説明

フルフェイス形マスク

【課題】容易に着脱することができ、着用者に負担を与えず、安価にしてクリアな視界を得ることが可能なようにアイピース保護部材を取り付けることを可能とするフルフェイス形マスクを提供する。
【解決手段】少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、着用者の呼吸時に着用者の呼気をマスクの外気側に排出するための排気弁を内設する面口部を備え、着用者の視界を確保するための透明部材からなるアイピースを備え、前記アイピースにはその外周縁部全周に亘って周設するように組み合わされ、かつ着用者の顔面に当接するよう形成されたフェイスピースに、前記アイピースの外周縁部に組み合わされた前記フェイスピースの内周縁部の少なくとも一部にベロ状突起部を設け、前記ベロ状突起部を前記アイピースとの間に離間または離間可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼部、鼻部および口部を覆うように形成され、着用者の視界を確保するためのアイピースを備えたフルフェイス形マスクに関し、特に同マスクのアイピースの保護に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルフェイス形マスクは、着用者の視界を確保するために透明部材からなるアイピースが設けられていて、マスク全体に占めるアイピース部の表面積の割合が多いほど着用者の視界が大きくなることから、アイピース部の占める割合が大きいものほど好ましいとされている。
【0003】
また、アイピースは、マスク着用中のアイピース破損時の着用者の眼部をはじめとする顔面に対する安全上の観点、或いはマスク着用時の着用者の首部などへのマスクの自重増による重量負荷軽減の観点からガラス製ではなく樹脂製のアイピースが多用されている。
【0004】
しかし、フルフェイス形マスクは全体の形状が略半球状のお椀形をしていて、そのお椀形の丸みのある側にアイピースが配設され、その反対側の略平坦側に顔面と接する側(以下、「接顔部」という)が配設されている。マスク非着用時には衛生上接顔側を上にし、お椀形の丸みのある側を下側にしてテーブルなどに放置することが多く、その際、アイピースの外表面は、当然に、テーブル面やテーブル上に置かれたものに接触してしまう。特にその放置したテーブル面に硬質なごみなどが散乱していると、アイピースが樹脂製の場合、その外表面に容易にキズが生じてしまう。また、着用者の着用時の作業などによっては、その作業中マスクに溶接スパッタ、溶剤・塗装飛沫などを浴びてしまい、アイピースの外表面に傷ができたり、外表面の膨潤や一部溶解などが生じ、着用者の視界に著しく悪影響を及ぼしてしまうという問題があった。そこでこのような状況を軽減するためにアイピースの外表面に透明保護コーティングを施したものもあるが、その防護性は万能ではなく、保護強度が弱いなど効果が不十分であった。
【0005】
これらの状況から、現在ではアイピースとは別体の使い捨ての薄い透明シート部材或いは透明フィルム部材などからなるアイピース保護部材にマスクへの固定用部材を取り付けて、マスクの外気側のアイピースの外表面に着脱自在に固定しアイピースを保護する方法が一般的に用いられている。
【0006】
このようなアイピース保護カバーに用いるアイピース保護部材は、平面状の板状或いはフィルム状の基材を打ち抜いたりレーザーカッターなどで容易に切り出して製作することが可能であり、その表面が痛んだり汚れた場合には新しいものと交換が可能になっている。
【0007】
これらのアイピース保護カバーの固定方法としては、従来から種々の方法が提案されており、それらの具体例としては、アイピース保護部材の例えば左右両端の一部などに粘着テープ部を設けてアイピースの外表面に貼付して固定する方法や、アイピースの外周縁部を全周に亘って気密状態で周設するように組み合わされているフェイスピース部の、さらにその外周側から全周に亘って囲って固定するために設けられたアイピース固定枠の左右両端に掛合部を設けて、アイピース保護部材の左右両端に配した輪ゴムなどの環状伸縮部材を掛合させて固定する方法(特許文献1)、或いは透明の板状アイピース保護部材の外周縁部を全周に亘って弾性部材を周設させ、その弾性部材の内周面に環状溝部を設けてその環状溝部を弾性変形させてマスクのアイピース固定枠の外周に周設させて固定する方法(特許文献2)などがある。
【0008】
しかしながら、これらのアイピース保護カバーの固定方法のうち、アイピース保護部材の一部に粘着テープ部を設けてアイピースに貼付して固定する方法は、粘着テープ部の粘着力が低下してしまい、不用意に粘着テープが剥がれてアイピースからアイピース保護カバーが脱落してしまったり、アイピースの外表面に粘着テープの粘着成分が残留し、そこに粉じんやごみなどが付着してしまい逆に視界の妨げになったりするなどの難点があった。
【0009】
