説明

フルフェイス型の防護マスク

【課題】併せて着用したフルフェイス型の防護マスクと防護衣とに対して養生テープを貼るときの作業を容易にする。
【解決手段】フルフェイス型の防護マスク1がろ材を収容するためのホルダー部材11と、ホルダー部材11から防護マスク1の内側に向かう通気路を形成している管状部13とを有する。管状部13は、両端部のうちの一端部に対してホルダー部材11が旋回可能に取り付けられ、その一端部に対する他端部が防護マスク1における前面レンズ2および面体3のいずれかに対して回転不能に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防じん用や防毒用マスクとして使用するのに好適なフルフェイス型の防護マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
防じん用や防毒用のフルフェイス型の防護マスクは従来周知である。また、防護マスクを着用して作業をするときの環境条件によっては、防護マスクを防護衣と併せて着用することがあることも周知である。
【0003】
例えば、特開2008−194093号公報(P2008−194093A、特許文献1)に記載の防護衣は、フルフェイス型の防護マスクと併せて着用するのに好適なものである。この防護衣は、防護マスク着用者のほぼ全身を覆うことができるものであるが、防護マスクのレンズ部を露出させることのできる開口部を有している。開口部の周縁部分は弾性的に伸長収縮可能であって、防護衣を着用したときには、その開口部の周縁部分をレンズ部の周囲部分に重ねて密着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−194093号公報(P2008−194093A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防護マスクと防護衣とを着用して作業をするときの環境によっては、その環境における空気や塵芥が防護マスクや防護衣の内側へ侵入することを確実に避けることのできる安全対策が必要となる場合がある。防護マスクについては、適正に着用すること、ろ紙内蔵のフィルタや吸収缶等のろ材を適正に管理すること等がその安全対策の例である。防護衣については、適正サイズのものを適正に着用することがその安全対策の一例である。また、防護マスクにおけるレンズ部の周縁近傍の部分とそこに重ねた防護衣の開口部の周縁部分とには、両部分にまたがるように粘着性の養生テープを貼って防護マスクと防護衣との間に隙間が生じることを防ぐことも安全対策の一つである。しかし、防護マスクの構造によっては、防護マスクに対してその養生テープを貼ることが容易ではない、ということがある。
【0006】
この発明が課題とするところは、フルフェイス型の防護マスクと防護衣とを併せて着用したときに、防護マスクにおけるレンズ部の周縁近傍の部分と防護衣の開口部の周縁部分とに対して養生テープを貼ることが容易となるように、従来の防護マスクに改良を施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためにこの発明が対象とするのは、透視可能な前面レンズと、前記前面レンズの周縁部分に取り付けられている面体と、頭部に掛け回す着用バンドと、吸気弁と、排気弁とを有し、ろ材を取り付け可能に形成されていて、前記ろ材を通過した空気を前記吸気弁を介して吸入することのできるフルフェイス型の防護マスクである。
【0008】
この発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記防護マスクは、前記ろ材を収容するためのホルダー部と、前記ホルダー部から前記防護マスクの内側に向かう通気路を形成している管状部とを有する。前記ホルダー部は、その外径が前記管状部の外径よりも大きくて、前記管状部における両端部のうちの一端部に対してその一端部の周方向へ摺動可能に取り付けられている。前記管状部は、前記一端部に対する他端部が前記前面レンズおよび前記面体のいずれかに対して回転不能に取り付けられていて、前記一端部は、前記ホルダー部に対して、前記ホルダー部の径方向において前記ホルダー部の中心から離間した位置にあり、前記ホルダー部が前記管状部を中心にして旋回可能な状態にある。
【0009】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記防護マスクは、前記ホルダー部の前記旋回を停止させることのできるストッパーを有し、前記ホルダー部が旋回して前記ホルダー部の中心が前記防護マスクの前後方向において前記管状部よりも後方に来ると、前記ストッパーが作用して前記ホルダー部の旋回を停止させる。
【0010】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記ホルダー部は、その平面形状が円形である。
