説明

フルクトシルジペプチド化合物

【課題】優れたNEP阻害活性を有する新規化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)


(式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、Fruはフルクトース残基を示す。)
で表されるフルクトシルジペプチド化合物又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルクトシルジペプチド化合物又はその塩及び当該化合物を有効成分とする中性エンドペプチダーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
中性エンドペプチダーゼ(以下、NEPともいう)は基質特異性が低く、種々のペプチド類の分解を通じた様々な生体への作用を有することが知られている。
【0003】
このため別名も多く、例えば鎮痛作用をもつオピオノイドの一種であるエンケファリンを基質とすることからエンケファリナーゼとも呼ばれ、その阻害剤は鎮痛剤、抗うつ剤として応用できる。
また、サブスタンスP、ブラジキニン、ニューロテンシン等の神経ペプチド、エンドセリン等を分解することや、キニン、アンジオテンシン等のナトリウム利尿性ペプチドを基質とすることが知られていることから、NEP阻害剤は、高血圧治療剤、利尿剤、ナトリウム排泄増加剤として応用できる。
【0004】
また、当該NEP阻害剤は、足や腕等の発毛を効果的に抑制することができ、発毛抑制剤として応用できること(特許文献1)や、皮膚の老化によって生じるしわ、たるみの形成やハリの減少等の外観変化を防止又は改善でき、皮膚老化防止剤(特許文献2)等として応用できることが報告されている。
【0005】
そして、ショウキョウ、加水分解アーモンド、ワレモコウ等の植物又はその抽出物がNEP阻害作用を有することが知られている(特許文献3)。
一方、合成NEP阻害剤としては、例えば、マロン酸アミド誘導体(特許文献1)やヒドロキサム酸誘導体(特許文献4)等が報告されている。
また、特許文献5には、特定のグリコペプチドにエンケファリナーゼ抑制作用があることが記載されている。
しかしながら、従来の合成NEP阻害剤は、NEP阻害活性の点で十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−351716号公報
【特許文献2】特開2001−10948号公報
【特許文献3】特開2001−335495号公報
【特許文献4】特開昭58−77852号公報
【特許文献5】特開昭63−295598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れたNEP阻害活性を有する新規化合物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、斯かる実情に鑑み検討をしたところ、下記式(1)で表されるフルクトシルジペプチド化合物が、優れたNEP阻害活性を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、Fruはフルクトース残基を示す。)
で表されるフルクトシルジペプチド化合物又はその塩を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記のフルクトシルジペプチド化合物又はその塩を有効成分とする中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフルクトシルジペプチド化合物は、優れたNEP阻害活性を有し、簡便かつ効率よく製造できる。従って、本発明の新規フルクトシルジペプチド化合物は、皮膚老化防止・改善、発毛抑制、高血圧改善、利尿作用又はナトリウム排泄増加等のための、ヒト又は動物用の医薬品、医薬部外品、各種食品、化粧料等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<フルクトシルジペプチド化合物>
式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を示す。
【0015】
上記R1で示される炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられるが、炭素数1〜14のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。
当該炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられるが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0016】
また、上記R1で示される炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
【0017】
また、上記R1としては、NEP阻害活性の点から、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0018】
式(1)中、R2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。
上記R2で示される炭素数1〜20のアルキル基としては、前記R1のものと同様のものが挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また、上記R2としては、NEP阻害活性の点から、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0019】
また、前記R1及びR2は、R1=炭素数1〜20のアルキル基であり、R2=水素原子である場合;R1=炭素数1〜20のアルキル基であり、R2=炭素数1〜20であるアルキル基の場合;R1=炭素数6〜12のアリール基であり、R2=炭素数1〜20のアルキル基である場合が好ましく、R1=炭素数6〜12のアリール基であり、R2=炭素数1〜20のアルキル基である場合がより好ましい。
【0020】
また、より好適な具体例としては、R1=フェニル基であり、R2=メチル基の場合が挙げられる。
【0021】
式(1)中、Fruはフルクトース残基を示す。当該フルクトース残基としては、α−フルクトフラノース残基、β−フルクトフラノース残基、α−フルクトピラノース残基、β−フルクトピラノース残基が挙げられるが、下記式(2−1)
【0022】
【化2】

