説明

フルニソリド含有粘膜適用組成物

【課題】本発明の目的は、優れた保存効力及び抗アレルギー作用を有しているフルニソリド含有粘膜適用組成物を提供することである。
【解決手段】(A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を組み合わせて配合
して、粘膜適用組成物を調製する。特に、(B)血管収縮剤として、ナファゾリン、テトラ
ヒドロゾリン、又はこれらの塩を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた保存効力を及び抗アレルギー作用を有しているフルニソリド含有粘膜適用組成物に関する。更に、本発明は、フルニソリド含有粘膜適用組成物に保存効力を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルニソリドは、抗アレルギー作用を有している合成副腎皮質ホルモンであり、アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎等に適用される粘膜適用組成物(特に、点鼻剤)に使用されている。
【0003】
従来、粘膜適用組成物を調製する場合、薬理活性成分以外に、空気中、涙液中、鼻道、気管支、外耳道等に存在する微生物による二次汚染を防止する目的で、保存剤が配合されている。従来、粘膜適用組成物には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラベン等の保存剤が配合されている。しかしながら、これらの保存剤は、感染頻度が高い日和見感染菌等に対しては十分な効果が得られないという問題があり、とりわけ鼻腔内に投与する点鼻剤の場合、Burkholderia cepaciaに汚染された製剤を使用することが特に嚢胞性線維症患者に対して気道機能を悪化させることが懸念される(非特許文献1参照)。また、薬剤の保存性を高めるために保存剤の配合量を増やすと、粘膜刺激性の増大などの副作用を引き起こす可能性がある。このような保存剤の欠点に加え、近年、医薬分野での安全性に対する関心の高まりによって、従来の保存剤を使用せずに、又はその使用量を低減して、保存効力を十分に備えさせる技術が切望されている。
【0004】
また、これまでに、Burkholderia cepaciaに対する保存効力の増強には、塩化ベンザルコニウムとフェニルエチルアルコールを併用することが有効であると報告されている(特許文献6参照)。また、四級アンモニウム塩及びパラオキシ安息香酸アルキルエステルを有効成分として含有する保存剤が、Burkholderi acepaciaに対する保存効力に優れていることも報告されている(特許文献7参照)。更に、エチレンジアミン四酢酸塩類には、弱い抗菌活性があることが知られている。
【0005】
しかしながら、フルニソリド自体が保存効力の増強に関与することは、これまで明らかにされていない。
【0006】
一方、フルニソリドを含む粘膜適用組成物に関しては、有効性の向上を期待した組み合わせが種々報告されている。例えば、フルニソリド、フマル酸ケトチフェン及び血管収縮剤を含む鼻炎用点鼻剤(特許文献1参照);フルニソリド、クロモグリク酸ナトリウム及び血管収縮剤を含む鼻炎用点鼻剤(特許文献2参照);フルニソリド及び抗ヒスタミン剤を含む鼻炎用点鼻剤(特許文献3参照)等が開示されている。しかしながら、これまでに、フルニソリドを含む粘膜適用組成物において、花粉症の予防乃至治療効果を向上させ、更に保存効力を高めるための技術的手段については明らかにされていない。
【0007】
近年、アレルギー疾患について精力的な検討がなされ、その発症機序について明らかにされている。例えば、I型アレルギーであるアレルギー性鼻炎の場合であれば、スギ花粉
等の抗原との接触によって特異的IgE抗体が産生され、これが鼻粘膜肥満細胞上の受容体
に結合することで感作が成立する。ここに、抗原が再度暴露されると、抗体抗原反応の結果、肥満細胞の脱顆粒が起こり、ヒスタミン等のケミカルメディエーターが遊離され、これによってアレルギー症状が生じる。I型アレルギーの中でも、花粉症は、その患者数が
増加の一途を辿っており、大きな社会問題にもなっている。この花粉症の誘発因子である
花粉粒子は、強固な外壁と内膜に覆われ、アレルゲンとなるタンパク質は外壁表面と内膜に覆われた花粉内に存在する。それ故、花粉症によるアレルギー作用を抑制するには、花粉の破裂を抑制することが有効であると考えられている。これまでに、花粉の破裂抑制に有用な剤としては、低級アルコール及び水膨潤性粘土鉱物を含む組成物(特許文献4参照)、分子内に炭素数3〜18のアルキレン部分を有する水溶性化合物を配合する粘膜用洗浄剤(特許文献5参照)等が開示されている。しかしながら、フルニソリド自体は花粉の破裂抑制作用を有しておらず、フルニソリドと花粉の破裂抑制作用との関連性についての報告も一切ない。
【0008】
しかるところ、フルニソリド含有粘膜適用組成物において、優れた保存効力と共に、優れた抗アレルギー作用、特に優れた花粉症の予防乃至治療作用を備えさせることが有用であるが、その具体的手段については未だ明らかにされてないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-328437号公報
【特許文献2】特開平10-1442号公報
【特許文献3】特表平11-511758号公報
【特許文献4】特開2002-316925号公報
【特許文献5】特開2000-109425号公報
【特許文献6】特表2003-506396号公報