【0011】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記面体が柔軟弾性材料によって形成される一方、前記前面レンズが前記面体よりも硬質なプラスチック材料によって形成されていて、前記管状部の前記他端部が前記前面レンズに対して取り付けられている。
【0012】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記柔軟弾性材料がシリコーンゴムである。
【0013】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記防護マスクは、その幅方向の寸法を二等分して上下方向へ延びる中心線に関して対称となるように形成されている。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るフルフェイス型の防護マスクは、ろ材を取り付けるために使用されるホルダー部と管状部とのうちのホルダー部が管状部を中心に旋回可能である。防護マスクを着用しているときには、防護マスクの前後方向において、ホルダー部の中心が管状部よりも後方に来るように旋回させることで、着用者は、ホルダー部の重さを頸部の近くで支えることができて、ホルダー部の重さを強く感じることがない。着用者が防護マスクと防護衣とを併せて着用して、防護衣における顔面露出用開口の周縁部分を防護マスクのレンズ部周縁部分にかぶせ、これら両方の周縁部分に対して粘着性テープである養生テープを貼って、これら両周縁部分の間の隙間を閉じようとするときには、ホルダー部の中心が管状部よりも前方に来るようにホルダー部を旋回させることで、ホルダー部で隠された状態にある部分に対してもホルダー部に邪魔されることなく養生テープを貼ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】防護マスクの斜視図とその部分拡大図。
【図2】防護衣の正面図。
【図3】防護衣と併せて着用した防護マスクの斜視図。
【図4】養生テープの一部が破断してある防護マスクの側面図。
【図5】ろ過部の分解斜視図とその部分拡大図。
【図6】図1のVI−VI線断面図とその部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、この発明に係るフルフェイス型の防護マスクの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1において、防護マスク1は、フルフェイス型のものであって、着用者(図示せず)が透視可能な前面レンズ2と、前面レンズ2の後方にあって着用バンドと一体に形成されている面体3と、面体3を前面レンズ2の周縁部分に固定するための枠部材4とを有する。前面レンズ2は、着用者の顔面と対向する内面2cとその反対面である外面2dとを有する(図6参照)。その顔面から前面レンズ2に向かう方向は、防護マスク1における前方向であり、前面レンズ2から顔面に向かう方向は、防護マスク1における後方向である。防護マスク1における幅方向は双頭矢印Xで示されている。また、この発明において、防護マスク1の右方、左方というときには、着用者にとっての右方、左方を意味している。図示例の防護マスク1は、幅方向Xの寸法を二等分する中心線(図示せず)に関して左右対称に形成されている。
【0018】
前面レンズ2は、透明で面体3よりも硬質なプラスチック材料で形成されていて、着用者の顔の正面部分と両側方部分とを覆うことができる。その正面部分は、両眼と、鼻部と、口許とを含む部分である。前面レンズ2にはまた、外気をろ過して取り入れるためのろ過部6が両側方部分に形成され、着用者の呼気を排出するための排出部7が幅方向Xの中央部分に形成されている。ろ過部6は、呼吸缶やろ紙を内蔵するフィルタ等のろ材64(図6参照)を収容するためのホルダー部を形成しているホルダー部材11と、ホルダー部材11に収容したろ材64の脱落を防止するためにホルダー部材11に外側から組み付けられているキャップ12と、ホルダー部材11から前面レンズ2にまで延びていて、ホルダー部材11の内側と前面レンズ2の内側とを通気可能な状態でつなぐ管状部を形成している管状部材13とを有する。ホルダー部材11は、管状部材13を中心に旋回可能なものであって、その旋回を止めるためのストッパー14がホルダー部材11と管状部材13とに対して形成されている。ろ過部6とストッパー14との詳細は、後記図5,6において詳述される。
【0019】
図2における防護衣21は、防護マスク1とともに着用されて、着用者の全身を被覆保護することができる周知のものである。防護衣21における頭部22のうちの顔面被覆部23には開口24が形成され、開口24の周縁部26にはゴムひも(図示せず)が伸長状態で取り付けられている。開口24は、着用されている防護マスク1の前面レンズ2を露出させるための部位であって、周縁部26は、例えば、前面レンズ2の周縁近傍の部分において、後記図4の具体例でいえば、防護マスク1における枠部材4の後方において、面体3に対して弾性的に密着可能である。
