説明

フレキシブルな籠状樹脂管フィルタを備えたろ過装置

【課題】目詰まりを起こしにくくメンテナンスの容易なろ過装置を提供する。
【解決手段】原液を導入する導入口と、ろ過されたろ過液を排出する排出口とを備えるろ過装置の、前記導入口と前記排出口との間に、籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されたフレキシブルな籠状樹脂管フィルタを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に設置されて流体中の異物を分離、除去するろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の廃液処理システムや、浴槽、プールの循環システムなどにおける流体中の異物を分離・除去するためのろ過フィルタとして、金属製のメッシュスクリーンが広く用いられている。
【0003】
例えば、廃液処理システムにおいては、BOD(生物学的酸素要求量)を除去するための微生物を高濃度で保持する粒子状担体を分散させた微生物担体処理槽を備える場合があり、この微生物担体が槽内から処理液と共に排出されるのを防ぐためのろ過フィルタとして、平面状の金属メッシュスクリーンを用いるのが一般的である。また、浴槽やプールなどの循環システムにおいては、配管途中にストレーナやヘアキャッチャと呼ばれるろ過装置を設置して流体中の異物を除去するが、通常このストレーナ等のろ過フィルタとしては円筒状の金属メッシュスクリーンが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のメッシュスクリーンでは、設置される装置の規模の制約を受けて十分なろ過面積の確保が困難であること、および装置内に固定設置されることから、目詰まりを起こしやすいため、頻繁にスクリーンの浄化作業や交換作業をおこなう必要があり、メンテナンスの負担が大きい。また、特に浴槽の循環システム内で使用されるろ過装置である、いわゆるヘアキャッチャにおいては、その使用環境から病原菌が繁殖しやすいため、フィルタ部分の洗浄作業に際して衛生面でも問題がある。衛生面を考慮してフィルタ部分を洗浄せずに交換するとしても、コスト負担が増大する。
【0005】
一方、上記の技術分野に直接関連しないものの、透水性舗装道路に埋設する導水管として、樹脂モノフィラメントを編組するなどにより形成した網状の樹脂管を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この網状樹脂管は、砂礫等の異物の侵入を防止するための選択透過性と、凹凸面への設置や曲がり配管を行うための柔軟性(可撓性)を備えている点で舗装道路の導水管に適している。
【0006】
【特許文献1】特開2001−254873
【0007】
本件の発明者は、前記網状の樹脂管が選択透過性および柔軟性を有していることから、フィルタ部材として使用できる可能性について検討して、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、フレキシブルな樹脂管の一端を封止して、これをろ過膜として用いることにより、目詰まりを起こしにくくメンテナンスの容易な流体ろ過用のろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明に係る流体ろ過用のろ過装置は、原液を導入する導入口およびろ過されたろ過液を排出する排出口を有するハウジングと、前記ハウジング内に収納されて、前記導入口と前記排出口の間に設置された、籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されたフレキシブルな籠状樹脂管フィルタとを備えている。
【0009】
この構成によれば、樹脂管フィルタの側面のほぼ全体がろ過面となるので、設置スペースに対するろ過面積を大幅に増加させることができる。また、フィルタを構成する有孔樹脂管がフレキシブルな構造、つまり、弾性的に柔軟に曲がる構造であるので、流体の流れによって揺れ動くことにより、フィルタの目詰まりが起こりにくい。したがって、当該フィルタが設置されるろ過装置のメンテナンス負担が軽減される。
【0010】
本発明に係る上記ろ過装置は、前記籠状樹脂管フィルタは、当該フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップル、および前記フィルタを通過する前後の流体である前記原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材に接続されてフィルタ構造体を形成しているものとしてもよい。このようなフィルタ構造体を用いることにより、ハウジングに対するフィルタ構造体の取付けおよび取外しが容易になるので、ろ過装置の生産性およびメンテナンス性が向上する。また、この場合、前記ハウジングがフレキシブル管体を有し、このフレキシブル管体に前記フィルタ構造体が収納されるようにすることが好ましい。ろ過装置の主要な管体部分を、内部の樹脂管フィルタと共にフレキシブルなものとすることで、既存の設備においても、従来のろ過装置の代替として本発明に係るろ過装置を設置することができる。
