フルクトシルペプチジルオキシダーゼおよび糖化タンパク質アッセイ用センサー
出芽酵母ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用を開示する。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、フルクトシルバリンにもフルクトシルバリルヒスチジンにもより高い活性を有し、より高い感度および特異性でHbA1Cをアッセイするのに有用である。この酵素を含む電極センサーも開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規フルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX)に関する。より詳細には、本発明は、糖化アルブミン、フルクトサミン、HbA1c、フルクトシルヘキサペプチド、フルクトシルバリンおよびフルクトシルバリルヒスチジンなどの糖化タンパク質の測定用キットおよびセンサーに使用するためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
糖化タンパク質は、タンパク質上のアミノ基と糖の還元末端との間の共有結合を介して非酵素的に生成され、アマドリ化合物とも言われる。血中において、グルコースはヘモグロビンのβ鎖のN末端のバリンに結合し、糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン;HbA1c)を生成する。ヘモグロビン(Hb)に対するHbA1cの存在比は、正常な健常個体と比較して糖尿病患者においてより高く、HbA1cの血中濃度は、過去数週間の血糖値を反映することが知られている。したがって、HbA1cの血中濃度は、糖尿病の診断のための臨床試験において、また糖尿病患者の血糖コントロールにおいて非常に重要である。血中のHbA1c濃度は、フルクトシルバリンに特異性を有する酵素を用いて測定することが可能である。
【0003】
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、フルクトシルアミノ酸が酸化され、2−ケト−D−グルコースと対応するアミノ酸を生成する反応を触媒するFAD依存性酵素である。フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、種々の生物から単離されており、糖化アルブミン、HbA1cおよびフルクトサミンなどの糖化タンパク質がそのような酵素を用いて分析できることが示唆されている。
【0004】
HbA1cを高い特異性でアッセイするためには、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、好ましくは、フルクトシルリジンと比較してフルクトシルバリンに対する選択性を有する。より好ましくは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、HbのN−末端の2つのアミノ酸残基に対応するフルクトシルバリルヒスチジンに対してオキシダーゼ活性を有する。Hirokawaら(Biochem Biophys Res Commun, 311(1), 2003, 104-111)は、アカエトミエラ属(Achaetomiella)およびケトミウム属(Chaetomius)の糸状菌由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを開示している。
【0005】
本発明の目的は、糖化タンパク質の測定に使用するための新規なフルクトシルペプチジルオキシダーゼを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、図1(配列番号:1)に示されるアミノ酸配列を有するファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼの発見に基づく。1つの側面において、本発明は、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して1mM以下のKm値を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。本発明はまた、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して10U/mg・mM以上のVmax/Km値を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。本発明はまた、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有し、50℃で10分間加熱処理した場合に50%以上の残存活性を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。
【0007】
別の側面において、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法であって、試料を前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、およびフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む方法を提供する。
【0008】
また別の側面において、本発明は、HbA1cをアッセイするための方法であって、試料中のHbA1cを消化して、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む方法を提供する。
【0009】
さらに別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含む装置を提供する。好ましくは、電子移動メディエーターは、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである。また、好ましくは、装置は、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬をさらに含む。
【0010】
別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットであって、前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含むキットを提供する。
【0011】
なお別の側面において、本発明は、電極上に固定化された前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極を提供する。好ましくは、フルクトシルペプチジルオキシダーゼは、光架橋性ポリビニルアルコール樹脂を用いて電極上に固定化される。
【0012】
また別の側面において、本発明は、作用電極として本発明の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、糖尿病状態の診断およびコントロールにおいて臨床的に有用なヘモグロビン(HbA1c)などの糖化タンパク質の測定のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【図2】フルクトシルペプチジルオキシダーゼの精製手順を示す。
【図3】精製されたフルクトシルペプチジルオキシダーゼのSV曲線を示す。
【図4】フルクトシルペプチジルオキシダーゼの熱安定性を示す。
【図5】m−PMS/DCIP系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図6】フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルヘキサペプチドの測定を示す。
【図7】フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるHbA1cの測定を示す。
【図8】H2O2系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図9】プルシアンブルー系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図10】ニトロソアニリン(NA)系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図11】m−PMS系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(PnFPOX)は、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)に由来し、図1(配列番号:1)に示すアミノ酸配列を有する。配列番号:1に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する改変されたアミノ酸配列を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの変異体もまた、本発明において使用することができる。好ましくは、配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%である。ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)のゲノム配列は公開されているが、この遺伝子には注釈は付けられていない。ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)がフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有するという、またはその遺伝子がいかなるタイプの酵素をコードし得るという示唆や暗示は存在していなかった。
【0016】
PnFPOXのアミノ酸配列は、FPOX−E(ユーペニシリウム・テレヌム(Eupenicillum terrenum) ATCC 18547;ジーンバンク:BAD00185.1)と71%の同一性、そしてFPOX−C(コニオカエタ・エスピー(Coniochaeta sp.) NISL 9330;ジーンバンク:BAD00186.1)と74%の同一性を示す。他の公知のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼとの配列相同性は、約30%である。
【0017】
下記実施例に記載するように、PnFPOXは、フルクトシルリジンに対してよりもフルクトシルバリンに対してより高い活性を示す。また、フルクトシルバリルヒスチジンに対してさらにより高い活性を示す。PnFPOXのフルクトシルバリルヒスチジンに対するKm値は、1mM以下、好ましくは0.5mM以下、より好ましくは0.3mM以下であり、FPOX−EおよびFPOX−CのKm値より約10倍小さい。PnFPOXのフルクトシルバリルヒスチジンに対するVmax/Km値は、10U/mg・mM以上である。この特徴は、より高い感度および特異性でHbA1cをアッセイするための酵素の使用において特別有利な点である。
【0018】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼの別の有利な特徴は、その熱安定性である。PnFPOXは、10mM PPB(pH7.0)中で10分間、50℃で加熱処理された場合、約75%の残存活性が観測された。
