説明

フルフェイス形マスク

【課題】水を扱う作業者の取り扱い性に優れたフルフェイス形マスクを提供する。
【解決手段】覆われたエリア内のさらに内側に鼻部および口部を覆うノーズカップ用吸気弁4aを備えたノーズカップ4と、清浄空気供給ユニットとの接続を可能とする吸気ユニット接続部5aと清浄空気取り入れ口である吸気口5bと前記ノーズカップの内側の着用者の呼気をマスク外に排出するための排気口5eに設けられた一方向に開閉可能な排気弁5fを備えた面口部5と、マスクを携行するための首掛け紐を備えたフルフェイス形マスクの前記面口部を前記吸気口を形成している隔壁5cによって前記吸気ユニット接続部側とマスクの内側とに仕切り、前記吸気口の下方側に前記排気口を配設し、前記隔壁のマスクの内側面であって前記吸気口の中心より上方側の前記吸気口の外周側に、前記隔壁面と直交する方向への前記隔壁面からの高さが3〜100mmの壁板5dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業環境中の有害物質をろ過、または空気供給装置を通じて着用者に清浄空気の吸入を可能とする呼吸用保護具の内、眼部、鼻部および口部を覆うように形成されたフルフェイス形マスクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフルフェイス形マスクは、眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、その覆われたエリア内のさらに内側に鼻部および口部を覆う一方向に開閉可能なノーズカップ用吸気弁を備えたノーズカップと、着用者に清浄空気を供給させるための清浄空気供給ユニットを接続する吸気ユニット接続部と前記清浄空気供給ユニットからの清浄空気取り入れ口である吸気口とさらに前記吸気口を通過したのち前記ノーズカップ用吸気弁を通じて前記ノーズカップの内側に流入した清浄空気を含み前記ノーズカップの内側の着用者の呼気をマスク外に排出する一方向に開閉可能な排気弁を備えた面口部と、着用者の視界を確保するための透明部材からなるアイピースと、着用者の顔面に気密状態で当接する弾性部材からなるフェイスピースと、アイピースとフェイスピースとを気密状態で固定するアイピース固定枠と、顔面へのマスクの装着状態を保持するためのヘッドハーネスと、そのヘッドハーネスを長さ調整可能にフェイスピースに取り付けるアジャスターと、マスクを非装着状態で携行するために着用者の首に掛けておくことができる首掛け紐などによって構成される。
【0003】
従来、フルフェイス形マスクついては、高圧空気充填ボンベからマスク内に強制的に清浄空気を供給する空気呼吸器、コンプレッサーによりフィルタ、吸収缶或いはその両方のろ過材を介して強制的に清浄空気を供給するエアラインマスク、電動ファンによりフィルタ、吸収缶或いはその両方のろ過材を介して強制的に清浄空気を供給する電動ファン付きマスク、自己肺力によりフィルタ、吸収缶或いはその両方のろ過材を介して清浄空気を吸気する防じん・防毒マスクなど、これらの用途をはじめとする呼吸用保護具の分野で用いられている。
【0004】
前述のフルフェイス形マスクの各種用途において、一般的なフルフェイス形マスクはいずれの用途においても共通して用いることが可能なように、前述した面口部の吸気ユニット接続部には、空気呼吸器であれば供給弁が、エアラインマスクであれば空気接続部が、電動ファン付きマスクではブロワーユニットが、防じんマスクであればフィルタが、防毒マスクであれば吸収缶がそれぞれマスクの用途に合わせて適宜着脱可能に接続できるようになっている。なお、この面口部の吸気ユニット接続部は口部の近傍に配設されるものが一般的で、マスクに対しては額側を上側とした場合、下側に位置している。
【0005】
