説明

フレキシブルコンテナ

【課題】舌片をコンテナ本体とは別体に形成することなく、該舌片を閉じ合わせた状態で、その内側の排出口の結束状態を外部から容易に視認することができるフレキシブルコンテナの提供。
【解決手段】コンテナ本体2の底部21中央に放射状に切込みを入れることによって3つ以上に分割形成された舌片41と、舌片41を開閉させるための開閉手段と、舌片41の内側に設けられ、柔軟な熱可塑性樹脂からなる筒状の排出口44と、排出口44を結束するための結束手段とを有するフレキシブルコンテナにおいて、舌片41が閉じ合わされた際の中央部に、結束手段によって結束された排出口44の結束部45aが視認可能となる大きさの開口部43を形成し、舌片41の内面側且つ排出口44の外面側に、舌片41が閉じ合わされた際に開口部43を内側から覆うと共に該開口部43を通して結束部45aを透視可能な蓋片46を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体、粒体等を収容するためのフレキシブルコンテナに関し、詳しくは、収容物を排出するための排出口の結束状態を容易に確認できるようにしたフレキシブルコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の粉体や粒体の移送には、熱可塑性合成樹脂製の布状体で構成されたフレキシブルコンテナが広く使用されている。フレキシブルコンテナは、一般に布状体で形成されたコンテナ本体の上部に収容物を充填するための投入部が形成されると共に、底部に収容物を排出するための排出口が形成され、更に上部には吊りベルトが取り付けられてクレーンのフック等の吊り上げ治具で吊り上げて作業ができるように形成されている。
【0003】
このようなフレキシブルコンテナは、収容物の荷重が底部の排出口に直接掛かるため、収容物が排出口から漏れ出ないようにすることが必要である。そこで、本願出願人は、コンテナ本体の底部に十字型の切込みを入れることによって4つに分割された扇形状又は三角形状となる舌片を形成し、この舌片のそれぞれの先端にフックを設け、このフックに亘って舌片を互いに閉じ合せるための縛り紐を挿通させて架け渡すと共に、これら舌片の内側に結束紐によって結束可能な筒状の排出口を縫着等によって取り付けた構造とし、この排出口を結束した上で、舌片に架け渡された縛り紐を引き締めて該舌片を閉じ合わせることによって、その内側に排出口の結束部位が収容されるように舌片で覆うことで、収容物の漏出防止の確実性を図ることを提案している(特許文献1)。
【0004】
この従来のフレキシブルコンテナによれば、収容物を排出するための排出口は、結束されて閉封された状態で、その外側(下側)が舌片によって覆われて支持されるようになるため、排出口に収容物の荷重が掛かっても、収容物の漏出を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2977485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のフレキシブルコンテナは、内部に収容物を収容して封止する際、排出口を結束する作業と、舌片を閉じ合わせる作業とを必要とするため、作業者の人為的なミスにより、排出口を結束しない状態で、あるいは結束が不十分な状態で舌片を閉じ合わせてしまう事態が発生することがある。
【0007】
一般にコンテナ本体は、収容物の保護の観点から、不透明な布状体によって構成されるため、コンテナ本体の底部の布状体によって構成される舌片も不透明となっており、排出口の外側から舌片を閉じ合わせてしまうと、排出口の結束状態を外部から視認することができない。このため、縛り紐を解いて舌片を開放した途端、結束されていない、あるいは結束が不十分な排出口から収容物が不意に流出してしまう問題があった。
【0008】
このような問題に対処するため、舌片も含めてコンテナ本体の底部全体を透明な布状体とすることが考えられるが、上述したように、収容物の保護の観点からすると、底部全体を透明にすることは難しい。しかも、収容物の荷重に耐え得る強度を維持する観点からしても、完全に透明な布状体を形成することは極めて困難である。
【0009】
また、舌片の部分のみをコンテナ本体の底部とは別体の透明な舌片によって形成することも考えられるが、底部に筒状の排出口を取り付ける作業に加えて、複数枚の舌片を別途製作し、各舌片を縫着等によって取り付ける作業が必要となり、取付け部品数の増加、製造工数の増加となり、大幅なコスト増となってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、舌片をコンテナ本体とは別体に形成することなく、該舌片を閉じ合わせた状態で、その内側の排出口の結束状態を外部から容易に視認することができるフレキシブルコンテナを提供することを課題とする。