【0019】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、当技術分野において周知の技術を用いて組換え発現により製造することができる。PnFPOXの核酸配列は、ジーンバンク:XP_001798711.1にある。その配列は、選択された宿主生物においてより大きな発現レベルを達成するように適切に改変または設計されてもよい。PnFPOXをコードするポリヌクレオチドは、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)からクローン化でき、または化学的に合成された一連のオリゴヌクレオチドを用いてPCRにより製造してもよく、あるいは自動DNA合成器を用いて完全に合成してもよい。
【0020】
PnFPOXをコードする遺伝子は、適切な発現ベクター中に挿入され、そのベクターは、大腸菌(E. coli)などの適切な宿主細胞中に導入される。形質転換体を培養し、その形質転換体において発現されたフルクトシルペプチジルオキシダーゼを、細胞または培養培地から回収することができる。
【0021】
かくして得られた組換えフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、当技術分野において公知の任意の精製技術、たとえばイオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析沈殿、溶媒沈殿、免疫沈降、ゲル電気泳動、等電点電気泳動および透析などにより精製することができる。
【0022】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、試料中の糖化タンパク質のアッセイにおいて有用である。アッセイ法は、試料を本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、およびフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む。本発明によりアッセイされる糖化タンパク質としては、たとえばフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチド、HbA1c、糖化アルブミンおよびフルクトサミンなどが挙げられる。ある側面において、本発明は、試料中のHbA1cを消化してフルクトシルバリンを生成すること、そのフルクトシルバリンを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンの量を測定することを含むHbA1cをアッセイする方法を提供する。HbA1cは、プロテアーゼやプロテイナーゼNなどのプロテイナーゼで消化することができる。好ましい実施態様においては、その方法は、試料中のHbA1cをプロテイナーゼNで消化してフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、そのフルクトシルバリルヒスチジンを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む。別の側面では、本発明は、HbA1cをエンドプロテアーゼGlu−Cにより消化してフルクトシルヘキサペプチドを生成すること、およびそのフルクトシルヘキサペプチドを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼによりアッセイすることによりHbA1cをアッセイする方法を提供する。今回、驚くべきことに、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが、フルクトシルヘキサペプチドを酸化することができることが見出された。一方、先行技術であるFPOX−C(コニオカエタ・エスピー(Coniochaeta sp.) NISL 9330;ジーンバンク:BAD00186.1)にはそのような能力はない。
【0023】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量の測定は、当技術分野において公知の任意の方法により、たとえば4AA/TODB/POD(4−アミノアンチピリン/N,N−ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアニリン二ナトリウム塩/西洋ワサビペルオキシダーゼ)などのH2O2検出試薬を用いるか、またはPt電極により生成されたH2O2の量を測定することによってなすことができる。あるいは、アッセイは、電子メディエーターの存在下で実行することができ、そのメディエーターに移動された電子の量が、たとえば、mPMS/DCIP(メチル硫酸1−メトキシ−5−メチルフェナジニウム/2,6−ジクロロインドフェノール)、cPES(トリフルオロ酢酸−1−(3−カルボキシ−プロポキシ)−5−エチル−フェナンジニウム、NA BM31_1144(N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−3−メトキシ−ニトロソアニリン塩酸塩、NA BM31_1008(N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリン)およびN−N−4−ジメチル−ニトロソアニリンなどを用いて測定される。これらの中では、NA BM31_1008が特に好ましい。
【0024】
別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを含む装置を提供する。
【0025】
アッセイ装置は、任意の従来の市販されている血糖値をモニターするための電流測定バイオセンサーのテストストリップと同様の構造を有することができる。そのような装置の1つの例は、絶縁基材上に配置された2つの電極(作用電極と参照または対電極)、試薬ポートおよび試料受け(receiver)を有する。試薬ポートは、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、FAD、および電子移動メディエーターを含む。血液試料などの試料を、試料受けに添加すると、試料中に含まれるフルクトシルアミンがフルクトシルペプチジルオキシダーゼと反応して電流を生じ、これが該試料中のフルクトシルアミンの量の指標となる。全血が試料として使用される場合、装置には溶血のための試薬を含むこともできる。特に、好ましい溶血試薬は、サポニンである。別の好ましい実施態様においては、装置は、全血試料中に含まれる成分の還元により生じるセンサーのバックグラウンド電流を減少させるためにビリルビンオキシダーゼ(BOD)を含むこともできる。別の好ましい実施態様において、装置は、血液中に存在する糖化アルブミンからフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの放出を行うためにプロテイナーゼNを含むこともできる。サポニン、BODおよびプロテイナーゼNは、全血試料がサポニンと接触して溶血され、その後BODおよびプロテイナーゼNと接触するように、装置上に独立して固定化されてもよい。酵素基質の測定のために適した電気化学センサーの典型的な例は、たとえば国際公開第2004/113900号および米国特許第5,997,817号明細書より公知である。電気化学センサーの代替物としては、光学的検出技術も使用可能なはずである。典型的には、そのような光学的装置は、酵素、電子移動メディエーターおよび指示薬を含む試薬系において起こる色の変化に基づくものである。色の変化は、蛍光、吸収または緩和(remission)測定を用いて定量することができる。酵素基質の測定に適した光学的装置の典型的な例は、たとえば米国特許第7,008,799号明細書、米国特許第6,036,919号明細書および米国特許第5,334,508号明細書により公知である。
【0026】
なお別の側面において、本発明は、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを含む、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットを提供する。
【0027】
フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジンまたはフルクトシルヘキサペプチドの測定のためのキットは、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより構築することができる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼに加えて、キットは、測定のために必要な緩衝液、適切なメディエーター、較正曲線の作製のためのフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジンまたはフルクトシルヘキサペプチドまたはそれらの誘導体の標準品、および使用説明書を含んでもよい。キットは、HbA1cを消化してフルクトシルヘキサペプチドを生成するためのエンドプロテアーゼGlu−Cを含むこともできる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、様々な形態、たとえば凍結乾燥試薬または適切なストレージソリューションの溶液として提供されてもよい。
【0028】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いて、フルクトサミン、糖化アルブミンまたはHbA1cアッセイキットを構築することも可能である。フルクトシルアミン、糖化アルブミンまたはHbA1cは、酵素的にまたは化学的に消化され、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンなどのフルクトシルアミン化合物を生成し、これが次に本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いて定量される。したがって、フルクトサミン、糖化アルブミンまたはHbA1cのための本発明のアッセイキットは、さらに加水分解のための試薬またはプロテイナーゼを含むことができる。好ましいプロテイナーゼは、HbA1cを消化してフルクトシルバリルヒスチジンを生成するプロテイナーゼNである。
【0029】
別の側面において、本発明は、電極上に固定された本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極を提供する。好ましい実施態様において、本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、BODおよびプロテイナーゼNがフルクトシルアミノ酸オキシダーゼおよびそのメディエーターと接触しないようにポリマーを用いて電極に固定化される。さもなければ、BODは、メディエーターの酸化還元特性を干渉し、またプロテイナーゼNはフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを分解するであろう。好ましいポリマーは、たとえば、東洋合成工業株式会社(千葉、日本)から供給されているアジド基ペンダント水溶性感光性樹脂(azide-unit pendant water-soluble photopolymer)(AWP)などの光架橋性ポリビニルアルコール樹脂である。酵素電極を構築するために、AWP、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼおよびNA_BM31_1008などのメディエーターを含む緩衝溶液が電極の表面に適用される。その溶液を乾燥した後、UV光を照射し、ポリマーを架橋させる。