【0011】
前記フィルタ構造体において、複数のニップルを有する管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の5倍以上の長さを有することが好ましい。このような長さとすることで、樹脂管フィルタの管接続部材への取り付けが容易となり、かつ十分なろ過面積を確保することができる。
【0012】
本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管が有する多数の孔が、編み目状の隙間により形成されたものであってよい。また、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有さないものとすることが好ましい。このような構成とすることで、樹脂管フィルタをよりフレキシブルなものとして構成することができ、さらにフィルタの揺動に伴ってフィルタの孔自体が一定の範囲で変形するので、目詰まりをより効果的に防止することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る樹脂管フィルタにおいて、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントを、横糸のみでフレキシブルマンドレル上に編組し、加熱処理した後フレキシブルマンドレルを抜き取ることで形成されており、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有さない、菱形の連続編み目構造を有するものとすることができる。樹脂管フィルタを構成する有孔樹脂管をこのように形成して縦糸を有さない構造とすることにより、樹脂管フィルタの曲げ方向の柔軟性が増すとともに、捩れ方向に対して復元性が増す。したがって揺動による曲がり、捩れや樹脂管フィルタ同士の絡み合いが起こっても、樹脂管の閉塞によるろ過性能の低下が抑制される。
【0014】
本発明に係る樹脂管フィルタを形成するために、前記有孔樹脂管の封止は、単数本または複数本をもって、端部で変形結束、または溶融接着することにより行うことができる。これらの方法により封止することで、簡易な工程により樹脂管フィルタを形成することができる。特に溶融接着により封止する場合は、単一の材料によって樹脂管フィルタを構成できるため、廃棄やリサイクル等の処理に便宜である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るろ過装置によれば、ろ過面積の増大とフィルタの揺動性によって、フィルタの目詰まりを防止することができるので、ろ過装置のメンテナンス負担を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明に係る籠状樹脂管フィルタの一実施形態を示す斜視図である。この籠状樹脂管フィルタ1は、籠状に編み込まれて、編み目状の隙間からなる多数の孔を有するフレキシブルな樹脂管の一端を、溶融接着により封止して先端部1aとし、他端を、開放したままの状態の開放端部1bとすることにより、流体を管壁の通過によりろ過するフィルタとして機能するように形成したものである。
【0018】
この籠状樹脂管フィルタ1の基本構造を形成する樹脂管11は、図2に模式的に示すように、複数のボビン14に巻回された樹脂モノフィラメント15を、縦糸を使わず横糸のみで、巻芯となる長尺のフレキシブルマンドレル16上に編組し、これを加熱処理した後にフレキシブルマンドレル16をその軸方向(矢印Cの方向)に抜き取ることで形成したものである。このように加熱処理を施すことにより、樹脂管11の内面を平滑な網状管状態にして内面祖度を抑え、排水量を向上させることができる。また、樹脂管11は、このように縦糸を使わずに形成することで、樹脂管11の長手方向と円周方向とに頂点を持つほぼ菱形の連続する編み目を有し、さらにモノフィラメント間には接合する部分がないので、きわめてフレキシブルな構造を有する。
【0019】
ここで樹脂モノフィラメントとは、あらゆる樹脂単繊維からなる線状体を指し、代表的な素材としてはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(Ny)、ビニロン(PVA繊維)が挙げられる。汎用性と耐久性の点からPP、PET、Nyが特に好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