【0020】
図3では、着用している防護衣21の開口24における周縁部26と防護マスク1との間に隙間が生じ、その隙間から外気が防護衣21の内側に侵入することを防ぐために、養生テープ31が防護衣21と防護マスク1とに対して貼られている。具体的には、養生テープ31を短く切り分けて得られる短冊状の小片32の複数が、前面レンズ部2を一周するように互いにつなぎ合わせられるとともに、枠部材4と防護衣21とに対して貼られている。枠部材4は、前面レンズ2と面体3とが気密状態で一体化することを可能にするもので、通常はポリカーボネート樹脂やABS樹脂等の硬質プラスチック材料で形成されているから、養生テープ31の小片32を貼ることが容易であり、しかも、小片32を枠部材4に対して貼っておくと、前面レンズ2における着用者の視界がその小片32によって妨げられるということがない。また、面体3は、柔軟にして弾性を有する天然ゴムや合成ゴム等で形成されるものである。その面体3がシリコーンゴムで形成されている場合には、特に柔軟なものになるのであるが、小片32は面体3に貼ることが難しくなる。それゆえ、小片32は、面体3の材質が何であるかにかかわらず枠部材4に対して貼られることが一般的には好ましい。
【0021】
図4における防護マスク1の側面図では、養生テープ31の小片32を部分的に切り欠くことによって、枠部材4と、枠部材4の後方に位置する防護衣21の顔面被覆部23とが示されている。顔面被覆部23のうちの周縁部26(図2参照)は、枠部材4によって隠された状態にあり、見ることができない。
【0022】
図4においてはまた、図3の状態にあるろ過部6のホルダー部材11が仮想線で示されている。実線で示されたホルダー部材11は、仮想線で示されているホルダー部材11が管状部材13(図3,4を併せて参照)を中心に時計方向Cまたは反時計方向CCへ約180°旋回したときのものである。ホルダー部材11がこのように旋回した位置にあると、図3ではホルダー部材11によって隠されていて見ることのできなかった養生テープ31の一部分33や枠部材4の一部分34がよく見えるようになる。それゆえ、ホルダー部材11が図4の状態にある防護マスク1では、ホルダー部材11が図3の状態にある場合と比べて、すなわち仮想線のホルダー部材11と比べて、養生テープ31の小片32を剥がす作業が容易であるばかりではなく、小片32を防護マスク1と防護衣21とに対して貼るときの作業も容易にかつ正確になる。なお、図4に実線で示されているホルダー部材11は、着用者の視界の妨げになることがある他に、着用者にとっては、防護マスク1の重心が前方へ移動することになって、防護マスク1の着用による頸部等の疲労の原因になることもある。それゆえ、養生テープ31を貼ったり剥がしたりする作業が終了したときには、ホルダー部材11を時計方向Cまたは反時計方向CCへ旋回させて図3の状態に戻しておかなければならない。
【0023】
図5は、図1において防護マスク1の左方に位置しているろ過部6の分解斜視図であり、一部分が破断した状態にある前面レンズ2も併せて示されている。ただし、その前面レンズ2は、面体3と、枠部材4と、着用者の右方に位置するろ過部6と、排出部7とが外された状態にある。
【0024】
ろ過部6を形成している部材は、次のとおりである。すなわち、前面レンズ2の内側では、吸気弁51と固定用リング52とが前面レンズ2の内側から外側に向かって並んでいる。前面レンズ2には、ろ過部6を組み付けるための側部透孔53が形成されている。前面レンズ部2の外側では、図の左方から右方に向かって、第1リング54、管状部材13、ストッパー用のコイルスプリング56とピン57、ストッパー用のスライダ58、第2リング59、C字型リング60、第3リング61、ホルダー部材11、第4リング62、ろ材用受皿63、ろ材64およびろ材用キャップ12が並んでいる。これらのうちで、管状部材13は縮径部71と拡径部73とを有し、ホルダー部材11は外径の小さい延出管部11aと外径の大きいろ材収納部11bとを有する。また、図5に示されている線Pは、正面形状が円形であるホルダー部材11、第4リング62、ろ材受皿63、ろ材64、キャップ12の中心を通る中心線であり、線Qは、正面形状が円形である吸気弁51、固定用リング52、第1リング54、ホルダー部材11の後記する延出管部11a、第2リング59、C字型リング60および第3リング61の中心を通る中心線である。なお、図5の前面レンズ2には排出部7を形成するための部材を組み付けるための中央部透孔2aが横方向Xの中央に形成されている。中央部透孔2aの周縁部2bは、その組み付けのために使用される。また、前面レンズ2の右方には、ろ過部6を組み付けるための側部透孔53が形成されている。
【0025】