【0023】
で表されるフルクトピラノシル基が好ましく、更にβ−体であるのがより好ましい。なお、当該フルクトース残基は、L−体、D−体又はこれらの混合物の何れであってもよいが、D体が好ましい。
【0024】
なお、式(1)で表されるフルクトシルジペプチド化合物又はその塩(以下、本発明化合物(1)ともいう)は、少なくとも1以上のキラル中心を有するため、例えば、S体、R体、SS体、RR体、RS体等の異性体が存在し得るが、本発明においては、これらのいずれでもよく、ラセミ体等の混合物であってもよい。
【0025】
また、式(1)で表されるフルクトシルジペプチド化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩;乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等の両性金属塩等が挙げられる。
なお、本発明化合物(1)は水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
【0026】
<本発明化合物(1)の製造方法>
本発明化合物(1)は、次の反応に従い製造できる。すなわち、アミノ酸化合物(3)とアミノ酸化合物(4)とを脱水縮合させて、化合物(5)とし(工程1)、次いで保護基R3を脱離して化合物(6)を得る(工程2)。次いで、保護基R4を酸性条件下で脱離させて、化合物(7)を得(工程3)、次いでこれをフルクトシル化(アマドリ
転移)することにより(工程4)、本発明化合物(1)を製造できる。
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、R3はカルボキシ保護基を示し、R4はアミノ保護基を示す。R1及びR2は前記と同じ。)
【0029】
<工程1>
工程1は、化合物(3)と化合物(4)とを脱水縮合反応させ、化合物(5)を得る工程である。
式中、R3で示されるカルボキシ保護基としては、カルボン酸エステルのエステル残基が好適に挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の低級アルキル基;ビニル基、アリル基等の低級アルケニル基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられるが、反応効率の点から、アラルキル基が好ましい。
【0030】
4で示されるアミノ保護としては、例えばtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等のカルバメート系保護基が好ましく、tert−ブトキシカルボニル基がより好ましい。
【0031】
当該化合物(4)の使用量としては、化合物(3)に対して、0.5〜1.5モル当量程度が好ましい。
【0032】
本工程における脱水縮合反応は、通常脱水縮合剤の存在下で行われる。当該脱水縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド等が挙げられる。当該脱水縮合剤の使用量としては、化合物(3)に対して、1〜3モル当量程度が好ましい。
【0033】
また、本反応は、反応効率の点から、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリドン等の塩基触媒;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、N−ヒドロキシスクシンイミド等の添加剤存在下で行うのが好ましい。なお、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒を使用してもよい。
【0034】
本反応は、溶媒存在下、溶媒非存在下いずれでも行うことができるが、円滑な反応性の点で、溶媒存在下で反応させるのが好ましい。
当該溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン、ヘキサンなどの無極性溶媒;又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
上記反応の反応時間としては、30分〜48時間が好ましく、反応温度としては、−20〜100℃が好ましい。
【0035】
尚、原料である化合物(3)及び(4)は、公知の反応により適宜合成することができ、市販品を用いることもできる。例えば、化合物(3)については、下記の化合物(8)や化合物(9)から、適宜、保護・脱保護反応とエステル化反応を組み合わせることにより製造できる。
【0036】
【化4】