【特許文献7】特開2006-348018号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Clin.Microbiol., 34(3), 584-587(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れた保存効力及び抗アレルギー作用を有しているフルニソリド含有粘膜適用組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、フルニソリド含有粘膜適用組成物に保存効力を付与する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、驚くべきことに、フルニソリド、血管収縮剤、及びキレート剤を一体として配合した粘膜適用組成物によれば、保存効力が顕著に向上し、特にBurkholderia cepaciaに対しても有効な保存効力を発揮できることを見出した。更に、該粘膜適用組成物によれば、花粉の破裂抑制作用が相乗的に増強されており、抗アレルギー作用、特に花粉症の予防乃至治療作用に優れていることを見出した。とりわけ、血管収縮剤として、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、又はこれらの塩を採用し、且つキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸又はその塩を採用することによって、上記有用作用がより有効に発現されることを見出した。そして更に、フルニソリド、血管収縮剤、及びキレート剤と共に、モノテルペンを配合することによって、粘膜適用組成物の光安定性が向上し、光曝露による着色を抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0013】
即ち、本発明は、下記に掲げるフルニソリド含有粘膜適用組成物である:
項1. (A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有することを特徴と
する、粘膜適用組成物。
項2. (B)成分が、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン
、メチルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1記載の粘膜適用組成物。
項3. (C)成分が、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、
トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩よりなる群から選
択される少なくとも1種である、項1記載の粘膜適用組成物。
項4. 更に、モノテルペンを含有する、項1乃至3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
項5. モノテルペンがl-メントールである、項4に記載の粘膜適用組成物。
項6. 点鼻剤である、項1乃至4のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
項7. 花粉症の予防乃至治療用である、項1乃至6のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【0014】
更に、本発明は、下記に掲げる防腐剤組成物を提供する:
項8.(A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有する保存剤組成物。
項9. (B)成分が、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン
、メチルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項8記載の保存剤組成物。
項10. (C)成分が、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸
、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項8記載の保存剤組成物。
項11. Burkholderia cepaciaに対する殺菌又は増殖抑制用である、項8乃至10のいずれかに記載の保存剤組成物。
【0015】
そして更に、本発明は、下記に掲げる保存効力の付与方法を提供する:
項12. (A)フルニソリドを含有する粘膜適用組成物に保存効力を付与する方法であっ
て、該粘膜適用組成物に(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を配合することを特徴とする、保存効力の付与方法。
項13. (B)成分が、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリ
ン、メチルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項12記載の方法。
項14. (C)成分が、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸
、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項12記載の方法。
項15. 粘膜適用組成物が点鼻剤である、項12乃至14のいずれかに記載の方法。
【0016】
また、本発明は、下記に掲げる光安定性の改善方法を提供する:
項16. (A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有する粘膜適用組
成物に、モノテルペンを配合することを特徴とする、該粘膜適用組成物の光安定性の改善方法。
項17. (B)成分が、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリ
ン、メチルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項16記載の方法。
項18. (C)成分が、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸
、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項16記載の方法。