また、特許文献1に記載のアイピース保護部材の左右両端に環状伸縮部材を配してアイピース固定枠に設けた掛合部に取り付けて固定する方法は、アイピース固定枠がアイピース外表面に対して凸状にアイピースの周囲を囲っていて、そのアイピース固定枠両端に環状伸縮部材を掛合する構造であり、アイピース外表面からアイピース保護部材が浮き上がった状態で取り付き、そのアイピース外表面とアイピース保護部材の距離を一定に保つことが困難な取り付け構造となっているため、部分的にアイピース保護カバーが着用者から歪んで見えてしまったり、乱反射したりして視界に著しく悪影響を及ぼしてしまうという難点があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の板状アイピース保護部材の外周縁部を全周に亘って周設させた弾性部材の内周面に設けた環状溝部を、アイピース固定枠の外周に周設させて固定する方法は、板状アイピース保護部材の外周縁部に周設した弾性部材がアイピース固定枠から不用意に離脱しないようゴムなどを用いてしっかりした溝形状を保持できる剛性をもたせる必要があり、かつ板状アイピース保護部材はそのゴムなどからなる弾性部材を周設した状態で、その板状アイピース保護部材が変形してしまうことのない基材となる強度を有する必要があるなど全体を非常に頑丈に構成する必要があり、重量が重くなることによる着用者への負担増や使用する部材が複雑なため安価に製作できないなどの難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平5−18545号公報
【特許文献2】特開2006−141618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、容易に着脱することができ、着用者に負担を与えず、安価にしてクリアな視界を得ることが可能なようにアイピース保護部材を取り付けることを可能とするフルフェイス形マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、作業環境中の有害物質をろ過、または空気供給装置を通じて着用者に清浄空気の吸入を可能とする呼吸用保護に用いるフルフェイス形マスクである。
かかるフェイスマスクにおいて前記課題を解決するために本発明が対象とするのは、少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、着用者の呼気をマスクの外気側に排出するための排気弁を内設する面口部を備え、着用者の視界を確保するための透明部材からなるアイピースを備え、前記アイピースにはその外周縁部を全周に亘って周設するように組み合わされ、かつ着用者の顔面に当接するよう形成されたフェイスピースを備えてなるフルフェイス形マスクである。
本発明は、第1に、前記アイピースの外周縁部に組み合わされた前記フェイスピースの内周縁部の少なくとも一部にベロ状突起部を設け、前記ベロ状突起部を前記アイピースの外表面との間に離間または離間可能に設けたことを特徴とするフルフェイス形マスクである。
【0014】
本発明は、第2に、前記ベロ状突起部が弾性変形することを特徴とする上記第1に記載のフルフェイス形マスクである。
【0015】
本発明は、第3に、前記ベロ状突起部の少なくとも先端部が前記アイピースの外表面に対して押圧状態にあることを特徴とする上記第1または第2に記載のフルフェイス形マスクである。
【0016】
本発明は、第4に、前記ベロ状突起部が前記フェイスピースと一体成形されていることを特徴とする上記第1〜第3に記載のフルフェイス形マスクである。
【0017】
本発明は、第5に、少なくとも1箇所以上に前記ベロ状突起部を有し、かつ前記アイピースの外表面の延長線上であって、かつ前記面口部の上方側に、前記アイピースの外表面と前記面口部との間に0.5〜5mmの少なくとも水平方向に開放状態にある離間部を設けたことを特徴とする上記第1〜第4に記載のフルフェイス形マスクである。
【発明の効果】
【0018】
従来のフルフェイス形マスクに用いられているアイピース保護カバーは、シート状或いはフィルム状のアイピース保護部材をマスクに固定するために、そのアイピース保護部材に粘着テープや環状伸縮部材を設けたり、アイピース保護部材に環状の溝部を持つ弾性部材などをはじめとする固定のための部材を設ける必要があった。しかし本発明では、アイピースの外周縁部に固定されたフェイスピースの内周縁部にベロ状突起部を持たせて、そのベロ状突起部をフェイスピースの内周縁部への付け根部を支点に弾性変形させてアイピースの外表面と離間または離間可能なように構成し、アイピースとそのベロ状突起部とでシート状或いはフィルム状のアイピース保護カバーの外周縁部を掛持または狭持して固定する構造であり、シート状或いはフィルム状の単体の部材から構成されるアイピース保護部材だけでマスクに着脱自在に固定することが可能になるものである。これによりアイピース保護カバー自体が安価に製作可能であり、マスクも別途部品を追加することなくフェイスピースにベロ状突起部を追加するだけのため、マスクの構造を複雑化させることなく、安価に製作が可能である。また容易に着脱ができ、軽量で着用者の負担にならず、さらにはアイピースの外表面からアイピース保護カバーが浮き上がった状態で固定されることがないため、着用者に視界が歪んで見えてしまったり、乱反射したりして視界に著しい悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のフルフェイス形マスクの実施状態の一例を示す説明図。
【図2】本発明のフルフェイス形マスクの実施状態の一例を示す説明図。
【図3】本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す説明図。
【図4】本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す説明図。
【図5】本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す説明図。