このフルフェイス形マスクの使用においては、マスクを着用せずとも着用者の周囲の環境が呼吸に供する空気を得られるような状況となったときなどは、一時的にマスクを脱いで非装着状態にすることがある。例えば休憩時間などが代表的であるが、着用者が有害環境から無害環境に移動したときなどである。このように一時的にマスク非装着状態にあるマスクは、通常前述した首掛け紐を用いて着用者の首に掛けて携行している。このようにマスクを非装着状態で首掛け紐を用いて着用者の首に掛けたときの状況を図1に示す。一般的にはマスク装着時にマスクの下方に位置する側、つまり吸気ユニット接続部のある面口部側が上側に、マスク装着時にマスクの上方に位置する側、つまり額側となる側が下側になるように、かつマスクの接顔部側が着用者の身体側を向くような状態で着用者の首から垂れ下がっている。これは、着用者の首から垂れ下がった状態でマスクに水などを浴びてしまうことを考慮して、着用状態のままの向きである額側を上側に、吸気ユニット接続部のある面口部側を下側の向きに着用者の首から掛けて垂れ下げていると、吸気ユニット接続部に接続される清浄空気供給ユニット内にその首から掛けた状態において簡単に水などが浸入してしまい、正常に動作しなくなってしまうという危険性があるためであり、マスクを着用時とは逆の逆さまの状態で首から下げておくことで吸気ユニット接続部のある面口部側には水などを流れ込ませず、下側に向けた額側に流れ込むようにしているためである。
【0006】
このようにマスクを非装着状態で着用者の首から首掛け紐によって垂れ下がっている状況で水などを浴びるような作業の具体例としては、消防現場が代表的である。消防現場では前述した空気呼吸器が用いられており、この空気呼吸器はフルフェイス形マスクのほか、前述した供給弁や高圧空気充填ボンベとそのボンベ専用の背負具、その背負具を着用者の体に装着するためのハーネスなどによって構成されている。高圧空気充填ボンベの内容量には制限があるため、消防隊員はボンベを背負具に装備してそれをハーネスで自身の体に装着した状態にありながらもマスクのみ非装着状態で首掛け紐によってそのマスクを携行しながら消火活動や救助活動などを行う場合がある。
【0007】
そのような状況では消火活動によって放水された水を消防隊員が浴びてしまうことは避けられず、前述したようにマスクが首掛け紐によって着用者の首からぶら下がった状態にあっても水などがなるべくマスクに入り込まないように配慮はされているもののそれだけでは完全ではなく、着用者の身体と首掛け紐によって着用者の首からぶら下がった状態にあるマスクの接顔部側との間から水が流れ込み、最終的にはマスクの中の額側に位置する箇所である下側にその水が溜まってしまう。そしてその水が溜まっている状態のマスクを装着しようとした場合、マスクの吸気ユニット接続部のある面口部側が上側に、額側に位置する側が下側にある状態のマスクを、上下ひっくり返した向きにして装着することになり、マスクの額側に溜まっていた水が面口部側に流れ、吸気口を伝って吸気ユニット接続部に接続された清浄空気供給ユニットである供給弁の内部に流れ込んでしまうということが起こる。このように供給弁の内部に水などが浸入してしまうと、供給弁を構成している部品の中の金属部品を錆びつかせてしまったり、部品の摺動部のグリスが流れ落ちてしまったりと、機構部品どうしがスムーズに動くことができなくなってしまったり、異物を含んだ水などが浸入した場合はその異物によって正常に動作しなくなるなどの問題が生じていた。
【0008】
このような問題は空気呼吸器に限ったものではなく、例えば電動ファン付きマスクであれば面口部の吸気口から吸気ユニット接続部に接続されたブロワーユニットの内部に侵入し、電気部品を短絡して故障させてしまうことになる。
【0009】
このような問題点の存在にもかかわらず、従来は、主に着用者自身の注意を喚起するにとどまり、マスクの構造を改良して問題点を解決するという着想は事実上存在しなかった。なお、特許文献1および特許文献2にはフルフェイス形マスクの構造図が記載されているに留まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−38225号公報
【特許文献2】特開平11−114079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決することにある。