【0030】
別の側面において、本発明は、作用電極として本発明の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサーを提供する。
【0031】
試料中のフルクトシルアミンの濃度は、酵素反応により生成される電子の量を測定することにより決定することができる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、炭素電極、金属電極、および白金電極などの電極に固定化される。酵素の固定化は、架橋、高分子マトリックスへの封入、透析膜での被覆、光架橋性ポリマー、電気伝導性ポリマー、酸化−還元ポリマー、または他の当業者に周知の方法、ならびにそれらの組合せによりなすことができる。
【0032】
測定が電流測定系において実施される場合、固定化PnFPOXを有する炭素電極、金電極またはプラチナ電極が作用電極として、対電極(白金電極など)および参照電極(Ag/AgCl電極など)と一緒に使用される。電極は、メディエーターを含有する緩衝液中に挿入され、所定の温度に保たれる。所定の電圧を作用電極に適用し、その後試料を添加、増加した電流の値を測定する。アッセイに使用されるメディエーターの例としては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、ルテニウム誘導体、フェナジンメトスルファート(phenazine methosulfate)などが挙げられる。通常、作用電極と1つの対電極または偽−参照電極とを有するいわゆる二電極系を使用することも可能である。
【0033】
フルクトシルアミン、糖化アルブミンまたはHbA1cの測定のためのセンサーを製造するために、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの測定のための前記センサーは、さらに固定化プロテイナーゼ(プロテイナーゼNまたはプロテアーゼなど、好ましくはプロテイナーゼN)を含む膜と組合せられて複合センサーが構築される。複数の酵素の組合せによる連続反応に基づくそのような複合センサーの構造は、本技術分野において周知である。たとえば、Anthony P. F. Tuner, Isao Karube and George S. Wilsonによる「バイオセンサー−基礎と応用」(“Biosensor-Fundamental and Applications”)、オクスフォード大学出版、1987年を参照。
【0034】
本明細書において引用した全ての特許文献および参考文献の内容は、参照により本明細書中に完全に組み込まれる。
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明されるが、本発明はそれらの実施例に限定されるべきものではない。
【0036】
実施例1
ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum) フルクトシルペプチジルオキシダーゼの製造
【0037】
PnFPOXのヌクレオチド配列は、公的なデータベースにおけるファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)のゲノム情報(ジーンバンク:XP_001798711.1)にある。推定ORFが大腸菌(E.coli)のいくつかのマイナーコドンに含まれるので、遺伝子のコドン利用を、大腸菌(Escherichial coli)において遺伝子を発現するために最適化した。この最適化の後、顕著なマイナーコドンは配列には存在しない。合成遺伝子を、発現ベクターpET28a中にサブクローニングし、pEPN(pET28a−PnPFOX)を構築した。
【0038】
PnFAOD発現ベクター(pEPN)で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞を、50μg/mlのカナマイシンを追加した50mlのLB培地中で37℃で培養し、IPTG(f.c.0.4mM)をOD660nm=0.8で添加した。OD660nmが約3に達するまで25℃で培養を続けた。細胞を遠心分離(5,000×g、4℃、10分)により回収し、洗浄(0.85% NaCl水溶液、6,000×g、4℃、5分)し、3mlの10mM PPB(pH7.0)に懸濁し、超音波ホモジナイザーにより均質化した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000×g、4℃、20分)し、そして上清をさらに遠心分離(60,000rpm、4℃、60分)した。上清を10mM PPB(pH7.0)+25μM FADに対して透析し、水溶性画分を得た。SDS−PAGE分析において、水溶性画分は、約48〜50kDaにバンドを示した。これはPnFPOXの推定分子量と一致する。
【0039】
水溶性画分を、3つの基質:フルクトシルバリン(FV)、フルクトシルリジン(FK)、およびフルクトシルバリルヒスチジン(FVH)でPOD/TODB/4A.A.法を用いてオキシダーゼ活性について調べた。フルクトシルペプチジルオキシダーゼは、フルクトシルアミノ酸(Fv、FK)に対して酸化活性を示すだけでなく、フルクトシルジペプチド(FVH)にも酸化活性を示した。
【0040】
実施例2
ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum) フルクトシルペプチジルオキシダーゼの精製および特徴付け
【0041】
精製手法は、図2にまとめられている。pEPN(pET28a−PnFPOX)で形質転換された大腸菌BL21(DE3)を、カナマイシン50μg/mlを含むLB培地(7L)中において37℃で好気的に培養した。A660nm値が1.4に達した後、細胞を0.3mM IPTGで誘発し、A660nm値が3.0に達するまで25℃でインキュベーションを続けた。細胞を遠心分離により採取し、採取した細胞の4分の1(約10.5g)を10mMのPPB、pH7.0に再懸濁し、フレンチプレス(1,000kg/cm2)に2回かけることにより溶菌した。ライセートを4℃、10,000gで20分遠心分離し、上清を4℃、40,000rpmで90分間遠心分離した。ついで上清を25μM FADを含む10mMのPPB、pH8.0に対して透析した。
【0042】
硫酸アンモニウムを透析した上清に35%飽和まで添加し、ついで形成された沈殿を15,000gで20分間遠心分離によりペレットとした。硫酸アンモニウムが95%飽和まで添加された上清を、15,000gで20分間遠心分離した。得られた沈殿を、25μM FADおよび1%マンノースを含む10mM PPB、pH8.0に溶解し、同じ緩衝液に対して4℃で透析し、その後、25μM FADを含む10mMのPPB、pH8.0に対して透析した。透析された酵素溶液を、10mMのPPB、pH8.0で平衡化したRESOURCE Q カラム(GEヘルスケア社)にかけた。活性な素通り画分(active flow-through fraction)を回収し、FAOD活性を示さない吸着タンパク質を1M NaClで溶出した。活性な素通り画分を回収し、10mMのPPB、pH7.0に対して透析した。
【0043】
透析された酵素溶液を10mMのPPB、pH7.0で平衡化したHiLoad 16/60 Superdex 75pg カラム(GEヘルスケア社)にかけた。同じ緩衝液でゲルろ過クロマトグラフィーを行なった。活性な画分を回収し、精製した酵素溶液を100μM FADを含有する10mMのPPB、pH7.0に対して透析し、4℃に保管した。精製した酵素の純度は、SDS−PAGEにより確認し、タンパク質濃度は、DCタンパク質アッセイキット(バイオ−ラッド(Bio-Rad)社、CA、米国)を用いて測定した。
【0044】
表1にまとめたように、PnFPOXは、硫酸アンモニウム沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、およびゲルろ過クロマトグラフィーにより、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)/pEPN(pET28a−PnFPOX)の細胞抽出物から35倍精製された。精製した調製物は、SDS−PAGE上にほぼ単一のバンドを示した。
【0045】
【表1】
【0046】
オキシダーゼ活性は、基質、FV、FKおよびFVHの種々の濃度により4A.A/TODB/PODを用いてアッセイした。546nmでの吸光度をモニターした。結果は、図3に示す。FVおよびFVHでは典型的なミカエルス−メンテン曲線が得られたが、FKでは得られなかった。見かけのKm値はFVで0.64mM、FVHで0.20mMである(表2)。FVに対する高いVmaxKm-1値(42.8Umg-1mM-1)は、この酵素のFVへの高い特異性を示している。FVHに対するVmaxKm-1値もかなり高いことにも注目すべきである(14.7Umg-1mM-1、FVに対するVmaxKm-1の34%)。PnFPOXのFVHに対するこの活性は、HbA1cの酵素に基づく測定において有益なものとなる。比較のために、公知のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX−CおよびFPOX−E)のオキシダーゼ活性についても表に含めた(同書にあるHirokawa et al.)。
【0047】
【表2】
【0048】
PnFPOXの熱安定性は、10mM PPB(pH7.0)中で精製した酵素溶液を10分間種々の温度でインキュベートし、ついで残存活性を測定することにより評価した。結果を図4に示す。PnFPOXの活性は、50℃まで約75%維持した。これは、50℃でほぼすべての活性が失われる公知のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX−CおよびFPOX−E)(同書にあるHirokawa et al.)と対照的である。
【0049】
実施例3
フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルアミンの測定
【0050】
(1) FV − m−PMS/DCIP 系
フルクトシルバリン(FV)を、0.6mM PMSおよび0.06mM DCIPの存在下でm−PMS/DCIP系においてPnFPOXを用いてアッセイした。600nmの吸光度をモニターした。結果を図5に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1mMの間の範囲内で測定することができる。
【0051】
(2) F6P − 4AA/TODB/POD