【図6】本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の設置可能な場所であるフェイスピースの内周縁部の一部であって、前記ベロ状突起部の存在しない状態の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の対象であるフルフェイス形マスクは、少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、その覆われたエリア内のさらに内側に鼻部および口部を覆う一方向に開閉可能なノーズカップ用吸気弁を備えたノーズカップと、マスク着用者の呼気をはじめとするマスク内の空気をマスクの外気側に排出するための逆止弁構造をもつ排気弁を内設する面口部を備えていて、その面口部は着用者の吸気に供する空気の流入口であって、それらの空気流入部品との接続部を兼ねている。また、着用者の視界を確保するための透明部材からなるアイピースを備え、そのアイピースにはアイピースの外周縁部を全周に亘って周設するように組み合わされ、かつ着用者の顔面のうち、眼部、鼻部、および口部を避けて、額部、こめかみ部、頬部、および顎部を伝って透孔した接顔部内周縁部を持ち、かつその接顔部内周縁部から外周側に向かって放射状に着用者の顔面に当接する接顔部を形成するよう構成されたフェイスピースを備えている。またこのフェイスピースの接顔部を着用者の顔面に気密状態で密着させ続けるためのヘッドハーネスと、そのヘッドハーネスを長さ調節可能にフェイスピースに取り付けるアジャスターを備えている。
【0021】
ここで用いられるアイピースは、通常板状透明部材からなり、この板状透明部材にガラスを用いることも可能であるが、マスク着用中にアイピースが破損した際の着用者の眼部をはじめとする顔面に対する安全上の観点、或いはマスク着用時の着用者の首部などへのマスクの自重増による重量負荷軽減の観点からガラス製ではなく樹脂製であることが好ましい。
【0022】
樹脂製のアイピースとしては、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ABS、MS、ポリエステル、エポキシなどをはじめとする透明性を有する樹脂であれば前述の材料に限定することなく用いうることができる。その厚みは少なくとも着用者の視界となる箇所において0.3〜5.0mmが好ましい。この樹脂製アイピースは平面状の板状部材を打ち抜いたり、レーザーカッターなどで切り出してそのまま平面状態でマスクに組み込んで用いる場合、またブロー成形、真空成形或いは圧空成形などによって平面状の平板部材を曲面などの立体形状を持たせる場合、さらには射出成形などでよりより複雑な形状に形成する場合などがある。着用者の視界の歪みを低減ために、前述したアイピースのいずれの場合であっても少なくとも着用者の視界となる箇所の眼部の近傍部は、球面状にすることなく平面或いは平面状の板を曲げることで形成されるような曲面またはそれらの複合面で形成することが望ましく、これによって平面状の板状或いはフィルム状の基材を切り出したりしてなるアイピース保護カバーを隙間なくアイピースの外表面に重ね合わせることができるようになっている。
【0023】
フルフェイス形マスクは全体の形状が略半球状の中空状のお椀形をしていて、そのお椀形の丸みのある側にアイピースが配設されていて、その反対側の略平坦側には着用者の顔面と当接する接顔部が配設されている。アイピースは主に着用者の視界となる箇所の近傍のみに設けるものと、略半球状のお椀形の丸みのある側のほとんどを透明部材で形成するものとがある。この内、アイピースが着用者の眼部の近傍のみに配設されるものの中には、アイピースが着用者の左右の眼部に対応してそれぞれ独立して構成される二眼式アイピース構造といわれるものと、着用者の左右両眼につき1つのアイピースで構成される一眼式アイピース構造といわれるものとがある。
【0024】
これらのアイピースと着用者の顔面にフレキシブルに当接するよう形成された合成ゴムやエラストマーなどの弾性部材からなるフェイスピースとは、フェイスピースがアイピースの外周縁部を全周に亘って“コ”の字形に挟むように周設されていて、この双方の部品はこの接合部において気密状態で組み合わされる。しかしアイピースの外周縁部を弾性部材であるフェイスピースで“コ”の字形に挟んだだけでは、容易にフェイスピースからアイピースが離脱してしまうため、この気密状態で組み合わされた状態を保持するために、前述したアイピースの外周縁部を“コ”の字形に挟んだフェイスピース部を、さらにその外側からアイピースの外周縁部を全周に亘って“コ”の字形に覆うように上下に分離可能に、好ましくは2部品で構成される硬質部材からなるアイピース固定枠で周状に組み合わされ固定される。この周状に2部品で組み合わされるアイピース固定枠は好ましくは左右2箇所に両部品の接合箇所を持ち、この接合箇所をネジなどを用いて互いを上下に固定するようになっている。
【0025】
但し、接着剤を塗布してアイピースとフェイスピースとを気密状態で接着させる場合や、アイピースをインサートしてフェイスピースと一体成形することによってアイピースとフェイスピースの接触部を気密状態で接着させるようなアイピースとフェイスピースの組み合せ構造の場合などは、必ずしも前述したようなアイピース固定枠を用いる必要はない。
【0026】
略半球状のお椀形をしているマスクの外周輪郭部近傍、およびそのお椀形の丸みのない接顔部を含む略平坦側は弾性部材からなるフェイスピースにより構成され、その略半球状のお椀形をしているマスクの外周輪郭部近傍には、平面状に4乃至6本程度の蛸足のように放射状に広がる複数のベルト部を有するヘッドハーネスの、その各蛸足状ベルト部の長さ調整を可能とするアジャスターが、ヘッドハーネスの蛸足状ベルト部と対応する位置に設けられていて、ヘッドハーネスを着用者の後頭部から覆ってマスクの接顔部とで挟み込むように装着し、アジャスターでヘッドハーネスの長さを調整することで顔面と気密状態で当接し、その状態で着用し続けることが可能になっている。