マスクを非装着状態で首掛け紐によって着用者の首からぶら下げた状態では、マスクの面口部の吸気ユニット接続部のある側が上側に、額側に位置する側が下側にあり、その状態ではマスクの額側に水などが溜まってしまうことがある。このようにマスクの額側に水などが溜まった状態にあるマスクを装着しようとすると、マスクの上下の向きが逆になるようにひっくり返して装着することになり、マスクの額側に溜まっていた水が面口部側に流れ、吸気口を伝って吸気ユニット接続部に接続された各種空気供給ユニットの内部に流れ込んでしまうということを防止することであり、マスクの額側に溜まっていた水が吸気口から先に流れ込むことなく排出される方策が上記問題点の解決に有効であると知見し、さらに検討を続けた結果、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、作業環境中の有害物質をろ過、または空気供給装置を通じて着用者に清浄空気の吸入を可能とする呼吸用保護に用いるフルフェイス形マスクである。
かかるフェイスマスクにおいて本課題を解決するために本発明が対象とするのは、少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、その覆われたエリア内のさらに内側に鼻部および口部を覆う一方向に開閉可能なノーズカップ用吸気弁を備えたノーズカップと、着用者に清浄空気を供給するための清浄空気供給ユニットとの接続を可能とする吸気ユニット接続部と前記清浄空気供給ユニットからの清浄空気取り入れ口である吸気口と前記吸気口を通過したのち前記ノーズカップ用吸気弁を通じて前記ノーズカップの内側に供給される清浄空気を含み前記ノーズカップの内側の着用者の呼気をマスク外に排出するための排気口に設けられた一方向に開閉可能な排気弁を備えた面口部と、非装着状態にあるマスクを着用者の首に掛けて携行するための首掛け紐を備えたフルフェイス形マスクである。
本発明は、第1に、前記面口部は、前記吸気口を形成している隔壁によって前記吸気ユニット接続部側とマスクの内側とに仕切られ、前記吸気口の下方側には前記排気口が配設され、前記隔壁のマスクの内側面であって前記吸気口に対する前記排気口のある側とは反対側の少なくとも前記吸気口の中心より上方側の前記吸気口の外周側に、前記隔壁面と直交する方向への前記隔壁面からの高さが3〜100mmの壁板を設けたことを特徴とするフルフェイス形マスクである。
【0013】
本発明は、第2に、前記壁板は、前記隔壁面のマスクの内側であって前記隔壁面と直交する方向からみたとき、前記排気口の中心と前記吸気口の中心とを結ぶ前記排気口から前記吸気口に向かっての延長線を中心に左右に亘って少なくとも180°以上の範囲に設けられていることを特徴とする上記第1に記載のフルフェイス形マスクである。
【0014】
本発明は、第3に、前記壁板の外周面が、前記隔壁面に対して45〜135°の角度で設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフルフェイス形マスク。
【0015】
本発明は、第4に、前記壁板が、前記吸気口を周状に囲うように設けられていることを特徴とする請求項1〜3に記載のフルフェイス形マスク。
【0016】
本発明は、第5に、前記隔壁のマスクの内側面に、前記吸気口からマスクの内側に向かって一方向に開閉する吸気弁を設け、前記吸気口の外周側に前記吸気口を囲うように、前記吸気弁の閉鎖時に前記吸気弁の外周近傍に周状に当接するように設けた突起状の吸気弁当接山部が、前記壁板を兼ねることを特徴とする上記第4に記載のフルフェイス形マスクである。
【発明の効果】
【0017】
マスクを非装着状態で首掛け紐によって着用者の首からぶら下がっている状態で水などを浴びてしまった場合にはそのマスクの額側に水などが溜まった状態となるがことがあるが、本発明によって、そのような状態にあるマスクを、その上下の向きが逆になるようにひっくり返しても、面口部の隔壁からマスクの内側の吸気口の外周側に設けた壁板によって、額側に溜まっていた水などが、吸気口を伝って吸気ユニット接続部に接続される清浄空気供給ユニットの内部に流れ込んでしまうということを抑制することであり、マスクの額側に溜まっていた水が吸気口に流れ込むことなく排出される本発明のフルフェイス形マスクを用いることにより、前述したような吸気ユニット接続部に接続される各種清浄空気供給ユニット内の例えば金属部品を錆びつかせてしまったり、部品の摺動部のグリスを流れ落としてしまったりして機構部品がスムーズに動かなくなったり或いは破損したり、異物を含んだ水などが浸入してその異物によって正常に動作しなくなったり、或いは電気部品が短絡してしまうなどの問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フルフェイス形マスクを用いた空気呼吸器において、同マスクを非装着状態で首に掛けた状態の一部を示す説明図。
