイソプロピルアミン2.08ml(13.07mmol)の乾燥THF(12ml)中溶液を不活性ガス下にて−70℃に冷却し、n−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中1.6M)9.26ml(14.8mmol)を滴下した。次いで、アセトニトリル688μl(13.07mmol)の乾燥THF(10ml)中溶液を10分間にわたってゆっくりと添加した。得られた溶液を−70℃でさらに30分間撹拌した後、6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボニトリル1.50g(8.72mmol)の乾燥THF(10ml)中溶液を添加した。混合物を室温に加温し12時間撹拌した後、水(200ml)wpゆっくりと添加した。混合物をジクロロメタン(100ml)で数回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、粗標記化合物(純度89%)1.2g(理論値の57%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
LC−MS(方法4):Rt=0.88分;MS(EIpos):m/z=214(M+H)+
【0147】
実施例8A
4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタンニトリル
【化22】

フレーム乾燥フラスコに、不活性ガス雰囲気下にて、乾燥THF(100ml)中にてn−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中1.6M)20ml(32mmol)を充填し、−78℃に冷却した。次いで、アセトニトリル1.47ml(28mmol)をゆっくりと添加し、得られた混合物を−74℃で1時間撹拌した。次いで、温度を−69℃以下に維持しながらトリフルオロ酢酸エチル2.28ml(20mmol)を5分間にわたってゆっくりと添加した。反応混合物を−45℃で2時間撹拌し、次いで、温度を−20℃以下に維持しながら塩酸(2M、9.6ml)の添加によってクエンチした。得られた明澄溶液を室温に加温し、次いで、減圧濃縮した。残留した水性スラリーをジエチルエーテル(100mlずつ)で数回抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、粗標記化合物(純度54%)4.25g(理論値の84%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
GC−MS(方法5):Rt=1.05分;MS(EIpos):m/z=137(M)+
【0148】
実施例9A
4,4−ジフルオロ−3−オキソブタンニトリル
【化23】

フレーム乾燥フラスコに、不活性ガス雰囲気下にて、乾燥THF(19ml)中にて、n−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中1.6M)3.8ml(6.1mmol)を充填し、−78℃に冷却した。次いで、アセトニトリル0.28ml(5.3mmol)をゆっくりと添加し、得られた混合物を−70℃で1時間撹拌した。次いで、温度を−69℃以下に維持しながらジフルオロ酢酸エチル0.4ml(3.8mmol)を5分間にわたってゆっくりと添加した。反応混合物を−45℃で2時間撹拌し、次いで、温度を−20℃以下に維持しながら塩酸(2M、4.8ml)の添加によってクエンチした。得られた明澄溶液を室温に加温し、次いで、減圧濃縮した。得られた粗生成物(純度46%、1.0g、理論値の99%)を−21℃で貯蔵し、さらなる精製を行わずに次工程で使用した。
GC−MS(方法5):Rt=1.49分;MS(EIpos):m/z=119(M)+
【0149】
製造実施例:
実施例1
2−(4−クロロフェニル)−6−(ジフルオロメチル)−4−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化24】

(2E)−2−(4−クロロベンゾイル)−3−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)プロパ−2−エンニトリル(実施例6A)200mg(0.542mmol)および3−アミノ−4,4−ジフルオロブタ−2−エンニトリル[アセトニトリルと2,2−ジフルオロアセトニトリルとのThorpe反応によって得られる;Org. React. 15, 1 (1967)、同31, 1(1984)を参照]66mg(0.542mmol)の2−プロパノール(1ml)中混合物を還流下にて12時間撹拌した。次いで、酢酸(1.5ml)を添加し、還流下での撹拌を6時間続けた。冷却後、混合物を減圧濃縮し、残留物を分取RP−HPLC(メタノール/水+0.1%TFA勾配液、最終混合物80:20(v/v))によって直接精製して、標記化合物ラセミ体33mg(理論値の14%)を得た。
LC−MS(方法2):Rt=1.14分;MS(ESIpos):m/z=440(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.86(br.s,1H)、10.46(s,1H)、7.79(d,1H)、7.63−7.55(m,4H)、7.38(d,1H)、6.79(t,1H,2H,F=51.8Hz)、5.09(s,1H)、2.54(s,3H)ppm。
【0150】
実施例2
2−(ジフルオロメチル)−4−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−6−(4−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化25】