【0027】
前述した通り、本発明の対象となるフルフェイス形マスクは略半球状のお椀形をしていて、その丸みのある側の少なくとも着用者の視界となる眼部の近傍付近には二眼式または一眼式のアイピースが配設されているが、そのアイピースは、その丸みのある側の着用者の鼻部、および口部の近傍に配設された面口部を避けるように配設されている。その面口部は略円形或いは略長円形状の円筒形状の接続部を備え、面口部が固定されるフェイスピースには、好ましくはその面口部の接続部形状と相似形であってその接続部より若干小さい寸法からなる開口部をもたせ、面口部の接続部にそのフェイスピースの開口部を周設させて、さらにその外周設部をフェイスピースの外周側から帯状部材などで周状に巻着させることで気密状態で固定される。
【0028】
また、本発明の対象となるフルフェイス形マスクの中には、略半球状のお椀形の丸みのある側のほとんどを透明部材であるアイピースで形成するものがあり、このような構造のものの場合の面口部の固定は、アイピースに面口部の接続部形状と相似形であってその接続部より若干大きい寸法からなる開口部をもたせ、面口部の接続部にパッキンやOリングなどの気密用部材を介してアイピースの開口部に面口部の接続部を嵌め込むことで気密状態で固定される。
【0029】
この面口部には、前述の通り排気弁を内設しているが、その他この面口部には着用者の自己肺力によって、フィルタカートリッジやガスカートリッジなどを通じてマスク外の有害空気をろ過して吸引したり、或いは着用者の自己肺力に頼らず空気供給能力を持つコンプレッサーエアーを用いたエアラインマスク、空気充填ボンベを用いた空気呼吸器或いはブロワーを用いた電動ファンなどの送気システムなどから送気されるクリーンエアーを取り込んだりする空気流入部が設けられていて、さらにこれらの空気流入部品とをねじ部などを設けて着脱自在にする接続部を備えている。またその接続部からマスク内に向かう空気の下流側には必要に応じて着用者が呼気時に閉じる逆止弁構造をもった吸気弁を内設する場合もある。
【0030】
以下に、本発明についてさらに詳細を説明する。
まず本発明に用いるアイピース保護カバーは、厚みが通常0.01〜0.8mm、好ましくは0.05〜0.3mmの平面状の透明板状或いはフィルム状の基材からなり、これらを打ち抜いたり、レーザーカッターなどで切り出して構成することができ、このようにアイピース保護カバーに薄板或いは薄膜状の部材を用いることで、着用者の主に視界となる箇所のマスク外気側のアイピース外表面の例えば平面、或いは曲面に沿うようにアイピース外表面と隙間なく重ねられるようになっている。
【0031】
アイピース保護カバーは少なくとも着用者の視界となる箇所の近傍が保護されていればよく、必ずしもアイピース全体を覆われるようにする必要はない。したがってアイピース保護カバーの輪郭形状は適宜自由であるが、少なくともベロ状突起部を設けた箇所には、アイピース外表面とベロ状突起部でアイピース保護カバーの外周輪郭形状部を掛持または狭持できるようにアイピース保護カバーの外周輪郭形状部の形状を形成しておく必要がある。
【0032】
なお、着用者の視界となる箇所の近傍のみにアイピースが存在する構造のものの場合のアイピース保護カバーの好ましい形態としては、アイピースの構造が一眼式であるか二眼式であるかに関係なく、アイピースの外周縁部に周設したフェイスピースの内周縁部の輪郭と相似形であって、その内周縁部から全体に亘って0〜8mm程度小さいものが好ましく、本発明の特に好ましい形態としては、フェイスピースの内周縁部から全体に亘って0.5〜4mm小さいものが好ましい。しかし所定の位置にアイピース保護カバーを固定できるようにベロ状突起部で挟持または掛持できるような部位が確保されている場合はこの限りではなく、そのアイピース保護カバーの輪郭形状がフェイスピースの内周縁部と非相似形であっても用いうる。
【0033】
アイピース保護カバーの材質には、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネイト、アクリル、ポリアミド、ABS、MS、エポキシ、フッ素樹脂などをはじめとする透明性を有する樹脂であれば前述の材料に限定することなく適宜マスク着用時の作業に合わせて用いうることができ、遮光効果を得るために着色された部材を用いることも可能である。
【0034】
本発明のマスクは、アイピースの外周縁部を全周に亘って“コ”の字形に囲うように周設しているフェイスピースの内周縁部のマスクの外気側の少なくとも一部に、アイピース外表面にベロ状突起部を設けてなる構造をもつものである。このベロ状突起部のフェイスピースの内周縁部の付け根部から先端部までのアイピース外表面に形成される長さは、アイピース保護カバーの外周縁部を挟持または掛持できる長さであればその長さに制約はないが、長さが長いほどアイピースの中央側に向かってそのベロ状突起部が張り出すことになるため、着用者の視界に影響することがあることから、このベロ状突起部の長さは1〜20mm、特に好ましくは3〜12mmである。ベロ状突起部の形成される向きは、複数の丸み或いは直線によって周状に形成されるフェイスピースの内周縁部の輪郭形状の、それが円弧状であればその円弧の中心に向かって、直線であればその直線に直交する方向に向かって形成することが好ましい。しかし必ずしもそのようにする必要はなく前述した円弧の中心や直交方向に向かって形成せずとも、それらの方向とは異なる斜め方向に形成することもできる。
【0035】
ベロ状突起部は、通常はフェイスピース成形時に当該個所にフェイスピースと一体的に形成することが望ましいが、別途接着や溶着などによって取り付けることもできる。
【0036】