【図2】本発明のフルフェイス形マスクの正面中央の縦断面図。
【図3】本発明の面口部に設けるべき壁板の一例を示す説明図。
【図4】本発明の面口部に設けるべき壁板の一例を示す説明図。
【図5】本発明の面口部に設けるべき壁板の一例を示す説明図。
【図6】本発明のフルフェイス形マスクを非装着で首に掛けたときの、マスク内部に水が溜まる個所を示す正面中央の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフルフェイス形マスク1は、一般的なフルフェイス形マスクと同様に着用者の視界を確保するための少なくとも着用者の眼部の近傍に配設される透明部材からなるアイピース3と、そのアイピース3の外周縁部に周設し、かつ着用者の顔面に気密状態で当接する接顔部2aを形成する弾性部材からなるフェイスピース2と、着用者の口部および鼻部近傍に配設される面口部5によって、着用者が装着することで眼部、鼻部および口部を覆うことが可能になっている。
その覆われたエリア内のさらに内側には、鼻部および口部を覆うノーズカップ4が設けられていて、そのノーズカップ4には一方向に開閉可能であってノーズカップ4の内側に通気可能なノーズカップ用吸気弁4aが設けられている。このノーズカップ4はマスク装着時に下方側に位置する面口部5の排気弁5fの設置された排気口5eに連結されていて、その排気口5eとの接合部には呼気等を含めた水抜き用の孔4bが形成されている。
前述した面口部5には、着用者に清浄空気を供給させるための清浄空気供給ユニットを着脱自在に接続する吸気ユニット接続部5aと、その清浄空気供給ユニットからの清浄空気取り入れ口である吸気口5bと、吸気口5bを通過したのちノーズカップ用吸気弁4aを通じてノーズカップ4の内側に供給される清浄空気を含みノーズカップ4の内側の着用者の呼気をマスク外に排出する一方向に開閉可能な排気弁5fを備えている。
またこの吸気口5bを形成している壁は、吸気ユニット接続部5a側とマスクの内側とに仕切る隔壁5cである。
これまで記載した部品類はフェイスピース2を主体部品として配設されていて、着用者の顔面に対してこの主体となるフェイスピース2の装着状態を保持するための平面状で放射状に複数のベルト部が広がったヘッドハーネス6を備えていて、フェイスピース6の接顔部2aの周縁部近傍にはこのヘッドハーネス6の複数あるベルト部に対応した位置にそのベルト部の長さ調整を可能とするアジャスター6aが設けられている。着用者はこのアジャスター6aによってフェイスピース2の接顔部2aと気密状態に当接できるようにこのヘッドハーネス6のバンドの長さを調整して装着するようになっている。
また、フェイスピース2の正面の口部から水平方向に延長した両端近傍には、300〜1000mm程度の1本の紐状部材からなる首掛け紐6bが結束されていて、マスクを非装着状態で携行する際に、その首掛け紐6bを着用者の首に掛けておくことができるようになっている。
【0020】
本発明のフルフェイス形マスク1は、一般的なフルフェイス形マスクと同様に、面口部5の吸気ユニット接続部5aに、空気呼吸器であれば空気供給弁が、エアラインマスクであれば空気接続部が、電動ファン付きマスクであればブロワーユニットが、防じんマスクであればフィルタが、防毒マスクであれば吸収缶が、それぞれマスクの用途に合わせて適宜着脱可能に接続できるようになっている。その吸気ユニット接続部5aはネジなど適宜の方法で着脱自在に取付け可能となっている。
【0021】
本発明のフルフェイス形マスク1は、一般的なフルフェイス形マスクと同様に、面口部5の吸気ユニット接続部5aは口部の近傍に配設され、マスク装着時に額側となる側を上側とした場合、この吸気ユニット接続部5aは下側に配設されている。