【0011】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
(請求項1)
コンテナ本体の底部中央に放射状に切込みを入れることによって3つ以上に分割形成された舌片と、前記舌片を開閉させるための開閉手段と、前記舌片の内側に設けられ、柔軟な熱可塑性樹脂からなる筒状の排出口と、前記排出口を結束するための結束手段とを有し、前記舌片を外側に向けて開放することによって、前記排出口から前記コンテナ本体内の収容物を排出可能とし、前記舌片を閉じ合せることによって、前記結束手段によって結束された状態の前記排出口をその外側から覆って内側に収容するようにしたフレキシブルコンテナにおいて、
前記舌片が閉じ合わされた際の中央部に、前記結束手段によって結束された前記排出口の結束部が視認可能となる大きさの開口部を形成し、
前記舌片の内面側且つ前記排出口の外面側に、前記舌片が閉じ合わされた際に前記開口部を内側から覆うと共に該開口部を通して前記結束部を透視可能な蓋片を設けたことを特徴とするフレキシブルコンテナ。
(請求項2)
前記開口部は、前記結束部の全体が該開口部内に収まる大きさを有することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項3)
前記開閉手段は、前記舌片のそれぞれに亘って架け渡された縛り紐からなり、
前記舌片は、端部側を折り返すことによって、該舌片が閉じ合わされた際の中央部に前記開口部を形成すると共に前記縛り紐を挿通させて架け渡すための挿通穴を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項4)
前記蓋片は、透明な樹脂シートであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項5)
前記蓋片は、網状体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項6)
前記蓋片は、一端が前記舌片と前記排出口との間に固定され、他端が自由端とされ、前記舌片が閉じ合わされた際に該舌片と前記排出口との間に挟まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項7)
前記蓋片と前記舌片との間に、前記蓋片が前記開口部から滑落することを防止する滑り止め部材を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ。
(請求項8)
前記滑り止め部材は、面ファスナーであることを特徴とする請求項7記載のフレキシブルコンテナ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、舌片をコンテナ本体とは別体に形成することなく、該舌片を閉じ合わせた状態で、その内側の排出口の結束状態を外部から容易に視認することができるフレキシブルコンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るフレキシブルコンテナを底面側から見た斜視図
【図2】コンテナ本体の底面図
【図3】図2の(iii)−(iii)線に沿う断面図
【図4】フレキシブルコンテナの排出部を開放した様子を示す図
【図5】蓋片の別の態様を示す斜視図
【図6】滑り止め部材を設けた排出部を説明する図
【図7】開閉手段の他の一例を示す図
【図8】コンテナ本体を構成する布状体の一例を示す平面図
【図9】コンテナ本体を構成する布状体の一例を示す断面図
【図10】(a)〜(c)は布状体を構成する熱可塑性樹脂製線条体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るフレキシブルコンテナを底面側から見た斜視図、図2は、コンテナ本体の底面図、図3は、図2の(iii)−(iii)線に沿う断面図、図4は、フレキシブルコンテナの排出部を開放した様子を示す図である。
【0018】
フレキシブルコンテナ1は、コンテナ本体2と、該コンテナ本体2の上部に適宜数の吊りベルト3とを有している。
【0019】
コンテナ本体2は、熱可塑性樹脂製の布状体20を上面、下面及び側面に用いることによって、粉体、粒体等の収容物を収容するための角筒状、円筒状等の袋状に形成され、上部には収容物を充填するための充填口(図示せず)が設けられると共に、底部21には収容物を排出するための排出部4が設けられている。
【0020】