また、樹脂モノフィラメント11の太さは、想定する樹脂管の内径との関係において管形状の保持力とフレキシビリティのバランスを考慮して適宜選択することができるが、本実施形態においては外径0.1mm〜5.0mmの範囲としている。
【0021】
上記のフレキシブルマンドレルとは、柔軟に曲げることができる巻芯のことであり、フレキシブルに曲げることができるため、比較的狭いスペースで長尺の網状樹脂管の成形が可能となる。フレキシブルマンドレル16の材質としては、熱処理による変形が少なく、かつ抜き取り工程を容易にする滑り性を有するものが好ましい。代表的なものとしては、樹脂モノフィラメントよりも高い加熱変形温度を有する樹脂(耐熱樹脂)で形成された樹脂管、金属フレキ管、または金属フレキ管の表面に耐熱樹脂を被覆した耐熱複合管などが挙げられるが、耐久性および抜き取り時の滑り性を考慮すると耐熱複合管を使用することが好ましく、耐熱性樹脂としてフッ素樹脂を被覆した耐熱複合管が特に好ましい。
【0022】
籠状樹脂管フィルタ1の先端部1aとなる樹脂管先端部の封止方法としては、一般的に知られた各種方法、例えば管内側への封止材(ゴム栓など)の挿入、管外側からの線材(針金、インシュロックタイなど)による締め付け封止、金具によるプレス封止、樹脂管11の溶融接着などを用いることができるが、図1の実施形態においては、樹脂管11の溶融接着により封止している。溶融接着を用いた場合には、封止部が樹脂管11の他の部分と同一の材料で構成されるため、籠状樹脂管フィルタ1の使用後の分別回収、焼却、廃棄、リサイクル処理等において好都合である。
【0023】
この籠状樹脂管フィルタ1は、図3に示すように、その開放された基端部1bを単体の管接続部材3に接続して、フィルタ構造体9として使用される。単体管接続部材3は、籠状樹脂管フィルタ1との接続部分であるニップル3aと、ニップル3aの樹脂管フィルタ1が接続される側とは反対側の端部に形成される鍔状の仕切り板3bとで構成されている。この仕切り板3bは、後述するように、液体の通路において、籠状樹脂管フィルタ1の前後の液体を仕切る機能を持つ。接続部分であるニップルの形状としては、外周面に複数の環状の凹凸を形成したタケノコ形状が一般的であるが、本実施形態では、長さ方向に押し付ければ編組交合角度が広がって内径が拡大し、長さ方向に引っ張れば内径が縮小するという樹脂管の特性を利用するために、円筒形状のニップル3aを用いている。
【0024】
具体的には、単体管接続部材3のニップル3aの外径を、フリー状態の籠状樹脂管フィルタ1の開放された基端部1bにおける内径とほぼ同等から1.2倍の範囲に設定し、ニップル3aの長さを、前記基端部内径の1.5倍以上に設定して、このニップル3aに籠状樹脂管フィルタ1の基端部1bを被せてから、先端部1aの方向に籠状樹脂管フィルタ1を引っ張ることで、籠状樹脂管フィルタ1が単体管接続部材3に固定される。すなわち上記のような形状および大きさのニップル3aを用いることにより、接着などの二次加工を施すことなく実用上十分な固定を行うことができる。
【0025】
管接続部材は図3に示すような単体で使用される管接続部材3のほかにも、図4に示す、複数のニップル5aが一体に形成された複合管接続部材5を用いてもよい。単体管接続部材3および複合管接続部材5の材質としては、硬質の材料であればどのようなものでも用いることができるが、耐久性および廃棄性の点で、PP,PE,PETなどが特に好適である。
【0026】
複合管接続部材5を使用する場合には、図5に示すように、複数の籠状樹脂管フィルタ1の各先端部1aがそれぞれに、前述の一般的な封止方法、例えば溶融接着によって封止されたものを、複合管接続部材5の各ニップル5aに接続してフィルタ構造体9Aとしてもよい。あるいは図6に示すように、複数本の樹脂管の基端部1bを複合管接続部材5のニップル5aに接続し、先端部1aをまとめて、管外側からの線材(針金、インシュロックタイなど)による締め付け封止、金具によるプレス封止、または樹脂モノフィラメント管の溶融接着などによって封止して(図6の実施形態ではインシュロックタイ8による封止)、複数本の樹脂管フィルタ1を一体化した状態の籠状樹脂管フィルタ束7を形成したフィルタ構造体9Bとしてもよい。
【0027】
図5のフィルタ構造体9Aを使用する場合には、複数本の籠状樹脂管フィルタ1が互いに結束されていないので、流体の流れによる各樹脂管フィルタ1の揺動、および各樹脂管フィルタ1,1間の接触や摩擦によって、フィルタの目詰まりが極めて起こりにくくなる。このような形態および特性を有するフィルタ構造体9Aは、比較的広い空間内に設置して使用する用途に適している。例えば、流体が槽間を移動する廃液処理システムにおいて、担体を含む槽から担体の流出を防ぐためのフィルタとして、その槽内に設置される場合である。一方、図6のフィルタ構造体9Bは、複数本の樹脂管フィルタ1を一体化してフィルタ束7としているので、組み付けなどの取り扱いが容易となる。したがって、ストレーナ等の配管システムのように、比較的狭い空間内に設置して使用する用途に適している。なお、図5および図6では、フィルタ構造体9Aおよび9Bの複合管接続部材5の仕切り板5bを円板形状としたが、フィルタ構造体が設置される装置の構造に合わせて、適宜形状の変更が可能である。