(2E)−2−(4−フルオロベンゾイル)−3−(6−フルオロ−3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)プロパ−2−エンニトリル(実施例5A)200mg(0.569mmol)および3−アミノ−4,4−ジフルオロブタ−2−エンニトリル[アセトニトリルと2,2−ジフルオロアセトニトリルとのThorpe反応により得られる;Org. React. 15, 1 (1967)、同書, 31, 1(1984)を参照]69mg(0.569mmol)の2−プロパノール(1ml)中混合物を還流下にて12時間撹拌した。次いで、酢酸(1.5ml)を添加し、還流下での撹拌を6時間続けた。冷却後、混合物を減圧濃縮し、残留物を分取RP−HPLC(メタノール/水+0.1%TFA勾配液、最終混合物80:20(v/v)によって直接精製して、標記化合物ラセミ体36mg(理論値の15%)を得た。
LC−MS(方法4):Rt=0.97分;MS(ESIpos):m/z=424(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.87(br.s,1H)、10.44(s,1H)、7.78(d,1H)、7.61(m,2H)、7.41−7.35(m,3H)、6.79(t,1H,2H,F=51.8Hz)、5.08(s,1H)、2.54(s,3H)ppm。
【0151】
実施例3
4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−6,6'−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロ−2,2'−ジピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化26】

3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例1A)150mg(0.936mmol)の4Åモレキュラーシーブ粉末を含有するn−ペンタノール(4ml)中溶液を4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタンニトリル(実施例8A)128mg(0.936mmol)で処理し、130℃で1時間撹拌した。次いで、3−アミノ−3−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル]プロパ−2−エンニトリル(実施例7A)94mg(0.44mmol)および酢酸(1.2ml)を添加し、混合物を130℃でさらに1分間撹拌した。冷却後、水(6ml)を添加し、混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。残留物を酢酸エチル(30ml)に溶解し、この溶液をブラインで数回洗浄し、次いで、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残留物を、4Åモレキュラーシーブを含有するTHF(1ml)に溶解した。テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドの溶液(TBAF、THF中1N、1.5ml)を添加し、混合物を70℃で5時間撹拌した。冷却後、混合物を減圧濃縮し、粗生成物を分取RP−HPLC(メタノール/水+0.1%TFA勾配液)によって最終精製して、標記化合物ラセミ体15mg(理論値の7%)を得た。
LC−MS(方法2):Rt=1.23分;MS(ESIpos):m/z=475(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.80(br.s,1H)、10.70(s,1H)、8.32(t,1H)、8.10(m,2H)、7.74(s,1H)、7.61(d,1H)、7.44(dd,1H)、5.03(s,1H)、2.50(s,3H)ppm。
【0152】
実施例4
2−(ジフルオロメチル)−4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−6−フェニル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化27】

3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例1A)200mg(1.25mmol)、3−オキソ−3−フェニルプロパンニトリル217mg(1.50mmol)および3−アミノ−4,4−ジフルオロブタ−2−エンニトリル[アセトニトリルと2,2−ジフルオロアセトニトリルとのThorpe反応によって得られる;Org. React. 15, 1 (1967)、同書, 31, 1 (1984)を参照]147mg(1.25mmol)の4Åモレキュラーシーブ粉末を含有する1−ペンタノール(1.2ml)中混合物を105℃に一夜加熱した。冷却後、反応混合物をアセトニトリルで希釈し、分取RP−HPLC(アセトニトリル/水+0.1%TFA勾配液)、次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン/ジクロロメタン/メタノール(10:5:1 v/v)によって直接精製して、標記化合物ラセミ体93mg(理論値の19%)を得た。
LC−MS(方法4):Rt=0.93分;MS(ESIpos):m/z=388(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.78(s,1H)、10.38(s,1H)、7.68(s,1H)、7.60−7.49(m,6H)、7.40(d,1H)、6.78(t,1H,2H,F=52Hz)、4.83(s,1H)、2.48(s,3H)ppm。
【0153】
実施例4に記載の方法と類似の方法で以下の化合物を製造した;精製は、メタノール/水+0.1%TFA勾配液を使用した分取RP−HPLC、次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン/ジクロロメタン/メタノール(10:10:1 v/v)によって行った:
【0154】
【表1−1】