排出部4は、コンテナ本体2の底部21を構成している布状体の中央部に切込み40を入れることによって、該底部21の中央部に分割形成された複数枚の舌片41を有している。ここでは、切込み40を十字型に形成することによって、底部21の中央部に4分割された舌片41を形成したものを示しているが、切込み40は底部21に放射状に形成されればよく、分割数も3つ以上であればよい。但し、分割数が少なすぎると舌片41を開放しても、収容物の排出のための大きな開口が形成されにくく、また分割数が多すぎると舌片41を閉じ合わせるための構造が複雑で作業も煩雑となるため、4〜6分割が適当である。
【0021】
各舌片41は、十字型の切込み40によって分割形成された時点では、中央に向いた先端が90°の角度を持つ三角形状あるいは扇形状を呈しているが、その端部41aは、所定の長さに亘って内面側(コンテナ本体2の内部側)に向けて折り曲げられている。
【0022】
そして、この折り曲げられた先端と、折り曲げによって形成された折り辺部41bとの間を、該折り辺部41bと平行に縫製して縫着部41cを形成することによって、該縫着部41cと折り辺部41bとの間に、開閉手段である縛り紐42を挿通させるための挿通穴41dを形成している。これにより、縛り紐42を架け渡すためにフック等の別途の部材を用意して各舌片41に取り付ける必要をなくしている。
【0023】
縛り紐42は、挿通穴41dに亘って挿通されることによって各舌片41に架け渡される。そして、この縛り紐42の両端側を引き締めると、各舌片41に架け渡された部分が縮径されることにより、各舌片41の折り辺部41bが中央部に向けて集まるように閉じ合わされ、引き締めを解くと、各舌片41に架け渡された部分が拡径可能となって各舌片41が開放され、外側(コンテナ下方側)に向けて排出部4を開くことができるようになっている。
【0024】
各舌片41は、このように端部41aが所定の長さに亘って折り曲げられて折り辺部41bが形成されているため、中央部に向う方向の長さが、切込み40を形成した時点での長さよりも短く形成されている。これにより、縛り紐42が引き締められて各舌片41が閉じ合わされた際の中央部に、4つの折り辺部41bによって囲まれる矩形状の開口部43が形成されている。
【0025】
また、この排出部4には排出口44が設けられている。排出口44は、コンテナ本体2を構成する布状体と同様の熱可塑性樹脂製の布状体によって、円筒状、角筒状等の筒状に形成されている。ここでは円筒状の排出口44を例示している。
【0026】
排出口44は、一端側の周縁部が、切込み40よりも外側の底部21の内面に、該切込み40を取り囲むように縫着されている。図2、図3における符号44aはその縫着部である。また、排出口44の他端側は、図4に示すように、収容物の排出時に舌片41が開放された際に該舌片41よりも下方に垂れ下り、収容物の排出をコンテナ本体2の外部に円滑に導くようになっている。
【0027】
この排出口44の他端側(排出端)には、排出口44を結束して閉じるための結束手段である結束紐45が取り付けられており、収容物の充填時及び収容物の保管時には、この結束紐45によって排出口44の排出端を結束し、収容物の漏出を防止するようになっている。
【0028】
結束紐45によって結束された状態の排出口44は、舌片41よりもコンテナ本体2の内部側に押し込められ、図2、図3に示すように各舌片41が閉じ合わされた際、その舌片41よりも内側に配置されるが、この状態で、底部21における舌片41の内面側且つ排出口44の外面側に、透明な1枚のシート状の蓋片46が設けられている。
【0029】
この蓋片46は、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等の透明な樹脂シートからなる。ここでは矩形状の蓋片46を例示するが、その形状は、舌片41と排出口44との間に介在させることが可能であり、且つ、開口部43の面積よりも大きな面積を有するものであれば特に制限はなく、円形状や多角形状等任意である。
【0030】
蓋片46の厚みは、厚すぎるといわゆるコシが出てしまい、排出部4を開閉する際の取扱い性、作業性に劣るようになり、薄すぎると結束された排出口44を支持することが困難となり、破裂や排出口44の結束部45aの飛び出しのおそれがあるため、一般には、0.05mm〜2.0mmとすることが好ましく、0.1mm〜1.0mmとすることがより好ましい。
【0031】
蓋片46は、一端46a側が、いずれか1つの舌片41の基部(折り辺部41bと反対側)に縫製されることによって底部21に固定されると共に、他端46b側は自由端とされ、各舌片41が閉じ合わされることによって形成された開口部43を、その内側から覆っている。図3における符号46cは、蓋片46の縫着部である。
【0032】
