説明

フルメツラムまたはジクロスラムとジヨードメチル−p−トリルスルホンとの相乗的組み合わせ

【課題】乾燥膜コーティングにおける微生物の効果的な制御方法であり、微生物の様々な株に対して増大した活性を有する抗微生物組成物の提供。
【解決手段】フルメツラムもしくはジクロスラムと、ジヨードメチル−p−トリルスルホンとを含む相乗的抗微生物組成物は真菌(例えば、酵母およびカビなど)、バクテリアおよび藻類に効果を示す。これらの殺生物剤の組み合わせのいずれかを建築材料、特に乾燥膜コーティングに組み込むことにより、微生物の成長を阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺生物剤の組み合わせに関し、この組み合わせは個々の抗微生物化合物について観察されるであろうよりも高い活性を有する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の組み合わせの使用は潜在的な市場を広げることができ、使用濃度およびコストを低減させることができ、かつ廃棄物を低減させることができる。ある場合には、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物、例えば、いくつかの抗微生物化合物に耐性の微生物に対する弱い活性のせいで高い使用濃度でさえ微生物の効果的な制御を提供することができない。特定の最終使用環境における微生物の全体的な制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、米国特許第5,591,760号は3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマート(IPBC)と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)との組み合わせを開示するが、この文献は本願で特許請求される組み合わせのいずれも示唆していない。さらに、特に乾燥膜コーティングにおける微生物の効果的な制御を提供するために微生物の様々な株に対して増大した活性を有する抗微生物化合物のさらなる組み合わせについての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,591,760号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、抗微生物化合物のそのような追加の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)フルメツラムもしくはジクロスラムと、(b)ジヨードメチル−p−トリルスルホン(DIMTS)とを含み、フルメツラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が8:1〜1:15であり、およびジクロスラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が12:1〜2:1、もしくは1:1.5〜1:15である、相乗的抗微生物組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下の用語は指定された定義を有する。フルメツラムはN−(2,6−ジフルオロフェニル)−5−メチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−2−スルホンアミドである。ジクロスラムはN−(2,6−ジクロロフェニル)−5−エトキシ−7−フルオロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−c]ピリミジン−2−スルホンアミドである。用語「抗微生物化合物」とは、微生物の成長を阻止し、または微生物の成長を制御することができる化合物をいい;抗微生物化合物には、適用される用量レベル、システム条件および望まれる微生物制御の水準に応じて、殺バクテリア剤、静バクテリア剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビなど)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカンタイプカルチャーコレクション、およびMIC=最小阻止濃度。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージに関する言及は重量基準(重量%)である。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。
【0007】
好ましくは、抗微生物組成物がフルメツラムおよびDIMTSを含む場合には、フルメツラム:DIMTSの重量比は7:1〜1:15、好ましくは8:1〜1:12、好ましくは7:1〜1:12、好ましくは6:1〜1:15、好ましくは6:1〜1:12、好ましくは7:1〜1:10、好ましくは6:1〜1:10である。
【0008】
好ましくは、抗微生物組成物がジクロスラムおよびDIMTSを含む場合には、ジクロスラム:DIMTSの重量比は10:1〜2:1、もしくは1:1.5〜1:15、好ましくは10:1〜2:1、もしくは1:2〜1:15、好ましくは10:1〜2:1、もしくは1:2〜1:12、好ましくは10:1〜3:1、もしくは1:2〜1:12、好ましくは10:1〜3:1、もしくは1:2〜1:10である。
【0009】
好ましくは、DIMTSとの組み合わせにおけるジクロスラムは、水性媒体中で藻類の成長を阻止するために使用される。好ましくは、ジクロスラム:DIMTSの比率は10:1〜2:1、もしくは1:1.5〜1:15、好ましくは10:1〜2:1、もしくは1:2〜1:15、好ましくは10:1〜2:1、もしくは1:2〜1:12、好ましくは10:1〜3:1、もしくは1:2〜1:12、好ましくは10:1〜3:1、もしくは1:2〜1:10である。
【0010】
上記抗微生物組成物はフルメツラムおよびジクロスラムのいずれかもしくは双方、および/または他の殺生物剤を含むことができる。典型的には、抗微生物組成物は藻類および/または真菌の成長を阻止するために使用される。