項19. モノテルペンがl-メントールである、項16記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘膜適用組成物では、フルニソリド、血管収縮剤、及びキレート剤を一体不可分として含有することによって、優れた保存効力を備えることができ、特にBurkholderia
cepaciaに対しても効果的な殺菌又は増殖抑制作用を奏功することができる。
【0018】
また、本発明の粘膜適用組成物は、優れた花粉の破壊抑制効果を奏するので、粘膜上に接触した花粉の破裂程度が抑えられ、花粉によるアレルギー症状を有効に改善するという利点もある。
【0019】
更に、フルニソリド、血管収縮剤、及びキレート剤と共に、モノテルペンを含む粘膜適用組成物は、光に対する安定性にも優れており、長期間保存しても着色化を抑制して性状を安定に維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において、水性組成物とは、組成物中に水を少なくとも5重量%以上、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上含有する組成物を意味する。更に、本明細書において、保存効力とは、細菌の繁殖を防止して、腐敗を生じさせない作用又は性質のことを示し、当該保存効力には、静菌及び殺菌の双方の作用又は性質を包含される。ここで、静菌とは細菌の菌数を増加させないことであり、殺菌とは細菌を死滅させ菌数を減じさせることである。
【0021】
(I)粘膜適用組成物
本発明の粘膜適用組成物は、フルニソリド(以下、単に(A)成分と表記することもある
)を含有する。フルニソリドは、6α−フルオロ−11β,16α,17,21−テトラヒドロキシ−1,4−プレグナジエン−3,20−ジオン−16,17−アセトニドとも称される合成副腎皮質ホルモンである。本発明において、フルニソリドは1/2水和物等の
水和物の形態のものを使用することもできる。
フルニソリドは、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0022】
本発明の粘膜適用組成物中の(A)成分の配合割合は、特に制限されるものではなく、該
組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。該(A)成分の配合割合の一例として、粘
膜適用組成物の総量当たり、通常0.001〜0.05重量%、好ましくは0.003〜0.03重量%、好ましくは0.005〜0.025重量%が例示される。このような割合でフルニソリドを含むことによって、粘膜適用組成物において、抗アレルギー作用及び防腐効力を一層効果的に獲得することができる。
【0023】
また、本発明の粘膜適用組成物は、血管収縮剤(以下、単に(B)成分と表記することも
ある)を含有する。血管収縮剤とは、血管を収縮させ、充血を緩和乃至消失する作用を有し、充血除去剤として使用されている薬物のことである。血管収縮剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン、及びこれらの塩が挙げられる。上記化合物の塩の形態としては、塩酸塩、硝酸塩等の無機酸塩が例示される。また、上記化合物及びその塩は、水和物の形態であってもよい。これらの中で、本発明の目的や薬理作用等の観点から、好ましいものとして、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン及びこれらの塩;更に好ましいものとして、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン及びこれらの塩;特に好ましいものとして、塩酸ナファゾリン及び塩酸テトラヒドロゾリンが挙げられる。本発明において、(B)成分として、これらの血管収縮剤の中から1種を
選択し単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の粘膜適用組成物中の(B)成分の配合割合は、特に制限されるものではなく、該
組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。該(B)成分の配合割合の一例として、粘
膜適用組成物の総量当たり、該(B)成分の総量が通常0.00005〜2重量%、好ましくは0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%が例示される。このような割合で血管収縮剤を含むことによって、前述する本発明の効果をより有効に奏させることが可能になる。
【0025】
また、本発明の粘膜適用組成物は、キレート剤(以下、単に(C)成分と表記することも
ある)を含有する。本発明において使用されるキレート剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、エデト酸、クエン酸、コハク酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、保存力の増強及び花粉の破裂抑制をより一層有効に発現させるという観点から、エチレンジアミン四酢酸及びその塩が挙げられる。ここで、エチレンジアミン四酢酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム(エデト酸ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸バリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸コバルトエチレンジアミン四酢酸銅、エチレンジアミン四酢酸ニアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸ニリチウム、エチレンジアミン四酢酸ニカリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄、エチレンジアミン四酢酸ランタン、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸ニッケル、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛等が例示される。エチレンジアミン四酢酸又はその塩は、水和物の形態で使用することもできる。水和物の形態のものとして、具体的には、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの2水和物が例示できる。エチレンジアミン四酢酸及びその塩の中で、本発明の目的や薬理作用等の観点から、好ましいものとして、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムが挙げられる。本発明において、(C)成分として、エチレンジアミン四酢