蓋片46の縫着部46cとは反対側の他端46bは、底部21の中央部を挟んで縫着部46cの反対側に位置する排出口44の縫着部44a近傍まで延びており、各舌片41が閉じ合わされた状態で、この舌片41と排出口44との間に挟持された形となっている。排出口44には収容物の荷重が掛かっているので、蓋片46は、この排出口44と舌片41との間で挟み付けられてしっかりと保持される。これにより、開口部43の部位における排出口44は、蓋片46によって開口部43から下方に飛び出さないように支持されている。
【0033】
また、蓋片46は透明であるため、開口部43は覗き窓として機能し、蓋片46を通して内側に位置する排出口44を透視可能となっている。これによって、舌片41が閉じ合わされた状態でも、作業者が蓋片46を通して排出口44の結束部45aを視認することができ、その結束状態を確認することができる。
【0034】
しかも、舌片41は、従来と同様に、コンテナ本体2の底部21に切込み40を入れることによって形成され、また、追加の部品も1枚の蓋片46のみで済むため、取付け部品数や製造工数が大きく増加することもない。
【0035】
蓋片46を通して開口部43内の排出口44の結束部45aをより容易に視認して識別できるようにするため、結束紐45は、排出口44の色とは異なる色とすることが好ましい。例えば排出口44が白色である場合、結束紐45を黒色、赤色等のように排出口44とは異なる識別し易い色とすれば、蓋片46を通して、この結束紐45を結束することによって形成される結束部45aを容易に視認でき、排出口44に対して識別することができるようになる。その結果、排出口44の結束状態をより確実に確認できるようになる。
【0036】
開口部43の大きさは、蓋片46を通して排出口44の結束状態が容易に視認可能となるように、結束部45aの全体が開口部43内に収まる大きさとすることが好ましい。
【0037】
具体的な開口部43の大きさは、大きすぎると、結束部45aが収容物の荷重に耐え切れずに、蓋片46を押し退けて開口部43から飛び出してしまうおそれがあり、小さすぎると、結束部45aを視認し難くなるため、コンテナ本体2の大きさによって適宜調整されるが、一例を挙げると、50mm×50mm〜250mm×250mmとすることが好ましい。
【0038】
開口部43の大きさは、縛り紐42を挿通させる挿通穴41dを形成する際の舌片41の端部41aの折り曲げ長さを適宜調整することによって容易に調整可能である。
【0039】
図5は、排出部4の別の態様を示している。図4と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
この態様では、透明な樹脂シートからなる蓋片46に代えて、網状体からなる蓋片47を設けている。
【0041】
このような蓋片47を構成する網状体は、例えば熱可塑性樹脂製の線条体を複数本集束させた集束糸あるいは撚り糸とし、この集束糸あるいは撚り糸を経糸緯糸として用いて織成又は編成することによって形成することができる。
【0042】
また、経糸緯糸を交差するように配置し、その交点を溶着、縫着等によって一体に固着することによって網状体を形成してもよい。
【0043】
更に、熱可塑性樹脂製の樹脂シートあるいはシート状に形成された熱可塑性樹脂製の布状体に、結束部45aが容易に視認可能となる程度の大きさの貫通穴を、後加工によって縦横に複数配列させて形成することによって網状体を形成するようにしてもよい。
【0044】
蓋片47をこのような網状体によって構成しても、開口部43を通して排出口44の結束部45aを透視可能となり、該結束部45aを容易に視認することができるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0045】
これら蓋片46、47は、閉封時に、その自由端側が排出口44と舌片41との間で収容物の荷重によって挟持され、開口部43からの排出口44の結束部45aの脱落を防止するが、コンテナ本体2の大きさや開口部43の大きさによって、あるいは収容物自体の重量によって、結束部45aが開口部43から蓋片46、47を押し出そうとする力が強くなることによって、蓋片46、47が滑って開口部43から滑落してしまうおそれがあるような場合は、図6に示すように、蓋片46、47と舌片41との間に、蓋片46、47が開口部43から滑落することを防止するための滑り止め部材48を設けることが好ましい。
【0046】
なお、図6では蓋片46の態様の例を示しているが蓋片47でも同様である。また、図6は、排出部4をコンテナ本体2の内側から見た状態を示し、排出口44は図示省略している。
【0047】
滑り止め部材48としては、蓋片46の特に自由端46b側が排出口44と舌片41との間で滑ってしまうことを防止できるように、両者間の摩擦抵抗を大きくすることができるものであればよい。図6に示す態様では、蓋片46の自由端46bの外面側と、これに対応する舌片41の内面側に、それぞれ面ファスナー48a、48bを貼着し、排出部4の閉封時に、蓋片46が舌片41と重なり合った際に、これら面ファスナー48a、48b同士が接合して相互の滑りを阻止するようにしている。