【表1−2】

1) 溶離剤としてトルエン/ジクロロメタン/メタノール(10:10:0.5 v/v)を使用してシリカゲルクロマトグラフィー処理を行った;
2) 最初にメタノール/水+0.1%TFA勾配液を使用して分取RP−HPLCにより精製し、次いで、さらに、まずシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン/ジクロロメタン/メタノール(10:10:0.5 v/v))、次に、分取RP−HPLC[カラム:Sunfire C18 OBD、5μm、19mm×150mm;溶離剤:水/メタノール(60:40→0:100 v/v勾配液;流速:25ml/分;温度:40℃;UV検出:254nm]によって精製した。
【0155】
実施例9および実施例10
2−(ジフルオロメチル)−6−(4−フルオロフェニル)−4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル(エナンチオマー1および2)
【化28】

キラル相でのHPLCクロマトグラフィー[カラム:Daicel Chiralpak AD−H、5μm、250mm×20mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 80:20 v/v;流速:15ml/分;温度:30℃;UV検出:220nm]によって、実施例6からのラセミ化合物(60mg)を各エナンチオマーに分離させた:
【0156】
実施例9(エナンチオマー1):
収量:25mg(>99%ee)
t=4.88分[カラム:Daicel Chiralcel AD−H、5μm、250mm×4.6mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 80:20+0.2%ジエチルアミン;流速:1ml/分;温度:30℃;UV検出:235nm]。
【0157】
実施例10(エナンチオマー2):
収量:26mg(>99%ee)
t=6.03分[カラム:Daicel Chiralcel AD−H、5μm、250mm×4.6mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 80:20+0.2%ジエチルアミン;流速:1ml/分;温度:30℃;UV検出:235nm]。
【0158】
実施例11
4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−2−フェニル−6−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化29】

3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例1A)300mg(1.87mmol)、3−オキソ−3−フェニルプロパンニトリル272mg(1.87mmol)および3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタ−2−エンニトリル[製造:A.W. Lutz、米国特許第3,635,977号;C.G. Krespan、J. Org. Chem. 34, 42 (1969)]1019mg(7.49mmol)の4Åモレキュラーシーブ粉末を含有する1−ペンタノール(1.9ml)中混合物を105℃に一夜加熱した。冷却後、反応混合物をアセトニトリルで希釈し、分取RP−HPLC(アセトニトリル/水+0.1%TFA勾配液)によって直接精製して、標記化合物ラセミ体285mg(理論値の37%)を得た。
LC−MS(方法4):Rt=0.99分;MS(ESIpos):m/z=406(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.80(br.s,1H)、10.68(s,1H)、7.70(s,1H)、7.62−7.50(m,6H)、7.42(d,1H)、4.92(s,1H)、2.54(s,3H)ppm。
【0159】
実施例11に記載の方法と類似の方法で以下の化合物を製造した;精製は、メタノール/水+0.1%TFA勾配液を使用した分取RP−HPLC、次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン/ジクロロメタン/メタノール 10:10:1 v/v)によって行った:
【0160】
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

1) シリカゲルクロマトグラフィーによるさらなる精製を行わなかった;
2) 反応は、150℃(30分)でマイクロ波オーブン中にて行った;精製は、メタノール/水+0.1%TFA勾配液を使用する分取RP−HPLC、次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン/ジクロロメタン/メタノール 5:5:1 v/v)によって行った。
【0161】
実施例22および実施例23
2−(4−フルオロフェニル)−4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−6−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル(エナンチオマー1および2)
【化30】

キラル相でのHPLCクロマトグラフィー[カラム:Daicel Chiralpak AD−H、5μm、250mm×20mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 85:15 v/v;流速:15ml/分;温度:30℃;UV検出:220nm]によって、実施例13からのラセミ化合物(200mg)を各エナンチオマーに分離させた:
【0162】
実施例22(エナンチオマー1):
収量:87mg(>99%ee)
t=4.01分[カラム:Daicel Chiralcel AD−H、5μm、250mm×4.6mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 80:20+0.2%ジエチルアミン;流速:1ml/分;温度:30℃;UV検出:235nm]。
【0163】
実施例23(エナンチオマー2):
収量:92mg(>99%ee)
t=4.45分[カラム:Daicel Chiralcel AD−H、5μm、250mm×4.6mm;溶離剤:イソヘキサン/エタノール 80:20+0.2%ジエチルアミン;流速:1ml/分;温度:30℃;UV検出:235nm]。
【0164】
下記実施例AおよびBは、1,4−ジヒドロピリジン環の6位にあるフルオロ置換されていない(すなわち、非置換)メチル基を特徴とする、本発明の化合物と非常に類似する構造を有する。この種のc−Metキナーゼ阻害化合物は、従前にWO2008/071451−A1に記載されている。本発明に関して、実施例AおよびBで詳述されている化合物は、構造−活性および構造−透過性の関係の比較研究(下記生物学セクションを参照)のために、WO2008/071451−A1の一般的な開示内容から選択された。これらの化合物の製造は、上記方法の適用によって行われた。
【0165】
比較実施例A
2−(4−メトキシフェニル)−6−メチル−4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化31】