酸又はその塩を1種単独で使用してもよく、またこれらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の粘膜適用組成物中の(C)成分の配合割合は、特に制限されるものではなく、該
組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。該(C)成分の配合割合の一例として、粘
膜適用組成物の総量当たり、該(C)成分の総量が通常0.001〜10重量%、好ましくは0.005
〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%が例示される。このような割合でキレート剤を含むことによって、前述する本発明の効果をより有効に奏させることが可能になる。
【0027】
また、本発明の粘膜適用組成物において、抗アレルギー作用及び防腐効力をより一層顕著ならしめるという観点から、上記(A)〜(C)成分は、上記配合割合を満たし、且つ以下の比率を充足することが望ましい:(A)成分100重量部当たり、(B)成分が10〜10000重量部且つ(C)成分が10〜10000重量部、好ましくは(B)成分が20〜1000重量部且つ(C)成分が20〜1000重量部、更に好ましくは(B)成分が50〜200重量部且つ(C)成分が50〜200重量部。
【0028】
本発明の粘膜適用組成物には、モノテルペンを含有してもよい。上記(A)〜(C)成分と共に、モノテルペンを組み合わせて含有することにより、粘膜適用組成物の経時的安定性を高め、長期間保存後に不可避的に生じる粘膜適用組成物の着色化(特に、粘膜適用組成物が水性組成物の場合の着色化)を抑制することができる。モノテルペンとしては、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、メントール、カンフル、ボルネオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、ゲラニオール、ピネン、フェランドレン、リナロール、シトロネロール、シトロネラール、メントン及びカルボ
ン等を挙げることができる。これらはd体、l体又はdl体の別を問うものではない。これらの中で、上記(A)〜(C)成分を含む粘膜適用組成物の光曝露による着色化を一層有効に抑制させるという観点から、好ましくはメントール、更に好ましくはl−メントールが挙げられる。また、上記モノテルペンとして、該モノテルペンを含有する精油を使用することもできる。上記モノテルペンを含有する精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、スペアミント油、ペパーミント油、クールミント油、ハッカ油等を例示することができる。これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の粘膜適用組成物にモノテルペンを配合する場合、その配合割合は、特に制限されるものではなく、該組成物の用途や形態等に応じて適宜設定できる。モノテルペンの配合割合の一例として、粘膜適用組成物の総量当たり、モノテルペンが総量で、通常0.0001〜0.5重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%が例示される。
【0030】
本発明の粘膜適用組成物は、上記成分に加えて、更に緩衝剤を含有していてもよい。本発明の粘膜適用組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、ε−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩などが挙げられる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明の効果を一層効率的に奏させる観点から、上記緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤が好適である。ホウ酸緩衝剤の具体例として、ホウ酸及びその塩(ホウ酸ナトリウム、テ
トラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)が例示さ
れる。特に、ホウ酸、ホウ砂が好適である。
【0031】
本発明の粘膜適用組成物に緩衝剤を配合する場合、該緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類や期待される効果等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、粘膜適用組成物の総量当たり、該緩衝剤が0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%となる割合が例示される。
【0032】
また、本発明の粘膜適用組成物には、上記(A)〜(C)成分を組み合わせて含有することにより、保存効力が備わっているので、保存剤を別途添加しなくてもよいが、必要に応じて、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラベン類、ソルビン酸、フェネチルアルコール、グルコン酸クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、硫酸オキシキノリン、アクリノール、塩化セチルピリジニウム等の保存剤を含んでいてもよい。本発明の粘膜適用組成物は、保存効力の点からは、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の保存剤に耐性を示すBurkholderia cepaciaに対しても、効果的な殺菌又は増殖抑制を示すことができるという利点がある。