【0037】
(式中、R2〜R4は前記と同じ。)
【0038】
<工程2>
工程2は、化合物(5)の保護基R3を脱離させて、化合物(6)を得る工程である。
当該反応は、カルボキシ保護基の脱離に用いられる方法、例えば加水分解、還元等の慣用の方法を挙げることができる。
加水分解は、塩基またはルイス酸等の酸の存在下で実施するのが好ましく、好適な塩基としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、炭酸塩または炭酸水素塩、トリアルキルアミン、ヒドラジン、ピコリン等を挙げることができる。また、ルイス酸(例えば塩化アルミニウム、三塩化チタン、四塩化錫等)等を用いる場合は、カチオン捕捉剤(例えばアニソール、フェノール等)の存在下で行うのが好ましい。
還元反応は、化学還元および触媒還元等の慣用の方法で行われる。化学還元に用いられる好適な還元剤としては、例えば、Na/NH3(I)、ヨウ化水素、硫化水素、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の水素化物、錫、亜鉛等の金属が挙げられ、触媒還元に使用される好適な触媒としては、白金触媒、パラジウム触媒(Pd/C、Pd(OH)2/C、Pd/black)、ニッケル触媒等を挙げることができる。
このうち、H2及びPd/C触媒存在下、Na/NH3(I)存在下等の還元条件下で反応させるのが好ましい。Pd/C触媒を使用する場合、当該触媒の使用量としては、0.1〜100質量%程度が好ましい。
【0039】
また、上記反応は、溶媒存在下で反応させるのが好ましく、当該溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ギ酸、酢酸等の極性プロトン性溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン等の無極性溶媒;又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
上記反応の反応時間としては、15分〜24時間が好ましく、反応温度としては、−20〜100℃が好ましい。
【0040】
<工程3>
工程3は、化合物(6)の保護基R4を酸性条件下で脱離させて、化合物(7)を得る工程である。
当該反応は、塩酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸等の酸性化合物存在下で反応させるのが好ましい。
また、上記反応は、溶媒存在下、溶媒非存在下いずれでも行うことができる。反応時間としては、10分〜24時間が好ましく、反応温度としては、−20〜100℃が好ましい。
【0041】
<工程4>
工程4は、化合物(7)の遊離アミノ基をフルクトシル化し、本発明化合物(1)を得る工程である。
フルクトシル化は、例えば、化合物(7)に塩基の存在下、グルコースを作用させることにより行うことができる。
ここで、用いるグルコースは、NEP阻害活性の点から、D−グルコースが好ましい。
上記グルコースの使用量としては、化合物(7)に対して、0.1〜20モル当量が好ましく、1〜15モル当量がより好ましい。
上記反応は、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、イミダゾール等アミン類等の塩基の存在下で反応させるのが好ましい。当該塩基の使用量としては、化合物(7)に対して、1〜1000モル当量が好ましい。
また、上記反応は、溶媒存在下で反応させるのが好ましく、当該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。このうち、反応効率の点から、低級アルコールと非プロトン性極性溶媒の混合溶媒が好ましい。
上記反応の反応時間としては、10分〜24時間が好ましく、反応温度としては、0〜120℃が好ましい。
【0042】
上記反応において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、有機合成化学で常用される精製法、例えば、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて、行えば良い。尚、化合物(5)、(6)及び(7)については、単離せずに次の反応に付すこともできる。
【0043】
<NEP阻害剤>
上記工程1〜4により得られる、新規な本発明化合物(1)又はその塩は、後記実施例に示すように、優れたNEP阻害活性を有する。従って、本発明化合物(1)又はその塩は、NEP阻害剤として使用することができ、また、当該NEP阻害剤を製造するために使用できる。
【0044】
そして、前述のとおり、NEP活性阻害剤は、皮膚老化防止・改善、発毛抑制、高血圧改善、利尿作用及びナトリウム排泄増加等の効果を発揮し得ることから、本発明化合物(1)又はその塩は、皮膚老化防止・改善剤、発毛抑制剤、高血圧改善剤、利尿剤又はナトリウム排泄増加剤ともなり得、皮膚老化防止・改善、発毛抑制、高血圧改善、利尿作用又はナトリウム排泄増加等のための、ヒト又は動物用の医薬品、医薬部外品、化粧料等として使用できる。
【0045】
本発明のNEP阻害剤等を医薬品として使用する場合、任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、経口、経腸、経粘膜、注射、点滴、経皮等が挙げられる。経口投与のための製剤の剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、内服液、糖衣錠、丸剤、細粒剤、シロップ剤、エリキシル剤等が挙げられる。非経口投与としては、例えば、静脈内注射、筋肉注射剤等の注射剤;液剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、パップ剤、エアゾール剤、ローション剤、ファンデーション等の皮膚外用剤;坐剤、吸入薬、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
【0046】
また、斯かる製剤では、本発明化合物(1)又はその塩と、薬学的に許容される担体とを組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、流動性促進剤、吸収助剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、香料、被膜剤等が挙げられる。
【0047】
上記製剤中の本発明化合物(1)又はその塩の含有量としては、製剤全質量の0.0001〜40質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
また、上記製剤の投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与の場合の成人1人当たりの1日の投与量は、通常、本発明化合物(1)又はその塩として1〜100mg/kgであり、3〜30mg/kgが好ましい。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0048】
本発明のNEP阻害剤等を医薬部外品や化粧料として用いる場合は、洗浄剤、メイクアップ化粧料等とすることができ、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の医薬部外品や化粧料は、本発明化合物(1)又はその塩を単独で、又は医薬部外品、皮膚化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤(例えば、抗炎症剤、殺菌剤、酸化防止剤、ビタミン類、脂肪代謝促進作用又は脱共役蛋白質発現促進作用が知られている薬物或いは天然物)、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製できる。
当該医薬部外品、化粧料中の本発明化合物(1)又はその塩の含有量としては、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0049】
本発明のNEP阻害剤等を外用する場合、その使用量は、有効成分の含有量により異なるが、例えばクリーム状、軟膏状の場合、皮層面1cm2当たり1〜20mg、液状の場合、同じく1〜20mg使用するのが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、特記しない限り、重水素化溶媒中の残存プロトンピークを内部標準として用い、Bruker製AVANCEIII(600MHz)にて測定をした。
13C−NMRスペクトルは、特記しない限り、溶媒ピークを内部標準として用い、Bruker製AVANCEIII(150MHz)にて測定をした。
<MSスペクトル>
MSスペクトルは、Bruker製esquire3000plusを用いて測定した。
【0051】
合成例1 化合物4の合成
下記の合成経路に従い、(S)-3-(Boc-アミノ)-2-メチルプロピオン酸を原料として、N−(1−デオキシフルクトース−1−イル)−L−4−メチルフェニルアラニル−(S)−3−アミノイソ酪酸(化合物4)を合成した。
【0052】
【化5】