【0048】
面ファスナー48a、48bであるため、排出部4の開放時は、舌片41を開放させれば容易に接合状態を解除でき、作業性が悪化することはない。
【0049】
また、この他、滑り止め部材48として、例えば防滑性を有するゴムを蓋片46、47と舌片41のいずれか一方又は双方に貼着することによって滑り止め効果を得るようにしてもよい。
【0050】
以上説明した例では、舌片41を開閉させるための開閉手段として縛り紐42を用いたが、開閉手段は縛り紐に限らず、例えば図7に示すように、隣合う舌片41の切込み40部分にそれぞれ、スライダー49aのスライド操作によって開閉されるファスナー49を縫着し、このファスナー49を開閉することによって各舌片41の開放及び閉じ合わせを行うようにしてもよい。この場合は、開口部43を形成するために、必ずしも各舌片41の端部41aを折り返す必要はなく、例えば各舌片41の先端を、開口部43の所望の開口面積に応じて切断加工するようにしてもよい。
【0051】
また、排出口44を結束するための結束手段としては、結束紐45のような紐に限らず、テープ、ベルト、金具等、筒状の排出口44の一端を結束して閉封させることができるものであれば任意である。このような結束紐45以外の結束手段も、排出口44とは異なる色とすることにより、排出口44に対して容易に識別できるようにすることが好ましい。
【0052】
本発明に係るフレキシブルコンテナ1は、排出部4を有する底部21を構成する部分(これを底シート21と称する。)を、フレキシブルコンテナのコンテナ本体を形成するための部品として、独立して取引することも可能である。
【0053】
すなわち、このようなフレキシブルコンテナ用の底シート21は、以上説明した構成部位の符号を用いて説明すると、中央に放射状に切込み40を入れることによって3つ以上に分割形成された舌片41と、前記舌片41を開閉させるための開閉手段(例えば縛り紐42、ファスナー49)と、前記舌片41の内側(一方の面側)に設けられ、柔軟な熱可塑性樹脂からなる筒状の排出口44と、前記排出口44を結束するための結束手段(例えば結束紐45)とを有し、前記舌片41を外側(他方の面側)に向けて開放することによって、前記排出口44から収容物を排出可能な状態とし、前記舌片41を閉じ合せることによって、前記結束手段によって結束された状態の前記排出口44をその外側から覆うようにしたものであって、前記舌片41が閉じ合わされた際の中央部に、前記結束手段によって結束された前記排出口44の結束部45aが視認可能となる大きさの開口部43を形成し、前記舌片41と前記排出口44との間に、前記舌片41が閉じ合わされた際に前記開口部43を該舌片41の内側から覆うと共に該開口部43を通して前記結束部45aを透視可能な蓋片46、47を設けた構成である。
【0054】
各構成部位の具体的な態様は、以上説明した通りであるので省略する。
【0055】
このフレキシブルコンテナ用の底シート21によれば、既存のフレキシブルコンテナの底部に代えて、この底シート21を用いるように改修することによって、以上説明した本発明に係るフレキシブルコンテナ1を容易に得ることができる。
【0056】
次に、コンテナ本体2を構成する布状体20について説明する。
【0057】
コンテナ本体2を構成する布状体20は、熱可塑性樹脂製の線条体によって形成された可撓性を有するものであり、例えば、図8、図9に示すように、熱可塑性樹脂製の線条体20a、20bを経糸、緯糸に用いて織成された織布とすることができる。織り方は、一般には平織りとされるが、綾織り等であってもよい。また、熱可塑性樹脂製の線条体を用いて編成した編布であってもよい。ここでは平織りされた布状体20を示している。
【0058】
熱可塑性樹脂製の線条体20a、20bとしては、一軸延伸された熱可塑性樹脂のモノフィラメント、フラットヤーン、スプリットヤーン等を用いることができるが、中でもフラットヤーンが好ましい。
【0059】
線条体20a、20bとしては、図10(a)に示すように、結晶性樹脂の基層200の単層からなる単層体であってもよく、また、図10(b)に示すように、基層200の片面に接合層201が積層されたものであってもよく、また、図10(c)に示すように、基層200の両面に接合層201を積層したものであってもよい。
【0060】
このような単層体または積層体における基層200を構成する熱可塑性合成樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が用いられ、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等を用いることができる。