3−メチル−1H−インダゾール−5−カルボアルデヒド(実施例1A)250mg(1.56mmol)、3−(4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパンニトリル328mg(1.88mmol)および3−アミノブタ−2−エンニトリル128mg(1.56mmol)の4Åモレキュラーシーブ粉末を含有する1−ペンタノール(1.55ml)中混合物を105℃に一夜加熱した。冷却後、反応混合物をアセトニトリルで希釈し、分取RP−HPLC(アセトニトリル/水+0.1%TFA勾配液)によって直接精製して、標記化合物ラセミ体180mg(理論値の30%)を得た。
LC−MS(方法4):Rt=0.91分;MS(ESIpos):m/z=382(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.70(br.s,1H)、9.64(s,1H)、7.60(s,1H)、7.57−7.48(m,3H)、7.38(d,1H)、7.08(d、2H)、4.62(s,1H)、3.80(s,3H)、2.48(s,3H)、2.11(s,3H)ppm。
【0166】
比較実施例B
2−(4−フルオロフェニル)−6−メチル−4−(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボニトリル
【化32】

(2E)−2−[(3−メチル−1H−インダゾール−5−イル)メチリデン]−3−オキソブタンニトリル(実施例2A)200mg(0.89mmol)、3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル159mg(0.98mmol)および酢酸アンモニウム205mg(2.66mmol)のエタノール/酢酸(4:1 v/v、11ml)中混合物を一夜加熱還流した。冷却後、反応混合物を分取RP−HPLC(アセトニトリル/水+0.1%TFA勾配液)によって直接精製して、標記化合物ラセミ体136mg(理論値の41%)を得た。
LC−MS(方法2):Rt=1.04分;MS(ESIpos):m/z=370(M+H)+
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=12.70(br.s,1H)、9.74(s,1H)、7.64−7.59(m,3H)、7.53(d,1H)、7.40−7.33(m,3H)、4.68(s,1H)、2.48(s,3H)、2.11(s,3H)ppm。
【0167】
B.生物活性の評価
本発明の化合物の活性の立証は、当分野で周知のインビトロ、エクスビボおよびインビボのアッセイを通して達成され得る。例えば、本発明の化合物の活性を立証するために、以下のアッセイを使用し得る。
【0168】
c−Met受容体チロシンキナーゼ活性アッセイ(NADH読み取り):
組換えヒトc−Metタンパク質(Invitrogen, Carlsbad, California, USA)を使用する。キナーゼ反応の基質として、ペプチドKKKSPGEYVNIEFG(JPT, Germany)を使用する。アッセイのために、試験化合物のDMSO中51倍濃縮溶液1μLを、白色384ウェルマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)にピペットで加える。アッセイバッファー[3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、50mM、pH7;MgCl、10mM;ウシ血清アルブミン(BSA)、0.01%;Triton X 100、0.01%;DTT、2mM]中のc−Met(最終濃度30nM)およびピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼ(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany;最終濃度8mg/L)の溶液25μLを添加し、混合物を室温で5分間インキュベートする。次いで、アッセイバッファー中のアデノシン三リン酸(ATP、最終濃度30μM)、基質(最終濃度100μM)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH、最終濃度50μM)およびジチオスレイトール(DTT、最終濃度2mM)の溶液25μLの添加によりキナーゼ反応を開始させ、得られる混合物を32℃で100分間の反応時間にわたりインキュベートする。
【0169】
次いで、リン酸化された基質の量を、NADH蛍光の減少の測定により評価する。したがって、340nmでの励起後の465nmでの蛍光の放出を蛍光リーダー、例えば、Tecan Ultra(Tecan, Maennedorf, Switzerland)で測定する。データを標準化する(阻害剤なしの酵素反応=0%阻害;全ての他のアッセイ成分であるが酵素を含まない=100%阻害)。通常、試験化合物を同じマイクロタイタープレートで、10μM〜1nMの範囲の9つの異なる濃度(10μM、3.1μM、1.0μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μM、0.003μM、0.001μM;アッセイ前に、51倍濃縮原液のレベルで、連続1:3希釈により調製した連続希釈物)で、各濃度につきデュプリケート(duplicate)で試験し、自社のソフトウェアを使用して、IC50値を算出する。
【0170】
いくつかの代表的なIC50値を、1,4−ジヒドロピリジン環の6位にある非置換メチル基を有する2つの構造類似物(比較実施例AおよびB、実験セクションを参照;WO2008/071451−A1に一般的に開示されている)についての対応するデータと共に、下記の表1に挙げる:
【0171】
【表3】