【0053】
1)化合物1の合成
(S)−3−(Boc−アミノ)−2−メチルプロピオン酸 0.615g(3.03 mmol)にトルエン18.5 mL、ベンジルアルコール0.470mL(4.54 mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.700 g(3.68mmol)を加え、還流条件下、4時間撹拌した。放冷後、濃縮し、ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1(20mL)を加えて、結晶析出させ、生じた沈殿を桐山ろ過し、ろ液を再度ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1(20mL)を加えて、結晶析出させ、生じた沈殿を桐山ろ過した。この得られた白色結晶0.876gに再度トルエン8.8mL, ベンジルアルコール4.4mL, p−トルエンスルホン酸一水和物0.064g(0.33 mmol)を加え、還流条件下で3時間撹拌させた。放冷後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0→80/20、YAMAZEN Hi-Flash column 4L)で精製し、淡黄色油状物0.949g(収率86%)を得た。
【0054】
1H-NMR(CD3OD) δ:1.28(3H, d., J =7.2Hz), 2.37(3H, s), 2.83-2.90(1H, m), 3.01(1H, dd, J =5.1, 13.1Hz), 3.19(1H, dd, J =8.4, 13.1Hz), 5.17(1H, d, J =12.3Hz), 5.22(1H, d, J =12.3Hz) , 7.22-7.25(2H, m), 7.32-7.40(5H, m), 7.69-7.72(2H, m)(ppm)
【0055】
13C-NMR(CD3OD) δ:15.2, 21.3, 39.0, 42.7, 68.0, 127.0, 129.4, 129.5, 129.7, 129.8, 137.2, 141.7, 143.5, 174.8(ppm)
【0056】
次に、Boc−4−メチル−L−フェニルアラニン0.278 g(0.994 mmol)に、ジメチルホルムアミド6 mL、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール 0.263 g(1.95 mmol)、N−メチルモルホリン0.120 mL(1.09 mmol)、上記で得られた淡黄色油状物0.347g(0.950 mmol)を加え、氷冷下1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 0.211g(1.10 mmol)を加え、室温で一昼夜撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10 mL)を加えた後、酢酸エチル(20 mL)で抽出した。次に飽和重曹水(10 mL)で中和し、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0→0/100、YAMAZEN Hi-Flash column 2L)で精製して、白色固体の化合物1を0.383 g(収率84%)を得た。
【0057】
1H-NMR(CDCl3) δ:7.38-7.30 (5H, m), 7.09 (2H, d, J =7.9 Hz), 7.05 (2H, d, J = 7.9 Hz), 6.20 (1H, brs), 5.11 (2H, d, J =12.3 Hz), 5.06 (2H, d, J =12.3 Hz), 4.93 (1H, brs), 4.23(1H, brs), 3.45-3.38(1H, m), 3.29(1H, ddd, J =6.0, 7.6, 13.6 Hz), 3.00-2.93 (2H, m), 2.71-2.64(1H, m), 2.30(3H, s), 1.40(9H, s), 1.10 (3H, d, J =6.9 Hz)(ppm)
【0058】
13 C-NMR(CDCl3) δ:175.1, 171.5, 155.4, 136.6, 135.9, 133.6, 129.5, 129.2, 128.8, 128.5, 128.2, 80.2, 66.6, 56.1, 41.6, 39.5, 38.2, 28.4, 21.2(ppm)
【0059】
2)化合物2の合成
54.8 mg (0.121 mmol)の化合物1に、メタノール1.7 mL、10% Pd/C 6.1 mgを加え、水素雰囲気下、激しく1時間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、セライトろ過を行い、残渣をメタノールで十分に洗浄した。濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(球状、中性、40−50μm)、関東化学製)(クロロホルム/メタノール=5/1, シリカゲル6 g)で精製し、得られた精製物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(球状、中性、40−50μm)、関東化学製)(クロロホルム/メタノール=5/1, シリカゲル6 g)で精製し、白色固体の化合物2を40.9 mg(収率93%)得た。