【0033】
また、本発明の粘膜適用組成物が水性組成物の場合には、上記(A)〜(C)成分の化学的安定性が著しく損なわれない範囲で、生体に許容される範囲内のpHに調節することができる。適切なpHは、該粘膜適用組成物の適用部位、剤形等により異なるが、通常6〜9、好ましくは6.5〜8.5、更に好ましくは6.8〜8.2、特に好ましくは7〜8程度である。かかる範囲内から著しく逸脱すると、上記(A)〜(C)成分の安定性が低下する可能性がある。pHの調節は、前記緩衝剤、或いは当該技術分野で通常使用されているpH調整剤、等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0034】
本発明の粘膜適用組成物が水性組成物の場合には、更に必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤形等により
異なるが、通常0.3〜4.2、好ましくは0.3〜2.1、更に好ましくは0.5〜1.8、より好ましくは0.6〜1.5、特に好ましくは0.8〜1.5程度である。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類などを用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十四改正日本薬局方に基づき0.9w/v
%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650°Cで40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化
ナトリウム水溶液)を用いる。
【0035】
本発明の粘膜適用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的に、耳鼻科用又は眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン等。
消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸、グアイアズレン、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナク、紫根、セイヨウトチノキ、及びこれらの塩等。
【0036】
また、本発明の粘膜適用組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2005(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー(具体的には、ポロクサマー407等)、エチ
レンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミン等
)、モノオレイン酸POEソルビタン、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油等)、ステアリン酸ポリオキシル等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン等のグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の陽イオン界面活性剤等。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナ
トリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコール等。
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
基剤:オクチルドデカノール、オリーブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、綿実油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリン、プロピレングリコール等。
【0037】
本発明の粘膜適用組成物の剤型は任意であり、その用途に応じて種々の形態をとることができる。例えば、液状であってもよく、軟膏等の半固形状又は固形状であってもよい。好ましくは液状である。本発明の粘膜適用組成物は、粘膜に適用して使用されるものであり、使用簡易性という観点から、好ましい剤型として液状が挙げられる。
【0038】
また、本発明の粘膜適用組成物の製剤形態としては、特に限定されないが、例えば、点鼻剤、鼻洗浄液、点耳薬等の耳鼻科用組成物;点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等];口腔咽頭薬、含嗽薬(含嗽用剤)等の口腔用組成物等が挙げられる。中でも好ましくは耳鼻科用組成物であり、更に好ましくは点鼻剤又は鼻洗浄剤であり、特に好ましくは点鼻剤である。
【0039】
なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用できるが、特に酸素透過性のハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズに対して吸着し難い成分から構成されているため、上記コンタクトレンズ用組成物は、これらのコンタクトレンズに対してより好適に使用される。
【0040】
本発明の粘膜適用組成物は、粘膜上に存在する花粉の破壊を抑制し、花粉によるアレルギー症状が生じるのを有効に抑制できる。かかる薬理効果に鑑みれば、本発明の粘膜適用組成物は、抗アレルギー用、特に花粉症の予防乃至治療用の用途に有用である。
【0041】
本発明の粘膜適用組成物は、目的とする剤型や用途に応じた公知の方法により製造でき
る。
【0042】
(II)保存剤組成物