本発明においてベロ状突起部は少なくとも1箇所は設ける必要があるが、アイピースの外表面の特に曲面或いは平面などに対して平面状のアイピース保護カバーが、それらの面に追随してアイピースの外表面に隙間なく重ね合わせて取り付けられるように、かつ着用時にマスクから不用意に脱落することのないように、ベロ状突起部を複数個所、好ましくは2〜6個所に設けたり、ベロ状突起部の幅をアイピースの周方向に広げたり、ベロ状突起部を図3〜5に示すような形状にしたりするなど、適宜選択することが可能である。本発明の特に好ましい形態としては、マスクの中心上の上・下とアイピースの最大幅部となる左・右の位置に幅15mmの図1に示すベロ状突起部を配設する例を挙げることができる。また、ベロ上突起部の輪郭は必ずしも長方形状、正方形状、台形状、半円形状、或いはこれらの複合形状などこれらに限定することなく適宜選択可能である。
【0037】
なお、図2に示すように、マスクの中心上の下部には、ベロ状突起部を設けずに、面口部とアイピースとに離間部を設け、アイピース保護カバーの外周輪郭部の下部側中央を掛持することも可能であり、その場合は、アイピースの下部側中央以外の箇所にベロ状突起部が設けられる。
【0038】
ベロ状突起部は、そのベロ状突起部の材質やアイピース保護カバーの厚さなどによって異なるが、その先端部とアイピース外表面との離間部が0〜5mm、より好ましくは、アイピース外表面にベロ状突起部の先端部が強制的に押し当てられていて、そのベロ状突起部が往復線形運動するように弾性変形してアイピース外表面から離間可能なように構成されている。またベロ状突起部のアイピース外表面との当接部は必ずしもアイピース外表面と平行である必要はなく、フェイスピースの“コ”の字形の内周縁部のベロ状突起部付け根部から反対側のベロ状突起部の先端部に向かって斜めに形成したり、ベロ状突起部のアイピース外表面との当接面を凹凸状或いは曲面、球面などの形状を適宜用いることができる。本発明の特に好ましい形態としては、フェイスピースの“コ”の字形の内周縁部のベロ状突起部付け根部からその反対側の先端部まで斜めに形成され、アイピース外表面にベロ状突起部の先端部が強制的に押し当てられるように構成されているものを挙げることができる。
【0039】
本発明では前述したようなアイピース保護カバーをマスクのアイピースの外表面に隙間なく重ね合わせ、アイピース保護カバーの外周縁部の一部をアイピースの外表面と前述したベロ状突起部との離間部或いは離間可能部で挟持または掛持させることでアイピースに着脱自在に固定することができ、従来のようにアイピース保護カバーをマスクに取り付けるための専用に部材などを用いることなしにマスクに固定することができ、そのアイピース保護カバー取り付けの際には、アイピース保護カバーが薄板或いは薄膜からなるものであるため、アイピース保護カバーを撓ませてアイピースとベロ状突起部の離間部或いは離間可能部に挿入することも可能であるし、弾性部材からなるフェイスピースの内周縁部の一部に追加したベロ状突起部を、その内周縁部への付け根部を始点として弾性変形させてアイピース外表面との離間部或いは離間可能部を広げ、てアイピースの外表面にアイピース保護カバーを重ねたのち、ベロ状突起部をその弾性力によって元の状態に戻すことでアイピース保護カバーをベロ状突起部とアイピース外表面とでアイピース外表面に固定することも可能である。
【0040】
アイピース保護カバーは前述したようにマスクの主に着用者の視界となる箇所の眼部の近傍部が保護されていればよく、必ずしもアイピース全体が覆われるようにする必要はない。特に略半球状のお椀形の丸みのある側のほとんどを透明部材で形成するものの場合、アイピースの全体形状も略半球状をしていて、着用者の視界となる箇所の眼部の近傍部を、平面状の板を曲げることで形成されるような曲面或いは平面で形成することで着用者の視界の歪みを防ぎ、かつこれによって平面状の板状或いはフィルム状の基材を切り出したりして形成されるアイピース保護カバーを隙間なくアイピースの外表面に重ね合わせることができるようになっている。着用者の視界の範囲のうち左右の横幅全幅部を基点に、そこから頬部近傍を通って鼻部近傍に至るまでの間にはフェイスピースの内周縁部が存在しない。本発明ベロ状突起部はアイピース保護カバーの左右の横幅全幅部を基点にその下側外周にも設けることが好ましが、こういった場合を含め、アイピースの外表面の延長線上でかつ面口部の上方側に、アイピースの外表面と面口部とに0.5〜5mmの少なくとも水平方向に開放状態にある離間部を設けてアイピース保護カバーの下部側をその離間部に掛持して固定することもできる。
【0041】
図3は、本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す断面図であり、左図がアイピース保護カバー非装着状態を示しており、右図がアイピース保護カバー装着状態を示している。ベロ状突起部4aは弾性部材からなるフェイスピース3と一体的に形成されていて、フェイスピース3の内周縁部3dへのベロ状突起部4aの付け根部4eがアイピース外表面2bより離間して隙間のある状態にある。反対に先端部4fはアイピース外表面2bに押圧された状態になっている。先端部4fはアイピース外表面2bから付け根部4eを支点に弾性変形して離間可能になっていて、右図の想像線はその状態を示している。
【0042】