【0060】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.10(2H, d, J =8.0 Hz), 7.08(2H, d, J =8.0 Hz), 4.22(1H, dd, J = 6.0, 8.5 Hz), 3.44(1H, dd, J =6.5, 13.3 Hz), 3.16(1H, dd, J=6.8, 13.3 Hz), 3.01(1H, dd, J =6.0, 13.7 Hz), 2.77(1H, dd, J =8.9, 13.7 Hz), 2.59-2.52(1H, m), 2.29(3H, s), 1.37(9H, s), 1.04(3H, d, J =7.1 Hz)(ppm)
【0061】
13 C-NMR(CD3OD) δ:178.6, 174.6, 157.5, 137.3, 135.4, 130.2, 130.0, 80.6, 57.7, 42.8, 40.5, 38.9, 28.6, 21.1, 15.2(ppm)
【0062】
3)化合物3の合成
37.6 mg(0.103 mmol)の化合物2に、室温にて4N 塩酸/ジオキサン 0.8 mLを加え、30分間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、濃縮し、白色固体の化合物3を31.0 mg(収率100%)を得た。
【0063】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.18-7.17(4H, m), 4.05(1H, dd, J = 7.4, 7.4 Hz), 3.51-3.46(1H, m), 3.15(1H dd, J =6.8, 13.4 Hz), 3.12(1H, dd, J =7.4, 13.9 Hz), 3.03(1H, dd, J =7.4, 13.9 Hz), 2.54(1H, qd, J =7.1, 14.0Hz), 2.32(3H, s), 1.02(3H, d, J =7.1 Hz) (ppm)
【0064】
13 C-NMR(CD3OD) δ:178.0, 169.8, 138.6, 132.5, 130.7, 130.4, 55.8, 43.1, 40.4, 38.3, 21.1, 15.3(ppm)
【0065】
4)化合物4の合成
14.8 mg(0.0492 mmol)の化合物3に、メタノール 15 mL, ピリジン 1.2 mL, ジメチルスルホキシド 0.25 mL、D−グルコース 83.6 mg(0.464 mmol)を加え、65℃にて2時間還流した。放冷後、45℃にて濃縮し、反応を終了させるために、残ったピリジン, ジメチルスルホキシドとともに室温にて18時間撹拌した。その後、反応液に水(2 mL)を加え、三菱化学製ダイヤイオンHP-20(10mL)を用いて、水画分(50mL)、20%エタノール画分(50mL)にて精製し、得られた20%エタノール水溶液画分を濃縮し、白色固体19.9 mgを得た。この白色固体をジーエルサイエンス製Inertsil ODS-3(250/10mm I.D., 0.1%ギ酸/10%アセトニトリル/水→0.1%ギ酸/アセトニトリル)にて分取を行い、白色固体の化合物4を8.5 mg(収率41%)得た。
【0066】
1 H-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:7.21-7.17(2H, m), 7.13-7.07(2H, m), 4.04-4.00(1H, m), 3.97-3.93(2H, m), 3.82(1H, dd, J =9.3, 12.6Hz), 3.70(1H, dd, J =2.1, 13.0Hz), 3.66(1H, d, J =9.9Hz), 3.23-3.17(1H, m), 3.21(1H, d, J =12.9Hz), 3.15(1H, dd, J =6.8, 13.3Hz), 3.09(1H, d, J =12.9Hz), 3.02(1H, dd, J =7.2, 13.3Hz), 3.01-2.97(1H, m), 2.33(1H, qdd, J =6.8, 7.0, 7.2Hz), 2.27(3H, s), 0.78(3H, d, J =7.0Hz)(ppm)
【0067】
13C-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:183.7, 169.8, 138.6, 131.7, 130.3, 129.9, 96.4, 70.2, 70.0, 69.6, 64.4, 63.5, 52.6, 43.6, 42.6, 36.8, 20.3, 15.6(ppm)
【0068】
ESI-MS(positive) m/z:427
【0069】
合成例2 化合物8の合成
下記の合成経路に従い、Boc−4−メチル−L−フェニルアラニンを原料として、N−(1−デオキシフルクトース−1−イル)−L−4−メチルフェニルアラニル−β−アラニン(化合物8)を合成した。
【0070】
【化6】