HbA1cベータ鎖のN−末端アミノ酸残基を有するフルクトシルヘキサペプチド(F6P:Fru−Val−His−Leu−Thr−Pro−Glu)を、PnFPOXを用いてアッセイした。PBS緩衝液(pH7.4)中で最終濃度300μMのフルクトシルヘキサペプチドの溶液に、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)由来のプロテイナーゼN(シグマ社)を最終濃度20mg/mlで添加し、37℃で10分間インキュベートした。プロテイナーゼNを、10kDa排除スピンカラムで除去し、切断産物を4AA/TODB/POD系においてPnFPOXでアッセイした。試料中のフルクトシルヘキサペプチドの量は、基質としてFVHで作製した較正曲線を用いて計算した。結果は300μMのFVHが検出されたことを示した(図6)。
【0052】
(3) HbA1c − 4AA/TODB/POD
末梢血から赤血球を単離し、ボロン酸カラムにより精製した。吸着および非吸着画分をそれぞれHbA1c試料およびHb試料と指定した。これらの試料を、0.2%HClを含むアセトンにおいて脱ヘム処理に付し、脱−ヘムHbA1cおよび脱−ヘムHb試料を調製した。PBS緩衝液(pH7.4)中で最終濃度300μMの脱−ヘムHbA1c試料および脱−ヘムHb試料に、プロテイナーゼNを最終濃度20mg/mlで添加し、37℃で10分間インキュベートした。プロテイナーゼNは、10kDa排除スピンカラムで除去し、切断産物を4AA/TODB/POD系においてPnFPOXでアッセイした。試料中のHbA1cの量は、プロテイナーゼN−処理Hbの存在下で基質としてFTVにより作製した較正曲線を用いて計算した。結果は350μMのFVHが検出されたことを示した(図7)。FVHは、Hbから検出されず、HbA1cが特異的に検出できることを示している。
【0053】
(4) FV − 電極 − H2O2 系
PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を、1.7ulの6%光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)で、最終濃度2%で混合し、混合物の5μlを、7mm2の表面積を有するPt電極上に適用した。電極を30℃で30分間風乾し、UV光を1分間照射し、作用電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mlの50mM PPB(pH7.0)に浸漬し、Ag/AgClに対し+600mVを適用した。定常電流が観測された場合、表示された量のFVを含む試料溶液を反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図8に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0054】
(5) FV − 電極 プルシアンブルー 系
ガラス状炭素電極(BAS、表面積7mm2)を1mM FeCl3、1mM フェリシアン化カリウムおよび2M KClの溶液中に浸漬し、Ag/AgClに対し+0.4Vの電圧を1分間かけ、プルシアンブルー膜を作製した。その後、電極を、Ag/AgClに対し−50mVから+350mVまで5mV/秒の掃引速度で10回CV処置に付し、プルシアンブルー膜を安定化させた。電極を水で洗浄し乾燥させた。PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を6%の光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)1.7ulと最終濃度2%に混合し、電極上に適用し、電極を30℃で30分風乾し、その後、UV光を1分間照射し、作用電極としてプルシアンブルー酵素固定化電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mlの50mM PPB(pH7.0)に浸漬し、Ag/AgClに対し−150mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図9に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1mMの範囲内で測定することができる。
【0055】
(4) FV − 電極 − NA 系
PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を6%の光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)1.7ulと最終濃度2%に混合し、混合物の5μlを、表面積7mm2の金電極上に適用した。電極を30℃で30分風乾し、UV光を1分間照射し、作用電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、5mM N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−3−メトキシ−4−ニトロソアニリン(NA)を含む50mM PPB(pH7.0)2mlに浸漬し、Ag/AgClに対し+200mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。酸素の影響を回避するために、Arガスで反応チャンバー中を連続的に不活化した。結果を図10に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0056】
(5) FV − 電極 − m−PMS 系
PnFPOX固定化金電極を前記(4)に記載したように作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mM m−PMSを含む50mM PPB(pH7.0)2mlに浸漬し、Ag/AgClに対し+100mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図11に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0057】
実施例4
フルクトシルペプチジルオキシダーゼのフルクトシルヘキサペプチドに対するオキシダーゼ活性
【0058】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼPnFPOXおよびFPOX−Cのフルクトシルヘキサペプチド(F6P:Fru−Val−His−Leu−Thr−Pro−Glu)に対するオキシダーゼ活性は、プロテイナーゼNの添加なしにアッセイされた。酵素活性は、実施例2に記載されているような4AA/TODB/POD系において、FVおよびFVHの基質濃度1mMおよびF6P 5mMで測定された。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼPnFPOXは、フルクトシルヘキサペプチドを酸化することができた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規フルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX)に関する。より詳細には、本発明は、糖化アルブミン、フルクトサミン、HbA1c、フルクトシルヘキサペプチド、フルクトシルバリンおよびフルクトシルバリルヒスチジンなどの糖化タンパク質の測定用キットおよびセンサーに使用するためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
糖化タンパク質は、タンパク質上のアミノ基と糖の還元末端との間の共有結合を介して非酵素的に生成され、アマドリ化合物とも言われる。血中において、グルコースはヘモグロビンのβ鎖のN末端のバリンに結合し、糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン;HbA1c)を生成する。ヘモグロビン(Hb)に対するHbA1cの存在比は、正常な健常個体と比較して糖尿病患者においてより高く、HbA1cの血中濃度は、過去数週間の血糖値を反映することが知られている。したがって、HbA1cの血中濃度は、糖尿病の診断のための臨床試験において、また糖尿病患者の血糖コントロールにおいて非常に重要である。血中のHbA1c濃度は、フルクトシルバリンに特異性を有する酵素を用いて測定することが可能である。
【0003】
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、フルクトシルアミノ酸が酸化され、2−ケト−D−グルコースと対応するアミノ酸を生成する反応を触媒するFAD依存性酵素である。フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、種々の生物から単離されており、糖化アルブミン、HbA1cおよびフルクトサミンなどの糖化タンパク質がそのような酵素を用いて分析できることが示唆されている。
【0004】
HbA1cを高い特異性でアッセイするためには、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、好ましくは、フルクトシルリジンと比較してフルクトシルバリンに対する選択性を有する。より好ましくは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、HbのN−末端の2つのアミノ酸残基に対応するフルクトシルバリルヒスチジンに対してオキシダーゼ活性を有する。Hirokawaら(Biochem Biophys Res Commun, 311(1), 2003, 104-111)は、アカエトミエラ属(Achaetomiella)およびケトミウム属(Chaetomius)の糸状菌由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを開示している。
【0005】
本発明の目的は、糖化タンパク質の測定に使用するための新規なフルクトシルペプチジルオキシダーゼを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、図1(配列番号:1)に示されるアミノ酸配列を有するファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼの発見に基づく。1つの側面において、本発明は、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して1mM以下のKm値を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。本発明はまた、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して10U/mg・mM以上のVmax/Km値を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。本発明はまた、配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%同一性を有し、50℃で10分間加熱処理した場合に50%以上の残存活性を有する、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのフルクトシルペプチジルオキシダーゼの使用を提供する。