前述するように、上記(A)〜(C)成分を組み合わせて含有させることにより、Burkholderia cepacia等の雑菌の繁殖を防止して優れた保存効力を示すので、本発明は、更に他の観点から、(A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有する保存剤組成物
を提供する。ここで、保存剤組成物とは、保存剤(防腐剤)として、例えば、医薬組成物等の防腐対象となる組成物(以下、保存対象組成物と表記する)に配合して使用される添加剤のことを意味する。当該保存剤組成物において、上記(A)〜(C)成分の種類、及びこれら両成分の比率については、上記「(I)粘膜適用組成物」の項に記載する内容と同様であ
る。
【0043】
当該保存剤組成物の使用量についても、特に制限されないが、例えば、保存対象組成物と(A)〜(C)成分の総量[(A)〜(C)成分が添加された保存対象組成物の総重量]に対して、上記(A)〜(C)成分の合計量が、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%、更に好ましくは0.01〜0.15重量%となる割合が例示される。
【0044】
当該保存剤組成物は、従来の保存剤又は防腐剤に代えて、又は従来の保存剤又は防腐剤と組み合わせて、保存対象組成物に添加して使用される。また、当該保存剤組成物は、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の保存剤に耐性を示すBurkholderia cepaciaに対しても、効果的な殺菌又は増殖抑制を示すため、Burkholderia cepaciaの繁殖防止が求められる保存対象組成物に対して、特に好適に使用される。
【0045】
また、当該保存剤組成物は、液剤、半固形剤、固形剤のいずれの形状の保存対象組成物に対しても適用できる。当該保存剤組成物の適用対象(保存対象組成物)としては、例えば、点鼻剤、鼻洗浄液、点耳薬等の耳鼻科用組成物;点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等];口腔咽頭薬、含嗽薬(含嗽用剤)等の口腔用組成物等の経粘膜用組成物等が挙げられる。また、当該保存剤組成物は、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、エキス剤等の経口投与用組成物;注射剤等の皮下投与用組成物;その他経皮適用組成物等を適用対象(保存対象組成物)としてもよい。これら中でも、耳鼻科用組成物、特に点鼻剤又は鼻洗浄液は、当該保存剤組成物の適用対象として好適である。
【0046】
(III)保存効力の付与方法
前述するように、粘膜適用組成物中で、上記(A)〜(C)成分を共存させることにより、Burkholderiacepacia等の雑菌の繁殖を防止して優れた保存効力を示す。従って、本発明は
、更に(A)フルニソリドを含有する粘膜適用組成物に保存効力を付与する方法であって、
該粘膜適用組成物に(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を配合することを特徴とする、保存効力の付与方法を提供する。当該保存効力の付与方法は、フルニソリドを含有する粘膜適用組成物を防腐する方法と言い換えることもできる。
【0047】
当該保存効力の付与方法において、(A)〜(C)成分の種類、粘膜適用組成物に添加される(A)〜(C)成分の濃度、その他の配合成分の種類や濃度、粘膜適用組成物の用途や形態等については、前記「(I)粘膜適用組成物」の場合と同様である。
【0048】
(IV)光安定性の改善方法
前述するように、上記(A)〜(C)成分を含む粘膜適用組成物において、更にモノテルペン
を配合することによって、光曝露によって生じる粘膜適用組成物の着色化を抑制して、光安定性を改善することができる。従って、本発明は、更に(A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有する粘膜適用組成物に、モノテルペンを配合することを特
徴とする、該粘膜適用組成物の光安定性の改善方法を提供する。
【0049】
当該光安定性の改善方法において、(A)〜(C)成分の種類、粘膜適用組成物に含まれる(A)〜(C)成分の濃度、テルペノイドの種類、添加されるテルペノイドの濃度、その他の配合成分の種類や濃度、粘膜適用組成物の用途や形態等については、前記「(I)粘膜適用組成
物」の場合と同様である。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例、試験例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、以下、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウムをEDTA-Naと表記する。
【0051】
試験例1 保存効力の評価試験
表1に示す組成の粘膜適用組成物(実施例1−2及び比較例1−8)を調製し、これらの粘膜適用組成物を用いて、日本薬局方(第15改正)に定める方法に準じて保存効力試験(防腐試験)を行い、各粘膜適用組成物の防腐性を評価した。
【0052】
具体的には、Burkholderia cepacia(JCM 5506株)を、それぞれ、ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン平板培地の表面に接種して、33℃で24時間培養を行った。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌生理食塩水に浮遊させて、約1×108CFU/mL
の生菌を含む細菌浮遊液を調製した。この細菌浮遊液に対して、各粘膜適用組成物を適量添加して、表1に示す初期菌濃度にした後に、23℃で14日間静置した。保存14日後の各粘膜適用組成物について、1mL当たりの生菌数を測定し、日本薬局方(第15改正)に
定める保存効力試験の製剤判定基準に準じて、14日後の残存菌数が接種菌数の0.1%以下
であれば適(判定○)、0.1%より多ければ不適(判定×)として判定した。
【0053】