【0011】
好ましくは、本発明の抗微生物組み合わせは液体組成物、特に、水性媒体中のポリマーの分散物に組み込まれる。これら殺生物剤の組み合わせは建築材料、例えば、接着剤、コーキング材、目地材、シーラント、ウォールボードなど、塗料、コーティング、ポリマー、プラスチック、合成および天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用および床用フェルト、建築用プラスター、木材製品および木材−プラスチック複合体の保存に特に有用である。好ましくは、抗微生物組成物は本明細書において開示される殺生物剤の組み合わせを含むラテックス塗料もしくは他の液体コーティング組成物である。これら殺生物剤の組み合わせは塗料もしくは他の液体コーティング組成物の適用後に得られる乾燥膜コーティングの保存に有用である。好ましくは、抗微生物組成物は本明細書に開示される殺生物剤の組み合わせの1種以上を含むアクリルラテックス塗料、またはこの塗料を表面に適用して得られる乾燥膜コーティングである。
【0012】
典型的には、微生物の成長を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は100ppm〜10,000ppm活性成分である。好ましくは、組成物の活性成分は少なくとも300ppm、好ましくは少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも600ppm、好ましくは少なくとも700ppmの量で存在する。好ましくは、組成物の活性成分は8,000ppm以下、好ましくは6,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下、好ましくは4,000ppm以下、好ましくは3,000ppm以下、好ましくは2,500ppm以下、好ましくは2,000ppm以下、好ましくは1,800ppm以下、好ましくは1,600ppm以下の量で存在する。上で言及された濃度は殺生物剤の組み合わせを含む液体組成物中のものであり、乾燥膜コーティングにおける殺生物剤のレベルはより高いであろう。
【0013】
本発明は、特許請求の範囲に特定された殺生物剤の組み合わせのいずれかを建築材料、特に乾燥膜コーティングに組み込むことにより、建築材料、特に乾燥膜コーティングにおける微生物の成長を阻止するための方法も包含する。
【実施例】
【0014】
サンプル調製:
試験される活性成分最大合計濃度をもたらすように、殺生物剤を含まない白色アクリルラテックス塗料に単独もしくはブレンドの殺生物剤が後添加された。次いで、試験のための目的濃度をもたらすように、殺生物剤を含まないアクリルラテックス塗料でこの塗料が希釈された。試験される殺生物剤ブレンドの種類に応じて、殺生物剤合計濃度は200〜5000ppmで変動した。殺生物剤添加もしくは希釈の後で、均一さが達成されるまで少なくとも1分間、各サンプルは手作業で混合された。塗料サンプルのそれぞれおよびコントロールサンプル(殺生物剤を含まない)が使用され、3mil(0.0762mm)のバードバーアプリケータを使用して黒色プラスチック−ビニルクロライド/アセタートコポリマーパネル(LENETA、ニュージャージー州モーウォー)上に膜を製造した。このパネルは、太陽光への直接の曝露を避けつつ少なくとも2日間完全に乾燥させられた。正方形のディスク(0.5インチ;1.27cm)が各パネルから切り出されて、真菌および藻類有効性試験のための基材として使用された。このサンプルサイズは、このサンプルディスクが試験プレートのウェルに配置された場合の寒天境界を可能にした。各サンプルは二重に試験された。
【0015】
試験条件:
微生物の成長をサポートするために、好適な培地(緑藻植物(Chlorophytes)についてBOLDの3N、シアノバクテリアについてはBG−11、および真菌についてはPDA)が使用された。試験プレートは、藻類については、室温(25℃〜26℃)で、サイクル化された明暗環境で4週間維持された。真菌有効性試験のためのプレートは30℃で4週間維持された。インキュベーション期間の終わりに、サンプルは目に見える微生物の成長によって覆われた領域のパーセントについて集計された。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
藻類有効性試験:改変されたASTM5589
ASTM5589は藻類汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から6ウェルプレートにスケールダウンされた。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。藻類接種物は等しい濃度(1×10cfu/ml)かつ等しい体積(接種されるサンプルの数に応じて)の同様に成長している生物を混合することにより調製された。
【0019】
フルメツラム+様々なITの相乗効果試験においては、試験接種物として混合された藻類の3つのプールが調製された;BG−11培地で成長させられたシアノバクテリアの混合物であるグロエオカプサ(Gloeocapsa)sp.およびユレモ属(Oscillatoria)sp.;混合されBold培地で成長させられた単細胞緑藻植物であるクロレラ(Chlorella)sp.、クロレラケスレリ(Chlorella kessleri)およびイシクラゲ(Nostoc commune);混合され、Bold培地で成長させられた糸状藻類であるスミレモ(Trentepohlia aurea)、トレンテポーリアオダラタ(Trentepohlia odorata)およびキャロスリックスパリエンティナ(Calotrix parientina)。
【0020】
ジクロスラム+様々なITの相乗効果試験においては、混合藻類の2つのプールだけが調製された;BG−11培地で成長させられたグロエオカプサsp.およびユレモ属sp.;Bold培地で成長させられたクロレラsp.、クロレラケスレリ、イシクラゲ、スミレモ、トレンテポーリアオダラタおよびキャロスリックスパリエンティナ。
【0021】