【0007】
別の側面において、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法であって、試料を前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、およびフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む方法を提供する。
【0008】
また別の側面において、本発明は、HbA1cをアッセイするための方法であって、試料中のHbA1cを消化して、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む方法を提供する。
【0009】
さらに別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含む装置を提供する。好ましくは、電子移動メディエーターは、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである。また、好ましくは、装置は、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬をさらに含む。
【0010】
別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットであって、前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含むキットを提供する。
【0011】
なお別の側面において、本発明は、電極上に固定化された前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極を提供する。好ましくは、フルクトシルペプチジルオキシダーゼは、光架橋性ポリビニルアルコール樹脂を用いて電極上に固定化される。
【0012】
また別の側面において、本発明は、作用電極として本発明の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、糖尿病状態の診断およびコントロールにおいて臨床的に有用なヘモグロビン(HbA1c)などの糖化タンパク質の測定のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルペプチジルオキシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【図2】フルクトシルペプチジルオキシダーゼの精製手順を示す。
【図3】精製されたフルクトシルペプチジルオキシダーゼのSV曲線を示す。
【図4】フルクトシルペプチジルオキシダーゼの熱安定性を示す。
【図5】m−PMS/DCIP系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図6】フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルヘキサペプチドの測定を示す。
【図7】フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるHbA1cの測定を示す。
【図8】H2O2系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図9】プルシアンブルー系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図10】ニトロソアニリン(NA)系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【図11】m−PMS系におけるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する電極を用いるフルクトシルバリンの測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(PnFPOX)は、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)に由来し、図1(配列番号:1)に示すアミノ酸配列を有する。配列番号:1に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する改変されたアミノ酸配列を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの変異体もまた、本発明において使用することができる。好ましくは、配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%である。ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)のゲノム配列は公開されているが、この遺伝子には注釈は付けられていない。ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)がフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有するという、またはその遺伝子がいかなるタイプの酵素をコードし得るという示唆や暗示は存在していなかった。
【0016】
PnFPOXのアミノ酸配列は、FPOX−E(ユーペニシリウム・テレヌム(Eupenicillum terrenum) ATCC 18547;ジーンバンク:BAD00185.1)と71%の同一性、そしてFPOX−C(コニオカエタ・エスピー(Coniochaeta sp.) NISL 9330;ジーンバンク:BAD00186.1)と74%の同一性を示す。他の公知のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼとの配列相同性は、約30%である。
【0017】
下記実施例に記載するように、PnFPOXは、フルクトシルリジンに対してよりもフルクトシルバリンに対してより高い活性を示す。また、フルクトシルバリルヒスチジンに対してさらにより高い活性を示す。PnFPOXのフルクトシルバリルヒスチジンに対するKm値は、1mM以下、好ましくは0.5mM以下、より好ましくは0.3mM以下であり、FPOX−EおよびFPOX−CのKm値より約10倍小さい。PnFPOXのフルクトシルバリルヒスチジンに対するVmax/Km値は、10U/mg・mM以上である。この特徴は、より高い感度および特異性でHbA1cをアッセイするための酵素の使用において特別有利な点である。
【0018】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼの別の有利な特徴は、その熱安定性である。PnFPOXは、10mM PPB(pH7.0)中で10分間、50℃で加熱処理された場合、約75%の残存活性が観測された。
【0019】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、当技術分野において周知の技術を用いて組換え発現により製造することができる。PnFPOXの核酸配列は、ジーンバンク:XP_001798711.1にある。その配列は、選択された宿主生物においてより大きな発現レベルを達成するように適切に改変または設計されてもよい。PnFPOXをコードするポリヌクレオチドは、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)からクローン化でき、または化学的に合成された一連のオリゴヌクレオチドを用いてPCRにより製造してもよく、あるいは自動DNA合成器を用いて完全に合成してもよい。
【0020】
PnFPOXをコードする遺伝子は、適切な発現ベクター中に挿入され、そのベクターは、大腸菌(E. coli)などの適切な宿主細胞中に導入される。形質転換体を培養し、その形質転換体において発現されたフルクトシルペプチジルオキシダーゼを、細胞または培養培地から回収することができる。
【0021】
かくして得られた組換えフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、当技術分野において公知の任意の精製技術、たとえばイオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析沈殿、溶媒沈殿、免疫沈降、ゲル電気泳動、等電点電気泳動および透析などにより精製することができる。
【0022】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、試料中の糖化タンパク質のアッセイにおいて有用である。アッセイ法は、試料を本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、およびフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む。本発明によりアッセイされる糖化タンパク質としては、たとえばフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチド、HbA1c、糖化アルブミンおよびフルクトサミンなどが挙げられる。ある側面において、本発明は、試料中のHbA1cを消化してフルクトシルバリンを生成すること、そのフルクトシルバリンを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンの量を測定することを含むHbA1cをアッセイする方法を提供する。HbA1cは、プロテアーゼやプロテイナーゼNなどのプロテイナーゼで消化することができる。好ましい実施態様においては、その方法は、試料中のHbA1cをプロテイナーゼNで消化してフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、そのフルクトシルバリルヒスチジンを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む。別の側面では、本発明は、HbA1cをエンドプロテアーゼGlu−Cにより消化してフルクトシルヘキサペプチドを生成すること、およびそのフルクトシルヘキサペプチドを本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼによりアッセイすることによりHbA1cをアッセイする方法を提供する。今回、驚くべきことに、ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが、フルクトシルヘキサペプチドを酸化することができることが見出された。一方、先行技術であるFPOX−C(コニオカエタ・エスピー(Coniochaeta sp.) NISL 9330;ジーンバンク:BAD00186.1)にはそのような能力はない。