図6は、図1のVI−VI線断面図であるが、図5に示された中心線P,Qが図6では水平となるようにその断面図の向きが整えられている。また、図6では、防護マスク1のうちの前面レンズ2のみが部分的に示されている。前面レンズ2の側部透孔53においては、管状部材13のうちの縮径部71が前面レンズ2の外側から挿入される。その縮径部71は、時計方向Cへ回転すると側部透孔53の周面とかみ合うように形成されていて、側部透孔53からは簡単に抜け落ちることがないようになる。また、縮径部71の外周面には固定用リング52が嵌められていて、固定用リング52と管状部材13における拡径部73とが側部透孔53の周縁部において前面レンズ2の内外面2c,2dに圧接し、管状部材13は、前面レンズ2に対して回転不能かつ抜脱不能な状態にある。固定用リング52の径方向中央部では軸部74が前面レンズ2の内側へ延びていて、その軸部74には吸気弁51が取り付けられている。前面レンズ2と管状部材13の拡径部73との間には気密性を保つパッキング材としての第1リング54が介在している。
【0026】
管状部材13における拡径部73の内側には、ホルダー部材11から延びる延出管部11aが管状部材13の周方向へ回転可能かつ抜脱不能な状態で嵌合している。拡径部73の内周面76とそれに対して摺動する延出管部11aの外周面77との間には、気密性を保つためのパッキング材である第2リング59と、延出管部11aが管状部材13から抜け出ることを防止するストッパーとしてのC字型リング60とが介在している。なお、第2リング59は、延出管部11aの外周面77に形成された溝部78に収容され、C字型リング60は内周面76と外周面77とに形成された溝部79a,79bに収容されている。溝部79bと並ぶように外周面77に形成されている溝部79cは、ホルダー部材11と管状部材13とを組み合わせるときに、C字型リング60を縮径可能な状態で一時的に収容しておくための部位である。
【0027】
ホルダー部材11において、ろ材収納部11bは、底部81と周壁部82とを有する。底部81からは延出管部11aが延びており、周壁部82にはねじ部83が形成されている。底部81にはまた、シーリング材である第4リング62が収容されている。ろ材収納部11bの平面形状は円形であって、その中心は中心線Pの上にある。延出管部11aは円筒状であって、その中心は中心線Qの上にある。ろ材収納部11bの中心と延出管部11aの中心とは距離Rだけ離間している。
【0028】
ろ材用受皿63とろ材64とろ材用キャップ12とは通常分離不能な状態で着用者や防護マスク1の管理者等に供給されるもので、受皿63の外周面に形成されたねじ部84がろ材収納部11bのねじ部83に螺合し、その受皿63の底部86が第4リング62に圧接している。受皿63とキャップ12とには、多数の通気孔87,88(図5を併せて参照)が形成されている。
【0029】
これらホルダー部材11と管状部材13との間に位置する第3リング61は、ホルダー部材11と管状部材13とを組み立てるときにばね材として使用されるもので、ホルダー部材11が図の左方に向かって押圧された状態になると弾性的に圧縮され、ホルダー部材11がその押圧から解放されるとホルダー部材11を図の右方へ押し戻しながら図の状態にまで弾性的に復帰する。
【0030】
このように組み立てられているろ過部6では、ホルダー部材11が管状部材13を中心に、換言すると中心線Qを中心に時計方向Cおよび反時計方向CCへ旋回可能に形成されている(図3参照)。ホルダー部材11が旋回するときには、ホルダー部材11における延出管部11aの外周面77が管状部材13の内周面76に対して摺動する。ただし、ろ過部6が図1の状態にあるときには、ストッパー14によってその旋回が止められている。
【0031】
図5における部分拡大図と図6とから明らかなように、ストッパー14は、コイルスプリング56とピン57とスライダ58との各部材と、コイルスプリング56とスライダ58とを収容するために管状部材13における拡径部73の外周面に形成されている収容部91と、ホルダー部材11の外周面に形成されていて中心線Qに平行する溝部92とを含んでいる。収容部91は、中心線Qと平行な一対の側壁93と、これら一対の側壁93をつなぐように拡径部73の周方向へ延びる周壁94と、底部95とを有する。一対の側壁93の間にはスライダ58が中心線Qと平行な往復摺動運動をできるように納まっている。一対の側壁93にはまた中心線Qと平行なガイド用長孔96が形成されている。ピン57はスライダ58を貫通して延びていて、両端部のそれぞれが長孔96に進入しており、長孔96の内側を中心線Qと平行に往復摺動することができる。コイルスプリング56は収容部91における底部95とスライダ58との間にあって、スライダ58を管状部材13からホルダー部材11の底部81へ向かう方向へ付勢している。付勢されているスライダ58の先端部58aは、ホルダー部材11に形成されている溝部92に進入している。スライダ58にはまた、レバー部58bが形成されている。コイルスプリング56の付勢に抗するようにレバー部58bを中心線Qと平行な方向へ押圧すると、コイルスプリング56を弾性的に収縮させながらスライダ58をホルダー部材11から管状部材13へ向かう方向へスライドさせて、スライダ58の先端部58aを溝部92から退出させることができる。