説明

フルカラー複写機

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、例えば静電転写型複写機やレーザプリンタなどに適用される転写中間体を備えたフルカラー複写機に関するものである。
〔従来の技術〕
電子写真法による従来のフルカラー複写機においては、転写ドラムに転写紙を固定し、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のトナー像を感光体上から直接転写紙に順に重ねて転写する方式の複写機が知られている。
また、これに代わる転写方式としては、複写機に転写中間体を備え、感光体上のトナー像を一旦転写中間体に転写して、この転写中間体上にイエロー、マゼンタ、シアンのカラー画像を重ね合わせてフルカラー画像を形成し、その後、3色の重ね合わされたフルカラー画像を1度に転写紙上へ転写するようにした方式も、従来より知られている。
このような転写方式のうち、トナー像の転写方法に静電転写法が採用されているフルカラー複写機に備えられる上記転写中間体は、例えばポリカーボネートやポリイミド等の樹脂にカーボンを分散させて含浸した材質が用いられ、全体形状がベルト状に形成されると共に、転写中間体の表面抵抗が、108〜1012Ω程度となるように設定されている。
そして、転写中間体を挟むように、感光体と感光体上のトナー像を転写中間体へと転写させるための第1転写チャージャが対向に配置され、さらに、転写中間体を挟むように、フルカラー画像を転写紙に転写させるための第2転写チャージャと、この第2の転写チャージャ用の接地された背向電極板とが対向に配置されている。
これにおいては、まず、転写中間体の背面側から第1転写チャージャにて電荷を印加し、感光体上の各色のトナー像を転写中間体に重ねて転写し、その後、転写中間体におけるトナー像(フルカラー画像)が形成されている面に転写紙を重ね、転写紙の背面側から第2転写チャージャにて電荷を印加することで、転写中間体から転写紙へとトナー像を転写させるようになっている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、上記の構成においては、転写中間体上に形成されたフルカラー画像を第2転写チャージャにて転写紙へ転写する場合、転写中間体と背向電極板との間に、常に良好な密着性が要求される。これは、転写中間体と背向電極板との間の密着性が不十分な場合、その不十分な部分に電荷がたまってしまい、転写中間体から転写紙への転写が良好に行われず、転写不良を生じることになるからである。
ところが、上記のフルカラー複写機の構成では、第2転写チャージャと背向電極板との間に転写中間体を通過させた場合、転写中間体と背向電極板との間に部分的な浮き状態や隙間が生じ易く、転写中間体と背向電極板との間に良好な密着性を有しているとは言い難い。そのため、その浮き部分や隙間部分に電荷がたまって、転写中間体から転写紙への著しい転写不良が発生している。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたもので、たとえ転写中間体と背向電極板との間の密着性が不十分であったとしても、転写中間体から転写紙への転写を良好に行い得るフルカラー複写機を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のフルカラー複写機は、上記の課題を解決するために、感光体の表面に形成された複数のトナー像が第1転写チャージャにて表面上に重ね合わされる転写中間体と、この転写中間体上に重ね合わされたトナー像を転写紙へと静電転写する第2転写チャージャと、上記転写中間体におけるトナー像が転写される表面とは反対側の面に接触するように配される第2転写チャージャの背向電極板とを備えたフルカラー複写機において、上記転写中間体における背向電極板と接触する側の面に導電層が形成されていると共に、上記背向電極板には、背向電極板を接地或いは非接地状態に切り換える切り換え手段が設けられていることを特徴としている。
〔作用〕
上記の構成によれば、転写中間体における背向電極板と接触する側の面に導電層が形成されているので、この転写中間体が第2転写チャージャとその背向電極板との間を通過するときに、たとえば転写中間体と背向電極板との間に良好な密着性が得られず、部分的な浮き状態や隙間が生じたとしても、電荷は転写中間体における導電層を通り、導電層と背向電極板とが接触している部分から逃げるため、従来のように転写中間体に電荷がたまるようなことはない。したがって、転写中間体から転写紙への安定した転写性が得られることになる。
また、感光体から転写中間体へトナー像を第1転写チャージャにて転写する際には、切り換え手段にて背向電極板を非接地状態に切り換えることで、何の支障もなく感光体から転写中間体へとトナー像を転写させることが可能である。
〔実施例〕
本発明の一実施例を第1図ないし第3図に基づいて説明すれば、以下の通りである。