【0172】
c−Met受容体チロシンキナーゼの均一時間分解蛍光法(代替的フォーマット):
ヒトc−MetのN末端にHis6−タグを有する組換えキナーゼドメイン(アミノ酸960−1390)を、昆虫細胞(SF21)で発現させ、Ni−NTA親和性クロマトグラフィーにより精製し、連続的サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)を使用する。別法として、購入できるc−Met(Millipore)を使用できる。キナーゼ反応の基質として、ビオチン化ポリ−Glu,Tyr(4:1)コポリマー(# 61GT0BLC, Cis Biointernational, Marcoule, France)を使用する。
【0173】
アッセイのために、DMSO中の試験化合物の100倍濃縮溶液50nLを、黒色低容積384ウェルマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)にピペットで加える。アッセイバッファー[25mM Hepes/NaOH、pH7.5;5mM MgCl;5mM MnCl;2mMジチオスレイトール;0.1%(v/v)Tween 20(Sigma);0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン]中のc−Metの溶液2μLを添加し、混合物を22℃で15分間インキュベートし、キナーゼ反応の開始前に試験化合物を酵素に予め結合させる。次いで、アッセイバッファー中のアデノシン三リン酸(ATP、16.7μM;アッセイ体積5μL中の最終濃度は10μMである)および基質(2.27μg/mL、アッセイ体積5μL中の最終濃度は、1.36μg/mL〜30nMである)の溶液3μLの添加により、キナーゼ反応を開始させ、得られる混合物を22℃で30分間の反応時間にわたりインキュベートする。アッセイ中のc−Metの濃度を酵素ロットの活性に応じて調節し、アッセイが線形の範囲にあるように適当に選択する;典型的な酵素濃度は、約0.03nM(アッセイ体積5μL中の最終濃度)の範囲にある。水性EDTA溶液[100mM EDTA、0.2%(w/v)ウシ血清アルブミン、50mM HEPES/NaOH中、pH7.5]中のHTRF検出試薬[40nMストレプトアビジン−XLentおよび2.4nM PT66−Eu−キレート(ユーロピウムキレートで標識された抗ホスホチロシン抗体(Perkin-Elmer)]の溶液5μLの添加により、反応を停止させる。
【0174】
得られる混合物を22℃で1時間インキュベートし、ビオチン化されたリン酸化ペプチドをストレプトアビジン−XLentおよびPT66−Eu−キレートへ結合させる。次いで、リン酸化基質の量を、PT66−Eu−キレートからストレプトアビジン−XLentへの共鳴エネルギー移動の測定により評価する。したがって、350nmでの励起後の620nmおよび665nmでの蛍光の放出を、HTRFリーダー、例えば、Rubystar(BMG Labtechnologies, Offenburg, Germany)またはViewlux(Perkin-Elmer)で測定する。665nmおよび622nmでの発光の比を、リン酸化基質の量の尺度として取る。データを標準化する(阻害剤なしの酵素反応=0%阻害;全ての他のアッセイ成分であるが酵素を含まない=100%阻害)。通常、試験化合物を同じマイクロタイタープレートで、20μM〜1nMの範囲の10個の異なる濃度(20μM、6.7μM、2.2μM、0.74μM、0.25μM、82nM、27nM、9.2nM、3.1nMおよび1nM;アッセイ前に、100倍濃縮原液のレベルで、連続1:3希釈により調製した連続希釈物)で、各濃度につきデュプリケートで試験し、自社のソフトウェアを使用して、4パラメーターフィットによりIC50値を算出する。
【0175】
ホスホ−c−Metアッセイ:
これは、MKN−45腫瘍細胞(胃癌、ATCCから購入)を増殖因子で刺激せずに使用する、細胞をベースとするELISA様アッセイ[Meso Scale Discovery (MSD), Gaithersburg, MD, USA]である。1日目に、細胞を96ウェルプレート中の完全増殖培地に播く(10000細胞/ウェル)。2日目に、無血清培地中での2時間の薬物処理の後、細胞を洗浄し、次いで溶解させ(60μl/ウェル、MSD推奨の溶解バッファーを使用する)、−80℃で凍結させる。また、2日目に、MSDホスホ−Metプレートの非特異的抗体結合部位をMSD Blocking Solution Aで、終夜4℃でブロックする。3日目に、凍結した溶解物を氷上で解凍し、溶解物25μlをMSDホスホ−Metプレートに移し、1時間振盪し、その後Tris緩衝食塩水+0.05% Tween 20(TBST)で1回洗浄する。非結合タンパク質を除去した後、MSDのSulfa−TAG抗Met抗体を、抗体希釈バッファー(MSDのプロトコールに従う)中の最終濃度5nMでプレートに添加し、1時間振盪する。次いで、プレートをTBSTバッファーで3回洗浄し、その後、1x MSD Read Bufferを加える。次いで、プレートをMSD Discovery Workstation装置で読む。参照化合物10μMのウェル(最小のシグナル)および薬物処理を行わないDMSOのウェル(最大のシグナル)を含む未加工のデータを、IC50値の決定のためにAnalyze 5プログラムに入力する。
【0176】
細胞のホスホ−c−Metアッセイ:
384ウェルのマイクロタイタープレートに播いたヒト胃腺腫細胞(MKN45、ATCCから購入)(9000細胞/ウェル)を、完全増殖培地25μl中、37℃にて5%CO2で24時間インキュベートする。2日目に、0.1%FCSを含有する低血清培地中、2時間の薬物処理の後、細胞を洗浄し、溶解させる。溶解物を、予め結合したc−Met捕捉抗体[Mesoscale Discovery (MSD), Gaithersburg, MD, USAから購入]を有するBSAでブロックしたプレートに移し、1時間震盪し、その後Tris緩衝食塩水+0.05% Tween 20(TBST)で1回洗浄する。MSDのプロトコールに従い、Sulfa−TAG抗ホスホ−c−Met検出抗体を抗体希釈バッファー中の最終濃度5nMでプレートに添加し、室温で1時間振盪する。ウェルをTrisバッファーで洗浄した後、1xリーディングバッファーを添加し、プレートをSector Imager 6000(Mesoscale から購入)で測定する。Marquardt−Levenberg−Fitを使用して、用量応答曲線からIC50値を算出する。
【0177】
インビトロの腫瘍細胞増殖アッセイ:
本発明の化合物を試験するのに使用する接着性腫瘍細胞増殖アッセイは、Promega により開発されたCell Titre−Gloと呼ばれる読み取りを含む[B.A. Cunningham, "A Growing Issue: Cell Proliferation Assays. Modern kits ease quantification of cell growth", The Scientist 2001, 15 (13), 26;S.P. Crouch et al., "The use of ATP bioluminescence as a measure of cell proliferation and cytotoxicity", Journal of Immunological Methods 1993, 160, 81-88]。発光シグナルの生成は、存在するATPの量に対応し、それは、代謝的に活性な(増殖している)細胞の数に直接比例する。
【0178】
H460細胞(肺癌、ATCCから購入)を、96ウェルプレートに、3000細胞/ウェルで、10%ウシ胎仔血清を含む完全培地中に播き、37℃で24時間インキュベートする。播種の24時間後、試験化合物を連続希釈の10nM〜20μMの最終濃度範囲で、最終DMSO濃度0.2%で添加する。試験化合物の添加後、細胞を37℃で72時間、完全増殖培地中でインキュベートする。4日目に、Promega Cell Titre−Glo Luminescent(登録商標)アッセイキットを使用して、細胞を溶解させ、基質/バッファー混合物100μlを各ウェルに添加し、混合し、室温で8分間インキュベートする。サンプルをルミノメーターで読み、各ウェルの細胞溶解物中に存在するATPの量を測定し、それは、そのウェル中の生存可能な細胞の数に対応する。24時間のインキュベーションで読まれた値を、0日目として差し引く。IC50値の測定に、線形回帰分析を使用して、このアッセイフォーマットを使用する細胞増殖の50%阻害をもたらす薬物濃度を判定することができる。このプロトコールを、CAKI−1、MNK−45、GTL−16、HCC2998、K562、H441、K812、MEG01、SUP15およびHCT116を含むがこれらに限定されない様々な関心のある細胞株に適用できる。
【0179】
Caco−2透過性アッセイ:
Caco−2細胞単層を通過する試験化合物のインビトロ透過は、胃腸管からの透過性を予測するための十分に確立されたアッセイ系である[P. Artursson and J. Karlsson: Correlation between oral drug absorption in humans and apparent drug permeability coefficients in human intestinal epithelial (Caco-2) cells, Biochem. Biophys. 175 (3), 880-885 (1991)を参照]。そのようなCaco−2細胞での本発明の化合物の透過性を、下記の通りに測定した:
【0180】
ヒトcaco−2細胞(ACC No.169, DSMZ, German Collection of Microorganisms and Cell Cultures, Braunschweig, Germany)を、24ウェルの挿入プレートに播き、14〜16日間増殖させる。透過性の研究のために、試験化合物をDMSOに溶解し、輸送バッファー[ハンクス緩衝塩溶液、Gibco / Invitrogen、さらにグルコース(最終濃度19.9mM)およびHEPES(最終濃度9.8mM)を添加]で2μMの最終試験濃度に希釈する。頂端側から基底側への透過性(PappA−B)を測定するために、試験化合物溶液を細胞単層の頂端側に添加し、輸送バッファーを単層の基底側に添加する;基底側から頂端側への透過性(PappB−A)を測定するために、試験化合物溶液を細胞単層の基底側に添加し、輸送バッファーを単層の頂端側に添加する。実験開始時にサンプルをドナー区画から採取し、質量平衡を確かめる。37℃で2時間インキュベートした後、サンプルを両方の区画から採取する。サンプルをLC−MS/MSにより分析し、明確な透過率を算出する。ルシファーイエローの透過性を各細胞単層についてアッセイし、細胞単層の完全性を保証し、品質管理として各バッチのアテノロール(低透過性マーカー)およびスルファサラジン(能動的排出のマーカー)の透過性を測定する。
【0181】
これらのアッセイの代表的な結果を、1,4−ジヒドロピリジン環の6位に非置換メチル基を有する2つの構造類似物(比較実施例AおよびB、上記実験セクションを参照;WO2008/071451−A1に一般的に開示されている)についての対応するデータと共に、下記の表2に挙げる:
【0182】
【表4】