先端部58aが溝部92から退出しているホルダー部材11は、ストッパー90の作用から解放された状態にあって、時計方向Cにも反時計方向CCにも旋回可能となる。ホルダー部材11が旋回して図1の状態以外の状態にあるときには、スライダ58における先端部58aがコイルスプリング56の付勢下にホルダー部材11における底部81の外面81aに当接していて、ホルダー部材11はストッパー90の作用から解放されている。そのようなホルダー部材11が旋回して、溝部92とスライダ58の先端部58aとの位置が一致すると、その先端部58aがコイルスプリング56の作用で溝部92へ進入する。その先端部58aがホルダー部材11の周方向において溝部92の側壁92aと当接可能となることによって、ホルダー部材11の旋回が止まる。旋回するときのホルダー部材11は、図3に例示の位置をとることができて、防護マスク1に対して養生テープ31を貼ったり、剥がしたりする作業を容易にすることができる。
【0032】
なお、吸気弁51が取り付けられて防護マスク1に組み付けられているろ過部6では、防護マスク1の着用者の吸気動作によって外気がキャップ12における通気孔88へ進入してろ材64においてろ過された後に通気孔87を通ってホルダー部材11のろ材収納部11bに入る。その後、ろ過された外気は延出管部11bと管状部材13とを通り、吸気弁51を開けて前面レンズ2の内側に入る。
【0033】
これまでの図示例において、防護マスク1は幅方向Xの寸法を二等分する中心線(図示せず)に関して左右対称なものとして説明されているが、この発明は、左右非対称な防護マスクで実施することもできる。例えば、ろ過部6が着用者の左方にのみ形成されている防護マスクでこの発明を実施することができる。また、この発明において、ろ過部6は前面レンズ2に取り付けられたものであったが、この発明は、ろ過部6が面体3に取り付けられた態様で実施することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 防護マスク
2 前面レンズ
3 面体
6 ろ過部
11 ホルダー部(ホルダー部材)
13 管状部(管状部材)
14 ストッパー
51 吸気弁
64 ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視可能な前面レンズと、前記前面レンズの周縁部分に取り付けられている面体と、頭部に掛け回す着用バンドと、吸気弁と、排気弁とを有し、ろ材を取り付け可能に形成されていて、前記ろ材を通過した空気を前記吸気弁を介して吸入することのできるフルフェイス型の防護マスクであって、
前記ろ材を収容するためのホルダー部と、前記ホルダー部から前記防護マスクの内側に向かう通気路を形成している管状部とを有し、
前記ホルダー部は、その外径が前記管状部の外径よりも大きくて、前記管状部における両端部のうちの一端部に対してその一端部の周方向へ摺動可能に取り付けられており、
前記管状部は、前記一端部に対する他端部が前記前面レンズおよび前記面体のいずれかに対して回転不能に取り付けられていて、前記一端部は、前記ホルダー部に対して、前記ホルダー部の径方向において前記ホルダー部の中心から離間した位置にあり、前記ホルダー部が前記管状部を中心にして旋回可能な状態にあることを特徴とする前記防護マスク。
【請求項2】
前記防護マスクは、前記ホルダー部の前記旋回を停止させることのできるストッパーを有し、前記ホルダー部が旋回して前記ホルダー部の中心が前記防護マスクの前後方向において前記管状部よりも後方に来ると、前記ストッパーが作用して前記ホルダー部の旋回を停止させる請求項1記載の防護マスク。
【請求項3】
前記ホルダー部は、その平面形状が円形である請求項1または2記載の防護マスク。
【請求項4】
前記面体が柔軟弾性材料によって形成される一方、前記前面レンズが前記面体よりも硬質なプラスチック材料によって形成されていて、前記管状部の前記他端部が前記前面レンズに対して取り付けられている請求項1〜3のいずれかに記載の防護マスク。
【請求項5】
前記柔軟弾性材料がシリコーンゴムである請求項4記載の防護マスク。
【請求項6】
前記防護マスクは、その幅方向の寸法を二等分して上下方向へ延びる中心線に関して対称となるように形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の防護マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85845(P2013−85845A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231122(P2011−231122)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】