【0023】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量の測定は、当技術分野において公知の任意の方法により、たとえば4AA/TODB/POD(4−アミノアンチピリン/N,N−ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアニリン二ナトリウム塩/西洋ワサビペルオキシダーゼ)などのH2O2検出試薬を用いるか、またはPt電極により生成されたH2O2の量を測定することによってなすことができる。あるいは、アッセイは、電子メディエーターの存在下で実行することができ、そのメディエーターに移動された電子の量が、たとえば、mPMS/DCIP(メチル硫酸1−メトキシ−5−メチルフェナジニウム/2,6−ジクロロインドフェノール)、cPES(トリフルオロ酢酸−1−(3−カルボキシ−プロポキシ)−5−エチル−フェナンジニウム、NA BM31_1144(N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−3−メトキシ−ニトロソアニリン塩酸塩、NA BM31_1008(N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリン)およびN−N−4−ジメチル−ニトロソアニリンなどを用いて測定される。これらの中では、NA BM31_1008が特に好ましい。
【0024】
別の側面において、本発明は、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを含む装置を提供する。
【0025】
アッセイ装置は、任意の従来の市販されている血糖値をモニターするための電流測定バイオセンサーのテストストリップと同様の構造を有することができる。そのような装置の1つの例は、絶縁基材上に配置された2つの電極(作用電極と参照または対電極)、試薬ポートおよび試料受け(receiver)を有する。試薬ポートは、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、FAD、および電子移動メディエーターを含む。血液試料などの試料を、試料受けに添加すると、試料中に含まれるフルクトシルアミンがフルクトシルペプチジルオキシダーゼと反応して電流を生じ、これが該試料中のフルクトシルアミンの量の指標となる。全血が試料として使用される場合、装置には溶血のための試薬を含むこともできる。特に、好ましい溶血試薬は、サポニンである。別の好ましい実施態様においては、装置は、全血試料中に含まれる成分の還元により生じるセンサーのバックグラウンド電流を減少させるためにビリルビンオキシダーゼ(BOD)を含むこともできる。別の好ましい実施態様において、装置は、血液中に存在する糖化アルブミンからフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの放出を行うためにプロテイナーゼNを含むこともできる。サポニン、BODおよびプロテイナーゼNは、全血試料がサポニンと接触して溶血され、その後BODおよびプロテイナーゼNと接触するように、装置上に独立して固定化されてもよい。酵素基質の測定のために適した電気化学センサーの典型的な例は、たとえば国際公開第2004/113900号および米国特許第5,997,817号明細書より公知である。電気化学センサーの代替物としては、光学的検出技術も使用可能なはずである。典型的には、そのような光学的装置は、酵素、電子移動メディエーターおよび指示薬を含む試薬系において起こる色の変化に基づくものである。色の変化は、蛍光、吸収または緩和(remission)測定を用いて定量することができる。酵素基質の測定に適した光学的装置の典型的な例は、たとえば米国特許第7,008,799号明細書、米国特許第6,036,919号明細書および米国特許第5,334,508号明細書により公知である。
【0026】
なお別の側面において、本発明は、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを含む、試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットを提供する。
【0027】
フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジンまたはフルクトシルヘキサペプチドの測定のためのキットは、本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼにより構築することができる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼに加えて、キットは、測定のために必要な緩衝液、適切なメディエーター、較正曲線の作製のためのフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジンまたはフルクトシルヘキサペプチドまたはそれらの誘導体の標準品、および使用説明書を含んでもよい。キットは、HbA1cを消化してフルクトシルヘキサペプチドを生成するためのエンドプロテアーゼGlu−Cを含むこともできる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、様々な形態、たとえば凍結乾燥試薬または適切なストレージソリューションの溶液として提供されてもよい。
【0028】
本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いて、フルクトサミン、糖化アルブミンまたはHbA1cアッセイキットを構築することも可能である。フルクトシルアミン、糖化アルブミンまたはHbA1cは、酵素的にまたは化学的に消化され、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンなどのフルクトシルアミン化合物を生成し、これが次に本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いて定量される。したがって、フルクトサミン、糖化アルブミンまたはHbA1cのための本発明のアッセイキットは、さらに加水分解のための試薬またはプロテイナーゼを含むことができる。好ましいプロテイナーゼは、HbA1cを消化してフルクトシルバリルヒスチジンを生成するプロテイナーゼNである。
【0029】
別の側面において、本発明は、電極上に固定された本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極を提供する。好ましい実施態様において、本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、BODおよびプロテイナーゼNがフルクトシルアミノ酸オキシダーゼおよびそのメディエーターと接触しないようにポリマーを用いて電極に固定化される。さもなければ、BODは、メディエーターの酸化還元特性を干渉し、またプロテイナーゼNはフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを分解するであろう。好ましいポリマーは、たとえば、東洋合成工業株式会社(千葉、日本)から供給されているアジド基ペンダント水溶性感光性樹脂(azide-unit pendant water-soluble photopolymer)(AWP)などの光架橋性ポリビニルアルコール樹脂である。酵素電極を構築するために、AWP、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼおよびNA_BM31_1008などのメディエーターを含む緩衝溶液が電極の表面に適用される。その溶液を乾燥した後、UV光を照射し、ポリマーを架橋させる。
【0030】
別の側面において、本発明は、作用電極として本発明の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサーを提供する。
【0031】
試料中のフルクトシルアミンの濃度は、酵素反応により生成される電子の量を測定することにより決定することができる。本発明のフルクトシルペプチジルオキシダーゼは、炭素電極、金属電極、および白金電極などの電極に固定化される。酵素の固定化は、架橋、高分子マトリックスへの封入、透析膜での被覆、光架橋性ポリマー、電気伝導性ポリマー、酸化−還元ポリマー、または他の当業者に周知の方法、ならびにそれらの組合せによりなすことができる。
【0032】
測定が電流測定系において実施される場合、固定化PnFPOXを有する炭素電極、金電極またはプラチナ電極が作用電極として、対電極(白金電極など)および参照電極(Ag/AgCl電極など)と一緒に使用される。電極は、メディエーターを含有する緩衝液中に挿入され、所定の温度に保たれる。所定の電圧を作用電極に適用し、その後試料を添加、増加した電流の値を測定する。アッセイに使用されるメディエーターの例としては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、ルテニウム誘導体、フェナジンメトスルファート(phenazine methosulfate)などが挙げられる。通常、作用電極と1つの対電極または偽−参照電極とを有するいわゆる二電極系を使用することも可能である。
【0033】
フルクトシルアミン、糖化アルブミンまたはHbA1cの測定のためのセンサーを製造するために、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの測定のための前記センサーは、さらに固定化プロテイナーゼ(プロテイナーゼNまたはプロテアーゼなど、好ましくはプロテイナーゼN)を含む膜と組合せられて複合センサーが構築される。複数の酵素の組合せによる連続反応に基づくそのような複合センサーの構造は、本技術分野において周知である。たとえば、Anthony P. F. Tuner, Isao Karube and George S. Wilsonによる「バイオセンサー−基礎と応用」(“Biosensor-Fundamental and Applications”)、オクスフォード大学出版、1987年を参照。
【0034】
本明細書において引用した全ての特許文献および参考文献の内容は、参照により本明細書中に完全に組み込まれる。
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明されるが、本発明はそれらの実施例に限定されるべきものではない。
【0036】
実施例1
ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum) フルクトシルペプチジルオキシダーゼの製造
【0037】
PnFPOXのヌクレオチド配列は、公的なデータベースにおけるファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum)のゲノム情報(ジーンバンク:XP_001798711.1)にある。推定ORFが大腸菌(E.coli)のいくつかのマイナーコドンに含まれるので、遺伝子のコドン利用を、大腸菌(Escherichial coli)において遺伝子を発現するために最適化した。この最適化の後、顕著なマイナーコドンは配列には存在しない。合成遺伝子を、発現ベクターpET28a中にサブクローニングし、pEPN(pET28a−PnPFOX)を構築した。
【0038】