【0183】
本発明を特定の実施態様を参照して開示したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施態様および変形が他の当業者により考案され得ることは明白である。特許請求の範囲は、全てのそのような実施態様および等価の変形も包含すると解釈されることを企図している。
【0184】
C.医薬組成物に関する実施例
本発明による医薬組成物は以下の通りに例示説明できる:
【0185】
滅菌i.v.液剤:
本発明の所望の化合物の5mg/ml溶液を、注射用滅菌水を使用して調製でき、必要であればpHを調節する。投与用に溶液を滅菌5%デキストロースで1〜2mg/mlに希釈し、約60分間にわたってi.v.注入液として投与する。
【0186】
i.v.投与用凍結乾燥粉末剤:
滅菌調製物を、(i)凍結乾燥粉末としての本発明の所望の化合物100〜1000mg、(ii)クエン酸ナトリウム32〜327mg/ml、および(iii)300〜3000mgのデキストラン40により製造できる。この製剤を滅菌注射用食塩水または5%デキストロースにより10〜20mg/mlの濃度に再構成し、さらにこれを食塩水または5%デキストロースで0.2ないし0.4mg/mlに希釈し、i.v.ボーラスとして、または15〜60分間にわたるi.v.注入により投与する。
【0187】
筋肉内懸濁剤:
次の液剤または懸濁剤を、筋肉注射用に調製できる:
所望の水不溶性の本発明の化合物50mg/ml、カルボキシメチルセルロースナトリウム5mg/ml、4mg/mLのTWEEN 80、9mg/mlの塩化ナトリウム、9mg/mlのベンジルアルコール。
【0188】
ハードシェルカプセル剤:
粉末状有効成分100mg、乳糖150mg、セルロース50mgおよびステアリン酸マグネシウム6mgを標準的な2ピースのハードゼラチンカプセルに充填することにより、多数の単位カプセル剤を製造する。
【0189】
ソフトゼラチンカプセル剤:
大豆油、綿実油またはオリーブ油などの食用油中の有効成分の混合物を調製し、容積移送式ポンプによって溶解ゼラチンへ注入し、有効成分100mgを含むソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し、乾燥させる。有効成分をポリエチレングリコール、グリセリンおよびソルビトールの混合物に溶解し、水混和性医薬ミックスを調製できる。
【0190】
錠剤:
単位用量が、有効成分100mg、コロイド状二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、澱粉11mgおよび乳糖98.8mgであるように、慣用の方法により多数の錠剤を製造する。適切な水性および非水性被覆を適用して、嗜好性を高めるか、美しさ(elegance)と安定性を改善するか、または吸収を遅延させ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Arは、フェニルまたは5員もしくは6員ヘテロフェニルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、(C1−C4)−アルキル、(C1−C4)−アルコキシ、アミノおよびモノ−(C1−C4)−アルキルアミノからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換されていてもよく(ここで、この(C1−C4)−アルキル置換基および(C1−C4)−アルコキシ置換基は、さらに、3個までのフルオロ原子で置換されていてもよい)、
1は、水素またはフルオロであり、
2は、水素またはメチルであり、
3は、水素またはフルオロであり、
4は、水素または(C1−C4)−アルキルである]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物。
【請求項2】
Arが、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリルまたはイソチアゾリルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメトキシおよびエトキシからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換され得、
1が水素またはフルオロであり、
2が水素であり、
3が水素またはフルオロであり、
4が水素、メチルまたはエチルである、
請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物。
【請求項3】
Arが、フェニル、ピリジルまたはオキサゾリルであり、これらは、各々、フルオロ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルおよびメトキシからなる群から独立に選択される1個または2個の置換基で置換され得、
1が水素またはフルオロであり、
2が水素であり、
3が水素またはフルオロであり、
4がメチルである、
請求項1または2記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、水和物および/または溶媒和物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の式(I)で示される化合物の製造方法であって、式(II)
【化2】