また、マスク1を非装着状態で首掛け紐6bを用いて着用者の首に掛けた場合、図1に示すように、面口部5の吸気ユニット接続部5aに接続された空気呼吸器用の供給弁8側が上側に、マスク装着時に額側となる側が下側に配置される。さらにマスク1の接顔部2a側が着用者の身体側を向くような状態で着用者の首から垂れ下がっていて、このような状況で着用者の身体に水などがかかると、首から垂れ下がったマスクの上側にある面口部5の吸気ユニット接続部5a側には水などが溜まらず、下側に向いたマスク装着時に額側となる側に水が溜まるようになっている。
【0022】
本発明のフルフェイス形マスク1は、面口部5に設けられた吸気口5bを形成する隔壁5cによって吸気ユニット接続部5a側とマスクの内側とに仕切られていて、吸気口5bの下方側に排気口5eを設ける。さらにその隔壁5cのマスクの内側面の吸気口5bに対して排気口5eのある側とは反対側の少なくとも吸気口5bの中心より上方側の吸気口5bのの外周側に、隔壁面5cと直交する方向への隔壁面5cからの高さが3〜100mmの壁板5dが設けられている。また、この吸気口5bを形成する隔壁5cと一体的に壁板5dが設けられている。またこの壁板5dは、隔壁面5cのマスクの内側の隔壁面5cと直行する方向からみたときに排気口5eの中心と吸気口5bの中心とを結ぶ排気口から吸気口に向かっての延長戦を中心に少なくとも180°以上の範囲に設けられていることが好ましい。またこの壁板5dは、その壁板5dの外周面が壁板面に対して45〜135°の角度で設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明のフルフェイス形マスク1は、吸気口5bの周囲に前述したような壁板5dを設けることで、マスクを非装着状態で首掛け紐6bによって着用者の首からぶら下がっている状態で水などを浴びてしまった場合に、そのマスクの額側7aに溜まってしまった水9などが、そのマスクの上下の向きが逆になるようにひっくり返しても、水がその壁板5dの外壁面にあたって吸気口5bに流れ込むことなくマスクに配設されている面口部5の排気口5e近傍に設けられたノーズカップの水抜き孔4bに流れ、最終的に排気口5eからマスクの外気側に排出される。
これにより、吸気口5bを伝って吸気ユニット接続部5aに接続される清浄空気供給ユニットの内部に流れ込んでしまうことがなくなり、その清浄空気供給ユニットの動作不良や故障などの問題が解消される。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を図2に基づいて説明する。
図2の右図は本発明のフルフェイス形マスク1の正面中央の縦断面図であり、左図はその面口部5の部分拡大図である。
右図に図示されるように、マスク1の左側中央近傍から斜め右上方に向かってアイピース3があり、そのアイピース3の上下両端をフェイスピース2が“コの字”形に密着し、右反対側の接顔部2aを含んで形成されている。下方左側に斜めに面口部5がフェイスピース2と気密状態で配設されていて、その面口部5と接顔部2aとの間の位置にはノーズカップ4が配設されている。マスク1のほぼ最下部には面口部5の排気口5eが配設され、その排気口5eには排気弁5fがマスクの外気側に開閉可能なように配設されている。なお、本図では首掛け紐6b、ヘッドハーネス6、アジャスター6aは図示していない。
【0025】
前述した排気弁5fの外気側には周方向に開放孔を形成した筒状の排気弁カバー5gが配設されている。その斜め左上方には清浄空気供給ユニットをねじにより着脱可能な吸気ユニット接続部5aが形成されていて、その吸気ユニット接続部5aのねじの奥側である斜め右上方には円形の吸気口5bが形成されている。その吸気口5bの中央には吸気弁5iを取り付けるための吸気弁芯5hとその吸気弁芯5hを軸に吸気弁5iが設けられている。その吸気口5bの形成されている隔壁5cのマスクの内側面には吸気口5bの輪郭に沿うように高さ0.3mm程度の突起状の吸気弁当接山部5jが設けられていて、吸気弁5iが確実にシールされるようになっている。フルフェイス形マスク1の用途によっては吸気弁5iを用いずに使用する場合もある。吸気ユニット接続部5aと吸気口5bを形成している壁との接合部近傍には清浄空気供給ユニットを気密状態で面口部5に接続可能とするためのリング状の吸気ユニット用パッキン5kが配設されている。吸気口5bを形成している壁は吸気ユニット接続部5a側とマスク内を仕切る隔壁5cを兼ねていて、必ずしも平面である必要はなく、曲面やそれらの複合面であっても用いうる。