図4は、本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す断面図であり、左図がアイピース保護カバー非装着状態を示しており、右図がアイピース保護カバー装着状態を示している。ベロ状突起部4aは弾性部材からなるフェイスピース3と一体的に形成されていて、図3と同様にフェイスピース3の内周縁部3dへのベロ状突起部4aの付け根部4eがアイピース外表面2bより離間して隙間のある状態にある。また先端部4fも付け根部4eと同様にアイピース外表面2bから離間して隙間のある状態にある。ベロ状突起部4aは付け根部4eを支点に弾性変形することが可能になっていて、右図の想像線はその状態を示している。
【0043】
図5は、本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部の一例を示す断面図であり、左図がアイピース保護カバー非装着状態を示しており、右図がアイピース保護カバー装着状態を示している。ベロ状突起部4aは弾性部材からなるフェイスピース3と一体的に形成されていて、フェイスピース3の内周縁部3dへのベロ状突起部4aの付け根部4eがアイピース外表面2bから離間しておらず、フェイスピース3の内周縁部3dから付け根部4eを通過してそのまま先端部4fに向かって延長した状態にある。付け根部4eを支点に弾性変形させてアイピース外表面2bから離間することができるようになっていて、右図の想像線はその状態を示している。
【0044】
図6は、本発明のフルフェイス形マスクに設けるべきベロ状突起部4の設置可能な場所であるフェイスピース3の内周縁部3dであって、ベロ状突起部4の存在しない状態の一例を示す断面図である。フェイスピース3の内周縁部3dの端部近傍までその外側から“コ”の字形にアイピース固定枠5aによって覆われている点は前述の図3〜図5と同様であるが、内周縁部3dには図3〜図5に例示したような突起状に飛び出したベロ状突起部4が存在しない。したがって内周縁部3dとアイピース2の外表面2bとの間に指先で摘んだりするなどして容易にアイピース保護カバー9を挟持または掛持させることができるような離間部または離間可能部をもたない状態になっている。
【実施例1】
【0045】
図1は本発明の実施状態を示す一例である。
図1のマスク1には着用者の顔面に当接するフェイスピース3と、フェイスピース3に取り付けられた着用者の視界を確保するためのアイピース2と、そのアイピース2をフェイスピース3と気密状態で固定するための上下2部品からなるアイピース固定枠5a、5bと、着用者の鼻部および口部を覆う吸気弁を備えたノーズカップと、マスク外の有害環境空気をろ過するフィルタまたは吸収缶からなるろ過材カートリッジ10と、そのろ過されたクリーンエアーを着用者に供給するための吸気口6bを有する面口部6と、同じくその面口部6には着用者の呼気などをマスク外に排出するための排気弁(図示せず)を有している。また、マスクを着用者の顔面に当接した状態に保持する平面状で蛸足のように放射状に広がる複数のバンド部を持ち、そのバンド部が5本足で構成されているヘッドハーネス7と、フェイスピース3の略平端部3b近傍には、ヘッドハーネス7の5本の蛸足状バンド部と対応した箇所にヘッドハーネス7の長さ調整具であるアジャスター8がそれぞれ設けられている。
【0046】
図1に示されたマスク1は、左図がマスク着用者に正対するように見た状態を示していてこの向きを正面と定義する。また右図は左図の左右中心軸における縦断面図でありこれを側面と定義する。
図1左図のように本発明のフルフェイス形マスク1を正面から見た場合、アイピース2は着用者の左右双方の眼部をそれぞれほぼ中心として2つの略円形状の、互いに一部がマスクの中央で重なり合ったような正面形状を持った一眼式アイピース構造であり、かつそのアイピース2の形成面は複数の略円錐形状面どうしを複合した立体形状であって、平面状の板を曲げることで形成されるような曲面で形成されている。アイピース2は、全光線透過率90%以上の透明度を持つ厚み2mmのポリカーボネイト樹脂製の平板をレーザーカッターによって切り抜き、次いでブロー成形によって前述した曲面等をもった立体形状に曲げ加工して前述したようなアイピース形状を形成している。
【0047】
着用者の顔面に当接してマスクの外気と遮断するフェイスピース3の接顔部3bは、着用者が装着した際に眼部、鼻部、および口部に対応する箇所を避けて開口し、額部、こめかみ部、頬部、および顎部を伝って透孔する接顔部内周縁部(図示せず)を持ち、その接顔部内周縁部からマスクの外周縁部に向かって放射状に形成されている。この接顔部3bを兼ねるフェイスピース3は適度な弾性力を有する合成ゴムで形成されていて、これにより接顔部3bが着用者の顔面に当接した際に着用者の顔面形状に追随するようにフレキシブルに弾性変形し、着用者の顔面と接顔部3bとが気密状態になる。図1中央上部の右図部分拡大断面図をもって説明すると、このフェイスピース3は前述したアイピース2の外周縁部2aを全周に亘って“コ”の字形に周設する3cによって気密状態で組み合わされている。つまりこのフェイスピース3の“コ”の字形部3cはアイピース2の外周縁部2aを全周に周設する内周縁部3dを形成することになる。また、そのフェイスピース3の“コ”の字形部3cを外側からさらに“コ”の字形状にフェイスピース3の“コ”の字形部3cを全周覆うように上下2つに分離したアイピース固定枠5a、5bによって固定されていて、左右両端に接合部を設けて、その接合部を上下にねじ止めして固定している。
【0048】