先ず、フルカラー複写機の全体構成について説明すると、第3図に示すように、複写機本体1の内部には、無端ベルト状の感光体2が一定方向へ移動自在となるように掛け渡されている。
この感光体2の周囲には、感光体2の表面に帯電領域を形成するための帯電チャージャ21と、感光体2上の帯電領域にブランクを形成するためのブランクランプ22と、イエロー、マゼンタ、シアンの現像剤が色別に収容された現像装置23a・23b・23cと、感光体2上に形成された現像後のトナー像を転写しこれを順次重ね合わせて一つのフルカラー画像を形成するための一定方向へ移動自在な無端ベルト状の転写中間体24と、この転写中間体24に転写した後の感光体2の表面に残留している現像剤を除去するためのクリーニング手段25と、感光体2を除電するための除電ランプ26とが、感光体2の移動方向に沿って順に配設されている。
上記の転写中間体24は、感光体2の表面と接触するように配され、その接触部における転写中間体24の背面側には、感光体2上に形成されたトナー像を転写中間体24へ転写させるための第1転写チャージャ24aが配されている。
また、一定方向へ移動自在な転写中間体24における第1転写チャージャ24aよりも下流側には、転写中間体24上に形成されたフルカラー画像を転写紙7に転写させるための第2転写チャージャ24bと、転写中間体24から転写紙7を剥離するための剥離チャージャ24cと、転写中間体24を除電するための除電チャージャ24dと、転写後の転写中間体24上に残留している現像剤を除去するためのクリーニング手段24eとが、転写中間体24の移動方向に沿って順に配設されている。
一方、転写紙7の搬送経路の上流側には、給紙カセット等を装着できる給紙部3が設けられ、また、転写紙7の搬送経路の途中に配された前記第2転写チャージャ24bおよび剥離チャージャ24cよりも下流側には、定着装置4が設けられており、さらにその下流端に排紙部5が形成されている。
また、複写機本体1の上面には透明な原稿置台69が配され、その下方には、原稿置台69上の原稿面に向かって光を照射する光源61と、原稿面から反射した光学像をさらに反射させて感光体2上の露光点Pに導くための複数のミラー62〜66と、その光路上に設けられた結像レンズ67、および色成分別の光学像に分解するための色分解フィルタ68とが配されており、これらによって露光光学系6が構成されている。
次に、フルカラー複写のプロセスについて説明する。露光光学系6によりカラー原稿面を走査すると、色分解フィルタ68にてそのうちの例えば青色光のみが透過され、露光点Pで感光体2の表面が露光される。これにより、青色の情報を有する潜像が感光体2上に形成され、この感光体2が移動することにより現像装置23aにてイエローのトナーが付着される。このイエローのトナー像は、さらに感光体2が移動することにより第1転写チャージャ24aにて転写中間体24上に転写される。
上記と同様に、露光光学系6が再びカラー原稿面を走査すると、色分解フィルタ68により緑色光のみが透過されて感光体2上に潜像を形成し、その緑色の情報を有する潜像に対して、現像装置23bによりマゼンタのトナーが付着してトナー像を形成する。この感光体2上に形成されたマゼンタのトナー像は、転写中間体24上に形成された前回のイエローのトナー像の上に画像位置が一致するように転写される。
さらに、露光光学系6がカラー原稿面を走査すると、この走査によって得られた原稿反射光のうちの赤色光のみが色分解フィルタ68を透過して、感光体2上に潜像が形成される。この感光体2上の潜像には、現像装置23cによりシアンのトナーが付着して、このシアンのトナー像も、転写中間体24上に形成された前回のイエローおよびマゼンタのトナー像の上に画像位置が一致するように重ねて転写される。
上記のように重ねられた3色のトナー像により、フルカラー画像が形成される。転写中間体24上に形成されたフルカラー画像は、給紙部3から供給された転写紙7上へ第2転写チャージャ24bにて転写され、その後、転写紙7は転写中間体7から剥離チャージャ24cにて剥離されて定着装置4へ移行し、この定着装置4にてフルカラー画像が転写紙7上に定着された後、排紙部5へ移送される。このようにして、転写紙7上にフルカラー画像が形成される。
上記転写中間体24は、第1図(a)に示すように、ポリカーボネート樹脂またはポリイミド樹脂などにカーボンを分散して含浸させたベルト体24′を有し、その表面(トナーの付着面)抵抗が例えば109Ω程度、厚さが100μm程度を有し、全体形状がベルト状に形成されている。
上記ベルト体24′の裏面すなわちトナー像が転写される表面とは反対側の面には、第1図(b)に示すように、厚さが30μm程度の導電層24″が形成されている。この導電層24″は、例えばベルト体24′の裏面にアルミニウムを蒸着させて形成されたものであるが、導電層24″の材質および形成方法については限定しない。
また、転写中間体24の表面に形成されたトナー像(フルカラー画像)を転写紙7に転写させるための第2転写チャージャ24bの近傍位置には、第2図に示すように、この第2転写チャージャ24bに対して転写中間体24を挾んで対向するように背向電極板24fが配されている。