PnFAOD発現ベクター(pEPN)で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞を、50μg/mlのカナマイシンを追加した50mlのLB培地中で37℃で培養し、IPTG(f.c.0.4mM)をOD660nm=0.8で添加した。OD660nmが約3に達するまで25℃で培養を続けた。細胞を遠心分離(5,000×g、4℃、10分)により回収し、洗浄(0.85% NaCl水溶液、6,000×g、4℃、5分)し、3mlの10mM PPB(pH7.0)に懸濁し、超音波ホモジナイザーにより均質化した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000×g、4℃、20分)し、そして上清をさらに遠心分離(60,000rpm、4℃、60分)した。上清を10mM PPB(pH7.0)+25μM FADに対して透析し、水溶性画分を得た。SDS−PAGE分析において、水溶性画分は、約48〜50kDaにバンドを示した。これはPnFPOXの推定分子量と一致する。
【0039】
水溶性画分を、3つの基質:フルクトシルバリン(FV)、フルクトシルリジン(FK)、およびフルクトシルバリルヒスチジン(FVH)でPOD/TODB/4A.A.法を用いてオキシダーゼ活性について調べた。フルクトシルペプチジルオキシダーゼは、フルクトシルアミノ酸(Fv、FK)に対して酸化活性を示すだけでなく、フルクトシルジペプチド(FVH)にも酸化活性を示した。
【0040】
実施例2
ファエオスフェリア・ノドラム(Phaeosphaeria nodorum) フルクトシルペプチジルオキシダーゼの精製および特徴付け
【0041】
精製手法は、図2にまとめられている。pEPN(pET28a−PnFPOX)で形質転換された大腸菌BL21(DE3)を、カナマイシン50μg/mlを含むLB培地(7L)中において37℃で好気的に培養した。A660nm値が1.4に達した後、細胞を0.3mM IPTGで誘発し、A660nm値が3.0に達するまで25℃でインキュベーションを続けた。細胞を遠心分離により採取し、採取した細胞の4分の1(約10.5g)を10mMのPPB、pH7.0に再懸濁し、フレンチプレス(1,000kg/cm2)に2回かけることにより溶菌した。ライセートを4℃、10,000gで20分遠心分離し、上清を4℃、40,000rpmで90分間遠心分離した。ついで上清を25μM FADを含む10mMのPPB、pH8.0に対して透析した。
【0042】
硫酸アンモニウムを透析した上清に35%飽和まで添加し、ついで形成された沈殿を15,000gで20分間遠心分離によりペレットとした。硫酸アンモニウムが95%飽和まで添加された上清を、15,000gで20分間遠心分離した。得られた沈殿を、25μM FADおよび1%マンノースを含む10mM PPB、pH8.0に溶解し、同じ緩衝液に対して4℃で透析し、その後、25μM FADを含む10mMのPPB、pH8.0に対して透析した。透析された酵素溶液を、10mMのPPB、pH8.0で平衡化したRESOURCE Q カラム(GEヘルスケア社)にかけた。活性な素通り画分(active flow-through fraction)を回収し、FAOD活性を示さない吸着タンパク質を1M NaClで溶出した。活性な素通り画分を回収し、10mMのPPB、pH7.0に対して透析した。
【0043】
透析された酵素溶液を10mMのPPB、pH7.0で平衡化したHiLoad 16/60 Superdex 75pg カラム(GEヘルスケア社)にかけた。同じ緩衝液でゲルろ過クロマトグラフィーを行なった。活性な画分を回収し、精製した酵素溶液を100μM FADを含有する10mMのPPB、pH7.0に対して透析し、4℃に保管した。精製した酵素の純度は、SDS−PAGEにより確認し、タンパク質濃度は、DCタンパク質アッセイキット(バイオ−ラッド(Bio-Rad)社、CA、米国)を用いて測定した。
【0044】
表1にまとめたように、PnFPOXは、硫酸アンモニウム沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、およびゲルろ過クロマトグラフィーにより、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)/pEPN(pET28a−PnFPOX)の細胞抽出物から35倍精製された。精製した調製物は、SDS−PAGE上にほぼ単一のバンドを示した。
【0045】
【表1】
【0046】
オキシダーゼ活性は、基質、FV、FKおよびFVHの種々の濃度により4A.A/TODB/PODを用いてアッセイした。546nmでの吸光度をモニターした。結果は、図3に示す。FVおよびFVHでは典型的なミカエルス−メンテン曲線が得られたが、FKでは得られなかった。見かけのKm値はFVで0.64mM、FVHで0.20mMである(表2)。FVに対する高いVmaxKm-1値(42.8Umg-1mM-1)は、この酵素のFVへの高い特異性を示している。FVHに対するVmaxKm-1値もかなり高いことにも注目すべきである(14.7Umg-1mM-1、FVに対するVmaxKm-1の34%)。PnFPOXのFVHに対するこの活性は、HbA1cの酵素に基づく測定において有益なものとなる。比較のために、公知のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX−CおよびFPOX−E)のオキシダーゼ活性についても表に含めた(同書にあるHirokawa et al.)。
【0047】
【表2】
【0048】
PnFPOXの熱安定性は、10mM PPB(pH7.0)中で精製した酵素溶液を10分間種々の温度でインキュベートし、ついで残存活性を測定することにより評価した。結果を図4に示す。PnFPOXの活性は、50℃まで約75%維持した。これは、50℃でほぼすべての活性が失われる公知のフルクトシルペプチジルオキシダーゼ(FPOX−CおよびFPOX−E)(同書にあるHirokawa et al.)と対照的である。
【0049】
実施例3
フルクトシルペプチジルオキシダーゼを用いるフルクトシルアミンの測定
【0050】
(1) FV − m−PMS/DCIP 系
フルクトシルバリン(FV)を、0.6mM PMSおよび0.06mM DCIPの存在下でm−PMS/DCIP系においてPnFPOXを用いてアッセイした。600nmの吸光度をモニターした。結果を図5に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1mMの間の範囲内で測定することができる。
【0051】
(2) F6P − 4AA/TODB/POD
HbA1cベータ鎖のN−末端アミノ酸残基を有するフルクトシルヘキサペプチド(F6P:Fru−Val−His−Leu−Thr−Pro−Glu)を、PnFPOXを用いてアッセイした。PBS緩衝液(pH7.4)中で最終濃度300μMのフルクトシルヘキサペプチドの溶液に、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)由来のプロテイナーゼN(シグマ社)を最終濃度20mg/mlで添加し、37℃で10分間インキュベートした。プロテイナーゼNを、10kDa排除スピンカラムで除去し、切断産物を4AA/TODB/POD系においてPnFPOXでアッセイした。試料中のフルクトシルヘキサペプチドの量は、基質としてFVHで作製した較正曲線を用いて計算した。結果は300μMのFVHが検出されたことを示した(図6)。
【0052】
(3) HbA1c − 4AA/TODB/POD
末梢血から赤血球を単離し、ボロン酸カラムにより精製した。吸着および非吸着画分をそれぞれHbA1c試料およびHb試料と指定した。これらの試料を、0.2%HClを含むアセトンにおいて脱ヘム処理に付し、脱−ヘムHbA1cおよび脱−ヘムHb試料を調製した。PBS緩衝液(pH7.4)中で最終濃度300μMの脱−ヘムHbA1c試料および脱−ヘムHb試料に、プロテイナーゼNを最終濃度20mg/mlで添加し、37℃で10分間インキュベートした。プロテイナーゼNは、10kDa排除スピンカラムで除去し、切断産物を4AA/TODB/POD系においてPnFPOXでアッセイした。試料中のHbA1cの量は、プロテイナーゼN−処理Hbの存在下で基質としてFTVにより作製した較正曲線を用いて計算した。結果は350μMのFVHが検出されたことを示した(図7)。FVHは、Hbから検出されず、HbA1cが特異的に検出できることを示している。
【0053】
(4) FV − 電極 − H2O2 系
PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を、1.7ulの6%光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)で、最終濃度2%で混合し、混合物の5μlを、7mm2の表面積を有するPt電極上に適用した。電極を30℃で30分間風乾し、UV光を1分間照射し、作用電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mlの50mM PPB(pH7.0)に浸漬し、Ag/AgClに対し+600mVを適用した。定常電流が観測された場合、表示された量のFVを含む試料溶液を反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図8に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0054】
(5) FV − 電極 プルシアンブルー 系
ガラス状炭素電極(BAS、表面積7mm2)を1mM FeCl3、1mM フェリシアン化カリウムおよび2M KClの溶液中に浸漬し、Ag/AgClに対し+0.4Vの電圧を1分間かけ、プルシアンブルー膜を作製した。その後、電極を、Ag/AgClに対し−50mVから+350mVまで5mV/秒の掃引速度で10回CV処置に付し、プルシアンブルー膜を安定化させた。電極を水で洗浄し乾燥させた。PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を6%の光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)1.7ulと最終濃度2%に混合し、電極上に適用し、電極を30℃で30分風乾し、その後、UV光を1分間照射し、作用電極としてプルシアンブルー酵素固定化電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mlの50mM PPB(pH7.0)に浸漬し、Ag/AgClに対し−150mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図9に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1mMの範囲内で測定することができる。
【0055】
(4) FV − 電極 − NA 系