本発明のマスクを正面から見た図1左図において、マスクの左右対称となる中心線上のフェイスピース3の内周縁部3dの上側内周縁部、下側内周縁部にはそれぞれ、アイピース2の中心部側に向かって伸びるベロ状突起部4a、4bが、さらに内周縁部3dの左右全幅部近傍にそれぞれアイピース2の中心部側に向かって伸びるベロ状突起部4c、4dがマスクの外気側となるアイピース2の外表面2b上に形成されている。これらのベロ状突起部はいずれも周方向15mmの幅をもち、内周縁部3dの付け根部4eからアイピース2の中心側に向かって7mm突出している。そのベロ状突起部4a〜4dのアイピース外表面2bに対して垂直に見たときの輪郭は、略長方形状であり先端部には丸みを持たせてある。図1中央上部の右図部分拡大断面図をもって説明すると、アイピース外表面2b寄りのベロ状突起部の内側の内周縁部3dとの付け根部4eは、アイピース外表面2bから1.5mm離れた高さにあり、逆にベロ状突起部の先端部4fの内側は通常アイピース外表面2bに押し当てられた状態となっている。ベロ状突起部の厚みはベロ状突起部の付け根部側4eから先端部4fまで2mmで均一となっているが、例えば先端部4f側を1mmにした偏肉構造を用いることも可能である。
【0049】
フェイスピース3は接顔部を有し、この接顔部は着用者の顔面とフレキシブルに接する必要があるため、ゴム弾性力を有する合成ゴムにより形成されていて、このフェイスピース3と図1に示すベロ状突起部4a〜4dは一体的に形成されている。ベロ状突起部4a〜4dはアイピース外表面2bに先端部4fが押圧された状態にはあるが、アイピース外表面2bに固着されてはおらず、付け根部4eを支点に弾性変形して離間可能になっている。また内周縁部3dから前述しように略長方形状に突起しているため、ベロ状突起部4a〜4dを指先などで摘んだりして弾性変形させ易くなっている。したがってこのように弾性変形させた状態でアイピース保護カバー9をアイピース外表面2bに重ね合わせた後、ベロ状突起部から指先を離せば、ベロ状突起部が元の状態に復元してアイピース外表面2bとベロ状突起部の先端部4fの内側でアイピース保護カバー9を挟持して固定することができるようになっている。
なお、ベロ状突起部は必ずしもフェイスピース3と一体的に形成する必要なく、接着や溶着などによって同様の構造をもたせることでも図1に示すものと同様の機能を有することが可能である。
【0050】
本発明におけるアイピース保護カバー9は、これまで説明したマスク1とは独立していて、厚み0.1mmの全光線透過率90%以上の透明PET製フィルムから成り、レーザー加工によりアイピース2の外表面2bに重ね合わせた際、そのアイピース2の外周縁部2aを周接するフェイスピース3の内周縁部3dの輪郭より1.5mm小さい大きさの相似形の輪郭形状になるように切り抜いて形成されている。このアイピース保護カバー9は、マスク1のアイピース外表面2bとマスク1の前述したフェイスピース3の上下左右に設けた4箇所のベロ状突起部4a〜4dの各先端部4fで挟持させることでアイピース外表面2bに隙間なく重ね合わせて固定することが可能であり、これにより着用者が作業中であっても不用意にマスク1からアイピース保護カバー9が外れてしまうことがない。このように着用者はこのアイピース保護カバーを簡単に装着できると共に、視界に歪みが生じるようなことなくクリアに視界を得ることが可能となる。また、作業などによってアイピース保護カバー9が汚れたりして拭き取っても良好な視界が確保できなくなった場合は、アイピース外表面2bと上下左右に設けた4箇所のベロ状突起部4a〜4dで挟持されたアイピース保護カバー9を取り外して新しいものと交換することでまた良好な視界を得ることが可能となる。
【0051】
図1はベロ状突起部が4箇所のものであるが、アイピース保護カバーをアイピース外表面に隙間なく、不用意に離脱することなく取り付けることができればそのベロ状突起部の数量、周方向の幅やフェイスピースの内周縁部から先端部までの長さや厚みやアイピース面における輪郭形状や離間部或いは離間可能部の形成面の大きさや形状などについては適宜変更可能である。また、ベロ状突起部の厚み形状は必ずしも均一である必要はなく、偏肉していても用いうるし、ベロ状突起部の先端部4fが強制的にアイピース外表面2bにアイピース保護カバー9を押し付けて挟持させる構造である必要はなく、単純にアイピース保護カバー9を取り付けることが可能なようにアイピース2とベロ状突起部との間に離間部または弾性部材などにより構成した離間可能部を設けることで実施が可能である。例えば離間部を設けた場合のその隙間は0〜5mm程度の空間以下であれば実施が可能である。
さらにアイピース保護カバーは必ずしも全光線透過率の数値に制限されるような透明性を有している必要はなく、用途に合わせて紫外線カットフィルムや遮光性を有するフィルムなどを用いうる。
【実施例2】
【0052】
図2は本発明の実施状態を示す一例である。図2のマスク51には実施例1と同様にアイピース52、フェイスピース53、アイピース固定枠55a、55b、面口部56、ヘッドハーネス57、アジャスター58、ろ過材カートリッジ60などがある。
【0053】
図2も図1と同様に左図がマスク着用者に正対するように見た状態を示していてこの向きを正面と定義する。また右図は、左図の左右中心軸における縦断面図でありこれを側面と定義する。図2右図の側面を見るとマスク51は全体が略半球状のお椀形に形成されていて、アイピース52はそのお椀形の丸みのある側の大部分を占めている。このように丸のある側の大部分をアイピース52で占めるような場合、アイピース52は射出成形をはじめとし、前述したような各種成形法によって形成することができる。マスク51の略平坦側には着用者の顔面に当接するフェイスピース53の接顔部53bあり、そのやや丸み側には実施例1と同様にアイピース52の外周縁部52aをフェイスピース53で“コ”の字形に全周覆い、その“コ”の字形53cのさらにその外側からの上下2部品からなるアイピース固定枠55a、55bで覆ってアイピース52とフェイスピース53とを気密状態で組み合わせて固定している。