【0071】
1)化合物5の合成
Boc−4−メチル−L−フェニルアラニン0.829 g(2.97 mmol)に、ジメチルホルムアミド 37 mL、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.810 g(5.99 mmol)、N−メチルモルホリン 0.400 mL(3.62 mmol)、β−アラニンベンジルエステル p−トルエンスルホナート1.04 g(2.97 mmol)を加え、氷冷下1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.630 g(3.29 mmol)を加え、室温で1.5時間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、酢酸エチル(30 mL)を加え、塩化アンモニウム(30 mL)、飽和重曹水(30 mL)で中和し、飽和食塩水(30 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0 →0/100、YAMAZEN Hi-Flash column 2L)で精製して、透明油状物の化合物5を1.15g(収率88%)を得た。
【0072】
1H-NMR(CDCl3) δ:7.31-7.39 (5H, m), 7.08(2H, d, J =8.0 Hz), 7.05(2H, d, J =8.0 Hz), 6.20(1H, brs), 5.80(1H, d, J =12.4 Hz), 4.98(1H, brs), 4.23(1H, brs), 3.45-3.52(1H, m), 3.36-3.45(1H, m), 2.96-3.07(1H, m), 2.94(1H, dd, J =7.4, 13.4)(ppm), 2.51(1H, ddd, J = 5.4, 5.4, 16.9Hz) , 2.38-2.46(1H, m), 2.29 (3H, s), 1.41(9H, s) (ppm)
【0073】
13 C-NMR(CDCl3) δ:172.2, 171.3, 155.4, 136.7, 135.7, 133.6, 129.5, 129.3, 128.8, 128.6, 128.4, 80.2, 66.7, 56.1, 38.4, 34.8, 34.0, 28.4, 21.2(ppm)
【0074】
2)化合物6の合成
193.0 mg (0.432 mmol)の化合物5に、Ar雰囲気下、メタノール 5.8 mL、10% Pd/C 19.3 mg加え、水素雰囲気下、激しく2時間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、セライトろ過を行い、残渣をメタノールで十分に洗浄した。濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(球状、中性、40−50μm)、関東化学製)(クロロホルム/メタノール=10/1, シリカゲル10g)で精製し、得られた精製物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(球状、中性、40−50μm)、関東化学製)(クロロホルム/ メタノール=10/1→5/1, シリカゲル10 g)で精製し、白色固体の化合物6を135.1 mg(収率89%)得た。
【0075】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.07-7.11(4H, m), 4.19(1H. dd, J =6.2, 8.7 Hz), 3.43(1H, ddd, J =6.6, 6.8, 10.9Hz), 3.00(1H, dd, J =6.2, 13.7Hz), 2.77(1H, dd, J = 8.7, 13.7Hz), 2.42(1H, ddd, J = 6.6, 6.6, 16.8Hz), 2.38(1H, ddd, J =6.8, 6.9, 16.8 Hz), 2.29(3H, s), 1.37(9H, s)(ppm)
【0076】
13 C-NMR(CD3OD) δ:175.4, 174.4, 157.6, 137.4, 135.4, 130.2, 130.0, 80.6, 57.6, 39.9, 36.2, 34.5, 28.6, 21.1(ppm)
【0077】
3)化合物7の合成
135.1 mg(0.386 mmol)の化合物6に、4N 塩酸/ジオキサン0.8 mLを加え、35分間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、濃縮し、白色固体の化合物7を127.5 mg(収率定量的)を得た。
【0078】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.18(1H, d, J =7.9 Hz), 7.14(1H, d, J =7.9 Hz), 3.97(1H, dd, J =7.1, 7.7Hz), 3.46(1H, ddd, J =6.5, 6.5, 13.5 Hz), 3.32-3.38(1H, m), 3.10(1H, dd, J =7.1, 13.9 Hz), 3.00(1H, dd, J =7.7, 13.9Hz), 2.46(1H, ddd, J =6.4, 6.5, 16.8 Hz), 2.39(1H, ddd, J =6.4, 6.5, 16.8 Hz), 2.33(3H, s)(ppm)
【0079】
13C-NMR(CD3OD) δ:175.0, 169.6, 138.8, 132.5, 130.7, 130.3, 55.8, 38.3, 36.4, 34.3, 21.1(ppm)
【0080】
4)化合物8の合成
50.1 mg(0.175 mmol)の化合物7に、メタノール 53 mL, ピリジン 4mL, ジメチルスルホキシド 0.88 mL、D−グルコース 318.3 mg(1.83 mmol)を加え、65℃にて3時間還流した。放冷後、45℃にて濃縮し、反応を終了させるために、残ったピリジン, ジメチルスルホキシドとともに室温にて16時間撹拌した。その後、反応液に水(2 mL)を加え、三菱化学製ダイヤイオンHP-20(20mL)を用いて、水画分(200mL)、20%エタノール画分(100mL)にて精製し、得られた20%エタノール水溶液画分を濃縮し、白色固体19.3 mgを得た。この白色固体9.7mgをジーエルサイエンス製Inertsil ODS-3(300/78mm I.D., 0.1%トリフルオロ酢酸/10%アセトニトリル/水→0.1%ギトリフルオロ酢酸/60%アセトニトリル/水)にて分取を行い、白色固体の化合物8を2.6 mg(収率8%)を得た。
【0081】
1 H-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:7.24-7.18(2H, m), 7.16-7.10(2H, m), 4.15(1H, dd, J =5.2, 10.6Hz), 4.03-3.98(1H, m), 4.00(1H, d, J =3.3Hz), 3.88(1H, dd, J =3.3, 9.8Hz), 3.76(1H, dd, J =1.9, 13.0Hz), 3.71(1H, d, J =9.8Hz), 3.32-3.17(4H, m), 3.20(1H, d, J =12.7Hz), 3.03(1H, dd, J =10.6, 13.1Hz), 2.36(1H, ddd, J =5.4, 10.7, 17.2Hz), 2.31(3H, s), 2.16(1H, ddd, J =5.3, 8.8, 17.2Hz)(ppm)
【0082】
13C-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:176.7, 168.0, 138.9, 131.0, 130.3, 129.9, 96.0, 70.3, 69.9, 69.5, 64.6, 63.0, 52.6, 36.2, 35.6, 34.1, 20.8(ppm)
【0083】
ESI-MS(positive) m/z:413
【0084】
合成例3 化合物12の合成
下記の合成経路に従い、(S)−3−(Boc−アミノ)−2−メチルプロピオン酸を原料として、N−(1−デオキシフルクトース−1−イル)−L−4,4'−ビフェニルアラニル−(S)−3−アミノイソ酪酸(化合物12)を合成した。
【0085】
【化7】