【0061】
中でも加工性と経済性からポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。ポリエチレンとしては高密度ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンとしては、密度が0.930〜0.970g/cm、好ましくは0.940〜0.960g/cm、MFR(メルトフローレート)が0.2〜10.0g/10分、好ましくは0.3〜5.0g/10分のものが好ましい。ポリプロピレンとしては密度が0.890〜0.920g/cm、好ましくは0.910〜0.915g/cm、MFRが0.2〜10.0g/10分、好ましくは0.3〜5.0g/10分のものが好ましい。
【0062】
接合層201は、熱可塑性樹脂製の線条体20a、20bが織成されて布状体とされた後、線状体20a、20b間を接合し、あるいは布状体に積層される後述する熱可塑性樹脂層20cとの間を接合するもので、基層200を構成する合成樹脂より融点が低く、熱融着性の優れた合成樹脂が用いられる。
【0063】
具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、アクリル樹脂等の合成樹脂から基層200を構成する合成樹脂より融点の低い合成樹脂を選択して用いられる。
【0064】
基層200あるいは接合層201として用いられる合成樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。
【0065】
具体的には、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、有機金属塩系等の滑剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤、有機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0066】
これら添加剤は、適宜組み合わせて、基層200や接合層201の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0067】
線条体20a、20bとして基層200と接合層201の積層体が使用される場合、成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、予め基層200となるフィルムと接合層201となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、基層200となるフィルムの表面に接合層201となる合成樹脂をコーティングする方法、予め形成した基層200となるフィルムに接合層201を押出ラミネートする方法、あるいは、多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いることができる。中でも、成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性の点では、多層共押出法によって基層200と接合層201の積層体を一段で得る方法が好ましい。
【0068】
また、延伸して線条体20a、20bとする手段としては、単層体の場合は公知の方法で行うことができ、積層体の場合は、基層200となるフィルムを一軸方向に延伸した後、接合層201となる合成樹脂を積層し、これをテープ状にスリットしてもよく、あるいは、基層200と接合層201が積層された積層フィルムをスリットする前、又は、スリットした後、一軸方向に延伸することによって得ることもできる。延伸倍率は通常3〜20倍程度とされる。
【0069】
線条体20a、20bの太さは特に制限はないが、一般には75〜10000dt(デシテックス)、糸幅が0.3〜30mmの範囲のフラットヤーンとすることができる。こうして得られた一軸延伸フラットヤーンは、縦方向に小さな切れ目を入れてスプリットヤーンとすることもできる。
【0070】
このような線条体20a、20bによって織成された布状体20には、その片面に、図9に示すように、熱可塑性樹脂製のフィルムからなる熱可塑性樹脂層20cを積層することもできる。この熱可塑性樹脂層20cは、本発明において必須のものではないが、この熱可塑性樹脂層20cによって布状体20の線条体20a、20b間の隙間が塞がれるため、熱可塑性樹脂層20cの積層面が内面となるようにしてコンテナ本体2を形成することにより、特に粉状物の収容に適したフレキシブルコンテナとすることができる。
【0071】