【0054】
アイピース52の着用者の口部、および鼻部近傍の正面には、実施例1と同様に吸・排気部品を設置或いは接続するための面口部56が配設されていて、そのアイピース52にはその面口部56を取り付けるための略円形或いは略長円形の開口部が設けられていて、パッキン56Cを介してそのアイピース2の開口部と面口部56を嵌着して気密状態で組み合わされている。アイピース2の着用者の両眼付近の視界となるアイピース部は、実施例1と同様に球面ではなく、複数の略円錐形状面どうしが複合した立体形状であって、平面状の板を曲げることで形成されるような曲面で形成されていて、アイピース保護カバー59をアイピース52の視界となる箇所の外表面52bに隙間なく重ね合わせることが可能になっている。
【0055】
図2左図に示すように、マスク51の左右対称となる中心線上のフェイスピース53の内周縁部53dの内周縁部53dの上側内周縁部、左右全幅部近傍の3箇所にそれぞれアイピース52の中心側に向かって延びるベロ状突起部54a、54c、54dがマスクの外気側となるアイピース52の外表面52b上にフェイスピース53と一体的に設けられていて、これらのベロ状突起部は実施例1と同様に先端部54fは通常アイピース外表面59bに押し当てられた状態となっているが、アイピース外表面52bに固着されてはいない。このベロ状突起部の構造、数量、形状、寸法については実施例1と同様に適宜選択することができ、これによりマスク51のアイピース外表面52bにアイピース保護カバー59を固定することができるようになっている。
【0056】
しかし、図2左図および右図をみるとマスク51の視界となる下方側に位置する面口部56の上方近傍にはフェイスピース53の内周縁部53dが存在せず、内周縁部53dは面口部56の全体を囲うようにマスク51の下方側を通って存在する。この場合当然マスク51の視界となる下方側に位置する面口部56の上方近傍および両頬部近傍部にはベロ状突起部を持たせることができないが、このような図2に示すマスク構造のものを含め、アイピースの外表面の延長線上で、着用者の視界の内、下方側に位置する面口部56の上方側56aに、アイピースの外表面と面口部との間に5mmの水平方向に開放状態に広がる離間部を設けて、アイピース保護カバー59の下方側を掛持させてアイピース外表面2b上に隙間なくアイピース保護カバー59を固定することが可能になっている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は防じん、防毒マスク等の自己肺力式マスク、或いはエアランマスク、空気呼吸器、電動ファン付き呼吸用保護具などの着用者に空気を供給する構造のマスクやゴーグルなどの着用者の眼部を保護したり視界を確保する必要のある保護具の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 :マスク
2 :アイピース
2a:アイピース外周縁部 2b:アイピース外表面
3 :フェイスピース
3c:フェイスピース“コ”の字形部
3d:フェイスピース内周縁部
4a〜4d:ベロ状突起部
4e:付け根部
4f:先端部
5a:アイピース固定枠(上)
5b:アイピース固定枠(下)
6 :面口部
9 :アイピース保護カバー
51 :マスク
52 :アイピース
52a:アイピース外周縁部
52b:アイピース外表面
53 :フェイスピース
53c:フェイスピース“コ”の字形部
53d:フェイスピース内周縁部
54a〜104c:ベロ状突起部
54e:付け根部
54f:先端部
55a:アイピース固定枠(上)
55b:アイピース固定枠(下)
56 :面口部
56a:面口部溝
59 :アイピース保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、着用者の呼気をマスクの外気側に排出するための排気弁を内設する面口部を備え、着用者の視界を確保するための透明部材からなるアイピースを備え、前記アイピースにはその外周縁部を全周に亘って周設するように組み合わされ、かつ着用者の顔面に当接するよう形成されたフェイスピースを備えてなるフルフェイス形マスクにおいて、前記アイピースの外周縁部に組み合わされた前記フェイスピースの内周縁部の少なくとも一部にベロ状突起部を設け、前記ベロ状突起部を前記アイピースとの間に離間または離間可能に設けたことを特徴とするフルフェイス形マスク。
【請求項2】
前記ベロ状突起部が弾性変形することを特徴とする請求項1に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項3】
前記ベロ状突起部の少なくとも先端部が前記アイピースの外表面に対して押圧状態にあることを特徴とする請求項1または2に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項4】
前記ベロ状突起部が前記フェイスピースと一体成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項5】
少なくとも1箇所以上に前記ベロ状突起部を有し、かつ前記アイピースの外表面の延長線上であって、かつ前記面口部の上方側に、前記アイピースの外表面と前記面口部との間に0.5〜5mmの少なくとも水平方向に開放状態にある離間部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルフェイス形マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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