【0026】
清浄空気供給ユニットを面口5bの吸気ユニット接続部5aに接続した際の空気は、清浄空気供給ユニットからの清浄空気が面口部5の吸気口5bを、吸気弁芯5hを支点に吸気弁5iをマスク1の内側に開かせながら通過し、着用者の眼部に接することが可能なエリアに侵入する。そしてそれらの清浄空気はノーズカップ用吸気弁4aをノーズカップ4の内側に開かせながらノーズカップ4の内側に侵入し、着用者の鼻部或いは口部から着用者の吸気に供され、着用者の呼気時にノーズカップ4の下方が連結された面口部の排気口5eに設けた、排気弁5fをマスクの外気側に押し開きながら排出される。
【0027】
さらに図2の左図の面口部部分拡大図に基づいて説明すると、
面口部5の吸気口5bの形成された隔壁5cには吸気口5bが直径(A寸法)がφ27mmの丸形に形成されている。本発明においてこの吸気口5bの寸法や輪郭形状には制約はないが、丸形、楕円或いは長円形状を用いることが特に好ましい。
【0028】
吸気口5bが形成された隔壁5cのマスクの内側面の吸気口5bの輪郭の周端部から壁板5dの内側面までの距離(B寸法)については8mmである。特に0mm〜50mmの範囲が望ましいが、50mm〜100mmの範囲であっても用いうる。
なお、フルフェイス形マスク1の用途においては、吸気弁5iを用いないで使用する場合もあり、このような用途に専用に用いる場合や、吸気弁5iを用いる場合であって吸気口5bを形成する隔壁5cに設けられる突起状の吸気弁当接山部5jと、この壁板5dを兼用する場合には 吸気口5bから壁板5dまでの距離(B寸法)が0mmであっても用いうる。なお、この吸気弁当接山部5jと壁板5dを兼用する場合、吸気口5bから壁板5dまでの距離(B寸法)は0mmでなくとも実施可能である。
【0029】
壁板5dの厚み(C寸法)は壁板5dの先端部で1mmの、根元に向かって若干のテーパ角度がついている。この壁板5dは形成する双璧部が平行であったり、隔壁5cに対して直交している場合などであっても用いうる。なお図2では隔壁5cに対する壁板5dの外周面の角度(E寸法)が93°となっていて、本発明においては特に好ましい形態であるが、この外周面が必ずしもが直線である必要はなく、直線や曲線の複合した形状など適宜選択可能である。なお、この壁板5dを直線で形成する場合にあっては、この吸気口5bの形成された隔壁5cに対する壁板5dの角度は、45°〜135°が望ましい。
【0030】
吸気口5bの形成された隔壁5cのマスクの内側面からの壁板5dの高さ(D寸法)は、6mmで形成されており、壁板5dは吸気口5bの形成された隔壁5cのマスクの内側面と一体的に形成されている。この壁板5dの高さ(D寸法)は5mm〜15mmの範囲が望ましいが、3mm〜100mmの範囲で高さにおいても選択可能であり、高さを高くすればマスク内に溜まった水は壁板5dを乗り越えづらくなるので、より吸気口5bから吸気ユニット接続部5a側に流入しにくくなる。
【0031】
図3は図2の面口部5の吸気口5bを形成している隔壁5cに対してマスク1の内側から直交する方向からみた状態であって吸気弁5iを取り外した状態を示している。
図3に示すように、吸気口5bの形成面と直交する方向からみたときの壁板5dは、丸形の吸気口5bの輪郭の外周側に、その吸気口5bの輪郭の外周側から距離(B寸法)8mmで、吸気口5bと同芯円上に360°に円周状に形成されている。この壁板5dは必ずしも吸気口5bの輪郭の外周側から一定の距離に設けたり、360°円周状に形成されている必要はない。例えば図3の壁板5dを別の状態で実施する場合を代表的に例示した図4や図5のように壁板5dの形成される形状や範囲を適宜変更することができる。図4には壁板5dが吸気口5bの上方側180°までしか形成されていない。また図5には図4と同様に壁板5dが吸気口5bの上方側180°程度までしか形成されておらず、壁板5dの両端側は吸気口5bと同芯円上になく、その両端は吸気口5bとは逆側に反った丸みをもつ形状をしている。
【0032】