この熱可塑性樹脂層20cとして使用される樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドを用いることができ、中でもポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の単独重合体、あるいはこれらを主成分とする共重合体を用いることができる。
【0072】
布状体20に熱可塑性樹脂層20cを積層する方法は、公知の手段によって行うことができ、例えば布状体20の上に熱可塑性樹脂層20cを重ねて熱ロールを用いて熱圧着する方法、布状体20の上に熱可塑性樹脂層20cをフィルム状に押出して押出しラミネートする方法、熱可塑性樹脂層20cをホットメルト剤等の接着剤によって接着する方法等を採用することができる。
【0073】
この熱可塑性樹脂層20cの厚さは任意に選択できるが、一般には15〜700μm、好ましくは15〜500μm、更に好ましくは15〜400μmとされる。
【0074】
排出口44を構成するための布状体も、コンテナ本体2を構成する布状体20と同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1:フレキシブルコンテナ
2:コンテナ本体
20:布状体
20a、20b:線条体
20c:熱可塑性樹脂層
200:基層
201:接合層
21:底部(底シート)
3:吊りベルト
4:排出部
40:切込み
41:舌片
41a:端部
41b:折り辺部
41c:縫着部
41d:挿通穴
42:縛り紐
43:開口部
44:排出口
44a:縫着部
45:結束紐
45a:結束部
46、47:蓋片
46a:一端
46b:他端(自由端)
46c:縫着部
48:滑り止め部材
48a、48b:面ファスナー
49:ファスナー
49a:スライダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ本体の底部中央に放射状に切込みを入れることによって3つ以上に分割形成された舌片と、前記舌片を開閉させるための開閉手段と、前記舌片の内側に設けられ、柔軟な熱可塑性樹脂からなる筒状の排出口と、前記排出口を結束するための結束手段とを有し、前記舌片を外側に向けて開放することによって、前記排出口から前記コンテナ本体内の収容物を排出可能とし、前記舌片を閉じ合せることによって、前記結束手段によって結束された状態の前記排出口をその外側から覆って内側に収容するようにしたフレキシブルコンテナにおいて、
前記舌片が閉じ合わされた際の中央部に、前記結束手段によって結束された前記排出口の結束部が視認可能となる大きさの開口部を形成し、
前記舌片の内面側且つ前記排出口の外面側に、前記舌片が閉じ合わされた際に前記開口部を内側から覆うと共に該開口部を通して前記結束部を透視可能な蓋片を設けたことを特徴とするフレキシブルコンテナ。
【請求項2】
前記開口部は、前記結束部の全体が該開口部内に収まる大きさを有することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項3】
前記開閉手段は、前記舌片のそれぞれに亘って架け渡された縛り紐からなり、
前記舌片は、端部側を折り返すことによって、該舌片が閉じ合わされた際の中央部に前記開口部を形成すると共に前記縛り紐を挿通させて架け渡すための挿通穴を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項4】
前記蓋片は、透明な樹脂シートであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項5】
前記蓋片は、網状体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項6】
前記蓋片は、一端が前記舌片と前記排出口との間に固定され、他端が自由端とされ、前記舌片が閉じ合わされた際に該舌片と前記排出口との間に挟持されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項7】
前記蓋片と前記舌片との間に、前記蓋片が前記開口部から滑落することを防止する滑り止め部材を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項8】
前記滑り止め部材は、面ファスナーであることを特徴とする請求項7記載のフレキシブルコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−49444(P2013−49444A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187640(P2011−187640)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【Fターム(参考)】