試験される試験片を収容する各ウェルに400μlの生物混合物(1×10cfu/ml)が接種され、表面全体(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)が均一に覆われたことを確実にした。このプレートは室温(25℃〜26℃)で周期的な明相(OTT−Liteモデル#OTL4012P、40ワット、26Kルーメン)および暗相への曝露を伴い、4週間にわたってインキュベートされた。各週の終わりに、覆われた領域のパーセントについて5%刻みで、覆われた合計領域が評価された。
【0022】
真菌有効性試験−改変されたASTM5590
ASTM5590は真菌汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から6ウェルプレートにスケールダウンされた。試験をセットアップするために、寒天プラグが滅菌6ウェルプレートの各ウェルの底に配置された。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。真菌接種物は等しい濃度(1×10cfu/ml)かつ等しい体積(試験されるサンプルの数に応じて)の同様に成長している生物を混合することにより調製された。フルメツラム+様々なITの相乗効果試験のために、試験接種物として混合された真菌の3つのプールが調製された。クラドスポリウムヘルバラム(Cladosporium herbarum)がオーレオバシディウムプルランス(Aureobasidium pullulans)と混合され;アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)がペニシリウムフニクロサム(Penicillium funiculosum)と混合され;アルターナリアアルターナタ(Alternaria alternata)がトリコデルマビリデ(Trichoderma viride)と混合された。ジクロスラム+様々なITの相乗効果試験のために、上記全ての真菌が1つのプールとして混合された。各ウェルに400μlの生物混合物(1×10cfu/ml)が接種され、表面全体(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)が均一に覆われたことを確実にした。このプレートは水分の存在下で30℃で4週間にわたってインキュベートされた。第2週後から各週の終わりに、覆われた合計領域パーセントが評価され、記録され、並びに5%刻みで記録された。
【0023】
相乗効果指数計算
相乗効果指数(SI)
SIは、F.C.KullらのAl.方法(アプライドマイクロバイオロジー(Applied Microbiology)Vol.9(1961))に基づいて計算される。この検討においてSIは、試験された各微生物に対する個々の殺生物剤によって示される阻止パーセントに基づいて選択された最小阻止濃度で、以下の式に基づいて計算された。
SI=Qa/QA+Qb/QB
Qa=混合物中での殺生物剤Aの濃度
QA=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Aの濃度
Qb=混合物中での殺生物剤Bの濃度
QB=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Bの濃度
この式における1未満のSI値は混合された殺生物剤の相乗効果が存在することを示す。
【0024】
注:試験された最大濃度でいずれかの活性物質が何らかの阻止を示さなかった場合には、推定SIを計算するためにこの最大濃度が使用され、かつ目的の阻止を達成するにはさらに高い濃度の活性物質が必要とされることを考慮して未満(<)の印が付けられる。
NE=各SI計算において設定された阻止パーセント基準を満たすであろう、試験された濃度での終点なし。
【0025】
【表3】

【0026】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルメツラムもしくはジクロスラムと、(b)ジヨードメチル−p−トリルスルホンとを含み、フルメツラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が8:1〜1:15であり、およびジクロスラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が12:1〜2:1、もしくは1:1.5〜1:15である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
フルメツラムとジヨードメチル−p−トリルスルホンとを含み、フルメツラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が6:1〜1:10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジクロスラムとジヨードメチル−p−トリルスルホンとを含み、ジクロスラム:ジヨードメチル−p−トリルスルホンの重量比が10:1〜3:1、もしくは1:2〜1:10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が建築材料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
建築材料が、塗料、コーティング、ポリマー、プラスチック、合成もしくは天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用もしくは床用フェルト、建築用プラスター、木材製品または木材−プラスチック複合体である、請求項4に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−102082(P2012−102082A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−220672(P2011−220672)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】