【0086】
1)化合物9の合成
(S)−3−(Boc−アミノ)−2−メチルプロピオン酸 0.615g(3.03 mmol)に、トルエン18.5 mL、ベンジルアルコール0.470mL(4.54 mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.700 g(3.68mmol)を加え、還流条件下、4時間撹拌した。放冷後、濃縮し、ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1(20mL)を加えて、結晶析出させ、生じた沈殿を桐山ろ過し、ろ液を再度ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1(20mL)を加えて、結晶析出させ、生じた沈殿を桐山ろ過した。この得られた粗生成物0.876gに再度トルエン8.8mL, ベンジルアルコール4.4mL, p-トルエンスルホン酸一水和物0.064g(0.33 mmol)を加え、110℃にて3時間撹拌させた。放冷後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0 → 80/20、YAMAZEN Hi-Flash column 4L)で精製し、淡黄色油状物を0.949g(収率86%)得た。
【0087】
次に、3−(4−ビフェニルイル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン0.346g(1.01 mmol)に、ジメチルホルムアミド 14 mL、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.270 g(2.00 mmol)、4−メチルモルホリン 0.122 mL(1.10 mmol)、上記で得られた淡黄色油状物0.364 g(0.997 mmol)を加え、氷冷下1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.214 g(1.12 mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。
反応終了後、反応系に酢酸エチル(15 mL)を加え、飽和塩化アンモニウム水溶液(15 mL)、飽和重曹水(15 mL)で中和し、飽和食塩水(15 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0 → 0/100、YAMAZEN Hi-Flash column 2L)で精製して、白色固体の化合物9を384.1 mg(収率75%)を得た。
【0088】
1H-NMR(CDCl3) δ:7.47-7.49(2H, m) , 7.43-7.46(2H, m), 7.33-7.36(2H, m), 7.22-7.28(4H, m), 7.16-7.21(4H, m), 6.19(1H, brs), 5.00(1H, d, J =12.3Hz), 4.94(1H, d, J =12.3Hz), 4.90(1H, brs), 4.24(1H, m), 3.32-3.40(1H, m), 3.24(1H, ddd, J =6.0, 7.6, 13.6 Hz), 2.99(2H, d, J =6.3Hz), 2.60(1H, m), 1.33(9H, s), 1.02(3H, d, J =6.9Hz)(ppm)
【0089】
13C-NMR(CDCl3) δ:175.1, 171.4, 155.5, 140.8, 140.0, 135.83, 135.79, 129.8, 128.9, 128.8, 128.5, 128.2, 127.5, 127.4, 127.1, 80.3, 66.6, 56.0, 41.6, 38.5, 38.3, 28.4, 14.9(ppm)
【0090】
2)化合物10の合成
50.2 mg (0.0972 mmol)の化合物9に、メタノール1.5 mL、10% Pd/C 5.7 mgを加え、水素雰囲気下、15時間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、セライトろ過を行い、残渣をメタノールで十分に洗浄した。濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60N(球状、中性、40−50μm)、関東化学製)(クロロホルム/メタノール=7/1, シリカゲル5g)で精製し、白色固体の化合物10を41.2 mg(収率100%)得た。
【0091】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.57-7.60(2H, m), 7.54(2H, d, J =8.0Hz), 7.39-7.43(2H, m), 7.29-7.34(3H, m), 6.79(1H, d, J =8.1Hz), 4.29(1H, m), 3.47(1H, ddd, J =1.7, 6.7, 13.5Hz), 3.16-3.22(1H, m), 3.11(1H, dd, J =6.2, 13.7Hz), 2.86(1H, dd, J =8.9, 13.7Hz), 2.56(1H, m), 1.37(9H, s), 1.04(3H, d, J =7.1Hz)(ppm)
【0092】
13C-NMR(CD3OD) δ:178.7, 174.5, 157.6, 142.3, 141.0, 137.8, 130.9, 129.8, 128.2, 128.0, 127.9, 80.7, 57.7, 40.6, 39.0, 28.6, 15.3(ppm)
【0093】
3)化合物11の合成
59.7 mg(0.140 mmol)の化合物10に、4N 塩酸/ジオキサン 1.2 mLを加え、50分間撹拌した。TLCにて反応終了を確認した後、濃縮し、白色固体の化合物11を49.5mg(収率97%)を得た。
【0094】
1H-NMR(CD3OD) δ:7.62-7.65(2H, m), 7.59-7.62(2H, m), 7.42-7.46(2H, m), 7.33-7.38(3H, m), 4.06(1H, dd, J =7.0, 7.9Hz), 3.51(1H, dd, J =7.1, 13.5Hz), 3.21(1H, dd, J =7.0, 13.9Hz), 3.18(1H, dd, J =6.5, 13.5Hz), 3.09(1H, dd, J =7.9, 13.9Hz), 2.58(1H, qdd, J =6.5, 7.1, 7.2Hz), 1.03(3H, d, J =7.2Hz)(ppm)
【0095】
13C-NMR(CD3OD) δ:178.1, 169.7, 142.1, 141.8, 134.6, 131.0, 130.0, 128.7, 128.6, 127.9, 55.8, 43.2, 40.5, 38.4, 15.4(ppm)
【0096】
4)化合物12の合成