【0028】
本発明の一実施形態に係るろ過装置を、図7に示す。このろ過装置20は、流体通路Pに接続されて、これを流れる流体をろ過するもので、ろ過対象の流体である原液を導入する導入口21とろ過されたろ過液が排出される排出口23とを備える有底円筒状のハウジング25の内部に、フィルタ束26が収納され、ハウジング25の上端開口部が、着脱自在な蓋体27により閉止されている。フィルタ束26は、樹脂製バンドのような環状の結束部材22によって図1の籠状樹脂管フィルタ1の複数を結束したものである。ハウジング25の内周面の導入口21の下流側には、環状の内鍔からなるフィルタ支持部29が設けられており、このフィルタ支持部29に結束部材22を載置することによって、複数の籠状樹脂管フィルタ1がハウジング25に設置される。フィルタ束26の一端部には、封止用の樹脂シート28が貼り付けられており、これにより各籠状樹脂管フィルタ1の一端部1aが封止されている。フィルタ束26は、図8に示すように、外周面が接触する3つの隣接した樹脂管フィルタ1の軸心O1,O2,O3が正三角形を形成するように配置されており、これによって複数の樹脂管フィルタ1が最密状態で並んでいる。原液は、図7の樹脂管フィルタ1の開放された他方の端部(上端部)1bから樹脂管フィルタ1内に流入し、樹脂管フィルタ1の管壁を通過することによりろ過され、ろ過液となって樹脂管フィルタ1の外方に流出する。
【0029】
図7のろ過装置20における、樹脂管フィルタ1および結束部材22を除いた、ハウジング25、導入口21、排出口23、フィルタ支持部29は、従来のろ過装置に用いられていたものを流用している。従来のろ過装置においては、結束された樹脂管フィルタ1の代わりに、上方に開口した有底円筒形状の金属メッシュスクリーンを、その上端開口部の外縁に設けられた鍔をフィルタ支持部29に載置することによって設置していた。したがって従来は、ハウジング25内方の、フィルタ支持部29よりも上方の空間S1はろ過にまったく関与しないデッドスペースとなっていた。しかし樹脂管フィルタ1を用いる場合には、上方空間S1にまで樹脂管フィルタ1を延ばすことにより、その外表面に一旦異物を付着させておき、この状態で、流体の流れによって樹脂管フィルタ1が揺動し、樹脂管フィルタ1の外表面に付着した異物が容易に離脱するので、従来のデッドスペースもろ過のために有効に使用することができる。
【0030】
すなわち本実施形態に係るろ過装置30では、導入口21からハウジング25内に導入された原液が、上方空間S1においては樹脂管フィルタ1の外表面によってろ過され、これと並行して籠状樹脂管フィルタ1の開放された基端部1bから樹脂管フィルタ1内に流入した原液が、樹脂管フィルタ1の管壁でろ過されてフィルタ支持部29よりも下方の空間S2に流出し、ろ過液となって排出口23から排出される。こうして、樹脂管フィルタ1の管壁の全体がろ過面積となるので、従来のメッシュスクリーンを用いたろ過装置に比較して大幅にろ過面積を増大させることが可能となり、さらには樹脂管フィルタ1の揺動性(柔軟性)により、目詰まりが起こりにくく、フィルタ1の洗浄、交換といったメンテナンスの負担が低減される。
【0031】
本発明の他の実施形態に係るろ過装置を、図9および図10と共に説明する。この実施形態のろ過装置30は、図9の縦断面図に示すように、そのハウジング25が、本体となるフレキシブル管体31と、導入口21を有し、フレキシブル管体31の上流側端部に連結された第1フランジ部材35と、排出口23を有しフレキシブル管体31の下流側端部に連結された第2フランジ部材37とを備え、ハウジング25内にフィルタ構造体9Bが収容されている。このろ過装置30は、浴槽、プール循環システムのような流体循環システムの配管Pu,Pdの間に接続されて、流体通路Pの一部を形成する。
【0032】
図10(A)〜(C)に、ハウジング25の各構成部材をそれぞれ斜視図で示す。ハウジング25の主要な管体部分となるフレキシブル管体31は、柔軟な樹脂またはゴムを主体として形成されたホースであり、図10(A)に示すように、その周壁41の内部には、フレキシブル管体31が曲げられたときに管形状を維持するために、リング状またはスパイラル状の硬質材43が所定の間隔で埋設されている。硬質材43を埋設する代わりに、フレキシブル管体31の外周表面に、リング状またはスパイラル状の突条34を所定の間隔で形成してもよい。また、フレキシブル管体31は、透明な材質によって形成することが、ろ過時の状態や目詰まりの状態を目視により確認するうえで好ましい。