結果を表1に併せて示す。この結果から、比較例1−8の粘膜適用組成物のいずれにおいても保存効力が不十分であったのに対して、実施例1−2の粘膜適用組成物では、保存剤と特段添加していないにも拘わらず、Burkholderia cepaciaに対して優れた保存効力を示すことが明らかとなった。この実施例1−2の粘膜適用組成物の保存効力の結果についても、各配合成分の相加的効果を遙かに凌いでおり、各配合成分の相乗的作用によってもたらされたことは明らかである。
【0054】
【表1】

【0055】
試験例2 スギ花粉の破裂抑制効果の評価
表2に示す組成の粘膜適用組成物(実施例3及び比較例9−15)を調製し、これらの粘膜適用組成物のスギ花粉の破裂抑制効果について、以下の試験を行い評価した。
【0056】
具体的には、スギ花粉5mgを各粘膜適用組成物1mlと混合し、37℃で1時間放置した
。その後のスギ花粉の破裂の程度を顕微鏡下に観察した。顕微鏡により、単位面積当たりの花粉総数に対する破裂された花粉の数の割合を計測することによって、花粉破裂率(%)を求めた。更に、比較例9の粘膜適用組成物の花粉破裂率に対する各粘膜適用組成物の花粉破裂率を相対花粉破裂(%)として算出した。
【0057】
結果を表2に示す。表2から明らかなように、相対花粉破裂率は、フルニソリド、塩酸ナファゾリン、又はEDTA-Naを単独で配合した粘膜適用組成物(比較例9−11)では、
それぞれ約116%、82%、72%であった。これに対して、フルニソリド、塩酸ナファゾリ
ン及びEDTA-Naを同時に配合した粘膜適用組成物(実施例3)では、相対花粉破裂率が、
僅か38%程度であり、スギ花粉の破裂が顕著に抑制されていることが判明した。特に、実施例3の粘膜適用組成物の花粉破裂の抑制効果の結果は、各配合成分の相加的効果を遙かに凌いでおり、各配合成分が相乗的に作用することにより獲得されていることが明らかである。
【0058】
以上の結果から、本発明の粘膜適用組成物によれば、花粉に破裂によるアレルゲンの溶出を効果的に抑制できることが明らかとなった。
【0059】
【表2】

【0060】
試験例3 光曝露時の着色性評価
表3に示す組成の粘膜適用組成物(実施例4及び5)を調製し、これらの粘膜適用組成物の光暴露時の着色性について、以下の試験を行い評価した。
【0061】
各々の粘膜適用組成物を透明ガラス製アンプル管(容量10mL)に8mLずつ充填し、これらを試験サンプルとした(n=2)。この試験サンプルに対して、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源と
して、室温下、5000lxの光を10日間連続照射し、試験溶液を積算照射量120万lx・h
rの光に曝光した。光照射前と後の試験サンプルについて、変色(黄色への着色化)の指標として波長420nmの吸光度(以下、A420と表記する)を測定し、下式に従って着色度
を算出した。なお、着色の程度が顕著であるほど着色度の数値は大きく、着色の程度が軽微であれば着色度の数値は小さくなる。
【0062】
【数1】

【0063】
結果を表3に示す。実施例4の粘膜適用組成物は、実施例5の粘膜適用組成物に比べて、着色度が低く、光に対する安定性が優れていることが判明した。即ち、フルニソリド、塩酸ナファゾリン及びEDTA-Naと共に、更にメントールを併用することによって、光曝露
による着色を抑制できることが明らかとなった。
【0064】
【表3】

【0065】
製剤例
表4−6に記載の処方で、粘膜適用組成物(実施例6−20)が製造される。
【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フルニソリド、(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を含有することを特徴とする、
粘膜適用組成物。
【請求項2】
(B)成分が、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン、メチ
ルエフェドリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン、フェニレフリン及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の粘膜適用組成物。
【請求項3】
(C)成分が、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、トリヒ
ドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、メタリン酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の粘膜適用組成物。
【請求項4】
更に、モノテルペンを含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【請求項5】
モノテルペンがl-メントールである、請求項4に記載の粘膜適用組成物。
【請求項6】
点鼻剤である、請求項1乃至4のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【請求項7】
花粉症の予防乃至治療用である、請求項1乃至6のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【請求項8】
(A)フルニソリドを含有する粘膜適用組成物に保存効力を付与する方法であって、該粘
膜適用組成物に(B)血管収縮剤、及び(C)キレート剤を配合することを特徴とする、保存効力の付与方法。

【公開番号】特開2013−82752(P2013−82752A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22953(P2013−22953)
【出願日】平成25年2月8日(2013.2.8)
【分割の表示】特願2008−23476(P2008−23476)の分割
【原出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】