49.5 mg(0.136 mmol)の化合物11に、メタノール41 mL, ピリジン3.5mL, ジメチルスルホキシド 0.60 mL、D−グルコース 246.6 mg(1.37 mmol)を加え、65℃にて2.5時間還流した。放冷後、45℃にて濃縮し、反応を終了させるために、残ったピリジン, ジメチルスルホキシドとともに室温にて15.5時間撹拌した。その後、水(30mL)を加えて凍結乾燥させた後、残渣に水(3 mL)を加え、三菱化学製ダイヤイオンHP-20(100mL)を用いて、水画分(500mL)、50%エタノール画分(300mL)にて精製し、得られた50%エタノール水溶液画分を濃縮し、白色固体45.0 mgを得た。この白色固体をジーエルサイエンス製Inertsil ODS-3(250/10mm I.D., 0.1%トリフルオロ酢酸/22%アセトニトリル/水)にて分取を行い、白色固体の化合物12を35.8 mg(収率44%)を得た。
【0097】
1 H-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:7.64-7.59(4H, m), 7.46-7.42(2H, m), 7.36-7.31(3H, m), 4.14(1H, dd, J =5.5, 9.9Hz), 4.01(1H, dd, J =1.2, 12.4Hz), 3.89(1H, ddd, J =1.2, 2.0, 3.4Hz), 3.79(1H, dd, J =3.4, 9.7Hz), 3.72(1H, dd, J =2.0, 12.4Hz), 3.65(1H, d, J =9.7Hz), 3.43(1H, dd, J =6.4, 13.6Hz), 3.34-3.28(1H, m), 3.24-3.14(3H, m), 3.10(1H, dd, J =7.0, 13.6Hz), 2.56-2.44(1H, m), 0.88(3H, d, J =7.2Hz)(ppm)
【0098】
13C-NMR(D2O、内部標準MeOH)δ:177.9, 168.3, 141.8, 134.4, 131.1, 129.9, 128.6, 128.6, 127.9, 127.9, 96.6, 71.371.0, 70.7, 65.2, 63.6, 53.2, 43.2, 40.2, 37.1, 15.2(ppm)
【0099】
ESI−MS(positive) m/z:489
【0100】
試験例1 培養ヒト線維芽細胞由来の中性エンドペプチダーゼ(NEP)活性阻害試験
Cell System社より市販されている正常ヒト線維芽細胞を用いて、10%牛胎児血清を含むDME培地で継体培養し、以下の試験に供した。試験方法は、The Journal of Biological Chemistry, 266(34), 23041-23047(1991)に記載の方法を参照した。
【0101】
ラバーポリスマンを用いてシャーレから剥がした細胞を、リン酸緩衝食塩水中に浮遊させ、低速の遠心分離器を使って細胞を集めた後、同生理食塩水で3回洗浄した。得られた細胞を0.1% Triton X-100/0.2M Tris-HClバッファー(pH 8.0)に浮遊させ、超音波粉砕し、これをヒト線維芽細由来酵素液とした。酵素活性測定の基質には、10mMグルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシ−β−ナフチルアミンを用いた。酵素液100μLに対し、下記表に示す濃度の化合物4,8又は12(1μL)と、基質(2μL)とを添加し、37℃にて1時間反応させた。その後、ホスホラミドン(Phosphoramidon)を最終濃度1μMとなるように添加して、基質分解反応を停止させた。なお、ヒト線維芽細由来酵素液に含まれるNEPは、Ala-Phe結合を切断して基質を分解する。
そして、上記の反応系にロイシンアミノペプチダーゼ(Leucine aminopeptidase)を最終濃度が0.50mU/mLとなるように添加し、37℃で1時間反応させた。これにより、NEP分解産物がロイシンアミノペプチダーゼによってさらに切断、分解され、4−メトキシ−2−ナフチルアミンを生じる。
生成した4−メトキシ−2−ナフチルアミンについて、蛍光分光光度計(Wallac 1420 ARVOsx、パーキンエルマー社製)で励起波長340nm、蛍光波長425nmにて蛍光強度を測定した。
【0102】
一方、コントロールとして、上記酵素反応系において、化合物4,8の代わりに水を、化合物12の代わりに50%エタノール水溶液を、それぞれ同量加えた以外は上記と同様にして、試料を作成し、反応を行い、蛍光強度を測定した。
得られた測定値をもとに、以下の式からNEP活性阻害率を算出した。結果を表1〜3に示す。
【0103】
NEP活性阻害率(%)=100−{(評価サンプル添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミンの蛍光強度)/(コントロール添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミンの蛍光強度)}×100
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
処方例1 皮膚老化改善用ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。
【0108】
【表4】

【0109】
処方例2 皮膚老化改善用クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。
【0110】
【表5】

【0111】
処方例3 エアゾールの調製
下記Aの成分を均一に混合して容器に入れ、Bの液化石油ガス(噴射剤)を常法により容器に充填してエアゾールを製造する。
【0112】
【表6】

【0113】
処方例4 皮膚老化改善用パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。
【0114】
【表7】

【0115】
処方例5 ファンデーションの調製
下記の組成のファンデーションを常法により調製する。
【0116】
【表8】

【0117】
処方例6 皮膚老化改善用化粧水の調製
下記の組成の化粧水を常法により調製する。
【0118】
【表9】

【0119】
処方例7.皮膚老化改善用ジェルの調製
下記の組成のジェルを常法により調製する。
【0120】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を示し、R2は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、Fruはフルクトース残基を示す。)
で表されるフルクトシルジペプチド化合物又はその塩。
【請求項2】
2が水素原子又はメチル基である請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
1が炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基である請求項1又は2記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又はその塩を有効成分とする中性エンドペプチダーゼ阻害剤。

【公開番号】特開2012−6884(P2012−6884A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146033(P2010−146033)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(504365146)株式会社理論創薬研究所 (9)
【Fターム(参考)】