【0033】
フレキシブル管体31の上流側の管接続部材となる第1フランジ部材35は、図10(B)に示すようなT型チーズであり、このT型チーズの分岐部分の先端にフランジ35aが設けられ、直線部分の一端にフレキシブル管体31との接続部分となるタケノコ形状の第1ニップル35bを、他の一端に着脱可能な掃除口蓋35dにより覆われる掃除口35cを有している。掃除口35cを設けることにより、フィルタ構造体9Bの取り付けや交換等の作業が容易になる。一方、フレキシブル管体31の下流側の管接続部材となる第2フランジ部材37は、図10(C)に示すように、フランジ37aとタケノコ形状の第2ニップル37bとで構成される。
【0034】
図9に示すように、第1フランジ部材35の第1ニップル35bの上流側内周面には、フィルタ構造体9Bを支持するためのフィルタ支持部35eとなる環状の内鍔が設けられている。フィルタ構造体9Bは、樹脂管フィルタ束7を下流側に突出させる向きで、仕切り板5bの外周部をフィルタ支持部35eに載置することによりフレキシブル管体31に取り付けられる。
【0035】
本実施形態のさらに詳細な構成を説明する。図2に示した要領で、外径0.8mmのPETモノフィラメント15を、外径20mm、長さ25mのフッ素樹脂製フレキシブルマンドレル16に対して編み組みし、150℃×0.5時間の加熱処理を施して形状固定させた後にフレキシブルマンドレル16を抜き取って、内径20mm、長さ25m、交合角度112°の樹脂管11を得た。この樹脂管から長さ1mの樹脂管11を8本裁断し、この8本の各一端から50mmの位置の部分を、8本まとめて、図9に示すインシュロックタイ8によって強く結束することで一体封止し、籠状樹脂管フィルタ束7を形成した。図5の複合管接続部材5を形成するニップル5aには、外径22m、長さ50mmのPPパイプを使用し、外径98mmの円盤状の仕切り板5bに8本のニップル5aの各底部を接合配置して、複合管接合部材5とした。さらに、この複合管接続部材5の各ニップル5aに、図6の樹脂管フィルタ束7の各樹脂管フィルタ1の開放端部を挿入接合してフィルタ構造体9Bを構成した。図9のフレキシブル管体31は、内径100mm、長さ1mの、スパイラル硬質芯材を有する柔軟な透明樹脂ホースとした。第1および第2フランジ部材35,37には、外径100・10kのフランジ35a,37a、内径95mmの第1および第2ニップル35b,37bを使用した。
【0036】
このろ過装置において、上流側の配管Puからろ過装置30に導入された循環水(原液)は、第1フランジ部材35の内部空間を通ってフィルタ構造体9Bに達する。ここで、水圧によって仕切り板5bとフィルタ支持部35eとの間も密閉された状態となっているので、循環水のほぼ全部がニップル5aの内方を通って籠状樹脂管フィルタ1の内部に流入し、籠状樹脂管フィルタ1の内部から外部へ通過する際に、循環水内の異物が分離される。ろ過された循環水は、第2フランジ部材37の内部空間を通って下流側の配管Pdへと排出される。
【0037】
上記ろ過装置30においては、フィルタ構造体9Bの有するろ過面積が、従来の円筒状メッシュスクリーンと比較して大幅に増大しており、かつ、フレキシブルな籠状樹脂管フィルタ束7が、循環水の流れによって揺動する。しかも、各樹脂管フィルタ1においては、モノフィラメント間に接合部がないために、樹脂管フィルタ束7の揺動に伴って孔形状も変化する。したがって、ろ過された異物による目詰まりが極めて起こりにくくなっており、フィルタ1の洗浄作業にかかる負担が大幅に軽減される。さらに、フレキシブル管体31を透明樹脂で形成したために、樹脂管フィルタ束7の汚れ具合が外部から目視で容易に確認できる。フィルタ1を洗浄する頻度が大幅に低減されることを考慮すれば、洗浄して再使用する代わりにフィルタ構造体9B自体を交換することも、コスト的に可能になると考えられ、病原菌に起因する衛生面での問題を改善することも可能となる。
【0038】
また、このろ過装置30の主要な管体部分が、フレキシブルな籠状フィルタ束7およびこれを覆うフレキシブルな管体31によって形成されているために、上流側配管Puと下流側配管Pdの相対位置が様々に異なる既存の循環システムに対して、ストレーナ等のろ過装置に置き換えて、ろ過装置30を設置することが容易である。
【0039】