上記の構成において、転写中間体24を構成するベルト体24′の裏面に導電層24″が形成されていると、この転写中間体24が第2転写チャージャ24bとその背向電極板24fとの間を通過するときに、たとえ転写中間体24と背向電極板24fとの間に部分的な浮き状態や隙間が生じたとしても、電荷は転写中間体24における導電層24″を通って、導電層24″と背向電極板24fとが接触している部分から逃げる。したがって、従来のように部分的に浮いた部分や間隙部分に電荷が溜まるようなことはなく、両者間の浮き部分や隙間部分に電荷がたまって転写不良を発生するといった事態は招来せず、転写中間体24上に形成されたトナー像(フルカラー画像)は転写紙7へ確実かつ良好に安定した状態で転写されることになる。
なお、ベルト体24′の裏面に導電層24″が形成された転写中間体24を用いる場合には、感光体2から転写中間体24へのトナー像の第一次転写時にはアースより浮いた状態に設定する一方、転写中間体24から転写紙7へのトナー像(フルカラー画像)の第二次転写時にはアースに落とすように設定することができる切り換え機構を備えておく必要がある。このような切り換え機構を備え、感光体2から転写中間体24へトナー像を転写する際には、背向電極板24fを非接地状態とすることで、何の支障もなく感光体2から転写中間体24へとトナー像を転写させることが可能となる。
〔発明の効果〕
本発明のフルカラー複写機は、以上のように、感光体の表面に形成された複数のトナー像が第1転写チャージャにて表面上に重ね合わされる転写中間体と、この転写中間体上に重ね合わされたトナー像を転写紙へと転写する第2転写チャージャと、上記転写中間体におけるトナー像が転写される表面とは反対側の面に接触するように配される第2転写チャージャの背向電極板とを備えたフルカラー複写機において、上記転写中間体における背向電極板と接触する側の面に導電層が形成されていると共に、上記背向電極板には、背向電極板を接地或いは非接地状態に切り換える切り換え手段が設けられている構成である。
これにより、この転写中間体が第2転写チャージャとその背向電極板との間を通過するときに、たとえ転写中間体と背向電極板との間に良好な密着性が得られず、部分的な浮き状態や隙間が生じたとしても、電荷は転写中間体における導電層を通り、導電層と背向電極板とが接触している部分から逃げるため、従来のように転写中間体に電荷がたまるようなことはない。したがって、転写中間体から転写紙への安定した転写性が得られるようになり、常に安定した良質の複写画像が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図は本発明の一実施例を示すものであって、第1図(a)はベルト体に導電層を形成する前段階の状態を示す転写中間体の要部縦断面図、第1図(b)はベルト体の裏面に導電層が形成された状態を示す転写中間体の要部縦断面図、第2図は転写中間体を備えたフルカラー複写機の要部を示す概略構成図、第3図は本発明が適用されたフルカラー複写機を示す全体の概略構成図である。
2は感光体、7は転写紙、24は転写中間体、24′はベルト体、24″は導電層、24aは第1転写チャージャ、24bは第2転写チャージャ、24cは剥離チャージャ、24fは背向電極板である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】感光体の表面に形成された複数のトナー像が第1転写チャージャにて表面上に重ね合わされる転写中間体と、この転写中間体上に重ね合わされたトナー像を転写紙へと転写する第2転写チャージャと、上記転写中間体におけるトナー像が転写される表面とは反対側の面に接触するように配される第2転写チャージャの背向電極板とを備えたフルカラー複写機において、上記転写中間体における背向電極板と接触する側の面に導電層が形成されていると共に、上記背向電極板には、背向電極板を接地或いは非接地状態に切り換える切り換え手段が設けられていることを特徴とするフルカラー複写機。

【第1図(a)】
image rotate


【第1図(b)】
image rotate


【第2図】
image rotate


【第3図】
image rotate


【公告番号】特公平7−50358
【公告日】平成7年(1995)5月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−119004
【出願日】昭和63年(1988)5月16日
【公開番号】特開平1−288877
【公開日】平成1年(1989)11月21日
【出願人】(999999999)シャープ株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭57−23975(JP,A)
【文献】特開昭59−154475(JP,A)
【文献】実開昭59−186852(JP,U)