図6はマスクを首掛け紐6bによって首に掛けた状態でそのマスク内に水などが溜まった状態を示したものであるが、本発明によってこれまで述べたような壁板5dを面口部5の吸気口5bの形成された隔壁5cのマスク1の内側の吸気口5bの上方側に設けることで、図6のような状態にあるマスクの向きを上下逆にした場合でも、マスク1の額側に溜まっていた水9などが前述の壁板5dによって吸気口5bから吸気ユニット接続部5a側に流入することなくはじかれて、そのはじかれた水などは、さらにマスク1の下方側に配置された面口部5の排気口5e近傍のノーズカップ4の水抜き孔4b近傍に流れ、最終的にその排気口5e設けられた排気弁5fからマスクの外気側に排出される。
【0033】
本発明は、フルフェイス形マスク1のいずれの用途においても共通して用いることが可能であり、マスクの面口部5の吸気ユニット接続部5aに接続される例えば空気呼吸器であれば供給弁、電動ファン付きマスクではブロワーユニットなどの清浄空気供給ユニットの内部に、首掛け紐6bによって着用者の首などに掛けた際にマスク1の額側に溜まった水9などが、そのマスク1を装着するにあたってマスク1を上下に向きをひっくり返した際にも浸入することがなくなり、最終的には清浄空気供給ユニットの動作不良や故障を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1:フルフェイス形マスク
2:フェイスピース
2a:接顔部
3:アイピース
4:ノーズカップ
4a:ノーズカップ用吸気弁
5:面口部
5a:吸気ユニット接続部
5b:吸気口
5c:隔壁
5d:壁板
5e:排気口
5f:排気弁
5g:排気弁カバー
5h:吸気弁芯
5i:吸気弁
5j:吸気弁当接山部
6b:首掛け紐
7a:額側
8:供給弁
9:マスク内に溜まった水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも眼部、鼻部および口部を覆うことが可能であって、その覆われたエリア内のさらに内側に鼻部および口部を覆う一方向に開閉可能なノーズカップ用吸気弁を備えたノーズカップと、着用者に清浄空気を供給するための清浄空気供給ユニットとの接続を可能とする吸気ユニット接続部と前記清浄空気供給ユニットからの清浄空気取り入れ口である吸気口と前記吸気口を通過したのち前記ノーズカップ用吸気弁を通じて前記ノーズカップの内側に供給される清浄空気を含み前記ノーズカップの内側の着用者の呼気をマスク外に排出するための排気口に設けられた一方向に開閉可能な排気弁を備えた面口部と、非装着状態にあるマスクを着用者の首に掛けて携行するための首掛け紐を備えたフルフェイス形マスクにおいて、
前記面口部は、前記吸気口を形成している隔壁によって前記吸気ユニット接続部側とマスクの内側とに仕切られ、前記吸気口の下方側には前記排気口が配設され、前記隔壁のマスクの内側面であって前記吸気口に対する前記排気口のある側とは反対側の少なくとも前記吸気口の中心より上方側の前記吸気口の外周側に、前記隔壁面と直交する方向への前記隔壁面からの高さが3〜100mmの壁板を設けたことを特徴とするフルフェイス形マスク。
【請求項2】
前記壁板は、前記隔壁面のマスクの内側であって前記隔壁面と直交する方向からみたとき、前記排気口の中心と前記吸気口の中心とを結ぶ前記排気口から前記吸気口に向かっての延長線を中心に少なくとも180°以上の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項3】
前記壁板の外周面が、前記隔壁面に対して45〜135°の角度で設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項4】
前記壁板が、前記吸気口を周状に囲うように設けられていることを特徴とする請求項1〜3に記載のフルフェイス形マスク。
【請求項5】
前記隔壁のマスクの内側面に、前記吸気口からマスクの内側に向かって一方向に開閉する吸気弁を設け、前記吸気口の外周側に前記吸気口を囲うように、前記吸気弁の閉鎖時に前記吸気弁の外周近傍に周状に当接するように設けた突起状の吸気弁当接山部が、前記壁板を兼ねることを特徴とする請求項4に記載のフルフェイス形マスクである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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