なお、図7におけるろ過装置30におけるフィルタ構造体9Bに代えて、図3のフィルタ構造体9または図5のフィルタ構造体9Aを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るろ過装置に用いる籠状樹脂管フィルタを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るろ過装置に使用される樹脂管の製造方法を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るろ過装置に用いるフィルタ構造体の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るろ過装置に用いる複合管接続部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るろ過装置に用いるフィルタ構造体の他の例を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るろ過装置に用いるフィルタ構造体のさらに他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るろ過装置を示す縦断面図である。
【図8】同ろ過装置における樹脂管フィルタの配置を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るろ過装置を示す縦断面図である。
【図10】(A)は図9のろ過装置のフレキシブル管体を示す斜視図、(B)は同ろ過装置の第1フランジ部材を示す斜視図、(C)同ろ過装置の第2フランジ部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 籠状樹脂管フィルタ
1a 先端部
1b 基端部
3 単体接続管部材
3a,5a ニップル
3b,5b 仕切り板
5 複合接続管部材
9,9A,9B フィルタ構造体
11 有孔樹脂管
15 樹脂モノフィラメント
16 フレキシブルマンドレル
20,30 ろ過装置
21 導入口
23 排出口
25 ハウジング
31 フレキシブル管体
P 流体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液を導入する導入口およびろ過されたろ過液を排出する排出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収納されて、前記導入口と前記排出口の間に設置された、籠状に編み込まれた樹脂製の素材からなるフレキシブルな有孔樹脂管の一方の端部を封止することで形成されたフレキシブルな籠状樹脂管フィルタと、
を備えるろ過装置。
【請求項2】
請求項1において、前記籠状樹脂管フィルタは、当該フィルタの開放された他方の端部が接続されるニップル、および前記フィルタを通過する前後の流体である前記原液とろ過液とを仕切る仕切り板を有する管接続部材に接続されてフィルタ構造体を形成しているろ過装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ハウジングがフレキシブル管体を有し、このフレキシブル管体に前記フィルタ構造体が収納されているろ過装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記管接続部材が複数のニップルを有しており、この管接続部材に接続された複数の有孔樹脂管フィルタのそれぞれが、内径の5倍以上の長さを有するろ過装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記有孔樹脂管の多数の孔が、編み目状の隙間により形成されているろ過装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記有孔樹脂管が、樹脂モノフィラメントを編組して形成され、モノフィラメント間に接合された部分を有していないものであるろ過装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記有孔樹脂管は、樹脂モノフィラメントが、横糸のみで巻芯となるフレキシブルマンドレル上で編組され、加熱処理されてなるものであり、前記モノフィラメント間の接合部および縦糸を有しないで、菱形の連続編み目構造を有するものであるろ過装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、前記有孔樹脂管が、単数本または複数本を束ね、前記一方の端部で変形結束、または溶融接着されることで封止されているろ過装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−229569(P2008−229569A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76003(P2007−76003)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】