PnFPOX酵素溶液(12u/ml)3.3ul(0.04U)を6%の光架橋性樹脂AWP(東洋合成工業株式会社)1.7ulと最終濃度2%に混合し、混合物の5μlを、表面積7mm2の金電極上に適用した。電極を30℃で30分風乾し、UV光を1分間照射し、作用電極を作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、5mM N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−3−メトキシ−4−ニトロソアニリン(NA)を含む50mM PPB(pH7.0)2mlに浸漬し、Ag/AgClに対し+200mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。酸素の影響を回避するために、Arガスで反応チャンバー中を連続的に不活化した。結果を図10に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0056】
(5) FV − 電極 − m−PMS 系
PnFPOX固定化金電極を前記(4)に記載したように作製した。その電極と対電極(Pt線)および参照電極(Ag/AgCl)を、2mM m−PMSを含む50mM PPB(pH7.0)2mlに浸漬し、Ag/AgClに対し+100mVを適用した。FVを反応混合物に添加し、電流の増加をモニターした。結果を図11に示す。FVの濃度は、0.05mMおよび1.5mMの範囲内で測定することができる。
【0057】
実施例4
フルクトシルペプチジルオキシダーゼのフルクトシルヘキサペプチドに対するオキシダーゼ活性
【0058】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼPnFPOXおよびFPOX−Cのフルクトシルヘキサペプチド(F6P:Fru−Val−His−Leu−Thr−Pro−Glu)に対するオキシダーゼ活性は、プロテイナーゼNの添加なしにアッセイされた。酵素活性は、実施例2に記載されているような4AA/TODB/POD系において、FVおよびFVHの基質濃度1mMおよびF6P 5mMで測定された。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
フルクトシルペプチジルオキシダーゼPnFPOXは、フルクトシルヘキサペプチドを酸化することができた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して1mM以下のKm値を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項2】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して10U/mg・mM以上のVmax/Km値を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項3】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ50℃で10分間熱処理した場合に50%以上の残存活性を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項4】
試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法であって、試料を請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および該フルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む方法。
【請求項5】
HbA1cをアッセイするための方法であって、試料中のHbA1cを消化してフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む方法。
【請求項6】
試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含む装置。
【請求項7】
前記電子移動メディエーターが、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである請求項6記載の装置。
【請求項8】
さらに、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬を含む請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットであって、請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含むキット。
【請求項10】
前記電子移動メディエーターが、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである請求項9記載のキット。
【請求項11】
さらに、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬を含む請求項10または11記載のキット。
【請求項12】
電極上に固定化されている請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極。
【請求項13】
前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼが、アジド基ペンダント水溶性感光性樹脂(AWP)を用いて電極上に固定化される請求項12記載の酵素電極。
【請求項14】
さらに、電極上に固定されたN,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンを含む請求項12または13記載の酵素電極。
【請求項15】
作用電極として請求項12〜14のいずれか1項に記載の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサー。
【請求項1】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して1mM以下のKm値を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項2】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつフルクトシルバリルヒスチジンに対して10U/mg・mM以上のVmax/Km値を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項3】
配列番号:1記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ50℃で10分間熱処理した場合に50%以上の残存活性を有するフルクトシルペプチジルオキシダーゼの、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための使用。
【請求項4】
試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法であって、試料を請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および該フルクトシルペプチジルオキシダーゼにより酸化された糖化タンパク質の量を測定することを含む方法。
【請求項5】
HbA1cをアッセイするための方法であって、試料中のHbA1cを消化してフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを生成すること、フルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンを請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼと接触させること、および酸化されたフルクトシルバリンまたはフルクトシルバリルヒスチジンの量を測定することを含む方法。
【請求項6】
試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための装置であって、請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含む装置。
【請求項7】
前記電子移動メディエーターが、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである請求項6記載の装置。
【請求項8】
さらに、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬を含む請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
試料中のフルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするためのキットであって、請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼ、および電子移動メディエーターを含むキット。
【請求項10】
前記電子移動メディエーターが、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンである請求項9記載のキット。
【請求項11】
さらに、サポニン、ビリルビンオキシダーゼおよびプロテイナーゼNから選択される1つ以上の試薬を含む請求項10または11記載のキット。
【請求項12】
電極上に固定化されている請求項1〜3のいずれか1項に定義されるフルクトシルペプチジルオキシダーゼを有する酵素電極。
【請求項13】
前記フルクトシルペプチジルオキシダーゼが、アジド基ペンダント水溶性感光性樹脂(AWP)を用いて電極上に固定化される請求項12記載の酵素電極。
【請求項14】
さらに、電極上に固定されたN,N−ビス−ヒドロキシエチル−4−ニトロソアニリンを含む請求項12または13記載の酵素電極。
【請求項15】
作用電極として請求項12〜14のいずれか1項に記載の酵素電極を含む、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、フルクトシルヘキサペプチドまたはHbA1cをアッセイするための酵素センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−500728(P2013−500728A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523235(P2012−523235)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004707
【国際公開番号】WO2011/015325
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【出願人】(503195850)有限会社アルティザイム・インターナショナル (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004707
【国際公開番号】WO2011/015325
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【出願人】(503195850)有限会社アルティザイム・インターナショナル (31)
【Fターム(参考)】
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