[式中、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示されるインダゾリルアルデヒドを、
[A]酸、酸/塩基併用および/または脱水剤の存在下にて式(III)
【化3】

[式中、Arは、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示されるケトニトリルと反応させて、式(IV)
【化4】

[式中、Ar、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示される化合物を得、
次いで、後者を式(V)
【化5】

[式中、R1は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示されるエナミノニトリルと縮合させて、式(I−A)
【化6】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示される化合物を得ること、
または
[B]任意に塩基および/または脱水剤の存在下にて、式(VI)
【化7】

[式中、R1は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示されるケトニトリルと反応させて、式(VII)
【化8】

[式中、R1、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示される化合物を得、
次いで、後者を酸の存在下にて式(VIII)
【化9】

[式中、Arは、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示されるエナミノニトリルと縮合させて、式(I−A)
【化10】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示される化合物を得、
任意に、次いで、塩基の存在下にて式(IX)
CH3−X (IX)
[式中、Xは、ハロゲン、メシラート、トリフラート、トシラートまたはスルファートのような脱離基を表す]
で示される化合物を用いてジヒドロピリジンN−メチル化を行って、式(I−B)
【化11】

[式中、Ar、R1、R3およびR4は、請求項1〜3に示される意味を有する]
で示される化合物を得ること、
ならびに、次いで、任意に、所望により、(i)好ましくはクロマトグラフィー法を使用して、化合物(I−A)および(I−B)をそれらの各々のエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、および/または(ii)化合物(I−A)および(I−B)をそれらの各々の水和物または溶媒和物へ、対応する溶媒で処理して変換してもよいこと
を特徴とする方法。
【請求項5】
疾患の処置または予防のための請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
細胞増殖性障害の処置または予防のための医薬組成物の製造のための請求項1〜3いずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項7】
細胞増殖性障害が癌である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜3いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される水和物または溶媒和物および医薬上許容される補助剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
さらに、1種以上のさらなる治療剤を含む、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
さらなる治療剤が、抗腫瘍剤である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
細胞増殖性障害の処置または予防のための請求項8〜10いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物における細胞増殖性障害の処置または予防方法であって、この処置または予防を必要とする哺乳動物に、1種以上の請求項1〜3いずれか1項記載の化合物の治療上有効量または請求項8〜10いずれか1項記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む、方法。
【請求項13】
細胞増殖性障害が癌である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
癌が、乳房、呼吸器、脳、生殖器官、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺および副甲状腺の癌、または固体腫瘍の遠隔転移である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜3いずれか1項記載化合物または請求項8〜10いずれか1項記載の医薬組成物が、外科的手術または放射線療法と併せて施される、請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2013−510814(P2013−510814A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538292(P2012−538292)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066983
【国際公開番号】WO2011/069761
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507113188)バイエル・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】